説明

新規な重合体及びその用途

【課題】 ポリオレフィンセグメントを保有し、しかも制御された構造の重合体を提供する。更に、このような制御された構造の重合体の用途を提供すること。
【解決手段】 一般式(I)及び(VI)の重合体。
一般式(I)


一般式(VI)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数平均分子量が400〜5000のポリオレフィンを側鎖に有する(ポリ)アルキレンエーテル構造を有する新規な重合体とそれを用いた樹脂組成物および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体あるいはα−オレフィン重合体は、コスト的、機械的特性に優れ、様々な樹脂製品の原料として最も幅広く使用されている。しかしながら、分子構造が非極性であり、他物質との親和性に乏しいため、各種の官能基を導入することが試みられている。
【0003】
その中で、導入した官能基によって重合可能なポリマーまたはオリゴマーをマクロモノマーと総称し、他のモノマーと共重合することにより、高機能を有する制御された櫛形ポリマー等の重合体を得ることができることが知られている。ポリオレフィン系マクロモノマーを成分とする重合体としては、多くの例が知られているが重合性の不飽和基を有するポリオレフィン系マクロマーは極性基の量が少なく、ポリオレフィンの改質と言う面では利用し難い。他の重合性の官能基を有するものとしては、末端に水酸基を有するもの(特許文献1)、ポリオレフィンの鎖の中にエポキシ基を有するもの(特許文献2)が知られているが、前者はさらにテトラカルボン酸と反応することで重合可能とするため、このマクロマ−を用いて得られる重合体は構造が限定されたものである。後者は、1つのポリオレフィン鎖に統計的に分布を有する複数のアルキレレンオキサイドが存在するので、アルキレンオキサイドの反応に際して架橋が起こるなどの問題が発生するため、マクロマーとして有効に活用して制御されたポリオレフィン骨格と極性基からなる骨格を有する構造の重合体を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平9−3173号公報
【特許文献2】特開平4−55403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ポリオレフィンセグメントを保有ししかも制御された構造の重合体を提供することにある。更に、このような制御された構造の重合体の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、一般式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【0008】
【化2】

【0009】
i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有する重合体である。

本発明はまた、前記の重合体の両末端に水酸基を有する重合体(II)である。

本発明はまた、一般式(I)
【0010】
【化3】

【0011】
i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【0012】
【化4】

【0013】
i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と、
一般式(III)
【0014】
【化5】

【0015】
(III)
(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位とを繰り返し単位として有する重合体である。

本発明はまた、一般式(I)
【0016】
【化6】

【0017】
i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【0018】
【化7】

【0019】
i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と、
一般式(IV)
【0020】
【化8】

【0021】
(IV)
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位とを繰返し単位として有する重合体である。

本発明はまた、一般式(I)
【0022】
【化9】

【0023】
i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【0024】
【化10】

【0025】
i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と
一般式(V)
【0026】
【化11】

【0027】
(V)
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位とを繰返し単位として有する重合体。

本発明はさらに、上記重合体を含有してなる組成物、印刷インキ用添加剤、印刷インキ用溶媒分散系、印刷インキ、樹脂組成物、接着剤、塗装用組成物、成形物品等の用途である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によりポリオレフィンセグメントを保有する様々な新規重合体を提供することができる。該重合体の基となるポリオレフィン系マクロモノマーは高価なモノマー原料を使用しないため経済性の面においても有利である。
【0029】
また、本発明の新規な重合体により、印刷インキ用添加剤、印刷インキ用溶媒分散系、印刷インキ、樹脂組成物、接着剤、塗装用組成物、成形物品に適した材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
本発明の重合体は、一般式(I)
【0032】
【化12】

【0033】
i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【0034】
【化13】

【0035】
i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有する重合体である。

炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられ、好ましくは炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンであり、特に好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
【0036】
ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン; 2−メチル−1,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなどが挙げられる。
【0037】
これらのなかでは、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,4−ヘキサジエンまたは2−メチル−1,6−オクタジエンが好ましい。
【0038】
ポリオレフィンは、ジエンから導かれる構成単位を0.01〜10.0モル%、好ましくは0.1〜5.0モル%、より好ましくは0.5〜3.0%の割合で含有することが望ましい。
【0039】
一般式(I)において、Aで表される基のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定した数平均分子量(Mn)は、400〜5000であり、好ましくは500〜4500であり、更に好ましくは600〜4000である。ここでMnとはポリスチレン換算値である。
【0040】
一般式(I)において、Aで表される基のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、1.0〜数十のものがあるが、物性の均一性などの点で4.0以下のもの、特に3.5以下のものが好ましいことがある。
【0041】
Aで表される基の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
【0042】
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計として、後述の一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し末端の分子量相当を除することで測定できる。
【0043】
Rとしては、Aを構成するオレフィンの二重結合に結合した置換基である水素または炭素数1〜18の炭化水素残基であり、水素、メチル基、エチル基、プロピル基などである。
【0044】
一般式(VII)において、A2とA3で表される基は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体である。
【0045】
一般式(VII)において、A2とA3で表される基のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定した数平均分子量(Mn)は、400〜5000であり、好ましくは500〜4500であり、更に好ましくは600〜4000である。ここでMnとはポリスチレン換算値である。
【0046】
一般式(VII)において、A2とA3で表される基のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、1.0〜数十のものがあるが、物性の均一性などの点で4.0以下のもの、特に3.5以下のものが好ましいことがある。
【0047】
A2とA3で表される基の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、前述の方法で測定できる。
【0048】
Rとしては、A2およびA3を構成するオレフィンの二重結合に結合した置換基である水素または炭素数1〜18の炭化水素残基であり、水素、メチル基、エチル基、プロピル基などである。
【0049】
本発明の重合体中、一般式(I)で表される構造単位の含有量は、一般式(I)で表わされる構造単位を含有する限り制限はなく重合体の用途により好ましい範囲は異なる。また重合体が一般式(II)で表される両末端に水酸基を有する重合体である場合も同様である。
【0050】
本発明の重合体は、水酸基あるいはエポキシ基と反応する化合物と反応することで製造できる一般式(I)の構造単位を有するものであればどのようなものでも良い。例えば、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合を有する重合体。さらにはシロキサンと反応したブロック共重合体などが具体的に例示される。
【0051】
このような重合体は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンをエポキシ化したエポキシ化合物を開環重合あるいは共重合することで得ることができる。開始剤として水またはジオール類を使用すれば両末端が水酸基である重合体とすることができる。
【0052】
重合体が、上記一般式(I)で表される構造単位と、一般式(III)
【0053】
【化14】

【0054】
(III)
(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体である場合の態様について説明する。
一般式(III)中、Rの炭化水素残基としては、特に制限はないが、メチレン基、エチレン基などのアルキレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基などのアリーレン基およびこれらの水素の一部が炭化水素残基あるいはヘテロ原子あるいはヘテロ原子で置換された炭化水素残基で置換されたものが例示でき、重合体は、対応する構造のジカルボン酸をモノマー単位として一般式(I)の構造単位を有するジオールと縮合させることなどで製造することができる。その際他の重合成分例えば、ヒドロキシカルボン酸あるいは他のジオールあるいは、異なる構造のジカルボン酸などを共重合することもできる。
【0055】
重合体の重量平均分子量としては特に制限はなく用途によってその好ましい範囲は異なるが一般的には1,000〜1000,000、成形材料として利用する場合であれば10000〜500000、印刷インキ用添加剤として利用する場合であれば1000〜20000程度とするのが一般的である。とするのが一般的である。
【0056】
本発明の重合体における別の態様は、上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(IV)
【0057】
【化15】

【0058】
(IV)
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0059】
一般式(IV)中、Rの炭化水素残基としては、前述した一般式(III)中のRの炭化水素残基と同様のものを例示することができ、重合体は、ジイソシアネートをモノマー単位として一般式(I)の構造単位を有するジオールと縮合させることなどにより製造することができる。その際他の重合成分例えば、他のジオールあるいは、異なる構造のジイソシアネートなどを共重合することもできる。
【0060】
重合体の重量平均分子量としては特に制限はなく用途によってその好ましい範囲は異なるが一般的には1,000−1,000,000、成形材料として利用する場合であれば10000〜500000、印刷インキ用添加剤として利用する場合であれば1000〜20000程度とするのが一般的である。
【0061】
本発明の重合体における別の態様は、上記一般式(I)で表される構造単位と一般式(V)
【0062】
【化16】

【0063】
(V)
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0064】
一般式(V)中、Rの炭化水素残基としては、特に制限はないが、メチレン基、エチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などのアルキレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基などのアリーレン基およびこれらの水素の一部が炭化水素残基あるいはヘテロ原子あるいはヘテロ原子で置換された炭化水素残基で置換されたものが例示でき、好ましいのは市販のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドを重合することで形成されるエチレン基、プロピレン基およびホルムアルデヒドの重合体であるメチレン基であり、後述の一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンをエポキシ化したエポキシ化合物とアルキレンオキサイドを開環重合することで製造でき、同時に共重合してランダム共重合した構造あるいは、逐次的に重合したブロック共重合体した構造のものであっても良い。
【0065】
発明の趣旨から明確なように両者を含有する限り比率はどのような比率であっても良い。
【0066】
全体の重量平均分子量としても制限はないが、一般的には1,000−1000,000、相溶化剤、などの用途とするには、1000〜100,000、印刷インキ用添加剤として利用する場合であれば1000〜20000程度重量平均分子量とするのが一般的である。
【0067】
本発明の重合体は、次の方法によって製造することができる。
【0068】
最初に、目的とする重合体中、一般式(I)で示される構造に対応するモノマーとして、一般式(VIII)
【0069】
【化17】

【0070】
(VIII)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンおよびジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表す)で示される、二重結合を有するポリオレフィンを製造する。
【0071】
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
(1)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(2)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(3)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0072】
上記(1)〜(3)の方法の中でも、特に(3)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(3)の方法では、例えば周期表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物とからなる以下のようなメタロセン系触媒の存在下で、前述したオレフィンとジエンを共重合することで上記の二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。

(重合)
本発明で用いられるポリオレフィンは、メタロセン系触媒の存在下に、エチレンを通常液相で単独重合するか、またはエチレンおよびオレフィンを共重合させることにより得られる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、オレフィンを溶媒として用いてもよい。なお、ここで用いる各モノマーは、前述した通りである。
【0073】
重合方法は、ポリオレフィンがヘキサン等の溶媒中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合、溶媒を用いないで重合する気相重合、そして140℃以上の重合温度で、ポリオレフィンが溶剤と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。
【0074】
重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合をバッチ法で実施するに際しては、前記の触媒成分は次に説明する濃度下で用いられる。
【0075】
重合系内のメタロセン化合物の濃度は、通常0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。
【0076】
有機アルミニウムオキシ化合物は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。
【0077】
イオン化イオン性化合物は、重合系内のメタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で表して、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。
【0078】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
【0079】
重合反応は、通常温度が−20〜+200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜180℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm2、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm2、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0080】
重合に際して、エチレンおよび必要に応じて用いられるオレフィンは、前記した特定組成のポリオレフィンが得られるような量割合で重合系に供給される。また重合に際しては、水素などの分子量調節剤を添加することもできる。
【0081】
このようにして重合させると、生成した重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理するとポリオレフィンが得られる。
【0082】
重合反応は、特に(メタロセン化合物の例−6)で示したメタロセン化合物を含む触媒の使用が好ましい。
【0083】
ポリオレフィン中の不飽和基含有量は、以下のようにして測定される。 13C−NMRにより、不飽和部分の炭素のピーク面積と全炭素のピーク面積を比較することで得られる。それにより、1,000炭素あたりの不飽和基数Mを得ることができる。1分子あたりの不飽和基含有量は、Mn×M/14,000により得ることができる。1,000炭素あたりの不飽和基数Mは、1.4〜105個、好ましくは2.8〜70個、より好ましくは4〜35個が望ましい。
【0084】
次に、上記ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、一般式(IX)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
【0085】
【化18】

【0086】
(IX)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表す)
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
【0087】
エポキシ基含有重合体の全不飽和基中のエポキシ含有率は1H-NMRによって決定される。例えば、エチレンおよびビニルノルボルネンからなる不飽和基含有重合体をエポキシ化して得られたエポキシ基含有重合体の場合、エポキシ基付け根の3プロトン分のピーク(D)が1プロトンずつ2.25〜2.50ppm、2.65〜2.77ppm、2.80〜3.15ppmに観測される。エポキシ変性が十分でない場合は、二重結合の3プロトン分のピーク(E)が4.80〜5.10ppmに2プロトン、5.70〜5.97ppmに1プロトン観測される。各ピーク(D)および(E)のピーク面積を各々SおよびSとすれば、エポキシ基含有率(Ep(%))は下記式にて算出される。

Ep(%)=S×100/(S+S

上記の方法で得られたエポキシ基含有重合体を開環重合し一般式(I)の構造単位を有する重合体を製造することができる。触媒、重合条件などについては、公知のアルキレンオキサイドの開環重合方法を利用することができ、例えば、大津隆行著,「改訂高分子合成の化学」,株式会社化学同人,1971年1月,p.172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられる触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl3、SbCl5、BF3、FeCl3のようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいは、Al、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。ここで、フォスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスフォニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしたものなどが利用できる。
【0088】
上記触媒存在下、開始剤として水、アミン類、ジオール類、ポリオール類等の活性水素化合物を使用して、末端エポキシ基含有重合体のみを開環重合させることにより重合体(e)のホモ重合体が得られ、末端エポキシ基含有重合体(e)と他のアルキレンオキシドを開環重合させることにより共重合体を得ることができる。
【0089】
反応溶媒としては、エポキシ基含有重合体、アルキレンオキサイドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0090】
触媒の使用量はホスファゼン触媒以外については原料のエポキシ基含有重合体(e)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。ホスファゼン触媒の使用量は、重合速度、経済性等の点から、エポキシ基含有重合体(e)の1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好まく、より好ましくは5×10−4〜1×10−1モルである。
【0091】
反応温度は通常25〜150℃、好ましくは50〜110℃とし、反応時間は使用する触媒の量、反応温度、オレフィン類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分〜50時間である。
【0092】
開始剤として水またはジオール類を用いることにより、両末端に水酸基を有する重合体(II)を得ることができる。また、予めアルキレンオキサイドを重合して得た特定の分子量のポリエーテルポリオールを開始剤として用いると所定の分子量の親水性単位を導入することが可能になり所望の物性を有する両末端に水酸基を有するブロック共重合体の製造が容易となる。
【0093】
ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングルコール、ポプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等を挙げることができ中でもポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコールが望ましい。
【0094】
上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(III)
【0095】
【化19】

【0096】
(III)
(式中、Rは2価のヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体(以下重合体(b)とする)は、下記の方法により製造することができる。
(1)上記一般式(II)で示される両末端に水酸基を有する重合体と一般式(III)に対応するジカルボン酸との反応。
(2)エポキシ基含有重合体と一般式(II)に対応するジカルボン酸との反応。
(3)一般式(III)に対応するジカルボン酸とジオール類の縮合反応により得られるポリエステルポリオールとエポキシ基含有重合体との反応。
【0097】
ここで、(1)、(2)において一般的なジオール類を共存させても良い。
【0098】
ジカルボン酸としては上述のとおりであり、より具体的にはシュウ酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など市販の種々のジカルボン酸をそのまま利用することもできる。
【0099】
ジオール類としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、ビフェノール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類を挙げることができる。また、場合によっては3官能の水酸基を有するグリセリン等も使用可能である。これ等のジオール類は、単独で或いは2種以上を混合して得られる。
【0100】
アルコールとカルボン酸からエステル結合を形成する方法については周知であり、脱水触媒の存在下水を除去する方法。カルボン酸を無水物化あるいは酸クロリド化した後、アミンなどのアルカリの存在下に反応する方法など特に制限はない。またエポキシドとカルボン酸を直接反応する方法についてもカルボン酸のアルカリ金属塩などの存在下に反応するなどの公知の方法が開示できる。
【0101】
上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(IV)
【0102】
【化20】

【0103】
(IV)
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体(以下重合体(c)とする)は、下記の方法により製造することができる。
(1)上記エポキシ基含有重合体と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
(2)上記重合体(II)と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
(3)上記重合体(b)と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
【0104】
重合体(c)の製造に使用することのできるジイソシアネートとしては、例えば、松平信孝ら編,「ポリウレタン」,槙書店,1964年,p.13−18に開示されているもののうち、炭素数3〜23のものを使用することができ、それらの中でも通常ジイソシアネートが選択される。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を使用することができるが、それぞれ単独で使用されたり、複数併用されたりする。
【0105】
さらに少量のモノイソシアネートまたはトリイソシアネート等のポリイソシアネートを併用することも可能である。
【0106】
両者の反応方法についても上記文献に開示されているように多くの方法が公知であり、錫の塩、アミンなどの触媒の存在下に加熱するなどの公知の方法が採用できる。
【0107】
上記一般式(I)で表される構造単位と一般式(V)
【0108】
【化21】

【0109】
(V)
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体(以下重合体(d)とする)は、上述のように種々の方法で製造できるが、対応するエポキシドと上記、エポキシ基含有重合体の重合方法と同様の方法で重合するのが一般的である。
【0110】

以上説明した本発明の重合体、当該重合体を含有する組成物、当該重合体および他の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物、当該重合体は、印刷インキ用添加剤、接着剤、塗装用組成物として有用であり、印刷インキ用添加剤として優れた性能も有する。

(ポリオレフィンの微粉化方法)
ポリオレフィンを印刷インキに添加する際には、ポリオレフィンを微粉体、微粉体からなる添加剤、または溶媒分散系(ディスパージョン)の形態で使用するのが一般的である。このような微粉体、微粉体からなる添加剤、または溶媒分散系に含有される微粒子の体積平均粒径は0.3μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.5μm〜5μmの範囲である。ポリオレフィンの粒子の体積平均粒径がこの範囲にあると印刷インキ表面の耐磨耗性と光沢のバランスが優れている。このようなポリオレフィンの微粉体を得る方法として、ポリオレフィンを微粉化できる方法であれば特に限定されないが、例えばジェットミル、ボールミルなどを用いて粉砕する方法が挙げられる。なお、ポリオレフィンの微粉体を製造するには、あらかじめ、ピンミル、スクリーンミル、チューブミルのような粉砕機による予備粉砕により体積平均粒径500μm以下の粒子にすることが望ましい。また、予備粉砕では溶剤を用いた晶析法やスプレー式の造粒など、粉砕以外の造粒方法も使用可能である。

(ポリオレフィンの溶媒分散系の製造方法)
本発明の、ポリオレフィンの溶媒分散系を製造する方法としては、湿式ボールミルを使用する方法が好ましい。ポリオレフィンは上記に挙げたような方法であらかじめ体積平均粒径500μm以下の粒子にしておくことが好ましい。ポリオレフィンを溶解させる溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、サイメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の鎖状炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン等の脂環式炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デナノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエステル;メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。

(印刷インキ組成物)
本発明に用いられるポリオレフィンの微粒子(微粉体)、またはその溶媒分散系が添加されてなる、非芳香族系溶剤を使用した印刷インキ組成物の例としては、ポリウレタン樹脂、またはポリウレタンポリ尿素樹脂をバインダーとし、溶媒として酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤及びメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の溶剤を1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用する印刷インキ組成物が挙げられる。なお、この印刷インキ組成物中のバインダーの樹脂固形分濃度は、印刷時の作業性、印刷効果等を考慮し適宜決定されるもので、特に制約されるものではないが、3〜50重量%に調整するのが好ましい。
【0111】
本発明のポリオレフィンからなる添加剤又はその溶媒分散系は、印刷インキ組成物の全量に対して、ポリオレフィンが好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%の割合で含有するように添加される。上記ポリオレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0112】
ポリオレフィンの含有量が上記範囲内にあると、印刷インキの耐磨耗性及び耐ブロッキング性のバランスに優れる。
【0113】
ポリオレフィンの添加方法としては、従来の印刷インキ製造工程におけるいずれの工程でも添加可能である。すなわち、顔料とポリオレフィンを共にワニスに分散、混練を行ったものをインキ化してもよく、また分散、混練工程を経たものにポリオレフィンからなる添加剤、またはその溶媒分散系を混合してインキ化してもよい。
【0114】
ここで、上記組成物、樹脂組成物、印刷インキ用添加剤、接着剤および塗装用組成物中に含まれる本発明の重合体の量は、0.5〜20質量%であるのが好ましく、特に1.0〜10質量%であるのが好ましい。
【0115】
上記樹脂組成物における他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0116】
上記組成物または樹脂組成物には、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、および高分子帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。
【0117】
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩としては炭素数1〜20のモノカルボン酸またはジカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸等)、炭素数1〜20のスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、チオシアン酸などの有機酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属と塩、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸、臭化水素酸等)、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸などの無機酸の塩が好ましく例示できる。これらの中でも好ましいのは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハライド、酢酸カリウム等の酢酸塩、及び過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩である。
【0118】
上記組成物または樹脂組成物中におけるアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。
【0119】
界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を使用することができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット若しくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0120】
上記界面活性剤の中でも、アニオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が好ましい。
【0121】
上記組成物または樹脂組成物中における界面活性剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%である。
【0122】
高分子帯電防止剤としては、例えば、公知のポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤を使用することができ、公知のポリエーテルエステルアミドとしては、例えば特開平7−10989号公報に記載のビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0123】
他の高分子帯電防止剤としては、ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックの結合単位が2から50の繰り返し構造を有するブロックポリマーを使用することができ、例えばUS6552131公報記載のブロックポリマーを挙げることができる。
【0124】
上記組成物または樹脂組成物中における高分子帯電防止剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0〜40質量%、好ましくは5〜20質量%である。
【0125】
また、上記組成物または樹脂組成物中には、相溶化剤が含まれてもよい。相溶化剤によれば、本発明の重合体と他の熱可塑性樹脂との相溶性を向上させることができる。かかる相溶化剤としては、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体、例えば特開平3−258850号公報に記載の重合体や、特開平6−345927号に記載のスルホニル基を有する変性ビニル重合体、あるいはポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体などが挙げられる。
【0126】
上記組成物または樹脂組成物中における相溶化剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。
【0127】
上記組成物または樹脂組成物には、その用途に応じて、本発明の重合体による効果を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。かかる樹脂用添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0128】
上記樹脂組成物を成形してなる成形体は、良好な塗装性及び印刷性を有する。樹脂組成物の成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)などが挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
【0129】
上記成形体を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料を使用することができる。塗装膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常10〜50μm(乾燥膜厚)である。
【0130】
また、上記成形体に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であれば、いずれであってもよく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。これらの印刷におけるインキとしては、プラスチックの印刷に通常用いられるものが使用できる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。

〔実施例1〕
(ポリエーテル樹脂の合成例1)
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン 940ml、プロピレン 20mlビニルノルボルネン(5−vinylbicyclo[2,2,1]hept−2−ene)50mlを装入し、水素を0.3MPa(ゲージ圧)となるまで導入した。次いで、系内の温度を150℃に昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.3ミリモル、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.004ミリモル、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド(シグマアルドリッチ社製)0.02ミリモルをエチレンで圧入することにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を2.9MPa(ゲージ圧)に保ち、150℃で20分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレンおよびビニルノルボルネンをパージした。得られたポリマー溶液を、100℃減圧下で一晩乾燥した。
【0132】
以上のようにして1,000炭素あたりの不飽和基含量が11.8個、ビニルノルボルネン含有量が10.3重量%(不飽和基含量(平均)=1.1個/分子)であり、密度が937kg/m3であり、融点が106℃であり、針入度が3であり、Mnが1,300であり、Mwが3,700であり、Mw/Mnが2.8である低分子量エチレン系重合体(A−1)を得た。
【0133】
500mlセパラブルフラスコに上記不飽和基含有エチレン系重合体(A−1)100g(ビニル基84.3mmol)、トルエン300g、NaWO0.85g(2.6mmol)、CH(nC17)NHSO0.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、密度が965kg/m3であり、融点が106℃であり、針入度が2であり、Mnが1,500であり、Mwが5,000であり、Mw/Mnが3.3である低分子量エチレン系重合体(A−1)を得た。末端エポキシ基含有重合体(B‐1)の白色固体96.3gを得た(収率99%、オレフィン転化率100%)。
【0134】
このエポキシ基含有重合体(B‐1)のH−NMRの測定結果および物性は以下の通りであった。
H−NMR: δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 5.94 Hz), 0.25-2.25 (m,), 2.28-2.50 (m, 1H,), 2.57-2.78 (m, 1H,) 2.80-3.15 (m, 1H)
このエポキシ基含有重合体(B−1)を用いて、以下のようにしてポリエーテルを製造した。
【0135】
温度計、攪拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、17.9g(44.8mmol)のPEG400(Mn=400)、および6.7g(35.8mmol)の30wt%KOH水溶液を一括挿入し、100℃まで昇温し、脱水を行った。脱水後、120℃まで昇温し、エポキシ基含有重合体(B‐1)(Mn=1500)を40.5g(27mmol)添加し18時間反応を行い、その後120℃で反応物を取り出し冷却した。
【0136】
冷却後、得られた固体に蒸留水100mlを加え、塩酸を滴下し中和を行った。中和後、ろ過を行い、ろ液を蒸留水で洗浄し乾燥後、39.8gの白色固体である共重合体(1)を得た。この共重合体(1)についてH−NMR測定を行ったところ、エポキシ基含有重合体Aの末端メチル基(シフト値:0.88 ppm)の積分値とPEG400のアルキレン基(シフト値:3.52 - 3.70 ppm)の積分値との比較から、エポキシ基含有重合体A:PEG400=1モル:2モルの組成を持つポリマーであることが判明した。また、原子吸光分析よりK分を1.3重量%含有していることがわかった。
【0137】
H−NMRの解析結果を以下に示す。
H−NMR:δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 6H, J = 6.6 Hz), 0.9-1.6 (m,), 3.20-3.40 (m,2H,酸素原子のα位), 3.45-3.72 (m, 酸素原子のα位、PEGのメチレン基)

〔実施例2〕
(ポリエーテル樹脂の合成例2)
温度計、攪拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、PEG600(Mn=598)6.13g(10.25mmol)、エポキシ基含有重合体(B‐1)(Mn=1500)26.4g(17.6mmol)、およびトルエン69gを一括挿入し、130℃まで昇温し、トルエンを蒸留しながら共沸脱水を行った。19gのトルエンを留去後、110℃まで降温し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を0.56g(3.9mmol)添加し7.5時間反応を行い、その後反応液を158gのメタノール中へ滴下したところ、白色固体が析出した。
【0138】
この白色固体をろ過し、ろ残をメタノールで洗浄して乾燥後、23.1gの共重合体(2)を得た。この共重合体(2)について実施例1と同様にH−NMR測定を行ったところ、エポキシ基含有重合体A:PEG600=4モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。

〔実施例3〕
(ポリエーテル樹脂の合成例3)
温度計、攪拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、17.9g(17.9mmol)のPEG1000(Mn=1000)、および6.7g(35.8mmol)の30wt%KOH水溶液を一括挿入し、100℃まで昇温し、脱水を行った。脱水後、120℃まで昇温し、エポキシ基含有重合体(B‐1)(Mn=1500)を40.5g(27mmol)添加し18時間反応を行い、その後120℃で反応物を取り出し冷却した。
【0139】
冷却後、得られた固体に蒸留水100mlを加え、塩酸を滴下し中和を行った。中和後、ろ過を行い、ろ液を蒸留水で洗浄し乾燥後、39.8gの白色固体である共重合体(3)を得た。この共重合体(3)について実施例1と同様にH−NMR測定を行ったところ、エポキシ基含有重合体A:PEG1000=4モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。また、原子吸光分析よりK分を1.3重量%含有していることがわかった。

〔実施例4〕
(ポリウレタン樹脂の合成)
温度計、攪拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、5.03g(8.36mmol)のPEG600(Mn=598)、4.5g(ca 0.7mmol)の共重合体(2)(Mn= ca 6500)、40gのトルエンを一括挿入し、130℃まで昇温し、トルエンを蒸留しながら共沸脱水を行った。13gのトルエンを留去後、110℃まで降温し、ヘキサメチレンジイソシアネート1.58g(9.4mmol)、触媒のジブチルスズジラウレート0.01gを添加し3.5時間反応を行い、その後反応液をエバポレーターで濃縮したところ、9.81gの共重合体(4)を得た。この共重合体(4)は熱可塑性のポリウレタン樹脂であった。この共重合体(4)についてH−NMR測定を行ったところ、エポキシ基含有重合体Aの末端メチル基(シフト値:0.86 ppm)の積分値とカーバメート結合の窒素原子に隣接するメチレン基(シフト値:3.12 ppm)の積分値との比較および、エポキシ基含有重合体(B‐1)の末端メチル基(シフト値:0.86 ppm)の積分値とカーバメート結合の酸素原子に隣接するメチレン基(シフト値:4.16 ppm)の積分値との比較から、共重合体(2):ヘキサメチレンジイソシアネート:PEG600=1モル:13モル:12モルの組成を持つポリマーであることが判明した。
【0140】
H−NMRの解析結果を以下に示す。
H−NMR:δ(C2D2Cl4) 0.86 (t, , J = 6.6 Hz), 1.05-1.4 (m,), 1.47 (t, , J = 5.6 Hz), 3.10 (t, J = 5.6 Hz), 3.4 - 3.74 (m,), 4.16 (t, , J = 5.6Hz)
融点(Tm) 112℃

〔実施例5〕
(溶媒分散系の製造例1)
粉砕機による予備粉砕により体積平均粒径を約150μmにした共重合体(1)25重量部と溶剤40重量部(イソプロピルアルコール20重量部、及び酢酸エチル20重量部)を1リットルのクロム鋼製ボールミルに入れて密閉後24時間回転粉砕した。その後、上記組成の溶剤を35重量部追加して固形分が25重量%になるように希釈した。こうして得た溶媒分散系(ディスパージョン1)の体積平均粒径をマイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、4.5μmであった。

(溶媒分散系の貯蔵安定性評価例1)
ディスパージョン1を試験管(30φ×200mm)に入れて室温に10日間静置させ、その後固形分の沈降により生じた溶剤層の高さを評価した。この高さが低いほど貯蔵安定性に優れる。結果を表1に示した。

(印刷インキの製造例1)
攪拌機,温度計,還流冷却器及び、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール1000部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いで、イソホロンジアミン82部,ジ−n−ブチルアミン7.8部,酢酸エチル2143部及びイソプロピルアルコール 918部を添加し、攪拌下に50℃で3時間反応させ、固形分30%,25℃における粘度600mPa・s,数平均分子量45,000のポリウレタン樹脂溶液(A)を得た。
【0141】
次にポリウレタン樹脂溶液(A)を50重量部、顔料を10重量部、酢酸エチルを22重量部、イソプロピルアルコールを5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルを10重量部、純水を3重量部、及び上記のディスパージョン1を3重量部の割合で配合した後、攪拌混合し、サンドミルを使用して常法に従って顔料分散し、印刷インキ 組成物(インキ1)を得た。顔料としては、ジスアゾイエロー(東洋インキ 製造社製「リオノールイエロー1405G」)を使用した。
【0142】

(印刷インキの印刷例1)
印刷の評価は、インキ1を希釈溶剤(組成:酢酸エチル/イソプロピルアルコール=60重量部/40重量部)で希釈し、粘度を離合社製ザーンカップ#3で15秒に調整し、グラビア印刷機にて処理OPPフィルム(東洋紡社製「P−2161」,厚さ20μ)に印刷することにより行った。グラビア版としては、グラデーション部(5μ〜40μ)及び35μベタ部の面付けのあるものを使用した。

(耐磨耗性及び耐ブロッキング性評価例1)
下記の方法に従って、インキ1を印刷した上記フィルムの耐磨耗性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を表1に示した。

耐磨耗性評価方法
[1]学振式耐摩擦試験機II型(テスター産業(株))使用
摩擦紙 CRCボール紙
荷重・摩擦回数 200g×1000回
[2]評価:インキ印刷面を摩擦子に取り付けたボール紙で擦り、インキがボール紙に転写した度合いで、4段階評価を行う。
【0143】
(良)4-3-2-1(悪)

4:耐磨耗性に優れ、インキが殆どボール紙に付着しない
3:耐磨耗性に優れるが、インキが僅かにボール紙に付着するのが認められる。
【0144】
2:インキのボール紙への付着が明らかに認められる。
【0145】
1:インキのボール紙への付着が著しい。
【0146】

耐ブロッキング性評価方法
[1]上記のインキ印刷フィルムの塗工面を内側に2枚を重ね、ラス板で挟んで、平滑な台上で荷重10g/cmとなるように分銅を載せる。これを恒温恒湿(25℃、50%)中、24時間放置後、2枚の紙を引き離す時の状況を4段階評価する。
【0147】
(良)4-3-2-1(悪)

4:印字面は、全く損傷なし。
【0148】
3:剥離面のインキにわずかに凝集破壊が見られ、剥離時に軽い力を要する。
【0149】
2:剥離面のインキに明らか凝集破壊がみられ、剥離時に強い力を要する。
【0150】
1:剥離時にインキと紙の間の界面剥離が見られる。

〔実施例6〕
(溶媒分散系の製造例2)
上記で得られた共重合体(2)は、卓上パワーミル(ダルトン社製)で、2mm角に粗粉砕した。さらに共重合体(2)を以下の条件で微粉砕した。
1)装置
・ジェットミル:超音速ジェット粉砕機 LABO JET(日本ニューマチック工業株式会社製)
2)粉砕条件
・サンプルは、全て、粉砕直前に液体窒素液中に1分間以上浸したものを使用した。
【0151】
・サンプルフィード速度:1g/分〜50g/分(粒径見合いで調整)
・エア1次圧 :6kg/cm2
・ガス量 :0.4Nm3/分
・ルーバー種類 :大、中、小の三種類を使用し、分級ゾーンとのクリアランスとのバランスで粒径を調整。(ルーバー径小で、分級クリアランス大で、粒径は小さくなる。)
・ ガス量 :0.4Nm3/分
上記の方法によって得た微粉体の体積平均粒径は、マイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、5.2μmであった。さらに、この微粉体25重量部と溶剤40重量部(イソプロピルアルコール20重量部、及び酢酸エチル20重量部)を1リットルのクロム鋼製ボールミルに入れて密閉後10時間回転粉砕した。その後、上記組成の溶剤を35重量部追加してポリエチレン系ワックス固形分が25重量%になるように希釈した。こうして得た溶媒分散系(ディスパージョン2)の体積平均粒径をマイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、4.3μmであった。
【0152】

(溶媒分散系の貯蔵安定性評価例2)
実施例5に記載された溶媒分散系の貯蔵安定性評価例1と同様にして、ディスパージョン2の貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示した。
【0153】

(印刷インキの製造例2)
実施例5に記載された印刷インキの製造例1において、ディスパージョン1をディスパージョン2に変更したこと以外は、同様にして印刷インキ組成物(インキ2)を得た。

(印刷インキの印刷例2)
実施例5に記載された印刷インキの印刷例1と同様にして、インキ2を印刷した。

(耐磨耗性及び耐ブロッキング性評価例2)
実施例5に記載された耐磨耗性及び耐ブロッキング性評価例1と同様にして、インキ2を印刷した上記フィルムの耐磨耗性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を表1に示した。
〔実施例7〕
実施例5において共重合体(1)を共重合体(3)に変更した以外は同様の方法で溶媒分散系(ディスパージョン3)を得た。ディスパージョン3の体積平均粒径は、マイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、6.5μmであった。ディスパージョン3を用いて、実施例5と同様の方法で印刷インキ組成物(インキ3)を得た。その評価結果を表1示した。

〔実施例8〕
実施例5において共重合体(1)を共重合体(4)に変更した以外は同様の方法で溶媒分散系(ディスパージョン4)を得た。ディスパージョン4の体積平均粒径は、マイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、7.9μmであった。ディスパージョン4を用いて、実施例5と同様の方法で印刷インキ組成物(インキ4)を得た。その評価結果を表1に示した。

〔比較例1〕
(溶媒分散系の比較製造例1)
実施例5に記載されたポリエチレン系ワックスの溶媒分散系の製造例1において、共重合体(1)をHW210MP(三井化学製、[η]=0.13dl/g、密度が940kg/m、Mw/Mn=3.0、Mz/Mw=2.4、針入度が3dmm、酸価1.0KOHmg/g)に変更した以外は全く同様にして、溶媒分散系(ディスパージョン5)を得た。ディスパージョン5の体積平均粒径は、マイクロトラック(ハネウェル社:HRA)で測定したところ、4.7μmであった。

(溶媒分散系の貯蔵安定性比較評価例1)
実施例5に記載された溶媒分散系の貯蔵安定性評価例1と同様にして、ディスパージョン5の貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示した。

(印刷インキの比較製造例1)
実施例5に記載された印刷インキの製造例1において、ディスパージョン1をディスパージョン5に変更したこと以外は、同様にして印刷インキ 組成物(インキ5)を得た。
【0154】

(印刷インキの比較印刷例1)
実施例5に記載された印刷インキの印刷例1と同様にして、インキ5を印刷した。

(耐磨耗性及び耐ブロッキング性比較評価例1)
実施例5に記載された耐磨耗性及び耐ブロッキング性評価例1と同様にして、インキ5を印刷した上記フィルムの耐磨耗性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を表2に示した。

〔比較例2〕
実施例6において共重合体(2)をHW410P(三井化学製、[η]=0.22dl/g、密度が950kg/m、Mw/Mn=2.9、Mz/Mw=2.1、針入度が1dmm、酸価0.0KOHmg/g)に変更した以外は同様の方法で溶媒分散系(ディスパージョン6)を得た。ディスパージョン6の体積平均粒径は、4.3μmであった。
ディスパージョン6を用いて、実施例5と同様の方法で印刷インキ組成物(インキ6)を得た。その評価結果を表1に示した。
【0155】
表1に、実施例及び比較例の評価結果を示した。
【0156】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明に係る新規な重合体および当該重合体を含有してなる組成物は、特に印刷インキ用添加剤として有用であり、また、当該重合体を含有してなる樹脂組成物は、印刷インキ組成物、あるいは良好な塗装性・印刷性が要求される成形物に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【化2】

i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有する重合体。
【請求項2】
両末端に水酸基を有する請求項1に記載の重合体(II)。
【請求項3】
一般式(I)
【化3】

i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【化4】

i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と、
一般式(III)
【化5】

(III)
(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体。
【請求項4】
一般式(I)
【化6】

i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【化7】

i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と、
一般式(IV)
【化8】

(IV)
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体。
【請求項5】
一般式(I)
【化9】

i (I)
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が400〜5000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位、又は、
一般式(VI)
【化10】

i (VI)
(式中、A2およびA3は、水素原子または炭素数2〜20のオレフィンとジエンからなる共重合体であって数平均分子量が5000以下のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と
一般式(V)
【化11】

(V)
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の重合体を含有してなる組成物。
【請求項7】
体積平均粒径が0.3μm〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5に記載に記載の印刷インキ用添加剤。
【請求項8】
体積平均粒径が0.3μm〜10μmの範囲にある微粒子の形態で、溶剤中に5〜50重量%の割合で分散されていることを特徴とする請求項1〜5に記載に記載の印刷インキ用溶剤分散系。
【請求項9】
溶剤が非芳香族系溶剤であることを特徴とする請求項8に記載の印刷インキ用溶剤分散系。
【請求項10】
非芳香族系溶剤が、アルコール系溶剤及び/又はエステル系溶剤を10重量%以上の割合で含有してなる請求項9に記載の印刷インキ用溶剤分散系。
【請求項11】
請求項1〜5に記載の重合体を、体積平均粒径が0.3μm〜10μmの範囲にある微粒子の形態で、0.1〜10重量%の割合で含有することを特徴とする印刷インキ。
【請求項12】
請求項1〜5に記載の重合体とアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、相溶化剤及び高分子帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜5に記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体と他の熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜5に記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体と他の熱可塑性樹脂とさらにアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、相溶化剤、及び前記重合体以外の高分子帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜5記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有してなる接着剤。
【請求項16】
請求項1〜5記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有してなる塗装用組成物。
【請求項17】
請求項1〜5記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有してなる組成物を成形してなる成形物品。
【請求項18】
請求項1〜5記載の一般式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有してなる組成物を成形してなる成形体に塗装又は印刷を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2006−131674(P2006−131674A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319421(P2004−319421)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】