説明

新規のユーカリ抽出物、その調製方法およびその治療利用法

本発明は、神経伝達物質の再取り込みの変調から生じる疾患または病変の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のためのユーカリ抽出物の利用法に関するものであって、当該治療および/または予防が、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの阻害からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミン、セロトニンおよび/またはノルアドレナリンといった神経伝達物質の再取り込みの変調から生じる、疾患または病変の治療および/または予防を目的とする医薬品または栄養補助食品の調製のためのユーカリ抽出物の利用に関するものである。好ましくは、前記抽出物は、
【化1】

という構造式(I)の化合物のうちの少なくとも一つまたはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものによって富化されており、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基、
【化2】

基を形成しており、R2はイソブチル基、α−イソブチル基またはβ−イソブチル基を表わしている。
【0002】
本発明は同様に、前記神経伝達物質の再取り込みの変調から生じる疾患または病変の治療および/または予防を目的とする医薬品または栄養補助食品の調製のための上述の構造式(I)の化合物のうちの少なくとも一つの利用にも関するものである。
【背景技術】
【0003】
ユーカリには数多くの種が存在し(600種超)、その大半がオーストラリアおよびタスマニアの原産であり、少数がニューギニアおよびマレーシア東部の原産である。ユーカリは、フトモモ科に属し、その花の特徴的な形状にその名の由来がある。実際、Eucalyptusという語は、花の雄しべを覆う(合着した花弁から形成される)蘚蓋のことを意味する、「よく包まれた」という意味をもっている。該ユーカリは、一般的にその原産国(オーストラリア)では高さ80〜100mに、また、より穏やかな気候においては3〜20mに達し得る美しい大きな木である。すべらかなその樹皮は、灰白色であり、長い帯の形状で剥がれ落ちる。該ユーカリの一般的な特徴は、二型性の葉である。Eucalyptus globulus Labillの場合、若葉は、青色で円く囲まれた青緑色の卵状楕円形、抱茎型で無柄であるが、成葉は、(両面同等)灰色がかった緑色の鎌の形状で、垂れ下がり、回旋状の葉柄を有しており、縦向きである。蕾は、蘚蓋で覆われた四角錐状の萼によって形成されており、該萼は、開花の際に脱落し、白い長い糸状と黄色の葯の多くの雄しべが現れる。実は、黒色または褐色がかった種子が入っている直径2〜2.5cmのさっ果である。
【0004】
植物療法で、欧州薬局方においては主に三種、すなわちEucalyptus globulus Labill、E.polybractea R.T.BakerおよびEucalyptus smithii R.T.Bakerが用いられている。最も成長している小枝の葉(鎌状で有柄)、精油およびそれに由来するオイカリプトールが利用される。
【0005】
ユーカリの葉は従来、呼吸器系の疾患(気管支炎、のどの炎症、鼻づまり、風邪等)を治療するために経口経路および局所的に利用されるか、または、傷、皮膚の潰瘍などを手当てするために塗布で利用されている。ユーカリ精油およびオイカリプトール(または1,8−シネオール)は、その殺菌、粘液溶解および去痰効果から、呼吸器経路の疾患を治療することを目的とする数多くの調製物に入れられる。精油は、防虫剤としておよび獣医療において利用されている。
【0006】
ユーカリ精油の公知の薬理学的な特性は、今日では、抗菌性、去痰性および鎮咳性(WICHTL M. et ANTON R., 1999 − Plantes therapeutiques − 177−179)、抗炎症性および抗喘息性(JUERGENS et al., 2003 − Anti−inflammatory activity of 1,8−cineol (eucalyptol) in bronchial asthma : a double−bind placebo controlled trial − Respir. Med., 97 (3), 250− 256)、抗糖尿病性(SWANSTON et al., 1990 − Traditional plant treatments for diabetes. Studies in normal and streptozotocin diabetics rats − Diabetologia, 33 (8), 462− 464)、抗ヒスタミン性(IKAWATI Z. and al., 2001 − Screening of several Indonesian medecinal plants for their inhibitory effect on histamine release from RBL−2H3cells − J. Ethnopharmacol, 75 (2−3), 248−256)、抗癌性(TAKASAKI et al, 2000 − Cancer chemopreventive activity of euglobal−Gl from leaves of Eucalyptus grandis − Cancer Lett., 155 (1) : 61−65)、抗ウイルス性(TAKASAKI et al, 1990 − Structures of euglobal−Gl, − G2 and G3 from Eucalyptus grandis, three new inhibitors of Epstein virus activation - Chem. Pharm. Bull. 38 (5), 1444−1446)、および抗−HIV性(WICHTL M. et ANTON R., 1999 − Plantes therapeutiques − 177−179)である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
予想外かつ驚くべきことに、本出願人は、神経伝達物質の変調から生じる、疾患または病変の治療および/または予防を目的とする医薬品または栄養補助食品の調製のためのユーカリ抽出物の利用を実証した。
【0008】
したがって、本発明の分野は、興味深い薬理学的特性が観察され、そしてそれにより、療法における新規の利用が検討されるユーカリの抽出物にある。本発明は、すでに数多くの文献において取り上げられているユーカリの精油自体には関係するものではない。
【0009】
有利には、医薬品または栄養補助食品は、
−神経系の疾病、疾患または障害、
−精神系の疾病、疾患または障害、
−神経系および精神系の疾病、疾患または障害に結びつけられた記憶、注意および不眠障害、
−機能性身体症候群、
−常習性薬物に対する依存、
の群の中から選択された、神経伝達物質の再取り込みの変調から生じる病変の治療および/または予防を目的としている。
【0010】
好ましくは、前記疾患または病変の治療および/または予防は、神経伝達物質の再取り込みの阻害から成る。
【0011】
本発明の意味合いでは、「神経伝達物質」とは、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンのことである。
【0012】
「ユーカリ」とは、本発明の意味合いでは、好ましくは、Eudesmia、SymphomyrtusおよびCorymbia亜属に属する種、そしてより特定的には、Eucalyptus globulus L., Eucalyptus pulverulenta Sims、Eucalyptus kartzoffiana L.A.S. Jahnson l Blaxell、Eucalyptus macrocarpa Hook、 Eucalyptus cinerea F. Muell.ex Benth、 Eucalyptus dorrigoensis (Blakely) L.A.S. Johson l K.D.Hill、Eucalyptus leptopoda Benth、 Eucalyptus occidentalis Endl、 Eucalyptus viridis R.T.Baker、Eucalyptus polybractea R.T.BakerおよびEucalyptus smithii R.T.Bakerという種である。
【0013】
これらの例は、本発明を例示するものではあって、その範囲を制限するものではない。
【0014】
有利には、ユーカリ抽出物は、ユーカリの葉、花、実、茎または幹から得られ、好ましくはユーカリの葉から得られる。
【0015】
有利には、本発明にしたがって利用されるユーカリ抽出物は、構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体のうちのいずれか一つのものを含むことを特徴とする。
【0016】
前記構造式(I)は、なかでもマクロカルパール(macrocarpal)群の四つの化合物を包含する;該化合物は、以下のもののことである:
−マクロカルパールA:(5−((1R)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化3】

基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わす。
【0017】
【化4】

実験式:C2840
分子量:472g/モル
【0018】
有利には、本発明に従ったユーカリ抽出物中のマクロカルパールAの質量分率は0.1%以上、厳密には3%未満である。
【0019】
−マクロカルパールB:(5−((1S)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化5】

基を形成し、R2はα−イソブチル基を表わす。
【0020】
【化6】

実験式:C2840
分子量:472g/モル
【0021】
有利には、本発明に従ったユーカリ抽出物中のマクロカルパールBの質量分率は0.1%以上、厳密には3%未満である。
【0022】
−マクロカルパールC:(5−((1R)−1−((11S)−3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わす。
【0023】
【化7】

実験式:C2838
分子量:454g/モル
【0024】
有利には、本発明に従ったユーカリ抽出物中のマクロカルパールCの質量分率は0.1%以上、厳密には3%未満である。
【0025】
−マクロカルパールG:(5−(1−(3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はイソブチル基を表わす。
【0026】
【化8】

実験式:C2838
分子量:454g/モル
【0027】
有利には、本発明に従ったユーカリ抽出物中のマクロカルパールGの質量分率は0.1%以上、厳密には5%未満である。
【0028】
前記ユーカリ抽出物は、当業者に既知の、従来の段階に基づいて実施される抽出方法により得られる。
【0029】
ユーカリ(Eucalyptus sp.)の葉、花、実、茎または幹、またはこれらの部位の混合物は粉砕され、その後、アルカン(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン)、エーテルオキシド(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル)、エステル(酢酸エチル、酢酸イソプロピル)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン)、または、一つまたは複数の水混和性の有機溶媒と水との混合物(例えば水性アルコール混合物)であり得る有機溶媒で抽出される。
【0030】
抽出は、約1/1〜約1/20の間に含まれる植物/溶媒比で実施され、二〜三回くり返すことができる。抽出溶媒の温度は、周囲の温度以上であり得、用いられる溶媒の沸とう温度に達し得る。溶媒と植物の接触時間は、約30分〜約72時間の間に含まれる。
【0031】
その後、固体/液体分離を行ない、植物は、濾過または遠心分離によって溶媒から分離される。
【0032】
得られた濾過物を、
−抽出溶媒の完全な蒸発によって直接完全に乾燥させ、最終的な抽出物を構成してもよいし、
−あるいは、多少とも濃縮されてもよい。
混合抽出溶媒(例えば水性アルコール混合物)の場合、濃縮は、存在する有機溶媒が蒸発するまで続行される。有機溶媒の場合、一定量の水が得られた濃縮物に添加される。水相に、アルカン(例えばヘキサン)、エーテルオキシド(例えばジエチルエーテル)、エステル(例えば酢酸エチル)、アルコール(例えばブタノール)、ケトン(例えばメチルエチルケトン)またはハロゲン化炭化水素(例えばクロロホルム)であり得る非混和性溶媒を添加することにより、液液精製段階が実施される。一回、二回または三回の液液抽出が実施される。統合された有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させてから、完全に乾燥させることができる。
【0033】
得られた溶液は、真空下で周囲の温度と沸とう温度の間に含まれる温度で濃縮される。
【0034】
最終的な抽出物の乾燥は、凍結乾燥または当業者に既知のより従来的な乾燥手段(噴霧化、オーブン等)によって実施される。好ましくは、乾燥温度は約60℃を超えない。
【0035】
抽出物は、例えばアスコルビン酸、クエン酸といったような酸化防止剤を、乾燥された抽出物100gに対して約0.05〜約1gの間に含まれる分量で添加することによって安定化され得る。
【0036】
本発明の極めて傑出した点は、抽出物が構造式(I)の化合物のうちの少なくとも一つまたはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものによって富化されているため、ユーカリ抽出物の神経伝達物質の再取り込みの阻害という薬理学的特性が一層有利であるという点にある。
【0037】
したがって、前記ユーカリ抽出物は好ましくは、構造式(I)の少なくとも一つの化合物によって富化されている。
【0038】
「マクロカルパールAによって富化されたユーカリ抽出物」というのは、本発明の意味合いでは、そのマクロカルパールAの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であるユーカリ抽出物のことである。
【0039】
「マクロカルパールBによって富化されたユーカリ抽出物」というのは、本発明の意味合いでは、そのマクロカルパールBの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であるユーカリ抽出物のことである。
【0040】
「マクロカルパールCによって富化されたユーカリ抽出物」というのは、本発明の意味合いでは、そのマクロカルパールCの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であるユーカリ抽出物のことである。
【0041】
「マクロカルパールGによって富化されたユーカリ抽出物」というのは、本発明の意味合いでは、そのマクロカルパールGの質量分率が5%以上、厳密には90%未満、好ましくは5%以上で50%未満、より好ましくは5%以上で40%未満、さらに一層好ましくは5%以上で20%未満であるユーカリ抽出物のことである。
【0042】
本出願人は、ドーパミンおよび/またはノルアドレナリンおよび/またはセロトニンの再取り込みにおけるユーカリ抽出物の影響を示した。
【0043】
これらの神経伝達物質の再取り込みの阻害物質というその薬理学的特性から、前記抽出物は、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの欠乏から生ずる多くの疾患または病変の治療および/または予防を目的とする医薬品または栄養補助食品の調製に特に有用である。
【0044】
本発明に従ったユーカリ抽出物を用いた治療および/または予防が可能な疾患または病変のうち、非制限的な趣旨の例証として以下のものを挙げることが適当である:
−神経変性疾病(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、脳血管障害、頭蓋外傷性傷害)、筋萎縮性側索硬化症、老年性認知症、前頭側頭認知症、血管性認知症、片頭痛、中枢性の神経因性疼痛といったような神経系の疾病、疾患または障害;
−うつ病(内因性、耐性、反応性または医療性)、うつ状態、統合失調症、躁鬱病、全般性不安、ストレス性疾患、パニック発作、強迫神経症、心的外傷後ストレス症候群、注意多動性障害、摂食障害(特に過食症、拒食症)、恐怖症(特に広場恐怖症)、自閉症といったような精神系の疾病、疾患または障害;
−神経系または精神系の、疾病、疾患または障害に付随する記憶、注意および不眠障害;
−慢性疲労症候群、線維筋痛、過敏性大腸症候群、胃食道逆流、性欲減弱、勃起障害、尿失禁といったような機能性身体症候群;
−特にニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬といったような常習性薬物に対する依存。
【0045】
実際、本発明に従った医薬品または栄養補助食品は、有利には、ニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬に対する離脱を誘発し、禁欲する人への逆戻りの予防を目的としている。
【0046】
本発明に従った医薬品または栄養補助食品は、有利には、常習性薬物に対する補充治療と、禁断症状群に付随するうつ症候群の予防および/または治療のために利用される。
【0047】
当業者であれば、治療に、かかる阻害を必要とする他の病変を認識することができるものである。
【0048】
本出願人は、非制限的な趣旨で、病変とドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンのトリプル再取り込み阻害剤を用いたそれらの治療との関係について言及しているいくつかの参考文献をここに明記する。それぞれの「群」に対し、一つの例を指摘した。
【0049】
ドーパミン、セロトニンおよびノルアドレナリンは、ニューロンの開発および存続に貢献している(Lauder J.M., Trends Neurosci, 1993, 16; 233)。パーキンソン病といったある種の神経系の病変(Hornykiewicz O., Adv Cytopharmacol. 1971, 1; 369)は、ドーパミン欠乏症の結果生じるものである;ドーパミン、セロトニンおよびノルアドレナリンの割合を増大させるモノアミン酸化酵素阻害薬が、パーキンソン病およびその他の神経系の疾患を治療するために利用される(Ebadi M., Curr Drug Targets. 2006, 7; 1513)。したがって、本発明に従ったユーカリ抽出物は、これらの神経系の疾病の治療において有利に利用され得る。
【0050】
うつ病は、気力、意欲および性欲の減弱を伴うことの多い、強い悲しみ、悲観的な考え、卑下の感情を特徴とする、頻繁に起こる気分の病変である。無快感症の名前でも知られている、通常は快適である体験に快楽を感じる能力の不全もまた、うつ病によくみられる症状とみなされる。うつ病は現在、フルオキセチン、シタロプラムまたはパロキセチンといったような選択的セロトニン再取り込み阻害薬、レポキセチンといったような選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、また、さらには、ミルナシプランまたはベンラファクシンといったような、セロトニンとノルアドレナリンを混合した再取り込み阻害薬によって治療されている。しかしながら、快楽および自発性においては、側坐核と呼ばれる脳の領域に放出するドーパミン作動性ニューロンに重要な役割が割当てられた(Koob G.F. Sem. Neurosci. 1992, 4, 139 ; Salamone J.D. Behav. Brain Res. 1994, 61, 117)。したがってうつ病の症候は、本発明に従ったユーカリ抽出物のようなドーパミン、セロトニン、そしてノルアドレナリンの再取り込み阻害薬によって、有利には治療が可能である。
【0051】
ニコチンを含めた常習性薬物の吸収は、動物(Di Chiara G et Imperato A., Proc Natl Acad Sci U S A. 1988, 85 ; 5274)とヒト(Brody et al., Am J Psychiatry, 2004, 161 ; 1211)における腹部線条体の細胞外ドーパミン濃度を増大させる。たばこの禁断症状群には、うつ病症候群が伴い得る(Wilhelm K et al., Drug Alcohol Rev, 2006, 25 ; 97)。したがって本発明に従ったユーカリ抽出物は、ニコチンといったような常習性薬物に対する補充治療と、禁断症状に付随する、うつ病症候群の予防または治療のために有利に利用され得る。
【0052】
ソマトトロピン症とも呼ばれる機能性障害は、多くの生理的機能に関係するものであり、器質的機能障害ではなく(肝臓、心臓等の)臓器の機能の仕方に起因する障害である。機能性身体障害は、後に発生する疾病の起源となる可能性がある。これらの障害のうち線維筋痛は、拡散痛または限局痛、慢性疲労、うつ症状、記憶および集中力障害を付随する障害である(Rooks DS., Curr Opin Rheumatol. 2007, 19; 111)。線維筋痛の症状は、ノルアドレナリン/セロトニン混合再取り込み阻害薬によって治療される(Vitton O., Hum Psychopharmacol. 2004, 19 Suppl 1:S27)。本発明に従ったユーカリ抽出物などにドーパミン作動性を有利なものにする成分を添加することは、機能性身体障害の治療および/または予防を目的とした医薬品または栄養補助食品の調製にとって有利である。
【0053】
有利には、前記医薬品は経口剤または注入剤型である。
【0054】
有利には、経口剤型は、錠剤、ゼラチンカプセル、カプセル、例えばシロップ、飲用溶液または飲用懸濁液用粉末などの液体製剤から成る群から選択される。
【0055】
有利には、前記栄養補助食品(または栄養補給または食事療法用)は、一回分の用量、すなわち、ゼラチンカプセル、糖衣錠、錠剤、丸薬およびその他の類似する型、ならびに、粉末入りの袋、液体入りのアンプル剤、ピペット付きの小瓶で、そして、少量の計測単位で服用することを目的とした液体または粉末の製剤の類似する型でパッケージされる。
【0056】
本発明に従った構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものによって富化されたユーカリ抽出物から得られる結果は、化学的方法、生化学的方法によって得られるかまたは植物抽出物から得られるかに関わらず、構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものをベースとする全ての組成物に本発明の利点を拡大することができるということを示している。
【0057】
したがって、本発明は、神経伝達物質の再取り込みの変調から生じる、神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のための構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものの利用に関するものでもある。好ましくは、前記疾患または病変の治療および/または予防は、神経伝達物質の再取り込みの阻害から成る。
【0058】
これらの神経伝達物質の再取り込みの阻害物質というその薬理学的特性のため、構造式(I)の化合物およびそのジアステレオ異性体は、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの欠乏の結果としての数多くの疾患または病変を治療しおよび/または予防することを目的とする医薬品または栄養補助食品の調製に特に有用である。
【0059】
本発明に従った前記化合物を用いて治療および/または予防可能な疾患または病変の中でも、非制限的な趣旨の例証として以下のものを挙げることが適当である:
−神経変性疾病(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、脳血管障害、頭蓋外傷性傷害)、筋萎縮性側索硬化症、老年性認知症、前頭側頭認知症、血管性認知症、片頭痛、中枢性の神経因性疼痛といったような神経系の疾病、疾患または障害;
−うつ病(内因性、耐性、反応性または医療性)、うつ状態、統合失調症、躁鬱病、全般性不安、ストレス性疾患、パニック発作、強迫神経症、心的外傷後ストレス症候群、注意多動性障害、摂食障害(特に過食症、拒食症)、恐怖症(特に広場恐怖症)、自閉症といったような精神系の疾病、疾患または障害;
−神経系または精神系の、疾病、疾患または障害に付随する記憶、注意および不眠障害;
−慢性疲労症候群、線維筋痛、過敏性大腸症候群、胃食道逆流、性欲減弱、勃起障害、尿失禁といったような機能性身体症候群;
−特にニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬といったような常習性薬物に対する依存。
【0060】
実際、本発明に従った医薬品または栄養補助食品は、有利には、ニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬に対する離脱を誘発し、禁欲する人への逆戻りの予防を目的としている。
【0061】
本発明に従った医薬品または栄養補助食品は、有利には、常習性薬物に対する補充治療と、禁断症状群に付随するうつ症候群の予防および/または治療のために利用される。
【0062】
当業者であれば、その治療にこのような阻害が必要であるその他の病変を認識することができるものである。
【0063】
有利には、本発明は、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの変調から生じる、神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のためのマクロカルパールA、マクロカルパールB、マクロカルパールCおよび/またはマクロカルパールGの利用に関するものである。
【0064】
構造式(I)の化合物およびそのジアステレオ異性体の形態を用いて実施された試験は、これらの化合物がドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの阻害に作用することを示した。
【0065】
有利には、前記医薬品は経口剤または注入剤型である。
【0066】
本発明に従った構造式(I)の化合物およびそのジアステレオ異性体の形態は、Total Synthesis of (−)−Macrocarpal C. Stereoselective Coupling Reaction with a Novel Hexasubstituted Benzene Cr(CO) Complex as a Biomimetic Chiral Benzyl Cation Equivalent / Tanaka, Tetsuaki ; Mikamiyama, Hidenori ; Maeda, Kimiya ; Iwata, Chuzo ; In, Yasuko ; Ishida, Toshimasa / Journal of Organic Chemistry (1998), 63(26), 9782−9793で記述されている通りの化学的または生化学的合成によってまたは植物抽出物の精製によって得られる。
【0067】
前記化合物は、「ユーカリ抽出物」または「構造式(I)の少なくとも一つのマクロカルパールによって富化された抽出物」から単離することが可能である。その精製を可能にする技術は、当業者にとって従来的なクロマトグラフィ法である。抽出物は、固定相としては、好ましくはSymetry Shield(登録商標)、5μm(Waters)である逆相を、そして移動相としては、95/5/0.1%の割合のアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸混合物を有する分取カラム上で分別される。
【0068】
構造式(I)の化合物に対するかかる留分の純度は90%以上である。好ましくは、このような留分のマクロカルパールA、マクロカルパールB、マクロカルパールCおよび/またはマクロカルパールGの純度は90%以上である。
【0069】
本発明に従うと、マクロカルパールAおよび/またはマクロカルパールBおよび/またはマクロカルパールCおよび/またはマクロカルパールGが太りすぎまたは肥満の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のために利用されることを合理的に想定することができる。
【0070】
本発明は同様に、
【化9】

という構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものを含み、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基、
【化10】

基を形成しており、R2はイソブチル基、α−イソブチル基またはβ−イソブチル基を表わし、そして
−マクロカルパールAの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であり、
−マクロカルパールBの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であり、
−マクロカルパールCの質量分率が3%以上、厳密には90%未満、好ましくは3%以上で50%未満、より好ましくは3%以上で40%未満、さらに一層好ましくは3%以上で20%未満であり、そして
−マクロカルパールGの質量分率が5%以上、厳密には90%未満、好ましくは5%以上で50%未満、より好ましくは5%以上で40%未満、さらに一層好ましくは5%以上で20%未満であることを特徴とする、ユーカリ富化抽出物にも関するものである。
【0071】
それゆえに、好ましくは、本発明は、医薬品または栄養補助食品としての前記ユーカリ富化抽出物の利用に関するものである。
【0072】
最後に、本発明は、このようなユーカリ富化抽出物の調製方法に関するものである。
【0073】
前記抽出物の獲得方法は、以下の段階から成るものである。
−ユーカリの葉および/または花および/または実および/または茎および/または幹の粉砕。
−有機溶媒または水と一つまたは複数の水混和性の有機溶媒との混合物を用いた少なくとも一回の抽出。
抽出は、約1/1〜約1/20の間に含まれる植物/溶媒比で実施され、二〜三回くり返すことができる。抽出溶媒の温度は、周囲の温度以上であり得、用いられる溶媒の沸とう温度に達し得る。溶媒と植物の接触時間は、約30分〜約72時間の間に含まれる。
好ましくは、溶媒は、アルカン(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン)、エーテルオキシド(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル)、エステル(酢酸エチル、酢酸イソプロピル)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン)、または、水と水混和性の有機溶媒との混合物(例えば水性アルコール混合物)から成る群の中から選択される。
好ましくは、抽出溶媒はジクロロメタンまたは酢酸イソプロピルである。
−水混和性の抽出溶媒の場合、濾過物は完全に乾燥され、そして非水混和性の溶媒中に溶解される。
非水混和性の溶媒の場合、濾過物は濃縮される。
−当業者にとって既知の技術による、固体/液体の分離。
【0074】
本発明の好ましい実施態様においては、一回または複数回の液液抽出が、塩基、好ましくは炭酸ナトリウム(NaCO)の添加によって実施される。統合された塩基性水相は、酸、好ましくは塩酸(HCl)の添加により酸性化され、その後、非水混和性溶媒を用いて実施される一回または複数回の液液抽出によって抽出される。有利には、酸性化により、約1に等しいpHが得られる。
【0075】
統合された有機相は、硫酸ナトリウム上で乾燥され、そして、真空下で周囲温度から沸とう温度まで変動する温度で濃縮され得る
【0076】
濃縮物は、好ましくは60℃を超えない温度で従来的な乾燥手段(噴霧化、オーブン等)により乾燥され、マクロカルパールGによって富化された抽出物を構成する。この抽出物は、例えばアスコルビン酸またはクエン酸といったような酸化防止剤を、乾燥された抽出物100gに対して0.05〜1gの間に含まれる分量で添加することによって安定化され得る。
【0077】
本発明の特定の実施態様において、ユーカリ抽出物またはいわゆる「構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものによって富化された」ユーカリ抽出物は、同様に、抽出溶媒として超臨界流体を用いる抽出方法によっても得られる。
【0078】
ユーカリ(Eucalyptus sp.)の葉、花、実、茎または幹またはこれらの部位の混合物は粉砕あるいは粉砕されず、次に、二酸化炭素であり得る超臨界流体を用いて抽出される。
【0079】
超臨界COによる一回目の抽出は、好ましくは、以下の条件下で実施される:
−流体の温度は約40℃〜約80℃の間、そして好ましくは約40℃〜約60℃の間である;
−その圧力は約80バール〜約250バールの間、そして好ましくは約100バール〜約200バールの間に含まれる;
−抽出時間は約1時間〜約6時間の間に含まれる;
−流量は、抽出すべき材料の分量および利用されるオートクレーブのサイズに応じて当業者によって調節されるものとする。好ましくは、本発明に従った方法において用いられるCOの流量は、
・200〜1000グラムの間に含まれる、好ましくは約500グラムの分量の植物について、
・そして、2〜10リットルの間に含まれる、好ましくは約5リットルの容量のオートクレーブについては、
2〜15kg/時、有利には8〜12kg/時の間に含まれる。
【0080】
この抽出の第一段階においては、アルコール(エタノールを含む)、エーテルオキシド、エステルまたはこれらの溶媒のうちの二つ以上のものの混合物群の有機共溶媒を添加することが可能である。
【0081】
このように抽出された植物は、その後、任意の形で二回目の抽出に付され得る。抽出流体は好ましくは、共溶媒を伴うまたは伴わない超臨界COである。作業条件は以下の通りである:
−流体の温度は約40℃〜約80℃の間、好ましくは約40℃〜約60℃の間である;
−その圧力は約80バール〜約250バールの間、好ましくは約100バール〜約200バールの間に含まれる;
−流量は、
・200〜1000グラムの間に含まれる、好ましくは約500グラムの分量の植物について、
・そして、2〜10リットルの間に含まれる、好ましくは約5リットルの容量のオートクレーブについては、
2〜15kg/時、有利には8〜12kg/時の間に含まれる。
【0082】
有利には、抽出は、約1/0.1および1/5の間に含まれる植物/共共溶媒の質量比で実施される。
【0083】
この抽出の第二段階は、必要であれば繰返すことができる。追加の抽出段階毎の抽出時間は、約1時間〜約3時間の間に含まれる。
【0084】
その後に、得られた抽出物の蒸発を行なう。
【0085】
当業者であれば、多少とも富化されたユーカリ抽出物を得るために超臨界流体によるこの方法の作業条件を調節するだろう。
【0086】
最終的な抽出物の乾燥は、凍結乾燥または当業者にとっては既知のより従来的な乾燥手段(噴霧化、オーブン等)によって実施される。
【0087】
好ましくは、乾燥温度は約60℃を超えない。
【0088】
抽出物は、例えばアスコルビン酸、クエン酸といった酸化防止剤を、乾燥された抽出物100gに対して約0.05g〜約1gの間に含まれる分量で添加することによって安定化され得る。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明は、以下の実施例を用いることでより良く理解されるものであるが、それはその範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0090】
Eucalyptus globulus抽出物の調製
【0091】
Eucalyptus globulusの葉を粉砕し、そして周囲温度で5倍の体積のエタノールを用いて抽出する。植物と溶媒の接触時間は48時間である。
【0092】
植物を濾過によって溶媒から分離する。
【0093】
このようにして得られた抽出物を60℃の温度で真空下で乾燥させる。
【0094】
このようにして得られた抽出物は、実施例5に示されるインビトロ試験に利用される。
【0095】
得られた濾過物は、乾燥された抽出物100gに対して約0.65gのマクロカルパールA、約0.7gのマクロカルパールB、約0.4gのマクロカルパールCそして約1gのマクロカルパールGを含有する。
【実施例2】
【0096】
Eucalyptus globulus抽出物の調製
【0097】
Eucalyptus globulusの葉の粉砕し、そして5倍の体積の50%v/vのエタノールを用いて還流で三回抽出する。植物と溶媒の接触時間は約1時間である。
【0098】
植物を濾過によって溶媒から分離する。
【0099】
得られた濾過物を0.5倍の体積まで濃縮する。ジクロロメタンを添加することで液液精製を実施する。三回の液液抽出を実施する。有機相を統合し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。最終的な抽出物の乾燥を60℃の真空下で実施する。
【0100】
得られた抽出物は、乾燥された抽出物100gに対して約1.3gのマクロカルパールA、約1.4gのマクロカルパールB、約0.8gのマクロカルパールCそして約2gのマクロカルパールGを含有する。
【実施例3】
【0101】
Eucalyptus globulus抽出物の調製
【0102】
Eucalyptus globulusの葉を粉砕し、そして約1時間で、5倍の体積のエタノール‐水50%v/vの混合物を用いて還流で二回抽出する。
【0103】
植物を濾過によって溶媒から分離する。
【0104】
得られた濾過物を濃縮し、クエン酸を乾燥された抽出物100gに対して0.1g添加することで安定化させる。
【0105】
濃縮物を冷凍し、凍結乾燥により乾燥させる。
【0106】
得られた抽出物は、乾燥された抽出物100gに対して約0.3gのマクロカルパールA、約0.35gのマクロカルパールB、約0.2gのマクロカルパールCそして約0.5gのマクロカルパールGを含有する。
【実施例4】
【0107】
537gのユーカリの葉を粉砕し、オートクレーブに入れる。これらの葉を、10kg/時の流量、150バール、40℃で、超臨界COを用いて4時間抽出する。
【0108】
かくして抽出した葉は、150バール、50℃で、超臨界CO/エタノール混合物を用いて二回目の抽出を受ける。重量が1の植物に対して1倍の体積のエタノールを用いる。かくして2時間15分の間抽出を行ない、その後30分間同じ作業条件下で、COを単独で通して葉を乾燥させる。
【0109】
273.7gの抽出物を回収し、これを溶媒の蒸発により乾燥させる。このようにして、乾燥された抽出物100gに対して6.85gのマクロカルパールGを含有する抽出物27.9gが得られる。
【実施例5】
【0110】
セロトニン、ドーパミンおよびノルアドレナリンの再取り込みについてのEucalyptus globulusの葉の抽出物の評価
【0111】
ラットのシナプスにインビトロで取込み試験を実施した。
【0112】
1)セロトニン(または5−HT)の再取り込みの評価
この評価のために利用したプロトコルは、Perovic , S. and Muller W.E.G., 1995 − Pharmacological profile of hypericum extract : effect on serotonin uptake by postsynaptic receptors, Arzneim−Forsch. Drug Res., 45 : 1145−1148に記述されているものである。
【0113】
その原理は以下の通りである:
ラットの脳由来のシナプスを、実施例1にしたがって調製したEucalyptus globulus抽出物または118mMのNaCl、5mMのKCl、2.5mMのMgSO、1.2mMのNaHPO、25mMのNaHCO、11mMのグルコース、10μMのEGTAおよび50μMのアスコルビン酸を含有する緩衝液(pH=7.4)中のイミプラミン(基準)の存在下または不在下(対照)で、0.1μCiの〔H〕−セロトニンと共に37℃で15分間インキュベートする。
【0114】
基準アクティビティを、再取り込みをブロックするために、10μMのイミプラミンの存在下で、37℃で15分間同一の混合物をインキュベートすることによって決定する。
【0115】
試料をインキュベーションの後にガラス繊維ろ紙(GB/B, Packard)を介して真空下で素早く濾過し、遊離〔H〕−セロトニンを除去するために、氷冷インキュベーション緩衝液を用いて二回漱ぐ。ろ紙を乾燥させ、シンチレーションカクテル(Microscint O, Packard)を用いたシンチレーションカウンター(Topcount, Packard)により、保持された放射能を測定する。
【0116】
結果は、対照の〔H〕−セロトニン再取り込み阻害率で表現されている(表1参照)。
【0117】
2)ドーパミン(またはDA)の再取り込みの評価
この評価のために利用したプロトコルは、Janowsky A. Berger P., Vocci F., Labarca R., Skolnick P., and Paul S.M., 1996 − Charcaterization of sodium− dependent [H]GBR− 12935 binding in brain : a radioligand for selective labelling of the dopamine transport complex, J. Neurochem., 46, 1272−1276で記述されたものである。
【0118】
その原理は以下の通りである:
シナプス培地(ラットの線条体のシナプス)を、実施例1にしたがって調製したEucalyptus globulus抽出物または緩衝溶液中のGBR12909(基準)の存在下または不在下(対照)で、0.1μCiの〔H〕−DAと共に37℃で15分間インキュベートする(セロトニンの再取り込みを参照のこと)。
【0119】
基準アクティビティを、再取り込みをブロックするために、10μMのGBR12909の存在下で、37℃で15分間同一の混合物をインキュベートすることによって決定する。
【0120】
試料をインキュベーションの後にガラス繊維ろ紙(GB/B, Packard)を介して真空下で素早く濾過し、遊離〔H〕−ドーパミンを除去するために、氷冷インキュベーション緩衝液を用いて二回漱ぐ。ろ紙を乾燥させ、シンチレーションカクテル(Microscint O, Packard)を用いたシンチレーションカウンター(Topcount, Packard)により、保持された放射能を測定する。
【0121】
結果は、対照の〔H〕−ドーパミンの再取り込み阻害率で表現されている(表1参照)。
【0122】
3)ノルアドレナリン(またはNE)の再取り込みの評価
この評価のために利用したプロトコルは、Perovic , S. and Muller W.E.G., 1995 − Pharmacological profile of hypericum extract : effect on serotonin uptake by postsynaptic receptors, Arzneim−Forsch. Drug Res., 45 : 1145−1148に記述されているものである。
【0123】
その原理は以下の通りである:
シナプス培地(ラットの視床下部のシナプス)を、実施例1にしたがって調製したEucalyptus globulus抽出物または緩衝溶液中のプロトリプチリン(基準)の存在下または不在下(対照)で、0.1μCiの〔H〕−NEと共に37℃で20分間インキュベートする(セロトニンの再取り込みを参照のこと)。
【0124】
基準アクティビティを、再取り込みをブロックするために、10μMのプロトリプチリンの存在下で37℃で20分間同一の混合物をインキュベートすることによって決定する。
【0125】
試料をインキュベーションの後にガラス繊維ろ紙(GB/B、Packard)を通して真空下で素早く濾過し、遊離〔H〕−NEを除去するために、氷冷インキュベーション緩衝液を用いて二回漱ぐ。ろ紙を乾燥させ、シンチレーションカクテル(Microscint O, Packard)を用いたシンチレーションカウンター(Topcount, Packard)により、保持された放射能を測定する。
【0126】
結果は、対照の〔H〕−ノルアドレナリンの再取り込み阻害率で表現されている(表1参照)。
【0127】
4)結果:
結果は、評価された神経伝達物質の再取り込み阻害率で表現されている(表1参照)。
【0128】
【表1】

【0129】
表1:セロトニン、ドーパミンおよびノルアドレナリンの再取り込みについてのEucalyptus globulusの葉の抽出物の評価
【0130】
10μg/mlでのセロトニンとドーパミン、100μg/mlの三つの神経伝達物質の再取り込みの有意な阻害が観察される。
【実施例6】
【0131】
マクロカルパールGによって富化されたユーカリ抽出物と、マクロカルパールG無しのユーカリ抽出物と、そして純粋なマクロカルパールGの評価
【0132】
Eucalyptus globulusの葉を粉砕し、そして5倍の体積のジクロロメタンを用いて抽出する。抽出は、1時間で、還流にて二回実施する。
【0133】
その後に真空下で濾過を行なう。統合された濾過物を2倍の体積まで濃縮する。
【0134】
1倍の体積の0.1M炭酸ナトリウム(NaCO)を添加することにより三回の液液抽出を実施する。
【0135】
使い古したジクロロメタン相を保持する。硫酸ナトリウム上での乾燥、濃縮、60℃の真空下での完全な乾燥の後に得られた残渣は、「マクロカルパールが減少した抽出物」(マクロカルパールGの質量分率は0.1%未満)を構成する。
【0136】
統合された塩基性水相を、およそ1に等しいpHが得られるまで1M塩酸(HCl)の添加により酸性化し、その後、ジクロロメタンを用いて三回の液液抽出により抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、そして濃縮し、最高で60℃の真空下で完全に乾燥させる。得られた乾燥された残渣は、「マクロカルパールGによって富化された抽出物」を構成する。これは7%のマクロカルパールG質量分率を包含する。
【0137】
富化された抽出物を、固定相としては、Symetry Shield(登録商標)、5μm(Waters)である逆相を、そして移動相としては、95/5/0.1%の割合のアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸の混合物を有する分取カラム上で分別する。得られた留分のマクロカルパールGの純度は、約97%である。
【0138】
次に用いられるプロトコルは、セロトニンの再取り込みの評価に関しては、実施例5のものと同一である。得られた結果は、下記の表2に列挙している。
【0139】
【表2】

【0140】
表2:「マクロカルパールGによって富化された抽出物」、「マクロカルパールG無しの抽出物」、およびマクロカルパールGによって富化された留分のセロトニン再取り込みの活性の比較
【0141】
マクロカルパールGの含有量が高いほど、セロトニン再取り込み阻害率がより有意となることが観察される。
【実施例7】
【0142】
ハイパーフォリンの再取り込みと比較した神経伝達物質の再取り込みにおける、マクロカルパールA、マクロカルパールB、マクロカルパールCおよびマクロカルパールGの50%の阻害濃度(CI50)の決定
【0143】
続くプロトコルは、実施例5のものである。プロトコルは、マクロカルパールA、B、CおよびGおよびハイパーフォリンの異なる濃度毎に繰返した。
【0144】
得られた阻害曲線から、以下のCI50値を得るこができた。
【0145】
【表3】

【0146】
表3:セロトニン、ノルアドレナリンおよびドーパミンの再取り込みに対する、マクロカルパールA、マクロカルパールB、マクロカルパールCおよびマクロカルパールGの50%の阻害濃度(CI50)の決定
【0147】
これらの結果から、四つの化合物が神経伝達物質の再取り込みの阻害活性の担体であることを明らかにすることができた。さらには、これらの四つの化合物の活性レベルがほぼ等しいことがわかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0148】
【非特許文献1】WICHTL M. et ANTON R., 1999 − Plantes therapeutiques − 177−179
【非特許文献2】JUERGENS et al., 2003 − Anti−inflammatory activity of 1,8−cineol (eucalyptol) in bronchial asthma : a double−bind placebo controlled trial − Respir. Med., 97 (3), 250− 256
【非特許文献3】SWANSTON et al., 1990 − Traditional plant treatments for diabetes. Studies in normal and streptozotocin diabetics rats − Diabetologia, 33 (8), 462− 464
【非特許文献4】IKAWATI Z. and al., 2001 − Screening of several Indonesian medecinal plants for their inhibitory effect on histamine release from RBL−2H3cells − J. Ethnopharmacol., 75 (2−3), 248−256
【非特許文献5】TAKASAKI et al, 2000 − Cancer chemopreventive activity of euglobal−Gl from leaves of Eucalyptus grandis − Cancer Letl., 155 (1) : 61−65
【非特許文献6】TAKASAKI et al., 1990 − Structures of euglobal−Gl, − G2 and G3 from Eucalyptus grandis, three new inhibitors of Epstein virus activation - Chem. Pharm. Bull. 38 (5), 1444−1446
【非特許文献7】WICHTL M. et ANTON R., 1999 − Plantes therapeutiques − 177−179

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの変調から生じる、神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のためのユーカリ抽出物の利用法。
【請求項2】
前記神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防が、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの阻害から成ることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項3】
前記ユーカリ抽出物が、
【化1】

という構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものを含み、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基、
【化2】

基を形成しており、R2はイソブチル基、α−イソブチル基またはβ−イソブチル基を表わすことを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項4】
構造式(I)の化合物がマクロカルパールA(5−((1R)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化3】

基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わすこと;およびユーカリ抽出物中のその質量分率が0.1%以上、厳密には3%未満であることを特徴とする、請求項3に記載の利用法。
【請求項5】
構造式(I)の化合物がマクロカルパールB(5−((1S)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化4】

基を形成し、R2はα−イソブチル基を表わすこと;およびユーカリ抽出物中のその質量分率が0.1%以上、厳密には3%未満であることを特徴とする、請求項3に記載の利用法。
【請求項6】
構造式(I)の化合物がマクロカルパールC(5−((1R)−1−((11S)−3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わすこと;およびユーカリ抽出物中のその質量分率が0.1%以上、厳密には3%未満であることを特徴とする、請求項3に記載の利用法。
【請求項7】
構造式(I)の化合物がマクロカルパールG(5−(1−(3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はイソブチル基を表わすこと;およびユーカリ抽出物中のその質量分率が0.1%以上、厳密には5%未満であることを特徴とする、請求項3に記載の利用法。
【請求項8】
前記ユーカリ抽出物が、請求項3に規定されているような構造式(I)の少なくとも一つの化合物によって富化されていることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項9】
ユーカリ抽出物がマクロカルパールAによって富化されており、マクロカルパールAによって富化された前記抽出物が、3%以上、厳密には90%未満の質量分率のマクロカルパールAを含有することを特徴とする、請求項8に記載の利用法。
【請求項10】
ユーカリ抽出物がマクロカルパールBによって富化されており、マクロカルパールBによって富化された前記抽出物が、3%以上、厳密には90%未満の質量分率のマクロカルパールBを含有することを特徴とする、請求項8に記載の利用法。
【請求項11】
ユーカリ抽出物がマクロカルパールCによって富化されており、マクロカルパールCによって富化された前記抽出物が、3%以上、厳密には90%未満の質量分率のマクロカルパールCを含有することを特徴とする、請求項8に記載の利用法。
【請求項12】
ユーカリ抽出物がマクロカルパールGによって富化されており、マクロカルパールGによって富化された前記抽出物が、5%以上、厳密には90%未満の質量分率のマクロカルパールGを含有することを特徴とする、請求項8に記載の利用法。
【請求項13】
抽出物が、Eudesmia、SymphomyrtusおよびCorymbia亜属に属する種、そしてEucalyptus globulus L、 Eucalyptus pulverulenta Sims、Eucalyptus kartzoffiana L.A.S. Johnson l Blaxell、Eucalyptus macrocarpa Hook、 Eucalyptus cinerea F. Muell.ex Benth、 Eucalyptus dorrigoensis (Blakely) L.A.S. Johnson l K.D.Hill、Eucalyptus leptopoda Benth、 Eucalyptus occidentalis Endl、 Eucalyptus viridis R.T.Baker、Eucalyptus polybractea R.T.Baker および Eucalyptus smithii R.T.Bakerという種の中から選択されたユーカリに由来していることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項14】
ユーカリ抽出物が、ユーカリの葉、花、実、茎および幹から成る群の中から選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項15】
神経系、精神系の病変または疾患またはそれに付随する障害、機能性身体症候群または常習性薬物依存が、
−神経変性疾病(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、脳血管障害、頭蓋外傷性傷害)、筋萎縮性側索硬化症、老年性認知症、前頭側頭認知症、血管性認知症、片頭痛、中枢性の神経因性疼痛といったような神経系の疾病;
−うつ病(内因性、耐性、反応性または医療性)、うつ状態、統合失調症、躁鬱病、全般性不安、ストレス性疾患、パニック発作、強迫神経症、心的外傷後ストレス症候群、注意多動性障害、摂食障害(特に過食症、拒食症)、恐怖症(特に広場恐怖症)、自閉症といったような精神系の疾病;
−神経系の病変または精神系の障害に付随する記憶、注意および不眠障害;
−慢性疲労症候群、線維筋痛、過敏性大腸症候群、胃食道逆流、性欲減弱、勃起障害、尿失禁といったような機能性身体症候群;
−特にニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬といったような常習性薬物に対する依存、
を含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項16】
医薬品が経口剤または注入剤型であることを特徴とする、請求項1に記載の利用法。
【請求項17】
ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの変調から生じる、神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防を目的とする、医薬品または栄養補助食品の調製のための、
【化5】

という構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものの利用法であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基、
【化6】

基を形成しており、R2はイソブチル基、α−イソブチル基またはβ−イソブチル基を表わす利用法。
【請求項18】
前記神経系、精神系の疾患または病変およびそれに付随する障害、機能性身体症候群および常習性薬物依存の治療および/または予防が、ドーパミンおよび/またはセロトニンおよび/またはノルアドレナリンの再取り込みの阻害から成ることを特徴とする、請求項17に記載の利用法。
【請求項19】
構造式(I)の化合物が、
−マクロカルパールA(5−((1R)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化7】

基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わし、
−マクロカルパールB(5−((1S)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化8】

基を形成し、R2はα−イソブチル基を表わし、
−マクロカルパールC(5−((1R)−1−((11S)−3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わし、または
−マクロカルパールG(5−(1−(3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)であり、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はイソブチル基を表わすことを特徴とする、請求項17に記載の利用法。
【請求項20】
マクロカルパールA、マクロカルパールB、マクロカルパールCまたはマクロカルパールGが化学合成、生化学合成または植物抽出物から得られることを特徴とする、請求項17に記載の利用法。
【請求項21】
神経系、精神系の病変または疾患またはそれに付随する障害、機能性身体症候群または常習性薬物依存が、
−神経変性疾病(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、脳血管障害、頭蓋外傷性傷害)、筋萎縮性側索硬化症、老年性認知症、前頭側頭認知症、血管性認知症、片頭痛、中枢性の神経因性疼痛といったような神経系の疾病;
−うつ病(内因性、耐性、反応性または医療性)、うつ状態、統合失調症、躁鬱病、全般性不安、ストレス性疾患、パニック発作、強迫神経症、心的外傷後ストレス症候群、注意多動性障害、摂食障害(特に過食症、拒食症)、恐怖症(特に広場恐怖症)、自閉症といったような精神系の疾病;
−神経系の病変または精神系の障害に付随する記憶、注意および不眠障害;
−慢性疲労症候群、線維筋痛、過敏性大腸症候群、胃食道逆流、性欲減弱、勃起障害、尿失禁といったような機能性身体症候群;
−特にニコチン、アルコール、アヘン製剤、カンナビノイド、精神刺激薬といった常習性薬物に対する依存
を含む群の中から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の利用法。
【請求項22】
医薬品が経口剤または注入剤型であることを特徴とする、請求項17に記載の利用法。
【請求項23】
【化9】

という構造式(I)の少なくとも一つの化合物またはそのジアステレオ異性体の形態のうちのいずれか一つのものを含み、これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基、
【化10】

基を形成しており、R2はイソブチル基、α−イソブチル基またはβ−イソブチル基を表わし、そして
−マクロカルパールA(5−((1R)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)の質量分率が3%以上、厳密には90%未満であり(これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化11】

基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わす)、
−マクロカルパールB(5−((1S)−1−((11S,7R)−7−ヒドロキシ−3,3,7,11−テトラメチルトリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ−11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)の質量分率が3%以上、厳密には90%未満であり(これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共に
【化12】

基を形成し、R2はα−イソブチル基を表わす)、
−マクロカルパールC(5−((1R)−1−((11S)−3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)の質量分率が3%以上、厳密には90%未満であり(これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はβ−イソブチル基を表わす)、
−および、マクロカルパールG(5−(1−(3,3,11−トリメチル−7−メチレントリシクロ(6.3.0.0(2,4))ウンデカ11−イル)−3−メチルブチル)−2,4,6−トリヒドロキシベンゼン−1,3−ジカルバルデヒド)の質量分率が5%以上、厳密には90%未満である(これにおいて、R1はそれが結びつけられている炭素と共にC=CH基を形成し、R2はイソブチル基を表わす)ことを特徴とする、ユーカリ抽出物。
【請求項24】
−ユーカリの葉および/または花および/または実および/または茎および/または幹の粉砕;
−共溶媒を用いたまたは用いない超臨界流体による少なくとも一回の抽出、
抽出物の回収および場合によっては抽出物の乾燥、
または、有機溶媒または水と水混和性の有機溶媒との混合物を用いた少なくとも一回の抽出、固体/液体の分離および濾過物の富化
という段階を含むことを特徴とする、請求項23に記載の抽出物の調製方法。
【請求項25】
有機溶媒がジクロロメタンまたは酢酸イソプロピルであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
富化段階が、塩基の添加による少なくとも一回の液液抽出、酸性化そして次に非水混和性の溶媒による少なくとも一回の液液抽出に対応することを特徴とする、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−500974(P2010−500974A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522297(P2009−522297)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001309
【国際公開番号】WO2008/017752
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504249145)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
【Fターム(参考)】