説明

新規なCC−ケモカイン結合タンパク質

新規CC-ケモカイン結合タンパク質は、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)の唾液から単離される。本発明によって調製される化合物は抗炎症性化合物として使用でき、且つCC-ケモカイン関連疾患の治療又は予防において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CC−ケモカインの新規なアンタゴニストおよび特に抗炎症性化合物としての、またCC−ケモカイン関連疾患の治療または予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、白血球の血液から損傷部位への指向性の遊走を媒介する、小分子量の向炎症性分泌タンパク質である。このタンパク質ファミリーを特徴付ける保存されたシステインの位置によって、ケモカインファミリーは、構造上、一連の膜受容体と結合するC、CC、CXCおよびCX3Cケモカインに分類される(Baggiolini M et al.,1997;Femandez EJ and Lolis E,2002)。これらの膜受容体は全て七重らせん状のGタンパク質共役受容体で、ケモカインにその生物活性を標的細胞へ発揮させるが、その状態および/または種類によって特定の受容体の組合せを示すことがある。ケモカインの生理的な影響は、同時に起こる相互作用をもつ複合体および統合された系に起因する。つまり、受容体は、重複するリガンド特異性を有することが多く、そのため単一の受容体は異なるケモカインと結合できる。同様に単一のケモカインも異なる受容体と結合できるのである。
【0003】
構造と活性の関係に関する研究は、ケモカインが、柔軟性のあるアミノ末端領域と2番目のシステインの後の立体配置的に強固なループという、その受容体との相互作用の2つの主な部位を有することを示す。ケモカインは、ループ領域によって受容体と結合すると考えられ、この接触は、受容体活性化をもたらすアミノ末端領域の結合を促進すると考えられる。
【0004】
通常、ケモカインは損傷部位で産生され、白血球の遊走および活性化をもたらし、炎症作用、免疫作用、恒常作用、造血作用、および脈管形成作用に基本的な役割を果たす。従って、これらの分子は、このような作用に関連する疾患における治療的介入の優れた標的候補であると考えられる。ケモカインの阻害、またはそれらの受容体の阻害は、白血球の成熟、補充および活性化、ならびに脈管形成または動脈硬化症に関連する他の病理過程を低下させることができる(Baggiolini M,2001;Loetscher P and Clark−Lewis I,2001;Godessart N and Kunkel SL,2001)。
【0005】
変異抑制性のケモカイン、抗体ならびに受容体を阻害するペプチドおよび小分子阻害剤に加えて、効果的なケモカインアンタゴニストの探索は、一連のウイルスおよび他の生物にまで及び、(それらは)ヒトまたは哺乳類宿主と接触すると、宿主に影響する強力な免疫調節活性を示す。
【0006】
サイトカイン、ケモカイン、およびそれらの受容体のウイルス模倣性は、治療薬の開発のための免疫調節の戦略を示す可能性がある(Alcami A,2003;Lindow M et al.,2003)。近年、吸血性の節足動物(例えば蚊、サシチョウバエおよびダニ)によって発現した免疫調節因子が概説されている(Gillespie,RD et al.,2000;Nuttall PA et al.,2000;Schoeler GB and Wikel SK,2001)。
【0007】
特に、ダニの唾液腺は、特に、抗炎症性、抗止血活性および抗免疫活性を有する生理活性分子の複雑な混合物を産生する。これらには、ヒスタミンを制御する、免疫グロブリンと結合する、または代替的な補体カスケードもしくは他のプロテアーゼを阻害する、生理活性タンパク質が挙げられる。
【0008】
これらの分子の効果は、おそらく、ダニと宿主の接触面で、通常の生得的および後天性の、感染と戦う宿主免疫機構からダニを保護する特権部位を提供し、摂食の成功を確実にすることであろう。
【0009】
さらに、ダニの唾液腺はダニの有する病原体が摂食中に宿主に入る主要経路であると考えられる。それはダニがその唾液腺を過剰な流体およびイオンを宿主に戻すことによって血液の食事を濃縮する手段として用いているためで、おそらくこれらの腺に常在する病原体を伝染させていると思われる。実際、ダニに誘導される宿主免疫性の調節は、ダニの有する病原体の伝染の成功または確立の重要な因子として徐々に認識されてきている。
【0010】
免疫調節活性は、ダニ唾液抽出物において特性決定されている(Alarcon−Chaidez FJ et al.,2003;Bergman DK et al.,2000;Anguita J et al.,2002;Gwakisa P et al.,2001;Leboulle G et al.,2002;Kopecky J et al.,1999;Kovar L et al.,2002;Gillespie RD et al.,2001)。例えば、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)由来の唾液は、抗原に刺激される免疫グロブリンの産生およびIFN−γ、IL−2およびIL−5の発現を用量依存的に阻害する(Matsumoto K et al.,2003)。
【0011】
CXC−ケモカイン結合活性、特にCXCL8/インターロイキン8結合活性が、いくつかのマダニのダニ種(アメリカイヌカマクダニ(Dermacentor reficulatus)、アンブリオンマ・バリエガツム(Amblyomma variegatum)、リピセファルス・アペンディキュラタス(Rhipicephalus appendiculatus)、ハエマフィサリス・イネルミス(Haemaphysalis inermis)、イキソデス・リシヌス(Ixodes ricinus))から調製された唾液中に検出され(特定のタンパク質配列に関しては特性決定されていない)、検出可能なIL−8のレベルの低下をさせること、およびヒト血液顆粒球のIL−8に誘導される走化作用を阻害することを証明している(Hajnicka V et al.,2001;Kocakova P et al.,2003;WO 01/58941;WO 01/48484)。
【0012】
クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)由来の抗原は、抵抗性のある動物では強力な細胞に媒介される免疫応答を誘起するが、感受性の高い動物では誘起しない。ダニの寄生中に導入された唾液は、感受性の高い動物宿主の、保護的な免疫応答を刺激するはずのダニ抗原に応答する能力を低下させる。結果として、その動物はダニ摂食部位への細胞遊走が妨害されたことを提示し、ダニに対する不十分な応答を示すといえる(Ferreira BR et al.,2003)。
【0013】
向炎症性サイトカインマクロファージ遊走阻害因子の同族体が、アメリカキララマダニ(Amblyomma americanum)というダニで検出されている。この配列は、インビトロ機能検定において組換え型ヒトMIFと同程度にヒトマクロファージの遊走を阻害した(Jaworski DC et al.,2001;WO 01/78770)。
【0014】
膨大な量の文献にもかかわらず、ごくわずかな論文しか、種々のダニ組織および/またはダニ種から作成されたライブラリーのランダムシークエンシングおよびディファレンシャルスクリーニングによって同定されたcDNA配列を列挙していない。異なる発生段階でのアメリカキララマダニおよびデルマセント・アンデルソニ(Dermacentor andersoni)について公開されている(Hill CA and Gutierrez JA,2000)、摂食していない、および摂食した雄アメリカキララマダニの唾液腺(Bior AD et al.,2002)、交配する雄シカダニ(Ixodes scapularis)(Packila M and Guilfoile PG,2002)、アンブリオンマ・バリエガツム(Nene V et al.,2002)、リピセファルス・アペンディキュラタス(Nene V et al.,2004)、ならびにシカダニ(Valenzuela JG et al.,2002a;Francischetti IM et al.,2002)の唾液腺のcDNA配列のリストが公開されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、これらの配列の大多数は生化学的または機能的に特性決定されておらず、基本的な細胞機能、例えばダニ唾液腺において既に特性決定された酵素活性のための機能または抗体の応答を誘導する機能、に関与している既知タンパク質との配列類似性というだけで多くのアノテートが記入されている。特に、CC−ケモカイン結合タンパク質として作用するダニタンパク質の指摘はない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くことに、クリイロコイタマダニ(犬ダニ)の唾液はCC−ケモカイン結合活性を含むことが見出された。特に、CC−ケモカインと結合し、リポ多糖(LPS)に誘導される、単球によるTNF−αの放出の産生を阻害できる、rsChBP−1と呼ばれる新規なタンパク質は、現在クリイロコイタマダニcDNAライブラリーからクローニングされ、哺乳類細胞において発現している。このタンパク質、ならびにその誘導体、断片または模倣物は、例えば、炎症のモジュレーターとして、またはワクチン接種のための、ならびにダニの制御およびダニ媒介性病原体の制御のための標的として治療に用いることができる。
【0017】
本発明の第一の目的は、rsChBP−1のアミノ酸配列またはその断片もしくは類似体を含むポリペプチドに関する。本発明の好ましいポリペプチドはCC−ケモカインと結合し、リポ多糖(LPS)に誘導される、単球によるTNF−αの放出の産生を阻害できる。このようなポリペプチドの具体的な例は、rsChBP−1またはその断片である。
【0018】
本発明の第二の目的は、上記定義のようなポリペプチドをコードする核酸分子に関する。このような核酸には、それらから単離されたオリゴヌクレオチドおよび前記分子を含有するベクター、特に発現ベクターも含まれる。
【0019】
本発明の第三の目的は、上記定義のようなポリペプチドを選択的に結合する抗体にある。
【0020】
本発明の第四の目的は、上記定義のようなポリペプチドを発現する宿主細胞およびトランスジェニック非ヒト動物、ならびにこのような細胞およびトランスジェニック非ヒト動物を作製する方法に関する。
【0021】
本発明の第五の目的は、一般に組換え技術を用いて上記定義のようなポリペプチドを調製するための方法である。
【0022】
本発明の第六の目的は、上記定義のようなポリペプチドまたは核酸分子、および製薬上許容される担体またはビヒクルを含む医薬組成物(ワクチンまたは免疫原性組成物を含む)である。
【0023】
本発明の第七の目的は、上記定義のようなポリペプチドまたは核酸分子の医薬としての使用、特に哺乳類において免疫反応または炎症反応を調節するための医薬の調製のための使用、ならびに対応する治療のための方法に関する。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明で明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、炎症反応を調節するための新規な組成物および方法を提供する。より詳細には、本発明は、炎症反応を調節するために用いることのできるCC−ケモカイン結合特性を有する新規なタンパク質を開示する。例では、ダニ唾液に由来するこのタンパク質は、組換え体で発現させ、精製することができ、かつ、CC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害することを示す。
【0026】
本発明の第一の目的は、rsChBP−1ポリペプチド、すなわち、rsChBP−1のアミノ酸配列あるいはその断片または類似体を含む任意のポリペプチドにある。本発明の好ましいポリペプチドは、CC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する。本発明の特定のポリペプチドは、
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を含むタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を含むタンパク質;
c)ストリンジェント条件下で、a)またはb)のタンパク質をコードする核酸配列とハイブリダイゼーション可能な核酸分子によってコードされるタンパク質(前記核酸分子はCC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害するタンパク質をコードする);
d)a)、b)、またはc)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、かつ、CC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害するタンパク質;
e)その断片がCC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する、a)、b)、c)、またはd)のタンパク質の断片;ならびに
f)その断片が免疫調節活性を有する、a)、b)、c)、d)のタンパク質の断片、
からなる群から選択される。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、タンパク質は、
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を有するタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)その断片がCC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する、a)またはb)のタンパク質の断片;
d)その断片が哺乳類へ投与される場合に免疫化活性を有する、a)またはb)のタンパク質の断片;
e)その変異体に1以上のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換されており、前記変異体がCC−ケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する、a)またはb)のタンパク質の活性変異体;
f)その融合タンパク質が、以下の、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、移行シグナル、およびタグ配列から選択される1以上のアミノ酸配列と作動可能なように連結されるa)、b)、c)、d)またはe)のタンパク質を含み、前記融合タンパク質がケモカインと結合し、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する、融合タンパク質
からなる群から選択される。
【0028】
本発明のポリペプチドは、1以上の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、シグナルペプチドを排除するためのエンド/エキソペプチダーゼでの修飾)から、あるいは異種配列をコードする配列(例えば検出および/または精製を改良するタグまたはドメイン)のインフレーム付加から生じる、成熟した形態であり得る。
【0029】
本発明のポリペプチドまたそれらに対応する核酸は、組換えまたは合成のポリペプチドおよび核酸をはじめ、単離された(例えば、それらの天然環境にない)形態であってよい。
【0030】
実施例は、rsChBP−1ポリペプチドがCC−ケモカインと結合すること、およびLPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害する(例えば、減少させる)ために用いることができることを示す。この特性決定は、放射性のCC−ケモカインの使用、または細胞系アッセイを含む機能アッセイをはじめとする、一連の生化学アッセイを活用することによって実施された。実施例で証明されるように、rsCHBP−1ポリペプチドは特にCC−ケモカイン、例えばCCL3/MIP−1αと結合する。rsChBP−1は、LPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出を阻害することが示され、これは免疫調節活性を示す。このような活性(すなわち、ケモカイン結合およびLPSに誘導される、単球によるTNF−αの放出の阻害)のスペクトルは、以下に論じられる本発明のrsCHBP−1ポリペプチドに広範な治療的有用性を付与するものである。
【0031】
本発明の状況の範囲内で、ポリペプチドの断片とは、前記ポリペプチド配列の少なくとも5、6、7、8、9または10個の連続したアミノ酸残基を含む任意の断片を意味する。本発明の特定の断片は、その中に開示されるように、rsCHBP−1タンパク質の15、20、25以上のアミノ酸残基を含む。好ましい断片は、ケモカインとの結合能、および全長タンパク質の少なくとも1つの生物活性、例えば、免疫原活性または免疫調節活性を保持する。
【0032】
この点について、本発明の状況の範囲内で、「免疫調節活性」は、陽性マーカーまたは陰性マーカーのいずれかで免疫応答に作用する、インビトロまたはインビボで検出される任意の活性を意味する。このような活性の例は免疫化活性、免疫抑制活性、抗炎症性活性、向/抗アポトーシス活性、または抗腫瘍活性である。
【0033】
あるいは、断片を、哺乳類へ投与される場合に免疫化活性をもたらすとして同定することができる。これらの断片は、必要に応じて免疫応答を(例えば、ダニまたはダニ媒介性病原生物に対して)産生するための適当な抗原特性および免疫原特性を有しているはずである。文献は、このような機能的な配列をどのようにして候補ワクチン抗原として同定できるのか、ならびに最終的にアジュバントとともに投与される、かつ/または担体と架橋されるのかについて、多くの例を提供している(Mulenga A et al.2000;WO 01/80881;WO 03/030931;WO 01/87270)。rsChBP−1において同定された特異的抗原または抗原の群は、動物において外部寄生虫による感染または疾患を予防するまたは減少させるために用いることができ、外部寄生虫に対する動物の免疫性が外部寄生虫をもつ動物の天然の抗原投与により追加免疫される(WO 95/22603)。最後に、断片も、スクリーニングまたは診断適用のため、全タンパク質に対する抗体の産生のために用いることができる。
【0034】
上記定義の、およびこの配列の組換え変異体を用いて本明細書に例示されるrsChBP−1の特性は、活性変異体において維持することができる、または増強されさえもする。この範疇の分子には前記配列の天然または合成類似体を含み、もし本発明で特性決定された同じ生物活性を、以下の実施例に開示される手段で測定して、匹敵するレベルまたは高いレベルで提示するならば、その1以上のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換されている。
【0035】
特に、用語「活性のある」または「生物学的に活性のある」とは、このような代替化合物が、rsChBP−1のCC−ケモカイン結合特性および免疫調節特性を維持する、または増強さえするはずであるということを意味する。
【0036】
活性変異体分子は、DNA配列をコードするレベルでのコンビナトリアル技術(例えばDNAシャッフリング、ファージディスプレイ/選択)である、部位特異的突然変異誘発技術によって、あるいはコンピューターを使った設計研究またはその適した任意の他の既知技法によって作製することができ、それは変異したまたは短縮されたペプチドまたはポリペプチドに実質的に相当する限定されたセットを提供する。これらの代替分子は、先行技術および以下の実施例に示される教示を用いて当業者が日常的に取得し試験することができる。
【0037】
本発明によれば、これらの活性変異体における好ましい変化は一般に「保存的な」または「安全な」置換として既知であり、非塩基性残基を含む。保存的なアミノ酸置換とは、分子の構造および生物学的機能を保存するために十分に類似する化学特性を有するアミノ酸を用いる置換である。アミノ酸の挿入および欠失も、特にもし挿入または欠失が少数、例えば10個未満、および好ましくは、3個未満のアミノ酸しか関係せず、タンパク質またはペプチドの機能的な構造に重要なアミノ酸を除去または置換しないならば、それらの機能を変更することなく上記定義の配列中に作ることができることは明らかである。
【0038】
文献には、天然のタンパク質の配列および/または構造についての統計学的および物理化学的研究に基づいて保存的アミノ酸置換の選択を行うことのできる多くのモデルが提供されている(Rogov SI and Nekrasov AN,2001)。タンパク質設計実験は、アミノ酸の特定のサブセットの使用が、折り畳み可能でかつ活性のあるタンパク質を産生することができることを示し、タンパク質構造においてより容易に収容することのできる、また機能的かつ構造的なrsCHBP−1同族体およびパラログを検出するために使用することのできるアミノ酸の「同義的」置換の分類に役立つ(Murphy LR et al.,2000)。置換のための同義的なアミノ酸群およびより好ましい同義的な群は、表1に明示されている。
【0039】
rsChBP−1の活性変異は、哺乳類へ投与される場合に前記CC−ケモカイン結合タンパク質の免疫原性を低下させる配列変更に起因している可能性がある。文献に、この範囲で設計および導入することのできる、または特にそれが非ヒト、非哺乳類、または非天然タンパク質である場合の治療タンパク質の安全かつ効果的な投与を可能にする他の機能的な最適化のための、これらの配列変更の多くの例が挙げられている(Schellekens H,2002)。これらの分子を達成するための技術的なアプローチの例には、発展に向けられたもの(Vasserot AP et al.,2003)、合理的な設計に向けられたもの(Marshall SA et al.,2003)、生物情報科学に向けられたもの(Gendel SM,2002)、CD4+T細胞エピトープの同定および中性化に向けられたもの(WO 03/104263;WO 03/006047;WO02/98454;WO 98/52976;WO 01/40281)、他のタンパク質配列との融合に向けられたもの(WO 02/79415;WO 94/11028)、または他の化合物との共役に向けられたもの(WO 96/40792)がある。
【0040】
活性のあるrsChBP−1由来配列は、特に、他のダニ種、特にマダニ科に属するもの、ならびに特にクリイロコイタマダニの属するサブファミリー、リピセファリナ(Rhipicephalinae)に属するもの、同様にイキソジナ(Ixodinae)(シカダニおよびイキソデス・リシヌスを含む)またはアンブリオンミナ(Amblyomminae)(アンブリオンマ・バリエガツムおよびアメリカキララマダニを含む)などの他のサブファミリーに属するものから単離されてもよいrsChBP−1の天然の類似体またはオーソログであり得る。rsChBP−1との何らかの相同性を分け合うポリペプチドをコードするcDNA配列が、アンブリオンマ・バリエガツム(配列番号7)およびシカダニ(配列番号9)から同定されている。このようなcDNA配列によりコードされるポリペプチドのアラインメントは、図5に示される。あるいは、哺乳類、例えばヒトおよびマウスにおいてオーソログを同定してもよい。
【0041】
吸血性の節足動物のゲノムおよびトランスクリプトームについて利用可能な情報は限られており、その大部分はリボソームおよびミトコンドリアの配列に関連していて、それらは保存に基づいて系統学的関連を決定するために調査されたものである(Murrell A et al.,2001)。ダニゲノムデータは部分的にかつ予備的な形式でしか入手できない(Ullmann AJ et al.,2002)が、CC−ケモカイン結合タンパク質をコードするダニ遺伝子のさらなる分析は、特に、既に証明されているように、唾液腺タンパク質における任意の有意な遺伝子多型を検出するために(Wang H et al.,1999)、特定の方法および条件を適用することによりマダニ科のダニから抽出できるゲノムDNAを用いて行うことができる(Hill CA and Gutierrez,J A 2003)。これらの生物のゲノムおよびタンパク質配列は、それらの生理学および生物学を理解するために重要であり、従って宿主、寄生虫、および寄生虫の有する病原体との関連において本発明のタンパク質の役割を理解するために有用な情報を提供する(Valenzuela JG,2002b)。
【0042】
本発明においてrsChBP−1と相同なタンパク質に関して記載されるCC−ケモカイン結合活性の生化学的および生理学的な特性決定は、ダニおよびダニの有する病原体の研究のために近年改良された技術、例えば二次元ゲル電気泳動(Madden RD et al.,2004)またはRNA干渉(Aljamali MN et al,2003)を適用することによって実施できる。さらに、さらなる研究を行って、これらのタンパク質上のCC−ケモカイン認識部位およびCC−ケモカイン拮抗作用の機構をマッピングする(Seet BT et al.,2001;Beck CG et al.,2001;Bums JM et al.,2002;Webb LM et al.,2004)、または関連性のある翻訳後修飾を同定する(Alarcon−Chaidez FJ et al.,2003)ことができる。
【0043】
本発明の別の目的は、異種ドメイン、例えば、以下の、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリンの定常領域(Fc領域)、多量体化ドメイン、移行シグナル、およびタグ配列(例えば親和性によって精製を助ける、HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAAGペプチド、またはMBPなど)から選択できる1以上のアミノ酸配列と作動可能なように連結されている上記定義のようなrsChBP−1ポリペプチドを含む融合タンパク質である。
【0044】
融合タンパク質という状況において、「作動可能なように連結されている」という表現は、rsChBP−1ポリペプチドと付加的なアミノ酸配列が直接的にまたはスペーサー残基(例えば、リンカー)を介してのいずれかでペプチド結合によって会合していることを示す。このように、融合タンパク質を組換えによって、以下に論じるようにそれをコードする核酸分子の宿主細胞での直接発現によって、産生することができる。また、必要であれば、融合タンパク質に含めた付加的なアミノ酸配列を、産生/精製プロセスの終わりに、またはインビボで、例えば以下に論じるように適当なエンドペプチダーゼ/エキソペプチダーゼによって除去することができる。異種部分は、rsChBP−1ポリペプチドのN末端またはC末端部分のいずれかと作動可能なように連結されていてよい。
【0045】
この部分および/またはリンカーの設計、ならびに、構築、精製、検出、成熟、および融合タンパク質の使用のための方法および戦略は文献で広く考察されている(Nilsson J et al.,1997;「Applications of chimeric genes and hybrid proteins」Methods Enzymol.Vol.326−328,Academic Press,2000)。概して、異種配列は、有効な方法で元のタンパク質の治療活性を損なうことなく付加的な特性(例えば、CC−ケモカイン結合)をもたらすよう意図されている。このような付加的特性の例は、より簡易な精製手順、より長期にわたる体液中の半減期、さらなる結合部分、細胞内タンパク質分解の消化による成熟、組換え体産生中の安定性、または細胞外局在性である。この後者の特徴は、これらのポリペプチドの単離および精製が促進され、かつCC−ケモカインが通常活性である場所にポリペプチドを局在させるので、上記定義に含まれる特定の融合タンパク質またはキメラタンパク質の群を明確にするために特に重要である。
【0046】
rsChBP−1ポリペプチドと融合させる1以上のこれらの配列の選択は、前記タンパク質の組換えタンパク質としての特定の使用および/または精製プロトコールの役に立つ。これらの配列は、以下の3つの基本的な異種配列の群から選択できる。
【0047】
このような配列の第一の群は、組換えDNA技術を用いるタンパク質の分泌および精製を助ける配列、例えば、シグナルペプチドおよび移行シグナル(Rapoport TA et al.,1996)、または親和性によって精製を助けるタグ配列(HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAG、またはMBP)からなる。
【0048】
異種配列からなる第二の群は、タンパク質のより優れた安定性および生物活性を可能にするものに代表される。
【0049】
タンパク質の長期にわたる半減期を可能にする戦略の典型的な例は、ヒト血清アルブミンとの、または循環しているヒト血清アルブミンとの結合を可能にするペプチドおよび他の修飾された配列(例えば、ミリストイル化)との融合である(Chuang VT et al.,2002;Graslund T et al.,1997;WO 01/77137)。あるいは、例えば脳において、さらなる配列によって特異的局在性への標的化を助けてもよい(WO 03/32913)。
【0050】
組換えタンパク質の安定性を改良する別の方法は、被験体へ投与された場合に、二量体、三量体などの形成を可能とする他のタンパク質から単離された融合ドメインによるタンパク質の多量体を生成することである。本発明のポリペプチドの多量体化を可能とするタンパク質配列の例は、hCG(WO 97/30161)、コラーゲンX(WO 04/33486)、C4BP(WO 04/20639)、Erbタンパク質(WO 98/02540)、またはコイルドコイルペプチド(WO 01/00814)などのタンパク質から単離されたドメインである。
【0051】
このような融合タンパク質の周知の例は、ヒト免疫グロブリンタンパク質の定常/Fc領域に代表され、ヒト免疫グロブリンに共通の二量体形成を可能にする。治療タンパク質および免疫グロブリン断片を含む融合タンパク質を作製するための異なる戦略が文献に開示されている(WO 91/08298;WO 96/08570;WO 93/22332;WO 04/085478;WO 01/03737,WO 02/66514)。例えば、成熟RSCHBP−1をコードする核酸配列を、元のrsChBP−1シグナル配列(または任意の他の適当なシグナル/移行配列)をコードする核酸配列と融合した発現ベクターにその5’末端で、およびヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1の定常領域をコードする核酸配列(NCBIアクセッション番号CAA75302;セグメント246〜477)にその3’末端でクローニングすることができる。生じるベクターを用いてCHOまたはHEK293宿主細胞株を形質転換することができ、N末端にrsChBP−1およびC末端にIgG1配列を有する組換え融合タンパク質を安定して発現および分泌するクローンを選択することができる。次にこのクローンを、産生を拡大するため、および組換え融合タンパク質を培地から精製するために用いることができる。あるいは、ヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1の定常領域をコードする核酸とrsChBP−1の位置を逆にすることができ、生じるタンパク質をさらにrsChBP−1の元のシグナル配列、または任意の他の適当なシグナル/移行配列を用いて発現させ、分泌させることができる。一方がrsChBP−1−Fc融合タンパク質を発現し、他方が異なるFcに基づく融合タンパク質(例えば別のCC−ケモカイン結合タンパク質)を発現する2つの異なる構築物が同じ宿主細胞中に同時発現した場合(WO 00/18932)、これらの技術を用いて、ヘテロ二量体を精製することも可能である。
【0052】
さらなる異種配列の群は、rsChBP−1に示される機能活性に相乗作用を与える、または増幅させる、さらなる機能活性を付加するものに代表される。膜結合タンパク質(例えばCC−ケモカイン受容体)の細胞外ドメインから単離されているか、または分泌タンパク質に存在すると予想されるこれらの配列は、CC−ケモカインアンタゴニストと同様に活性があり、一般的に免疫調節活性を有するものと思われる。
【0053】
前述のように、融合タンパク質に含めた付加的な配列を、例えば産生または精製プロセスの終わりに、または必要であればインビボで、例えば適当なエンドペプチダーゼ/エキソペプチダーゼによって除去してよい。例えば、組換えタンパク質に含めたリンカー配列は、インビボかインビトロのいずれかで異種配列から所望のタンパク質を酵素によって切断するために用いることのできる、エンドペプチダーゼ(例えばカスパーゼ)の認識部位を提示する可能性がある。あるいは、もし発現させるタンパク質配列が開始メチオニンを含まない場合(例えば、もし配列がシグナルペプチドを含まず、タンパク質の成熟配列だけをコードする場合)、本発明のタンパク質を、開始メチオニンを含む宿主細胞内で正確に発現させることができる。次にこの付加的なアミノ酸を、生じる組換えタンパク質中で維持するか、またはエキソペプチダーゼ、例えばメチオニンアミノペプチダーゼを用いて、文献中に開示される方法に従って除去してよい(Van Valkenburgh HA and Kahn RA,2002;Ben−BassatA,1991)。
【0054】
本発明のポリペプチドのさらなる変異体または類似体は、ペプチドまたはポリペプチドの性質がアミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティー、および/またはペプチド骨格のレベルで化学的に修飾されている、ペプチド模倣物(ペプチドミメティクスとも呼ばれる)の形態で得ることができる。これらの変更は、精製、有効性および/または薬物動態学的特徴の改良されたアンタゴニストを提供することを意図する。例えば、ペプチドがペプチダーゼによる切断に感受性が高く、その後の被験体への注射が問題である場合、特に感受性の高いペプチド結合を非開裂型のペプチド模倣物と置換することにより、ペプチドを一層安定させることができ、従って治療薬としてより有用にする。同様に、L−アミノ酸残基の置換は、ペプチドのタンパク質分解への感受性をより低くする標準的な方法であり、最終的に、ペプチド以外の有機化合物に一層類似する。また、アミノ末端保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル、アセチル、テイル(theyl)、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル(azelayl)、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル(methoxyazelayl)、メトキシアジピル、メトキシスベリル、および2,4−ジニトロフェニルなども有用である。有効性を増加させ、活性を長期化させ、精製を容易にし、および/または半減期を増加させる他の多くの修飾が当分野で既知である(WO 02/10195;Villain M et al.,2001)。ペプチド模倣物に含まれるアミノ酸誘導体の好ましい代替的「同義」群は、表IIに明示されている。「アミノ酸誘導体」とは、遺伝子的にコードされた20種類の天然に存在するアミノ酸の1つ以外のアミノ酸またはアミノ酸様化学物質を意図する。特に、アミノ酸誘導体は、直鎖状、分枝鎖状、または環状であり得る置換または非置換アルキル部分を含んでよく、1以上のヘテロ原子を含んでもよい。アミノ酸誘導体は新規に作成するか、または商業ソース(Calbiochem−Novabiochem AG,Switzerland;Bachem,USA)から入手することができる。ペプチド模倣物、ならびに非ペプチドミメティクスの合成および開発のための技術は、当分野で周知である(Hruby VJ and Balse PM,2000;Golebiowski A et al.,2001)。タンパク質構造および機能を調査かつ/または改良するため、インビトロおよびインビボ双方の翻訳系を用いて、非天然アミノ酸をタンパク質へ組み込むための種々の方法論も文献に開示されている(Dougherty DA,2000)。
【0055】
以下に論じるように、本発明のポリペプチドは、組換え技術および化学合成技術をはじめ、当分野で既知の任意の手順によって調製してよい。
【0056】
本発明のさらなる目的は、上記定義のようなポリペプチド、すなわち、rsChBP−1のアミノ酸配列またはその断片もしくは類似体を含むポリペプチド、をコードする核酸分子にある。本発明の特定の核酸分子は、
a)rsChBP−1のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸分子(配列番号3);
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸分子(配列番号5);
c)ストリンジェント条件下で、a)またはb)の核酸分子とハイブリダイゼーション可能であって、CC−ケモカインと結合するタンパク質をコードする核酸分子;
d)a)またはb)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、CC−ケモカインと結合するタンパク質をコードする核酸分子;
e)a)またはb)の核酸分子によってコードされるタンパク質の、CC−ケモカインと結合する断片をコードする核酸分子;および
f)a)、b)、c)、d)、e)の核酸分子の縮重変異体
からなる群から選択される。
【0057】
特に、核酸分子は以下の
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を有するタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)CC−ケモカインと結合する、タンパク質a)、またはb)の断片;
d)哺乳類へ投与される場合に免疫化活性を有する、a)またはb)のタンパク質の断片;
e)その変異体に1以上のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換されていて、その変異体がCC−ケモカインと結合する、a)、b)、c)、またはd)のタンパク質の活性変異体;
f)以下の、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、移行シグナル、およびタグ配列から選択される1以上のアミノ酸配列と作動可能なように連結されるa)、b)、c)、d)またはe)のタンパク質を含む融合タンパク質
からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0058】
本発明の状況の範囲内で、「縮重変異体」とは、遺伝コードの縮重によって参照核酸と同じアミノ酸配列をコードする全ての核酸配列を意味する。
【0059】
さらに、用語「核酸分子」は、核酸の全ての異なる種類を包含し、限定されるわけではないが、デオキシリボ核酸(例えば、DNA、cDNA、gDNA、合成DNAなど)、リボ核酸(例えば、RNA、mRNAなど)およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる。好ましい実施形態では、核酸分子はDNA分子、例えば二本鎖DNA分子であり、一般にはcDNAである。
【0060】
もし主たる実施形態が、実施例に開示されるrsChBP−1のDNAおよびタンパク質配列に向けられるならば、特定の実施形態には、一連のrsChBP−1に関連する配列、例えば中程度にストリンジェントな条件下(予洗溶液は5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)、およびハイブリダイゼーション条件は50℃、5×SSG、一晩)で、rsChBP−1をコードするDNA配列とハイブリダイズ可能なDNAまたはRNA配列、ならびにCC−ケモカイン結合タンパク質をコードする配列が挙げられる。
【0061】
例えば、本発明は、rsCBP−1(配列番号3)を発現するクリイロコイタマダニのcDNAの配列を提供する。
【0062】
他の好ましい実施形態では、rsChBP−1関連配列は、rsChBP−1とアミノ酸配列が少なくとも約70%、好ましくは、80%、および最も好ましくは90%同一であるタンパク質をコードするDNA分子である。この値は、任意の専用プログラム、例えばFASTA(Pearson WR,2000)を用いて計算でき、断片または部分配列には、断片に存在するrsChBP−1の部分について計算される。
【0063】
別の好ましい実施形態は、上記定義のような核酸分子の配列の断片を含む、または上記定義のような核酸分子の配列の一領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドは一般に5〜100ヌクレオチド長を含み、例えば、少なくとも約20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、および少なくとも約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。これらのオリゴヌクレオチドは、rsChBP−1をコードする転写物中の非/コード配列および試料中の関連する配列を(例えばPCRまたはサザンブロット法によって)検出するために、またはrsChBP−1の組換え変異体を作製およびサブクローニングするために用いることができる。
【0064】
さらなる実施形態では、上記定義のような核酸分子を、クローニングベクターまたは発現ベクターに含めることができる。この点で、本発明の特定の目的は、上記定義のような核酸分子と作動可能なように会合するプロモーター、特に組織特異的な、構成性プロモーターまたは制御された(例えば誘導性)プロモーターを含む発現ベクターにある。ベクターは、任意の付加的な調節エレメント、例えばターミネーター、エンハンサー、複製起点、選択マーカーなどを含んでよい。ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、ファージ、人工染色体などであってよい。
【0065】
特定の態様では、このベクターは、
a)本発明のDNA;および
b)発現カセット;
を含み得、前記DNA(a)は、配列(b)に含まれる組織特異的な、構成性または誘導性プロモーターと作動可能なように会合する。
【0066】
所望により、もしコーディング核酸(すなわち、配列(a))が開始メチオニンのコドンを含まない場合、(例えば、もしこの配列がシグナルペプチドを含まずにタンパク質の成熟配列のみをコードする場合)、ベクターまたは発現カセットも、開始メチオニンで正確に発現されるように、このような配列の5’でクローニングされるATG配列を含んでよい。次にこの付加的アミノ酸を、生じる組換えタンパク質中で維持するか、または文献に開示される方法に従って、酵素、例えばメチオニンアミノペプチダーゼによって除去してよい(Van Valkenburgh HA and Kahn RA,2002;Ben−Bassat A,1991)。
【0067】
このベクターは、本発明のタンパク質の発現を組織培養においてだけでなく、実験上または治療上の理由のため、インビボにおいても可能にさせ得る。例えば、本発明のタンパク質を過剰発現している細胞を動物モデルの中へ移して(例えばカプセル化して)、細胞をヒトへ適用する前にタンパク質の一定の投与の生理学的効果をチェックすることができる。あるいは、ベクターを、レトロウイルスに媒介される遺伝子導入、または動物において内因性プロモーターの制御下で、ベクターまたは単離されたDNAコード配列の導入および発現を可能にする任意の他の技術に用いることができる。このアプローチは、本発明のタンパク質が構成的に、または制御された方法(例えば特定の組織において、および/または特定の化合物を用いる誘導に従って)で発現される、トランスジェニック非ヒト動物の作製を可能にする。類似のアプローチを他の非哺乳類ケモカイン結合タンパク質に適用したところ、種々の発展的かつ病理学的効果が示された(Jensen KK et al.,2003;Pyo R et al.,2004;Bursill CA et al.,2004)。
【0068】
本発明の別の目的は、上記に示したクローニングベクターまたは発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞である。これらのベクターは、本発明のポリペプチドの調製のプロセスに用いることができる。この点に関して、本発明の目的は、rsChBP−1ポリペプチドを発現および回収することを可能にするまたは促進する条件下で上記定義のような組換え細胞を培養することを含む、上記定義のようなrsChBP−1ポリペプチドを調製する方法である。ベクターが細胞外間隙に分泌されたタンパク質としてポリペプチドを発現する場合、タンパク質は、さらなるプロセシングを考慮して培養細胞から一層容易に回収および精製することができる。
【0069】
多くの図書および概説、例えばOxford University Press出版の「実践アプローチ」シリーズの何冊か(「DNA Cloning 2:Expression Systems」,1995;「DNA Cloning 4:Mammalian Systems」,1996;「Protein Expression」,1999;「Protein Purification Techniques」,2001)に、ベクターおよび原核生物または真核生物の宿主細胞を用いてどのようにクローニングし、組換えタンパク質を作製するのかについての教示が記載されている。特に、実施例は、rsCHBP−1をコードするDNA配列が、いったんクリイロコイタマダニcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって同定されると、どのようにしてORFを適合させ、修飾し、対応する組換えタンパク質を得るために発現ベクターへ挿入するかを示している。
【0070】
概して、ベクターはエピソームの、または非/相同的な組み込みベクターであり得、それらを形質転換するための任意の適した手段(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなど)によって適当な宿主細胞内に導入することができる。特定のプラスミド、ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターを選択する際に重要な因子には、ベクターを含む受容細胞を認識し、ベクターを含まない受容細胞から選択する容易さ;特定の宿主に所望するベクターのコピー数;ならびに異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」可能なことが望ましいか否か、が挙げられる。ベクターは、適当な転写開始/終結調節配列の制御下で、前記細胞において恒常的に活性であるかまたは誘導性であるとして選択された本発明の単離されたタンパク質、または原核生物または真核生物の宿主細胞中にそれを含む融合タンパク質の発現を可能にするはずである。このような細胞中に実質的に濃縮された細胞株を、その後単離して安定した細胞株を準備することができる。
【0071】
真核生物宿主細胞(例えば酵母、昆虫または哺乳類細胞)には、宿主の性質に応じて異なる転写および翻訳調節配列を用いてよい。それらはウイルス起源、例えばアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなど、調節シグナルが高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関連する起源に由来してよい。その例はヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどである。抑制および活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択すると、遺伝子の発現を調節することができる。導入されたDNAによって定常的に形質転換された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能とする1以上のマーカーをやはり導入することによって選択できる。また、マーカーは、栄養要求性(auxotropic)の宿主に対して光栄養、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、または銅などの重金属を提供することができる。選択マーカー遺伝子は、発現させるDNA遺伝子配列に直接連結させるか、または同時トランスフェクションによって同一細胞内へ導入することができる。本発明のタンパク質の至適な合成には付加的要素も必要とされるであろう。
【0072】
組換え産生のための宿主細胞は、原核生物かまたは真核細胞のいずれかであってよい。特に適した原核細胞としては、組換えバクテリオファージで形質転換された細菌(例えば枯草菌(Bacillus subtilis)または大腸菌(E.coli))、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターが挙げられる。好ましいのは、真核生物宿主細胞、例えば哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウス、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。それは、正確な折り畳みまたは正確な部位でのグリコシル化などの翻訳後修飾をタンパク質分子へもたらすからである。代替的な真核生物宿主細胞は、酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞である。酵母細胞もグリコシル化などの翻訳後ペプチド修飾を実行できる。酵母において所望のタンパク質の産生に利用することのできる、強力なプロモーター配列および高いコピー数のプラスミドを利用する多数の組換えDNA戦略が存在する。酵母はクローン化された哺乳類遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチドを分泌する(すなわち、プレペプチド)。
【0073】
長期間の、組換えポリペプチドの高収率産生のためには、安定発現が好ましい。例えば、注目されるポリペプチドを安定して発現する細胞株は、ウイルス起源の複製および/または内在性の発現要素、ならびに同一ベクター上または個別のベクター上の選択マーカー遺伝子を含むことができる発現ベクターを用いて形質転換することができる。ベクターの導入の後、細胞を選択培地に交換される前に濃縮培地中で1〜2日間増殖させる。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、その存在によって、導入された配列を首尾よく発現する細胞の増殖および回収が可能となる。細胞種に適当な組織培養技術を用いて定常的に形質転換された細胞の耐性クローンを増殖させてもよい。このような細胞中に実質的に濃縮された細胞株を、その後単離して安定した細胞株を準備することができる。
【0074】
本発明の組換えポリペプチドの高収率産生の特に好ましい方法は、米国特許第4,889,803号に記載のようにメトトレキサートのレベルを連続的に増加させて用いて、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)増幅をDHFR欠損CHO細胞において用いることである。得られたポリペプチドはグリコシル化された形態であり得る。
【0075】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当分野で既知であり、限定されるものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK293、ボーズメラノーマおよびヒト肝細胞癌(例えばHep G2)細胞および多数の他の細胞株をはじめ、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化した細胞株が挙げられる。バキュロウイルス系の中で、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料はキットの形で、とりわけInvitrogen社から市販されている。
【0076】
あるいは、本発明のポリペプチドを人工的な合成によって調製してよい。その際、化学合成技術の例は、固相合成および液相合成である。固相合成としては、例えば、合成させるペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸を有機溶媒に不溶性の支持体と結合させ、そのアミノ基および側鎖官能基を適当な保護基で保護したアミノ酸がカルボキシ末端からアミノ末端へ向かって順に一つ一つ縮合される反応と、樹脂またはペプチドのアミノ基の保護基と結合したアミノ酸が放出される反応を交互に繰り返すことによって、ペプチド鎖をこのように伸長させる。固相合成法は主として、用いる保護基の種類に応じてtBoc法とFmoc法とに分類されている。一般に用いられる保護基としては、アミノ基には、tBoc(t−ブトキシカルボニル)、CI−Z(2−クロロベンジルオキシカルボニル)、Br−Z(2−ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4’−ジメトキシジベンズヒドリル(dimethoxydibenzhydryl))、Mtr(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスフホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)およびCl2−Bzl(2,6−ジクロロベンジル);グアニジノ基には、NO2(ニトロ)およびPmc(2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル);およびヒドロキシル基には、tBu(t−ブチル)が挙げられる。所望のポリペプチドの合成の後、それを脱保護反応に付し、固相支持体から切り離す。このようなペプチドの切断反応は、Boc法にはフッ化水素またはトリフルオロメタンスルホン酸を用いて実施してよく、Fmoc法にはTFAを用いて実施してよい。rsCHBP−1とサイズの匹敵する完全な合成タンパク質が文献に開示されている(Brown A et al.,1996)。
【0077】
本発明のポリペプチドは、産生すること、処方すること、投与すること、または一般的に所望の使用方法および/または産生方法に従って選好され得る他の代替形で用いることができる。本発明のタンパク質は、例えば実施例に示されるようにグリコシル化によって、翻訳後に修飾することができる。
【0078】
概して、本発明のタンパク質は、活性のある画分、前駆体、塩、誘導体、共役体または複合体の形態で提供され得る。
【0079】
前述のとおり、用語「活性のある」または「生物学的に活性のある」とは、このような代替化合物が、rsChBP−1のCC−ケモカイン結合特性および/または免疫調節特性を維持する、または増強さえするはずであるということを意味する。
【0080】
用語「画分」とは、単独または関連分子またはそれと結合した残基、例えば糖またはリン酸残基と組み合わせた、化合物自体のポリペプチド鎖の任意の断片を指す。このような分子もまた、通常一次配列を変更しない他の修飾、例えばペプチドのインビトロ化学誘導体化(アセチル化またはカルボキシル化)の結果として、ならびに、その合成および/またはさらなるプロセシング段階中に生じる、タンパク質翻訳後の修飾、例えばリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホトレオニン残基の導入)による、またはグリコシル化(ペプチドをグリコシル化に作用する酵素、例えば、哺乳類のグリコシル化または脱グリコシル化酵素に曝露することによる)による修飾によって生じる。特に、rsChBP−1はダニ唾液、および本明細書に開示される多少高度にグリコシル化されている両組換え体において特性決定された。この修飾は、適当な修飾酵素を用いてインビトロで、または組換え産生に適当な宿主細胞を選んでインビトロで実施してよい。
【0081】
「前駆体」は、細胞を身体へ投与する前または後に代謝的および酵素的プロセシングにより本発明の化合物へと変換され得る化合物である。
【0082】
本明細書において用語「塩」とは、本発明のペプチド、ポリペプチド、またはその類似体のカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の双方を指す。カルボキシル基の塩は当分野で既知の手段によって形成でき、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄または亜鉛塩など、および、形成時に有機塩基を含む、例えば、アミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカインなどを含む塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸、例えば塩酸または硫酸を含む塩、および、有機酸、例えば、酢酸またはシュウ酸を含む塩が挙げられる。このような塩はいずれも本発明のペプチドおよびポリペプチドまたはそれらの類似体と実質的に類似の活性を有するはずである。
【0083】
本明細書において用語「誘導体」とは、既知の方法に従ってアミノ末端および/またはカルボキシ末端のアミノ酸部分の側鎖に存在する官能基から調製することのできる誘導体を指す。このような誘導体としては、例えばカルボキシル基のエステルまたは脂肪族アミドおよび遊離アミノ基のN−アシル誘導体または遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体が挙げられ、例えばアルカノイル基またはアロイル基のようにアシル基で形成されている。
【0084】
本発明のタンパク質は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞傷害性薬剤、および薬剤送達物質から選択される分子を含む活性のある共役体または複合体の形態であり得る。様々な理由のために、例えばCC−ケモカインまたは他のタンパク質(放射性標識または蛍光標識、ビオチン)との相互作用、治療効力(細胞傷害性薬剤)の検出を可能にするため、あるいは薬剤送達効果の点から、物質、例えばポリエチレングリコールおよび他の天然または合成ポリマーを改良するため、当分野で既知の分子および方法を用いて、有用な共役体または複合体を作製することができる。(Harris JM and Chess RB,2003;Greenwald RB et al.,2003;Pillai O and Panchagnula R,2001)。
【0085】
これらのrsChBP−1に由来する化合物は、内部または末端の位置で適当な残基の部位特異的修飾を受けて作製することができる。残基は、もしそれらがポリマーの結合に従う側鎖を有する(すなわち、アミノ酸の側鎖が官能基、例えば、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジンなどを有する)ならば、結合に使用できる。あるいは、これらの部位の残基を、ポリマーの結合に従う側鎖を有する異なるアミノ酸で置換してもよい。
【0086】
例えば、直接ペグ化を可能にするさらなるシステインを、組換えDNA技術または酵素によって、成熟タンパク質配列のN末端またはC末端に添加することができる。あるいは、このシステインを、例えばグリコシル化部位に相当する、残基の置換によってタンパク質に含めてもよい。
【0087】
さらに、遺伝子的にコードされたアミノ酸の側鎖をポリマー結合のために化学的に修飾することができる、あるいは適当な側鎖官能基を有する非天然アミノ酸を用いることができる。ポリマーは、アンタゴニストの特定の位置に天然に存在するアミノ酸の側鎖と、あるいはアンタゴニストの特定の位置に天然に存在するアミノ酸を置換する天然または非天然アミノ酸の側鎖と結合する可能性があるだけでなく、炭水化物または標的位置でアミノ酸の側鎖と結合している他の部分と結合する可能性もある。
【0088】
これらの目的に適したポリマーは、生体適合性、つまり生態系に無毒であり、このようなポリマーが多く知られている。このようなポリマーは、本来疎水性または親水性であってよく、生分解性であってよく、非生分解性であってよく、またはその組合せであってよい。これらのポリマーとしては、天然ポリマー(例えばコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸)、ならびに合成ポリマー(例えばポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物)が挙げられる。疎水性の非分解性ポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、およびポリメチルメタエリレート(methaerylates)が挙げられる。親水性の非分解性ポリマーとしては、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、およびその共重合体が挙げられる。好ましいポリマーは、連続的な繰り返し単位としてエチレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0089】
好ましい結合方法には、ペプチド合成および化学的連結の組合せを用いる。水溶性ポリマーの結合は、特にタンパク質のアミノ末端領域で生分解性のリンカーによるものが有利であろう。このような修飾は、タンパク質を、リンカーの分解の際にポリマー修飾をせずにタンパク質を放出する、前駆体(または「プロドラッグ」)の形態でもたらす働きをする。
【0090】
また、本発明は、本発明のタンパク質に免疫反応性であり、動物をこれらのタンパク質で免疫化して産生できる抗体、特にモノクローナル抗体を提供し、それは宿主細胞によって組換えタンパク質として発現された天然の起源から精製することができる、あるいは化学的に(完全なタンパク質として、またはタンパク質の特異的エピトープを模倣するペプチドとして)合成することができる。rsChBP−1とrsChBP−1由来タンパク質を結合するこれらの抗体は、例えば、診断的適用(例えばダニ唾液と接触している動物を同定するため)に用いられ得る。文献中の教示に従って、動物を免疫化することおよびこれらの抗体を操作することによって、これらの動物の作製を実施することができる(Kipriyanov SM and Le Gall F,2004;Holt LJ et al.,2003;Presta L,2003)。
【0091】
本発明のタンパク質は、多少精製された形態で提供される。実施例は、組換えrsChBP−1を発現するために必要な核酸をどのようにクローニングするか、CC−ケモカインの親和性およびクロマトグラフ技術を用いて組換えまたは天然のrsChBP−1をどのように精製するか、ならびにCC−ケモカイン結合活性を検出するためのアッセイによってこのタンパク質を正確に発現している細胞をどのように選択するかを示す。
【0092】
特に、本発明の天然、合成または組換えアンタゴニストの精製は、この目的のために既知の方法、すなわち抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動などを含む従来の手順のいずれか1つによって実施できる。本発明のタンパク質を精製するために好んで用いられるさらなる精製手順は、モノクローナル抗体または親和性基を用いるアフィニティークロマトグラフィーである。標的タンパク質と結合するモノクローナル抗体または親和性基は、作製されて、カラム内に含まれているゲルマトリックス上に固定化される。タンパク質を含有する不純な調製物をカラムに流す。タンパク質は、ヘパリンまたは特異的抗体によってカラムと結合するが、不純物はカラムを通過する。洗浄した後、タンパク質をpHまたはイオン強度の変化によってゲルから溶出する。あるいは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を使用してもよい。溶出は通常タンパク質精製に用いられる水−アセトニトリル系溶媒を用いて実行できる。精製された本発明のタンパク質の調製物は、本明細書において前記タンパク質の少なくとも1%(乾物重量で)、および好ましくは少なくとも5%の調製物を指す。
【0093】
本発明の別の目的は、有効成分として上記定義のようなrsChBP−1ポリペプチド(タンパク質の形態および上述のその代替形態で)、および適した希釈剤または担体を含む医薬組成物である。
【0094】
本発明の別の目的は、上記定義のようなrsChBP−1ポリペプチドをコードする核酸分子、あるいは対応するベクターまたは組換え宿主細胞、および適した希釈剤または担体を含む医薬組成物である。
【0095】
本発明のさらなる目的は、被験体において免疫応答を調節する際に使用するための医薬の製造のための、上記定義のようなrsChBP−1ポリペプチド、またはそれをコードする核酸の使用に関する。
【0096】
これらの組成物は、特に哺乳類において免疫反応または炎症反応を調節するための医薬として、およびさらに特に抗炎症性化合物として使用できる。
【0097】
概して、多くのヒトおよび獣医科の疾患にCC−ケモカインが関与していると考えると、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質は動物におけるCC−ケモカイン関連疾患の治療または予防のためのCC−ケモカインのアンタゴニスト(例えばCCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、またはCCL2/MCP−1)として使用できる。CC−ケモカイン関連疾患の網羅的でないリストには、炎症性疾患、自己免疫疾患、免疫疾患、感染、アレルギー性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、消化管疾患、神経疾患、敗血症、移植拒絶に関連する疾患、または線維性疾患が含まれる。これらの疾患の限定されない例は、次の、関節炎、リウマチ関節炎(RA)、乾癬の関節炎、乾癬、リウマチ関節炎、再狭窄、敗血症、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、全身性硬化症、皮膚炎、多発性筋炎、糸球体腎炎、線維症、アレルギー性または過敏性疾患、皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、線維腫、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、敗血性ショック、ウイルス感染、癌、子宮内膜症、移植、移植片対宿主病(GVHD)、心臓および腎臓の再潅流傷害、ならびにアテローム性動脈硬化症である。
【0098】
本発明のタンパク質、または特異的断片は、哺乳類において免疫反応または炎症反応を調節するための医薬組成物、例えば抗炎症性組成物の製造の際の有効成分として使用できる。あるいは、本発明のタンパク質、または特異的断片は、寄生虫、ウイルス、または細菌に対する哺乳類のワクチン接種のための医薬組成物の製造の際の有効成分として使用できる。このような医薬組成物の調製のための方法は、rsChBP−1を製薬上許容される希釈剤または担体と結合させることを含む。
【0099】
有効成分として本発明のタンパク質を含有する医薬組成物は、インビボでCC−ケモカインを結合すること、CC−ケモカインと対応する細胞表面の受容体との結合を阻害すること、およびその結果として有望な治療効果、例えば抗炎症性効果を生み出すことに使用できる。また、有効成分として本発明のタンパク質を含有する医薬組成物を、ウイルス、細菌、または寄生虫に存在するCC−ケモカイン類似体との結合に用いて前記ウイルス、細菌、または寄生虫の細胞への侵入を阻止することができる。寄生虫、ウイルス、または細菌に対する哺乳類のワクチン接種のための医薬組成物は、有効成分として本発明のタンパク質の断片を含み得る。上に示した組成物は、さらなる免疫抑制剤または抗炎症性物質をさらに含み得る。
【0100】
医薬組成物は、有効成分としての本発明のタンパク質と組み合わせて、適した製薬上許容される希釈剤、担体、動物への投与に適した生物学的に適合するビヒクルおよび添加物(例えば、生理食塩水溶液)および、有効化合物の、最終的に薬剤的に使用できる調製物への加工を促進する助剤(賦形剤、安定剤、またはアジュバントなど)を含んでよい。医薬組成物は、投与様式の要求に適う許容される方法で処方することができる。例えば、薬剤送達のためのバイオマテリアルおよび他のポリマーの使用、ならびに特定の投与様式が有効であることを確認するための様々な技術およびモデルが文献に開示されている(Luo B and Prestwich GD,2001;Cleland JL et al.,2001)。
【0101】
「製薬上許容される」とは、それが投与される宿主に対して毒性を持たない、有効成分の生物活性の効果を妨げないどのような担体も抱合することを意味する。例えば、非経口投与には、上記有効成分をビヒクル、例えば生理食塩水、デキストロース液、血清アルブミンおよびリンゲル液中の注射用単位投与形で処方する。担体も、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、および石油、動物、植物または合成由来のもの(ピーナツ油、ダイズ油、無機油、ゴマ油)をはじめとする、種々の油脂から選択できる。
【0102】
許容される投与様式であればどれでも用いることができ、また有効成分の所望の血液レベルを実現するために当業者が投与様式を決定することができる。例えば、投与は、種々の非経口経路によって、例えば、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、直腸の、経口、または頬側の経路によってなされてよい。また、本発明の医薬組成物は、所定の割合でのポリペプチドの長期間の投与のために、デポー注射、浸透圧ポンプなどをはじめ、徐放性のまたは放出制御された投与形で、好ましくは、正確な用量の単回投与に適した単位投与形で投与することができる。
【0103】
非経口投与は、ボーラス注射によって、または時間をかけた緩やかな灌流によってできる。非経口投与のための調製物としては、当分野で既知の助剤または賦形剤を含み得る滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられ、日常的な方法に従って調製できる。さらに、有効化合物の懸濁液を適当な油性注射懸濁液として投与してもよい。適した親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドが挙げられる。懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る水性注射懸濁液としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランが挙げられる。所望により、懸濁液には安定剤を含めてもよい。医薬組成物には注射による投与に適した溶液が挙げられ、約0.01〜99.99パーセント、好ましくは、約20〜75パーセントの有効化合物を賦形剤と共に含む。
【0104】
当然のことながら、投与される薬用量は、受容者の年齢、性別、健康状態、および体重、同時に起こる治療の種類、もしあれば、治療頻度、ならびに所望の効果の性質に依存する。薬用量は、当業者が理解し決定できるように、個々の被験体に合わせて設定される。それぞれの治療に必要な総投与量は、複数回の投与によって、また単一回の用量で投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独または症状を対象とする、または症状の他の徴候を対象とする他の治療薬と組み合わせて投与することができる。通常、有効成分の日用量は、1日体重1キログラムあたり0.01〜100ミリグラムを含む。通常、分割された用量でまたは徐放形態で1日1キログラムあたり1〜40ミリグラムが所望の結果を得るために効果的である。第二のまたはその後の投与は、個体へ投与した初期または前回の用量と同じ、それよりも少ない、またはそれよりも多い用量で実施できる。
【0105】
本発明の別の態様は、本発明のDNAによりコードされるタンパク質の、特に哺乳類において免疫反応または炎症反応を調節するための組成物の調製の際の医薬としての使用である。
【0106】
本発明のさらなる態様は、一時の間、前記免疫応答を調節するために十分な条件下で本発明のタンパク質を前記動物へ投与することを含む、吸血性の外部寄生虫に対して動物を免疫化するための、またはそれを必要とする動物において免疫または炎症反応を調節するための方法である。
【0107】
本発明の別の目的は、有効量の本発明の化合物の投与を含む、CC−ケモカイン関連疾患を治療または予防するための方法である。
【0108】
「有効量」とは、このような病理の減少または緩解をもたらす、疾患の経過および重篤度に作用するのに十分な有効成分の量を指す。有効量は投与経路および患者の症状に依存する。
【0109】
「CC−ケモカイン関連疾患」という表現は、大量の単球/マクロファージ/好中球/T細胞浸潤をもたらす、過剰なまたは制御されないCC−ケモカイン産生に起因し、rsChBP−1の投与が有益な効果をもたらす可能性のある、いずれの疾患も表す。このような慢性、急性、または遺伝性疾患の網羅的でないリストは前記に提供されている。
【0110】
本発明のCC−ケモカインアンタゴニストおよび関連する試薬の治療適用を、哺乳類細胞、組織およびモデルを利用するインビボまたはインビトロアッセイによって(安全性、薬物動態および有効性の点から)評価することができる(Coleman R et al.,2001;Li A,2001;Methods Mol.Biol vol.138,「Chemokines Protocols」,edited by Proudfoot A et al.,Humana Press Inc.,2000;Methods Enzymol,vol.287 and 288,Academic Press,1997)。アッセイの限定されない例としては、カルシウム動員、脱顆粒、向炎症性サイトカインのアップレギュレーション、プロテアーゼのアップレギュレーション、インビトロおよびインビボでの細胞補充の阻害が挙げられる。
【0111】
本発明のさらなる目的は、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質に関連して開示された任意の化合物を含む試験キットである。例えば、試薬を検出することを含む、CC−ケモカインもしくは類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質もしくは受容体、CC−ケモカインとCC−ケモカイン結合タンパク質の相互作用、または前記相互作用のアンタゴニストもしくはアゴニストを検出するためのキット、ならびに、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質に由来する、
a)核酸分子(例えば、DNA);
b)オリゴヌクレオチド;
c)タンパク質;および
d)抗体
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物である。
【0112】
これらのキットは、試料をこれらの化合物のうちの1種類と接触させる、インビトロまたはインビボで適用可能な方法で用いることができ、化合物は標識されているかまたは固相支持体上に固定化されていてよい。
【0113】
本発明を特定の実施形態に関して説明したが、記載内容には本請求の意味および目的を超えて拡張されることなく当業者がもたらすことのできるあらゆる修飾および置換を含む。
【0114】
これから本発明を以下の実施例によって説明するが、実施例は決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は、本明細書の下に明記される図を参照する。
【実施例】
【0115】
実施例1:クリイロコイタマダニ(犬ダニ)の唾液におけるケモカイン結合活性の生化学的特性
クリイロコイタマダニというダニの唾液は、免疫調節活性を有する分子の同定に既に用いられているが(Matsumoto K et al.,J Vet Med Sci 2003;Matsumoto K et al.,2001;Ferreira BR and Silva JS,1998)、具体的にCC−ケモカインを対象とする結合または調節活性ではない。
【0116】
粗クリイロコイタマダニダニ唾液を、公開されているプロトコール(Ferreira BR and Silva JS,1998)に従って得た。クリイロコイタマダニ唾液抽出物のアリコート(rsSE)を、結合特異性および用量反応効果を比較するために、陰性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)および特異的にCC−ケモカインと結合する陽性対照としてエクトロメリアウイルスタンパク質(vCCIまたはp35と呼ばれる)(Smith VP and Alcami A,2000;Alcami A,2003)を含む、異なるアッセイを用いて試験した。
【0117】
最初のアッセイでは、異なる量のrsSEおよびvCCIをニトロセルロースフィルター上に平行してスポッティングし、各々を様々の放射性標識した組換えCC−ケモカイン(CCL/MCP−1、CCL3/MIP−1α、およびCCL5/RANTES)またはCXC−ケモカイン(CCL8/インターロイキン8)へ曝露した。BSA結合はどの放射性標識されたケモカインにも見出されなかったが、vCCIを用いて検出されたものに匹敵するCC−ケモカイン特異的結合活性も任意のCC−ケモカインでインキュベートしたフィルターに検出された。同時に、放射性標識したCXCL/インターロイキン8でインキュベートした場合、rsSEおよびvCCIをスポッティングしたどちらのフィルターに結合は見出されなかった(図1)。
【0118】
2番目のアッセイでは、分子相互作用を非常に正確に測定することのできる、ビーズを基盤とした技術であるシンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いて、rhSEおよびvCCIを特定のケモカイン/ケモカイン受容体対で暴露した。特に、ケモカイン/ケモカイン受容体相互作用を干渉している分子を検出するための特定のSPAを計画した(Alouani S,2000)。小麦胚凝集素SPAビーズを、特異的ケモカイン受容体(例えばCCR1またはCXCR2)を発現している、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞から単離された細胞膜でコートし、その後放射性標識されたケモカイン単独で、天然のケモカインと組合せて、または異なる量のrhSEと組合せてインキュベートした。
【0119】
このアッセイはCC−ケモカイン間の相互作用が、特にCCR1(CCL3/MIP−1αおよびCCL5/RANTES)と結合するものに関して、用量依存的にrhSEに競合することを示した(図2)。同じアッセイをCXCR2/CXCL8対に適用すると、スポッティングしたニトロセルロースフィルターでマイナスの結果が得られたことを確認した。
【0120】
放射性標識したCC−ケモカイン/ケモカイン受容体対の存在下で、CXC−ケモカインと競合する物質を用いて交差阻害SPA実験を実施し、その逆も行った。CXC−ケモカイン(CXCL8/インターロイキン8)は放射性標識したCC−ケモカイン(CCL3/MIP−1α)のCCR1/CCR5との結合のrhSEに媒介される阻害を干渉せず、rhSEにおいてCC−ケモカインに対する結合活性の特異性を確認できた。
【0121】
また、上述のアッセイでキララマダニ属のダニ種の唾液において類似のCC−ケモカイン結合活性が検出され、他のダニ種がCC−ケモカイン結合活性を発現することを示している。
【0122】
さらに、rhSEと放射性標識されたケモカインを用いる架橋実験は、架橋試薬(ビス(スルホスクシンイミジル)スベラートまたはBS3)がSDS−PAGEで分離すると、外見上の総分子量約20kDaの分子種を生成することを示した。放射性標識したCCL3/MIP−1αはSDS−PAGEにおいて8kDaタンパク質として遊走するので、rhSEは分子量10〜15kDaの範囲のCC−ケモカイン結合タンパク質を発現する。
【0123】
実施例2:クリイロコイタマダニcDNAライブラリーの構築およびスクリーニングならびにrsChBP−1の特性決定
次に、rhSEにおいて同定されたCC−ケモカイン結合活性をクリイロコイタマダニ唾液腺由来のcDNAライブラリーを生成することによってDNA/タンパク質配列のレベルで同定し、その後それを用いてこのようなcDNAを培地に分泌されたタンパク質として発現している哺乳類細胞のプールを作製した。
【0124】
対照としてvCCI発現細胞から得られた培地(または組換えvCCIで「スパイクされた」培地)で検出されたCC−ケモカイン結合活性と比較することにより、これらの培地を次に放射性標識したCC−ケモカイン(CCL3/MIP−1α)を用いてスクリーニングし、細胞のプールから開始して、単一のcDNAクローンを漸次減少させた。
【0125】
vCCIとクリイロコイタマダニ唾液腺由来のcDNAライブラリーの双方を発現させるために、ヒト胚腎臓細胞293(HEK293細胞;ATCCカタログ番号CRC−1573;DMEM−F12 Nut Mix、10%熱失活ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリン−ストレプトマイシン溶液中で維持)を選択した。
【0126】
HEK293細胞由来の培地を、完全培地で増殖させた細胞から得た。3日間の培養後、調整された培地を回収し、遠心分離して架橋またはSPAアッセイに用いた細胞片および上清を取り除いた。
【0127】
平底96ウェルプレート(Costar)に移した試料についての架橋実験を実施した。放射性標識したCC−ケモカイン(50μlの0.23nM 125I−CCL3/MIP−1α)を各試料に加え、それを次に室温にて2時間振盪しながらインキュベートした。次に、25μlのアリコートを各ウェルから別のウェルに移して0.5μlの50mM BS3(架橋試薬)含有とし、さらに振盪しながら2時間インキュベートした。この後、5μlの10×サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl pH8および10mM DTT)を各ウェルに加えて架橋反応を停止させた。次に、試料を5分間煮沸し、10% Bis−Tris SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動させた(Invitrogen NuPAGE、カタログ番号NP0301BOX)。電気泳動後、ゲルをサランラップ(Saranwrap)(商標)で密封し、K型ストレージ・ホスフォイメージングスクリーン(Biorad)に8時間曝露した。イメージングスクリーンを、Biorad Personal FXホスホイメージャーを用いて解像度100umでスキャンした。
【0128】
クリイロコイタマダニcDNAライブラリーをpTriplEx2(BD Biosciences Clontech)中に構築した。100匹の成体クリイロコイタマダニから唾液腺を回収し、直ちに氷冷RNAlater溶液(Ambion)中で次の使用まで保存した。製造者の使用説明書に従って、TRlzol法(Gibco−BRL)を用いて全RNAを抽出し、SMARTcDNAライブラリー構築キット(Clontech)および製造者の使用説明書に従って、ChromaSpin400カラム(Clontech)でサイズ画分されたcDNAを用いてcDNAライブラリーを構築した。クローン化されたcDNA挿入断片のサイズは、挿入断片の80%で約0.6kb〜1.5に及んだ。
【0129】
対照タンパク質vCCI(配列番号2)をコードするDNA配列(配列番号1)およびクリイロコイタマダニ唾液腺由来のcDNAライブラリーの双方を、pEXP−lib発現プラスミド(BD Biosciences Clontech)にサブクローニングした。
【0130】
pEXP−Libベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、その主たる近隣に初期プロモーター/エンハンサー、その後にSfi IAおよびSfi IB部位(内部のパリンドローム(interpalindromic)配列の異なる2つの個別のSfi I部位)を含む多重クローニング部位、その後に1つのメッセンジャーRNAから2つのオープンリーディングフレームの翻訳を可能にする、脳心筋炎ウイルス(ECMV)の内部リボソーム進入部位(IRES)、その後にピューロマイシン耐性(ピューロマイシン−N−アセチル−トランスフェラーゼ)をコードする遺伝子、ならびにその後にウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットを含む。リボソームは、5’末端で注目される遺伝子を適当な配向で翻訳するか、またはECMV IRESで抗生物質耐性マーカーを翻訳するかのいずれかのためのバイシストロニックなmRNAに進入できる。pEXP−Libベクター形質転換細胞を培養する場合、抗生物質が全発現カセットに選択圧を及ぼす;従って、高用量の抗生物質(10〜100μg/mlのピューロマイシン)は注目される遺伝子を高レベルで発現している細胞だけを選択する。この選択圧も、注目される遺伝子の発現が培養の際に経時的に安定することを保証する。
【0131】
HEK293細胞を、GenePorter2トランスフェクションキット(Gene Therapy Systems)を製造者のプロトコールに従って用いて、pEXP−Libプラスミドでトランスフェクトした。
【0132】
BS3(架橋試薬)を用いて、125I標識したCCL3/MIP−1αを混合したHEK細胞の培地において、培地が組換えvCCIで「スパイクされた」場合と、培地がvCCIを発現するHEK293に由来する場合のどちらの場合も、vCCIタンパク質配列(配列番号2)を検出した。架橋試薬の添加は、SDS−PAGEにおいて約40〜45kDaで遊走するバンドとして分離された、放射性標識したCC−ケモカイン複合体を含有するタンパク質複合体を生成する。この架橋方法は、ナノグラムの重量範囲の複合体でさえ検出できるので非常に感受性が高い(図3A)。
【0133】
この方法を、クリイロコイタマダニcDNAライブラリーで形質転換されたHEK293細胞へ適用すると、細胞のプールから開始して、SDS−PAGEにおいて約20kDaのバンドとして遊走する放射性標識したCCL3/MIP−1αを含む複合体を形成する、CC−ケモカイン結合タンパク質(rsChBP−1として同定)を発現している単一のクローン(クローン2)をスクリーニングすることが可能であった(図3B)。ダニ唾液において検出された、同じ重量範囲の天然CC−ケモカイン結合活性を中心とするこのバンドは、おそらく異なるレベルのグリコシル化を有するイソ型の存在に起因してスメアのように見える。
【0134】
クローン2によって発現されたrsChBP−1をコードするcDNAを配列決定した。この585bp長のcDNA(配列番号3)は、111個のアミノ酸(配列番号4)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、分泌される可能性があり、いずれの既知のCC−ケモカイン結合タンパク質とも有意な相同性をもたない(図4)。分子量を考えると、このrsChBP−1配列は、ダニ唾液において同定されたCC−ケモカイン結合活性の少なくとも1つに相当しているはずである。
【0135】
rsChBP−1の配列は、アンブリオンマ・バリエガツムの唾液腺から単離された(Nene V et al.,2002)、特性決定されていない515bp長のcDNA(GenBankアクセッション番号BM289643;配列番号7)中のORF、およびシカダニの唾液腺から単離された(Valenzuela JG et al.,2002)特性決定されていない396bp長のcDNA(GenBankアクセッション番号AF483738;配列番号9)中のORFにコードされるタンパク質配列とある種の類似性を有する。この2つのさらなるタンパク質配列(avChBP−IおよびisChBP−1と同定された;図5)は、数個の保存されたシステイン(rsChBP−1中の残基40、59、64、76、86、98、および99)を含み、タンパク質長(およそ110アミノ酸長)の点でスクリーニングされたクリイロコイタマダニ配列とも相同である。また、クローン2にコードされるタンパク質のCC−ケモカイン結合特性も、SPAに基づくアプローチを用いて試験した。rsSEについて示されるように(図2)、rsChBP−1の存在下で測定されたSPAシグナルは、放射性標識したCCL3/MIP−1αとSPAビーズとの結合への用量依存的な阻害効果とともに、試料を添加したHEK293−クローン2の培地の量に反比例する(図7)。
【0136】
従って、rsChBP−1、avChBP−1、およびisChBP−1は、CC−ケモカイン結合特性を有する新規なタンパク質ファミリーのメンバーである可能性があると結論付けられる。
【0137】
実施例3:rsChBP−1を特性決定する機能的アッセイ:
LPSに誘導される単球によるTNF−α放出
rsChBP−1の生物活性を、rsChBP−1タンパク質のLPSに誘導される単球によるTNF−α放出を阻害する能力について試験するアッセイによって測定した。
【0138】
単球細胞株、THP−1を、T225mlフラスコに密度2.5×105細胞/mlで増殖培地(10%FCS、1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含有するRPMI培地)に播種した。次に、細胞を80nMビタミンD3中で72時間培養して分化させた。分化した細胞を、96ウェルプレートにウェルあたり分化細胞105の密度で、150μlの増殖培地にプレーティングした。rsCHBP−1タンパク質の連続希釈(図6に示される)を容量50μlで細胞へ添加し、試験タンパク質を含有する培地中で細胞を24時間放置した。翌日、LPSを3.5時間細胞に添加して終濃度2.5ng/mlとした。プレートを遠心分離し、培地をウェルから除去し、ELISAを行う前に−80℃で保存した。
【0139】
TNF−α ELISAを、DuoSetヒトTNF−α ELISAキット(R&D Systems DY210)を用いて製造者の指示に従って実施した。96ウェルのELISAプレートを、PBS中4μg/mlに希釈した100μl捕獲抗体でコーティングした。このインキュベーション段階のため、プレートを一晩室温にて放置した。捕獲抗体溶液を除去し、ウェルをPBS中200μlの10% FCSで室温にて45分間飽和させた。プレートを洗浄バッファー(0.05% Tween−20含有PBS)で2回洗浄した。細胞から回収された培地100μlを各ウェルに加え、室温にて2.5時間インキュベートさせた。キットからの使用説明書に従って、組換えヒトTNF−αの希釈物を標品として用いた。インキュベーションの後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、PBS中、0.05% Tween−20に希釈した検出抗体300ng/mlでインキュベートした。プレートを洗浄バッファーで4回洗浄し、次にウェルあたり100μlのストレプトアビジン−HRP(PBS中0.05% Tween−20に1:10,000で希釈)で室温にて30分間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄し、製造者の使用説明書に従って、100μl/ウェルのスーパーシグナル ELISA ピコ−化学発光基質(Pierce,37070)を用いて暗所で10分間インキュベートした。Ascent Luminoskanルミノメーターで化学発光のレベルを測定した。
【0140】
結果:rsChBP−1は、LPSに誘導される単球細胞株によるTNF−αの放出を阻害することを示し、rsChBP−1が免疫調節剤として機能できることを示した。このアッセイでrsChBP−1タンパク質について得られたIC50は1μg/mlであった。
【0141】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】放射性標識されたケモカインと、クリイロコイタマダニ唾液抽出物(rsSE)またはエクトロメリア・ウイルス(vCCI)由来のCC−ケモカイン結合タンパク質との結合。抽出物およびタンパク質を、様々なニトロセルロースフィルター上に指示された量(表中左上のセル)で並行してスポッティングした、次に各フィルターを縦列(表右)の中に示された特定の放射性標識されたケモカインでインキュベートした。
【図2】シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いる、クリイロコイタマダニの唾液におけるCC−ケモカイン結合活性の生化学的特性。SPAビーズ上に固定化される放射性標識されたCCL/MIP−1αとCCR1との間の相互作用を、競争相手なしで、天然の競争相手(MIP−1α)と、またはダニ唾液タンパク質抽出物の2つの量で測定した。同一のSPAビーズおよび放射性標識したまたは標識されていないCCL5/RANTESを用いて、類似のプロフィールが得られた。
【図3】HEK293培地におけるCC−ケモカイン結合活性の、125I−MIP−1αとの化学架橋することによる検出。(A)HEK293培地に陽性対照の滴定(ウイルス性のCC−ケモカイン結合タンパク質vCCI)を、示された量で架橋薬剤(BS3)の存在下で加えた。遊離型の放射性標識したCC−ケモカインは8kDaのバンドとして遊走する。CC−ケモカインおよびvCCIによって形成された放射性標識した架橋複合体は、35〜45kDaのバンドとして遊走する。(B)HEK293哺乳類細胞で発現したクリイロコイタマダニcDNA発現ライブラリー由来の個々のクローンのスクリーニング。このcDNAライブラリーで形質転換された特定のHEK293クローン(クローン2)の培地を用いる架橋実験で観察されたシグナルを、架橋試薬(BS3)の存在下(レーン+)または不在下(レーン−)で、vCCIを含有するHEK293培地を用いて得たシグナルと比較する。遊離型の放射性標識したCC−ケモカインおよび架橋された複合体(放射性標識したCC−ケモカインとダニまたはウイルスのCC−ケモカイン結合タンパク質間)が示される。
【図4】rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)をコードするORFを含む、クローン2のDNA配列(配列番号3)。DNAのコーディング部分とアミノ酸配列とのアラインメントを行っている。シグナル配列(アルゴリズムSIGNALJによって予測)に下線が引かれている。予測されたポリアデニル化部位は線で囲まれている。
【図5】rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)と、avChBP−1(配列番号8)とisChBP−1(配列番号10)のアラインメント。この2つのタンパク質配列は、それぞれアノテートされていないアンブリオンマ・バリエガツムおよびシカダニのcDNAsにおいて同定されたORFによりコードされる。付けられた番号は、それぞれのcDNA配列、クローン2(配列番号3)、BM289643(配列番号7)、およびAF483738(配列番号9)におけるヌクレオチドの位置に対応する。rsChBP−1とavChBP−1との間、およびrsChBP−1とisChBP−1との間の同一かつ保存された(+で示されている)残基は太字で示されている。
【図6】LPSに誘導される単球によるTNF−α誘導の阻害−科学者からの説明待ち。
【図7】HEK293培地で発現した組換えrsChBP−1のCC−ケモカイン結合活性。放射性標識したCCL3/MIP−1αとCCR1との間の相互作用を、天然の競合物質の有り無しで、または試料へ添加したrsChBP−1を発現するHEK293細胞由来の培地の量を増加させて実施した、シンチレーション近接アッセイで測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を含むタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を含むタンパク質;
c)ストリンジェント条件下で、a)またはb)のタンパク質をコードする核酸配列とハイブリダイゼーション可能な核酸分子によってコードされるタンパク質であって、前記核酸分子はCC−ケモカインと結合するタンパク質をコードする;
d)a)、b)、またはc)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、CC−ケモカインと結合するタンパク質;
e)その断片がCC−ケモカインと結合する、a)、b)、c)、またはd)のタンパク質の断片;および
f)その断片またはタンパク質が免疫調節活性を有する、a)、b)、c)、またはd)のタンパク質の断片、
からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項2】
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を有するタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)その断片がCC−ケモカインと結合する、a)、またはb)のタンパク質の断片;
d)その断片が哺乳類へ投与される場合に免疫化活性を有する、a)またはb)のタンパク質の断片;
e)その変異体に1以上のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換され、かつその変異体がCC−ケモカインと結合する、a)またはb)のタンパク質の活性変異体;
f)その融合タンパク質が、以下の、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、ヘテロ二量体タンパク質ホルモン、シグナルペプチド、移行シグナル、およびタグ配列から選択される1以上のアミノ酸配列と作動可能なように連結されるa)、b)、c)、d)、e)またはf)のタンパク質を含む融合タンパク質
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
哺乳類へ投与される場合に、アミノ酸付加、欠失、または置換が前記ポリペプチドの免疫原性を低下させる、請求項2に記載のタンパク質の活性変異体。
【請求項4】
前記ポリペプチドが翻訳後に修飾されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記タンパク質がグリコシル化されることを特徴とする、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質が活性のある画分、前駆体、塩、誘導体、共役体、または複合体の形態であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質がPEG化されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項9】
a)rsCHBP−1のアミノ酸配列(配列番号3)を含むタンパク質をコードする核酸分子;
b)成熟rsCHBP−1のアミノ酸配列(配列番号5)を含むタンパク質をコードする核酸分子;
c)ストリンジェント条件下で、a)またはb)の核酸分子とハイブリダイゼーション可能な核酸分子であり、CC−ケモカインと結合するタンパク質をコードする核酸分子;
d)a)、またはb)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、CC−ケモカインと結合するタンパク質をコードする核酸分子;
e)a)、b)、c)またはd)の核酸分子によりコードされるタンパク質の断片をコードする核酸分子であって、前記断片はCC−ケモカインと結合し;および
f)a)、b)、c)、d)またはe)の核酸分子の縮重変異体
からなる群から選択される、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記核酸分子が、
a)rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号4)を有するタンパク質;
b)成熟rsChBP−1のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)その断片がCC−ケモカインと結合する、a)またはb)のタンパク質の断片;
d)その断片が哺乳類へ投与される場合に免疫化活性を有する、a)またはb)のタンパク質の断片;
e)その変異体に1以上のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換され、かつその変異体がCC−ケモカインと結合する、a)またはb)のタンパク質の活性変異体;および
f)その融合タンパク質が、以下の、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、移行シグナル、およびタグ配列から選択される1以上のアミノ酸配列と作動可能なように連結されるa)、b)、c)、d)またはe)のタンパク質を含む融合タンパク質
からなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
CC−ケモカインがCCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、および/またはCCL2/MCP−1であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記分子がDNA分子、特にcDNA分子である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記分子が配列番号3または5のDNA配列を含むかまたは配列番号3または5のDNA配列である、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項14】
少なくとも約20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、および少なくとも約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項9または10に記載の核酸の断片を含むオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
請求項8〜13のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、クローニングベクターまたは発現ベクター。
【請求項16】
前記核酸分子と作動可能なように会合するプロモーター、特に組織特異的な、構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターをさらに含む、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
請求項15または16に記載の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項18】
遺伝的に改変されて請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質を産生する細胞。
【請求項19】
発現を可能とする、または促進する条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養することを含む、ポリペプチドを調製するための方法。
【請求項20】
タンパク質を精製することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ヒト投与のためのタンパク質を処方することをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
CC−ケモカイン結合タンパク質を発現するトランスジェニック非ヒト動物であって、前記動物の細胞が、請求項8〜13のいずれか一項の単離された核酸分子または組換え核酸分子、あるいは請求項15または16の発現ベクターを含むことを特徴とする、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドに免疫反応性である抗体。
【請求項24】
モノクローナル抗体である、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項23または24に記載の抗体。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項8〜16のいずれか一項に記載の核酸または請求項17または18に記載の細胞、および製薬上許容される希釈剤もしくは担体を含む、医薬組成物。
【請求項27】
医薬として使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
哺乳類における免疫反応または炎症反応の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項22に記載の組成物の使用。
【請求項29】
動物におけるCC−ケモカイン関連疾患の治療または予防のための使用のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
CC−ケモカインがCCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、またはCCL2/MCP−1であることを特徴とする、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
疾患が、炎症性疾患、自己免疫疾患、免疫疾患、感染、アレルギー性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、消化管疾患、神経疾患、敗血症、移植拒絶に関連する疾患、または線維性疾患である、請求項29に記載の使用。
【請求項32】
寄生虫、ウイルス、または細菌に対する哺乳類のワクチン接種のための医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項33】
請求項8〜13のいずれか一項に記載の核酸分子によりコードされるタンパク質の医薬としての使用。
【請求項34】
哺乳類において免疫反応または炎症反応を調節するための組成物の調製における、請求項8に記載の核酸分子の使用。
【請求項35】
吸血性の外部寄生虫に対して動物を免疫化するための方法であって、前記動物へ請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドを投与することを含む、方法。
【請求項36】
治療有効量の、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドを前記動物へ投与することを含む、それを必要とする動物において免疫反応または炎症反応を調節する方法。
【請求項37】
CC−ケモカイン関連疾患の治療または予防のための方法であって、それを必要とする被験体への有効量の、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチドの投与を含む、方法。
【請求項38】
CC−ケモカインまたは類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質または受容体、CC−ケモカインおよびCC−ケモカイン結合タンパク質の相互作用、あるいは前記相互作用のアンタゴニストまたはアゴニストを検出するためのキットであって、検出試薬および:
a)請求項8の核酸分子;
b)請求項14のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド;および
d)請求項23、24または25の抗体
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む、キット。
【請求項39】
インビトロまたはインビボでCC−ケモカインまたは類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質または受容体、CC−ケモカインおよびCC−ケモカイン結合タンパク質の相互作用、あるいは前記相互作用のアンタゴニストまたはアゴニストを検出するための方法であって、試料を、
a)請求項8の核酸分子;
b)請求項14のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド;および
d)請求項23、24または25の抗体
からなる群から選択される1種類の化合物と接触させることを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−505604(P2008−505604A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546177(P2006−546177)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053638
【国際公開番号】WO2005/063812
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】