説明

新規の天然源、即ち、ディクロスタキス・シネレアから(−)−エピカテキンを調製する方法

本発明は、新規の植物源、即ち、ディクロスタキス・シネレアから(−)−エピカテキンを高い収率で単離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の植物源ディクロスタキス・シネレア(Dichrostachys cinerea)から化合物、即ち(−)−エピカテキンを良好な収率で単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディクロスタキス・シネレアは、伝統的なインド医学系で使用されている薬用植物であり、利尿薬、結石溶解薬、鎮痛剤、消化薬、便秘および炎症状態において幅広く推奨されている。さらに、カパ(kapha)およびヴァータ(vata)の低い状態、関節痛、象皮病、消化不良、下痢、膀胱結石、有痛性排尿困難、腎症、膣病および慢性子宮症で使用することができる(Indian Medicinal Plants,Vol.2 330頁)。眼結石(opthalmia)、リウマチ、尿路結石および腎障害で使用することもできる(Wealth of India Vol.3、56頁)。さらに、プロテアーゼ阻害剤活性(CA,90,118086u)、対真菌毒性活性(Ind.J.plant.Physiol,1986,29(3),278-80頁)、抗菌性(Fitoterapia,1988,59(1),57-62頁)を有することも報告されているしたがって、このような重要な生物学的特性を有する分子を捜し求めることが適当になりつつある。これに関連して、ディクロスタキス・シネレアのファイトケミカル調査を行った。本出願人らは、化合物(−)−エピカテキンを高度に経済的な収率で単離するために努力した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、新規の天然源ディクロスタキス・シネレアから(−)−エピカテキンを調製する方法を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は、(−)エピカテキンを良好な収率で得るための新規の源を提供することである。
【0005】
(−)−エピカテキンは、表1に示されているいくつかの活性を有することを知られている。
【0006】
【表1】

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、D.シネレアから(−)−エピカテキンを単離する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、D.シネレアから(−)−エピカテキンを単離する方法を提供するが、この際、この方法は、
(a)ディクロスタキス・シネレアの乾燥木材粉末をヘキサンで抽出するステップと;
(b)ステップ(a)の残留物をクロロホルムで抽出するステップと;
(c)ステップ(b)の残留物をメタノールで抽出するステップと;
(d)真空下に、ステップ(c)からのメタノール溶液を濃縮するステップと;(e)メタノール抽出物をシリカゲル(60〜120メッシュ)に吸着させて、シリカゲル(60〜120メッシュ)カラム(直径5cm、高さ100cm)に負荷するステップと;
(f)クロロホルム−メタノール勾配でカラムを溶離するステップと;
(g)クロロホルム中6%のメタノールで溶離されたフラクションを集めるステップと;
(h)溶離されたフラクションを濃縮して、純粋な(−)−エピカテキンを得るステップとを含む。
【0009】
本発明の他の実施形態では、使用される溶剤は、ヘキサン、クロロホルムおよびメタノールから選択される。
【0010】
本発明の他の実施形態では、得られる(−)−エピカテキンの収率は、乾燥原料に対して約0.45%である。前記のパーセンテージは、重量%である。
【0011】
さらに本発明は、新規の植物源、即ち、ディクロスタキス・シネレアから(−)−エピカテキンを単離する方法を提供する。
【0012】
本発明により、(−)−エピカテキンは、新規の植物源ディクロスタキス・シネレアから高い収率で単離されることが判明した。
【0013】
他の発明では、(−)−エピカテキンの単離方法は、高度に経済的である。
【0014】
したがって、ディクロスタキス・シネレアは、(−)−エピカテキンのための新規の植物源であり、良好な収量でこの植物中に存在することにより、本発明がより重要なものとなっている。(−)−エピカテキンが単離される他の植物源を、表2に記載する。
【0015】
【表2】

【0016】
(実施例)
実施プロトコル:化合物(−)−エピカテキンを単離するための方法。ディクロスタキス・シネレアの乾燥した幹の樹皮パウダー(2kg)をソックスレー装置に負荷した。始めに、粉末をヘキサンで抽出した。ヘキサンを抽出した後の残留物をさらに、クロロホルムで抽出した。クロロホルムで抽出した後に、残留物をコニカルフラスコに入れ、室温でメタノールに浸漬した。メタノール溶液を濾過し、真空下に濃縮した(50g)。メタノール抽出物(50g)をシリカゲル(60〜120メッシュ)に吸着させ、シリカゲル(60〜120メッシュ)カラム(直径5cm、高さ100cm)に負荷した。
【0017】
クロロホルム−メタノール勾配で、カラムを溶離した。特定のフラクションを得ることで、望ましい化合物が得られるように、クロロホルム−メタノール勾配を選択した。この場合、クロロホルム中6%のメタノールで溶離されるフラクションを別に集めて、濃縮する。
【0018】
クロロホルム−メタノール勾配を使用するシリカゲルカラム(>200メッシュ、直径3cmおよび長さ50cm)を使用して、前記のフラクションをさらに精製した。クロロホルム中6%のメタノールでの溶離液により、純粋な(−)−エピカテキン(9.0g)が得られた。(−)−エピカテキンの分光データを下記に示す。
【0019】
(−)−エピカテキン
1. 分子式: C15146
2. 1HNMR:[(CD32CO;200MHz]:δ7.04(1H、d、J2Hz、H−21)、6.86(1H、d、J8Hz、H−51)、6.78(1H、dd、J2および8Hz、H−61)、6.22(1H、d、J2Hz、H−8)、6.12
3. (1H、d、J2Hz、H−6)、4.88(1H、s、H−2)、4.20(1H、m、H−3)、2.80(2H、m、H−4、H−4’);
4. 13C−NMR[(CD32CO]:δ78.13(C−2)、65.01(C−3)、28.22(C−4)、156.57(C−5)、95.27(C−6)、156.29(C−7)、94.22(C−8)、155.79(C−9)、98.62(C−10)、130.69(C−11)、118.05(C−21)、144.47(C−31)、144.54(C−41)、114.97(C−51)、114.90(C−61);
5. EIMS:290(M+)、272、152、139および124。
6. IRνmax(KBr)cm-1:3306
7. [α]D25−68°(c0.1、MeOH)
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(−)−エピカテキンの構造を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規の植物源ディクロスタキス・シネレアから(−)−エピカテキンを単離する方法において、
(a)ディクロスタキス・シネレアの乾燥木材粉末をヘキサンで抽出するステップと;
(b)ステップ(a)の残留物をクロロホルムで抽出するステップと;
(c)ステップ(b)の残留物をメタノール溶液で抽出して、メタノール抽出物を得るステップと;
(d)真空下に、ステップ(c)のメタノール抽出物を濃縮するステップと;
(e)ステップ(d)の濃縮されたメタノール抽出物をシリカゲルに吸着させて、シリカゲルカラムに負荷するステップと;
(f)クロロホルム−メタノール勾配でカラムを溶離するステップと;
(g)クロロホルム中6%のメタノールで溶離されるフラクションを集めるステップと;
(h)ステップ(g)の溶離されたフラクションを濃縮して、純粋な(−)−エピカテキンを得るステップとを含む方法。
【請求項2】
(−)−エピカテキンの収率は、乾燥材料に対して約0.45%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
新規の植物源、即ち、ディクロスタキス・シネレアから、(−)−エピカテキンを単離する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−515293(P2006−515293A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559946(P2004−559946)
【出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005428
【国際公開番号】WO2004/054994
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】