説明

新規アゾメチン樹脂及びそれを含む樹脂組成物

【課題】原料として一般的な(安価に入手可能な)原料を用いて、溶解性に優れ、且つ、剛直な構造を有する新規アゾメチン樹脂を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を有する新規アゾメチン樹脂。
【化1】


(式中、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基を示し、nは、1〜20の整数を示す。ここで、ベンゼン環への置換基はメタ配置を含む。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び機械的強度に優れた硬化物を得ることのできる新規アゾメチン樹脂及びそれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミンと芳香族ジアルデヒドを混合加熱して得られる芳香族アゾメチン樹脂は、硬く、耐熱性に優れることから、電子・電気機器用途の材料としてのみならず、宇宙分野や航空分野から電子通信分野まで幅広く応用が期待されている樹脂である。
特に、フェニレンジアミンとテレフタルアルデヒドとを組み合わせた芳香族アゾメチンは、共役2重結合が分子鎖に沿って繋がることから、極めて剛直な構造となる。また、ドープを行えば、導電性の発現も可能である。しかしこの種の芳香族アゾメチンは、その剛直さ故に、溶剤への溶解性が低く、キャストによるシート成形は困難とされていた。
この課題を解決するために、例えば、非特許文献1には、側鎖にフッ素を導入した置換基を有する芳香族アゾメチンの合成の試みがなされている。
【0003】
【非特許文献1】PNANAV KUMAR GUTCH, Journal of Polymer Scinece;PartA:Polymer Chemistry,Vol.39, 383-388 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素を導入した置換基を有する芳香族ジアミンや芳香族ジアルデヒドは、原料として一般的ではないため、実用化には問題を有している。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、原料として一般的な(安価に入手可能な)原料を用いて、溶解性に優れ、且つ、剛直な構造を有する新規アゾメチン樹脂を提供することである。
更には、その新規アゾメチン樹脂を含む、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れた新規アゾメチン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、原料として用いる芳香族ジアミン又は芳香族ジアルデヒドとして、メタ配置を有する化合物を用いることで、共役構造が繋がった剛直な分子構造である同時に、溶剤への溶解性に優れる新規アゾメチン樹脂が得られることを見出した。
更に、上記新規アゾメチン樹脂の末端が水酸基となるように合成を制御した上で、その水酸基と反応可能な化合物を添加剤として混合することで、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
下記式(1)で表される構造を有する新規アゾメチン樹脂。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基を示し、nは、1〜20の整数を示す。ここで、ベンゼン環への置換基はメタ配置を含む。)
[2]
上記[1]記載の新規アゾメチン樹脂と、
水酸基と反応可能な化合物と、
を含む新規アゾメチン樹脂組成物。
[3]
前記水酸基と反応可能な化合物は、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物である、上記[2]記載の新規アゾメチン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、溶解性に優れ、且つ、剛直な構造を有する新規アゾメチン樹脂を提供することができる。
更には、その新規アゾメチン樹脂を含む、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れた新規アゾメチン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態とも言う)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は下記式(1)で表される構造を有する。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基を示し、nは、1〜20の整数を示す。ここで、ベンゼン環への置換基はメタ配置を含む。)
【0014】
ここで、R1〜R4で示される炭素数5以下のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n―ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基等が挙げられる。
【0015】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は、2重結合と1重結合が交互に続くいわゆる共役構造を有し、剛直な分子構造であるにも関わらず、溶剤への溶解性が高い。溶解性が高い理由としては、構成成分にメタ配置を有する芳香族を用いて分子を強制的に湾曲させることにより、多くの自由体積を抱え込むことにあると考えられる。そして、このような分子構造を有する場合には、分子鎖間の会合が阻害されると推定される。
【0016】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は、いかなる方法で製造されてもよく、例えば、以下に示すスキームに従って製造することができる。
【0017】
【化3】

【0018】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は、上記スキームの通り、芳香族ジアミン、芳香族ジアルデヒド、及び分子末端に水酸基を導入するための芳香族アミン及び/又は芳香族アルデヒドを混合して、必要に応じて溶媒を加え、加熱攪拌することにより合成することができる。
【0019】
芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、分子に剛直構造を与える化合物の例として、1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミン)、2,4−ジアミノトルエン、P−フェニレンジアミン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。また、分子に剛直構造、且つ、湾曲構造を与える化合物の例として、上記ジアミンのうち、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエンが好適に用いられる。特に、2,4−ジアミノトルエンの場合には、ベンゼン環にメチル基が付いているため、溶剤への溶解性が更に向上する傾向にある。
【0020】
芳香族ジアルデヒドとしては、分子に剛直構造を与える化合物の例として、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。また、分子に剛直構造、且つ、湾曲構造を与える化合物の例として、上記ジアルデヒドのうち、イソフタルアルデヒドが好適に用いられる。
【0021】
分子末端に水酸基を導入するための芳香族アミンとしては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール等が好適に用いられる。
【0022】
分子末端に水酸基を導入するための芳香族アルデヒドとしては、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド等が好適に用いられる。
【0023】
ここで、分子末端に水酸基を導入するための芳香族アミン及び芳香族アルデヒドは、どちらかを単独で用いても、両方を同時に用いてもよい。
【0024】
本実施の形態においては、溶剤への溶解性を向上させるために、上述した芳香族ジアルデヒド又は芳香族ジアミンとして、分子に湾曲構造を与えるメタ配置を有する化合物を含む。
【0025】
分子に湾曲構造を与える目的で用いられるメタ配置を有する芳香族ジアミンとしては、例えば、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエンが好適に用いられ、メタ配置を有する芳香族ジアルデヒドとしては、例えば、イソフタルアルデヒドが好適に用いられる。
【0026】
芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計モル数に対する、上述したメタ配置を有する芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計モル比率については、特に制限はないが、好ましくは30〜80モル%の範囲である。
【0027】
メタ配置を有する芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計モル比率が30モル%未満であると、十分な溶解性が得られない可能性があり、80%を超えると、極端に分子量が落ちて機械的強度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0028】
メタ配置を有する芳香族ジアルデヒドと芳香族ジアミンの両者間の比率に関しては、特に制限はなく、例えば、片方だけを用いることができる。
【0029】
各成分の配合比率に関して、分子末端に水酸基を導入するための芳香族アミンとしてアミノフェノールを用いた場合について説明する。
芳香族ジアルデヒド1.0モル(基準)に対して、芳香族ジアミンを好ましくは0.5〜0.95モル、より好ましくは0.75〜0.90モルを反応させる。芳香族ジアミンの量が0.5モル未満であると分子量が小さくなるため機械的強度が著しく低下するおそれがあり、0.95モルを超えると分子末端に水酸基が含まれない可能性があり、機械的強度が低下するおそれがある。
【0030】
アミノフェノールの量は、好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.2〜0.5モルである。アミノフェノールの量が0.1モル未満であると、分子末端に水酸基が含まれない可能性があるため機械的強度が阻害するおそれがあり、1.0モルを超えると分子量が小さくなり過ぎて機械的強度が低下するおそれがある。
【0031】
反応に用いられる溶媒は、出発原料をある程度溶解するものであり、且つ、反応を阻害しないものであれば、特に制限されず、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、好ましくは溶解性の良好なジメチルホルムアミドである。
【0032】
反応温度、反応時間については、特に限定されず、通常、窒素下で50℃〜150℃程度の温度で、30分〜5時間反応させればよい。特に、溶媒にジメチルホルムアミドを用いる場合には、140℃で、約2時間反応させることが、反応中の副反応を防ぐ観点から好ましい。
【0033】
反応後の溶液を、例えば、多量の水、メタノール等の貧溶媒に加えることで化合物を析出させることができ、これを分離、乾燥すれば目的の新規アゾメチン樹脂を得ることができる。
【0034】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は、上述したメタ配置を有する化合物を用いて分子鎖を強制的に湾曲させるため、重合により高分子量を得ることは困難である。実際に重合される新規アゾメチン樹脂の分子量は5000(重量平均分子量)以下であり、強度的に十分とは言えない。
【0035】
そこで本実施の形態においては、水酸基を含む芳香族アミン又はアルデヒドを組み合わせて合成することにより分子末端に水酸基を有する芳香族アゾメチン樹脂を合成し、更にこれに、末端水酸基と反応可能な化合物を添加することで、新規アゾメチン樹脂と、水酸基と反応可能な化合物と、を含む新規アゾメチン樹脂組成物を製造する。
【0036】
本実施の形態においては、末端水酸基と反応可能な化合物として、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物を用いることが好ましい。
【0037】
新規アゾメチン樹脂組成物は、例えば、上記で得られた新規アゾメチン樹脂と、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物とを適当な溶媒の存在下に混合した後に、大きな面積をもつ容器に広げて、常温で溶媒をある程度蒸発させ、最後に真空又は加熱乾燥することで製造することができる。
【0038】
ベンゾオキサジン化合物としては、特に限定されないが、3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−1,3−ベンゾオキサジン、3,4−ジヒドロ−3−フェニル−2H−1,3−ベンゾオキサジン、6,6’−(1−メチルエチリデン)ビス(3,4−ジヒドロ−3−フェニル−2H−1,3−ベンゾオキサジン)等の熱硬化性樹脂として一般に用いられるベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0039】
エポキシ化合物としては、特に限定されないが、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
新規アゾメチン樹脂と、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物の混合割合としては、特に限定されないが、反応末端の当量を合わせることが好ましい。
【0041】
新規アゾメチン樹脂は、反応末端に水酸基を合計2つ有するので、反応基当量は2molとすると、反応させるベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物の反応基のモル当量は1〜3molであることが好ましい。ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物の反応基のモル当量が1mol未満であると、新規アゾメチン樹脂の末端水酸基で未反応のものが増えすぎ、分子量の増大が抑制され、結果的に強度向上の効果が小さくなる。また、3molを超えると、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物が単独で硬化する割合が増えるだけで、本発明の目的である剛直な芳香族アゾメチンを用いて、剛直な硬化物を得ると言う効果が減じて、結果として機械的強度が低下するおそれがある。
【0042】
[新規アゾメチン樹脂組成物の成形]
新規アゾメチン樹脂組成物の成形法は、特に限定されず、樹脂組成物を所望の金型内に投入してから、120〜240℃の温度で、30分〜2時間加熱することで成形体を得ることができる。
【0043】
本実施の形態の新規アゾメチン樹脂組成物は、フィルム化等の成形を容易に行うことができ、得られる成形体は、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れているため、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、耐火コーティング、複合材マトリクス樹脂等に好適に用いることが可能である。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を示して、本実施の形態をより詳細に説明するが、本実施の形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において%とは質量%を意味する。
【0045】
[測定方法]
本明細書中の物性等の測定方法は以下の通りである。
(1)赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)
Bomem Michelson MB100 FT−IR スペクトロメータ 乾燥空気中で32回積算 KBrペレット使用
【0046】
(2)核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)
Varian Inova 社製 H NMR(600MHz)
重水素ジメチルスルホキシド使用 256回積算 緩和時間10秒
【0047】
(3)引張強度及び引張弾性率
インストロンユニバーサルテスト装置(Model 5565)
試料片(TypeV ASTM D6−38−03)
引っ張り速度 1mm/分
【0048】
(4)GPCスペクトル
ウォーターズ社製Waters 440 ultraviolet(UV) detector、ポアサイズ1000nm、100nm、50nmのスチレンゲルが充填されたカラムを直列につなぎ、溶出液にテトラヒドロフランを使用して測定した。
【0049】
(5)耐熱分解性
高解像度2950熱重量分析装置(TAインスツルメント社製)を用いて5℃/分の昇温速度で5%重量減少温度(Td5%)を測定した。
【0050】
(実施例1)
「新規アゾメチン樹脂の合成」
還流器を取り付けた容量300ccの丸底フラスコに、2,4−ジアミノトルエン(和光純薬・品番201−06295)4.9g、テレフタルアルデヒド(和光純薬・品番203−03592)6.7g、4−アミノフェノール(和光純薬・品番019−02695)2.2g、ジメチルホルムアミド50gを加えて、30℃に設定したオイルバス中で加熱溶解した。
次いで、10gのトルエンを加えた後、ディーンスターク型コレクターをフラスコに取り付け、合成中に発生する水分を除去しながら、150℃で2時間、反応を継続し、その後、室温まで冷却した。
この溶液を、激しく攪拌している300gのメタノール中へ滴下した。析出した固体をろ過した後、更にメタノールを用いて洗浄した。得られた粉末は、40℃に加熱した真空オーブン中で24時間、真空乾燥を行った。
得られた化合物が、アゾメチンに特有な−HC=N−基と末端水酸基をもつことを赤外線吸収(IR)スペクトルにより確認した(図1参照)。
(水酸基:3200〜3500cm−1、イミン官能基:1620cm−1
更に得られた化合物が、アゾメチンに特有な−HC=N−基をもつことを核磁気共鳴(NMR)スペクトルにより確認した(図2参照)。
(−HC=N−基の水素の化学シフトが8.7〜8.8ppmと特異的に高いことが特徴的である。更に、9.6ppmに末端水酸基の水素の化学シフトが見られる。)
以上の結果より、得られた化合物は下記式(1)で表される構造を有することが推測される。
【0051】
【化4】

【0052】
また、得られた化合物の分子量を推定するために、GPCによる分子量推定評価を行った。
Mn(数平均分子量)=1200(ポリスチレン換算値)
Mw(重量平均分子量)=3300(ポリスチレン換算値)
【0053】
「新規アゾメチン樹脂組成物の作製」
上記で合成した新規アゾメチン化合物12g(上記したMnからは0.01モル相当、末端水酸基は0.02モル相当)に対して、ベンゾオキサジン化合物としてB−a(四国化成株式会社製品、推定分子量495)4.95g(反応基は0.02モル相当)、更に溶剤としてジメチルホルムアミド24gを配合して、攪拌することで、均一な新規アゾメチン樹脂組成物の溶液を作製した。
【0054】
「シートの作製」
上記で作製した新規アゾメチン樹脂組成物の溶液を、テフロン(登録商標)容器上に注ぎ込み、そのまま常温で24時間乾燥させた。次いで、180℃の温度に制御された加熱オーブン中に配置し、溶剤の乾燥及び熱硬化反応を行った。
新規アゾメチン樹脂組成物は、厚み0.1mmのシート状に成形された。
このシートの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率を測定して表1に示した。
【0055】
(実施例2)
実施例1のベンゾオキサジン化合物4.95gの代わりに、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(EPON828、シェル化学株式会社 エポキシ当量178)3.56g(反応基 0.02モル相当)を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様の方法によりシートを成形した。
このシートの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率を測定して表1に示した。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、ベンゾオキサジン化合物を加えなかったこと以外は、すべて実施例1と同様の方法によりシートを成形した。
このシートの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率を測定して表1に示した。
【0057】
(比較例2)
耐熱性の比較として、ベンゾオキサジン化合物B−a(四国化成株式会社製品、推定分子量495)単独でシートを成形した。
このシートの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率を測定して表1に示した。
【0058】
(比較例3)
「アゾメチン樹脂の合成(不溶化による失敗例)」
還流器を取り付けた容量300ccの丸底フラスコに、パラフェニレンジアミン(和光純薬・品番164−01532)4.3g、テレフタルアルデヒド6.7g、4−アミノフェノール2.2g、ジメチルホルムアミド50gを加えて、30℃に設定したオイルバス中で加熱溶解した。
次いで、10gのトルエンを加えた後、ディーンスターク型コレクターをフラスコに取り付け、合成中に発生する水分を除去しながら、150℃で2時間、反応を継続した。しかし、約1時間の段階で、溶液全体が濁り、2時間後に冷却してみると、ほぼすべての樹脂が沈殿してしまい、後の操作は不可能であった。
【0059】
【表1】

【0060】
以上の結果から明らかなように、本実施の形態の新規アゾメチン樹脂は、分子構造が剛直にも関わらず溶剤への溶解性が良好であり、キャスト等の手段にてフィルムへの成形が可能であった。
また、本実施の形態の新規アゾメチン樹脂と、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物との樹脂組成物は、その分子量増大効果により、引張強度及び引張弾性率(剛性)に優れており、その耐熱分解性も比較的高い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によって得られる新規アゾメチン樹脂組成物を加熱成形して得られる成形体(硬化物)は、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れているため、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、プリント基板、耐火コーティング、複合材マトリクス樹脂等への産業上利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1で合成した新規アゾメチン樹脂のIRスペクトルを示す。
【図2】実施例1で合成した新規アゾメチン樹脂のNMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有する新規アゾメチン樹脂。
【化1】

(式中、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基を示し、nは、1〜20の整数を示す。ここで、ベンゼン環への置換基はメタ配置を含む。)
【請求項2】
請求項1記載の新規アゾメチン樹脂と、
水酸基と反応可能な化合物と、
を含む新規アゾメチン樹脂組成物。
【請求項3】
前記水酸基と反応可能な化合物は、ベンゾオキサジン化合物又はエポキシ化合物である、請求項2記載の新規アゾメチン樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−77188(P2010−77188A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244049(P2008−244049)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】