説明

新規のシクロスポリン類似体のマイクロエマルションプレコンセントレート

【課題】毒性が低く、高度のバイオアベイラビリティを保持し、他の薬剤と共に投与する必要のないシクロスポリン製剤を提供することを、本発明の課題とする。
【解決手段】シクロスポリンAに構造的に類似しているシクロスポリン類似体、特にシクロスポリンAに構造的に類似しているシクロスポリン類似体の異性体混合物を含む製剤を提供することによって、上記課題が解決された。これらの製剤は、安定なマイクロエマルションプレコンセントレートを形成し、すぐれた薬剤バイオアベイラビリティを提供し、及び/又はシクロスポリンAの投与に関連する1種類以上の副作用を軽減することができる。これらの製剤の使用方法及び調製方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項のもとで、2002年4月5日に提出された米国仮出願第60/370,597号(代理人事件番号031993−041)及び2001年10月19日に提出された米国仮出願第60/346,201号(代理人事件番号031993−125)に対する優先権を請求する。前記2件の出願の開示は、本明細書にそのまま組み込まれる。
【0002】
本発明は、構造的にシクロスポリンAに類似しているシクロスポリン類似体を含有する製剤に関する。特に、これらの製剤は、シクロスポリン類似体ISATX247の異性体混合物を含有する。これらの製剤は、高い薬剤溶解性、すぐれた薬剤バイオアベイラビリティをもたらし、シクロスポリン投与に関係する1種類以上の副作用を軽減する安定なマイクロエマルションを形成する。これらの製剤の使用方法及び調製方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
下記の参考文献は、本明細書の該当部分において括弧書きの数字によって参照される。
1.グプタ(Gupta)及びロビンソン(Robinson)著、経口コントロールド−ドラッグデリバリーに関する論文、テキスト版、1992、イージス・カデンス(Aegis Cadence)編、マンデル・デッカー社
2.トレイバー(Traber)ら著:Helv. Chim.Acta、60巻、p.1247−1255(1977)
3.コベル(Kobel)ら著:Europ. J. AppliedMicrobiology and Biotechnology、14巻、p.237−240(1982)
4.フォン ワルトバーグ(von Wartburg)ら著:Progressin Allergy、38巻、p.28−45(1986)
5.リッチ(Rich)ら著:J. Med. Chem.、29巻、p.978(1986)
6.米国特許第4,384,996号、1983年5月24日発行
7.米国特許第4,771,122号、1988年9月13日発行
8.米国特許第5,284,826号、1994年2月8日発行
9.米国特許第5,525,590号、1996年6月11日発行
10.スケトリス(Sketris)ら著、Clin.Biochem.、28巻:p.195−211(1995)
11.ベネット(Bennett)著、Renal Failure、20巻:p.687−90(1998)
12.ワング(Wang)ら著、Transplantation、58巻:p.940−946(1994)
13.「イーストマンのビタミンE TPGS(EastmanVitamin E TPGS)」Eastman Brochure、Eastman ChemicalCo.、Kingsport、Tenn(1996年10月)
14.ホーレイズ・コンデンスド・ケミカル・ディクショナリー(Hawley's Condensed Chemical Dictionary)(1987)
15.エリス(Ellis)著、Progress inMedical Chemistry 25(1988)エルセヴィール、アムステルダム
16.ソコル(Sokol, R.J.)、Lancet、338(8761):212(1991)
17.ソコル、Lancet、338(8768):697(1991)
【0004】
上記の各出版物又は特許の開示は、個々の各出版物及び特許の専門用語が特異的にかつ個々に参考として組み込まれるのと同様に、そのまま参考として本明細書に組み込まれる。
【0005】
シクロスポリンの治療薬としての使用
大部分の移植処置において、ホスト−ドナー組織型適合によるグラフト拒絶を回避する努力が行われているにもかかわらず、免疫抑制治療は、ホスト中のドナー臓器の生存能力のために重要である。種々の免疫抑制剤、例えばアザチオプリン、メトトレキセート、シクロホスファミド、FK−506、ラパマイシン及びコルチコステロイド類などが移植手術に使用されている。シクロスポリン類は、T−細胞介在性反応に対するそれらの好ましい効果のために、免疫抑制治療にますます多く使用されるようになっている(1)。
【0006】
シクロスポリンは、体液性免疫及び細胞介在性免疫反応、例えば同種移植片拒絶、遅延型過敏症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、フロイント アジュバント関節炎及びグラフト対ホスト病(GVHD)などを抑制することが証明された。それは、臓器移植に続く臓器拒絶の予防に、リウマチ性関節炎の治療に、乾癬の治療に、そしてその他のI型糖尿病、クローン病及び狼瘡などの免疫病の治療に使用される。多くの天然シクロスポリン類が、当該技術では公知である。非天然シクロスポリン類は、全−又は半合成手段によって、又は改良培養法の適用によってつくられる。このように、入手できるシクロスポリン群は重要であり、例えば、天然シクロスポリンA(CsA)からシクロスポリンZ(CsZ)まで、並びにその他の非天然シクロスポリン誘導体、ジヒドロ−及びイソ−シクロスポリンなどがある(2、3、4)。修飾された1−位置のアミノ酸を含むCsA類似体が、リッチらによって報告された(9)。免疫抑制性、抗炎症性及び抗寄生虫性CsA類似体が、サンド社に譲渡された米国特許第4,384,996号(6)、第4,771,122号(7)、第5,284,826号(8)及び第5,525,590号(特許文献4)に記載されている。
【0007】
シクロスポリンは、分子量1202ダルトンを有する親油性分子である。シクロスポリンAは、水に難溶で、高い親油性を有するため、従来の固体又は液体の薬剤用担体を有するシクロスポリンA医薬組成物は不都合であることが多い。例えば、シクロスポリン類はこのような組成物からは満足に吸収されず、又はこのような組成物は耐容性がよくなく、又はそれらの保存時における安定性は十分ではない。その溶解濃度は、1日投与量に対して低いことが多い。
【0008】
シクロスポリン治療の副作用
シクロスポリン治療に関しては、多数の副作用がある。これらには腎毒性、肝毒性、白内障発生、多毛症、パラセシス(parathesis)及び歯肉過形成などがある(10)。最も深刻な副作用は、腎毒性である。
【0009】
急性シクロスポリン腎毒性は形態学的に、封入体、アイソメトリック空胞形成、及び微小カルシウム沈着を特徴とする細管損傷を伴う。それは、糸球体濾過率の低下に導く。これは、シクロスポリンで治療した患者の血清クレアチニンの速やかな増加によって確認できる(11)。
シクロスポリンが腎臓障害を起こす正確なメカニズムは知られていない。ラット研究において、慢性的CsA−誘起性腎臓機能及び腎臓構造の悪化は、腎脂質の過酸化を伴った。抗酸化剤をCsAと同時投与すると、これらのラットにおける腎臓障害は軽減することをワングらが証明した(12)。
シクロスポリン治療と関連する腎毒性リスクを軽減する、これまでの当該技術での取り組みは、この薬剤をシクロスポリンの代謝を遅らせる作用物質と同時に投与し、治療的血中濃度を維持するために必要な用量を効果的に減らすことである。しかし、この方法は、シクロスポリンのバイオアベイラビリティが著しく変動するという問題を解決しないことが多い(12)。このように、すぐれたバイオアベイラビリティーを有しながらも、副作用を起こさないシクロスポリン製剤を調製するという問題は、当該技術では公知である。
【0010】
投与型
薬剤がその治療効果を実現するためには、その薬剤の治療量はバイオアベイラブルでなければならない、すなわち、それは患者の作用部位に到達できなければならない。経口ドラッグデリバリーは当該技術では知られており、投与が容易であるため一般的に利用されている。しかし経口投与型は、その薬剤が、まず腸内である与えられた時間内にその投与型から遊離しなければならず、また、消化管内で溶解し、吸収されなければならないため、複雑である。例えば、その投与型からの正しい薬剤放出、及び消化(GI)管内における薬剤の可溶化が重要である。
【0011】
GI管の領域内でよくはたらく公知の経口投与型は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、シロップ、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション類及びプレエマルションコンセントレート類などである。経口投与製剤の開発において、溶解度が重要な役割を果たす。なぜならば、活性薬剤を運搬するために使用される製剤は、ある与えられた時間の間、活性部位に到着する薬剤の量及び/又は濃度に影響を与えるからである。その製剤の組成も、消化管内における薬剤化合物の可溶化に直接影響を与え、その結果、活性薬剤化合物の血流への吸収程度及び吸収速度に影響を与える。その上、薬剤の治療効果は、その薬剤がデリバリーシステムそのものから放出される速度によって影響を受ける。デリバリーシステムそれ自体は、吸収前の消化管における活性化合物の溶解速度及び溶解程度に影響を与える(1)。
【0012】
当該技術で知られている従来システムにおいて、薬剤の内容物は、短時間内に消化管に放出され、ある与えられた時間、通常は投与後数時間内に、血中薬剤濃度はピークに達する。シクロスポリン製剤を含む公知の経口ドラッグデリバリーシステムの設計は、不都合な用量関連性副作用をもたらすリスクを冒して、可能な限り速やかな薬剤溶解を得ることに基準をおいている。
【0013】
したがって、毒性が低く、高度のバイオアベイラビリティーを保持し、他の薬剤と共に投与する必要のないシクロスポリン製剤が是が非でも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,384,996号、1983年5月24日発行
【特許文献2】米国特許第4,771,122号、1988年9月13日発行
【特許文献3】米国特許第5,284,826号、1994年2月8日発行
【特許文献4】米国特許第5,525,590号、1996年6月11日発行
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】グプタ(Gupta)及びロビンソン(Robinson)著、経口コントロールド−ドラッグデリバリーに関する論文、テキスト版、1992、イージス・カデンス(Aegis Cadence)編、マンデル・デッカー社
【非特許文献2】トレイバー(Traber)ら著:Helv. Chim.Acta、60巻、p.1247−1255(1977)
【非特許文献3】コベル(Kobel)ら著:Europ. J. AppliedMicrobiology and Biotechnology、14巻、p.237−240(1982)
【非特許文献4】フォン ワルトバーグ(von Wartburg)ら著:Progressin Allergy、38巻、p.28−45(1986)
【非特許文献5】リッチ(Rich)ら著:J. Med. Chem.、29巻、p.978(1986)
【非特許文献6】スケトリス(Sketris)ら著、Clin.Biochem.、28巻:p.195−211(1995)
【非特許文献7】ベネット(Bennett)著、Renal Failure、20巻:p.687−90(1998)
【非特許文献8】ワング(Wang)ら著、Transplantation、58巻:p.940−946(1994)
【非特許文献9】「イーストマンのビタミンE TPGS(EastmanVitamin E TPGS)」Eastman Brochure、Eastman ChemicalCo.、Kingsport、Tenn(1996年10月)
【非特許文献10】ホーレイズ・コンデンスド・ケミカル・ディクショナリー(Hawley's Condensed Chemical Dictionary)(1987)
【非特許文献11】エリス(Ellis)著、Progress inMedical Chemistry 25(1988)エルセヴィール、アムステルダム
【非特許文献12】ソコル(Sokol, R.J.)、Lancet、338(8761):212(1991)
【非特許文献13】ソコル、Lancet、338(8768):697(1991)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下を提供する:
(項目1)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40及びツイーン80からなる群から選択される乳化剤;及び
e)エタノール
を含んでなるマイクロエマルションプレコンセントレート。
(項目2)
医薬製剤が、約5ないし約10重量%のISATX247、0%より多く約50重量%までのビタミンETPGS、0%より多く約50重量%までのMCT油、0%より多く約50重量%までの乳化剤、及び約5ないし約15重量%のエタノールとを含み、前記製剤は、室温では液体マイクロエマルションプレコンセントレートである、項目1に記載のマイクロエマルションプレコンセントレート。
(項目3)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:4:2:2:1である、項目2に記載のマイクロエマルションプレコンセントレート。
(項目4)
MCT油、乳化剤、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含み、前記製剤は室温で液体である、項目1に記載のマイクロエマルションプレコンセントレートを調製する方法。
(項目5)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
を含んでなる医薬製剤。
(項目6)
約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン40、及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含んでなる、項目5に記載の医薬製剤。
(項目7)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:4:2:2:1である、項目6に記載の医薬製剤。
(項目8)
MCT油、ツイーン40、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、項目5に記載の医薬製剤を調製する方法。
(項目9)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン80;及び
e)エタノール
を含んでなる医薬製剤。
(項目10)
約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン80、約5%ないし約15重量%のエタノールを含んでなる、項目9に記載の医薬製剤。
(項目11)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:2:4:2:1である、項目10に記載の医薬製剤。
(項目12)
MCT油、ツイーン80、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、項目9に記載の医薬製剤を調製する方法。
(項目13)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)MCT油;
c)ツイーン80;
d)トリアセチン;及び
e)エタノール
を含んでなる医薬製剤。
(項目14)
約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のトリアセチン、約5%ないし約50重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン80、及び約5%ないし約15重量%のエタノールとを含んでなる、項目13に記載の医薬製剤。
(項目15)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:5:3:1:1である、項目14に記載の医薬製剤。
(項目16)
MCT油、ツイーン80、エタノール、トリアセチン、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、項目13に記載の医薬製剤を調製する方法。
(項目17)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ツイーン80;
c)ビタミンE TPGS;
d)エタノール;及び
e)ミリスチン酸イソプロピル
を含んでなる医薬製剤。
(項目18)
約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約55重量%のミリスチン酸イソプロピル、約5%ないし約50重量%のツイーン80、及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含んでなる、項目17に記載の医薬製剤。
(項目19)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:2:1:1:6である、項目18に記載の医薬製剤。
(項目20)
ミリスチン酸イソプロピル、ツイーン80、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、項目17に記載の医薬製剤を調整する方法。
(項目21)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
を含んでなる医薬製剤プレコンセントレートであって、
水性メジウムと混合すると透明な安定マイクロエマルション溶液を形成する、前記医薬製剤プレコンセントレート。
(項目22)
約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン40、約5%ないし約15重量%のエタノールを含んでなる、項目21に記載の医薬製剤プレコンセントレート。
(項目23)
a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:4:2:2:1である、項目22に記載の医薬製剤プレコンセントレート。
(項目24)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
を含んでなるマイクロエマルションプレコンセントレートであって、
プレコンセントレート約1部対水性メジウム約10ないし約100部の割合で水性メジウムと混合すると、透明な安定マイクロエマルション溶液を形成する、前記マイクロエマルションプレコンセントレート。
(項目25)
前記水性メジウムが、水、果汁(グレープフルーツジュースを除く)、茶、ミルク及びココアからなる群から選択される、項目21に記載の医薬製剤。
(項目26)
前記果汁がリンゴジュースである、項目25に記載の医薬製剤。
(項目27)
MCT油、ツイーン40、エタノール、ビタミンE TPGS n、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合し、その後この製剤を水性メジウムに加えて、マイクロエマルションプレコンセントレートを形成するまで混合することを含む、項目21に記載の医薬製剤を調製する方法。
(項目28)
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
を含んでなる医薬製剤であって、
皮下又は筋肉内投与に適する、前記医薬製剤。
(項目29)
エマルション又はマイクロエマルションである、項目1、5、9、13、又は17のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目30)
エマルション又はマイクロエマルションプレコンセントレートである、項目5、9、13、又は17のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目31)
ISATX247のバイオアベイラビリティが約30%より大きい、項目1、5、9、13、17、21、又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目32)
経口投与のためのものである、項目1、5、9、13、17又は21のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目33)
さらに、保護コロイドとしての生体適合性ポリマー類、懸濁液安定剤又は増量剤、賦形剤、結合剤及び担体を含む、項目1、5、9、13、17、21、又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目34)
生体適合性ポリマーが、ポリオキシエチレングリコール化天然又は水素化植物油、クレモフォル(商標)、ニッコル(商標)、ツイーン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、レシチン類、プロピレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル類及びプロピレングリコール カプリル−カプリン酸ジエステルからなる群から選択される、項目33に記載の医薬製剤。
(項目35)
ツイーンが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、及びポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエートからなる群から選択される、項目34に記載の医薬製剤。
(項目36)
免疫抑制を必要とする対象に、項目1、5、9、13、17、21又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤の有効量を投与することを含む、免疫抑制を生成する方法。
(項目37)
投与する医薬製剤の量が、前記対象の体重1kgあたり約0.5ないし3mg/日である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記医薬製剤が1日1回投与される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記医薬製剤が1日2回投与される、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記医薬製剤を使用して、前記対象の炎症性又は自己免疫疾患又は障害を治療する、項目36に記載の方法。
(項目41)
項目1、5、9、13、17、21又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤をつくることによって、ISATX247の免疫抑制効果を増強する方法。
(項目42)
前記プレコンセントレートを、プレコンセントレート約1部対水性メジウム約10ないし約100部の割合で水性メジウムと混合する、項目1、5、9、13、17、又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤。
(項目43)
前記水性メジウムが、水、果汁(グレープフルーツジュースを除く)、茶、ミルク及びココアからなる群から選択される、項目42に記載の医薬製剤。
(項目44)
前記果汁がリンゴジュースである、項目43に記載の医薬製剤。
(項目45)
経口製剤がソフトゼラチンカプセルに封入されている、項目32に記載の医薬製剤。
(項目46)
対象に投与した際に免疫抑制を生成するための薬剤の製造における、項目1、5、9、13、17、21、又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤の使用。
(項目47)
前記薬剤が、前記対象の体重1kgあたり前記医薬製剤約0.5ないし3mg/日の投与に適する、項目36に記載の使用。
(項目48)
前記薬剤が1日1回投与される、項目36に記載の使用。
(項目49)
前記薬剤が1日2回投与される、項目36に記載の使用。
(項目50)
前記薬剤を使用して、前記対象の炎症性又は自己免疫疾患又は障害を治療する、項目36に記載の使用。
(項目51)
ISATX247の免疫抑制効果を増強するための薬剤の製造における、項目1、5、9、13、17、21、又は28のいずれかの項に記載の医薬製剤の使用。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ツイーン40及びMCT油に関する賦形剤比の関数としてのマイクロエマルションプレコンセントレートの形成を示す表であり;
【図2】図2は、ビーグル犬においてネオラル(Neoral)(商標)と比較した本件のISATX247マイクロエマルションの薬物動態(PK)曲線を示すグラフであり;
【図3】図3は、本発明のシクロスポリン類似体をつくるために使用できる典型的合成経路の概観を示し、ここで立体選択的経路は反応条件によってグループ化される;
【図4】図4は、臭素化前駆体からISATX247の(E)及び(Z)−異性体の混合物を生成する合成経路を示す図である;
【図5】図5は、アルデヒド前駆体からISATX247の(E)及び(Z)−異性体の混合物を生成する別の合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ある種の製剤、好ましくはマイクロエマルションプレコンセントレート及びマイクロエマルション製剤が、シクロスポリン類似体、ISATX247のデリバリーを行うことができるという発見に基づくものである。シクロスポリン類似体ISATX247は、シクロスポリンに関連する副作用の一つ以上を軽減する一方、その薬剤の高いバイオアベイラビリティーは保持するものである。さらに、本発明の製剤は、十分なバイオアベイラビリティーを提供することによって、ISATX247の免疫抑制効果も高める。
【0019】
本発明の製剤は全て、活性成分としてのISATX247、及びポリオキシル化部分を有する非イオン性界面活性剤などの合成補助乳化剤で乳化された、合成又は植物性油を含有する。したがって、本発明の製剤は、ISATX247、界面活性剤、エタノール、親油性及び/又は両親媒性溶媒を含む。本発明の製剤は、必要に応じてpH及び等張性を調節でき、保護コロイドなどの生体適合性ポリマー類、懸濁液安定剤及び形成剤、賦形剤、結合剤及び担体なども必要に応じて含むことができる。
【0020】
好ましい一態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン40及びツイーン80からなる群から選択される乳化剤、及びe)エタノールを含んでなるマイクロエマルションプレコンセントレートに関するものである。より好ましくは、このマイクロエマルションプレコンセントレートは、約5ないし約10重量%のISATX247、0%より多く約50重量%までのビタミンE TPGS、0%より多く約50重量%までのMCT油、0%より多く約50重量%までの乳化剤、及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含み、前記製剤は、室温では液体マイクロエマルションプレコンセントレートである。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比は、約0.5−1:4:2:2:1である。
【0021】
本発明は、MCT油、乳化剤、エタノール、ビタミンE TPGS及び正しい量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、マイクロエマルションプレコンセントレートの調製方法も意図しており、製剤は、室温では液体である。
【0022】
また別の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE−−トコフェリルポリエチレングリコール1000琥珀酸(ビタミンE TPGS)、c)中鎖トリグリセリド(MCT)油、d)ツイーン40、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤に関するものである。好ましくは、この医薬製剤はマイクロエマルションである;より好ましくは、この製剤はマイクロエマルションプレコンセントレートである。この製剤は、好ましくは約5ないし約10重量%のISATX247、約20ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50%のツイーン40及び約5ないし約15重量%のエタノールを含む。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比が0.5−1:4:2:2:1である。
【0023】
さらにまた別の態様において、本発明は免疫抑制を必要とする対象に、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン40、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤の有効量を投与することを含む、免疫抑制を生成する方法に関するものである。
【0024】
本発明は、MCT油、ツイーン40、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、本発明のこの態様の医薬製剤を調製する方法も意図している。
【0025】
その他の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン80、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤に関するものである。好ましくは、この医薬製剤はマイクロエマルションであり;より好ましくは、この製剤はマイクロエマルションプレコンセントレートである。この医薬製剤は、好ましくは約5%ないし10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン80、及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含む。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:2:4:2:1である。
【0026】
その他の態様において、本発明は、免疫抑制を必要とする対象に、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン80、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤の有効量を投与することを含む、免疫抑制を生成する方法に関するものである。
【0027】
本発明は、MCT油、ツイーン80、エタノール、ビタミンE TPGS、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、本発明のこの態様の医薬製剤を調製する方法も意図している。
【0028】
また別の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)MCT油、c)ツイーン80、d)トリアセチン、及びe)エタノールを含んでなる、医薬製剤に関するものである。好ましくは、この医薬製剤はマイクロエマルションであり;より好ましくは、この製剤はマイクロエマルションプレコンセントレートである。この医薬製剤は、好ましくは約5%ないし10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のトリアセチン、約5%ないし約50重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン80及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含む。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:5:3:1:1である。
【0029】
さらにまた別の態様において、本発明は、免疫抑制を必要とする対象に、a)薬物学的有効量のISATX247、b)MCT油、c)ツイーン80、d)トリアセチン、及びe)エタノールを含んでなる医薬組成物の有効量を投与することを含む、免疫抑制を生成する方法に関するものである。
【0030】
本発明は、MCT油、ツイーン80、エタノール、トリアセチン、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、本発明のこの態様の医薬製剤を調製する方法も意図している。
【0031】
さらにまた別の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のa)ISATX247、b)ツイーン80、c)ビタミンE TPGS、d)エタノール、及びe)ミリスチン酸イソプロピルを含んでなる医薬製剤に関するものである。好ましくは、この医薬製剤はマイクロエマルションであり;より好ましくは、この製剤はマイクロエマルションプレコンセントレートである。この医薬製剤は、好ましくは約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約55重量%のミリスチン酸イソプロピル、約5%ないし約50重量%のツイーン80及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含む。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比が約0.5−1:2:1:1:6である。
【0032】
また別の態様において、本発明は、免疫抑制を必要とする対象に、a)ISATX247、b)ツイーン80、c)ビタミンE TPGS、d)エタノール、及びe)ミリスチン酸イソプロピルを含んでなる医薬製剤の有効量を投与することを含む、免疫抑制を生成する方法に関するものである。
【0033】
本発明は、ミリスチン酸イソプロピル、ツイーン80、エタノール、ビタミンE TPGSn、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、本発明のこの態様の医薬製剤を調製する方法も意図している。
【0034】
さらにまた別の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン40、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤プレコンセントレートに関するものである。この医薬製剤プレコンセントレートは、好ましくは約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%のビタミンE TPGS、約5%ないし約20重量%のMCT油、約5%ないし約50重量%のツイーン40、及び約5%ないし約15重量%のエタノールを含む。より好ましくは、a:b:c:d:eの重量比が約0.5:4:2:2:1である。さらにより好ましいのは、製剤がマイクロエマルションプレコンセントレートであって、このプレコンセントレートは、水性メジウムと混合すると透明な安定マイクロエマルション溶液を形成することである。好ましくは、この水性メジウムは、水又は果汁(グレープフルーツジュースを除く)である。加えて、このプレコンセントレートは、プレコンセントレート約1部対水性メジウム約10ないし約100部という比で、水性メジウムと混合するのがより好ましい。
【0035】
また別の態様において、本発明は、水性メジウムに混入したa)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン40、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤の有効量を、免疫抑制を必要とする対象に投与することを含む、免疫抑制を生成する方法に関するものである。
【0036】
本発明は、MCT油、ツイーン40、エタノール、ビタミンE TPGSn、及び適量のISATX247を、ISATX247が完全に溶解するまで混合することを含む、本発明のこの態様の医薬製剤を調製する方法も意図している。生成したプレコンセントレートは、その後水性メジウムと、1部のプレコンセントレート対約10ないし約100部のメジウムという比で混合するのが好ましい。
【0037】
さらにまた別の態様において、本発明は、a)薬物学的有効量のISATX247、b)ビタミンE TPGS、c)MCT油、d)ツイーン40、及びe)エタノールを含んでなる医薬製剤に関するものである。この医薬製剤は、皮下(SC)又は筋肉内(IM)投与など、非経口的に投与することができ、任意に滅菌される。
【0038】
本発明のもう一つの態様において、前記マイクロエマルションプレコンセントレート製剤のいずれかが、水性メジウムと混合して透明で熱力学的安定なマイクロエマルション溶液を形成することができる。水性メジウムは、水、又はグレープフルーツジュースを除く果汁である。グレープフルーツジュースは、ISATX247と不都合な反応をおこすことがある。加えて、プレコンセントレートは、プレコンセントレート約1部対水性メジウム約10ないし約100部の比で水性メジウムと混合する。
【0039】
本発明のさらにもう一つの態様において、前記マイクロエマルションプレコンセントレート製剤のいずれかは、好ましくはソフトゼラチンカプセルに封入された、経口製剤である。
【0040】
発明を実施するための形態
概して、本出願における用語は、当該技術において理解される意味で一貫して使用される。
【0041】
用語「cyclosporin」及び「cyclosporine」は単にスペルの違いであり、ここでは交換可能に用いられ、同じ化合物をあらわす。例えば、シクロスポリンA(cyclosporinA及びcyclosporine A)は、場合によって同じ化合物又は同じ化合物群をあらわす。
【0042】
本明細書に使用する用語「マイクロエマルションプレコンセントレート」は、マイクロエマルションをつくる水性メジウムと接触可能である系を意味する。用語マイクロエマルションは、本明細書では、水及び有機化合物(疎水性(親油性)有機化合物を含める)を含む、不透明でない(透明な)又は実質的に不透明でない熱力学的に安定なコロイド分散系として一般的に受け入れられている意味で使用される。
【0043】
用語「エマルション」は、小滴の形で他の液に細かく分散している少なくとも1種類の不混和性液からなる不均質系であり、上記小滴の直径は通常0.1mmを超える。このような系は、最小の安定性を有し、それは界面活性剤、微粉固体などの添加物によってさらに不安定になる。従来の「エマルション」は、本発明のマイクロエマルションとは異なり、熱力学的に不安定な分散系と考えられる。
【0044】
A.製剤の製法
本発明の製剤は全て、活性成分としてのISATX247と、補助乳化剤、好ましくはポリオキシル化部分を有する非イオン性界面活性剤などの補助乳化剤で乳化した合成又は植物油を含む。本発明の製剤は、pH及び等張性を必要に応じて調節できる。本発明の製剤は、保護コロイドなどの生体適合性ポリマー類、懸濁液安定剤及び形成剤、賦形剤、結合剤及び担体も、必要に応じて含むことができる。幾つかの好ましい実施形態は、比較的高い薬剤溶解度及び水性メジウムへの比較的速やかな溶解(撹拌して約5分未満)を有し、透明マイクロエマルションを形成する、透明な安定製剤を形成する。
【0045】
このように、本発明の製剤は、ISATX247、界面活性剤、油、エタノール及び、親油性及び/又は両親媒性溶媒である乳化剤を含む、マイクロエマルション又はマイクロエマルションプレコンセントレートである。ある実施形態において、この製剤は、約5%ないし約10重量%のISATX247、約20%ないし約50重量%の界面活性剤、例えばトコフェリルポリエチレングリコールカルボン酸エステルなど(又は任意にトリアセチンなどのエマルション安定剤)、約5%ないし約20重量%の油成分、例えばMCT油又はミリスチン酸イソプロピルなど、約5&ないし約15重量%のエタノール、及び約20%ないし約40重量%の親油性溶媒及び/又は約10%ないし約55重量%の両親媒性溶媒を含む。その他に、この製剤は、任意にその他の界面活性剤を約10%ないし約20重量%含むことができる。
【0046】
本発明の実施形態は、十分な薬剤バイオアベイラビリティ(表3及び5、及び図2を参照)及び/又は軽減された毒性(表5及び7を参照)を有する。この高められるバイオアベイラビリティ及び/又は軽減される毒性のメカニズムは不明である。しかし、理論によって制限されるものではないが、ビタミンE TPGSが製剤のこれらの特徴に寄与している可能性がある。例えば、ビタミンE TPGSの同時投与は、小児における肝臓移植後のシクロスポリンのバイオアベイラビリティを高めることが証明された(ソコルら)。ビタミンE TPGSは、腸内におけるチトクロームP450の薬剤代謝を阻害することによって、バイオアベイラビリティを高める。ビタミンE TPGSは、シクロスポリン誘起性腎臓チトクロームP−450の生成を抑制し、二次的に酸素化代謝産物の形成を減らす。又は、ビタミンE TPGSは、P−gp−コントロールド逆輸送を阻害し、腸の腸細胞層を通過する薬剤類の正味の輸送を高め、同時投与される薬剤のバイオアベイラビリティの増加を引きおこしうる。加えて、ビタミンE TPGSはよく知られた抗酸化剤である。また、ビタミンE TPGSは、アラキドン酸放出及びリポキシゲナーゼ酵素活性を阻害することによって、プロスタグランジン形成に影響を与えるというやり方で、アラキドン酸代謝にある役割を果たす。このプロセスにより、ビタミンE TPGSは血小板凝集を阻止し、それによってISATX247の腎毒性作用を減らす(15)。又は、ISATX247そのものが、シクロスポリンAやその他の関連化合物に比べてよりバイオアベイラブルであり、より低毒性である可能性もある。これらのメカニズムのいずれか、これらのメカニズムの組合わせのいずれか、又は未知のメカニズムが、ここに開示される組成物の高いバイオアベイラビリティ及び低い毒性に貢献しているのであろう。
【0047】
本発明の製剤の好ましい活性成分は、シクロスポリンの類似体、ISATX247である。ISATX247は、E−及びZ−異性体の混合物として、又は単独のE−又はZ−異性体として製剤中に存在する。ISATX247異性体の構造式は次のとおりである:
【化1】

【0048】
本発明の製剤は、薬剤ISATX247、合成又は植物油、好ましくはポリオキシエチル化部分を有する非イオン性界面活性剤、好ましくはポリオキシエチル化ビタミンEなどの合成補助乳化剤で乳化されたMCT(中鎖トリグリセリド)油を含む。処方された内容物は、pH及び等張性を必要に応じて調節することができる。これらの製剤は、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリエチレングリコール(PEG)などの生体適合性ポリマー類及びその他のポリマー類を保護コロイドとして、及び懸濁剤又は増量剤、賦形剤、結合剤及び/又は担体も場合により含むことができる。
【0049】
ウィッティヒ反応によるISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物の合成
ここに例示されるウィッティヒ反応経路は、図3の参照番号31によって確認される。方法1は、臭素中間体アセチル−η−ブロモシクロスポリン41を経て進むが、方法2は、出発点としてアセチルシクロスポリンAアルデヒド51を使用する。以下に記載する典型的方法はウィッティヒ反応を用い、混合立体化学的配置を有するアルケン官能基を導入する。
【0050】
本明細書に開示される典型的実施形態において、ISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物を合成するために用いられるウィッティヒ反応は、任意にリチウムハリドの存在下で行ってもよい。ウィッティヒ反応におけるリチウムハリドの存在は、生成する幾何異性体類の比に影響をもつことはよく知られており、したがってこのような化合物の添加は、ISATX247の(E)及び(Z)−異性体の所望混合物の生成に役立つ。
【0051】
方法1
本発明の一実施形態において、ISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物は、図4に示すようにつくられる。図4における波線(特に、化合物43と44を参照)の表示の使用は、例示的反応系列が(E)及び(Z)−異性体の混合物を生成することを示すものとする。一実施形態において、生成した(E)対(Z)−異性体のパーセント比は、(E)−異性体の約10ないし90パーセントから(Z)−異性体の約90ないし10パーセントまでの範囲であるが、これらの範囲は単なる例示であり、多くの他の範囲が可能である。例えば、混合物は約15ないし85重量パーセントの(E)−異性体及び約85ないし15パーセントの(Z)−異性体を含むことができる。その他の実施形態において、混合物は約25ないし75重量パーセントの(E)−異性体及び約75ないし25重量パーセントの(Z)−異性体;約35ないし65重量パーセントの(E)−異性体及び約65ないし35重量パーセントの(Z)−異性体;及び、約45ないし55重量パーセントの(E)−異性体及び約55ないし45パーセントの(Z)−異性体を含む。また別の実施形態において、異性体混合物は、約45ないし50重量パーセントの(E)−異性体及び約50ないし55重量パーセントの(Z)−異性体を含むISATX247混合物である。これらの重量パーセントは組成物の総重量を基準としており、(E)異性体及び(Z)異性体の重量の合計が100重量パーセントであることは当然である。言い換えれば、混合物は65重量パーセントの(E)−異性体及び35重量パーセントの(Z)−異性体を含むことができ、又はその逆でもよい。
【0052】
図4を参照すると、アセチルシクロスポリンAの1−アミノ酸残基の側鎖の末端η炭素を次の反応工程において臭素化する;すなわち、四塩化炭素などの溶媒中でアセチルシクロスポリンA35をN−ブロモスクシンイミド及びアゾ−ビス−イソブチロニトリルと共に還流し、中間体アセチル−η−ブロモシクロスポリンA41を生成する。N−ブロモスクシンイミドは、アリル水素を臭素で置換するためによく用いられる試薬であり、これは遊離基メカニズムによって行われると考えられている。この中間体41の製法は、エバール及びナニンガーによって「シクロスポリンAの主代謝産物(OL−17)の合成」(J. Org. Chem.、57巻、p.2686−2691(1992))で詳細に記載されている。
【0053】
新規の中間体、アセチルシクロスポリンAトリフェニルホスホニウムブロミド42は、アセチル−η−ブロモシクロスポリンA41から、この化合物をトルエンなどの溶媒中でトリフェニルホスフィンと共に加熱することによってつくることができる。
【0054】
新規の中間体42及びこれに類似するその他のものは、1−アミノ酸残基中に共役ジエン系を含む複数のシクロスポリンA類似体の合成における重要な中間体であると考えられる。例えば、トリフェニルホスフィンに加えて、トリアリールホスフィン類、トリアルキルホスフィン類、アリールアルキルホスフィン類、及びトリアリールアルシン類などの化合物をアセチル−η−ブロモシクロスポリンA41と反応させて42に類似するその他の活性化合物をつくることができる。
【0055】
再び図4を参照すると、アセチルシクロスポリンAのトリフェニルホスホニウムブロミド42と過剰のホルムアルデヒドをトルエン中で室温で撹拌することによって、アセチル−1,3−ジエン43の(E)及び(Z)−異性体混合物をつくることができる。ホルムアルデヒドの添加後、水酸化ナトリウムなどの塩基を滴下し、ジエン類の異性体混合物を酢酸エチルで抽出する。
【0056】
多数の有機化学の教科書が、ウィッティヒ反応を説明している。説明の一つは、特にマクマリーが「有機化学(Organic Chemistry)」、5版(ブルックス/コール、パシフィック グローブ、2000)、p.780−783で記載しているものである。ウィッティヒ反応は、ケトン又はアルデヒドをアルケンに変換するために利用される。このようなプロセスにおいて、リンイリド(ホスホランとも呼ばれる)をアルデヒド又はケトンと反応させると、ベタインと呼ばれる二極性中間体が得られる。一般的には、ベタイン中間体は分離されない;むしろ、それは四員環を経て自然に分解して、アルケンとトリフェニルホスフィンオキシドを与える。正味の結果は、元々はリンに結合していたRC=基によってカルボニル酸素原子が置換されることである。
【0057】
非常に種々様々の試薬が上述の典型的ウィッティヒ反応試薬の代わりになり得ることは、当業者には明らかである。例えば、多数のアルキル、アリール、アルデヒド及びケトン化合物をホルムアルデヒドの代わりに使用すると、膨大な数のシクロスポリン誘導体がつくられる。出願人は、上記の合成をホルムアルデヒドで行い、また、ホルムアルデヒドの代わりにアセトアルデヒド、ジューテロ化ホルムアルデヒド、ジューテロ化アセトアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、及びブチルアルデヒドなどの化合物で行った。このようなウィッティヒ反応を、トリフェニルホスホニウム誘導体以外の化合物、例えばトリアリールホスフィン類、トリアルキルホスフィン類、アリールアルキルホスフィン類及びトリアリールアルシン類などで行ってもよい。水酸化ナトリウムを使用する代わりに、種々のその他の塩類、例えば炭酸ナトリウム、ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、ナトリウムアミド、リチウム ジイソプロピルアミドのようなリチウム障害性塩基、及びアルカリ金属アルコキシド類などを使用してもよい。これら種々の試薬が使用できる上に、反応は種々の有機溶媒中又は有機溶媒と水との混液中で、種々の塩、特にリチウムハリドの存在下で、種々の温度で行うことができる。上に列挙した因子の全ては、当業者によって合理的に選択され、形成される二重結合の立体化学、すなわちシス対トランス異性体の比に所望の効果を与える。
【0058】
この合成の最終工程において、β−炭素上の保護基を下記の手順によって除去する。アセチル−(E)−1,3−ジエン及びアセチル−(Z)−1,3ジエンの混合物43をメタノールに溶解し、それから水を加える。炭酸カリウムのような塩基を加え、反応混合物を室温で撹拌する。使用できる炭酸カリウム以外の塩基として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムアルコキシド及びカリウムアルコキシドなどがある。その後、酢酸エチルを使用して最終生成物であるISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物44を抽出する。
【0059】
方法2
ISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物を、ウィッティヒ反応戦略によって合成するまた別の反応経路においては、以下のように4工程の合成経路を使用する:1)方法1のようなβ−アルコールの保護、2)第一工程から生成したアセチル−シクロスポリンAを酸化してアルデヒドをつくる;3)ウィッティヒ反応;4)ウィッティヒ反応生成物を脱アシル化し、又は同等に、酢酸エステルを加水分解して、アルコールを回復させる。この反応系列は、図5で明らかにされる。
【0060】
この合成経路は、第一工程が酢酸エステル基でβ−アルコールを保護するという点で、 図4のウィッティヒ反応経路と同様にして開始される。しかし、これら2経路は次の点で互いに異なる;方法2の次の工程は、アセチル−シクロスポリンA35をアルデヒド、すなわちアセチルシクロスポリンAアルデヒド51に変換する。この反応は、十分強い酸化剤を使用し、C=C結合を切断して2つの断片を生成する。アルケン切断は、当該技術では公知である。オゾンはおそらく最も一般的に使用される二重結合切断試薬であるが、その他の酸化剤、例えば過マンガン酸カリ(KMnO)又は四酸化オスミウムも、二重結合切断を起こすことができる。
【0061】
ルテニウム−ベースの酸化剤の使用が、カールセンらの「四酸化ルテニウム触媒による有機化合物の酸化法の顕著な改良」J. Org. Chem.、46巻、19号、p.3736−3738(1981)で述べられている。カールセンらは、歴史的に、ルテニウム金属の費用が触媒法の発達の動機となったことを教示しており、最も人気のある触媒法は、化学量論的酸化剤として過ヨウ素酸塩か次亜塩素酸塩を使用している。これらの研究者はルテニウムの一般的使用では反応経過中に触媒活性が喪失することを見いだし、それはカルボン酸の存在によると仮定した。反応混合物にニトリル、特にアセトニトリルを加えると、CCl/HO/IO系においてアルケン類の酸化分解の速度及び程度が顕著に高まることが判明した。
【0062】
本発明の一実施形態によると、アセチルシクロスポリンAアルデヒド51は、次の手順でアセチルシクロスポリンA35から生成する;すなわち、アセチルシクロスポリンA35をアセトニトリルと水との混液に溶解し、それから最初に過ヨウ素酸ナトリウムを加え、次に塩化ルテニウム水加物を加える。アルデヒド51は酢酸エチルで抽出される。この酸化分解戦略によるアルデヒド51の合成は、多くの立体選択的経路にとって重要であることに留意すべきである。
【0063】
方法2の第三工程は、方法1のそれと同様に、アルデヒド51をウィッティヒ反応によって(E)及び(Z)ジエンの混合物に変換することを含む。方法1と同様に、リンイリドをアルデヒドに加えるとベタインを生じ(これは分離しない)、その結果、アルデヒドのカルボニル酸素原子が、元々はリンに結合していたRC=基によって置換される。ここでも、このようなウィッティヒ反応は、トリフェニルホスホニウム誘導体以外のリン含有化合物、例えばトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、アリールアルキルホスフィン及びトリアリールアルシンなどで、種々の温度で行うことができる。また種々の塩基性溶液及び溶媒の使用又は種々の無機塩の添加によって、新たに形成される二重結合の立体化学に影響を与えることもできる。
【0064】
一実施形態において、アセチルシクロスポリンAアルデヒド53をトルエンに溶解し、それに水酸化ナトリウム水溶液のような塩基を加える。それからアリルトリフェニルホスホニウムブロミド52を加え、反応物をしばらく撹拌する。生成したアセチル(E)及び(Z)−1,3−ジエン混合物53の処理は、ヘキサン及び/又は酢酸エチルによる抽出を含む;ここで、用語「処理(workup)」は、反応体、生成物、溶媒などの混合物から反応生成物を抽出及び/又は分離するプロセスを意味する。
【0065】
方法2の最終工程において、方法1の最終工程と同様に、β−炭素位置のアルコールを保護する酢酸エステル基を炭酸カリウムで除去すると、ISATX247の(E)及び(Z)−異性体混合物54が得られる。保護基の除去に使用できる炭酸カリウム以外の塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムアルコキシド、及びカリウムアルコキシドなどがある。
【0066】
ビタミンE TPGS
トコフェリル類が、製剤中で抗酸化剤として使用される。D−トコフェリルポリエチレングリコール1000琥珀酸(ビタミンE TPGS)(イーストマンコダック、ロチェスター、NY)は、ビタミンEの水溶性誘導体であり、親水性と親油性の二重の性質を有し、当該技術で公知の製剤で、抗酸化剤又は保存料として使用されている。抗酸化剤として使用する際には、トコフェリル又はビタミンE TPGSは、約0.5%ないし約1%、かつ5重量%以下の範囲で存在する。
【0067】
ビタミンE TPGSは水と混和可能で、約20重量%までの濃度で水溶液を形成する。この濃度を超えると、液体結晶相が形成されることがある。ビタミンE TPGSは、高い分解温度及び良い耐熱性を有する。0.02重量パーセントでミセルを形成する。ビタミンE TPGS濃度が20重量パーセントを超えると、粘度のより高い液体結晶相が形成される。水中ビタミンE TPGS濃度が増すにつれ、より複雑な液体結晶相が生成し、それは等方性球状ミセルから等方性シリンダ状ミセル及び、六方晶形、六方晶形、混合六方晶形及び逆六方晶形、逆球状ミセルに、そしてラメラ相に至る(13)。これらの製剤において、ビタミンE TPGSは、界面活性剤又は乳化剤として役立つ。それは、溶媒、結合剤及びフィラーとしてはたらくその他の多数の賦形剤を含む複雑な製剤にも使用される。
さらに、本発明のビタミンE TPGSは、乳化剤及びアジュバントとして存在するだけでなく、油の変性を阻止し、それらが悪臭を発生するのを防ぐ。
【0068】
油成分
本発明の製剤の油成分は、植物油、合成油、トリアセチンなどの油代替品、鉱油又は中鎖トリグリセリド(MCT)油、すなわち、炭水化物鎖が8−10個の炭素原子を有するトリグリセリド油でよい。好ましくは、油成分はMCT油である。
【0069】
MCT油は、植物油に比べて多くの利点を有する:すなわち、1)酸化しにくい;2)約0.94−0.95の特異的密度;これは植物油の密度より高く、水の密度に近く、それによって安定なマイクロエマルションが容易に得られる;3)植物油より疎水性が小さく、溶解する薬剤の濃度をより高くすることができる;4)比較的低い粘度を有し、組成物の粘度を実質的に高めることなしに、組成物中の油相の濃度をより高くすることができる(15)。
【0070】
MCT油は市販されている。本発明によって意図されるMCT油の例には、TCR(商標)(脂肪酸鎖の約95%が8又は10個の炭素を有するトリグリセリド混合物につけられたSociete Industrielle des Oleagineaux社(フランス)の商品名)及びMIGLYOL812(商標)(グリセリン及びカプリル及びカプリン酸の混合トリエステルにつけられたダイナミット・ノーベル(Dynamit Nobel)社(スウェーデン)の商品名)などがあるが、これに限定するものではない。ミリスチン酸イソプロピルは、本発明の製剤に使用されるもう一つの市販油である。
【0071】
本発明によって意図される植物油の例は、大豆油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油及びヒマシ油などであるが、これに限定するものではない。鉱油は、限定するものではないが、天然炭化水素又はそれらの合成類似体を含む。オレイン酸及びリノレン酸などの油性脂肪酸類、オレイルアルコールなどの脂肪アルコール類、ソルビタンモノオレエートなどの脂肪エステル類及び疎水性スクロースエステル類は、油成分として使用できるが、本明細書に記載されるその他の油のようには好ましくない。本発明の製剤に使用できるその他の脂質には、合成及び半合成モノ−、ジ−及び/又はトリグリセリド、天然、合成又は半合成トリグリセリドの溶媒分別又は熱分別によりつくられたトリグリセリド類、及びエステル交換及び/又は指向性又はランダム再配列によってつくられたトリグリセリド類があるが、これに限定するものではない。
【0072】
乳化剤
本発明の製剤は、少なくとも1種類の乳化剤を含む。好ましくは、乳化剤又は界面活性剤は、非イオン性親油性溶媒又は非イオン性両親媒性溶媒である;乳化剤は、ツイーン40、ツイーン80などのツイーンでよい。しかし、マイクロエマルションプレコンセントレートを形成できるいかなる界面活性剤でも使用できる。幾つかの例を以下に記載する。
【0073】
界面活性剤成分は、両親媒性、親水性又は親油性界面活性剤又はこれらの混合物を含む。特に好ましいのは、非イオン性親水性界面活性剤及び非イオン性親油性界面活性剤である。界面活性剤成分として使用するために適した親水性界面活性剤の例は、天然又は水素化植物油とエチレングリコールとの反応生成物である。このような生成物は、公知の方法によって、例えば、天然又は水素化ヒマシ油又はそれらの断片とエチレンオキシドとを反応させ、任意にその生成物から遊離ポリエチレングリコール成分を除去することによって得られる。商品名クレモフォル(Cremophor)(商標)として市販されている種々のテンシド類、又は界面活性剤類も適する。特に適しているのは、クレモフォル(商標)RH40及びクレモフォル(商標)ELである。ニッコル(Nikkol)(商標)の商品名で市販される種々のテンシド類も、この範疇で使用するのに適する。
【0074】
その他の例には、ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル、例えばモノ−及びトリラウリル、パルミチル、ステアリル及びオレイルエステル、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[ツイーン(商標)20]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート[ツイーン(商標)40]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート[ツイーン(商標)60]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート[ツイーン(商標)80]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート[ツイーン(商標)65]、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート[ツイーン85]、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート[ツイーン(商標)21]、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート[ツイーン(商標)61]、及びポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート[ツイーン(商標)81]などのツイーン類がある。本発明の組成物に使用するためにこの群のなかで特に好ましい製品は、ツイーン40及びツイーン80、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン コポリマー類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー類、例えば商品名ポロキサマー(Poloxamer)(商標)として市販される公知の種類のもの、琥珀酸ジオクチル、スルホ琥珀酸ジオクチルナトリウム、琥珀酸ジ−2−エチルヘキシル又はラウリル硫酸ナトリウム及びリン脂質、特にレシチン類である。本発明の組成物での使用に適したレシチンには、大豆レシチン類が含まれるが、これに限定するものではない。その他の適切な製品には、クレモフォルTM、ニッコルTM、グリコール化天然又は水素化植物油、及びカプリル−カプリン酸ジエステルがある。プロピレングリコールモノ−及びジ脂肪酸エステル、例えばプロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールヒドロキシステアレート、プロピレングリコールイソステアレート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールリシノレート、プロピレングリコールステアレートなども適する。
【0075】
本発明の製剤はさらに、薬物学的に容認される界面活性剤、コロイド、懸濁液、増量剤、賦形剤、担体、テンシド又はコテンシドを含むことができる。
【0076】
B.本発明の好ましい製剤
本発明の実施形態は、好ましくは、十分な薬剤のバイオアベイラビリティ及び/又は低い毒性をもたらす安定なマイクロエマルションプレコンセントレートである。これらの製剤は、薬剤のバイオアベイラビリティを高め、シクロスポリン及びその類似体の投与に関連する副作用を軽減するすぐれた能力を有する。マイクロエマルション製剤は、より小さい粒子の薬剤のデリバリーを可能にする。より小さい粒子の薬剤の単位投与量のデリバリーは、表面積の増加を可能にし、おそらくより高い吸収率、及びより良いバイオアベイラビリティを可能にする。マイクロエマルションは、当該技術では公知である。しかし、本発明の製剤の成分類を用いたマイクロエマルションは、エタノール、ビタミンE TPGS、油成分、及び乳化剤の比を適切に選択することによって形成される。これは、これまでに知られている製剤の、ISATX247に類似する活性薬剤に対する比の範囲外である。5%未満のエタノール、又は50%より多いビタミンE TPGSを含む組成物は、室温では固体のマイクロエマルションプレコンセントレートを形成する。これは、本発明の製剤の比較的好ましくない実施形態である。
【0077】
本発明の組成物中の諸成分の相対的比率は、関係する組成物の特殊なタイプによって、例えば、それが「マイクロエマルションプレコンセントレート」、マイクロエマルション、通常のエマルション、又は溶液などであるかどうかによって、かなり変動することはもちろんである。相対的比率は、組成物中の成分類の特定の機能によっても変化する;例えば「マイクロエマルションプレコンセントレート」の界面活性成分の場合に、それが単に界面活性剤として使われるか又は界面活性剤及び補助溶剤の両方として使われるかによっても変化する。相対的比率は、使用する特定の成分類及び製品組成物の所望の物理的特性によっても変化する。いかなる特殊な場合でも、適用可能な比率の決定は、当業者の能力の範囲内であるのが普通である。よって、全ての指示された比率及び以下に記載する相対的重量範囲は、好ましい或いは個々の発明的教示を示唆するものに過ぎず、本発明をその一般的観点で制限するものではないことを理解すべきである。本発明のマイクロエマルションは、マイクロエマルションプレコンセントレートである。本発明の好ましい製剤は、下記のとおりである:
【0078】
製剤1
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
成分類の比 0.5−1:4:2:2:1
【0079】
製剤2
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン80;及び
e)エタノール
成分類の比 0.5−1:2:4:2:1
【0080】
製剤3
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)MCT油;
c)ツイーン80;
d)トリアセチン;及び
e)エタノール
成分類の比 0.5−1:5:3:1:1
【0081】
製剤4
a)薬物学的有効量のISATX247
b)ツイーン80;
c)ビタミンE TPGS
d)エタノール;及び
e)ミリスチン酸イソプロピル
成分類の比 0.5−1:2:1:1:6
【0082】
製剤5
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
【0083】
成分類の比 0.5−1:4:2:2:1;組成物はさらに水性メジウムと混合され、透明な安定マイクロエマルション溶液を形成する。水性メジウムは、限定するものではないが、水、リンゴジュースなどの果汁、茶、ミルク及びココアなどである。有用な果汁としては、グレープフルーツジュースを除き、リンゴジュースなどが好ましい。製剤は、水性メジウム中に、製剤約1部対水性メジウム約10ないし約100部の割合で溶解するのが好ましい。
【0084】
本発明の医薬製剤は、十分なバイオアベイラビリティを有することが好ましい。好ましくは、ISATX247のバイオアベイラビリティは30%以上であり、バイオアベイラビリティが約40%より大きいことがより好ましい。医薬製剤は、マイクロエマルション又はマイクロエマルションプレコンセントレートなどの、経口投与型であるのが好ましい。水性メジウムは、経口製剤として容易に摂取できるように、患者の口に合うものであるのが好ましい。
【0085】
本発明の製剤は、必要とする患者に有効量を投与すると、免疫抑制をもたらす。好ましくは、投与する医薬製剤の量は、約0.1ないし10mg/kg患者体重/日であり、より好ましくは約0.5ないし3mg/kg患者体重/日である。製剤は、1日1回又は2回投与するのが好ましい。
【0086】
正しく投与すると、本発明の製剤は、例えば臓器拒絶又はグラフト対ホスト病の予防、及び、病気及び障害、特に自己免疫疾患及び障害及び炎症性疾患及び障害の治療を含む免疫抑制のために使用できる。ここで意図される自己免疫病及び炎症性疾患の例は、非制限的に、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、乾癬、糖尿病、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、関節炎(リウマチ性関節炎、慢性進行性関節炎及び変性関節炎)、及びリウマチ疾患、自己免疫性血液病(溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球ろう及び特発性血小板減少症)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、強皮症、ウェーゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スチーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)、内分泌性眼障害、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎(前部及び後部)、乾性角結膜炎及び春季角結膜炎、腸肺線維症、乾癬性関節炎及び糸球体腎炎などである。
【0087】
本発明の製剤は、マラリヤ、コクシジオイデス真菌症及び住血吸虫症などの抗寄生虫疾患又は抗原虫疾患の治療にも使用できる。それらは、腫瘍における抗ガン剤耐性を後退又は排除するための薬剤としても使用できる。
【0088】
本発明は、非経口投与(皮下又は筋肉内投与)製剤も意図している。この製剤は、下記を含んでなる:
a)薬物学的有効量のISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール。
このような製剤は、投与前に滅菌されるのが好ましい。
【0089】
C.方法論
我々は、シクロスポリン類似体ISATX247の安定製剤を調製し得ることを見いだした。本発明の製剤は、下記の方法でつくることができる。しかし、当業者はこれらの工程のいかなる手順も可能であることを知っている。さらに、以下で使用する成分類の量は上述したものと同じであり、以下に記載する方法は、一つ以上の工程を変えたり又はプロセスを完全に逆にすることが容易である。
【0090】
製剤5だけが、マイクロエマルションプレコンセントレートを水溶液に加えてマイクロエマルションを形成する方法を詳述しているが、どのマイクロエマルションプレコンセントレート製剤も、水性メジウムと混合することによってマイクロエマルションに変えることができる。プレコンセントレートを、プレコンセントレート1部対メジウム10−100部の割合で水性メジウムと混合するのが好ましい。水性メジウムが、リンゴジュースであるのがより好ましい。
【0091】
製剤1
まず、MCT油をツイーン40に加えて、室温(20−25℃)で混合物を形成する。次に、エタノールをMCT油とツイーン40との混合物に加える。次に、ビタミンE TPGSをその混合物に加える。混合物を30−35℃で、透明になるまで撹拌しながらインキュベートする。その後、適量のISATX247を加える。最後に、成分類を30−35℃で混合し、ISATX247を完全に溶解させる。
【0092】
製剤2
まず、MCT油をツイーン80に加えて、室温(20−25℃)で混合物を形成する。次に、エタノールをMCT油とツイーン80との混合物に加える。次に、ビタミンE TPGSをその混合物に加える。混合物を30−35℃で、透明になるまで撹拌しながらインキュベートする。その後、適量のISATX247を加える。最後に、成分類を30−35℃で混合し、ISATX247を完全に溶解させる。
【0093】
製剤3
まず、MCT油をツイーン80に加えて、室温(20−25℃)で混合物を形成する。次に、エタノールをMCT油とツイーン80との混合物に加える。次に、トリアセチンをその混合物に加える。混合物を30−35℃で、透明になるまで撹拌しながらインキュベートする。その後、適量のISATX247を加える。最後に、成分類を30−35℃で混合し、ISATX247を完全に溶解させる。
【0094】
製剤4
まず、MCT油をツイーン80に加えて、室温(20−25℃)で混合する。次に、ミリスチン酸イソプロピル及びエタノールを、室温(20−25℃)でその混合物に加える。その後、適量のISATX247を加える。最後に、成分類を室温(20−25℃)で混合し、ISATX247を完全に溶解させる。
【0095】
製剤5
まず、MCT油をツイーン40に加えて、室温(20−25℃)で混合物を形成する。次に、エタノールをMCT油とツイーン40との混合物に加える。次に、ビタミンE TPGSをその混合物に加える。混合物を30−35℃で、透明になるまで撹拌しながらインキュベートする。その後、適量のISATX247を加える。最後に、成分類を30−35℃で混合し、ISATX247を完全に溶解させる。生成したプレコンセントレートを、その後水性メジウムと混合する。好ましくは、プレコンセントレートは水性メジウムと、プレコンセントレート1部対メジウム10−100部の割合で混合する。
好ましい方法では、上記各製剤は、まずISATX247をエタノールに溶解することによってつくられる。残りの成分類は、どんな順序で加えてもよい。
【0096】
発明の実施例の開示
下の実施例において、下記の略号は下記の意味を有する。略号が定義されていない場合、それは一般的に容認される意味を有するものとする。
w/w = 重量対重量
NF = (National Formulary)承認された処方
NF/NP = 承認された処方/国際薬局方
USP = 米国薬局方
mg = ミリグラム
mL = ミリリットル
kg = キログラム
ng = ナノグラム
nm = ナノメーター
max = 最高濃度に達するまでの時間
max = 最高濃度
AUC = 曲線下面積
LCMS = 液体クロマトグラフィー−質量分析
MCT = 中鎖トリグリセリド
PK = 薬物動態
PS = ブタの皮膚
【0097】
2種類の薬剤製品、経口溶液及びソフトゼラチンカプセルが、イソテクニカ社によって開発された。両薬剤製品共、界面活性剤、エタノール、親油性及び/又は両親媒性溶媒を成分として含む。各薬剤製品の製法を以下に記す。
【0098】
実施例1:ISATX247経口溶液の製法
次の成分類がISATX247薬剤製品−経口溶液を構成する:ISATX247、d−アルファ トコフェリル ポリエチレングリコール1000琥珀酸(ビタミンE TPGS)NF、中鎖トリグリセリド(MCT)油USP、ツイーン40 NF、及び95%エタノールUSP。
【0099】
【表1】

【0100】
ビタミンE TPGSをホットボックス中で融解し、液体ディスペンサーに移した。各TPGS容器の温かい内容物を最低1分間混合し、均質な液体であることを肉眼で確認した。各バレルの内容物の温度が35℃になったとき、必要温度である37.5±2.5℃のグレン(Groen)容器を準備した。
【0101】
必要量の成分ビタミンE TPGS、MCT油、ツイーン40及び95%エタノールを、確認のために正しくラベルをつけた別々の容器に秤量した。ビタミンE TPGSは、直ちにグレン容器に移した。MCT油、ツイーン40及びエタノールを、あらかじめ秤量したビタミンE TPGSを収容している容器に、逐次定量的に移した。エタノール蒸発を減らすために、その容器にしっかりと蓋をし、エタノール添加後15−20分間、37.5±2.5℃で混合した。
【0102】
最上部と底部のサンプルを、無菌ガラス製使い捨てピペットを用いて観察した。ピペットの内容物は、肉眼的に均質、透明であることが期待された。
【0103】
軽くボルテックスできるようなミキサーをセットした。容器に蓋をし、混合中のエタノールの蒸発を減らした。連続的に混合しているブレンドに、ISATX247を加えた。その後、容器を密封した。混合物を、粉末が完全に溶解するまで30分ごとにチェックした。
【0104】
実施例2:ISATX247ゼラチンカプセルの製法
本発明は、ソフトゼラチンカプセルも意図している。このカプセルは、ISATX247及び経口溶液のような非薬剤成分を、ゼラチン、グリセリン、水、及びソルビトールを含有するゼラチン2D PS型(NF/NP)カプセルに封入して含む。
【0105】
ISATX247ゼラチンカプセルは、ISATX247、ビタミンE TPGSNF、中鎖トリグリセリド(MCT)油USP、ツイーン40 NF、及び95%エタノールUSPを含んでなるISATX247経口溶液(50mg/mL)を、ゼラチン2D PS型(NF/NP)カプセルに封入するというやり方でつくられた。ゼラチン2D PS型(NF/NP)カプセルは、ゼラチンNF(ブタ皮膚)、グリセリンUSP、精製水USP、及び76%ソルビトールスペシャルを用いてつくられた。
【0106】
実施例3:安定性/保存寿命の測定
下表はびん(30℃で保存)に入れた製剤1、及びソフトゲルカプセル形(室温で保存)の製剤1両方について、公知のLCMS法によって測定した安定性データを示す。製剤は、通常の保存条件では安定である。
【表2】

【0107】
実施例4:薬物動態(PK)曲線の比較
下に示す製剤を、SDラットに経口胃管栄養法によって与え、ISATX247の血中濃度を規則的時間間隔でモニターし、濃度対時間曲線(すなわち薬物動態曲線)を作成した。下表は、ここに開示された製剤を含む、種々のISATX247製剤のPK曲線の比較である。群2は、表3に示されるように、ラットモデルにおいて良いバイオアベイラビリティを示すが、これらの結果は、イヌ又はヒトモデルではかなり変動する(表4を参照されたい)。
【表3】

【0108】
群1:
VitE TPGS/MCT油/ツイーン40/エタノール:4/2/2/1(w/w/w/w)。(ここでは製剤1として開示されている)
群2:
VitE TPGS/MCT油/ツイーン80/エタノール:2/4/2/1(w/w/w/w)。(ここでは製剤2として開示されている)
群3:
MCT油/ツイーン80/トリアセチン/エタノール:5/3/1/1(w/w/w/w)。(ここでは製剤3として開示されている)
群4:ツイーン80/VitE TPGS/エタノール/ミリスチン酸イソプロピル:2/1/1/6(w/w/w/w)。(ここでは製剤4として開示されている)
群5(比較実施例):
VitE/プロピレングリコール/マイシン/クレモフォルRH40/エタノール:3/1.2/5/6.2/2(w/w/w/w)。
群6:
これはリンゴジュースで1:65に希釈され、マイクロエマルションを形成した製剤である。(ここでは製剤5として開示されている)。
【0109】
実施例5:マイクロエマルションの製法
製剤の成分の比を100以上入れ替えて、マイクロエマルション形成を試験した(485及び900nmにおける吸収率を、それぞれ0.1及び0.01未満と定義した)。試験した製剤は、下記の成分比を含んでいた:
5−10%ISATX247
0−50%ビタミンE TPGS
0−50%ツイーン40及び/又はツイーン80
0−50%MCT油
5−15%エタノール。
【0110】
試験した製剤の20%未満が、マイクロエマルションを生成した。マイクロエマルション形成は、ビタミンE TPGS又はエタノールのどちらの比にも比較的依存しない。しかし、50%より大きい比のビタミンE TPGS及び5%未満の比のエタノールを有する製剤は、室温で凍結するプレコンセントレートを生成し、それはあまり好ましくない。図1は、ツイーン40及びMCT油の賦形剤比の関数としてのマイクロエマルションプレコンセントレート形成をあらわす表である。
【0111】
実施例6:イヌにおける薬物動態(PK)曲線の比較
図2は、ビーグル犬における本発明のISATX247マイクロエマルションの薬物動態(PK)曲線を、ネオラル(商標)のそれと比較したグラフを示す。データは、下表にも示される。製剤をビーグル犬(6匹)に経口胃管栄養法で与え、ISATX247の血中濃度を規則的時間間隔でモニターし、濃度対時間曲線(すなわち薬物動態曲線)を作成した。より詳細に述べれば、イヌにいずれかの製剤2mL(100mg/mL)を経口胃管栄養法によって与えた。投与後0、0.5、1、2.5、5、7.5、12及び24時間に採血し、液体クロマトグラフィー・質量分析(LCMS)によって分析した。
【0112】
【表4】

【0113】
群1:
製剤1:VitE TPGS/MCT油/ツイーン40/エタノール:4/2/2/1(w/w/w/w)。
群2:
ネオラル(商標)
【0114】
これらのデータによると、ISATX247製剤のバイオアベイラビリティは、ネオラル(商標)に比べてわずかに低いが、サンディミューン(Sandimmune)(商標)によるバイオアベイラビリティよりは実質的に大きい(データは示されず)。ネオラル(商標)は通常、約40%のバイオアベイラビリティであることが報告されている。表4が示すように、群1のバイオアベイラビリティはネオラル(商標)に匹敵する。
これらのデータは、本発明の製剤が、シクロスポリンの他の製剤に匹敵するバイオアベイラビリティを有し、シクロスポリン投与に関連する副作用を軽減することを示している。
【0115】
実施例7:ISATX247及びシクロスポリンAの薬物動態及び毒物動態特性
ISATX247(45−50%のE−異性体及び50−55%のZ−異性体)及びシクロスポリンAの薬物動態及び毒物動態パラメーターを、ウサギモデルで試験した。そのウサギは、シクロスポリンA腎臓毒性を研究するためのモデルとしても使われているが、ラットほどよく使われてはいない。研究では、ウサギに投与したシクロスポリンAは他の動物モデルでこれまでに報告されたものより低い用量、しかもヒトにおける治療範囲の少なくとも高い方の濃度以下でもある用量で、構造的及び機能的変化を引き起こすことが見いだされた(スリヴァリスら、1991、1994)。また、細管の細胞学的変化に加えて、間質性線維症及び動脈症の所見があることは、ウサギが腎臓毒性の研究により適したモデルであることを示唆する。なぜならば、これらの構造的変化は、ヒトで認められる腎臓毒性の顕著な特徴だからである。下記のスケジュールによって、ISATX247を最初の7日間静脈注射(i.v.)し、さらに23日間皮下注射した(s.c.)。
【0116】
【表5】

【0117】
認められたいかなる腎臓変化もISATX247効果によるもので、病原体によるものではないことを確実にするために、無病原体ウサギ(SPF)を使用した。1及び7日目に、薬剤を投与する前と、投与後0.5、1、2、4、8、12、18及び24時間後に血液サンプルを集め、薬物動態曲線を作成した。その他の評価パラメーターは、臨床的観察、体重、食餌消費量、血液検査値、臨床化学検査、肉眼的病理試験、及び選択された組織/臓器の組織病理学的検査などである。
【0118】
血液サンプルを、質量分析と高性能液体クロマトグラフィーとの組合わせ(LCMS)によって分析した。下の表5は、シクロスポリンA又はISATX247の10mg/kgを投与したウサギにおける平均薬物動態パラメーターをまとめたものである。
【0119】
【表6】

【0120】
10mg/kg/日を投与した雄ウサギでは、シクロスポリンAとISATX247との薬物動態パラメーターの間に統計的有意差はなかった。同量を投与した雌ウサギのISATX247の薬物動態パラメーターは、7日目の最大濃度を除けば雄ウサギで認められたパラメーターと有意に異ならなかった。
【0121】
ビヒクル対照、シクロスポリンA、又はISATX247を投与されたウサギの血液学的パラメーターにおいて有意な変化は認められなかった。下の表6に示すように、研究コース中、種々の群においてクレアチニン濃度に差が認められた。これらの差は、シクロスポリンAが、ビヒクル対照又はISATX247のいずれよりも有意に大きい負の効果を腎臓に与えることを示した。50%多い量、すなわち15mg/kg/日でさえ、10mg/kg/日シクロスポリンAに比べて、ISATX247は血清クレアチニン濃度の有意な増加を誘起しなかった。
【0122】
【表7】

【0123】
ビヒクル対照、10mg/kgシクロスポリンA、5mg/kg ISATX247、又は10mg/kg ISATX247を投与した全てのウサギの試験では、有意な異常はあらわれなかった。これは特に腎臓では事実であった;腎臓ではシクロスポリンA投与動物で通常見られる、間質性線維症(スリヴァリスら、1991、1994)の徴候は認められなかった。15mg/kg ISATX247を投与した雄ウサギでは、精子形成の減少が認められた。この15mg/kg用量のISATX247投与で試験を完了した3匹の雌ウサギには、変化は認められなかった。
【0124】
本発明を詳細に示し、その好ましい実施形態を参照して記述したが、添付の請求によって規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に種々の変更が行われ得ることは当業者には理解できるであろう。
【0125】
上に述べた全ての参考文献は、参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン40;及び
e)エタノール
を含み、a:b:c:d:eの重量比が0.5〜1:4:2:2:1であり、水性メジウムと接触して透明なマイクロエマルションを形成する、医薬製剤。
【請求項2】
5〜10重量%のISATX247、20〜50重量%のビタミンETPGS、5〜20重量%のMCT油、5〜50重量%のツイーン40、及び5〜15重量%のエタノールを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
a)ISATX247;
b)ビタミンE TPGS;
c)MCT油;
d)ツイーン80;及び
e)エタノール
を含み、a:b:c:d:eの重量比が0.5〜1:2:4:2:1であり、水性メジウムと接触して透明なマイクロエマルションを形成する、医薬製剤。
【請求項4】
5〜10重量%のISATX247、20〜50重量%のビタミンETPGS、5〜20重量%のMCT油、5〜50重量%のツイーン80、5〜15重量%のエタノールを含む、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
経口投与用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
さらに、保護コロイドとしての生体適合性ポリマー類、懸濁液安定剤又は増量剤、賦形剤、結合剤及び担体を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
生体適合性ポリマーが、ポリオキシエチレングリコール化天然又は水素化植物油、クレモフォル(商標)、ニッコル(商標)、ツイーン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー類、レシチン類、プロピレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル類、及び、プロピレングリコール カプリル−カプリン酸ジエステルからなる群から選択される、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
ツイーンが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、及びポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエートからなる群から選択される、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、免疫抑制を必要とする対象に投与して免疫抑制を生成するための組成物。
【請求項10】
前記対象の体重1kgあたり前記医薬製剤が0.5〜3mg/日で投与されるように調合された、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1日1回投与されるように調合された、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
1日2回投与されるように調合された、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記対象の炎症性又は自己免疫疾患又は障害を治療するための、請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
医薬製剤1部に対して水性メジウム10〜100部の割合で水性メジウムと混合するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記水性メジウムが、水、果汁(グレープフルーツジュースを除く)、茶、ミルク及びココアからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記果汁がリンゴジュースである、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
ソフトゼラチンカプセルの形態である、請求項5に記載の医薬製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158609(P2012−158609A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118377(P2012−118377)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2008−287205(P2008−287205)の分割
【原出願日】平成14年10月17日(2002.10.17)
【出願人】(511217418)アイソテクニカ ファーマ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】