説明

新規な重合体及びその用途

【課題】ポリオレフィンを側鎖に有するアルキレンエーテル構造を有する新規な重合体とそれを用いた樹脂組成物および用途を提供すること。
【解決手段】一般式(I)で表される構造単位を有する重合体。


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)上記記載の重合体を含む、接着剤、塗料用組成物、成形物品、相溶化剤、酸素捕捉性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量平均分子量が400〜500000のポリオレフィンを側鎖に有する(ポリ)アルキレンエーテル構造を有する新規な重合体とそれを用いた樹脂組成物および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体あるいはα−オレフィン重合体は、コスト的、機械的特性に優れ、様々な樹脂製品の原料として最も幅広く使用されている。しかしながら、分子構造が非極性であり、他物質との親和性に乏しいため、各種の官能基を導入することが試みられている。
【0003】
その中で、導入した官能基によって重合可能なポリマーまたはオリゴマーをマクロモノマーと総称し、他のモノマーと共重合することにより、高機能を有する制御された櫛形ポリマー等の重合体を得ることができることが知られている。ポリオレフィン系マクロモノマーを成分とする重合体としては、多くの例が知られているが重合性の不飽和基を有するポリオレフィン系マクロモノマーは極性基の量が少なく、ポリオレフィンの改質と言う面では利用し難い。他の重合性の官能基を有するものとしては、末端に水酸基を有するもの(特許文献1)、ポリオレフィンの鎖の中にエポキシ基を有するもの(特許文献2)が知られているが、前者はさらにテトラカルボン酸と反応することで重合可能とするため、このマクロモノマ−を用いて得られる重合体は構造が限定されたものである。後者は、1つのポリオレフィン鎖に統計的に分布を有する複数のアルキレレンオキサイドが存在するので、アルキレンオキサイドの反応に際して架橋が起こるなどの問題が発生するため、マクロモノマーとして有効に活用して制御されたポリオレフィン骨格と極性基からなる骨格を有する構造の重合体を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−3173号公報
【特許文献2】特開平4−55403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ポリオレフィンセグメントを保有ししかも制御された構造の重合体を提供することにある。更に、このような制御された構造の重合体を種々の用途に適用することを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、少なくとも一般式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有する重合体である。
【0009】
本発明はまた、少なくとも一般式(I)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)であらわされる構造単位を有し、両末端に水酸基を有する重合体(II)である。
【0012】
本発明はまた、少なくとも一般式(I)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位および一般式(III)
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体である。
【0017】
本発明はまた、少なくとも一般式(I)
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と一般式(IV)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0022】
本発明はまた、少なくとも一般式(I)
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と一般式(V)
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0027】
本発明はまた、上記重合体を含有してなる組成物であり、用途である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によりポリオレフィンセグメントを保有する様々な新規重合体を提供することができる。該重合体の基となるポリオレフィン系マクロモノマーは高価なモノマー原料を使用しないため経済性の面においても有利である。
【0029】
また、本発明の新規な重合体により、種々の用途、例えば、帯電防止剤、接着剤、塗装用組成物、成形物品、相溶化剤、酸素捕捉性組成物等に適した材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
本発明の重合体は、少なくとも一般式(I)
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有するものである。
【0034】
炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられ、重合体としては、これらのオレフィンの単独あるいは相互の重合体あるいは、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであっても良い。この中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0035】
一般式(I)において、Aで表される基のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定した重量平均分子量(Mw)は、400〜500000であり、好ましくは800〜200000であり、更に好ましくは1000〜100000である。ここでMwとはポリスチレン換算値である。
【0036】
一般式(I)においてAで表される基のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、1.0〜数十のものがあるが、物性の均一性などの点で4.0以下のもの、特に3.0以下のものが好ましいことがある。
【0037】
Aで表される基の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
【0038】
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
なお、Aで表される分子量は、後述の一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
【0039】
Rとしては、Aを構成するオレフィンの2重結合に結合した置換基である水素または炭素数1〜18の炭化水素残基であり、水素、メチル基、エチル基、プロピル基などである。
【0040】
本発明の重合体中、一般式(I)で表される構造単位の含有量は、(I)で表わされる構造単位を含有する限り制限はなく重合体の用途により好ましい範囲は異なる。重合体が帯電防止剤として用いられる場合には1〜99モル%とするのが一般的である。また重合体が一般式(II)で表される両末端に水酸基を有する重合体である場合も同様である。
【0041】
本発明の重合体は、水酸基あるいはエポキシ基と反応する化合物と反応させることで製造できる一般式(I)の構造単位を有するものであればどのようなものでも良い。例えば、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合を有する重合体。さらにはシロキサンと反応したブロック共重合体などが具体的に例示される。
【0042】
このような重合体は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンをエポキシ化したエポキシ化合物を開環重合あるいは共重合することで得ることができる。開始剤として水またはジオール類を使用すれば両末端が水酸基である重合体とすることができる。
【0043】
重合体が、上記一般式(I)で表される構造単位と、一般式(III)
【0044】
【化10】

【0045】
(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体である場合の態様について説明する。
【0046】
一般式(III)中、Rの炭化水素残基としては、特に制限はないが、メチレン基、エチレン基などのアルキレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基などのアリーレン基およびこれらの水素の一部が炭化水素残基あるいはヘテロ原子あるいはヘテロ原子で置換された炭化水素残基で置換されたものが例示でき、重合体は、対応する構造の市販のジカルボン酸をモノマー単位として一般式(I)の構造単位を有するジオールと縮合させることなどで製造することができる。その際他の重合成分例えば、ヒドロキシカルボン酸あるいは他のジオールあるいは、異なる構造のジカルボン酸などを共重合することもできる。
【0047】
重合体の重量平均分子量としては特に制限はなく用途によってその好ましい範囲は異なるが一般的には1000〜1000000、成形材料として利用する場合であれば10000〜500000程度とするのが一般的である。
【0048】
本発明の重合体における別の態様は、上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(IV)
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0051】
一般式(IV)中、Rの炭化水素残基としては、前述した一般式(III)中のRの炭化水素残基と同様のものを例示することができ、重合体は、市販のジイソシアネートをモノマー単位として一般式(I)の構造単位を有するジオールと縮合させることなどにより製造することができる。その際他の重合成分例えば、他のジオールあるいは、異なる構造のジイソシアネートなどを共重合することもできる。
【0052】
重合体の重量平均分子量としては特に制限はなく用途によってその好ましい範囲は異なるが一般的には1,000〜1,000,000、成形材料として利用する場合であれば10,000〜500,000程度とするのが一般的である。
【0053】
本発明の重合体における別の態様は、上記一般式(I)で表される構造単位と一般式(V)
【0054】
【化12】

【0055】
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体である。
【0056】
一般式(V)中、Rの炭化水素残基としては、特に制限はないが、メチレン基、エチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などのアルキレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基などのアリーレン基およびこれらの水素の一部が炭化水素残基あるいはヘテロ原子あるいはヘテロ原子で置換された炭化水素残基で置換されたものが例示でき、好ましいのは市販のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドを重合することで形成されるエチレン基、プロピレン基およびホルムアルデヒドの重合体であるメチレン基であり、後述の一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンをエポキシ化したエポキシ化合物とアルキレンオキサイドを開環重合することで製造でき、同時に共重合してランダム共重合した構造あるいは、逐次的に重合したブロック共重合体した構造のものであっても良い。
【0057】
発明の趣旨から明確なように両者を含有する限り比率はどのような比率であっても良い。
【0058】
全体の重量平均分子量としても制限はないが、一般的には1000〜1000000、相溶化剤、静電気防止剤などの用途とするには、1000〜100000程度の重量平均分子量とするのが一般的である。
【0059】
本発明の重合体は、次の方法によって製造することができる。
【0060】
最初に、目的とする重合体中、一般式(I)で示される構造に対応するモノマーとして、一般式(VI)
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表す)で示される、片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造する。
【0063】
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
【0064】
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0065】
上記(1)〜(4)の方法の中でも、特に(1)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したオレフィンを重合または共重合することで上記片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。
【0066】
(1)の方法によるオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
【0067】
本発明の低分子量エチレン系重合体中の、1H-NMRで測定されたビニルまたはビニリデン型の二重結合の割合(以下の説明では、この割合を「片末端ビニル基含有率」と呼称する)は、全片末端の50%以上であり、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。1H-NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化-1,1,2,2-テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化-1,1,2,2-テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
【0068】
エチレンのみからなる低分子量重合体中の片末端ビニル基含有率は、1H-NMRによって決定される。該重合体の各水素のピークは、末端の飽和メチル基に基づく3プロトン分のピーク(A)が0.65〜0.85ppm、ビニル基に基づく3プロトン分のピーク(B)が4.70〜5.0ppmと5.5〜5.8ppmに観測される。各ピーク(A)および(B)のピーク面積を各々SおよびSとすれば、二重結合含有率(U%)は、下記式にて算出される。
【0069】
U(%)=S×200/(S+S
【0070】
(1)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
【0071】
次に、上記ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、一般式(VII)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
【0072】
【化14】

【0073】
(式中、Aは、炭素数2〜20のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表す)
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
【0074】
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
【0075】
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
【0076】
末端エポキシ基含有重合体の全片末端中のエポキシ含有率は1H-NMRによって決定される。例えば、エチレンのみからなる片末端二重結合含有重合体をエポキシ化して得られた末端エポキシ基含有重合体の場合、飽和末端におけるメチル基の3プロトン分のピーク(C)が0.65〜0.9ppm、エポキシ基付け根の3プロトン分のピーク(D)が1プロトンずつ2.3〜2.4ppm、2.6〜2.7ppm、2.8〜2.9ppmに観測される。エポキシ変性が十分でない場合は、末端二重結合の3プロトン分のピーク(E)が4.70〜5.0ppmに2プロトン、5.5〜5.8ppmに1プロトン観測される。各ピーク(C)、(D)および(E)のピーク面積を各々S、SおよびSとすれば、エポキシ基含有率(Ep(%))は下記式にて算出される。
【0077】
Ep(%)=S×200/(S+S+S
【0078】
上記の方法で得られた末端エポシキシ基含有重合体を開環重合し一般式(I)の構造単位を有する重合体を製造することができる。触媒、重合条件などについては、公知のアルキレンオキサイドの開環重合方法を利用することができ、例えば、大津隆行著,「改訂高分子合成の化学」,株式会社化学同人,1971年1月,p.172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられる触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl3、SbCl5、BF3、FeCl3のようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいは、Al、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。ここで、フォスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスフォニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしたものなどが利用できる。
【0079】
上記触媒存在下、開始剤として水、アミン類、ジオール類、ポリオール類等の活性水素化合物を使用して、末端エポキシ基含有重合体のみを開環重合させることにより末端エポキシ基含有重合体のホモ重合体が得られ、末端エポキシ基含有重合体と他のアルキレンオキシドを開環重合させることにより共重合体を得ることができる。
【0080】
反応溶媒としては、末端エポキシ基含有重合体、アルキレンオキサイドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0081】
触媒の使用量はホスファゼン触媒以外については原料の末端エポキシ基含有重合体eの1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。ホスファゼン触媒の使用量は、重合速度、経済性等の点から、末端エポキシ基含有重合体の1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好ましく、より好ましくは5×10−4〜1×10−1モルである。
【0082】
反応温度は通常25〜150℃、好ましくは50〜110℃とし、反応時間は使用する触媒の量、反応温度、オレフィン類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分〜50時間である。
【0083】
開始剤として水またはジオール類を用いることにより、両末端に水酸基を有する重合体(II)を得ることができる。また、予めアルキレンオキサイドを重合して得た特定の分子量のポリエーテルポリオールを開始剤として用いると所定の分子量の親水性単位を導入することが可能になり所望の物性を有する両末端に水酸基を有するブロック共重合体の製造が容易となる。
【0084】
ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等を挙げることができ中でもポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコールが望ましい。
【0085】
上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(III)
【0086】
【化15】

【0087】
(式中、Rは2価のヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体(以下重合体bとする)は、下記の方法により製造することができる。
【0088】
(1)上記一般式(II)で示される両末端に水酸基を有する重合体と一般式(III)に対応するジカルボン酸との反応。
(2)末端エポキシ基含有重合体と一般式(III)に対応するジカルボン酸との反応。
(3)一般式(III)に対応するジカルボン酸とジオール類の縮合反応により得られるポリエステルポリオールと末端エポキシ基含有重合体との反応。
【0089】
ここで、(1)、(2)において一般的なジオール類を共存させても良い。
【0090】
ジカルボン酸としては上述のとおりであり、より具体的にはシュウ酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など市販の種々のジカルボン酸をそのまま利用することもできる。
【0091】
ジオール類としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、ビフェノール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類を挙げることができる。また、場合によっては3官能の水酸基を有するグリセリン等も使用可能である。これ等のジオール類は、単独で或いは2種以上を混合して得られる。
【0092】
アルコールとカルボン酸からエステル結合を形成する方法については周知であり、脱水触媒の存在下水を除去する方法。カルボン酸を無水物化あるいは酸クロリド化した後、アミンなどのアルカリの存在下に反応する方法など特に制限はない。またエポキシドとカルボン酸を直接反応する方法についてもカルボン酸のアルカリ金属塩などの存在下に反応するなどの公知の方法が開示できる。
【0093】
上記一般式(I)で表される構造単位を有し、かつ一般式(IV)
【0094】
【化16】

【0095】
(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体(以下重合体cとする)は、下記の方法により製造することができる。
【0096】
(1)上記末端エポキシ基含有重合体と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
(2)上記重合体(II)と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
(3)上記重合体(b)と、一般式(IV)に対応するジイソシアネートとの反応。
【0097】
重合体cの製造に使用することのできるジイソシアネートとしては、例えば、松平信孝ら編,「ポリウレタン」,槙書店,1964年,p.13−18に開示されているもののうち、炭素数3〜23のものを使用することができ、それらの中でも通常ジイソシアネートが選択される。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を使用することができるが、それぞれ単独で使用されたり、複数併用されたりする。
【0098】
さらに少量のモノイソシアネートまたはトリイソシアネート等のポリイソシアネートを併用することも可能である。
【0099】
両者の反応方法についても上記文献に開示されているように多くの方法が公知であり、錫の塩、アミンなどの触媒の存在下に加熱するなどの公知の方法が採用できる。
【0100】
上記一般式(I)で表される構造単位と一般式(V)
【0101】
【化17】

【0102】
(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体(以下重合体dとする)は、上述のように種々の方法で製造できるが、対応するエポキシドと上記、末端エポキシ基含有重合体の重合方法と同様の方法で重合するのが一般的である。
【0103】
以上説明した本発明の重合体、当該重合体を含有する組成物、当該重合体および他の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物、当該重合体は、帯電防止剤、接着剤、塗装用組成物として有用であり、優れた帯電防止作用も有する。
【0104】
ここで、上記組成物、樹脂組成物、帯電防止剤、接着剤および塗装用組成物中に含まれる本発明の重合体の量は、0.5〜20質量%であるのが好ましく、特に1.0〜10質量%であるのが好ましい。
【0105】
上記樹脂組成物における他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0106】
上記組成物または樹脂組成物には、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、及び他の高分子帯電防止剤(本発明の重合体による帯電防止剤以外の高分子帯電防止剤)からなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれてもよい。これらの成分によれば、上記組成物または樹脂組成物の帯電防止性をさらに向上させることができる。
【0107】
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩としては炭素数1〜20のモノカルボン酸またはジカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸等)、炭素数1〜20のスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、チオシアン酸などの有機酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属と塩、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸、臭化水素酸等)、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸などの無機酸の塩が好ましく例示できる。これらの中でも好ましいのは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハライド、酢酸カリウム等の酢酸塩、及び過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩である。
【0108】
上記組成物または樹脂組成物中におけるアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。
【0109】
界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を使用することができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット若しくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0110】
上記界面活性剤の中でも、アニオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が好ましい。
【0111】
上記組成物または樹脂組成物中における界面活性剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%である。
【0112】
他の高分子帯電防止剤としては、例えば、公知のポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤を使用することができ、公知のポリエーテルエステルアミドとしては、例えば特開平7−10989号公報に記載のビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0113】
他の高分子帯電防止剤としては、ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックの結合単位が2から50の繰り返し構造を有するブロックポリマーを使用することができ、例えばUS6552131公報記載のブロックポリマーを挙げることができる。
【0114】
上記組成物または樹脂組成物中における他の高分子帯電防止剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0〜40質量%、好ましくは5〜20質量%である。
【0115】
また、上記組成物または樹脂組成物中には、相溶化剤が含まれてもよい。相溶化剤によれば、本発明の重合体と他の熱可塑性樹脂との相溶性を向上させることができる。かかる相溶化剤としては、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体、例えば特開平3−258850号公報に記載の重合体や、特開平6−345927号に記載のスルホニル基を有する変性ビニル重合体、あるいはポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体などが挙げられる。
【0116】
上記組成物または樹脂組成物中における相溶化剤の含有量は、重合体・樹脂全量に対して通常0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。
【0117】
上記組成物または樹脂組成物には、その用途に応じて、本発明の重合体による効果を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。かかる樹脂用添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0118】
上記樹脂組成物を成形してなる成形体は、優れた帯電防止性を有するとともに、良好な塗装性及び印刷性を有する。樹脂組成物の成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)などが挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
【0119】
上記成形体を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料を使用することができる。塗装膜厚は、目的に応じて適宜選択することができるが、通常10〜50μm(乾燥膜厚)である。
【0120】
また、上記成形体に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であれば、いずれであってもよく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。これらの印刷におけるインキとしては、プラスチックの印刷に通常用いられるものが使用できる。
【0121】
本発明に係る重合体は酸素捕捉性組成物として好適であり、特にPET等のポリエステル樹脂に含有することにより、ポリエステル樹脂に酸素遮断性を付与することができる。これにより、例えばPETボトル等に含まれる酸素感受性物質の保存安定性を向上させることができる。
【0122】
当該用途に用いられる樹脂としては特に一般式(I)で表される構造単位とポリエステル類との共重合体が最も有効である。酸素捕捉は一般式(I)のAで表されるポリオレフィンセグメントが酸素とラジカル的に反応し、ペルオキソラジカルを経由して、水酸基を形成することによってなされる。したがって、3級炭素をより多く含むポリオレフィン、例えばポリプロピレン、C3−C2共重合体等がより有効である。当該ポリオレフィンセグメントに好ましい重量平均分子量は400〜10000が好ましい。酸素捕捉性組成物として用いる重合体の重量平均分子量は特に制限はないが、10000〜500000が一般的である。酸素捕捉性組成物として用いる重合体中のポリオレフィンセグメントの含有率は0.1質量%〜20質量%、好ましくは0.5質量%〜10質量%である。
【0123】
本発明に係る重合体はエマルション組成物として好適であり、溶融状態の重合体及び水を高圧下にてホモミキサー、ホモジナイザー又はディスパーを用いて高速で撹拌することにより潤滑性、耐摩擦性、離型性、抗菌性に優れた保存安定性に優れたエマルション組成物が得られる。本発明のエマルション組成物を含むインキ組成物、コーティング組成物、繊維処理組成物は、酸性下で良好な分散性を示し、潤滑性、耐摩擦性、離型性、耐久性、耐水性に優れる。
【0124】
本発明に係わる重合体は、非相溶性樹脂間の相溶化剤、特にポリオレフィン系樹脂とポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルポリウレタン樹脂等の極性樹脂との相溶性を向上させる相溶化剤として使用できる。
本発明に係る重合体は樹脂用改質剤、ゴム用改質剤、ワックス用改質剤、セメント用改質剤、インキ・塗料用改質剤等の各種改質剤用途として有用であり、耐衝撃性、耐熱性、耐候性、耐傷付き性、透明性、塗装性、接着性、低温柔軟性、流動性、分散性等の改質効果を発揮する。
【実施例】
【0125】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0126】
なお、重量平均分子量MwおよびMw/MnはGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い測定して得られたピークトップ温度を採用した。
【0127】
(合成例1)
(片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)の合成)
触媒として使用した化合物(VIII)は特開2003-73412号公報の合成例6に従って合成し、片末端二重結合含有ポリエチレンは同公報実施例9に従って合成した。
【0128】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cmG加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記化合物(VIII)のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥した。
【0129】
【化18】

【0130】
得られた重合物はホモポリエチレンで、この片末端二重結合含有エチレン系重合体についてH-NMR 測定を行ったところ、不純物である両末端飽和ポリエチレンを含む末端メチル基の積分値S=3.49、ビニル基の積分値S=3.00から片末端ビニル基含有率(U)は92%であった。この片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)(単体)のH-NMR の測定結果および物性は以下の通りであった。
H-NMR : δ(C6D6) 0.81 (t, 3H, J = 6.9 Hz), 1.10 - 1.45 (m), 1.93 (m, 2H), 4.80 (dd, 1H, J = 9.2, 1.6 Hz), 4.86 (dd, 1H, J = 17.2, 1.6 Hz), 5.60 - 5.72 (m, 1H)
融点(Tm)123℃
Mw=1900、Mw/Mn=2.24(GPC)
【0131】
(合成例2)
(末端エポキシ基含有重合体(E−1)の合成)
500mlセパラブルフラスコに合成例1で得られた片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、NaWO・2HO 0.85g(2.6mmol)、CH(nC17)NHSO0.60g(1.3mmol)、および85%リン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、85℃に保ったまま40%チオ硫酸ナトリウム水溶液21.5g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで80℃以下を確認後アセトニトリル300gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しアセトニトリルで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の白色固体96.3gを得た(収率99%,オレフィン転化率100%)。
【0132】
この末端エポキシ基含有重合体(E−1)についてH-NMR測定を行ったところ、不純物である両末端飽和ポリエチレンを含む末端メチル基(シフト値:0.88ppm)の積分値Sc=3.6、エポキシ基付け根のメチレン基とメチン基(シフト値:2.38, 2.66, 2.80 - 2.87 ppm)の積分値S=3.0、S=0から、末端エポキシ基含有率(Ep)は90%であることが分かった。この末端エポキシ基含有重合体(E−1)(単体)のH-NMRの測定結果および物性は以下の通りであった。
H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd, 1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80 - 2.87 (m, 1H)
融点(Tm)121℃
Mw=2058
Mw/Mn=1.84(GPC)
硬度(針入度)0 mm
溶融粘度 189cp(140℃)
軟化点 129.5 ℃
5%減量温度 344 ℃(TGA)
末端エポキシ基含有重合体(E−1)の構造式:
【0133】
【化19】

【0134】
(合成例3)
(片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−2)の合成)
[固体成分(A)の調製]
窒素流通下、150℃で5時間乾燥したシリカ(SiO)30gを466mLのトルエンに懸濁した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.08mmol/mL)134.3mLを25℃で30分かけて滴下した。滴下終了後、30分かけて114℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンを加え、固体成分(A)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分(A)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.150g/mL、Al濃度:1.179mmol/mLであった。
【0135】
[固体触媒成分(B)の調製]
窒素置換した300mLのガラス製フラスコにトルエン150mLを入れ、撹拌下、上記で調製した固体成分(A)のトルエンスラリー(固体部換算で1.91g)を装入した。次に、化合物(VIII)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0012mmol/mL)50.0mLを15分かけて滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘプタンで3回洗浄し、ヘプタン100mLを加えて固体触媒成分(B)のヘプタンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(B)のヘプタンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.058mmol/mL、Al濃度14.8mmol/mLであった。
【0136】
充分に窒素置換した内容積1000mlのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン450mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いてプロピレンを23NL導入し、80℃に昇温した後、エチレンで8kg/cm2Gまで昇圧し、温度を維持した。トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、ついで上記固体触媒成分(B)をZr原子に換算して0.0001mmolを圧入し、重合を開始した。エチレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、80℃で60分間重合を行った後、5mlのメタノールを圧入することにより重合を停止し、降温後モノマーを脱圧した。得られたポリマースラリーをメタノール2Lと混合撹拌後濾過した。得られた生成物を80℃にて10時間減圧乾燥することによりエチレン−プロピレン共重合体である末端二重結合含有重合体(P−2)53.2gを得た。生成物はMw=1730、Mw/Mn=1.68、融点が108℃、1H-NMRで測定したビニル基/ビニレン基/ビニリデン基=78.4/17.6/3.9であった。
【0137】
(合成例4)
(末端エポキシ基含有重合体(E−2)の合成)
片末端二重結合含有重合体を合成例3で得られた片末端不飽和エチレン−プロピレン共重合体(P−2)(Mw=1730、Mn=994)に変えた以外は合成例2と同様の操作を行い、末端エポキシ基含有重合体(E−2)の白色固体23.9g(オレフィン転化率100%、収率94%)を得た。
1H-NMR: δ(C2D2Cl4) 0.80 - 0.88 (m), 0.9 - 1.6 (m), 2.37-2.40 (1H, dd, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.50 (m), 2.66 (1H, dd, J = 3.96, 5.28 Hz), 2.80 - 2.86 (1H, m), 2.94(m)
Mw=1720 Mw/Mn=1.58(GPC)
融点(Tm)99.7℃
硬度(針入度)0.2mm
溶融粘度 32cp(140℃)
軟化点 114.5 ℃
5%減量温度 334℃(TGA)
【0138】
(合成例5)
(α、β-ジヒドロキシ重合体(D-1)の製造)
1000mlセパラブルフラスコに合成例1で得られた片末端二重結合含有重合体(P−1)100g(Mn 850として、ビニル基108mmol)、トルエン300g、NaWO4 ・2HO 1.79g(5.4mmol)、CH(nC17)NHSO1.27g(2.7mmol)、85%りん酸 0.23g(2.7mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶解させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。反応混合物をH-NMR で測定することにより、末端オレフィンが100%、エポキシ基に変性していることを確認した。その後、85℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加し、30分撹拌した。過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。内温80℃に冷却後、2-プロパノールを30分かけてゆっくり加えながら生成物を晶析させ、そのスラリー液を65℃で1時間撹拌した後、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄した。得られた固体を室温で、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。60℃、1〜2hPaの減圧下乾燥させることによりα,β-ジヒドロキシ重合体(D-1)の白色固体106.6gを得た(収率99%、オレフィン転化率100%、エポキシ転化率100%)。物性は以下の通り。
H-NMR: δ(C2D2Cl4) 0.89(t, 3H, J = 6.9 Hz), 1.05 - 1.84 (m), 3.41 (dd, 1H, J = 5.9, 9.9 Hz), 3.57- 3.63(m, 2H)
融点(Tm)122℃
硬度(針入度) 0mm
溶融粘度 214cp(140℃)
軟化点 129℃
5%減量温度 297℃(TGA)
α,β-ジヒドロキシ重合体(D-1)の構造式:
【0139】
【化20】

【0140】
〔実施例1〕
(ポリエーテル樹脂の合成例1)
温度計、撹拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、合成例2で合成した末端エポキシ基含有重合体(E−1)(Mn=1119)98.6g(88mmol)、ポリエチレングリコール(PEG)600(Mn=598)30.6g(51mmol)、およびトルエン434gを一括挿入し、130℃まで昇温した。トルエンを蒸留しながら共沸脱水を行った。147gのトルエンを留去後、110℃まで降温し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を1.4g(9.9mmol)添加し、11時間反応を行った。その後反応液を790gのメタノール中へ滴下したところ、白色固体が析出した。
【0141】
この白色固体をろ過し、ろ残をメタノールで洗浄して乾燥後、108.7gの共重合体(1)を得た。この共重合体(1)についてH−NMR測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基(シフト値:0.88 ppm)の積分値とPEG600のアルキレン基(シフト値:3.52 - 3.79 ppm)の積分値との比較から、末端エポキシ基含有重合体(E−1):PEG600=2モル:1モルの組成を有する共重合体であることが判明し、13C−NMR測定からPEG600末端水酸基に結合した炭素(シフト値:61.7 ppm)が存在し、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基炭素(シフト値:13.8 ppm)の約半分の積分値であることからPEGの片側に末端エポキシ基含有重合体(E−1)が2分子開環重合した重合体であることが判明した。物性は以下の通り。
H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 6H, J = 6.6 Hz), 1.00 - 1.57 (m, 320H), 3.52 - 3.79 (m, 52H)
13 C-NMR:δ(C6D4Cl2) 13.8, 22.6, 25.6, 29.2, 29.3, 29.6, 29.7, 29.9, 31.9, 33.6, 61.7, 64.7, 69.1, 70.3, 70.5, 70.6, 70.7, 71.1, 72.6, 76.0, 81.3
融点(Tm) 121℃
【0142】
〔実施例2〕
(ポリエーテル樹脂の合成例2)
温度計、撹拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、PEG600(Mn=598)6.13g(10.25mmol)、末端エポキシ基含有重合体(E−1)(Mn=1119)19.73g(17.6mmol)、およびトルエン69gを一括挿入し、130℃まで昇温し、トルエンを蒸留しながら共沸脱水を行った。19gのトルエンを留去後、110℃まで降温し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を0.56g(3.9mmol)添加し7.5時間反応を行い、その後反応液を158gのメタノール中へ滴下したところ、白色固体が析出した。
【0143】
この白色固体をろ過し、ろ残をメタノールで洗浄して乾燥後、20.1gの共重合体(2)を得た。この共重合体(2)についてH−NMR測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基(シフト値:0.88 ppm)の積分値とPEG600のアルキレン基(シフト値:3.52 - 3.79 ppm)の積分値との比較から、末端エポキシ基含有重合体(E−1):PEG600=4モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。物性は以下の通り。
H−NMR:δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 12H, J = 6.6 Hz), 1.00 - 1.57 (m, 640H), 3.52 - 3.79 (m, 52H)
融点(Tm) 121℃
【0144】
〔実施例3〕
(ポリエーテル樹脂の合成例3)
温度計、撹拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、17.9g(17.9mmol)のPEG1000(Mn=1000)、および6.7g(35.8mmol)の30wt%KOH水溶液を一括挿入し、100℃まで昇温し、脱水を行った。脱水後、120℃まで昇温し、末端エポキシ基含有重合体(E−1)(Mn=1119)を30.7g(27mmol)添加し18時間反応を行い、その後120℃で反応物を取り出し冷却した。
【0145】
冷却後、得られた固体に蒸留水100mlを加え、塩酸を滴下し中和を行った。中和後、ろ過を行い、ろ液を蒸留水で洗浄し乾燥後、34.8gの白色固体である共重合体(3)を得た。この共重合体(3)についてH−NMR測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基(シフト値:0.88 ppm)の積分値とPEG600のアルキレン基(シフト値:3.52 - 3.65 ppm)の積分値との比較から、末端エポキシ基含有重合体(E−1):PEG1000=4モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。また、原子吸光分析よりK分を1.3重量%含有していることがわかった。物性は以下の通り。
H-NMR: δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 12H, J = 6.6 Hz), 1.18 - 1.5 (m, 640H), 3.52 - 3.65 (m, 52H)
融点(Tm) 124℃
【0146】
〔実施例4〕
(ポリエーテル樹脂の合成例4)
実施例1においてPEG600の代わりにPEG1000を用いた以外は実施例1と同様の方法により反応を行い、共重合体(4)を得た。この共重合体(4)についてH-NMR 測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−1):PEG1000=2モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。物性は以下の通り。
H-NMR:δ (C2D2Cl4) 0.88 (t, 6H, J = 6.6 Hz), 1.18 - 1.5 (m), 3.52 - 3.65 (m, 90H)
【0147】
〔実施例5〕
(ポリエーテル樹脂の合成例5)
実施例2において末端エポキシ基含有重合体(E−1)の代わりに末端エポキシ基含有重合体(E−2)を用いた以外は実施例2と同様の方法により反応を行い、共重合体(5)を得た。この共重合体(5)についてH-NMR 測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−2):PEG600=4モル:1モルの組成を持つポリマーであることが判明した。物性は以下の通り。
H-NMR:δ (C2D2Cl4) 0.82 - 0.92 (m), 1.00 - 1.70 (m), 3.25 - 3.76 (m)
融点(Tm) 108℃
【0148】
〔実施例6〕
(ポリウレタン樹脂の合成)
温度計、撹拌棒、窒素導入管およびコンデンサーを備えたフラスコに、5.03g(8.36mmol)のPEG600(Mn=598)、5.02g(ca 1mmol)の共重合体(2)(Mn= ca 5000)、40gのトルエンを一括挿入し、130℃まで昇温し、トルエンを蒸留しながら共沸脱水を行った。13gのトルエンを留去後、110℃まで降温し、ヘキサメチレンジイソシアネート1.58g(9.4mmol)、触媒のジブチルスズジラウレート0.01gを添加し3.5時間反応を行い、その後反応液をエバポレーターで濃縮したところ、9.39gの共重合体(6)を得た。この共重合体(6)は熱可塑性のポリウレタン樹脂であった。この共重合体(6)についてH−NMR測定を行ったところ、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基(シフト値:0.86 ppm)の積分値とカーバメート結合の窒素原子に隣接するメチレン基(シフト値:3.10 ppm)の積分値との比較および、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の末端メチル基(シフト値:0.86 ppm)の積分値とカーバメート結合の酸素原子に隣接するメチレン基(シフト値:4.14 ppm)の積分値との比較から、共重合体(2):ヘキサメチレンジイソシアネート:PEG600=1モル:9モル:8モルの組成を持つポリマーであることが判明した。物性は以下の通り。
H-NMR:δ(C2D2Cl4) 0.86 (t, 12H, J = 6.6 Hz), 1.05 - 1.4 (m, 690H), 1.47 (t, 50H, J = 5.6 Hz), 3.10 (t, 50H, J = 5.6 Hz), 3.4 - 3.74 (m, 620H), 4.14 (t, 50H, J = 5.6Hz)
融点(Tm) 121℃
【0149】
〔実施例7〕
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、合成例5で得られたα,β-ジヒドロキシ重合体(D−1)10g、トルエン 80gを仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0gの水に溶解した148mgの85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とすることで、フラスコ内の水及びトルエンを完全に留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き取り出した。
【0150】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体全量及び脱水トルエン 200gを仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら100℃まで昇温した。30分後、エチレンオキサイド 11.8gを加え、3時間かけて徐々に130℃まで昇温した。さらに7時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、スラリー液を得た。スラリー液からトルエンを留去することによりα,β-ジヒドロキシ重合体(D−1)のα,β-位にポリエチレングリコール基(PEG)が結合したα,β-ビス(ポリエチレングリコール)重合体 19.5gを得た。得られた重合体のH-NMR分析より、α,β-ジヒドロキシ重合体(D−1)の末端メチル基(シフト値:0.88 ppm)の積分値とPEG部分のアルキレン基(シフト値:3.34 - 3.72 ppm)の積分値との比較から、エチレングリコールユニットが2つ合わせて平均26個結合していることが分かった。物性は以下の通り。
H-NMR: δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.75 Hz), 1.04 - 1.66 (m), 3.34 - 3.72 (m)
融点(Tm)120℃
【0151】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた30mLフラスコに、上記方法で合成したα,β-ビス(ポリエチレングリコール)重合体2.0g、トルエン10gと、フタル酸ジクロライド0.2gを加えた。窒素微加圧条件下、4時間還流させた。その後、トルエンを留去しながら150℃で4時間撹拌した後、さらに減圧条件で溶媒及び発生する気体を除きながら2時間撹拌し、反応器内にα,β-ビス(ポリエチレングリコール)重合体のポリエチレングリコール基末端の水酸基がフタル酸でエステル架橋された重合体2.1gを得た。物性は以下の通り。
【0152】
1H-NMR: δ (C2D2Cl4) 0.88(t, J = 6.8 Hz), 1.13- 1.50 (m), 3.31 - 3.79(m), 4.42 (t, J = 5.3 Hz), 7.48 - 7.52 (m), 7.69 - 7.73 (m)
融点(Tm) 119℃
【0153】
〔実施例8〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価1)
LLDPE(三井化学エボリューSP2320)45gに、実施例1で得た共重合体(1)5g(添加量10質量%)、およびアルカリ塩として過塩素酸ナトリウム一水和物0.10gを添加して、東洋精機製作所製の4C150−01型ラボプラストミルにより180℃で10分間混練し、混練物を取り出した。
【0154】
次に上記混練物を熱プレス成型した。成形は、真空熱プレス機で170℃に加熱しながら3分間加圧し、その後取り出して室温まで急冷する方法で行い、130mmφ×0.5mmの評価用熱プレスシートを得た。
【0155】
得られた熱プレスシートを、室温23±2℃、湿度50±5%RHに制御された恒温恒湿室に24h放置し、印加電圧500Vで表面抵抗値を測定したところ、6.42×1012Ωであった。また水の接触角は70°であった。
【0156】
〔比較例1〕
対比として、LLDPE単独、LLDPEと過塩素酸ナトリウム(対ポリマー0.2質量%)、LLDPEと過塩素酸ナトリウム(対ポリマー0.2質量%)と実施例1で用いたPEG600(対ポリマー全体の10質量%)の場合についても評価した。その結果、全てのケースで表面抵抗は1016Ωのオーダーであり、PEG600を混練したものは不均一な成形体しか得られなかった。
【0157】
〔実施例9〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価2)
共重合体(1)の代わりに実施例2で得られた共重合体(2)を使用し、過塩素酸ナトリウム一水和物を0.15g使用したこと以外は実施例8と同様の方法により評価用熱プレスシートを作成し、評価を行ったところ、表面抵抗値は2.91×1011Ωであった。また水の接触角は52°であった。
【0158】
〔実施例10〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価3)
共重合体(1)の代わりに実施例4で得られた共重合体(4)を使用し、過塩素酸ナトリウム一水和物の代わりに酢酸カリウムを0.15g使用したこと以外は実施例55と同様の方法により評価用熱プレスシートを作成し、評価を行ったところ、表面抵抗値は1.37×1011Ωであった。また水の接触角は53°であった。
【0159】
〔実施例11〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価4)
LLDPE(三井化学エボリューSP2320)45gと実施例4で得られた共重合体(4)5g(添加量10質量%)を東洋精機製作所製の4C150-01型ラボプラストミルにより180℃で10分間混練した後、アルカリ塩として過塩素酸ナトリウム一水和物0.10gを添加して1分間混練し、混練物を取り出した。
【0160】
熱プレス成型および表面抵抗値測定は実施例8と同様の方法で行った結果、表面抵抗値は8.01×1010Ωであった。また水の接触角は56°であった。
【0161】
〔実施例12〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価5)
共重合体(1)の代わりに実施例5で得られた共重合体(5)を使用し、過塩素酸ナトリウム一水和物の代わりに酢酸カリウムを0.15g使用したこと以外は実施例8と同様の方法により評価用熱プレスシートを作成し、評価を行ったところ、表面抵抗値は1.91×1012Ωであった。また水の接触角は79°であった。
【0162】
〔実施例13〕
(LLDPE樹脂中での帯電防止性評価6)
共重合体(1)の代わりに実施例6で得られた共重合体(6)を使用し、過塩素酸ナトリウム一水和物を0.15g使用したこと以外は実施例8と同様の方法により評価用熱プレスシートを作成し、評価を行ったところ、表面抵抗値は2.56×1013Ωであった。また水の接触角は64°であった。
【0163】
〔実施例14〕
(ポリプロピレン樹脂中での帯電防止性評価)
ポリプロピレン(三井化学ホモPPグレードF107BV)22.5gに実施例3で得た共重合体(3)2.5g(添加量10%)、安定剤としてIRGANOX1010(長瀬産業社製)を1000ppm、IRGAFOS168(長瀬産業社製)を1000ppm、およびステアリル酸カルシウム500ppmを添加して、東洋精機製作所製の4C150−01型ラボプラストミルにより200℃で5分間混練して、混練物を取り出した。
【0164】
次に上記混練物を熱プレス成型した。成形は、熱プレス機で200℃に加熱しながら9.8MPa(100kgf/cm)で5分間加圧し、その後5分間で2.45MPa(25kgf/cm)に加圧しながら室温まで急冷する方法で行い、95mm×95mm×3mmの評価用熱プレスシートを得た。
【0165】
得られた熱プレスシートを室温23±2℃、湿度50±5%RHに制御された恒温恒湿室に24h放置し、印加電圧500Vで表面抵抗値を測定したところ8.76×1012Ωであった。また水の接触角を測定したところ、63.5°であった。
【0166】
〔比較例2〕
共重合体(1)の代わりに市販のポリエーテルエステルアミド共重合体(チバスペシャリティーケミカルズ製イルガスタットP18)を使用し、過塩素酸ナトリウム一水和物を使用しないこと以外は実施例5と同様の方法により評価用熱プレスシートを作成し、評価を行ったところ、表面抵抗値は3.67×1014Ωであった。また水の接触角は95°であった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の新規な重合体は、種々の用途、例えば、帯電防止剤、接着剤、塗装用組成物、成形物品、相溶化剤、酸素補足性組成物等に有用である。
本発明に係る新規な重合体および当該重合体を含有してなる組成物は、特に帯電防止剤として有用であり、また、当該重合体を含有してなる樹脂組成物は、帯電防止が要求される成形物、あるいは良好な塗装性・印刷性が要求される成形物に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(I)
【化1】


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位を有する重合体。
【請求項2】
少なくとも一般式(I)
【化2】


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)であらわされる構造単位を有し、両末端に水酸基を有する重合体(II)。
【請求項3】
少なくとも一般式(I)
【化3】


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位および一般式(III)
【化4】


(式中、Rはヘテロ原子を有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰り返し単位として有する重合体。
【請求項4】
少なくとも一般式(I)
【化5】


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と一般式(IV)
【化6】


(式中、Xは酸素原子またはNH基を表し、Rはヘテロ原子を含有しても良い炭素数1〜20の2価の炭化水素残基)で表される構造単位を繰返し単位として有する重合体。
【請求項5】
少なくとも一般式(I)
【化7】


(式中、Aは、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンの重合体であって重量平均分子量が400〜500000のものを表し、Rは水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、iは1以上の整数を表す)で表される構造単位と一般式(V)
【化8】


(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素残基を表す)で表わされる構造単位を繰返し単位として有する重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含有してなる組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体とアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、相溶化剤及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体以外の高分子帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体と他の熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体と他の熱可塑性樹脂とさらにアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、界面活性剤、相溶化剤及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体以外の高分子帯電防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してなる樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含有してなる接着剤。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含有してなる塗装用組成物。
【請求項12】
請求求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含有してなる組成物を成形してなる成形物品。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含有してなる組成物を成形してなる成形体に塗装又は印刷を施してなる成形物品。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含む相溶化剤。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体を含む酸素捕捉性組成物。

【公開番号】特開2011−99117(P2011−99117A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26483(P2011−26483)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2005−167569(P2005−167569)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】