説明

新規の正孔伝導材料を含むOLED

本発明は、スピロビキサンテン-ユニットを有する新規の正孔伝導材料を含む有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネセント素子の分野を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機金属配位化合物を含有する発光層を有する有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネセント素子の分野を対象とし、適合したリガンドが高い三重項エネルギーを有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
有機エレクトロルミネセント(EL)デバイスは、20年以上前から知られているが、その性能は一般的に様々な弊害により制限される。最も単純な形態では、有機ELデバイスは、正孔注入用のアノード、電子注入用のカソード、及びこれらの電極の間に挟まれて発光を生じる電荷再結合を支持する有機媒体から構成される。これらのデバイスは、一般的に有機発光ダイオード(OLED)と表される。今日、最も効率の良いエミッタは、放射遷移が三重項状態から基底状態となる、リン光エミッタである。通常、イリジウム又はプラチナ錯体がOLEDの技術分野では使用されている。一般的に、5質量%から15質量%のリン光エミッタを材料にドープする。リン光エミッタを使用する際は、マトリクス材料の三重項レベルに関して厳しい要求がなされる。
【0003】
マトリクスの三重項レベルがエミッタの三重項レベルよりも低い場合に、エネルギーはエミッタからマトリクスに移動し、発光を消滅させる。マトリクスの三重項レベルがエミッタの三重項レベルよりも高い場合のみエネルギー移動が防止されて、結果として得られるOLEDは高い量子効率を表す。量子効率は、OLEDに注入された電荷キャリア対と抽出される光量子との比である。
赤色、黄色及び黄-緑色エミッタに関して、この要求を適合させることは難しい。なぜなら、ほとんどのマトリクス材料の三重項レベルは、520〜550nmの発光波長に対応するからである。520nm、特に470nmよりも短い波長を有するエミッタに限ると、適したマトリクス材料はほんのわずかにしか存在しない。
リン光性金属錯体の多くは電子をよく伝導するので、正孔伝導マトリクス材料が使用される。結果として、高い三重項レベルを有する正孔伝導材料には、常に需要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
従って、本発明の目的は、高い三重項レベルを有する新規の正孔伝導材料を含むOLEDを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、構造Iを有する正孔伝導材料を含むOLEDによって解決される:
【化1】

I
(式中、R1、R2、R3、及び、R4は、独立して部分II及びIIIを含む群から選択され、
【0006】
【化2】

II
【0007】
【化3】

III
RI、RIIは夫々、独立して水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲンアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールを含む群から選択される)。
【0008】
これらの材料は、驚くことに、後述するような高い三重項レベルを有する。本分野では、このような三重項レベルを有するマトリクス材料が、発光波長460nm以下の青色リン光エミッタのために使用されうることはよく知られている。
【0009】
一般的な基(Generic group)の定義:
本明細書及び請求項の全体において、一般的な基では、例えばアルキル、アルコキシ、アリールが使用される。特に断らない限り、以下は、本明細書で開示される化合物の中で見られる一般的な基に適用できる好ましい基である。
アルキル:直鎖及び分岐鎖C1-C8-アルキル
シクロアルキル:C3-C8-シクロアルキル
アルコキシ:C1-C6-アルコキシ
アリール:分子量300以下のホモ芳香族化合物から選択される
ヘテロアリール:ピリジニル;ピリミジニル;ピラジニル;トリアゾリル;ピリダジニル;1,3,5-トリアジニル;キノリニル;イソキノリニル;キノキサリニル;イミダゾリル;ピラゾリル;ベンゾイミダゾリル;チアゾリル;オキサゾリジニル;ピロリル;カルバゾリル;インドリル;及びイソインドリルからなる群から選択される(ここで、ヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中のいずれかの原子を介して化合物と結合されても良い)。
ヘテロシクロアルキル:ピロリニル;ピロリジニル;モルホリニル;ピペリジニル;ピペラジニル;ヘキサメチレン イミン;1,4-ピペラジニル;テトラヒドロチオフェニル;テトラヒドロフラニル;1,4,7- トリアザシクロノナニル;1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカニル;1,4,7,10,13- ペンタアザシクロペンタデカニル;1,4-ジアザ-7-チアシクロノナニル;1,4-ジアザ-7-オキサ- シクロノナニル;1,4,7,10-テトラアザシクロドデカニル;1,4-ジオキサニル;1,4,7- トリチアシクロノナニル;テトラヒドロピラニル;及びオキサゾリジニルからなる群から選択される(ここで、ヘテロシクロアルキルは、選択されたヘテロシクロアルキルの環中のいずれかの原子を介して化合物と結合されても良い)。
ハロゲンアルキル:モノ、ジ、トリ、ポリ、及び、ペルハロゲン化(perhalogenated)直鎖及び分岐鎖Cl-C8-アルキルからなる群から選択される。
【0010】
特に断らない限り、以下の群は、本明細書で開示された化合物中で見られる基に適用できる好ましい基の限定である:
アルキル:直鎖及び分岐鎖C1-C6-アルキル
シクロアルキル:C6-C8-シクロアルキル
アルコキシ:Cl-C4-アルコキシ
アリール:フェニル;ビフェニル;ナフタレニル;アントラセニル;及びフェナントレニルからなる群から選択される
ヘテロアリール:ピリジニル;ピリミジニル;キノリニル;ピラゾリル;トリアゾリル;イソキノリニル;イミダゾリル;及びオキサゾリジニルからなる群から選択される(ここで、ヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中のいずれかの原子を介して化合物と結合されても良い)
ヘテロアリーレン:ピリジン 2,3-ジイル;ピリジン-2,4-ジイル;ピリジン-2,6-ジイル;ピリジン-3,5-ジイル;キノリン-2,3-ジイル;キノリン-2,4-ジイル;イソキノリン-1,3-ジイル;イソキノリン-1,4-ジイル;ピラゾール-3,5-ジイル;及びイミダゾール-2,4-ジイルからなる群から選択される。
【0011】
本発明の好ましい態様に従うと、R1、R2、R3、及び、R4の少なくとも1つが、酸素に対してパラ位置に存在する。これにより、本発明の範囲内での広範なアプリケーションのための材料の有益な特性を更に向上させることが証明されている。
本発明の好ましい態様に従うと、R1とR2とは等しい、且つ/若しくは、R3とR4とは等しいが、より好ましくは、R1とR2とR3とR4とは等しい。これにより、本発明の範囲内での広範なアプリケーションのための材料の有益な特性を更に向上させることが証明されている。
本発明の好ましい態様に従うと、RI、RIIの少なくとも1つが、窒素に対してパラ位置に存在する。これにより、本発明の範囲内での広範なアプリケーションのための材料の有益な特性を更に向上させることが証明されている。
本発明の好ましい態様に従うと、RI、RIIが、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及び、tert-ブチルを含む群から選択される。これにより、本発明の範囲内での広範なアプリケーションのための材料の有益な特性、特に様々な溶媒中での材料の溶解性に関して、更に向上させることが証明されている。
本発明の好ましい態様に従うと、本発明の化合物Iは、OLEDの一部からOLEDのほかの一部への三重項励起子拡散を防止するために使用される。
【0012】
本発明の化合物は、例えば、
- 求電子的及び/又はラジカルハロゲン化、及び、
- パラジウム-触媒を使用するハートウィッグ-ブッフバルト(Hartwig-Buchwald)アミノ化、及び/又は、銅を使用するウルマン(Ullman)-反応型アミノ化によって、スピロビキサンテン(Spirobixanthen)から製造することができる(他の参照文献の中でもR. G. Clarkson, M. Gomberg, J. Am. Chem. Soc. 1930, 52, 2887 (2881-2891)に従い可能である)。
本発明に従った好ましい照明ユニットは、上述したようなOLEDデバイスを含み、家庭用アプリケーション、ショップ用照明、家庭用照明、アクセント照明、スポット照明、映画館用照明、ファイバーオプティックスアプリケーション、投射システム、自己照明ディスプレイ(self-lit display)、医療用照明アプリケーション、画素化ディスプレイ(pixelated display)、セグメント化ディスプレイ(segmented display)、警告表示、インジケーター表示、装飾照明などで使用されうる。
【0013】
上述した成分、並びに、請求された成分、及び、記載された態様中での本発明に従って使用される成分は、大きさ、形状、材料の選択、及び、技術的コンセプトに関して、特に例外なく、関連する分野で知られた選択基準が制限なく適用されうる。
本発明の対象の更なる詳細、特性、特徴、及び有利な点は、従属項、図面、及び、夫々の図面と実施例に関する以下の記載(例示的な方法で本発明に従ったOLEDの様々な好ましい態様を表す)で示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
態様の詳細な説明
実施例I
実施例Iは、以下の構造を有する2,2',7,7'-テトラ(3,6-ジ-メチル-カルバゾール-9-イル)-9,9'-スピロビキサンテンについて言及する:
【0015】
【化4】

【0016】
これは、2,2',7,7'-テトラヨード(Tetrajod)-9,9'-スピロビキサンテン(求電子的ヨウ素化によりスピロビキサンテンから得られる)及び3,6-ジ-メチル-9H-カルバゾールから、ハートウィッグ-ブッフバルトアミノ化(Hartwig-Buchwald-amination)によって製造可能であり、435 nmの三重項レベルを有する。
実施例IIは、以下の構造を有する2,2',7,7'-テトラ(3,6-ジ-tert-ブチル-カルバゾール-9-イル)-9,9´-スピロビキサンテンについて言及する:
【0017】
【化5】

これは、実施例Iと同様に製造可能であり(異なるカルバゾールを使用する)、436 nmの三重項レベルを有する。
【0018】
記載された本発明の材料は、発光層中のマトリクス材料として(通常、これらの層は、リン光エミッタでドープされる)、又は、三重項励起子ブロッキング層として、2つの方法で使用されうる。OLEDの一般的な構造は以下のとおりである:

・アノード−ITO 120 nm/ 正孔注入層 10nm/ 正孔輸送層 30 nm/ エミッタ層 30 nm/ 正孔ブロッキング層 10 nm/ 電子移動層 40 nm/ 電子注入層 1 nm/ カソード−Al 100 nm
(ここで、高い三重項レベルを有する材料は、以下の2層で使用される:
・発光層(1質量%〜50質量%、好ましくは5質量%〜20質量%、更に好ましくは5質量%〜15質量%のリン光エミッタでドープされる)
・正孔移動層(放射ゾーンの外への三重項励起子の拡散を防止する))
【0019】
上記詳細な態様における要素及び特徴の具体的な組合せは、単なる例示である。これらの教示と、本明細書及び参照により組み込まれた特許文献/出願文献中の他の教示との相互交換及び置き換えも明らかに考慮される。本分野の当業者は、請求された発明の精神及び範囲とから逸脱することがない限り、本分野の通常の当業者が、本明細書に記載されたことを変更し、修飾し、及び、他の手段を用いうることを理解する。従って、上の記載は例示のみを目的とし、制限するものとして解釈されない。発明の範囲は、請求の範囲とその均等物で定義される。更に、明細書及び請求項で使用された引用符号は、請求される発明の範囲を制限しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Iを含む少なくとも1層を含むOLEDであって、
【化1】

I
(式中、R1、R2、R3、及び、R4は、独立して部分II及びIIIを含む群から選択され、
【化2】

II
【化3】

III
RI、RIIは夫々、独立して水素、アルキル、ハロゲンアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールを含む群から選択される)
リン光性発光材料が1%〜50%の質量濃度でこの層にドープされる、OLED。
【請求項2】
式中、R1、R2、R3、及び、R4の少なくとも1つが、酸素に対してパラ位置に存在する、請求項1に記載のOLED。
【請求項3】
式中、R1とR2とが等しい、且つ/若しくは、R3とR4とが等しい、請求項1に記載のOLED。
【請求項4】
式中、R1とR2とR3とR4とが等しい、請求項1に記載のOLED。
【請求項5】
式中、RI、RIIの少なくとも1つが、窒素に対してパラ位置に存在する、請求項1に記載のOLED。
【請求項6】
式中、RI、RIIが、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及び、tert-ブチルを含む群から選択される、請求項1に記載のOLED。
【請求項7】
化合物Iが、OLEDの一部からOLEDのほかの一部への三重項励起子拡散を防止するために使用される、請求項1〜6のいずれかに記載のOLED。
【請求項8】
化合物Iが、発光層中でマトリクス材料として使用される、請求項1〜7のいずれかに記載のOLED。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のOLEDを含み、且つ、以下のアプリケーションの1種かそれ以上で使用される本発明に従った照明ユニット:家庭用アプリケーション、ショップ用照明、家庭用照明、アクセント照明、スポット照明、映画館用照明、ファイバーオプティックスアプリケーション、投射システム、自己照明ディスプレイ、医療用照明アプリケーション、画素化ディスプレイ、セグメント化ディスプレイ、警告表示、インジケーター表示、装飾照明。

【公表番号】特表2012−510152(P2012−510152A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536983(P2011−536983)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055132
【国際公開番号】WO2010/061315
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】