説明

新規の使用

歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐ(すなわち、予防、抑制および/または治療を促進する)ためのトリプルポリマーシステムおよびフッ化物イオン供給源を含む口腔ケア組成物を記載する。前記組成物は、う蝕を防ぐためにも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐ(すなわち、予防、抑制および/または治療を促進する)ための、トリプルポリマーシステムおよびフッ化物イオン供給源を含む口腔ケア組成物に関する。前記組成物は、う蝕を防ぐためにも有用である。
【背景技術】
【0002】
歯の無機質は、主としてカルシウムヒドロキシアパタイト、Ca10(PO(OH)から構成され、これは部分的に炭酸またはフッ化物などのアニオン、および亜鉛またはマグネシウムなどのカチオンによって置換され得る。歯の無機質は、リン酸八カルシウムおよび炭酸カルシウムなどの非アパタイト無機質相も含み得る。
【0003】
う蝕の結果として歯の喪失が起こり得る。う蝕は、乳酸などの細菌性の酸が表面下の脱灰を引き起こし、それが完全には再石灰化されない結果として、進行性の組織の喪失および最終的には空洞形成をもたらす多因子性疾患である。歯垢生物膜の存在がう蝕の必要条件であり、スクロースなどの容易に発酵され得る炭水化物の濃度が長時間上昇した場合に、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)などの酸産生細菌が病原となり得る。
【0004】
疾患が存在しない場合でさえ、酸による侵食および/または物理的な歯質喪失の結果として歯牙硬組織の喪失が起こり得る。これらのプロセスは相乗的に作用すると考えられている。歯牙硬組織を酸に曝露すると脱灰が起こり、表面の軟化および無機質密度の減少がもたらされる。正常な生理学的条件下では、脱灰した組織は、唾液の再石灰化作用によって自己修復する。唾液は、カルシウムおよびリン酸に関して過飽和しており、健康な個体では唾液の分泌が酸の攻撃を洗い流すように働き、pHを上げて無機質の析出に適した平衡に変える。
【0005】
歯牙侵食(すなわち、酸による侵食または酸による摩耗)は、脱灰、および最終的には、細菌由来ではない酸による歯の表面の完全な溶解を伴う表面の現象である。最も一般的には、酸は、果物または炭酸飲料のクエン酸、コーラ飲料のリン酸およびビネグレットソースなどの酢酸など、食物由来のものであろう。歯の侵食は、胃食道逆流などの不随意反応によって、または過食症患者に見られるような誘導反応によって口腔に入る、胃で産生された塩酸(HCl)に繰り返し接触することによっても引き起こされ得る。
【0006】
歯質喪失(すなわち、物理的な歯質喪失)は、咬耗(attrition)および/または磨耗(abrasion)によって引き起こされる。咬耗は、歯の表面が互いにこすれ合った時に、二体摩耗の形で起こる。多くの場合、劇的な例は、加えられる力が大きい食いしばり癖である歯ぎしりの患者に観察されるものであり、特に咬合面の加速性の摩耗を特徴とする。摩耗は、典型的には三体摩耗の結果として起こり、最も一般的な例は、練り歯磨きを使用したブラッシングに関連するものである。十分に石灰化されたエナメル質の場合、市販の練り歯磨きによって引き起こされる摩耗の程度は最小であり、ほとんどまたは全く臨床的結果とはならない。しかしながら、エナメル質が侵食性の攻撃に曝露されることによって、脱灰し、軟化していた場合は、エナメル質は歯質喪失をより受けやすくなる。象牙質はエナメル質よりもずっと軟らかいので、結果として摩耗をより受けやすい。象牙質がさらされている患者は、アルミナをベースとするものなど、磨耗性の高い練り歯磨きの使用を避けるべきである。また、侵食性の攻撃による象牙質の軟化は、組織の摩耗の受けやすさを増加させるだろう。
【0007】
象牙質は、in vivoで、正常には、その場所、すなわちそれぞれ歯冠か歯根かに応じて、エナメル質またはセメント質によって覆われた生体組織である。象牙質は、エナメル質よりも有機物含量がずっと高く、その構造は、象牙質−エナメル質または象牙質−セメント質の接合部の表面から象牙芽細胞/歯髄界面まで伸びる液体で満たされた細管の存在を特徴とする。象牙質過敏症の原因は、曝露された細管中の液体の流れが変化し(流体力学的理論)、その結果として象牙芽細胞/歯髄界面の近くに位置すると考えられている機械受容器が刺激されることに関連するということが広く認められている。象牙質は一般的にはスメア層に覆われているので、全ての曝露された象牙質が感受性であるというわけではない。スメア層は、主として、象牙質自体に由来する無機質およびタンパク質を含むが、唾液からの有機成分も含む閉塞性混合物である。経時的に、細管の内腔は、石灰化された組織で次第に閉塞され得る。歯髄の外傷または化学的刺激に応答した修復象牙質の形成も十分に証明されている。それにもかかわらず、侵食性の攻撃は、スメア層および細管の「栓」を除去し、外向きの歯液の流れを引き起こし、熱い、冷たいおよび圧力などの外部刺激に対する象牙質の感受性を大きく増加させ得る。先に示したように、侵食性の攻撃は、象牙質表面の摩耗の受けやすさも大きく増加させ得る。さらに、象牙質過敏症は、曝露される細管の直径が増加するにつれて悪化し、細管の直径は象牙芽細胞/歯髄界面の方向に進むにつれて増加するので、進行性の象牙質の摩耗は、特に象牙質の摩耗が迅速である場合に、過敏症の増加をもたらし得る。
【0008】
侵食および/または酸がもたらす摩耗による保護的エナメル層の喪失は、下にある象牙質を露出させ、それゆえ、象牙質過敏症の発達の主要な病原学的因子である。
【0009】
食物性の酸の摂取量の増加および正式な食事時間からの逸脱が、歯牙侵食および歯質喪失の発生率の増加を伴ってきたと主張されてきた。この観点から、歯牙侵食および歯質喪失を予防するのに役立つ口腔ケア組成物は有益であろう。
【0010】
本発明は、フッ化物イオン供給源を含む口腔ケア組成物中の、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびコポビドンからなるトリプルポリマーシステムの存在が、歯牙侵食の防止におけるフッ化物イオンの効果を増強するという発見に基づく。
【0011】
WO2006/013081(Glaxo Group Ltd)には、口腔を潤滑にし、水分補給することによって口渇の症状を治療または緩和するのに使用するための、前記トリプルポリマーシステムを含む口腔用組成物が記載されている。前記組成物は、抗う蝕剤としてフッ化物イオン供給源を含み得る。前記組成物が歯牙侵食を防ぐことができること、またはトリプルポリマーシステムが歯牙侵食の防止におけるフッ化物イオンの効果を増強することができることは示唆されていない。
【0012】
Van der Reijden等(Caries Res.、1997、31、216〜23)は、in vitroでのエナメル質の脱灰および再石灰化への効果を含むう蝕保護特性を調査するための、増粘剤を含む唾液代替組成物を使用したさまざまなin vitro実験を記載している。pH5.0の50mM酢酸へのヒドロキシアパタイト結晶の溶解に対するさまざまなポリマー材料の効果、ならびにウシエナメル質をさまざまな溶解ポリマーを含む脱灰緩衝液(pH4.8)および再石灰化緩衝液(pH7.0)に曝露するpHサイクリング実験が記載されている。これらの実験は、キサンタンガムおよびカルボキシメチルセルロースを含むいくつかのポリマーが、in vitroでのエナメル質の脱灰を減少させることができることを示唆しており、これが酸性攻撃に対する保護をもたらすエナメル質表面上に吸着されたポリマー層の形成から生じ得ることが示唆されている。
【0013】
WO00/13531(SmithKline Beecham)には、酸性飲料または酸性口腔ヘルスケア組成物などの、口腔内投与用酸性組成物における歯牙侵食阻害剤としての種々の粘度調整ポリマー材料の使用が記載されている。ポリマーの例には、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。
【0014】
WO2004/054529(Procter&Gamble)には、歯牙侵食からの保護における特定のポリマー材料の役割が記載されている。WO2004/054529は、高分子無機質表面活性剤(すなわち、ポリリン酸、ポリカルボン酸または特定のカルボキシ置換ポリマーなどの高分子電解質)を含む口腔ケア組成物を投与するステップを含む歯牙侵食から保護する方法を請求しており、ここで、高分子無機質表面活性剤は歯に対して相当多量であり、使用直後およびその後少なくとも1時間、侵食性の損傷から歯を保護する層を沈着させる。高分子無機質表面活性剤の存在が、歯牙侵食からの保護におけるフッ化物イオンの効果を増強し得ることは教示されていないが、前記口腔ケア組成物が任意でフッ化物イオン供給源を含み得ることが示唆されている。前記口腔用組成物が、キサンタンガムおよびカルボキシメチルセルロールを含む種々の増粘剤を含み得ることも示唆されている。前記増粘剤が歯に対して相当多量であり、または歯牙侵食から歯を保護することができることは示唆されていない。
【0015】
Schaad等(Colloids and Surfaces A:Physiochemical and Engineering Aspects 1994;83、;285〜292)は、吸着されたアニオン性ポリマーによるヒドロキシアパタイト粉末の溶解の阻害を記載しており、かつこれらのいくつかがエナメル質または骨組織の溶解を防ぐための強力な剤となり得ることを示唆している。
【0016】
EP−A−691124には、N−ビニルピロリドンとアクリル酸のコポリマーを含む口腔ケア製品が記載されており、前記製品は歯のエナメル質へのエナメル質フッ化物取り込みを増強させるという結果をもたらす。11ページには、異なる増粘剤を含む種々の製剤の相対的なエナメル質フッ化物取り込み効率が記載されており、増粘剤には、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムとカーボポールの組み合わせ、キサンタンガムとN−ビニルピロリドンおよびアクリル酸のコポリマーの組み合わせ、ならびにキサンタンガムとメチルビニルエーテルおよびマレイン酸または無水物のコポリマーの組み合わせが含まれる。
【0017】
フランス特許第2755010号(Sara Lee)には、キサンタンガムおよびカルボキシル化ビニルポリマーの組み合わせを含むフッ化物含有口腔ケア組成物が記載されており、この組み合わせは歯の崩壊の防止におけるフッ化物の効果を増強すると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO2006/013081
【特許文献2】WO00/13531
【特許文献3】WO2004/054529
【特許文献4】EP−A−691124
【特許文献5】フランス特許第2755010号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Caries Res.、1997、31、216〜23
【非特許文献2】Colloids and Surfaces A:Physiochemical and Engineering Aspects 1994;83、;285〜292
【発明の概要】
【0020】
第1の態様において、本発明はフッ化物イオン供給源ならびにキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびコポビドンを含むトリプルポリマーシステムを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケア組成物を提供する。
【0021】
トリプルポリマーシステムは、フッ化物を歯の表面に保持するのを助け、それによって歯の再石灰化を増加させ、歯の酸耐性を増加させ、フッ化物単独の場合よりも歯牙侵食の影響からよりよく表面を保護する。
【0022】
したがって、本発明の組成物は、歯牙侵食および/または歯質喪失の防止におけるフッ化物イオンの効果を増強するために有用である。前記組成物は、食物性の酸の影響からのエナメル質の保護および再硬化の両方を促進することができる。
【0023】
前記組成物は、う蝕を防ぐためにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】a)トリプルポリマーシステムの存在下、b)トリプルポリマーシステムの不存在下における、等濃度のフッ化ナトリウムを含む溶液に曝露した後の、ヒトエナメル質の動的二次イオン質量分析横断面画像を示す。
【図2】種々の溶液により処理した後クエン酸に曝露したエナメル質についての平均表面粗さ値を示す。
【図3】種々の溶液により処理した後クエン酸に曝露したエナメル質についての平均ステップ高さ値を示す。
【図4】口腔洗浄液製剤(またはSensodyne Pronamel練り歯磨き)で処理した後48時間にわたるヒトエナメル質人工的侵食性病変の再硬化を示す。
【図5】口腔洗浄液製剤(またはSensodyne Pronamel練り歯磨き)で処理した後クエン酸に曝露したヒトエナメル質についての相対的微小硬度値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
キサンタンガムは、組成物の総量の0.001〜1.0重量%、例えば組成物の総量の0.005〜0.5重量%または0.005〜0.1重量%の量で存在し得る。
【0026】
本発明で使用するためのカルボキシメチルセルロースは、ナトリウム塩、すなわちカルボキシメチルセルロースナトリウムの形である。カルボキシメチルセルロースは、組成物の総量の0.02〜20重量%、例えば組成物の総量の0.04〜10重量%または0.1〜1.0重量%の量で存在し得る。
【0027】
コポビドン(ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、特に1−ビニル−2−ピロリドンと酢酸ビニルの質量比3:2のコポリマーである)は、組成物の総量の0.1〜20重量%、例えば組成物の総量の0.2〜10重量%または0.5〜5重量%の量で存在し得る。
【0028】
本発明で使用するためのフッ化物イオン供給源の例には、フッ化物イオン25〜3500ppm、好ましくは100〜1500ppmを供給する量の、フッ化ナトリウムなどのアルカリ金属フッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのアルカリ金属モノフルオロリン酸塩、フッ化スズまたはフッ化アミンが含まれる。適当なフッ化物供給源は、フッ化ナトリウムなどのアルカリ金属フッ化物であり、例えば、組成物は、フッ化ナトリウム0.05〜0.5重量%、例えば0.1重量%(フッ化物イオン450ppmと等しい)、0.205重量%(フッ化物イオン927ppmと等しい)、0.2542重量%(フッ化物イオン1150ppmと等しい)または0.315重量%(フッ化物イオン1426ppmと等しい)を含むことができる。
【0029】
本発明の組成物は、前記目的のために口腔ケア組成物技術において従来使用されているものから選択される、研磨剤、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、香味料、緩衝剤、甘味料、不透明化剤または着色剤、保存剤および水などの適当な製剤を含むだろう。これらの例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、WO2006/013081(Glaxo Group Ltd)およびWO2004/054529(Procter&Gamble)に記載されている。
【0030】
本発明の組成物は、典型的には、練り歯磨き、スプレー、口腔洗浄液、ゲル、トローチ、チューインガム、錠剤、香錠、インスタント粉末、オーラルストリップおよび口腔パッチの形に製剤される。好ましい組成物は、練り歯磨きおよび口腔洗浄液である。
【0031】
追加的な口腔ケア活性成分を本発明の組成物中に含めることができる。本発明の組成物は、象牙質過敏症と戦うための脱感作剤をさらに含むことができる。脱感作剤の例には、例えば、WO02/15809に記載の、細管遮断剤または神経脱感作剤およびこれらの混合物が含まれる。適当な脱感作剤には、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウムもしくは硝酸ストロンチウムなどのストロンチウム塩、またはクエン酸カリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、グルコン酸カリウムおよび特に硝酸カリウムなどのカリウム塩が含まれる。
【0032】
カリウム塩の脱感作剤量は、一般的に、組成物の総量の2〜8重量%であり、例えば5重量%の硝酸カリウムを使用することができる。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための、フッ化物イオン供給源および上で定義したトリプルポリマーシステムを含む口腔洗浄液組成物を提供する。
【0034】
フッ化物イオン供給源は、口腔洗浄液組成物中に、任意の特定の市場について規制によって許可されている最大限までの量で存在し得る。例えば、EUの規制下では、口腔洗浄液は、製品の1容器当たりイオン性フッ化物125mgまでを含むことができる。米国では、一般用医薬品用途の口腔洗浄液は、225ppm以下のフッ化物を含むことができる。一般的に、口腔洗浄液組成物は、100〜1500ppmのフッ化物イオン、例えば225ppmまたは450ppmなど、150〜1000ppmまたは200〜600ppmのフッ化物イオンを含む。
【0035】
前記口腔洗浄液組成物において、フッ化物イオン供給源は、フッ化ナトリウムなどのアルカリ金属フッ化物であり得る。
【0036】
適当には、口腔洗浄液組成物は、キサンタンガムを、組成物の総量の0.005〜0.02重量%の量含む。
【0037】
適当には、口腔洗浄液組成物は、カルボキシメチルセルロースを、組成物の総量の0.1〜0.4重量%の量含む。
【0038】
適当には、口腔洗浄液組成物は、コポビドンを、組成物の総量の0.5〜1.5重量%の量含む。
【0039】
前記口腔洗浄液組成物は、フッ化物練り歯磨き、特に、例えば参照により本明細書に組み込まれているWO2006/100071に記載の種類の効果増強フッ化物練り歯磨きと共に好都合に使用することができ、適当にはフッ化物供給源としてのアルカリ金属フッ化物、界面活性剤としての両性界面活性剤またはココイルメチルタウリンナトリウムである低イオン性界面活性剤またはこれらの混合物、および研磨剤としてのシリカ歯科用研磨剤を含み、組成物は20〜60の相対的象牙質損耗値(RDA)および6.5〜7.5の範囲のpHを有し、オルトリン酸塩緩衝液、水溶性C10〜18アルキル硫酸塩およびカルシウム塩を含まない。
【0040】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明の口腔洗浄液組成物およびフッ化物練り歯磨きを毎日使用することを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケアレジメンを含む。適当には、口腔洗浄液およびフッ化物練り歯磨きは、本発明の口腔ケアレジメンにおいて、それぞれ少なくとも1日に2回使用される。
【0041】
消費者コンプライアンスを改善するために、本発明は、本発明の口腔洗浄液組成物と、フッ化物練り歯磨きと、本発明の口腔ケアレジメンでそれらを使用するための説明書とを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケアキットも提供する。
【0042】
本発明の組成物は、成分を適当な相対量で、任意の好都合な順序で混合し、必要に応じてpHを所望の値、例えば6.0〜8.0または6.5〜7.5など例えば4.0〜9.5または5.5〜9.0に調整することによって調製することができる。
【0043】
本発明は、有効量の上で定義した組成物を、それを必要とする個体に適用するステップを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐ方法も提供する。
【0044】
本発明は、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケア組成物の製造における、フッ化物イオン供給源ならびにキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびコポビドンからなるトリプルポリマーシステムの使用も提供する。
【0045】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例1】
【0046】
動的二次イオン質量分析(DSIMS)
動的二次イオン質量分析は、ナノメートルスケールの深さ分解能および10億分率の感度を備える迅速な元素深さプロファイリング、ならびにサブミクロン細部の化学地図を可能にする半定量的技術である。DSIMSは、以前はエナメル質の組成を調査し、ヒトエナメル質表面へのフッ化物の取り込みの程度を測定するために使用されてきた。本調査では、DSIMSを使用して、人工的侵食性病変を含むヒトエナメル質表面へのフッ化物の取り込みへのトリプルポリマーシステムの存在の影響を調査した。この実験では、トリプルポリマーシステムは、全て組成物の総量基準でコポビドン0.75重量%、カルボキシメチルセルロース0.2重量%およびキサンタンガム0.01重量%からなっていた。
【0047】
寸法2×2mmのアクリル樹脂包埋ヒトエナメル質試料を1200および2400グリットの炭化ケイ素紙を使用して磨いて平らにした。次いで、試料を、i)脱イオン水、ii)脱イオン水中トリプルポリマーシステム、iii)300ppmフッ化物溶液(フッ化物供給源=フッ化ナトリウム)、およびiv)300ppmフッ化物中トリプルポリマーシステム(フッ化物供給源=フッ化ナトリウム)の4つの処理群(n=5)の中の1つに分けた。各々の処理溶液は約6.5〜7.0の範囲内に入るpHを有していた。試料をpH3.8の1.0%クエン酸溶液中に5分間浸すことによって、エナメル質中に人工的侵食性病変を作った。その後にエナメル質を脱イオン水で洗浄した後、試料を上記溶液の中の1つの中で、1分間攪拌した。DSIMS分析を行う前に、最終的な洗浄ステップを行った(脱イオン水を使用して)。エナメル質へ取り込まれた/エナメル質に保持されたフッ化物の程度を、DSIMSを使用して測定した。深さプロファイリングモードを使用して、表面の最初の数ミクロン中の相対的フッ化物濃度を最初に測定した。この後、試料の垂直方向の切片を作り、次いでそれをエポキシ樹脂に包埋し、磨いた。得られた横断面を金被覆し、DSIMSによって200μmの深さまでエナメル質上を画像化することにより、フッ化物の分布を調査した。各々の試料の多数の領域(大きさ200μm×160μmおよび100μm×80μm)からデータを得た。
【0048】
エナメル質試料からの代表的な横断面画像を図1に示す。水のみまたは水中トリプルポリマーシステムのいずれかで処理した試料は、いずれの深さにおいても、試料内にフッ化物の形跡を示さなかった(データ未記載)。フッ化物溶液単独またはトリプルポリマーシステムを含むフッ化物溶液のいずれかで処理した試料は、いずれの場合も約60μmの深さで、エナメル質表面にフッ化物を含むバンドを示した(図1aおよびb)。しかしながら、トリプルポリマーシステムおよびフッ化物で処理したエナメル質は、フッ化物単独で処理したエナメル質よりも、組織の表面の上部6μmで実質的に多くのフッ化物を含んでいた(図1aおよびb)。
【実施例2】
【0049】
白色光干渉法(3DP)
白色光干渉法の技術は、表面形状の迅速な可視化、およびナノスケールでの高さ分解能を得ることができる非接触モードでの粗さパラメータの決定を提供する。この調査では、白色光干渉法を使用して、ヒトエナメル質への人工的侵食性攻撃の影響を監視した。トリプルポリマーシステム単独およびフッ化物との組み合わせを含む溶液によるエナメル質の前処理の影響を調査した。この実験では、トリプルポリマーシステムは、全て組成物の総量基準でコポビドン0.75重量%、カルボキシメチルセルロース0.2重量%およびキサンタンガム0.01重量%からなっていた。
【0050】
ヒトエナメル質試料を磨き、i)脱イオン水、ii)300ppmフッ化物(フッ化ナトリウム)、iii)300ppmフッ化物中トリプルポリマーシステム、およびiv)脱イオン水中トリプルポリマーシステムの4つの処理群(n=5)の中の1つに分けた。各々の処理溶液は約6.5〜7.0の範囲内に入るpHを有していた。試料を処理溶液中で1分間インキュベートし、その後脱イオン水で洗浄した。任意のバルク組織の喪失を測定するのを可能にするための基準点を提供するために、酸への曝露の前に、試料表面をテーピングによって部分的に覆った。侵食段階中、試料をpH3.8の1.0%クエン酸溶液に5分間浸した。ADE PhaseShift MicroXAM White Light Interferometerを使用して、試料の表面形状を調査した。各々の試料の多数の領域(大きさ200μm×160μmおよび100μm×80μm)からデータを得た。実験中に任意のバルク組織の喪失が起こったかどうかを決定するために、試料からテープの覆いを除去した後、追加的な測定を行った。
【0051】
調査の結果を図2および3に要約する。脱イオン水で処理したエナメル質についてのSa(表面粗さ)およびSz(10点高さ)の測定は、酸性攻撃が試料の表面粗さを有意に増加させることを示した(図2)。しかしながら、フッ化物および/またはトリプルポリマーシステムを含む溶液で処理した試料の分析は、これらの前処理溶液が、水のみの前処理後に観察される表面変化からの保護をもたらすことを示した。フッ化物と組み合わせてトリプルポリマーシステムで処理したエナメル質は、最も低いSa値を有し、いずれかの剤単独の場合と比較して、組み合わせて使用した場合のこれら2つの剤の追加的な保護効果を示唆している(図2)。
【0052】
処理した領域/テープで覆った領域の境界面を横切ってその後に行ったプロフィロメトリー測定は、種々の溶液で処理した試料からのバルク組織の喪失が上で詳細に述べた表面粗さの傾向を反映していることを示した(図3)。脱イオン水のみで処理した試料について最も大きい平均組織喪失が測定され、それは約20μmであった。トリプルポリマーシステムのみを含む溶液で処理した試料についての平均組織喪失は約2.5μmで、フッ化物単独またはフッ化物とトリプルポリマーシステムとの組み合わせを含む溶液で処理した試料についての平均組織喪失は1μm未満であった(図3)。
【実施例3】
【0053】
酸により軟化したエナメル質の再硬化
人工的侵食性病変を、アクリル樹脂に固定した磨いたヒトエナメル質から調製した。病変は、固定した試料をpH3.8の1.0%w/wクエン酸溶液に30分間接触させることにより調製した。Vickersダイアモンド圧子を取り付けたStruers Duramin Microindentorを使用して、各々の侵食試料のベースライン硬度を測定した。硬度値は、Vickers Hardness Numbers(VHN)で表した。1.961Nの荷重を20秒の滞留時間で試料に加えた。次いで、試料を無作為化し、4つの処理群(n=6)に分けた。
【0054】
6個のエナメル質試料を2種の口腔洗浄液製剤、水、または増強フッ化物練り歯磨き(1450ppmF)から調整した攪拌した1:3w/wスラリーのうちの1つの中に120秒間置いた。増強フッ化物練り歯磨きは、WO2006/100071に記載されており、Sensodyne Pronamelとして市販されている。2種の口腔洗浄液製剤は、Colgate Plax Sensitive(225ppmF)およびProRinse(450ppmF)、すなわちWO2006/013081に記載されている種類の本発明において有用なテスト口腔洗浄液であり、pH7.0で、全て組成物の総量基準で、フッ化ナトリウム0.1重量%ならびにコポビドン0.75重量%、カルボキシメチルセルロース0.2重量%およびキサンタンガム0.01%重量からなるトリプルポリマーシステムを含んでいた。調査を検証するために、基準として働くためのSensodyne Pronamel練り歯磨き処理肢(treatment leg)を調査に含めた。次いで、試料を取り出し、ムチンを含まない人工唾液中に置いた。微小押込を使用して、24時間後および48時間後に試料の再硬化を測定した。各々の時点で各々の試料につき6個のくぼみを得た。
【0055】
再硬化調査の結果を図4に要約する。エナメル質硬度の値は、エナメル質の酸による軟化後に得られた値に対して正規化した。したがって、後続の時点におけるデータは、エナメル質の再硬化を反映している。人工唾液、および口腔洗浄液製剤またはSensodyne Pronamel練り歯磨きのいずれかによる処理に曝された期間中に再硬化された全エナメル質は、両時点において、水による処理よりも統計的に大きい再硬化をもたらした。さらに、24時間の再石灰化後、Sensodyne Pronamel練り歯磨きまたはProRinseのいずれかによる処理は、Colgate Plax Sensitive口腔洗浄液と比較して統計的に大きい再硬化をもたらした。しかしながら、人工唾液中での48時間のインキュベーション後、2種の口腔洗浄液製剤のいずれかまたは歯磨剤による処理後の再石灰化の程度に差はなかった。
【実施例4】
【0056】
酸による侵食の影響からの保護
行った調査は、上記の2種の口腔洗浄液製剤(再硬化調査で使用した)のうちの1種、水、またはSensodyne Pronamel練り歯磨きによる2分間の処理後に、ヒトエナメル質を0.1%クエン酸(pH3.8)に曝露することを含んだ。処理と酸への曝露との間に試料を水で洗浄した。調査した酸への侵食時間は10、20および30分であり、試料を蒸留水で再度徹底的に洗浄した後、各々の時点で微小硬度測定を行った。全時点で各々のエナメル質試料につき6個のくぼみを得た。6個の個々の試料に各々の処理を行った。
【0057】
軟化調査の結果を図5に要約する。エナメル質硬度の値は、個々のベースライン微小硬度値に対して正規化したので、後続の時点におけるデータはエナメル質の軟化を反映している。10分間の酸への曝露後、ProRinse製剤は、他の処理のいずれよりも、統計的に大きいエナメル質表面軟化からの保護をもたらした。20分間の酸への曝露後、ProRinse口腔洗浄液およびSenspdyne Pronamel練り歯磨き処理は、水処理よりも統計的に少ないエナメル質の軟化をもたらしたが、Colgate Plax Sensitive口腔洗浄液処理よりも方向的に少ない軟化をもたらした。30分の侵食時点において、ProRinse口腔洗浄液製剤は、水処理よりも統計的に大きい表面軟化からの保護をもたらし、Colgate Plax Sensitive口腔洗浄液よりも方向的に大きい軟化からの保護をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオン供給源、ならびにキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびコポビドンからなるトリプルポリマーシステムを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記フッ化物イオン供給源がアルカリ金属フッ化物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キサンタンガムが組成物の総量の0.001〜1.0重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルセルロースが組成物の総量の0.02〜20重量%の量で存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポビドンが組成物の総量の0.1〜20重量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
脱感作剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記脱感作剤がストロンチウム塩またはカリウム塩である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
口腔洗浄液組成物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケアレジメンにおいて、フッ化物練り歯磨きと共に毎日使用するための、請求項8に記載の口腔洗浄液組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の口腔洗浄液組成物と、フッ化物練り歯磨きと、口腔ケアレジメンにおいてそれらを使用するための説明書とを含む、歯牙侵食および/または歯質喪失を防ぐための口腔ケアキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−511507(P2012−511507A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539044(P2011−539044)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066473
【国際公開番号】WO2010/066655
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】