説明

新規な置換ベンズイミダゾール投与形態およびそれらの使用方法

【課題】胃酸関連疾患の治療の新規な製剤の提供。
【解決手段】胃酸関連疾患の治療のために経口投与される固体投与形の医薬組成物であって、(i)或る量の、少なくとも1種の腸溶性被覆されていない特定の酸感受性置換ベンゾイミダゾールH+,K+−ATPアーゼプロトンポンプ阻害剤;(ii)前記の量の前記プロトンポンプ阻害剤を、経口投与後に胃酸による酸分解から保護するのに十分な量の重炭酸ナトリウムを含む緩衝剤;及び(iii )崩壊剤、を含んでなる医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ベンズイミダゾールプロトンポンプインヒビターを含んでなる調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメプラゾールは、置換ベンズイミダゾール、5−メトキシ−2−[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールであり、胃酸分泌を阻害する。オメプラゾールは、抗コリン作動性またはH2ヒスタミンアンタゴニスト特性を示さない、プロトンポンプインヒビター(「PPI」)と呼ばれる抗分泌化合物の1クラスに属する。このクラスの薬剤は、胃壁細胞(porietul cell)の分泌表面におけるH+,K+−ATPアーゼ酵素系(プロトンポンプ)の特異的阻害により、胃酸分泌を抑制する。
【0003】
典型的には、オメプラゾール、ランソプラゾールおよび他のプロトンポンプインヒビターは、腸溶被覆固体の投与形態(放出遅延カプセル剤または錠剤として)で、または静脈内溶液(または再構成生成物)として処方され、そして活性十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃食道逆流性疾患(GERD)、重度の浸蝕性食道炎、低応答性全身的GERD、および病理学的分泌過多症状、例えば、ゾリンジャー−エリソン症候群の短期治療のために処方される。これらの症状は、酸およびペプシン産生、攻撃因子と呼ばれる、およびプロスタグランジン産生、防御因子と呼ばれる、の間の不均衡により引き起こされる。これらの上に列挙した症状は、健康な人または重症患者において普通に発生し、有意な胃腸上部出血を伴うことがある。
【0004】
H2−アンタゴニスト、抗酸、およびスクラルフェートは、これらの症状に関係する疼痛および合併症を最小化するために普通投与される。これらの薬剤は、それらの使用に関連してある種の欠点を有する。これらの薬剤のあるものは、前述の症状の治療において完全には有効ではなく、および/または悪い副作用、例えば、精神的錯乱、便秘、下痢、および血小板減少症を引き起こす。H2−アンタゴニスト、例えば、ラニチジンおよびシメチジンは、特にNPO患者において、療法の比較的費用のかかるモードであり、しばしば薬剤を連続的に静脈内注入するために自動化注入ポンプの使用を必要とする。
【0005】
有意な病理学的ストレスを有する患者は、ストレスに関係する胃粘膜損傷および引き続く胃腸上部出血の危険な状態にある(MarroneおよびSilen、Pathogenesis, Diagnosis and Treatment of Acute Gastric Mucosa Lesions、CLIN GASTROENTEROL 13:635−650(1984))。ストレスに関係する胃粘膜損傷の発生に明らかに関連づけられてきた危険因子は、機械的人工呼吸器、凝固異常、広範な熱傷、頭部損傷、および器官移植である(Zinner他、The Prevention of Gastrointestinal Tract Bleeding in Patients in an Intensive Care Unit、SURG. GYNECOL. OBSTET.、153:214−220(1981);Larson他、Gastric Response to Sever Head Injury、AM. J. SURG. 147:97−105(1984);Czaja他、Acute Gastroduodenal Disease After Thermal Injury:An Endoscopic Evaluation of Incidence and Natural History、N. ENGL. J. MED.、291:925−929(1974);Skillman他、Respiratory Failure,Sepsis and Jaundice:A Clinical Syndrome Associated with Lethal Hemorrhage From Acute Stress Ulceration、AM. J. SURG.、117:523−530(1969);およびCook他、Risk Factors for Gastrointestinal Bleeding in Critically Ill Patients、N. ENGL. J. MED.、330:377-381(1994))。
【0006】
これらの因子の1またはそれ以上は、重症の集中治療室の患者においてしばしば見出される。最近のコホート研究は、以前に同定された他の危険因子、例えば、酸−塩基障害、多発性外傷、有意な高血圧症、主要な外科手術、多数の手術手順、急性腎臓不全、敗血症、および昏睡に挑戦している(Cook他、Risk Factors for Gastrointestinal Bleeding in Critically Ill Patients、N. ENGL. J. MED.、330:377−381(1994))。危険の型に無関係に、ストレスに関係する粘膜損傷は有意な病的状態および死亡率を生ずる。治療しないで放置した1またはそれ以上の危険因子を有する患者の少なくとも20%において、臨床的に有意な出血が起こる(Martin他、Continuous Intravenous cimetidine Decreases Stress-related Upper Gastrointestinal Hemorrhage Without Promoting Pneumonia、CRIT. CARE MED.、21:19−39(1993))。
【0007】
出血する患者のうちで、ほぼ10%は外科手術(通常胃切除)を必要とし、報告された死亡率は30%〜50%である(Czaja他、Acute Gastroduodenal Disease After Thermal Injury:An Endoscopic Evaluation of Incidence and Natural History、N. ENGL. J. MED.、291:925-929(1974);PeuraおよびJohnson、Cimetidine for Prevention and Treatment of Gastroduodenal Mucosal Lesions in Patients in an Intensive Care Unit、ANN INTERN MED.、103:173−177(1985))。外科手術を必要としない患者は、多数の輸血および延長した入院をしばしば必要とする。ストレスに関係する胃腸上部出血の予防は、重要な臨床的目標である。
【0008】
一般的支持医療に加えて、ストレスに関係する粘膜損傷および関係する合併症を予防するための薬剤の使用は、多数により医療の標準であると考えられている(AMA薬剤評価)。しかしながら、一般的コンセンサスはこの設定においてどの薬剤を使用するかについて欠如する(Martin他、Continuous Intravenous Cimetidine Decreases Stress-related Upper Gastrointestinal Hemorrhage Without Promoting Pneumonia、CRIT. CARE MED.、21:19−39(1993);Gafter他、Thrombocytopenia Associated with Hypersensitivity to Ranitidine:Possible Cross-reactivity with Cimetidine、AM. J. GATROENTEROL、64:560−562(1989);Martin他、Stress Ulcers and Organ Failure in Intubated Patients in Surgical Intensive Care Units、ANN SURG.、215:332−337(1992))。
【0009】
2つの最近のメタ分析(Cook他、Stress Ulcer Prophylaxis in the Critically Ill:A Meta-analysis、AM. J. MED.、91:519−527(1991);Tryba、Stress Ulcer Prophylaxis - Quo Vadis?、INTENS. CARE MED. 20:311−313(1994))において、抗酸、スクラルフェート、およびH2−アンタゴニストのすべてはプラシーボよりすぐれ、胃腸上部出血の予防において互いに類似することが見出された。しかも、予防剤は、それらを使用した患者の15〜20%において回収された。
【0010】
その理由は次の通りである:出血の防止またはpHの調節が不可能である(Oatro他、Control of Gastric pH With Cimetidine Boluses Versus Primed Infusions、GASTROENTEROLOGY、89:532−537(1985);Siepler、A Dosage Alternative for H-2 Receptor Antagonists、Continuous-Infushion、CLIN. THER.、8(SUPPL. A):24−33(1986);Ballesteros他、Bolus or Intravenous Infushion of Ranitidine:Effects on Gasric pH and Acid Secretion of Relative Cost and Efficacy、ANN INTERN MED.、112:334-339(1990))か、あるいは悪い作用を引き起こした(Gafter他、Thrombocytopenia Associated with Hypersensitivity to Ranitidine:Possible Cross-reactivity with Cimetidine、AM. J. GATROENTEROL、64:560-562(1989);Sax、Clinically Important Adverse Effects and Drug Interactions With H2-Receptor Anatagonists:An Update、PHARMCOTHERAPY 7(6 PT 2):110S-115S(1987);Vial他、Side Effects of Ranitidine、DRUG SAF、6:94-117(1991);CantuおよびKorek、Central Nervous Systems Reactions to Histamine-2 Receptor Blockers、ANN. INTERN MED.、114:1027-1034(1991);およびSpychalおよびWickham、Thrombocytopenia Associated with Ranitidine、BR. MED. J.、291:1687(1985))。
【0011】
さらに、ストレス胃炎の予防のために理想的薬剤の特性は、SymtheおよびZarowitz、Changing Perspectives of Stress Gastritis Prophylaxis、ANN PHAMACOTHER、28:1073-1084(1994)により分析され、彼らは現在使用されている薬剤のいずれもそれらの基準を満足していないと結論した。
【0012】
ストレス潰瘍は大部分の病院における集中治療室中の日常的治療となった(Fabian他、Pneumonia and Stress Ulceration in Severely Injured Patients、ARCH. SURG.、128:185-191(1993);Cook他、Stress Ulcer Prophylaxis in the Critically Ill:A Meta-analysis、AM. J. MED.、91:519-527(1991))。重症管理患者におけるストレスに関係する出血を予防するための薬理学的関与に関して、論争が残っている。胃腸出血の発生率および危険は過去10年間に減少し、薬剤治療はもはや不必要となったことが示唆された(Cook他、Risk Factors for Gastrointestinal Bleeding in Critically Ill Patients、N. ENGL. J. MED.、330:377-381(1994);Tryba、Stress Ulcer Prophylaxis - Quo Vadis?、INTENS. CARE MED. 20:311-313(1994);Schepp、Stress Ulcer Prophylaxis:Still a Valid Option in the 1990s?、DIGESTION 54:189-199(1993))。
【0013】
この論拠は最近のプラシーボ−コントロール研究により支持されなかった。Martinらは、ストレスに関係する粘膜損傷の連続的注入シメチジンおよびプラシーボの予測的、ランダム化、二重盲検、プラシーボ−コントロール比較を実施した。プラシーボグループにおける過剰の出血に関係する死亡率のために、この研究は初期に停止された。予防を受けていない患者におけるストレスに関係する粘膜損傷の自然過程は有意に止まるように思われる。プラシーボグループにおいて、患者の33%は臨床的に有意な出血を発生し、9%は輸血を必要とし、そして6%は出血に関係する合併症のために死亡した。
【0014】
比較すると、シメチジン治療患者の14%は臨床的に有意な出血を発生し、6%は輸血を必要とし、そして0.5%は出血に関係する合併症のために死亡した。治療グループ間の出血速度の差は統計的に有意であった。この研究は、連続的注入のシメチジンが重症管理患者において病的状態を減少することを透明に証明した。ストレス潰瘍の予防のための食物および薬剤の官庁(Food and Drug Administration)による連続的注入のシメチジンの承認を支持するために、これらのデータが使用されたが、H2−アンタゴニストはストレスに関係する粘膜出血の予防のための最適な薬物療法剤として不十分である。
【0015】
ストレス潰瘍の予防に関する他の論争はどの薬剤を使用するかである。種々のH2−アンタゴニストに加えて、抗酸およびスクラルフェートはストレスに関係する粘膜損傷の予防のための他の治療オプションである。この設定における理想的薬剤は下記の特性を有するべきである:ストレス潰瘍およびそれらの合併症の予防する、毒性を欠如する、薬剤相互作用を欠く、選択的である、関連するコスト(例えば、作業員の時間および材料)が最小である、および投与が容易である(SmytheおよびZarowitz、Changing Perspectives of Stress Gastritis Orophylaxis、ANN PHARMACOTHER、28:1073-1084(1994))。スクラルフェートはストレス潰瘍の予防の理想的な薬剤である可能性があることが示唆された(SmytheおよびZarowitz、Changing Perspectives of Stress Gastritis Orophylaxis、ANN PHARMACOTHER、28:1073-1084(1994))。
【0016】
ランダム化、コントロールされた研究はスクラルフェートの使用を支持する(Borrero他、Antacids vs. Sucrafate in Preventing Acute Gastrointestinal Tract Bleeding in Abdominal Aortic Aurgery、ARCH. SURG.、121:810-812(1986);Tryba、Risk of Acute Stress Bleeding and Nosocomial Pneumonia in Ventilated Intensive Care Patients. Sucralfate vs. Antacids、AM. J. MED.87(3B):117-124(1987);Cioffi他、Comparison of Acid Neutralizing and Non-acid Neutralizing Stress Ulcer Prophylaxis in Thermally Injured Patients、J. TRUMA、36:541−547(1994);およびDrisks他、Nosocomial Pneumonia in Intubated Patients Given Sucralfate as Compared with Antacid or Histamin Type 2 Blockers、N. ENGL. J. MED.、317:1376-1382(1987))が、頭部の損傷、外傷、または熱傷を有する重症管理患者についてのデータは制限される。
【0017】
さらに、ストレス潰瘍の予防についてスクラルフェートおよびシメチジン+抗酸を比較する最近の研究は、48人のスクラルフェート治療した患者のうちの3人(6%)における臨床的に有意な出血を報告し、患者のうちの1人は胃切除を必要とした(Cioffi他、Comparison of Acid Neutralizing and Non-acid Neutralizing Stress Ulcer Prophylaxis in Thermally Injured Patients、J. TRUMA、36:541-547(1994))。
【0018】
Driskおよび共同研究者らにより実施された研究において、スクラルフェートを慣用の治療(H2−アンタゴニスト、抗酸、またはH2−アンタゴニスト+抗酸)と比較し、ストレスに関係する胃腸上部出血のために死亡した唯一の患者はスクラルフェートアームであった(Drisks他、Nosocomial Pneumonia in Intubated Patients Given Sucralfate as Compared with Antacid or Histamin Type 2 Blockers、N. ENGL. J. MED.、317:1376-1382(1987))。
【0019】
H2−アンタゴニストは、理想的なストレス潰瘍の予防薬剤についての基準の多数を満足する。しかも、H2−アンタゴニスト予防の間に臨床的に有意な出血が起こることがある(Martin他、Continuous Intravenous Cimetidine Decreases Stress-related Upper Gastrointestinal Hemorrhage Without Promoting Pneumonia、CRIT. CARE MED.、21:19-39(1993);Cook他、Stress Ulcer Prophylaxis in the Critically Ill:A Meta-analysis、AM. J. MED.、91:519-527(1991);Schuman他、Prophylaxis Therapy for Acute Ulcer Bleeding:A Reappraisal、ANN INTERN. MED、106562-567(1987))。
【0020】
悪い事象は重症管理個体群において普通である(Gafter他、Thrombocytopenia Associated with Hypersensitivity to Ranitidine:Possible Cross-Reactivity with Cimetidine、AM. J. GATROENTEROL、64:560-562(1989);Sax、Clinically Important Adverse Effects and Drug Interactions With H2-Receptor Anatagonists:An Update、PHARMCOTHERAPY 7(6 PT 2):110S-115S(1987);Vial他、Side Effects of Ranitidine、DRUG SAF、6:94-117(1991);CantuおよびKorek、Central Nervous Systems Reactions to Histamine-2 Receptor Blockers、ANN. INTERN MED.、114:1027-1034(1991);およびSpychalおよびWickham、Thrombocytopenia Associated with Ranitidine、BR. MED. J.、291:1687(1985))。
【0021】
療法上のH2−アンタゴニストの失敗について提案された1つの理由は、治療期間を通じてpHコントロールの欠如である(Ostro他、Control of Gastric pH With Cimetidine Boluses Versus Primed Infusions、GATROENTEROLOGY、89:532-537(1985))。ストレス潰瘍に関係する正確な病態生理学的メカニズムは明瞭に確立されておらず、粘膜中の水素イオンの高い濃度(Fiddian-Green他、1987)または粘膜細胞と接触する胃液は重要な因子であるように思われる。
【0022】
胃のpH>3.5はストレスに関係する粘膜損傷および出血のより低い発生率に関連づけられた(Larson他、Gastric Response to Sever Head Injury、AM. J. SURG.、147:97-105(1984);Skillman他、Respiratory Failure,Hypotension,Sepsis and Jaundice:A Clinical Syndrome Associated With Lethal Hemorrhage From Acute Stress Ulceration、AM. J. SURG.、117:523-530(1969);Skillman他、The Gastric Mucosal Barrier:Clinical and Experimental Studies in Critically Ill and Normal Man and in the Rabbit、ANN SURG.、172:564-584(1970);およびPriebeおよびSkillman、Methods of Prophylaxis in Stress Ulcer Disease、WORLD J. SURG.、5:223-233(1981))。
【0023】
いくつかの研究において、H2−アンタゴニストは、最大投与量においてさえ、胃内pHを普通にターゲットされるレベル(3.5〜4.5)に確実にまたは連続的に増加しないことが示された。これは、特に固定投与量のボーラス養生法において使用するとき、真実である(Ostro他、Control of Gastric pH With Cimetidine Boluses Versus Primed Infusions、GATROENTEROLOGY、89:532-537(1985);Siepler、A Dosage Alternative for H-2 Receptor Antagonists, Continuous-infusion、CLIN. THER.、8(SUPPL. A):24-33(1986);Ballesteros他、Bolus or Intravenous Infushion of Ranitidine:Effects on Gasric pH and Acid Secretion of Relative Cost and Efficacy、ANN. INTERN. MED.、112:334-339(1990))。
【0024】
さらに、H2−アンタゴニストの連続的注入を使用するとき、胃pHレベルは低下する傾向があり、これはタキフィラキシーの結果であることがある(Ostro他、Control of Gastric pH With Cimetidine Boluses Versus Primed Infusions、GATROENTEROLOGY、89:532-537(1985);Wilder-SmithおよびMerki、Tolerance During Dosing With H2-receptor Antagonists. An Overview、SCAND. J. GATROENTEROL 27(SUPPL. 193):14-19(1992))。
【0025】
ストレス潰瘍の予防はしばしば集中治療室において使用されるので、臨床的および経済的観点から、薬物療法的アプローチを最適化することが必須である。最適な治療を同定する試みにおいて、管理のコストが1つの問題となる。治療失敗および薬剤に関係する悪い事象のコストを包含する、すべての治療コストを考慮すべきである。死亡を生ずる失敗の実際の数は低いが、病的状態(例えば、輸血を必要とする出血)は高いが、特定の薬剤の失敗とのその関連性はしばしば認識されない。
【0026】
胃のpHを上昇させる薬剤を使用するストレス潰瘍の予防処置を受ける患者における肺炎頻度の増加に関する最初の報告は、重症管理患者の管理に対する薬物療法のアプローチに影響を及ぼした。しかしながら、いくつかの最近の研究(Simms他、Role of Gastric Colonization in the Development of Pneumonia in Critically Ill Trauma Patients:Results of a Prospective Randomized Trial、J. TRAUMA、31:531-536(1991);Pickworth他、Occurrence of Nasocomial Pneumonia in Mechanically Ventilated Trauma Patients:A Comparison of Sucralfate and Ranitidine、CRIT. CARE MED.、12:1856-1862(1993);Ryan他、Nasocomial Pneumonia During Stress Ulcer Prophylaxis With Cimetidine and Sucralfate、ARCH. SURG.、128:1353-1357(1993);Fabian他、Pneumonia and Stress Ulceration in Severely Injured Patients、ARCH. SURG.、128:185-191(1993))、メタ分析(Cook他、Stress Ulcer Prophylaxis in the Critically Ill:A Meta-analysis、AM. J. MED.、91:519-527(1991))、およびpH増加にに関連する肺炎の仮説を開始した研究の厳密な検査(Schepp、Stress Ulcer Prophylaxis:Still a Valid Option in the 1990s?、DIGESTION 54:189-199(1993))は、原因の関係に疑問をなげた。
【0027】
肺炎と抗酸治療との間の関係はH2−アンタゴニストについてよりも非常に強い。胃のpHに対する抗酸およびH2−アンタゴニストの共有効果は、ストレス潰瘍の予防の間に観測される院内肺炎のために抵抗不能な共通の原因の説明であると思われる。しかしながら、頻繁に強調されないこれらの薬剤間の重要な差が存在する(Laggner他、Prevention of Upper Gastrointestinal Bleeding in Long-term Ventilated Patients、AM. J. MED.、86(SUPPL 6A):81-84(1989))。ストレスに関係する胃腸上部出血の予防においてpHをコントロールするために抗酸をもっぱら使用するとき、大きい体積を必要とする。
【0028】
体積は、引き続く還流を使用するか、または使用しないで、胃のpHの増加よりむしろ推測される患者集団における肺炎の発生を促進する、1またはそれ以上の根元的メカニズムであることがある。肺炎の割合(12%)はこの重症管理集団において予期されないことではなく、胃のpHを有意に上昇させない、スクラルフェートに匹敵する(Pickworth他、Occurrence of Nasocomial Pneumonia in Mechanically Ventilated Trauma Patients:A Comparison of Sucralfate and Ranitidine、CRIT. CARE MED.、12:1856-1862(1993);Ryan他、Nasocomial Pneumonia During Stress Ulcer Prophylaxis With Cimetidine and Sucralfate、ARCH. SURG.、128:1353-1357(1993))。
【0029】
オメプラゾール(PrilosecTM)、ランソプラゾール(PrevacidTM)および他のPPIは、壁細胞−胃酸分泌の最終の共通経路のH+,K+−ATPアーゼを阻害することによって、胃酸産生を減少させる(Fellenius他、Substituted Benzimidazoles Inhibit Gastric Acid Secretion by Blocking H+,K+-ATPase、NATURE.290:159-161(1981);Wallmark他、The Relationship Between Gastric Acid Secretion and Gastric H+,K+-ATPase Activity、J. BIOL. CHEM.、260:13681-13684(1985);Fryklund他、Function and Structure of Parietal Cells After H+,K+-ATPase Blockade、AM. J. PHYSIOL.、254(3 PT 1);G399-407(1988))。
PPIは、下に示すように、置換ベンズイミダゾールとピリジン環との間の架橋の中にスルフィニル基を含有する。
【0030】
【化1】

【0031】
中性pHにおいて、オメプラゾール、ランソプラゾールおよび他のPPIは、阻害活性を欠く、化学的に安定な、脂質可溶性、弱塩基である。これらの中性弱塩基は血液から壁細胞に到達し、分泌小管の中に拡散し、ここで薬剤はプロトン化し、これにより捕捉されるようになる。プロトン化薬剤を再配置して、スルフェン酸およびスルフェンアミドを形成する。スルフェンアミドは、膜スパニングH+,K+−ATPアーゼの細胞外(管腔)ドメインにおける重大な部位におけるスルフヒドリル基と共有結合的に相互作用する(Hardman他、Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics、p. 907(第9版、1996))。
【0032】
したがって、オメプラゾールおよびランソプラゾールは、活性化して有効としなくてはならないプロドラッグである。また、PPIの作用の特異性は下記に依存する:(a)H+,K+−ATPaseの選択性;(b)反応性インヒビターの発生を触媒する酸性条件の必要性;および(c)酸性小管内のターゲット酵素に隣接したプロトン化薬剤およびカチオン性スルフェンアミドの捕捉。(Hardman他、1996)。
【0033】
オメプラゾールおよびランソプラゾールは、ゼラチンカプセル中の腸溶粒子として経口投与するために入手可能である。他のプロトンポンプインヒビター、例えば、ラベプラゾールおよびパントプラゾールは腸溶錠剤として供給される。これらの薬剤は吸収前に胃酸に暴露されないことが非常に重要であるので、先行技術の腸溶投与形態が使用されてきている。これらの薬剤はアルカリ性pHにおいて安定であるので、pHが低下する(例えば、胃酸により)と、急速に破壊する。したがって、マイクロカプセル化または腸溶性コーティングが崩壊される(例えば、液体を配合するための粉砕、またはカプセルの咀嚼)場合、薬剤は胃中の胃酸による分解に暴露される。
【0034】
米国における静脈内または経口的液体投与形態の非存在は、重症管理患者集団におけるオメプラゾール、ランソプラゾールおよびラベプラゾールの試験および使用を制限した。Barie他、Therapeutic Use of Omeparazole for Refractory Stress-induced Gastric Mucosal Hemorrhage、CRIT. CARE MED.、20:899-901(1992)は、多器官不全の重症管理患者における胃腸出血をコントロールするために、経鼻胃管を通して投与されるオメプラゾール腸溶ペレットを使用することを記載した。しかしながら、このようなペレットは凝集し、このような管を閉塞することがあるので、理想的ではなく、ペレットを飲み込むことができない患者について不適当である。AM. J. HEALTH-SYST PHARM 56:2327-30(1999)。
【0035】
プロトンポンプインヒビター、例えば、オメプラゾールは、ストレスに関係する粘膜損傷に関係する合併症を治療するために、H2−アンタゴニスト、抗酸、およびスクラルフェートの代わりに好都合に使用される。しかしながら、それらの現在の形態(腸溶顆粒または腸溶錠剤を含有するカプセル剤)において、錠剤またはカプセル剤の嚥下を好まないか、あるいはそれが不可能である患者、例えば、重症患者、子供、中年過ぎ、および嚥下障害の患者にプロトンポンプインヒビターを投与することは困難であるか、あるいは不可能であることがある。したがって、患者に腸内に送出すことができるプロトンポンプインヒビターの溶液または懸濁液を処方し、これにより現在の腸溶固体の投与形態の欠点なしに、プロトンポンプインヒビターの利益を得ることが望ましいであろう。
【0036】
オメプラゾール、すなわち、使用に導入された最初のプロトンポンプインヒビターは、多数の異なる態様、例えば、可溶性、塩基性アミノ酸中のポリエチレングリコール、脂肪固体およびラウリル硫酸ナトリウムの混合物中で処方されて、直腸における投与のために設計された処方物に形成されてきており、これは米国特許第5,219,870号(KKim)に教示されている。
【0037】
Berglund('323)に対する米国特許第5,395,323号には、患者に非経口的に投与するために、非経口的に許容される液体の中に固体供給物からの医薬を混合する装置が開示されている。米国特許第5,395,323号はオメプラゾール錠剤の使用を教示しており、ここでオメプラゾールを装置の中に入れ、通常の生理食塩水で溶解し、患者に非経口的に注入する。このオメプラゾールの非経口的注入の装置および方法は、腸内生成物としてオメプラゾール溶液を提供せず、このオメプラゾール溶液は疾患のあるまたは影響を受けた領域、すなわち、胃および上部胃腸管に直接投与されず、このオメプラゾール処方物は問題の処方物の即時抗酸作用を提供しない。
【0038】
米国特許第4,786,505号(Lovgren他)には、錠剤処方物のコア物質として、オメプラゾールとアルカリ性反応性化合物との組合わせ、またはオメプラゾールのアルカリ性塩および必要に応じてアルカリ性化合物を含有する医薬製剤が開示されている。炭酸のナトリウム塩のような物質から選択できる、アルカリ性物質を使用して各オメプラゾール粒子の回りに「マイクロ−pH」を形成し、酸性pHに対して高度に感受性であるポリマーを保護する。次いで、粉末混合物を小さいビーズ、ペレット、錠剤に処方し、慣用薬学的手順によりカプセルの中に充填する。このオメプラゾールの処方は、カプセル剤、錠剤またはペレットを嚥下できない、および/または嚥下したくない患者に腸内投与できるオメプラゾール投与形態を提供せず、オメプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビターの溶液または懸濁液を調製するために使用できる好都合な形態が教示されていない。
【0039】
いくつかの緩衝化オメプラゾール経口溶液/懸濁液は開示されてきている。例えば、Pilbrant他、Development of an Oral Formulation of Omeparazole、SCAND. J. GASTROENT. 20(Suppl. 108):113-120(1985)は、約1.2mgのオメプラゾール/mlの懸濁液の濃度で水、メチルセルロースおよび重炭酸ナトリウムの中に懸濁された微小化オメプラゾールの使用を教示している。
【0040】
Anderson他、Pharmacokinetics of Various Single Intravenous and Oral Doses of Omeparazole、EUR J. CLIN. PHARMACOL. 39:195-197(1990)は、PEG 400、重炭酸ナトリウムおよび水中に溶解した10mg、40mg、および90mgの経口用オメプラゾールを開示している。希釈剤の体積は開示されていないので、オメプラゾール濃度を決定することができない。それにもかかわらず、オメプラゾール懸濁液とともにかつお投与後に、重炭酸ナトリウムを多数回投与していることが、この参考文献から明らかである。
【0041】
Anderson他、Pharmacokinetics and Bioavailability of Omeparazole After Single and Repeated Oral Administration in Healthy Subjects、BR. J. CLIN. PHARMAC. 29:557-63(1990)は、20mgのオメプラゾールを20gのPEG 400(比重=1.14)中に溶解し、これを50mgの重炭酸ナトリウム中に0.3mg/mlの濃度で溶解して、オメプラゾールを経口的に使用することを開示している。
【0042】
Regardh他、The Pharmacokinetics of Omeparazole in Human-A Study of Single Intravenous and Oral Doses、THER. DRUG MON. 12:163-72(1990)は、オメプラゾールをPEG 400、水および重炭酸ナトリウム中に溶解した後、オメプラゾールを0.4mg/mlの濃度で経口投与することを開示している。
【0043】
Landahl他、Pharmacokinetics Study of Omeparazole in Elderly Healthy Volunteers、CLIN. PHARMACOKINETICS 23(6):469-476(1992)は、PEG 400、重炭酸ナトリウムおよび水中に溶解した40mgのオメプラゾールの経口投与の使用を教示している。この参考文献には、利用する最終濃度は開示されていない。再び、この参考文献はオメプラゾール溶液後の重炭酸ナトリウムの多数回投与を教示している。
【0044】
Anderson他、Pharmacokinetics of [14C]Omeparazole in Patients with Liver Cirrhosis、CLIN. PHARMACOKINETICS 24(1):71-78(1993)は、PEG 400、水および重炭酸ナトリウム中に溶解した40mgのオメプラゾールの経口投与を開示している。この参考文献は投与するオメプラゾール溶液の最終濃度を教示していないが、薬剤の分解を防止するために重炭酸ナトリウムを同時に投与する必要性を強調している。
Nakagawa他、Lansoprazole:Phase I Study of lansoprazole (AG-1749) Anti-ulcer Agent、J. CLIN. THERAPEUTICS & MED.(1991)は、100mlの重炭酸ナトリウム(0.3mg/ml)の中に懸濁させた30mgのランソプラゾールの経口投与を教示している。これは経鼻胃管を通して患者に投与された。
【0045】
これらの参考文献に記載されている緩衝化オメプラゾール溶液のすべては経口投与され、そして経口投与量を摂取できる健康な被検体に与えられた。これらの研究のすべてにおいて、投与の間に酸感受性オメプラゾールを保護するために、pH緩衝剤として、重炭酸ナトリウムを含む溶液の中にオメプラゾールは懸濁された。これらの研究のすべてにおいて、投与経路を介して与えられたオメプラゾールの酸分解を防止するために、オメプラゾール投与の前、間、および後に重炭酸ナトリウムの反復投与を必要とした。上に引用した研究において、単一投与量のオメプラゾールを経口投与するために、300mlの水中の48mmol程度に多い重炭酸ナトリウムを摂取しなくてはならなかった。
【0046】
上に引用した先行技術の緩衝化オメプラゾール溶液は、反復投与により、大量の重炭酸ナトリウムおよび大きい体積の水の摂取を必要とする。これはオメプラゾールの酸分解を防止するために必要であると考えられた。上に引用した研究において、投与前および投与後に大きい体積の重炭酸ナトリウムで緩衝化オメプラゾールを希釈した物を、病気の患者よりむしろ、基本的に健康なボランティアに与えた。
【0047】
大量の重炭酸ナトリウムの投与は、少なくとも6つの悪い作用を産生することがあり、これは患者におけるオメプラゾールの効能を劇的に減少させ、患者の全体的健康を減少させる。第1に、これらの投与プロトコルの流体体積は、オメプラゾールの多数回投与を受ける病気の患者または重症患者に適当ではなかった。大きい体積は胃を拡張させ、重症患者における合併症、例えば、胃内容物の吸引の可能性を増加する。
【0048】
第2に、重炭酸塩は通常胃において中和されるか、あるいは吸収され、こうしておくびを生じ、おくびは胃酸の上方運動を引き起こすことがあるので、胃食道逆流の患者は逆流疾患を増悪または悪化することがある(Brunton、Agents for the Control of Gastric Acidity and Treatment of Peptic Ulcers,In,Goodman AG、他、The Pharmacologic Basis of Therapeutics(New York、p. 907(1990))。
第3に、ナトリウムは高血圧症を悪化または増悪させるので、高血圧症または心不全のような症状を有する患者は標準的に過剰のナトリウムの摂取を回避するように忠告される(Brunton、前掲)。大量の重炭酸ナトリウムの摂取は、この忠告と矛盾する。
【0049】
第4に、典型的には重症の病気を伴う多数の症状を有する患者は、過剰の重炭酸ナトリウムの摂取を回避すべきである。なぜなら、重炭酸ナトリウムは患者の症状の重大な悪化を引き起こす代謝的アルカローシスを生ずることがあるからである。
第5に、過剰の抗酸摂取(例えば、重炭酸ナトリウム)は、重大な悪い作用を生成する薬剤相互作用を生ずることがある。例えば、胃および尿のpHを変更することによって、抗酸は薬剤の溶解および吸収の速度、および腎排泄を変更することがある(Brunton、前掲)。
【0050】
第6に、先行技術の緩衝化オメプラゾール溶液は重炭酸ナトリウムの延長した投与を必要とするので、患者が先行技術の養生法に従うことを困難とする。例えば、Pilbrant他は、少なくとも10時間断食した被検体に50mlの水中の重炭酸ナトリウムの8mmolの溶液を投与することを必要とする、オメプラゾールの経口投与プロトコルを開示している。5分後、被検体は、また、8mmolの重炭酸ナトリウムを含有する50mlの水中の60mgのオメプラゾールの懸濁液を摂取する。これを他の50mlの8mmolの重炭酸ナトリウム溶液でリンスする。オメプラゾール投与の摂取後10分に、被検体は50mlの重炭酸塩溶液(8mmol)を摂取する。
【0051】
これをオメプラゾール投与後20分および30分に反復して、合計48mmolの重炭酸ナトリウムおよび合計300mlの水を生じさせ、これらを単一オメプラゾール投与で被検体は摂取する。この養生法は、ある患者にとって危険である、過剰量の重炭酸塩および水を必要とするばかりでなく、かつまた健康な患者でさえこの養生法に従わないであろう。
【0052】
薬剤投与の複雑なスケジュールに従うことを要求される患者は非応諾的であり、こうして、先行技術の緩衝化オメプラゾール溶液の効能は非コンプライアンスのために減少することが期待されることが十分に文献に記載されている。1または2回(通常朝および夜)の投薬/日のスケジュールから偏ることを患者に要求するとき、コンプライアンスは顕著に減少することが見出された。多数の工程、すなわち、異なる薬剤(重炭酸ナトリウム+オメプラゾール+PEG 400/重炭酸ナトリウム単独)、および効率よい結果を達成するための全オメプラゾール養生法の各段階間の特定の時間的分配、を有する投与のプロトコルを必要とする、先行技術の緩衝化オメプラゾール溶液の使用は、現在の薬剤コンプライアンス理論およびヒトの特質の両方に対して明らかに対照的である。
【0053】
先行技術(Pilbrant他、1985)は、緩衝化オメプラゾール懸濁液を冷蔵庫の温度において1週間、そして低温凍結で1年間貯蔵することができると同時に、その初期効力の99%を維持することができることを教示している。先行技術の期間を超える期間にわたって室温においてまたは冷蔵庫中で貯蔵できると同時に、その初期効力の99%を維持することができる、オメプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビターの溶液または懸濁液を得ることは望ましいであろう。さらに、室温において改良された貯蔵寿命、低い生産コスト、低い輸送コストの利点を提供し、かつ貯蔵が安価である、固体形態で供給される、本発明のオメプラゾール溶液/懸濁液を即時に調製するために利用できる、オメプラゾールおよび重炭酸塩の形態を得ることは好都合であろう。
【0054】
したがって、H2レセプターアンタゴニスト、抗酸、およびスクラルフェートの悪い作用のプロファイルを発生しないで、前述の症状を治療する原価効率的手段を提供する、プロトンポンプインヒビター処方物を得ることは望ましいであろう。さらに、急速に吸収され、かつ液体または固体の形態として経口的または腸内に送出すことができる、調製が好都合であり、かつ固体の投与形態、例えば、錠剤またはカプセル剤を摂取することができない患者に投与することができる、プロトンポンプインヒビター処方物を得ることは望ましいであろう。液体フィラメントは留置管、経鼻胃管または他の小さい管を詰まらせず、かつ送出すと即時に抗酸として作用することが望ましい。
【0055】
さらに、PPIの薬理学的活性のポテンシエイターまたはエンハンサーを得ることは好都合であろう。壁細胞が活性であるとき、PPIはH+,K+−ATPアーゼに対して作用をはじめて発揮することができると、出願人は理論づけた。したがって、出願人は、後述するように、PPI活性を相乗的に増強するために投与する壁細胞アクチベーターを同定した。
【0056】
さらに、先行技術のPPIの静脈内投与形態は、経口形態よりも大きい投与量でしばしば投与される。例えば、オメプラゾールの典型的な成人のIV投与量は100mg/日より大きいが、成人の投与量は20〜40mg/日である。大きいIV投与量は所望の薬理学的効果を達成するために必要である。なぜなら、口により経口物質を摂取しない(npo)患者に与えられたIV投与量間に、多数の壁細胞は休止期にあり(大部分不活性であり)、したがって、阻害すべきわずかに活性の(分泌小管膜の中に挿入される)H+,K+−ATPアーゼが存在すると考えられるからである。IV投与量対経口投与に必要な薬剤の量の明瞭な相違のために、有意により少ない薬剤を必要とするIV投与量のための組成物および方法を得ることは非常に好都合であろう。
【発明の開示】
【0057】
前述の利点および目的は本発明により達成される。本発明は、プロトンポンプインヒビターと、少なくとも1種の緩衝剤とを含んでなる経口溶液/懸濁液を提供する。PPIは、H+,K+−ATPアーゼ阻害活性を有しかつ酸に対して不安定である、任意の置換ベンズイミダゾール化合物であることができる。オメプラゾールおよびランソプラゾールは、それぞれ、少なくとも1.2mg/mlおよび0.3mg/mlの濃度で経口懸濁液において使用するために好ましいPPIである。液状経口組成物は、壁細胞アクチベーター、泡消剤および/または香味剤をさらに含むことができる。
【0058】
本発明の組成物は、選択的に、粉末、錠剤、懸濁錠剤、咀嚼可能な錠剤、カプセル剤、発泡性粉末、発泡性錠剤、ペレットおよび顆粒として処方することができる。このような投与形態は、腸溶性コーティングまたは遅延または持続放出送出メカニズムを欠くことが好都合であり、そしてPPIと、酸分解に対してPPIを保護する少なくとも1種の緩衝剤とを含んでなる。液体投与形態において、乾燥形態はさらに泡消剤、壁細胞アクチベーターおよび香味剤を含むことができる。
【0059】
また、乾燥形態から液体組成物を容易に調製するための、本発明の乾燥投与形態を開示する。
本発明によれば、プロトンポンプインヒビターと、薬学上許容される担体と、少なくとも1種の緩衝剤とを含んでなる医薬組成物を患者に投与することによって、胃酸障害を治療する方法が提供され、ここで投与ステップは緩衝剤をそれ以上投与しないで患者に組成物を1回投与することを含む。
さらに、本発明は、静脈内投与されたプロトンポンプインヒビターの薬理学的活性を増強する方法を提供し、この方法において、プロトンポンプインヒビターの静脈内投与の前、間および/または後に少なくとも1種の壁細胞アクチベーターを患者に投与する。
【0060】
本発明の他の利点は、添付図面と組合わせて考慮するとき、下記の詳細な説明を参照することによってよりよく理解できるようになるので、容易に認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
一般に、本発明は、1種またはそれ以上の壁細胞アクチベーターを含むか、あるいは含まない、プロトンポンプインヒビターと、緩衝剤とを含んでなる医薬組成物に関する。本発明を多数の異なる形態で具体化することができるが、いくつかの特定の態様を本明細書において論ずる。ここで、本発明の開示は本発明の原理の例示としてのみ考慮すべきであり、例示される態様に本発明を限定することを意図しないことを理解すべきである。
【0062】
この出願の目的のために、用語「プロトンポンプインヒビター」(PPI)は、H+,K+−ATPアーゼのインヒビターとして薬理学的活性を有する任意の置換ベンズイミダゾールを意味し、下記のものを包含するが、これらに限定されない:中性または塩の形態のオメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、ドントプラゾール、パープラゾール(s−オメプラゾールマグネシウム)、ハベプラゾール、ランソプラゾール、パリプラゾール、およびレミノプラゾール、それらの単一の対掌体または異性体または他の誘導体またはアルカリ性塩。
【0063】
本発明の組成物は、プロトンポンプインヒビターの乾燥処方物、溶液および/または懸濁液を含んでなる。本明細書において使用するとき、用語「懸濁液」および「溶液」は互いに互換的であり、そして置換ベンズイミダゾールの溶液および/または懸濁液を意味する。
【0064】
PPIの吸収(または静脈内投与)後、薬剤は血流を介して壁細胞を包含する体の種々の組織および細胞に送出される。研究により示唆されるように、PPIは弱塩基の形態であり、イオン化されておらず、これにより壁細胞の細胞膜を包含する、生理学的膜を自由に通過する。非イオン化PPIは壁細胞の酸分泌部分、分泌小管の中に動くと考えられる。分泌小管の酸性媒質の中にいったん入ると、PPIは明らかにプロトン化(イオン化)し、薬剤の活性形態に変換される。一般に、イオン化プロトンポンプインヒビターは膜不透過性であり、プロトンポンプのアルファサブユニット中のシステイン残基とジサルファイド二重結合を形成する。
【0065】
プロトンポンプインヒビター、例えば、オメプラゾール、ランソプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビターおよびそれらの誘導体を含んでなる本発明の医薬組成物は、下記のものを包含するが、これらに限定されない胃腸の症状の治療または予防に使用することができる:活性十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃食道逆流性疾患(GERD)、重度の浸蝕性食道炎、低応答性全身的GERD、および病理学的分泌過多症状、例えば、ゾリンジャー−エリソン症候群。これらの症状の治療は、有効量の本発明による医薬組成物を患者に投与することによって達成される。
【0066】
プロトンポンプインヒビターは、すぐれた医学的実施に従い、個々の患者の臨床的症状、投与の部位および方法、投与のスケジュール、および医学的実施者に知られている他の因子を考慮して投与される。用語「有効量」は、この分野において知られている考察と一致して、不都合な悪い副作用を発生させないで、薬理学的効果または療法上の改善を達成するために有効なPPIまたは他の薬剤の量を意味する。このような薬理学的効果または療法上の改善は下記のものを包含するが、これらに限定されない:胃のpHの上昇、胃腸出血の減少、輸血の必要性の減少、生存率の改善、いっそう急速な回復、壁細胞の活性化およびH+,K+−ATPアーゼの阻害または症候群の改善または排除、および当業者により適当な測度として選択される、他のインジケーター。
【0067】
オメプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビター、例えば、置換ベンズイミダゾールおよびそれらの誘導体の投与量範囲は、約<2mg/日〜約300mg/日の範囲であることができる。標準的投与量は、典型的には20mgのオメプラゾール、30mgのランソプラゾール、40mgのパントプラゾール、20mgのラベプラゾール、および薬理学的同等量の下記のPPI:ハベプラゾール、パリプラゾール、ドントプラゾール、ランソプラゾール、パープラゾール(s−オメプラゾールマグネシウム)、およびレミノプラゾール。
【0068】
本発明において利用するプロトンポンプインヒビターの医薬処方物は、患者の経口的にまたは腸内に投与することができる。これは、例えば、GI管の中に配置された経鼻胃(ng)管または他の留置管を介して溶液を投与することによって達成することができる。大量の重炭酸ナトリウムに関連する決定的な欠点を回避するために、本発明のPPI溶液を単一投与量で投与し、単一投与量は重炭酸塩、大量の重炭酸塩、またはPPI溶液の投与後の他の緩衝剤を必要とせず、全体として大量の重炭酸塩または緩衝剤を必要としない。
【0069】
すなわち、上に概説した先行技術のPPI溶液および投与プロトコルと異なり、PPI投与前または後に重炭酸塩の投与を必要としない単一投与量で本発明の処方物を与える。本発明は、追加の体積の水および重炭酸ナトリウムの前投与または後投与の必要性を排除する。本発明の単一投与量の投与を介して投与される重炭酸塩の量は、上に引用した先行技術の参考文献において教示されている重炭酸塩の投与量より少ない。
【0070】
経口液体の調製
本発明の液体経口医薬組成物は、オメプラゾール(PrilosecTM AstraZeneca)または他のプロトンポンプインヒビターまたはそれらの誘導体を、少なくとも1種の緩衝剤を含む溶液(前述したように、壁細胞アクチベーターを含むか、あるいは含まない)と混合することによって調製される。好ましくは、カプセル剤または錠剤から、または非経口投与のための溶液から得ることができる、オメプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビターを重炭酸ナトリウム溶液と混合して、所望の最終オメプラゾール(または他のPPI)濃度を達成する。1例として、溶液中のオメプラゾール濃度は約0.4mg/ml〜約10.0mg/mlの範囲であることができる。溶液中のオメプラゾールの好ましい濃度は約1.0mg/ml〜約4.0mg/mlの範囲であり、2.0mg/mlは標準的濃度である。ランソプラゾール(PrevacidTM TAP Pharmaceuticals,Inc.)について、濃度は約0.3mg/ml〜10mg/ml、好ましくは約3mg/mlの範囲であることができる。
【0071】
重炭酸ナトリウムは酸分解に対してPPIを保護するために本発明において使用する好ましい緩衝剤であるが、多数の他の弱塩基および強塩基(およびそれらの混合物)を利用することができる。この出願の目的に対して、「緩衝剤」は任意の薬学上適当な弱塩基または強塩基(およびそれらの混合物)を意味し、これらはPPIとともに処方するか、または送出すとき(例えば、前、間および/または後に)、投与したPPIのバイオアベイラビリティを保存するために十分に、胃酸によるPPIの酸分解を実質的に防止または抑制する機能をする。緩衝剤は、上記機能を実質的に達成するために十分な量で投与される。したがって、本発明の緩衝剤は、胃酸の存在下に、治療作用を実行する薬剤の適切なバイオアベイラビリティを達成するために十分に、胃のpHを上昇させなくてはならない。
【0072】
したがって、緩衝剤の例は下記のものを包含するが、これらに限定されない:重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、マグネシウムグルカメート、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈物質、アミノ酸と緩衝剤との混合物、アルミニウムグリシネートと緩衝剤との混合物、アミノ酸の酸塩と緩衝剤との混合物、およびアミノ酸のアルカリ塩と緩衝剤との混合物。
【0073】
追加の緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、および他のカルシウム塩を包含する。
【0074】
経口液体の薬学上許容される担体は緩衝剤として好ましくはIA族金属の重炭酸塩を含んでなり、そしてIA族金属の重炭酸塩、好ましくは重炭酸ナトリウムを水と混合することによって調製することができる。組成物中のIA族金属の重炭酸塩の濃度は、一般に約5.0%〜約60.0%の範囲である。好ましくは、IA族金属の重炭酸塩の濃度は約7.5%〜約10.0%の範囲である。本発明の好ましい態様において、重炭酸ナトリウムは好ましい塩であり、約8.4%の濃度で存在する。
【0075】
さらに詳しくは、本発明の溶液中で使用する重炭酸ナトリウムの8.4%の量は、約1mEq(またはmmol)の重炭酸ナトリウム/2mgのオメプラゾールであり、約0.2mEq(またはmmol)〜5mEq(またはmmol)/2mgのオメプラゾールの範囲である。 本発明の好ましい態様において、腸溶被覆オメプラゾール粒子は放出遅延カプセル剤(PrilosecTM AstraZeneca)から入手される。選択的に、オメプラゾール粉末を使用することができる。腸溶被覆オメプラゾール粒子を重炭酸ナトリウム(NaHCO3)溶液(8.4%)と混合し、この溶液は腸溶性コーティングを溶解し、オメプラゾール溶液を形成する。
【0076】
オメプラゾール溶液は標準的時間放出オメプラゾールカプセル剤を超えた下記の利点を有する:(a)オメプラゾール溶液の投与後におけるより速い薬剤吸収時間(約10〜60分)、これに対して腸溶被覆ペレットの投与後における約1~3時間の吸収時間;(b)NaHCO3溶液は吸収前における酸分解からオメプラゾールを保護する;(c)オメプラゾールが吸収されている間、NaHCO3は抗酸として作用する;そして(d)溶液は、詰まりなしに、存在する留置管、例えば、小さい孔の針カテーテル供給管を包含する、経鼻胃管または他の供給管(空腸または十二指腸)を通して投与することができる。
【0077】
さらに、種々の添加剤を本発明の溶液に添加して、その安定性、無菌性および等張性を増強することができる。さらに、抗菌保存剤、酸化防止剤、キレート化剤、および追加の緩衝剤、例えば、アンビシンを添加することができる。しかしながら、微生物学的証拠は、この処方は固有に抗菌活性および抗真菌活性を有することを示す。種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびその他は微生物の作用の防止を増強することができる。
【0078】
多数の場合において、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、およびその他を添加することが望ましいであろう。さらに、増粘剤、例えば、メチルセルロースを使用して、オメプラゾールまたは他のPPIまたはそれらの誘導体が懸濁液から沈降するのを減少させることが望ましい。
液状経口溶液は、pH7〜9において安定な香味剤(例えば、チョコレート、ルートビヤーまたはスイカ)または泡消剤(例えば、80mgのシメチコン、MyliconTM)および壁細胞アクチベーター(後述する)をさらに含むことができる。
【0079】
さらに、本発明は、貯蔵のために好都合な形態の、オメプラゾールまたは他のプロトンポンプインヒビターと、少なくとも1種の緩衝剤とを含んでなる医薬組成物を包含し、これにより組成物を水溶液の中に入れるとき、組成物は溶解して、被検体への腸内投与に適当な懸濁液を生ずる。医薬組成物は、水溶液の中に溶解または懸濁する前において固体の形態である。オメプラゾールまたは他のPPIおよび緩衝剤を錠剤、この分野においてよく知られている方法により、カプセル剤、ペレットまたは顆粒に形成することができる。
【0080】
生ずるオメプラゾール溶液は室温において数週間安定であり、下記の実施例Xに示すように細菌または真菌の増殖を阻害する。事実、実施例XIIIにおいて確立されたように、溶液は12月間その効力の90%より多くを維持する。後に処方量の水溶液の中に溶解または懸濁させてオメプラゾールおよび緩衝剤を所望濃度することができる、固体形態のオメプラゾールまたは他のPPIおよび緩衝剤を含む医薬組成物を提供することによって、製造、輸送、および貯蔵のコストを大きく減少させることができる。なぜなら、液体を輸送せず(重量およびコストの減少)、固体形態の組成物または溶液を冷蔵する必要がないからである。いったん混合されると、生ずる溶液を使用して、経時的に単一患者に、または複数の患者に、投与することができる。
【0081】
錠剤または他の固体の投与形態
前述したように、本発明の処方物は、また、濃縮された形態、例えば、錠剤、懸濁錠剤および発泡性錠剤または粉末で製造することができ、このような水または他の希釈剤と反応すると、本発明の水性形態は経口、腸内または非経口投与のために調製される。
【0082】
本発明の薬学的錠剤または他の固体の投与形態は水性媒質中で急速に崩壊し、最小に震盪または撹拌するとPPIおよび緩衝剤の水溶液を形成する。このような錠剤は、普通に入手可能な物質を利用し、これらおよび他の望ましい目的を達成する。本発明の錠剤または他の固体の投与形態は、水中で低い溶解度を有することができるPPIの精確な投与量を提供する。それらは、錠剤を嚥下または咀嚼するよりも非常にいっそう許容される方法で、子供および中年過ぎの人およびその他に投薬するために特に有用である。製造される錠剤は砕けやすさが低く、こうして輸送が容易である。
【0083】
用語「懸濁錠剤」は、それらを水の中に入れた後、急速に崩壊し、容易に分散して、精確な投与量のPPIを含有する懸濁液を形成する、圧縮された錠剤である。本発明の懸濁錠剤は、組合わせで、治療量のPPI、緩衝剤、および崩壊剤を含んでなる。さらに詳しくは、懸濁錠剤は約20mgのオメプラゾール、および約1〜20mEqの重炭酸ナトリウムを含んでなる。
クロスカルメロースナトリウムは錠剤処方物のための既知の崩壊剤であり、FMCコーポレーション(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から商標Ac−Di−SolTMで入手可能である。それは、錠剤を急速崩壊性するために、圧縮錠剤の中に単独で、または微結晶質セルロースと組合わせてしばしば配合される。
【0084】
微結晶質セルロースは、単独で、他の成分と共に圧縮され、また、圧縮錠剤のための普通の添加剤であり、錠剤物質の圧縮性または圧縮困難性を改良する能力を有することは知られている。それは商標AvicelTMで商業的に入手可能である。下記の2つの異なるAvicelTM製品が利用される:AvicelTM PH、これは微結晶質セルロースである、およびAvicelTM AC−815、これは微結晶質セルロースとカルシウム、ナトリウムアルギネート複合体との共圧縮噴霧乾燥残留物であり、ここでカルシウム/ナトリウムの比は約0.40:1〜約2.5:1の範囲である。
【0085】
AC−815は85%の微結晶質セルロース(MCC)と、15%のカルシウム、ナトリウムアルギネート複合体とから構成されているが、本発明の目的に対して、この比は約75%のMCC〜25%のアルギネートから約95%のMCC〜5%のアルギネートまでの間で変化することができる。特定の処方物および活性成分に依存して、これらの2つの成分ほぼ等しい量または異なる量で存在することができ、そして錠剤の約10〜約50重量%を構成することができる。
【0086】
懸濁錠剤組成物は、前述の成分に加えて、薬学的錠剤においてしばしば使用される他の成分を含有し、このような成分は、当業者にとって明らかであるように、香味剤、甘味剤、流れ助剤、滑剤または他の普通錠剤アジュバントを包含する。他の成分を使用することができるが、クロスカルメロースナトリウムは好ましい。 懸濁錠剤に加えて、本発明の固体処方物は、粉末、錠剤、カプセル剤、または他の適当な固体投与形態(例えば、ペレット化形態または発泡性錠剤、トローチ剤または粉末)の形態であることができ、これらは希釈剤の存在下にまたは摂取したとき本発明の溶液をつくる。例えば、胃分泌物中の水または固体投与形態を嚥下するために使用する水は水性希釈剤として働く。
【0087】
圧縮錠剤は、活性成分と、プロセシングを促進しかつ製品の特性を改良するように選択された賦形剤とを含有する処方物を圧縮することによって製造された固体投与形態である。用語「圧縮錠剤」は、単一圧縮により、またはタッピングを前圧縮し、次いで最終圧縮により製造された、プレーンの、未被覆の経口用錠剤を一般に意味する。
【0088】
このような固体形態は、この分野においてよく知られているように、製造することができる。錠剤形態は、例えば、1種またはそれ以上のラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、微結晶質セルロース、アカシアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、および薬学的に適合性の担体を含む。製造プロセスは、4つの確立された方法の1つ、または組合わせを使用することができる:(1)乾式;(2)直接的圧縮;(3)微粉砕;および(4)非水性造粒。Lachman他、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(1986)。このような錠剤は、また、薄膜コーティングを含み、これらは好ましくは経口的摂取または希釈剤との接触時に溶解する。
【0089】
このような錠剤において利用できる緩衝剤の非限定的例は、重炭酸ナトリウム、アルカリ土類金属塩、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムマグネシウムを包含する。抗酸錠剤の製造に有効な特定のアルカリ土類金属塩は炭酸カルシウムである。
【0090】
本発明による顆粒の製造に有効な低密度アルカリ土類金属塩の1例は、スペシャルイ・ミネラルズ・インコーポレーテッド(Specialty Minerals Inc.、メイン州アダムス)から入手可能である特別に軽質の炭酸カルシウムである。特別に軽質の炭酸カルシウムは、本発明に従いプロセシングする前において、約0.37g/mlである。
本発明の1つの態様に従う錠剤の製造に使用する顆粒は、原料を噴霧乾燥または前圧縮することによって製造される。いずれかのプロセスにより顆粒にプロセシングする前において、本発明において有効なアルカリ土類金属塩の密度は約0.3g/ml〜約0.55g/ml、好ましくは約0.35g/ml〜約0.45g/ml、より好ましくは約0.37g/ml〜約0.42g/mlの範囲である。
【0091】
さらに、本発明は、顆粒または粉末の代わりに微小化化合物を利用することによって製造することができる。微小化は、固体薬剤粒子のサイズを減少させるプロセスである。溶解速度は固体野表面積に直接比例し、かつ粒度の減少は表面積を増加させるので、粒度の減少は溶解速度を増加させる。微小化は表面積を増加させ、多分粒子の凝集を引き起し、これは微小化の利益を無効にし、費用のかかる製造工程であるが、それは比較的水不溶性の薬剤、例えば、オメプラゾールおよび他のプロトンポンプインヒビターの溶解速度を増加させるという有意な利益を事実有する。
【0092】
本発明は、また、混合および投与を容易とする投与キットに関する。例えば、粉末または錠剤の口供給物は、希釈剤の別々の口供給物、および再使用可能なプラスチック投与カップを使用して包装することができる。さらに詳しくは、パッケージは、各々20mgのオメプラゾールの30の懸濁錠剤、1リットルの重炭酸ナトリウムの8.4%の溶液、および30mlの投与カップを含有することができるであろう。ユーザーは錠剤を空のカップに入れ、それに30mlのしるしまで重炭酸ナトリウムを充填し、それが溶解するまで待ち(おだやかな撹拌またはかきまぜを使用することができる)、次いで懸濁液を摂取する。
【0093】
当業者は理解するように、このようなキットは上記成分の多数の異なる変動を含有することができる。例えば、PPIおよび緩衝剤を含有するように錠剤または粉末に配合する場合、希釈剤は水、重炭酸ナトリウム、または他の適合性の希釈剤であることができ、そして投与カップのサイズは30mlより大きいことができる。また、このようなキットは単位投与形態で、または毎週、毎月、または毎年のキット、およびその他として包装することができる。
【0094】
本発明の錠剤は主として懸濁投与形態として意図されるが、錠剤の形成に使用する造粒法をまた使用して、急速に崩壊する咀嚼可能な錠剤、ロゼンジ、トローチ剤、または嚥下可能な錠剤を形成することができる。したがって、中間処方物ならびにそれらを製造するプロセスは、本発明の追加の新規な面を提供する。
また、発泡性錠剤および粉末を本発明に従い製造する。経口投与のために薬剤を水の中に分散するために、発泡性塩が使用されてきている。発泡性塩は、通常重炭酸ナトリウム、クエン酸および酒石酸から構成された、乾燥混合物で薬剤を含有する顆粒または粗い粉末である。塩を水に添加するとき、酸および塩基は反応して二酸化炭素ガスを遊離し、これにより「発泡」を引き起こす。
【0095】
発泡性顆粒のための成分の選択は、製造プロセスの要件、および水中に急速に溶解する調製物を調製する必要性に依存する。2つの必要な成分は、少なくとも1種の酸および少なくとも1種の塩基である。塩基は酸と反応するとき、二酸化炭素を放出する。このような酸の例は、酒石酸およびクエン酸を包含するが、これらに限定されない。好ましくは、酸は酒石酸およびクエン酸の両方の組合わせである。塩基の例は、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムおよび重炭酸ナトリウムである。好ましくは、塩基は重炭酸ナトリウムであり、そして発泡性組合わせは約6.0またはそれより高いpHを有する。
【0096】
発泡性塩は好ましくは実際に発泡を生成する下記の成分である:重炭酸ナトリウム、クエン酸および酒石酸。水に添加するとき、酸および塩基は反応して二酸化炭素を遊離し、発泡を生ずる。成分が薬学的使用に適当であり、かつ約6.0またはそれより高いpHを生ずるかぎり、重炭酸ナトリウムおよびクエン酸および酒石酸の代わりに、二酸化炭素を遊離する任意の酸−塩基の組合わせを使用できることに注意すべきである。
【0097】
1分子のクエン酸を中和するために3分子のNaHCO3(重炭酸ナトリウム)を必要とし、そして1分子の酒石酸を中和するために2分子のNaHCO3を必要とすることに注意すべきである。成分の概算比は次の通りであることが望ましい:クエン酸:酒石酸:重炭酸ナトリウム=1:2:3.44(重量による)。この比は変化させ、そして二酸化炭素の有効放出を生成し続けることができる。例えば、約1:0:3または0:1:2の比もまた有効である。
【0098】
本発明の発泡性顆粒を製造する方法において、3つの基本的プロセスを使用する:湿式および乾式造粒法、および融合。大部分の商業的発泡性粉末の製造に、融合法を使用する。これらの方法は顆粒の製造に意図されるが、錠剤製造によく知られている先行技術に従い、本発明の発泡性塩の処方物を製造することもできることに注意すべきである。
湿潤造粒法は、最も篩顆粒製造法である。錠剤を製造する湿潤造粒プロセスにおける個々の工程は、成分の微粉砕および篩分け;乾式粉末混合;湿式集合;造粒;および最終粉砕。
【0099】
乾式造粒法は、粉末混合物を粗い錠剤または「スラグ」に強力回転錠剤プレス上で圧縮することを含む。次いでスラグを粉砕操作により、通常振動造粒装置に通過することによって、顆粒粒子に破壊する。個々の工程は、粉末の混合;圧縮(スラグ化);および粉砕(スラグのサイズ減少または造粒)を包含する。いずれの工程においても、湿潤結合剤または湿気は含まれない。
融合法は、本発明の顆粒を製造する最も好ましい方法である。この方法において、乾式造粒プロセスの圧縮(スラグ化)工程は排除される。その代わりに、粉末を炉内または他の適当な熱源で加熱する。
【0100】
壁細胞アクチベーターを使用するPPI投与
ある種の化合物、例えば、チョコレート、カルシウム、重炭酸ナトリウムおよび他のアルカリ性物質は壁細胞を刺激し、投与されたPPIの薬理学的活性を増強することを、出願人は予期せざることには発見した。この出願の目的に対して、「壁細胞アクチベーター」は、このような刺激作用を有する任意の化合物または化合物の混合物を意味し、下記のものを包含するが、これらに限定されない:チョコレート、重炭酸ナトリウム、カルシウム(例えば、炭酸カルシウム、カルシウムグルカネート、水酸化カルシウム、酢酸カルシウムおよびグリセロリン酸カルシウム)、ペパーミント油、スペアミント油、コーヒー、茶およびコラ(脱カフェインした場合でさえ)、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、およびアミノ酸(特に芳香族アミノ酸、例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファン)およびそれらの組合わせおよびそれらの塩。
【0101】
このような壁細胞アクチベーターは、患者に対して不都合な副作用を引き起こさないで、所望の刺激作用を生成するために十分な量で投与される。例えば、チョコレートは、生のココアとして、約5mg〜2.5g/20mgのオメプラゾール(またはPPIの同等の薬理学的投与量)の量で投与される。本発明の関係において哺乳動物、特にヒトに投与されるアクチベーターの量は、合理的時間フレームにわたって治療的応答(すなわち、PPIの増強された作用)を発生させるために十分であるべきである。投与量は、使用する特定の組成物の強さおよび被検体の症状、ならびに治療すべき被検体の体重により決定されるであろう。また、投与量のサイズは、特定の組成物の投与に伴うことがある悪い副作用の存在、特質、および程度により決定されるであろう。
【0102】
オメプラゾールの20mgの投与量(または他のPPIの同等の投与量)当たり、種々の壁細胞アクチベーターについての概算有効投与量範囲は次の通りである:
チョコレート(生のココア) − 5mg〜2.5g
重炭酸ナトリウム − 7mEq〜25mEq
炭酸カルシウム − 1mg〜1.5g
カルシウムグルカネート − 1mg〜1.5g
乳酸カルシウム − 1mg〜1.5g
水酸化カルシウム − 1mg〜1.5g
酢酸カルシウム − 0.5mg〜1.5g
グリセロリン酸カルシウム − 0.5mg〜1.5g
ペパーミント油 − (粉末形態)1mg〜1g
スペアミント油 − (粉末形態)1mg〜1g
コーヒー − 20ml〜240ml
茶 − 20ml〜240ml
コーラ − 20ml〜240ml
カフェイン − 0.5mg〜1.5g
テオフィリン − 0.5mg〜1.5g
テオブロミン − 0.5mg〜1.5g
フェニルアラニン − 0.5mg〜1.5g
トリプトファン − 0.5mg〜1.5g
【0103】
薬学上許容される担体は、当業者によく知られている。担体の選択は、一部分、特定の組成物および組成物の投与に使用される特定の方法により決定されるであろう。したがって、本発明の医薬組成物の広範な種類の適当な処方が存在する。
【0104】
実施例1
A. オメプラゾール(Omeprazole)の高速崩壊錠剤
高速崩壊錠剤は次の様に調合される:300gのクロスカルメロース(Croscarmellose)ナトリウムを3.0kgの脱イオン水を含む、急速攪拌中のビーカーの渦に加える。このスラリーを10分間混合する。90gのオメプラゾール(粉末)をホバートミキサーのボウル内に入れる。混合後、クロスカルメロースナトリウムのスラリーをゆっくりミキサーボウル中のオペプラゾールに加え、顆粒を作り、次にこれをトレーに入れ、70℃にて3時間乾燥する。乾燥した顆粒を次にブレンダーに入れ、それに1,500gのAvicel(商標)AC-815(15%のカルシウム、アルギン酸ナトリウ複合体と同時加工された85%微結晶性セルロース)および1,500gのAvicel(商標)PH-302(微結晶性セルロース)を加える。
【0105】
この混合体を完全に混和した後、35gのステアリン酸マグネシウムを加え、5分間混合する。得られた混合体を標準的な錠剤プレス機(Hata HS)により錠剤に圧縮する。これらの錠剤は平均約1.5gの重量を持ち、約20mgのオメプラゾールを含む。これら錠剤は低破砕性と高速崩壊時間を有する。この配合は迅速経口投与に適した緩衝剤を含む水溶液に溶解してもよい。あるいは、懸濁錠剤全体を緩衝剤の溶液で膨潤させてもよい。いずれの場合も、好ましい溶液は8.4%重炭酸ナトリウム液である。さらに別の例では、重炭酸ナトリウム粉末(オメプラゾール20mg投与量または等効果量のその他PPI当たり約975mg)を直接錠剤中に配合する。次にこの様な錠剤は水または8.4%重炭酸ナトリウム液に溶解されるか、または希釈水により全体が膨潤される。
【0106】
B. 10mg錠剤の処方
オメプラゾール 10mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 175mg
グリセロリン酸カルシウム 175mg
重炭酸ナトリウム 250mg
アスパラギン酸カルシウム(フェニルアラニン) 0.5mg
コロイド状二酸化ケイ素 12mg
コーンスターチ 15mg
クロスカルメロースナトリウム 12mg
デキストロース 10mg
ペパーミント 3mg
マルトデキストリン 3mg
マンニトール 3mg
プレゲラチン化澱粉 3mg
【0107】
C. 20mg錠剤の処方
オメプラゾール 20mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 175mg
グリセロリン酸カルシウム 175mg
重炭酸ナトリウム 250mg
アスパラギン酸カルシウム(フェニルアラニン) 0.5mg
コロイド状二酸化ケイ素 12mg
コーンスターチ 15mg
クロスカルメロースナトリウム 12mg
デキストロース 10mg
ペパーミント 3mg
マルトデキストリン 3mg
マンニトール 3mg
プレゲラチン化澱粉 3mg
【0108】
D. 急速崩壊用錠剤
オメプラゾール 20mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 175mg
グリセロリン酸カルシウム 175mg
重炭酸ナトリウム 500mg
水酸化カルシウム 50mg
クロスカルメロースナトリウム 12mg
【0109】
E. 経口使用向け溶解調製用粉末(または経鼻胃管による)
オメプラゾール 20mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 175mg
グリセロリン酸カルシウム 175mg
重炭酸ナトリウム 500mg
水酸化カルシウム 50mg
グリセリン 200mg
【0110】
F. 10mg錠剤の処方
オメプラゾール 10mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 175mg
グリセロリン酸カルシウム 175mg
重炭酸ナトリウム 250mg
ポリエチレングリコール 20mg
クロスカルメロースナトリウム 12mg
ペパーミント 3mg
ケイ酸マグネシウム 1mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
【0111】
G. 10mg錠剤の処方
オメプラゾール 10mg(または等効果量のランソプラゾールあるいはパントプラゾール、またはその他PPI)
乳酸カルシウム 200mg
グリセロリン酸カルシウム 200mg
重炭酸ナトリウム 400mg
クロスカルメロースナトリウム 12mg
プレゼラチン化澱粉 3mg
【0112】
実施例2
PPIおよび緩衝剤の標準的錠剤
標準的錠剤圧縮法を用いて、各錠剤が錠剤全体に分散した約20mgのオメプラゾールと約975mgの重炭酸ナトリウムを含む10個の錠剤を調製した。錠剤の溶解速度を試験するために、各錠剤を60mlの水に加えた。事前に光学的コンパレーターとして調製しておいた液体オメプラゾール/重炭酸ナトリウム溶液を用いたところ、各錠剤が3分以内に完全に分散することが観察された。
【0113】
本実施例による錠剤化合物を用いた別の試験では、5人の成人臨床治療患者に於ける錠剤の生物活性が評価された。各被験者には少量の水と共に1錠の錠剤が経鼻胃的に投与され、そして試験紙をつかって経鼻胃吸飲液のpHがモニターされた。各患者のpHは6時間にわたり評価され、4以上に保たれたことから、これら患者に於ける錠剤の治療有効性が示された。
【0114】
錠剤はまた、ナイフを使って重炭酸ナトリウムUSP975mg錠剤の中央部を中ぐりすることによっても調製された。次に取り除かれた重炭酸ナトリウムの粉の大部分は20mgのPrilosec(商標)カプセルの内容物と共に粉末にされ、そして得られた混合体は錠剤の孔に詰め込まれ、グリセリンで密封された。
【0115】
実施例3PPI中心コア錠剤
錠剤は2段階工程にて調製される。第1に、約20mgのオメプラゾールが当分野にて中心コアとして使用されることが既知である様な錠剤に成形される。第2に約975mgの重炭酸ナトリウムUSPを用いて中心コアを均一に包み、重炭酸ナトリウムの外保護カバーを形成する。中心コアと外カバーは共に標準的結合剤およびその他賦形剤を用い調製され、完成した医薬品として許容される錠剤が作られる。
【0116】
実施例4発泡性錠剤および顆粒
20mgのPrilosec(商標)カプセル1個分の顆粒を乳鉢に入れ、乳棒を使って粉砕し微細粉末にした。次にオメプラゾール粉末を約958mgの重炭酸ナトリウムUSP、約832mgのクエン酸USPおよび約312mgの炭酸カリウムUSPを用いて幾何学的に希釈し、発泡性オメプラゾール粉末の均一混合体を作った。次にこの粉末を約60mlの水に加えると、それによって粉末は水と反応して発泡した。発泡液はオメプラゾール、および主にクエン酸ナトリウムおよびクエン酸カリウム制酸剤を生じた。次にこの液を1例の成人男性被験者に経口投与し、胃pHをpHydrion紙を用い測定した。結果は次の通りであった:
【0117】
測定時間 pH測定値
投与直前 2
投与後1時間 7
投与後2時間 6
投与後4時間 6
投与後6時間 5
投与後8時間 4
【0118】
製剤分野の当業者は、上記の成分比を用いることで大量の粉末が製造できること、およびその粉末が標準的結合剤および賦形剤を用い錠剤に圧縮成形できることを認識するだろう。この様な錠剤は次に水と混合され、発泡剤を活性化させ、所望の溶液が作られる。さらにオメプラゾールを30mgのランソプラゾール(または等効果投与量のその他PPI)に置き換えることができる。
【0119】
あるいは発泡性粉末および錠剤を、上記混合体を使用するもののより高いpHの溶液を生じさせるためにさらに200mgの重炭酸ナトリウムUSPを加えることで処方することもできる。さらに上記追加の200mgの重炭酸ナトリウムに代わって、100mgのグリセロリン酸カルシウムまたは100mgの乳酸カルシウムを使用することができる。同物質の組合せを加えることもできる。
【0120】
実施例5壁細胞活性化剤“チョコベース(Choco-Base)TM”製剤と有効性
子供は非典的症状を示す胃食道逆流症(GERD)に罹る。これら非典的症状の多くは、H2-拮抗剤、シスアプリドまたはスクラルフェートといった従来の薬ではコントロールが困難である。PPIは他の薬剤に比べ胃pHおよびGERDの症状をコントロールするのにより有効である。しかしPPIは低年齢の子供に容易に投与できる投与形状では提供されていない。この問題を解決するために、出願者はオメプラゾールまたはランソプラゾールを緩衝化チョコレート懸濁液(チョコベース(Choco-Base),をGERD症状を示す小児に使用した。
【0121】
出願者は以下記載の処方1に従い処方された実験的オメプラゾールまたはランソプラゾールチョコベース懸濁液を使って治療を受けた、1995年から1998年にミズリー−コロンビア大学に来院したGERDの子供をレトロスペクティブに評価した。対象となるデータは全て治療前/後(通常は>6ヶ月)に関する結論を引き出すのに十分な追跡情報を持つ患者のデータであった。この評価基準に合格した患者は25例であった。年齢幅は数週から5歳以上であった。大部分の患者はGERD症状を改善する試みに何度か失敗した経歴を持っていた。投薬歴からは多種多様な薬剤が試みられてきたことが示された。
【0122】
第1研究者はデータ収集の統一性に関し全ての診療記録をレビューした。大学の診療記録に不十分なデータが見つかった場合には、在所の1次医療を行った医師のオフィスにある診療記録をレビューし、データのフォローアップを試みた。それでもレビューできる情報が入手できない場合には、フォローアップのために家族に連絡をとった。それでもデータが入手できない場合には、その患者は不的確と判定された。
【0123】
患者の診療記録は詳細にレビューされた。記載されたデータは治療開始日、治療終了日および治療に対する反応以外の中止の理由であった。その他病気の様な患者人口統計もまた記録された。病気はGERDに関連する、あるいは増悪化する病気とそうでない病気とに大別された。
患者診療記録は治療に対する反応性について検討された。本例の患者は診療後に専門医に紹介された集団であること、そしてレトロスペクティブなレビューであることから、スコア、通院およびED訪問に基づいて兆候学を定量化することは困難であった。そのため出願者は診療記録を患者症状の全体的な変化に関する証拠について調べた。具体的には変化が改善に向かった、減少したまたは消失した時点に関するデータが調べられ、記録された。
【0124】
結果
今日まで合計33例の小児患者がミズリー−コロンビア大学において、上記堅濁液により治療を受けている。33例の患者の内9例は、いずれも開始、PPI治療による処置の期間、または結果に関するデータが不十分であったことから研究より除外された。その結果結論をだすのに十分なデータを持った24例の患者が残った。残った24例の患者の内18例が男で6例が女であった。PPI治療が実施された時点の年齢は2週齢から9歳の範囲であった。治療開始時の中央年齢は26.5ヶ月(平均37ヶ月)であった。初期、逆流は通常内視鏡により詳細に調べられ、pHプローブによって確認された。
【0125】
場合によってはpHプローブを省き内視鏡のみで逆流が調べられたが、これは通常別の外科手術時に併せて(最も多い例はT管または咽頭扁桃切除時)実施された。7例の患者がpHプローブを使ってGERDが確認されたが、一方pHプローブを実施した8例を含めた18例は内視鏡により逆流が確認された(下図1および2参照)。逆流は最も一般的には気管壁の丸石化により内視鏡的に診断され、数例の患者では喉頭および咽頭の丸石化も合併していた。6例の患者はpHによっても、または内視鏡によってもGERDの証拠を示さなかったが、症候学にのみ基づきPPI治療が試みられた。
【0126】
過去の医療歴がそれぞれの診療記録に認められた。10例の患者は逆流関連の診断を受けていた。その内もっとも多かったものは脳形成術、未熟児およびピエールロビン症候群であった。その他の診断にはシャルコーマリーツース病、ベロ心臓面症候群、ダウン症候群およびドジョージ症候群があった。非逆流性病歴も特定され、別々に記録された(下表2参照)。
【0127】
一般に患者は、在所の家庭医、小児科またはその他の小児医療専門家からの紹介患者であった。大部分の患者は1次診療医によって報告された治療法に対し難治性である上気道、副鼻腔炎、または再発性/慢性中耳炎の問題によりENTに紹介された。これら患者に最も一般的に見られた症状および徴候が記録され、照合された。全ての徴候および症状は6つの大分類に分けられた:(1)鼻;(2)耳;(3)呼吸器;(4)胃腸管;(5)睡眠関連;および(6)その他である。大部分の共通問題は最初の3分類のいずれか、または全てに該当した(下表1参照)。
【0128】
大部分の患者は過去に抗生物質、ステロイド、喘息治療薬およびその他診断に関連した治療の形の医療治療を受けていた。さらに9例の患者は過去に逆流治療を受けており、最も一般的には頭部を30°に持ち上げる、夕方の軽食の回避、カフェイン飲料の回避、ならびにシスアプライドやラニチジンといった保存的治療の形の治療であった(下図3参照)。
【0129】
この患者グループに使用されたプロトンポンプ阻害剤堅濁液はランソプラゾールまたはオメプラゾールのチョコベース堅濁液であった。投与は非常に均一で、患者は10または20mgのオメプラゾールおよび23mgのランソプラゾールの投薬を受けた。当初、治療を最初に作成した1996年4月の時点では10mgのオメプラゾールが用いられた。この初期段階には、当初10mg po qdのオメプラゾールで治療を受けた3例の患者が参加した。
【0130】
これら3例の患者は全員その後20mg po qdのオメプラゾールまたは23mg po 1dのランソプラゾールに増量された。残りの患者は30mgのランソプラゾールが用いられた1例を除き、全例20mgのオメプラゾールまたは23mgランソプラゾール治療qd(等効果投与量)が投与された。患者は1日1回、好ましくは多くの場合夜にそれぞれの投薬量を摂るよう指導された。 堅濁液は全てグリーンメドウズ(Green Meadows)にあるミズリー大学薬局により充填された。これにより再充填データから使用状況を把握できた。
【0131】
大部分の患者はチョコベースプロトンポンプ阻害剤堅濁液の1日1回投与に好ましく反応し且つ寛容であった。2例の患者にPPI堅濁液の使用に関連した副作用が記録された。1例の患者では、母親がゲップおよび嘔吐が増加したと報告したが、これは治療の失敗に関係すると考えられた。別の患者は、母親より少量の血便が報告された。この患者については、子供の血便が治療中止により迅速に改善され、その後続発症もなかったことから便検査が行わなかった。
【0132】
患者は臨床記録のレビューおよび診療記録のレビューに基づき次の一般分類に分類された:(1)改善;(2)不変;(3)失敗;および(4)未決定。フォローアップデータが不十分であった24例の患者の内18例は、PPI治療の開始により症状学的改善を示した(72%)。反応しなかった7例は分析され、群分された。3例が治療中症状学的および臨床所見上は不変であり、1例は治療中症状の悪化を訴え、1例は手術のための予防的処置として治療を受けており、そして2例は開始直後に治療を中止していた(図4参照)。
【0133】
結論が出る前に治療を中止した例、およびPPI治療が純粋に予防的処置として実施された例を除くと、残った患者の81%(17/21)がチョコベース堅濁液に反応した。このことは患者の19%(4/21)がPPI治療から明瞭な利益を得なかったことを意味している。これら全患者の内わずか4%が症状の悪化を訴えたのみであり、副作用は4%(1/21)であり、そして軽度の血便は治療の中止により完治した。
【0134】
考察
小児集団に於けるGERDは比較的多く、新生児のほぼ50%がこれに罹る。大部分の乳児は成長に伴う生理学的逆流でるが、小児期を通じて全子供の約5%が病的な逆流に罹る。最近多くのデータが、逆流が食道外域の原因要素となることを指摘している。GERDは特に副鼻腔炎、齲歯、中耳炎、喘息、無呼吸発作、覚醒、肺炎、気管支炎および咳に関係している。逆流はよく見られる症状であるが、逆流に関する治療、特に非外科的分野での治療には殆ど進歩がないと考えられている。
【0135】
小児集団に於けるGERDの標準的治療方法は、保存的治療からプロカイネティック剤よびH-2遮断薬治療の組み合わせに進歩しつつある。しかし多くの患者がこの治療プロトコールに反応せず、外科治療の候補になっている。成人ではPPI治療は胃食道逆流病の治療を受けた患者の90%で効果があった。小児集団ではH-2遮断薬に代わる方法としてプロトンポンプ阻害剤は良く研究されていない。この様にデータが不足していることが一因となり、低年齢者集団、特にカプセルまたは錠剤を燕下できない2歳以下の集団に好適な投与処方は存在していない。
【0136】
経口抗生物質、鬱血除去剤、抗ヒスタミン剤、H-2遮断薬、シスアプライド、メトクロプラミド等に用いられている様な、良好な口当たりを持つ真に液体の製剤(溶液または堅濁液)が望まれている。ラソプラニゾール顆粒(ゼラチンカプセルより取り出した)をアップルソースに振りかけて使用することは、食品医薬品局により小児ではなく、成人への薬物投与の代替法として承認されている。公開データは、小児に於けるランソプラゾール散布法の有効性についてのデータを欠いている。オメプラゾールは成人に於いて散布剤としての生物透過性について研究されており、標準的カプセルと比べた場合、同等の血清濃度を生じると考えられている。
【0137】
この場合も小児に於けるオメプラゾール散布の有効性に関するデータは無い。オメプラゾールの更なる利点は、キニン様のその風味である。アップルソース等のジュースに懸濁した場合でも、一粒でも咬めば医薬品の苦味が容易にする。この様な理由から出願者はランソプラゾールをチョコベースに使用することとした。パントプラゾールおよびラベプラゾールは腸溶性コート錠剤として容易に入手できる。現在米国内で入手できるプロトンポンプ阻害剤で小児に使用できるものは無い。この患者群に最適投与量については、幾つかの相反する意見がある。
【0138】
Israel D.らによる最近のレビューは、PPIの有効投与量は従来の報告量、即ち0.7mg/kgないし2または3mg/kgオメプラゾールより高いことを示唆している。PPIの毒性は>50mg/kgでさえ観察されないことから、投与量を更に高くすることに伴うリスクは殆どないと思われる。本レビューの所見に一致するミズリー大学での観察に基づき、出願者は毎日10mlのチョコベース懸濁液の簡便な固定投与量処方を確立した。この10mlの投与により20mgのオメプラゾールおよび23mgランソプラゾールが与えられた。
【0139】
ICUの場合は、ミズリー−コロンビア大学ではストレス性潰瘍について各種チューブ(鼻胃、g-チューブ、空調栄養管、デュオチューブ等)を使った無香料PPI懸濁液の1日1回投与が行われている。この治療法が味の良い形にできれば、小児集団に合った多くの種類の理想的な薬物ができるというのは唯一理論的と思われる。第1にはそれは液体であり、それ故に低年齢者に投与することができるだろう。第2に風味豊かに作ることができれば、服薬遵守違反を減らすのに役立つだろう。第3に、1日1回の投薬で済むので、やはり服薬遵守違反を減らすのに役立つだろう。このプロセスでは、出願者は投薬を標準化することができ、投薬が複雑になることをほぼ排除することを見いだした。
【0140】
チョコベースは、酸不安定性であるプロトンポンプ阻害剤の様な薬物を酸分解から保護する。チョコベースが処方された最初の少数の逆流小児患者は確実な患者であった。かれらはそれまでにも治療を受けており、pHプローブおよび内視鏡によって診断されていた。最初の数ヶ月は、出願者は患者を10mgのオメプラゾールqd(1mg/kg)で治療し、これが若干有効性に欠けることを見いだし、急遽投与量をオメプラゾール20mg(2mg/kg)に増量した。研究のほぼ中頃で、出願者はランソプラゾール23mg po qdの使用を開始した。以後出願者の標準的治療は20mgのオメプラゾールまたは23mgのランソプラゾール1日1回のいずれかであった。ランソプラゾールが3mg多いのは、最終濃度が2.25mg/mlであり、出願者が投与を簡単にすることを望み10mlの懸濁液を使用したという事実にのみ拠るものである。
【0141】
治療を受けた患者は第3ケアセンター集団であり、かれらは本来病人であり、過去の医療治療に不応性であった。全体成功率72%は成人集団に於ける90%に比べ若干低いが、これは彼らの病気の不応特性に拠るものであり、その大部分は以前の非PPI治療に失敗している。本研究の集団は、一般的診療集団を表すものではない。
【0142】
結論
PPI治療は小児集団に於ける逆流関連症状の治療に於ける有益な治療オプションである。その1日1回の投与と、標準化された投与方法は、口当たりのよい処方と一つになり、それを理想的な医薬品にしている。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

【0148】
【表6】

【0149】
上記4種類全ての処方に於いてオメプラゾールは等効果量のランソプラゾールまたはその他PPIに置き換えることができる。例えば200mgのオメプラゾールは300mgのランソプラゾールで置き換えることができる。さらにショ糖はアスパルテームに置き換えることができ、そして以下他成分をキャリアー、アジュバントおよび賦形剤:マルトデキストリン、バニラ、カラゲーニン、モノおよびジグリセリド、および乳酸化モノグリセリド。当業者は安全かつ効果的であるチョコベース製剤の生成に必ずしも全ての上記成分が必要ではないことに気づくだろう。
【0150】
各処方には、オメプラゾール粉末または腸溶性コート顆粒が利用できる。腸溶性コート顆粒を使用する場合、コーティングは水性希釈液により溶解されるか、または化合物生成工程に於いて粉砕により不活性化される。
出願者はさらにランソプラゾールチョコベース処方の胃pHに及ぼす影響を、一人の成人患者にpHメーター(Fisher Scientific)を用い、ランソプラゾール単独と比較し解析した。最初患者には30mgのPrevacid(商標)経口カプセルが投与され、患者の胃pHを投与0、4、8、12および16時間後に測定した。結果は図4に示す。
【0151】
チョコベース生成物は、オメプラゾールの代わりに300mgのランソプラゾールを使用した以外は上記処方1に従い調合された。用量30mgのランソプラゾールチョコベースをランソプラゾール単独投与後18時間目に経口投与した。胃pHはランソプラゾール単独投与後18、19、24、28、32、36、40、48、52および56時間目にpHメーターを用い測定された。
【0152】
図4はランソプラゾール/ココアの組み合わせが、ランソプラゾール単独4-18時間目に比べより高いpHをもたらしたことを示している。即ち、ランソプラゾールとチョコレートの組み合わせは、ランソプラゾールの薬理学的活性を高めた。この結果は、重炭酸ナトリウムならびにチョコレート香味料とカルシウムの全てが、おそらくはガストリンの放出に拠り、プロトンポンプの活性化を促進できることを明らかにする。
【0153】
プロトンポンプ阻害剤は、プロトンポンプを機能的に阻害することにより作用し、そして活性化されたプロトンポンプ(主にこれらは分泌小管膜に挿入されている)を効果的に遮断する。更にこれらアクチベーターまたはエンハンサーの一つと共にプロトンポンプ阻害剤を投与することによって、プロトンポンプの活性化が吸収と同調し、その結果プロトンポンプ阻害剤の壁細胞濃縮が起こる。図4に例示した様に、この組み合わせはプロトンポンプ阻害剤を単独投与した場合に比べより長時間の薬理学的作用を生ずる。
【0154】
実施例6PPIのボーラス投与および時間放出投与を提供する複合錠剤
錠剤は既知方法を用いて、750mgの重炭酸ナトリウムと混合された10mgのオメプラゾール粉末の内核、および既知結合剤および賦形剤と混合された10mgのオメプラゾール腸溶性コート顆粒の外核を形成することにより調合された。錠剤全体を経口摂取すると、錠剤は溶解され内核は胃の中に分散され、そこで吸収され、直ぐに治療効果を生ずる。腸溶性コート顆粒は十二指腸の中で遅れて吸収され、投与サイクルのなかでより遅い症状の軽減をもたらす。本錠剤は特に通常の投薬法の間、睡眠中あるいは早朝時に突発性胃炎を起こした事のある患者に有効である。
【0155】
実施例7治療応用
患者は次の基準を満たした場合に評価可能できた:2以上のSRMDに関するリスク因子(人工呼吸、頭部障害、重傷の火傷、敗血症、多発性損傷、成人性呼吸困難症候群、大手術、急性腎不全、多数回の手術、凝固治療、顕著な低血圧、酸−塩基障害、および肝臓不全)を有し、試験参加前の胃pHが4以下であり、SDRMDに関する予防薬の併用がないこと。
オメプラゾール液は、8.4%の重炭酸ナトリウム液10mlとオメプラゾールの20mgカプセル(Merck & Co. Inc., West Point, PA)の内容物とを混合し、最終オメプラゾール濃度2mg/mlの液を得た。
【0156】
鼻胃(ng)チューブを患者に取り付け、緩衝化した40mgのオメプラゾール液(2mgオメプラゾール/lml NaHCO3−8.4%)を、続いて8時間かけ40mgの同一緩衝化オメプラゾール液を、そして次に1日当たり20mgの同一緩衝化オメプラゾール液を5日間投与するオメプラゾール投与プロトコールを実施した。各緩衝化オメプラゾール液投与終了後、鼻胃吸引を30分間停止した。
【0157】
11例の患者が評価できた。患者全員が人工呼吸を受けていた。図1に示す様に、最初の緩衝化オメプラゾール40mg液投与2時間後には、患者全員で胃pHは8以上に上昇した。11例の患者の内10例が、20mgのオメプラゾール液投与時に4以上の胃pHを維持していた。1例は1日当たり40mgオメプラゾール液を必要とした(閉鎖頭部障害、SRMDに関し合計5種類のリスク因子を持つ)。2例の患者が通常のH2-拮抗薬投与を受けている最中に臨床有意の上部胃腸管出血を発症したことから、オメプラゾール液に変更された。2例とも24時間後には出血は沈静化した。その他9例には臨床有意の上部胃腸管出血は生じなかった。全体の死亡率は27%であったが、上部胃腸管出血による死亡率は0%であった。オメプラゾール治療開始後1例の患者で肺炎が発症し、そして別の患者1例はオメプラゾール治療開始時に既に肺炎に罹っていた。平均予防期間は5日間であった。
【0158】
薬経済学的分析は、SRMDの予防に関する総医療コストに違いがあることを示した:
ラニチジン(Zantac(商標))連続静脈注入(150mg/24時間)×5日 125.50ドル;
シメチジン(Tagamet(商標))連続静脈注入(900mg/24時間)×5日 109.61ドル;
鼻胃チューブを使ったスクラルフェート1gスラリー4回/日×5日 73.00ドル;および
鼻胃チューブを使った緩衝化オメプラゾール液治療×5日 65.70ドル。
本実施例は、胃pHの上昇、安全性および緩衝化オメプラゾール液のコストに基づき、本発明の緩衝化オメプラゾール液のSRMD予防法としての有効性を例示する。
【0159】
実施例8pHに対する影響
実験はオメプラゾール液(2mgオメプラゾール/1ml NaHCO3−8.4%)投与の、鼻胃チューブを通したその後のpH測定の正確性に及ぼす影響を調べることを目的に実施された。
実施例7記載の方法により合計40mgの緩衝化オメプラゾール液を調製した後、通常は鼻胃(ng)チューブを通しその投薬量を胃内に投与した。9カ所の施設より評価の為に鼻胃チューブを集めた。人工胃液(gf)はUSPに従い調製された。pH測定はマイクロコンピューターポータブルpHメーターモデル6007(Jenco Electronics Ltd., Taipei, Taiwan)を用い3重測定された。
【0160】
まず鼻胃チューブの末端部分(tp)を胃液の入ったガラス製ビーカーに入れた。胃液の一部5mlを各チューブから吸引し、pHを測定した;この値は”オメプラゾール液/堅濁液前測定値”と呼んだ。第2に各鼻胃チューブの末端部分(tp)を胃液の入ったビーカーから取り出し、空のビーカーに入れた。20mgのオメプラゾール液を各鼻胃チューブ内に通し、10mlの水道水でフラッシュした。各鼻胃チューブの末端部分(tp)を胃液中に戻した。
【0161】
1時間のインキュベーションの後、胃液の一部5mlを各鼻胃チューブを通して吸引し、pHを測定した;この値は”初回投与SOS(簡略化オメプラゾール液(Simplified Omeprazole Solution)後測定値と呼んだ。3番目には、更に一時間経た後に第2段階を繰り返した;この値は”第2投与SOS(Simplified Omeprazole Solution)後測定値と呼んだ。オメプラゾール液測定値に加え、第2および第3段階の後に胃液のpHを三重測定した。+/-0.3単位のpH測定値の変化を有意とした。フリードマン(Friedman)試験を用いて結果を比較した。フリードマン試験は、繰り返し測定に於いて、2以上の関連サンプルが対象となる場合に用いられる分散の2方向分析である。
【0162】
これら実験の結果の概要を第1表に示す。
【表7】

【0163】
第1表は一連の実験の間に得たpH測定の結果を示す。これら結果は、同一鼻胃チューブを通し得た、その後のpH測定の正確性に対するオメプラゾール液投与(鼻胃チューブを介した)による統計有意な潜在的影響が存在しないことを示している。
【0164】
実施例9人工呼吸患者に於ける緩衝化オメプラゾール液の有効性
実験は、人工呼吸を行っている、少なくともストレス関連粘膜損傷に関する追加リスクを少なくとも1つ有する重症患者に於ける緩衝化オメプラゾール液の有効性、安全性およびコストを決定することを目的に実施された。
患者: ストレス関連粘膜傷害に関する追加リスク因子を少なくとも1種類持つ、人工呼吸を行っている成人患者75例。
【0165】
介入:患者はまず20mlのオメプラゾール液(実施例7に従い調製され、40mgのオメプラゾールを含む)を服薬し、続いて6ないし8時間後に20mlの第2投薬を受けた。本発明によるオメプラゾール液は鼻胃チューブを通し投薬され、続いて5-10mlの水道水が与えられた。鼻胃チューブは各投薬後、1ないし2時間クランプにより閉じられた。
【0166】
測定および主要結果:1次結果判定は臨床上有意な内視鏡観察、鼻胃吸引物検査、または洗浄により解消されず、そしてそれに伴ってヘマトクリット値が5%低下する血液陽性コーヒーかす様物質により決定された胃腸管出血であった。第2の結果判定はオメプラゾール初回投与後4時間後に測定された胃pH、オメプラゾール開始後の平均胃pHおよびオメプラゾール治療中の最低胃pHであった。安全関連の結果判定には、オメプラゾール堅濁液服用後の副作用頻度および臨床有意な上部胃腸管出血が含まれた。オメプラゾール後4時間目の胃pHは7.1(平均)であり、オメプラゾール開始後の平均胃pHは6.8(平均)であり、オメプラゾール開始後の最低pHは5.6(平均)であった。肺炎の発生頻度は12%であった。このハイリスク集団には、オメプラゾールに帰することができる副作用または薬物相互作用を経験した患者はいなかった。
【0167】
結論:オメプラゾール液は、人工呼吸器治療を受けている患者に於いて、毒性を示すことなく臨床有意な上部胃腸管出血を予防し、胃pHを5.5に保った。
材料と方法
研究プロトコールはコロンビアにあるミズリー大学の研究審査委員会により承認を受けた。
【0168】
試験集団:ミズリー大学病院、外科集中治療・火傷室に収容された成人(>18歳)であり、胃は無傷であり、鼻胃チューブが装着され、少なくとも48時間先進集中治療室に収容された患者全員が研究の対象とされた。さらに対象となる患者は、胃pHが<4であり、人工呼吸治療を受け、オメプラゾール堅濁液開始後最低24時間の間に、以下追加リスク因子の1つを有する者でなければならない:意識レベルが変化した頭部傷害、重症の火傷(体表面積の>20%)、急性腎不全、酸−塩基障害、多発性外傷、血液凝固疾患、複数回の手術、昏睡、1時間以上の低血圧または敗血症(第2表参照)。
【0169】
敗血症は、侵襲性病原菌またはそれらの毒素が血液中または組織中に存在し、その結果以下の2以上に該当する全身反応が生じるものと定義された:38℃より高い体温または36℃より低い体温、90打/分より早い心拍数、20回/分より早い呼吸速度(または75mmHg未満のpO2)および12,000/mm3より多い、または4,000/mm3未満、または10パーセントバンドより高い白血球数( Bone, Let's Agree on Terminology: Definition of Sepsis, CRIT, CARE MED., 19:27 (1991))。H2-拮抗薬治療が失敗したか、またはH2-拮抗薬治療を受けている最中に副作用を経験した患者も含まれた。
【0170】
患者が鼻胃チューブよりアゾール抗真菌剤の投与を受けている場合;血液を嚥下したと思われる場合(例えば顔および/または鼻腔の骨折。口腔内裂傷);重症の血小板減少症(血小板数が30,000細胞/mm3未満);鼻胃チューブより腸栄養を受けている場合;または迷走神経切断術歴、幽門形成術歴、あるいは胃形成術歴がある場合には、その患者は研究から除かれた。さらにICU収容後48時間、胃pHが4より高い患者(予防処置なし)も参加資格はない。
【0171】
ストレス関連粘膜障害ではない消化管内出血を発症した患者(例えば内視鏡により確認された水痘出血またはマロリー−ワイス裂傷、口腔内傷害、鼻胃チューブ設置が原因の鼻内損傷)は有効性の評価から除外し、非ストレス性粘膜出血を有するものとして分類された。上記除外する理由は、非ストレス性粘膜出血が臨床有意な上部胃腸管出血を画定するための鼻胃吸引体検査の利用といった有効性に関係する結果判定に混乱をもたらすからである。
【0172】
研究薬投与:オメプラゾール液は投与直前に、患者担当看護士により次の手順にて調製された:1または2錠の20mgオメプラゾールカプセルの内容物を、プランジャーを外した空の10mlの注射器(20ゲージの針付き)に入れる。(オメプラゾール徐放型カプセル、Merck & CO., Inc., West Point, PA);プランジャーを差し込み、針を外す;10mlの8.4%の重炭酸ナトリウム液、または40mgを投与する場合(Abbott Laboratories, North Chicago, IL)には20mlの上記液を引き抜く;そして30分間、オメプラゾールの腸溶性コートペレットを完全に崩壊させる(攪拌が役立つ)。
【0173】
得られた調製体中のオメプラゾールは一部が溶解し、一部が堅濁状態にある。この調製体は細かい沈殿を持った乳白色の外観を呈するものでなくてはならず、投与前に振らなければならない。この液体は酸性物質と共に投与されなかった。高圧液体クロマトグラフィー試験を実施した結果、この簡略化されたオメプラゾール堅濁液調製体が室温にて7日間>90%の効力を維持することが示された。この調製体は、室温に保存した場合30日間無細菌および無真菌状態を保った(第5表参照)。
【0174】
オメプラゾール液の初回投与量は40mgであり、続いて6ないし8時間後に2回目の40mg投与を行い、以後8:00AMに20mgを毎日投与した。投薬はいずれも鼻胃チューブから行われた。次に鼻胃チューブは5-10mlの水道水によりフラッシュされ、少なくとも1時間クランプで閉じられる。オメプラゾール治療はストレス性可溶予防が必要なくなるまで続けられた(通常は鼻胃内チューブが取り除かれ、そして患者が口から水/食物を摂った後、または患者より人工呼吸器が外された後)。
【0175】
1次結果判定:本研究の一時結果判定は、内視鏡によるストレス関連粘膜出血の証拠、または5分間の洗浄によっても解消されない鼻胃チューブからの新鮮血、洗浄(少なくとも100ml)によっても解消せずに4時間持続してヘマトクリットを5%低下させる、持続性のGastroccult(SmithKline Diagnostics, Sunnyville,CA)陽性コーヒーかす様物質として定義された臨床有意なストレス関連粘膜出血の割合であった。
【0176】
二次結果判定:二次有効性判定はオメプラゾール投与後4時間目に測定された胃pH、オメプラゾール開始後の平均胃pHおよびオメプラゾール投与中の最低胃pHであった。胃pHは鼻胃チューブを通し胃内容物を吸引した直後に測定された。胃吸引物のpHはpH試験紙(pHydrion改良型pH試験紙、Microessential Laboratory, Brooklyn, NY)を用いて測定された。試験紙のpH域は1pH単位毎に、1から11であった。胃pHはオメプラゾール治療開始前、各投与直前、および投与間4時間毎測定された。
【0177】
その他二次結果判定は、副作用(薬物相互作用を含む)および肺炎の頻度であった。研究に生じた副作用はいずれも記録された。肺炎は疾病管理センターにより院内感染肺炎の定義として採用されている指標を用いて定義された(Garnerら、1988)。これら基準に拠れば、肺炎を有する患者は、胸部身体検査において打診に対しラ音または濁音があるか、または新規または進行性の浸潤、硬化、空洞化、または胸膜滲出を示す胸部レントゲンがあり、そして以下事項のうちの少なくとも2事項に該当する者である:新規化膿性喀痰または喀痰の特性変化、血液培養からの菌分離、発熱または白血球減少、または保護検体ブラシあるいは気管支肺胞洗浄液からの感染証拠。肺炎の判定基準を満たし、且つ肺炎治療のための抗菌剤投与を受けている患者は、肺炎発生頻度の計算に加えられた。これら判定基準はまた試験薬の初回投与が行われる前の初期スクリーニングとしても用いられ、オメプラゾール堅濁液開始前に肺炎が存在しているか決定された。
【0178】
治療コスト分析:オメプラゾール液を用いたストレス性可溶予防の薬経済評価が行われた。評価対象には、総薬剤コスト(購入および投与)、副作用に伴う実際コスト(例えば精神的困惑に関する精神医学的コンサルタント)、臨床有意な上部胃腸管出血に関連するコストが含まれた。総薬剤コストは、オメプラゾール20mgカプセル、50ml重炭酸ナトリウムバイアル、および10ml針付き注射器;看護時間(薬物投与、pHモニタリング);薬局時間(薬物調製);およびディスポーザブル用品のコストの施設平均コストを加えて計算した。臨床有意な上部胃腸管出血に関連したコストには、内視鏡料金およびそれに関連した診察費用、止血に必要な作業(例えば手術、止血剤、内視鏡操作)、入院日数の延長(担当医師による査定による)、および胃腸管出血治療に用いた薬物のコストが含まれた。
【0179】
統計分析:対t−試験(2テイル型)を用い、オメプラゾール液投与前後での胃pHを比較し、オメプラゾール液投与前の胃pHとオメプラゾール開始後に測定された平均および平均胃pH値との比較を行った。
【0180】
結果
77例の患者が採用・不採用基準に合致し、オメプラゾール液の投与を受けた(図2参照)。オメプラゾール投与プロトコールが遵守されなかったことを理由に2例の患者が有効性評価から外された。1例では当初2回の投与の前、オメプラゾール腸溶性コートペレットが完全に破壊されず、その結果胃pHに腸溶性作用が生じた。胃pHは、患者にオメプラゾールを投与したと同時に約6まで上昇した(この場合オメプラゾールの腸溶性コートペレットは完全に崩壊した)。
【0181】
2番目の除外理由は、オメプラゾール投与後に鼻胃吸引が停止されなかったことであった。この結果、胃pHに一過性の影響が生まれた。吸引はオメプラゾール投与後に停止され、胃pHのコントロールが取られる。2名の患者は、標準のオメプラゾール20mg/日維持投与に関する適切な胃pHコントロールを取ることに失敗したことから、有効性に欠けると判断された。オメプラゾール投与量を40mg/日(40mg1回/日または20mg2回/日)に増量した時、両患者とも胃pHは4より高値に保たれた。これら2例の患者は胃pH分析を含む安全性および有効性の評価には加えられた。2例の患者が失敗であることが確定した後、かれらのpH値をそれ以上追跡しなかった。
【0182】
残った75例の患者の年齢は、18歳から87歳の範囲であり;42例の患者が男で、33例の患者が女であった。患者は全員試験中人工呼吸器にかけられていた。表2は、本研究の患者の示したストレス関連出血に関するリスク因子の頻度を示している。この集団に於ける最も一般的なリスク因子は人工呼吸と大手術であった。患者のリスク因子数は2ないし10で、平均3(±1)(標準偏差)であった。本研究に参加した5例の患者が、ラニチジン(150mg/24時間)またはシメチジン(900mg/24時間)の連続注入中に臨床有意な出血を起こしていた。
【0183】
この5例全部において、オメプラゾール治療開始後36時間以内に出血は消失し、胃pHは5より高くまで上昇した。3例の患者は、H2-拮抗剤(上記に示す投与量)服薬中に2回連続して胃pHが3より低くなった後に参加した。これら3例全てにおいて、pHはオメプラゾール治療開始後4時間以内に5より高くまで上昇した。4例の患者はH2拮抗剤治療中に錯乱状態(n=2)または血小板減少症(n=2)を経験した後に参加した。治療法を変えてから36時間以内に、これら副作用は解消された。
【0184】
ストレス関連粘膜出血および死亡率 緩衝化オメプラゾール液をストレス関連粘膜出血に対する初期予防薬として投与された65名の患者では、明瞭または臨床有意な上部胃腸管出血を起こした者は皆無であった。試験参加前に上部胃腸管出血を起こした5例の患者のうち4例では、出血はオメプラゾール液開始18時間以内に潜血まで減じた;全患者に於いて出血は36時間以内に停止した。この重症疾患患者群に於ける全体死亡率は11%であった。上部胃腸管出血またはオメプラゾール液の使用に帰される死亡例は皆無であった。
【0185】
胃pH:オメプラゾール前の平均胃pH(±標準偏差)は3.5±1.9である。オメプラゾール投与4時間以内に胃pHは7.1±1.1に上昇した(図3参照);この差は有意であった(p<0.001)。オメプラゾール前胃pHとオメプラゾール投与中の平均および最高胃pH(それぞれ6.8±0.6と5.6±1.3)との差もまた統計有意であった(p<0.001)。
【0186】
安全性:オメプラゾール液はこの臨床疾患患者グループによく受け入れられた。敗血症の患者1例のみが薬物関連血小板減少症と思われる副作用を経験した。しかし血小板数はオメプラゾール中止後も減少し続けた。その後オメプラゾール治療を再開したにもかかわらず血小板数は正常値に復帰した。ジェット換気を受けていた患者1例が胃の中にあった全ての液体を持続性に口から排出したため、オメプラゾールを継続することが不可能となったことに注意すべきである。試験期間中オメプラゾールとの臨床上有意な相互作用は記録されなかった。上記の様に、代謝性アルカローシスは重炭酸ナトリウム服用中の患者に於いて潜在的懸念事項である。しかしオメプラゾール液中の重炭酸ナトリウム量は少量であり(12mEq/10ml)、電解質異常は認められなかった。
【0187】
肺炎:肺炎はオメプラゾール液を服用した9例(12%)の患者に発生した。肺炎はさらにオメプラゾール治療開始前に5例の患者に認められていた。
【0188】
薬経済分析:平均治療気管は9日間であった。治療コストのデータを表3および4に示す。ストレス関連上部胃腸管出血の予防に使用された幾種類かの従来薬剤に関する購入、調剤、投与コストを表3に示す。オメプラゾール液に関係した毒性に由来するコストの追加は無かった。75例の患者の内2例が、胃pHを適切にコントロールするために1日40mgのオメプラゾール液を必要としたことから、購入/調剤コストはこれを反映すべきである。賦形剤を伴う20mgのオメプラゾールの追加は、1日当たり7セント治療コストを上昇させる。従ってストレス関連粘膜出血予防に於けるオメプラゾールの1日当たりの治療コストは$12.60であった(第4表参照)。
【0189】
オメプラゾール液は重症治療患者に於けるストレス関連粘膜出血の予防に適した安全且つ効果的な治療薬である。最近、ストレス関連粘膜損傷に対する多くのリスク因子の関与が関心を集めている。本研究の患者は全例ストレス関連粘膜損傷−人工呼吸に明瞭に関連しているリスク因子を少なくとも1つ有していた。これまでの試験および最近発表された研究のデータは、ストレス性潰瘍予防がリスクを持つ患者にとって確かに有益であることを示しており、故に本研究にプラセボグループを設定することは非倫理的であると考えた。オメプラゾール液治療中に臨床有意な上部胃腸管出血は起こらなかった。胃pHはオメプラゾール20mg/日の73例の患者では、4より高く維持された。オメプラゾールに関連した副作用または薬物相互作用は認められなかった。
【0190】
【表8】

【0191】
【表9】

【0192】
【表10】

【0193】
【表11】

【0194】
【表12】

【0195】
実施例10オメプラゾール液の静菌作用および静真菌作用
オメプラゾール液の抗菌または静菌作用が出願者により分析された。本発明により作成されたオメプラゾール液(2mg/mlの8.4%重炭酸ナトリウム液)は室温にて4週間保存された後真菌および細菌の増殖について分析された。室温で4週間保存した後、細菌および真菌の増殖は検知されなかった。
本発明により作成されたオメプラゾール液(2mg/mlの8.4%重炭酸ナトリウム液)は12週間、室温に保存された後、真菌および細菌の増殖について分析された。室温、12週間のインキュベーション後、細菌および真菌の増殖は検知されなかった。
これら実験の結果は、本発明のオメプラゾール液の静菌性および静真菌性を示している。
【0196】
実施例11生体等価性研究
年齢が18歳より上である健康な男女研究参加者に次の形のオメプラゾールを無作為に投与した:
(a) 約20mgのオメプラゾールを含む4.8mEq重炭酸ナトリウムqs(十分量)を水で10mlにした20mg液体製剤;
(b) 1mlの8.4%重炭酸ナトリウム当たり約2mgのオメプラゾールを含む20mg液体製剤。
(c)Prilosec(商標)(オメプラゾール)20mgカプセル
(d) オメプラゾール20mgカプセルの内容物を空の#4ゼラチンカプセル(Lilly)中に、240mgの重炭酸ナトリウム粉末USPに均一に分散するように加え、内部カプセルを作り調製したカプセル。次に内部カプセルは、600mgの重炭酸ナトリウムUSPおよび110mgのプレゼラチン化デンプンNFの均一混合体と共に空の#00ゼラチンカプセル(Lilly)に挿入された。
【0197】
方法:
適当なスクリーニングと同意を得た後、健康なボランティアをラテン方格により以下4つの処方のいずれかに無作為に割り付けられた。各被験者は、全ての被験者が4種類全ての処方を投薬されるまで、無作為化された順序に従って各処方の投薬を受けた。
処方A(4.8mEq重炭酸ナトリウム中に20mgのオメプラゾール、容積10ml);処方B(10mlの8.4%重炭酸ナトリウム液中に20mgのオメプラゾール、容積10ml);処方C(20mgオメプラゾールカプセルそのまま);処方D(二重カプセル製剤、上記参照)。各投与/週毎に、被験者には血液採取を目的とした静脈生理食塩水ロックが設置された。各処方毎に、血液サンプルは24時間、合計16回採取された(最後2回の検体は薬物投与後12時間および24時間目に得た)。
【0198】
患者適格性
4名の健康な女性と4名の健康な弾性が本研究に承諾した。
採用基準
インフォームドコンセントに署名すること。
【0199】
排除基準
1. 現在H2-受容体拮抗薬、制酸剤、またはスルクラルフェートを服用している。
2. 最近(7日以内)ランソプラゾール、オメプラゾール、またはその他プロトンポンプ阻害剤による治療を受けた。
3. 最近(7日以内)ワーファリンによる治療を受けた。
4. 水痘性出血歴がある。
5. 消化性潰瘍歴または現在活動型G.I.(胃腸管)出血がある。
6. 迷走神経切断術または幽門形成術歴がある。
7. 30日以内に研究薬の投与を受けている。
8. ケトコナゾールまたはイトラコナゾールによる治療を受けている。
9. オメプラゾールに対するアレルギーを持っている。
【0200】
薬物動態評価および統計分析
血液サンプルは採取2時間以内に遠心分離にかけられ、血漿が分離され、アッセイされるまで-10℃(またはそれより低い)に保存された。薬物動態変数としては;最高濃度到達時間、平均最高濃度、AUC(0-t)および(0-無限大)が含まれる。分散分析を用い統計差を検知する。生物学的利用能はAUCの自然対数に対する2片側検定の90%信頼幅により検定された。
【0201】
HPLC分析
オメプラゾールおよび内部標準物質(H168/24)が用いられる。オメプラゾールおよび内部標準物質はAmanteaとNarang記載の報告の変法により測定される。(Amantea MA, Narang PK. Improved Procedure for Quantification of Omeprazole and Metabolites Using Reversed-Phased High Performance Liquid Chromatography. J. CHROMATOGRAPHY 426; 216-222. 1988)。要約すると、20ulのオメプラゾール2mg/m lNaHCO3またはチョコベースオメプラゾール懸濁剤および100ulの内部標準物質を150ulの炭酸バッファー(pH-9.8)、5mlのジクロロエタン、5mlのヘキサンおよび980ulの滅菌水と攪拌した。サンプルを遠心分離した後、有機層を抽出し、窒素流により乾燥させる。
【0202】
各ペレットを150ulの移動相(40%メタノール、52% 0.025リン酸バッファー、8%アセトニトリル、pH=7.4)で再溶解した。再溶解したサンプルから75ulを取り、同一移動相で平衡化した1.1ml/分のC18 5 Uカラムに注入する。この条件では、オメプラゾールは約5分で溶出され、内部標準物質は約7.5分で溶出される。標準曲線は濃度域0-3mg/mlでは直線であり(SOSを用いたこれまでの研究にて)、日内変動係数は全ての濃度に於いて<8%である。標準曲線の典型的な平均R2はSOSによるこれまでの研究では0.98であった(オメプラゾール2mg/ml NaHCO3 8.4%)。
【0203】
出願者は上記実験が腸溶性コート顆粒処方(c)に比べ処方(a)、(b)および(d)の吸収がより迅速であることを示していると予想している。さらに、出願者は処方(a)から(d)には吸収速度に違いは見られるだろうが、吸収の程度(曲線下面積(AUC)より測定される)は処方(a)から(d)において近似していると予想している。
【0204】
実施例12経口壁細胞アクチベーターと組み合わせた静脈PPI
年齢が18歳より高い16名の健康な男女研究試験者に、以下の処方を無作為に投与した:
(a) 20mlの8.4%重炭酸ナトリウムの経口投与と組み合わせ、15ないし30分間かけた40mgのIV(静脈投与);および
(b) 20mlの水の経口投与と組み合わせた15ないし30分間かえた40mgのIV。
被験者は無作為に上記(a)または(b)の単回投与を受け、次に(a)および(b)を交換する。投与後の時間に対するパントプラゾールの血清濃度のデータを集め、さらに留置pHプローブを使って胃pHコントロールについて測定する。
【0205】
さらに壁細胞アクチベーターである重炭酸ナトリウムをチョコレートまたはその他の壁細胞アクチベーターに置き換え、パントプラゾールを他PPIに置き換えた同様の研究が予想される。壁細胞アクチベーターはPPIのIV投与前5分以内、投与中、または投与後5分以内のいずれかに投与できる。
出願者は、これら研究がIV PPIが経口壁細胞アクチベーターと組み合わせ投与される場合には、治療効果の達成に求められるPPI量がより少量であることを示すことを期待している。
さらに、IV PPIと経口壁細胞アクチベーターの投与キットは投与の簡便性、生成物の包装および発送に合わせて各種多様な形状に包装できる。この様なキットは単位投与または複数回投与形状を取ることができる。
【0206】
実施例13オメプラゾール液の12ヶ月安定性
12ヶ月後のオメプラゾール液の安定性を決定するために、8.4%重炭酸ナトリウムをオメプラゾールと混合し、最終濃度2mg.mlとして溶液を調製した。得られた調製体は透明なガラス容器中、室温、冷蔵および冷凍にて保存された。サンプルは所定時間に保存調製体から、完全に攪拌した後に取り出された。つぎにサンプルは70℃に保存された。凍結サンプルは分析にかけるまで凍結したままにされた。採集工程が終了した時点で、サンプルは分析にかけるためドライアイスと共に一晩かけ研究室に発送された。
【0207】
サンプルは30秒間攪拌され、サンプルの一部が周知の方法によるHPLCを用い3回分析された。オメプラゾールおよび標準物質はAmanteaとNarang記載の方法の変法により測定された。Amantea MA, Narang PK. Improved Procedure For Quantification of Omeprazole and Metabolites Using Reversed-Phased High Performance Liquid Chromatography. J. Chromatography 426; 216-222. (1988)。20ulのオメプラゾール2mg/m lNaHCO3および100ulの内部標準物質を150ulの炭酸バッファー(pH-9.8)、5mlのジクロロエタン、5mlのヘキサンおよび980ulの滅菌水と攪拌した。
【0208】
サンプルを遠心分離した後、有機層を抽出し、窒素流により乾燥させた。各ペレットを150ulの移動相(40%メタノール、52% 0.025リン酸バッファー、8%アセトニトリル、pH=7.4)で再溶解した。再溶解したサンプルから75ulを取り、同一移動相で平衡化した1.1ml/分のC185Uカラムに注入した。オメプラゾールは約5分で溶出され、内部標準物質は約7.5分で溶出された。標準曲線は濃度域0-3mg/mlでは直線であり、日内変動係数は全濃度に於いて<8%であった。標準曲線の平均R2は0.980であった。
【0209】
12ヶ月サンプルは、初濃度2mg/mlの90%より高い値であり、安定であることを示した。(即ち1.88mg/ml、1.94mg/ml、1.92mg/ml)。
本出願を通じて、様々な公開物および特許が引用および番号により参照されている。これら公開物および特許の開示内容は、本発明の関連分野の状態をより完全に記載することを目的として、その全体が参照され本明細書の中に取り込まれている。
【0210】
発明は例示の形で記載されており、使用された用語は限定を目的とするのではなく、本質的に記載を目的とするものであると理解すべきである。明らかに、上記教示に照らし本発明の多くの変更、等価物、および変形が可能である。従って、添付特許請求の範囲において、具体的に記載されたもの以外のも発明が実施できると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】第1図は、ストレスに関係する粘膜損傷からの胃腸上部出血の危険にある患者における胃のpHに対する、本発明のオメプラゾール溶液の作用を示すグラフである。
【図2】第2図は、患者の記録スキームを図解するフローチャートである。
【図3】第3図は、本発明によるオメプラゾール溶液の投与前および投与後の両方の胃のpHを図解する棒グラフである。
【図4】第4図は、チョコレート+ランソプラゾールおよびランソプラゾール単独の両方の経口投与後の胃のpH値を図解するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃酸関連疾患の治療のために経口投与される固体投与形の医薬組成物であって、
(i)或る量の、少なくとも1種の腸溶性被覆されていない、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、パープラゾール(S-オメプラゾール)、ドントプラゾール、ハベプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、パリプラゾール及びレミノプラゾール、又はそれらの鏡像異性体、鏡像異性体のアルカリ塩、異性体、誘導体又は塩からなる群から選択される酸感受性置換ベンゾイミダゾールH+,K+−ATPアーゼプロトンポンプ阻害剤;
(ii)前記の量の前記プロトンポンプ阻害剤を、経口投与後に胃酸による酸分解から保護するのに十分な量の重炭酸ナトリウムを含む緩衝剤;及び
(iii )崩壊剤;
を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール又はその鏡像異性体、鏡像異性体のアルカリ塩、異性体、誘導体又は塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記オメプラゾールが約20mgの量で存在する請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記プロトンポンプ阻害剤が、ランソプラゾール又はその鏡像異性体、鏡像異性体のアルカリ塩、異性体、誘導体又は塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ランソプラゾールが約30mgの量で存在する請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記プロトンポンプ阻害剤が、ペルプラゾール(S-オメプラゾール)又はその鏡像異性体、鏡像異性体のアルカリ塩、異性体、誘導体又は塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が、重炭酸ナトリウムである請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾールであり、そして前記少なくとも1種の緩衝剤が、2mgのオメプラゾール当り0.2〜5.0 mmolの量の重炭酸ナトリウムを含んでなる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールであり、そして前記少なくとも1種の緩衝剤が、3mgのランソプラゾール当り0.2〜5.0 mmolの量の重炭酸ナトリウムを含んでなる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記投与形が滑剤を更に含んでなる、請求項1〜9の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記固体投与形がカプセルである、請求項1〜10の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記固体投与形が、呑込み可能又は咀嚼可能な錠剤である、請求項1〜10の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、1〜25 mEqの重炭酸ナトリウムを含んでなる、請求項1〜12の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が微粉砕されたプロトンポンプ阻害剤から形成される、請求項1〜13の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムを含んでなる、請求項1〜14の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記プロトンポンプ阻害剤の療法的有効量が、患者への投与の後およそ10〜60分以内に吸収される、請求項1〜15の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記プロトンポンプ阻害剤の投与範囲が、1日当り約2〜300 mgでる、請求項1〜16の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が1又は複数の壁細胞アクチベーターを含んでなる、請求項1〜17の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記胃酸関連疾患が、十二指腸疾患、胃潰瘍疾患、胃食道逆流疾患、びらん性食道炎、病的胃腸過剰分泌疾患、ゾリンジャー−エリソン症候群、又は高酸性消化不良である、請求項1〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物が、1日に1回又は2回投与するためのものである、請求項1〜19の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
胃酸関連疾患の治療のための医薬粉末剤の製造方法において、当該製造方法は、腸溶性被覆されていない、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、パープラゾール(S-オメプラゾール)、ドントプラゾール、ハベプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、パリプラゾール及びレミノプラゾール、又はそれらの鏡像異性体、鏡像異性体のアルカリ塩、異性体、誘導体又は塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸感受性置換ベンゾイミダゾールH+,K+−ATPアーゼプロトンポンプ阻害剤、少なくとも1種の緩衝剤及び少なくとも1種の崩壊剤を乾燥混合することを含んでなり、前記緩衝剤は治療的有効量の前記プロトンポンプ阻害剤を胃酸による酸分解から保護するのに十分な量で存在し、そして前記プロトンポンプ阻害剤は微粉砕されているものでありる、前記医薬粉末剤の製造方法。
【請求項22】
前記粉末が、錠剤を形成するために圧縮される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記粉末が、カプセルを形成するために封入される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末が、顆粒を形成するために更に加工される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記顆粒が、錠剤を形成するために圧縮される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記顆粒が、
(a)前記乾燥混合物を圧縮し;そして
(b)前記圧縮した乾燥混合物を破砕して前記顆粒を製造する;
工程を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記破砕工程が、前記圧縮した乾燥粉末を振動造粒機に通しことを含んでなる、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277271(P2007−277271A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198427(P2007−198427)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【分割の表示】特願2001−551474(P2001−551474)の分割
【原出願日】平成13年1月10日(2001.1.10)
【出願人】(502289329)ザ キュレイターズ オブ ザ ユニバーシティーオブ ミズーリ (3)
【Fターム(参考)】