説明

新規な脈管形成抑制剤としてのリポキシン類似物

【課題】創傷治癒及び脈管形成を助長するための医薬組成物の提供。
【解決手段】15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA、LXA、15−エピ−LXAまたは15−R/S−メチル,LXAおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミド、カルボン酸またはプロドラグを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2001年3月2日付けで提出した表題が「A Novel Inhibitor of Angiogenesis:Aspirin−Triggered−15R
Lipoxin A」の米国仮出願番号60/272,931(これの内容は引用することによって本明細書に組み入れられる)の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
脈管形成は現存する血管から新しい毛細管が形成される基本的な過程である。この過程は生理学的出来事、例えば黄体の形成、胎芽の発育および創傷治癒(心筋虚血および消化性潰瘍の両方からの回復を包含)などで重要な役割を果たす(1)。多種多様な病気、例えば関節炎、糖尿病および腫瘍成長などにおいて血管が不規則に成長すると、これは、組織損傷の一因になり得る(2)。内皮細胞は通常は休止状態であるが、脈管形成に反応している間は活性化される。内皮細胞が刺激を受けるとそれらの基底膜および基部の細胞外マトリックス(matrix)が劣化し、指向的に移動した後、分割および組織化して機能的な毛細管になり、これが新しい基底板で覆われる(3)。
【0003】
脈管形成切り換え(angiogenic switch)の調節が新しい毛細管の成長を肯定的および否定的に調節する調節剤の間の正味の均衡によって成されることを示す証拠が増え続けている(2)。新血管新生(neovascularization)の持続には脈管形成前(pro−angiogenic)の環境が要求され、脈管形成因子(angiogenic factos)の発現の方が脈管形成休止因子(angiostatic factors)の発現より勝る必要がある。ある範囲のペプチドがそのような均衡に影響を与える可能性があり、それらには、分裂促進因子(mitogenic
factors)、例えば血管内皮成長因子(VEGF)(3)、非分裂促進因子(選択されたサイトカイン、CXCケモカイン)、そしてアンギオスタチン(angiostatin)およびエンドスタチン(endostatin)の内部ペプチドフラグメントが含まれる(3)。また、特定のエイコサノイド(eicosanoids)も血管内皮細胞に対して効力のある生物学的作用を示す。ラビットでは、PGE、PGR2αおよびプロスタシリン(prostacylin)(PGI)が脈管形成を刺激し、その中でもプロスタグランジン(prostaglandin)Eシリーズ、特にPGEの効力が最も高い。PGEは滑液線維芽細胞におけるVEGF発現を誘発する効力のある誘発剤である。PGIは、これの公知の血管拡張および抗血小板特性に加えて、また、VEGF遺伝子発現および蛋白質合成も誘発し得る(4)。
【0004】
脈管形成反応には12−リポキシンゲナーゼ活性およびそれの産物の1つである12(S)−HETEが必要であること(5)と、P450から誘導された12R−HETEがNF−kBを通して脈管形成を刺激すること(6)が最近報告された。内皮細胞の中のシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)遺伝子は数種の成長因子ばかりでなく脈管形成誘発剤によっても迅速に上方調節される(upregulated)(7)。そのような線に沿って、異なる3種類の内皮細胞モデルを用いた時の結果は、COX−2は少なくともインビトロにおいて脈管形成の必須成分であることを示している(8)。非ステロイド系(nonsteroidal)抗炎症薬、例えばアスピリン(ASA)などを特定の癌、例えば肺癌および結腸癌などの予防(9、10)に関係付けることが行われたが、これは、ASAが脈管形成を軽減する能力を有することに関係させて成された可能性がある(7)。
【0005】
従って、脈管形成が生理学的に予防または抑制されるように病気過程の方向に向かう脈管形成を予防する組成物および方法の必要性が存在している。また、持続に必要または必須な生理学的必要条件が不足している組織に脈管形成を誘発する組成物および方法の必要性も存在する。
【発明の概要】
【0006】
(要約)
増殖状態、例えば慢性的炎症、虚血病および癌などでは、しばしば、強力な脈管形成、即ち血管の新生、内皮細胞の移動、増殖および成熟を伴う非常に組織化された過程が付随して起こる。アスピリン引き金リポキシン(aspirin−triggered lipoxins)(ATL)、即ちリポキシン(LX)の15Rエナンチオマー相対物は、多細胞反応中に生じる内因性媒介物であり、これは効力のある免疫調節作用を示す。驚くべきことに、LX、ATL、より具体的には安定なATL類似物である15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1と表示)、LXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル,LXAが効力のある脈管形成抑制剤であることを見いだした。例えばATL−1、LXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル,LXAは各々が1−10nMの範囲の時に血管内皮成長因子(VEGF)(3ng/ml)またはロイコトリエンD(10nM)のいずれかによる刺激を受けさせた細胞が起こす内皮細胞増殖を〜50%抑制した。加うるに、ATL−1(10−100nMの範囲の時)は、VEGF(3ng/ml)によって誘発された内皮細胞化学走性を抑制した。炎症性脈管形成の肉芽腫インビボモデルでは、ATL−1による処理(10μg/マウス)で脈管形成表現型が〜50%減少した[血管キャスティング(vascular casting)および蛍光の両方で評価して]。そのような結果を一緒にすることで、アスピリン引き金15−エピ−LXの以前には評価されなかった効力のある新規な作用を同定した。
【0007】
本発明は、1つの面において、脈管形成を予防、軽減または抑制する方法に関する。それを必要としている被験体(subject)にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる(pharmaceutically acceptable)塩、エステル、アミドまたはプロドラグ(prodrugs)を有効量で投与することで前記方法を達成する。そのような治療剤が示す作用の結果として前記被験体における脈管形成が予防または抑制される。
【0008】
本発明は別の面においてもまた脈管形成を予防または抑制する方法に関する。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。そのような治療剤が示す作用の結果として前記被験体における脈管形成が予防または抑制される。
【0009】
本発明は、更に別の面において、ある被験体における新血管新生を被る固体状腫瘍組織成長を予防または抑制する方法に関する。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。
【0010】
本発明は、別の面において、ある被験体における新血管新生を被る固体状腫瘍組織成長を予防または抑制する方法に関する。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れら
れる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。
【0011】
本発明は、更に別の面において、ある被験体に新血管新生が起こるのを予防または抑制する方法に向けたものである。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。
【0012】
本発明は、更に別の面において、ある被験体に新血管新生が起こるのを予防または抑制する方法に向けたものである。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。
【0013】
本発明は、また、新血管新生が網膜組織内に起こる被験体を治療する方法にも向けたものである。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記網膜組織内の新血管新生を予防または抑制することができる。
【0014】
本発明は、更に、新血管新生が網膜組織内に起こる被験体を治療する方法に向けたものである。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記網膜組織内の新血管新生を予防または抑制することができる。
【0015】
本発明は、更に、平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄に関してある被験体を治療する方法に向けたものである。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記再狭窄を予防または抑制することができる。
【0016】
本発明は、平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄に関してある被験体を治療する方法に向けたものである。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記再狭窄を予防または抑制することができる。
【0017】
本発明は、更に別の態様において、ある被験体における組織の新しい成長を援助するに必要な血液(組織に供給される)の量を少なくする方法に関する。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で含んで成る組成物を投与することでそのような組織の望まれない新しい成長の低下もしくは阻止を達成することができる。
【0018】
本発明は、更に、ある被験体における組織の新しい成長を援助するに必要な血液(組織に供給される)の量を少なくする方法に関する。それを必要としている被験体にアスピリ
ン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で含んで成る組成物を投与することでそのような組織の望まれない新しい成長の低下もしくは阻止を達成することができる。
【0019】
更に、本発明は、VEGFの産生または放出に関連してか或はそれに刺激されてある被験体に起こる新しい血管の形成を予防、減少または抑制する方法にも関する。それを必要としている被験体に治療剤[これにはLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグが含まれる]を有効量で投与することで前記方法を達成する。別法として、アスピリン引き金リポキシン(ATL)(15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など)、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で用いることも可能である。そのような治療剤が示す作用の結果としてVEGFの産生に関連した新しい血管の成長が予防または抑制されることで、前記被験体における内皮細胞の成長が予防または抑制される。例えば、VEGFは腫瘍発生、リンパ脈管形成(lymphoangiogenesis)および増殖性障害に関連している。従って、本発明を用いて腫瘍の転移を抑制、軽減または予防することができる。
【0020】
驚くべきことに、LXA、LXA類似物およびATL類似物の形態異性体(configurational isomers)、即ちLXBおよびLXB類似物、そしてそれらの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグは、この上に示した本発明の化合物による組織の血管再生(revascularization)に関して反対の効果を与える。即ち、LXBおよびLXB類似物は血管または上皮組織の再生および内方生長の刺激を必要としている組織におけるそれを刺激する能力を有することを驚くべきことに見いだした。これは、特に、組織移植、組織工学および人工器官グループ結合部位(prosthetic group sites of attachment)にとって重要である。
【0021】
詳細な説明を添付図と協力させて解釈することで本発明がより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1に、VEGFで刺激されたHUVEC増殖をATL−1が抑制することを示す。HUVEC(5x10)を96個ウエルの培養板で平板培養しそしてVEGFを3ng/ml用いて細胞の増殖を刺激した。処理して3日後、MTT検定を用いて細胞数を測定した。結果を媒体を基準にした増殖抑制パーセントとして表し、それを3回重複して行った4つの独立した実験の平均±SEで示す。挿入図:3ng/ml(黒三角)または10ng/ml(黒四角)のVEGF、媒体(白丸)およびATL−1(100nM)(白三角)を用いて誘発させた細胞増殖の時間経過を示す代表的実験。
【図2】図2に、ATL−1ばかりでなくLXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル,LXAの各々が内皮細胞化学走性を抑制することを示す。(A)48個ウエルの化学走性用チャンバの下方区分室にVEGF(3ng/ml)またはATL−1(100nM)を入れることで化学走性を開始させた。結果を媒体単独と比較した時の細胞移動パーセントとして表し、3回重複して実施した独立した3実験の平均±SEを示す(P<0.05)。(B)HUVECを媒体または指示濃度のATL−1と一緒にインキュベート(15分間、37℃)した後、前記ミクロチャンバの上方区分室に加えた(1x10/ウエル)。下方の区分室にVEGF(3ng/ml)を加えることで化学走性を開始させた。3回重複して実施した代表的実験の結果をVEGFを基準にした移動抑制パーセントとして表す。
【図3】図3は、HUVEC増殖の抑制を示すグラフ図である。(A)ATL−1はLTDで刺激されたHUVEC増殖を抑制した。HUVEC(5x10)を96個ウエルの培養板で平板培養し、10nMのLTDで細胞増殖を刺激し、そして3日後にMTTを用いて細胞数を測定した。(B)LTDおよびLTBを用いて濃度依存様式で細胞増殖を誘発させた。結果を3回重複して実施した独立した4実験の平均±SEとして表す。
【図4】図4に、ATL−1が脈管形成表現型をインビボで抑制することを示す。(A)6日目のマウス空気嚢に関する血管指数(VI=組織重量1mg当たりのカルミン染料のmg)。嚢を拡張させて24時間後、動物にATL−1(10μg/嚢)または媒体を局所的に注入した後直ちにVEGF(1μg/嚢)を注入した。結果を1群当たりn=4の動物の平均±SEとして表す。*はVEGF単独との差が統計学的に有意(P<0.05)であることを示す。(B)空気嚢の杉油組織学。媒体、ATL−1(10μg)、VEGF(1μg)またはVEGF+ATL−1で局所的に処置して6日目のマウスから取り出した空気嚢の中にカルミン染色血管円柱を作り出した。組織をエタノールに入れて固定した後、杉油で洗浄した。
【図5】図5に、ATL−1が示した抗脈管形成作用を示す:蛍光顕微鏡。ATL−1(10μg/嚢)がマウス空気嚢(方法を参照)の中で示した抗脈管形成作用を示す代表的な蛍光顕微鏡写真。
【図6】図6は、マウス空気嚢の顕微鏡写真である。マウス空気嚢の免疫組織化学CD31。媒体単独で処理したマウス(A)、類似物単独で処理したマウス(B)、VEGFで処理したマウス(C)およびVEGFとATLで処理したマウス(D)から得たCD31[図4および5に示す如き]に関して、パラフィンに埋め込んだ空気嚢断片を染色した。結果は各々2回重複して実施した個々別々の8匹のマウスの代表的結果である。倍率は200X倍率でありそして西洋ワサビペルオキシダーゼに加えてヘマトキシリン対比染色である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(詳細な説明)
ここに、本発明の特徴および他の詳細をより詳細に記述しかつ本請求の範囲で指摘する。本発明の個々の態様は説明として示すものであり、本発明の限定として示すものでないことは理解されるであろう。本発明の主な特徴をいろいろな態様で本発明の範囲から逸脱することなく用いることができる。
【0024】
本出願の全体に渡って用いる省略形には下記が含まれ、それらを便利さの目的でここに含める。ASA:アスピリン、ATL:アスピリン引き金15−エピ−リポキシン、ATL−1:15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA、COX:シクロオキシゲナーゼ、HETE:ヒドロキシエイコサテトラエン酸、HUVEC:ヒト臍帯静脈内皮細胞、IL:インターロイキン、LO:リポキシゲナーゼ、LT:ロイコトリエン、LX:リポキシン、LXA:5S,6R,15S−トリヒドロキシ−7,9,13−トランス−11−シス−エイコサテトラエン酸、15−エピ−LXA:5S,6R,15R−トリヒドロキシ−7,9,13−トランス−11−シス−エイコサテトラエン酸、15−R/S−メチル,LXA:5S,6R,15R/S−トリヒドロキシ−15−メチル−7,9,13−トランス−11−シス−エイコサテトラエン酸のメチルエステル、LXB:5S,14R,15S−トリヒドロキシ−6,8,12−トランス−10−シス−エイコサテトラエン酸、MTT:3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム、PBS:燐酸塩緩衝食塩水、PG:プロスタグランジン、PMN:好中球、VEGF:血管内皮成長因子。
【0025】
本明細書の全体に渡って本発明の治療用化合物をしばしばエステルと言及し、例えばA
TL−1をカルボン酸エステル、即ちメチルエステルとして言及すると理解されるべきである。しかしながら、LXA、ATLおよびLXB化合物に関する薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグ(カルボン酸を包含)は全部本発明の範囲内であると見なす。便利さの目的で、本説明全体に渡ってそのような用語の使用を最小限にしたが、それも本発明の一部であると見なされるべきである。加うるに、用語LXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル、LXAにもまた薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグおよびカルボン酸の全部が含まれることも理解されるべきである。
【0026】
追加的に、ATL、LXAおよびLXBが有するヒドロキシル1つまたは2つ以上がいろいろな保護基、例えば本技術分野で公知の保護基などで保護されていてもよい。本分野の技術者は、そのようなヒドロキシル基1つまたは2つ以上の保護でどの保護基1つまたは2つ以上を用いることができるかを容易に決定することができるであろう。標準的な方法が本技術分野で知られていて、文献により詳細に記述されている。例えば、本分野の技術者は適切な保護基を選択することができ、そしてそれらはGreenおよびWuts、「Protecting Groups in Organic Synthesis」、John Wiley and Sons、1991(これの教示は引用することによって本明細書に組み入れられる)の中に記述されている。好適な保護基にはTMSまたはTIPPS基、好適にはアセテートまたはプロピオネート基が含まれる。
【0027】
例えば、1つ以上のヒドロキシル基に穏やかな塩基、例えばトリエチルアミンなどによる処理を酸クロライドまたはシリルクロライドの存在下で受けさせることでヒドロキシルイオンとハライドの間の反応を助長してもよい。別法として、ハロゲン化アルキルをヒドロキシルイオン(塩基、例えばリチウムジイソプロピルアミドなどで生じさせた)と反応させてエーテルの生成を助長することも可能である。
【0028】
また、必ずしもヒドロキシル基の全部を保護する必要はないことも理解されるべきである。1つ、2つまたは3つ全部のヒドロキシル基に保護を受けさせてもよい。これはヒドロキシル基の保護で用いる反応体を化学量論的に選択することで達成可能である。ヒドロキシが1つ、2つまたは3つ保護された化合物を分離する時、本技術分野で公知の方法、例えばHPLC、LC、フラッシュクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、結晶化、蒸留などを用いることができる。
【0029】
ATL、LXAまたはLXB化合物が有する1つ以上のヒドロキシル基を例えば酢酸エステルにして保護する1つの利点は、そのような化合物1種または2種以上の代謝による完全な吸収が遅くなり得る点にある。これは、そのような化合物1種または2種以上が長期間に渡って活性を示すままであり得るようにする1つの手段である、と言うのは、被験体の体の通常の生理学的条件下でヒドロキシルから保護基がゆっくり取り除かれるからである。加うるに、そのような化合物が有するヒドロキシル基の1つ以上を保護すると、その保護基が加水分解を起こすことによって、保護されていない親化合物が劣化を起こす前にその薬剤が被験体の生物化学的経路の中に入り込むことが可能になる。
【0030】
リポキシン類似物(ATL、LXAまたはLXB)の製造方法は本技術分野で公知である。例えば、米国特許第4,576,758号、4,560,514号、5,079,261号、5,049,681号、5,441,951号、5,648,512号、5,650,435号、6,048,897号、6,1000,296号、6,177,468号および6,316,648号そして日本特許第3,227,922号、63,088,153号、62,198,677号および1,228,994号にリポキシン類似物を調製するアプローチが記述されている、K.C.Nicolaou他による出版物にいろいろなリポキシン化合物へのアプローチが含まれている(例えばNicolaou,K
.C.他、Biochim.Biophys.Acta 1003:44−53;Nicolaou,K.C.他、J.Org.Chem.54:5527−5535およびNicolaou,K.C.、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100−1116を参照)。リポキシン類似物の調製に関する追加的引用文献にはTakano,T.、S.Fiore、J.F.Maddox、H.R.Brady、N.A.PetasisおよびC.N.Serhan.1997が含まれる。アスピリン引き金15−エピ−リポキシンAおよび安定なLXA類似物は急性炎症の効力のある抑制剤である:Evidence for anti−inflammatory receptors、J.Exp.Med.185:1693−1704およびSerhan、Charles N.、Maddox,Jane F.、Petasis,Nicos A.、Akritopoulou−Zanze、Irini、Papayianni、Aikaterina、Brady、Hugh R.、Colgan、Sean P.およびMadara,James L.(1995)、Biochemistry、34、14609−14614頁。
【0031】
アスピリンの治療作用機構にはCOX誘導プロスタノイドの阻害が含まれる(10)。COX−2にASAによるアセチル化を受けさせておくと、COX−2がプロスタノイドを産生する能力が邪魔されるが、その酵素は内皮細胞、上皮細胞および単核細胞の中で活性を示すままであり、細胞と細胞の相互作用または経細胞生合成(transcellular biosynthesis)の新しい産物[アスピリン引き金15−エピ−リポキシン(ATL)と呼ぶ]の生合成を開始させることが見い出された(11)。そのような新しい内因性脂質媒介物は、LXの炭素15エピマー(epimers)であり、これらは未変性のリポキシン(LX)相対物に比較して15個のアルコールをR形態で持ち、全部ではないにしても大部分の内因性LX生活性を模擬すると見られる。
【0032】
今までのところ、ATLの作用は炎症反応の調節に最も関連していると思われる、と言うのは、それらがインビボで生じるのは例えば内皮細胞−好中球が関与し得る細胞−細胞相互作用中であり(12)そしてそれらは炎症におけるいくつかの鍵となる戦略的出来事(strategic events)で効力のある抑制作用を示すからである(12−14)。LXおよびATLの両方の作用には、好中球の接着および遊出の抑制が含まれ、従って、炎症部位の湿りおよび溶解で潜在的に働き得る白血球集積を制限および/または調節する逆調節シグナル(counterregulatory signals)として働き得る(14)。LXの発生および失活は局所的な微細環境の中で急速に起こることから、そのような作用をインビボで調査する目的で、両方のリポキシンの安定な類似物、即ちLXAとATLを設計したが、それらは向上した生利用度を示しかつ天然化合物の生活性が未変性産物に比べて向上しており(14)かつまたASAの効力の〜100倍であることも確かめられている(13)。本発明は、LXAおよびATLが脈管形成を調節し得ること、即ちこれらの化合物の以前には知られていなかった驚くべき用途を確立するものである。例えば、代謝的により安定な合成ATL類似物[15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1と表示)]を用いてATLおよびLXA化合物(15−エピ−LXAまたは15−R/S−メチル,LXAを包含)およびLXAがインビボで効力のある脈管形成休止性エイコサノイド(angiostatic eicosanoid)であることを確かめ、それによって、そのような内因性媒介物が示す新しい活性を同定し、そのような活性は、他のエイコサノイドの作用とは極めて対照的でありかつ人のいくつかの病気に関連している。
【0033】
本発明は、1つの面において、脈管形成を予防、軽減または抑制する方法に関する。それを必要としている被験体にLXAおよびこれの類似物、例えば15−R/Sメチル,LXAなど、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。そのような治療剤が示す作用の結果
として前記被験体における脈管形成が予防、軽減または抑制される。より具体的には、そのような治療剤を以下に記述する如き病気の状態および脈管形成病気過程の状態を治療する目的で用いることができる。より具体的には、本明細書の全体に渡って記述する治療用LXAおよびATL化合物をある被験体における再狭窄、固体状腫瘍組織成長、新血管新生、例えば網膜組織の新血管新生などの治療そして組織の新しい成長を援助するに必要な血液(組織に供給される)の量を少なくする目的で用いることができる。
【0034】
本発明は、また、別の面において、ある被験体の組織における脈管形成を予防、軽減または抑制する方法にも関する。それを必要としている被験体にアスピリン引き金リポキシン(ATL)[15−エピ−LXA、例えば15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンA(ATL−1)など]、およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを有効量で投与することで前記方法を達成する。そのような治療剤が示す作用の結果として前記被験体における脈管形成が予防または抑制される。
【0035】
従って、本発明は、組織における脈管形成を一般的に抑制する方法を提供し、それによって、脈管形成に依存して起こる前記組織内の出来事を抑制または予防する。一般的に、本方法は、例えばATL−1、LXA、15−エピ−LXAまたは15−R/S−メチル,LXAを脈管形成抑制量で含んで成る組成物を組織に投与することを含んで成る。
【0036】
用語「脈管形成」を本明細書で用いる場合、これは、新しい血管が組織または器官の中に生じることを意味する。人または動物に脈管形成が通常の生理学的条件下で起こるのは非常に特定の制限された状況の時のみである。例えば創傷治癒、胎児および胎芽の発育そして黄体、子宮内膜および胎盤の生成に関連して脈管形成が起こる。脈管形成の生化学的面は脈管形成刺激剤および抑制剤の非常に規則的なシステムに関連している。制御された脈管形成が変化することが特定の病気状態の時に確認され、多くの場合、そのような病気に関連した病理学的損傷は制御されない脈管形成に関連している。
【0037】
制御された脈管形成および制御されない脈管形成の生過程は同様な様式で起こると考えている。毛細血管は内皮細胞および周皮細胞(基底膜で覆われている)で形成されている。内皮細胞が放出する酵素および白血球が基底膜を侵食することで脈管形成が助長される。次に、血管の腔を内張りしていた内皮細胞が基底細胞を通り抜ける。脈管形成刺激によって内皮細胞がその侵食された基底膜を通って移動することが誘発される。その移動して来た細胞が親血管から分枝を形成し、そこで、内皮細胞が有糸分裂と増殖を起こす。その内皮分枝が互いに合併して毛細管ループを形成することで、新しい血管が作り出される。病気の状態の時に脈管形成を防止することができれば新しい微細血管系の侵入によって引き起こされる損傷を回避することができるであろう。
【0038】
多数の病気状態、腫瘍の転移および内皮細胞による異常な成長が起こる時に不規則で持続的な脈管形成が起こる可能性があり、それによって、そのように状態の時に見られる病理学的損傷が持続する。そのような不規則な脈管形成が原因で生じる多様な病理学的状態を一緒にして脈管形成依存もしくは脈管形成関連病と分類分けした。本発明は、そのような病気の完治(abrogation)または軽減がもたらされるように脈管形成過程を制御することに向けた治療を提供するものである。外傷による創傷の治癒、黄体形成および胚形成を除き、脈管形成過程は望まれない、しばしば生命を脅かす病気過程に関連していると考えており、従って、本治療方法の使用はそのような病気、即ち脈管形成に選択的であり、有害な副作用を示さない。
【0039】
本発明に従い、上述したATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/
S−メチル,LXAなどを用いて下記の脈管形成病を治療することができる。そのような脈管形成病には、これらに限定するものでないが、下記が含まれる。
【0040】
脈管形成が介在する病気の一例は眼の血管新生病である。このような病気は新しい血管が眼の構造物、例えば網膜または角膜などの中に侵入することを特徴とする。これは、恐らくは、盲目の最も一般的な原因の1つであり、20種を超える眼の病気に関与している。例えば、年齢関連黄斑変性に関連した視覚問題は、Bruch膜に欠陥部が生じることで絨毛膜様毛細管が内方生長するに伴って網膜色素上皮の下側で線維血管(fibrovascular)組織が増殖することで引き起こされる。脈管形成損傷はまた糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、血管新生緑内障および水晶体後線維増殖症にも関連している。角膜新血管新生に関連した他の病気には、これらに限定するものでないが、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過度着用、アトピー性角膜炎、上縁角膜炎、流行性角結膜炎、翼状片角膜炎シカ(sicca)、スジョグレン(sjogrens)、しゅさ性ざ瘡、脂質変性、化学品火傷、細菌性潰瘍、菌・カビ性潰瘍、フィレクテヌロシス(phylectenulosis)、梅毒、ミコバクテリア感染、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、Wegenersサルコイドーシス、強膜炎、スティーヴェンズ−ジョンソン症候群、ペリフィゴイドラディアル角膜切開(periphigoid radial keratotomy)、原生動物感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁表皮剥離、慢性関節リューマチ、全身性狼瘡、多発性関節炎、外傷および角膜グラフ拒絶(corneal graph rejection)が含まれる。
【0041】
網膜/絨毛膜様新血管新生に関連した病気には、これらに限定するものでないが、糖尿病性網膜症、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞病、慢性ユベイチス/ビトリチス(uveitis/vitritis)、ミコバクテリア感染、Lyme病、全身性エリトマトーデス、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維偽黄色腫、Pagets病、未熟児網膜症、Eales病、Bests病、近視、眼窩、Stargarts病、パースプラニチス(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘ちょう度症候群、トキソプラズマ症、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎の原因になる感染、推定眼ヒストプラスマ症、外傷およびレーザー後の合併症が含まれる。他の病気には、これらに限定するものでないが、ルベオーシスに関連した病気、そして線維血管または線維組織の異常な増殖によって引き起こされる病気(あらゆる形態の増殖性硝子体網膜症を包含)が含まれる。
【0042】
脈管形成が関与していると考えられる更により流行している病気は慢性関節リューマチである。例えば関節の滑液内層(synovial lining)の中の血管が脈管形成を起こす。新しい血管網状組織が生じることに加えて、内皮細胞がパンヌス成長と軟骨崩壊をもたらす因子および反応性酸素種を放出する。脈管形成に関与する因子が活性的に慢性関節リューマチの慢性的に炎症を起こした状態の一因になっておりかつそれの持続を助長している可能性があると考えている。
【0043】
脈管形成に関連した因子はまた変形性関節症でもある役割を果たしている可能性があると考えている。脈管形成関連因子によって軟骨細胞が活性化されることが関節崩壊の一因になっている。後期段階では、脈管形成因子が新しい骨の生成を助長する可能性がある。本発明は、骨の崩壊を防止しかつ病気の進行を停止させかつ関節炎で苦しんでいる人の苦しみを軽減する治療介在(therapeutic intervention)を提供するものである。
【0044】
潰瘍性大腸炎およびCrohn病は両方とも組織学的変化をもたらすことが知られており、それに伴って、新しい血管がその炎症を起こした組織の中に内方生長する。バルトネラ症では血管内皮細胞が増殖することで特徴づけられる慢性的状態がもたらされる可能性
がある。脈管形成に関連した更により潜行性の病理学的役割が動脈硬化症に見られる。血管の管腔のプラーキング(plaquing)は脈管形成刺激活性を有することが示された。
【0045】
子供にしばしば見られる脈管形成病は血管腫である。この病気に関連した腫瘍は一般に良性であり、介入なしに後退する。よりひどいケースでは、腫瘍が成長して臨床的合併症をもたらす。血管腫の全身形態である血管腫症は死亡率が高い。現在用いられている治療薬では治療不可能な耐治療性血管腫が存在する。
【0046】
脈管形成はまた遺伝病、例えばOsler−Weber−Rendu病または遺伝性出血性毛細管拡張症などに見られる損傷の一因にもなっている。このような病気は血液またはリンパ管の腫瘍である小さい血管腫が多数存在することを特徴とする。そのような血管腫は皮膚および粘膜に見られ、これはしばしば浮渣(鼻出血)または胃腸出血を伴い、そして時には肺または肝臓動静脈瘻を伴う。
【0047】
癌1種または2種以上に関連した病気の状態1種または2種以上に大きな関心が持たれる。癌はしばしば脈管形成と関連しており、固体状腫瘍の発生および転移で識別される。脈管形成因子は数種の固体状腫瘍、例えば神経芽腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫、Ewing肉腫および骨肉腫などと関連している。腫瘍の拡張は栄養素を供給しかつ細胞廃棄物を除去する血液の供給がなければ起こらないことが知られている。脈管形成が重要な腫瘍には固体状腫瘍および良性腫瘍、例えば聴神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび肉芽腫などが含まれる。脈管形成を予防または抑制することでそのような腫瘍の成長を防止するか或は停止させることができ、かつ腫瘍が存在することによる後の変性状態を防止するか或は停止させることができる。
【0048】
脈管形成はまた血液媒介腫瘍(白血病を包含)、白血球の無制限な増殖が起こって通常は貧血、悪化した血液凝固、そしてリンパ節、肝臓および脾臓の拡大を伴う骨髄のいろいろな急性もしくは慢性腫瘍病のいずれにも関連付けられていた。脈管形成は白血病のような腫瘍をもたらす骨髄異常の原因となる要因として重要であると考えている。
【0049】
脈管形成は2段階の腫瘍転移にとって重要である。脈管形成刺激が重要である1番目の段階は、腫瘍の血管新生(これによって腫瘍細胞が血液の流れの中に入って体全体に渡って循環する)段階である。その腫瘍細胞が最初の部位から出て2番目の転移部位に到達した後、新しい腫瘍が成長して拡張し得る前に脈管形成が起こるはずである。従って、脈管形成を防止すると腫瘍の転移を防止することができ、そしてそれには最初の部位における腫瘍成長が含まれ得る。
【0050】
関連した態様において、本発明を他の治療、例えば固体状腫瘍および転移に対抗することに向けた通常の化学療法などと組み合わせて用いることができる。ATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/S−メチル,LXAなどを化学療法中または後に投与してもよい。好適な態様では、腫瘍の組織が毒性猛攻(toxic assault)に反応した時点で血管の組織が再組織化されて血液と栄養素を腫瘍の組織に供給している時に本薬剤を投与すべきである。追加的に、ATLの使用、例えばATL−1またはLXAを手術で腫瘍を取り除いた後の予防治療薬として用いることで脈管形成がその治療部位で起こらないようにすることができる。
【0051】
脈管形成が腫瘍の持続および転移で果たす役割を知ることが出来たことによって乳癌の予後指標がもたらされた。浸潤性乳癌の中で最も強力に新血管新生が起こる領域の中の微細血管の密度を計算することで一次腫瘍(primary tumor)に見られる新血管新生の量を測定した。微細血管の密度のレベルが高いことと腫瘍の再発が相互に関連し
ていることを確認した。脈管形成を治療手段で制御することができれば恐らくは腫瘍の再発を阻止することができるであろう。
【0052】
脈管形成はまた正常な生理学的過程、例えば生殖および創傷治癒などにも関与している。脈管形成は排卵およびまた受精後の胞胚の着床においても重要な段階である。脈管形成の防止を利用して無月経を誘発するか、排卵を邪魔するか或は胞胚の着床を防止することができるであろう。
【0053】
創傷治癒では、過度の修復または線維増殖が外科手術後の有害な副作用になる可能性があり、これは脈管形成によって引き起こされるか或は一層悪化し得る。接着が手術でしばしば起こる合併症であり、それによって小腸閉塞などの如き問題が生じる。
【0054】
再狭窄は平滑筋細胞(SMC)が経皮トランスルミナル冠状血管形成(percutaneous transluminal coronary angioplasty)部位の所に移動して増殖する過程であり、それによって、血管形成の成功が邪魔される。再狭窄中に起こるSMCの移動および増殖は脈管形成の過程であると考えることができ、それを本方法で抑制する。従って、本発明は、また、血管形成手術を受けた後の被験体における脈管形成を本方法に従って抑制、軽減または予防することで再狭窄を抑制、軽減または予防することも意図する。再狭窄を抑制または予防しようとする時、ATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/S−メチル,LXAなどを手術を行う数日前にか或は血管形成手術を行った後に約2から28日間、より典型的には手術をした後の最初の約14日間に渡って好適には静脈注射で投与してもよい。
【0055】
用語「被験体」を本明細書で用いる場合、これは、脈管形成反応を明らかに示す生きている有機体のいずれかを指す。用語「被験体」には、これらに限定するものでないが、人、人ではない霊長類、例えばチンパンジーおよび他の猿および猿種など、牧場の動物、例えば牛、羊、豚、山羊および馬など、家庭用哺乳動物、例えば犬および猫など、実験室用動物(これには齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモットなどが含まれる)が含まれる。この用語は特別な年齢も性も指すものでない。従って、成人および新生児である被験体ばかりでなく胎児もそれらが男性であるか或は女性であるかに拘わらず包含させることを意図する。
【0056】
用語「哺乳動物」を本明細書で用いる場合、これは抗原に対して免疫反応を明らかに示し得る生きている有機体を指す。用語「被験体」には、これらに限定するものでないが、人ではない霊長類、例えばチンパンジーおよび他の猿および猿種など、羊、豚、山羊、馬、犬、猫、マウス、ラットおよびモルモットなどが含まれる。
【0057】
用語「薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグ」を本明細書で用いる場合、これは本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミドおよびプロドラグを指し、これらは健全な医学判断の範囲内で過度の毒性も刺激もアレルギー反応なども伴うことなく患者の組織に接触させて用いるに適しており、妥当な利点/危険比率と相応しておりかつ本発明の化合物の意図した使用で効果を示す。用語「塩」は、本発明の化合物の相対的に無毒の無機および有機酸付加塩を指す。このような塩を本化合物を最終的に単離および精製している時にインサイチューで生じさせてもよいか、或は遊離塩基形態で精製した本化合物を個別に適切な有機もしくは無機酸と反応させそしてそのようにして生じさせた塩を単離することでそのような塩を調製することも可能である。それらがアルカリおよびアルカリ土類金属、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどばかりでなく無毒のアンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオン(これには、これらに限定するものでないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメ
チルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが含まれる)が基になったカチオンを含有するようにしてもよい(例えばBerge S.M.他、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、1977;66:1−19(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照)。
【0058】
用語「プロドラグ」は、インビボで例えば血液の中で加水分解を受けることなどで急速に変換を受けて前記式で表される親化合物を生じる化合物を指す。完全な考察がT.HiguchiおよびV.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Seriesの第14巻そしてBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編集、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987(これらは両方とも引用することによって本明細書に組み入れられる)に与えられている。プロドラグを本明細書で用いる場合、これは、インビボ投与した時に代謝を受けるか或は他の様式で変換を受けて当該化合物の生物学的、薬学的または治療的に活性な形態になる化合物である。プロドラグの製造では、薬学的に活性な化合物に修飾をその活性化合物が代謝過程で再生するような様式で受けさせる。ある薬剤が示す代謝安定性または輸送特性が変わるか、ある薬剤が示す副作用または毒性が覆い隠されるか、ある薬剤が有する風味が向上するか、或は他の特徴または特性が変わるようにプロドラグの設計を行うことができる。薬剤技術分野の技術者は、薬力学的過程および薬剤のインビボ代謝の知識を有することから、薬学的に活性な化合物を同定した後、一般に、その化合物のプロドラグを設計することができるであろう[例えばNogrady(1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach、Oxford University Press、ニューヨーク、388−392頁を参照]。適切なプロドラグ誘導体を選択かつ調製する通常の手順が例えば「Design of Prodrugs」、H.Bundgaard編集、Elsevier、1985に記述されている。プロドラグの適切な例には、相当する酸のメチル、エチルおよびグリセロールエステルが含まれる。
【0059】
本発明の化合物は以下に記述するようにして薬剤組成物に調合可能である。好適な態様では、本化合物を徐放性(sustained release)組成物の状態で長期間に渡って投与することができる。徐放性組成物は本技術分野で公知であり、本分野の技術者は、本技術分野で一般に知られているパラメーターを基にして受け入れられる組成物を調合することができるであろう。最も好適な態様では、グリセロールのエステルを徐放性組成物の状態、即ち本技術分野で公知の如き経皮パッチ(transdermal patch)の状態で本明細書に記述した炎症状態の治療で用いることができる。適切な経皮パッチ調製方法を米国特許第5,814,599号、5,846,974号または4,201,211号(これらの内容は引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。より詳細には、Ciba−Geigy CorporationおよびAlza Corporationから入手可能な種類のパッチ技術を用いて本化合物を経皮搬送することができる。本発明の薬剤組成物を温血動物、例えば人などに投与する時の投与は断続的であってもよいか、或は漸次、連続、一定または制御した速度で投与してもよい。加うるに、本薬剤調合物を投与する日の時間および1日当たりの回数も多様であり得る。好適には、本薬剤調合物の活性材料が炎症状態と相互作用するように投与を行う。
【0060】
「治療有効量」は、ATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/S−メチル,LXAなどが治療を受けさせた組織に測定可能な脈管形成の抑制、軽減または予防をもたらすに充分な量、即ち脈管形成抑制量である。脈管形成抑制のインサイチュー測定は免疫組織化学でか或は本分野の技術者に公知の他の方法、例えばP−セレクチンま
たはVEGF受容体を監視するFAC分析による測定などで実施可能である。また図4および5も参照。
【0061】
より具体的には、本発明の薬剤組成物は本発明の抗脈管形成薬(antiangiogenic)を「治療有効量」または「予防有効量」で含有し得る。「治療有効量」は、必要な投薬量および期間で所望の治療結果、例えばいろいろな病気状態(states or conditions)に関連した脈管形成ファクター(angiogenic factors)の減少、軽減または防止を達成するに有効な量を指す。本抗脈管形成薬の治療有効量は個人の病気の状態、年齢、性および体重、そして本抗脈管形成薬がその個人に所望の反応を引き出す能力などの如き要因に応じて多様であり得る。治療有効量は、また、抗体または抗体部分が与える何らかの毒性または有害な影響よりも治療的に有益な効果の方が勝るような量である。
【0062】
「予防有効量」は、必要な投薬量および時間で所望の予防結果、即ち防止を達成するに有効な量を指す。予防投薬を典型的には病気になる前または病気の初期段階の被験体に用いることから、予防有効量の方が治療有効量よりも少ないであろう。
【0063】
所望反応(例えば治療もしくは予防反応)が最適になるように投薬管理(dosage
regimens)を調整してもよい。例えば、単一の巨丸剤を投与してもよいか、投薬量を数回に分けて経時的に投与してもよいか、或は治療状況の緊急度に比例させて投薬量を少なくするか或は多くしてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一さが理由で非経口組成物を投薬単位形態で調合するのが特に有利である。「投薬単位形態」を本明細書で用いる場合、これは、治療を受けさせる哺乳動物である被験体に単位投薬として投与するに適した物理的に個別の単位を指し、各単位は必要な薬学的担体(pharmaceutical carrier)と一緒に活性化合物を所望の治療効果をもたらすように計算した前以て決めた量で含有する。本発明の投薬単位形態に関する仕様は、(a)本活性化合物のユニークな特徴および達成すべき個々の治療もしくは予防効果そして(b)前記活性化合物を治療で配合する技術に関して個人が示す感受性に関する固有の制限で左右されかつそれらに直接依存する。
【0064】
本発明の抗脈管形成薬の治療もしくは予防有効量の典型的な非限定範囲は0.1−20mg/kg、より好適には1−10mg/kgである。投薬の値は軽減すべき状態の種類およびひどさに伴って変わり得ることを注目すべきである。更に、所定の被験体に関して、その個体の必要性そして本組成物を投与するか或は投与を管理する人の専門的な判断に応じて具体的な投薬管理を経時的に調整すべきでありかつ本明細書に挙げる投薬範囲は単に典型的でありそして請求する組成物の範囲も実施も限定することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0065】
本発明の抗脈管形成化合物、例えばATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/S−メチル,LXAなどをある被験体に投与するに適した薬剤組成物の中に組み込んでもよい。典型的には、そのような薬剤組成物は本発明の抗脈管形成薬と薬学的に受け入れられる担体を含んで成る。「薬学的受け入れられる担体」を本明細書で用いる場合、これには、生理学的に適合し得るいずれかおよびあらゆる溶媒、分散用媒体、コーティング、抗細菌剤および抗菌・カビ剤、等張性および吸収遅延剤(absorption delaying agents)などが含まれる。薬学的に受け入れられる担体の例には、水、食塩水、燐酸塩緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種以上ばかりでなくこれらの組み合わせが含まれる。ある場合には、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムなどを本組成物に含有させるのも有益であり得る。薬学的に受け入れられる担体に更に少量の補助物質、例えば湿潤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝剤などを含めてもよく、こ
れらは本抗脈管形成薬の貯蔵寿命または有効性を向上させる。
【0066】
追加的に、本発明の化合物の一、二および/または三保護アルコールを用いて抑制/予防用化合物を徐々に放出させる。例えば、本発明のトリアシル類似物を用いて、これが加水分解を受けることで生じたトリ−ヒドロキシアルコール1種または2種以上をそのように徐々に放出させる。このように、トリアシル化類似物(triacylated analogs)は被験体の血液の中で脱エステル化を起こす(de−esterified)。
【0067】
本発明の抗脈管形成薬を非経口投与に適した薬剤組成物の中に組み込んでもよい。他の適切な緩衝剤には、これらに限定するものでないが、こはく酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、燐酸ナトリウムまたは燐酸カリウムが含まれる。そのような溶液の毒性を軽減する目的で塩化ナトリウムを0−300mMの濃度で用いてもよい(液状の投薬形態の場合の最適な濃度は150mM)。凍結乾燥投薬形態の場合にはクリオプロテクタント(cryoprotectants)を含有させてもよく、たいていはスクロースを0−10%(最適には0.5−1.0%)含有させてもよい。他の適切なクリオプロテクタントにはトレハロースおよびラクトースが含まれる。凍結乾燥投薬形態の場合にはバルキング剤(bulking agents)を含有させてもよく、たいていはマンニトールを1−10%(最適には2−4%)含有させてもよい。安定剤を液体投薬形態および凍結乾燥投薬形態の両方で用いてもよく、たいていはL−メチオニンを1−50mM(最適には5−10mM)用いてもよい。他の適切なバルキング剤にはグリシン、アルギニンが含まれ、それを0−0.05%(最適には0.005−0.01%)のポリソルベート−80(polysorbate−80)として含有させてもよい。追加的界面活性剤には、これらに限定するものでないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が含まれる。
【0068】
本発明の組成物はいろいろな形態を取り得る。それらには、例えば液体、半固体および固体状の投薬形態、例えば液状溶液(例えば注射可能および注入可能溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソームおよび座薬が含まれる。好適な形態は意図した投与様式および治療用途に依存する。好適な典型的組成物は注射もしくは注入可能な溶液の形態、例えば人の受動的免疫化で用いられる組成物に類似した組成物の形態である。好適な投与様式は非経口(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好適な態様では、本抗脈管形成薬を静脈内注入または注射で投与する。別の好適な態様では、本抗脈管形成薬を筋肉内または皮下注射で投与する。最も好適な態様では、本抗脈管形成薬を経口で投与する。
【0069】
別法として、好適な態様は本発明の化合物を点眼溶液の状態で用いることを包含する。そのようにすると眼の病気、例えば緑内障などを抑制または防止する時の使用が容易になる。一般的には、活性材料、即ち本発明の化合物を水溶液の状態で溶解させ、それを目に直接加えてもよい。
【0070】
治療用組成物は典型的に無菌であるべきでありかつ製造および貯蔵条件下で安定であるべきである。本組成物は溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または薬剤濃度を高くするに適した他の秩序ある構造物として調合可能である。注射可能な無菌溶液の調製は、活性化合物(即ち抗原、抗体または抗体部分)を必要な量で適切な溶媒にこの上に挙げた材料の1種または組み合わせと一緒に混合しそして必要ならばその後に無菌濾過を行うことで実施可能である。
【0071】
分散液を調製する場合、一般的には、基本的な分散用媒体(basic dispersion medium)とこの上に挙げた材料に属する必要な他の材料を入れておいた無菌媒体の中に活性化合物を混合することで調製を行う。注射可能な無菌溶液を調製する
時に用いるに適した無菌凍結乾燥粉末の場合の好適な調製方法は、前以て無菌濾過を受けさせておいた活性材料と任意の追加的所望材料が入っている溶液からそれの粉末を生じさせる真空乾燥およびスプレー乾燥である。ある溶液の適切な流動性の維持は、例えば、コーティング、例えばレシチンなどを用いること、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持すること、界面活性剤を用いることなどで実施可能である。注射した組成物が長期間に渡って吸収されるようにしようとする場合には、吸収を遅らせる作用剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンなどを本組成物に含有させることでそれをもたらすことができる。
【0072】
本発明の抗脈管形成薬は本技術分野で公知のいろいろな方法で投与可能である。本分野の技術者が理解するであろうように、投与経路および/または様式は望まれる結果に応じていろいろであろう。特定の態様では、本活性化合物を本化合物が急速に放出されないように保護する担体と一緒に調合してもよく、例えば徐放性調合物として調合可能であり、それには移植、経皮パッチおよびミクロカプセル封じされた搬送システムが含まれる。生分解性で生適合性の重合体、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などを用いることができる。そのような調合物の調製方法の多くは特許で保護されているか或は本分野の技術者に一般に公知である[例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Sytems、J.R.Robinson編集、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照]。
【0073】
特定の態様では、本発明の抗脈管形成薬を例えば不活性な希釈剤または同化可能な食用担体などと一緒にして経口投与してもよい。また、本化合物(および望まれるならば他の材料)を硬質または軟質のゼラチン製殻カプセルの中に封じ込めるか、圧縮して錠剤にするか、或は被験体の食事の中に直接混合してもよい。本化合物を経口で治療投与する場合、これを賦形剤と一緒に混合して、摂取可能な錠剤、頬の錠剤(buccal tablets)、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で用いてもよい。本発明の化合物を非経口以外の投与で投与する時には、本化合物をこれを不活性にしない材料で被覆するか或はそのような化合物と一緒に投与する必要もあり得る。
【0074】
本発明は、また、ある被験体における脈管形成活性を予防または抑制する時に用いるに有用な包装された薬剤組成物も提供する。この包装された薬剤組成物は容器を包含し、これに少なくとも1種のATL、例えばATL−1またはLXA、例えば15−R/S−メチル,LXAなどまたはこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグを治療有効量で入れかつこの治療用化合物を被験体の脈管形成活性の予防、軽減または抑制で用いる時の説明書を入れておく。追加的に、本発明は治療有効量で包装された薬剤組成物、例えばATL−1、LXA、15−エピ−LXAもしくは15−R/S−メチル,LXA、またはこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグと治療、即ち新血管新生による固体状腫瘍組織成長を抑制または予防するか、新血管新生を抑制または予防するか、網膜組織内で起こる新血管新生を抑制または予防するか、脈管形成後に起こる組織内の再狭窄(この場合には平滑筋細胞の移動が起こる)を抑制または予防するか、或は新しい脈管形成組織の新しい成長を援助するに必要な血液(組織に送られる)の供給を少なくするに有用な説明書を提供する。
【0075】
本発明は、また、脈管形成を助長する脈管形成性化合物も提供する。驚くべきことに、LXA、LXA類似物およびATL類似物の形態異性体、即ちLXBおよびLXB類似物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドまたはプロドラグは、この上に示した本発明の化合物が示した組織の血管再生に関して反対の効果を与える。即ち、LXBおよびLXB類似物は血管または上皮組織の再生および内方生長の刺激
が求められている組織に関してそのような刺激を行う能力を有することを驚くべきことに見いだした。このことは、組織移植、組織工学および人工器官グループ結合部位にとって特に重要である。従って、本発明は、そのような結果を達成する組織再生方法、そのような用途用の化合物および包装された薬剤を提供する。
【0076】
例えば、冠状血管系および抹消血管系の中の血液を担持している血管が部分的または完全に遮断されると結果として心臓血管病になる。血管の閉塞が起こると結果としてその閉塞を起こした血管が以前には栄養を送っていた組織が死滅するか或は血管が高い血液の消費および付随する栄養素を要求している領域に血液を充分な供給量で輸送することができなくなってしまう可能性がある。血管の閉塞はある程度ではあるが自然の脈管形成によって補充され、その悪化した血管の機能の代わりをする新しい導管が生じ得る。そのような新しい導管は「二次的(collateral)」血管と呼ばれており、これはその失われた組織に血液の流れを修復させることで、その閉塞を起こした血管の回りに自然のバイパスを構築するに役立ち得る。しかしながら、ある人では、様々な理由で、心臓血管病の結果として減少した血液の流れをうまく処理するに充分な量では二次的血管が生じ得ない。
【0077】
本発明のLXB化合物を用いて体が自然の脈管形成を起こすことでそれ自身を修復する自然の能力を向上させることができる。本明細書の内容および本図から分かるであろうように、そのようなユニークな化合物を用いると血管の成長が刺激される。本方法および本化合物の使用を創傷の治癒で利用することができる。LXB化合物は治癒過程の刺激に役立ち、再上皮形成および血管形成を起こさせる。
【0078】
本発明が包含する適切なリポキシン類似物(ATL、LXAおよびLXBを包含)には下記の特徴を有する類似物が含まれる。
【0079】
両用語が本明細書において定義されるような「活性領域」および「代謝変換領域」を含んでなる本リポキシンは、一般に、次の構造:
【0080】
【化1】

【0081】
を有し、
式中、Rは、
【0082】
【化2】

【0083】
であってもよく、
そしてRは、
【0084】
【化3】

【0085】
【化4】

【0086】
であってもよい。
【0087】
1つの実施態様では、本発明のリポキシン類似体は、次の構造式I:
【0088】
【化5】

【0089】
を有し、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0090】
【化6】

【0091】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であり;
は、O、SもしくはNHであり;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
またはYは、−OH、メチルもしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
または
(d)炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0092】
【化7】

【0093】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)R
[式中、Qは、OもしくはSであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
であり;そして
は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル;
(c)ハロゲン、
である。
【0094】
本発明の1つの実施態様では、リポキシン類似体は、次の構造II:
【0095】
【化8】

【0096】
を有し、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0097】
【化9】

【0098】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子、例えば限定されるものではないが蛍光標識;または
(viii)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(C=N)であり;
は、O、SもしくはNHであり;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
またはYは、−OH、メチル,−Hもしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(d)炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0099】
【化10】

【0100】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)−R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;または(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;そして各Zは、独立して、シアノ
、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
である。
【0101】
本発明の1つの実施態様では、リポキシン類似体は、次の構造III:
【0102】
【化11】

【0103】
を有し、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0104】
【化12】

【0105】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(C=N)であり;
は、O、SもしくはNHであり;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
は、
(a)水素原子;または
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
またはYは、ヒドロキシル、メチル,水素もしくはチオールであり、そして他方は、(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(d)炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;そして
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0106】
【化13】

【0107】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)−R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;または(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
である。
【0108】
本発明のその他の実施態様では、リポキシン類似体は、次の構造式IV:
【0109】
【化14】

【0110】
を有し、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0111】
【化15】

【0112】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であり;
は、O、SもしくはNHであり;
およびRの1つは、水素であり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
は、
(a)水素原子;または
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
またはYは、−OH、メチルもしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
または
(d)炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0113】
【化16】

【0114】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;または(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
であり;そして
は、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル;または
(c)ハロゲン原子、
である。
【0115】
本発明のその他の実施態様では、リポキシン類似体は、次の構造式V:
【0116】
【化17】

【0117】
を有し、
式中、Rは、
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(iii)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0118】
【化18】

【0119】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル、
であり;
n=1〜10のすべてを含む;
、R3aおよびR3bは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
またはYは、−OH、メチル、水素もしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
またはYは、−OH、メチル、水素もしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニト
ロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
またはYは、−OH、メチル、水素もしくは−SHであり、そして他方は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、
であるか、
あるいはYおよびYは、一緒になって、
(a)=NH;または
(b)=O
であり;
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0120】
【化19】

【0121】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルであるか、または置換フェニルであるかいずれでもよい];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;または(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;そして各Zは、独立して、シアノ
、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];または
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
である。
【0122】
本発明のその他の実施態様では、リポキシン類似体は、構造式VI:
【0123】
【化20】

【0124】
を有し、
式中、R
(a)水素原子;または
(b)炭素原子1〜8個のアルキル、
であり;
は、
(a)置換フェニル
【0125】
【化21】

【0126】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(b)置換フェノキシ
【0127】
【化22】

【0128】
[式中、Z〜Zは、上記のとおりである];または
【0129】
【化23】

【0130】
[式中、Z〜Zは、上記のとおりである]
である。
【0131】
本発明のその他の好適な実施態様では、リポキシン類似体は、次の構造式VII:
【0132】
【化24】

【0133】
を有し、
式中、Rは、
(a)水素原子;または
(b)炭素原子1〜8個のアルキル、
であり;
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)メチルもしくはハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素原子1〜3個のアルコキシ、
であり;
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)メチルもしくはハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素原子1〜3個のアルコキシ;または
(f)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキルもしくはハロアルキル、
である。
【0134】
本発明のその他の好適な実施態様では、リポキシン類似体は、構造式VIII:
【0135】
【化25】

【0136】
を有し、
式中、Rは、
(a)水素原子;または
(b)炭素原子1〜8個のアルキル、
であり;
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)ハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜3個のすべてを含むアルキル;
(f)炭素原子1〜3個のすべてを含むアルコキシ、
であり;
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)メチルもしくはハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)炭素原子1〜3個のすべてを含むアルコキシ;または
(f)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキルもしくはハロアルキル、
である。
【0137】
本発明のその他の実施態様では、リポキシン類似体は、構造式IX:
【0138】
【化26】

【0139】
を有し、
式中、Rは、
(a)水素原子;または
(b)炭素原子1〜8個のアルキル、
であり;
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)ハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜3個のすべてを含むアルキル;
(f)炭素原子1〜3個のすべてを含むアルコキシ、
であり;そして
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜4、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;または
(iii)置換フェニル
【0140】
【化27】

【0141】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、
は直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルであるか、または置換フェニルであるかいずれでもよい];
(d)−C(Riii)(Riv)−R
[式中、RiiiおよびRivは、各々独立して、(i)水素原子;または(ii)CH(式中、a+b=3、a=0〜3、b=0+3;各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である)である];または
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
である。
【0142】
その他の好適な実施態様では、化合物は、構造式X:
【0143】
【化28】

【0144】
を有し、
式中、Rは、
(a)水素原子;または
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル、
であり;そして
およびRは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)ヒドロキシルもしくはチオール;
(c)ハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜3個のすべてを含むアルキル;
(f)炭素原子1〜3個のすべてを含むアルコキシ、
である。
【0145】
その他の好適な実施態様では、化合物は、構造式XI:
【0146】
【化29】

【0147】
を有し、
式中、Rは、
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;または
(iii)検出可能な標識分子、
であり;
n=1〜10のすべてを含む;
、R3aおよびR3bは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R
[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルである]
であり;
は、−OH、メチルもしくは−SHであり;
は、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];または
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
およびYは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)CH
[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そして各Zは、独立して、シアノ、ニトロもしくはハロゲン原子である];または
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
およびYは、各々独立して、
(a)水素原子;
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル;
(c)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ;または
(d)ヒドロキシルもしくはチオール、
であり;そして
は、
(a)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜9個のアルキル;
(b)−(CH−R
{式中、n=0〜3、そしてRは、
(i)炭素原子3〜10個のすべてを含むシクロアルキル;
(ii)フェニル;
(iii)置換フェニル
【0148】
【化30】

【0149】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]、である};
(c)−R
{式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;
は、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;
は、
(a)置換フェニル
【0150】
【化31】

【0151】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(b)置換フェノキシ
【0152】
【化32】

【0153】
[式中、Z〜Zは、上記のとおりである];または
【0154】
【化33】

【0155】
[式中、Z〜Zは、上記のとおりである]、である};
(d)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜8個のすべてとハロゲン原子1〜6個のすべてを含むハロアルキル、
である。
【0156】
本発明のある実施態様では、本発明の化合物は、次の構造式を有する:
【0157】
【化34】

【0158】
【化35】

【0159】
【化36】

【0160】
[式中、R’は、HもしくはCHであり;そしてC*における置換基は、R配置において存在する]。
【0161】
本発明の他の好適な実施態様では、本発明の化合物は、次の構造式を有する:
【0162】
【化37】

【0163】
【化38】

【0164】
【化39】

【0165】
[式中、C*における置換基は、R配置において存在する]。
【0166】
本発明のカルボン酸およびエステルは、必要であれば、製薬的に許容しうる塩に転化できることを理解すべきである。
【0167】
本発明のある実施態様では、LXBまたはLXBのC5およびC14およびC15アルカノエート(アセテート)は除外されてもよい。
【0168】
フェノキシもしくはチオフェノキシ置換基を有するリポキシン
その他の態様では、本明細書を通して記述される疾患、疾病状態もしくは症状の処置において治療剤として有用なリポキシンおよびリポキシン類似体は、式:
【0169】
【化40】

【0170】
を有し、そしてそれらの製薬的に許容しうる塩であり、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0171】
【化41】

【0172】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であるが、QがCNである場合には、Xは不在でなければならない;
およびQは、各々独立して、O、SもしくはNHであり;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または
分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルであるが、Rが0である場合には、Rは水素原子でなければならない]
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
は、
【0173】
【化42】

【0174】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルまたは置換もしくは非置換の分枝もしくは非分枝アルキル基から選ばれる]
であり;
は、−OH、メチル、−SH、直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、またはCH[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そしてZは、シアノ、ニトロもしくはハロゲンである]
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
Tは、OもしくはSである。
【0175】
なおその他の態様では、本明細書を通して記述される疾患、疾病状態もしくは症状の処置において治療剤として有用なリポキシンおよびリポキシン類似体は、式:
【0176】
【化43】

【0177】
を有し、そしてそれらの製薬的に許容しうる塩であり、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0178】
【化44】

【0179】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であるが、QがCNである場合には、Xは不在でなければならない;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルであるが、Rが0である場合には、Rは水素原子でなければならない]
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
は、
【0180】
【化45】

【0181】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルまたは置換もしくは非置換の、分枝もしくは非分枝アルキル基から選ばれる]であり;
は、−OH、メチル、−SH、直鎖または分枝鎖の、炭素原子2〜4個のすべてを含むアルキル、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルコキシ、またはCH[式中、a+b=3、a=0〜3、b=0〜3;そしてZは、シアノ、ニトロもしくはハロゲンである]
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
Tは、OもしくはSである。
【0182】
なおその他の態様では、本明細書を通して記述される疾患、疾病状態もしくは症状の処置において治療剤として有用なリポキシンおよびリポキシン類似体は、式:
【0183】
【化46】

【0184】
を有し、そしてそれらの製薬的に許容しうる塩であり、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0185】
【化47】

【0186】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であるが、QがCNである場合には、Xは不在でなければならない;
およびRの1つは、水素原子であり、そして他方は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;
(c)炭素原子3〜6個のすべてを含むシクロアルキル;
(d)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子2〜8個のすべてを含むアルケニル;または
(e)R[式中、Qは、−O−もしくは−S−であり;Rは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜6個のすべてを含むアルキレンであり;そしてRは、直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子0〜8個のすべてを含むアルキルであるが、Rが0である場合には、Rは水素原子でなければならない]
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
は、
【0187】
【化48】

【0188】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−C
N、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルまたは置換もしくは非置換の、分枝もしくは非分枝アルキル基から選ばれる]であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
Tは、OもしくはSである。
【0189】
なおその他の態様では、本明細書を通して記述される疾患、疾病状態もしくは症状の処置において治療剤として有用なリポキシンおよびリポキシン類似体は、式:
【0190】
【化49】

【0191】
を有し、そしてそれらの製薬的に許容しうる塩であり、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0192】
【化50】

【0193】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、(C=O)、SOもしくは(CN)であるが、QがCNである場合には、Xは不在でなければならない;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
は、
【0194】
【化51】

【0195】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルまたは置換もしくは非置換の、分枝もしくは非分枝アルキル基から選ばれる]であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖の、炭素原子1〜4個のすべてを含むアルキル、
であり;
Tは、OもしくはSである。
【0196】
1つの態様では、本明細書を通して記述される疾患、疾病状態もしくは症状の処置において治療剤として有用なリポキシンおよびリポキシン類似体は、式:
【0197】
【化52】

【0198】
を有し、そしてそれらの製薬的に許容しうる塩であり、
式中、Xは、R、ORもしくはSRであり;
この場合、R
(i)水素原子;
(ii)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてを含むアルキル;(iii)炭素原子3〜10個のシクロアルキル;
(iv)炭素原子7〜12個のアラルキル;
(v)フェニル;
(vi)置換フェニル
【0199】
【化53】

【0200】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる];
(vii)検出可能な標識分子;または
(viii)炭素原子2〜8個のすべてを含む直鎖または分枝鎖アルケニル、
であり;
は、
(a)H;
(b)直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜6個のすべてを含むアルキル
であり;
は、
【0201】
【化54】

【0202】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルまたは置換もしくは非置換の、分枝もしくは非分枝アルキル基から選ばれる]である。
【0203】
好適な実施態様では、XはOR[式中、Rは水素原子、炭素原子1〜4個のアルキル基または製薬的に許容しうる塩である]であり、QはC=Oであり、RおよびRは、存在するならば、水素原子であり、Rは水素原子もしくはメチルであり、QおよびQは、存在するならば、両方Oであり、Rは、存在するならば、水素原子であり、Yは、存在するならばOHであり、TはOであり、そしてRは置換フェニル、例えば

【0204】
【化55】

【0205】
[式中、Z、Zii、Ziii、ZivおよびZは、各々独立して、−NO、−CN、−C(=O)−R、−SOH、水素原子、ハロゲン、メチル、−OR(式中、Rは直鎖または分枝鎖であってもよい、炭素原子1〜8個のすべてである)、およびヒドロキシルから選ばれる]である。Rについてのある実施態様では、パラ−フルオロフェニルおよび/または非置換フェニルが好適であり、例えば、15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−LXA、16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−LXA、15−エピ−16−フェノキシ−LXAもしくは16−フェノキシ−LXA
【0206】
なおその他の態様では、本発明は、本明細書を通して記述される式を有する化合物および製薬的に許容しうるキャリヤーを含有する製薬組成物に対向される。1つの実施態様では、好適な化合物は、
【0207】
【化56】

【0208】
である。
【0209】
1つの実施態様では、Qはカルボニルであり、Xはヒドロキシルもしくは−OR[式中、Rはアルキル基、すなわちメチルもしくはエチル基である]であり、そしてRは水素原子である。
【0210】
他の実施態様では、Yはヒドロキシルであり、そしてヒドロキシルを担持している炭素はRまたはS立体配置を有することができる。もっとも好適な実施態様では、ヒドロキシル基、例えばYを担持しているキラル炭素は、当該技術分野において既知であるように15−エピ−リポキシンと呼ばれている。
【0211】
ある実施態様では、R、R、QおよびQ基を担持している炭素のキラリティーは、各々独立して、RまたはSのいずれであってもよい。好適な実施態様では、QおよびQは、先に引用した構造において示されるキラリティーを有する。
【0212】
好適な実施態様では、Rは水素である。他の好適な実施態様では、Rは水素である。 さらに、Rは、炭素原子1〜約6個、好ましくは炭素原子1〜4個、もっとも好ましくは1〜3個、そして好ましくは炭素原子1または2個を有する置換または非置換の、分枝または非分枝アルキル基であってもよい。炭素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基もしくはエーテル基を含む置換基を有してもよい。
【0213】
本発明において有用な化合物は、次の合成スキムによって製造することができる:
【0214】
【化57】

【0215】
[式中、X、Q、Q、Q、R、R、R、R、R、YおよびTは先に定義されたとおりである]。
【0216】
技術上既知の適当な方法が使用されて、各フラグメントを製造することができる。例えば、アセチレンフラグメントは、Nicolaou,K.C.et al.(1991)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.30:1100;Nicolaou、
K。C.et al.(1989)J.Org.Chem.54:5527;Webber,S.E.et al.(1988)Adv.Exp.Med.Biol.229:61;および米国特許第5,441,951号において議論される方法によって製造されてもよい。第2のフラグメントは、Raduchel,B.and Vorbruggen,H.(1985)Adv.Prostaglandin Thromboxane Leukotoriene Res.14:263の方法によって製造することができる。結果として、アセチレン中間体は、また、本明細書に記述される種々の疾患の治療のために有用であるとして本発明によって包含される。類似するアプローチが採られて、例えば米国特許第6,316,648号において記述されるようなLXBアセチレン化合物を製造できる。
【0217】
「リポキシン類似物」は、「天然のリポキシン」が有する活性領域に類似した機能を果たす「活性領域」を有するが天然のリポキシンとは異なる「代謝形質転換領域(metabolic transformation region)」を有する化合物を意味する。リポキシン類似物には、構造的に天然リポキシンに類似している化合物、同じ受容体認識部位を共有する化合物、リポキシンと同じまたは同様なリポキシン代謝形質転換領域を共有する化合物、そしてリポキシンの類似物であるとして本技術分野で認識されている化合物が含まれる。リポキシン類似物にはリポキシン類似物である代謝産物が含まれる。本明細書に開示する化合物は不斉中心を1つ以上含有する可能性がある。不斉炭素原子が存在すると、立体異性体が2つ以上存在する可能性があり、可能なあらゆる異性体形態を表示構造描写内に含めることを意図する。光活性(R)と(S)異性体は通常の技術者に公知の通常技術を用いて分割可能である。本発明に可能なジアステレオマーばかりでなくラセミ混合物および光学的に分割した異性体を包含させることを意図する。
【0218】
用語「相当するリポキシン」および「天然リポキシン」は天然に存在するリポキシンまたはリポキシン代謝産物を指す。ある類似物がリポキシン特異的受容体に対して活性を示す場合、その相当するまたは天然のリポキシンはその受容体の通常のリガンドである。例えば、ある類似物が分化したHL−60細胞に存在するLXA特異的受容体の場合の相当するリポキシンはLXAである。ある類似物が別の化合物に対する拮抗薬(天然に存在するリポキシンが拮抗する)(例えばロイコトリエンC4および/またはロイコトリエンD4)として活性を示す場合、その天然のリポキシンが相当するリポキシンである。
【0219】
「活性領域」は、天然のリポキシンまたはリポキシン類似物が有するインビボ細胞相互作用に関連した領域を意味する。その活性領域は細胞のリポキシン受容体または巨大分子もしくは巨大分子の複合体[酵素およびこれのコファクター(cofactor)を包含]が有する「認識部位」と結合し得る。例えばリポキシンA類似物は天然リポキシンAのC−C15を含んで成る活性領域を有する。同様に、例えばリポキシンB類似物は天然リポキシンBのC−C14を含んで成る活性領域を有する。
【0220】
用語「認識部位」または受容体は本技術分野で認識されており、一般に、機能的巨大分子または巨大分子の複合体[これは、特定群の細胞メッセンジャー、例えばホルモン、ロイコトリエン、リポキシンなどに対する生物学的および生理学的反応が始まる前にそれらと最初に接触すべきである]を指すことを意図する。本出願で用いる如き受容体は単離可能であるか、無傷または透過可能になった(permeabilized)細胞の上に存在するか、或は組織(器官を包含)の中に存在し得る。受容体は生きている被験体に由来するか或はその中に存在していてもよいか、或はそれをクローン化することも可能である。受容体は通常に存在し得るか、或は病気の状態、損傷、または人工的手段で受容体を誘発することも可能である。本発明の化合物は認識部位を有する天然基質に関して可逆的、不可逆的、競合的、非競合的または不競合的に結合し得る。
【0221】
用語「代謝形質転換領域」は、一般に、リポキシン、リポキシン代謝産物またはリポキシン類似物(リポキシン類似物である代謝産物を包含)の部分[この部分に対して酵素または酵素とこれのコファクターが1種以上の代謝形質転換(前記酵素または酵素とコファクターが通常にリポキシンに対して行う形質転換)を実施することを試みる]を指すことを意図する。この代謝形質転換領域は形質転換を受け易いか或は受け易くなくてもよい。同様に、そのような領域は恐らくはATLおよびLXB類似物の中にも局在するであろう。リポキシンの代謝形質転換領域の非限定例はLXAの一部(C−13,14二重結合またはC−15ヒドロキシル基または両方を含有する)である。
【0222】
用語「検出可能標識分子」は、この検出可能標識分子が結合する化合物または受容体認識部位を追跡、探知または同定する時に用いる蛍光、燐光および放射能標識分子をこの用語に包含させることを意味する。そのような標識分子は本技術分野で公知の数種の方法のいずれかで検出可能である。
【0223】
用語「標識付き類似物」に放射性同位体、例えばこれらに限定するものでないが、トリチウム(H)、デューテリウム(H)、炭素(14C)などによる標識を付けたか或は他の様式(例えば蛍光)で標識を付けておいた化合物を包含させると更に理解する。本発明の化合物に標識または誘導化を例えば結合速度実験の目的、代謝経路および酵素機構を更に明らかにする目的、または分析化学技術で公知の方法を用いて特徴付けを行う目的などで受けさせてもよい。
【0224】
用語「代謝を抑制」は、未変性エイコサノイドに代謝を受けさせる酵素の活性を遮断または軽減することを意味する。共有結合、不可逆結合、可逆結合(これは実際は不可逆結合の効果を有する)、または当該酵素が別のリポキシン類似物(リポキシン類似物である代謝産物、リポキシンまたはリポキシン代謝産物を包含)に対して通常様式で機能しないようにする他のいずれかの手段を用いて、そのような遮断または軽減を起こさせることができる。このことをまた同様にATLおよびLXB類似物にも適用する。
【0225】
用語「代謝に抵抗する」は、リポキシン、ATLまたはLXB類似物に代謝を受けさせる酵素の少なくとも1種が代謝分解形質転換(metabolic degradative transformations)の1種以上を行うことができなくなることをこの用語に包含させることを意味する。代謝に抵抗するLXA類似物の2つの非限定例は、1)15−オキソ形態になる酸化を受け得ない構造物、および2)酸化を受けて15−オキソ形態になり得るが13,14−ジヒドロ形態になる酵素還元を受けない構造物である。
【0226】
用語「よりゆっくりと代謝を受ける」は、リポキシン、リポキシン類似物、ATLまたはLXB類似物に代謝を受けさせる酵素の1種以上が反応する速度が遅いか或は一連の代謝形質転換の完了に要する時間がより長いことを意味する。代謝を受ける速度が遅い方のLXA類似物の非限定例は、C−15脱水素化に関する遷移状態エネルギーがLXAのそれよりも高い構造物である、と言うのは、そのような類似物はC−16の所が立体的に障害を受けているからである。
【0227】
用語「組織」に無傷の細胞、血液、血液調剤、例えば血漿および血清など、骨、関節、筋肉、平滑筋および器官などを包含させることを意図する。
【0228】
用語「ハロゲン」にフッ素、塩素、臭素およびヨウ素、またはフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを包含させることを意図する。
【0229】
以下に示す実施例で本発明のさらなる説明を行うが、決してさらなる限定として解釈さ
れるべきでない。本出願全体に渡って引用したあらゆる引用文献、係属中の特許出願および公開された特許出願(背景章で引用したそれらを包含)の内容は引用することによって本明細書に組み入れられる。本実施例全体に渡って用いたモデルは一般に認められているモデルでありかつそのようなモデルを用いた効力の立証は人における効力の予測であると理解されるべきである。
【実施例】
【0230】
材料および方法
細胞培養物
0.1%コラゲナーゼ消化(Worthington Biochemical、Bedford、MA)を用いてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を単離した後、ゼラチンを被覆(0.1%)しておいた組織培養板に付着させ、熱で不活性にしておいたウシ胎児血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)を20%と内皮細胞分裂促進因子(Biomedical Technologies、Stoughton、MA)を50μg/mlとヘパリン(APP、ロサンジェルス、CA)を8Ul/mlとペニシリンを50Ul/mlとストレプトマイシンを15μg/ml補充しておいた培地199(Gibco BRL、Grand Island、NY)の中で増殖させた。報告した実験で用いた継代は2および3のみであった。
【0231】
内皮細胞増殖
ゼラチンを0.1%被覆しておいた96個ウエル板(96−well plates)にHUVEC(5x10)を入れて室温で1時間培養した。24時間後、培地を除去して、ウシ胎児血清を5%と組換え型ヒトVEGF165(R&D Systems、ミネアポリス、MN)、LTDまたはLTBをいろいろな濃度で補充しておいた新鮮な培地199に交換した。72時間後にMTT(商標)アッセイ(Sigma、セントルイス、MO)(15)を用いて内皮細胞の数を数えた。ATL−1の調製をClish他(13)と同様にして実施した。抑制パーセントを同様な様式で評価し、この評価に、作動薬を添加する前に15−エピ−リポキシンA、15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンAのメチルエステル(ATL−1)、LXA、15−エピ−LXA、または15−R/S−メチル,LXAと一緒に15分間インキュベート(37℃)することを含めた。あらゆるインキュベーションを3回重複して実施した。各実験を行う前に物理的方法(LC/MS/MSおよびUVを包含)(13)を用いてATL−1、LXA、15−エピ−LXAまたは15−R/S−メチル,LXAの一体性および濃度を評価した。
【0232】
内皮細胞移動
48個ウエルの化学走性用チャンバ(NeuroProbe、Cabin John、MD)の下方のウエルにVEGF、ATL−1または媒体を加えた。これらのウエルの上をゼラチンが0.1%被覆されている孔サイズが10μmのポリカーボネート製フィルターで覆った。HUVEC(1x10)を上方のウエルの中に入れて、前記チャンバをインキュベート(37℃、5%CO、12時間)した。インキュベーション後、フィルターを取り出し、上表面から細胞をかき取り、固定した後、Diff−Quik(Dade
Behring、Newark、DE)で染色した。前記フィルターを横切って下方の表面に移動した細胞の数を光顕微鏡で数えたが、ここでは、4つの場(fields)を高倍率(100X)で数えた。インキュベーションを3回重複して実施した。抑制の評価では、媒体またはATL−1を入れた培地の中に内皮細胞を入れて15分間懸濁させた後、前記チャンバの中に入れた。
【0233】
DNA断片化の定量測定
光度計による酵素免疫検定(細胞消滅検定キット:R&D Systems)を用いて
個々の細胞消滅した細胞におけるDNA断片化を量化した。96個ウエルのミクロタイタープレートの中で増殖させたHUVEC(5X10細胞/ウエル)を3日間インキュベートし、3.7%のホルムアルデヒドで固定した後、標識を付ける前にプロテイナーゼKを用いて透過性を上げた。そのDNA断片にビオチニル化(biotinylated)ヌクレオチドを混合した後、ステプタビジン−西洋わさびペルオキシダーゼ接合体に続いて基質であるTACS−Sapphireを用いてそれを検出した。
【0234】
炎症性脈管形成
麻酔をかけたマウス(BALB/c、6−8週零のオス)の背側皮膚の下に無菌空気(3ml)を皮下注射することで拡大させたマウス空気嚢(air pouches)を用いて脈管形成の評価を行った。24時間後、ATL−1(10μg/嚢)または媒体を局所的に搬送した直後にVEGF(1μg/嚢)を注入した。血管円柱(vascular
casts)の形成を用いて血管含有量を評価した(16に示されているように)。簡単に述べると、マウスに麻酔をかけ(144時間の時)そしてその動物を加熱されているジャケットの中に入れる(40℃、10分間)ことで抹消血管拡張を起こさせた。カルミンレッド(carmine red)(Sigma)を5%ゼラチン溶液に5%入れて40℃に温めた溶液を1ml i.v.注射することで血管円柱を生じさせた。空気嚢内層(linings)を切開して重量を測定した。次に、その組織を2mlの3N NaOH溶液に入れて21℃で0.5時間かけて溶解させた後、熱水(56℃)の中で10分かけて完全に消化させた。その消化させたサンプルを遠心分離(2500rpm、15分間)にかけた後、0.45μmのフィルターに通して濾過した。96個ウエル板の分光光度計(較正曲線を使用)を530nmで用いて染料の含有量を定量した。その結果を血管指数(VI)として組織1ミリグラム重量当たりのカルミン染料のミクログラムで表した(n=4動物/群)。脈管構造を可視化する目的で前記嚢の背側表面を切り取った後、ホルムアルデヒドに入れて48時間固定した。その組織に脱水を100%エタノール(5日間、4℃)を用いて受けさせた後、杉脂に2週間浸けることで洗浄した。別の組の実験では、マウスに麻酔をかけ、フルオレセインイソチオシアネート−デキストラン(Sigma)をPBSに0.05g/ml入れたもの(200μl)を屠殺直前144時間の時にi.v.注射した。内層を切開し、固定し、ガラススライドの上に乗せた後、蛍光を検査した(Nikon EclipseモデルE600)。両方のプロトコルとも、その観察者は処理を判断することができた。
【0235】
免疫組織化学
空気嚢膜組織を10%緩衝ホルマリンに入れて一晩固定した後、処理してパラフィンの中に埋め込んだ。オンフェイス(on face)で切り取った5ミクロメートルのパラフィン断面(膜組織が入っている)をCD31発現に関する免疫組織化学で用いた。簡単に述べると、スライドからパラフィンを除去し、0.25%のトリプシン(Sigma Chemical)の中に37℃で20分間入れることで予め処理しておいた後、蒸留水に入れて洗浄した。さらなる段階の全部を室温の含水チャンバ(hydrated chamber)の中で実施した。スライドをPeroxidase Block(DAKO、Carpinteria、CA)で5分間予備処理することで内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制した後、ヤギ血清を50MmのTris−Cl(pH7.4)で1:5に希釈したもので20分間予備処理することで、非特異的結合部位を遮断しておいた。一次ラット抗マウスCD31抗体(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)を50mMのTris−Cl(pH7.4)で1:100に希釈(3%のヤギ血清と一緒にして)加えて1時間置いた。50MmのTris−Cl(pH7.4)で洗浄した後、二次ラビット抗ラット抗体(DAKO)を50MmのTris−Cl(pH7.4)で1:200に希釈(3%のヤギ血清と一緒に)して加えて30分間置いた。スライドを再び50mMのTris−Cl(pH7.4)で洗浄した後、ヤギ抗ラビット−西洋ワサビペルオキシダーゼ接合抗体(Envision検出キット:DAKO)を加えて30分間置いた。更
に洗浄した後、DABクロモゲンキット(DAKO)を製造業者に従って用いてイムノペルオキシダーゼ染色を生じさせた後、ヘマトキシリンを用いて対比染色を行った。
【0236】
統計学的解析
結果を平均±S.E.M.として表す。分散分析を用いて結果の統計学的評価を実施しそしてP<0.05の値を群平均間の差が統計学的に有意であることを示すとして採用した。
【0237】
結果および考察
安定なアスピリン引き金リポキシンA類似物(ATL−1と表示)はVEGFで刺激されたHUVEC増殖の効力のある抑制剤であることを確認した(IC50は〜3nM)(図1)。抑制は濃度に依存し、最大の高原部が10nMの所に存在し、そしてその細胞をゲニステイン(genistein)、即ちチロシンキナーゼ活性の抑制剤と一緒にインキュベート(50μM、5分間、37℃、n=3)するとある程度ではあるが可逆的であった(VEGF刺激増殖が38.0±2.5から78.0±6.21%に、P<0.05)。ATL−1類似物単独では濃度を高く(100nM)してもHUVEC増殖に対する作用は全くみられなかった(図1の挿入図)。極めて対照的に、安定なLXB類似物は増殖を増加させた。それらは関連した構造物であることから、ATLとLXB類似物が前記細胞に対して個別の作用を示したことは、ATL−1の反応が非常に立体選択的であることを示している。また、代表的な実験でATL−1を未変性LXAおよび15−エピ−LXAと等モル濃度(10nM)で直接比較した結果、活性等級の順位はATL−1>15−エピ−LXA>LXAであることが分かった(例えば抑制度合はそれぞれ63.3±3.3、59.8±1.8および38.1±2.0%)。前記細胞をATL−1に接触させた後、トリパンブルーエクスクルージョンアッセイ(trypan blue exclusion assay)で測定した時、HUVECの〜98%が生存できる状態のままであり、このことは、その化合物は細胞毒性を持たないことを示している。VEGFは、内皮細胞に特異的な分裂促進因子であることに加えて、また、内皮細胞生存因子でもあり、従って、細胞増殖を刺激するばかりでなくまた内皮細胞消滅(17)を抑制することでも脈管形成を助長する。
【0238】
ATL−1がHUVECの増殖に対して示すそのような新規な抑制活性が細胞消滅に関与するか否かを測定する目的でDNA断片を量化した(材料および方法の下で)。ATL−1(100nM)は単独でもVEGF(3ng/ml)と組み合わせた時でもDNA断片化パターンに影響を全く与えず(n=2、d=3)、このことは、ATL−1類似物が示した抗増殖作用は内皮細胞の細胞消滅が誘発された結果ではないことを示唆している。内皮細胞がαvインテグリン(integrins)と結合すると、それに付随して腫瘍抑制p53の活性が低下しかつ細胞消滅経路が抑制されることで、新しい血管の形成が助長される(18)。このような線に沿って、最近、p53はヒト15−リポキシゲナーゼプロモーター活性を上方調節(upregulate)し得ることが示され、それによって、そのような酵素の活性と確立された腫瘍抑制遺伝子の間の関連が初めて確認された(19)。また、15−リポキシゲナーゼが過剰発現すると内因性LXA生成量が多くなり、それによって今度は糸球体腎炎の進行が抑制させることにも興味が持たれる(20)。ATLとLXAは両方とも受容体細胞型で組織に特異的な作用部位を共有しており、これらの安定な類似物と一緒に効力のある抗炎症作用を示す(21、23および14)。
【0239】
内皮細胞の移動が脈管形成過程の必須成分であり、成長し始める毛細管が脈管形成を刺激する方向に向かう(3)。従って、ATLを用いて内皮の移動を評価した。化学走性用チャンバの下方の区分室にVEGF(3ng/ml)を入れそして孔の大きさが10μmのゼラチン被覆フィルターを横切る細胞移動を量化した(図2)。図2Bに示した結果は、ATL−1、LXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル,LXA
(代表例としてATL−1を示す)は濃度に応じてVEGF刺激HUVEC移動を抑制し、10nMのATLの時に最大の抑制度合(〜45%)が得られたことを示している。増殖検定で観察したように、ATL−1もLXAも15−エピ−LXAも15−R/S−メチル,LXAも単独では濃度を高く(100nM)しても内皮細胞移動を誘発せず(図2A)、この確認は、ATL−1、LXA、15−エピ−LXAまたは15−R/S−メチル,LXAは細胞が新血管新生部位に移動する初期段階の遮断で役割を果たしていることを示唆している。
【0240】
VEGF(図1)と同様にまたLTDもHUVECの増殖を刺激し(42±1.2%)、最大値はVEGFを用いた時に得た反応と同様に10nMの時であった(52.7±1.6%)。それとは対照的に、LTBは10nMの時に前記細胞に有意な反応を与えなかった(図3B)。前記細胞をATL−1(0.1−100nM)に接触させるとLTD(10nM)が示した分裂促進作用が拮抗作用を受け、IC50は〜3nMであった(図3)。LTDはVEGFで刺激された増殖を増強も抑制もしなかった。
【0241】
未変性リポキシンが抗増殖作用を有することは最初にヒト肺腺癌細胞系(23)を用いて確認されそして最近になってヒト腎糸球体間質細胞(24)を用いて確認された。現在確認されたことと内皮細胞結果が一緒になって内因性ATLが増殖性病に効力のある調節役割を果たすことが注目されるようになってきた。LX、ATLおよび安定な類似物が示す作用は数種の細胞で同定された高親和性のトランスメンブラン受容体(ALXR)によって形質導入されたものである[再吟味に関してはChiang他(25)を参照]。LXAは糸球体間質細胞の中でそれ自身が高親和性受容体(即ちALXR)と相互作用するばかりでなくサブクラス(subclass)のペプチド−ロイコトリエン受容体(cysLt)とも相互作用し、ここで、LXAは部分的作動剤である(24)。これに関して、LXAおよびこれの安定な生活性類似物は血管内皮細胞と特異的に結合している[H]LTDを有効に追い出す(26)。また、最近の確認によって、ATLは内皮細胞からクローン化された組換え型ヒトcysLTの所に特異的に結合するLTDに対して特異的に反対に作用するばかりでなく特異的LXA受容体の所にも作用すると言った最初の証拠が得られた(21)。ATL−1はHUVEC増殖を有効に抑制する抑制剤であることを確認した(図1、2および3)ことから、ATLが脈管形成にインビボで影響を与えるか否かを測定した。
【0242】
慢性的炎症が起こっている間、新しい血管には組織潅流の維持が必要なばかりでなくまた細胞の通行(traffic)を高める必要がある(27)。従って、この目的で、充分に確立されているマウス慢性肉芽腫性空気嚢モデルを用いて脈管形成をインビボで評価し、6日の時間的間隔を選択した、と言うのは、それによってほぼ最大の血管密度が得られることが示されたからである(16)。VEGF(1μg/嚢)を投与する直前にATL−1(10μg/嚢)を局所的に注入しておくと血管指数が〜48%低下した(図4A)。比較の目的で、ATL−1(10μg/マウスまたはマウス1kg当たり0.4mg)の方が記述された他の抗脈管形成薬[ずっと多い投薬量を必要とし、これには1−3mg/kgで用いられるステロイド(16)、またはCOX−2抑制剤(28)(1−6mg/kgにする必要があった)が含まれる]よりもずっと効力があることを確認した。
【0243】
図4Bに、典型的な6日目の空気嚢内層から得た代表的な血管円柱を示す。VEGFを与えたマウス(図4B、左下のパネル)では、新脈管構造(neovasculature)が確立されており、ATLで処理した動物では毛細管が若干のみ広がった(血管の密度は常規通り明らかに低下していた)(図4Bの右下のパネル)ことに比較して血管密度が極めて高い度合になっていた。別の組の実験では、フルオレセインイソチオシアネート−デキストランを用いてその領域の血管が見えるようにした。ATL−1が示した作用とは極めて対照的に、別のリポキシゲナーゼ経路産物であるLTBは単独でATL−1と
同じ用量(1嚢当たり10μgのLTB)でLTB刺激新血管新生を与えた(n=2)。
【0244】
図5に、6日目に切開した背側内層の顕微鏡写真を示す。再び、VEGFで処理した嚢の中には広範な血管網状組織が存在する(図5の左下のパネル)ことで脈管形成が顕著に起こったことが立証された。ここでもまたATL−1(10μg/嚢)で処理すると、目に見える微細毛細管がなくなることで例示(図5の右下のパネル)されるように、VEGFによって明らかになった脈管構造が驚くべきほど小さくなった。
【0245】
ATL−1がそのような用量(i.v.でマウス1匹当たり10μg)で平均動脈圧力の明らかな変化を引き出さなかったことを注目することは重要である(ATL−1は血管の正常な状態では恐らく作用を示すであろうことを除き)。このことは特に注目に価する、と言うのは、LXAは用量が多い時には特定の血管床の中で起こる血管拡張を刺激し得るからである。組織学を評価しかつ血管内皮細胞マーカーCD31を用いてマウス空気嚢を免疫組織化学的に染色することを利用して血管マーカー(vascular marker)の存在を評価する目的で本インビボ実験を個別のシリーズとして実施した(図6)。
【0246】
血小板/内皮細胞接着分子−1(またはCD31)はIg上科(superfamily)の一員であり、これは内皮細胞−細胞接合部の所に強力に発現し、血小板ばかりでなく白血球に存在しかつ脈管形成および白血球の経内皮移動で役割を果たすように保持されている。前記嚢の中で起こさせたCD31に関する免疫組織化学的染色により、VEGFで処理したマウスには非常に特異的な内皮細胞染色が存在することが分かり、それによって、目立った血管網状組織を識別した(図6C)。それとは対照的に、VEGFで処理しておいたマウスをまたLXA類似物でも処理すると血管の数が顕著に減少することを観察した(図6D)。そのような空気嚢に関連した控えめな非特異的染色度合は、本質的に、媒体単独で処理したマウス(図6A)またはLX類似物単独で処理しておいたマウス(図6B)から得た空気嚢断片のそれと同じであった、即ち、炎症性細胞、主に白血球およびマイクロファージ(これらはマウスの皮膚に生じさせたそのような空気嚢に関連していることが知られている)の染色は控えめで非特異的であった。このように見いだしたことが一緒になって、ATLはVEGFによって刺激された脈管形成をインビボで軽減することが分かり、このことは、LXAおよび15−エピ−LXAがそのような作用をインビボで調節し得ることを示唆している。
【0247】
数多くの臨床および実験室研究で得られた結果によってアスピリンが数種の形態のヒト癌(肺癌、結腸癌および乳癌を包含)で保護効果を示すことが立証されたが、それが潜在的に示す抗癌機構はまだ明らかになっていない(引用文献9を参照)。ASAはある程度ではあるが脈管形成を軽減することを通して作用すると考えられているが、それはASAがプロスタノイド(prostanoid)の生合成を抑制する能力を有することに関係している可能性がある(7)。より最近になって、ASAはエイコサノイドの生合成において新規なスイッチ(novel switch)の引き金になることが確認された、と言うのは、COX−2にアセチル化を受けさせるとこの酵素が15R−HETEを産出し得るようになり、それが細胞−細胞相互作用中にインビトロおよびインビボで15−エピ−リポキシン(またATLとしても知られる)に変化するからである(11、12、14)。ATLばかりでなくこれらの安定な生活性類似物は急性炎症時に起こるいくつかの鍵となる出来事、例えばPMNの化学走性そして内皮細胞および上皮細胞の両方を横切る移動ばかりでなく後毛細管小静脈からの漏出などの効力のある抑制剤である(13、14)。ATLの類似物をこれが内因性ATLおよびLX作用の両方を模擬しかつ酵素による急速な失活にインビボで耐えるように設計した。また、15−エピ−LXAの生活性類似物は白血球に存在するALXRおよび血管内皮細胞に存在するcysLT受容体の両方
の所で完成する(complete)ことも確認した。加うるに、そのような新規なアスピリン引き金媒介物(aspirin−triggered mediators)はサイトカインの放出を抑制しかつ遺伝子転写レベルで局所的サイトカイン−ケモカイン軸(cytokine−chemokineaxis)(30)を向け直す働きをする可能性があり(29)、両方の作用とも脈管形成過程で興味が持たれる(3)。今日までに試験された他のエイコサノイドは全部でないにしても大部分が脈管形成前駆体(pro−angiogenic)(ロイコトリエンを包含)であることを注目すべきである(例えばLTDおよびLTB、下記の表および図3を参照)(5、6、28)。このことを鑑み、ATL−1、LXA、15−エピ−LXAおよび15−R/S−メチル,LXAが抗脈管形成活性を示したことは驚くべきことであった。
【0248】
【表1】

【0249】
要約として、本結果は、アスピリン引き金リポキシンである15−エピ−LXA類似物はインビボで効力のある脈管形成抑制剤および内皮細胞増殖抑制剤であることを立証している。これらの結果が一緒になって15−エピ−リポキシンの新規な作用が明らかになり、これらの結果は、アスピリンで認識されている抗脈管形成および抗炎症特性(2、7、10)に貢献している可能性がある機構としてのアスピリン引き金リポキシン回路(14)で役割を果たしていることを示唆している。幅広い範囲の生理学的過程ばかりでなく病気過程(1−3)の中で脈管形成が果たす基本的な役割の洞察を深めて行くと、ATL、即ち天然の内因性リポキシン疑似物およびそれらの合成類似物が血管成長を加減(modulation)することは、以前には評価されていなかったが、重要な方策的作用(s
trategic action)であり得る。
【0250】
【表2】

【0251】
【表3】

【0252】
【表4】

【0253】
【表5】

【0254】
本分野の技術者は常規実験のみを用いて本明細書に記述した発明の具体的な態様の数多くの相当物を認識するか或は確かめることができるであろう。そのようなおよび他のあらゆる相当物を添付請求の範囲に包含させることを意図する。本明細書に引用したあらゆる出版物および引用文献(背景章に示したそれらを包含)は引用することによって全体が明らかに本明細書に組み入れられる。
【0255】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0256】
1.脈管形成を予防、軽減または抑制する方法であって、ある被験体にリポキシンA化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における脈管形成が予防、軽減または抑制されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0257】
2.前記リポキシンA化合物がLXAまたは15−R/S−メチル,LXAである1.記載の方法。
【0258】
3.脈管形成を予防、軽減または抑制する方法であって、ある被験体に15−エピ−リポ
キシンA化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における脈管形成が予防、軽減または抑制されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0259】
4.前記15−エピ−リポキシンA化合物が15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンAである3.記載の方法。
【0260】
5.平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄に関してある被験体を治療する方法であって、リポキシンA化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄が予防、軽減または抑制されるに有効な量で含んで成る組成物を前記被験体に投与することを含んで成る方法。
【0261】
6.前記リポキシンA化合物がLXAまたは15−R/S−メチル,LXAである5.記載の方法。
【0262】
7.平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄に関してある被験体を治療する方法であって、15−エピ−リポキシンA化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを平滑筋細胞移動が血管形成後に起こる組織における再狭窄が予防、軽減または抑制されるに有効な量で含んで成る組成物を前記被験体に投与することを含んで成る方法。
【0263】
8.前記15−エピ−リポキシンA化合物が15−エピ−16−(パラ−フルオロ)−フェノキシ−リポキシンAである15.記載の方法。
【0264】
9.ある被験体における創傷治癒を助長する方法であって、それを必要としている被験体にLXB化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における創傷治癒が助長されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0265】
10.前記LXB化合物を14−エピ−LXB、15−エピ−LXBおよび15−エピ−LXB−アセチレニックから成る群から選択する9.記載の方法。
【0266】
11.ある被験体における脈管形成を助長する方法であって、それを必要としている被験体にLXB化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における脈管形成が助長されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0267】
12.LXBを除く11.記載の方法。
【0268】
13.前記LXB化合物を14−エピ−LXB、15−エピ−LXBおよび15−エピ−LXB−アセチレニックから成る群から選択する11.記載の方法。
【0269】
14.ある被験体における新血管新生を助長する方法であって、それを必要としている被験体にLXB化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における新血管新生が助長されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0270】
15.LXBを除く14.記載の方法。
【0271】
16.記LXB化合物を14−エピ−LXB、15−エピ−LXBおよび15−エピ−LXB−アセチレニックから成る群から選択する14.記載の方法。
【0272】
17.ある被験体における心臓血管再生を助長する方法であって、それを必要としている被験体にLXB化合物およびこれの薬学的に受け入れられる塩、エステル、アミドおよびプロドラグを前記被験体における心臓血管再生が助長されるに有効な量で投与する段階を含んで成る方法。
【0273】
18.前記LXB化合物を14−エピ−LXB、15−エピ−LXBおよび15−エピ−LXB−アセチレニックから成る群から選択する17.記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治癒を助長するための医薬組成物であって、有効成分として、以下の構造を有する:
【化1】

【化2】

[ここで、R'はHまたはCH3であり;そしてC*における置換基はR配置である]
リポキシンB4類似体およびこれの薬学的に受け入れられる塩を含んで成る、上記医薬組
成物。
【請求項2】
脈管形成を助長するための医薬組成物であって、有効成分として、以下の構造を有する:
【化3】

【化4】

[ここで、R'はHまたはCH3であり;そしてC*における置換基はR配置である]
リポキシンB4類似体およびこれの薬学的に受け入れられる塩を含んで成る、上記医薬組
成物。
【請求項3】
新血管新生を助長するための医薬組成物であって、有効成分として、以下の構造を有する:
【化5】

【化6】

[ここで、R'はHまたはCH3であり;そしてC*における置換基はR配置である]
リポキシンB4類似体およびこれの薬学的に受け入れられる塩を含んで成る、上記医薬組
成物。
【請求項4】
心臓血管再生を助長するための医薬組成物であって、有効成分として、以下の構造を有する:
【化7】

【化8】

[ここで、R'はHまたはCH3であり;そしてC*における置換基はR配置である]
リポキシンB4類似体およびこれの薬学的に受け入れられる塩を含んで成る、上記医薬組
成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−255025(P2012−255025A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195046(P2012−195046)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2009−256184(P2009−256184)の分割
【原出願日】平成14年3月1日(2002.3.1)
【出願人】(503319157)
【Fターム(参考)】