説明

新規アルコール消毒剤の作製法

【課題】
ヒト、動物に安全で環境に対する負荷も少なく容易かつ安価に抽出できる土壌、泥からの抽出物を、アルコールに混ぜることにより、アルコールの一時的な殺菌作用と、土壌、泥からの抽出物の長期的な殺菌作用を持ち、アルコールと同様に人体や環境への影響が懸念されることのない殺菌剤を提供する。
【解決手段】
土壌、泥から抽出したヒューミン、フミン酸、特にフルボ酸などのフミン物質をアルコールに添加することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール消毒剤の欠点である消毒作用の持続時間の短さを、アルコール消毒剤の安価、安全という特徴を損なうことなく改善するための方法および消毒剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在は、消毒剤が種々提供されており、その代表的なものとしてエタノール消毒剤をあげることができる。各種の消毒法は、例えば、物品、人体、動物、環境などから細菌、ウイルスを除去することを目的として用いられる。例えば人、環境、器具に広く用いることができる汎用の消毒剤としては、陽イオン界面活性剤系の塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、両性イオン界面活性剤系の塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、ビグアナイド系のグルコン酸クロルヘキシジン、アルコール系の消毒用エタノール、イソプロパノールなどがある。
【0003】
陽イオン界面活性剤(逆性石けん)は第4級アンモニウム塩で,陽イオンを持つ官能基が菌体表面の陰イオン部分に吸着し,さらに細胞内に浸透して細胞膜の構造を破壊する。消毒効果と界面活性作用による洗浄効果を有する。
【0004】
両性イオン界面活性剤は細菌の細胞膜表面の界面張力を低下させて,細胞膜の損傷やタンパクの変性をもたらす。石けん(陰イオン界面活性剤)の洗浄作用と,陽イオン界面活性剤の殺菌作用を有している。脱脂作用があり,手洗いにはあまり用いられない。器具や環境消毒に用いられる。
【0005】
ビグアナイドは陽イオンを持つことから菌体表面の脂質膜などの陰イオン部分に吸着し,比較的低濃度で細菌の細胞膜に障害を与え,細胞質成分の漏出や酵素阻害を起し静菌的に作用する。高濃度では、細胞内のタンパクや核酸の沈着を起し殺菌作用を現わす。創傷部位,手洗い,手術野に繁用される。アレルギー性接触皮膚炎に注意が必要とされる。粘膜面への使用でショックの報告があり,また脳・脊髄,耳への使用により難聴,視覚障害を起すことがある。
【0006】
アルコールは、その物理的性質と微生物の生物的反応により殺菌作用を現わす。菌体膜を透過しやすく,溶菌,タンパク変性,原形質阻害,代謝機構阻害を起す。抗菌スペクトルが広く短時間で効力を発揮するので,広範囲に繁用される。他の消毒薬との混合使用で効果を高める。粘膜には刺激があるので用いない。脱脂作用がある。アルコールはすぐに蒸発し、効果は一時的である。
【0007】
また例えば日常生活における物品、環境の消毒においては、銀イオン、光触媒、エタノール、次亜塩素酸などが使用されている。
【0008】
銀イオンはその考えられる作用メカニズムとして活性酸素説、酵素障害説、細胞分裂停止説がある。塩素の10倍の力で除菌し、カビ以外の病原菌は24時間以内にほぼ死滅する。不揮発性であり、それ自身は無臭であるが、悪臭分子にふれると、包接・分解・中和などの作用をして、消臭効果を示す。銀イオンの塗布から10日後でも、消毒作用が維持されると言う報告がある(非特許文献1)。
【0009】
光触媒は太陽や蛍光灯などの光が当たると、その表面で強力な酸化力が生まれ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去することができる。酸化により電子を奪われた有機物は結合を分断され、最終的には二酸化炭素や水となり大気中に発散する。その効果は 1〜3カ月または半年ほど持続する。
【0010】
次亜塩素酸は強い酸化力で微生物やウイルスなど病原生物の細胞膜や細胞壁を破壊し、内部の蛋白質や核酸を変性させることで殺菌または消毒の効果を発揮する。コストの安い強力な消毒剤であるが液が酸性になると猛烈に塩素を発生。また次亜塩素酸はすぐに蒸発し、効果は一時的である。
【0011】
銀イオン、エタノールは体内に摂取しても毒性は非常に低いが、光触媒では強い遺伝毒性が問題になっており(非特許文献2)、また次亜塩素酸はその塩素の毒性のために人や動物に使うことはできない。また、大量に使用した場合には塩素ガスが発生し、呼吸器に障害を引き起こす危険性がある。
【0012】
また、更にエタノールに他の薬剤を混ぜたものも開発されている。クロルヘキシジンエタール液、塩化ベンザルコニウムエタノール液、ポビドンヨードエタノール液、銀イオンエタノール液などがある。
【0013】
塩化ベンザルコニウム・エタノールやグルコン酸クロルヘキシジン・エタノールなどの消毒剤を配合した速乾性すり込み式手指消毒剤は、消毒用エタノールに比べ皮膚刺激性が強く(非特許文献3)、医療機関において、これら速乾性すり込み式手指消毒剤による手荒れが問題となっているのが現状である。 手荒れが生じると医療従事者の手洗いおよび手指消毒のコンプライアンスの低下や、MRSAなど細菌の付着が増加してしまうことなどにもつながる。塩化ベンザルコニウムは人体に有害な物質で多量に吸収すると中毒を起こし、腎臓などを破壊する。グルコン酸クロルヘキシジンは皮膚に対する毒性、経口毒性は低いが、ショック、発疹・蕁麻しん等過敏症がみられることがある。
【0014】
ポビドンヨードの殺菌作用はヨウ素の酸化作用によるため、塗布後30〜60秒の経過で最も殺菌力が強くなり、数時間の持続効果が認められる。
【0015】
銀イオンエタノールはエタノール濃度50%と銀濃度5.00ppmの商品
Do It Clean(登録商標)(株式会社ドゥイング)が存在する。大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ、緑膿菌、MRSA、白癬菌、カンジダなどを除菌できると報告されている。更にこれらの細菌に対し噴霧後約30秒で除菌効果があらわれ、その後約10日経過しても抗菌効果が持続することが実証されていると報告されている(非特許文献1)。また、銀は食品添加物としても認可されており、銀イオンエタノールは極めて安全なエタノール消毒液の添加材であるが、銀が高価であるため、現実の消毒においてはコスト高になってしまうという問題点がある。
【0016】
フミン物質は、湖沼堆積物、泥炭、褐炭や泥板岩などの地理学的な堆積物と同様に土壌や水の中にある自然界の有機物(NOM)の主要な成分である。それらは、腐敗した植物片の色を特徴的な褐色にしており、また土壌の表面の色を褐色や黒色にしている。またそれらは地表水のNOMの主要成分であり、濃度が濃いと湖沼や小川などで褐色などの暗い色の水になる。
【0017】
フミン物質は、主に植物リグニンの腐敗と化学反応でできた反応物(非特許文献4)が主要な成分である。
【0018】
土壌、泥などのフミン物質は、3つの画分フミン酸、フルボ酸とヒューミンに分かれる。フミン酸とフルボ酸は土壌などから強アルカリで抽出される。抽出後に低いpHにするとフミン酸は不溶であり、強酸を添加すると沈殿を生じる。ヒューミンは強酸でも強アルカリでも溶かすことができない。またフルボ酸については土壌から直接強酸でも抽出される(図1参照)。
【0019】
フミン物質は化学的反応性は高いが、難分解性である。ほとんどのフミン酸、フルボ酸、ヒューミンはいろいろな構造や分子量の成分の集合体で、平均的な性質や構造として表されている。個々のフミン物質の性質や構造は、その原料の種類や抽出の条件に依存しているが、フミン酸、フルボ酸、ヒューミンの平均的な性質は非常に似ている(非特許文献5)。またフルボ酸は食品添加物として厚生労働省により認可されている。
【0020】
特許文献1には、腐植土から抽出された多成分系化粧品原料の抗菌、抗アレルギー作用、抗炎症作用、アレルギー肌やアトピー肌への低刺激性、かゆみ軽減などの作用が開示されている。特許文献2には、腐植土から水や希アルコールで抽出される抽出液で、そのpHが4.0以下である抽出液を有効成分として含有する抗菌水が開示されている。この文献で口腔細菌や黄色ブドウ状球菌などに対する増殖抑制効果などが示されている。特許文献3ではフルボ酸が、ヒトまたは動物において、たとえば炎症、アクネ、湿疹、または細菌もしくは真菌もしくはウイルス感染症を処置するために経口または局所投与する薬品として使用できることを開示している。特許文献4には、腐植物質のなかのフルボ酸がI型アレルギーの発症を抑制する薬剤になりうることを開示している。更に特許文献5においては、海洋由来のフミン物質を用いることによって人体、環境への影響が懸念されることのない環境からのアレルゲンの除去、低減化剤を提供する方法が開示されている。
【0021】
アルコールの添加材として、土、泥などから抽出した安価で安全なフミン物質を加えることにより2週間以上の持続した抗菌力とアルコールの短期的な殺菌力を有する消毒剤をつくることができた。フミン物質に、長期間の抗菌効果があることはこれまで、知られていなかったが、今回の発明で散布後乾燥しても少なくとも3カ月経過後も、その効果が維持されていることが確認された。
【0022】
【非特許文献1】株式会社ドゥイング社内資料 http://www.doit-clean.com/product/pdf/100125.pdf
【非特許文献2】Cancer Res 2009 69: 8822-8829.
【非特許文献3】日本環境感染学会誌 1993 8(2):33-41.
【非特許文献4】Appl Environ Microbiol 1989 55:922-926
【非特許文献5】国際腐植学会ホームページhttp://ihss.gatech.edu/whatarehs.html
【特許文献1】特開2003―267821号公報
【特許文献2】特開平6―87752号公報
【特許文献3】特表2002―526407号公報
【特許文献4】特開2006―232785号公報
【特許文献5】特開2008―201859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
人、環境、器具をエタノール消毒する方法はエタノールがお酒として飲料が認められていることもあり、他の方法と比較して毒性が極めて低く、また薬液蒸発後は何も残留しない。また、その抗菌スペクトルが広いと言う長所がある。しかし、アルコールが蒸発するとその効果は無くなり、持続時間は極めて短いという短所があった。本発明は、未利用資源の土、泥から安価に抽出でき、人体、環境への影響が懸念されることのない物質をアルコールに添加することにより消毒効果の持続時間を飛躍的に伸ばす方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
土、泥から抽出したフミン物質を、アルコールと混ぜることを特徴とする消毒剤の作製方法である。次に、その主成分が食品添加物として認可されているフルボ酸であることを特徴とする。さらに、フミン物質をアルコールに溶解するに際して酸を添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、未利用資源から、容易且つ安価に抽出でき、人体や環境への影響が懸念されることのないフミン物質をアルコールに添加することにより、アルコール消毒剤の効果の持続性を飛躍的に伸ばすことができる。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】国際腐植学会(IHSS)が定めたフミン物質を抽出する方法を示す図である。
【図2】フミン物質抽出液の抗菌活性の分析結果を示す図面代用表である。
【図3】フミン物質抽出液の抗ウイルス活性の分析結果を示す図面代用表である。
【図4】70%エタノール溶液または、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液の大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示すグラフである。
【図5】70%エタノール溶液または、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液の大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示す図面代用表である。
【図6】70%エタノール溶液または、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥したポリスチレンにおける大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示すグラフである。
【図7】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥したポリスチレンにおける大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示す図面代用表である。
【図8】70%エタノール溶液または、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥したプロピレン片における大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示すグラフである。
【図9】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥したプロピレン片における大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示す図面代用表である。
【図10】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥した木綿の布片における大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示すグラフである。
【図11】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の70%エタノール溶液を散布後乾燥した木綿の布片における大腸菌を用いた抗菌活性の時間経過の分析結果を示す図面代用表である。
【図12】木綿の布片における50%エタノール溶液、フミン物質抽出液の50%エタノール溶液、銀イオン含有50体積%エタノールまたは銀イオン含有ゼオライトの噴霧乾燥後の大腸菌を用いた抗菌活性の分析結果を示す図面代用表である。
【図13】木綿の布片における50%エタノール溶液、フミン物質抽出液の50%エタノール溶液、銀イオン含有50%エタノールまたは銀イオン含有ゼオライトの噴霧乾燥後、2週間室温で静置した後の大腸菌を用いた抗菌活性の分析結果を示す図面代用表である。
【図14】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の注射用蒸留水希釈液を散布したプロピレン片を乾燥後3カ月間放置した後の大腸菌による抗菌活性の分析結果を示す図面代用表である。
【図15】70%エタノール溶液またはフミン物質抽出液の注射用蒸留水希釈液を散布した木綿の布片を乾燥後3カ月間放置した後の大腸菌による抗菌活性の分析結果を示す図面代用表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
1. フミン物質の分離・抽出
フミン物質は、抽出溶液のpHによって、フミン酸、フルボ酸、ヒューミンに分けることができる。おおまかにフルボ酸は0.1M HClに可溶な物質または、0.1M
HClに不溶で0.1M NaOHに可溶で更に6M HClに可溶な物質である。フミン酸は0.1M
HClに不溶で0.1M NaOHに可溶で更に6M HClに不溶な物質である。ヒューミンは0.1M HClに不溶で0.1M NaOHに不溶な物質である。何れの成分も、菌やウイルスを不活化するフェノール基、カルボン酸基などを豊富に持ち当該成分の種類によらずにフミン物質全体を利用できる。フミン物質は、土壌、河川、湖沼、海洋低泥、泥炭、汚泥などに存在が確認されている。何れの泥、土でも利用できるが、特に、露頭から得た土壌からの抽出が最も簡便で安価である。
土壌中のフミン物質の抽出は特に限定されないが、例えば以下のような工程を経て実施される。
1)原料採掘、2)天日発酵と熟成床での熟成、3)天日乾燥、4)粉砕と篩い分け、5)清水配合、6)混合撹拌、7)ばっ気、8)熟成抽出を空気の吹き込みと、空気を送らない抽出期間を設定することにより実施、9)抽出液のろ過
【0028】
2.フミン物質の利用の形態
消毒剤の種類は特に限定されないが例えばアルコールなどにフミン物質を、混合して使用する。アルコールの種類は好ましくは、エタノール、プロパノール、より好ましくはエタノールを使用する。アルコールの濃度は特に限定されないが、好ましくは
10〜95体積%、より好ましくは40〜85体積%である。フミン物質の抽出液濃度は特に限定されないが、好ましくは1〜90体積%、より好ましくは10〜60体積%で使用する。最終濃度は水を加えて調整する。280nm、465nm、665nmの波長の光の吸光度を測定しその値をそれぞれA280、A465、A665と表すとすると、A280は芳香族成分の含有量を表し、A465とA665の比
(A465/A665)は腐植化度に対応している。使用時のフミン物質抽出液の吸光度による測定幅は特に限定されないが、好ましくはlog10A280は0.1〜2、
log10(A465/A665)は、0.1〜2、より好ましくは、log10A280は0.5〜1.5、log10(A465/A665)は、0.5〜1を使用する。フミン物質の溶解性は特に限定されないが、好ましくは、0.01M以上となるように
HClを添加したとき、より好ましくは0.1M以上となるようにHClを添加したとき沈殿が生じないフルボ酸を多く含むものを使用する。または、好ましくは0.1M
HClに不溶で0.1M NaOHに可溶で更に0.01M以上となるようにHClを添加したとき、より好ましくは同じく6M以上となるようにHClを添加したとき沈殿が生じないフルボ酸を多く含むものを使用する。フルボ酸は一般に食品として飲食に供されるものであって添加物として使用される物として認可されており極めて安全な物質であると認められている(厚生労働省 食安基発第0601001号)。フミン物質をアルコール溶液に溶解するための特定の方法に限定されることはないが、好ましくは酸の添加によりpHを0.001〜6、より好ましくはpH1〜3にする。使用する酸は特定の薬剤に限定されることはないが好ましくは塩酸を使用する。特にその種類は限定されないが必要により他の消毒剤、消泡剤、芳香剤、抗ウイルス剤、保湿剤、緩衝剤、酸化剤、還元剤、酸、アルカリを混合して用いることができる。病原菌、ウイルスに対して、上記アルコールとフミン物質の混合物をスプレー等で噴霧する、または、液体状、固体状、粉体状、ペースト状等の状態にして織布、不織布、炭素繊維、フィルター、フィルム、プレート等に塗布し、担持させて菌体、ウイルスを除去、低減化できる。
【0029】
3. 菌、ウイルスの種類
アルコール、フミン物質により除去、低減化される菌、ウイルスは、アルコール、フミン物質の官能基例えば水酸基、フェノールやカルボキシル基などにより不活性となるタンパク質を有していれば、いかなる種類であっても良い。例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、サルモネラ菌、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどがある。
【0030】
前記「フミン物質」とは動植物の遺体が微生物分解され、その分解物が重合した有機物で、植物体起源のものは腐植とも呼ばれる。通常の化学物質のような単一の分子構造を有しているわけではく、pHに依存した溶解性によって、規定されるヒューミン、フミン酸、フルボ酸の総称である。
前記「発酵」とは、微生物の働きで有機物が分解され特定の物質を生成する現象。
前記「熟成」とは、発酵したものが熟すること。また物質を適当な温度・条件の下で長時間放置して、ゆっくりと化学変化を行わせること。
前記「ばっ気」とは、微生物群に必要な酸素を供給するための操作。ばっ気は、酸素供給と同時にフミン物質抽出液と微生物が十分に接触するためのかくはんの効果も果たしている。
前記「消毒薬」とは化学的機序により微生物やウイルスを死滅させ、感染力を失わせることを目的として使用される薬物の総称。
前記「吸光度」とは分光法において、ある物体を光が通った際に強度がどの程度弱まるかを示す量である。吸収・散乱・反射をすべて含むため、吸収のみを表すものではない。
【0031】
細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌
(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(methicillin resistant Staphylococcus
aureus:MRSA)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、
腸内細菌エンテロバクテリア(Enterobacter cloacae)、
プロテウス菌(Proteus、Providencia、Morganella)、サルモネラ・チフス菌(Salmonella typhimurium)、
サルモネラ菌(Salmonella enteritidis)、
シトロバクター菌(Citrobacter freundii)、
赤痢菌(Shigella dysenteriae)、
腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、
ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)、
古草菌(Bacillus subtilis)、
セレウス菌(Bacillus cereus)、
セラチア菌(Serratia marcescens)、
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、アシネトバクテリア菌(Acinetobacter calcoaceticus)、
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、セパシア菌
(Pseudomonas cepacia)、腸球菌(Enterococcus)、 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、
カタル球菌(Moraxella(Branhamella)catarrhalis)、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)およびバクテロイド菌(Bacteroides
fragilis)等をあげることができる。
【0032】
ウイルスとしては、大腸菌に感染するファージウイルスであるQベータファージ (Bacteriophage Q beta)や、M13バクテリオファージ
(M13 Bacteriophage)の他、インフルエンザウイルス
(Influenza Virus)、肝炎ウイルス(Hepatitis
Virus)、ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus:HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス (Varicella
Zoster Virus:VZV)、
ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)およびエイズウイルス (Human Immunodeficiency Virus:HIV)等をあげることができる。

【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実験で使用する用語を説明する。
「混釈平板培養法」とは試料液と寒天培地とをシャーレの中で混和凝固させ、培養後発生した集落数から試料中の生菌数を算出する方法である。「CRFK細胞」とはネコ腎由来株化細胞のことである。「単層培養」とは細胞を培養する方法で、培養皿上で細胞が上下に重ならないようにして培養することである。「牛胎児血清」とはウシの胎児の血液から調製された血清である。ウシ胎児血清には細胞増殖阻害作用を有するγ-グロブリンがほとんど含まれないため、細胞培養の多くで利用される。「倒立位相差顕微鏡」とは、光線の位相差をコントラストに変換して観察できる光学顕微鏡のことである。標本を無染色・非侵襲的に観察することができるため、特に生物細胞を観察する場合や臨床検査に多く用いられる。「Reed―Muench法」とは、生物学的実験で、LD50(致死率50%の薬物量)を簡単に決定する方法。「MDCK(NBL―2)細胞」とは、イヌ正常腎臓に由来する細胞株, 様々なウイルスの増殖を支持する。「CFU」とは、細菌検査の結果に使われる単位で、培地で培養した菌がつくる集団(コロニー)の数のことである。「50%組織培養感染量(TCID50)」とは、宿主細胞の 50%が感染陽性となるウイルス希釈値のことである。
【実施例1】
【0034】
フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を、購入し細菌に対する消毒の効果を調べた。フミン物質抽出液及びフミン物質抽出液の注射用蒸留水による5倍の希釈液に大腸菌、緑膿菌、サルモネラ又は黄色ブドウ球菌の菌液を接種してその効果を調べた。試験菌株は、
Escherichia coli NBRC 3972(大腸菌)、
Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275(緑膿菌)、
Salmonella enterica subsp. Enteric NBRC
3313(サルモネラ)、Staphylococcus
aureus
subsp. Aureus NBRC 12732(黄色ブドウ球菌)を使用した。試験菌を普通寒天培地(栄研株式会社)で35℃で18〜24時間培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が10CFU/mlとなるように調整し、試験菌液とした。フミン物質抽出液及び注射用蒸留水を用いて調整したフミン物質抽出液の5倍の希釈液10mlに試験菌液0.1mlを接種し試験液とした。25℃で保存し、60秒並びに6及び24時間後に試験液1mlをSCDLP培地(日本製薬株式会社)9mlに添加して試験液中の生菌数をSCDLP寒天培地(日本製薬株式会社)で、混釈平板培養法を用いて35℃で2日間培養測定した。なお対照として精製水(緑膿菌及び黄色ブドウ球菌は生理食塩水)を用いて同様に試験し、開始時についても生菌数の測定を行った。結果を図2に示す。大腸菌、緑膿菌は1分間のフミン物質との反応により菌数がおよそ1/100に減少し、6時間後には検出感度以下となった。サルモネラと黄色ブドウ球菌は6時間のフミン物質との反応により菌数がおよそ検出限界付近に達し、24時間後には検出感度以下となった。
【実施例2】
【0035】
フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)のウイルスに対する消毒の効果を調べた。フミン物質抽出液の注射用蒸留水を用いた5倍の希釈液にインフルエンザウイルスA型
(H1N1)を接種してその効果を調べた。イーグルMEM培地「ニッスイ」(登録商標) (日水製薬株式会社)に牛胎児血清を10%加えたもの(以後細胞増殖培地と呼ぶ)を用い、MDCK(NBL―2)細胞 ATCC CCL―34株(大日本製薬株式会社)を組織培養用フラスコ内に単層培養した。単層培養後に、フラスコ内から細胞増殖培地を除き、インフルエンザウイルスを接種した。次にイーグルMEM培地「ニッスイ」(登録商標) (日水製薬株式会社)1000ml、10%
NaHCO 14ml、L―グルタミン(30g/l) 9.8ml、100xMEM用ビタミン液 30ml、10%
アルブミン
20ml、0.25%トリプシンを加えたもの (以後細胞維持培地と呼ぶ)を加えて
37℃の炭酸ガスインキュベータ(CO濃度5%)内で1〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000 回転/分, 10分間)し、得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。注射用水を用いて調整したフミン物質抽出液の5倍の希釈液を試験液とした。試験液1mlに、インフルエンザ浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、60秒並びに6及び24時間後に細胞維持培地を用いて100倍に希釈した。なお、精製水を対照として同様に試験し、開始時についても測定を行った。細胞増殖培地を用い、NDCK(NBL―2)細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、作用液の希釈液を0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベータ(CO濃度5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化の有無を観察し、Reed―Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウイルス感染値に換算した。60秒のフミン物質との反応によりTCID50がおよそ1/1000に減少し、6時間後には検出感度以下となった。図3に結果を示す。
【実施例3】
【0036】
フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)のウイルスに対する消毒の効果を調べた。フミン物質抽出液の注射用蒸留水を用いた5倍の希釈液にFeline
calicivirus F―9 ATCC VR―782(ネコカリシウイルス)を接種してその効果を調べた。ノロウイルスが培養できないため、その代替ウイルスとしてネコカリシウイルスは、ノロウイルスの消毒剤の評価に使用されている。イーグルMEM培地「ニッスイ」(登録商標)(日水製薬株式会社)に牛胎児血清を10%加えたもの(以後細胞増殖培地と呼ぶ)を用い、CRFK細胞(大日本製薬株式会社)を組織培養用フラスコ内に単層培養した。単層培養後に、フラスコ内から細胞増殖培地を除き、ネコカリシウイルスを接種した。次にイーグルMEM培地「ニッスイ」(登録商標) (日水製薬株式会社)に牛胎児血清を2%加えたもの(以後細胞維持培地と呼ぶ)を加えて37℃の炭酸ガスインキュベータ(CO濃度5%)内で1〜5日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000 回転/分, 10分間)し、得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。注射用水を用いて調整したフミン物質抽出液の5倍の希釈液を試験液とした。試験液1mlに、ネコカリシウイルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、60秒並びに6及び24時間後に細胞維持培地を用いて10倍に希釈した。なお、精製水を対照として同様に試験し、開始時についても測定を行った。細胞増殖培地を用い、CRFK細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、作用液の希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃の炭酸ガスインキュベータ(CO濃度5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化の有無を観察し、Reed―Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウイルス感染値に換算した。6時間のフミン物質との反応によりTCID50がおよそ1/10に減少し、24時間後には1/100となった。結果を図3に示す。
【実施例4】
【0037】
フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を、購入し70体積%エタノール溶液に20体積%のフミン抽出物質を添加したところ、沈殿が認められた。沈殿を溶解するために
0.2N(規定)となるように塩酸を加えた。pH試験紙(Universal
indicator paper pH1―11 , Macherey―Nagel社)で塩酸を添加する前後のpHを調べたところ、添加前は約pH6で、添加後は約pH1となった。沈殿は溶解しほとんど認められなかった。
【実施例5】
【0038】
フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を、塩酸または水酸化ナトリウムを添加して
0.1N(規定)として数時間室温放置した。水酸化ナトリウムの添加で褐色の沈殿が認められたが、塩酸添加では清澄で透明な液が得られ沈殿は認められなかった。このことから、フミン抽出物の主成分はフルボ酸であることが示唆された。
【実施例6】
【0039】
70体積%エタノール溶液に20体積%のフミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を添加し0.2N(規定)となるように塩酸を加えてフミン物質抽出液の70%エタノール溶液を作製し、できたフミン物質抽出液の70%エタノール溶液と70%エタノールを検体とした。一晩培養した大腸菌(NBRC3301株)をLB培地にて
6.3x10CFU/ml に調整し、検体で20倍に希釈して、1.26x10
CFU/検体(0.4ml)とし、1分、5分室温で静置し、注射用蒸留水で100倍に希釈した。100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。フミン物質抽出液の70%エタノール溶液と70%エタノールともに、菌添加後1分で死滅した(<4.00x10 CFU/0.4ml)。 フミン物質抽出液の70%エタノール溶液と70%エタノールともに、1分で菌数を1/104.5未満に減らすことができた。
結果を図4と図5に示す。図4の縦軸は、接種菌数(N)に対する検体と大腸菌を反応させたときの各反応時間の生菌数(N)の比の対数値を示す。また、図4の図中の下矢印は、生菌が認められなかったことを示す。
【0040】
(数1)
log10(N/N
【実施例7】
【0041】
ポリスチレン製シャーレに70%エタノールまたは、70体積%エタノール溶液に20体積%のフミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を添加したものを1ml添加し乾燥させた。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養し注射用蒸留水で希釈して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液20μl(約10
CFU/ml )と注射用蒸留水1mlと混合して、上記のシャーレの上に添加して透明ポリプロピレン片の蓋をした後、20分あるいは2時間静置した。4ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、残った液体を必要に応じてLB培地で希釈して100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。
70%エタノール消毒処理ではエタノールがポリスチレンに残存せず効果がないが、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液では20分、120分ともに除菌効果が認められた。エタノール散布のポリスチレンと比べて、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液散布の場合の生菌数は1/1000未満となった。結果を図6と図7に示す。図6の縦軸は、検体と大腸菌を反応させたときの各反応時間の70%エタノール処理検体の生菌数(NEt)に対するフミン物質抽出液の70%エタノール溶液処理検体の生菌数
(NEt+humic substance)の比の対数値を示す。
【0042】
(数2)
log10(NEt+humic substance/NEt
【実施例8】
【0043】
約5cmx5cmポリプロピレン片に70%エタノールまたは、70体積%エタノール溶液に20体積%のフミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を添加したものを噴霧し乾燥させた。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養し注射用蒸留水で希釈して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液20μl
(約10CFU/ml )と注射用蒸留水1mlと混合して、シャーレの中で上記のポリプロピレン片上に添加して透明ポリプロピレン片の蓋をした後、20分あるいは2時間静置した。4ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、残った液体を必要に応じてLB培地で希釈して100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。 70%エタノール消毒処理ではエタノールがポリプロピレン片に残存せず効果がなかったが、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液では20分、120分ともに除菌効果が認められた。エタノール散布のポリプロピレン片と比べて、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液散布の場合の生菌数は1/50〜
1/100となった。結果を図8と図9に示す。図8の縦軸は、検体と大腸菌を反応させたときの各反応時間における70%エタノール処理検体の生菌数(NEt)に対するフミン物質抽出液の70%エタノール溶液処理検体の生菌数(NEt+humic substance)の比の対数値を示す。
【0044】
(数3)
log10(NEt+humic substance/NEt
【実施例9】
【0045】
約5cmx5cm木綿片に70%エタノールまたは、70体積%エタノール溶液に20体積%のフミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を添加したものを噴霧し乾燥させた。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養し注射用蒸留水で希釈して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液100μl(約10CFU/ml )を、上記の布上に添加して乾燥させることなく、室温で10分並びに30分静置した。新しいシャーレに検体の布片を置き、5ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、残った液体を必要に応じてLB培地で希釈して100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。
70%エタノール消毒処理ではエタノールが完全に蒸発し布片に残存せず効果がなかったが、フミン物質抽出液の
70%エタノール溶液では10分、30分で除菌効果が認められた。エタノール散布の布片と比べて、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液散布の場合の生菌数は
1/10000未満となった。結果を図10と図11に示す。図10の縦軸は、検体と大腸菌を反応させたときの各反応時間の70%エタノール処理検体の生菌数(NEt)に対するフミン物質抽出液の70%エタノール溶液処理検体の生菌数(NEt+humic substance)の比の対数値を示す。また、図10の図中の下矢印は、フミン物質抽出液の70%エタノール溶液処理検体で生菌が認められなかったことを示す。
【0046】
(数4)
log10(NEt+humic substance/NEt

【実施例10】
【0047】
約5cmx5cm木綿片に50%エタノール、フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を20体積%含む50体積%エタノール溶液(終濃度0.075Nとなるよう HClを添加)、銀イオン含有50体積%エタノールのDo It Clean(登録商標)または銀イオン含有ゼオライトのエージープラス(登録商標)パウダースプレーD (資生堂株式会社)を噴霧し乾燥した。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養し注射用蒸留水で希釈して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液100μl(約10cells/ml )を、上記の布上に添加して乾燥させることなく10分静置した。新しいシャーレに検体の布片を置き、5ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、必要に応じてLB培地で希釈し、100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。
50%エタノール消毒処理では
9.54x10CFU/布片、銀イオン含有ゼオライトでは2.89x10CFU/布片の菌が残っていたが、50%エタノール/フミン物質、銀イオン含有50%エタノールでは51CFU/布片未満で生菌は認められなかった。フミン物質抽出液を20%含む50%エタノール溶液と銀イオン含有50%エタノールでは強い除菌効果が維持されていた。図12に結果を示す。
【実施例11】
【0048】
約5cmx5cm木綿片に50%エタノール、フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)を20体積%含む50体積%エタノール溶液(終濃度0.075N(規定)となるよう
HClを添加)、銀イオン含有50体積%エタノールのDO It Clean(登録商標)または銀イオン含有ゼオライトのエージープラス(登録商標)パウダースプレーD(資生堂株式会社)を噴霧し乾燥した後、室温で2週間静置した。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養し注射用蒸留水で希釈して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液100μl(約10cells/ml )を、上記の布上に添加して乾燥させることなく、10分静置した。新しいシャーレに検体の布片を置き、
5ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、必要に応じてLB培地で希釈し、
100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。50%エタノール消毒処理では1.17x10CFU/布片、銀イオン含有ゼオライトでは5.22x10CFU/布の菌が残っていたが、銀イオン含有50%エタノールでは7.65x10CFU/布片が、50%エタノール/フミン物質では、1.36x10CFU/布片の生菌が認められた。50%エタノール/フミン物質と銀イオン含有50%エタノールでは強い除菌効果が維持されていた。
図13に結果を示す。
【実施例12】
【0049】
約5cmx5cmポリプロピレン片に70%エタノールまたは、フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)の注射用蒸留水を使用した5倍希釈液を噴霧し乾燥後、3カ月間室温にて静置した。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液20μl(約10cells/
ml )を、注射用蒸留水1mlと混合して、シャーレの中で上記のポリプロピレン片上に添加して透明ポリプロピレンの蓋をした後、2時間静置した。4mlの注射用蒸留水を添加して、シャーレの中で1時間撹拌した。検体を取り出し必要に応じてLB培地で希釈した後LBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。3カ月放置したあと、70%エタノール処理したポリプロピレンでは、
1.85x10CFU/ポリプロピレン片の大腸菌が残っていたが、フミン物質抽出液の5倍希釈液処理したポリプロピレンでは1.17x10CFU/ポリプロピレン片と1/1000に生菌数が減少した。ポリプロピレン上に残ったフミン物質抽出希釈液の効果が認められた。結果を図14に示す。
【実施例13】
【0050】
約5cmx5cm木綿片に70%エタノールまたは、フミン物質抽出液(株式会社エンザイム)の注射用蒸留水を使用した5倍希釈液を噴霧し乾燥後、3カ月間室温にて静置した。一晩培養後、実験当日に一部の菌液を新しいLB液体培地に接種して数時間培養して得た大腸菌(NBRC3301株)溶液100μl(約10cells/ml )を上記の布上に添加して乾燥させることなく、10分静置した。新しいシャーレに検体の布片を置き、5ml注射用蒸留水を添加して1時間振とう後、検体を取り出し必要に応じてLB培地で希釈した後100μlをLBアガー培地にまき、37℃で24時間培養して出現したコロニー数を数えた。3カ月放置すると70%エタノール消毒処理では
1.80x10CFU/布片の菌が残っていたが、フミン抽出希釈液では
7.55x10CFU/布片の菌が認められ、菌数が1/24に減少し、その効果が認められた。結果を図15に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒剤を用いて細菌、ウイルスを除去する方法において、フミン物質を添加することを特徴とする消毒剤の作製法
【請求項2】
使用する消毒剤がアルコールである、請求項1記載の消毒剤の作製法
【請求項3】
使用する消毒剤がエタノールである、請求項1または請求項2に記載の消毒剤の作製法
【請求項4】
エタノールのヒトに対して安全且つ短期的だが広範囲の細菌を除去する消毒効果とフミン物質のヒトに対して安全且つ長期間細菌を除去する消毒効果を併せ持つ消毒剤の作製法
【請求項5】
エタノールのヒトに対して安全且つ短期的だが広範囲のウイルスを除去する消毒効果とフミン物質のヒトに対して安全且つ長期間ウイルスを除去する消毒効果を併せ持つ消毒剤の作製法
【請求項6】
使用する消毒剤が10〜95体積%エタノール溶液である、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項7】
消毒剤に1〜90体積%のフミン物質を添加する請求項1〜請求項6記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項8】
フミン物質がフルボ酸を主成分とする請求項1〜請求項7記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項9】
土壌又は泥に水を加えタンク内で酸素を供給する培養と酸素を供給しない静置を行うことにより抽出したフミン物質抽出液が添加される請求項1〜請求項8記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項10】
フミン物質を溶解させるために酸を添加する請求項1〜請求項9記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項11】
フミン物質を溶解させるために添加する酸が塩酸である請求項1〜請求項10記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法
【請求項12】
病原菌、ウイルスに対して、請求項1〜請求項11記載の何れか一項に記載の消毒剤の作製法を使用して菌体、ウイルスを除去、低減化する消毒剤
【請求項13】
請求項12記載の消毒剤がスプレーであるもの
【請求項14】
請求項12記載の消毒剤が織布、不織布、炭素繊維、フィルター、フィルム、プレート等に薬剤を塗布したものであるもの




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−17275(P2012−17275A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154627(P2010−154627)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(710006769)
【Fターム(参考)】