説明

新規インシュリン誘導体

【課題】ヒトインシュリン誘導体の提供。
【解決手段】親インシュリンと置換基を含むインシュリン誘導体であり、ここで置換基は、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位に存在するLys残基のε-アミノ基、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合し、但しB3がLysである場合、B29はGluではない。置換基は、6〜40の炭素原子を含む親油性基を含みうる。置換基の例は、6〜40、例えば12〜36の炭素原子を有するアシル基である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生理学的pH値で溶解し、長時間にわたる作用プロファイルを有する新規なヒトインシュリン誘導体に関する。また、本発明はそれらを含む医薬組成物、本発明のインシュリン誘導体を使用して糖尿病及び高血糖症を治療する方法、及び糖尿病及び高血糖症の治療におけるかかるインシュリン誘導体の使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
現在、1型糖尿病及び2型糖尿病の双方の糖尿病の治療は、いわゆる強化インシュリン療法に益々依存してきている。この療法によれば、患者は、基礎インシュリン必要量をカバーするための持続型インシュリンの1日1又は2回の注射を含む複数回の毎日のインシュリン注射に、食事に関連したインシュリン必要量をカバーするための速効型インシュリンのボーラス注射が補填された治療を受ける。
持続型インシュリン組成物は当該分野でよく知られている。例えば、持続型インシュリン組成物の主要な一タイプは、インシュリン結晶又は非晶質インシュリンの注入可能な水性懸濁液を含む。これらの組成物において、典型的に利用されるインシュリン化合物は、プロタミンインシュリン、亜鉛インシュリン、又はプロタミン亜鉛インシュリンである。
【0003】
インシュリン懸濁液の使用には、ある欠点がある。よって、正確な投与を確実にするためには、定まった量の懸濁液がバイアルから抜き出されるか、又はカートリッジから放出される前に、穏やかに振盪して、インシュリン粒子を均質に懸濁させなければならない。また、インシュリン懸濁液の保存においては、凝集塊形成又は凝固を避けるために、温度を、インシュリン溶液よりも狭い範囲内に保持しなければならない。
【0004】
持続型インシュリン組成物の他のタイプは、該溶液が注射される場合、pH値が上昇するためにインシュリンが沈殿してしまう生理学的pHより低いpH値の溶液である。これらの溶液の欠点は、注射時に組織内に形成される沈殿物の粒径分布、よって、医薬の放出プロファイルが、注射部位の血流と他のパラメータに些か予測不能な形で依存する。さらなる欠点は、インシュリンの固形粒子が局所的刺激として作用して、注射部位に組織の炎症を引き起こすおそれがあることである。
【0005】
ヒトインシュリンは3つの第1級アミノ基を有している:A-鎖とB-鎖のN末端基、LysB29のε-アミノ基である。これらの基の一又は複数において置換がなされたいくつかのインシュリン誘導体が従来から知られている。
【0006】
WO95/07931(Novo Nordisk A/S)には、LysB29のε-アミノ基が親油性置換基を有しているヒトインシュリン誘導体が開示されている。これらのインシュリン誘導体は長時間にわたる作用プロファイルを有しており、生理学的pH値で可溶性である。
国際特許出願WO96/29344は、親油性側鎖が親インシュリン分子のB26-B29位のLys残基又はB-鎖のN末端アミノ基に結合しているインシュリン誘導体に関する。
【0007】
WO97/31022には、B-鎖のN末端のα-アミノ基及び/又はB28、B29又はB30位のLysのε-アミノ基が、式-CO-W-COOHの置換基を有し、ここでWが12〜22の炭素原子を有する長鎖炭化水素基であるインシュリン誘導体が開示されている。これらのインシュリン誘導体は長時間にわたる作用プロファイルを有しており、生理学的pH値で可溶性である。
他のインシュリン誘導体が国際特許出願に開示されている。特許出願WO2005/012347には、親インシュリンのB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ酸又はB-鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基のいずれかに結合する側鎖を有するインシュリン誘導体が記載されている。
【0008】
残念なことに、多くの糖尿病患者は、グルコースレベルの密なコントロールを維持するために必要な多くの注射に伴う不快感のために、強化療法を受けるのを嫌がっている。この種の治療は精神的及び肉体的痛みの双方を伴うおそれがある。経口投与では、インシュリンは胃腸管で急速に分解され、血流中に吸収されない。よって、多くの研究者が、インシュリンを投与するための代替経路、例えば経口、直腸、経皮、及び経鼻経路について研究している。しかしながら、今までのところ、これらの投与経路では、インシュリンの効果的な吸収には至っていない。
【0009】
タンパク質の効果的な肺送達は、深部肺胞上皮にタンパク質を送達する能力に依存する。上部気道上皮に付着させられるタンパク質は、有意な程度では吸収されない。これは、上部を覆っている粘液が約30〜40μm厚であり、吸収に対する障壁として作用するためである。さらに、この上皮に付着されるタンパク質は、粘液線毛輸送により気道までに除去され、胃腸管を介して排除される。また、このメカニズムはいくつかのタンパク質粒子が低吸収であることの実質的一因となっている。タンパク質が吸収されずに、むしろこれらの経路により排除される程度は、それらの溶解度、それらのサイズ、並びに他のあまり理解されていない特徴に依存する。
【0010】
今日までに知られているインシュリン誘導体よりもより長時間にわたる作用プロファイルを有し、同時に生理学的pH値で可溶性であり、ヒトインシュリンに匹敵する効力のあるインシュリンが、今だに必要とされている。さらに、肺投与によく適したさらなるインシュリン製剤も必要とされている。
本発明は、該従来技術の問題に取り組み、これを多少とも解決するものである。
【0011】
(発明の概要)
本発明は、インシュリンのアシル化を、親インシュリンのA-鎖に存在するLys残基又はB-鎖に存在するLys残基で実施することができるという認識に基づいている。
本発明によれば、親インシュリンと置換基を含み、ここで置換基が、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位に存在するLys残基のε-アミノ基、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合し、但しB3がLysである場合、B29はGluではないインシュリン誘導体が提供される。
【0012】
Lys残基のε-アミノ基に結合する置換基は、親油性基、脂肪酸又は脂肪二酸、芳香族基、又はアミノ酸残基で、負に帯電可能な基を含んでいてもよいものを含みうる。
脂肪二酸は、典型的には炭素鎖中に4〜22、6〜22、8〜20、8〜18、4〜18、6〜18、8〜16、8〜22、8〜17、又は8〜15の炭素原子を有する。
脂肪二酸部分の非限定的な例は、式HOOC-(CH)r1-COOHを有する二酸であり、ここでrは4〜22である。脂肪二酸の例は、コハク酸、ヘキサン二酸、オクタン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、又はオクタデカン二酸である。
【0013】
(定義)
「desB30インシュリン」、「desB30ヒトインシュリン」は、B30アミノ酸残基を欠く天然インシュリン又はその類似体(アナログ)を意味する。同様に、「desB29desB30インシュリン」又は「desB29desB30ヒトインシュリン」は、B29及びB30アミノ酸残基を欠く天然インシュリン又はその類似体を意味する。
「B(1-29)」及び「B-鎖」は、B30アミノ酸残基を欠く天然インシュリンB-鎖又はその類似体を意味する。「A(1−21)」及び「A-鎖」は、天然インシュリンA-鎖又はその類似体を意味する。「A(1-24)」は、A-鎖のC末端が3つのコード可能アミノ酸で伸長されている修飾A-鎖を意味する。
「B1」、「A1」等は、インシュリンのB-鎖において1位(N末端から数えて)にあるアミノ酸残基、及びインシュリンのA-鎖において1位(N末端から数えて)にあるアミノ酸酸基をそれぞれ意味する。特定の位置にあるアミノ酸残基は、例えばPheB1として表され、これは、B1位にあるアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味している。
【0014】
ここで使用される「インシュリン」とは、CysA7とCysB7の間と、CysA20とCysB19の間にジスルフィド架橋を、またCysA6とCysA11の間に内部ジスルフィド架橋を有するヒトインシュリン、ブタインシュリン、及びウシインシュリンを意味する。
「POT」は、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子である。
「リーダー」は、プレ-ペプチド(シグナルペプチド)及びプロ-ペプチドからなるアミノ酸配列を意味する。
【0015】
「シグナルペプチド」なる用語は、タンパク質の前駆体においてN末端配列として存在するプレ-ペプチドを意味するものと理解される。シグナルペプチドの機能は、異種タンパク質の小胞体への転位置を容易にすることである。シグナルペプチドはこのプロセスの過程で通常は切断される。シグナルペプチドはタンパク質を生産する酵母に対して異種性又は相同的であってもよい。本発明のDNA構築物で使用され得る多くのシグナルペプチドには、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド、又は任意の機能的類似体(Egel-Mitaniら、(1990) YEAST 6:127-137及びUS5726038)、MFa1遺伝子のα-因子シグナル(Thorner(1981)、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae, Strathernら編, pp 143-180, Cold Spring Harbor Laboratory, NY、及びUS487000)が含まれる。
【0016】
「プロ-ペプチド」なる用語は、その機能が、発現されたポリペプチドを小胞体からゴルジ体へ、さらには培地中への分泌のために分泌小胞へ向けることを可能にすることであるポリペプチド配列を意味する(すなわち、ポリペプチドは、酵母細胞のペリプラズム空間中に細胞壁又は少なくとも細胞膜を通って出て行く)。プロ-ペプチドは酵母α-因子プロ-ペプチドであってよい。US4546082及び4870008を参照。またプロ-ペプチドは、合成プロ-ペプチド、つまり天然には見出されないプロ-ペプチドであってもよい。適切な合成プロ-ペプチドはUS5395922;5795746;5162498及びWO98/32867に開示されているものである。プロ−ペプチドは、Lys-Arg配列又はその任意の機能的類似体等、C末端にエンドペプチダーゼプロセシング部位を含みうる。
【0017】
ここで使用される「インシュリン前駆体」とは、適切なプロテアーゼ、例えばトリプシンを用いて切断した後に、2本鎖インシュリン、インシュリン類似体、又はインシュリン誘導体を生じる単鎖ポリペプチドを意味する。このようなインシュリン前駆体の例は「B'A」であり、これは、B-鎖のC末端アミノ酸残基が、A-鎖中のA1アミノ酸残基に直接結合している単鎖インシュリン前駆体である。このようなB'Aインシュリン前駆体の特定例は、ArgB29がGlyA1に直接結合しているLysA9 ArgB29 desB30 B'Aである。
【0018】
ここで使用される「インシュリン類似体」とは、天然インシュリン中に生じる少なくとも一のアミノ酸残基を欠失及び/又は置換することにより、及び/又は少なくとも一のアミノ酸残基を付加することにより、例えばヒトインシュリン等の自然に生じるインシュリンの構造から形式上誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを意味する。付加及び/又は置換されたアミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の自然に生じるアミノ酸残基又は純粋に合成されたアミノ酸残基のいずれかとすることができる。
【0019】
インシュリン類似体の例は、desB30ヒトインシュリン類似体;B1及びB2の一方又は双方が欠失しているインシュリン類似体;A-鎖及び/又はB-鎖がN末端伸長を有しているインシュリン類似体、及びA-鎖及び/又はB-鎖がC末端伸長を有しているインシュリン類似体である。よって、1又は2のArgがB1位に付加されてもよい。また、一又は複数のB26-B30が欠失されていてもよい。
【0020】
「親インシュリン」とは、A-鎖及び/又はB-鎖にLys残基を一つのみ有するインシュリン類似体を意味し、ここでLys残基はB29位には存在しない。
親インシュリンの特定の例は、LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、及びLysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンである。
【0021】
ここで使用される「インシュリン誘導体」とは、例えばインシュリン骨格の一又は複数の位置に置換基を導入することにより、又はインシュリンのアミノ酸残基の基を酸化又は還元することにより、又は遊離のカルボキシル基をエステル基に転換させることにより、又は遊離のアミノ基又はヒドロキシ基をアシル化することにより、化学的に修飾されたインシュリン類似体又は自然に生じるインシュリンを意味する。
本発明のインシュリン誘導体は、次の規則に従い命名される:配列は化学的修飾から出発し、A-鎖が続き、B-鎖で終わる。アミノ酸残基はヒトインシュリンのそれぞれの対応物の名で命名され、変異及びアシル化が明示的に記載されるが、A-鎖及びB-鎖中の不変のアミノ酸残基は記載されない。例えば、ヒトインシュリンと比較して次の変異LysA9、ArgB29、desB30を有し、LysA9のNでミリスチルによりアシル化されているインシュリンは、NεA9-ミリスチルLysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンと命名される。
本発明のインシュリン誘導体が「生理学的pH値で可溶性である」と述べられている場合、それは、インシュリン誘導体が、生理学的pH値で十分に溶解されたインシュリン組成物を調製するために使用可能であることを意味する。このような有益な溶解性は、ビヒクルに含まれる一又は複数の成分とインシュリン誘導体との間の好ましい相互作用の結果として、又はインシュリン誘導体単独の本来の特性によるものである。
【0022】
アミノ酸の略語:

【0023】
「側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基」なる表現は、Asp、Glu及びhGlu等のアミノ酸残基のことである。アミノ酸はL-又はD-立体配置のいずれかとすることができる。何も特定されない場合、アミノ酸残基はL-立体配置であると理解される。
「中性側鎖を有するアミノ酸残基」なる表現は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Pro、Ser、Thr、Cys、Met、Tyr、Asn及びGln等のアミノ酸残基のことである。
【0024】
実施例で使用される略語:
CV カラム容量
EDTA エチレンジアミン四酢酸
HI ヒトインシュリン
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HSA ヒト血清アルブミン
LC 液体クロマトグラフィー
MALDI マトリックス支援レーザー脱離イオン化
MS 質量分析
NMP N-メチル-2-ピロリドン
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PMSF フッ化フェニルメチルスルホニル
RT 室温
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SPA シンチレーション近接アッセイ
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
vol% 容量パーセント
O.D. 光学密度=吸光度
X2モノマー AspB9 GluB27ヒトインシュリン
hGlu ホモ-グルタミン酸
Su N-スクシンイミジル
hGluはホモグルタミン酸である。
TFA: トリフルオロ酢酸
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
EtOAc: 酢酸エチル
THF: テトラヒドロフラン
TSTU: O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム-テトラフルオロボラート
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン
α-Aspは、-HNCH(CO-)CHCOOHのL型である。
β-Aspは、-HNCH(COOH)CHCO-のL型である。
α-Gluは、-HNCH(CO-)CHCHCOOHのL型である。
γ-Gluは、-HNCH(COOH)CHCHCO-のL型である。
α-hGluは、-HNCH(CO-)CHCHCHCOOHのL型である。
δ-hGluは、-HNCH(COOH)CHCHCHCO-のL型である。
β-Alaは、-NH-CH-CH-COOHのL型である。
Sarはサルコシン(N-メチルグリシン)である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、親インシュリンと置換基を含むインシュリン誘導体に関し、ここで置換基は、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位に存在するLys残基のε-アミノ基、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合し、但しB3がLysである場合、B29はGluではない。
【0026】
一態様では、本発明のインシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA8位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA9位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA14位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA18位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA21位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA22位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、本発明のインシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA23位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
一態様では、本発明のインシュリン誘導体の置換基は、親インシュリンのA-鎖のA24位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
【0027】
本発明のインシュリン誘導体のリジン残基の置換基は、6〜40の炭素原子を含む親油性基を含みうる。置換基の例は、6〜40、例えば12〜36の炭素原子を有するアシル基である。置換基の例は、12〜36の炭素原子を有するアシル基、又はアシル基の形態の親油性置換基が次のものである:CH-(CH)-CO-、(COOH)-(CH)-CO-、(NH-CO)-(CH)-CO-、HO-(CH)-CO-、ここで4≦n≦38、例えば6≦n≦36、8≦n≦34、12≦n≦32又は12≦n≦28である。
本発明の一態様では、アシル基は、5-αリトコール酸又は5-βリトコール酸である。
【0028】
一態様では、アシル基は、コール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸又はコラン酸の5-α又は5-β異性体である。
一態様では、アシル基は、デヒドロリトコール酸の5-α又は5-β異性体である。
一態様では、アシル基は、フシジン酸、フシジン酸誘導体、又はグリシルレチン酸である。
一態様では、アシル基は、アミノ酸リンカーを使用してリジン残基に結合している。この態様では、アシル基は、有利には、γ-又はα-グルタミルリンカーを介して、又はβ-又はα-アスパルチルリンカーを介して、又はα-アミド-γ-グルタミルリンカーを介して、又はα-アミド-β-アスパルチルリンカーを介して、リジン残基に結合している。
【0029】
本発明の一態様では、インシュリン誘導体の置換基は、次の一般式:

を有し、
ここで、Wは、
・側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基で、そのカルボン酸基の一つが、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド基を形成する残基;又は
・アミド結合を介して互いに結合した2、3又は4のα-アミノ酸残基からなる鎖で、アミド結合を介して、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する鎖であり、Wのアミノ酸残基は中性側鎖を有するアミノ酸残基、及びWが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一のアミノ酸残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されたもの;又は
・Xから親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり;
Xは:
・-CO-;
・-CH(COOH)O-;
・-CON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CONHCH(COOH)(CH)NHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHO-;又は
・-CON(CHCOOH)CHCHO-;
であり、
但し:
a)Wがアミノ酸残基又はアミノ酸残基鎖である場合、X中の下線が付されたカルボニル炭素は、W中のアミノ基とアミド結合を形成し、又は
b)Wが共有結合である場合、X中の下線が付されたカルボニル炭素は、親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6〜32の範囲の整数である-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の総数が10〜32の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;
・v及びwの合計が6〜30の範囲になるようにv及びwが整数であるか又はそれらの一方が0である式-(CH)(CH)-の二価の炭化水素鎖
であり;
Zは:
・-COOH;
・-CO-Asp;
・-CO-Glu;
・-CO-Gly;
・-CO-Ser;
・-CH(COOH)
・-N(CHCOOH)
・-SOH;又は
・-POH;
であり、またその任意のZn2+錯体である。
【0030】
本発明の一態様では、側鎖-W-X-Y-Zは、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。この態様のさらなる特定の一態様では、側鎖-W-X-Y-Zは、A8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23、A24、又はB1、B2、B3、B4、B20、B21、又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する。
【0031】
置換基-W-X-Y-Zの基礎構造Wは、共有結合とすることができる。また、Wは側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基であってよく、該残基は、そのカルボン酸基の一つと、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基を有するアミド基を形成し、ここで該残基は全体で4〜10の炭素原子を有する。特に、Wは例えばリンカーであってもよい。
【0032】
一態様では、Wは、尿素リンカーを介して親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合可能である。
一態様では、リンカーは、アミド結合を介して共に結合する1-4のアミノ酸残基を有し、該アミド結合の少なくとも一は遊離のカルボン酸基又は中性pHで負に帯電する基を有する。
一態様では、リンカーはアミノ酸残基、2-4のアミノ酸残基のペプチド鎖であるか、又はα-Asp、β-Asp、α-Glu、γ-Glu、α-hGlu及びδ-hGlu;-N(CHCOOH)CHCO-;-N(CHCHCOOH)CHCHCO-;-N(CHCOOH)CHCHCO-又は-N(CHCHCOOH)CHCO-であるモチーフを有する。
リンカーは、典型的には、アミノ酸残基又は4までのアミノ酸を含むアミノ酸残基の鎖である。特に、リンカーは、α-Asp;β-Asp;α-Glu;γ-Glu;α-hGlu;δ-hGlu;-N(CHCOOH)CHCO-、-N(CHCHCOOH)CHCHCO-;-N(CHCOOH)CHCHCO-、又は-N(CHCHCOOH)CHCO-からなる群から選択されてよい。
【0033】
さらなる態様では、リンカーは、一方が側鎖にカルボン酸基と4〜10の炭素原子を有し、他方がカルボン酸基を有しないが2〜11の炭素原子を有する、2つのアミノ酸残基からなる鎖とすることができる。カルボン酸基を有しないアミノ酸残基は、中性のα-アミノ酸残基とすることができる。このようなリンカーの具体例は:α-Asp-Gly;Gly-α-Asp;β-Asp-Gly;Gly-β-Asp;α-Glu-Gly;Gly-α-Glu;γ-Glu-Gly;Gly-γ-Glu;α-hGlu-Gly;Gly-α-hGlu;δ-hGlu-Gly;及びGly-δ-hGluである。
【0034】
さらなる態様では、リンカーは、独立して4〜10の炭素原子を有し、双方が側鎖にカルボン酸基を有する、2つのアミノ酸残基からなる鎖である。これらのアミノ酸残基の一方又は双方は、α-アミノ酸残基とすることができる。これらのリンカーの具体例は:α-Asp-α-Asp;α-Asp-α-Glu;α-Asp-α-hGlu;α-Asp-β-Asp;α-Asp-γ-Glu;α-Asp-δ-hGlu;β-Asp-α-Asp;β-Asp-α-Glu;β-Asp-α-hGlu;β-Asp-β-Asp;β-Asp-γ-Glu;β-Asp-δ-hGlu;α-Glu-α-Asp;α-Glu-α-Glu;α-Glu-α-hGlu;α-Glu-β-Asp;α-Glu-γ-Glu;α-Glu-δ-hGlu;γ-Glu-α-Asp;γ-Glu-α-Glu;γ-Glu-α-hGlu;γ-Glu-β-Asp;γ-Glu-γ-Glu;γ-Glu-δ-hGlu;α-hGlu-α-Asp;α-hGlu-α-Glu;α-hGlu-α-hGlu;α-hGlu-β-Asp;α-hGlu-γ-Glu;α-hGlu-δ-hGlu;δ-hGlu-α-Asp;δ-hGlu-α-Glu;δ-hGlu-α-hGlu;δ-hGlu-β-Asp;δ-hGlu-γ-Glu;及びδ-hGlu-δ-hGluである。
【0035】
さらなる態様では、リンカーは、独立して4〜10の炭素原子を有する、3つのアミノ酸残基からなる鎖であり、鎖のアミノ酸残基は、中性側鎖を有する残基、及び鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一の残基を有するように、側鎖にカルボン酸基を有する残基からなる群から選択される。一態様では、アミノ酸残基はα-アミノ酸残基である。
さらなる態様では、リンカーは、独立して4〜10の炭素原子を有する、4つのアミノ酸残基からなる鎖であり、鎖のアミノ酸残基は、中性側鎖を有する基、及び鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一の残基を有するように、側鎖にカルボン酸基を有する残基から選択される。一態様では、アミノ酸残基はα-アミノ酸残基である。
【0036】
側鎖-W-X-Y-Zの基礎構造Wは、式-O-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
【0037】
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-COCH(COOH)O-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCOOH)CHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
【0038】
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCHCOOH)CHCHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
【0039】
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCHCOOH)CHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
さらなる態様では、側鎖の基礎構造Xは、式-CON(CHCOOH)CHCHO-の基とすることができ、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、Wにおけるアミノ基とアミド基を形成し、又はWが共有結合である場合は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基と結合を形成する。
【0040】
側鎖-W-X-Y-Zの基礎構造Yは、式-(CH)-の基とすることができ、ここでmは6〜32、8〜20、又は12〜20の範囲の整数であるか、又はmは11、12、13、14、15又は16である。
他の態様では、Yは、1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が6〜32、10〜32、又は12〜20の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖である。
一態様では、Yは、v及びwの合計が6〜30又は10〜20の範囲になるように、v及びwが整数又はそれらのひとつが0である、式-(CH)(CH)-の二価の炭化水素鎖である。
【0041】
一態様では、側鎖-W-X-Y-Zの基礎構造Zは-COOHであり、但し、Wが共有結合であり、Xが-CO-である場合は、Zは-COOHとは異なる。
一態様では、Zは-CO-Aspである。
一態様では、Zは-CO-Gluである。
一態様では、Zは-CO-Glyである。
一態様では、Zは-CO-Serである。
一態様では、Zは-CH(COOH)である。
一態様では、Zは-N(CHCOOH)である。
一態様では、Zは-SOHである。
一態様では、Zは-POHである。本発明の一態様では、インシュリン誘導体は、次の式:

を有し、ここでInsは親インシュリン部分であり、-C(O)-X-W-[CH]-X-Y-Q-Zは置換基であり、ここでInsは、置換基において、X、W、[CH、Y又はQに結合したCO-基、及びInsのA又はB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基の間のアミド結合を介して置換基に結合しており、
は、
・nが1、2、3、4、5又は6である-(CH)
・Rが、水素又は-(CH)-COOH;-(CH)-SOH;-(CH)-PO;-(CH)-O-SO;-(CH)-O-PO;1又は2の-(CH)-O-COOH基で置換されたアリール基;-(CH)-テトラゾール-5-イルで、pが1〜6の範囲の整数である、NR;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-(CR)-NR-CO-;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-((CR)q1-NR-CO)2−4-;又は
・結合;
であり、
Wは、-COOH、-SOH、及び-PO及びテトラゾール-5-イルからなる群から選択される1又は2の基で置換されていてもよいアリーレン又はヘテロアリーレンであり、又はWは結合であり;
mは0、1、2、3、4、5又は6であり;
Xは、
・-O-;
・次の式

のものであり;
ここでRは上述したものであるか;又は
・結合;
であり;
Yは、
・R及びRがH、-COOH、結合又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-(CR)-NR-CO-;
・Rが上述したものであるNR;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-((CR)q1-NR-CO)2−4-;又は
・結合;
であり;
Qは、
・rが4〜22の整数である、-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が4〜22の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;又は
・Q-Qが互いに独立して、O;S又は結合とすることができ;s、w、t及びzの合計が4〜22の範囲となるように、s、w、t及びzは互いに独立してゼロ又は1〜10の整数であり、v、v及びvが互いに独立して、ゼロ又は1とすることができ、但しQ、Q、Q、Q、Q及びQは互いに結合を形成していなくてもよく、s、w、t及びzがゼロ又は1である場合は、いずれの-CH-も次の原子:O、Sの2つに結合していない、式-(CH)s--(C)v1-Q-(CH)-Q-(C)v2-Q-(CH)-Q-(C)v3-Q-(CH)-の2価の鎖;
であり;また、
Zは:
-COOH;
-CO-Asp;
-CO-Glu;
-CO-Gly;
-CO-Ser;
-CH(COOH)
-N(CHCOOH)
-SO
-PO
O-SOH;
O-PO
-テトラゾール-5-イル、又は
が、-COOH、-SOH、及び-PO及びテトラゾール-5-イルから選択される1又は2の基で置換されたアリーレン又はヘテロアリーレンである、-O-W
であり、またその任意のZn2+錯体である。
【0042】
本発明の一態様では、Xは、nが1、2、3、4、5又は6である-(CH)とすることができる。
本発明の一態様では、Xは、Rが、水素又は-(CH)-COOH;-(CH)-SOH;-(CH)-PO;-(CH)-O-SO;-(CH)-O-PO;1又は2の-(CH)-O-COOH基で置換されたアリール基;-(CH)-テトラゾール-5-イルで、pが1〜6の範囲の整数である、NRとすることができる。
一態様では、Xは-(CR)-NR-CO-とすることができる。例えばXは、-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-又は-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-とすることができる。
一態様では、Xは-((CR)q1-NR-CO)2−4-とすることができ、又はXは結合とすることができる。
【0043】
一態様では、Wはフェニレンとすることができ、又はWは窒素、酸素又は硫黄を有する5-7員の複素環系とすることができる。Wが5員の複素環である場合、それは少なくとも一の酸素を有することができる。
一態様では、Wは、-COOHで置換されていてもよいアリーレンである。一態様では、Wは結合である。
【0044】
一態様では、Xは-O-、次の式

のものであり、ここでRは水素又は-(CH)-COOHとすることができる。一態様では、pは1又は2である。
一態様では、Xは結合である。
【0045】
一態様では、Yは-(CR)-NR-CO-であり、ここで、qは1であり、R及びRは水素である。例えば、Yは、-CH-NH-CO-又は-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-とすることができる。
一態様では、Yは(CR)q1-NR-CO-であり、ここで、R及びRはH、-COOH、又はOHとすることができ、qは1-6であり、Rは上述したものである。
一態様では、Yは-((CR)q1-NR-CO)2−4-であり、ここで、R及びRはH、-COOH、又はOHとすることができ、qは1-6であり、Rは上述したものである。一態様では、Yは結合である。
【0046】
一態様では、Qは-(CH)-であり、ここでrは4〜22、8〜20、又は10〜18の整数である。例えば、rは12、13、14、15、16、17又は18とすることができる。
一態様では、Qは、1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が4〜22の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の鎖である。
一態様では、Qは、式-(CH)-Q-(C)v1-Q-(CH)-Q-(C)v2-Q-(CH)-Q-(C)v3-Q-(CH)-の2価の鎖であり、ここでQ-Qは互いに独立して、O;S又は結合とすることができ;s、w、t及びzの合計が4〜22の範囲となるように、s、w、t及びzは互いに独立してゼロ又は1〜10の整数であり、v、v及びvは互いに独立して、ゼロ又は1とすることができる。
一態様では、sは1又は2、9、10又は11である。一態様では、vは1又は2である。一態様では、Q、Q、Q及びQは全て結合である。一態様では、QはS又はOである。一態様では、wは2である。一態様では、vは1であり、tは1である。
【0047】
一態様では、Zは、-COOH、-CO-Asp、-CO-Glu、-CO-Gly、-CO-Ser、-CH(COOH)、-N(CHCOOH)、-SOH、-PO、-O-SOH、-O-PO、又は-テトラゾール-5-イルである。
一態様では、Zは-O-Wであり、ここでWは、-COOH、-SOH、及び-PO、及びテトラゾール-5-イルから選択される1又は2の基で置換されたアリーレン又はヘテロアリーレンである。
【0048】
本発明のインシュリン誘導体のインシュリン部分−本文中では親インシュリンとも称される−は、ただ一つのリジン残基を有していてもよく、インシュリン類似体のB-鎖のB29位に存在しないインシュリン類似体とすることができる。このリジン残基は、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位の一つにあってもよいし、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の、B-鎖のLys残基のε-アミノ基に対していてもよい。
親インシュリンは、例えばヒトインシュリン又はブタインシュリンであってよく、ここでB29位のLys残基は置換されており、Lys残基はA-鎖又はB-鎖の位置に挿入されており、該位置はB-鎖のB29ではない。
【0049】
一態様では、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位の一つにあるアミノ酸残基はLys残基である。
一態様では、親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸残基はLys残基である。
【0050】
親インシュリン類似体の一群において、B29位のアミノ酸残基はArg、Pro又はThrである。
親インシュリン類似体の一群において、B1及び/又はB30位のアミノ酸残基は欠失している。
【0051】
親インシュリン類似体の一群において、B29位のアミノ酸残基はArg、Pro又はThrであり、A又はB鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23、A24、B1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸残基はLysである。この群の特定の例は、LysA17 ArgB29ヒトインシュリンである。
親インシュリン類似体の一群において、B30位のアミノ酸基は欠失しており、B29位のアミノ酸残基はLysを除く任意のコード可能アミノ酸であってよく、A-又はB-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23、A24、B1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸残基はLysであり、但し、LysがB3位にある場合、B29はGluではない。この群の親インシュリン類似体からの特定の例は、LysA12 HisB29 desB30ヒトインシュリンである。
【0052】
親インシュリン類似体の一群において、B29及びB30位にあるアミノ酸残基は欠失しており、A-又はB-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23、A24、B1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸残基はLysである。この群の親インシュリン類似体からの特定の例は、LysA8 desB29 desB30ヒトインシュリンである。
親インシュリン類似体の一群において、B26、B27、B28、B29及びB30位にあるアミノ酸残基は、Lysを除く任意のコード可能アミノ酸であるか、又は欠失していてよく、A-又はB-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23、A24、B1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸はLysであり、但し、Lysが3位にある場合は、B29はGluではない。この群の親インシュリン類似体からの特定の例は、LysB4 desB26 desB27 desB28 desB29 desB30ヒトインシュリンである。
【0053】
親インシュリン類似体の一群において、A-鎖は、1、2又は3のアミノ酸残基でC末端が伸長しており、伸長したアミノ酸残基の位置はA22、A23又はA24位である。Lysは、A-鎖のA22、A23又はA24位のアミノ酸の一つを置換している。伸長部の任意の1又は2の残ったアミノ酸位置は、Lysを除く、任意のコード可能アミノ酸残基であってよい。この群の親インシュリン類似体からの特定の例は、LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、又はGlyA22 LysA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリンである。
【0054】
本発明の一態様では、親インシュリンのA21位にあるアミノ酸残基は、Gly又はAsnである。親インシュリンのA23又はA24位にあるアミノ酸残基がLysである場合、親インシュリンのA21位にあるアミノ酸残基はGly、Ala又はGlnであるべきである。
一態様では、親インシュリンのB3位にあるアミノ酸残基はLysであるか、又は親インシュリンのB28位にあるアミノ酸残基はAspである。
親インシュリン類似体の具体例は、ArgB29ヒトインシュリン又はArgB29desB30ヒトインシュリンである。
【0055】
さらなる態様では、インシュリン誘導体は、NεA8-ミリスチル LysA8 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA10-ミリスチル LysA10 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA12-ミリスチル LysA12 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA14-ミリスチル LysA14 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA17-ミリスチル LysA17 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA18-ミリスチル LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA21-ミリスチル LysA21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB1-ミリスチル LysB1 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB2-ミリスチル LysB2 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB4-ミリスチル LysB4 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB20-ミリスチル LysB20 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB21-ミリスチル LysB21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン及びNεB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンからなる群から選択される。
【0056】
さらなる態様では、インシュリン誘導体は、NεA8-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA8 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA9-ω-カルボキシ−ペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA10-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA10 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA12-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA12 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA14-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA14 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA17-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA17 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA21-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB1-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB1 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB2-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB2 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB4-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB4 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB20-ω-カルボキシペンタ−デカノイル-γ-Glu LysB20 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεB21-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン及びNεB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンからなる群から選択される。
【0057】
さらなる態様では、インシュリン誘導体は、NεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 GlyA21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 AlaA21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 GlnA21 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA23 GlyA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA23 AlaA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA23 GlnA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA24-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA24 GlyA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA24-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA24 AlaA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA24-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA24 GlnA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA22-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA23 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA23 GlyA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA23 AlaA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA23-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA23 GlnA21 GlyA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA24-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA24 GlyA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、NεA24-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA24 AlaA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリン及びNεA24-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-Glu LysA24 GlnA21 GlyA22 GlyA23 ArgB29 desB30ヒトインシュリンからなる群から選択される。
【0058】
本発明のインシュリン誘導体は、本質的には亜鉛フリーの化合物の形態又は亜鉛錯体の形態で提供され得る。本発明のインシュリン誘導体の亜鉛錯体が提供される場合、約2の亜鉛イオン、約3の亜鉛イオン、又は約4の亜鉛イオン又は12までの亜鉛イオンが、インシュリン誘導体の6つの分子(ヘキサマー)に結合可能である。インシュリン誘導体の亜鉛錯体の溶液は、このような種の混合物を含んでいるであろう。
医薬組成物の亜鉛含有量は、インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンであってよい。亜鉛含有量の上限は、インシュリンの沈殿を引き起こし、溶液を懸濁液に変える亜鉛の含有量である。
【0059】
本発明の一態様では、医薬組成物は、インシュリン誘導体6分子当たり約4.3〜約12の亜鉛イオン、又はインシュリン誘導体6分子当たり約4.5〜約12の亜鉛イオンを含有している。本発明のさらなる態様では、医薬組成物は、インシュリン誘導体6分子当たり約5〜約11.4の亜鉛イオン、又はインシュリン誘導体6分子当たり約5.5〜約10の亜鉛イオンを含有する。
【0060】
本発明は、インシュリン誘導体を含有する医薬組成物を製造するための方法を含み、ここでインシュリン誘導体6分子当たり約4の亜鉛イオンが組成物に加えられる。
本発明の一態様では、前記方法は、インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンを組成物に加えることを含む。
本発明の一態様では、前記方法は、インシュリン誘導体6分子当たり約4.3〜約12の亜鉛イオンを組成物に加えることを含む。
【0061】
本発明のさらなる態様では、インシュリン誘導体6分子当たり約4.5〜約12の亜鉛イオンが組成物に加えられ、例えばインシュリン誘導体6分子当たり約5〜約11.4の亜鉛イオンが組成物に加えられ、又はインシュリン誘導体6分子当たり約5.5〜約10の亜鉛イオンが組成物に加えられる。
【0062】
本発明の一態様は、医薬組成物を製造するための方法に関する。本方法は、保存料を添加する前に、組成物に亜鉛を加えることを含む。本発明の一態様では、インシュリン誘導体6分子当たり約4.5〜約12の亜鉛イオンが、保存料の添加前に組成物に付加され、又は例えば、インシュリン誘導体6分子当たり約5〜約11.4の亜鉛イオンが、保存料の添加前に組成物に付加され、例えばインシュリン誘導体6分子当たり約5.5〜約10の亜鉛イオンが、保存料の添加前に組成物に付加される。
【0063】
本発明の一態様では、本方法は、保存料の添加後に、約12までの亜鉛イオンが組成物に付加されることを含む。
本発明の一態様では、インシュリン誘導体の6つ分子あたり少なくとも0.5の亜鉛イオンが、保存料の添加後に組成物に付加され、又はインシュリン誘導体の6つの分子あたり少なくとも1の亜鉛イオンが、保存料の添加後に組成物に付加される。
【0064】
本発明のさらなる態様では、インシュリン誘導体6分子当たり約2、3、4、5又は6を越える亜鉛イオンが、保存料の添加後に組成物に付加される。
本発明のさらなる態様では、インシュリン誘導体6分子当たり約4.5〜約12の亜鉛イオンが、保存料の添加後に組成物に付加され、又はインシュリン誘導体6分子当たり約5.5〜約10の亜鉛イオンが、保存料の添加後に組成物に付加される。
【0065】
本発明の一態様では、本方法は、保存料の添加前に亜鉛の一部、及び保存料の添加後に亜鉛の一部を加えることを含む。
一態様では、本方法は、インシュリン誘導体のの6つの分子当たり少なくとも1の亜鉛イオンを、保存料の添加前に付加し、インシュリン誘導体6分子当たり少なくとも1の亜鉛イオンを、保存料の添加後に加えることを含む。
【0066】
本発明の他の態様では、本方法は、インシュリン誘導体6分子当たり少なくとも1、2、3、4、5又は6の亜鉛イオンを、保存料の添加前に付与し、インシュリン誘導体6分子当たり少なくとも2、3、4、5又は6の亜鉛イオンを、保存料の添加後に付与することを含む。
本発明の一態様では、保存料の添加前に付加される亜鉛イオンの数は、インシュリン誘導体6分子当たり少なくとも3の亜鉛イオンであり、保存料の添加後に付加される亜鉛イオンの数は、インシュリン誘導体6分子当たり少なくとも3の亜鉛イオンである。
【0067】
本発明の一態様では、添加される保存料はフェノール及び/又はm-クレゾールである。
さらなる態様では、本発明は、製薬的に許容可能な担体と共に、本発明のインシュリン誘導体又は本発明のインシュリンの亜鉛錯体の治療的有効量を含有し、1型糖尿病、2型糖尿病、及びこのような治療が必要な患者における高血糖症に起因する他の症状を治療するのに提供可能な医薬組成物に関する。
インシュリン誘導体、又は本発明のインシュリン誘導体又はインシュリン誘導体の亜鉛錯体を含有する医薬組成物は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の症状を治療するのに使用される医薬組成物の製造に使用可能である。
【0068】
本発明のさらなる態様は、1型糖尿病、2型糖尿病、及びこのような治療が必要な患者における高血糖症に起因する他の症状を治療するための、製薬的に許容可能な担体及び添加剤と、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体の混合物に、本発明のインシュリン誘導体又はインシュリン誘導体の亜鉛錯体を治療的有効量含有せしめてなる医薬組成物を提供することにある。
【0069】
一態様では、本発明は、AspB28ヒトインシュリン;LysB28ProB29ヒトインシュリン及びLysB3GluB29ヒトインシュリンからなる群から選択される、ヒトインシュリン又は速効型インシュリン類似体と、本発明のインシュリン誘導体又はインシュリン誘導体の亜鉛錯体の混合物である、医薬組成物を提供する。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、製薬的に許容可能な担体及び添加剤と、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体の混合物に、本発明のインシュリン誘導体又はインシュリンの亜鉛錯体を含有せしめてなる、1型糖尿病、2型糖尿病、及びこのような治療が必要な患者における高血糖症に起因する他の症状を治療するための、肺投与に関する。
本発明のインシュリン誘導体及び速効型インシュリン類似体は、約90/10%;約70/30%又は約50/50%の比率で混合することができる。
【0071】
本発明のさらなる態様は、製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と共に、本発明のインシュリン誘導体を治療的有効量患者に投与することを含む、1型糖尿病、2型糖尿病、及びこのような治療が必要な患者における高血糖症に起因する他の症状を治療するための方法を提供するものである。
本発明のさらなる態様は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の症状を治療するのに使用される医薬組成物を製造するための方法を提供するものであり、該組成物は、製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と共に、本発明のインシュリン誘導体を含有している。
【0072】
本発明のさらなる態様は、製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体の混合物に、治療的有効量の本発明のインシュリン誘導体が入ったものを患者に投与することを含む、1型糖尿病、2型糖尿病、及びこのような治療が必要な患者における高血糖症に起因する他の症状を治療するための方法を提供するものである。
本発明のさらなる態様は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の症状を治療するのに使用される医薬組成物を製造するための方法を提供するものであり、該組成物は、製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と共に、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体の混合物に、本発明のインシュリン誘導体を含有せしめてなる。
【0073】
他の態様では、本発明は、生理学的pH値で溶解する、本発明のインシュリン誘導体を含有する医薬組成物に関する。
他の態様において。本発明は、約6.5〜約8.5の間のpH値で溶解する、本発明のインシュリン誘導体を含有する医薬組成物に関する。
他の態様では、本発明は、本発明のインシュリン誘導体を含有する、長時間にわたる作用プロファイルを有する医薬組成物に関する。
他の態様では、本発明は、約120nmol/ml〜2400nmol/ml、約400nmol/ml〜約2400nmol/ml、約400nmol/ml〜約1200nmol/ml、約600nmol/ml〜約2400nmol/ml、約600nmol/ml〜約1200nmol/mlの本発明のインシュリン誘導体、又は速効型インシュリン類似体と本発明のインシュリン誘導体との混合物を含有する溶液である医薬組成物に関する。
【0074】
アシル化のための出発生成物、親インシュリン又はインシュリン類似体又はそれらの前駆体は、よく知られているペプチド合成、又は適切に形質転換された微生物におけるよく知られている組換え生成のいずれかにより生成させることができる。よって、インシュリン出発生成物は、ポリペプチドをコードするDNA配列を含有し、ペプチドの発現を可能にする条件下で、適切な栄養培地でポリペプチドを発現可能な宿主細胞を培養し、その後、得られたペプチドを培地から回収することを含む方法により生成可能である。
【0075】
細胞を培養するのに使用される培地は、宿主細胞の増殖に適切な任意の従来からの培地、例えば適切な栄養補助剤を含有する複合培地又は最少培地であってよい。適切な培地は市販供給者から入手可能であり、また公開されている処方箋(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログ)に従い調製されてもよい。ついで、細胞により生成されるペプチドは、遠心分離又は濾過により培地から宿主細胞を分離し、塩、例えば硫酸アンモニウムにより上清又は濾液のタンパク質様成分を沈殿させ、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等、当該ペプチドの種類に応じて様々なクロマトグラフィー手順により精製することを含む、従来からの手順により、培養培地から回収され得る。
【0076】
親インシュリンをコードするDNA配列は、適切には、例えばゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、標準的な技術に従い合成オリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションによりポリペプチドの全て又は一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることにより得られる、ゲノム又はcDNA由来ものであってよい(例えば、Sambrook, J, Fritsch, EF及びManiatis, T, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989を参照)。また、親インシュリンをコードするDNA配列は、確立された標準的な方法、例えばBeaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869に記載されているホスホアミジト(phosphoamidite)法、又はMatthesら, EMBO Journal 3 (1984), 801-805に記載されている方法により、合成的に調製されてもよい。またDNA配列は、例えばUS4683202、又はSaikiら, Science 239 (1988),487-491に記載されているように、特定のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により調製されてもよい。
【0077】
DNA配列は、便宜的に、組換えDNA手順にかけられている任意のベクターに挿入されてもよく、ベクターの選択は、多くの場合、挿入される宿主細胞に依存する。例えば、ベクターは自己複製ベクター、すなわち染色体外実体として存在するベクターであってよく、その複製は染色体複製、例えばプラスミドとは無関係である。また、ベクターは、宿主細胞に挿入された場合に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた内部の染色体と共に複製されるものであってもよい。
【0078】
ベクターは、例えば、親インシュリンをコードするDNA配列が、プロモーター等、DNAの転写に必要な付加的なセグメントに作用可能に結合している、発現ベクターである。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であってよく、宿主細胞に対して同族又は異種であるタンパク質をコードする遺伝子から誘導されてもよい。種々の宿主細胞において親インシュリンをコードするDNAの転写を方向付けるのに適切なプロモーターの例は、例えば上掲のSambrookら等、当該技術でよく知られている。
また、親インシュリンをコードするDNA配列は、必要であるならば、適切なターミネーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー配列、及び翻訳エンハンサー配列に作用可能に結合していてよい。本発明の組換えベクターは、当該宿主細胞において、ベクターが確実に複製するDNA配列をさらに有している。
さらに、ベクターは選択可能なマーカー、例えば遺伝子、宿主細胞における欠失を補完し、薬剤、例えばアンピシリン、カイナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン、又はメトトレキサートに対する耐性を付与する生成物をさらに有していてもよい。
【0079】
宿主細胞の分泌経路に本発明のペプチドを向かわせるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プロプレ配列又はプレ配列としても公知)が、組換えベクター中に提供されてもよい。分泌シグナル配列は、正確なリーディングフレームにおいて、ペプチドをコードするDNA配列に結合している。分泌シグナル配列は、通常、ペプチドをコードするDNA配列に対し、5'に位置している。分泌シグナル配列は通常ペプチドに関連していてもよく、又は他の分泌タンパク質をコードする遺伝子からのものであってもよい。
【0080】
親インシュリンをコードするDNA配列、プロモーター及び場合によってはターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれライゲーションし、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを挿入するのに使用される手順は、当業者によく知られている(例えば上掲のSambrookら)。
【0081】
DNA配列又は組換えベクターが導入されている宿主細胞は、本ペプチドを生成可能な任意の細胞であってよく、細菌、酵母、真菌及び高等真核細胞を含む。よく知られており、当該技術で使用されている適切な宿主細胞の例は、限定されるものではないが、大腸菌、出芽酵母、又は哺乳類BHK又はCHO細胞系である。
【0082】
ついで、親インシュリン分子は、B-鎖のB1位又は選択されたLys位のいずれかに、関連側鎖を導入することにより、本発明のインシュリン誘導体に転換される。側鎖は任意の簡便な方法により導入可能で、アミノ基をアシル化するための多くの方法が従来技術に開示されている。さらなる詳細は、以下の実施例により明らかになるであろう。
【0083】
医薬組成物
請求項にある式の本発明のインシュリン誘導体は、例えば、皮下、経口又は肺に投与することができる。
皮下投与用には、式の化合物は、既知のインシュリンの処方と同じようにして処方される。さらに、皮下投与用には、式の化合物は、既知のインシュリンの投与と同じようにして投与され、医師はこの手順に通じている。
【0084】
この発明のインシュリン誘導体は、血中インシュリン濃度を増加させ、及び/又は血中グルコース濃度を低下させるための用量効果的な方式で、吸入により投与されてよい。このような投与は、糖尿病又は高血糖症などの疾患の治療に効果的である。インシュリンの効果的な投与を達成するには、この発明のインシュリン誘導体を約0.5μg/kg〜約50μg/kgの吸入用量で投与することが必要である。治療的有効量は、インシュリンレベル、血中グルコースレベル、患者の健康状態、患者の肺の状態等を含む要因を考慮に入れて、知識のある医師により決定されるであろう。
【0085】
本発明によれば、この発明のインシュリン誘導体は、吸入により送達されて、急速に吸収される。吸入による投与は、インシュリンの皮下投与に匹敵する程の薬物動態となる可能性がある。この発明のインシュリン誘導体を吸入することにより、血中インシュリン濃度が急速に上昇し、血中グルコース濃度が急速に低下する。同様の粒径及び同レベルの肺沈着で比較する場合、典型的には、様々な吸入装置で同様の薬学動態が得られる。
【0086】
本発明によれば、この発明のインシュリン誘導体は、吸入による治療剤の投与に対して当該分野で知られている様々な吸入装置の任意のものによって送達されうる。これらの装置には、定量吸入器、ネブライザー、乾燥パウダー発生器、スプレー等が含まれる。この発明のインシュリン誘導体は、乾燥パウダー吸入器又はスプレーにより送達せしめられる。この発明のインシュリン誘導体を投与するための吸入装置にはいくつかの好ましい特徴がある。例えば、吸入装置による送達は、有利には信頼性、再現性及び正確性がある。吸入装置は、良好な呼吸のためには、例えば約10μm未満、例えば約1−5μmの小さな粒子を送達させるべきである。この発明の実施に適した商業的に入手可能な吸入装置のいくつかの特定の例は、TurbohalerTM(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、SpirosTM吸入器(Dura)、Inhale Therapeuticsから市販されている装置、AERxTM(Aradigm)、Ultravent(登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)、Acorn II(登録商標)ネブライザー(Marquest Medical Products)、Ventolin(登録商標)定量吸入器(Glaxo)、Spinhaler(登録商標)パウダー吸入器(Fisons)等である。
【0087】
当業者であれば、この発明のインシュリン誘導体の処方、送達される処方物の量、及び単一用量の投与による持続時間が、使用される吸入装置の種類に依存することを認識しているであろう。いくつかのエアゾール送達システム、例えばネブライザーにおいて、投与頻度及びシステムが活性化する時間の長さは、主として、エアゾールにおけるインシュリンコンジュゲートの濃度に依存するであろう。例えば、より短い期間での投与では、噴霧溶液中、より高い濃度のインシュリンコンジュゲートを使用することができる。定量吸入器等の装置は、より高いエアゾール濃度を作り出すことができ、所望される量のインシュリンコンジュゲートを送達させるために、より短い期間で操作することができる。パウダー吸入器等の装置は、所定の負荷量の薬剤が装置から出されるまで、活性剤を送達する。この種の吸入器において、所定量のパウダーでのこの発明のインシュリン誘導体の量が、単一投与で投与される用量を定める。
【0088】
吸入装置により送達される処方物におけるこの発明のインシュリン誘導体の粒子径は、肺中及び下気道又は肺胞中にインシュリンを送り込む能力の点で重要である。この発明のインシュリン誘導体は、送達されるインシュリンコンジュゲートの少なくとも約10%、例えば約10〜約20%、又はそれ以上が肺に付着するように処方され得る。口呼吸するヒトにとって、肺沈着の最大効率は、約2μm〜約3μmの粒子径で得られることが知られている。粒子径が約5μmを越えると、肺沈着はかなり低減する。約1μm以下の粒子径では肺沈着は低減し、治療的に有効な十分な質量を有する粒子を送達することが困難になる。よって、吸入により送達されるインシュリン誘導体の粒子は、約10μm未満、例えば約1μm〜約5μmの範囲の粒子経を有する。インシュリン誘導体の処方は、選択される吸入装置において所望の粒子径を生じるように選択される。
【0089】
有利には、乾燥パウダーとしての投与の場合は、この発明のインシュリン誘導体は、約10μm未満、例えば約1〜約5μmの粒子径を有する粒状形態に調製される。この粒子径により、患者の肺の肺胞への送達が効果的になされる。乾燥パウダーは、多くの粒子が所望の範囲のサイズを有するように製造された粒子から主としてなる。有利には、少なくとも約50%の乾燥パウダーが、約10μm未満の直径を有する粒子から作製される。このような処方は、噴霧乾燥、製粉、又はインシュリンコンジュゲート及び他の所望する成分を含有する溶液の臨界点凝縮により達成可能である。また本発明に有用な粒子を製造するのに適した他の方法は従来から知られている。
【0090】
粒子は、通常は、容器中において乾燥パウダー製剤から分離され、キャリア気流を介して、患者の肺に移送される。典型的には、現在の乾燥パウダー吸入器では、固形物を破壊する力は、単に患者の吸入により得られる。他の種類の吸入器では、患者の吸入により生じる気流が、粒子を崩壊させる推進モーターを駆動する。
【0091】
乾燥パウダー吸入器から投与されるこの発明のインシュリン誘導体の製剤は、誘導体を含む微細に粉砕された乾燥パウダーを典型的には含んでいるが、パウダーは、増量剤、担体、賦形剤、他の添加剤等をまた含有可能である。添加剤は、例えば、特定のパウダー吸入器からの送達に要求されるようにパウダーを希釈し、製剤のプロセシングを容易にし、製剤に有利なパウダー特性をもたらし、吸入装置からのパウダーの分散を容易にし、製剤を安定化させ(例えば酸化防止剤又はバッファー)、製剤に味を付与する等のために、インシュリンコンジュゲートの乾燥パウダー製剤中に含有せしめることができる。有利には、添加剤は、患者の気道に悪影響を与えないものである。インシュリン誘導体は分子レベルで添加剤と混合することもできるし、又は固形製剤は、添加剤の粒子と混合させるか、又は該粒子上にコートされるインシュリンコンジュゲートの粒子を含有可能である。典型的な添加剤には、単糖類、二糖類及び多糖類;糖アルコール及び他のポリオール、例えばラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール(lactitol)、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール、デンプン、又はそれらの組合せ;界面活性剤、例えばソルビトール類、ジホスファチジルコリン、又はレシチン等が含まれる。典型的には、添加剤、例えば増量剤は、上述した目的に対して有効な量、多くの場合は製剤の重量に対して約50%から約90%の量で存在している。インシュリン類似体タンパク質等のタンパク質の製剤について従来から知られている添加剤もまた本製剤に含めることができる。
【0092】
この発明のインシュリン誘導体を収容するスプレーは、インシュリンコンジュゲートの懸濁液又は溶液を、加圧下でノズルを強制通過させることにより製造することができる。ノズルサイズ及び構造、適用圧力、及び液体供給量は、所望する出量及び粒子径が達成されるように選択することができる。例えば、キャピラリー又はノズルフィード部に接続した電場により、電気スプレーを製造することができる。有利には、スプレーにより送達されるインシュリンコンジュゲートの粒子は、約10μm未満、例えば約1μmから約5μmの範囲の粒子径を有する。
【0093】
スプレーを用いて使用するのに適したこの発明のインシュリン誘導体の製剤は、典型的には、溶液1ml当たり、約1mgから約20mgのインシュリンコンジュゲート濃度で、水溶液中にインシュリン誘導体を含有している。製剤は、賦形剤、バッファー、等張剤、保存料、界面活性剤、及び例えば亜鉛等の薬剤を含有することができる。また製剤は、賦形剤、又はインシュリン誘導体を安定化させるための薬剤、例えばバッファー、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物をさらに含有可能である。インシュリンコンジュゲートの処方に有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等が含まれる。インシュリンコンジュゲートの処方に有用な典型的な炭水化物には、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース等が含まれる。またインシュリン誘導体製剤は、エアゾールの形成において溶液の噴霧化により生じるインシュリンコンジュゲートの界面誘起凝集を低減し又は防止することができる界面活性剤をさらに含有することができる。様々な一般的界面活性剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール類、及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを使用することができる。量は、一般的には、製剤の重量に対して約0.001から約4%の範囲である。
【0094】
本発明のインシュリン誘導体を含む医薬組成物は、また、かかる治療が必要な患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン状シリンジにより、皮下、筋肉内又は静脈内注射することにより実施されうる。または、非経口投与は、輸液ポンプにより実施されうる。さらなる選択肢は、例えば該目的に対して特に設計された組成物、パウダー又は液体としてインシュリンを鼻又は肺に投与することである。
【0095】
本発明のインシュリン誘導体の注射用組成物は、所望する最終生成物が得られるように成分を溶解し混合することを含む製薬工業の常套的な技術を使用して調製することができる。よって、一手順によれば、本発明のインシュリン誘導体は、調製される組成物の最終容量よりも幾分少ない量の水に溶解される。必要に応じて、等張剤、保存料及びバッファーが添加され、必要ならば、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム水等の塩基を使用して、溶液のpHが調節される。最後に、溶液の容量は、所望の濃度の成分が得られるように、水で調節される。
【0096】
本発明の他の態様では、バッファーは酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シトラート、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、スクシナート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーの各一が本発明の別の態様を構成する。
【0097】
本発明のさらなる態様では、製剤は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(chlorphenesine)、3-(4-クロロフェノキシ)プロパン-1,2-ジオール又はそれらの混合物からなる群から選択され得る製薬的に許容可能な保存料をさらに含有する。本発明のさらなる態様では、保存料は、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様では、保存料は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様では、保存料は5mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様では、保存料は10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の保存料の各一が本発明の別の態様を構成する。医薬組成物に保存料を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0098】
本発明のさらなる態様では、製剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択され得る等張剤をさらに含有する。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース-Naを使用してもよい。一態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の-OH基を有するC4-C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール(galactitol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されてよい。糖又は糖アルコールが液状調製物に可溶性であり、本発明の方法を使用して得られた安定化効果に悪影響を与えない限りは、使用量に決まった限界はない。一態様では、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/ml〜約150mg/mlである。本発明のさらなる態様では、等張化剤は1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している、本発明のさらなる態様では、等張剤は1mg/ml〜7mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様では、等張剤は8mg/ml〜24mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様では、等張剤は25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の等張化剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。医薬組成物に等張化剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0099】
典型的な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ジメチルスルホン及びグリセロールであり、典型的な保存料は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びベンジルアルコールである。
適切なバッファーの例は、酢酸ナトリウム、グリシルグリシン、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及びリン酸ナトリウムである。
【0100】
本発明のインシュリン誘導体の経鼻投与用の組成物は、例えば、欧州特許第272097号(Novo Nordisk A/S)に記載されているようにして調製されうる。
【0101】
この発明のインシュリン誘導体を含む組成物は、インシュリンに対して敏感な状態の治療に使用することができる。例えば、それらは、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症で、重症を負ったヒト及び大手術を受けたヒトに時折見られるようなものの治療に使用することができる。任意の患者に対する適量レベルは、使用される特定のインシュリン誘導体の有効性、年齢、体重、身体活動、患者の食習慣、他の薬剤との組合せの可能性、及び治療される状態の重篤度を含む種々の要因に依存する。この発明のインシュリン誘導体の毎日の投与量は、既知のインシュリン組成物と同様にして、当業者により個々の患者に対して決定されることが推奨される。
都合がよい場合は、この発明のインシュリン誘導体は、他のタイプのインシュリン、例えばさらに急速に作用を開始するインシュリン類似体と混合して使用してもよい。このようなインシュリン類似体の例は、例えば、公開番号EP214826(Novo Nordisk A/S)、EP375437(Novo Nordisk A/S)及びEP383472(Eli Lilly & Co)を有する欧州特許出願に記載されている。
【0102】
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりその全内容がここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的に使用され、決して本発明を限定するものと解してはならない。
ここで提供される任意のかつ全ての例、又は例示的な言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をよりよく例証することを意図しており、別段の請求がなされない限りは、本発明の範囲を限定するものではない。明細書のいずれの言葉も、請求項に記載されていない構成を本発明の実施に必須であること示していると解されるべきではない。
ここでの特許文献の引用及び援用は、単に便宜的になされるものであって、このような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性の見解を反映するものではない。
この発明は、適用される法律が容認する場合、ここに添付される特許請求の範囲に記載された主題事項のあらゆる変更態様及び均等物を含む。
【0103】
本発明は、以下の項に要約されるであろう:
1.親インシュリンと置換基を含むインシュリン誘導体であって、該置換基が、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位に存在するLys残基のε-アミノ基、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合し、但しB3がLysである場合、B29はGluではないインシュリン誘導体。
【0104】
2.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA8位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
3.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA9位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
4.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA14位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
5.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA18位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
6.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA21位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
7.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA22位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
8.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA23位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
9.前記置換基が、親インシュリンのA-鎖のA24位に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する、第1項のインシュリン誘導体。
【0105】
10.前記置換基が4〜40の炭素原子を有する親油性基である、第1−9項のインシュリン誘導体。
11.前記置換基が6〜40の炭素原子を有するアシル基を含む、第1−10項のインシュリン誘導体。
12.前記置換基が12〜36の炭素原子を有するアシル基を含む、第11項のインシュリン誘導体。
【0106】
13.アシル基が、4≦n≦38のCH-(CH)-CO-である、第1−10項のインシュリン誘導体。
14.アシル基が、4≦n≦38の(COOH)-(CH)-CO-である、第1−10項のインシュリン誘導体。
15.アシル基が、4≦n≦38の(NH-CO)-(CH)-CO-である、第1−10項のインシュリン誘導体。
16.アシル基が、4≦n≦38のHO-(CH)-CO-である、第1−10項のインシュリン誘導体。
【0107】
17.6≦n≦36である、第13−16項のインシュリン誘導体。
18.8≦n≦34である、第13−16項のインシュリン誘導体。
19.12≦n≦32である、第13−16項のインシュリン誘導体。
20.12≦n≦28である、第13−16項のインシュリン誘導体。
【0108】
21.アシル基が、5-αリトコール酸又は5-βリトコール酸である、第1−12項のインシュリン誘導体。
22.アシル基が、コール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸又はコラン酸の5-α又は5-β異性体である、第1−12項のインシュリン誘導体。
23.アシル基が、デヒドロリトコール酸の5-α又は5-β異性体である、第1−12項のインシュリン誘導体。
24.アシル基が、フシジン酸、フシジン酸誘導体、又はグリシルレチン酸である、第1−12項のインシュリン誘導体。
【0109】
25.前記置換基が、次の一般式:

のものであり、
ここで、Wは以下のものであり:
・側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基で、該残基は、そのカルボン酸基の一つと、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基を有するアミド基を形成し;又は
・アミド結合を介して共に結合した2、3又は4のα-アミノ酸残基からなる鎖で、アミド結合を介した該鎖は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合しており、Wのアミノ酸残基は中性側鎖を有するアミノ酸残基、及びWが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一のアミノ酸残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択され;又は
・Xから親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合;
Xは:
・-CO-;
・-CH(COOH)O-;
・-CON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CONHCH(COOH)(CH)NHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHO-;又は
・-CON(CHCOOH)CHCHO-;
であり、
但し:
a)Wがアミノ酸残基又はアミノ酸残基の鎖である場合、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素は、Wにおけるアミノ基とアミド結合を形成し、又は
b)Wが共有結合である場合、Xにおいて下線が付されたカルボニル炭素は、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基を有するアミド結合を形成し;
Yは:
・mが6〜32の範囲の整数である-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が10〜32の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;
・v及びwの合計が6〜30の範囲になるように、v及びwが整数又はそれらのひとつが0である、式-(CH)(CH)-の二価の炭化水素鎖;
であり;
Zは:
・-COOH;
・-CO-Asp;
・-CO-Glu;
・-CO-Gly;
・-CO-Sar;
・-CH(COOH)
・-N(CHCOOH)
・-SOH;又は
・-POH;
である第1−9項のインシュリン誘導体、及びその任意のZn2+錯体。
【0110】
26.Wが、側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基であり、該残基が、そのカルボン酸基の一つと、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基を有するアミド基を形成する、第25項のインシュリン誘導体。
27.Wが、4〜10の炭素原子を有するα-アミノ酸残基である、第26−27項のいずれかのインシュリン誘導体。
28.Wが、α-Asp、β-Asp、α-Glu、γ-Glu、α-hGlu及びδ-hGluからなる群から選択される、第25−27項のインシュリン誘導体。
29.Wが2つのα-アミノ酸残基からなる鎖であり、一方が4〜10の炭素原子と遊離のカルボン酸基を有し、他方が2〜11の炭素原子を有するが、遊離のカルボン酸基を有さない、第25項のインシュリン誘導体。
30.Wが、α-Asp-Gly;Gly-α-Asp;β-Asp-Gly;Gly-β-Asp;α-Glu-Gly;Gly-α-Glu;γ-Glu-Gly;Gly-γ-Glu;α-hGlu-Gly;Gly-α-hGlu;δ-hGlu-Gly;及びGly-δ-hGluからなる群から選択される、第25及び29項のインシュリン誘導体。
【0111】
31.Wが、独立して4〜10の炭素原子を有し、双方が遊離のカルボン酸基を有する、2つのα-アミノ酸残基からなる鎖である、第25項のインシュリン誘導体。
32.Wが、α-Asp-α-Asp;α-Asp-α-Glu;α-Asp-α-hGlu;α-Asp-β-Asp;α-Asp-γ-Glu;α-Asp-δ-hGlu;β-Asp-α-Asp;β-Asp-α-Glu;β-Asp-α-hGlu;β-Asp-β-Asp;β-Asp-γ-Glu;β-Asp-δ-hGlu;α-Glu-α-Asp;α-Glu-α-Glu;α-Glu-α-hGlu;α-Glu-β-Asp;α-Glu-γ-Glu;α-Glu-δ-hGlu;γ-Glu-α-Asp;γ-Glu-α-Glu;γ-Glu-α-hGlu;γ-Glu-β-Asp;γ-Glu-γ-Glu;γ-Glu-δ-hGlu;α-hGlu-α-Asp;α-hGlu-α-Glu;α-hGlu-α-hGlu;α-hGlu-β-Asp;α-hGlu-γ-Glu;α-hGlu-δ-hGlu;δ-hGlu-α-Asp;δ-hGlu-α-Glu;δ-hGlu-α-hGlu;δ-hGlu-β-Asp;δ-hGlu-γ-Glu;及びδ-hGlu-δ-hGluからなる群から選択される、第25及び31のインシュリン誘導体。
33.Wが共有結合である、第25項のインシュリン誘導体。
【0112】
34.Xが、-CO-又は-COCH(COOH)CO-である、第25−33項の何れかのインシュリン誘導体。
35.Xが、
・-CON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHO-;又は
・-CON(CHCOOH)CHCHO-;
である、第25−33項のインシュリン誘導体。
【0113】
36.Yが-(CH)-であり、mが6〜32の範囲の整数である、第25−35項の何れかのインシュリン誘導体。
37.mが8-20の範囲である、第36項のインシュリン誘導体。
38.mが11、12、13、14、15又は16である、第36−37項のインシュリン誘導体。
【0114】
39.Zが-COOHである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
40.Zが-CO-Aspである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
41.Zが-CO-Gluである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
42.Zが-CO-Glyである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
43.Zが-CO-Sarである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
44.Zが-CH(COOH)である、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
45.Zが-N(CHCOOH)である、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
46.Zが-SOHである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
47.Zが-POHである、第25−38項の何れか一項のインシュリン誘導体。
【0115】
48.次の式:

を有し、ここでInsは親インシュリン部分であり、-C(O)-X-W-[CH]-X-Y-Q-Zは置換基であり、Insは、置換基において、X、W、[CH、Y又はQに結合したCO-基、及びInsのA又はB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基の間のアミド結合を介して置換基に結合しており、
は、
・nが1、2、3、4、5又は6である-(CH)
・Rが、水素又は-(CH)-COOH;-(CH)-SOH;-(CH)-PO;-(CH)-O-SO;-(CH)-O-PO;1又は2の-(CH)-O-COOH基で置換されたアリール基;-(CH)-テトラゾール-5-イルで、pが1〜6の範囲の整数である、NR;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-(CR)-NR-CO-;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-((CR)q1-NR-CO)2−4-;又は
・結合;
であり、
Wは、-COOH、-SOH、及び-PO及びテトラゾール-5-イルからなる群から選択される1又は2の基で置換されていてもよいアリーレン又はヘテロアリーレンであり、又はWは結合であり;
mは0、1、2、3、4、5又は6であり;
Xは、
・-O-;
・次の式

のものであり;
ここでRは上述したものであるか;又は
・結合;
であり;
Yは、
・R及びRがH、-COOH、結合又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-(CR)-NR-CO-;
・Rが上述したものであるNR;
・R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、-((CR)q1-NR-CO)2−4-;又は
・結合;
であり;
Qは、
・rが4〜22の整数である、-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が4〜22の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;又は
・Q-Qが互いに独立して、O;S又は結合とすることができ;s、w、t及びzの合計が4〜22の範囲となるように、s、w、t及びzは互いに独立してゼロ又は1〜10の整数であり、v、v及びvは互いに独立して、ゼロ又は1とすることができ、但しQ、Q、Q、Q、Q及びQは互いに結合を形成していなくてもよく、s、w、t及びzがゼロ又は1である場合は、いずれの-CH-も次の原子:O、Sの2つに結合していない、式-(CH)s--(C)v1-Q-(CH)-Q-(C)v2-Q-(CH)-Q-(C)v3-Q-(CH)-の2価の鎖;
であり;また、
Zは:
-COOH;
-CO-Asp;
-CO-Glu;
-CO-Gly;
-CO-Sar;
-CH(COOH)
-N(CHCOOH)
-SO
-PO
O-SOH;
O-PO
-テトラゾール-5-イル、又は
が、-COOH、-SOH、及び-PO及びテトラゾール-5-イルから選択される1又は2の基で置換されたアリーレン又はヘテロアリーレンである、-O-W
である第1−9項のインシュリン誘導体、及びその任意のZn2+錯体。
【0116】
49.Xが、nが1、2、3、4、5又は6である-(CH)である、第48項のインシュリン誘導体。
50.XがNRであり、Rが、水素又は-(CH)-COOH;-(CH)-SOH;-(CH)-PO;-(CH)-O-SO;-(CH)-O-PO;1又は2の-(CH)-O-COOH基で置換されたアリール基;-(CH)-テトラゾール-5-イルで、pが1〜6の範囲の整数である、第48項のインシュリン誘導体。
51.Xが-(CR)-NR-CO-である、第48項のインシュリン誘導体。
52.Xが-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-である、第51項のインシュリン誘導体。
53.Xが-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-である、第51項のインシュリン誘導体。
54.Xが-((CR)q1-NR-CO)2−4-である、第48項のインシュリン誘導体。
55.Xが結合である、第48項のインシュリン誘導体。
【0117】
56.Wがフェニレンである、第48−56項の何れかのインシュリン誘導体。
57.Wが、窒素、酸素又は硫黄を有する5-7員の複素環系である、第48−56項のインシュリン誘導体。
58.Wが、少なくとも一の酸素を有する5員の複素環系である、第57項の何れかのインシュリン誘導体。
59.Wがアリーレンである、第48−55項のインシュリン誘導体。
60.Wが、-CCOHで置換されていてもよいアリーレンである、第59項のインシュリン誘導体。
61.Wが結合である、第48−55項の何れかのインシュリン誘導体。
【0118】
62.Xが-O-である、第48−61項の何れかのインシュリン誘導体。
63.Xが、次の式

である、第48−61項の何れかのインシュリン誘導体。
64.Xが、次の式

である、第48−61項の何れかのインシュリン誘導体。
【0119】
65.Rが水素である、第63−64項のインシュリン誘導体。
66.Rが-(CH)-COOHである、第63−64項のインシュリン誘導体。
67.pが1である、第66項のインシュリン誘導体。
68.pが2である、第66項のインシュリン誘導体。
【0120】
69.Xが結合である、第48−61項のインシュリン誘導体。
70.Yが-(CR)-NR-CO-である、第48−69項の何れかのインシュリン誘導体。
71.Yが-CH-NH-CO-である、第70項のインシュリン誘導体。
72.Yが-(CH)-(CHCOOH)-NH-CO-である、第70項のインシュリン誘導体。
73.Yが(CR)q1-NR-CO-であり、ここで、R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、第48−69項の何れかのインシュリン誘導体。
74.Yが-((CR)q1-NR-CO)2−4-であり、ここで、R及びRがH、-COOH、又はOHとすることができ、qが1-6であり、Rが上述したものである、第48−69項の何れかのインシュリン誘導体。
75.Yが結合である、第48−69項の何れかのインシュリン誘導体。
【0121】
76.Qが-(CH)-であり、rが4〜22の整数である、第48−75項の何れかのインシュリン誘導体。
77.rが8〜20の整数である、第76項のインシュリン誘導体。
78.rが10〜18の整数である、第76−77項のインシュリン誘導体。
79.rが12、13、14、15、16、17又は18である、第76−78項のインシュリン誘導体。
【0122】
80.Qが、1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の全数が4〜22の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の鎖である、第48−75項の何れかのインシュリン誘導体。
81.Qが、式-(CH)s--(C)v1-Q-(CH)-Q-(C)v2-Q-(CH)-Q-(C)v3-Q-(CH)-の2価の鎖であり、ここでQ-Qは互いに独立して、O;S又は結合とすることができ;s、w、t及びzの合計が4〜22の範囲となるように、s、w、t及びzは互いに独立してゼロ又は1〜10の整数であり、v、v及びvは互いに独立して、ゼロ又は1とすることができる、第48−75項の何れかのインシュリン誘導体。
【0123】
82.sが1又は2である、第81項のインシュリン誘導体。
83.sが9、10又は11である、第81項のインシュリン誘導体。
84.vが1又は2である、第81−83項の何れかのインシュリン誘導体。
85.Q、Q、Q及びQが全て結合である、第81−84項のインシュリン誘導体。
86.QがS又はOである、第81−84項の何れかのインシュリン誘導体。
87.wが2である、第81−86項の何れかのインシュリン誘導体。
88.vが1であり、tが1である、第87項のインシュリン誘導体。
【0124】
89.Zが-COOHである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
90.Zが-CO-Aspである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
91.Zが-CO-Gluである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
92.Zが-CO-Glyである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
93.Zが-CO-Sarである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
94.Zが-CH(COOH)である、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
95.Zが-N(CHCOOH)である、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
96.Zが-SOHである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
97.Zが-POである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
98.Zが-O-SOHである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
99.Zが-O-POである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
100.Zが-テトラゾール-5-イルである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
101.Zが-O-Wであり、Wが、-COOH、-SOH、及び-PO、及びテトラゾール-5-イルから選択される1又は2の基で置換されたアリーレン又はヘテロアリーレンである、第48−88項の何れかのインシュリン誘導体。
【0125】
102.親インシュリンが、B-鎖のB29位にLys残基を有していないインシュリン類似体である、第1−101項の何れかのインシュリン誘導体。
103.親インシュリンがヒトインシュリン又はブタインシュリンであり、ここでB29位のLys残基が置換されており、Lys残基が、B29位を除くA-鎖又はB-鎖の位置に挿入されている、第1−102項のインシュリン誘導体。
104.親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位の一つにあるアミノ酸残基がLys残基である、第1及び第102−103項のインシュリン誘導体。
105.親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位の一つにあるアミノ酸残基がLys残基である、第1及び第102−103項のインシュリン誘導体。
【0126】
106.親インシュリンのB30位のアミノ酸残基が欠失している、第102−105項のインシュリン誘導体。
107.親インシュリンのB1位のアミノ酸残基が欠失している、第102−105項のインシュリン誘導体。
108.親インシュリンのA21位のアミノ酸残基がGly又はAsnである、第102−107項のインシュリン誘導体。
109.親インシュリンのB3位のアミノ酸残基がLysである、第102−108項のインシュリン誘導体。
110.親インシュリンのB28位のアミノ酸残基がAspである、第102−109項のインシュリン誘導体。
111.親インシュリンのB29位のアミノ酸残基がPro又はThrである、第102−110項の何れかのインシュリン誘導体。
【0127】
112.インシュリン誘導体6分子当たり、2つの亜鉛イオン、3つの亜鉛イオン、4つの亜鉛イオン、5つの亜鉛イオン、6つの亜鉛イオン、7つの亜鉛イオン、8つの亜鉛イオン、9つの亜鉛イオン、10の亜鉛イオン、11の亜鉛イオン、又は12の亜鉛イオンが結合している、上述の項の何れか一項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体。
【0128】
113.上述の項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を、場合によっては製薬的に許容可能な担体と共に含有する、このような治療が必要な患者における糖尿病を治療するための医薬組成物。
114.上述の項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を、場合によっては製薬的に許容可能な担体と共に、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体と混合して含有する、このような治療が必要な患者における糖尿病を治療するための医薬組成物。
【0129】
115.インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンが、医薬組成物に加えられる、第113−114項の医薬組成物又は第112項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体の製造方法。
116.インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンが、保存料の添加後に、医薬組成物に加えられる、第115項の方法。
【0130】
117.第1−111項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を、場合によっては製薬的に許容可能な担体と共に、患者に投与することを含む、このような治療が必要な患者における糖尿病の治療方法。
118.場合よっては製薬的に許容可能な担体と共に、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体と混合された第1−111項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を患者に投与することを含む、このような治療が必要な患者における糖尿病の治療方法。
119.糖尿病の肺治療用である第117−118項の方法。
【0131】
120.1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の症状を治療するのに使用される医薬組成物の製造における、第1−111項の何れかのインシュリン誘導体の使用。
121.1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の症状を治療するのに使用される医薬組成物の製造における、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体と混合されての第1−111項の何れかのインシュリン誘導体の使用。
【0132】
122.AspB28ヒトインシュリン;LysB28ProB29ヒトインシュリン及びLysB3GluB29ヒトインシュリンからなる群から選択される速効型インシュリン類似体と、第1−111項の何れかのインシュリン誘導体と混合物。
123.インシュリン誘導体が、
εA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA18-ミリスチル LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
からなる群から選択される、第1項のインシュリン誘導体。
124.実施例に記載されているインシュリン誘導体。
【0133】
本発明は、次の項に、さらに要約されるであろう。
1a.A-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位に存在するLys残基のε-アミノ基、又はB-鎖の親インシュリンのB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合した側鎖を有するインシュリン誘導体で、但しB3がLysである場合、B29はGluではないインシュリン誘導体。
2a.側鎖が6〜40の炭素原子を有する親油性基である、第1a項のインシュリン誘導体。
【0134】
3a.側鎖が、6〜40の炭素原子、好ましくは12〜36の炭素原子を有するアシル基を含む、第2a項のインシュリン誘導体。
4a.アシル基が、4≦n≦38のCH-(CH)-CO-である、第3a項のインシュリン誘導体。
5a.アシル基が、4≦n≦38の(COOH)-(CH)-CO-である、第3a項のインシュリン誘導体。
6a.アシル基が、4≦n≦38の(NH-CO)-(CH)-CO-である、第3a項のインシュリン誘導体。
7a.アシル基が、4≦n≦38のHO-(CH)-CO-である、第3a項のインシュリン誘導体。
【0135】
8a.アシル基が、5-αリトコール酸又は5-βリトコール酸である、第3a項のインシュリン誘導体。
9a.アシル基が、コール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸又はコラン酸の5-α又は5-β異性体である、第3a項のインシュリン誘導体。
10a.アシル基が、デヒドロリトコール酸の5-α又は5-β異性体である、第3a項のインシュリン誘導体。
11a.アシル基が、フシジン酸、フシジン酸誘導体、又はグリシルレチン酸である、第3a項のインシュリン誘導体。
【0136】
12a.側鎖が、次の一般式:

のものであり、
ここで、Wは、
・側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基で、そのカルボン酸基の一つが、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド基を形成する残基;又は
・アミド結合を介して互いに結合した2、3又は4のα-アミノ酸残基からなる鎖で、アミド結合を介して、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する鎖であり、Wのアミノ酸残基は中性側鎖を有するアミノ酸残基、及びWが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一のアミノ酸残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されたもの;又は
・Xから親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり;
Xは:
・-O-;
・-CH(COOH)O-;
・-N(CHCOOH)CHO-;
・-N(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-;
・-N(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-N(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-NHCH(COOH)(CH)NHO-;
・-N(CHCHCOOH)CHO-;又は
・-N(CHCOOH)CHCHO-;
で、
a)Wがアミノ酸残基又はアミノ酸残基鎖である場合、下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基とアミド結合を形成し、又は
b)Wが共有結合である場合、下線が付されたカルボニル炭素からの結合を介して、親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6〜32の範囲の整数である-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の総数が10〜32の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;
・v及びwの合計が6〜30の範囲になるようにv及びwが整数であるか又はそれらの一方が0である式-(CH)(CH)-の二価の炭化水素鎖
であり;
Zは:
・-COOH;
・-CO-Asp;
・-CO-Glu;
・-CO-Gly;
・-CO-Sar;
・-CH(COOH)
・-N(CHCOOH)
・-SOH;又は
・-POH;
である第1a項のインシュリン誘導体、及びその任意のZn2+錯体。
【0137】
13a.アシル基が、リンカーとしてアミノ酸を使用し、リジン残基に結合している、第3a−12a項のインシュリン誘導体。
14a.アミノ酸リンカーが、α-グルタミル又はβ-グルタミル結合、又はβ-又はα-アルパルチル結合している、第13a項のインシュリン誘導体。
15a.アミノ酸リンカーが、γ-アミノブタノイル結合、β-アラニル結合、α-アミド-γ-グルタミル結合、又はα-アミド-β-アスパルチル結合している、第13a項のインシュリン誘導体。
【0138】
16a.側鎖が脂肪酸又は脂肪二酸を有している、第2a項のインシュリン誘導体。
17a.親油性基が負に帯電可能である、第2a項のインシュリン誘導体。
18a.側鎖が親油性アミノ酸残基を有している、第17a項のインシュリン誘導体。
19a.側鎖がアミノ酸残基を有している、第17a項のインシュリン誘導体。
20a.親インシュリンがdesB30ヒトインシュリン、ArgB29ヒトインシュリン、又はArgB29desB30ヒトインシュリンである、先の項の何れかのインシュリン誘導体。
21a.実施例に記載されているインシュリン誘導体。
【0139】
22a.12までの亜鉛原子が、6つのインシュリン誘導体当たりに結合している、先の項の何れか一項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体。
【0140】
23a.第22a項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体、又は第1a−21a項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を製薬的に許容可能な担体と共に含有する、このような治療が必要な患者における糖尿病を治療するための医薬組成物。
24a.第22a項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体、又は第1a−21a項の何れかのインシュリン誘導体の治療的有効量を、製薬的に許容可能な担体と共に、急速に作用を介するインシュリン又はインシュリン類似体と混合して含有する、このような治療が必要な患者における糖尿病を治療するための医薬組成物。
25a.肺投与のためのものである、第23a又は24a項の医薬組成物。
【0141】
26a.インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンを含有する、第23a−25a項の医薬組成物。
27a.インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンが、保存料の添加後に医薬組成物に加えられる、医薬組成物の製造方法。
28a.第22a項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体、又は第1a−21a項のインシュリン誘導体の治療的有効量を、製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と共に、患者に投与することを含む、このような治療が必要な患者における糖尿病の治療方法。
29a.製薬的に許容可能な担体及び製薬的に許容可能な添加剤と共に、急速に作用を開始するインシュリン又はインシュリン類似体と混合された、第22a項のインシュリン誘導体の亜鉛錯体、又は第1a−21a項のインシュリン誘導体の治療的有効量を、患者に投与することを含む、このような治療が必要な患者における糖尿病の治療方法。
【実施例】
【0142】
一般的手順:
発現ベクターの構築、酵母細胞の形質転換、及び本発明のインシュリン前駆体の発現
全ての発現プラスミドは、S. cerevisiaeにおけるプラスミドの選択及び安定化を目的としてサッカロミセス・ポンベトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子(POT)を含むことを特徴とするEP171142に記載のものと同様のC-POT型のものである。またプラスミドは、S. cerevisiaeトリオースリン酸イソメラーゼプロモーター及びターミネーターをさらに含む。これらの配列は、インシュリン生成物及びリーダーの融合タンパク質をコードするEcoRI-XbaIフラグメントの配列を除く全ての配列であり、プラスミドpKFN1003における対応配列に類似している(WO90/10075に記載)。種々の融合タンパク質を発現させるために、pKFN1003のEcoRI-XbaIフラグメントが、関心あるリーダー-インシュリン融合体をコードするEcoRI-XbaIフラグメントで単に置き換えられる。このようなEcoRI-XbaIフラグメントは、標準的な手順に従い、合成オリゴヌクレオチド及びPCRを使用して合成することができる。
【0143】
酵母形質転換体を、宿主株S. cerevisiae株MT663の形質転換により調製した(MATa/MATα pep4-3/pep4-3 HIS4/his4 tpi::LEU2/tpi::LEU2 Cir)。酵母株MT663を、WO92/11378の出願に関連してDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenに寄託し、寄託番号DSM6278が得られた。
MT663を、600nmでの光学密度が0.6になるまで、YPGaL(1%のバクト酵母抽出物、2%のバクトペプトン、2%のガラクトース、1%のラクテート)において増殖させ、遠心分離により収集し、10mLの水で洗浄し、再度遠心分離し、1.2Mのソルビトール、25mMのNaEDTA、pH=8.0及び6.7mg/mlのジチオトレイトール(dithiotreitol)を含有する10mlの溶液に再懸濁させた。懸濁液を30℃で15分インキュベートし、遠心分離し、1.2Mのソルビトール、10mMのNaEDTA、0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH5.8、及び2mgのNovozym(登録商標)234を含有する10mlの溶液に、細胞を再懸濁させた。懸濁液を30℃で30分インキュベートし、遠心分離により細胞を収集し、10mlの1.2Mソルビトール及び10mlのCAS(1.2Mのソルビトール、10mMのCaCl、10mMのTris HCl(pH=7.5))で洗浄し、2mlのCASに再懸濁させた。形質転換のために、1mlのCAS-懸濁細胞を、約0.1mgのプラスミドDNAと混合し、室温で15分間放置した。1mlの(20%のポリエチレングリコール4000、10mMのCaCl、10mMのTris HCl、pH=7.5)を添加し、混合物をさらに30分、室温で放置した。混合物を遠心分離し、ペレットを、0.1mlのSOS(1.2Mのソルビトール、33%v/vのYPD、6.7mMのCaCl)に再懸濁させ、30℃で2時間インキュベートした。ついで、懸濁液を遠心分離にかけ、ペレットを0.5mlの1.2Mソルビトールに再懸濁させた。ついで、6mlの上層寒天(1.2Mのソルビトールと2.5%の寒天を含有する、ShermanらのSC medium. (1982) Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory)を52℃で添加し、同様の寒天で凝固した、ソルビトール含有培地を収容するプレートの上に、懸濁液を注いだ。発現プラスミドで形質転換されたS. cerevisiae株MT663を、30℃で72時間、YPD中で増殖させた。
【0144】
本発明のインシュリン誘導体の生産、精製及び特徴付け
上述したようにして多くのインシュリン前駆体を生成し、培地から単離して、精製した。インシュリン前駆体をアシル化させ、以下の実施例に記載したようにしてプロセシングし、最終的なインシュリン誘導体を生成した。これらのインシュリン誘導体を、以下に記載するようなヒトインシュリンと比較し、ヒトインシュリンレセプターに対する結合親和性により測定される生物学的インシュリン活性について試験した。
以下の実施例は、明細書及び実施例において同定された中間化合物及び最終生成物に言及する。本発明のインシュリン誘導体の調製は、以下の実施例を使用して詳細に記載されるが、記載された化学反応及び精製スキームは、本発明のインシュリン誘導体を調製するための一般的な適用性について開示している。時折、反応は、本発明の開示されている範囲内に含まれる各化合物に対して、記載されたようには適用されない場合もある。この場合の化合物は、当業者には直ぐに認識されるであろう。これらの場合では、反応は当業者に既知の一般的な修飾法により、すなわち干渉基を適切に保護することにより、他の常套的な試薬に変えることにより、又は反応条件の常套的な改変により、成功裏に実施することができる。あるいは、ここに開示されているか又は他に一般的な他の反応が、本発明の対応する化合物の調製に適用されるであろう。全ての調製方法において、全ての出発物質は既知であるか、又は既知の出発物質から直ぐに調製することができる。全ての温度は摂氏で記載されており、別の定義をしない限りは、全ての部及びパーセントは、収率に関しては重量であり、全ての部は、溶媒及び溶離液に関しては容量である。
【0145】
本発明のインシュリン誘導体は、当該分野で典型的な次の手順の一又は複数を使用することにより精製することができる。これらの手順は、必要ならば、勾配、pH、塩、濃度、流量、カラム等に関して変えることができる。当該問題の種々のインシュリンの不純物プロファイル、溶解度等の要因に応じて、これらの変更は容易に認識可能であり、また当業者によってなされるであろう。
【0146】
実施例1:
εA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

工程1:ミリスチン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成
アシル化試薬ミリスチン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの合成を、B. Faroux-Corlayら, J. Med. Chem. 2001, 44, 2188-2203に記載されたようにして実施した。
【0147】
工程2:インシュリン前駆体LysA9 ArgB29 desB30B'Aの調製及び精製
インシュリン前駆体LysA9 ArgB29 desB30B'Aを、以下の精製工程AないしCに記載されたようにして精製した。
精製工程A:捕捉
工程Aにおいて、10.75リットルの清浄な培地を、4.5リットルの99%エタノールを添加することにより希釈し、30vol%のエタノールを含む15.25リットルの全体容量とした(伝導率:2.7mS/cm、pH=3.4)。300mのSPビッグ・ビーズセファロースカラム(100-300μm、Amersham Biosciences)を、朝まで、15.25リットルの調製された培養培地(約10ml/分の流量)を充填する前に、1リットルの0.1Mクエン酸、pH3.5(約20ml/分の流量)で平衡にした。カラムに充填した後、再度、1リットルの0.1Mクエン酸、pH3.5、続いて1リットルの40vol%エタノール(約20ml/分の流量)で洗浄した。ついで、結合していたインシュリン前駆体LysA9 ArgB29 desB30B'Aを、1.5リットルの0.2M酢酸ナトリウム、35vol%のエタノール、pH 5.75で溶出させた(流量:1.5ml/分、溶出した前駆体容量:400ml、前駆体の量:220mg)。
【0148】
精製工程B:逆相HPLC
工程Bにおいて、溶出液を蒸発乾固させ、ペレットを0.25Mの酢酸に再溶解させた。C18カラム(ODDMS C18、20×250Mm、200Å、10μm、FeF Chemicals A/S)において逆相HPLCにより精製する直前に、pHをさらに1.5まで低下させた。カラムに適用する前に、前駆体溶液を滅菌濾過した(22μm、Low Protein Binding Durapore(登録商標)(PVDF)、Millipore)。15%Bから50%Bの勾配をカラムに流した。ここで、バッファーA:0.2Mの(NH)SO、0.04Mのオルト-リン酸、10vol%のエタノール、pH 2.5、及びバッファーB:70vol%のエタノールである。5ml/分の流量、40℃のカラム温度で、勾配を120分流した。インシュリン前駆体 LysA9 ArgB29 desB30B'Aを、約35%のBで溶出させ、プールした(全量量:75ml)。
【0149】
精製工程C:ゲル濾過による脱塩
精製工程Cにおいて、逆相HPLCからの溶出液におけるエタノール含有量を、ロータリーエバポレータを使用して、5vol%以下に低減させた(新規容量:〜50ml)。1000mlのG25セファデックスカラム(5x55cm、Amersham Biosciences)を、0.5Mの酢酸で洗浄し、ついでインシュリン前駆体LysA9 ArgB29 desB30B'Aをカラムに適用し、0.5Mの酢酸中でのゲル濾過により脱塩した。ついで、インシュリン前駆体を280nmでのUV検出にかけ、さらに、塩を伝導率測定にかけた。脱塩直後に、インシュリン前駆体を凍結乾燥させた(重量で160mg、5759.87m/z)。
【0150】
工程3:NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成
30mgの凍結乾燥インシュリン前駆体 LysA9 ArgB29 desB30B'Aを、5mlの50mMホウ酸、pH2.6に溶解させた。ついで、1MのNaOHを数滴使用し、pHを10.2に上昇させた。4mgのアシル化試薬ミリスチン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、約50℃まで注意深く加熱しながら、3.4mlのCHCNに溶解させた。ついで、攪拌しつつ(これにより、アシル化試薬は1.75倍過剰)、3.2mlのアシル化試薬溶液をインシュリン前駆体溶液に添加した。室温で60分攪拌しつつ、インキュベートした後、2.1mlの0.2Mエタノールアミン、pH9.0を添加することにより、反応を停止させた。室温でのインキュベートの10分後、pHを6.4に調節し、それによって、アシル化されたインシュリン前駆体NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30B'Aを沈殿させた。沈殿物を4℃で朝まで保存した(沈殿物の量:23mg)。
【0151】
工程4:NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成
23mgのNεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30B'A沈殿物を、4.2mlの50mMグリシン、20vol%のエタノール、pH10.0に溶解させた。3.6mgの凍結乾燥されたブタトリプシン(Novo Nordisk A/S)を、3.5mlの50mMグリシン、20vol%のエタノール、pH 10.0に溶解させた。ついで、このトリプシン溶液の0.5mlを、インシュリン前駆体溶液に添加した(これにより、インシュリン前駆体は200倍超)。ついで、pH<3(0.5Mの酢酸を用いて、pH=2.08)に低下させることにより、トリプシン活性を停止させた後に、混合物を室温で15分インキュベートした。
【0152】
ついで、アシル化されたインシュリン類似体NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを、逆相HPLCにより精製した(トリプシン、及び任意の非-アシル化、二重-アシル化等、又は切断されていないインシュリン分子の除去)。40%Bから100%Bの勾配を、C4カラム(Jupiter C4、5μm、300Å、10×250mm、Phenomenex)に適用した。ここで、バッファーA:10mMのTris、15mMの(NH)HCO、10vol%のエタノール、pH8.5、及びバッファーB:70vol%のエタノールである。2ml/分の流量、40℃のカラム温度、1x25cmのカラムサイズで、勾配を120分流した。NεA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを70%Bで溶出させた(溶出した類似体の容量:15ml)。約6までpHを低下させることによって、類似体を沈殿させ、2mlの0.5M酢酸に再溶解させ、凍結乾燥させた(類似体の重量:9.3mg重量、LCMS:5988.04m/z)。
【0153】
実施例2:
εA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成
工程1:ω-カルボキシペンタデカノイル-L-Glu(OSu)-OHの調製
アシル化試薬ω-カルボキシペンタデカノイル-L-Glu(OSu)-OHを、本質的に、オクタデカン二酸の代わりにヘキサデカン二酸から出発して、WO-2005012347-A2にオクタデカンジオイル-L-Glu(OSu)-OH(ω-カルボキシヘプタデカノイル-L-Glu(OSu)-OH)について記載しているようにして調製した。

【0154】
工程2:インシュリン前駆体LysA9 ArgB29 desB30B'Aの調製及び精製
インシュリン前駆体を、実施例1の工程2に記載しているようにして精製した。
工程3:NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成
40mgの凍結乾燥されたインシュリン前駆体 LysA9 ArgB29 desB30B'Aを、2mlの100mM NaCO、pH10.8に溶解させた。13mgのアシル化試薬ω-カルボキシペンタデカノイル-L-Glu(OSu)-OHを、500μlのCHCNに懸濁させた。ついで、70μlのNMPを添加することにより、アシル化試薬を溶解させた。ついで、攪拌しつつ(これにより、アシル化試薬は2.5倍過剰)、570μlのアシル化試薬溶液をインシュリン前駆体溶液にゆっくりと添加した。室温で60分攪拌しつつ、インキュベートした後、pHを約5に調節することにより反応を停止させ、それによって、アシル化されたインシュリン前駆体NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30B'Aを沈殿させた。沈殿物を4℃で一晩保存した(LC-MS:6154.93m/z)。
【0155】
工程4:NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成
εA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30B'A沈殿物を、3mlの50mMグリシン、20vol%のエタノール、pH10.0に溶解させた。1mgの凍結乾燥されたブタトリプシン(Novo Nordisk A/S)を、1.5mlの50mMグリシン、20vol%のエタノール、pH10.0に溶解させ、ついで、インシュリン前駆体溶液に添加した(これにより、インシュリン前駆体は300倍超)。ついで、pH<3に低下させることにより、トリプシン活性を停止させた後に、反応体を室温で15分インキュベートした。
【0156】
ついで、アシル化されたインシュリン類似体NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを、逆相HPLCにより精製した(トリプシン、及び任意の非アシル化、二重アシル化等、又は非切断インシュリン分子の除去)。25%B〜55%Bの勾配を、フジ(Fuji)C4カラム(15μm、200Å、10x250mm、FeF Chemicals A/S)に適用した。ここで、バッファーA:10mMのTris、15mMの(NH)HCO、10vol%のエタノール、pH 8.5、及びバッファーB:70vol%のエタノールである。3ml/分の流量、室温で100分以上、勾配を流した。NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを、約48%Bで溶出させた(17mgの誘導体)。5以下にpHを低下させることによって、類似体を沈殿させ、2mlの0.5M酢酸に再溶解させ、凍結乾燥させた(LC-MS:6173m/z)。
【0157】
実施例3:
εB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

工程1:ω-カルボキシペンタデカノイル-L-Glu(OSu)-OHの調製
アシル化試薬ω-カルボキシペンタデカノイル-L-Glu(OSu)-OHの調製を、実施例2に記載されているようにして実施した。
【0158】
工程2:インシュリン前駆体LysB3 ArgB29 desB30B'Aの調製及び精製
インシュリン前駆体を、本質的に実施例1の工程2に記載されているようにして、すなわち捕捉工程、続いて逆相-HPLC、及び最終的に脱塩をして精製した。脱塩直後に、インシュリン前駆体を凍結乾燥した(LC-MS:5731.34m/z)。
工程3:NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成
インシュリン前駆体NεB3-ω-カルボキシペンタ-デカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30B'Aの合成を、本質的に実施例2の工程3に記載されているようにして実施した(LC-MS:6128.2m/z)。
【0159】
工程4:NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成
εB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30B'Aを、本質的に、実施例2の工程4で、NεA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30B'Aについて記載したように、トリプシンにより切断した。
ついで、アシル化されたインシュリン類似体NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを、逆相HPLCにより精製した。まず、トリプシン切断からの反応混合物を、10%のエタノール(4.5ml)に水を添加することにより希釈し、175μlのPMSF(1mg/ml)を添加してトリプシンを阻害した。pHを8に調節し、NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを溶解させた。20%Bから50%Bの勾配を、フジC4カラム(15μm、200Å、10x250mm、FeF Chemicals A/S)に適用した。ここで、バッファーA:10mMのTris、15mMの(NH)HCO、10vol%のエタノール、pH 8.5、及びバッファーB:70vol%のエタノールである。3ml/分の流量、室温で160分以上、勾配を流した。NεB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンを、約30%Bで溶出させた。
【0160】
分析用ジュピター(Jupiter)C4カラム(5μm、300Å、4.6x150mm、Phenomenex)を使用し、逆相HPLCにより、誘導体をさらに精製した。20%Bから50%Bの勾配をカラムに適用した。ここで、バッファーA:12.5mMのTris、20mMの(NH)SO、20vol%のCHCN、pH7、及びバッファーB:80vol%のCHCNである。上述したように準備されたHPLCからのサンプルを、約10のサブサンプルに分割し、各サブサンプルを分析用HPLCスケールで精製した。精製後の全容量:20ml、純度:91%。
pHを5.12まで低下させることにより、類似体を沈殿させ、ペレットを凍結乾燥させた(1mg、LC-MS:6148.4m/z)。
【0161】
実施例4:
εB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysB3 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製は、実施例3に記載されている。NεB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に、実施例1に記載しているようにして実施した。LC-MS:無傷誘導体:5959.0m/z、還元誘導体のB-鎖:3581.3m/z。
【0162】
実施例5:
εB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysB22 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に実施例1及び3に記載しているようにして実施した。NεB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に、実施例1に記載しているようにして実施した。LC-MS:無傷の誘導体:5917.2m/z、還元誘導体:2382.60m/z(A-鎖)、3537.70m/z(B-鎖)。
【0163】
実施例6:
εB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysB22 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製は、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29z desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に実施例2及び3に記載されているようにして実施した。MS算出:6104.06m/z。
【0164】
実施例7:
εA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA15 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に、実施例1に記載されているようにして実施した。MALDI-MS:無傷誘導体:5946.14m/z、還元誘導体のB-鎖:3356.23m/z。
【0165】
実施例8:
εA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA15 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製は、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に、実施例2及び3に記載されているようにして実施した。MS算出値:6132.12m/z。
【0166】
実施例9:
εA18-ミリスチル LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA18 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεA18-ミリスチル LysA18 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA18-ミリスチル-LysA18-ArgB29-desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に実施例1に記載されているようにして実施した。LC-MS:無傷の誘導体:5959.5m/z、還元誘導体のB-鎖:3355.50m/z。
【0167】
実施例10:
εA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA18 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に実施例2及び3に記載されているようにして実施した。MALDI-MS:6146.96m/z。
【0168】
実施例11:
εA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA22 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に、実施例1及び3に記載しているようにして実施した。NεA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に実施例1に記載されているようにして実施した。LC-MS:6072.3m/z。
【0169】
実施例12:
εA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

LysA22 ArgB29 desB30B'A前駆体の調製及び精製を、本質的に実施例1及び3に記載されているようにして実施した。NεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30B'A前駆体の合成、続くトリプシンによる切断での最終生成物であるNεA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの生成を、本質的に実施例2及び3に記載されているようにして実施した。LC-MS:6260.m/z。
【0170】
実施例13:
εA22-3-カルボキシ-5-ヘキサデカンジオイルアミノベンゾイルLysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

0.1MのNaCO(2.25ml)に溶解させたLysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンに、アセトニトリル(1.13ml)に溶解させた1.2当量の5-(15-tert-ブトキシカルボニルペンタデカノイルアミノ)イソフタル酸-3-tert-ブチルエステル-1-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エステル(WO2006082204に記載されたようにして調製)を添加する。インシュリン誘導体を等電沈殿により単離させる。乾燥した生成物を、TFAで30分処理する。蒸発により、TFAを除去する。SP250/21ヌクレオシル(Nucleosil)300-7 C4カラム、及び0.1%のTFAを含有する水/アセトニトリルの10-80%勾配を使用する、グリソン(Glison)215システムにおいて実施可能なRP-HPLCによる精製後に、表題化合物を単離する。
【0171】
実施例14:
εA22-3-カルボキシ-5-オクタデカンジオイルアミノベンゾイルLysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

4-(17-tert-ブトキシカルボニル−ヘプタデカノイルアミノ)イソフタル酸-3-tert-ブチルエステル-1-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イル)エステルを、LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンと反応させ、続いてTFA処理をし、上述したようにして精製する。
【0172】
実施例15:
εA22-10-(3,5-ジカルボキシフェノキシ)デカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

5-{9-[(S)-1-tert-ブトキシカルボニル-3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)プロピルカルバモイル]ノニルオキシ}イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(上述したようにして調製)を、LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンと反応させ、続いてTFA処理をし、上述したようにして精製する。
【0173】
実施例16:
εA22-4-[10-(3,5-ジカルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]-ブチリルLysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンの合成

5-{9-[3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-プロピルカルバモイル]-ノニルオキシ}-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(上述したようにして調製)を、LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリンと反応させ、続いてTFA処理をし、上述したようにして精製する。
【0174】
5-{9-[(S)-1-tert-ブトキシカルボニル-3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-プロピルカルバモイル]-ノニルオキシ}-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステルの合成
工程1:3-ヒドロキシ-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
60℃で、無水トルエン(20ml)に5-ヒドロキシ-イソフタル酸(1.06g、5.8mmol)が入った懸濁液に、N,N-ジメチルホルムアミド-ジ-tert-ブチルアセタール(7.0ml、29.2mmol)を添加し、温度を100℃まで上昇させた。無水DMF(5ml)を添加した。窒素下で混合物を攪拌した。2時間後、N,N-ジメチルホルムアミド-ジ-tert-ブチルアセタール(7.0mL、29.2mmol)をさらに添加した。3時間後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。ヘプタン/EtOAc/酢酸が40:20:3であるものを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより、固形物を精製した。表題化合物が分離され、トリ-tert-ブチルエステルで汚染されていた。
LC-MS:239,13(M-tBu)。
【0175】
工程2:5-(9-メトキシカルボニル-ノニルオキシ)-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
3-ヒドロキシ-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(90mg、0.3mmol)を、無水アセトン(5ml)、KCO(90mg、0.65mmol)に溶解させ、10-ブロモデカン酸メチル(0.075ml、0.3mmol)を添加した。混合物を還流まで加熱した。加熱は、KCOの分解により生じる。しばらくすると、沈殿物が形成された。一晩、還流(50℃)し続けた。さらなるKCO(30mg、0.2mmol)及び10-ブロモデカン酸メチル(0.025ml、0.1mmol)を添加した。混合物を50℃で一晩還流した。乾燥反応混合物に、EtOAc及び水を添加した。抽出後、水及びブラインで有機相を洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明な油として、表題粗化合物が得られた。
LC-MS:m/z:423.34(M-tBu) 。
【0176】
工程3:5-(9-カルボキシ-ノニルオキシ)-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
THF(2ml)に5-(9-メトキシカルボニル-ノニルオキシ)-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(162mg、0.34mmol)が入った溶液に、1NのNaOH(0.35ml)を添加した。混合物を7時間還流した。濃縮する前に、混合物を朝まで、室温で放置した。残ったEtOAc及び0.1NのHClに添加した。EtOAcを用いて2回、水相を抽出した。組合せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明なシロップが得られた。
LC-MS:m/z:465.3(M+1)。
【0177】
工程4:5-[9-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
無水THF(2ml)に5-(9-カルボキシ-ノニルオキシ)-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(156mg、0.34mmol)が入った溶液に、TSTU(125mg)及びDIPEA(0.08ml)を添加した。混合物を窒素下で、朝まで攪拌した。混合物を濃縮した。残留物をEtOAcに再溶解させ、濾過した。濾液を0.1NのHCl(2x)、及びブライン(1x)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明なシロップが得られた。
LC-MS:m/z:562.3(M+1)。
【0178】
工程5:5-[9-((S)-1-tert-ブトキシカルボニル-3-カルボキシ-プロピルカルバモイル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
無水DMF(1ml)に5-[9-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(62mg、0.11mmol)が入った溶液に、H-Glu-OtBu(0.027g、0.13mmol)及びDIPEA(0.05ml)を添加した。窒素下で4時間、混合物を朝まで攪拌した。混合物を濃縮した。残留物をEtOAcに再溶解させ、0.1NのHCl(2x)、ブライン(1x)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、シロップが得られた。
LC-MS:m/z:650.44(M+1)。
【0179】
工程6:5-{9-[(S)-1-tert-ブトキシカルボニル-3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-プロピルカルバモイル]-ノニルオキシ}-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
5-[9-((S)-1-tert-ブトキシカルボニル-3-カルボキシ-プロピルカルバモイル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(70mg、0.11mmol)を、無水THF(1ml)に溶解させた。TSTU(40mg、0.13mmol)及びDIPEA(0.05ml)を添加した。窒素下で週末にかけて、混合物を室温で攪拌した。混合物を濃縮した。残留物をEtOAcに再溶解させ、濾過した。濾液を0.1NのHCl(2x)で洗浄し、ブライン(1x)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明なシロップが得られた。まだ出発物質が残っており、TSTU-処理を繰り返し、続いて調べたところ、透明なシロップとして表題の化合物が得られた。
LC-MS:m/z:747(M+1)。
【0180】
5-{9-[3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-プロピルカルバモイル]-ノニルオキシ}-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステルの合成
工程1:5-[9-(3-カルボキシ-プロピルカルバモイル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
5-[9-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(100mg、0.18mmol)を、無水DMF(2ml)に溶解させた。4-アミノ酪酸(GABA、23mg、0.2mmol)及びDIPEA(0.05ml)を添加した。混合物を窒素下で2日間攪拌した。混合物を濃縮した。残留物をEtOAcに溶解させ、0.1NのHCl(2×)及びブライン(1×)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明なシロップが得られた。
LC-MS:m/z:550.33(M+1)。
【0181】
工程2:5-{9-[3-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルオキシカルボニル)-プロピルカルバモイル]-ノニルオキシ}-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル
無水THF(2ml)に5-[9-(3-カルボキシ-プロピルカルバモイル)-ノニルオキシ]-イソフタル酸ジ-tert-ブチルエステル(62mg、0.11mmol)が入った溶液に、DIPEA(0.05ml)及びTSTU(41mg、0.14mmol)を添加した。窒素下で朝まで、混合物を室温で攪拌した。混合物を濃縮し、EtOAcを残留物に添加した。濾過により沈殿物を除去した。濾液を0.1NのHCl(2×)及びブライン(1×)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮したところ、透明なシロップが得られた。
LC-MS:m/z:647.29。
【0182】
実施例17:
本発明のインシュリン誘導体の疎水性
インシュリン誘導体の疎水性は、等張条件下で逆相HPLCを実施することにより見出される。インシュリン誘導体の溶出時間を、同じ条件下で既知の疎水性を有する他の誘導体、又はHIと比較する。疎水性度k'relは:k'relderiv=((tderiv−t)/(tref−t))k'relrefとして算出される。参照としてHIを使用:k'relref=k'relHI=1。HPLCシステムのボイド時間、tは、5μlの0.1mM NaNOを注入することにより測定される。実施条件:
カラム: Lichrosorb RP-C18、5μm、4×250mm
バッファーA:0.1Mのリン酸ナトリウム、pH7.3、10vol%のCHCN
バッファーB:50vol%のCHCN
注入容量:5μl
実施時間:最大で60分
最初の勾配を流した後、誘導体及び参照を流す等張レベル(例えばHI)を選択し、等張条件下にある誘導体及び参照の溶出時間を、上述した等式に使用し、k'relderivを算出する。
【0183】
実施例18:
本発明のインシュリン誘導体のインシュリンレセプター結合性
ヒトインシュリンレセプターに対する本発明のインシュリン誘導体の親和性は、SPAアッセイ(シンチレーション近接アッセイ)マイクロタイタープレート抗体捕捉アッセイにより測定される。SPA-PVT抗体-結合ビーズ、抗-マウス試薬(Amersham Biosciences、カタログ番号 PRNQ0017)を、25mlの結合バッファー(100mMのHEPES、pH7.8;100mMの塩化ナトリウム、10mMのMgSO、0.025%のトゥイーン(Tween)-20)と混合した。単一のPackard Optiplate(Packard No.6005190)用の試薬混合物は、2.4μlの1:15000に希釈された精製組換えヒトインシュリンレセプター(エクソン11を有する又は有さない)、100μlの試薬混合物当たり500cpmに相当するA14Tyr[125I]-ヒトインシュリンの所定量の保存溶液、12μlの1:1000に希釈されたF12抗体、3mlのSPA-ビーズ、全体を12mlにする結合バッファーからなる。ついで、全体で100μlの試薬混合物を、Packard Optiplateの各ウェルに添加し、インシュリン誘導体の希釈シリーズを、適切なサンプルからOptiplateにおいて作製する。ついで、ゆっくりと振盪させつつ、サンプルを16時間インキュベートする。ついで、1分間遠心分離することにより相分離させ、プレートをトップカウンターで計測する。GraphPad Prism 2.01(GraphPad Software, San Diego、CA)における非線状回帰アルゴリズムを使用し、結合データを適合させた。
【0184】
実施例19:
本発明のインシュリン誘導体のヒト血清アルブミン親和アッセイ
本発明のインシュリン誘導体のヒト血清アルブミンについての親和性を、Minileak粒子に固定化したヒト血清アルブミン(HSA)に対するA14Tyr[125I]-誘導体の相対結合定数として与え、インシュリンデテミール(生理食塩水バッファーにおいて1に等しい)に対して比較し、23℃で測定する:HSAaff=K(デテミール)/K(誘導体)。
0.3MのNaHCO、pH8.8において、HSA(Sigma A-1887)及びPEG(Fluka 95172)を用い、室温で朝までインキュベートすることにより、HSAをMinileak粒子(KemEnTec 1011F)に固定する。インキュベート後、1Mのエタノールアミン、pH9.0を添加することにより反応を停止させ、物質を、0.1MのTris(HCl)、pH7.4、0.1MのNaHCO、pH9.0、及び0.1Mのホスファート、pH3.0で数回洗浄する。HSA-Minileak物質を、0.1MのTris(HCl)、pH7.4、0.02%のアジドに保存する。物質に固定されたHSAの量を、H-ミリスチン酸(PerkinElmer NET-830)、及び0.1MのTris(HCl)、pH7.4に入った種々の量の遊離のHSA、0.025%のトリトン(Triton)-X-100と共に、HSA-Minileakを、室温で2時間インキュベートすることにより評価する。サンプルを遠心分離した後、シンチレーション-カウンターで上清を分析し、固定化されたHSAの量を計測する。
HSAに対するインシュリン誘導体の親和性を測定する場合、種々の量のHSA-Minileakを、0.1MのTris(HCl)、pH7.4、0.025%のトリトン-X-100において、室温で2時間、A14Tyr[125I]-誘導体と共にインキュベートする。インキュベート後、サンプルを遠心分離し、上清の半分を新しいチューブに取り出す。上清の半分(1/2S)と残りの上清+ペレット(1/2S+P)の双方を、ガンマ-カウンターで分析し、A14Tyr[125I]-誘導体についてのKを算出するために、これらのデータを使用する。
【0185】
実施例20:
本発明のインシュリン誘導体の自己会合性の分析
大きいが可溶性の錯体へ自己会合する本発明インシュリン誘導体の能力を、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して分析する:
カラム:SuperoseTM 6 PC 3.2/30、CV=2.4ml
(Amerham Biosciences)
温度:37℃
SECバッファー:140mMのNaCl、10mMのTrisHCl、0.01%のNaN、pH7.5
注入容量:20μl
流量:0.04ml/分
実施時間:80分
【0186】
この分析のため、本発明のインシュリン誘導体は、0.6mMの誘導体、2.1Zn2+/ヘキサマー、16mMのフェノール、7mMのホスファート、pH7.8からなる溶液中に入れる。ついで、誘導体の保持時間を、次の標準分子の保持時間と比較する:
標準体I: HSA+HSAダイマー(66.4kDa+133kDa)
Co(III)ヘキサマー(35.0kDa)
X2モノマー(5.9kDa)
標準体II:ブルーデキストラン(1.5MDa)
チログロブリン(669kDa)
フェリチン(440kDa)
アルドラーゼ(158kDa)
オボアルブミン(44.5kDa)
リボヌクレアーゼ(13.7kDa)
【0187】
次の式を使用し、誘導体についてのKavを決定する:
av=(t−t)/(V/(f+t−t))
ここで、tは与えられたピークに対する保持時間であり、tはブルーデキストランに対する保持時間であり、Vは全カラム容量(ここでは2.4ml)であり、fは流量(ここでは0.04ml/分)であり、及びtは、システムにおいてカラムのないブルーデキストランの保持時間である。
【0188】
av値は誘導体の自己会合の度合いを示す。すなわち、Co(III)ヘキサマー及びX2モノマーに対するKavに類似して大きなKavであることは、大きな自己会合性錯体を形成するための誘導体の傾向が小さいか又は無いことを示し、これに対し、Kavが0に近い程非常に小さいか又は負であるということは、大きな可溶性錯体に自己会合する誘導体の傾向が大きいことを示す。

注意:
ヒトインシュリンに対する疎水性:k'rel<1:+++、1−10:++、>10:+(HI=1)
ヒトインシュリンに対するインシュリンレセプター親和性:<5%:+、5-50%:++、>50%:+++
自己会合性:Kav<0.55:++、及びKav≧0.55:+
(ヒト血清アルブミン(HSA)に対してKav=0.55、ヒトインシュリンCo(III)ヘキサマーに対してKav=0.63、及びインシュリン類似体X2モノマーに対してKav=0.72)。
【0189】
実施例21:
本発明のインシュリン誘導体のラットへの静脈内ボーラス注射後の血中グルコース低下効果
ハイプノルム-ドルミカム(Hypnorm-Dormicum)皮下注射(1.25mg/mlのドルミカム、2.5mg/mlのフルアニソン、0.079mg/mlのクエン酸フェンタニル)を、プライミング用量(試験用物質の投与前−30分の時点)として2ml/kg、及び付加的に20分毎に1ml/kgを使用し、18時間絶食した200〜300gの雄ウィスターラットに麻酔をかけた。
動物に、1ml/kgのコントロール及び被験化合物(通常の用量範囲:0.125-20nmol/kg)を静脈内注射(尾静脈)で投与する。全グルコース濃度を決定するための血液サンプルを、−20分及び0分(投与前)、投与後10、20、30、40、60、80、120及び180分の時点で、尾端の毛細管の刺し傷より、ヘパリン処理された10μlのガラスチューブにて収集した。EBIO Plus自動分析器(Eppendorf, Germany)を使用する固定化グルコースオキシダーゼ法により、分析バッファーにおいて希釈した後、血中グルコース濃度を測定した。平均血漿グルコース濃度コース(平均±SEM)を、各用量及び各化合物について作製する。
【0190】
実施例22:
本発明のインシュリン類似体のT50%のブタにおける定量
50%は、テストされたインシュリンのA14Tyr[125I]標識された誘導体の注射量の50%が、外部γ-計測器を用いて測定して、注射部位から消失した時間である。
実験用動物ケアの原則に従った。薬物動態及び薬力学的研究のために、特定の病原菌を持たないLYYD、糖尿病ではない雌のブタ、デンマーク在来種、ヨークシャー及びデュロックの交雑種を使用した(Holmenlund, Haarloev, Denmark)。ブタは意識があり、4−5ヶ月の年齢、70−95kgの体重であった。実験前に動物を8時間絶食させた。
125Iを有するTyrA14で標識されたインシュリン誘導体の処方された調製物を、先に記載したブタに皮下注射した(Ribel, U., Jorgensen, K, Brange, J、及びHenriksen, U. The pig as a model for subcutaneous insulin absorption in man. Serrano-Rios, M and Lefebvre, P. J. 891-896. 1985. Amsterdam; New York; Oxford, Elsevier Science Publishers. 1985 (Conference Proceeding))。
【0191】
実験の開始時に、本発明のインシュリン誘導体(被験化合物)60nmol用量とインシュリンデテミール60nmol用量(双方ともTyr A14において125I標識された)を、各ブタの頸部の2つの別々の部位に注射した。
皮下注射部位から放射性標識が消失するのを、伝統的な外部ガンマ-計測法の修正法を使用し、モニターした(Ribel, U. Subcutaneous absorption of insulin analogues. Berger, M. 及びGries, F. A. 70-77 (1993). Stuttgart; New York, Georg Thime Verlag (Conference Proceeding))。この修正法を用いると、コードレスポータブル装置を使用して、数日間、皮下沈着物から放射活性が消失するのを、連続して測定することができる(Scancys Laboratorieteknik, Varlose, DK-3500, Denmark)。測定を1分間隔で実施し、計測された値をバックグラウンド活性に対して修正した。
【0192】
実施例23:
ヒトインシュリンに対する本発明のインシュリン誘導体の有効性
実験日、238-383gでオスのスプラーグドーリーラットを、クランプ実験に使用した。制御された周囲条件下、ラットは餌に自由に接近し、クランプ実験の前には一晩(3pmから)、絶食させた。
【0193】
実験プロトコル:
外科手順の少なくとも1週間前にラットを動物施設に慣れさせた。クランプ実験の約1週間前、ハロタン麻酔下で、頸静脈(注入のため)及び頸動脈(血液のサンプリングのため)にタイゴンカテーテルを挿入し、露出させ、頸部の後ろに固定した。外科手術後、ラットをStreptocilin vet.(Boehringer Ingelheim;0.15ml/ラット、筋肉内)に付与し、回復期間中、動物ケアユニット(25℃)内に配した。無痛覚とするために、麻酔中にアノルフィン(Anorphin)(0.06mg/ラット、皮下)を投与し、麻酔から十分に回復した後、再度2日に1回、リマダイル(Rimadyl)(1.5mg/kg、皮下)を投与した。
使用したクランプ技術を、(1)実験日の7amに一晩(前日の3pmから)絶食させたラットを計量し、サンプリング用シリンジ及び注入システム(Harvard 22 Basic pumps, Harvard, 及びPerfectum Hypodermic glass syringe, Aldrich)につなぎ、ついで個々のクランプ用ゲージに配し、実験開始前の約45分、そこで休ませた。全実験中、それらの通常の寝具上を、ラットは自由に動くことができ、飲み水に自由に接近することもできた。血漿グルコースレベルを10分間隔で測定した30分の基本期間後、試験されるインシュリン誘導体及びヒトインシュリン(ラット当たり1回の投与レベル、投与レベル当たりn=6−7)を、300分、一定の速度で注入した(静脈内)。10分の間隔中、血漿グルコースレベルを測定し、正常血糖を維持するために、20%水性グルコースの注入を調節した。再懸濁させた赤血球のサンプルを、各ラットからプールし、頸動脈カテーテルを介して、約1/2ml容量を戻した。
各実験日において、試験される個々のインシュリン誘導体溶液及びヒトインシュリン溶液のサンプルを、クリンプ実験の前及び終了時に取り出し、ペプチド濃度をHPLCにより確認した。ラットインシュリン及びC-ペプチド、並びに試験されるインシュリン誘導体及びヒトインシュリンの血漿濃度を、研究の前及び終了の時点で測定した。ペントバルビタール過剰投与を使用し、実験の終了時にラットを殺した。
【0194】
実施例24:
ラットへのインシュリン誘導体の肺送達
被験物質は、滴下法により肺経路で投与されるであろう。簡単に述べると、雄ウィスターラット(約250g)を、6.6ml/kgの皮下プライミング用量として、続いて30分の間隔を開けて3.3ml/kgの保持用量を3回付与する約60mlのフェンタニル/デヒドロデンズペリドール/-ドルミカムで麻酔した。麻酔誘導の10分後、基本サンプルを尾静脈(t=−20分)から得、続いて被験物質の投与直前(t=0)、基本サンプルを得た。t=0において、被験物質を一方の肺に気管内的に投与した。丸くなった端部を有する特定のカニューレを、200μlの空気と被験物質(1mg/kg)を含有するシリンジに搭載する。オリフィスを介してカニューレを気管に導入し、二分枝部を丁度通過するように主気管支の一方に送る。挿入中、頸部を外側から触診し、気管内部の位置を確認する。シリンジの内容物を注射し、2秒中断する。その後、カニューレをゆっくりと引き抜く。試験中(4又は8時間までの血液サンプル)、ラットは麻酔がかかったままであり、実験後、安楽死させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親インシュリンと置換基を含むインシュリン誘導体であって、該置換基が、親インシュリンのA-鎖のA8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、A22、A23又はA24位にに存在するLys残基のε-アミノ基、又は親インシュリンのB-鎖のB1、B2、B3、B4、B20、B21又はB22位に存在するLys残基のε-アミノ基のいずれかに結合し、但しB3がLysである場合、B29がGluではないインシュリン誘導体。
【請求項2】
前記置換基が4〜40の炭素原子を含む親油性基である請求項1に記載のインシュリン誘導体。
【請求項3】
前記置換基が6〜40の炭素原子を有するアシル基を含む請求項1又は2に記載のインシュリン誘導体。
【請求項4】
前記置換基が12〜36の炭素原子を有するアシル基を含む請求項1から3の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項5】
アシル基が、4≦n≦38のCH-(CH)-CO-である請求項1又は2に記載のインシュリン誘導体。
【請求項6】
アシル基が、4≦n≦38の(COOH)-(CH)-CO-である請求項1又は2に記載のインシュリン誘導体。
【請求項7】
アシル基が、4≦n≦38の(NH-CO)-(CH)-CO-である請求項1又は2に記載のインシュリン誘導体。
【請求項8】
アシル基が、4≦n≦38のHO-(CH)-CO-である請求項1又は2に記載のインシュリン誘導体。
【請求項9】
アシル基が、5-αリトコール酸又は5-βリトコール酸である請求項1から4の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項10】
アシル基が、コール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸又はコラン酸の5-α又は5-β異性体である請求項1から4の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項11】
アシル基が、デヒドロリトコール酸の5-α又は5-β異性体である請求項1から4の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項12】
アシル基が、フシジン酸、フシジン酸誘導体、又はグリシルレチン酸である請求項1から4の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項13】
前記置換基が、一般式:

のものであり、
ここで、Wは、
・側鎖にカルボン酸基を有するα-アミノ酸残基で、そのカルボン酸基の一つが、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド基を形成する残基;又は
・アミド結合を介して互いに結合した2、3又は4のα-アミノ酸残基からなる鎖で、アミド結合を介して、親インシュリンのA-又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に結合する鎖であり、Wのアミノ酸残基は中性側鎖を有するアミノ酸残基、及びWが側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一のアミノ酸残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されたもの;又は
・Xから親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基への共有結合であり;
Xは、
・-CO-;
・-CH(COOH)O-;
・-CON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO-;
・-CONHCH(COOH)(CH)NHO-;
・-CON(CHCHCOOH)CHO-;又は
・-CON(CHCOOH)CHCHO-;
であり、
但し、
a)Wがアミノ酸残基又はアミノ酸残基鎖である場合、X中の下線が付されたカルボニル炭素は、W中のアミノ基とアミド結合を形成し、又は
b)Wが共有結合である場合、X中の下線が付されたカルボニル炭素は、親インシュリンのA-鎖又はB-鎖に存在するLys残基のε-アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6〜32の範囲の整数である-(CH)-;
・1、2又は3の-CH=CH-基、及び鎖中の炭素原子の総数が10〜32の範囲となるのに十分な数の-CH-基を有する二価の炭化水素鎖;
・v及びwの合計が6〜30の範囲になるようにv及びwが整数であるか又はそれらの一方が0である式-(CH)(CH)-の二価の炭化水素鎖
であり;
Zは、
・-COOH;
・-CO-Asp;
・-CO-Glu;
・-CO-Gly;
・-CO-Sar;
・-CH(COOH)
・-N(CHCOOH)
・-SOH;又は
・-POH;
である請求項1に記載のインシュリン誘導体及びその任意のZn2+錯体。
【請求項14】
Wが、4〜10の炭素原子を有するα-アミノ酸残基である請求項13に記載のインシュリン誘導体。
【請求項15】
Wが、一方が4〜10の炭素原子と遊離カルボン酸基を有し、他方が2〜11の炭素原子を有するが、遊離カルボン酸基を有さない2つのα-アミノ酸残基からなる鎖である請求項13に記載のインシュリン誘導体。
【請求項16】
Wが共有結合である請求項13に記載のインシュリン誘導体。
【請求項17】
Xが、-CO-又は-COCH(COOH)CO-である請求項13から16の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項18】
Yが-(CH)-であり、mが6〜32の範囲の整数である請求項13から17の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項19】
Zが-COOHである請求項13から18の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項20】
親インシュリンがインシュリン類似体である請求項1から19の何れか一項に記載のインシュリン誘導体。
【請求項21】
親インシュリンが、ArgB29ヒトインシュリン又はArgB29desB30ヒトインシュリンである請求項20に記載のインシュリン誘導体。
【請求項22】
インシュリン誘導体6分子当たり、2つの亜鉛イオン、3つの亜鉛イオン、4つの亜鉛イオン、5つの亜鉛イオン、6つの亜鉛イオン、7つの亜鉛イオン、8つの亜鉛イオン、9つの亜鉛イオン、10の亜鉛イオン、11の亜鉛イオン、又は12の亜鉛イオンが結合している請求項1から21の何れか一項に記載のインシュリン誘導体の亜鉛錯体。
【請求項23】
請求項1から21の何れか一項に記載のインシュリン誘導体の治療的有効量を、場合によっては製薬的に許容可能な担体と共に含有する、治療が必要な患者における糖尿病を治療するための医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から21に記載の医薬組成物又は請求項22に記載のインシュリン誘導体の亜鉛錯体の製造方法であって、インシュリン誘導体6分子当たり約12までの亜鉛イオンを該医薬組成物に加える方法。
【請求項25】
請求項1から21の何れか一項に記載のインシュリン誘導体の治療的有効量を、場合によっては製薬的に許容可能な担体と共に、患者に投与することを含む、治療が必要な患者における糖尿病の治療方法。
【請求項26】
糖尿病の肺治療のための請求項25に記載の方法。
【請求項27】
AspB28ヒトインシュリン;LysB28ProB29ヒトインシュリン及びLysB3GluB29ヒトインシュリンからなる群から選択される速効型インシュリン類似体と、請求項1ないし21の何れか一項に記載のインシュリン誘導体との混合物。
【請求項28】
インシュリン誘導体が、
εA9-ミリスチル LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB3-ミリスチル LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB22-ミリスチル LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA15-ミリスチル LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA18-ミリスチル LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA22-ミリスチル LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA9-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA9 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB3-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB3 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εB22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysB22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA15-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA15 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA18-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA18 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
εA22-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-Glu LysA22 ArgB29 desB30ヒトインシュリン、
からなる群から選択される請求項1に記載のインシュリン誘導体。
【請求項29】
実施例に記載されたインシュリン誘導体。

【公開番号】特開2012−214486(P2012−214486A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−137431(P2012−137431)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2008−556768(P2008−556768)の分割
【原出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】