説明

新規イソベンゾキサジノン及び紫外線吸収剤としてのそれらの使用

本発明は、請求項1に挙げような、特に式(I)の新規置換イソベンゾキサジノン及び特に有機ポリマーのための紫外線吸収剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に式(I)の新規イソベンゾキサジノン及び有機材料、特に有機ポリマーのための紫外線吸収剤としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスティック製品の有用性及び寿命は、ポリマーの機械的特性、密度、分子量及び質量分布などの数多くの変数によって影響を受ける。最終的な用途及び使用中のその場所の状態(温度、負荷力及び環境的影響)に応じて、最高70年の耐用年数が保証されなければならないが、これは適切な安定化剤及び安定化剤の組み合わせによってのみ到達可能である。加速試験条件下でこの関係を測定することができる。重要な技術的基準として、色のような光学特性は、たとえば、黄変度(YI)として測定され、ポリマー製品の安定性を評価するために使用される。
【0003】
ポリマー基材における影響、たとえば、結晶化度、自由体積、形態及び拡散係数及び反応速度論の変化は、分解機構の変化を引き起こす。ポリマー製品の光による迅速な分解を防ぐ重要な基準の1つは、適切な光安定化剤と組み合わせたUV吸収剤の使用である。UV吸収剤は、発色団の吸収によって紫外線の有害作用を減少させること、及びポリマー基材内の励起状態の不活性化によって初速度を低下させることでポリマーの分解を防ぐのに役立つ。一般的に、UV吸収剤は、ポリマー基材内の吸収光子のエネルギーを無害な方法で、たとえば、熱として、放散させることができる。
【0004】
光切断による遊離のペルオキシラジカルの生成がない、UV吸収剤によるヒドロペルオキシドの化学的変換についての、他の機構の効果が議論されている(F.Gugumus、「Plastis additives handook」、p206ff、H.Zweufek編、Hanser Publishers、Munich(2001)の「光安定化剤」の章に説明されている。)。
【0005】
ポリマー基材の保護のために今まで使用されてきたすべての吸収剤について、フェノール型と波長300〜400nmの範囲に光感受性をもたらす非フェノール型UV吸収剤とは区別される。フェノール型吸収剤は、励起状態の分子内プロトン輸送機構によって作用する。非フェノール型UV吸収剤は、光励起後の電荷分離種の形成が作用様式と見なされる。UV吸収剤の個々の種類及び作用様式のより詳細な説明は、J.E.Pickett、表題「Permanence of UV absorbers in Plastics and Coatings」、Technical Report 97CRD170/General Electric、Dec.1997に記載されている。
【0006】
UV吸収剤の大部分、特にベンゾフェノン誘導体は、UV−A(320から400nm)及びUV−B(290nmから320nm)の範囲において有効である。
【0007】
外観、特に色、光沢及び透過性を含めた特性の長期維持などの変数は、工業用ポリマーの非常に重要な特性である。したがって、このような変数のいかなる改善も無視できない革新的なステップと見なすことができる。ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシトリアジン及び非置換ベンゾキサジノンのような公知のUV吸収剤と比較して、特性を改善することがまだ必要とされている。
【0008】
非置換ベンゾキサジノンは、可変UV吸収剤(米国特許第3989698号及び米国特許第4446262号)として市販されており、たとえば、以下に表した2,2’−p−フェニレン−ビス−(3,1−ベンゾキサジン−4−オン)はCytecからCyasorb(登録商標)3638として入手できる。
【0009】
【化3】

【0010】
この化合物を調製するために改善された方法及び透明なポリマー材料のためのその使用は、国際公開第03/035735号に開示されている。
【0011】
国際公開第03/16292号は、以下の式の置換ベンゾキサジノン化合物並びに紫外線吸収剤、特に有機ポリマー用の紫外線吸収剤、としてのそれらの用途を開示している。
【0012】
【化4】

【0013】
欧州特許出願公開第1302197A1号及び欧州特許出願公開第1317918A1号においてさらにベンゾキサジノン、特に2,2’−p−フェニレン−ビス−(3,1−ベンゾキサジン−4−オン)は日焼け止め剤などの化粧品におけるUV吸収剤として適していることが開示されている。
【0014】
欧州特許出願公開第0674038A1号は、織物材料の耐光性を改善するための4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン化合物の使用を開示している。特に、2,2’−p−フェニレン−ビス−(3,1−ベンゾキサジン−4−オン)が開示されている。
【発明の開示】
【0015】
驚くべきことに、本発明のような置換イソベンゾキサジノンは、関連技術変数に関して従来技術より優れた紫外線吸収剤として特に有用である。
【0016】
したがって、本発明は式(I)の新規置換イソベンゾキサジノン
【0017】
【化5】

(式中、
はC2n+1(nは8から30である。)を有する長鎖アルキル置換基、シクロアルキル置換基又はイソアルキル置換基を表し、
Xは直接結合、−O−、エステル基(−COO−)又は−S−を表し、
、R、R及びRは、独立して水素、ハロゲン(F、Cl、Br、I)又はC1〜12アルキルから選択される置換基を表す。)に関連する。
【0018】
好ましい態様では、本発明は、
はC2n+1(nは8から18である。)を有する長鎖アルキル又はイソアルキル置換基を表し、
Xは−O−を表し、および
、R、R及びRは独立して水素、フルオロ、クロロ、臭素又はC1〜4アルキルから選択された置換基を表す、式(I)の新規置換イソベンゾキサジノンに関連する。
【0019】
より好ましくは、R、R、R及びRは、独立して水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル又はtert−ブチルから選択される置換基を表す。
【0020】
より好ましい化合物は、式(Ia)から(Ig)によって表されるものである。
【0021】
【化6】

【0022】
さらに、驚くべきことに、Xが−O−であり、Rが枝分かれしていないアルキル置換基C2n+1(n=8〜12)である式(I)の特に好ましい化合物が対応する融点未満の形態相転移を示すことが発見された。
【0023】
本発明による新規化合物は、光及び酸化による損傷に対して優れた安定性をもたらし、したがって環境の影響を弱めることによってポリマー基材を劣化から防御することができる。
【0024】
本発明の他の目的は、多種多様な有機基材において適合性が高いUV吸収剤としてこの新規化合物を使用することである。当業界で公知の化合物と比較して、本発明の新規化合物は多くの有機基材に非常によく溶解できる。本発明による新規化合物は、有機基材中で、0.005から0.100重量パーセントの濃度で使用することが好ましく、有機ポリマー中で使用することが最も好ましい。本発明による新規化合物は、いわゆる工業用樹脂の群から選択された有機ポリマーに特に適している。いわゆる工業用樹脂の群の好ましい有機ポリマーは、ポリカーボナート、ポリエステル及びポリアミド、特にポリカーボナート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド−6(PA6)及びポリアミド−6.6(PA6.6)である。さらに、置換パターンに応じて、新規化合物のいくつかはまた、ポリオレフィンをベースとした熱可塑性ポリマーで使用することができる。
【0025】
さらに、この新規化合物を粘度型のナノ複合材料、基礎研究及び産業開発においてそれ自体かなりの注目を集めている層状珪酸塩類に挿入することができる。ナノクレイは、たとえばM.Alexandre and P.Dubois、Polym.Mater.Sci.Eng、28、1〜63(2000)、H.Quin、C.Zhao、S.Zhang、G.Chen及びM.Yang、Polym.Degrad.Stab.81、497〜500(2003)に記載されているように、非常に低い充填剤含量で、通常5wt%未満で既に、挿入化合物の、さらに改善された熱安定性及び酸化安定性を含む強化された特性をもたらす。
【0026】
この新規化合物は化粧品用の適用に特に適している。
【0027】
化合物の調製
本発明による化合物は、たとえば、ウィリアムソン法によってハロゲン化アルカンで3−ヒドロキシイソフタル酸をエーテル化し、次いで最終化合物を調製することによって得ることができる。最終段階は、対応する2酸塩化物とアントラニル酸及びアントラニル酸誘導体の反応で、イソベンゾキサジノン部分を形成する。ヒドロキシルフタル酸から開始する対応するイソベンゾキサジノンの調製は、基本的に同じ方法によって実施することができる。
【0028】
適切なハロゲン化アルカンは、たとえば、1−ブロモオクタン、1−ブロモノナン、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン及びより高い相同体だけでなく分枝構造又は環状構造の対応するハロアルカン、例えば1−ブロモ−2−エチルヘキサン又はブロモシクロオクタン、3−ブロモシクロオクテン、2−(6−ブロモヘキシルオキシ)−テトラヒドロ−2H−ピランである。このハロアルカンはまた、飽和複素環、好ましくは、たとえば、2−(2−ブロモエトキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン、2−(2−ブロモエチル)−1,3−ジオキサン、2−(2−ブロモエチル)−2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサンなどの化合物によって表されるような酸素含有複素環を含有することができる。適切な開始物質はさらに、3−(2−ブロモエチル)インドールなどのハロアルキル置換アレーン及び芳香族複素環、さらに最終的に2量体構造を導く2臭素置換非分枝鎖、分枝鎖及び環状アルカンである。ハロアルカンにおいて、塩素置換を臭素置換の代わりに使用することができる。
【0029】
アントラニル酸(又は2−アミノ安息香酸)並びにアントラニル酸の3〜6位にアルキル、ジアルキル、トリアルキル及びテトラアルキルが結合した誘導体のような誘導体は、最終段階に使用することができる。
【0030】
このアルキル、ジアルキル、トリアルキル及びテトラアルキル置換体は、鎖長がC1〜20の直鎖、分枝鎖及び環状構造並びに2−アミノ−3−クロロ−安息香酸、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、2−アミノ−5−クロロ安息香酸、2−アミノ−6−クロロ安息香酸、2−アミノ−3,4−ジクロロ安息香酸、2−アミノ−3,5−ジクロロ安息香酸、2−アミノ−3,6−ジクロロ安息香酸及び他の相同体を有することができる。ハロゲン置換は、塩素の代わりにフッ素若しくは臭素、並びにニトロ若しくはシアノ置換であることができる。
【0031】
実施例
以下の化合物は以下に説明した方法によって調製された。
【0032】
【表1】

【0033】
前記化合物は、たとえば、5−ヒドロキシイソフタル酸(1)から開始する多段階合成によって得ることができ(参考文献は、たとえば、G.J.Bodwell、J.N.Bridson、M.K.Cyranski、J.W.J.Kennedy、T.M.Krygowski、M.R.Mannion and D.O.Miller、J.Org.Chem、68(6)、2089〜2098(2003)。)、まず標準的条件下で変換し、ほとんど定量的にそのジメチルエステル(2)を生じる。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
最終化合物(Ia)の合成には、続いて、たとえば以下の方法によってi−ブロモオクタンで化合物(2)が変換された。化合物(2)84.1g(0.40mol)及び1−ブロモオクタン81.1g(0.42g)をジメチルホルムアミド(DMF)250mlに溶解した。その後、炭酸カリウム61g(0.44mol)を添加した。やや黄色い分散液をT=120゜で4時間加熱した。冷却後、固形の沈殿物を濾過によって除去し、冷DMFで洗浄した。この濾液に脱塩水全量500mlを撹拌しながら添加すると沈殿物が徐々に形成された。この沈殿物を濾過し、pHが中性に到達して、検出目的用硝酸銀で臭化物イオンが検出できなくなるまで、脱塩水で徹底的に洗浄した。乾燥機内において真空下でリン5酸化物の存在下で生成物を乾燥した後、固形生成物(3)127.0g(収率98.6%)が得られた。
【0037】
【化9】

【0038】
化合物(3)96.6g(0.3mol)をエタノール500mlに添加することによってこの化合物を加水分解した。温度T=65℃で加熱後、水酸化ナトリウムの水溶液(30重量%)を90分かけてゆっくり添加した。塩化水素の水溶液(35重量%)によって撹拌しながらこの塩基性溶液を中和した。この条件下で2酸(4)が沈殿した。この生成物を濾過によって分離し、脱塩水で洗浄して、真空乾燥機内でT=95℃で乾燥した。乾燥機内でリン5酸化物上でさらに乾燥すると、少し黄色い生成物82.9g(理論上94%)が残存した。
【0039】
【化10】

【0040】
容器内で、窒素下で、塩化チオニル150ml及び生成物(4)82.0g(0.279mol)及びジメチルホルムアミド1.5mlを添加することによって、2酸(4)をさらに2酸塩化物(5)に変換した。この反応混合物をまず、還流下で気体の形成を高めてT=50℃まで加熱した。次に、この混合物をさらに75℃まで加熱した。3時間後、加熱媒体を除去して、過剰な塩化チオニルを蒸留によって除去した。残存する生成物(5)が部分的に沈殿した。濾過によってこの固形生成物を単離し、冷却した乾燥エタノールで洗浄した。収率73g(理論上79.7%)。
【0041】
【化11】

【0042】
生成物(Ia)への最終的な変換は、反応容器内で、アントラニル酸(含量98重量%)61.5g(0.44mol)と一緒に水540mlを添加することによって引き起こした。次に、炭酸ナトリウム23.85g(0.225mol)を撹拌しながら、溶液(溶液I)をゆっくり形成させながら添加した。
【0043】
生成物(5)73g(0.22mol)をアセトン460mlに溶解した(溶液II)。この溶液を2.5時間かけて激しく撹拌しながら、アントラニル酸を含む水溶液(I)に添加した。少し発熱反応が生じた。その後、この反応混合物を還流下で2時間加熱した。冷却することによって、薄いベージュ色の沈殿物が形成し、周囲温度で濾過し、水で洗浄して、真空下で乾燥した。ベージュ色の粉末117.3gが残存した。この生成物を無水酢酸350mlに懸濁し、還流して3時間加熱すると、最終生成物が形成して徐々に沈殿した。アセトン20mlを添加すると、反応混合物を濾過して、アセトンで十分に洗浄した。真空中で乾燥すると、ほとんど無色の最終生成物(Ia)82.3g(理論上75.5%)が生じた。
【0044】
エチレン/メタクリル陰イオンコポリマーにおける適用試験
Surlyn(登録商標)9910型(Du Pont製)のエチレン/メタクリル陰イオンコポリマー(「Ionomer」、Zu陽イオンを含有)を加工及び長期曝露に使用した。このポリマー100部を対応するUV吸収剤0.1部と混合した。実施例1から6の調製物の組成を表2に挙げる。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例1〜5は比較実施例である。
【0047】
予備押し出しは、シングルスクリュー押出機T30型(製造元Collin)(NS型スクリュー、スクリュー構成1:3、鋳型直径=4mm)にて、T=210℃でスクリュー速度80rpmで実施した。その後、イオノマー小板(100x100x1mm)を、温度T=210℃、圧力最大100バール、サイクルタイム24.6秒で、注入成形機械T18(製造元Arburg)によって、スクリュー速度400rpmで加工した。このイオノマーの注入成形した小板をT=60℃の空気循環乾燥機に入れることによって、急速熱処理を実施した。黄変度(YI)は、Minolta3500d分光比色計CRLELL型を使用してDIN6167によって測定した。同機器で波長λ=700mmで測定することによって透明度を測定した。最後に、光沢は光沢計(Byk型)を使用して60゜の角度で測定した。24時間曝露した後の結果を表3に挙げる。
【0048】
【表3】

【0049】
この乾燥機試験の結果として、以下のことを示すことができる。
【0050】
・新規化合物(Ia)を含有するイオノマー小板の黄変度(YI)に関する色は、実施例1から3の市販の従来技術のUV吸収剤、特に実施例4のベンゾキサジノンより優れている。
【0051】
・透明度及び光沢のような変数は、ベンゾトリアゾール又はトリアジンをベースとしたUV吸主剤を含有するイオノマー小板と同様である。
【0052】
・従来のベンゾキサジノン型UV吸収剤及び対応する非置換イソベンゾキサジノンと比較して、本発明による置換イソベンゾキサジノンは明らかに優れた性能を示す。
【0053】
ポリカーボナートにおける適用試験
Lexan(登録商標)141型(GE Plasticsから購入)のポリカーボナートを加工及び長期曝露に使用した。使用前に、このポリマーを真空中でT=80℃で乾燥させた。このポリマー100部を対応するUV吸収剤0.1部と混合した。実施例7から9の調製物の組成を表4に挙げる。
【0054】
【表4】

【0055】
実施例7及び8は比較実施例である。
【0056】
顆粒ポリマー及び顆粒添加物の混合は、ポリエチレンバッグ内でドライブレンドすることによって行った。予備押し出しは、シングルスクリュー押出機T30型(製造元Collin)(NS型スクリュー、L/D=20、スクリュー構成1:3、鋳型直径=4mm)により、T=260℃(領域1)から280℃(領域2)までで、スクリュー速度80rpmで実施した。その後、ポリカーボナート小板(厚さ1mm)を温度T=265℃からT=275℃で、圧力最大100バール、サイクルタイム20秒で、注入成形機械T18(製造元Arburg)によって、スクリュー速度400rpmで加工した。
【0057】
注入成形した小板をT=120℃の空気循環乾燥機に入れることによって、急速熱処理(乾燥機老化)を実施した。光学比色計Minolta CM 3500d型で波長λ=700mmで測定することによって透明度を測定した。10日目まで曝露した後の結果を表5に挙げる。
【0058】
【表5】

【0059】
ポリカーボナート中のこの乾燥機試験の結果として、
・イソベンゾキサジノンを含むポリカーボナート小板の透明度はベンゾトリアゾール又はベンジリデン−ビス−マロネートをベースにしたUV吸収剤を含有する試料と比較して少し優れていることを示すことができる。
【0060】
ポリエチレンテレフタレート(PET)における適用試験
Arnite(登録商標)D04 300型Natural(DSMから購入)のポリエチレンテレフタレート(PET)を加工及び長期曝露に使用した。使用前に、このポリマーを真空中でT=120℃で8時間乾燥させた。このポリマー100部を亜リン酸塩型安定化剤Hostanox(登録商標)PAR24 0.2部及びフェノール型安定化剤Hostanox(登録商標)O16 0.05部(この後者2種類の安定化剤は基本安定化剤として使用されており、Clariantから市販されている。)及びさらにUV吸収剤0.25部と混合した。実施例10から16の調製物の組成を表6に挙げる。
【0061】
【表6】

【0062】
実施例11〜14及び16は比較実施例である。
【0063】
顆粒ポリマー及び顆粒添加物の混合は、ポリエチレンバッグ内でドライブレンドすることによって行った。予備押し出しは、シングルスクリュー押出機T30型(製造元Collin)(スクリュー構成1:3、鋳型直径=2mm)で、T=275℃(領域1)から285℃(領域2)でスクリュー速度80rpmで実施した。その後、ポリエチレンテレフタレート小板(厚さ1mm)を温度T=270〜275℃で、圧力最大85バール(保持圧力30バール)、サイクルタイム28秒で、注入成形機械T18(製造元Arburg)によって、スクリュー速度300rpmで加工した。
【0064】
注入成形した小板をT=80℃の空気循環オーブンに入れることによって、急速熱処理(オーブン老化)を実施した。UV−Aの人工的曝露は、波長λ=340mmの光を放射する8蛍光管を装着したAtlasUV−CON型曝露装置(ASTN D5208 cycleAによる)で、T=50℃で20時間及び温度40℃で暗所(4時間)(縮合相)を交互に行って実施した。黄変度(YI)は、Minolta CM 3500d型分光比色計を使用してDIN6167によって測定した。光沢の測定は、BYK型光沢計を使用して行った。
【0065】
オーブンでT=80℃で15日目まで曝露した後の結果を表7に挙げ、UV−Aの人工曝露型の結果は表8に示す。
【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
ポリエチレンテレフタレート(PET)小板によるこのオーブン試験の結果として、以下のことを示すことができる。
【0069】
・熱処理によって、新規化合物(Ia)及び(Ig)を含有する黄変度(YI)に関する色は、ベンジリデン−ビス−マロネート及びオキサニリド型の市販の従来技術のUV吸収剤より優れている。
【0070】
・新規イソベンゾキサジノン(Ia)及び(Ig)の透明度のような変数は、ベンジリデン−ビス−マロネート又はオキサニリド又は従来のベンゾキサジノンをベースとしたUV吸主剤を含有するポリエチレンテレフタレート小板より優れている。
【0071】
ポリアミド6.6(PA6.6)における適用試験
Frianyl(登録商標)PA6.6型A63E(Frisettaから購入)のポリアミド6.6を加工及び長期曝露に使用した。使用前に、このポリマーを真空中でT=80℃で8時間乾燥させた。このポリマー(調製物18以外)100部をホスホナイト型安定化剤Sandostab(登録商標)P−EPQ(基本安定化剤として使用)0.1部及びさらに様々な光安定化剤0.05〜0.25部(混合物又は単一成分)と混合した。実施例18から21の調製物の組成を表9に挙げる。
【0072】
【表9】

【0073】
実施例18〜20は比較実施例である。
【0074】
顆粒ポリマー及び顆粒添加物の混合は、ポリエチレンバッグ内でドライブレンドすることによって行った。予備押し出しは、シングルスクリュー押出機T30型(製造元Collin)(スクリュー構成1:3、鋳型直径=2mm)で、T=265℃(領域1)から275℃(領域5)まででスクリュー速度60rpmで実施した。その後、ポリアミド6.6小板(厚さ1mm)を温度T=285℃で、最大圧力80バール(保持圧力50バール)、サイクルタイム19秒で、注入成形機械T18(製造元Arburg)によって、スクリュー速度300rpmで加工した。この小板をWeather−O−Meter(D4892又はISO11341−Cによる):キセノン光、連続光、乾燥条件、光強度0.47W/m(340nm)、黒パネル温度63℃、相対湿度50%、ホウケイ酸塩Sフィルター、によって曝露した。黄変度(YI)は、Minolta CM 3500d型分光比色計を使用してISO11341によって測定した。光沢の測定は、BYK型光沢計を使用して行った。
【0075】
1250時間曝露後の光沢及び4500時間曝露後のΔEそれぞれの黄色度(YI)の結果を表10に示す。
【0076】
【表10】

【0077】
ポリアミド6.6小板によるこの試験の結果として、以下のことを示すことができる。
【0078】
・イソベンゾキサジノンを含有する調製物は、色及び光沢に関して性能を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のイソベンゾキサジノン。
【化1】

(式中、
は、C2n+1(nは8から30である。)を有する長鎖アルキル置換基、シクロアルキル置換基又はイソアルキル置換基を表し、
Xは、直接結合又は−O−、エステル基(−COO−)又は−S−を表し、
、R、R及びRは、独立して水素、ハロゲン(F、Cl、Br、I)又はC1〜12アルキルから選択される置換基を表す。)
【請求項2】
がC2n+1(nは8から18である。)を有する長鎖アルキル置換基又はイソアルキル置換基を表し、
Xが−O−を表し、および
、R、R及びRが独立して水素、フルオロ、クロロ又はC1〜4アルキルから選択される置換基を表す、請求項1に記載のイソベンゾキサジノン。
【請求項3】
がC2n+1(nは8から18である。)を有する長鎖アルキル置換又はイソアルキル置換基を表し、
Xが−O−を表し、および
、R、R及びRが独立して水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル又はtert−ブチルから選択される置換基を表す、請求項1に記載のイソベンゾキサジノン。
【請求項4】
式(I)の化合物が、式(Ia)から(Ig)の化合物から選択される請求項1に記載のイソベンゾキサジノン。
【化2】


【請求項5】
以下の段階、
5−ヒドロキシイソフタル酸の2エステル化、
ヒドロキシル基とブロモ−Rとの反応、
2エステルから2酸への加水分解、
2酸から2酸塩化物への変換、
2酸塩化物とアントラニル酸又はその誘導体との反応
を特徴とする請求項1に記載のイソベンゾキサジノンを調製する方法。
【請求項6】
光及び熱の損傷効果に対する有機ポリマーの安定化のための請求項1に記載のイソベンゾキサジノンの使用。
【請求項7】
化粧適用のための請求項1に記載のイソベンゾキサジノンの使用。
【請求項8】
少なくとも1種の請求項1に記載のイソベンゾキサジノンの少なくとも1種が有機ポリマーの重量をベースにして0.005から0.100重量パーセントの濃度で前記有機ポリマーに組み込まれることを特徴とする有機ポリマーの安定化方法。
【請求項9】
請求項1に記載のイソベンゾキサジノンを、有機ポリマーの重量をベースにして0.005から0.100重量パーセントの濃度で含む有機ポリマー組成物。
【請求項10】
前記有機ポリマーがポリカーボナート、ポリエステル又はポリアミドから選択される請求項9に記載の有機ポリマー組成物。

【公表番号】特表2008−501678(P2008−501678A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514210(P2007−514210)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001699
【国際公開番号】WO2005/118562
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(596081005)クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド (27)
【Fターム(参考)】