説明

新規な食感を有する菓子とその製造方法

【課題】グミやソフトキャンディーよりも口溶けが良く、しかもほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な食感の菓子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】砂糖、液状糖質、ゼラチン、食用油脂を必須成分として含有する菓子において、各成分の重量比率が次の範囲にある菓子。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂:1.5〜12重量%
ゼラチン:2〜4重量%
および、
砂糖および液状糖質に加水し、煮詰めて得られる生地に、ゼラチン水溶液と食用油脂とフォンダンを混合して、成形型に流し込んで冷却、固化する菓子の製造方法において、各成分の重量比率を次の範囲とすることを特徴とする当該方法。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂 1.5〜12重量%
ゼラチン 2〜4重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な食感を有する菓子に関し、より詳しくはグミやソフトキャンディーとは異なる、口溶けが良く、新規な食感を有する菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
糖を主原料とする菓子の中で、舐めるとともに通常噛むことにもよって食感や味を楽しむものとしてグミやソフトキャンディーがある。これらにはそれぞれ特有の食感があり、広く一般に親しまれている。例えばグミを噛み切る際に必要な力は、噛み出し、切れ始め、切れ終わりなどの各段階で大きく変化する特徴を持っており、ソフトキャンディーを噛み切るには大きな力が必要であるという特徴を持っている。また、両者とも口中で溶けるものであるが、その溶ける速さは滑らかに溶けるというほど速くはない。このような現況下、グミやソフトキャンディーよりも口溶けが良く、しかもほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な菓子がもとめられていた。
特許文献1にはサクサクした歯ごたえと適度の弾力性とを兼ね備えたユニークな食感の砂糖菓子の製法が開示されている。この製法はエアレーション工程を含むものであり、エアレーションによって特有の食感を得ているものである。
【特許文献1】特開2002−315510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、グミやソフトキャンディーよりも口溶けが良く、しかもほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な食感の菓子を提供することにある。糖を主原料とする菓子において口溶けが良好で硬過ぎないものとする場合、甘過ぎないようにする必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、液状糖質に対する砂糖の比率を特定範囲の比率とし、かつ、ゼラチンと食用油脂を配合することによって、グミやソフトキャンディーよりも口溶けが良く、しかもほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な菓子を提供できることを見出し、本発明を完成した。本発明は以下に示すものである。
(1)砂糖、液状糖質、ゼラチン、食用油脂を必須成分として含有する菓子において、
各成分の重量比率が次の範囲にある菓子。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂:1.5〜12重量%
ゼラチン:2〜4重量%
(2)水分が9〜12重量%である(1)に記載の菓子。
(3)比重が1.2〜1.4である(1)または(2)に記載の菓子。
(4)特定の測定条件化において、球形プランジャーを用いた硬さ測定値が1.9N〜
6.9Nである(1)〜(3)のいずれかに記載の菓子。
(5)水分活性が0.6〜0.7の範囲にある(1)〜(4)のいずれかに記載の菓子。
(6)pHが3〜3.6の範囲にある(1)〜(5)のいずれかに記載の菓子。
(7)砂糖および液状糖質に加水し、煮詰めて得られる生地に、ゼラチン水溶液と食用
油脂とフォンダンを混合して、成形型に流し込んで冷却、固化する菓子の製造方法
において、各成分の重量比率を次の範囲とすることを特徴とする当該方法。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂 1.5〜12重量%
ゼラチン 2〜4重量%
(8)フォンダン添加時の生地のBrixが81〜84であることを特徴とする(7)に
記載の製造方法。
(9)フォンダン添加時の生地の温度が75℃〜80℃である(7)または(8)に記載
の製造方法。
(10)(7)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により製造される菓子。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって、グミやソフトキャンディーよりも口溶けが良く、しかもほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な食感の菓子を提供できる。本発明によって得られる菓子は、口溶けが良好で硬過ぎないものでありながら、甘過ぎない新規な菓子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の菓子の製造に使用できる原料としては、例えば以下のものが挙げられる。
砂糖
由来や製法は特に限定されず、グラニュー糖、上白糖、三温糖、等が使用できる。
液状糖質
ソルビトールなどの糖アルコール、還元水飴、酸糖化水飴、ぶどう糖果糖液糖、等が使用できる。
【0007】
食用油脂
特に限定されないが、食用植物油脂が好ましい。中でも融点の低い食用植物油脂が口溶け感に優れるので特に好ましい。
ゼラチン
製法や由来に特に限定されず使用することができる。
【0008】
果汁
特に限定されず、グレープ、オレンジ、マンゴー、グレープフルーツ、ブルーベリー、レモン、イチゴ、カシス、リンゴ、パイナップル、等の果汁が適宜使用できる。
酸味料
特に限定されず、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、等が使用できる。
【0009】
フォンダン
お菓子にかける白いクリ−ム状の砂糖衣。砂糖を煮詰め、冷やして練ったもの。
その他
上記以外にも、必要に応じて、乾燥果実、増粘多糖類、香料、乳化剤、光沢剤、着色料、等を添加することができる。
【0010】
本願明細書中に記載のある試験方法等は以下の通りである。
口溶けモデル試験方法
菓子サンプル形状:扁平楕円回転体状、長さ約23mm、幅約18mm、高さ
約12mm、1粒の重量約3.7g
測定方法:100ml容のビーカーに菓子サンプルを入れ、36℃の温水を菓子サンプル
の19倍重量加える。ビーカー内を36℃に保温しながら、マグネティック
スターラーを用いて600r.p.m.の速度で攪拌し、菓子サンプルが完全
に溶解するのに要した時間を測定する。
【0011】
口溶け口中試験方法
菓子サンプル形状:扁平楕円回転体状、長さ約23mm、幅約18mm、高さ
約12mm、1粒の重量約3.7g
測定方法:菓子サンプルを口中で噛まずに舐め、完全に溶解するのに要した時間を測定
する。10人の平均値とする。
【0012】
球形プランジャーを用いた硬さ測定条件
本願明細書において“特定の測定条件化において、球形プランジャーを用いた硬さ測定値”とは、以下の条件下において測定した値の最大値をいう。
測定機器:FUDOHレオメーターNRM−2010J−CW(株式会社レオテック製)
使用プランジャー:直径7mm、球形プランジャー
菓子サンプル形状:扁平楕円回転体状、長さ約23mm、幅約18mm、高さ
約12mm、1粒の重量約3.7g
測定条件:球形プランジャー移動速度6cm/分、菓子サンプルに接触時から4mm移動
し、菓子サンプルを圧迫する。測定時のサンプル温度は20℃。
【0013】
ワイヤープランジャーを用いた歯切れの測定条件
本願明細書においてワイヤープランジャーを用いて測定した菓子の歯切れとは、以下の条件下において測定した値の経時的変化全体(チャートの波形)をいう。
測定機器:FUDOHレオメーターNRM−2010J−CW(株式会社レオテック製)
使用プランジャー:長さ32mm、直径0.25mmワイヤープランジャー
菓子サンプル形状:扁平楕円回転体状、長さ約23mm、幅約18mm、高さ
約12mm、1粒の重量約3.7g
測定条件:ワイヤープランジャー移動速度6cm/分、菓子サンプルに接触時から
14mm移動し、菓子サンプルを切断する。測定時のサンプル温度は20℃。
【0014】
pH
菓子サンプルを蒸留水で20倍希釈(重量規準)溶解し、25℃にてガラス電極pHメーターを用いて測定した値。
Brix
屈折計の目盛りに使われるBrixを意味する。
【0015】
本願発明の菓子は、例えば以下のようにして製造することができる。

製造方法
砂糖および液状糖質に適当量の水を加え、加熱して溶解および煮詰めを行い、水分13重量%前後の溶液(煮飴)を調製する。これに、予め60℃くらいの温水に溶かしておいたゼラチンを混合する。このとき必要に応じて果汁、酸味料等を予め水に溶かすなどして混合しても良い。続いて食用油脂、乳化剤、フォンダン、香料等を添加・混合する。フォンダン添加時の生地のBrixは81〜84であることが好ましい。また、フォンダン添加時の生地の温度は75℃〜80℃であることが好ましい。
【0016】
そして、成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥する。成形型は特に限定されないが、スターチに窪みをつけて成形型としたものなどが使用できる。型から取り出した後、必要に応じて表面に油脂や光沢剤を塗布することもできる。乾燥後の最終水分は9〜12重量%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の菓子においては、各成分の重量比率が次の範囲にあることが必要である。
・砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
・食用油脂:1.5〜12重量%
・ゼラチン:2〜4重量%
【0018】
また本発明の菓子においては、各種物性値が以下の範囲にあることが好ましい。
・砂糖:液状糖質=3:1あたりが好ましい。
・食用油脂:7.5重量%あたりが好ましい。
・ゼラチン:3重量%あたりが好ましい。
・比重が1.2〜1.4
・水分が9〜12重量%
・特定の測定条件化において、球形プランジャーを用いた硬さ測定値が1.9N〜
6.9N、特に3.4N〜5.8Nが好ましい。
・水分活性0.6〜0.7、特に0.66付近
・pH3〜3.6、特に3.1付近
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
砂糖45重量部、ソルビトール18重量部に水13重量部を加え、加熱して溶解および煮詰めを行い、水分約13重量%の煮飴を調製した。これに、予め60℃くらいの温水4.5重量部に溶かしておいたゼラチン3重量部を混合した。さらにイチゴ濃縮果汁4重量部、クエン酸1.3重量部を予め水0.4重量部に溶かしてから混合した。続いて大豆油7重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.2重量部、フォンダン(固形分90%)8重量部、乾燥イチゴ4重量部、イチゴ香料0.2重量部を添加・混合した。フォンダン添加時の生地のBrixは83だった。また、フォンダン添加時の生地の温度は75℃だった。
【0020】
そして、スターチの成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に植物油脂0.1重量部を塗布した。乾燥後の最終水分は10重量%だった。
このようにして得られたイチゴ味の菓子は、ほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な食感を有し、口溶けが良好で硬過ぎないものでありながら、甘過ぎないものだった。
【実施例2】
【0021】
砂糖45重量部、ソルビトール18重量部に水13重量部を加え、加熱して溶解および煮詰めを行い、水分約13重量%の煮飴を調製した。これに、予め60℃くらいの温水4.5重量部に溶かしておいたゼラチン3重量部を混合した。さらにオレンジ濃縮果汁6重量部、リンゴ酸1.4重量部を予め水0.4重量部に溶かしてから混合した。続いて大豆油2重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.05重量部、フォンダン(固形分90%)8.5重量部、オレンジピール6重量部、オレンジ香料0.2重量部を添加・混合した。フォンダン添加時の生地のBrixは82だった。また、フォンダン添加時の生地の温度は79℃だった。
【0022】
そして、スターチの成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に植物油脂0.1重量部を塗布した。乾燥後の最終水分は11重量%だった。
このようにして得られたオレンジ味の菓子は、ほぼ一定の力で噛み切れる、適度な硬さを有する新規な食感を有し、口溶けが良好で硬過ぎないものでありながら、甘過ぎないものだった。
【0023】
試験例1:口溶けモデル試験
通常のグミキャンディー(果汁グミグレープ、明治製菓株式会社製)は、実施例1で得られた菓子に比べ、約1.3倍の溶解時間を要した。結果を表1に示す。
【0024】
試験例2:口溶け口中試験
通常のグミキャンディー(果汁グミグレープ、明治製菓株式会社製)は、実施例1で得られた菓子に比べ、約1.7倍の溶解時間を要した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
試験例3:歯切れ食感測定試験
測定結果を図1および図2に示す。測定の結果、歯切れ食感は次のようであった。

実施例1で得られた菓子(図1):歯切れが良好で、ほぼ一定の力で噛み切れた。
通常のグミキャンディー(果汁グミグレープ、明治製菓株式会社製)(図2):
弾力があるので歯切れが悪く、破断には比較的大きな力が必要だった。
【0027】
比較例1
砂糖32重量部、ソルビトール31重量部に水13重量部を加え、加熱して溶解および煮詰めを行い、水分約13重量%の煮飴を調製した。これに、予め60℃くらいの温水4.5重量部に溶かしておいたゼラチン3重量部を混合した。さらにイチゴ濃縮果汁4重量部、クエン酸1.3重量部を予め水0.4重量部に溶かしてから混合した。続いて大豆油7重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.2重量部、フォンダン(固形分90%)8重量部、乾燥イチゴ4重量部、イチゴ香料0.2重量部を添加・混合した。フォンダン添加時の生地のBrixは83だった。また、フォンダン添加時の生地の温度は75℃だった。
【0028】
そして、スターチの成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に植物油脂0.1重量部を塗布した。乾燥後の最終水分は10重量%だった。
このようにして得られたイチゴ味の菓子は、噛み切る際に必要な力の変化がはっきりと感じられ、新しさが感じられないものだった。
【0029】
比較例2
砂糖57重量部、ソルビトール6重量部に水13重量部を加え、加熱して溶解および煮詰めを行い、水分約13重量%の煮飴を調製した。これに、予め60℃くらいの温水4.5重量部に溶かしておいたゼラチン3重量部を混合した。さらにイチゴ濃縮果汁4重量部、クエン酸1.3重量部を予め水0.4重量部に溶かしてから混合した。続いて大豆油7重量部、グリセリン脂肪酸エステル0.2重量部、フォンダン(固形分90%)8重量部、乾燥イチゴ4重量部、イチゴ香料0.2重量部を添加・混合した。フォンダン添加時の生地のBrixは83だった。また、フォンダン添加時の生地の温度は75℃だった。
【0030】
そして、スターチの成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に植物油脂0.1重量部を塗布した。乾燥後の最終水分は10重量%だった。
このようにして得られたイチゴ味の菓子は、硬すぎるものとなり、滑らかさを欠くものだった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】… 実施例1の菓子の歯切れ食感測定試験結果を示した図である。
【図2】… 果汁グミの歯切れ食感測定試験結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂糖、液状糖質、ゼラチン、食用油脂を必須成分として含有する菓子において、各成分の重量比率が次の範囲にある菓子。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂:1.5〜12重量%
ゼラチン:2〜4重量%
【請求項2】
水分が9〜12重量%である請求項1に記載の菓子。
【請求項3】
比重が1.2〜1.4である請求項1または2に記載の菓子。
【請求項4】
特定の測定条件化において、球形プランジャーを用いた硬さ測定値が1.9N〜6.9Nである請求項1〜3のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項5】
水分活性が0.6〜0.7の範囲にある請求項1〜4のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項6】
pHが3〜3.6の範囲にある請求項1〜5のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項7】
砂糖および液状糖質に加水し、煮詰めて得られる生地に、ゼラチン水溶液と食用油脂とフォンダンを混合して、成形型に流し込んで冷却、固化する菓子の製造方法において、各成分の重量比率を次の範囲とすることを特徴とする当該方法。
砂糖:液状糖質=2:1〜5:1
食用油脂 1.5〜12重量%
ゼラチン 2〜4重量%
【請求項8】
フォンダン添加時の生地のBrixが81〜84であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
フォンダン添加時の生地の温度が75℃〜80℃である請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法により製造される菓子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−220281(P2008−220281A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64069(P2007−64069)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】