説明

新規の抗DC−SIGN抗体

【課題】樹状細胞とT細胞との相互作用を調節し得るDC−SIGNに対する抗体を提供すること。
【解決手段】いくつかの実施形態において、この抗体は、樹状細胞とT細胞との相互作用を阻害する。他の実施形態において、この抗体は、樹状細胞中に内在化され、かつT細胞に提示されるペプチドと組み合わされ、それによってこのペプチドに対して免疫応答を生じる。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、ウイルス結合、ウイルス感染およびウイルス伝播を遮断することについて有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年12月15日出願の米国仮特許出願番号第60/529,517号に対する優先権を主張し、この仮特許出願の開示の全体が、本明細書において援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、動物において免疫応答を調節する(例えば、増加または減少させる)ことに有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
樹状細胞(DC)は、プロフェッショナルな抗原提示細胞であり、抗原を末梢組織において捕捉し、そして所属リンパ節(draining lymph node)および脾臓のT細胞領域へリンパ液または血液を介して移動する。これらは、処理された抗原をナイーブT細胞へ提示し、抗原特異性一次T細胞応答を開始する。DCは、休止T細胞と相互作用しそして休止T細胞を活性化するそれらの能力において独特である。
【0004】
ナイーブT細胞は、高発現のICAM−3によって特徴付けられ、このICAM−3は、IgG超遺伝子ファミリーのメンバーであり、そして活性化後に急速にダウンレギュレートされる(非特許文献1)。
【0005】
C型レクチンは、広範囲の生物学的機能を有するカルシウム依存性炭水化物結合タンパク質であり、その機能の多くは免疫に関連している。近年、新規のICAM−3結合C型レクチン(インテグリンでないものを捕捉するDC特異性ICAM−3またはDC−SIGNとして公知である)が見出された。DC−SIGNは、DC上で発現され、そして樹状細胞とナイーブT細胞上のICAM−3との間の接着を媒介するように見られ、そしてDC誘導T細胞の増殖について不可欠であるように見られる(非特許文献2;非特許文献3)。DC−SIGNへの抗体の結合は、内在化をもたらし得る(非特許文献4)。
【0006】
特許文献1(その内容が本明細書において参考として援用されている)は、例えば、DC−SIGNに対して特異的である抗体を使用することによって、T細胞上のレセプターと樹状細胞上のDC−SIGNとの相互作用を防ぐことにより、免疫応答が阻害され得るかまたは防がれ得ることを開示する。あるいは、抗原に対する免疫応答は、抗原を樹状細胞上のDC−SIGNに結合することによって増強され得、それゆえ、抗原に加えてDC−SIGNが、樹状細胞によって取りあげられ、そして処理され、そしてT細胞に提示される。
【0007】
DC−T細胞クラスタリングおよびT細胞の応答の開始におけるその顕著な役割の他に、DC−SIGNは、DCの感染、ならびに、その後のウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV−1、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス、SARSウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、シンドビスウイルス、およびデングウイルス);細菌(例えば、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、およびミコバクテリア属の細菌(M.tuberculosisおよびM.bovisが挙げられる));酵母(例えば、Candida albicans);および寄生生物(例えば、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoni)のT細胞への伝播に関与する主要なレセプターである。
【0008】
免疫監視細胞としての体表面におけるDCの位置に起因して、DCは粘膜に曝露した後にこれらのウイルスによって感染される最初の細胞であり、それゆえ、これらのウイルスによってもたらされる疾患の免疫性の病因において重要な役割を果たすと考えられる。現在、一般的に、これらのウイルス(例えば、HIV)が、リンパ節中へ進入し、そしてCD4T細胞へのアクセスを獲得するために、DCの正常な輸送プロセスを変換すると考えられている。例えば、HIV−1によるDCの増殖的感染が、何人かの研究者によって報告されており(非特許文献5;非特許文献6)、そして実質的な証拠は、インビトロでHIV−1でパルス化されたDCが、T細胞と同時培養される場合に強力な感染を誘導し得ることを示す(非特許文献7)。類似のシナリオがHIVに感染した個体に起こるか否か未だはっきりしないが、DCからT細胞へのHIV−1伝播は、AIDSにおいて観察されたCD4T細胞の減少に寄与し得る。したがって、これらのウイルス(例えば、HIV−1)および休止T細胞は、DCと相互作用するために、類似の高度に発現されたレセプターを利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/63251号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Vazeuxら、「Cloning and characterization of a new intercellular adhesion molecule ICAM−R」、Nature、1992年、360号、p.485−488
【非特許文献2】Geijtenbeekら、「Identification of DC−SIGN,a novel dendritic cell−specific ICAM−3 receptor that supports primary immune responses」、Cell、2000年、100巻、5号、p.575−585
【非特許文献3】Steinman,「DC−SIGN:A guide to some mysteries of dendritic cells」、Cell、2000年、100巻、5号、p.491−494
【非特許文献4】Engeringら、「The dendritic cell−specific adhesion receptor DC−SIGN internalizes antigen for presentation to T cells」、J Immunol、2002年、168号、p.2118
【非特許文献5】Granelli−Pipernoら、J Virol、1998年、72巻、4号、p.2733−7
【非特許文献6】Blauveltら、Nat Med、1997年、3巻、12号、p.1369−75
【非特許文献7】Cameronら、Science、1992年、257巻、5068号、p.383−7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
動物において免疫応答を増加または減少させることに有用な特定の組成物が、依然として所望される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(要旨)
本開示は、新規の抗DC−SIGN抗体に関し、この抗体は、動物の免疫応答を調節するのに有用であり得る。
【0013】
1つの実施形態において、抗DC−SIGN抗体は、DC−SIGN発現細胞とICAM発現細胞との相互作用に干渉する。より具体的には、この実施形態において、抗DC−SIGN抗体は、樹状細胞の表面のC型レクチンレセプターの、T細胞の表面のICAMレセプターへの接着を減少する。この付着を調節することによって、樹状細胞−T細胞相互作用が影響され得る。そのような相互作用としては、クラスター形成、および抗原提示、ならびに、その上に依存する一次T細胞応答が挙げられ、免疫応答の調節をもたらす。
【0014】
別の実施形態において、抗DC−SIGN抗体は、DC−SIGN発現細胞の移動に影響を及ぼす。
【0015】
別の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、アゴニストとして作用し、それによって、動物においてT細胞の応答を促進し得る。
【0016】
別の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、特定のペプチド(特に、抗原)に対する免疫応答を促進するために使用され得る。そのような場合において、抗DC−SIGN抗体はペプチドに付着され、そしてこの2つの組み合わせが動物に投与される。この抗体はそのペプチドを樹状細胞に導き、この樹状細胞は、このペプチドを内在化し、次いで、樹状細胞表面のペプチドをT細胞に提示し、それによってこのペプチドに対する免疫応答を生じる。この場合において、この抗体は、ワクチン(癌ワクチンを含む)として有用であり得る。
【0017】
さらに別の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、DC−SIGN発現細胞に対する毒素で標識され得る。次いで、毒素で標識された抗DC−SIGN抗体の投与は、DC−SIGN発現細胞のレベルを減少させるために利用され得、いくつかの例において、この細胞は、例えば、自己免疫疾患の処置において有用であり得る。
【0018】
別の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、ウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV−1、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス、SARSウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、シンドビスウイルス、およびデングウイルス);細菌(例えば、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、およびミコバクテリア属の細菌(M.tuberculosisおよびM.bovisが挙げられる));酵母(例えば、Candida albicans);および寄生生物(例えば、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoni)による樹状細胞の感染を阻害する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、上に参照されたウイルスによって引き起こされる疾患に対するワクチンとして利用され得る。さらなる実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、HIV感染および類似の免疫系の障害の処置において、ならびに、移植後の移植片に対する免疫応答を調節するために使用され得る。
【0020】
本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、DC−SIGN発現と関連する腫瘍型のための通常の診断法として利用され得、そしていくつかの実施形態において、診断キットの一部として提供され得る。
【0021】
本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、DC−SIGN発現と関連する癌および腫瘍型の処置のための治療法として利用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、ヒト化抗体であり得る。他の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体は、scFvであり得る。
【0023】
さらに他の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、L−SIGNに結合し得る。
【0024】
本開示のさらなる実施形態は、組成物を使用し、そして/または上に記載されたような方法を包含する、予防技術および診断技術に関する。薬学的に受容可能なキャリア中に本開示の抗DC−SIGN抗体を含む組成物もまた、提供される。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体であって、ここで、該抗体は、ヒトDC−SIGNに結合する、抗体。
(項目2)
前記抗体に付着するペプチドをさらに含む、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記ペプチドが抗原を含む、項目2に記載の抗体。
(項目4)
前記抗原が癌抗原を含む、項目3に記載の抗体。
(項目5)
項目3に記載の抗体を含むワクチン。
(項目6)
項目4に記載の抗体を含むワクチン。
(項目7)
項目1に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目8)
前記抗体が、ヒト化抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目9)
前記抗体が、scFvである、項目1に記載の抗体。
(項目10)
SNDGYYS(配列番号47);RYYLGVD(配列番号48);DDSGRFP(配列番号49);YGYAVDY(配列番号50)、YYGIYVDY(配列番号51)、FLVY(配列番号52)、NFGILGY(配列番号53)、YPNALDY(配列番号54)およびGLKSFYAMDH(配列番号55)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヒトDC−SIGNに結合する、抗体。
(項目11)
前記アミノ酸配列が、前記抗体の重鎖CDR3中に現れる、項目10に記載の抗体。
(項目12)
QHFWNTPWT(配列番号45);QQGHTLPYT(配列番号46);QQGKTLPWT(配列番号56)、QQGNTLPPT(配列番号57)、QQHYITPLT(配列番号58)、QQYGNLPYT(配列番号59)、QQYYSTPRT(配列番号60)、GQSYNYPPT(配列番号61)およびWQDTHFPHV(配列番号62)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヒトDC−SIGNに結合する、抗体。
(項目13)
前記アミノ酸配列が、前記抗体の軽鎖CDR3中に現れる、項目12に記載の抗体。
(項目14)
DC−SIGN発現細胞およびICAM発現細胞の相互作用に干渉するための方法であって、該方法は、項目1に記載の抗体の免疫調節有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目15)
免疫応答を生成するための方法であって、該方法は、項目2に記載の抗体の免疫調節有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目16)
DC−SIGN発現細胞およびICAM発現細胞の相互作用に干渉するための方法であって、該方法は、項目10に記載の抗体の免疫調節有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目17)
DC−SIGN発現細胞およびICAM発現細胞の相互作用に干渉するための方法であって、該方法は、項目12に記載の抗体の免疫調節有効量を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目18)
抗原をDC−SIGN発現細胞に送達するための方法であって、該方法は、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体に、該抗原を付着させる工程を包含し、ここで、該抗体は、ヒトDC−SIGNに結合する、方法。
(項目19)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、HIV、HCV、エボラウイルス、SARSウイルス、CMV、シンドビスウイルスおよびデングウイルスからなる群より選択されるウイルスの、該細胞への結合を有効に遮断し得る、抗体。
(項目20)
前記抗体がまたL−SIGNに結合する、項目19に記載の抗体。
(項目21)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、HIV、HCV、エボラウイルス、SARSウイルス、CMV、シンドビスウイルスおよびデングウイルスからなる群より選択されるウイルスによる該細胞の感染を有効に遮断し得る、抗体。
(項目22)
前記抗体がまたL−SIGNに結合する、項目21に記載の抗体。
(項目23)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、HIV、HCV、エボラウイルス、SARSウイルス、CMV、シンドビスウイルスおよびデングウイルスからなる群より選択されるウイルスの、該細胞から別の細胞への伝播を有効に遮断し得る、抗体。
(項目24)
前記抗体がまたL−SIGNに結合する、項目23に記載の抗体。
(項目25)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、Mycobacteria tuberculosisおよびMycobacteria Bovisからなる群より選択される細菌の、該細胞への結合を有効に遮断し得る、抗体。
(項目26)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、Mycobacteria tuberculosisおよびMycobacteria Bovisからなる群より選択される細菌による該細胞の感染を有効に遮断し得る、抗体。
(項目27)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、Mycobacteria tuberculosisおよびMycobacteria Bovisからなる群より選択される細菌の、該細胞から別の細胞への伝播を有効に遮断し得る、抗体。
(項目28)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoniからなる群より選択される寄生生物の、該細胞への結合を有効に遮断し得る、抗体。
(項目29)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoniからなる群より選択される寄生生物による該細胞の感染を有効に遮断し得る、抗体。
(項目30)
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含む細胞上のDC−SIGNレセプターを認識する抗体であって、該抗体は、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoniからなる群より選択される寄生生物の、該細胞から別の細胞への伝播を有効に遮断し得る、抗体。
(項目31)
DC−SIGN発現の増加によって特徴付けられる腫瘍に対する診断剤であって、該診断剤は、DC−SIGNレセプターを認識する抗体を含む、診断剤。
(項目32)
項目31の診断剤を含む、診断キット。
(項目33)
癌を診断するための方法であって、該方法は:
癌を有している疑いのある被験体から組織サンプルを得る工程:および
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するDC−SIGNレセプターを認識する抗体と、該組織サンプルが結合する程度を決定する工程を包含し、
ここで、対応する正常組織と比較して、結合の程度の増加が、癌の存在を示す、方法。
(項目34)
項目33に記載の方法であって、ここで、前記決定する工程が、DC−SIGNの存在について染色する工程を包含する、方法。
(項目35)
DC−SIGN発現の増加によって特徴付けられる癌を処置するための治療剤であって、該治療剤は、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するDC−SIGNレセプターを認識する抗体を含む、治療剤。
(項目36)
癌を処置するための方法であって、該方法は、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するDC−SIGNレセプターを認識する抗体を含む、癌細胞を死滅させる量の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目37)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、癌細胞の抗体依存性細胞性細胞傷害を誘導する、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、癌細胞の補体依存性細胞傷害を誘導する、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、DC−SIGN発現癌細胞を介する免疫系の負の調節を防ぐ、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記抗体が毒素に融合される、項目36に記載の方法。
(項目41)
前記抗体が高エネルギー放射線エミッターに融合される、項目36に記載の方法。
(項目42)
炎症性疾患を処置するための方法であって、該方法は、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性を有するDC−SIGNレセプターを認識する抗体を含む、樹状細胞を死滅させる量の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目43)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、樹状細胞の抗体依存性細胞性細胞傷害を誘導する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、樹状細胞の補体依存性細胞傷害を誘導する、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記DC−SIGNレセプターを認識する抗体が、DC−SIGN発現樹状細胞を介する免疫系の負の調節を防ぐ、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記抗体が毒素に融合される、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記抗体が高エネルギー放射線エミッターに融合される、項目42に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1Aおよび図1Bは、本開示に基づくインビトロでの実験結果のグラフ描写であり、それぞれ、IgG1クローンおよびIgG2aクローンの、ヒトDC−SIGNとの反応性を示している。
【図2】図2は、本開示に基づくインビトロでの実験結果のグラフ描写であり、IgG1クローンおよびIgG2aクローンの、ヒトL−SIGNおよびDC−SIGNとの反応性を示している。
【図3】図3は、本開示に基づく実験において得られた3つのクローンのFACS分析の結果のグラフ描写であり、樹状細胞の表面のDC−SIGNとのクローンの反応性を示している。
【図4a】図4a〜図4cは、DC−SIGNと反応する本開示に基づく実験において得られた重鎖クローンおよび軽鎖クローンのアミノ酸配列を提供する。
【図4b】図4a〜図4cは、DC−SIGNと反応する本開示に基づく実験において得られた重鎖クローンおよび軽鎖クローンのアミノ酸配列を提供する。
【図4c】図4a〜図4cは、DC−SIGNと反応する本開示に基づく実験において得られた重鎖クローンおよび軽鎖クローンのアミノ酸配列を提供する。
【図5】図5A〜図5Bは、本開示の1つの実施形態に基づくインビトロでの実験結果のグラフ描写であり、それぞれ、IgG1クローンおよびIgG2aクローンの反応性を示し、DC−SIGNへの結合についてAZN−Dlと競合している。
【図6】図6は、本開示の1つの実施形態に基づくインビトロでの実験結果のグラフ描写であり、特定のIgG1クローンによる、DC−SIGNへのICAM結合の強い阻害を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本開示は、DC−SIGNに対して指向された抗体が、樹状細胞とT細胞との相互作用を調節し得るという知見に基づく。概して、本開示の抗DC−SIGN抗体は、DC−SIGNまたはその天然の改変体またはその等価物に結合、接着し(好ましくは可逆的様式において)、またはDC−SIGNまたはその天然の改変体またはその等価物に対するリガンドとして役立ち得る。いくつかの実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、L−SIGNに結合し得る。
【0027】
DC−SIGNのアミノ酸配列は公知であり、そして、例えば、国際公開第00/63251号の配列番号1および図9に示されるように報告される。
【0028】
本開示に従って、抗CD−SIGN抗体は、好ましくは、DC−SIGNかまたはDC−SIGNの部分、フラグメントもしくはエピトープに対して指向される抗体を含む。本明細書において使用される場合、用語、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体および単鎖抗体、ならびに、フラグメント(Fab、Fv、scFv、Fc)およびFab発現ライブラリを含む。そのようなDC−SIGNに対する抗体は、本明細書の以下に記載されるように、またはそれ自体公知である任意の他の様式(例えば、国際公開第95/32734号、同第96/23882号、同第98/02456号、同第98/41633号および/または同第98/49306号に記載されるようなもの)において得られ得る。
【0029】
例えば、ポリクローナル抗体は、適切な宿主(例えば、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ラット、ブタまたはマウス)をDC−SIGNまたはその免疫原性部分、そのフラグメントまたはその融合物を用いて、必要に応じて、免疫原性キャリア(例えば、ウシ血清アルブミン)および/またはアジュバント(例えば、フロイントアジュバント、サポニン、ISCOM、水酸化アルミニウムまたは類似のミネラルゲル、またはキーホールリンペットへモシアニン、または類似の表面活性物質)の使用と共に、免疫することによって得られ得る。DC−SIGNに対する免疫応答が生じた後(通常1〜7日以内)、それ自体公知の様式において、この抗体は、免疫された動物から採取された血液または血清から単離され得、この様式は、公知の免疫アッセイ技術を使用して、所望の特性(すなわち、特異性)を有する抗体についてスクリーニングする工程を必要に応じて包含し得、このことについては、国際公開第96/23882号を再度参照のこと。
【0030】
培養中の連続した細胞株(ハイブリドーマを含む)および上に引用された参考文献に本質的には記載される類似の技術を再度使用して、モノクローナル抗体は、産生され得る。さらなる局面において、本開示は、DC−SIGNに対する抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を産生する細胞株(例えば、ハイブリドーマ)を提供する。
【0031】
1つの実施形態において、本開示の抗体は、軽鎖を含む。本明細書において使用される場合、「軽鎖」とは、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)またはそれらのフラグメントからなる抗体分子のより小さいポリペプチドを意味する。別の実施形態において、その抗体の一部は、重鎖を含む。本明細書において使用される場合、「重鎖」とは、1つの可変ドメイン(VH)および3つまたは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3およびCH4)またはそれらのフラグメントからなる抗体分子のより大きいポリペプチドを意味する。
【0032】
別の実施形態において、上記抗体は、抗体のFab部分を含む。本明細書において使用される場合、「Fab」とは、1つの軽鎖および重鎖の一部からなる免疫グロブリンの一価の抗原結合フラグメントを意味する。それは、短期間のパパイン消化によってかまたは組換え方法によって得られ得る。別の実施形態において、抗体の一部は、抗体のF(ab’)部分を含む。本明細書において使用される場合、「F(ab’)フラグメント」とは、両方の軽鎖と両方の重鎖の部分からなる免疫グロブリンの二価の抗原結合フラグメントを意味する。それは、短期間のペプシン消化かまたは組換え方法によって得られ得る。他の実施形態において、抗体は、Fab’フラグメントであり得る。例えば、Fab発現ライブラリは、Huseら、Science 245:1275(1989)の方法によって得られ得る。
【0033】
さらに、「ヒト化」抗体は、例えば、国際公開第98/49306号に記載されるように使用され得る。本明細書において使用される場合、「ヒト化」抗体とは、CDRの外側のアミノ酸が、対応するヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸で置換される抗体である。「CDR」または「相補性決定領域」とは、抗体の可変ドメインにおけるアミノ酸が高度に変動する配列を意味する。米国特許番号第5,225,539号は、ヒト化抗体の産生のための1つのアプローチを記載する。組換えDNA技術がヒト化抗体を産生するために使用され得、ここで、1つの免疫グロブリンの可変領域のCDRが、異なる特異性を有する免疫グロブリン由来のCDRで置換され、それゆえ、そのヒト化抗体は、所望の標的を認識するが、ヒト被験体の免疫系によっては顕著な方法で認識されない。具体的には、部位指向性の突然変異誘発が、CDRをそのフレームワーク上に接ぐために使用される。
【0034】
抗体をヒト化するための他のアプローチが、米国特許番号第5,585,089号および同第5,693,761号および国際公開第90/07861号パンフレット中に記載される。これらの抗体は、1つ以上のCDR、およびドナー免疫グロブリン由来のさらなるアミノ酸、および受容しているヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域を有する。具体的には、これらの特許文献は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域および定常領域と、マウスモノクローナル抗体のCDRを組み合わせることによってレセプターへ結合するヒト化抗体の調製を記載する。ヒトフレームワーク領域は、マウス配列との相同性を最大にするように選択され得る。コンピューターモデルが、フレームワーク領域におけるアミノ酸を同定するために使用され得、これらのアミノ酸は、CDRまたは特異的抗原と相互作用すると考えられ、次いで、マウスアミノ酸はヒト化抗体を作製するためにこれらの位置にて使用され得る。
【0035】
1つの実施形態において、上記抗体は、抗体の1つ以上のCDRドメインを含む。別の実施形態において、本開示において利用される抗体は、配列番号45、配列番号46、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61および配列番号62のアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのCDRを含む軽鎖可変領域を有するヒト化抗体である。さらに別の実施形態において、本開示において利用される抗体は、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54および配列番号55のアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも1つのCDRを含む重鎖可変領域を有するヒト化抗体である。
【0036】
本開示の新規の抗体は、広範囲の適用可能性を有する(すなわち、本明細書において開示される薬学的用途/治療上の用途の他に)ことが認識される。本開示のさらに別の局面を形成するこれらの適用のいくつかは、当業者にとって本明細書の開示から明らかである。
【0037】
いったん得られた場合、上に記載された抗体は、動物に投与され得る。1つの実施形態において、抗DC−SIGN抗体は動物(特に、ヒトまたは別の哺乳動物)において免疫応答を減少させる。DC−SIGNへ結合することによって、この抗体は、DC−SIGN発現細胞とICAM発現細胞との間の相互作用(例えば、樹状細胞とT細胞との間の相互作用)を妨げる。より具体的には、DC−SIGNに対する抗体は、DC−SIGNとT細胞の表面のICAMレセプターとの間の接着に干渉することによって樹状細胞とT細胞との間の接着を減少させる。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ICAMレセプター」とは、ICAM−2レセプターとICAM−3レセプターとの両方(特に、ICAM−3レセプター)を意味する。
【0039】
樹状細胞へのT細胞の接着を干渉することによって、DC−SIGNに対する抗体の使用は、樹状細胞−T細胞クラスタリング、T細胞活性化、および樹状細胞とT細胞との間の接触に依存する他の相互作用を影響する。これらの他の相互作用は、直接的な細胞同士の接触または樹状細胞とT細胞との密接な近接の両方を含む。
【0040】
そのようなさらなる相互作用としては、免疫応答を生じることに関与するプロセス(特に、そのような応答の始めの段階の間(例えば、一次感作/Tリンパ球の活性化、すなわち、抗原および/またはT細胞に対するMHC結合ペプチドの提示、およびT細胞の同時刺激))、が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、そのような相互作用としては、化学的シグナル伝達、エンドサイトーシスおよび経上皮輸送のようなプロセスが挙げられる。一般の樹状細胞−T細胞相互作用の考察について(全てのその相互作用は本開示の組成物によって影響を及ぼされ得る)、以下の考察、ならびに、国際公開第95/32734号および国際公開第96/23882号を参照のこと。
【0041】
この抗体は、DC−SIGN発現細胞に対する毒素で標識され得ることもまた企図される。次いで、毒素で標識された抗DC−SIGN抗体の投与は、DC−SIGN発現細胞のレベルを減少させるために利用され得、いくつかの例において、例えば、自己免疫疾患、癌または炎症性疾患の処置において、有益であり得る。この様式において、この抗体はまた、インビボでDC−SIGN発現細胞を死滅させるかまたは除去するために利用され得る。このことは、そのような処置を必要とする被験体に細胞傷害性薬物(例えば、毒素または放射線放出化合物)へ結合する抗体を投与する工程を包含する。抗体はDC−SIGN発現細胞(例えば、癌細胞または樹状細胞)を認識するので、抗体が結合する任意のそのような細胞は破壊される。この抗DC−SIGN抗体がまたL−SIGNにもある程度結合すると示されたので、この抗体は、L−SIGN発現細胞を死滅させるために使用され得ることもまた企図される。1つの実施形態において、本開示に基づいて癌を処置する方法は、癌細胞に結合する毒素を有する癌細胞を死滅させるのに有効な量の抗DC−SIGN抗体を癌患者へ投与する工程を包含する。別の実施形態において、本開示に基づいて炎症性疾患を処置する方法は、樹状細胞に結合する毒素を有する樹状細胞を死滅させる有効量の抗DC−SIGN抗体を炎症性疾患を罹患する患者へ投与する工程を包含する。
【0042】
さらに、本開示の抗体は、樹状細胞からT細胞への物質(例えば、化学物質、シグナル伝達因子(例えば、ケモカインおよび/またはインターロイキンなど)ならびに、特に、ウイルス粒子(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV−1、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス、SARSウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、シンドビスウイルス、およびデングウイルス))の移動を防ぐかまたは減少するために使用され得る。この方法において、本開示の抗体を使用することによって、樹状細胞へのウイルス粒子の始めの接着が阻害され得るだけでなく、樹状細胞からT細胞へのウイルス感染の蔓延もまた阻害され得る。
【0043】
本開示の抗体は、樹状細胞のウイルス感染を防ぐために使用され得るだけでなく、樹状細胞が感染された後のT細胞へのウイルス感染の蔓延を減少させるためにも使用され得、それによって疾患の進行を遅らせ得る。この抗体はまた、T細胞の活性化を防ぎ、阻害し、または少なくとも遅延させ、そしてそれによってウイルス疾患(例えば、HIV)の開始および/または進行を遅らせるために使用され得る。
【0044】
それゆえ、本開示の抗体は、樹状細胞の免疫調節能力に影響を及ぼすために;樹状細胞媒介性(一次)T細胞応答を調節(特に、減少させる)ために、そして/または概して免疫系に影響を及ぼす(特に、阻害する)ために使用され得る。この抗体は、免疫系の障害を予防および/または処置するために、ならびに、移植拒絶を予防するために使用され得る。
【0045】
いくつかのさらなる適用としては、特異的な抗原に対して免疫応答を予防するかまたは阻害すること;耐性を誘導すること;免疫療法;免疫抑制(すなわち、移植拒絶を予防すること);自己免疫疾患(例えば、甲状腺炎、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、多発性硬化症および自己免疫糖尿病の処置);ならびにアレルギーの予防または処置が挙げられる。
【0046】
本開示の抗体は、インビトロならびにインビボの両方での使用のために、非常に有用な診断手段および研究手段を構成する。適用可能な非限定的分野としては、樹状細胞およびそれらの機能および相互作用の研究;免疫系の研究;細胞、組織または生物学的液体(例えば、滑液組織)および皮膚組織/皮膚細胞における、樹状細胞および/またはC型レクチンの検出;ならびに、生物学的プロセスまたは疾患機構(例えば、癌および自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチが挙げられる))における、樹状細胞が果たす役割の研究が挙げられる。
【0047】
本開示の抗体は、組織中もしくは組織上または細胞全体中もしくは細胞全体上のDC−SIGNの存在を検出するために(そしてそれによってDC−SIGNの発現を決定する)、ならびに、他の生物学的サンプル(例えば、細胞フラグメント)中のまたは細胞調製物中のDC−SIGNの存在を検出するために使用され得る。したがって、得られた情報は、次いで、本開示の方法または組成物が、そのような組織または細胞に適用され得るかを決定するために使用され得る。本開示の抗体はまた、例えば、生物学的サンプル(生物学的液体(例えば、血液、血漿またはリンパ液);組織サンプルまたは細胞サンプル(例えば、骨髄、皮膚組織、腫瘍組織など);または細胞培養または培養媒体)中で/から樹状細胞を(定性的におよび/または定量的に)検出、単離、精製および/または産生するために使用され得る。検出は、適切なアッセイによってなされ得る。
【0048】
アッセイは、抗体の分析についてそれ自体公知の様式において使用され得る(例えば、競合的阻害アッセイまたはELISA型免疫アッセイ)。例えば、抗体は、顕微鏡技術、細胞選別技術(このような技術としては、フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞分離(FACS)が挙げられる)、固体支持体および/または検出可能な標識またはマーカーに基づく技術(これらは抗体に付着され得る)、(常)磁性ビーズに基づく技術、あるいは、抗体が使用され得る当業者に公知の任意の他の検出技術またはアッセイ技術と組み合わせて使用され得る。本開示の抗体の他に、本開示のさらなる局面を形成する、抗体ベースのアッセイならびに操作などについて公知のさらなる構成要素を含み得る。
【0049】
本開示の抗体を使用することによって、樹状細胞はまた、より高い収量および高度の特異性で、単離されそして産生され得る。そのような方法において、抗体は、抗体を使用する生物学的液体から細胞の採取、単離および/または精製についてそれ自体公知の様式で使用され得る。
【0050】
本開示の抗体が使用され得る方法および公知の技術のさらなる説明について、一般的な教科書(例えば、Sitesら、「Basic and clinical immunology」、第8版、Prentice−Hall(1994);Roittら、「Immunology」、第2版、Churchill Livingstone(1994))に参照され、それらの内容は、本明細書において参考として援用される。Janeway−Traversによって記載された:「Immunobiology,the immune system in health and disease」第3版の全般的な参照の第2.7節から第2.17節に記述されるような、その文献に包含される抗体および技術の一般の用途について、特に参照のこと。
【0051】
本開示はさらに、HIV感染の予防または処置のための方法に関連し、この方法は、HIV感染患者またはHIVに感染する危険のある人に、樹状細胞の表面のDC−SIGNに結合するかまたは結合し得る化合物を、樹状細胞へのHIVの接着が阻害されるような量で投与する工程を包含する。この抗DC−SIGN抗体がまたある程度L−SIGNにも結合することが示されたので、この抗体がその表面にL−SIGNを有する細胞のウイルス感染を予防するために使用され得ることも企図される。
【0052】
また、本開示はさらに、ウイルス感染の処置のための方法に関連し、この方法は、感染した患者にDC−SIGNに結合するかまたは結合し得る化合物を、感染した樹状細胞から感染していないT細胞へのウイルスの移動が阻害されるような量で投与する工程を包含する。
【0053】
別の局面において、抗原またはその1つ以上の抗原部分を樹状細胞にDC−SIGNに結合し得る形態で提示することによって、動物(例えば、ヒトまたは別の哺乳動物)において特定のペプチド(すなわち、抗原または抗原の組み合わせ)に対する免疫応答を調節し、そして特に生じ、増加そして/または促進するために、本開示の抗体が使用される。この様式において提示された抗原は内在化され(すなわち、これらは、樹状細胞に侵入する)、次いで、その表面の抗原をT細胞へ提示し、それによって、この抗原に対する免疫応答を引き起こす。
【0054】
樹状細胞への提示に関して、句「DC−SIGNに結合し得る形態」とは、概して、抗原または抗原フラグメントが上に記載された抗DC−SIGN抗体に付着されることを意味される。この付着は、共有結合、リガンド−リガンドの相互作用、錯体化、ライゲーション、タンパク質の融合(例えば、その融合の発現を通して)、または任意の他の種類の物理的もしくは化学的相互作用、あるいは抗原が抗DC−SIGN抗体と併せて樹状細胞へ提示されることを可能にする結合によってなされ得る。
【0055】
抗原は、免疫応答が得られ得る、任意の抗原またはその任意の部分またはそのフラグメントであり得る。好ましくは、任意のそのような部分またはフラグメントは、それ自体が免疫応答を誘発し得るようなものである(例えば、エピトープ)。しかし、これは必要とされてはいない;これらのフラグメントは、本開示の抗DC−SIGN抗体への付着によって増加した特異性または親和性を有する樹状細胞へ指向され、免疫応答を通常誘発し得ないフラグメントは、本明細書において記載される抗DC−SIGN抗体と併せて使用される場合、免疫応答を提供し得るからである。また、概して、抗DC−SIGN抗体と組み合わせて抗原を使用することは、抗原の能力を増加し得る、すなわち、投与された抗原の1単位につき、より高い免疫応答またはより強い免疫応答を提供し得る。この方法において、抗原は、より低い投与量において投与され得、そしてそれでも十分な免疫応答を提供し得る。
【0056】
適切な抗原の例としては、癌抗原(このような癌抗原としては、gp100、g250、p53、MAGE、BAGE、GAGE、MART 1、チロシナーゼ関連タンパク質11およびチロシナーゼ関連タンパク質が挙げられる)である;これらの全ては、その抗原を含むかまたは発現する腫瘍細胞に対して免疫応答を生じるために使用され得る。本開示において使用され得る他の種類の抗原は、感染疾患(例えば、インフルエンザ、おたふくかぜ、麻疹、風疹、ジフテリア、破傷風、微生物(例えば、Haemophilus influenzae(例えば、b型)、Neisseria、Bordetella pertussis、Polyomyletus、インフルエンザウイルスおよび肺炎球菌)による感染に起因する疾患、および概してワクチンが開発され得るかまたは予想され得る任意の他の感染または疾患(寄生生物、原生動物および/またはウイルス感染(例えば、HIVおよび疱疹)がまた挙げられる))に対するワクチン中に使用される本質的に全ての抗原を含む。血清またはワクチンを提供するために、本開示の化合物はさらに、それ自体公知の他の抗原と組み合わされ得る。
【0057】
それゆえ、本開示のこの局面は、1)抗DC−SIGN抗体および2)そこへ付着した抗原またはそのフラグメント、またはその部分の組み合わせを含む組成物に関連する。この2つの組み合わせは、動物(特にヒトまたは別の哺乳動物)において上記抗原に対する免疫応答を調節する(特に、生じる、増加させるおよび/または促進する)ための組成物において利用され得る。この技術は、癌ワクチンにおいて特に有利であり得る。
【0058】
上の組み合わせは、複合体、化学物質または化学実体、または融合タンパク質もしくはタンパク質構造の形態であり得、そして当業者に公知の様式における組成物として処方されそして投与され得る。したがって、一度得られた場合、ペプチドと組み合わせたDC−SIGNに対する上記抗体は、宿主動物に投与され、T細胞の応答をブーストし、したがってその宿主動物の免疫応答を増加させ得る。
【0059】
さらなる局面において、本開示は、動物(特に、ヒトまたは別の哺乳動物)において免疫応答を調節するための方法に関し、この方法は、その動物に、本明細書において「抗体/ペプチド構築物」と呼ばれるペプチドと組み合わせてDC−SIGNに対する抗体を、好ましくは本明細書において記載されるような組成物の形態で、免疫応答を変更または改変するのに十分な量で投与する工程を包含する。好ましくは、この方法は、上記ペプチドに対する免疫応答を生じる。
【0060】
本開示に基づく投与のための組成物は、それらの意図された効果に関わらず、1つ以上の上述の抗CD−SIGN抗体または他の化合物と組み合わせたそのような抗体を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体は、マンノース、フコースまたは他の炭水化物、レクチンおよび/または抗生物質(例えば、プリダマイシンA)と処方され得、それによって相乗効果が得られ得る。
【0061】
例えば、いくつかの実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、感染因子(ウイルス(例えば、HIV、HCV、エボラウイルス、SARSウイルス、CMV、シンドビスウイルス、およびデングウイルス);細菌(例えば、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumonae、およびミコバクテリア属の細菌(M.tuberculosisおよびM.bovisが挙げられる));酵母(例えば、Candida albicans);および寄生生物(例えば、Leishmania pifanoiおよびSchistosoma mansoni)が挙げられるが、これらに限定されない)の結合、感染、および伝播を遮断するために利用され得る。いくつかの実施形態において、抗DC−SIGN抗体はまた、L−SIGNに結合し、この抗体は、上に記載された感染因子の結合、感染、および伝播を遮断することに有用であり得る。
【0062】
したがって、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、既存のウイルス感染または細菌感染を有する被験体動物(例えば、ヒト)を処置するために利用され得る。代替的に、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、被験体動物(例えば、ヒト)のウイルスによる感染を予防するためにワクチン中に含まれ得る。
【0063】
本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物はまた、DC−SIGN発現と関連する腫瘍型のための通常の診断法として利用され得る。例えば、癌サンプルにおけるDC−SIGNのアップレギュレーションは、免疫系のアップレギュレーションが免疫系による圧力の下でのみ起こると予期されるので、癌が免疫系に曝露されたか否かを評価する診断手段のための根拠として利用され得る。当業者に公知の方法(免疫組織化学および/またはFACS分析を含む)を使用して、腫瘍生検が、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物に曝露され得、次いで、結合した抗DC−SIGN抗体の存在について分析され得、この抗体がDC−SIGN発現と関連する癌の指標となる。いくつかの実施形態において、抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、DC−SIGNを発現する癌の存在を決定するための診断キットの一部として提供され得る。
【0064】
本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物はまた、DC−SIGN発現の増加によって特徴付けられる癌の処置のための治療法としても利用され得る。1つの実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、腫瘍細胞のADCC(抗体依存性の細胞性細胞傷害性)またはCDC(補体依存性細胞傷害性)を誘導し、それによってこの細胞を死滅させる。
【0065】
この抗体はまた、インビボで癌細胞を死滅させるかまたは除去するために利用され得る。このことは、そのような処置を必要とする被験体に細胞傷害性薬物へ結合する抗体を投与することに関与する。この抗体は癌細胞を認識するので、抗体が結合する任意のそのような細胞は破壊される。
【0066】
本開示の抗体は、種々の細胞傷害性化合物を送達するために使用され得る。任意の細胞傷害性化合物は、この抗体と融合され得る。この融合は、化学的にまたは遺伝子的に達成され得る(例えば、1つの融合された分子としての発現を介して)。この細胞傷害性化合物は、生物学的分子(例えば、ポリペプチド)または低分子であり得る。当業者が理解するように、低分子については化学的融合が使用され、他方で、生物学的化合物については、化学的融合または遺伝子的融合が使用され得る。
【0067】
本開示の抗体は、種々の細胞傷害性薬物(治療薬;放射線を放出する化合物;植物、真菌または細菌起源の分子;生物学的タンパク質;およびそれらの混合物が挙げられる)を送達するために使用され得る。細胞傷害性薬物は、細胞内で作用する細胞傷害性薬物(例えば、短距離の放射線エミッター(例えば、短距離の高エネルギーα−エミッターが挙げられる))であり得る。酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、例えば、ジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、(Pseudomonas aeruginosa由来の)体外毒素A、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サクリン、特定のAleurites fordiiタンパク質、特定のDianthinタンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAP、PAPIIおよびPAP−S)、Morodica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、Saponaria officinalisインヒビター、ゲロニン、マイトギリン(mitogillin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)およびエノマイシンによって例示される。免疫毒素の酵素的に活性なポリペプチドを調製するための手順は、本明細書によって参考として援用される国際公開第84/03508号および同第85/03508号中に記載される。特定の細胞傷害性部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキサート、ネオカルジノスタチンおよび白金に由来する。
【0068】
細胞傷害性剤と抗体を結合体化するための手順は、既に記載されている。
【0069】
あるいは、上記抗体は、高エネルギー放射線エミッター(例えば、放射性同位元素(例えば、131I、γ−エミッター))と連結され得、このγ−エミッターは、腫瘍部位にて局在化される場合、いくつかの細胞の大きさ(diameter)の死滅をもたらす。例えば、本明細書において参考として援用される、S.E.Order,「Analysis,Results,and Future Prospective of the
Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら、(編)、pp.303−316(Academic Press 1985)を参照のこと。他の適切な放射性同位元素としては、α−エミッター(例えば、212Bi、213Biおよび211At)およびβ−エミッター(例えば、186Reおよび90Y)が挙げられる。前立腺癌は比較的放射線感受性の腫瘍であるので、放射線治療は前立腺癌と関連して特に効果的であると予期される。
【0070】
別の実施形態において、本開示の抗DC−SIGN抗体または抗体/ペプチド構築物は、DC−SIGNに結合しそしてDC−SIGN発現癌細胞を介する免疫系の負の調節を妨げることによって、腫瘍を処置するための治療法として利用され得る。この負の調節を妨げることによって、この免疫系は癌細胞を根絶するように進行し得る。
【0071】
上の処置の効能は、当業者に公知の方法(異種移植片モデルを含む)を利用して、確認され得る。
【0072】
癌療法として利用される本開示に基づく抗体または抗体/ペプチド構築物はまた、任意の他の免疫調節治療(例えば、癌ワクチン、抗CTLA−4、抗CD25またはシクロホスファミド)と組み合わされ、癌治療における増加した治療の効能を達成し得る。
【0073】
本開示の組成物はまた、処置される状態に依存して、公知の同時阻害性化合物(例えば、抗LF3A);ならびに、それ自体公知である他の活性成分を、含み得るかまたは組み合わせて使用され得る。例えば、本開示の組成物は、免疫抑制剤(すなわち、移植拒絶を防ぐために)、免疫調節剤、抗生物質、自己抗原またはアレルゲン(例えば、国際公開第95/3234号または同第96/23882号に記載される)、腫瘍壊死因子(TNF)および抗ウイルス剤(例えば、抗HIV剤)およびCD4インヒビター(CD4指向性抗体(例えば、Leu−3A)を含む)との組み合わせで処方され得るかまたは使用され得、それによって相乗効果がまた得られ得る。
【0074】
本開示の組成物は、公知のキャリアおよび/またはアジュバントを使用して処方され得、それ自体公知の薬学的形態(例えば、錠剤、カプセル、粉末、凍結乾燥調製物、注射溶液など)を好ましくは単位投与形態において提供する。抗体のそのような薬学的処方物、それらの用途および投与(1回の投与形態または複数の投与形態)、ならびに、キャリア、賦形剤、アジュバントおよび/または処方剤は、概して当該分野において公知であり、そして例えば、国際公開第93/01820号、同第95/32734号、同第96/23882号、同第98/02456号、同第98/41633号および/または同第98/49306号(特許文献の各々の内容は、本明細書において参考として援用される)中に記載される。さらに、この処方物は、国際公開第93/01820号中に記載されるようなリポソームの形態であり得る。
【0075】
本開示の組成物はさらに、例えば、バイアル、ボトル、子袋(sachet)、ブリスターなどの中に;必要に応じて、関連する患者の情報を載せたチラシおよび/または使用のための指示書とともに、パッケージ化され得る。
【0076】
上の方法の全てにおいて、使用される化合物/組成物は、治療有効量で投与され、この用語については、国際公開第93/01820号、同第95/32734号および/または同第96/23882号(これらの特許文献の内容は、本明細書において参考として援用される)を一般的に参照のこと。投与は1回の投与であり得るが、好ましくは、1日以上、1週間以上、1ヶ月以上にわたって実行される複数の用量投与レジメンの一部である。
【0077】
本開示に従うキットは、凍結された抗体または凍結乾燥された抗体を含み、それぞれ、解凍(必要に応じて、さらなる希釈が続く)によって、または(好ましくは緩衝化された)液体ビヒクル中での懸濁によって再構成される。このキットはまた、緩衝液および/または賦形剤溶液(液体形態または凍結形態で)、あるいは水で再構成される緩衝粉末調製物および/または賦形剤粉末調製物を、治療としての施術のために適切な処方物を生成するために上記抗体と混ぜる目的で含み得る。したがって、好ましくは、キット中に提供される所定の量の熱、水、または溶液の添加がインビボでの使用またはインビトロでの使用のために効果的であるように十分な濃度およびpHの処方物をもたらすような濃度において、この抗体を含むキットが、凍結され、凍結乾燥され、予め希釈され、または予め混ぜられる。好ましくは、そのようなキットはまた、治療法としての抗体組成物を再構成しそして使用するための説明書を含む。このキットはまた、再構成された活性組成物のための2つ以上の構成要素を含む。例えば、第一の構成要素は抗体を含み得、そして第二の構成要素は二官能性のキレートまたは治療剤(例えば、放射性核種)を含み得、抗体と混ぜ合わされる場合、それとともに、共役系を形成する。上に述べられた緩衝液、賦形剤、および他の構成要素は、別個にまたはそのキットとともに販売され得る。
【0078】
さらに、本開示はDC−SIGNに対する抗体に関して本明細書において記載されるが、他の、概して類似のC型レクチン(DC−SIGNの天然の改変体を含む)もまた樹状細胞上に存在得、そして/または樹状細胞−T細胞相互作用に関与し得ることを排除しない。そのような改変体は、DC−SIGNと通常高程度のアミノ酸相同性(80%超える〜90%を超える)を有し、そして/またはDC−SIGNと機能的に同等である。したがって、いくつかの場合において、本開示の抗DC−SIGN抗体はまた、そのような改変体と結合し、それによってDC−SIGNに関して上に記載されたようにDC−T細胞相互作用を変更し得る。
【0079】
以下の非限定的な実施例は、本開示を説明するために提供される。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
(ライブラリの構築)
マウスを、500U/ml IL−4および800U/ml GM−CSFで6日間一次の血液のリンパ球を成熟させることによって得られた未成熟な樹状細胞で免疫した。3回の免疫後、その脾臓を採取しそしてTRI試薬(Molecular Research Center)中でホモジナイズした。全RNAを製造者の説明書に従って単離した。メッセンジャーRNAを、Oligotex(Qiagen Inc.、Valencia、CA)を使用して精製した。第一鎖cDNAを、製造者のプロトコルに従いRT−PCRのためのSUPERSCRIPT First−Strand Synthesis System(Invitrogen Life Technologies)を使用して合成した。第一鎖cDNAを、別々のチューブにおいてオリゴヌクレオチド(IgG1についてmCGlXcm I、IgG2aについてmCG2asBsaJ Iおよびκ軽鎖についてmCKHpa I)と混ぜ、そしてXcm I(IgG1について)、BsaJ I(IgG2aについて)およびHpa I(κ軽鎖について)で消化した。これらのオリゴヌクレオチドの配列を、以下に示す:
【0081】
【化1】

第一鎖cDNAの質および完全な消化を、消化部位に対して外部と内部との両方にアニーリングしたプライマーを使用してPCRで確認した。
【0082】
第二鎖cDNA合成を、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子のフレームワーク1領域、制限酵素部位、およびハイブリダイズしていない所定の配列にハイブリダイズした部分を有するプライマーを使用して実行した。第二鎖合成を、94℃を5秒間、56℃を10秒間、そして68℃を2分間からなる20サイクルについて繰り返した。
【0083】
このサイクルの最後に、伸長反応のためのオリゴヌクレオチド(TMX24mCGInoer、TMX24mCG2anoer、およびTMX24mCKnoer)を氷上で添加し、そして合成cDNAをさらにこれらのオリゴヌクレオチドを94℃1分間そして68℃にて2分間インキュベートすることによってこれらのオリゴヌクレオチドに沿って伸長した。伸長反応のために使用したオリゴヌクレオチドは、抗体遺伝子の定常領域、制限酵素部位、およびハイブリダイズしていない所定の配列にハイブリダイズした部分を有した。このオリゴヌクレオチドのまさに3’末端におけるヌクレオチドは、ハイブリダイズしておらず、そして3つの3’末端のヌクレオチドをホスホルチオエート(phosphorthioate)および3’末端の2’OMeリンクしたプロピル基で改変し、これは、合成された第二鎖cDNAに沿った伸長を防ぎ、そしてエキソヌクレアーゼ活性およびエンドヌクレアーゼ活性に対して防御した。これらのオリゴヌクレオチドの配列を以下に示す:
【0084】
【化2】

伸長反応が完了した後、次いで、この反応物を4℃に冷却し、そしてPCR精製キット(Qiagen Inc.、Valencia、CA)によって清浄した。
【0085】
次いで、一回のプライマー増幅を、プライマー(TMX24mHおよびTMX24mK)を使用して実行し、このプライマーは、第二鎖cDNA合成用のプライマーのために使用した、同じ所定の配列を有し、そして伸長反応のためのオリゴヌクレオチドを有した。1回の増幅のためのプライマーの配列を、それらが公知のマウス遺伝子と有意な相同性を有さないように選択し、その配列は以下のとおりである:
【0086】
【化3】

増幅生成物を、PCR精製キットで精製し、そしてXho I Bln I(IgG1およびIgG2a)およびXba I/BspE I(κ軽鎖)で消化し、そしてPAX313m/hGベクター中にクローニングした。
【0087】
(実施例2)
(パニング)
IgG 1ライブラリおよびIgG2aライブラリを、組換えヒトDC−SIGN−Fc上で分けた。ファージ(1012)を、抗ヒトFc抗体によって捕捉された1μg/ml DC−SIGNでコーティングされた96ウェルプレートの2つのウェル中でインキュベートした。37℃のインキュベーションの2時間後、このウェルをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で、1周目のパニングについては3回、2周目のパニングについては5回、そして3周目のパニングについては10回洗浄し、洗浄の間に5分間の間隔を有した。結合したファージを、pH 2.2にて1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.1M HCLで溶出した。赤血球ロゼット(ER)細胞を、溶出液で感染させ、そしてイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)およびヘルパーファージの添加の前に2時間カルビシリンおよびテトラサイクリンの存在下で培養した。2時間後、カナマイシンを添加し、そしてこの細胞を一晩成長させた。次の日、培養物を遠心分離し、そしてファージをポリエチレングリコール/塩化ナトリウム(PEG/NaCI)を使用して上清から沈降させた。
【0088】
(実施例3)
(固相ELISA)
ELISAプレートを、一晩室温にて2μg/mlの抗ヒトFcでPBS中でコーティングした。0.05% Tweenを含むPBSによる洗浄の3周目後に、このプレートを、1% BSAを含むPBSでブロックした。37℃にて1時間後、プレートを3回洗浄し、そして2時間500ng/ml組み換え型ヒトDC−SIGN−Fcタンパク質でインキュベートした。一晩1μg/mlカルビシリンを含むSB中で成長させたクローンからの培養上清を、2時間添加した。3回の洗浄後、結合した抗体を、アルカリホスファターゼ共役抗マウスFab’2抗体を用いて検出し、その後SigmaS基質を添加した。発色を、プレートリーダー(Molecular Devices)を使用してOD 405にて検出した。
【0089】
IgG2aライブラリについて、47/291のクローンが、BSAを超えるDC−SIGNへのシグナルの4〜13倍の増加を示した。IgG 1ライブラリは、スクリーニングし選別されたものから22/240のクローンを産生し、そのうち3つがDC−SIGNに対する強いシグナルを表し、これはBSAシグナルよりも23倍強かった。各ライブラリの96ウェルプレートについての代表的な例を、図1に示す。
【0090】
DC−SIGNに対するシグナルを示しているクローンを、DC−SIGNR(L−SIGN)(非常に関連しているタンパク質)とのそれらの反応性について調査した。DC−SIGNDの代わりにL−SIGNをプレート上にコーティングしたことを除いて、DC−SIGN ELISAに類似するELISAを実行した。図2に示されるように、IgG1ライブラリ由来のクローンは、DC−SIGNに対して高度に特異的であった。概して、IgG2aライブラリ由来のクローンはより弱いシグナルを示し、そしていくつかのクローンはL−SIGNと交差反応した。
【0091】
(実施例4)
(FACS分析)
組換えDC−SIGNと反応するクローンもまた細胞表面のDC−SIGNを認識したことを立証するために、未成熟な樹状細胞を目的のクローンの培養上清でインキュベートし、そして20分間氷上でFACS緩衝液(1%BSAおよび0.1%NaNを含むPBS)を用いて1:1に希釈した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、そして抗体が結合する細胞表面をPE結合体化抗マウスIgG抗体で検出した。サンプルを、FACS Calibur(Becton Dickinson)を使用して分析した。いくつかの代表的なサンプルについての結果を、図3に示す。図3に見られるように、全てのサンプルが未成熟な樹状細胞上のタンパク質を認識した。
【0092】
(実施例5)
(配列)
固相ELISAにおいて正のシグナルを生じる各ライブラリからの16のクローン由来のDNAを、単離しそしてRetrogen,Inc.(San Diego、CA)へ配列決定のために提出した。得られた配列を、図4a〜4cに示す。独特の配列のみを示す。図4aに示すように、ヒトDC−SIGNに結合する特に有用な軽鎖CDR3領域は、以下の配列の1つを有する:QHFWNTPWT(配列番号45);またはQQGHTLPYT(配列番号46)。図4bに示すように、ヒトDC−SIGNに結合する特に有用な重鎖CDR3領域は、以下の配列の1つを有する:SNDGYYS(配列番号47);RYYLGVD(配列番号48);またはDDSGRFP(配列番号49)。
【0093】
図4cに示すように、ヒトDC−SIGNに結合する抗体の重鎖CDR3領域もまた、以下のアミノ酸配列の1つを有し得る:YGYAVDY(配列番号50);YYGIYVDY(配列番号51);FLVY(配列番号52);NFGILGY(配列番号53);YPNALDY(配列番号54);またはGLKSFYAMDH(配列番号55)。図4cにもまた示されるように、ヒトDC−SIGNに結合する抗体の軽鎖CDR3領域もまた、以下のアミノ酸配列の1つを有し得る:QQGKTLPWT(配列番号56);QQGNTLPPT(配列番号57);QQHYITPLT(配列番号58);QQYGNLPYT(配列番号59);QQYYSTPRT(配列番号60);GQSYNYPPT(配列番号61);またはWQDTHFPHV(配列番号62)。
【0094】
(実施例6)
(競合ELISA)
DC−SIGNと反応するクローンがAZN−D1(国際公開第00/63251号に記載される公知の抗DC−SIGN抗体)と異なるエピトープを認識するか否かを決定するために、競合ELISAを実行した。プレートを、上に記載されたように組換えヒトDC−SIGNでコーティングした。1μg/ml AZN−D1の存在下で、培養上清を種々の濃度にて添加した。AZN−D1の結合を、アルカリホスファターゼ結合体化抗マウスFc抗体を使用し、その後SigmaS基質によって検出した。発色を、プレートリーダー(Molecular Devices)を使用してOD 405にて検出した。シグナルの損失は、FabおよびAZN−D1が同じエピトープについて競合することを示した。図5に示すように、IgG1ライブライクローンについて、クローン1G4、クローン2H7およびクローン2B8と弱い競合が存在するのみであった(2H7および2B8は、同一の配列を有することが判明した)。IgG2aライブラリクローンについて、クローン2、クローン4、クローン5、クローン6、クローン7、クローン8、クローン9、クローン11、クローン12、クローン13、クローン14およびクローン15は競合せず、これらはAZN−D1と非常に異なるエピトープを認識したことを示した。ある程度の競合を示しているクローンについて、認識されたエピトープは、まだやや異なり得るが、上記抗体によって遮断されるほどAZN−D1のエピトープに十分類似していた。
【0095】
(実施例7)
(ICAM−3/DC−SIGNビーズアッセイ)
抗体がDC−SIGNとのICAM−3の相互作用を遮断するか否かを決定するために、選択したクローンを使用して、蛍光ビーズアッセイを実行した。カルボキシレート改変TransFluorSpheres(488/645nm、1.0μm;Molecular Probes,Inc.、Eugene OR製)を、ストレプトアビジンでコーティングしたビーズをビオチン化したヤギ抗ヒト抗Fc F(ab)で2時間37℃にてPBS、0.5% BSA中でインキュベートすることによって、ICAM−1 FcおよびICAM−3 Fcタンパク質(R & D Systems,Minneapolis,MNから得た)でコーティングした。このビーズを洗浄し、そしてICAM−3 Fc融合タンパク質(250ng/mL)で一晩4℃にてインキュベートした。ICAMでコーティングしたビーズへの接着のために、DC−SIGNトランスフェクトされたK562細胞(5×10/ml)を、Tris−ナトリウム−BSA緩衝液(20mM Tris−HCl、pH 8.0、150mM NaCl、1mM CaCl、2mM MgCl、0.5% BSA)中に再懸濁した。5万の細胞を、DC−SIGN−SIGN Fab(20μg/mL)を伴ってかまたは伴わずに、10分間室温でV型底の96−ウェルプレート中で予めインキュベートした。このICAMでコーティングしたビーズ(20ビーズ/細胞)を添加し、そしてこの懸濁液を30分間37℃にてインキュベートした。洗浄後、細胞を、Tris−ナトリウム−BSA緩衝液中に再懸濁した。DC−SIGNでトランスフェクトされたK562細胞のICAM媒介性接着を、FL−3のフローサイトメトリーによって測定した。図6に示されるように、クローン2H1、クローン2B8およびクローン3E1は、AZND1と匹敵する、DC−SIGNへのICAM結合の強い阻害を示した。
【0096】
(実施例8)
(ウイルス結合を遮断し得る抗DC−SIGN抗体の選択)
ウイルスの進入を遮断し得る抗DC−SIGN抗体の選択を、Geijtenbeekら、(1999)、「High frequency of adhesion defects in B−lineage acute lymphoblastic leukemia」Blood 94:754によって記載されるように蛍光ビーズアッセイによって達成する。簡潔にいうと、5万のK562/DC−SIGNでトランスフェクトされた細胞を、抗DC−SIGN Fab(20μg/mL)を伴ってかまたは伴わずに10分間室温にてV型底の96−ウェルプレート中で予めインキュベートする。ウイルスエンベロープタンパク質(例えば、HCV E1/E2またはHIV gp120)でコーティングした蛍光ビーズ(20ビーズ/細胞)を添加し、そしてその懸濁液をさらに30分間37℃にてインキュベートする。洗浄後、この細胞を、Tris−ナトリウム−BSA緩衝液中で再懸濁する。ウイルスでコーティングされたビーズの、K562/DC−SIGN細胞に対する抗DC−SIGN抗体によって遮断される程度を、FACSCalibur(Becton Dickinson)を使用して測定する。抗DC−SIGN抗体の非存在下でウイルスビーズ(ネガティブコントロール)に結合した細胞の割合を100に設定し、そして抗DC−SIGN抗体の存在下での結合の減少を%遮断として表す。
【0097】
(実施例9)
(ウイルスの進入の遮断)
上の実施例8における抗DC−SIGN抗体の選択後、ウイルスの進入を遮断するこれら抗DC−SIGN抗体の容量を試験する。DC−SIGNトランスフェクトされたK−562細胞を、目的のエンベロープタンパク質を発現するレポーターウイルスの添加前にまたはウイルス+ドナーもしくはウイルス−ドナー由来の適当な血清を添加する場合に、抗DC−SIGN抗体で30分間予めインキュベートする。37℃におけるインキュベーションの1時間後、細胞をPBSで5回洗浄し、そしてウイルスRNAをQiagenのウイルスRNAミニスピンキット(Qiagen Inc.、Valencia、CA)を使用して、細胞から抽出する。したがって、得られたウイルスRNAを、Gardnerら(Gardnerら、(2003)「L−SIGN(CD 209L)is a liver−specific capture receptor for hepatitis C virus」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100巻、4498頁)の手順に従ってRT−PCRによって増幅し、そしてサザンブロットを実行する。
【0098】
(実施例10)
(ウイルス伝播の予防)
実施例8で同定された抗DC−SIGN抗体がレセプター陽性内皮細胞からヒトT細胞またはヒト肝臓細胞のいずれかへのウイルスの転移を防ぎ得るか否かを試験するために、K562/DC−SIGN細胞または新たに単離されたヒト肝臓洞様毛細血管内皮細胞(DC−SIGN+)または樹状細胞(DC−SIGN+)を、実施例8の抗DC−SIGN抗体で30分間インキュベートし、その後、ルシフェラーゼあるいは目的のエンベロープタンパク質(例えば、HCV−E2、HIV gp120、エボラ(Alvarezら(2002)「C−type lectins DC−SIGN and L−SIGN
mediate cellular entry by Ebola virus in cis and in trans」、J Virol 76:6841)またはシンドビス(Klimstraら(2003)「DC−SIGN and L−SIGN can act as attachment receptors for alphaviruses and distinguish between mosquito cell−and mammalian cell−derived viruses」、J Virol 77:12022)を発現する緑色蛍光タンパク質レポーターウイルスを添加する。培養媒体で洗浄後、細胞をT細胞(C8166)またはヒト肝臓細胞(Huh−7)で同時培養する。レポーターウイルス伝播を、標的細胞溶解物におけるルシフェラーゼ活性(相対的に小さい単位)を測定することによってか、または標的細胞(例えば、T細胞上のCD3)上で適切な表面マーカーの2倍の染色と組み合わせたGFP陽性標的細胞のフローサイトメトリー分析によってかのいずれかで評価する。
【0099】
(実施例11)
(Mycobacterium tuberculosisの感染の遮断における抗DC−SIGN抗体の役割の評価)
マンノシル化されたリポアラビノマンナン(ManLAM)(M.tuberculosisの表面に存在する炭水化物が豊富な構造)が、DC−SIGNと相互作用するように報告されている(Geijtenbeekら、(2003)「Mycobacteria target DC−SIGN to suppress dendritic cell function」、J Exp Med 197:7)。ManLAMに対する高い抗体力価を、ヒト型結核菌を有する人々中に観察し、そして受動的防御実験において細菌量を減少することを示した(Hamasurら、(2004)「A mycobacterial lipoarabinomannan specific monoclonal antibody and its F(ab’)fragment prolong survival of mice infected with Mycobacterium tuberculosis」、Clin Exp Immunol 138:30)。ミコバクテリアの結合と感染とを、高い親和性でManLAMに結合し得る抗DC−SIGN抗体を使用して阻害する。細菌(例えば、M.bovisおよびM.tuberculosis)の系統を、Geijtenbeekら(2003)(前出)に詳述されるようにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識する。K562/DC−SIGN細胞を、抗DC−SIGN抗体(50μg/ml)の存在下または非存在下で、FITC結合体化細菌と1:20の比でインキュベートする。抗DC−SIGN抗体による遮断(蛍光の減少)の程度を、フローサイトメトリー分析によって決定する。
【0100】
(実施例12)
(HIV感染した肝臓を有する移植患者の処置)
ウイルス伝播を予防する場合、DC−SIGNに対する抗体をドナーが潜在的にHCV感染を有する移植の設定において使用し得る。これを試験するために、緩やかなHCV−感染ヒトドナーの肝臓を、健康なHLAが適合するヒトドナー由来の一次血液リンパ球の注射とともに、免疫欠損マウス(例えば、NOD/SCID)中に移植する。マウスを、1〜6ヶ月の期間にわたって抗体で処置する。移植の1〜6ヵ月後、このマウスを安楽死させ、そして肝臓中のHCV感染の程度を評価する。また、T細胞をPCRによってウイルスによる感染について調査する。
【0101】
(実施例13)
(DC−SIGNを発現する癌型の同定)
悪性組織およびマッチングする正常組織を収集し、そしてパラホルムアルデヒド中で固定するか、またはOCTで素早く凍結する。切片をマイクロトームを使用して調製し、そしてこの切片を、DC−SIGN抗体を直接的に使用するか、または適切な蛍光色素(例えば、FITC)に結合体化した抗DC−SIGN抗体を使用することによってか、あるいは二次蛍光色素を結合体化した抗マウスIgGを使用するかのいずれかで、DC−SIGNの存在について染色する。正常組織の染色よりも有意に強い悪性組織についての染色結果は、DC−SIGNを発現する癌型の指標である。
【0102】
次いで、これらのDC−SIGNを発現する癌型について市販されている細胞株を得、DC−SIGNの存在をFACS分析により評価した。簡単に述べると、1,000,000個の細胞を、1% BSAおよび0.1% NaNを含有するPBS中で1μgの抗DC−SIGN抗体と共にインキュベートする。30分間のインキュベーション後、この細胞を洗浄し、そしてFACSCalibur(Becton Dickinson)で分析する前に、蛍光色素を結合体化した抗マウスIgGと共に、さらに30分間インキュベートする。
【0103】
(実施例14)
(抗DC−SIGN抗体の治療用途)
(直接的な細胞の死滅)
上記の実施例13のように一旦DC−SIGN発現腫瘍型を同定し、抗DC−SIGN抗体を、それらのADCCまたはCDCを誘導する能力についてインビトロで試験する。ADCCを評価するために、標的細胞(腫瘍細胞)を、まず51Crで標識する。次いで、抗DC−SIGN抗体を1〜50μgの間の濃度で添加し、そしてPBMCによる標的細胞の溶解を1:10〜1:100のエフェクター対標的の比で4時間後に決定する。CDCを評価するために、腫瘍細胞を、ヒト補体および抗DC−SIGN抗体と共にインキュベートする。細胞の死滅を、死細胞にのみ入り得、生細胞には入り得ない試薬であるヨウ化プロピジウムの添加後にFACS分析により評価する。ADCCもCDCも誘導しない抗体については、任意の放射線標識または毒性試薬が、抗体に結合体化したままである。
【0104】
裸の抗DC−SIGN抗体または結合体化した抗DC−SIGN抗体のいずれかの、腫瘍成長停止能を、異種移植モデルにおいて評価する。簡単に述べると、DC−SIGNを発現する腫瘍細胞を、皮下注入、腹腔内注入または静脈内注入する。動物をコントロールまたは抗DC−SIGN抗体のいずれかで処置する。腫瘍成長を、皮下処置については大きさによって測定し、腹腔内処置または静脈内処置については生存時間によって測定する。抗DC−SIGN抗体処置群における腫瘍成長がコントロール群に比べて30%より多く減少した場合、この抗DC−SIGN抗体は癌治療として利用され得る。
【0105】
(免疫系と癌細胞との負の調節的相互作用の遮断)
免疫細胞とDC−SIGNの相互作用を遮断する抗体を、実施例8に記載されるように蛍光ビーズアッセイを使用して同定する。抗DC−SIGN抗体を、DC−SIGN発現癌細胞を介する免疫系の負の制御を妨げることによって、免疫系が癌細胞を根絶可能であることに関して、それらの治療有用性について評価する。
【0106】
DC−SIGN発現腫瘍細胞を、NOD/SCIDのような免疫欠損マウス内に、皮下移植、腹腔内移植または静脈内移植する。マウスに、健康なドナー由来の2,000,000個のPBMC(またはそれ自身が腫瘍を拒絶するには足りない、任意の数のPBMC)もまた、受容させる。抗DC−SIGN抗体の存在下または非存在下での腫瘍成長を、コントロール抗体と比較する。腫瘍成長を、皮下処置については大きさによって測定し、全身性の腫瘍については生存時間によって測定する。抗DC−SIGN抗体処置群における腫瘍成長がコントロール群に比べて30%より多く減少した場合、この抗体は癌治療として利用され得る。
【0107】
本明細書中に開示される実施形態に対し、種々の改変がなされ得ることが理解される。例えば、当業者は、本明細書中に開示される特定の配列が、その抗体または抗体フラグメントの機能性に必ずしも有害に影響すること無く、わずかに変更され得ることを理解する。例えば、抗体配列中の一つまたは複数のアミノ酸の置換は、その抗体またはフラグメントの機能性を破壊することなく頻繁になされ得る。したがって、本明細書中に記載される特定の抗体に対して70%より高い相同性の程度を有する抗体は、本開示の範囲内であることが理解されるべきである。特に有用な実施形態において、本明細書中に記載される特定の抗体に対して約80%より高い相同性を有する抗体が企図される。他の有用な実施形態において、本明細書中に記載される特定の抗体に対して約90%より高い相同性を有する抗体が企図される。ゆえに、上の説明は、制限するものと解釈するべきではないが、単に好ましい実施形態の例示として解釈するべきである。当業者は、本開示の範囲および精神の範囲内の他の改変を予想する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12415(P2012−12415A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222250(P2011−222250)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2006−545789(P2006−545789)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】