説明

新規な薬剤及びその使用

本発明は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖の阻害及び/又は細胞死の誘導に使用するためのインターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、細胞がIL1RAPを発現する、薬剤を提供する。本発明の関連の局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の検出に使用するためのインターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、細胞がIL1RAPを発現する、薬剤を提供する。本発明の薬剤を含む薬理学的組成物及びそれを使用する方法が、さらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)及び急性骨髄性白血病(AML)などの、新生物性血液障害の治療及び診断における使用のための薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
慢性骨髄性白血病(CML)は、構成的に活性なチロシンキナーゼBCR/ABL1を生じさせる、再発性遺伝子異常;染色体9と22との間での相互転座によって形成されるフィラデルフィア(Ph)染色体に関連する最初のヒト新生物であった1。CMLにおいて、Ph染色体は、造血幹細胞(HSC)において生じると考えられ、何故ならば、それが、悪性骨髄性細胞及び非悪性リンパ球様細胞の両方においてクローン的に見られ得るためである2。Ph染色体はまた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)の一部において見られる。CMLは、正常なHSCと自己複製する能力を共有する、CML幹細胞と呼ばれる少数の細胞によって維持される様々な成熟段階の不均質の細胞型から構成される3。CML幹細胞は、臨床的な成功にもかかわらずこの障害において治癒的効果ではなく抑制的効果を示す、チロシンキナーゼ阻害剤での現在の治療に少なくとも部分的に耐性であることが実証された4,5。従って、CML幹細胞を効率的に標的化する戦略を同定することは、障害の根治を達成するために非常に望ましい。このような戦略は、CML幹細胞を根絶するための新規の手段を提供し得るCML幹細胞上の標的を同定することである。この方向の有望な報告が、関連障害である急性骨髄性白血病(AML)において記載され、ここで、AML幹細胞上のCD123、CXCR4、CD44又はCD47を標的化する抗体が、AML動物モデルにおいて抗白血病効果を示す6-9。さらに、CD96及びCLL-1などのAML幹細胞関連抗原が同定され10,11、この障害において追加の標的候補が提供された。興味深いことに、幹細胞癌障害と呼ばれる、史上最も研究された新生物のうちの1つであるにもかかわらず、両方とも稀なCD34+CD38-細胞集団に属する、正常なHSCからのCML幹細胞の予期される分離を可能にする細胞表面バイオマーカーがCMLにおいてこれまで同定されていなかった12,13。このようなバイオマーカーの同定は、CML幹細胞のキャラクタリゼーションにおいて助けになるだけでなく、新規治療の開発のため及び治療の間の初期CML細胞に対する治療効果を追跡するためにも使用され得る。
【0003】
従って、本発明は、CMLなどの、新生物性血液障害の治療及び診断における使用のための薬剤を提供しようとする。さらに、本発明は、ALL、AML、Ph染色体陰性骨髄増殖性疾患(MPD)、及び骨髄異形成症候群(MDS)などの、他の新生物性血液障害の治療及び診断における使用のための薬剤と提供しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明は、慢性骨髄性白血病などの新生物性血液障害に関連する幹細胞及び前駆細胞がそれらの表面上においてIL1RAP(IL1-RAPとしても公知)を発現するという本発明者らによる発見から直接発展した、新生物性血液障害の治療及び/又は診断における使用のための薬剤を提供する。対照的に、正常で健康な造血幹細胞(並びに前駆細胞)は、IL1RAPを発現しないか、又は非常に低い発現レベルのIL1RAPを示す。さらに、本発明者らは、ALL、AML、Ph染色体陰性骨髄増殖性疾患(MPD)、及び骨髄異形成症候群(MDS)などの、他の新生物性血液障害の幹細胞及び前駆細胞もまた、それらの細胞表面上でのIL1RAPのアップレギュレーションに関連することを発見した。従って、本発明は、幹細胞及び/又は前駆細胞の表面上でのIL1RAPのアップレギュレーションに関連する新生物性血液障害の治療及び/又は診断における使用のための薬剤を提供する。
【0005】
本発明の第1局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長(即ち、サイズ)及び/又は増殖(即ち、数)の阻害及び/又は(免疫系の誘発によって直接的に又は間接的に)細胞死の誘導に使用するためのインターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する薬剤を提供する。従って、薬剤は、病的幹細胞のみの、前駆細胞のみの、又は病的幹細胞及び前駆細胞の両方の、成長及び/又は増殖を阻害することにおける使用のためであり得る。
【0006】
薬剤はまた、IL1RAPを発現する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化を誘導することにおける使用のためであり得る。
【0007】
本発明の第2の関連の局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出することにおける使用のためのインターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する薬剤を提供する。従って、薬剤は、病的幹細胞のみ、前駆細胞のみ、又は病的幹細胞及び前駆細胞の両方を検出することにおける使用のためであり得る。
【0008】
「インターロイキン-1受容体アクセサリータンパク質」、「IL1RAP」及び「IL1-RAP」によって、本発明者らは、例えば、GenBankアクセッション番号AAB84059、NCBI参照配列:NP_002173.1及びUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NPH3-1に記載されるような、ヒトIL1RAPタンパク質を具体的には含む(Huang et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94 (24), 12829-12832もまた参照のこと)。IL1RAPはまた、科学文献においてIL1R3、C3orf13、FLJ37788、IL-1RAcP及びEG3556として公知である。
【0009】
「結合部分」によって、本発明者らは、IL1RAPへ結合することができる全てのタイプの化学物質(例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物及び小化合物)を含む。有利には、結合部分は、生理的条件下でIL1RAへ選択的に(即ち、優先的に)結合することができる。結合部分は、細胞(例えば、病的幹細胞又は前駆細胞)の表面上に局在し得る、ヒトIL1RAPに対して特異性を好ましくは有する。
【0010】
「新生物性血液障害に関連する病的幹細胞」によって、本発明者らは、個体における新生物性血液障害の発症の原因である幹細胞、即ち、新生物性幹細胞を含む。特に、病的幹細胞は白血病幹細胞であり得る(例えば、Guo et al., 2008, Nature 453(7194):529-33に記載される通り)。このような幹細胞は、細胞表面タンパク質、IL1RAPのそれらの発現によって、正常な造血幹細胞と識別され得る(下記の実施例を参照のこと)。一実施態様において、病的幹細胞はCD34+,CD38-細胞である。
【0011】
新生物性血液障害に関連する「前駆細胞」によって、本発明者らは、個体における新生物性血液障害の発症の原因である病的幹細胞に由来する細胞を含む。特に、前駆細胞は、白血病前駆細胞であり得る(例えば、下記の実施例において記載される通り;図2bを参照のこと)。このような前駆細胞は、細胞表面タンパク質、IL1RAPのそれらのより高い発現によって、正常な造血前駆細胞と識別され得る(下記の実施例を参照のこと)。一実施態様において、病的前駆細胞は、CD34+,CD38+細胞である。
【0012】
「新生物性血液障害」によって、本発明者らは、血液のがん、例えば、白血病、並びに白血病様疾患、例えば、骨髄増殖性疾患(MPD)及び骨髄異形成症候群(MDS)を具体的には含む。
【0013】
従って、本発明の第1局面の一実施態様において、新生物性血液障害は、急性又は慢性であり得る、白血病性疾患又は障害、即ち、血液又は骨髄のがんである。
【0014】
さらなる実施態様において、新生物性血液障害は、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞及び/又は前駆細胞は、BCR/ABL1融合遺伝子を含み得る。
【0015】
関連の実施態様において、新生物性血液障害は、フィラデルフィア(Ph)染色体を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞及び/又は前駆細胞はPh染色体を含み得る。この文脈の中で「Ph染色体」によって、本発明者らは、t(9;22)(q34;q11)と具体的には示される、染色体9と22との間の相互転座から生じる特定の染色体異常を意味する。Ph染色体を含む細胞に関連する新生物性血液障害の例は、慢性骨髄性(myeloid)、又は骨髄性(myelogenous)、白血病(CML)である。
【0016】
しかし、本発明の薬剤はまた、フィラデルフィア(Ph)染色体を含む細胞に関連しない(しかしそれにもかかわらずIL1RAPのアップレギュレーションを示す)新生物性血液障害の治療及び/又は診断において使用され得ることが、当業者によって認識される。Ph染色体を含まない細胞に関連するこのような新生物性血液障害としては、骨髄異形成症候群(MDS)及び骨髄増殖性疾患(MPD)、例えば、真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)及び骨髄線維症(MF)が挙げられる。
【0017】
より具体的には、新生物性血液障害は、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択され得る。
【0018】
一つの特に好ましい実施態様において、新生物性血液障害は慢性骨髄性白血病(CML)である。
【0019】
本発明の診断局面に関して、薬剤が、(それらの細胞に対して機能的影響を有することなく)病的幹細胞及び/又は前駆細胞の表面上に存在するIL1RAPへ結合することが単にできれば、十分である。
【0020】
本発明の治療及び予防局面に関して、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の表面上に存在するIL1RAPへの薬剤の結合は、IL1RAPの生物学的活性の調節(即ち、増加又は減少)をもたらし得ることが、当業者によって認識される。しかし、このような調節効果は必須ではなく;例えば、本発明の薬剤は、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の表面上のIL1RAPへ単に結合し、これが次に免疫系を誘発して細胞死を誘導し得る(例えば、ADCCによって)ことによって、治療及び予防効果を誘発し得る。
【0021】
「IL1RAPの生物学的活性」によって、本発明者らは、病的幹細胞及び/又は前駆細胞上のIL1RAPを必要とする相互作用又はシグナル伝達事象を含む。例えば、一実施態様において、薬剤は、IL1RAPへの1つ又はそれ以上の補助受容体(例えば、IL1R1、ST2、C-KIT及び/又はIL1RL2)の結合をブロック可能である。
【0022】
本発明の薬剤によるIL1RAPの生物学的活性のこのような阻害は、全体的又は部分的であり得る。例えば、薬剤は、薬剤へ曝されていない病的幹細胞及び/又は前駆細胞中のIL1RAPの生物学的活性と比較して、IL1RAP生物学的活性を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは100%阻害し得る。好ましい実施態様において、薬剤は、薬剤へ曝されていない病的幹細胞及び/又は前駆細胞中のIL1RAPの生物学的活性と比較して、IL1RAPの生物学的活性を50%以上阻害することができる。
【0023】
同様に、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖の阻害は、全体的又は部分的であり得ることが、認識される。例えば、薬剤は、薬剤へ曝されていない病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖と比較して、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは100%阻害し得る。
【0024】
同様に、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化の誘導は、任意の程度までであり得ることが認識される。例えば、薬剤は、薬剤へ曝されていない病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化と比較して、病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%、最も好ましくは100%誘導し得る。
【0025】
さらに好ましい実施態様において、薬剤は病的幹細胞及び/又は前駆細胞を殺滅可能である。特に、薬剤は、アポトーシス又はオートファジーによって幹細胞及び/又は前駆細胞死の誘導ができる場合がある。例えば、薬剤は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によってアポトーシスを誘導し得る。
【0026】
上述したように、本発明の薬剤は、IL1RAPに対して特異性を有する結合部分を構成する任意の適切な化学物質を含み得る又はからなり得る。
【0027】
テスト化学物質とIL1RAPとの相互作用を検出するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、イオンスプレー質量分析/HPLC法を伴う限外濾過又は他の物理的及び分析的方法が使用され得る。さらに、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Energy Resonance Transfer)(FRET)法が使用され得、ここで、2つの蛍光標識されたエンティティーの結合が、互いへ接近した場合の蛍光標識の相互作用を測定することによって測定され得る。
【0028】
高分子、例えば、DNA、RNA、タンパク質及びリン脂質へのIL1RAPの結合を検出するための代替法としては、例えばPlant et al., 1995, Analyt Biochem 226(2), 342-348に記載されるような、表面プラズモン共鳴アッセイが挙げられる。このような方法は、例えば放射又は蛍光標識で標識されているポリペプチドを使用し得る。
【0029】
IL1RAPへ結合することができる化学物質を同定するさらなる方法は、タンパク質が化合物へ曝され、該タンパク質への化合物の結合が検出及び/又は測定されるものである。ポリペプチドへの化合物の結合についての結合定数が測定され得る。ポリペプチドへの化合物の結合を検出及び/又は測定(定量化)するための適切な方法は、当業者に周知であり、例えば、ハイスループット操作が可能な方法、例えば、チップベースの方法を使用して、行われ得る。VLSIPS(商標)と呼ばれる新しい技術が、何十万又はそれ以上もの異なる分子プローブを含有する非常に小さなチップの製造を可能にした。これらの生物学的チップは、アレイに配置されたプローブを有し、各プローブは特定の位置を割り当てられている。各位置が例えば10ミクロンのスケールを有する生物学的チップが製造された。チップは、標的分子がチップ上のプローブのいずれかと相互作用するかどうかを測定するために使用され得る。選択された試験条件下で標的分子へアレイを曝した後、スキャンニング装置が、アレイ中の各位置を調べ、標的分子がその位置のプローブと相互作用したかどうかを測定し得る。
【0030】
IL1RAPについて結合親和性を有する化合物を同定する別の方法は、酵母ツーハイブリッド法であり、ここで、本発明のポリペプチドが、IL1RAPに結合するタンパク質を「捕らえる」ために使用され得る。酵母ツーハイブリッド法は、Fields & Song, Nature 340:245-246 (1989)に記載されている。
【0031】
一つの好ましい実施態様において、薬剤はポリペプチドを含む又はからなる。
【0032】
例えば、薬剤は、IL1RAPについて結合特異性を有する抗体又はその抗原結合性フラグメント、又は、IL1RAPについて結合特異性を保持する、該抗体又は抗原結合性フラグメントの変異体、融合体又は誘導体、又はその該変異体又は誘導体の融合体を含み得る又はからなり得る。
【0033】
「抗体」によって、本発明者らは、実質的にインタクトな抗体分子、並びにキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(ここで、少なくとも1つのアミノ酸が、天然のヒト抗体と比べて変異している)、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/又は軽鎖のホモダイマー及びヘテロダイマー、及び抗原結合性フラグメント並びにそれらの誘導体を含む。
【0034】
「抗原結合性フラグメント」によって、本発明者らは、IL1RAPへ結合することができる抗体の機能性フラグメントを意味する。
【0035】
好ましくは、抗原結合性フラグメントは、Fvフラグメント(例えば、一本鎖Fv及びジスルフィド結合したFv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab'フラグメント及びF(ab)2フラグメント)、単一の可変ドメイン(例えば、VH及びVLドメイン)、並びにドメイン抗体(dAb、例えば、単一及び二重形式[即ち、dAb-リンカー-dAb])からなる群より選択される。
【0036】
全抗体ではなく、抗体フラグメントを使用する利点は、数倍である。フラグメントのより小さなサイズは、改善された薬理学的特性、例えば、固形組織のよりよい浸透をもたらし得る。さらに、抗原結合性フラグメント、例えば、Fab、Fv、ScFv及びdAb抗体フラグメントは、大腸菌中で発現され、大腸菌から分泌され得、従って、大量の該フラグメントの容易な製造が可能になる。
【0037】
本発明の範囲内に含まれるのはまた、例えば、ポリエチレングリコール又は他の適切なポリマーの共有結合によって修飾された、抗体及びその抗原結合性フラグメントの修飾型である(下記参照)。
【0038】
抗体及び抗体フラグメントの作製方法は、当技術分野において周知である。例えば、抗体は、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi. et al, 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-3837; Winter et al., 1991, Nature 349:293-299)又は培養における細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いるいくつかの方法のいずれかによって作製され得る。これらとしては、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びエプスタイン-バー・ウイルス(EBV)ハイブリドーマ技術が挙げられるが、これらに限定されない(Kohler et al., 1975. Nature 256:4950497; Kozbor et al., 1985. J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote et al., 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole et al., 1984. Mol. Cell. Biol. 62:109-120)。
【0039】
選択された抗原に対する適切なモノクローナル抗体は、公知の技術、例えば、“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988)及び“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications”, J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に開示されるものによって作製され得る。
【0040】
同様に、抗体フラグメントは、当技術分野において周知の方法を使用して得ることができる(例えば、Harlow & Lane, 1988, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照のこと)。例えば、本発明に従う抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解性加水分解によって、又はフラグメントをコードするDNAの大腸菌又は哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現系)中での発現によって、作製され得る。あるいは、抗体フラグメントは、従来法による全抗体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。
【0041】
ヒトの治療又は診断のために、ヒト又はヒト化抗体が好ましくは使用されることが、当業者によって認識される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト抗体由来の好ましくは最小部分を有する遺伝子操作されたキメラ抗体又は抗体フラグメントである。ヒト化抗体は、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域(complementary determining region)が、所望の機能性を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域由来の残基によって置換されている抗体を含む。ある場合において、ヒト抗体のFvフレームワーク残基はまた、対応の非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においてもインポートされる相補性決定領域又はフレームワーク配列においても見られない残基を含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、通常2つの、可変領域の実質的に全てを含み、ここで、全ての又は実質的に全ての相補性決定領域が、非ヒト抗体のそれに対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク領域が、関連のヒトコンセンサス配列のそれに対応する。ヒト化抗体はまた、最適には(o9ptimally)、通常ヒト抗体に由来する、Fc領域などの、抗体定常領域の少なくとも一部を含む(例えば、Jones et al., 1986. Nature 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature 332:323-329; Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照のこと)。
【0042】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の、その中へ導入された1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。インポートされた残基としばしば呼ばれる、これらの非ヒトアミノ酸は、通常、インポートされる可変領域から取られる。ヒト化は、ヒト相補性決定領域を対応の齧歯類相補性決定領域で置換することによって、記載される通りに本質的に行われ得る(例えば、Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al., 1988. Nature 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536l; US 4,816,567を参照のこと)。従って、このようなヒト化抗体は、実質的にインタクト未満のヒト可変領域が、非ヒト種由来の対応の配列によって置換されている、キメラ抗体である。実際、ヒト化抗体は、通常、いくつかの相補性決定領域残基及び恐らくいくつかのフレームワーク残基が齧歯類抗体中の類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体であり得る。
【0043】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野において公知の種々の技術を使用して同定され得る(例えば、Hoogenboom & Winter, 1991, J. Mol. Biol. 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581; Cole et al., 1985, In: Monoclonal antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77; Boerner et al., 1991. J. Immunol. 147:86-95を参照のこと)。
【0044】
いったん適切な抗体が得られると、それらは、例えばELISAによって、活性について試験され得る。
【0045】
本発明第1局面の代替の実施態様において、薬剤は、例えばSkerra, Curr Opin Biotechnol. 2007 Aug;18(4):295-304に記載されるような、非免疫グロブリン結合部分を含む又はからなる。
【0046】
さらなる代替の実施態様において、薬剤はアプタマーを含む又はからなる。例えば、薬剤は、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーを含み得る又はからなり得る(Hoppe-Seyler & Butz, 2000, J Mol Med. 78 (8): 426-30; Bunka DH & Stockley PG, 2006, Nat Rev Microbiol. 4 (8): 588-96及びDrabovich et al., 2006, Anal Chem. 78 (9): 3171-8を参照のこと)。
【0047】
なおさらなる代替の実施態様において、薬剤は、小さな化学物質を含む又はからなる。IL1RAP結合特性を有するこのようなエンティティーは、小さな化合物の市販のライブラリー(例えば、ChemBridge Corporation, San Diego, USAから入手可能)をスクリーニングすることによって同定され得る。
【0048】
結合部分に加えて、本発明の薬剤は、薬剤のインビボ半減期を増大させるための部分、例えばしかしこれらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸及びデキストランをさらに含み得る。このようなさらなる部分は、当技術分野において周知の方法を使用して、結合部分と結合され得る又はそうでなければ組み合わせられ得る。
【0049】
同様に、本発明の薬剤は細胞傷害性部分をさらに含み得ることが認識される。
【0050】
例えば、細胞傷害性部分は、放射性同位体、例えば、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、ヨウ素-131、イットリウム-90、ルテチウム-177、サマリウム-153及びパラジウム-109を含み得る又はからなり得る。
【0051】
あるいは、細胞傷害性部分は、毒素(例えば、サポリン又はカリケアマイシン)を含み得る又はからなり得る。
【0052】
さらなる代替物において、細胞傷害性部分は、化学療法剤(例えば、代謝拮抗物質)を含み得る又はからなり得る。
【0053】
同様に、本発明の薬剤は、検出可能部分をさらに含み得ることが認識される。
【0054】
例えば、検出可能部分は、放射性同位体、例えば、テクネチウム-99m(technitium-99m)、インジウム-111、ガリウム-67、ガリウム-68、ヒ素-72、ジルコニウム-89、ヨウ素-12又はタリウム-201を含み得る又はからなり得る。
【0055】
あるいは、検出可能部分は、常磁性同位体、例えば、ガドリニウム-157、マンガン-55、ジスプロシウム-162、クロム-52又は鉄-56を含む又はからなる。
【0056】
細胞傷害性及び検出可能部分は、当技術分野において周知の方法を使用して、結合部分と結合され得る又はそうでなければ組み合わせられ得る(例えば、既存の免疫複合体療法、ゲムツズマブオゾガマイシン[商標:Mylotarg(登録商標)]は、細胞毒カリケアマイシンへ連結されたモノクローナル抗体を含む)。
【0057】
本発明の第3局面は、薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、アジュバント又は賦形剤と共に、有効量の本発明の第1又は第2局面に関して定義された薬剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0058】
キレート剤、例えば、EDTA、シトレート、EGTA又はグルタチオンを含む、さらなる化合物がまた、組成物に含まれ得る。
【0059】
十分に保存安定性でありかつヒト及び動物への投与に適している、薬学的組成物は、当技術分野において公知の様式で作製され得る。例えば、薬学的組成物は、例えば、フリーズドライ、噴霧乾燥、噴霧冷却によって、又は超臨界粒子形成からの粒子形成の使用によって、凍結乾燥され得る。
【0060】
「薬学的に許容される」によって、本発明者らは、本発明の薬剤のIL1RAP結合活性の有効性を減少させない非毒性材料を意味する。このような薬学的に許容される緩衝剤、担体又は賦形剤は、当技術分野において周知である(Remington's Pharmaceutical Sciences,
18th edition, A.R Gennaro, Ed., Mack Publishing Company (1990)及びhandbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd edition, A. Kibbe, Ed ., Pharmaceutical Press (2000)を参照のこと;これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0061】
用語「緩衝剤」は、pHを安定させる目的で酸-塩基混合物を含有する水溶液を意味するように意図される。緩衝剤の例は、トリズマ、ビシン、トリシン、MOPS、MOPSO、MOBS、トリス、ヘペス、HEPBS、MES、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ホウ酸塩、ACES、ADA、酒石酸塩、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸塩、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO及びTESである。
【0062】
用語「希釈剤」は、薬学的調製において薬剤を希釈する目的を有する水溶液又は非水溶液を意味するように意図される。希釈剤は、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール又は油(例えば、ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油又はゴマ油)の1つ又はそれ以上であり得る。
【0063】
用語「アジュバント」は、本発明の薬剤の生物学的効果を増加させるために製剤へ添加される任意の化合物を意味するように意図される。アジュバントは、様々なアニオンとの亜鉛、銅又は銀塩の1つ又はそれ以上であり得る;例えば、しかしこれらに限定されないが、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩(tiocyanate)、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、及び様々なアシル組成の酢酸塩。アジュバントはまた、カチオンポリマー、例えば、カチオン性セルロースエーテル、カチオン性セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー、カチオン性合成ポリマー、例えば、ポリ(ビニルイミダゾール)、及びカチオン性ポリペプチド、例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、及びこれらのアミノ酸を含有するペプチドであり得る。
【0064】
賦形剤は、炭水化物、ポリマー、脂質及びミネラルの1つ又はそれ以上であり得る。炭水化物の例としては、例えば凍結乾燥を促進するために、組成物へ添加される、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、及びシクロデキストリンが挙げられる。ポリマーの例は、例えば、粘度制御のため、生物接着を達成するため、又は化学及びタンパク質分解性分解から脂質を保護するために、組成物へ添加される、全ての様々な分子量の、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラゲナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホネート、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール/加水分解の様々な程度のポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンである。脂質の例は、脂肪酸、リン脂質、モノ-、ジ-、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴリピド及び糖脂質、全ての様々なアシル鎖長及び飽和、卵レシチン、大豆レシチン、水素添加卵及び大豆レシチンであり、これらは、ポリマーについてのものと同様の理由のために組成物へ添加される。ミネラルの例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化チタンであり、これらは、液体蓄積の減少又は有利な色素特性などの利益を得るために組成物へ添加される。
【0065】
本発明の薬剤は、その送達に適するように当技術分野において公知の任意のタイプの薬学的組成物へ処方され得る。
【0066】
一実施態様において、本発明の薬学的組成物は、リポソームの形態であり得、ここで、薬剤は、他の薬学的に許容される担体に加えて、脂質などの両親媒性薬剤と組み合わされ、これは、ミセル、不溶性単層及び液晶として凝集形態で存在する。リポソーム製剤についての適切な脂質としては、非限定的に、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが挙げられる。適切な脂質としてはまた、血流循環時間を延長するために極性頭部においてポリ(エチレングリコール)によって修飾された上記の脂質が挙げられる。このようなリポソーム製剤の作製は、例えばUS 4,235,871において見られ得、この開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
本発明の薬学的組成物はまた、生物分解性マイクロスフェアの形態であり得る。脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、PLA及びPGAのコポリマー(PLGA)又はポリ(カプロラクトン(carprolactone)(PCL)、及びポリ酸無水物が、マイクロスフェアの製造において生物分解性ポリマーとして広く使用されてきた。このようなマイクロスフェアの作製はUS5,851,451及びEP0 213303において見られ得、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0068】
さらなる実施態様において、本発明の薬学的組成物は、ポリマーゲルの形態で提供され、ここで、ポリマー、例えば、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラゲナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルイミダゾール、ポリスルホネート、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール/加水分解の様々な程度のポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンが、薬剤を含有する溶液の濃化のために使用される。ポリマーはまたゼラチン又はコラーゲンを含み得る。
【0069】
あるいは、薬剤は、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール又は油(例えば、ベニバナ油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油又はゴマ油)、トラガカントゴム、及び/又は様々なバッファーに単に溶解され得る。
【0070】
本発明の薬学的組成物は、活性薬剤の作用の増強のためにイオン及び規定のpHを含み得ることが認識される。さらに、組成物は、滅菌などの従来の製薬操作へ供され得、及び/又は保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤などの従来のアジュバントを含有し得る。
【0071】
本発明に従う薬学的組成物は、当業者に公知の任意の適切な経路によって投与され得る。従って、可能な投与経路としては、非経口(静脈内、皮下、及び筋内)、局所、眼、鼻、肺(pulmonar)、頬、経口、非経口、膣及び直腸が挙げられる。インプラントからの投与も可能である。
【0072】
一つの好ましい実施態様において、薬学的組成物は、非経口、例えば、静脈内、脳室内、関節内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、槽内(intrasternally)、頭蓋内、筋内又は皮下投与されるか、又はそれらは、注入技術によって投与され得る。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするために十分な塩又はグルコースを含有し得る、滅菌水溶液の形態で好都合なことに使用される。水溶液は、必要ならば、適切に緩衝化される(好ましくは3〜9のpHへ)。無菌条件下での適切な非経口製剤の作製は、当業者に周知の標準の製薬技術によって容易に達成される。
【0073】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る、水性及び非水性滅菌注射液剤;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る、水性及び非水性滅菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供され得、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存され得る。即席注射液剤及び懸濁剤は、前述した種類の滅菌散剤、顆粒剤、及び錠剤から作製され得る。
【0074】
従って、本発明の薬学的組成物は、非経口、例えば静脈内、投与に特に適している。
【0075】
あるいは、薬学的組成物は、鼻腔内に又は吸入によって投与され得る(例えば、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A3又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)、二酸化炭素又は他の適切なガスを使用して、加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で)。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーは、例えば、溶媒としてエタノール及び噴射剤の混合物を使用して、活性ポリペプチドの溶液又は懸濁液を含有し得、これは、滑沢剤、例えば、ソルビタントリオレアートをさらに含有し得る。吸入器又は注入器における使用ためのカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンから作製される)は、本発明の化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末ミックスを含有するように処方され得る。
【0076】
薬学的組成物は、薬学的に有効な用量で患者へ投与される。「治療有効量」、又は「有効量」、又は「治療的に有効な」は、本明細書において使用される場合、所定の条件及び投与レジメンについて治療効果を提供する量を指す。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、即ち、担体又は投与ビヒクルと共同して所望の治療効果をもたらすように計算された活性物質の所定量である。さらに、それは、活性、機能及びホストの反応の臨床的に著しい不足を減らし、最も好ましくは防止するに十分な量を意味するように意図される。あるいは、治療有効量は、ホストにおいて臨床的に著しい状態の改善を引き起こすに十分である。当業者によって認識されるように、化合物の量は、その特定の活性に応じて変化し得る。適切な投薬量は、必要とされる希釈剤と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性組成物を含有し得る。本発明の組成物の製造のための方法及び使用において、治療有効量の活性成分が提供される。治療有効量は、当技術分野において周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者特徴に基づいて、医学又は獣医学の当業者によって決定され得る。薬学的に有効な用量の投与は、個々の用量単位又はいくつかのより少ない用量単位の形態での単回投与、及びまた特定の間隔での細分された用量の複数回投与の両方によって行われ得る。あるいは、用量は、長期間にわたって連続注入として提供され得る。
【0077】
ポリペプチドは、使用される化合物の効能/毒性に応じて、種々の濃度で処方され得る。好ましくは、製剤は、0.1μM〜1 mM、より好ましくは1μM〜500μM、500μM〜1 mM、300μM〜700μM、1μM〜100μM、100μM〜200μM、200μM〜300μM、300μM〜400μM、400μM〜500μM、最も好ましくは約500μMの濃度で活性薬剤を含む。
【0078】
本発明の薬学的組成物は、新生物性血液障害の治療において使用される他の治療剤、例えば、チロシンキナーゼの阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ[Glivec(登録商標)]、ダサチニブ、ニロチニブ)、オマセタキシン(omacetaxine)、代謝拮抗物質(例えば、シタラビン、ヒドロキシ尿素)、アルキル化剤、インターフェロンα-2b及び/又はステロイドと組み合わせて又は単独で投与され得ることが、当業者によって認識される。
【0079】
本発明の第4局面は、本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤又は本発明の第3局面に従う薬学的組成物を含むキットを提供する。
【0080】
本発明の第5局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖を阻害するため及び/又は細胞死を誘導するための医薬の製造における本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤の使用であって、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する使用を提供する。
【0081】
薬剤はまた、IL1RAPを発現する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化を誘導することにおける使用のためであり得る。
【0082】
本発明の関連の第6局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための診断用薬の製造における本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤の使用であって、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する使用を提供する。
【0083】
本発明の関連の第7局面は、新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤の使用であって、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する使用を提供する。
【0084】
本発明の上記の使用局面の一実施態様において、新生物性血液障害は白血病である。
【0085】
さらなる実施態様において、新生物性血液障害は、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞及び/又は前駆細胞はBCR/ABL1融合遺伝子を含み得る。
【0086】
関連の実施態様において、新生物性血液障害は、Ph染色体を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞及び/又は前駆細胞はPh染色体を含む。この文脈の中で「Ph染色体」によって、本発明者らは、t(9;22)(q34;q11)と具体的には示される、染色体9と22との間の相互転座から生じる特定の染色体異常を意味する。Ph染色体を含む細胞に関連する新生物性血液障害の例は、慢性骨髄性(myeloid)(又は骨髄性(myelogenous))白血病(CML)である。
【0087】
しかし、本発明の薬剤はまた、フィラデルフィア(Ph)染色体を含む細胞に関連しない(しかしそれにもかかわらずIL1RAPのアップレギュレーションを示す)新生物性血液障害の治療及び/又は診断において使用され得ることが、当業者によって認識される。Ph染色体を含まない細胞に関連するこのような新生物性血液障害としては、骨髄異形成症候群(MDS)及び骨髄増殖性疾患(MPD)、例えば、真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)及び骨髄線維症(MF)が挙げられる。
【0088】
より具体的には、新生物性血液障害は、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択され得る。
【0089】
一つの特に好ましい実施態様において、新生物性血液障害は慢性骨髄性白血病(CML)である。
【0090】
本発明の第8局面は、個体における新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の細胞死を誘導するため及び/又は成長及び/又は増殖を阻害するための方法であって、有効量の本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤、又は本発明の第3局面に従う薬学的組成物を個体へ投与する工程を含み、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する方法を提供する。
【0091】
方法はまた、IL1RAPを発現する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の分化を誘導するためであり得る。
【0092】
従って、本発明は、新生物性血液障害の治療方法を提供する。「治療」によって、本発明者らは、患者の治療的及び予防的処置の両方を含む。用語「予防的」は、患者又は被験体における新生物性血液障害を予防するか又はその可能性を減らす本明細書に記載のポリペプチド又は製剤の使用を包含するために使用される。
【0093】
本発明の第9局面は、個体における新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための方法であって、有効量の本発明の第1又は第2局面に関して定義される薬剤、又は本発明の第3局面に従う薬学的組成物を個体へ投与する工程を含み、幹細胞及び/又は前駆細胞がIL1RAPを発現する方法を提供する。
【0094】
本発明の第10局面は、新生物性血液障害を診断又は予後を判定するためのインビトロ方法を提供し、該方法は:
(a)試験される個体からの造血細胞の骨髄又は末梢血サンプルを提供する工程;
(b)造血細胞からCD34+,CD38-細胞の分集団を単離する工程;及び
(c)CD34+,CD38-細胞内に含有される幹細胞が細胞表面マーカーIL1RAPを発現するかどうかを測定する工程
を含み、
ここで、細胞表面マーカープロフィールCD34+、CD38-及びIL1RAP+を示す幹細胞は、白血病を有するか又は発症する個体を示す。
【0095】
本発明の上記の方法局面の一実施態様において、新生物性血液障害は白血病である。
【0096】
さらなる実施態様において、新生物性血液障害は、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞はBCR/ABL1融合遺伝子を含み得る。
【0097】
関連の実施態様において、新生物性血液障害は、Ph染色体を含む細胞に関連し得る。例えば、病的幹細胞はPh染色体を含む。この文脈の中で「Ph染色体」によって、本発明者らは、t(9;22)(q34;q11)と具体的には示される、染色体9と22との間の相互転座から生じる特定の染色体異常を意味する。Ph染色体を含む細胞に関連する新生物性血液障害の例は、慢性骨髄性(myeloid)(又は骨髄性(myelogenous))白血病(CML)である。
【0098】
しかし、本発明の薬剤はまた、フィラデルフィア(Ph)染色体を含む細胞に関連しない(しかしそれにもかかわらずIL1RAPのアップレギュレーションを示す)新生物性血液障害の治療及び/又は診断において使用され得ることが、当業者によって認識される。Ph染色体を含まない細胞に関連するこのような新生物性血液障害としては、骨髄異形成症候群(MDS)及び骨髄増殖性疾患(MPD)、例えば、真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)及び骨髄線維症(MF)が挙げられる。
【0099】
より具体的には、新生物性血液障害は、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択され得る。
【0100】
一つの特に好ましい実施態様において、新生物性血液障害は慢性骨髄性白血病(CML)である。
【0101】
本発明の特定の局面を具体化する好ましい非限定的な例を、下記の図面を参照して、ここで説明する:
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】P210 BCR/ABL1発現は臍帯血CD34+細胞においてIL1RAP発現を誘導する。フローサイトメトリー分析は、形質導入の3日後、IL1RAP発現が臍帯血CD34+細胞においてレトロウイルスP210 BCR/ABL1発現で誘導されることを確認する。CD34+GFP+細胞をドットプロットにおけるゲートに従ってゲート制御した。ヒストグラムは、ネガティブコントロール染色(白色)、MIGコントロール(薄い灰色)及びMIG-P210(濃い灰色)についてのIL1RAPの発現を示す。ドットプロット中の数は、個々のゲート/象限内の細胞のパーセンテージを示す。3つのうちの代表的な実験が示される。
【図2−1】IL1RAPは初期CML細胞中においてアップレギュレートされる。5人のCML患者及び2人の正常bmサンプル由来のCD34+細胞上でのFACS分析。代表的なCML患者におけるCD34+CD38+又はCD34+CD38-細胞についてのゲーティングを示すFACSドットプロット(A)。CD34+CD38+細胞内のIL1RAP発現を示すヒストグラム(B)。CD34+CD38-細胞内のIL1RAP発現を示すヒストグラム(C)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はIL1RAP染色サンプルを示す。CD34+CD38-IL1RAP-及びCD34+CD38-IL1RAP+細胞についての選別ゲートをヒストグラムに描く。ドットプロット及びヒストグラム中の数は、個々のゲート/象限内の細胞のパーセンテージを示す。
【図2−2】IL1RAPは初期CML細胞中においてアップレギュレートされる。5人のCML患者及び2人の正常bmサンプル由来のCD34+細胞上でのFACS分析。代表的なCML患者におけるCD34+CD38+又はCD34+CD38-細胞についてのゲーティングを示すFACSドットプロット(A)。CD34+CD38+細胞内のIL1RAP発現を示すヒストグラム(B)。CD34+CD38-細胞内のIL1RAP発現を示すヒストグラム(C)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はIL1RAP染色サンプルを示す。CD34+CD38-IL1RAP-及びCD34+CD38-IL1RAP+細胞についての選別ゲートをヒストグラムに描く。ドットプロット及びヒストグラム中の数は、個々のゲート/象限内の細胞のパーセンテージを示す。
【図3】IL1RAP発現はCD34+CD38-細胞区画内のPh+細胞とPh- CML細胞とを識別する。5人のCML患者サンプル由来のCML CD34+CD38-IL1RAP-及びCD34+CD38-IL1RAP+細胞についてのFlow-drop-FISHは、それぞれ、BCR/ABL1-及びBCR/ABL1+細胞のほぼ完全な分離を明らかにした。黒色バーはBCR/ABL1陰性細胞を示し、白色バーはBCR/ABL1陽性細胞を示す。各バーの上部に示されるのは、記録された総計の核のうちのPh+細胞の数である。
【図4】IL1RAP発現はPh+ CML幹細胞と正常なHSCとを識別する。CD34+CD38-IL1RAP-及びCD34+CD38-IL1RAP+細胞由来のLTC-CFCの数(A)。黒色バーはIL1RAP-細胞を示し、白色バーはIL1RAP+細胞を示す。LTC-CFCについてのインターフェーズFISH(B)。黒色バーはBCR/ABL1陰性細胞を示し、白色バーはBCR/ABL1陽性細胞を示す。各バーの上部に示されるのは、記録された総計の核のうちのPh+細胞の数である。
【図5】IL1RAPの抗体ターゲッティングによるCML細胞株の殺滅。フィラデルフィア染色体を欠くKG-1細胞上での発現と比較しての、フィラデルフィア染色体を含有しかつCML患者由来のKU812細胞上でのIL1RAP発現を示すヒストグラム(A)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はKMT-1染色サンプルを示す。白血病細胞株KG-1はIL1RAP発現がなかったのに対して、KU812はIL1RAPを発現する(B)。結果として、低レベルの抗体誘導細胞死がKG-1において観察され、一方、KU812細胞についてKMT-1を使用して用量依存性ADCC効果が観察された(B)。非特異的ADCC効果についてのコントロールとして、ウサギIgG抗体をまた実験において使用した。グラフは、3つの独立した実験からの抗体誘導細胞死の平均値及び標準偏差を示す。
【図6A】IL1RAPの抗体ターゲッティングによるCML幹細胞の殺滅。KMT-1を使用することによって、正常な骨髄CD34+CD38-細胞はIL1RAPについて陰性に染色されたのに対して、CML CD34+CD38+及びCD34+CD38-細胞はIL1RAPを発現した。CML-1についてのヒストグラムが代表的な実験から示される(A)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はKMT-1染色サンプルを示す。IL1RAP発現のレベルと一致して、正常な骨髄CD34+CD38-細胞を使用しては明らかなADCC効果は見られなかったのに対して、KMT-1は、CML CD34+及びCD34+CD38-細胞の両方において強力な用量依存性のADCC効果を誘導した(B)。非特異的ADCC効果についてのコントロールとして、ウサギIgG抗体もまた実験において使用した。グラフは、CML-1、CML-3、CML-4、及び4個の正常な骨髄サンプルを使用する3つの独立した実験からの抗体誘導細胞死の平均値及び標準偏差を示す。
【図6B】IL1RAPの抗体ターゲッティングによるCML幹細胞の殺滅。KMT-1を使用することによって、正常な骨髄CD34+CD38-細胞はIL1RAPについて陰性に染色されたのに対して、CML CD34+CD38+及びCD34+CD38-細胞はIL1RAPを発現した。CML-1についてのヒストグラムが代表的な実験から示される(A)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はKMT-1染色サンプルを示す。IL1RAP発現のレベルと一致して、正常な骨髄CD34+CD38-細胞を使用しては明らかなADCC効果は見られなかったのに対して、KMT-1は、CML CD34+及びCD34+CD38-細胞の両方において強力な用量依存性のADCC効果を誘導した(B)。非特異的ADCC効果についてのコントロールとして、ウサギIgG抗体もまた実験において使用した。グラフは、CML-1、CML-3、CML-4、及び4個の正常な骨髄サンプルを使用する3つの独立した実験からの抗体誘導細胞死の平均値及び標準偏差を示す。
【図7】IL1RAPはまた初代ALL及びAML幹細胞上において発現される。急性骨髄性白血病(AML)細胞を診断時に患者から受け取った。代表的なAML患者由来のCD34+CD38-及びCD34+CD38+細胞上でのIL1RAP発現を示す(A)。AML細胞株MONO-MAC-6及びALL細胞株REHはIL1RAPを発現する(B)。急性リンパ性白血病(ALL)細胞を診断時に患者から受け取った。代表的なPh+ ALL患者由来のCD34+CD38-及びCD34+CD38+細胞上でのIL1RAP発現を示す(C)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色はIL1RAP染色サンプルを示す。
【図8】IL1RAPの抗体ターゲッティングによるAML及びALL細胞株の殺滅。ADCCアッセイにおいて、KMT-1用量依存性細胞死が、MONO-MAC-6及びREH細胞株の両方において誘導され、これは、IL1RAPターゲッティング抗体が、CMLだけでなくより広い治療範囲を有し得ることを示唆している。非特異的ADCC効果のコントロールとして、ウサギIgG抗体もまた実験において使用した。グラフは、3つの独立した実験からの抗体誘導細胞死の平均値及び標準偏差を示す。
【図9】IL1RAPの抗体ターゲッティングによるAML及びALL幹細胞の殺滅。ADCCアッセイにおいて、KMT-1誘導細胞死が初代AML CD34+CD38-(A)及びALL CD34+CD38-(B)細胞の両方において観察され、これは、IL1RAPターゲッティング抗体はまた、それらの細胞表面上でのIL1RAPのアップレギュレーションを伴うAML及びALLにおいて治療効果を有することを確認する。非特異的ADCC効果についてのコントロールとして、ウサギIgG抗体もまた実験において使用した。グラフは特異的抗体誘導細胞死を示す。
【図10】IL1RAPはMPD及びMDS患者由来の白血病幹細胞上において発現される。JAK2突然変異を伴う又は伴わない、2人のMPD患者(MPD-1及びMPD-2)のCD34+CD38-細胞中におけるIL1RAP発現を示す等高線プロット(A)。AMLへ進行したMDS患者におけるIL1RAP発現を示すヒストグラム(B)。白色はコントロール染色サンプルを示し、灰色は抗IL1RAP抗体で染色されたサンプルを示す。
【実施例】
【0103】
実施例1
IL1RAPは慢性骨髄性白血病幹細胞についての細胞表面バイオマーカーである
概要
障害の根治を達成することを目的とした慢性骨髄性白血病(CML)について治療戦略は、CML幹細胞の完全な根絶を必要とする。正常な造血幹細胞(HSC)と自己複製する能力を共有するCML幹細胞は、細胞表面マーカーを使用して正常(HSC)と今まで識別不能であった白血病細胞の小集団を示す。CML幹細胞を標的化する一戦略は、CML幹細胞についての細胞表面バイオマーカーを同定することであり、ここへ、将来の治療抗体が向けられ得る。この研究において、本発明者らは、網羅的遺伝子発現分析を使用して、初期CML CD34+細胞においても異所性P210 BCR/ABL1発現の結果としても一般的にアップレギュレートされるとしてIL1RAPを同定した。本発明者らは、IL1RAP発現が、CML及び正常なHSCの両方を含む稀なCD34+CD38-細胞集団を2つのフラクションへ分けることをさらに示す;一方は低い/存在しない発現を有し、他方はより高いIL1RAP発現を有する。少数の選別された細胞におけるFISHによるBCR/ABL1の検出を可能にするプロトコルを確立した後、本発明者らは、CML CD34+CD38-細胞内で、IL1RAP+細胞はBCR/ABL1+であったのに対し、IL1RAP-細胞はほぼもっぱらBCR/ABL1-であったことを観察した。2つの細胞集団における長期培養開始細胞(LTC-IC)アッセイをさらに行うことによって、本発明者らは、候補CML幹細胞及び正常なHSCが予期して分離され得ることを見出した。従って、この研究は、CML幹細胞と正常なHSCとを識別する最初の細胞表面バイオマーカーとしてIL1RAPを同定し、CML並びに関連障害、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄増殖性疾患(MPD)及び骨髄異形成症候群(MDS)における治療及び診断戦略について新しい道を開く。
【0104】
導入
CML幹細胞についての細胞表面バイオマーカーを同定するために、本発明者らは、網羅的遺伝子発現分析を行い、初期CML患者細胞においても異所性P210 BCR/ABL1発現の結果としてもアップレギュレートされる、一番上の候補としてインターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)を同定した。少数の選別された細胞中においてBCR/ABL1を検出するためのアッセイの開発で、本発明者らは、IL1RAP発現は、初期白血病細胞及び正常細胞の予期される分離を可能にすることを示す。長期培養開始細胞アッセイによって、本発明者らは、IL1RAPはCML幹細胞についての細胞表面バイオマーカーであり、正常なHSCからのCML幹細胞の予期される分離を初めて可能にすることをさらに示す。
【0105】
材料及び方法
CML患者細胞の収集
臍帯血CD34+細胞の単離及び形質導入
地方の倫理委員会によって承認されたプロトコルに従うインフォームドコンセント後に、CML患者由来の血液及び時折骨髄サンプルを診断時に得、その後、治療を開始した。サンプルを、Lund University Hospital, SwedenのDepartment of Hematology及びRigshospitalet, Copenhagen, Denmarkの両方から受け取った。単核細胞(MNC)を製造業者の使用説明書に従ってLymphoprep(商標)(Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway)を使用して分離し、定期的に、以前記載されたように22CD34+細胞単離キット(Miltenyi Biotech, Bergisch Gladbach, Germany)を使用してCD34+細胞を濃縮し、これによって95%を超えるCD34+細胞の純度が得られた。単核細胞のサブフラクションを液体窒素中に生存可能に保存し、その後、抗体染色を開始した。CD34+細胞を2つのフラクションに分けた;一方のフラクションをPBS中で洗浄し、Trizol中に再懸濁し、-80 Cで凍結させたのに対して、他方のフラクションを液体窒素中に凍結させた。参照サンプルとして、Lund University Hospitalでインフォームドコンセント後に健康なボランティア由来の骨髄サンプルを得、続いて、上述のようにCD34-細胞単離を行った。
【0106】
マイクロアレイ分析
Lund University, SwedenのSwegene DNA Microarray Resource Center製のオリゴヌクレオチドスライドを使用して、マイクロアレイ分析を行った。Pronto Universal Hybridizationキット(Corning Inc, Corning, NY)を使用して、ハイブリダイゼーションを行った。RNA単離及びマイクロアレイ分析を、本質的に以前記載された通りに行った23。ソフトウェアQlucore Omics Explorer 2.0(Qlucore, Lund, Sweden)を使用して、データ可視化を行った。
【0107】
フローサイトメトリー分析
フローサイトメトリー分析をFACS Cantoにおいて行い、フローサイトメトリー細胞選別をFACS Aria(両方ともBD製)において行った。細胞染色前に、CD34+細胞を標準手順に従って解凍し、2 % FCSを含有するPBS(洗浄媒体)中で1回洗浄した。ビオチン標識されたヤギ抗ヒトIL1RAPポリクローナル抗体(バッチ667, R&D Systems, Abingdon, UK)を、氷上で30分間細胞を染色するために1:100希釈で使用した。続いて、細胞を洗浄し、PE結合ストレプトアビジンを30分間1:200希釈で使用した。APC結合抗CD34及びFITC結合抗CD38モノクローナル抗体を、共染色のために使用した(IL1RAPを除いて、使用した全ての抗体を、Beckton-Dickinson Immunocytometry Systems, Mountain View, CAから購入した)。細胞選別前に、細胞を2回洗浄し、PE結合ストレプトアビジンの非特異的結合を回避した。アイソタイプ一致コントロール抗体をネガティブコントロールとして使用した。
【0108】
細胞選別及びインターフェーズFISH
湿室中に維持しながら2時間0.01 %ポリL-リジン(Sigma-Aldrich, Stockholm, Sweden)でスライドガラスを処理し、水中で1回洗浄し、乾燥するまで37℃にてホットプレート上で乾燥させた。続いて、疎水性ペン(Daido Sangyo Co., Ltd. Tokyo, Japan)を使用し、テンプレートとして96-ウェル組織培養プレートを用いて円を描いた。細胞選別前に、しかし室温で少なくとも2時間乾燥させた後に、PBS 25μLをリングへ適用し、液滴を形成させた。細胞選別の間、30〜3000個の細胞を同時に直接2つの液滴へ選別した。表面への細胞の結合を可能にするために、及び液滴の乾燥を避けるために、スライドを30分間氷上において湿室中にて維持し、その後、細胞を10分間メタノール:酢酸(3:1)中に固定した。続いて、スライドを一晩70℃オーブン中でインキュベートし、続いてFISHを行った。BCR/ABL1についてのデュアルカラープローブ(Abbot, Wiesbaden, Germany)を使用した。
【0109】
長期培養開始細胞(LTC-IC)
以前記載されたように24,25、10% FCSが補われたRPMI-1640培地中で、M210B4ストローマ細胞を培養した。細胞選別の2日前に、10-6 Mヒドロコルチゾン(Sigma-Aldrich, Stockholm, Sweden)を含有するMyelocult培地200μL(Stem Cell Technologies, Vancouver, Canada)中において50,000細胞/mLの密度で96-ウェルプレートのウェル中へストローマ細胞を接種した。細胞選別の24時間前に、ストローマ細胞に1000 Radを照射した。細胞選別の間、100〜500個の細胞を、二重で、ストローマが予めコーティングされたウェルへ直接選別し、培地100μLを3時間後に交換した。毎週1回、培養培地100μLの交換を繰り返した。5〜6週間の培養後、細胞を洗浄し、24-ウェルプレート中のメチルセルロース(methylcellusose)培地(MethoCult H44435; Stem Cell Technologies)中に平板培養した。2週間後、コロニーの数を記録した。個々のウェル由来のコロニーをプールし、洗浄し、スライド上のPBS液滴へ適用し、続いて上述のようにFISH分析を行った。
【0110】
臍帯血CD34+細胞中におけるP210 BCR/ABL1発現
地方の倫理委員会によって承認されたプロトコルに従ってインフォームドコンセントを得た後に、臍帯血サンプルを正常分娩から収集した。CD34+細胞を以前記載された通りに濃縮し22、95%を超えるCD34+細胞の純度が得られた。RD114偽型MSCV-IRES-GFP (MIG)及びMIG-P210ウイルスベクターをこの研究において使用した23。以前記載された通りに23、トロンボポエチン(TPO;50 ng/mL)、幹細胞因子(SCF;100 ng/mL)、及びFlt-3-リガンド(FL;100 ng/mL)が補われたSFMM培地(Stem Cell Technology, Vancouver, Canada)中において、CD34+細胞を培養及び形質導入した。
【0111】
結果及び議論
網羅的遺伝子発現分析はCML CD34+細胞上でアップレギュレートされるとしてIL1RAPを同定する
Ph+ CML幹細胞についての細胞表面バイオマーカーを同定することを目指して、多くの努力が研究に注がれた(C Eaves14によって概観される)。白血病細胞及び正常細胞は、FISHによる白血病特異的BCR/ABL1融合遺伝子の検出に続いてCMLにおいて遡及的にむしろ容易に同定され得、このため、それは、白血病細胞及び正常細胞を予期して分離する試みを評価するための理想的な障害である。しかし、正常なHSCからのCML幹細胞の予期される分離を可能にする細胞表面マーカーが今まで同定されていなかった。網羅的遺伝子発現分析が、造血幹細胞及び前駆細胞を識別するSLAM受容体などの新しいHSCマーカーをサーチすることにおいて強力な戦略であることがわかった15。CML幹細胞についての候補細胞表面バイオマーカーをコードするアップレギュレートされる遺伝子をサーチするために、11個のCML患者サンプル及び5個の正常な骨髄(bm)サンプル由来のCD34+細胞の転写プロフィールを比較した。CML中の同定されたアップレギュレートされる遺伝子は、全ての公知のCD分子を含むように手動で操作された(curated)Gene Ontology(GO)カテゴリー「形質膜に不可欠」に一致した(詳細については材料及び方法を参照のこと)。全体では、CML CD34+細胞中の13個のアップレギュレートされた遺伝子が、形質膜に不可欠という遺伝子カテゴリーに一致した(データを示さず)。アップレギュレートされた遺伝子をより直接P210 BCR/ABL1発現とさらに関連付けるために、本発明者らは、臍帯血CD34+細胞中のP210 BCR/ABL1発現の結果としてアップレギュレートされる遺伝子のリストを、並行して作成した。この分析は、同一のGOカテゴリー遺伝子リストに一致する23個のアップレギュレートされる遺伝子をもたらした(データを示さず)。興味深いことに、たった1つの遺伝子、インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)が、P210 BCR/ABL1発現の結果として臍帯血CD34+細胞及びCD34+ CML細胞の両方において強力なアップレギュレーションを示した。IL1RAPが両方の遺伝子リスト上に存在したという知見は、初期CML細胞上でのそのアップレギュレーションが、P210 BCR/ABL1発現と密接に結び付けられることを示唆しており、IL1RAPが初期CML細胞上の新規の白血病関連抗原であることを示している。
【0112】
IL1RAPはCML患者由来のCD34+CD38-細胞上においてアップレギュレートされ、異所性P210 BCR/ABL1発現の結果として誘導される
IL1RAPは、Toll様受容体スーパーファミリーのメンバーであり、インターロイキン1受容体1型(IL-1R1)に対する周知の補助受容体である16。従って、IL1RAPは、炎症促進性サイトカインIL-1の効果の媒介において重要であり、しかし、それはまた、その受容体ST2に結合しこれが続いてIL1RAPと二量体化することによってT細胞及びマスト細胞を活性化するサイトカインであるIL-33のシグナルの媒介に関与する17。IL-1R1活性化は、インターフェロン感受性CML細胞のコロニー成長を刺激することが以前示され18、しかし、IL1RAPは、本発明者らの知る限りでは、以前は直接CMLと結び付けられていなかった。
【0113】
P210 BCR/ABL1は疾患の特徴としてCML細胞中に存在するので、理想的には、CML中の信頼できる細胞表面バイオマーカーは、P210 BCR/ABL1の存在及び発現と直接結び付けられるべきである。マイクロアレイデータに一致して、IL1RAP発現が、レトロウイルスP210 BCR/ABL1発現に続いてCB CD34+細胞上の細胞表面上において実際にアップレギュレートされた(図1)。これは、P210 BCR/ABL1が直接的に又は間接的効果によってIL1RAP発現を調節することを示唆しており、CMLバイオマーカーとしてのその立候補を強める。
【0114】
次に、本発明者らは、大部分及びより成熟したCD34+細胞を示す、CML CD34+CD38+細胞上での細胞表面IL1RAP発現を調べた。この細胞集団において、IL1RAPのアップレギュレーションが、対応の正常なbm細胞における発現と比較して観察された(図2A、B)。正常なCD34+CD38+細胞は、CML細胞上での発現と部分的に重複したより低いIL1RAP発現を示した。次いで、本発明者らは、HSCを含有する、正常細胞のCD34+CD38-細胞区画へ移った。以前の研究に一致して、この集団は、低い/存在しないIL1RAP発現を示した(図2C)19。印象的なことに、Ph+ CML幹細胞及び正常なHSCの両方を含む、CML患者由来のCD34+CD38-細胞が2つの集団に分割された;一方は低い/存在しないIL1RAP発現を有し、他方はより高いIL1RAP発現を有する(図2C)。5人のCML患者の末梢血(PB)中において、IL1RAP陽性細胞フラクションは、CD34+CD38-細胞の75 %〜95 %を構成した(n = 5)。これらの知見に基づいて、本発明者らは、IL1RAP発現がCML中のCD34+CD38-細胞区画内で正常細胞及び白血病細胞を識別し得ると推測した。全てのCML幹細胞及び正常なHSCはもっぱらCD34+CD38-細胞内で見られるので、正常細胞及び白血病細胞のこのような分離は、正常なHSCからのCML幹細胞の予期される分離を可能にする。
【0115】
Flow-drop-FISHはIL1RAP発現がCML CD34+CD38-細胞内の正常細胞及び白血病細胞を分離することを示す
IL1RAP発現がCML CD34+CD38-細胞区画内で正常(Ph-)及び白血病(Ph+)細胞を識別するかどうかを試験するために、本発明者らは、少数の選別された細胞上で蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を行うための新しいプロトコルを確立した(材料及び方法を参照のこと)。このプロトコルにおける第1段階は、スライド上の液滴中へ細胞を選別し続いて単一細胞免疫染色を行うための方法に部分的に基づく20。以後Flow-drop-FISHと呼ばれる、スライド上の液滴中へ直接細胞選別し続いてFISHを行うことを含むこの新しいプロトコルを適用することによって、本発明者らは、僅か30個の細胞を1つの液滴中へ選別し、ここから15個の核がFISHによって首尾よく記録された(CML-5、図3)。興味深いことに、本発明者らは、Flow-drop-FISHによって、CML CD34+CD38-IL1RAP+細胞はBCR/ABL1+であったのに対して、CML CD34+CD38-IL1RAP-細胞はほぼもっぱらPh-であったことを見出した(n = 5、図3)。これらのデータは、IL1RAP発現がCML CD34+CD38-細胞区画内で白血病細胞及び正常細胞を分離することを示しており、これは、CML幹細胞及び正常なHSCが予期して分離され得ることを示す。
【0116】
CML幹細胞はCD34+CD38-IL1RAP+であるのに対し、正常なHSCはCD34+CD38-IL1RAP-/lowである
慢性期CML幹細胞についての研究は、稀なCML患者への接近に今まで依存し(relayed on)、ここでは、幹細胞区画は、長期アッセイに続いて白血病細胞によって占められていた14。CML幹細胞は免疫不全マウスにおいて不十分な移植を一般的に示すので、長期培養開始細胞(LTC-IC)アッセイは、候補CML幹細胞の検出のための代用アッセイとして広く使用される。CML CD34+CD38-IL1RAP+及びCD34+CD38-IL1RAP-/lowが、それぞれ、候補CML幹細胞及び正常なHSCを一意的に含有するかどうかを試験するために、本発明者らは、LTC-ICアッセイにおいて2つの細胞集団を試験した。正常なコントロール由来の骨髄CD34+細胞について、長期培養コロニー形成細胞(LTC-CFC)が、CD34+CD38-IL1RAP+細胞と比較してCD34+CD38-IL1RAP-細胞の中で、>100倍より高い頻度で見られ(図4A、n= 2)、これは、正常なCD34+CD38-IL1RAP-は、階層的にCD34+CD38-IL1RAP+細胞の上にあることを示している。CMLにおいて、本発明者らは、CD34+CD38-IL1RAP+細胞と比較してCD34+CD38-IL1RAP-細胞内にてLTC-CFCの平均で3.6倍より高い頻度を観察し(n= 5、図4A)、これは、CML CD34+CD38-IL1RAP-細胞が初期細胞についてより濃縮されることを示唆している。重要なことには、より高い数のLTC-ICが、CML患者サンプル及び正常なコントロールの両方由来のCD34+CD38-IL1RAP+細胞内でよりもCD34+CD38-IL1RAP+細胞内で見られたが、CML LTC-コロニーについてのFISHは、2つのグループ中のPh-細胞とPh+細胞とのほぼ完全な識別を明らかにした(図4B)。CD34+CD38-IL1RAP-細胞由来のCML LTC-コロニーはほぼもっぱらPh-であったのに対して、CD34+CD38-IL1RAP+はほぼもっぱらPh+であった。これらのデータは、IL1RAPが、正常なHSCからCML幹細胞を分離するために使用され得る新規の細胞表面バイオマーカーであることを示唆している。
【0117】
ここで、本発明者らは、網羅的遺伝子発現分析によって、新規の細胞表面抗原、IL1RAPを同定し、これは、多数のアッセイにおけるチャレンジ後、Ph+ CML幹細胞についての新規の細胞表面バイオマーカーであるための基準を満たした。この発見に基づいて、CMLにおける未来に向けた療法を、IL1RAPへ向けられた治療抗体を使用することによって正常なHSCを維持しながらCML幹細胞を標的化するように設計することができた。さらに、抗CD34抗体、抗CD38抗体及び抗IL1RAP抗体を含有する抗体カクテルが、診断目的のため及び様々な治療下でのCML患者の追跡研究のために使用され得る。重要なことには、正常細胞及びCML幹細胞の予期される分離は、これら2つの細胞集団の将来の機構研究を可能にする。さらに、本発明者らはまた、ここで、Flow-drop-FISHが、ますますより小さくより純粋な細胞集団へ精製された細胞型である、白血病幹細胞などの、少数の選別された細胞中の遺伝子異常をキャラクタライズすることにおける有用な方法として役立ち得ることを示す21。将来の研究について、この方法は、例えば、様々な小さな白血病幹細胞及び前駆細胞集団中の遺伝子異常の検出、様々な異常が獲得された順序に対する新しい洞察を提供する可能性が高い知見、白血病誘発を理解するための重要な知識を可能にする。さらに、Flow-drop-FISHは、治療の間の白血病幹細胞に対する治療効果をモニタリングするために使用され得る。重要なことには、本発明者らは、ここで、Flow-drop-FISHを使用することによって、幹細胞及び/又は前駆細胞上でのIL1RAPのアップレギュレーションに関連するCML及び他の新生物性血液障害についての新しい治療の機会を広げる知見である、IL1RAPがCML幹細胞と正常なHSCとを識別する最初の細胞表面バイオマーカーであることを確認した。
【0118】
参考文献
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【0119】
実施例2
白血病幹細胞及び前駆細胞上のIL1RAPの抗体ターゲッティングは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を引き起こす
概要
根治の達成を目的とした白血病についての治療戦略は、白血病幹細胞の完全な根絶を必要とする。白血病細胞の小集団を示す、白血病幹細胞は、細胞表面マーカーを使用して正常な造血幹細胞(HSC)から今まで識別不能であった。白血病幹細胞を標的化するという新しい概念は、未来の治療抗体が向けられ得る、白血病幹細胞についての細胞表面バイオマーカーを同定することであった(実施例1を参照のこと)。
【0120】
この研究において、本発明者らは、抗IL1RAP抗体を作製し、慢性骨髄性白血病(CML)幹細胞、急性骨髄性白血病(AML)幹細胞、及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)幹細胞を標的化する抗IL1RAP抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導するために使用され得るが、正常なHSCに対しては細胞傷害性効果が観察されなかったという概念の実証を提供した。さらに、本発明者らは、IL1RAP陽性細胞株KU812(CML)、MONO-MAC-6(急性骨髄性白血病;AML)及びREH(急性リンパ芽球性細胞株;ALL)における用量依存性IL1RAPターゲッティングADCCを実証した。本発明者らはまた、MDS及びMPD幹細胞がIL1RAP発現を増加させたことを実証し、これは、将来の治療抗IL1RAPターゲッティング抗体がこれらの障害においても有効であることを示す。
【0121】
従って、この研究は、白血病幹細胞上のIL1RAPの抗体ターゲッティングによってCML、AML、ALL、MDS、及びMPDの新規の治療の機会を広げる。
【0122】
材料及び方法
KMT-1;ウサギ抗ヒトIL1RAPポリクローナル抗体の作製
ウサギをIL1RAPの細胞外ドメインで免疫化した。ウサギ由来の血清を、追加の工程を加えたことを除いて、標準手順に従って精製し、ここで、半減期増加のために、免疫化タンパク質上に存在する免疫グロブリンドメインへ結合する抗体を、免疫グロブリンがロードされたカラムへの結合によって捨てた。精製された抗体が、IL1RAPの細胞外ドメインに結合すること、及びヒト免疫グロブリンドメインへ結合する抗体を欠いていることをELISAにおいて確認した。フローサイトメトリーにおいて使用した場合、PE結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を二次試薬として使用した。
【0123】
ADCCアッセイ
ADCCアッセイは以前記載されたプロトコルに基づいた1。簡単に説明すると、標的細胞を製造業者の使用説明書に従ってPKH26(Sigma-Aldrich, St Louis, Missouri)で標識し、細胞を96-ウェルプレートのウェル中へ直接置いたか、又はCD34+CD38-細胞の選別後にウェル中へ接種した。KU812及びKG-1細胞株並びに初代CD34+細胞を10,000細胞/ウェルで接種したのに対して、初代CD34+CD38-細胞を2,000〜3,000細胞/ウェルで接種した。続いて、抗体を異なる濃度でウェルへ添加し、20分間インキュベートし、その後、NK-エフェクター細胞100,000個を各ウェルへ添加した。製造業者の使用説明書に従ってNK細胞陰性細胞単離キット(Miltenyi Biotech, Bergisch Gladbach, Germany)を使用して、インフォームドコンセント後に、NK細胞を健康なボランティアから得た。非免疫化ウサギから精製されたウサギIgG抗体を、実験においてコントロール抗体として使用した(R&D Systems Abingdon, UK)。細胞死の検出についての7-AAD陽性細胞を、FACS CANTOフローサイトメーター(BD)を使用して測定した。抗体誘導細胞死の平均値及び標準偏差を次の等式に従って計算した:少なくとも3つの独立した実験からの(規定の抗体濃度でのパーセンテージ7-AAD+細胞 − 抗体無しでのパーセンテージ7-AAD+細胞)/(0.01 x抗体無しでのパーセンテージ7-AAD-細胞)(図9を除く;1実験のみ)。
【0124】
11人のAML患者及び2人のPh+ ALL患者由来のサンプルをLund University Hospitalから受け取り、CML細胞の分析についてのものと同一の設定を使用して、IL1RAPの発現をCD34+CD38+及びCD34+CD38-細胞集団において分析した。AML細胞株MONO-MAC-6及びALL細胞株REHもまた、KG-1及びKU812細胞株についてのものと同一のセットアップを使用してADCCアッセイにおいて試験した。
【0125】
結果
CML幹細胞及び前駆細胞上の並びにまたCML細胞株上のIL1RAPの抗体ターゲッティングはNK細胞をADCCへ向ける
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、CD20に対して向けられたリタキシマブなどのいくつかの治療抗体がそれによってそれらの治療効果を少なくとも部分的に発揮すると考えられている、先天免疫系の保存された機構である2。標的としてIL1RAPを使用してADCCが達成され得るかどうかを試験するために、本発明者らは、以後KMT-1と呼ぶウサギ抗ヒトIL1RAPポリクローナル抗体を作製し、何故ならば、ヤギ抗体とは対照的にウサギ抗体のFcドメインは、ヒト免疫系の細胞によって認識されるためである。
【0126】
予想通りに、低レベルのADCCが、高KMT-1濃度の場合でさえ、IL1RAP陰性/低の白血病細胞株KG-1において観察された(図5A、B)。対照的に、IL1RAPを発現するCML細胞株KU812において、ナチュラルキラー(NK)細胞媒介性ADCCが、KMT-1の存在下で観察され(図5A、B)、これは、KMT-1が、細胞傷害性免疫細胞をIL1RAP+標的細胞へ動員することによってADCCを誘導する可能性を有することを示している。
【0127】
CML患者及び正常なコントロール由来の初代細胞において、KMT-1は、以前に使用したヤギ抗ヒトIL1RAPポリクローナル抗体と比較して、僅かにより弱いが、同様の染色パターンを示した(実施例1、図6A)。CML-1、CML-3及びCML-4(これ以上の細胞はCML-2及びCML-5から残らなかった)由来の未熟細胞を、健康なコントロールサンプル由来の細胞と並行してADCCアッセイにおいて試験した。CML CD34+細胞において、KMT-1の結合は、特により低い抗体濃度で、IL1RAPの発現レベルに相関して、正常なCD34+コントロール細胞においてよりも高いレベルでのADCCをもたらした(図6B)。より印象的なことに、幹細胞濃縮CD34+CD38-細胞の中で、KMT-1は正常なCD34+CD38-細胞のADCCを誘導しなかったのに対して、明確な用量依存性ADCC効果が、CML CD34+CD38-細胞において観察され(図6B)、これは再び、これらの細胞型上におけるIL1RAPの発現パターンとの強い相関を示している。
【0128】
AML及びALL細胞上のIL1RAPを標的化する抗体はNK細胞をADCCへ向ける
IL1RAP発現が、AML CD34+CD38-細胞において、11個の試験したサンプルのうち9個において観察された(図7A)。CD34+CD38+細胞集団において、同様のIL1RAP発現パターンが観察された(図7A)。さらに、IL1RAPが、AML細胞株MONO-MAC-6及びALL細胞株REHにおいて発現された(図7B)。IL1RAP発現がまた、Ph+ ALL CD34+CD38-細胞において、2個の試験したサンプルのうち2個において観察された(図7C)。標的としてIL1RAPを使用して、MONOMAC-6及びREH細胞株もまたADCCアッセイにおいて試験した。これらの細胞株の両方において、用量依存性IL1RAPターゲッティングADCC効果が観察され(図8)、これは、治療用抗IL1RAPターゲッティング抗体がCMLだけでなくより広い適用を有することを示している。
【0129】
本発明者らはまた、初代AML及びALL CD34+CD38-細胞についてADCC実験を行い、これらの障害においても、増加した細胞死がKMT-1を使用して達成され得るという原理の証明を実証した(図9)。
【0130】
さらに、AMLへ進行中の1人のMDS患者及び2人のMPD患者(それらのうちの1つはJAK2突然変異+)由来のCD34+CD38-細胞を、IL1RAPターゲッティング抗体で染色した。増加したIL1RAP発現が、正常な骨髄CD34+CD38-細胞と比較して観察された(図10、図2C)。
【0131】
議論
本研究において、本発明者らは、候補CML幹細胞と正常なHSCとを識別する最初の細胞表面バイオマーカーとしてIL1RAPを同定し、CML幹細胞の抗体依存性細胞殺滅を誘導するためにこの知識を使用した。さらに、本発明者らは、AML幹細胞、ALL幹細胞、MPD幹細胞及びMDS幹細胞上でアップレギュレートされるとしてIL1RAPを同定し、AML幹細胞及びALL幹細胞の両方が、IL1RAPターゲッティング抗体を使用して殺滅され得るのに対して、正常な幹細胞は影響されなかったことを示した。CML、ALL及びAML幹細胞がIL1RAPターゲッティング抗体によって殺滅され得るという知見に基づいて、MPD及びMDS幹細胞もまたADCCアッセイにおいて殺滅されることが予想される。これらの知見は、CML幹細胞の下流の細胞を優先的に標的化する現在使用されるチロシンキナーゼ阻害剤3,4とは異なる概念である、白血病幹細胞の直接的標的化による白血病患者の治療についての新しい概念を広げる。
【0132】
CML幹細胞がグリベックなどの薬物に耐性である理由は部分的に不明であるが、寄与し得る因子は、静止状態及び比較的高いレベルのBCR/ABL1発現、並びにまたこれらの細胞中の特定の膜輸送体タンパク質の組み合わせ発現などの特徴である3,5,6。CML幹細胞のこれらの特徴を考えると、CML幹細胞を最終的に根絶する新規の治療アプローチを見つけ出すことが、非常に望ましい。CML幹細胞を直接標的化する抗体に基づく療法は、このような戦略において役立ち、何故ならば、抗体作用様式は、CML幹細胞をキナーゼ阻害剤治療に対して非応答性にする公知の耐性機構と無関係であるためである。このような開発についての主な制限は、CML Ph+幹細胞と正常で健康な(Ph-)幹細胞とを識別する細胞表面受容体の完全な欠如であった。本発明者らは、ここで、網羅的遺伝子発現分析からこのような標的としてIL1RAPを同定し、重要なことに、その発現をBCR/ABL1発現へ結び付けた(上記実施例1を参照のこと)。
【0133】
重要なことには、IL1RAPを標的化する抗体を作製することによって、本発明者らは、ここで、初めて、正常なHSCを維持しながら候補CML幹細胞が標的化され得るという概念の実証を提供した。重要なことには、ADCCにおける抗体作用様式は、標的細胞殺滅へ免疫学的細胞を向けることであるので、治療の機構は、現在の治療を使用してCMLにおいてキナーゼ阻害剤耐性を引き起こす公知の機構とは無関係である。従って、CML幹細胞の抗体ターゲッティングは、単独で又は現在のレジメンと組み合わせて、CML幹細胞を根絶する能力を有し、最終的にCML患者について根治をもたらす。
【0134】
興味深いことに、本発明者らはまた、IL1RAPターゲッティング抗体が、AML幹細胞;予後不良を有する成人の中での急性白血病の最も一般的なタイプ、及びまたALL幹細胞;小児白血病の最も一般的なタイプ;のADCCを引き起こし得ることを観察した。まとめると、CML、AML、ALL、MDS、及びMPDにおいてCD34+CD38-免疫表現型を有する白血病幹細胞上でのIL1RAP発現の発見、及びIL1RAP依存性様式での細胞殺滅を実証するADCC実験は、これらの障害が抗IL1RAP治療抗体で治療され得ることを示した。
【0135】
本明細書に示されるADCC実験において、抗ヒトIL1RAPポリクローナル抗体を使用した(これは、本質的に、いくつかの異なるモノクローナル抗体の混合物である)。しかし、ADCC可能性を有するIL1RAPを標的化する個々のモノクローナル抗体も同定され得ることが、当業者によって認識される。
【0136】
参考文献
1. Wilkinson RW, Lee-MacAry AE, Davies D, Snary D, Ross EL. Antibodydependent cell-mediated cytotoxicity: a flow cytometry-based assay using fluorophores. J Immunol Methods. 2001;258:183-191.
2. Morris JC, Waldmann TA. Antibody-based therapy of leukaemia. Expert Rev Mol Med. 2009;11:e29.
3. Copland M, Hamilton A, Elrick LJ, et al. Dasatinib (BMS-354825) targets an earlier progenitor population than imatinib in primary CML but does not eliminate
the quiescent fraction. Blood. 2006;107:4532-4539.
4. Jorgensen HG, Allan EK, Jordanides NE, Mountford JC, Holyoake TL. Nilotinib exerts equipotent antiproliferative effects to imatinib and does not induce apoptosis in CD34+ CML cells. Blood. 2007;109:4016-4019.
5. Graham SM, Jorgensen HG, Allan E, et al. Primitive, quiescent, Philadelphiapositive stem cells from patients with chronic myeloid leukemia are insensitive to STI571 in vitro. Blood. 2002;99:319-325.
6. Jiang X, Zhao Y, Smith C, et al. Chronic myeloid leukemia stem cells possess multiple unique features of resistance to BCR-ABL targeted therapies. Leukemia. 2007;21:926-935.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の成長及び/又は増殖の阻害及び/又は細胞死の誘導に使用するためのインターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、細胞がIL1RAPを発現する、薬剤。
【請求項2】
新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の検出に使用するためのインターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)に対して特異性を有する結合部分を含む又はからなる薬剤であって、細胞がIL1RAPを発現する、薬剤。
【請求項3】
新生物性血液障害が白血病である、請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項5】
病的幹細胞及び/又は前駆細胞がBCR/ABL1融合遺伝子を含む、請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項7】
病的幹細胞及び/又は前駆細胞がPh染色体を含む、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項9】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連しない、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
新生物性血液障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項11】
新生物性血液障害がCMLである、請求項10に記載の薬剤。
【請求項12】
新生物性血液障害がMPDである、請求項10に記載の薬剤。
【請求項13】
新生物性血液障害がMDSである、請求項10に記載の薬剤。
【請求項14】
新生物性血液障害がALLである、請求項10に記載の薬剤。
【請求項15】
新生物性血液障害がAMLである、請求項10に記載の薬剤。
【請求項16】
結合部分がヒトIL1RAPに対する特異性を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項17】
IL1RAPが細胞の表面上に局在する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項18】
薬剤が、IL1RAPへの1つ又はそれ以上の補助受容体の結合をブロック可能である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項19】
1つ又はそれ以上の補助受容体が、IL1R1、ST2、C−KIT及びIL1RL2からなる群より選択される、請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
薬剤が、病的幹細胞及び/又は前駆細胞を殺滅可能である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項21】
薬剤が、幹細胞及び/又は前駆細胞のアポトーシスを誘導可能である、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
細胞の殺滅が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によって誘導される、請求項20又は21に記載の薬剤。
【請求項23】
薬剤がポリペプチドを含む又はからなる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項24】
薬剤が、IL1RAPに対する結合特異性を有する抗体又はその抗原結合性フラグメント、又はIL1RAPに対する結合特異性を保持する、該抗体又は抗原結合性フラグメントの変異体、融合体又は誘導体、又はその該変異体又は誘導体の融合体を含む又はからなる、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
薬剤が、抗体又はその抗原結合性フラグメントを含む又はからなる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項26】
薬剤が、インタクトな抗体を含む又はからなる、請求項25に記載の薬剤。
【請求項27】
薬剤が、抗体の抗原結合性フラグメントを含む又はからなる、請求項25に記載の薬剤。
【請求項28】
抗原結合性フラグメントが、Fvフラグメント(例えば、一本鎖Fv、ジスルフィド結合したFv及びドメイン抗体)及びFab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab'フラグメント及びF(ab)2フラグメント)からなる群より選択される、請求項27に記載の薬剤。
【請求項29】
抗体が組換え抗体である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項30】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項24〜29のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項31】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項24〜29のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項32】
抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒト型であるか又はヒト化されている、請求項1〜31のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項33】
薬剤が非免疫グロブリン結合部分を含む又はからなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項34】
薬剤がアプタマーを含む又はからなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項35】
薬剤がペプチドアプタマーを含む又はからなる、請求項34に記載の薬剤。
【請求項36】
薬剤が核酸アプタマーを含む又はからなる、請求項34に記載の薬剤。
【請求項37】
薬剤が小さな化学物質を含む又はからなる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項38】
薬剤のインビボ半減期を増大させるための部分をさらに含む、請求項1〜37のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項39】
インビボ半減期を増大させるための部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸及びデキストランからなる群より選択される、請求項38に記載の薬剤。
【請求項40】
薬剤がPEG化されている、請求項38又は39に記載の薬剤。
【請求項41】
細胞傷害性部分をさらに含む、請求項1〜40のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項42】
細胞傷害性部分が放射性同位体を含む又はからなる、請求項41に記載の薬剤。
【請求項43】
放射性同位体が、アスタチン−211、ビスマス−212、ビスマス−213、ヨウ素−131、イットリウム−90、ルテチウム−177、サマリウム−153及びパラジウム−109からなる群より選択される、請求項42に記載の薬剤。
【請求項44】
細胞傷害性部分が毒素(例えば、サポリン又はカリケアマイシン)を含む又はからなる、請求項41に記載の薬剤。
【請求項45】
細胞傷害性部分が化学療法剤(例えば、代謝拮抗物質)を含む又はからなる、請求項41に記載の薬剤。
【請求項46】
検出可能部分をさらに含む、請求項1〜45のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項47】
検出可能部分が放射性同位体を含む又はからなる、請求項46に記載の薬剤。
【請求項48】
放射性同位体が、テクネチウム−99m(technitium−99m);インジウム−111;ガリウム−67;ガリウム−68;ヒ素−72;ジルコニウム−89;ヨウ素−12;タリウム−201からなる群より選択される、請求項47に記載の薬剤。
【請求項49】
検出可能部分が常磁性同位体を含む又はからなる、請求項46に記載の薬剤。
【請求項50】
常磁性同位体が、ガドリニウム−157;マンガン−55、ジスプロシウム−162、クロム−52;鉄−56からなる群より選択される、請求項49に記載の薬剤。
【請求項51】
有効量の請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤、及び薬学的に許容される薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項52】
非経口送達に適している、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項53】
静脈内送達に適している、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項54】
請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤又は請求項51〜53のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含むキット。
【請求項55】
新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の細胞死を誘導するための及び/又は成長及び/又は増殖を阻害するための医薬の製造における請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤の使用であって、細胞がIL1RAPを発現する、使用。
【請求項56】
新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための診断用薬の製造における請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤の使用であって、細胞がIL1RAPを発現する、使用。
【請求項57】
新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤の使用であって、細胞がIL1RAPを発現する、使用。
【請求項58】
新生物性血液障害が白血病である、請求項55〜57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連する、請求項55〜58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
病的幹細胞及び/又は前駆細胞がBCR/ABL1融合遺伝子を含む、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連する、請求項55〜60のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
病的幹細胞及び/又は前駆細胞がPh染色体を含む、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連しない、請求項55〜58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項64】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連しない、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
新生物性血液障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項55〜64のいずれか1項に記載の使用。
【請求項66】
新生物性血液障害がCMLである、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
新生物性血液障害がMPDである、請求項65に記載の使用。
【請求項68】
新生物性血液障害がMDSである、請求項65に記載の使用。
【請求項69】
新生物性血液障害がALLである、請求項65に記載の使用。
【請求項70】
新生物性血液障害がAMLである、請求項65に記載の使用。
【請求項71】
個体における新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞の細胞死を誘導するため及び/又は成長及び/又は増殖を阻害するための方法であって、有効量の請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤、又は請求項51〜53に記載の薬学的組成物を個体に投与する工程を含み、細胞がIL1RAPを発現する、上記方法。
【請求項72】
新生物性血液障害が白血病である、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
個体における新生物性血液障害に関連する病的幹細胞及び/又は前駆細胞を検出するための方法であって、有効量の請求項1〜50のいずれか1項に記載の薬剤、又は請求項51〜53に記載の薬学的組成物を個体に投与する工程を含み、細胞がIL1RAPを発現する、上記方法。
【請求項74】
新生物性血液障害を診断又は予後を判定するためのインビトロ方法であって:
(a) 試験しようとする個体からの造血細胞の骨髄又は末梢血サンプルを備える工程;
(b) 造血細胞からCD34+,CD38-細胞の分集団を単離する工程;及び
(c) CD34+,CD38-細胞内に含有される幹細胞が細胞表面マーカーIL1RAPを発現するかどうかを測定する工程
を含み、
ここで、細胞表面マーカープロフィールCD34+、CD38-及びIL1RAP+を示す幹細胞は、白血病を有するか又は発症する個体を示す、
上記方法。
【請求項75】
新生物性血液障害が白血病である、請求項71〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連する、請求項71〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
病的幹細胞がBCR/ABL1融合遺伝子を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連する、請求項71〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
病的幹細胞がPh染色体を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
新生物性血液障害が、BCR/ABL1融合遺伝子を含む細胞に関連しない、請求項71〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
新生物性血液障害が、Ph染色体を含む細胞に関連しない、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
新生物性血液障害が、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患(MPD)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項71〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
新生物性血液障害がCMLである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
新生物性血液障害がMPDである、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
新生物性血液障害がMDSである、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
新生物性血液障害がALLである、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
新生物性血液障害がAMLである、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
本開示に関連して本明細書に実質的に記載されるような医療に使用するための薬剤。
【請求項89】
本開示に関連して本明細書に実質的に記載されるような薬学的組成物。
【請求項90】
本開示に関連して本明細書に実質的に記載されるような薬剤の使用。
【請求項91】
本開示に関連して本明細書に実質的に記載されるような治療又は診断方法。
【請求項92】
本開示に関連して本明細書に実質的に記載されるようなキット。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−502403(P2013−502403A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525204(P2012−525204)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001612
【国際公開番号】WO2011/021014
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(512042318)カンタージア アクチエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】