説明

新規な苦味受容体T2R76の同定

T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸、組換え発現T2R76ポリペプチド、T2R76ポリペプチドの組換え発現の異種発現系、それらを使用するアッセイ方法、及びT2R76モジュレータを投与することによって味覚を変化させる方法。これらのT22R76ポリペプチドは単独発現させることができ、又は別のT2Rポリペプチド、好ましくは異なるヒトT2Rポリペプチドと共発現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年7月29日出願の米国特許出願第60/398727号の優先権を主張する。参照によりこの出願の全体を援用する。
【0002】
本発明は、一般的には、T2R76ポリペプチド及びT2R76ポリペプチドが仲介する味覚に関する。より具体的には、本発明は、T2R76ポリペプチドをコードする単離された核酸、単離された機能性T2R76ポリペプチド、T2R76ポリペプチドの組換え発現のための異種発現系、味覚のモジュレータ、特に苦味を有する化合物又は苦味をブロックする化合物を同定する方法、及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
ヒトが認識できる基本的な味覚の1つに苦さがある。苦味化合物は、細胞表面受容体と相互作用することによって苦味を生成すると考えられている。受容体の活性化により、神経伝達物質の放出に至る細胞内シグナリングカスケードが開始する。次いで脳神経節の求心性神経線維はそのシグナルを皮質味覚中枢に伝達し、そこでその情報は味覚として処理される。これらの受容体は、細胞内Gタンパク質と相互作用する7回膜貫通ドメイン受容体のファミリーに属し、Gタンパク質結合受容体(GPCR)とも呼ばれる。Lindemann(2001)Nature 413(6852):219−25を参照されたい。
【0004】
T2Rと称されるGPCRの新規なファミリーがヒト及び齧歯動物で同定されている(Adlerら、2000;Chandrashekarら、2000;Matsunami、2000;PCT国際公報WO01/18050及びWO01/77676)。様々な系列の証拠が、T2Rが苦味化合物の認識を仲介できることを示唆した。第1に、T2R遺伝子は、特異的に舌及び口蓋上皮の味覚受容体細胞のサブセットで発現される。第2に、T2Rは、遺伝的にマウス及びヒトの苦さの認識と関連する遺伝子座と結び付いている(Conneallyら、1976;Capelessら、1992;Reedら、1999;Adlerら、2000)。第3に、in vitro研究により、T2Rはガストデューシン(味覚細胞で特異的に発現され、苦さ刺激性トランスデューシンと結び付くGタンパク質)を活性化できること(Wongら、1996)及びT2Rによるガストデューシンの活性化が、苦味化合物の適用に応答して選択的に生じること(Chandrashekarら、2000)が示されている。これらのデータに基づくと、mT2R及びhT2R受容体ファミリーは、マウス及びヒトのそれぞれで苦味応答を仲介することが提示される。
【0005】
苦味は、しばしば食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品及び薬剤において望ましくない。苦味は、砂糖などの甘味化合物を加えることにより隠すことができるが、甘味料の添加は食物の風味を望ましくないものに変え、かつカロリー摂取量を増大させることがある。薬剤の場合、経口摂取に際しての苦味を減少させるために、複雑で費用のかかる製剤方法(例えば、コーティング及びカプセル)が開発されてきた。味覚受容体の阻害によって苦味を直接ブロックする方法は記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、苦味覚の阻害剤を開発するための標的として苦味受容体を同定し、かつ機能的に特性決定することが当技術分野で長い間求められていた。
【0007】
この要求を満たすために、本発明は新規なT2R76核酸及びポリペプチドを提供する。本発明はまた、味覚を変化させるT2R76のモジュレータの同定及び使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、単離T2R76核酸及びそれによってコードされるT2R76ポリペプチドを提供する。このポリペプチド及び核酸は本明細書で開示した検出方法及びアッセイにおいて有用である。
【0009】
T2R76核酸は、(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子と、(b)配列番号1の単離核酸分子、又は(c)配列番号1と実質的に同様の単離核酸分子とを含むことができる。
【0010】
T2R76核酸はまた、(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、(b)配列番号1の単離核酸分子、(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、又は(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列において上記の(a)、(b)及び(c)のうちの1つの単離核酸分子と少なくとも1個の機能的に等価なコドンが異なり、上記の(a)、(b)及び(c)のうちの1つの単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子を含む。好ましくは、単離T2R76核酸は、(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、又は(b)配列番号1の単離核酸分子を含む。
【0011】
単離T2R76ポリペプチドは、(a)配列番号2のポリペプチド、(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチドを含むことができる。
【0012】
T2R76ポリペプチドはまた、(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、(b)配列番号1の単離核酸分子、(c)高ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、及び(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列において上記の(a)、(b)又は(c)のうちの1つの単離核酸分子と少なくとも1個の機能的に等価なコドンが異なり、上記の(a)、(b)又は(c)の単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子からなる群から選択される単離核酸分子でコードされたポリペプチドを含むことができる。
【0013】
本発明はさらに、(a)核酸材料を有する生物学的試料を入手すること、(b)単離T2R76核酸分子をストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)の生物学的試料とハイブリダイズし、それにより単離T2R76核酸と生物学的試料中の核酸との間で二重構造を形成すること、及び(c)(b)の二重構造を検出し、それによりT2R76核酸分子を検出することを含むT2R76核酸を検出する方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、T2R76ポリペプチドを特異的に認識する抗体、及びそれを生成する方法を提供する。この方法の代表的な実施形態は、(a)T2R76ポリペプチドを組換え又は合成で生成すること、(b)(a)のポリペプチドを製剤化することにより有効な免疫原とすること、(c)(b)の製剤を動物に投与して、その動物の血清に存在する抗体の産生を含む免疫応答をその動物に生じさせること、及び(d)T2R76ポリペプチドを特異的に認識する抗体を含む血清を(c)の動物から収集することを含む。この開示した方法はさらに、モノクローナル抗体の調製を含むことができる。
【0015】
T2R76ポリペプチドの濃度を測定する方法も提供する。代表的な実施形態では、この方法は、(a)ペプチド材料を有する生物学的試料を入手すること、(b)本発明の抗体との免疫化学的反応で(a)の生物学的試料中のT2R76ポリペプチドを検出することにより、試料中のT2R76ポリペプチドの量を測定することを含む。
【0016】
T2R76ポリペプチドの組換え発現系も提供する。組換え発現系は、(a)本発明のT2R76ポリペプチド(例えば、配列番号2として挙げた代表的な実施形態)、及び(b)当該T2R76ポリペプチドを発現する異種宿主細胞を含むことができる。さらに、この組換え発現系はT2R76とは異なるT2Rポリペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。特に、この組換え発現系は、2003年5月6日に発行されたZukerらの米国特許第6558910号、2002年7月18日に公開されたAdler、John Elliotの米国出願公開20020094551、及び2003年1月30日に公開されたZukerらの米国出願公開20030022278(これらのすべての全体を参照により援用する)に開示されたT2R核酸配列のいずれかを含んでもよい。本明細書に参照により援用したZukerの出願で開示されている通り、T2Rポリペプチドの別名はSF又はGRポリペプチドであることに留意されたい。対象のhT2R76は、1つ又は複数の他のT2Rポリペプチドと共に発現して機能的なヘテロメリック味覚受容体を産生することができる。他のT2Rポリペプチドとしては、別のヒトT2R又は別の種、例えばラット又はマウスのT2Rがある。宿主細胞は任意の適切な細胞を含むことができる。好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞を含む。また好ましくは、宿主細胞は、T2R76ポリペプチドとのカップリングが可能なGタンパク質αサブユニット、例えばGα15、ガストデューシン又はトランスデューシンなどのプロミスカスGタンパク質を含む。
【0017】
T2R76ポリペプチドを組換え発現する開示の系を使用して、本発明はさらに、T2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態では、この方法は、(a)組換え発現系を用意して、T2R76ポリペプチドを異種宿主細胞中で発現させること、(b)試験物質を(a)の系に与えること、(c)試験物質の存在下でのT2R76の機能のレベル又は質をアッセイすること、(d)試験物質の存在下でのT2R76の機能のレベル又は質を、T2R76の機能の対照レベル又は質と比較すること、及び(e)T2R76の機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した試験物質の存在下でのT2R76の機能のレベル又は質を測定することにより試験物質をT2R76モジュレータとして同定することを含む。このアッセイはGTPγS結合の量を測定することを含むことができる。
【0018】
本発明の別の実施形態において、T2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法は、(a)T2R76ポリペプチドを発現させ、該ポリペプチド又はポリペプチドの組合せを単独で又は1種若しくは複数の他のT2Rポリペプチドと組み合わせて1つ又は複数の試験物質に暴露すること(exprecing)、(b)試験物質の単離T2R76ポリペプチド又はT2R76を含有するポリペプチドの組合せへの結合をアッセイすること、及び(c)T2R76ポリペプチドへの特異結合性を示す候補物質を選択することを含む。
【0019】
開示の方法で同定された、T2R76ポリペプチドのアゴニスト及び阻害物質を含むモジュレータも提供される。モジュレータは、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、小分子及びこれらの組合せを含むことができる。モジュレータは、更に苦味覚のモジュレータを含むことが好ましい。
【0020】
本発明はさらに、対象中の苦味覚を調節する方法を提供する。対象は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。同様に、対象で変わる苦味覚はT2R76機能を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態では、対象で苦味覚を調節する方法は、(a)開示の方法で同定したT2R76モジュレータを含む組成物を調製すること、及び(b)対象に有効量の組成物を投与することにより、対象で苦味覚を変化させることを含む。
【0022】
例えば、本発明は、T2R76阻害物質と苦味化合物とを対象に同時投与することにより苦味化合物の苦味覚を減少させる方法を提供する。本発明は、T2R76アゴニストと化合物とを同時投与することによりその化合物の苦味覚を増強させる方法も提供する。この同時投与は、味を修飾する化合物と混合したT2R76阻害物質を含む組成物の投与を含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品又は薬剤を含むことができる。
【0023】
本発明は、T2R76アゴニストと味を修飾する化合物とを同時投与することにより化合物の苦味覚を増強する方法も提供する。このT2R76アゴニストと化合物とは、単一の組成物として混合することができる。
【0024】
したがって、本発明の目的は、新規なT2R76核酸及びポリペプチド、T2R76核酸を検出する方法、T2R76ポリペプチドを発現する異種発現系、異種T2R76発現系を使用する方法及びアッセイ、並びにT2R76ポリペプチドを調節及び検出する方法を提供することである。この目的は、全体的又は部分的に本発明で達成される。
【0025】
上記の本発明の目的、本発明の他の目的及び利点は、以下の本発明の記載及び非限定的な実施例を研究した後、当業者に明らかになるであろう。
【0026】
配列表の配列の簡単な説明
配列番号1及び2は、それぞれヒトT2R76ヌクレオチド及びアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
I.定義
以下の用語は当業者にはよく理解されていると思われるが、本発明の説明を容易にするために以下にその定義を示す。
【0028】
用語「a」、「an」及び「the」は1つ又は複数を言及する長年の慣用に従って使用する。
【0029】
配列の同一性のパーセンテージ(例えば、本明細書で以下に記載する通り、ヌクレオチド配列やアミノ酸配列を比較する場合)、ヌクレオチド又はタンパク質の長さ、結合量などの測定できる値に言及するときに本明細書で使用する用語「約」は、開示の方法を実施する又はその他の方法で本発明を実施するのに適切なように、特定の量からの±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0030】
II.T2R76核酸及びポリペプチド
本発明は、新規なT2R76核酸及び機能性T2R76ポリペプチドを含む新規なT2R76ポリペプチドを提供する。本発明の代表的なT2R76核酸は配列番号1として示し、これは配列番号2として示したT2R76ポリペプチドをコードする。
【0031】
用語「T2R76」及び「T2R76」を含む用語(例えば、hT2R76)は、一般に単離T2R76核酸、T2R76核酸でコードされた単離ポリペプチド及びそれらの活性について言及する。T2R76核酸及びポリペプチドは任意の生物から得ることができる。用語「T2R76」及び「T2R76」を含む用語はまた、苦味化合物で活性化される受容体を含むポリペプチド及びそれをコードする核酸を指す。T2R76受容体は他のT2Rポリペプチドを含んでもよく、ヘテロメリック受容体であってよい。
【0032】
核酸又はポリペプチドの関係で使用される用語「単離」は、核酸又はポリペプチドがその本来の環境から離れて存在し、天然の産物ではないことを示す。単離核酸又はポリペプチドは、精製形態で存在することができ、又はトランスジェニック宿主細胞などの非本来の環境で存在することができる。
【0033】
以下の本明細書中でさらに開示する通り、本発明はまた、T2R76ポリペプチドの機能的発現の系を提供する。この系は、配列番号1を含む組換えT2R76核酸を使用し、これは別のT2R核酸と共に発現されてもよい。
【0034】
II.A.T2R76核酸
用語「核酸分子」及び「核酸」はそれぞれ、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及び一本鎖、二本鎖又は三本鎖形態のこれらのポリマーを指す。特に限定しない限り、この用語は、基準天然核酸と同様の性質を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を有する核酸を包含する。用語「核酸分子」又は「核酸」は、「遺伝子」、「cDNA」、「mRNA」又は「cRNA」の代わりに使用することもできる。核酸は合成することができ、又は任意の生物を含む任意の生物学的起源から得ることができる。完全長T2R76cDNAをクローニングする代表的な方法は実施例1に記載している。
【0035】
用語「T2R」又は「SF」は、味覚細胞特異的Gタンパク質 受容体のファミリーのメンバーをコードする核酸を指す。これらがコードするこれらの核酸及びポリペプチドは、Gタンパク質光学味覚受容体の「T2R」、「SF」、「GR」又はTAS2Rファミリーとして言及される。このGPCRの神経系ファミリーには、味覚形質導入p の成分が含まれる。ファミリー では、このファミリーのメンバーは苦味の検出に関与している。味覚受容体のT2R又はSFファミリーのメンバーは、米国特許第6558910号、2003年1月20日に公開されたZuraらの米国出願公開20030022278、及び2002年7月18日に公開されたAdler、John Elliotの米国出願公開20020094502で論議されている。この種のT2Rの例としては、


が挙げられる。
【0036】
択一的に言及されるこれらのT2R、SF、TAS2Rなど又はGRは、ヒト、マウス及びラットを含む異なる種由来であってもよく、ヒト由来が好ましい。「実質的に同一」である、又はそれと同一の特異的配列を有する、又は以下で定義する通りのこれらの配列のいずれかに特異的にハイブリダイズするT2Rも包含される。
【0037】
用語「T2R76」及び「T2R76」を含む用語(例えば、hT2R76)は、本明細書ではT2R76ポリペプチドをコードする核酸に言及するために使用する。したがって、用語「T2R76」は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、又は(b)配列番号1と実質的に同一のヌクレオチド配列を含む本発明の単離核酸を指す。
【0038】
ヌクレオチド配列間の類似性を記載するのに本明細書で使用する用語「実質的に同一」とは、一致が最大となるように比較し整列したときに、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は目視検査で測定して、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは約90%から約99%、さらにより好ましくは約95%から約99%、最も好ましくは約99%のヌクレオチド同一性を有する2つ以上の配列を指す。実質的同一性は、好ましくは少なくとも約100残基のヌクレオチド配列で存在するものであり、より好ましくは少なくとも約150残基のヌクレオチド配列で存在するものであり、最も好ましくは完全長コード配列を含むヌクレオチド配列で存在するものである。用語「完全長」は、本明細書では以下の本明細書中でさらに記載する機能性T2R76ポリペプチドをコードする完全なオープンリーディングフレームに言及するために使用する。2つのポリペプチド間の同一性の割合を判定する方法は、「ヌクレオチド及びアミノ酸配列の比較」という標題で以下の本明細書中で定義する。
【0039】
一の態様では、実質的に同一な配列は多型配列であることができる。用語「多型」は、集団に2つ以上の遺伝的に決定された代替配列又は対立遺伝子が出現することを指す。対立遺伝子の差異は、わずか一つの塩基対であることもできる。
【0040】
別の態様では、実質的に同一な配列は、サイレント突然変異を含む配列を含む、突然変異を起こした配列を含むことができる。突然変異は、1つ以上の残基変化、残基の欠失、又は追加の残基の挿入を含むことができる。
【0041】
2つのヌクレオチド配列が実質的に同一であることを示す別のものは、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いに特異的にハイブリダイズする、又は実質的にハイブリダイズするものである。核酸のハイブリダイゼーションにおいては、比較する2つの核酸配列を「プローブ」及び「標的」と呼ぶことができる。「プローブ」は基準核酸分子であり、「標的」は試験核酸分子であり、核酸分子の異種集団中にしばしば見出される。「標的配列」は「試験配列」と同義である。
【0042】
ハイブリダイゼーション試験又はアッセイに使用するのに好ましいヌクレオチド配列には、本発明の核酸分子の少なくとも約14から40ヌクレオチド配列と相補性の又は類似するプローブ配列が含まれる。プローブは、任意の配列番号1の14から20ヌクレオチド、所望ならば30、40、50、60、100、200、300若しくは500ヌクレオチド又は完全長までなどのより長いヌクレオチドを含むことが好ましい。このような断片は、例えば断片の化学合成、核酸増幅技術の適用、又は選択した配列を組換え生産用の組換えベクターに導入することにより容易に調製することができる。
【0043】
語句「に特異的にハイブリダイズする」は、特定のヌクレオチド配列が複雑な核酸混合物(例えば、全細胞DNA又はRNA)中に存在するときに、分子がその特定のヌクレオチド配列だけにストリンジェントな条件下で結合、二重鎖形成又はハイブリダイズすることを指す。
【0044】
語句「に実質的にハイブリダイズする」は、プローブ核酸分子と標的核酸分子との間での相補的ハイブリダイゼーションを指し、ハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを低減することにより所望のハイブリダイゼーションを達成することができる軽微な不整合を包含する。
【0045】
サザンブロット分析及びノーザンブロット分析などの核酸ハイブリダイゼーション実験の場合には、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、かつ環境依存性である。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの包括的な指針はTijssen(1993)の「生化学及び分子生物学の実験技術−核酸プローブを用いるハイブリダイゼーション(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes)」、第I部、第2章、Elsevier、ニューヨーク、ニューヨークに記載されている。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件は、規定されたイオン強度及びpHでの特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約50℃低い温度が選択される。通常、「ストリンジェントな条件」下では、プローブはその標的部分配列に特異的にハイブリダイズし、その他の配列にはハイブリダイズしない。
【0046】
Tmは、標的配列の50%が、完全に整合するプローブにハイブリダイズする(規定されたイオン強度及びpH下の)温度である。非常にストリンジェントな条件は特定のプローブのTmと等しい条件が選択される。相補的な残基を約100個より多く有する相補的核酸のサザンブロット分析又はノーザンブロット分析用のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、42℃におけるヘパリン1mgを含む50%ホルムアミドでの終夜のハイブリダイゼーションである。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、0.1×SSC中65℃で15分間である。ストリンジェントな洗浄条件の例は、0.2×SSCバッファ中65℃で15分間である。SSCバッファの説明については、Sambrookら編(1989)のMolecular Cloning:A Laboratoy Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照されたい。高ストリンジェントな洗浄の前に低ストリンジェントな洗浄を実施して背景のプローブシグナルを除去することが多い。約100よりも多いヌクレオチドの二重鎖形成のための中程度にストリンジェントな洗浄条件の例は、1×SSC中45℃で15分間である。約100よりも多いヌクレオチドの二重鎖形成のための低ストリンジェントな洗浄の例は、4×から6×SSC中40℃で15分間である。短いプローブ(例えば、約10から50ヌクレオチド)では、ストリンジェントな条件は通常、pH7.0〜8.3で約1M未満のNaイオン、通常約0.01から1MのNaイオン濃度の塩濃度(又はその他の塩)を伴い、温度は通常少なくとも約30℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤を加えることによっても達成することができる。一般に、特異的ハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係なプローブで観察されるシグナル対ノイズ比に対して2倍(以上)のシグナル対ノイズ比が観察される場合には、特異的ハイブリダイゼーションが検出されたことを示している。
【0047】
以下は、本発明の基準ヌクレオチド配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を同定するのに使用することができるハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件の例である:プローブヌクレオチド配列は標的ヌクレオチド配列に、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPO、ImMのEDTA中50℃でハイブリダイズし、次いで2×SSC、0.1%SDS中50℃で洗浄するのが好ましい;より好ましくは、プローブと標的配列は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPO、1mMのEDTA中50℃でハイブリダイズし、次いで1×SSC、0.1%SDS中50℃で洗浄する;より好ましくは、プローブと標的配列は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPO、1mMのEDTA中50℃でハイブリダイズし、次いで0.5×SSC、0.1%SDS中50℃で洗浄する;より好ましくは、プローブと標的配列は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPO、1mMのEDTA中50℃でハイブリダイズし、次いで0.1×SSC、0.1%SDS中50℃で洗浄する;より好ましくは、プローブと標的配列は、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5MのNaPO、1mMのEDTA中50℃でハイブリダイズし、次いで0.1×SSC、0.1%SDS中65℃で洗浄する。
【0048】
さらに、2つの核酸配列が実質的に同一であることを示すものは、実質的に同一の核酸でコードされたタンパク質が全体的な三次元構造を共有しているか、又は生物学的機能が等価なことである。これらの用語は以下の本明細書中、「T2R76ポリペプチド」という標題でさらに定義する。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸分子であっても、対応するタンパク質が実質的に同一な場合には、やはり実質的に同一である。これは例えば、2つのヌクレオチド配列が、遺伝コードで認められているような保存的に置換された変異体を含む場合に起こる。
【0049】
用語「保存的に置換された変異体」は、1個又は複数の選択した(又は全ての)コドンの3番目の位置がゆらぎ塩基(mixed−base)及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている縮重コドン置換を有する核酸配列を指す。Batzerら(1991)のNucleic Acids Res 19:5081;Ohtsukaら(1985)のJ Biol Chem 260:2605−2608;及びRossoliniら(1994)のMol Cell Probes 8:91−98を参照されたい。
【0050】
用語「T2R」はまた、T2R核酸、好ましくはT2R76の部分配列及び伸長配列を含む核酸を包含し、これらにはT2R核酸と相補的な核酸、T2R RNA分子及びT2R RNAと相補的な核酸(cRNA)が含まれる。
【0051】
用語「部分配列」は、より長い核酸配列の一部を含む核酸の配列を指す。代表的な部分配列は、上記の本明細書で記載したプローブ、又はプライマーである。本明細書で使用する用語「プライマー」は、選択した核酸分子の約8以上のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、好ましくは10〜20ヌクレオチド、より好ましくは20〜30ヌクレオチドを含む連続配列を指す。本発明のプライマーは、本発明の核酸分子の重合を開始するのに十分な長さ及び適切な配列のオリゴヌクレオチドを包含する。
【0052】
用語「伸長配列」は、核酸に組み込まれるヌクレオチド(又はその他の類似分子)の付加を指す。例えば、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)は、核酸分子の3’末端に配列を付加することができる。さらに、ヌクレオチド配列は、他のDNA配列、例えばプロモーター、プロモーター領域、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、イントロン配列、追加的な制限酵素部位、多数のクローニング部位及びその他のコードセグメントと結合することができる。
【0053】
本明細書で使用する用語「相補的配列」は、塩基対間で水素結合が形成されて互いに対合することができる逆平行ヌクレオチド配列を含む2つのヌクレオチド配列を示す。本明細書で使用する用語「相補的配列」は、以下に挙げたものと同じヌクレオチド比較方法で評価することができる、或いは本明細書で記載したような比較的ストリンジェントな条件下で問題の核酸セグメントにハイブリダイズすることができると定義される、実質的に相補的なヌクレオチド配列を意味する。相補的な核酸セグメントの特別な例はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0054】
本発明は、開示のT2R76核酸及び組換えT2R76核酸を含むキメラ遺伝子も提供する。したがって、他のT2R核酸と組み合せて発現されることもあるT2R76核酸を含む構築体及びベクターも含む。
【0055】
用語「遺伝子」は生物学的機能と関連するDNAの任意のセグメントを広く指す。遺伝子は、これらだけに限定するものではないが、コード配列、プロモーター領域、シス制御配列、調節タンパク質の特異的認識配列である発現されていないDNAセグメント、遺伝子発現に寄与する発現されていないDNAセグメント、所望のパラメータを有するように設計されたDNAセグメント、又はこれらの組合せを含む配列を包含する。遺伝子は、生物学的試料からのクローニング、既知の又は予想される配列情報に基づく合成及び既存の配列の組換え誘導を含む種々の方法で得ることができる。
【0056】
本明細書で使用する用語「キメラ遺伝子」は、T2R配列、例えばT2R cDNA、アンチセンスRNA分子をコードするT2R核酸、三次構造(例えば、ヘアピン構造)を有するRNAをコードするT2R核酸又は二本鎖RNA分子をコードするT2R核酸に作動可能に結合させたプロモーター領域を指す。用語「キメラ遺伝子」はまた、異種配列に作動可能に結合したT2Rプロモーター領域も指す。本発明のキメラ遺伝子の調製は実施例2に記載する。T2RはT2R76であることが好ましい。
【0057】
本明細書で使用する用語「作動可能に結合した」は、ヌクレオチド配列の転写がプロモーター領域によって制御され調節されるようなプロモーター領域とヌクレオチド配列との機能的な組合せを指す。プロモーター領域をヌクレオチド配列と作動可能に結合させる技術は当技術分野で知られている。
【0058】
用語「組換え」は、一般に本来の環境ではない環境で複製可能な単離核酸を指す。したがって、組換え核酸は宿主細胞中でその複製を可能にするベクターの核酸など、追加の核酸と共に複製できない核酸を含むことができる。
【0059】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、宿主細胞中でその複製が可能なヌクレオチド配列を有する核酸分子を指す。ベクターは、ヌクレオチド配列のベクター中での連結を可能とするヌクレオチド配列を含むことができ、そのようなヌクレオチド配列はまた、宿主細胞において複製される。代表的なベクターとしては、プラスミド、コスミド及びウイルスベクターがある。ベクターはまた、以下の本明細書でさらに記載する通り、T2R76ポリペプチドの組換え生成を仲介することができる。
【0060】
発現構築体を含むあるタイプの構築体を記載するのに本明細書で使用する用語「構築体」は、ヌクレオチド配列が組換え技術によって発現されるようにベクターに作動可能に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含むベクターを指す。
【0061】
用語「組換え技術によって発現された」又は「組換え技術によって生成した」は同義的に使用され、一般的に組換え核酸でコードされたポリペプチドを生成するプロセスを指す。
【0062】
したがって、組換えT2R、核酸、すなわちT2R76核酸は異種核酸を含むことが好ましい。用語「異種核酸」は、対象とする宿主細胞に対し外来の起源に由来する配列、又は同じ起源に由来する場合、その原形を改変した配列を指す。宿主細胞中の異種核酸は、特定の宿主細胞に内因性であるが、例えば突然変異誘発や天然のシス制御配列からの分離によって改変されている核酸を含むことができる。異種核酸はまた、天然のヌクレオチド配列の非天然に生じる多数のコピーを含むことができる。異種核酸はまた、通常はそのような核酸を見出すことができない位置で、宿主細胞の核酸に組み込まれた核酸を含むことができる。
【0063】
本発明の核酸は、クローニング、合成、変化、突然変異誘起又はこれらの組合せをすることができる。核酸の単離に使用することができる標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術は当技術分野で知られている。塩基対の変化、欠失又は小挿入を引き起こす部位特異的突然変異誘発も当技術分野で知られている。例えば、Sambrookら(編)(1989)の「分子クローニング実験マニュアル(Molecular Cloning、Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Silhavyら(1984)の「遺伝子融合での実験(Experiments with Gene Fusions)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Glover&Hames(1995)の「DNAクローニング:実践的アプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach)」、第2版、IRL Press at Oxford University Press、Oxford/New York;Ausubel(編)(1995)の「分子生物学の短いプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)」、第3版、Wiley、New Yorkを参照されたい。
【0064】
III.B.T2R76ポリペプチド
本発明は、新規なT2R76ポリペプチドを提供するものであり、その代表的な実施形態は配列番号2に示される。本発明の単離T2R76ポリペプチドは、組換え技術によって発現されたT2R76ポリペプチドを含むことが好ましい。また、単離T2R76ポリペプチドは、機能性T2R76ポリペプチドを含むことが好ましい。これらのT2R76ポリペプチドは、1つ又は複数の他のT2Rポリペプチドと組み合わせて発現されてもよい。
【0065】
したがって、本発明の方法で有用な新規なT2R76ポリペプチドは、(a)配列番号2のポリペプチド、(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチドを含む。T2R76ポリペプチドはまた、(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、(b)配列番号1の単離核酸分子、(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下でT2R76核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、及び(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)のうちの1つの単離核酸分子と少なくとも1個の機能的に等価なコドンにおいて異なり、上記の(a)、(b)及び(c)のうちの1つの単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子を含むことができる。
【0066】
T2Rとそれと実質的に同一のタンパク質との間の類似性のレベルを記載するのに本明細書で使用する用語「実質的に同一」とは、それと少なくとも35%同一のタンパク質を指す。例えば、T2R76とこのT2R76タンパク質と実質的に同一のタンパク質の場合、これはT2R76タンパク質の完全長にわたって比較したとき、配列番号2と少なくとも約35%同一の配列を指す。T2R76タンパク質と実質的に同一のタンパク質は、好ましくは配列番号2と少なくとも約35%から約45%同一、より好ましくは配列番号2と少なくとも約45%から約55%同一、さらに好ましくは配列番号2と少なくとも約55%から約65%同一、さらに好ましくは配列番号2と少なくとも約65%から約75%同一、さらに好ましくは配列番号2と少なくとも約75%から約85%同一、さらに好ましくは配列番号2と少なくとも約85%から約95%同一、さらに好ましくは配列番号2と少なくとも約95%から約99%同一である。用語「完全長」は以下の本明細書中でさらに記載する通り、機能性T2R76ポリペプチドを指す。2つのポリペプチド間の同一性の割合を判定する方法はまた、「ヌクレオチド及びアミノ酸配列の比較」という標題で以下の本明細書中で定義する。
【0067】
ポリペプチドを説明するのに使用する場合、用語「実質的に同一」は保存3次元構造を共有する2つ以上のポリペプチドを包含することもできる。計算手法を使用して構造表現を比較することができ、重要な活性部位やリガンド結合部位の周囲の類似性を同定するように構造モデルを生成し、容易に調整することができる。Saqiら(1999)のBioinformatics 15:521−522;Barton(1998)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 54:1139−1146;Henikoffら(2000)のElectrophoresis 21:1700−1706;及びHuangら(2000)のPac Symp Biocomput:230−241を参照されたい。
【0068】
実質的に同一のタンパク質はまた、配列番号2のアミノ酸と機能的等価物であるアミノ酸を含むタンパク質を含む。アミノ酸の場合の用語「機能的等価物」は当技術分野で知られており、アミノ酸側鎖の置換基の相対的類似性に基づいている。Henikoff&Henikoff(2000)のAdv Protein Chem 54:73−97を参照されたい。考慮される関連要因としては、側鎖の疎水性、親水性、電荷及びサイズがある。例えば、アルギニン、リジン及びヒスチジンはすべて正に荷電した残基であり、アラニン、グリシン及びセリンはすべて同様のサイズを有し、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンはすべて大体同様の形態を有する。以下の本明細書中でさらに記載するこの分析により、アルギニン、リジンおよびヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;並びにフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは本明細書において生物学的な機能的等価物と定義する。
【0069】
生物学的、機能的に等価なアミノ酸を置換するためには、アミノ酸の疎水性親水性指標を考えることができる。各アミノ酸に、それらの疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標を割り当てた。これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタメート(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパルテート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9)及びアルギニン(4.5)である。
【0070】
タンパク質に相互作用による生物機能を与えるときに、アミノ酸の疎水性親水性指標が重要なことは当技術分野で広く理解されている(Kyteら、1982)。あるアミノ酸は同様の疎水性親水性指標又はスコアを有する他のアミノ酸と置換しても、依然として同様の生物活性を保有できることは知られている。疎水性親水性指標に基づく変更では、疎水性親水性指標が当初アミノ酸の値の±2以内のアミノ酸を置換することが好ましく、当初アミノ酸の値の±1以内のものが特に好ましく、当初アミノ酸の値の±0.5以内のものがさらに特に好ましい。
【0071】
親水性に基づいて効果的に類似のアミノ酸を置換できることも、当技術分野で理解されている。米国特許第4554101号は、隣接するアミノ酸の親水性に左右されるタンパク質の最も大きな局所平均親水性は、その免疫原性及び抗原性、例えばタンパク質の生物学的性質に相関することを記載している。アミノ酸は同様の親水性値を有する別のものと置換しても、依然として生物学的に等価なタンパク質を得られることは理解されている。
【0072】
米国特許第4554101号で詳述されている通り、アミノ酸残基に以下の親水性値を割り当てた:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0073】
同様の親水性値に基づく変更では、親水性値が当初のアミノ酸の値の±2以内のアミノ酸で置換することが好ましく、当初のアミノ酸の値の±1以内で置換することが特に好ましく、当初のアミノ酸の値の±0.5以内で置換することがさらに特に好ましい。
【0074】
用語「実質的に同一」はまた、T2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドの生物学的な機能的等価物であるポリペプチドを包含する。用語「機能的」は、T2R76ポリペプチドの活性、例えば細胞内シグナリング経路を活性化すること(例えば、ガストデューシンとのカップリング)及び味覚を仲介することを含む。このような活性化は、in vivoで同起源のT2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドのものと実質的に同じ大きさ及び動態を示すことが好ましい。T2R76活性を評価する代表的な方法は以下の本明細書中で記載する。
【0075】
本発明はまた、T2R76ポリペプチドの機能的断片を提供する。このような機能的部分は、天然のT2R76遺伝子産物のアミノ酸配列のすべて又は実質的にすべてを含んでいる必要はない。
【0076】
本発明はまた、天然のT2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドよりも長い配列である機能性ポリペプチド配列を含む。例えば、1つ又は複数のアミノ酸をT2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドのN末端又はC末端に付加することができる。このような追加のアミノ酸は、これだけに限定するものではないが、精製用途を含む種々の用途で使用することができる。伸長タンパク質を調製する方法は当技術分野で知られている。
【0077】
II.C.ヌクレオチド及びアミノ酸配列の比較
2つ以上のヌクレオチド又はポリペプチド配列の場合の用語「同一」又は「同一性の割合」は、本明細書で開示した配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は目視検査で測定して、一致が最大となるように比較し整列したときに、同じ、又は特定の割合の同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0078】
ヌクレオチド又はポリペプチド配列に関する用語「実質的に同一」は、特定の配列が、天然配列の配列とは1つ又は複数の欠失、置換又は付加で変更されており、その正味の効果としてT2R核酸又はポリペプチド、例えばT2R76核酸又はT2R76ポリペプチドの生物学的機能が保持されていることを意味する。
【0079】
2つ以上の配列の比較では、通常、1つの配列は基準配列の役割を果たし、それに対して1つ又は複数の試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピュータプログラムに入れ、必要ならば部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを選択する。次いで、配列比較アルゴリズムは、選択したプログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する指定した試験配列の配列同一性の割合を計算する。
【0080】
比較のための配列の最適な整列は、例えばSmith&Waterman(1981)のAdv Appl Math 2:482−489の局所相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch(1970)のJ Mol Biol 48:443−453の相同性整列アルゴリズム、Pearson&Lipman(1988)のProc Natl Acad Sci USA 85:2444−2448の類似性検索方法、これらのアルゴリズムの計算機化実施(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、Madison、WisconsinのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、又は目視検査によって実施することができる。一般的には、Ausubel(編)(1995)の「分子生物学の短いプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)」、第3版、Wiley、New Yorkを参照されたい。
【0081】
配列同一性の割合及び配列類似性を判定する好ましいアルゴリズムは、BLASTアルゴリズムであり、これはAltschulら(1990)のJ Mol Biol 215:403−410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公式に入手することができる。このアルゴリズムでは、データベース配列の同じ長さのワードと整列したときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、ある正の値の閾値スコアTを満たす試験配列中の長さWの短いワードを同定することによって、まず高スコアの配列対(HSP)を同定する。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つける検索を開始するシード(seed)として働く。次いで、累積整列スコアが増大可能な限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対の一致残基の報奨スコア;常に>0)及びN(不一致残基の罰スコア;常に<0)を使用して計算する。アミノ酸配列については、スコアマトリックスを使用して累積スコアを計算する。各方向のワードヒットの延長は、累積整列スコアがその最大達成値から量Xだけ減少し、累積スコアが1つ又は複数の負のスコアの残存整列の累積によりゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に到達したときに停止させる。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは整列の感度及び速度を判定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列について)初期値として、ワード長W=11、期待値E=10、カットオフ100、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは初期値として、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアマトリックスを使用する。Henikoff&Henikoff(11992)のProc Natl Acad Sci USA 89:10915−10919を参照されたい。
【0082】
配列の同一性の割合を計算する他に、BLASTアルゴリズムは2つの配列の類似性の統計的分析もする。例えば、Karlin&Altschul(1993)のProc Natl Acad Sci USA 90:5873−5877を参照されたい。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの基準は最小の確率合計(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の一致が偶然発生する確率を示す。例えば、試験核酸配列と基準核酸配列との比較における最小の確率合計が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合、試験核酸配列は基準配列と類似していると考えられる。
【0083】
III T2R76核酸の検出方法
本発明の別の態様では、T2R76ポリペプチドをコードする核酸分子を検出する方法を提供する。このような方法はT2R76遺伝子の変異体又は変化した遺伝子発現を検出するのに使用することができる。例えば、T2R76配列又は発現の変化の検出は、味覚についてのT2R76に関する差異を診断するために使用することができる。この方法に使用する核酸は配列番号1の配列を含んでいることが好ましい。
【0084】
本発明の方法で検出された配列は、特定のDNA配列の検出に通常適用される任意の方法を使用する当技術分野でよく知られた任意の手段によって検出し、サブクローニングし、配列決定し、さらに評価することができる。したがって、本発明の核酸を使用して、開示の配列を含む遺伝子及びゲノムDNAをクローニングすることができる。あるいは、本発明の核酸を使用して関連配列からなる遺伝子及びゲノムDNAをクローニングすることができる。本明細書で開示した核酸配列を使用するこのような方法は当業者に知られている。例えば、Sambrookら編(1989)の「分子クローニング(Molecular Cloning)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照されたい。代表的な方法は、実施例1〜4にも開示している。
【0085】
本発明の一の実施形態では、T2R76核酸分子のレベルは、例えばRT−PCRアッセイを使用して測定する。Chiang(1998)J Chromatogr A 806:209−218及びそこに引用された参考文献を参照されたい。
【0086】
本発明の別の実施形態では、本発明の核酸分子に基づく遺伝子アッセイを使用して、例えば、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Connerら、1983)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Nickersonら、1990)、一本鎖立体構造多型(SSCP)分析(Oritaら、1989)、SSCP/ヘテロ二本鎖分析、酵素ミスマッチ開裂、増幅したエキソンの直接配列分析(Kestilaら、1998;Yuanら、1999)、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(Stonekingら、1991)及び特定の突然変異を含む増幅したゲノムDNAの制限分析により遺伝子変異体をスクリーニングすることができる。単一のヌクレオチド多型の大規模な特性決定には自動化された方法を適用することもできる(Wangら、1998;Brookes、1999)。好ましい検出方法は非電気泳動法であり、例えばTAQMAN TM対立遺伝子識別アッセイ、PCR−OLA、分子標識、パドロックプローブ及びウェル蛍光を含む。Landegrenら(1998)Genome Res 8:769−776及びそこに引用された参考文献を参照されたい。
【0087】
IV.T2R76ポリペプチドの組換え発現のための系
本発明は、さらに、本発明の組換えT2R76ポリペプチドの発現系を提供する。このT2R76ポリペプチドは、ヒト又は非ヒトの1つ又は複数の他のT2Rと共に発現してもよい。このような系はその後の精製及び/又はT2R76ポリペプチドの特性決定において使用することができる。例えば、精製したT2R76ポリペプチドは、以下の本明細書中でさらに記載するT2R76抗体を産生するための免疫原として使用することができる。
【0088】
T2R76ポリペプチドの組換え発現のための系は、T2R76ポリペプチドのモジュレータの同定に使用することもできる。あるいは、開示のT2R76ポリペプチドは、他の試験ポリペプチドの活性化をアッセイするときに対照ポリペプチドとして使用することができる。このような試験ポリペプチドは、味覚に関連した他のT2R、例えばAdlerら(2000)のCell 100:693−702及びMatsunamiら(2000)のNature 601−603で開示されたポリペプチドの任意の1つを含むことができる。
【0089】
用語「発現系」は、異種核酸と異種核酸でコードされたポリペプチドとを含む宿主細胞を指す。例えば、異種発現系は、組換えT2R76核酸を含む構築体でトランスフェクトした宿主細胞、T2R76 cRNAでトランスフェクトした宿主細胞、又は異種核酸を宿主細胞ゲノムに導入することによって生成した細胞系を含むことができる。既述の通り、これらの発現系は他のT2R核酸を含んでもよい。
【0090】
T2R76ポリペプチドの組換え発現系は、(a)組換え技術によって発現されたT2R76ポリペプチド、及び(b)組換え技術によって発現されたT2R76ポリペプチドを含む宿主細胞を含むことができる。例えば、T2R76 cRNAを、in vitroで転写し、次いで宿主細胞に導入することにより、T2R76ポリペプチドを発現させることができる。この系は、hT2R76及び別のT2Rポリペプチドを含むヘテロメリックT2R受容体を生成するために、1つ又は複数の追加のT2Rポリペプチドをさらに含むことができる。
【0091】
T2R76ポリペプチドの組換え発現のための系はまた、(a)ベクターと、異種プロモーターに作動可能に結合したT2R76ポリペプチドをコードする核酸分子とを含む構築体、並びに(b)(a)の構築体を含む宿主細胞を含むことができ、これにより宿主細胞はT2R76ポリペプチドを発現する。この系は、1つ又は複数の追加のT2Rポリペプチドをコードする構築体をさらに含むことができる。さらに、単一の構築体は、それ自体でT2R76ポリペプチドと、1つ又は複数の追加のT2Rポリペプチドとをコードすることができる。
【0092】
単離ポリペプチド及び組換え技術によって生成されたポリペプチドを精製し、当業者に知られている種々の標準的な技術を使用して特性決定することができる。例えば、Schroder&Lubke(1965)の「ペプチド(The Peptides)」、Academic Press、New York;Schneider&Eberle(1993)の「ペプチド、1992:第22回欧州ペプチドシンポジウムの議事録(Peptides、1992:Proceedings of the Twenty−Second European Peptide Symposium)」、1992年9月13〜19日、Interlaken、スイス国、Escom、Leiden;Bodanszky(1993)の「ペプチド合成の原則(Principles of Peptide Synthesis)」、第2改定版、Springer−Verlag、Berlin/ニューヨーク;Ausubel(編)(1995)の「分子生物学の短いプロトコル(Short Protocols in Molecular Biolog)」、第3版、Wiley、New Yorkを参照されたい。
【0093】
組換え技術によって発現されたT2R76ポリペプチドは、機能的味覚受容体を含むことが好ましく、苦味受容体を含むことがより好ましい。したがって、組換え技術によって発現されたT2R76ポリペプチドは、苦味化合物に応答して活性化を示すものが好ましい。また、組換えT2R76ポリペプチドは、天然のT2R76ポリペプチドと同様の活性化応答を示すことが好ましい。T2R76の機能を決定する代表的な方法は以下の本明細書中で記載する。
【0094】
IV.A.発現構築体
T2R76ポリペプチドを発現する構築体は、ベクターとT2R76ヌクレオチド配列とを含み、このT2R76ヌクレオチド配列はプロモーター配列と作動可能に結合している。組換えT2R76発現のための構築体はまた、転写終止シグナル及びヌクレオチド配列を適切に翻訳するのに必要な配列を含むこともできる。翻訳及び終止シグナル配列の付加を含む発現構築体の調製は当業者に知られている。
【0095】
T2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドの組換え体の生成は、構成性プロモーター又は誘導プロモーターを使用して実施することができる。本発明に従って使用することができる代表的なプロモーターとしては、サルウイルス40初期プロモーター、レトロウイルス由来の長い末端反復プロモーター、アクチンプロモーター、熱ショックプロモーター及びメタロチエンタンパク質(metallothien protein)がある。
【0096】
T2R76ポリペプチドを発現するのに使用することができる適切なベクターとしては、これらだけに限定するものではないが、ワクシニアウイルス又はアデノウイルスなどのウイルス、バキュロウイルスベクター、酵母ベクター、バクテリオファージベクター(例えば、λファージ)、プラスミド及びコスミドDNAベクター、トランスポゾン仲介形質転換ベクター及びこれらの誘導体がある。
【0097】
構築体は、使用するベクターと適合するトランスフェクション法を使用して宿主細胞に導入する。標準的なトランスフェクション法としては、エレクトロポレーション、DEAE−Dextranトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム仲介トランスフェクション、トランスポゾン仲介形質転換、レトロウイルスを使用する注入、粒子仲介遺伝子転移、超速度遺伝子転移及びこれらの組合せがある。
【0098】
IV.B.宿主細胞
本明細書中で使用する用語「宿主細胞」は、異種核酸分子を導入することができる細胞を指す。これらだけに限定するものではないが、哺乳動物細胞などの真核宿主(例えば、HEK−293細胞、HeLa細胞、CV−1細胞、COS細胞)、両性動物細胞(例えば、アフリカツメガエル卵母細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、並びに大腸菌及び枯草菌などの原核宿主を含む任意の適切な宿主細胞を使用することができる。好ましい宿主細胞はT2R76ポリペプチドを実質的に欠いている。
【0099】
組換え配列の発現を改変するか、所望の特定の方法で遺伝子産物を改変しプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。例えば、種々の宿主細胞が、翻訳並びに翻訳後プロセシング及び改変(例えば、タンパク質のグリコシル化、リン酸化)のための特性及び特定の機序を有する。発現した外来タンパク質の所望の改変及びプロセシングを確実に行うために、適切な細胞系又は宿主系を選択することができる。例えば、細菌系の発現を使用して非グリコシル化コアタンパク質産物を生成することができ、酵母での発現はグリコシル化産物を生成する。
【0100】
本発明はさらに、安定な細胞系でのT2R76ポリペプチドの組換え発現を包含する。異種構築体の宿主細胞への形質転換の後に行われる安定な細胞系を生成する方法は、当技術分野で知られている。例えば、Joyner(1993)の「遺伝子ターネティング:実践的アプローチ(Gene Tarneting:A Practical Approach)」、Oxford University Press、Oxford/New Yorkを参照されたい。従って、形質転換細胞、組織又は非ヒト生物は、形質転換プロセスの最終生成物だけでなく、トランスジェニック後代又はその繁殖形態を包含すると理解される。
【0101】
本発明は、本明細書で開示の組換えT2R76ポリペプチドを発現する細胞の凍結保存体をさらに包含する。したがって、一時的にトランスフェクトした細胞およびT2R76を発現する安定な細胞系の細胞を後で使用するために、凍結し、保存することができる。凍結細胞は離れた場所で使用するために容易に運搬することができる。
【0102】
凍結保存培地は一般に、ベース培地、凍結保存剤及びタンパク質源からなる。凍結保存剤及びタンパク質は、凍結解凍プロセスのストレスから細胞を保護する。血清含有培地としては、通常の凍結保存培地は、10%グリセロールを含む完全培地、10%DMSO(ジメチルスルホキシド)を含む完全培地、又は10%グリセロール若しくは10%DMSOを含む50%新鮮培地を含む5.0%細胞調整培地(cell−conditioned medium)として調製する。血清を含まない培地では、通常の凍結保存配合物は、7.5%DMSOを含む50%血清フリー新鮮培地を含む50%血清フリー細胞調整培地、又は7.5%DMSO及び10%細胞培養グレードDMSOを含む血清フリー新鮮培地を含む。1mあたり約106から約107個の細胞を含む細胞懸濁液を凍結保存培地と混合することが好ましい。
【0103】
凍結保存に適切なバイアル又はその他の容器、例えばNUNC@ CRYOTUBESTM(Applied Scientific of South San Francisco、Californiaから入手可能)中で、細胞を凍結保存培地と合わせる。細胞は多ウェルプレート、例えば高スループットアッセイ用に設計した96ウェルプレートのウェルに等分量ずつ入れ、プレートに入れたまま凍結することもできる。
【0104】
細胞は、1分あたり約−1℃の速度で室温から保存温度まで冷却するのが好ましい。冷却速度は、例えば細胞を含むバイアルを、約1リットルの容量を持ち、完全におおわれた満水状態の保存容器に入れ、そのような容器(cube)を−70℃の機械的フリーザーに入れることによって調節することができる。あるいは、細胞冷却の速度は、凍結させる細胞培養物の総体積の15倍を超える体積の脂肪族アルコールなどの液体冷媒にバイアルを沈め、約−70℃未満の温度の通常のフリーザーに、沈めた培養物バイアルを入れることにより、1分あたり約−1℃に制御することができる。細胞を凍結させるための市販の装置も入手可能である。例えば、Planer Mini−Freezer R202/20OR(英国のPlaner Products Ltd.)及びBF−5 Biological Freezer(米国コネチカット州DanburyのUnion Carbide Corporation)。凍結細胞は、好ましくは約−70℃以下から約−80℃、より好ましくは約−130℃以下で保存する。
【0105】
最良の細胞生存を得るためには、細胞はできるだけ速やかに解凍しなければならない。凍結細胞を含むバイアル又はその他の保存容器を貯蔵室から取り出したら、37℃の水浴に直接入れ、完全に解凍するまで穏やかに振盪しなければならない。凍結保存剤に対して細胞が特に感受性の場合は、さらに増殖の前に細胞を遠心分離し、凍結保存剤を除去する。
【0106】
凍結細胞の調製及び取扱いのさらなる方法は、特にFreshney(1987)の「動物細胞の培養:基本技術のマニュアル(Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique)」、第2版、A.R.Liss、New York及び米国特許第6176089号;同第6140123号;同第5629145号;及び第4455842号に見出すことができる。
【0107】
V.トランスジェニック動物
本発明はまた、T2R76遺伝子発現の妨害剤及び任意に別のT2R妨害剤を含むトランスジェニック動物を提供する。変化した遺伝子発現は、T2R76遺伝子の変化したレベル又は突然変異体の発現を含むことができる。本発明は、トランスジェニック動物を作製する構築体を調製するのに使用することができるT2R76をコードする核酸を提供する。T2R76遺伝子座を標的とする構築体の調製に有用なゲノム位置測定データも提供する。
【0108】
本発明の一実施形態では、トランスジェニック動物はマウスT2R76遺伝子座を標的改変したマウスを含むことができ、全ての体細胞のT2R76遺伝子を完全に又は部分的に機能的に不活性化したマウス株をさらに含むことができる。
【0109】
他の実施形態において、本発明によるトランスジェニック動物は、アンチセンス又はリボザイムT2R76構築体を使用して作製し、これを普遍的な又は組織特異的なプロモーターで作動させて、体細胞のT2R76遺伝子発現レベルを減少させ、それにより「ノックダウン」表現型を実現する。本発明は、T2R76が条件付き又は誘導性に不活性化されたネズミ株の生成も提供する。このようなネズミ株は追加の合成若しくは天然の突然変異、例えば任意の他のT2R遺伝子の突然変異も含むことができる。
【0110】
本発明はまた、例えば過剰発現又は優性の負の表現型を作製するために、T2R76遺伝子を特異的に「ノックイン」改変したマウス株も提供する。したがって、「ノックイン」改変は、T2R76ポリペプチドをコードする核酸の野生型及び突然変異型の両方を発現することを含む。
【0111】
トランスジェニック動物を作製する技術は当技術分野で知られている。代表的な技術は、米国特許第5489742号(トランスジェニックラット);米国特許第4736866号、同第5550316号、同第5614396号、同第5625125号及び同第5648061号(トランスジェニックマウス);米国特許第5573933号(トランスジェニックブタ);同第5162215号(トリのトランスジェニック種)及び米国特許第5,741,957(ウシのトランスジェニック種)に記載されており、これらのそれぞれの内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0112】
例えば、本発明のトランスジェニック動物は、マウスT2R76を標的改変したマウスを含むことができる。全ての体細胞のT2R76遺伝子を完全又は部分的に機能的に不活性化したマウス株は、ネズミ胚性幹細胞での部位特異的組換えの標準的な技術を使用して作製することができる。Capecchi(1989)のScience 244:1288−1292;Thomas&Capecchi(1990)のNature 346:847−850;及びDelpireら(1999)のNat Genet 22:192195を参照されたい。
【0113】
VI.T2R76抗体
本発明の別の態様では、T2R76ポリペプチドに特異的に結合する抗体を生成する方法を提供する。この方法では、完全長の組換えT2R76ポリペプチドが、有効な免疫原として使用され、動物を免疫してその動物で免疫応答が発生できるように調製される。免疫応答は、動物の血清から収集することができる抗体の産生を特徴とする。本発明はまた、配列番号2を含む、本明細書で開示の新規なT2R76ポリペプチドを使用する方法で生成した抗体を提供する。
【0114】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ハイブリッド抗体、一本鎖抗体、突然変異させた抗体、ヒト化抗体及び抗原結合部位を含む抗体断片(例えば、Fab抗体断片及びFv抗体断片)を含む、免疫グロブリンタンパク質又はその機能的部分を指す。本発明の好ましい実施形態では、T2R76抗体はモノクローナル抗体を含む。したがって、本発明は、抗体及び本明細書で記載したモノクローナル抗体を産生する細胞系も包含する。
【0115】
抗体のT2R76ポリペプチドへの結合を記載するのに使用する用語「特異的に結合する」は、他のポリペプチドの異種混合物中でのT2R76ポリペプチドへの結合を指す。
【0116】
抗体と対照ポリペプチド又は試料との結合を記載するのに本明細書で使用する語句「結合を実質的に欠く」又は「結合が実質的にない」は、非特異的又はバックグラウンド結合を包含するが、特異結合を含まない結合のレベルを指す。
【0117】
抗体を調製及び特性決定する技術は当技術分野で知られている。例えば、Harlow&Lane(1988)の「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York及び米国特許第4196265号、同第4946778号、同第5091513号、同第5132405号、同第5260203号、同第5677427号、同第5892019号、同第5985279号及び同第6054561号を参照されたい。
【0118】
本明細書の開示の通りに調製したT2R76抗体は、T2R76ポリペプチドの局在性及び活性に関連する技術分野で知られる、例えばT2R76ポリペプチドをコードする核酸のクローニング、T2R76ポリペプチドの免疫精製、生物学的試料中でのT2R76ポリペプチドのイメージング、及び適切な生物学的試料中でのT2R76ポリペプチドのレベル測定のための方法で使用することができる。このような方法を実施するために、本発明の抗体は、これらだけに限定するものではないが、放射性標識、蛍光標識、エピトープ標識及びin vivoで検出可能な標識を含む検出可能な標識をさらに含むことができる。特定の検出技術に適切な標識を選択する方法、検出可能な標識を抗体と複合又は結合させる方法は当業者に知られている。
【0119】
VIII.T2R76モジュレータ
本発明は、T2R76活性のモジュレータを同定するアッセイをさらに開示する。アッセイは、上記の本明細書中で開示したような、T2R76ポリペプチドを発現する系、又はそのような系で産生された単離T2R76ポリペプチドを使用することができ、そのようなT2Rポリペプチドは、他のT2Rポリペプチドと共に発現されるものでもよい。本発明は、開示の方法を使用して同定したT2R76活性のモジュレータも提供する。
【0120】
用語「調節する」は、T2R76ポリペプチドの任意又は全ての化学的及び生物学的活性又は特性の増加、減少又はその他の変化を意味する。したがって、モジュレータを同定する方法は、T2R76の機能のレベル又は質をアッセイすることも含む。
【0121】
T2R76機能のモジュレータを同定する方法は、(a)組換え発現系を用意して、それによりT2R76ポリペプチドを宿主細胞中で発現させること(T2R76ポリペプチドはT2R76ポリペプチドを含む)、(b)試験物質を(a)の系に与えること、(c)試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をアッセイすること、(d)試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をT2R76機能の対照レベル又は質と比較すること、及び(e)T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することによって試験物質をT2R76モジュレータとして同定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、発現系は、少なくとも1つの他のT2Rと共発現するT2R76も提供する。
【0122】
T2R76活性の制御レベル又は質は、野生型T2R76活性のレベル又は質を指す。T2R76ポリペプチドの組換え発現のための系は配列番号2を含むことが好ましい。試験物質の調節能力を評価する場合、T2R76活性の制御レベル又は質は試験物質の不存在下での活性のレベル又は質を含む。
【0123】
本明細書で使用する用語「有意に変化した」は、T2Rポリペプチド、例えばT2R76ポリペプチドの変化したレベル又は活性を指し、測定技術に固有の誤差の範囲よりも大きい測定可能な質の定量化した変化、好ましくは対照測定値に対して約2倍以上の増加又は減少、より好ましくは約5倍以上の増加又は減少、最も好ましくは約10倍以上の増加又は減少を指す。
【0124】
本発明の一実施形態では、T2R76機能のアッセイは、T2R76遺伝子発現のレベルを判定することを含む。
【0125】
本発明の別の実施形態では、T2R76機能のアッセイは、組換え発現T2R76ポリペプチドの結合活性のアッセイを含む。例えば、T2R76活性は、モジュレータのT2R76ポリペプチドへの結合の量又は強さを含むことができる。
【0126】
本発明のさらに別の実施形態では、T2R76機能のアッセイは、T2R76ポリペプチドの活性立体構造のアッセイを含むことができる。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、T2R76の機能のアッセイは、リガンド又はモジュレータのT2R76ポリペプチドへの結合に応答した細胞内シグナリング事象の活性化のアッセイを含む。例えば、Gタンパク質交換活性のリガンド仲介刺激は、以下の本明細書及び実施例3でさらに記載する通り、[35S]GTPγSのT2R76ポリペプチドへの結合量を測定することによってアッセイすることができる。
【0128】
開示の方法で同定したモジュレータは、アゴニスト及びアンタゴニストを含むことができる。本明細書で使用する用語「アゴニスト」は、T2R76ポリペプチドの生物学的活性を活性化し、生物学的活性を助け、又は生物学的活性を増強する物質を意味する。本明細書で使用する用語「アンタゴニスト」は、T2R76ポリペプチドの生物学的活性を妨げ、又は緩和する物質を指す。モジュレータは、T2R76ポリペプチドに特異的に結合するリガンド又は物質も含むことができる。T2R76モジュレータの判定のための活性アッセイ及び結合アッセイは、in vitro又はin vivoで実施することができる。
【0129】
本発明の一実施形態では、このようなアッセイは、これらだけに限定するものではないが、「用途」という標題で以下の明細書でさらに記載する食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品及び薬剤を含む経口使用する組成物の味覚を変化させるための添加剤として開発できるT2R76モジュレータの同定に有用である。例えば、T2R76の阻害剤は苦味を減少させるのに使用することができる。
【0130】
本発明の別の実施形態では、このようなアッセイは、経口使用が可能だが望ましくない化合物、例えば家庭用洗剤、毒などの味覚を変化させる添加剤として開発することができるT2R76モジュレータの同定に有用である。したがって、T2R76のアゴニストを使用して、組成物に苦味を導入し又は組成物の苦味を増大させることによってその経口使用を阻止することができる。
【0131】
本発明のさらに別の実施形態において、組換えT2R76ポリペプチドを使用するアッセイは、T2R76との相互作用が望ましくない生物活性剤を事前にスクリーニングする目的で実施することができる。例えば、対象に投与することを意図した薬物は、望ましくない苦味となり得るT2R76調節活性について試験することができる。
【0132】
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書で開示のアッセイを使用して、突然変異T2R76ポリペプチド、例えば苦味覚の差異と結び付いている突然変異ポリペプチドの特性決定をすることができる。突然変異T2R76ポリペプチドの組換え発現は、障害関連(disorder−related)のT2R76ポリペプチドのさらなる分析を可能にする。
【0133】
本発明は、本明細書で記載した方法を利用する迅速な高スループットスクリーニング法も提供する。このスクリーニング法は、個々にT2R76ポリペプチドを多数の試験物質と接触させることを含む。このようなスクリーニング法において、多数の標的物質は、好ましくは約104種を超える試料、より好ましくは約105種を超える試料、さらに好ましくは約106種を超える試料を含む。
【0134】
本発明のin vitro及び細胞アッセイは、溶液アッセイを含むことができ、又はアッセイの1種若しくは複数の成分を固定する固相基質をさらに含むことができる。例えば、T2R76ポリペプチド又はT2R76ポリペプチドを発現する細胞、及び任意により別のT2Rポリペプチドを、共有結合又は非共有結合により固体状態の成分に直接結合することができる。さらに場合により、この結合は、T2R76ポリペプチドの基質への間接結合を仲介するリンカー分子又はタグを含むことができる。
【0135】
代表的なリンカーとしては、既知の結合対(例えば、ビオチンとアビジン)、既知の抗原を認識する抗体、合成ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド及びポリアセテート)、ペプチド、エーテルがある。リンカーは、フレキシブルなリンカー、例えばポリ(エチレングリコール)リンカー(米国アラバマ州HuntsvilleのShearwater Polymers、Inc.から入手可能)を任意に含むことができる。リンカーは、さらにアミド、スルフヒドリル又はヘテロ官能性結合部位を任意に含むことができる。
【0136】
リンカーは、任意の種々の最新の方法を使用して固体基質に付加させることができる。この最新の方法には、基質の誘導体化(これにより基質はリンカーと反応する)又は熱若しくは紫外線架橋を使用する非化学的手法が含まれる。代表的なプロトコルは、例えばMerrifield(1963)のJ Am Chem Soc 85:2149−2154(例えばペプチドの固相合成を記載している);Geysenら(11987)のJ Immun Meth 102:259−274(ピン上での固相成分の合成を記載している);Frank&boring(1988)のTetrahedron 44:60316040(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を記載している);Fodorら(1991)のScience 251:767−777;及びKozalら(1996)のNat Med 2(7):753759(固体基質に固定したバイオポリマーのアレイを記載している)、Merrifield(1963)のJ Am Chem Soc 85:2149−2154(例えばペプチドの固相合成を記載している);Geysenら(1987)のJ Immun Meth 102:259−274(ピン上での固相成分の合成を記載している);Frank&Doring(1988)のTetrahedron 44:60316040(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を記載している);Fodorら(1991)のScience 251:767−777;及びKozalら(1996)のNat Med 2(7):753759(固体基質に固定したバイオポリマーのアレイを記載している)に特に見い出すことができる。
【0137】
VII.A.試験物質
本発明の方法を使用してアッセイした潜在的モジュレータは候補物質を含む。本明細書で使用する用語「候補物質」及び「試験物質」は同義的に使用され、いずれも任意の合成、組換え若しくは天然の生成物又は組成物を含むT2R76ポリペプチドと相互作用すると思われる物質を指す。ポリペプチドと相互作用すると思われる試験物質は、本明細書で開示の方法を使用してそのような相互作用について評価することができる。
【0138】
代表的な試験物質としては、これらだけに限定するものではないが、ペプチド、オリゴマー、核酸(例えば、アプタマー)、小分子(例えば、化合物)、抗体又はその断片、核酸−タンパク質融合物、任意の他の親和剤、それらの組合せがある。試験物質はさらに、炭水化物、ビタミン又はその誘導体、ホルモン、神経伝達物質、ウイルス又はその受容体結合ドメイン、オプス又はロドプシン、着臭剤、フェロモン、毒素、成長因子、血小板活性化因子、神経刺激性ペプチド又は神経ホルモンを含むことができる。候補物質は苦味覚を引き出すことが好ましい。試験される候補物質は精製された分子、均質な試料、又は分子若しくは化合物の混合物であることができる。
【0139】
本明細書で使用する用語「小分子」は、約1000ダルトン未満、より好ましくは約750ダルトン未満、さらに好ましくは約600ダルトン未満、さらに好ましくは約500ダルトン未満の分子量を有する化合物、例えば有機化合物を指す。小分子はまた、約−4から約+14の範囲、より好ましくは約−2から約+7.5の範囲の計算されたlogオクタノール/水分配係数を有することが好ましい。
【0140】
試験物質はライブラリーとして得る又は調製することができる。本明細書で使用する用語「ライブラリー」は分子の集団を意味する。ライブラリーは、約10個の分子から数10億個以上の分子まで変化する少数又は多数の異なる分子を含むことができる。分子は天然分子、組換え分子又は合成分子を含むことができる。ライブラリーの複数の試験物質は同時にアッセイすることができる。異なるライブラリー由来の試験物質は同時に評価するために、場合によってプールすることができる。
【0141】
代表的なライブラリーとしては、これらだけに限定するものではないが、ペプチドライブラリー(米国特許第6156511号、同第6107059号、同第5922545号及び同第5223409号)、オリゴマーライブラリー(米国特許第5650489号及び同第5858670号)、アプタマーライブラリー(米国特許第6180348号及び同第5756291号)、小分子ライブラリー(米国特許第6168912号及び同第5738996号)、抗体又は抗体断片のライブラリー(米国特許第6174708号、同第6057098号、同第5922254号、同第5840479号、同第5780225号、同第5702892号及び同第5667988号)、核酸−タンパク質融合物のライブラリー(米国特許第6214553号)及びT2R76ポリペプチドに潜在的に結合することができる任意の他の親和剤のライブラリー(例えば、米国特許第5948635号、同第5747334号及び同第5498538号)がある。
【0142】
ライブラリーは分子の無作為集団を含むことができる。あるいはライブラリーは、特定の配列、構造又は立体構造について偏りを有する分子の集団を含むことができる。例えば、米国特許第5264563号及び同第5824483号を参照されたい。種々のタイプの分子の多様な集団を含むライブラリーを調製する方法は、例えば上記の本明細書で挙げた米国特許に記載されている通り、当技術分野で知られている。多くのライブラリーは市販もされている。
【0143】
VII.B.結合アッセイ
本発明の別の実施形態では、T2R76モジュレータを同定する方法は、試験物質のT2R76ポリペプチド又はT2R76ポリペプチドと1つ若しくは複数の他のT2Rポリペプチドとを含むヘテロメリック受容体への特異結合を判定することを含む。用語「結合」は2つの分子間の親和性を指す。特異結合はまた、一つのタンパク質又は化合物の別のタンパク質への活性が阻害的(阻害剤又はアンタゴニストの場合)又は増強的(活性剤又はアゴニストの場合)な相互作用の質又は状態を包含することが好ましい。
【0144】
候補モジュレータの結合能力に言及する場合、語句「特異的に(又は選択的に)結合する」は、タンパク質及び他の生物学的材料の異種集団中にタンパク質が存在することを決定する結合反応を指す。モジュレータのT2R76ポリペプチドへの結合は、その結合親和性が約1×10−1から約1×10−1以上である場合、特異的であると考えることができる。語句「特異的に結合する」は、飽和可能結合も指す。試験物質のT2R76ポリペプチドへの飽和可能結合を証明するために、Scatchard分析は、例えばMakら(1989)のJ Biol Chem 264:21613−21618によって記載されている通りに実施することができる。
【0145】
モジュレータの対照ポリペプチド又は試料への結合を説明するために本明細書で使用する語句「結合を実質的に欠く」又は「結合が実質的にない」は、非特異的又はバックグラウンド結合を包含するが、特異結合を含まない結合のレベルを指す。
【0146】
いくつかの技術を使用して、既知の競合モジュレータを用いることなくT2R76ポリペプチドと試験物質との間の相互作用を検出することができる。代表的な方法としては、これらだけに限定するものではないが、蛍光相関分光法、表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間分光法及びBiacore技術があるが、各技術は以下の本明細書で記載する。これらの方法により自動化高スループットスクリーニングを容易にできる。
【0147】
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)は、小体積の試料中の蛍光分子の蛍光の散乱の平均速度を測定する(Tallgren、1980)。試料のサイズはわずか103個の蛍光分子、試料の体積はわずか細菌1つの細胞質であることができる。散乱速度は分子の質量の関数であり、質量が増大すると減少する。したがってFCSは、質量、つまり結合時の分子の散乱速度の変化を測定することによってポリペプチド−リガンド相互作用分析に適用することができる。通常の実験では、分析する標的(例えば、T2R76ポリペプチド)は、N末端又はC末端に挿入されたポリヒスチジン配列などの配列タグを有する組換えポリペプチドとして発現される。この発現は、大腸菌、酵母、アフリカツメガエル卵母細胞又は哺乳動物細胞などの宿主細胞中で仲介される。ポリペプチドはクロマトグラフィー法を使用して精製する。例えば、ポリヒスチジンタグを使用して発現されたポリペプチドをイミノ二酢酸アガロースにキレートしたNi2+などの金属キレートカラムに結合させることができる。次いでポリペプチドをカルボキシテトラメチルローダミン又はBODIPYTm試薬(オレゴン州EugeneのMolecular Probesから入手可能)などの蛍光タグで標識する。次いでポリペプチドを溶液中で潜在的リガンドに曝露し、その散乱速度をCarl Zeiss、Inc.(Thornwood、ニューヨーク)から入手可能な器具を使用してFCSにより測定する。リガンド結合はポリペプチドの散乱速度の変化によって判定する。
【0148】
表面増強レーザ脱離/イオン化(Surface−Enhanced Laser Desorption/Ionization:SELDI)はHutchens&Yip(1993)のRapid Commun Mass Spectrom 7:576−580によって開発された。飛行時間質量分光計(time−of−flight mass spectrometer:TOF)と合わせると、SELDIはチップ上に保持された分子を迅速に分析する技術を提供する。これは標的タンパク質又はその部分をチップに共有結合させ、このタンパク質に結合する小分子を質量分析で分析することによってリガンド−タンパク質相互作用分析に適用することができる(Worrallら、1998)。通常の実験では、標的ポリペプチド(例えば、T2R76ポリペプチド)は組換え発現させ、精製する。標的ポリペプチドは、ポリヒスチジンタグを利用するか、イオン交換又は疎水性相互作用などのその他の相互作用によりSELDIチップに結合させる。例えばリガンドを連続的にピペットで量り入れることができる供給システム(オートサンプラー)を介して、このように調製したチップを潜在的リガンドに曝露する。次いで、例えばイオン強度が増大するバッファ溶液での一連の洗浄などの増大するストリンジェンシーの溶液中で洗浄する。各洗浄後、チップをSELDI−TOFにかけることにより結合した材料を分析する。標的ポリペプチドを特異的に結合するリガンドは、それを溶離するのに必要な洗浄のストリンジェンシーで同定する。
【0149】
Biacoreは、層に固定した標的ポリペプチド(例えば、T2R76ポリペプチド)にリガンドが結合した際の表面層での屈折率の変化に依存する。このシステムでは、小リガンドの集団を2〜5マイクロリットルの細胞に連続的に注入し、ここで標的ポリペプチドは細胞内に固定する。結合は、表面から屈折するレーザ光を記録することによって表面プラズモン共鳴(SPR)により検出する。一般に、表面層での質量濃度の所与の変化についての屈折率変化は、すべてのタンパク質及びペプチドで実質的に同じであり、単一の方法を任意のタンパク質に適用することができる(Liedbergら、1983。通常の実験では、標的タンパク質は組換え発現させ、精製し、Biacoreチップに結合させる。結合は、ポリヒスチジンタグを利用することにより、又はイオン交換や疎水性相互作用などのその他の相互作用により促進することができる。次いで、このように調製したチップをBiacore(スウェーデン国、Uppsala)から販売されている器具に組み込まれた供給システムを介して1つ又は複数の潜在的リガンドに曝露し、そのリガンドをピペットで連続的に量り入れる(オートサンプラー)。チップ上のSPRシグナルを記録し、屈折率の変化は固定化した標的とリガンドとの相互作用を示す。オンレート及びオフレートのシグナル動態を分析することにより、非特異的相互作用と特異的相互作用とを区別することができる。Homolaら(1999)のSensors and Actuators 54:3−15及びその中の引例も参照されたい。
【0150】
VII.C.立体構造アッセイ
本発明はまた、単独で発現されたT2R76ポリペプチド、或いはT2R76モジュレータが結合した、又はT2R76モジュレータと相互作用した場合に別のT2Rポリペプチドと合わせたT2R76ポリペプチドの立体構造の変化に依存するT2R76モジュレータを同定する方法を提供する。
【0151】
円偏光二色性を高分子の溶液に適用することにより、これらの高分子の立体構造の状態が明らかになる。この技術により、ランダムコイル、αへリックス及びβ鎖の立体構造の状態を区別することができる。
【0152】
T2R76ポリペプチドのモジュレータを同定するために、組換え発現させたT2R76ポリペプチドを使用して円偏光二色性分析を実施することができる。T2R76ポリペプチドを、例えばイオン交換及びサイズ排除クロマトグラフィーで精製し、試験物質と混合する。この混合物を円偏光二色性にかける。試験物質の存在下でのT2R76ポリペプチドの立体構造を、試験物質不存在下でのT2R76ポリペプチドの立体構造と比較する。試験物質の存在下でのT2R76ポリペプチドの立体構造状態の変化をこのように使用してT2R76モジュレータを同定することができる。代表的な方法は米国特許第5776859号及び同第5780242号に記載されている。T2R76ポリペプチドは別のT2Rポリペプチドを含むヘテロメリック受容体に含まれていてもよい。
【0153】
VII.D.受容体活性化アッセイ
本発明の好ましい実施形態では、T2R76モジュレータを同定する方法は機能性T2R76ポリペプチドを使用する。本明細書で開示の新規なT2R76ポリペプチドは配列番号2を含む。T2R76の機能を判定する代表的な方法は以下の本明細書で記載する通り、細胞内シグナリング事象のリガンド仲介活性化をアッセイすることを含む。
【0154】
試験物質のT2R76の機能への効果は、これらだけに限定するものではないが、T2R76ポリペプチドのリン酸化、T2R76ポリペプチドに結合するGタンパク質、T2R76ポリペプチドを発現する細胞中のイオン流束、遺伝子転写の変化、細胞代謝の変化(例えば、細胞増殖)、細胞内第2メッセンジャー(例えば、Ca2+、IP3、cGMP、cAMP)の変化及び伝達物質又はホルモン放出の変化を含むT2R76活性によって引き出される任意の生理学的変化のアッセイを含むことができる。GPCRシグナル形質導入及びそれをアッセイする方法は、Methods in Enzymology volumes 237及び238(1994)に記載されている。Berridge&Irvine(1984)のNature 312:315−321;Bourneら(1991)のNature 10:349:117−27;Bourneら(1990)のNature 348:125−32;Felley−Boscoら(1994)のAm J Resp Cell及びMol Biol 11:159−164;Mistili&Spector(1997)のNat Biotech 15:961−964;Offermanns&Simon(1995)のJ Biol Chem 270:15175−15180;Pitcherら(1998)のAnnu Rev Biochem 67:653−92;並びに米国特許第4115538号;同第5436128号;同第6004808号、同第6403305号及び同第6255059号も参照されたい。
【0155】
本発明の好ましい実施形態では、T2R76の機能のアッセイは、組換え発現されたT2R76ポリペプチド単独又は別のT2Rポリペプチドと合わせて組換え発現されたT2R76ポリペプチドのガストデューシン又はGq若しくはトランスデューシンなどの種々のGタンパク質へのカップリングをアッセイすることも含む。したがってT2R76活性の代表的レベルは、実施例3で記載の通り、ガストデューシンでのGDPのGTPγSへの交換量を含むことができる。T2R76活性の代表的な質は、例えばサブユニット1つあたりのGタンパク質の選択的活性化を含むことができる。
【0156】
この方法に従って、T2R76を発現する細胞はT2R76の機能をアッセイするのに有用なキットの形態で供給することができる。したがって、細胞は上記の本明細書で記載の通りに凍結させ、凍結している間にアッセイを実施する他の場所へ輸送することができる。例えば、本発明の一実施形態では、T2R76モジュレータを検出するために試験キットを用意する。このキットは、(a)完全長T2R76ポリペプチドをコードするDNAでトランスフェクトした凍結細胞及び(b)この細胞を増殖させるための培地を含む。
【0157】
このようなアッセイで使用する細胞は、本来のT2R76及びT2R76と実質的に同様のポリペプチドを実質的に欠いている細胞を含むことが好ましい。好ましい細胞は真核生物細胞、例えばHEK−293細胞を含む。
【0158】
宿主細胞又は対照細胞を記載するために本明細書で使用する用語「実質的に欠いている」は、本来のT2R76のレベル、T2R76と実質的に同様のポリペプチドのレベル又はそれらの活性レベルを有し、バックグラウンドレベルを含む質を指す。用語「バックグラウンドレベル」は、T2R76を含まず、T2R76ポリペプチドと実質的に同様のポリペプチドを含まない細胞で通常検出される発現又は活性の非特異的測定値を包含する。
【0159】
本発明のアッセイで使用した細胞は、T2R76受容体を細胞内シグナリング経路にカップリングすることができる機能性Gタンパク質を含むことが好ましい。本発明の一実施形態では、機能性Gタンパク質は種々のカップリング、例えばGα15及びGα16を示すGタンパク質を含むことができる。Wilkieら(1991)のProc Nad Acad Sci USA 88:10049−10053及び米国特許第6004808号を参照されたい。
【0160】
組換えT2R76を発現する細胞を使用するすべてのアッセイは、本来のT2R76及びT2R76ポリペプチドと実質的に同様のポリペプチドを実質的に欠いている対照細胞をさらに使用することも好ましい。一時的にトランスフェクトした細胞を使用する場合、対照細胞は、例えばトランスフェクトしていない宿主細胞を含むことができる。T2R76ポリペプチドを発現する安定な細胞系を使用する場合、対照細胞は、例えばT2R76を発現する細胞系を誘導するのに使用した親細胞系を含むことができる。
【0161】
一時的にトランスフェクトした細胞を使用するT2R76活性のアッセイは、トランスフェクトした細胞をトランスフェクトしていない細胞から区別するマーカーを含んでいることが好ましい。用語「マーカー」は、T2R76を組換え発現させる細胞をT2R76ポリペプチドを組換え発現させない細胞から区別するのに使用することができる任意の検出可能な分子を指す。細胞がT2R76をコードする核酸分子とマーカーとで同時にトランスフェクトされるように、マーカーはT2R76発現のための構築体でコードされているか、T2R76発現のための構築体と合わされていることが好ましい。マーカーとして有用な代表的な検出できる分子としては、これらだけに限定するものではないが、異種核酸、トランスフェクトされた構築体でコードされたポリペプチド(例えば、酵素又は蛍光ポリペプチド)、結合タンパク質及び抗原がある。例えば、マーカーは実施例2で記載の通り、免疫学的に検出することができるロドプソンタグを含むことができる。
【0162】
マーカーとして有用な酵素の例としては、ホスファターゼ(例えば、酸ホスファターゼ又はアルカリホスファターゼ)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、β−グルコシダーゼ、プロテアーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、エステラーゼ、ルシフェラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ又はペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)がある。
【0163】
酵素を含むマーカーは、酵素の活性に基づいて検出することができる。したがって、基質を加え、例えば分光光度計、ルミノメーター又は蛍光分光計を使用して、その最終生成物が検出可能な反応を触媒する。上記の酵素による、検出可能な反応生成物を生成する反応のための基質は当業者に知られている。
【0164】
好ましいマーカーは、基質を加えることなく検出することができるコードされたポリペプチドを含む。直接検出できる代表的なポリペプチドとしては、GFP及びEGFPがある。蛍光、例えばGFP又はEGFP蛍光の高スループット検出を実施するための一般的な研究装置が開発されている。それには、GSI Lumonics(米国マサチューセッツ州Watertown)、Amersharn Pharmacia Biotech/Molecular Dynamics(米国カリフォルニア州Sunnyvale)、Applied Precision Inc.(米国ワシントン州Issauah)及びGenomic Solutions Inc.(米国ミシガン州Ann Arbor)製の器具が含まれる。市販のシステムの殆どは、光電子増倍管検出を伴う、ある形態の走査技術を使用する。
【0165】
VII.E.理論的設計
本来のT2R76ポリペプチド構造の知識により、モジュレータ及び診断剤の理論的設計の手法が得られる。簡単に言えば、T2R76ポリペプチドの構造は、X線結晶学により及び/又は三次元画像を生成する計算アルゴリズムにより決定することができる。Saqiら(1999)のBioinformatics 15:521−522;Huangら(2000)のPac Symp Biocomput:230−241;及びPCT国際公報番号WO99/26966を参照されたい。あるいは、T2R76ポリペプチド構造のワーキングモデルは相同性モデルから導出することができる(Maaloufら、1998)。コンピュータモデルは、上記の本明細書で記載のアッセイを使用して合成及び試験することができる種々の基質分子へのタンパク質構造の結合をさらに予測することができる。さらなる化合物設計技術は、米国特許第5834228号及び同第5872011号に記載されている。
【0166】
一般に、T2R76ポリペプチドは膜タンパク質であり、界面活性剤又はその他の適切な両親媒性分子を使用して可溶性形態に精製することができる。得られるT2R76ポリペプチドは、結晶化に十分な純度及び濃度である。精製T2R76ポリペプチドは還元又は非還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis:PAGE)で単一バンドとして表れることが好ましい。精製T2R76ポリペプチドは、pH、バッファタイプ、バッファ濃度、塩タイプ、ポリマータイプ、ポリマー濃度、他の沈殿リガンド及び精製T2R76の濃度の少なくとも1つが変化する条件下で結晶化させることができる。結晶性ポリペプチドを生成する方法は当技術分野で知られており、本明細書で開示のT2R76ポリペプチドの判定に合理的に使用することができる。例えば、Deisenhoferら(1984)のJ Mol Biol 180:385−398;Weissら(1990)のFEBS Lett 267:268−272;又はCRYSTAL SCREEN(商標)キット(米国カリフォルニア州RiversideのHampton Researchから入手可能)などの市販のキットに提供されている方法を参照されたい。
【0167】
結晶化したT2R76ポリペプチドは機能活性について試験することができ、異なるサイズや形状の結晶は、X線回折で適性をさらに試験する。一般に、より大きい結晶はより小さい結晶よりも良好な結晶学を提供し、より厚い結晶はより薄い結晶よりも良好な結晶学を提供する。T2R76の結晶は0.1〜1.5mmの範囲のサイズであることが好ましい。これらの結晶はX線を少なくとも10Aの分解能まで、例えば1.5〜10.0A又はその範囲の任意の値、例えば1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5若しくは3まで回折する。最高の分解能としては3.5A以下が好ましい。
【0168】
VIII.T2R76ポリペプチドを検出する方法
本発明はさらに、T2R76ポリペプチドを検出する方法を提供する。開示の方法は、味覚についてのT2R76関連の差異と結び付いたT2R76発現の変化レベルを判定するのに使用することができる。
【0169】
本発明の一実施形態では、この方法は、T2R76ポリペプチドを特異的に認識する抗体との免疫化学反応を実施することを含む。この抗体は、このような抗体を生成するための本発明の方法により調製した。したがって、この方法は、(a)ペプチド性材料を含む生物学的試料を入手すること、(b)T2R76ポリペプチドと特異的に結合し、開示の方法で生成した抗体と生物学的試料を接触させること(抗体は検出可能な標識を含む)、及び(c)検出可能な標識を検出することにより、試料中のT2R76ポリペプチドを検出することを含む。
【0170】
このような抗体抗原コンジュゲート又は複合体を検出する技術は当技術分野で知られており、これらだけに限定するものではないが、遠心分離、アフィニティークロマトグラフィー及びその他の免疫化学方法がある。例えば、Manson(1992)の「免疫化学プロトコル(Immunochemical Protocols)」、Humana Press、米国ニュージャージー州Totowa;Ishikawa(1999)の「超感受性及び迅速な酵素イムノアッセイ(Ultrasensitive and Rapid Enzyme Immunoassa)」、Elsevier、アムステルダム/米国ニューヨーク;Law(1996)の「イムノアッセイ:実践的指針(Immunoassay:Practical Guide)」、Taylor&Francis、ロンドン/米国ペンシルバニア州Bristol;Chan(1996)の「イムノアッセイの自動化:システムの最新の指針(Immunoassay Automation:An Updated Guide to Systems)」、Academic Press、San Diego;Liddell&Weeks(1995)の「抗体技術(Antibody Technology)」、Bios Scientific Publishers、英国オックスフォード;Masseyeffら(1993)の「免疫学的分析の方法(Methods of Immunological Analysis)」、VCH Verlagsgesellschaft/VCH Publishers、独国ワインハイム/米国New York;Walker&Rapley(1993)の「診断における分子プローブ及び抗体プローブ(Molecular and Antibody Probes in Diagnosis)」、Wiley、Chichester、ニューヨーク;Wyckoffら(1985)の「生物学的高分子の回折方法(Diffraction Methods for Biological Macromolecules)」、Academic Press、米国フロリダ州Orlando;及びそこに引用された参考文献を参照されたい。
【0171】
本発明の別の実施形態では、T2R76ポリペプチドへの特異結合を示すモジュレータを使用してT2R76ポリペプチドを検出する。抗体を使用するT2R76ポリペプチドの検出と同様に、この方法は、(a)ペプチド性材料を含む生物学的試料を入手すること、(b)生物学的試料をT2R76ポリペプチドのモジュレータと接触させること(モジュレータは検出可能な標識を含む)、及び(c)検出可能な標識を検出することにより、試料中のT2R76ポリペプチドを検出することを含む。例えば蛍光体又はエピトープ標識などの任意の適切な検出可能な標識を使用することができる。
【0172】
IX.用途
本発明は、T2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法を提供する。本発明のモジュレータは、例えば苦味覚を抑制又は強化するために、苦味覚を変化させるのに有用である。
【0173】
IX.A.対象
本明細書で使用する用語「対象」は、任意の脊椎動物種、好ましくは哺乳動物及び鳥類などの温血脊椎動物を含む。より具体的には、本発明の方法は、ヒト、並びにヒトにとって、絶滅の危機に瀕しているために重要な(例えば、シベリアトラ)、経済的に重要な(ヒトが消費するために飼育場で飼育されている動物)及び/又は社会的に重要な(ペットとして又は動物園で飼われている動物)哺乳動物、例えばヒト以外の肉食動物(例えば、ネコ及びイヌ)、豚(ブタ、食用豚及びイノシシ)、反芻動物及び家畜(例えば、ウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ)並びにウマなどの哺乳動物の腫瘍の治療を意図する。絶滅の危機に瀕した、又は動物園で飼育されている種類の鳥類、並びに家禽、より具体的には家蓄化した家禽若しくは飼い鳥類、例えばシチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどを含む鳥類もヒトにとって経済的に重要なので、その治療も意図する。
【0174】
IX.B.組成物
本発明の方法によれば、対象の味覚を変化させるために投与する組成物は有効量のT2R76モジュレータを含む。T2R76モジュレータは上記の本明細書で記載したタイプの試験物質のいずれか1つを含むことができる。本明細書で開示の通りに同定したT2R76モジュレータを使用して、これらだけに限定するものではないが、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品及び薬剤、例えば以下の本明細書で挙げた化合物のいずれかを含む経口使用のための組成物を調製することができる。T2R76モジュレータは、経口使用が可能だが望ましくない化合物、例えば家庭用洗剤、毒などの味覚を変化させる添加剤として使用することもできる。
【0175】
望ましくない又は苦味を有する代表的な化合物としては、これらだけに限定するものではないが、グレープフルーツ、オレンジ及びレモンなどの柑橘類;トマト、ピーマン、セロリ、メロン、ニンジン、ジャガイモ及びアスパラガスなどの野菜;香味、ソース、醤油及び赤トウガラシなどの調味料又は薬味;大豆由来の食物;クリーム、ドレッシング、マヨネーズ及びマーガリンなどの食品エマルジョン;魚肉、魚のすり身、魚卵などの加工海産物;ピーナッツなどのナッツ類;納豆などの発酵食品;肉及び加工肉;漬物;ヌードル;粉末スープを含むスープ;チーズなどの乳製品;パン及びケーキ;キャンディー、チューイングガム及びチョコレートなどの菓子;並びに健康用に特別に調製した食物がある。
【0176】
苦味を表出する代表的な化粧品(例えば、化粧水、クリーム、美顔用パック、口紅、ファンデーション、ひげ剃り用製剤、アフターシェーブローション、クレンジングフォーム及びクレンジングジェル)としては、これらだけに限定するものではないが、アルキル硫酸ナトリウム及びモノアルキルリン酸ナトリウムなどの界面活性剤を含む組成物;メントール、リナロール、フェニルエチルアルコール、プロピオン酸エチル、ゲラニオール、酢酸リナリル及び酢酸ベンジルなどの香料;メチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンなどの抗菌物質;乳酸及び乳酸ナトリウムなどの湿潤剤;オクタ酢酸スクロース及びブルシンなどのアルコール変性剤;並びに乳酸アルミニウムなどの収斂剤がある。
【0177】
苦味を有する代表的な薬剤としては、アセトアミノフェン、テルフェナジン、グアイフェネシン、トリメトプリム、プレドニゾロン、イブプロフェン、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、メタコリン、ネオスチグミン、エピネフリン、アルブテロール、塩酸プソイドエフェドリン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フェノチアジン、クロルプロマジン、クロルジアゼポキシド、アミトリプチリン、バルビツレート、ジフェニルヒダントイン、カフェイン、モルヒネ、デメロール、コデイン、ロモチル、リドカイン、サリチル酸、スルホンアミド、クロロキン、ビタミン製剤、鉱物及びペニシリンがある。
【0178】
モジュレータは、調製した食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品又は薬物の一部として投与することもできる。対象に投与するための組成物を調製するために、その味覚を調節する化合物にT2R76モジュレータを約0.001重量%から約10重量%、好ましくは約0.01重量%から約8重量%、より好ましくは約0.1重量%から約5重量%、最も好ましくは約0.5重量%から約2重量%含む量で混合することができる。
【0179】
適切な配合物としては、溶液、エッセンス、エリキシル、アルコール剤、シロップ剤、懸濁液、粉剤、顆粒、カプセル剤、ペレット剤、錠剤及びエアゾルがある。場合により、配合物は、薬剤として許容できる担体、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、着香料、着色料、甘味料、香料又はこれらの組合せを含む。T2R76モジュレータ及び組成物は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は多用量密封容器に提供することができる。
【0180】
IX.C.投与
T2R76モジュレータは味覚を調節するために対象に直接投与することができる。本発明のモジュレータは経口的又は経鼻的に投与することが好ましい。
【0181】
本発明の方法に従って、有効量のT2R76モジュレータを対象に投与する。用語「有効量」はT2R76の活性化を調節及び/又は苦味覚を調節するのに十分な組成物の量を指す。
【0182】
有効量は、所望の味覚を達成するのに有効な量のT2R76モジュレータを投与するように変化させることができる。選択する投与レベルは、T2R76モジュレータの活性、配合、他の組成物との組合せ(例えば、食物、薬物など)、対象とする使用(例えば、食品添加物、歯磨剤などとして)並びに治療する対象の生理的状態及び以前の病歴を含む種々の要因に左右される。
【0183】
有効量又は投与量は、当技術分野で知られている通りの味覚のin vivoアッセイを使用して容易に決定することができる。味覚をアッセイする代表的な方法は実施例4に記載している。
【0184】
実施例
本発明の方法を説明するために以下の実施例を記載する。以下の実施例のある態様は、本発明を良好に実施するために本発明者らが見出し又は意図した技術及び手順について記載している。これらの実施例は、本発明者らの標準的な実習を説明する。本開示及び当技術分野の一般的なレベルに照らして、当業者は、以下の実施例が例示のみを意図しており、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更、修正及び改変が可能なことは理解されよう。
【実施例1】
【0185】
ヒトT2R76のクローニング
ヒト苦味受容体をコードする新規な遺伝子がヒトゲノム配列データベースで同定された。新規なhT2RメンバーであるhT2R76はヒトの第7染色体に位置している。T2R76DNA配列の染色体上の位置は、カリフォルニア大学(カリフォルニア州Santa Cruz)のGenomicsウェブサイトをスクリーニングすることによって決定した。この分析により、T2R76は領域144062692−144063648の第7染色体に位置することが示された。ある化合物、例えばフェニルチオカルバルネートの苦味は第5染色体及び第7染色体に遺伝的に関連している。(Guoら(2001)のAnn Hum Biol 28:111−42)。したがって、T2R76はある苦味物質の結合及び認識に関与していると予想される。
【0186】
ヒトT2R76は、上記のhT2R配列を有するDNA配列データベースの反復配列検索によって最初同定された。次いで、hT2R76をコードする完全長オープンリーディングフレームはゲノムDNAのPCR増幅によって単離された。hT2R76のアミノ酸配列は、対応するオープンリーディングフレームを概念的に翻訳することによって導出した。hT2R76ヌクレオチド及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1及び配列番号2として挙げる。
【0187】
hT2R76のイントロンを含まないオープンリーディングフレームは、長さが318アミノ酸残基の推定受容体タンパク質をコードする。hT2R76タンパク質配列を一般の配列データベースの既知のタンパク質すべてとBLASTPアルゴリズムを使用して比較すると、哺乳動物苦味受容体ファミリーのメンバーと強い相同性が示された。
【実施例2】
【0188】
rhod−hT2R76の構造
ブリッジオーバーラップPCR伸長技術を使用して、Chandrashekarら(2000)のCell 100:703−711に記載の通り、ヒトT2R76コード配列を有するフレームにウシロドプシンの最初の38アミノ酸を含むrhod−hT2R76キメラを生成した。次いで、キメラrhod−hT2R76遺伝子をpFastBac−1ベクターにクローニングし、ロドプシン標識したhT2R76を含むバキュロウイルスをBac−to−Bacシステム(米国カリフォルニア州CarlsbadのInvitrogen Corporation)を使用して生成した。hT2R76の発現は、抗ロドプシンタグ抗体(136−30)を使用する免疫ブロッティングにより確認した。hT2R76型バキュロウイルスに感染したSf9細胞は、予想した分子量(約35kDa)のタンパク質を生成した。
【実施例3】
【0189】
T2R76のin vitroでのGタンパク質カップリング
rhod−hT2R76をコードする感染性バクミドを実施例2に記載の通りに調製する。昆虫の幼虫の細胞を60時間、組換えバクミドに感染させ、Ryba&Trindelli(1995)のJ Biol Chem 270:6757−6767で記載の通りに膜を調製する。5M尿素で処理して周囲のタンパク質を除去し、10mM HEPES、pH7.5、1mM EDTA及び1mM DTTに膜を再懸濁する。モノクローナル抗体B6−30を使用するウェスタンブロッティングにより、rhod−hT2R76の発現を評価することができる。
【0190】
例えばHoonら(1995)のCell 96 629−636及びRyba&Trindelli(1995)のJ Biol Chem 270:6757−6767で記載の通りに、Gタンパク質を単離する。ガストデューシンでのGDPのGTPγSへの受容体触媒交換は、10nM rhod−hT2R76、100μtM GDP及び20μM Gβ1γ8の存在下で測定する。種々のGタンパク質(例えば、Gα5又はトランスデューシン)でのGDP−GTPγS交換は、米国特許出願第60/372089号に記載の通りに実施する。約15〜60分の時点での測定値はGTPγS結合の初速度を反映する。
【実施例4】
【0191】
味覚試験
本明細書で開示の通りに同定したT2R76モジュレータを含む試験組成物を使用して香味受入れ研究を実施する。T2R76モジュレータを欠くが、それ以外は試験組成物と実質的に同様であるか同一の対照組成物も使用する。この試験は、対象すべてが、1回又は複数回同量又は同用量を投与する両方の組成物を評価する二重交差設計を用いる。試験組成物及び対照組成物は単一の試験日に評価する。試験組成物及び対照組成物を投与する順序は対象間で無作為化する。参加した対象すべては、試験プロトコルのすべての態様を完了する。対象は、通常の味覚スコア(例えば、1=非常に苦い、2=苦い、3=並、4=それほど苦くない、5=全く苦くない)を使用して試験組成物及び対照組成物のそれぞれについて反応する。有害事象は記録する。対照組成物と比較したときの試験組成物の美味性の有意差を測定することにより、T2R76モジュレータの有効性を判定する。
【実施例5】
【0192】
苦味化合物に対するhT2R76の応答
hT2R76を発現する哺乳動物細胞系(HEK293)並びに異なるhT2R(hT2R64)を発現する対照細胞系を使用してGTPγS結合アッセイを実施する。これらの細胞系を、6−n−プロピルチオウラシル(PROP)、オクタ酢酸スクロース、ウンデカ酢酸ラフィノース(raffinose undecaacetate)、(RUA)、グリシン酸銅、デナトニウム及びキニーネを0.5から2mmの範囲の種々の濃度で含む苦味化合物と接触させる。このアッセイの結果を使用して、hT2R76は既知の苦味刺激で特異的に活性化される苦味受容体であることが確認される。このGTPγS結合アッセイでは、活性は特定の濃度の既知の苦味化合物の存在下又は不存在下のいずれかで判定する。
【実施例6】
【0193】
高スループットスクリーニングアッセイ
GTPγS結合アッセイを使用して、15000種を超える化合物のライブラリーをスクリーニングしてhT2R76を特異的に活性化する他の化合物を同定する。このアッセイでhT276を活性化する特定の化合物の構造を比較して、hT2R76を強力に活性化する同様の構造を有する化合物を予想する。次いで、同じGTPγS結合アッセイにおいて異なる濃度でこれらの同様の構造を有する化合物のライブラリーを評価して、hT2R76を活性化する他の化合物を同定する。
【実施例7】
【0194】
ヒト味覚試験
GTPγS結合アッセイでhT2R76を活性化する化合物を、ヒト味覚試験で評価する。これらのヒト味覚試験は同意した成人で実施し、これらの成人には同定した化合物をin vitroでhT2R76を活性化する濃度で経口投与する。これらの味覚試験では、(hT2R76活性化する)同定した化合物を水に溶解して、in vitroのGTPγS結合アッセイでhT2R76を活性化する化合物濃度を得る。
【0195】
この味覚試験では、少なくとも5人のサンプルが、苦味化合物を含む一連の水溶液を味覚する。(好ましい実施例では、苦味化合物はT2R76アゴニストである)。各人は、0から100(0は「ほとんど検出できない」であり、100は「最も強いとイメージできる」である)の範囲に分類した等級尺度で苦さの度合をランク付けする。次に、各人は苦味化合物とT2R76阻害剤を含む一連の水溶液の味を調べ、各試料について苦さの度合をランク付けする。苦さの度合の低下によってT2R76阻害剤の有効性を測定する。比較手段として、各対象は既知の苦味化合物(硫酸キニーネ)も味覚し、評価する。味覚試験の結果は、対象すべての平均評点として表す。
【実施例8】
【0196】
既知の苦味化合物に対するhT2R76の応答
このアッセイの結果を使用して、hT2R76を活性化する苦味化合物を同定する。これに基づいて、このような苦味化合物によるhT2R76の活性化をブロックする化合物を同定するアッセイを開発することができる。
【0197】
結論
これらのアッセイの結果は、GTPγS結合アッセイを使用して苦味化合物を同定することができること、及びhT2R761がヒト苦味受容体として機能することを証明する。同定した化合物を使用して、食物及び飲料に苦味を与えることができる。あるいは、これらの化合物は、苦味遮断剤及びモジュレータ並びに他の苦味化合物を同定するためのアッセイでのアゴニストとして使用することができる。
【0198】
参考文献
以下に挙げた参考文献並びに本明細書に引用したすべての参照文献は、本明細書で使用した方法、技術及び/又は組成物を補足し、説明し、それらに背景を与え、又は教示する範囲において本明細書に援用する。
(参考文献)

















【0199】
本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の種々の詳細を変更できることは理解されよう。さらに、上記の記載は説明することのみを目的とし、本明細書に添付した特許請求の範囲で定義した本発明を制限する目的はない。
【配列表】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、又は
(c)配列番号1と実質的に同様の単離核酸分子
を含む単離T2R76核酸分子。
【請求項2】
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、
(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下で配列番号1の核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、並びに
(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸分子とは少なくとも1個の機能的に等価なコドンにより異なっており、上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子
からなる群から選択される請求項1に記載の単離T2R76核酸分子。
【請求項3】
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、又は
(b)配列番号1の単離核酸分子
を含む請求項1に記載の単離T2R76核酸分子。
【請求項4】
(a)核酸材料を有する生物学的試料を入手すること、
(b)単離T2R76核酸分子をストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)の生物学的試料とハイブリダイズし、それにより前記単離T2R76核酸と前記生物学的試料中の核酸との間で二重構造を形成すること、及び
(c)(b)の前記二重構造を検出し、それにより前記生物学的試料中のT2R76核酸分子を検出すること
を含むT2R76核酸分子を検出する方法。
【請求項5】
(a)配列番号2のポリペプチド、
(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、
(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は
(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチド
を含む単離T2R76ポリペプチド。
【請求項6】
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、
(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下でT2R76核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、並びに
(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸分子とは少なくとも1個の機能的に等価なコドンより異なっており、上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子
からなる群から選択される核酸分子でコードされたポリペプチドをさらに含む請求項5に記載の単離T2R76ポリペプチド。
【請求項7】
配列番号2を含む請求項5に記載の単離T2R76ポリペプチド。
【請求項8】
少なくとも1つの他のT2Rポリペプチドを伴う請求項5に記載の単離T2Rポリペプチド。
【請求項9】
前記他のT2Rポリペプチドが別のヒトT2Rである請求項8に記載の単離T2Rポリペプチド。
【請求項10】
前記他のヒトT2Rが、ヒトT2R51、T2R54、T2R55、T2461、T2R63、T2R64、T2R65、T2R67、T2R71、T2R75、T2R59及びT2R33からなる群から選択される請求項9に記載の単離T2Rポリペプチド。
【請求項11】
上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成する方法。
【請求項12】
前記単離T2R76ポリペプチドが配列番号2を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
さらにモノクローナル抗体の調製を含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法によって生成された抗体。
【請求項15】
(a)ペプチド性材料を有する生物学的試料を入手すること、
(b)請求項14に記載の抗体との免疫化学的反応で(a)の前記生物学的試料中のT2R76ポリペプチドを検出することにより、試料中のT2R76ポリペプチドの量を測定すること
を含むT2R76ポリペプチドのレベルを検出する方法。
【請求項16】
(a)T2R76ポリペプチドと、
(b)該T2R76ポリペプチドを発現する異種宿主細胞
とを含むT2R76ポリペプチドを異種発現させる系。
【請求項17】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチド、
(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、
(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は
(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチド
を含む請求項16に記載の系。
【請求項18】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、
(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下でT2R76核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、並びに
(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸分子とは少なくとも1個の機能的に等価なコドンにより異なっており、上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子
からなる群から選択される核酸分子でコードされたポリペプチドをさらに含む請求項17に記載の系。
【請求項19】
前記単離T2R76ポリペプチドが配列番号2を含む請求項18に記載の系。
【請求項20】
別のT2Rをコードする核酸をさらに含む請求項18に記載の系。
【請求項21】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞を含む請求項16に記載の系。
【請求項22】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞を含む請求項21に記載の系。
【請求項23】
前記宿主細胞がT2R76ポリペプチドとのカップリングが可能なGタンパク質αサブユニットをさらに含む請求項16に記載の系。
【請求項24】
前記Gタンパク質αサブユニットが混在(promiscuous)Gタンパク質を含む請求項23に記載の系。
【請求項25】
前記種々のGタンパク質がGα15を含む請求項24に記載の系。
【請求項26】
前記混在Gタンパク質がトランスデューシン又はガストデューシンを含む請求項24に記載の系。
【請求項27】
(a)組換え発現系を用意して、T2R76ポリペプチドを異種宿主細胞で単独又は少なくとも1つの他のT2Rポリペプチドと組み合わせて発現させること、
(b)試験物質を(a)の前記系に与えること、
(c)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をアッセイすること、
(d)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をT2R76機能の対照レベル又は質と比較すること、及び
(e)T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することにより試験物質をT2R76モジュレータとして同定すること
を含むT2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法。
【請求項28】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチド、
(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、
(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は
(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチド
を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、
(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下でT2R76核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、及び
(d)遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸分子とは少なくとも1個の機能的に等価なコドンにより異なっており、上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子
からなる群から選択される核酸分子でコードされたポリペプチドをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記単離T2R76ポリペプチドが配列番号2を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞を含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞を含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記宿主細胞がT2R76ポリペプチドとのカップリングが可能なGタンパク質αサブユニットをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記Gタンパク質αサブユニットが混在(promiscuous)Gタンパク質を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記混在Gタンパク質がGα15を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記混在Gタンパク質がトランスデューシンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記アッセイがGTPγS結合量を測定することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項38】
請求項27に記載の方法で同定されたT2R76モジュレータ。
【請求項39】
タンパク質、ペプチド、抗体、核酸及び小分子からなる群から選択されるモジュレータをさらに含む請求項38に記載のT2R76モジュレータ。
【請求項40】
(a)請求項38に記載のモジュレータを含む組成物を調製すること、
(b)対象に有効量の組成物を投与することにより、対象で苦味覚を変化させること
を含む前記対象で苦味覚を調節する方法。
【請求項41】
前記組成物が、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品又は薬剤をさらに含む請求項40に記載の方法。
【請求項42】
モジュレータを含む前記組成物と、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品及び薬剤からなる群から選択される組成物とを同時投与することをさらに含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が哺乳動物である請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記哺乳動物がヒトである請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(a)T2R76ポリペプチド単独又は少なくとも1つの他のT2Rポリペプチドと共に発現されたT2R76ポリペプチドを1つ又は複数の試験物質に曝露すること、
(b)試験物質の前記単離T2R76ポリペプチド又はT2R76ポリペプチドの組合せへの結合をアッセイすること、及び
(c)前記T2R76ポリペプチドへの特異結合を示す候補物質を選択すること
を含むT2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法。
【請求項46】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチド、
(b)配列番号2と実質的に同一のポリペプチド、
(c)配列番号1の核酸分子でコードされたポリペプチド、又は
(d)配列番号1と実質的に同一の核酸分子でコードされたポリペプチド
を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記T2R76ポリペプチドが、
(a)配列番号2のポリペプチドをコードする単離核酸分子、
(b)配列番号1の単離核酸分子、
(c)塩濃度が約200mM未満の洗浄溶液及び約45℃より高い洗浄温度で表されるストリンジェントな洗浄条件下でT2R76核酸配列とハイブリダイズし、T2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子、並びに
(d)前記遺伝コードの縮重により、核酸配列が上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸分子とは少なくとも1個の機能的に等価なコドンにより異なっており、上記の(a)、(b)及び(c)の1つの前記単離核酸でコードされたT2R76ポリペプチドをコードする単離核酸分子
からなる群から選択される核酸分子でコードされたポリペプチドをさらに含む請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記単離T2R76ポリペプチドが配列番号2を含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法で同定されたT2R76モジュレータ。
【請求項50】
タンパク質、ペプチド、抗体、核酸及び小分子からなる群から選択されるモジュレータをさらに含む請求項49に記載のT2R76モジュレータ。
【請求項51】
(a)請求項49に記載のモジュレータを含む組成物を調製すること、
(b)対象に有効量の組成物を投与することにより、対象で苦味の知覚を変化させること
を含む対象で苦味の知覚を調節する方法。
【請求項52】
前記組成物が、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品又は薬剤をさらに含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
モジュレータを含む前記組成物と、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品及び薬剤からなる群から選択される組成物とを同時投与することをさらに含む請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記T2R76モジュレータが、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸及び小分子からなる群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が哺乳動物である請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物がヒトである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
T2R76阻害物質と苦味化合物とを対象に同時投与することを含む苦味化合物の苦味覚を減少させる方法。
【請求項58】
前記同時投与が、前記苦味化合物と混合した前記T2R76阻害物質を含む組成物を投与することを含む請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記T2R76阻害物質が、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸及び小分子からなる群から選択されるモジュレータをさらに含む請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記苦味化合物が、食物、飲料、口腔洗浄液、歯磨剤、化粧品又は薬剤を含む請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記対象が哺乳動物である請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳動物がヒトである請求項61に記載の方法。
【請求項63】
T2R76アゴニストと化合物とを対象に同時投与することを含む前記化合物の苦味覚を増強させる方法。
【請求項64】
前記同時投与が、前記化合物と混合した前記T2R76アゴニストを含む組成物を投与することを含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記T2R76アゴニストが、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸及び小分子からなる群から選択されるモジュレータをさらに含む請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が哺乳動物である請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記哺乳動物がヒトである請求項66に記載の方法。

【公表番号】特表2006−515157(P2006−515157A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524980(P2004−524980)
【出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/023604
【国際公開番号】WO2004/011617
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(502362806)セノミックス、インコーポレイテッド (9)
【出願人】(306007303)
【出願人】(306007314)
【出願人】(306007325)
【出願人】(306007336)
【Fターム(参考)】