説明

新規インターロイキン−1および腫瘍壊死因子−αモジュレーター、前記モジュレーターの合成、ならびに前記モジュレーターの使用方法

【課題】インターロイキン−1および腫瘍壊死因子−αモジュレーターとして有用であり、したがって種々の疾患の治療に有用である化合物を提供する。
【解決手段】式(I)のアカント酸を原型とする類縁化合物は、前記課題の治療効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の疾患および疾患状態の治療に有用な化合物および薬剤組成物、例えば新規の化合物およびその薬剤組成物に関する。本発明は、天然生成物および新規の構造的に関連する化合物の合成方法にも関する。特に本発明は、例えば、炎症、癌、カヘキシー、心臓血管性疾患、糖尿病、中耳炎、副鼻腔炎および移植片拒絶の治療に有用な化合物およびその薬剤組成物の新規の類似体および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国の済州島で固有に発見されるAcanthopanax koreanum Nakai(ウコギ科Araliaceae
)は、例えば神経痛、麻痺および腰痛のための治療薬として伝統的に用いられてきた。種々の有用な構成成分、例えばアカント酸、式(I)の化学構造を有する化合物は、この木の根の樹皮から単離されている。さらに、例えばCOOH基がメタノール基により、メチル−アセチルエーテルにより、メチル基により、そしてメチル−エステルにより置換される式(I)の化合物のある種の類似体も各々、Acanthopanax koreanum Nakai(ウコギ科Araliaceae)の根の樹皮から単離されている(非特許文献1)(これらの類似体の適正な
化学名は、この参考文献中に提示されている)。この参考文献および本明細書中で言及したその他の特許および印刷出版物はすべて、それらの記載内容が全体として本明細書中に引用される。
【0003】
【化1】

【0004】
アカント酸としても知られる式(I)の化合物は、ある種の薬理学的作用、例えば鎮痛および抗炎症性活性を有することが報告されている。式(I)の化合物は、非常に低い毒性も示し、ラットに投与した場合、1000mg/kgが最小致死用量(MLD)である(非特許文献2)。式(I)の化合物および/またはその天然類似体は、白血球遊走およびプロスタグランジンE2(PGE2)合成を抑制することによりこれらの既知の薬理学的作用を示し得るし、そしてインターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)産生の推測されるエフェクターである。さらに、アカント酸の製造方法および免疫疾患の治療のためのアカント酸の使用は、特許文献1に記載されている。
【0005】
さらに、式(IA)の化合物、カウラノン酸および式(IA)の化合物の対応するメチル−エステル類似体、ならびに式(IA)の化合物のメタノール系還元類似体が、Acanthopanax koreanum Nakai(ウコギ科Araliaceae)の根の樹皮から単離されている(非特許
文献1)(カウラノン酸、(−)−カウラ−16−エン−19−オイック酸の、およびカウラノン酸の既知の類似体の適正な化学名は、この参考文献中に提示されている)。
【0006】
【化2】

【0007】
腫瘍壊死因子−α(本明細書中では、「TNF−α」または「TNF」)および/またはインターロイキン−1(本明細書中では「IL−1」)は、種々の生化学的経路に関与し、したがって、TNF−αおよび/またはIL−1活性あるいは産生のモジュレーター、特にTNF−αおよび/またはIL−1活性の新規のモジュレーター、あるいはIL−1またはTNF−αあるいは両方の産生に影響を及ぼす新規の化合物が、たいへんに望まれている。このような化合物および化合物の種類は、ヒト免疫系を維持するのに、そして例えば結核性胸膜炎、リウマチ様胸膜炎のような疾患、ならびに免疫性障害であるとは慣用的には考えられない疾患、例えば癌、心臓血管性疾患、皮膚発赤、ウイルス感染、糖尿病および移植片拒絶の治療に有益であろう。
【0008】
腫瘍壊死因子−αおよびインターロイキンの産生を調節するための多数のアプローチが知られているが、しかし、腫瘍壊死因子−αおよびインターロイキンの産生を調節するための新規のアプローチ、化合物および薬剤処方物がたいへんに望まれ、当業者により長年探し求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公告WO 95/34300
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kim, Y.H. and Chung, B.S., J. Nat. Pro., 51, 1080-83(1988)
【非特許文献2】Lee, Y.S., "Pharmacological Study for (-)-Pimara-9(11),15-Diene-19-oic Acid, A Component of Acanthopanax koreanum Nakai," Doctorate Thesis, Dept. of Pharmacy, Seoul National University, Korea(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、式(I)および(IA)の化合物ならびにそれらの構造的類似体、例えば式(I)および(IA)の化合物の新規の類似体、の合成方法および半合成的製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の化合物は、例えば式(II)の化学構造を有する化合物、および式(IIA)の化学構造を有する化合物を含む。式(II)の化学構造を有する化合物に関しては、本発明は、以下のものを含む:
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R基は、以下のように定義される。 R3〜R5、R7、R8およびR11〜R13のど
れも水素でないか、R2またはR6またはR9がメチルでないか、あるいはR10がCH2でない場合には、R1は水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハ
ロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級ア
ミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5〜C12のアリールから成る群から選択されるが、しかしながら、R3〜R5、R7、R8、R11〜R13がすべて水素であり、R2、R6およびR9が各々メチルであり、そしてR10がCH2である場合には、R1は水素
、ハロゲン、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシ
ル残基、C2〜C12のエステル、C2〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、メチル−アセチルエーテル以外の(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C2〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアリールから選択される)。
【0015】
2およびR9は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニ
ル、C1〜C12のアシル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択さ
れる。
【0016】
3〜R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のア
ルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニ
ル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。特に好ましい実施形態では、R11は、C1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルであり、その他のR基はすべて、水素である。
【0017】
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択される。
【0018】
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。
【0019】
14およびR15は別々に、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6
置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから選択される。
【0020】
式(IIA)の化学構造を有する化合物に関しては、本発明は、以下のものを含む:
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R3〜R5、R7、R8およびR11〜R13のどれも水素でないか、R2またはR6がメチルでないか、R10がCH2でないか、あるいはR10がCH2OHであり、R11がOHであるというのが当てはまらない場合には、R1は水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエステ
ル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルから成る群から選択されるが、しかし、 R3〜R5、R7、R8、R11〜R13がすべて水素であり、R2およびR6が各々メチルであり、そしてR10がCH2またはCH2OHである場合には、R1は水素、ハロゲン、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のア
シル残基、C2〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、
2〜C12のアルキル、C2〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルから選択され、R2は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニル、C1〜C12のアシル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから
選択され、 R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。特に好ましい実施形態では、R11は、C1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルであり、その他のR基はすべて、水素であり、 R6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアル
キル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル
およびC2〜C12のアルキニルから選択され、 R10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケ
ニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択され、そして R14
よびR15は立体特異的であり得るし、 別々に水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1
〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから選択される)。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、式(IIB)の化学構造を有する化合物を提供すること、そして式(IIB)の化学構造を有する化合物の合成方法および半合成的製造方法を提供することである。式(IIB)の化学構造を有する化合物、例えば本明細書中でTTL1、TTL2、TTL3、TTL4と呼ばれる化合物ならびにそれらの類似体および誘導体に関しては、本発明は、以下のものを含む。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R基は以下のように定義される。R1は、水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエ
ステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5
〜C12のアリールから成る群から選択される。これらの条件下では、R1は、好ましくは
COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル
残基およびC1〜C12のエステルから選択され、最も好ましくはCOOHおよびC1〜C6
のエステルから選択される。
【0026】
2およびR9は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニ
ル、C1〜C12のアシル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択さ
れる。
【0027】
3〜R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のア
ルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニ
ル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。特に好ましい実施形態では、R11はC1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルであり、そしてその他のR基はすべて水素である。
【0028】
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択される。
【0029】
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。
【0030】
14およびR15は立体特異的であり、別々に、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のア
ルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから選択される。)
【0031】
また、種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は、環系が形成さ
れるように選択され得るということが理解されよう。例えば、R13およびR12はともにエチレン部分であり得るし、それらのそれぞれの末端炭素間に共有C−C結合を含んで、式(IIB)の化合物中に付加的6員環を形成し得る。さらに別の例としては、ビス−環式環は、式(IIB)の種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13に関
する適切な化学種を選択することにより形成され得る。
【0032】
本発明の化合物は、式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物のプロドラッグエステル、ならびに式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の酸付加塩、ならびに治療有効量の前記の化合物(それらのプロドラッグエステルおよびそれらの酸付加塩を含む)を、任意で薬学的に許容可能な担体とともに含有する薬剤組成物を包含する。このような組成物は、例えば免疫および自己免疫障害の治療における抗炎症鎮痛薬として、抗癌または抗腫瘍薬として有用であり、そして心臓血管性疾患、皮膚発赤、ウイルス感染、糖尿病、中耳炎、副鼻腔炎および/または移植片拒絶の治療に有用である。特に、治療有効量の式(II)、(IIA)または(IIB)の化合物、あるいは式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物のプロドラッグエステルおよび酸付加塩を含む薬剤組成物は、抗癌、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬として使用でき、そして心臓血管性疾患、皮膚発赤、ウイルス感染、糖尿病、中耳炎、副鼻腔炎および/または移植片拒絶の治療に有用であり得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、前記の化合物およびそれらの類似体の新規の合成方法であって、2つまたはそれ以上の環を有するジエンをジエノフィル化合物と反応させて3つまたはそれ以上の環を有する合成化合物を生成するディールス−アルダー反応を実施して、所望の合成化合物を生成する過程を包含する方法も提供する。ディールス−アルダー反応は、ジエンおよびジエノフィルの選択とともに、本発明の種々の化合物の合成に際して柔軟性を提供し、臨床試験を含めた生物学的検定に用いるための本発明の化合物の組合せ化学ライブラリーの使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を図面で説明する。図は本発明のいくつかの好ましい実施形態および/または本発明の製造および/または使用のいくつかの好ましい方法を説明するだけである。図は、本明細書中で特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。
【図1】アカント酸およびアカント酸メチルエステルの構造、アカント酸の立体化学的図および本発明のある化合物の骨格型図を示す。
【図2】本発明のある化合物のレトロ合成分析および戦略的結合会合を示す。
【図3】本発明のある化合物のAB環の構築のために選択されたアプローチ、例えば(±)ポドカプリン酸の合成のためのウェンカート(Wenkert)アプローチ、(±)ポドカプリン酸の合成のためのウェルチ(Welch)アプローチおよび(±)ポドカプリン酸の合成のためのデグロト(DeGrot)アプローチを示す。
【図4】アカント酸および本発明のある化合物のAB環系の合成の合成略図(模式図1)を示す。
【図5】アカント酸および本発明のある化合物の合成が完了され得る合成略図(模式図2)を示す。
【図6】本発明の詳細な説明に記載したようなジエン42の最小化三次元モデルを示す。
【図7】本発明の好ましい実施形態の詳細な説明に記載したような触媒49の開発および適用のための合成略図(模式図3)、不斉ディールス−アルダー反応を示す。
【図8】不斉ディールス−アルダー法に基づいた式(I)の化合物および本発明のある化合物の合成のための合成略図(模式図4)を示す。
【図9】オレアノール酸およびその誘導体と本発明のある化合物の構造活性関係、および構造活性関係試験の焦点を示す。
【図10】化合物1の構造変化および構造活性関係試験に関して同定される部位を示す。
【図11】構造活性関係試験および化学的生物学的試験に用いるための化合物1の類似体の好ましい代表例を示す。
【図12】光親和性標識試験のための化合物1のある好ましい代表的誘導体を示す。
【図13】化合物1の二量体および/または複合体のある好ましい代表例を示す。
【図14】図17におけるTTL1およびTTL3として本明細書中で同定された本発明のある化合物の完全化学合成を示す。
【図15】図17におけるTTL3として同定された本発明の好ましい14C標識化化合物の化学合成を示す。
【図16】式(I)の化合物の完全化学合成を示す。
【図17】本発明のある化合物の合成の要約、ならびにこれらの化合物の物理的特性を示す。化合物TTL1、TTL2、TTL3およびTTL4は、この図に示されたように定義される。
【図18】実施例1の合成の要約を示す。
【図19】(−)アカント酸および(+)ピマル酸の構造を示す。
【図20】実施例1の(−)アカント酸のレトロ合成分析を示す。
【図21】実施例1〜6に記載されたような式(IIB)の好ましい化合物の合成略図(模式図5)を示す。試薬、条件および各工程の収率(%)は、以下の通りであった。(a)0.1当量PTSA(CH2OH)2、ベンゼン、80℃、4時間、90%。(b)2.2当量Li、液体NH3、1.0当量tBuOH、−78〜−30℃、30分、次にイソプレン(余分量)、−78〜50℃;1.1当量NC−CO2Me、Et2O、−78〜0℃、2時間、55%。(c)1.1当量NaH、HMPA、25℃、3時間;1.1当量MoMCl、25℃、2時間、95%。(d)7.0当量Li、液体NH3、−78〜−30℃、20分;CH3I(余分量)、−78〜−30℃、1時間、61%。(e)1N HCl、THF、25℃、15分、95%。(f)1.6当量Liアセチリド、Et2O、25℃、1時間、91%。(g)リンドラー触媒(20%/重量)、H2、ジオキサン/ピリジン 10/1、25℃、10分、95%。(h)4.4当量BF3・Et2O、ベンゼン/THF 4/1、80℃、5時間、95%。(i)13当量化合物103、正味、8時間、25℃、100%。(j)1.4当量NaBH4、THF MeOH:10/1、30分、25℃、94%。(k)1.1当量p−Br−C64COCl、1.5当量ピリジン、0.1当量DMAP、CH2Cl2、25℃、2時間、化合物116に関しては95%、化合物117に関しては97%。
【図22】化合物116および117のORTEP図のChem3D表示を示す。分かり易くするために選定水素原子のみを示す。
【図23】実施例1の(−)アカント酸の三環コアの合成略図(模式図6)を示す。各工程の試薬、条件および各工程の収率(%)は、以下の通りであった。(a)3.0当量PhSH、0.05当量AIBN、キシレン、120℃、18時間、86%。(b)1.1当量、POCl3、HMPA、25℃、1時間;1.1当量ピリジン、150℃、18時間、81%。(c)3.0当量化合物103、0.2当量SnCl4(CH2Cl2中1M)、CH2Cl2、−20〜0℃、20時間、84%。(d)1.4当量NaBH4、EtOH、25℃、30分;(e)ラネーNi(余分量)、THF、65℃、10分、91%(2工程に亘って)。(f)1.3当量デス−マーチンペルイオジナン、CH2Cl2、25℃、30分。(g)2.7当量P3PhCH3Br、2.2当量NaHMDS(THF中1.0)、THF、25℃、18時間、86%(2工程に亘って)。(h)3.0LiBr、DMF、160℃、3時間、93%。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のある化合物は、式(II)で示される化学構造を有する。
【0036】
【化6】

【0037】
式(II)の化合物のR基は、以下のように選定され得る。(1)R3〜R5、R7、R8およびR11〜R13のどれも水素でないか、(2)R2、R6またはR9がメチルでないか、
あるいは(3)R10がCH2でない場合には、R1は水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5
〜C12のアリールから成る群から選択される。これらの条件下では、R1は、好ましくは
COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル
残基およびC1〜C12のエステルから選択され、最も好ましくはCOOHおよびC1〜C6
のエステルから選択される。
【0038】
しかしながら、(1)R3〜R5、R7、R8、R11〜R13がすべて水素であり、(2)R2、R6およびR9が各々メチルであり、そして(3)R10がCH2である場合には、R1
水素、ハロゲン、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12
アシル残基、C2〜C12のエステル、C2〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、メチル−アセチルエーテル以外の(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C2〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアリールから選択される。これらの条件下では、R1は、好ましくはC1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハ
ロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基およびC2〜C12のエステルから選択され、最も好ましくはC4〜C8のエステルである。
【0039】
2およびR9は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニ
ル、C1〜C12のアシル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択さ
れる。好ましくは、R2およびR9は各々別々に、アルキル残基およびアルケニル残基から選択される。最も好ましくはR2およびR9は各々メチル残基であるが、しかし式(II)の化合物の好ましい実施形態では、R2およびR9のうちの一方はメチルであり、他方はメチルでない場合がある。
【0040】
3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アル
ケニル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々、水素またはC1〜C6のアルキルで
あり、最も好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々、水素である
。それにもかかわらず、式(II)の化合物の好ましい実施形態では、R3、R4、R5
7、R8およびR11〜R13のいずれか1つまたはいくつかは水素であり得るが、一方、その他は水素ではない場合がある。
【0041】
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択される。好ましくは、R6は、水素、ハロゲン、C1〜C6のアルキルから選択される。さらに好
ましくは、R6はC1〜C6のアルキルであり、最も好ましくは、R6はメチルである。
【0042】
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。式(II)の化合物の残りのものにR10を連結する結合は
、好ましくはC−C二重結合であるが、しかしC−C単結合、C−H単結合または異種原子単結合であり得る。好ましくは、R10はCH2またはCH2R'(ここでR'はC1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルである)である。最も好ましくは、R10はCH2
である。
【0043】
14およびR15は別々に、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6
置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから選択され、水素およびC1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキルが最も好ましい。
【0044】
種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は、環系が形成されるよ
うに選択され得る、ということも認識されるだろう。例えば、R13およびR12はともにエチレン部分であり得るし、それらのそれぞれの末端炭素間に共有C−C結合を含有して、式(II)の化合物中に付加的6員環を形成し得る。さらなる例として、式(II)の種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13のための適切な化学種を選択
することにより、ビス−環式環が形成され得る。
【0045】
本発明のある種の好ましい化合物は、式(IIA)で示される構造を有する。
【0046】
【化7】

【0047】
式(IIA)の化合物のR基は、以下のように選択され得る。R3〜R5、R7、R8およびR11〜R13もどれも水素でないか、R2またはR6がメチルでないか、R10がCH2でな
いか、あるいはR10がCH2OHであり、R11がOHであるというのが当てはまらない場
合には、R1は水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲ
ン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド
、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルから成る群から選択される。これらの条件下
では、R1は、好ましくはCOOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化ア
シル、C1〜C12のアシル残基およびC1〜C12のエステルから選択され、最も好ましくは
COOHおよびC1〜C6のエステルから選択される。
【0048】
3〜R5、R7、R8、R11〜R13がすべて水素であり、R2およびR6が各々メチルであり、そしてR10がCH2またはCH2OHである場合には、R1は水素、ハロゲン、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C2〜C12
エステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C2〜C12のアルキル、
2〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルから選
択される。これらの条件下では、R1は、好ましくはC1〜C12のカルボン酸、C1〜C12
のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基およびC2〜C12のエステルから選択され、最も好ましくはC4〜C8のエステルである。
【0049】
2は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニル、C1〜C12のアシ
ル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。好ましくは、R2およびR9は各々別々に、アルキルおよびアルケニル残基から選択される。最も好ましくは、R2およびR9は各々メチル残基であるが、しかし、式(IIA)の化合物の好ましい実施形態では、R2およびR9の一方はメチルであり、他方はメチルではない場合があり得る。
【0050】
3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アル
ケニル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々水素またはC1〜C6のアルキルであ
り、最も好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々水素である。そ
れにもかかわらず、式(IIA)の化合物の好ましい実施形態では、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13のいずれか1つまたはいくつかは水素であり得るが、一方、その
他のものは水素ではない場合があり得る。
【0051】
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択される。好ましくは、R6は水素、ハロゲン、C1〜C6のアルキルから選択される。さらに好ま
しくは、R6はC1〜C6のアルキルであり、最も好ましくは、R6はメチルである。
【0052】
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。式(IIA)の化合物の残りのものにR10を連結する結合
は、好ましくはC−C二重結合であるが、C−C単結合、C−H単結合または異種原子単結合であり得る。好ましくは、R10はCH2またはCH2R'(ここでR'はC1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルである)である。最も好ましくは、R10はCH2であ
る。
【0053】
種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は、環系が形成されるよ
うに選択され得る、ということも認識されるであろう。例えば、R13およびR12はともにエチレン部分であり得るし、それらのそれぞれの末端炭素間の共有C−C結合を含有して、式(IIA)の化合物中に付加的6員環を形成し得る。さらなる例として、式(IIA)の種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13のための適切な化学種
を選択することにより、ビス−環式環が形成され得る。
【0054】
本発明のある種の好ましい化合物は、本明細書中でTTL1、TTL2、TTL3およ
びTTL4と呼ばれる化合物を含めて、式(IIB)で記述される化学構造を有する。
【0055】
【化8】

【0056】
式(IIB)の化合物のR基は、以下のように選択され得る。 R1は、水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシ
ル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置
換アルケニルおよびC5〜C12のアリールから成る群から選択される。これらの条件下で
は、R1は、好ましくはCOOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシ
ル、C1〜C12のアシル残基およびC1〜C12のエステルから選択され、最も好ましくはCOOHおよびC1〜C6のエステルから選択される。
【0057】
2およびR9は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニ
ル、C1〜C12のアシル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択さ
れる。好ましくは、R2およびR9は各々別々に、アルキル残基およびアルケニル残基から選択される。最も好ましくは、R2およびR9は各々メチル残基であるが、しかし、式(IIB)の化合物の好ましい実施形態では、R2およびR9の一方はメチルであり、他方はメチルではない場合がある。
【0058】
3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アル
ケニル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択される。好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々水素またはC1〜C6のアルキルであ
り、最も好ましくは、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は各々水素である。そ
れにもかかわらず、式(IIB)の化合物の好ましい実施形態では、R3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13のいずれか1つまたはいくつかは水素であり得るが、一方、その
他のものは水素ではない場合があり得る。
【0059】
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択される。好ましくは、R6は、水素、ハロゲン、C1〜C6のアルキルから選択される。さらに好
ましくは、R6はC1〜C6のアルキルであり、最も好ましくはR6はメチルである。
【0060】
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択される。式(II)の化合物の残りのものにR10を連結する結合は
、好ましくはC−C二重結合であるが、しかしC−C単結合、C−H単結合または異種原
子単結合であり得る。好ましくは、R10はCH2またはCH2R'(ここでR'はC1〜C6のアルキルまたはC1〜C6の置換アルキルである)である。最も好ましくは、R10はCH2
である。
【0061】
種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13は、環系が形成されるよ
うに選択され得る、ということも理解されよう。例えば、R13およびR12はともにエチレン部分であり得るし、それらのそれぞれの末端炭素間に共有C−C結合を含有して、式(IIB)の化合物中に付加的6員環を形成し得る。さらなる例として、式(IIB)の種々のR基、特にR3、R4、R5、R7、R8およびR11〜R13のための適切な化学種を選択
することにより、ビス−環式環が形成され得る。
【0062】
定義
本明細書中で用いる場合、「アルキル」という用語は、あらゆる非分枝鎖または分枝鎖の、飽和炭化水素を意味し、C1〜C6の非分枝鎖飽和非置換炭化水素が好ましく、メチル、エチル、イソブチルおよびtert−ブチルが最も好ましい。置換飽和炭化水素の中では、C1〜C6のモノ−およびジ−ならびにプレ−ハロゲン置換飽和炭化水素およびアミノ置換炭化水素が好ましく、ペルフルオロメチル、ペルクロロメチル、ペルフルオロ−tert−ブチルおよびペルクロロ−tertブチルが最も好ましい。「置換アルキル」という用語は、あらゆる非分枝鎖または分枝鎖の、置換飽和炭化水素を意味し、非分枝鎖C1
〜C6のアルキル第二級アミン、置換C1〜C6の第二級アルキルアミンおよび非分枝鎖C1〜C6のアルキル第三級アミンは「置換アルキル」の定義内であるが、しかし好ましくな
い。「置換アルキル」という用語は、あらゆる非分枝鎖または分枝鎖の、置換飽和炭化水素を意味する。環式化合物、即ち環式炭化水素および異種原子を有する環式化合物の両方は、「アルキル」の意味内である。
【0063】
本明細書中で用いる場合、「置換された」という用語は、官能基による水素原子のあらゆる置換を意味する。
【0064】
本明細書中で用いる場合、「官能基」という用語は、その一般的定義を有し、好ましくはハロゲン原子、C1〜C20のアルキル、置換C1〜C20のアルキル、過ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シアノおよびニトロから成る群から選択される。官能基は、−SRS、−ORO−、−NRn1n2、−N+n1n2n3、−N=N−Rn1、−P+
n1n2n3、−CORC、−C(=NORO)RC、−CSRC、−OCORC、−OCO
NRn1n2、−OCO2C、−CONRn1n2、−C(=N)NRn1n2、−CO2O、−SO2NRn1n2、−SO3O、−SO2O、−PO(ORO2、−NRn1CSNRn2
n3から成る群からも選択され得る。これらの官能基Rn1、Rn2、Rn3、ROおよびRSの置換は、好ましくは各々別々に、水素原子、C1〜C20のアルキル、置換C1〜C20のアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールから成る群から選択され、脂肪族または芳香族複素環の部分を構成し得る。RCは、好ましくは水素原子、C1〜C20のアルキル、置換C1〜C20
のアルキル、過ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびシアノから成る群から選択される。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「ハロゲン」および「ハロゲン原子」という用語は、元素の周期表の17族の放射能安定性原子のいずれか、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指し、フッ素および塩素が特に好ましい。
【0066】
本明細書中で用いる場合、「アルケニル」という用語は、任意の非分枝鎖または分枝鎖
、置換または非置換の不飽和炭化水素を意味し、C1〜C6の非分枝鎖、一価および二価の不飽和、非置換炭化水素が好ましく、一価の不飽和二ハロゲン置換炭化水素が最も好ましい。「置換アルケニル」という用語は、1つ又はそれ以上の官能基で置換される任意の非分枝鎖または分枝鎖、置換不飽和炭化水素を意味し、非分枝鎖C2〜C6のアルケニル第二級アミン、置換C2〜C6の第二級アルケニルアミン、および非分枝鎖C2〜C6のアルケニル第三級アミンは「置換アルキル」の定義内である。「置換アルケニル」という用語は、任意の非分枝鎖または分枝鎖の置換不飽和炭化水素を意味する。環式化合物、即ち不飽和環式炭化水素および異種原子を有する環式化合物はともに、「アルケニル」の意味内である。
【0067】
本明細書中で用いる場合、「アルコール」という用語は、任意の非分枝鎖または分枝鎖、飽和または不飽和アルコールを意味し、C1〜C6の非分枝鎖飽和非置換アルコールが好ましく、メチル、エチル、イソブチルおよびtert−ブチルアルコールが最も好ましい。置換飽和アルコールの中では、C1〜C6の一および二置換飽和アルコールが好ましい。「アルコール」という用語は、置換アルキルアルコールおよび置換アルケニルアルコールを含む。
【0068】
本明細書中で用いる場合、「アリール」という用語は、「置換アリール」、「ヘテロアリール」および「置換ヘテロアリール」という用語を包含し、これらは、好ましくは環を構成する5または6個の原子を有する芳香族炭化水素環を示す。「ヘテロアリール」および「置換ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの異種原子、例えば酸素、硫黄または窒素原子が少なくとも1つの炭素原子と一緒に環中に存在する芳香族炭化水素環を示す。最も一般的には「アリール」、そして特に「置換アリール」、「ヘテロアリール」および「置換ヘテロアリール」とは、環を構成する好ましくは5または6個の原子を有する、最も好ましくは6個の原子を有する芳香族炭化水素環を指す。「置換アリール」という用語は、例えばアルキル、アリール、アルコキシ、アジド、アミンおよびアミノ基で置換される一および多置換アリールを含む。「ヘテロアリール」および「置換ヘテロアリール」とは、別々に用いられる場合、少なくとも1つの異種原子、例えば酸素、硫黄または窒素原子が少なくとも1つの炭素原子と一緒に環中に存在する芳香族炭化水素環を特に指す。
【0069】
「エーテル」および「アルコキシ」という用語は、任意の非分枝鎖または分枝鎖の、置換または非置換の、飽和または不飽和エーテルを指し、C1〜C6の非分枝鎖飽和非置換エーテルが好ましく、ジメチル、ジエチル、メチル−イソブチルおよびメチル−tert−ブチルエーテルが最も好ましい。最も一般的には「エーテル」および「アルコキシ」、そして特には「シクロアルコキシ」および「環状エーテル」という用語は、環を構成する好ましくは5〜12個の原子を有する任意の非芳香族炭化水素環を指す。
【0070】
「エステル」という用語は、任意の非分枝鎖または分枝鎖、置換または非置換、飽和または不飽和エステルを指し、C1〜C6の非分枝鎖飽和非置換エステルが好ましく、メチルエステルおよびイソブチルエステルが最も好ましい。
【0071】
「プロドラッグエステル」という用語は、特に式(I)の化合物のプロドラッグエステルを指す場合、例えば血中での加水分解によりインビボ(in vivo)で迅速に変換されて
化合物を生じるような化合物の誘導体を示す。「プロドラッグエステル」という用語は、生理学的条件下で加水分解されるいくつかのエステル生成基のいずれかの付加により形成された本発明の化合物の誘導体を指す。プロドラッグエステル基の例としては、ピボイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニルおよびメトキシメチル、ならびに当業界で既知のその他のこのような基、例えば(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基が挙げられる。プロドラッグエステル基のその他の例は、
例えばT. Higuchi and V. Stella("Pro-drugs as Novel Delivery Systems", Vol. 14, A.C.S. Symposium Series, American Chemical Society(1975);および"Bioreversible
Carriers in Drug Design:Theory and Application", edited by E.B. Roche, Pergamon
Press:New York, 14-21(1987)(カルボキシル基を含有する化合物に関するプロドラッグとして有用なエステルの例を提示する))に見出され得る。
【0072】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、特に式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩を指す場合、化合物の任意の薬学的に許容可能な塩を指し、好ましくは、化合物の酸付加塩を指す。薬学的に許容可能な塩の好ましい例は、アルカリ金属塩(ナトリウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属塩(カルシウムまたはマグネシウム)、あるいはアンモニアからまたは薬学的に許容可能な有機アミン、例えばC1〜C7のアルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンまたはトリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタンから得られるアンモニウム塩である。塩基性アミンである本発明の化合物に関しては、薬学的に許容可能な塩の好ましい例は、薬学的に許容可能な無機または有機酸、例えばハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、あるいは芳香族カルボン酸、スルホン酸、例えば酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸の酸付加塩である。本発明の好ましい薬剤組成物は、薬学的に許容可能な塩、ならびに式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物のプロドラッグエステルを含有する。
【0073】
「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、本明細書中で用いる場合、本発明の化合物が所定試料の質量の少なくとも0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%または20重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%または75重量%を構成するよう、本発明の化合物がその天然状態で会合されないその他の同様でない化合物を含有しない本発明の化合物を指す。好ましい一実施形態では、これらの用語は、所定試料の質量の少なくとも95重量%を構成する本発明の化合物を指す。
【0074】
「抗癌」、「抗腫瘍」および「腫瘍増殖抑制」という用語は、「化合物」という用語を修飾する場合、ならびに「抑制する」および「縮小する」という用語は、「化合物」および/または「腫瘍」という用語を修飾する場合、被験化合物の存在が少なくとも腫瘍または癌性塊の増殖速度の遅速化と相関することを意味する。さらに好ましくは、「抗癌」、「抗腫瘍」、「腫瘍増殖抑制」、「抑制する」および「縮小する」という用語は、被験化合物の存在と、腫瘍増殖または癌性塊の増殖の少なくとも一時的停止との間の相関を示す。「抗癌」、「抗腫瘍」、「腫瘍増殖抑制」、「抑制する」および「縮小する」という用語は、特に本発明の最も好ましい実施形態では、被験化合物の存在と、腫瘍の塊における少なくとも一時的縮小との間の相関も示す。これらの用語は、動物、特に哺乳動物における、そしてとりわけヒトにおける癌および種々の悪性疾患を指す。
【0075】
「皮膚発赤」という用語は、EP7744250(この記載内容は、本明細書中に全体的に引用される)におけるその意味と一致する神経原性起源を有するあらゆる皮膚発赤、特に慢性皮膚発赤を意味するが、これらに限定されない。
【0076】
「ウイルス感染」という用語は、ライノウイルスを含めたウイルス起源のあらゆる感染を意味し、好ましくは、しかし排他的ではなく、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトサイトメガロウイルス、A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎ウイルスを指す。
【0077】
「心臓血管性疾患」という用語は、心臓および血管系の種々の疾患を指し、その例としては、例えばうっ血性心不全、心機能不全、再還流障害および種々の既知の末梢循環異常が挙げられるが、これらに限定されない。「心臓血管性疾患」とは、動物における、特に哺乳動物における、そしてとりわけヒトにおけるこのような疾患を指す。
【0078】
本明細書中で用いる場合、「糖尿病」という用語は、インスリンレベル増大、インスリン耐性、または1型糖尿病、2型糖尿病を含めた糖尿病、ならびに種々の関連症状、例えばスタイン−リーベンタール症候群または多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を含んだ、しかしこれらに限定されない種々の症状に関連した疾患を指す。
【0079】
本明細書中で用いる場合、「移植片拒絶」という用語は、同種移植片拒絶、異種移植片拒絶および自家移植片拒絶として既知の症状および関連症候群を指し、本発明の好ましい実施形態では、ヒト−ヒト同種移植片拒絶を指す。
【0080】
本明細書中で用いる場合、「モジュレーター」または「モジュレーション」という用語は、個体における調整された化合物、特にTNF−αまたはIL−1の存在および産生を変えるための化合物の能力または治療経過を指す。最も好ましくは、「モジュレーター」または「モジュレーション」とは、調整された化合物の存在または産生を低減するための化合物の能力または治療経過を指す。
【0081】
本明細書中で用いる場合、TTL1、TTL2、TTL3、TTL4およびTTL5という用語は、中でも特に図17において同定される特定の化学物質を指す。
【0082】
本明細書中で用いられるその他の化学的、医学的、薬理学的またはそうでなければ技術的用語はすべて、当業者に理解されるように理解されるべきものである。
【0083】
インターロイキン−1(IL−1)
インターロイキン−1(IL−1)は、広範囲の哺乳動物免疫および炎症メカニズム、ならびにその他の防御メカニズム、特にヒト身体におけるメカニズムに関与する調節因子である(例えば、Dinarello, D.A., FASEB J., 2, 108(1988)参照)。活性化マクロフ
ァージにより産生されるとして最初に発見されたIL−1は、種々の細胞、例えば繊維芽細胞、ケラチノサイト、T細胞、B細胞および脳の星状細胞により分泌され、そして、例えば以下のような種々の機能を有することが報告されている。CD4+T細胞の増殖の刺激(Mizel, S.B., Immunol. Rev., 63, 51(1982)参照)。T細胞受容体TCRとのその結合により胸腺Tc細胞の細胞破壊作用の刺激(McConkey, D.J., et al., J. Biol. Chem., 265, 3009(1990)参照)。炎症メカニズムに関与する種々の物質、例えばPGE2、ホスホリパーゼA2(PLA2)およびコラゲナーゼ産生の誘導(Dejane, E., et al., Bolid. 69, 695-699(1987)参照)。肝臓における急性期タンパク質産生の誘導(Andus, T., et al., Eur. J. Immunol., 123, 2928(1988)参照);血管系における血圧増大(Okusawa, S., et al., J. Clin. Invest., 81, 1162(1988)参照)。ならびにその他のサ
イトカイン、例えばIL−6およびTNF−α産生の誘導(Dinarello, C.A., et al., J. Immunol., 139, 1902(1987)参照)。IL−1モジュレーションは、慢性関節リウマ
チ(Nouri, A.M., et al., Clin. Exp. Immunol., 58, 402(1984)参照)、移植片拒絶
(Mauri and Teppo, Transplantation, 45, 143(1988)参照)および敗血症(Cannon, J.G., et al., Lymphokine Res., 7, 457(1988)参照)に作用することも既知であり、そしてIL−1は、大量に投与された場合、発熱および疼痛を誘導し得る(Smith, J., et al., Am. Soc. Clin. Oncol., 9, 710(1990)参照)。
【0084】
動物モデルにおける敗血症、関節炎、炎症および関連症状の発症は、天然IL−1受容体阻害剤(IL−1 Ra)を用いることにより、その受容体と結合するIL−1を抑制
することによって低減され得る(Dinarello, C.A. and Thompson, R.C.. Immunol. Today, 12, 404(1991)参照)し、ならびに特定の抗体を用いることによるIL−1の活性を
抑制するためのある種の方法が提唱されている(Giovine, D.F.S. and Duff, G.W., Immunol. Today, 11,13(1990)参照)。IL−6の場合は、IL−6の過剰分泌により引き
起こされるミエローマに罹患した患者における骨髄球の増殖は、IL−6またはIL−6受容体に対する抗体を用いることにより抑制されている(Suzuki, H., Eur. J. Immuno.,
22, 1989(1992)参照)。本発明の化合物により誘導されるTNF−αおよびIL−1
モジュレーションを介して、本発明により治療可能な疾患状態としては、本明細書中に記載した疾患状態が挙げられるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0085】
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)
ヒトTNF−αは、1985年に最初に精製された(Aggarwal, B.B., Kohr, W.J. "Human tumor necrosis factor. Production, purification and characterization", J. Biol. Chem. 1985, 260, 2345-2354参照)。その後すぐに、TNF cDNAの分子クロー
ニングおよびヒトTNF遺伝子座のクローニングが成し遂げられた(Pennica, D., Nedwin, G.E., Hayflick, J.S. et al. "Human necrosis factor:precusor structure, expression and homology to lymphotoxin", Nature 1984, 312, 724-729; Wang, A.M., Creasy, A.A., Ladner, M.B. "Molecular cloning of the complementary DNA for human Tumor
Necrosis Factor", Nature 1985, 313, 803-806参照)。TNF−αは、マクロファージにより主に産生される三量体17−KDaポリペプチドである。このペプチドは、17KDaサブユニットが切断され、TACEとして既知の酵素によりタンパク質分解による階列後に放出される26KDa膜貫通タンパク質として最初に発現される。この仕事は、TNF−αの広く多面的な生物学的関連を解明し、そしてその過剰産生を標的化する治療的アプローチの開発に拍車をかけた。
【0086】
腫瘍壊死因子−α(TNF−α)は、典型的には、種々の細胞、例えば活性化マクロファージおよび繊維芽細胞により産生される。TNF−αは、IL−1産生を誘導し(Dinarello, D.A., FASEB J., 2,108(1988)参照)、繊維肉腫L929細胞を殺害し(Espevik and Nissen-Meyer, J. Immunol. Methods, 95, 99(1986)参照)、繊維芽細胞の増殖
を刺激し(Sugarman, B.J., et al., Science, 230, 943(1985)参照)、ともに炎症性
応答に関与し得るPGE2およびアラキドン酸の産生を誘導し(Suttys, et al., Eur. J.
Biochem., 195, 465(1991)参照)、そしてIL−6またはその他の増殖因子の産生を
誘導する(Van Hinsbergh, et al., Blood, 72, 1467(1988)参照)ことが報告されている。TNF−αは、プラスモジウム族のトリパノソーマ株により保有される感染性疾患(Cerami, A., et al., Immunol. Today, 9, 28(1988)参照)、全身性エリテマトーデス
(SLE)および関節炎のような自己免疫疾患(Fiers, W., FEBS, 285, 199(1991)参
照)、後天性免疫不全症候群(AIDS)(Mintz, M., et al., Am. J. Dis. Child., 143, 771(1989)参照)、敗血症(Tracey, K.J., et al., Curr. Opin. Immunol., 1, 454(1989)参照)、およびある種類の感染(Balkwill, F.R., Cytokines in Cancer Therapy, Oxford University Press(1989)参照)のような種々の疾患に直接または間接的に
関与することも報告されている。
【0087】
TNF−αおよび炎症性応答
感染および組織損傷は、集合的に炎症性応答と呼ばれる免疫系の複雑な反応の開始の引き金となる生化学的変化のカスケードを誘導する。この応答の進展は、少なくとも一部は、局所的血管拡張または血管透過性増強および血管内皮の活性化に基づいており、これは白血球を効率的に循環させて、損傷部位に移動させ、それによりあらゆる抗原と結合し、破壊するそれらの機械を増大する。血管内皮は、その場合、活性化されるかまたは炎症を受けると考えられる。一般に、炎症は種々の予期せぬ刺激に対して歓迎される免疫応答であり、このようなものとして、それは迅速開始および短い持続期間を示す(急性炎症)。その持続性または非制御性活性(慢性炎症)は、しかしながら、身体に対する有害作用を有し、いくつかの免疫疾患、例えば敗血症性ショック、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患およびうっ血性心不全の病因を生じる("Tumor Necrosis Factors. The molecules and their emerging role in medicine" B. Beutler, Ed., Raven Press, N.Y. 1992, pages1-
590参照)。
【0088】
有効な免疫応答の進展は、典型的には種々の細胞の漸増および一連の生物学的事象の調和的統合を要する。この複雑な細胞間共同作用および相互作用は、集合的にサイトカインと呼ばれる局所的分泌低分子量タンパク質の一群により媒介される。これらのタンパク質は、細胞表面の特異的受容体と結合し、最後には標的細胞における遺伝子発現を変えて、それにより効率的炎症性応答を調節するシグナル伝達経路の引き金となる。
【0089】
サイトカインは、多面発現性(所定のタンパク質は異なる細胞に及ぼす異なる作用を引き出す)、重複(2つまたはそれ以上のサイトカインが同様の機能を媒介する)、共働作用(2つのサイトカインの併合作用は、各々の個々のタンパク質の付加的作用より大きい)および拮抗作用(もう一つのものの作用を抑制するあるサイトカインの作用)の特性を示し得る。このために、いくつかのサイトカインは前炎症性であり(炎症を誘導する)、一方他のいくつかは抗炎症性である(炎症を抑制する)。前炎症性サイトカインの種類としては、以下のものが挙げられる:インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)が挙げられる("Tumor
Necrosis Factors. The molecules and their emerging role in medicine"B. Beutler,
Ed., Raven Press, NY. 1992, pages1-590参照)。これらのサイトカインは、炎症応答
の開始直後にマクロファージにより分泌され、凝集を誘導し、血管透過性を増大し、そして血管内皮細胞上の接着分子の発現を活性化する(例えば、TNF−αは、結合し、損傷の部位に好中球を補給するEセレクチンの発現を刺激する)。その後、ならびにより漸進的な免疫応答中に、これらのサイトカインは身体のいくつかの器官、例えば骨髄および肝臓に作用して、白血球の産生増大および適切なホルモンおよび急性期タンパク質の合成を保証する。さらに、それらは視床下部に作用して、発熱を誘導し、これが病原体の増殖を抑制し、全体的免疫反応を増強するのに役立つ。
【0090】
TNF−αおよび種々の疾患および症状の病因
任意のその他のサイトカインを用いた場合と同様に、TNF−αは、宿主に対して全く有益でも全く破壊的でもない。むしろ、その産生および調節の平衡が維持されて、その過程において宿主の安寧を危うくすることなく、侵襲する微生物に対して宿主が有効に反応し得ることを保証する。炎症の媒介物質としてTNF−αは、適切な免疫応答を追加免疫することにより、細菌感染および組織損傷に対するその格闘において身体を助ける。しかしながら、その過剰産生は慢性炎症をもたらし、身体に対する有害作用を有し、いくつかの疾患の病因に主要な役割を演じる。そのいくつかの疾患を以下に要約する。
【0091】
細菌性敗血症ショック
この疾患は、典型的にはある種のグラム陰性細菌、例えば大腸菌、エンテロバクター属のEnterobacter aerogenesおよび髄膜炎菌による感染後に発症する。これらの細菌は、IL−1およびTNF−αを過剰産生するようマクロファージを刺激し、これが次に敗血症性ショックを引き起こすある種のリポ多糖(内毒素)をそれらの細胞壁上に保有する。しばしば致死的であるこの症状の徴候としては、血圧の低下、発熱、下痢および広範な血液凝固が挙げられる。米国だけで、年間約500,000人の人々がこの症状に苦しみ、70,000人異常が死亡している。この疾患を治療するための年間経費は、50〜100億ドルと見積もられる。
【0092】
慢性関節リウマチ
これは最も一般的なヒト自己免疫疾患であって、西欧人口の約1%がこれに罹患しており、障害の主要源であり、その重症形態においては、死に至る(Szekanecz, Z., Kosh, A.E., Kunkel, S.L., Strieter, R.M. "Cytokines in rheumatoid arthritis. Potential targets for pharmacological applications". Clinical Pharmacol. 1998, 12, 377-390
. Camussi, G., Lupin, E."The future role of anti-tumor necrosis factor products in the treatment of rheumatoid arthritis". Drugs 1998, 55, 613-620参照)。この症状は、副鼻腔の炎症および細胞増殖により特性化され、これは隣接軟骨マトリックスの侵襲、そのその後のびらんを、そして最後には骨崩壊を引き起こす。この炎症応答の起源は十分には理解されていないが、TNF−αおよびIL−1の発現増大が軟骨びらん域周囲に見出された。さらに近年、この障害におけるTNF−αの病因性役割が広範に研究され、実験的に立証されてきた。さらに、臨床データは、TNF−αの中和がびらん性過程を低減するための療法的アプローチであり得ることを示唆する。しかしながら、今日まで、最新療法は、一過性軽減を提供する一方で、疾患の進行または過程の基本的メカニズムを変えていない。
【0093】
炎症性腸疾患および関連症状
クローン病および潰瘍性結腸炎を含むこの種類の疾患は、腸粘膜および固有層の慢性炎症を特徴とする消耗性障害である。それらの開始の引き金となる事象は不明であるが、しかし、それらは有意の白血球浸潤および可溶性媒介物質の局所的産生に関連がある。したがって、TNF−αは、直接的細胞傷害性作用により、または炎症カスケードの調和的統合体として、これらの症状の病因における重要な媒介物質であると考えられる(例えば、Armstrong, A.M., Gardiner, K.R., Kirk, S.J., Halliday, M.J., Rowlands, B.J. "Tumour necrosis factor and inflamatory bowel disease", Brit. J. Surgery 1997, 84, 1051-1058参照)。認可動物モデルに基づいたデータも、TNFの作用低減を目標とするヒトIBDにおける療法試験の原理を支持する(Van Deventer, S.J.H. "Tumour necrosis factor and Crohn's disease" Gut, 1997, 40, 443参照)。
【0094】
うっ血性心不全
サイトカイン、特にTNF−αの活性化は、慢性心不全および急性心筋梗塞患者に起こる(Ferrari, R. "Tumor necrosis factor in CHF: a double facet cytokine". Cardiovascular Res. 1998, 37, 554-559参照)。さらに、TNF−αは、直接的(これらの細胞との結合および遺伝的再プログラミングによる)および間接的(局所的NO産生による。これは細胞死も引き起こす)の両方で、心筋におけるアポトーシス過程の引き金となることが実証されている。
【0095】
HIV複製
HIVの複製は、順にTNF−αにより誘導される誘導性転写因子NF−κBにより活性化される。HIV発現は、マクロファージ株のTNFおよびウイルスに慢性的に感染したT細胞クローンにより誘導され得る。少数のAIDS関連カポジ肉腫患者における組換えTNFの注入は、ウイルス複製活性のマーカーであるHIVp24抗原レベルの増大を引き起こすと考えられる("Therapeutic modulation of cytokines" CRC Press, Inc., N.Y. 1996, pages 221-236参照)。これらの結果は、感染性HIV荷重を低減するための
TNF遮断薬の使用を考察するためのメカニズム的基礎を提供する。
【0096】
その他のTNF媒介性病状
TNFが関与するといういくつかの証拠がある症状の絶えず増大中のリストがある("Therapeutic modulation of cytokines" CRC Press, Inc., N.Y. 1996, pages 221-236参
照)。いくつかの症例、例えば移植、移植片対宿主病、ならびに虚血/再還流損傷において、病因の考え得るメカニズムは種々の組織に対するTNF−αの前炎症活性に関係がある。その他のもの、例えば非インスリン依存性糖尿病におけるインスリン応答性の抑制は、標準前炎症モデル外であると考えられるTNF−αのより選択的な作用に関連する。TNF−αは、中耳炎(耳内部感染、滲出を伴うことも伴わないこともある)(例えば、Willett, D.N., Rezaee, R.P., Billy, J.M., Tighe, M.A., and DeMaria, T.F., Ann. Rhinol Laryngol, 107(1998); Maxwell, K., Leonard, G., and Kreutzer, D.L., Arch Ot
olarygol Head Neck Surg, vol. 123, p.984(Sept. 1997)参照)に、ならびに副鼻腔炎(例えば、Nonoyana, T., Harada, T., Shinogi, J., Yoshimura, E., Sakakura, Y., Auris Nasus Larynx, 27(1), 51-58(Jan 2000); Buehring I., Friedrich B., Schaff,
J., Schmidt H., Ahrens P., Zielen S., CLin Exp Immul, 109(3), 468-472, Sept 1997参照)に罹患した患者において、局所的に検出されている。
【0097】
療法的アプローチとしてのTNF−αおよびIL−1モジュレーション
TNF−αの単離に先だって、前記の疾患に用いられる療法的アプローチは、慢性炎症の低減を目標につつ、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症治療を基礎にした。しかしながら、TNF−αについての我々の最新の理解は、その選択的抑制に基づいて代替的戦略の開発を導き出した。これらの一般的戦略を以下に要約する。
【0098】
ステロイド治療
コルチコステロイドの使用を含むこの治療は、免疫系細胞の数および活性を低減させる。コルチコステロイドの作用メカニズムは、形質膜の横断および細胞質ゾル中の受容体上の結合を包含する。その結果生じる複合体は次に細胞核に輸送されて、そこにおいてそれらは特定の調節DNA配列と結合し、それによりサイトカイン産生を下向き調節する。一般に用いられるけれども、この戦略は、TNF−αに特異的でないだけでなく、有効な免疫反応において重要な役割を演じ得るいくつかのその他のサイトカインも下向き調節するために、いくつかの欠点を有する。さらに、ステロイドの使用は、癌(例えば前立腺癌)の進展と関係がある。
【0099】
非ステロイド抗炎症治療
この戦略は、炎症を間接的に低減するアスピリンのような化合物の使用を含む。これは、通常は、プロスタグランジンおよびトロンボキサンが産生されるシクロオキシゲナーゼ経路を抑制することにより成し遂げられる。この作用は血管透過性を低減し、一時的軽減を提供する。このために、この戦略はサイトカインの産生を調節せず、慢性炎症に関連した疾患にほとんどまたは全く作用を及ぼさない。
【0100】
工学処理モノクローナル抗TNF抗体
この戦略は、TNF−αと結合し、それを中和しすることが可能なモノクローナル抗体の選択を含む。予備臨床試験はいくつかの陽性結果を示しているが、しかしこのアプローチは依然としてその揺籃期にあり、一般的に受け入れられていない。取り組まれるべき問題の1つは、モノクローナル抗体がネズミ起源のものであり、ヒトにおいては、それらは抗免疫グロブリン免疫応答を引き出し、この応答によりモノクローナル抗体の臨床使用を制限する。組換え工学処理技法は、TNF−αに対する活性を保持し、かつヒト免疫系により容易に許容される齧歯類抗体の「ヒト化」バージョンを作製することが追求されている。
【0101】
可溶性TNF−α受容体の使用 TNF−αに対する可溶性受容体の使用は、新しい療法
的アプローチである。これらの受容体はTNF−αを結合し、中和するために作製されるが、しかしそれらはまた、血液循環中のその寿命を延長することにより、その活性を増強する。さらに、この種類の治療に対する長期免疫応答は、評価されつつある。
【0102】
遺伝子療法
このアプローチの目的は、TNF−αの発現を低減することによってでなく、抗炎症性サイトカインの局所的産生を増大することにより、炎症を低減することである。本治療は、抗炎症性サイトカインをコードするcDNA発現ベクターの炎症化領域への直接注入から成り、これはTNFの作用を中和し得る。この方法の効力は、一般に、前臨床試験で調査中であり、免疫応答に及ぼすその長期作用は依然として不明である。
【0103】
明示されたその他の疾患および症状
さらに、TNF−αおよび/またはIL−1は、さらに最近、血管新生性血管内皮増殖因子(VEGF)の調整に関与することが確認されており(E.M. Paleolog et al., Arthritis & Rheumatism, 41, 1258(1998)を参照)、結核性胸膜炎、リウマチ様胸膜炎およびその他の免疫障害に関与し得る(T. Soderblom, Eur. Respir. J., 9, 1652(1996)を参照)。TNF−αは、多剤耐性関連タンパク質(MRP)および肺耐性タンパク質(LRP)に関するある種の癌細胞遺伝子の発現を実行し(V. Stein, J. Nat. Canc. Inst.,
89, 807(1997)を参照)、慢性およびうっ血性心不全、ならびに関連心臓血管性疾患に関与し(例えば、R. Ferrari, Cardiovascular Res., 37, 554(1998); C. Ceconi et al., Prog. Cardiovascular Dis., 41, 25(1998)を参照)、そしてウイルス感染を直接
または間接的に媒介する(D.K. Biswas, et al., J. Acquired Immune Defic Syndr. Hum
Retrovirol., 18, 426-34(1998)(HIV−1複製); R.LeNauor, et al., Res. Virol., 145, 199-207(1994)(同一); T. Harrer, et al., J. Acquir. Immune Defic. Syndr., 6, 865-71(1993)(同一); E. Fietz, et al., Transplantation, 58(6), 675-80(1994)(humn cytomegalovirus(CMV) regulation) ; D.F.Ahang, et al., Chin. Med. J., 106, 335-38(1993)(HCVおよびHBV感染)参照)ことも報告されている。さら
に、TNF−αのアンタゴニストは、神経原性起源の皮膚発赤の治療に有用であることも示されている(EPO−774250−B1(DeLacharriere他)を参照)。
【0104】
TNF−αはまた、肥満症またはインスリン耐性を示すと診断されたヒトにおいて増大化レベルで発現されると同定されており、したがって糖尿病のモジュレーターである(Hotamisligil, G., Arner, P., Atkuinson, R., Speigeiman, B.(1995), "Increased adipose tissue expression of tumor necrosis factor-α(TNF-α)in human obesity and
insulin resistance". J. Clin. Invest. 95:2409-2415を参照)。TNF−αは、移植
片拒絶の重要なモジュレーターとしても同定されている(Imagawa, D., Millis, J., Olthoff, K., Derus, L., Chia, D., Sugich, L., Ozawa, M., Dempsey, R., Iwaki, Y., Levy, P., Terasaki, P., Busuttil, R.(1990)"The role of tumor necrosis factor in allograft rejection" Transplantation, vol. 50, No. 2, 219-225を参照)。
【0105】
これらの観察は、TNF−αおよびIL−1の産生に選択的に作用する新規の戦略および/または新規の化合物、ならびに化合物の種類の確認の重要性および望ましさを強調する。したがって、これらのサイトカインを選択的に抑制する小分子は、例えば活性免疫系の保持に、および炎症ベースの疾患の治療において、特に医学的および生物学的に重要である。
【0106】
本発明の好ましい合成方法
本発明のある種の実施形態は、式(II)、(IIA)または(IIB)の化学構造を有する化合物の新規の製造方法、ならびに式(II)、(IIA)または(IIB)の化学構造を有する既知の化合物の既知の類似体、例えば式(I)および(IA)の化合物の新規の製造方法を包含する。
【0107】
本発明の化合物、特に式(II)、(IIA)または(IIB)の化学構造を有する化合物は、合成的にまたは半合成的に調製され得る。合成的に調製される場合、一般的に利用可能な出発物質が使用され、その例としては反応性ハロゲン化物部分を有する二環式化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の少なくとも三環化化合物は、種々の閉環反応により合成され得る。このような反応としては、ディールス−アルダー反応およびディックマン縮合反応が挙げられるが、これらに限定されない。ディールス−アルダー反応は、所望の化合物の第三環が形成されるように、好ましくはジエンおよび置換アルケニル部分の反応を含む。ディックマン縮合反応の後に、好ましくは、その結果生じるシ
クロケトン部分の還元が起こり得る。本発明の化合物は、このような合成方法およびその他の周知の合成方法にしたがって、当業者に周知のクロマトグラフィーまたはHPLCのような手法を用いて、精製および単離され得る。
【0108】
あるいは、本発明によれば、式(I)および(IA)の化学構造を有する化合物、ならびにそれらのある種の特定の類似体および誘導体が、ウコギ科のA canthopanax. koreanum Nakaiの根樹皮から、アカント酸を含む少なくとも粗製抽出物の形態で抽出され、単離
され得る。このような抽出物は、好ましくは以下の方法により製造され得る。
【0109】
約1kgのウコギ科のA. koreanum Nakaiの乾燥した根樹皮を得て、削り、1L〜3L
、好ましくは2Lの適切な溶媒、最も好ましくはメタノールで覆う。この混合物は、少なくとも10時間、好ましくは12時間、20°〜60°の範囲の温度に維持され、室温に維持され得る。次に混合物を濾過して濾液を取り出し、同じ温度で保持する。この手法を、好ましくは少なくともさらに2回、反復して、減圧下で併合濾液を濃縮して、抽出物を得る。
【0110】
約100グラムの抽出物を、200mL〜400mL、好ましくは300mLの水性溶液、好ましくは水、ならびに200mL〜400mL、好ましくは300mLの有機溶液、好ましくはジエチルエーテルを用いて分配させる。有機分画がそれから分離され、次に減圧下で濃縮されて、さらなる抽出物が得られる。前記のさらなる抽出物は、好ましくはカラムクロマトグラフィーにより、さらに好ましくはシリカゲルカラムの使用により、適切な有機溶媒の混合物、好ましくはヘキサンおよびエチルアセテートを溶離剤として用いて、精製されて、単離アカント酸が得られる。
【0111】
式(I)および(IA)の単離化合物は次に、合成的に修飾されて本発明のある種の化合物、特に式(II)または(IIA)の化学構造を有する化合物を生じる。例えば、アカント酸のエステルR1類似体は、アカント酸のカルボン酸部分へのアルキルアルコール
の酸触媒性求核的付加により生成され得る。アカント酸のエーテルR1類似体は、ウイリ
アムソンエーテル合成により、または第一級アルコール部分の還元により、第一級アルキルハロゲン化物またはアルコールから生成され得る。アカント酸のアルキル、アルケニルおよびアルコール性R10類似体は、アルケニル基の触媒的水素化により、または、好ましくはHClまたはHBrあるいはその他の適切なアルキルハロゲン化物の求電子性付加により生成され得る。アカント酸の他のR位置の置換類似体は、アルキルハロゲン化物を包含する置換反応により生成され得るが、但し、適切な反応基および関連保護基が所望の反応を促進するために用いられる。これらの反応およびその他の周知の合成反応による、本発明の化合物の製造はすべて、本明細書中に提示された化合物の説明を読めば、当業者には理解される。
【0112】
一般式(I)、(IA)、(II)、(IIA)および(IIB)の化合物を含めた本発明の化合物の調製のための全合成アプローチは、本明細書中に記載されている。この合成は、アカント酸およびその類似体の1つ、またそれ以上のレトロ合成分析、放射能標識化アカント酸およびその類似体の合成、一般式(I)、(IA)、(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の二量体、および複合体の合成を含む。これらのアプローチはカウラノン酸の調製に完全に適用可能である、ということも当業者は理解するであろう。
【0113】
式(I)の化合物およびその天然類似体 韓国の済州島で固有に発見されるAcanthopanax koreanum Nakai(ウコギ科(Araliaceae))の根樹皮は、強壮薬および鎮静薬として、ならびにリウマチおよび糖尿病治療のための薬剤として、伝統的に用いられてきた。この民間薬の調査中に、Chungおよび共同研究者等は、その薬理学的活性抽出物から2つの新規
の三環式ジテルペン、即ち、図1に示したようなアカント酸(化合物1)およびそのメチ
ルエステル(化合物2)を同定した(Kim, Y.H., Chung, B.S., Sankawa, U. "Pimaradien diterpenes from Acanthopax Koreanum", J. Nat. Pro., 1988, 51, 1080-1083を参照
)。アカント酸はピマラン(3)である。しかしながら、ピマラン族の他の成員と明らかな対照をなして、1は、BC環系の結合性の独特の様式を提供するC8およびC10中心間の異常立体異性関係により識別される。
【0114】
この発明以前には、式(I)の構造を有する化学物質またはその類似体の製造のための完全な化学合成は存在しなかった。重要なことは、式(I)の化学構造1(図1)が、抗炎症剤としての生物学的プロフィールを保有することである。特に、活性化(炎症化)単球/マクロファージを用いたインビトロ(in vitro)研究は、1(約0.1〜約1.0μg/ml、48時間)を用いた治療がTNF−αおよびIL−1産生の約90%抑制を生じることを明示した。この抑制は、同一条件下では、IL−6またはIFN−γ(インターフェロン−γ)の産生は影響されなかったため、濃度依存性およびサイトカイン特異的であった。アカント酸のインビボ(in vivo)作用は、珪肺症(慢性肺炎症)および肝硬
変(肝臓炎症および肝繊維症)に罹患したマウスで評価された。組織学的分析は、化合物1による治療が繊維症性肉芽腫の実質的低減、ならびに肝硬変肝細胞の顕著な回復をもたらすことを明示した。これらの劇的結果は、少なくとも一部は、1により媒介される前炎症性サイトカイン、例えばTNF−αおよびIL−1の抑制に起因し得る。化合物1は、マウスにおいて、高濃度(LD>300mg/体重100g)を経口投与した場合にのみ、非常に少ない毒性も示す(Kang, H.-S.; Kim, Y.-H; Lee, C.-S; Lee, J.-J; Choi, I;
Pyun, K,-H., Cellular Immunol. 1996, 170, 212-221.; Kang, H.-S; Song, H. K; Lee, J.-J, Pyun; K.-H; Choi, I., Mediators Inflamm. 1998, 7, 257-259を参照)。
【0115】
したがって、式(I)の化学構造は、強力な抗炎症性および抗繊維症性作用を有し、TNF−αおよびIL−1の発現を低減する。そのため、アカント酸が、本発明の新規の化合物の開発の化学的原型として用いられる。
【0116】
式(I)、(II)および(IIB)の化合物、好ましくは式(I)の化合物、ならびに本明細書中でTTL1、TTL2、TTL3およびTTL4と呼ばれる式(IIB)の化合物は、本発明の一態様にしたがって合成され得る。式(I)の化合物の結合分離は、図2に示されている。BC環の新規の構造配置および第四級C13中心の存在は、例外的モチーフを構成し、本発明の一態様である新規の戦略をもたらす。このモチーフは、ディールス−アルダー法を用いることにより、一工程で、所望の立体化学に固定される。ジエン、例えば14、およびジエノフィル、例えば15(Y:オキサゾリジノン−ベースの助剤)は、エンド(endo)選択性ディールス−アルダー反応のための適切な出発物質として同定された。この環付加の所望の位置化学的結果をさらに保証するために、その後、生成物13から除去される異種原子を用いて一過性にジエン14が機能化された(例えば、X=OTBSまたはSPh)。この反応の一般的に観察されるエンド採択は、生成物13に示されるようなC12およびC13中心間の立体化学的関係を予測するために用いられたが、一方、合成法におけるジアステレオ面性選択は、ジエノフィルのカルボニル中心でのキラル助剤により、またはキラル触媒を用いることにより制御される(Xiang, A. X.;Watson, D. A.; Ling, T.; Theodorakis, E.A. "Total Synthesis of Clerocidin via a Novel, Enantioselective Homoallenylboration Methodology". J. Org. Chem. 1998, 63, 6774-6775を参照)。
【0117】
ジエン14は、C8−C11結合のパラジウム(0)触媒化構築により生成され、その合成先駆体としてケトン16を明示する。このケトンは、2−メチル1,3−シクロヘキサンジオン(18)とのメチルビニルケトン(19)の縮合により容易に利用可能である既知のウィーランド−ミーシャー(Wieland-Miescher)ケトン(17)から生成された(図2)。
【0118】
本発明の一態様では、アカント酸(1)のAB環系の機能性および相対的立体化学は、ポドカプリン酸(20)の構造におけるものと同類であると認識される("The total synthesis of natural products." ApSimon, Ed.; John Wiley & Sons, Inc., 1973, Volume
8, pages 1-243を参照)。20に対するいくつかの合成戦略の中で、1つの最重要点は
、図5に示した1についての我々が提唱した合成と関係があることである。本発明によれば、これらのアプローチは、式(I)、(II)の化合物の合成の立体化学的結果、ならびに式(IIB)の化合物の逆の立体化学、および本明細書中でTTL1、TTL2、TTL3およびTTL4と呼ばれる式(IIB)の化合物の逆の立体化学の予測を可能にする。
【0119】
【化9】

【0120】
式(I)、(II)および(IIB)の化合物の完全合成 アカント酸(1)の、なら
びに式(I)、(II)および(IIB)の全化合物の初期段階は、ウィーランド−ミーシャーケトン(17)の反応を包含する。この化合物は、触媒量の(R)−プロリンを用いたミカエル付加(Michael addition)/ロビンソン環化(Robinson annulation)配列に
より単一エナンチオマーとして化合物18および19から容易に利用可能であった。17の、より塩基性のC9カルボニル基の選択的保護と、その後に続く、メチルシアノホルメートによるエノン34の還元的アルキル化は、ケトセター36を生じた。36の39への変換は、図3に示されているように、従来の研究に基づいていた(Welch, S.C.;Hagan, C.P."A new stereoselective method for developing ring A of podocapric acid compounds" Synthetic Commun. 1972, 2, 221-225を参照)。39のエステル機能性の低減と、
その結果生じたアルコールのその後のシリル化、およびケタル単位(Ketal unit)の酸触媒性脱保護化は、次にケトン40を生じた。所望のジエン42への40の転換は、その対応するエノールトリフレート誘導体への40の変換と、その後に続く、ビニルスタナン41とのパラジウム触媒性カップリングとを包含する二段階系列により成し遂げられた(Farine, V.; Hauck, S.I.; Firestone, R.A. "Synthesis of cephems bearing olefinic sulfoxide side chains as potential b-lactamase inhibitors" Bioorg. & Medicinal Chem.
Lett. 1996, 6, 1613-1618を参照)。
【0121】
アカント酸(1)の合成の完了に用いられ、かつ式(I)、(II)および(IIB)の化合物の合成の完了に用いられる工程は、模式図2として図5に示されている。ジエン42およびジエノフィル43間のディールス−アルダー環付加と、その後のラネーNiを用いた還元的脱硫酸化は、所望の立体化学的特性を有する三環系44を生じる。ワインレブアミドへの44の変換と、その後のDIBALHによる還元は、アルデヒド45を生成し、これは、ウィッティヒ反応時にオレフィン46を生じた。46のフッ化物誘導性脱シリル化と、その結果生じるアルコールのカルボン酸へのその後の二段階酸化はアカント酸(1)を生成し、これは、中間物質の適切な置換により、式(I)、(II)および(IIB)の化合物を生成するために用いられ得る。
【0122】
式(I)および(IA)の化合物、ならびに式(II)、(IIA)および(IIB)
の化合物の合成への重要な一段階は、ディールス−アルダー反応である。この反応、ならびに1つ、またはそれ以上の適切に置換されたジエンおよび/またはジエノフィルの使用および選択により、式(II)の化合物の選択的合成、あるいは式(IIB)の化合物の選択的合成が可能となる。例えば、以下の好ましいジエノフィルは、ジエノフィル、例えば、反応模式図2、3、4、5および6として図5、7、8、21および23において本明細書中に示されているような化合物43およびピマラン(103)の代わりに用いられて、式(II)および(IIB)の化合物を選択的に生成し得る。ジエノフィルの例としては、式(III)のものが挙げられる:
【0123】
【化10】

【0124】
(式中、番号付きR基(R9、R14およびR15)は、式(IIB)の化合物に関して上記
に示したものと同様であり、番号付きでないR基は、式(IIB)の化合物に関して上記に示したR1〜R15のいずれかである)。
【0125】
さらに、例えばそれぞれ反応模式図2、3、4、5および6として図5、7、8、21および23において本明細書中に示されているようなジエン、例えば化合物(42)および化合物(112)の電子配座は、電子供与基または電子求引基、例えばpHSのジエンとの共有結合により変えられ得る。本明細書中に例示したように、このような共有結合電子供与または電子求引基は、入ってくるジエノフィルの配向に影響を及ぼす。
【0126】
したがって、本発明の一態様によれば、ジエン42のキラル性により、環付加中に不斉を誘導するためにジエン42が用いられる。42の最小化モデルの検査は、C10の核間メチルは反応の面選択性に影響を及ぼし、ジエンの上面からのジエノフィルのより効率的アプローチを可能にする、ということを示す。このアプローチは、式(IIB)の化合物を生じる付加物を生成した。このアプローチは、ディールス−アルダー反応の触媒性不斉変異体の開発も可能にした。キラル助剤と対照するものとしてのキラル触媒使用の利点は明らかであり、近年の文献中で十分実証されている。
【0127】
本発明の好ましい一実施形態は、カッシオールの不斉合成改良に向けてCoreyにより開
発され、適用された触媒49の使用である(模式図3)(Corey, E.J.; Imai, N.; Zhang, H.-Y. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 3611を参照)。化合物49は、メタクロレイン
(48)との電子リッチジエン47のディールス−アルダー(反応の)環付加を可能にし
、高収率およびエナンチオマー的余分量(収率83%、97%ee)で、専らエンド付加物を生成することが示された。
【0128】
我々の合成への上記方法の適用は、模式図4として図8に示されている。触媒49の使用は付加的反転性を提供し、1の全合成の完了に要する総工程を有意に短縮した。
【0129】
式(I)の放射能標識化化合物の合成 式(I)、(II)、(IIA)または(II
B)の化合物の放射能標識化試料は合成されてもよく、薬理学的および薬物動態的試験に有用である。例えば、C14−標識メチレン炭素は、出発物質としてアルデヒド52を用いて、式(I)の化合物上に取り込まれる(図4、模式図4に図示)。ウィティッヒ化学に必要とされるC14標識化収量は、C14標識化ヨードメタンおよびトリフェニル−ホスフィンから、およびその後の塩基、例えばNaHMDSによる処理からの二段階で調製される。メチルエステルの塩基誘導性脱保護化は、式(I)、(II)、(IIA)または(IIB)の化合物の放射性標識化物を生成する。
【0130】
【化11】

【0131】
式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の合成の目的 本発明の一態様は、
式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の構造を有する新規の抗炎症薬の同定である。合成中間物質および式(II)の合理的に意図された化合物の生物学的スクリーニングは、情報を提供し、必須要件を導く。
【0132】
式(II)の化合物の類似体の設計および合成は、以下の目的に基づいている。(a)TNF−αおよびIL−1調整活性に関与する式(II)の化合物の最小の構造的および機能的要件を定めること(最小ファルマコフォア)。(b)構造、特に最小ファルマコフォアのR基を変えることにより式(II)の化合物のTNF−αおよびIL−1調整活性を改良すること(例えば、SAR試験および分子認識実験)。(c)光親和性標識試験により式(II)の化合物の作用様式を試験すること。(d)式(II)の化合物の溶解度および膜透過性を改質かつ改良すること。(e)選択的送達単位である式(II)の化合物の二量体および複合体を合成かつ試験すること、および(f)得られた生物学的データを評価することにより標的構造を再設計かつ、精製することである。
【0133】
式(II)、(IIA)および(IIB)の新規の化合物の合理的設計に特に有意であるのは、図9に示したようなオレアノール酸(53)のAおよびC環の修飾が抗増殖性および抗炎症性活性の増強をもたらす、という近年の報告である(Honda, T.; Rounds, B.V.; Gribble, G.W.; Suh, N.; Wang, Y.;Sporn, M.B. "Design and synthesis of 2-cyano-3,12-dioxolean-1,9-dien-28-oic acid, a novel and highly active inhibitor of nitric oxide production in mouse macrophages" Biorg. & Medic. Chem. Lett. 1998, 8, 2711-2714; Suh, N. et al "A novel synthetic oleanane triterpenoid, 2-cyano-3,12-dioxoolean-1,9-dien-28-oic acid, with potent differentiating, antiproliferative and anti-inflammatory activity" Cancer Res. 1999, 59, 336-341を参照)。特に、市
販の53およびその半合成誘導体を用いたSAR試験は、(a)C2位置での電子求引基(例えばニトリル)の結合は、53の生物学的効力を増大し(図9)、(b)C環でのα
,β不飽和ケトン官能価は効力の強力な増強体である、という認識をもたらした。これらの観察を組合せると、炎症性酵素iNOS(誘導性酸化窒素シンターゼ)およびCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)の抑制に際して任意のその他の既知のトリテルペノイドより500倍活性が高いことが示された設計化トリテルペノイド54の半合成(図9)がもたらされる。
【0134】
式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の合成 式(II)、(IIA)お
よび(IIB)の化合物の13段階合成(それぞれ図4および8、模式図1および4に示されている)は効率的であり、このようなものとして、この13段階合成、SAR試験に有用な種々の類似体の調製を可能にする。式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の通常の三環式骨格の生物学的意義(C8エピマーは適切なディールス−アルダー触媒を用いて構築される)。本発明の合成アプローチにより、または本発明者らの合成中間物質の標準的修飾により容易に変えられる部位は、図10に示されており、式(II)の化合物の代表例は、図11に示されている。
【0135】
式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の所望の化学的骨格は、例えばWang樹脂のような固体支持体にも組み入れられ得る。これは、式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の組合せライブラリーの容易に得られる構築を可能にする。さらに、本発明によれば、好ましいTNF−αおよびIL−1モジュレーターは、一般に考え得るより迅速に同定され、スクリーニングし得る。
【0136】
光親和性標識試験: 式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の主鎖は、好ま
しくは、光親和性標識試験に有用な反応性架橋剤で標識される。これらの試験は、式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物のインビボ(in vivo)標的の同定に役立ち
、TNF−αの活性化におけるアカント酸の作用様式への基本的見識を提供する。C19カルボン酸またはC15アルデヒド(1の前駆体)は、適切な光感受性試薬を用いた架橋実験に有用である(図12の60および61を参照)。
【0137】
式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物の二量体および複合体の合成 例え
ば62(n=1)のような二量体形態の式(II)、(IIA)および(IIB)の化合物は天然供給源から単離されており、さらに、デキサメタソン−アカント酸複合体63は、癌探索において関連があると予想されるステロイド受容体を標的化する薬剤に対する生物学的に興味深い結果を提供する(Chamy, M.C.; Piovano, M.; Garbarino, J.A.; Miranda, C.; Vicente, G. Phytochemistry 1990, 9, 2943-2946を参照)。この種類の化合物
の生物学的試験は実施されていないが、本発明によれば、式(II)、(IIA)および(IIB)の二量体類似体が評価される。合成アカント酸または1の生物活性類似体は単量体パートナーとして用いられ、それらの結合は、本明細書中に記載されたものを含めて標準的技法を用いて実施される。
【0138】
実験技法
反応はすべて、別記しない限り、無水条件下で、乾燥新鮮蒸留溶媒中で、アルゴン雰囲気下で実行した。テトラヒドロフラン(THF)およびジエチルエーテル(Et2O)は
ナトリウム/ベンゾフェノンから、ジクロロメタン(CH2Cl2)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)およびトルエンは水素化カルシウムから、そしてジメチルホルムアミド(DMF)は塩化カルシウムから蒸留した。収量は、別記しない限り、クロマトグラフィー的および分光分析的(1H NMR)均質物質を指す。試薬は、別記しない限り、商業的に購入しうるもののうち最も高い品質のものを購入し、さらに精製せずに用いた。可視化剤としてのUV光、ならびに展開剤として7%エタノール性リンモリブデン酸またはp−アニスアルデヒド溶液および熱を用いて、0.25mmのE. Merckシリカゲルプレート(60F−254)上で実行される薄層クロマトグラフィーにより、反応をモニタリン
グした。E. Merckシリカゲル(60,粒子サイズ0.040〜0.063mm)を、フラッシュクロマトグラフィーのために用いた。0.25または0.50mmのE. Merckシリカプレート(60F−254)上で、分取薄層クロマトグラフィー分離を実行した。NMRスペクトルをVarian400および/または500Mhz計器で記録し、内部参照として残留非重水素化溶媒を用いて検量した。多重度を説明するために以下の略号を用いた:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項、b=広。Nicolet Avatar320FT−IR分光計でIRスペクトルを記録した。旋光は、Perkin Elmer241旋光計で記録した。高分離度質量スペクトル(HRMS)は、化学的イオン化(CI)条件下でのVG7070HS質量分析計で、または高速原子衝撃(FAB)条件下でのVG Z
AB−ZSE質量分析計で記録した。
【0139】
【化12】

【0140】
トリケトン2.
エチルアセテート(500ml)中のジケトン1(50g、0.40mol)の溶液を、トリエチルアミン(72ml、0.52mol)およびメチルビニルケトン(36ml、0.44mol)で処理した。反応混合物を70℃で10時間還流させた後、25℃に冷却した。溶媒を減圧下で除去し、その結果生じた粗製物質を直接クロマトグラフィー処理(ヘキサン中10〜40%エーテル)して、トリケトン2(61g、0.31mol、78%)を得た。2:無色油;Rf=0.25(シリカ、ヘキサン中50%エーテル):1H NMR(400MHz、CDCl3)δ2.75−2.59(m,4H)、2.34
(t,2H,J=7.2Hz)、2.10(s,3H)、2.07−2.05(m,3H)、1.98−1.94(m,1H)、1.24(s,3H)。
【0141】
【化13】

【0142】
ウィーランド−ミーシャーケトン(3)
ジメチルスルホキシド(400ml)中のトリケトン2(61g、0.31mol)の溶液を、微粉砕D−プロリン(1.7g、0.01mol)で処理した。溶液を25℃で4日間撹拌し、次に40℃でさらに1日撹拌した。その結果生じた紫色溶液を25℃に冷却し、水(300ml)およびブライン(100ml)で稀釈して、分液漏斗に注ぎ入れた。混合物をエチルエーテル(3x800ml)で抽出した。有機層を濃縮し(乾燥せずに)、クロマトグラフィー処理(ヘキサン中10〜40%エーテル)を施して、59gの粗製赤紫色油を得た。その物質を再びクロマトグラフィー処理(ヘキサン中10〜40%エーテル)を施して、濃縮し、57gの黄色油を生成した。油をエチルエーテル(400ml)中に溶解し、4℃で30分間保持した後、ヘキサン(100ml)の層をエーテルの上部に付加した。二層化溶液に2〜3個の結晶を植え付けて、冷凍庫(−28℃)中に一夜入れた。その結果生じた結晶を濾過により収集し、氷冷ヘキサン(2x100ml)ですすぎ、圧力下で乾燥させた。母液の濃縮によりもう一つの収穫物を得た。結晶を併合して、ウィーランド−ミーシャーケトン(3)(43g、0.24mol、78%)を得
て、3:黄褐色結晶;Rf=0.25(シリカ、ヘキサン中50%エーテル):[α]25D:−80.0(c=1,C66);1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.8
5(s,1H)、2.72−2.66(m,2H)、2.51−2.42(m,4H)、2.14−2.10(m,3H)、1.71−1.68(m,1H)、1.44(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ210.7,198.0,165.6,125.7,50.6,37.7,33.7,31.8,29.7,23.4,23.0。
【0143】
【化14】

【0144】
アセタール4
ベンゼン(700ml)中のケトン3(43g、0.24mol)の溶液を、p−トルエンスルホン酸(4.6g、0.024mol)およびエチレングリコール(15ml、0.27mol)で処理した。反応物をディーン−スターク装置および冷却器を用いて、120℃で還流させた。いったん、ディーン−スターク装置中に収集するのをやめて、反応を完了させた(約4時間)。反応物を長時間放置すると、反応混合物は暗色化し、全体的収量は低下する傾向があった。反応物を25℃に冷却し、トリエチルアミン(5ml、0.036mol)で制止して、水(300ml)および飽和重炭酸ナトリウム(200ml)を含入する分液漏斗に注ぎ入れた。その結果生じた混合物を次に、エーテル(3x800ml)で抽出した。有機層を併合し、MgSO4上で乾燥させて、濃縮し、クロマ
トグラフィー処理(ヘキサン中10〜40%エーテル)を施して、アセタール4(48g、0.22mol、90%)を得た。4:黄色油; Rf=0.30(シリカ、ヘキサン
中50%エーテル):[α]25D:−77(c=1,C66);1R(フィルム)υmax
2943,2790,1667,1450,1325,1250;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.80(s,1H)、3.98−3.93(m,4H)、2.4
3−2.35(m,3H)、2.34−2.20(m,3H)、1.94−1.82(m,1H)、1.78−1.60(m,3H)、1.34(s,3H):13C NMR(1
00MHz,CDCl3)δ198.9,167.5,125.5,112.2,65.
4,65.1,45.1,34.0,31.5,30.1,26.9,21.8,20.6。
【0145】
【化15】

【0146】
ケトエステル5
−78℃で液体アンモニア(400ml)中のリチウム(0.72g、0.10mol)の溶液を、エーテル(40ml)中のアセタール4(10g、0.045mol)およびtert−ブチルアルコール(3.7ml、0.045mol)の溶液を用いて滴下処理した。その結果生じた青色混合物を温めて、15分間撹拌還流(−33℃)し、次に再
び−78℃に冷却した。十分量のイソプレン(約8ml)を滴下して添加し、反応混合物の残留青色を色抜きした。次に反応物を水槽(50℃)中で温めて、乾燥窒素蒸気下でアンモニアを迅速に蒸発させた。残留エーテルを圧力下で除去すると、白色発泡体が残った。高真空下でさらに5分後、窒素大気を元に戻し、リチウムエノラートをドライエーテル(150ml)中に懸濁させて、−78℃に冷却した。次にメチルシアノホルメート(4.0ml、0.050mol)を付加し、反応物を−78℃で40分間撹拌した。反応物を0℃に温めて、さらに1時間撹拌した。水(300ml)およびエーテル(200ml)を付加し、混合物を、飽和塩化ナトリウム(100ml)を含入する分液漏斗中に注ぎ入れた。有機層を分離後、水性相をエーテル(2x400ml)で抽出した。併合有機層をMgSO4上で乾燥し、濃縮して、クロマトグラフィー処理(ヘキサン中10〜40%
エーテル)を施して、ケトエステル5(7.0g、0.025mol、55%)を得た。5:白色粉末状沈澱; Rf=0.40(シリカ、ヘキサン中50%エーテル):[α]25D:−2.9(c=1,C66);1R(フィルム)υmax2943,1746,1700;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.00−3.96(m,2H)、3.
95−3.86(m,2H)、3.74(s,3H)、3.23(d,1H、J=13)2Hz),2.50−2.42(m,3H)、2.05−1.92(m,1H)、1.79−1.50(m,5H)、1.32−1.28(m,2H)、1.21(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ205.4,170.0,111.9,65.2,65.1,59.9,52.0,43.7,41.6,37.5,30.3,29.8,26.2,22.5,14.0;HRMS、C15225(M+Na+)に関する理論値305.1359、実測値305.1354。
【0147】
【化16】

【0148】
エステル6
HMPA(50ml)中のケトエステル5(7.0g、0.025mol)の溶液を、水素化ナトリウム(0.71g、0.030mol)で処理した。25℃で3時間の攪拌後、その結果生じた黄褐色反応混合物をクロロメチルメチルエーテル(2.3ml、0.030mol)で制止し、反応物を25℃でさらに2時間撹拌させた。その結果生じた白黄色混合物を次に、氷水(100ml)、飽和重炭酸ナトリウム(50ml)およびエーテル(200ml)を含入する分液漏斗中に注ぎ入れた。層を分離させた後、水性層をエーテル(3x200ml)で抽出した。併合エーテル抽出物をMgSO4上で乾燥させ、
濃縮して、クロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中10〜40%エーテル)を施して、エステル6(7.7g、0.024mol、95%)を得た。6:黄色油; Rf=
0.45(シリカ、ヘキサン中50%エーテル):[α]25D:+26.3(c=1,C66);1R(フィルム)υmax2951,1728,1690,1430,1170;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.89(dd,2H、J=22.8,6.4Hz)、3.93−3.91(m,2H)、3.90−3.84(m,2H)、3.69(s,3H)、3.40(s,3H)、2.72−2.68(m,1H)、2.24(bs,2H)、1.80−1.42(m,4H)、1.37−1.15(m,2H)、0.960(s,3H)、0.95−0.80(m,2H):13C NMR(100MHz,
CDCl3)δ167.8,150.5,115.8,112.1,93.0,65.2
,65.1,56.3,51.3,40.7,40.3,30.3,26.4,23.6,22.9,22.3,13.9;HRMS、C17266(M+Na+)に関する理論値349.1622、実測値349.1621。
【0149】
【化17】

【0150】
アセタール7
−78℃で液体アンモニア(400ml)中のリチウム(1.1g、0.17mol)の溶液を、1,2−DME(30ml)中のエステル6(7.7g、0.024mol)の溶液を用いて滴下処理した。青色反応混合物を温めて、20分間、撹拌還流(−33℃)した。次に反応混合物を再び−78℃に冷却し、余分量のヨードメタン(15ml、0.24mol)で急速制止した。その結果生じた白色スラリーを1時間撹拌還流(−33℃)させた後、1時間、反応物を撹拌しながら水槽(50℃)中で温めて、アンモニアを蒸発させた。水(100ml)、重炭酸ナトリウム(100ml)およびエーテル(200ml)で反応混合物を制止し、分液漏斗中に注ぎ入れた。層分離後、水性層をエーテル(3x200ml)で抽出した。併合エーテル抽出物をMgSO4上で乾燥し、濃縮して
、クロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中10〜30%エーテル)を施して、アセタール7(4.1g、0.014mol、61%)を得た。7:半結晶黄色油;Rf=0
.80(シリカ、ヘキサン中50%エーテル):[α]25D:+16.9(c=10,C66);1R(フィルム)υmax2934,1728,1466,1379,1283,
1125,942;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ3.95−3.80(m
,4H)、3.64(s,3H)、2.17−2.15(m,1H)、1.84−1.37(m,11H)、1.16(s,3H)、1.05−1.00(m,1H)、0.87(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ177.7,112.9,65.2,64.9,51.2,44.0,43.7,38.1,30.7,30.3,28.8,23.4,19.1,14.7;HRMS、C16264(M+H+)に関する理論値283.1904、実測値283.1904。
【0151】
【化18】

【0152】
ケトン8
THF(50ml)中のアセタール7(4.1g、0.014mol)の溶液を、撹拌しながら25℃で1M HCl(約15ml)を用いて滴下処理した。反応物を薄層クロ
マトグラフィーによりモニタリングし、出発物質が消失すると、重炭酸ナトリウム(30
ml)で中和した。その結果生じた混合物を、水(100ml)およびエーテル(100ml)を含入する分液漏斗中に注ぎ入れた。層を分離させた後、水性層をエーテル(3x100ml)で抽出した。併合エーテル抽出物をMgSO4上で乾燥させ、濃縮して、ク
ロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中10〜20%エーテル)を施して、ケトン8(3.3g、0.014mol、95%)を得た。8:白色結晶; Rf=0.70(シ
リカ、ヘキサン中50%エーテル):[α]25D:+3.5(c=1.0,C66);1R(フィルム)υmax2943,1728,1449,1239,1143,1095,
985;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ3.62(s,3H)、2.55−
2.45(m,1H)、2.92−1.95(m,5H)、1.8−1.6(m,2H)、1.50−1.30(m,4H)、1.14(s,3H)、0.98−0.96(m,1H)、0.90(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ214.8,177.0,54.4,51.3,49.3,44.2,37.9,37.7,33.1,28.6,26.4,22.8,18.8,17.0;HRMS、C14223(M
+Na+)に関する理論値261.1461、実測値261.1482。
【0153】
【化19】

【0154】
アルキン9
エーテル(50ml)中のケトン8(2.0g、8.3mmol)の溶液を、リチウムアセチリド(0.40g、13mmol)で処理した。反応物を25℃で1時間撹拌し、次に重炭酸ナトリウム(20ml)および水(30ml)で制止した。混合物を、分液漏斗中に注ぎ入れ、層を分離させた。水性層をエーテル(3x50ml)で抽出した。有機層を併合し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮して、クロマトグラフィー処理(シリカ、ヘ
キサン中10〜30%エーテル)を施して、アルキン9(2.0g、7.6mmol、90%)を得た。9:白色固体; Rf=0.65(シリカ、ヘキサン中50%エーテル)
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ3.64(s,3H)、2.56(s,1
H)、2.18−2.10(m,1H)、1.92−1.40(m,12H)、1.18(s,3H)、1.17−1.01(m,1H)、0.81(s,3H):13C NMR
(100MHz,CDCl3)177.6,86.8,76.5,75.0,51.2,
50.5,43.9,52.5,37.9,35.3,33.4,28.8,23.5,22.5,19.1,11.5;HRMS、C16243(M+H+−H2O)に関する理
論値247.1693、実測値247.1697。
【0155】
【化20】

【0156】
アルケン10
1,4ジオキサン(20ml)およびピリジン(2ml)中のアルキン9(0.50g、19mmol)の溶液を、リンドラー触媒(100mg)で処理した。混合物を圧力(30 lbs/in2)下で7分間水素化した。次に反応混合物をエーテル(10ml)で稀釈し、セライトのパッドを通して濾過し、エーテル(2x50ml)で洗浄した。溶媒を減圧下で蒸発させて、アルケン10(0.48g、1.8mmol、95%)を得た。10:無色油; 1H NMR(400MHz、CDCl3)δ6.58(dd,1H)、5.39(d,1H)、5.14(d,1H)、3.64(s,3H)、2.20−2.11(m,2H)、1.93−1.65(m,4H)、1.61(s,2H)、1.52−1.25(m,4H)、1.19(s,3H)、1.17−0.90(m,2H)、0.89(s,3H)。
【0157】
【化21】

【0158】
ジエン11
ベンゼン(80ml)およびTHF(20ml)中のアルケン10(0.48g、1.8mmol)の溶液を、ホウ素トリフルオリドエテラート(1 ml、7.9mmol)
で処理し、反応混合物を100℃で5時間還流させた。冷却後、反応物を1N NaOH
(1ml、26mmol)で制止し、混合物を水(100ml)およびエーテル(100ml)を含入する分液漏斗中に注ぎ入れた。層を分離させた後、水性層をエーテル(3x100ml)で抽出した。有機層を併合し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮して、クロマ
トグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中5%エーテル)を施して、ジエン11(0.42g、1.7mmol、95%)を得た。11:無色油; Rf=0.95(シリカ、ヘキ
サン中50%エーテル);1H NMR(400MHz、CDCl3)δ6.26−6.2
3(dd,1H)、5.70(s,1H)、5.253(d,1H,J=19.2Hz)、4.91(d,1H,J=12.8Hz)、3.64(s,3H)、2.22−2.12(m,2H)、2.10−1.94(m,2H)、1.92−1.67(m,3H)、1.60−1.44(m,3H)、1.378(d,1H,J=13.6)、1.21(s,1H)、1.19−1.00(m,2H)、0.86(s,3H):13C NMR(
100MHz,CDCl3)δ177.7,146.7,136.1,121.9,11
3.3,53.0,51.2,43.9,38.0,37.9,37.4,28.5,27.8,20.5,19.5,18.3。
【0159】
【化22】

【0160】
アルデヒド12
メタクロレイン(0.5ml、5.2mmol)およびジエン11(0.1g、0.40mmol)の溶液を、正味条件下で25℃で8時間撹拌した。次に余分量のメタクロレインを減圧下で除去した。粗製生成物をクロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中10〜20%エーテル)を施して、アルデヒド12および12*(0.13g、0.40m
mol、100%)をジアステレオマーの混合物(C13で3:1〜4:1比)として得た。12および12*:無色油; Rf=0.55(シリカ、ヘキサン中25%エーテル):12: 1R(フィルム)υmax3441,2936,1726,1451,1233,1152;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ9.70(s,1H)、5.58
(m,1H)、3.62(s,3H)、2.38−2.25(m,1H)、2.21−2.18(m,1H)、2.17−1.98(m,4H)、1.96−1.62(m,6H)、1.61−1.58(m,1H)、1.57−1.43(m,2H)、1.40−1.23(m,1H)、1.17(s,3H)、1.04(s,3H)、0.92(s,3H);13C NMR(100MHz,CDCl3)δ207.6,177.7,148.3,188.6,51.3,47.8,47.0,44.2,41.2,39.3,38.8,38.1,29.5,28.4,22.9,22.5,21.8,20.6,20.5,19.7; 12*:[α]25D:+36.8(c=0.7,C66);1R(フィルム)υmax3441,2936,1726,1451,1233,1152;1H NMR
(400MHz、CDCl3)δ9.64(s,1H)、5.42(m,1H)、3.6
6(s,3H)、2.29−2.10(m,4H)、2.09−1.84(m,4H)、1.81−1.77(m,2H)、1.75−1.63(m,2H)、1.62−1.58(m,2H)、1.57−1.45(m,1H)、1.43(s,1H)、1.13(s,3H)、1.03(s,3H)、0.87(s,3H);13C NMR(100MH
z,CDCl3)δ207.3,177.5,147.4,114.6,55.8,51
.3,47.3,44.5,40.7,40.4,38.4,37.5,31.5,28.6,25.0,24.2,21.9,19.9,19.6,18.7。
【0161】
ジアステレオマーアルデヒドを精製するための好ましい方法は、MeOH中のホウ水素化ナトリウムでそれらを還元し、アルコールを分離することである。次に、デス−マーチンペルイオジナンで処理して、主要化合物(上部ジアステレオマー)を所望のアルデヒド12に酸化し得る。
【0162】
【化23】

【0163】
アルケン13(TTL3)
THF(40ml)中の(メチル)−トリフェニル−ホスホニウム臭化物(357mg、1.0mmol)の溶液を、THF中の1M NaHMDS(0.86ml、0.86
mmol)で処理した。その結果生じた黄色混合物を25℃で30分間撹拌させた。この後、THF(10ml)中のアルデヒド12(91mg、0.29mmol)の溶液を、カニューレを介して反応物に付加した。反応混合物を25℃で8時間撹拌後、重炭酸ナトリウム(30ml)および水(20ml)で制止した。混合物を、エーテル(500ml)を含有する分液漏斗中に注ぎ入れた。層を分離させた後、水性層をエーテル(3x50ml)で抽出した。有機層を併合し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮して、クロマトグラ
フィー処理(シリカ、ヘキサン中10%エーテル)を施して、アルケン13(84mg、0.28mmol、97%)を得た。13:無色油; Rf=0.75(シリカ、ヘキサ
ン中25%エーテル);13;1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.96(d
d,1H,J=16.8,11.6Hz)、5.50(m,1H)、4.98(m,2H)、3.62(s,3H)、2.20−2.11(m,1H)、2.10−1.91(m,4H)、1.90−1.70(m,4H)、1.69−1.51(m,3H)、1.50−1.38(m,3H)、1.36−1.24(m,1H)、1.17(s,3H)、1.04(s,3H)、0.90(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ177.9,149.1,143.8,117.9,111.7,51.2,47.7,44.4,41.4,41.2,38.9,38.3,37.7,34.8,30.4,28.4,24.8,23.1,22.3,22.2,20.6,19.8。
【0164】
【化24】

【0165】
酸14(TTL1)
ジメチルスルホキシド(20ml)中のアルケン13(84mg、0.28mmol)の溶液を、LiBr(121mg、1.4mmol)で処理した。反応混合物を180℃で2日間還流させた。冷却後、反応物を水(30ml)で稀釈して、エーテル(3x50ml)で抽出した。有機層を併合し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮して、クロマトグラ
フィー処理(シリカ、ヘキサン中30%エーテル)を施して、カルボン酸14(TTL1)(78mg、0.26mmol)を得た。14:白色固体; Rf=0.30(シリカ
、ヘキサン中30%エーテル);1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.96(
dd,1H,J=14.4,9.6Hz)、5.52(m,1H)、4.98−4.95(m,2H)、2.20−1.72(m,10H)、1.64−1.58(m,3H)、1.57−1.37(m,4H)、1.22(s,3H)、1.04(s,3H)、0.99(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ182.9,149.3,143.9,118.1,111.9,47.5,44.2,41.3,41.2,38.9,38.0,37.6,34.8,28.4,24.7,23.0,22.4,21.9,20.3,19.5。
【0166】
Ph3P=14CH2の調製 トリフェニルホスフィン(0.16g、0.61mmol)
を15ml反応フラスコ中に付加し、25℃で真空下で一夜乾燥した。このフラスコに、2mlのTHF(真空下で乾燥し、脱気した)を、その後、1mlのTHF中に溶解した14CH3I(50mCi、53mCi/mmol、0.9mmol)を付加し、混合物を
アルゴン下で24時間撹拌した。次にカリウムヘキサメチルジシリルアミド(2.5ml、1.25mmol、トルエン中0.5M)を付加し、赤黄色混合物を25℃で3時間撹拌させた。
【0167】
Ph3P=14CH2を用いたウィッティッヒ反応 上記混合物を−78℃に冷却し、ドラ
イTHF(1.5ml)中のアルデヒド12(63mg、0.2mmol)で処理した。混合物を徐々に25℃に温めて、8時間撹拌し、重炭酸ナトリウム(10ml)および水(10ml)で制止した。混合物をエーテル(3x50ml)で抽出し、有機層を併合して、MgSO4で乾燥させて、濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィー処理(シリカ
、ヘキサン中10%エーテル)を施して、アルケン13を得た。
【0168】
【化25】

【0169】
アルコール15
キシレン(25ml)中のアルキン9(1.10g、4.2mmol)、チオフェノール(1.37g、12.4mmol)および2.2'−アゾビスイソブチロニトリル(A
IBN、34.5mg、0.21mmol)の溶液を、110℃で(アルゴン下で)18時間撹拌した。反応混合物を25℃に冷却し、水性飽和重炭酸ナトリウム(50ml)で制止した。有機層をエチルエーテル(3x50ml)で抽出し、収集し、乾燥して(MgSO4)、濃縮し、残渣をクロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中2〜5%エチル
エーテル)を施して、アルコール15(1.35g、3.6mmol、85.7%)を得た。15:無色液体; Rf=0.51(シリカ、ヘキサン中5%エチルエーテル):[
α]25D:+24.20(c=1.0,ベンゼン);1R(フィルム)υmax2946.
8,1724.5,1472.6,1438.4,1153.5,740.0,690.9;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ7.20−7.60(m,5H)、5.
23(d,1H,J=10.5Hz)、5.12(d,1H,J=10.0Hz)、3.62(s,3H)、2.08−2.24(m,2H)、1.16−1.92(m,9H)、1.09(s,3H)、0.86−1.02(m,2H)、0.68(s,3H):13C NMR(100MHz,CDCl3)δ177.8,151.7,133.9,133.7,128.8,127.9,118.2,54.9,53.5,51.1,44.3,40.4,38.1,37.3,28.7,27.7,25.5,23.5,19.5,18.5。
【0170】
【化26】

【0171】
ジエン16
ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA、10ml)中のアルコール15(1.10g、2.94mmol)の溶液に、リンオキシクロリド(0.50g、3.3mmol)を滴下し、混合物を25℃で透明になるまで撹拌した。ピリジン(0.26ml、3.23mmol)を次に付加し、混合物を150℃で(アルゴン下で)18時間撹拌した。反応混合物を25℃に冷却し、水性飽和重炭酸ナトリウム(50ml)で制止した。有機層をエチルエーテル(3x60ml)で抽出し、収集し、乾燥して(MgSO4)、濃縮し、
残渣をクロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中2〜5%エチルエーテル)を施して、ジエン16(0.85g、2.38mmol、81%)を得た。16:無色液体; R
f=0.60(シリカ、ヘキサン中5%エチルエーテル):[α]25D:−17.30(c=1.08,ベンゼン);1R(フィルム)υmax2957.0,1726.6,15
81.6,1478.3,1439.0,1234.7,1190.8,1094.8,1024.4,739.1;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ7.20−7.
60(m,5H)、6.43(d,1H,J=15.0Hz)、6.36(d,1H,J=14.5Hz)、5.72(m,1H)、3.64(s,3H)、1.48−2.32(m,10H)、1.43(s,3H)、1.21(s,3H)、1.05(m,1H)、0.88(s,3H):13C NMR(125MHz,CDCl3)δ177.9,133.7,129.1,128.9,128.6,127.5,126.2,123.4,120.9,52.8,51.1,43.7,37.7,37.3,30.2,28.3,27.7,20.1,19.3,18.3。
【0172】
【化27】

【0173】
アルデヒド17
−20℃でジクロロメタン(5ml)中のジエン16(0.51g、1.43mmol)およびメタクロレイン(0.30g、4.30mmol)の溶液に、塩化スズ(IV)(ジクロロメタン中の1M溶液0.29ml、0.29mmol)をアルゴン下で滴下し、添加した。その結果生じた混合物を1時間以内に0℃に温めて、0℃で18時間撹拌した。反応物を、水性飽和重炭酸ナトリウム(15ml)で制止し、有機層をエチルエーテル(3x20ml)で抽出した。併合有機層を乾燥して(MgSO4)、濃縮し、残渣を
クロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中10〜15%エチルエーテル)を施して、アルデヒド17(0.51g、1.19mmol、83.7%)を得た。4:無色液体;
Rf=0.48(シリカ、ヘキサン中10%エチルエーテル):[α]25D:+30.
0(c=1.13,ベンゼン);1R(フィルム)υmax2930.8,2871.4,
1724.9,1458.4,1226.4,1149.8;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ9.51(s,1H),7.20−7.60(m,5H)、5.57(
m,1H)、3.65(s,3H)、1.20−2.32(m,15H)、1.17(s,3H)、1.05(s,3H)、0.91(s,3H):13C NMR(125MHz
,CDCl3)δ203.6,177.9,153.7,133.6,133.5,12
8.9,127.8,117.1,51.3,49.1,47.7,44.2,41.6,38.7,38.1,31.2,28.3,27.8,26.9,21.7,20.2,19.3,18.6。
【0174】
【化28】

【0175】
アルコール18
無水エタノール(5ml)中のアルデヒド17(0.50g、1.17mmol)の溶液に、ホウ水素化ナトリウム(50mg、1.32mmol)を一部ずつ付加し、混合物を30分間撹拌した。次に水性飽和重炭酸ナトリウム(10ml)を付加し、混合物をエチルエーテル(3x20ml)で抽出した。有機層を収集し、乾燥して(MgSO4)、
濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(5ml)中に再溶解させて、65℃で10分間、余分量のラネーニッケルで処理した。反応混合物を濾過し、濾液を乾燥し(MgSO4
、濃縮して、残渣をクロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中2〜5%エチルエーテル)を施して、アルコール18を主要化合物(0.21g、0.65mmol、全収率56.1%。注:上記の2つの反応物に関する全体的収率は91%である)として得た。18:無色液体; Rf=0.39(シリカ、ヘキサン中30%エチルエーテル):[α]25D:−6.70(c=1.0,ベンゼン);1R(フィルム)υmax3436.8,2929.0,2872.2,1728.1,1433.9,1260.6,1029.7,801.6;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ5.37(m,1H)、3.6
2(s,3H)、2.28(bs,1H)、2.06−2.20(m,2H)、1.20−2.00(m,12H)、1.16(s,3H)、0.99(m,1H)、0.86(s,3H)、0.84(s,3H):13C NMR(125MHz,CDCl3)δ178.2,150.4,116.4,73.6,51.2,47.9,44.2,41.9,38.8,38.2,34.3,33.9,28.3,28.2,27.8,22.1,20.3,20.1,18.9。
【0176】
【化29】

【0177】
アルケン19
ジクロロメタン(2ml)中のアルコール18(20.0mg、0.062mmol)の溶液に、デス−マーチンペルイオジナン(35mg、0.08mmol)を一部ずつ付加し、混合物を25℃で30分間撹拌した。反応物を、水性飽和重炭酸ナトリウム(5ml)で制止し、エチルエーテル(3x10ml)で抽出した。有機層を収集し、乾燥(MgSO4)して、濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(0.5ml)中に再溶解させて
、アルゴン下で、THF(1.5ml)中の(メチル)トリフェニル−ホスホニウムブロミド(60mg、0.17mmol)およびナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中の1.0M、0.14ml)の黄色懸濁液に付加した。25℃で18時間の攪
拌後、混合物を水性飽和重炭酸ナトリウム(5ml)で稀釈し、エチルエーテル(3x10ml)で抽出した。有機層を収集し、乾燥(MgSO4)して、濃縮し、残渣をクロマ
トグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中2〜5%エチルエーテル)を施して、アルケン19(16.8mg、0.05mmol、2段階反応に関する全収率は86%)を得た。19:無色液体;Rf=0.74(シリカ、ヘキサン中5%エチルエーテル):[α]25D:−14.40(c=0.50,ベンゼン);1R(フィルム)υmax2929.5,2
873.4,1726.8,1637.7,1460.7,1376.8,1225.1,1150.4,997.8,908.7;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ
5.82(dd,1H)、5.39(m,1H)、4.85−4.94(dd,2H)、3.64(s,3H)、2.30(bs,1H)、2.14(m,1H)、2.02(m,1H)、1.80−1.98(m,2H)、1.68−1.80(m,2H)、1.20−1.68(m,7H)、1.18(s,3H)、0.96−1.08(m,2H)、0.95(s,3H)、0.88(s,3H):13C NMR(125MHz,CDCl3)δ178.3,150.4,125.6,116.6,109.2,51.2,47.9,44.3,41.9,41.8,38.3,38.2,37.4,34.8,30.2,29.6,28.6,28.4,27.8,22.1,20.4,19.0。
【0178】
【化30】

【0179】
式(I)の化合物
N,N−ジメチルホルムアミド(2ml)中のアルケン19(16.8mg、0.05mmol)の溶液に、リチウムブロミド(5.0mg、0.06mmol)を付加し、混合物を190℃で1時間、還流させた。次に反応混合物を25℃に冷却し、H2O(5m
l)で稀釈して、エチルアセテート(3x10ml)で抽出した。有機層を収集し、乾燥して(MgSO4)、濃縮し、残渣をクロマトグラフィー処理(シリカ、ヘキサン中15
〜20%エチルエーテル)して、式(I)(14.9mg、0.05mmol、92.6%)を得た。
式(I)の化合物は無色液体である。Rf=0.20(シリカ、ヘキサン中30%エチルエーテル):[α]25D:−6.0(c=0.33,ベンゼン);1R(フィルム)υmax3080.6,2928.9,2857.6,1693.6,1638.2,1464
.7,1413.8,1376.4,1263.1,1179.3,1095.9,1027.5,999.2,909.2,801.7;1H NMR(500MHz、CDCl3)δ5.82(dd,1H)、5.40(m,1H)、4.85−4.95(dd,2
H)、2.30(bs,1H)、2.16(m,1H)、2.02(m,1H)、1.80−1.98(m,2H)、1.70−1.84(m,2H)、1.10−1.70(m,7H)、1.24(s,3H)、1.00−1.10(m,2H)、0.99(s,3H)、0.95(s,3H):13C NMR(125MHz,CDCl3)δ150.3,149.9,116.7,109.2,47.9,41.8,41.7,38.3,38.2,37.4,34.8,31.8,28.6,28.5,27.7,22.6,22.4,22.1,20.3,18.9。
【0180】
本発明の使用方法
本発明の一部としての前記のインビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)方法
は、TNF−αまたはIL−1モジュレーターの選択性も確立する。化学物質は、広範な種々の生物学的過程を調整し得るか、または選択的である、と認識される。本発明に基づいた細胞のパネルを用いて、候補モジュレーターの特異性を確定し得る。選択性は、例えば化学療法の分野において明白であって、この場合、化学物質の選択性が癌性細胞に対しては毒性であるが、しかし非癌性細胞に対しては毒性でないことが明らかに望ましい。選択的モジュレーターは、それらが臨床的環境においてほとんど副作用を有さないために、好ましい。候補モジュレーターの選択性は、種々の細胞経路および感受性を示す複数の細胞株に及ぼす候補モジュレーターの毒性および作用を試験することによりインビトロ(in
vitro)で確定され得る。これらのインビトロ(in vitro)毒性試験から得られるデータは、動物モデル、例えば認可動物モデル試験およびヒト臨床試験に拡張されて、候補モジュレーターの毒性、効力および選択性を確定し得る。
【0181】
本発明は、薬学的に許容可能な担体または希釈剤中に薬学的有効量の上記の生成物を含む、保存および後に投与するために調製された薬学上許容可能な担体を含む薬剤組成物中に、本発明の方法により製造される組成物も包含する。療法的使用のための許容可能な担体または希釈剤は製薬業界で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit. 1985)に記載されている。防腐剤、安定剤、染料、そして風味剤さえも、薬剤組成物中に提供され得る。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルは、防腐剤として付加され得る。さらに、酸化防止剤および沈澱防止剤が用いられ得る。
【0182】
これらのTNF−αまたはIL−1モジュレーター組成物は、経口投与のための錠剤、カプセルまたはエリキシル、直腸投与のための座薬、接種投与のための滅菌溶液、懸濁液、経皮投与のためのパッチ、ならびに皮下沈着物等として処方され、用いられ得る。注射剤は、液体溶液または懸濁液として、注射前に溶液または懸濁液にするのに適した固体形態として、あるいは乳濁液として等の慣用的形態で調製され得る。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システイン等である。さらに、所望により、注射用薬剤組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤等を含有し得る。所望により、吸収増強調製物(例えばリポソーム)が利用され得る。
【0183】
用量として必要とされるTNF−αまたはIL−1モジュレーター組成物の薬学的有効量は、投与経路、治療される動物の種類、考察中の特定の動物の身体特性によっている。用量は、所望の作用を達成するよう決められ得るが、しかし体重、食餌、共在薬のような因子、ならびに医学業界の当業者が認識するその他の因子によっている。
【0184】
本発明の方法の実施に際しては、製品または組成物は、単独で、または互いに組合せて、あるいは他の療法または診断薬と組合せて用いられ得る。これらの製品は、インビボ(in vivo)で、普通は動物において、好ましくはヒトで、あるいはインビトロ(in vitro
)で利用され得る。それらをインビボ(in vivo)で用いる場合、製品および組成物は、
哺乳動物に、種々の方法で、例えば種々の投与形態を用いて、非経口的に、静脈内に、皮下に、筋肉内に、結腸に、直腸に、膣に、鼻腔に、または腹腔内に投与され得る。このような方法は、インビボ(in vivo)での化学的活性を試験するためにも適用され得る。
【0185】
当業者には容易に明らかであるように、投与される有用なインビボ(in vivo)投与量
および特定の投与様式は、年齢、体重および治療される哺乳動物種、用いられる特定の化合物、これらの化合物が用いられる特殊な使用法によって変化する。有効投与量レベル、即ち所望の結果を達成するのに必要な投与レベルの決定は、当業者に慣用の薬理学的方法を用いて成し遂げられ得る。典型的には、製品のヒト臨床適用は低投与レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで、投与量レベルは増大される。あるいは、認可のインビト
ロ(in vitro)試験は、確立された薬理学的方法を用いて、本発明の方法により同定された組成物の投与の有用な用量および投与経路を確立するために用いられ得る。
【0186】
非ヒト動物試験では、可能性のある製品の適用は、より高い投与量レベルで開始され、所望の効果がもはや達成されなくなるかまたは副作用が消失するまで、投与量は低減される。本発明の製品のための投与量は、所望の疾患および治療適応症によって広範囲に及び得る。典型的には、投与量は、約10μg/体重1kg〜100mg/体重1kg、好ましくは約100μg/体重1kg〜10mg/体重1kgであり得る。あるいは、当業者に理解されるように、投与量は患者の体表面積に基づいており、それにより算出され得る。投与は、好ましくは、1日1回または1日2回の経口投与である。
【0187】
的確な処方物、投与経路および投与量は、患者の症状にかんがみて、個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975参照)。医者が、毒性のためにまたは器官機能不全のために投与を終了し、中断し、
または調整する方法および時期を知っている、ということに留意すべきである。逆に、主治医は、臨床応答が適切でない場合(毒性は排除する)にはより高レベルに治療を調整することも分かっている。当該障害の管理における投与用量の大きさは、治療される症状の重症度および投与経路に伴って変わる。例えば症状の重症度は、一部は、標準予後評価方法により評価され得る。さらに、用量およびおそらくは投与頻度も、個々の患者の年齢、体重および応答によって変わる。前記のものとほぼ同等のプログラムは、獣医学の薬品において使用され得る。
【0188】
治療される特定の症状によって、このような作用物質が処方され、全身的にまたは局所的に投与され得る。処方および投与のための種々の技法は、Remington's Pharmaceutical
Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA(1990)に見出され得る。適切な投与経路としては、経口、直腸、経皮、膣、経粘膜または小腸投与、非経口送達、例えば筋肉内、皮下、骨髄内注射、ならびに鞘内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射が挙げられる。
【0189】
注射用に、本発明の作用物質は、水性溶液中に、好ましくは生理学的適合性緩衝液、例えばハンクス液、リンガー液または生理食塩緩衝液中に形成され得る。このような経粘膜投与のためには、透過を妨害するものに適した浸透剤が、処方物中に用いられる。このような浸透剤は一般に、当業界で既知である。全身投与に適した投与量中に本発明の実施に関して開示された本明細書中の化合物を処方するための薬学的に許容可能な担体の使用は、本発明の範囲内である。担体の適正な選択および適切な製造実施により、本発明の組成物、特に溶液として処方されたものは、非経口的に、例えば静脈内注射により投与され得る。化合物は、当業界で周知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に適した投薬量中に容易に配合され得る。このような担体は、治療される患者による経口摂取のための錠剤、ピル、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として本発明の化合物が配合されるのを可能にする。
【0190】
細胞内に投与されるよう意図された作用物質は、当業者に周知の技法を用いて投与され得る。例えば、このような作用物質は、リポソーム中に封入され、その後上記と同様に投与され得る。リポソーム形成時に水性溶液中に存在する分子はすべて、水性内部に組み入れられる。リポソーム内容物は、外部微小環境から保護され、そしてリポソームが細胞膜と融合するために、細胞質中に効率的に送達される。さらに、それらの疎水性のために、わずかな有機分子は細胞内に直接投与され得る。
【0191】
本明細書中に記載されたように用いるのに適した薬剤組成物としては、TNF−αまたはIL−1モジュレーターが、TNF−αまたはIL−1調整目的を達成するために有効
量で含入される組成物が挙げられる。有効量の決定は、特に本明細書中に提供された詳細な開示にかんがみて、十分に当業者の能力内である。有効成分の他に、これらの薬剤組成物は、薬学的に用いられ得る調製物中への活性化合物の加工を促す賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に許容可能な担体を含有し得る。経口投与のために処方される調製物は、錠剤、糖衣剤、カプセルまたは溶液の形態であり得る。本発明の薬剤組成物は、それ自体既知の方式で、例えば慣用的混合、溶解、造粒、糖衣作製、浮揚、乳化、封入、エントラッピングまたは凍結乾燥法により製造され得る。
【0192】
非経口投与のための薬剤成形物としては、水溶性形態の活性化合物の水性溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油状注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油、またはその他の有機油、例えば大豆、グレープフルーツまたはアーモンド油、あるいは合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたはトリグリセリド、あるいはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増大する物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランを含有し得る。任意に、懸濁液は、適切な安定剤、または高濃縮溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大する作用物質も含有し得る。
【0193】
経口使用のための薬剤調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組合せ、任意にその結果生じる混合物を粉砕し、所望により適切な助剤の付加後に顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣剤コアを生成することにより得られる。適切な賦形剤は、特に充填剤、例えば糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望により、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムが付加され得る。糖衣剤コアは、適切なコーティングを供される。このために、濃縮糖溶液が用いられ得るが、これは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。染料または顔料は、異なる組合せの活性化合物用量を同定または特性化するために、錠剤または糖衣剤コーティングに付加され得る。このために、濃縮糖溶液が用いられ得るが、これは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。染料または顔料は、異なる組合せの活性化合物用量を同定または特性化するために、錠剤または糖衣剤コーティングに付加され得る。このような処方物は、当業界で既知の方法を用いて製造され得る(例えば、米国特許第5,733,888号(注射用組成物)、第5,726,181号(低水溶性化合物)、第5,707,641号(療法的活性タンパク質またはペプチド)、第5,667,809号(親油性剤)、第5,576,012号(可溶化高分子剤)、第5,707,615号(抗ウイルス性処方物)、第5,683,676号(粒状薬)、第5,654,286号(局所処方物)、第5,688,529号(経口懸濁液)、第5,445,829号(長期放出処方物)、第5,653,987号(液体処方物)、第5,641,515号(制御放出処方物)および第5,601,845号(長球面処方物)参照)。
【0194】
本発明の化合物は、既知の方法を用いて、効力および毒性に関して評価され得る。例えば、本発明の特定の化合物の、またはある種の化学的部分を共有する本発明の化合物のサブセットの毒性は、細胞株、例えば哺乳動物、好ましくはヒト細胞株に対するインビトロ(in vitro)毒性を確定することにより確立され得る。このような試験の結果はしばしば、動物、例えば哺乳動物、特にヒトにおける毒性を予示する。あるいは、動物モデル、例
えばマウス、ラット、ウサギまたはサルにおける本発明の特定の化合物の毒性は、既知の方法を用いて確定され得る。本発明の特定の化合物の効力は、当業界で認識されたいくつかの方法、例えばインビトロ(in vitro)法、動物モデルまたはヒト臨床試験を用いて確立され得る。当業界で認識されたインビトロ(in vitro)モデルは、本発明により低減される症状を含めたほとんどすべての種類の症状、例えば癌、心臓血管性疾患および種々の免疫機能不全に関して存在する。同様に、許容可能な動物モデルは、このような症状を治療するための化学物質の効能を確立するために用いられ得る。効能を確定するためのモデルを選択する際に、熟練当業者は、適切なモデル、用量および投与経路、ならびにレジメン(regime)を選択するための技量により左右され得る。もちろん、ヒト臨床試験は、ヒトにおける本発明の化合物の効力を確定するためにも用いられ得る。
【0195】
抗炎症薬、抗癌薬、腫瘍増殖抑制化合物として、または心臓血管性疾患を治療するための一手段として用いる場合、式(II)、(IIA)および好ましくは(IIB)の化合物は、経口的または非経口的経路により投与され得る。経口的に投与する場合、それは、カプセル、錠剤、顆粒、スプレー、シロップまたはその他のこのような形態で投与され得る。非経口的に投与する場合、それは、水性懸濁液、油状調製物等として、または点滴、座薬、膏薬、軟膏等として、注射により投与する場合には、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内注射等で投与され得る。同様に、それは、本発明の化合物を腫瘍と最適に接触させて、腫瘍の増殖を抑制するために当業者により適切であるとみなされた場合には、局所的に、直腸に、または膣に投与され得る。腫瘍またはその他の疾患症状の部位での局所投与も、腫瘍切除の前または後に、あるいは当業界で認識された疾患症状の治療の一部として、意図される。制御放出処方物、沈着剤処方物および注入ポンプ送達は、同様に意図される。
【0196】
式(II)および(IIA)、そして好ましくは(IIB)の化合物は、抗腫瘍薬としてまたは任意のその他の上記の疾患症状のための治療として用いられる場合、約0.0007mg/日〜約7,000mg/日の有効成分量で、さらに好ましくは約0.07mg/日〜約70mg/日の有効成分量で、好ましくは1日1回、あるいはあまり好ましくはないが2〜10回/日、ヒト患者に経口的にまたは非経口的に投与され得る。あるいは、そして好ましくは、本発明の化合物は、好ましくは、例えば静脈内点滴により、前記の量で連続的に投与され得る。したがって、体重70kgの患者に関しては、活性抗腫瘍成分の好ましい1日用量は、約0.0007mg/kg/日〜約35mg/kg/日、さらに好ましくは0.007mg/kg/日〜約0.035mg/kg/日となる。それにもかかわらず、当業者に理解されるように、ある情況においては、特に進行性または致死性腫瘍を効率的且つ攻撃的に治療するために、前記の好ましい投与量範囲を超える量で、あるいはそれをはるかに超える量で、本発明の抗腫瘍化合物を投与する必要があり得る。
【0197】
腫瘍増殖抑制または抗ウイルス性化合物として、式(II)の化合物、式(IIA)の化合物または式(IIB)の化合物を処方するために、既知の界面活性剤、賦形剤、平滑剤、沈澱防止剤、ならびに薬学的に許容可能な皮膜形成物質およびコーティング助剤等が用いられ得る。好ましくは、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどが界面活性剤として、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶化セルロース、マンニトール、light無水ケイ酸塩、マグネシウムアルミネート、マグネシウムメタシリケ
ートアルミネート、合成アルミニウムケイ酸塩、カルシウムカルボネート、ナトリウム酸カルボネート、カルシウム水素ホスフェート、カルシウムカルボキシメチルセルロース等は賦形剤として、マグネシウムステアレート、タルク、硬化油等は平滑剤として、ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、醤油は沈澱防止剤または滑剤として、セルロースまたは糖のような炭水化物の誘導体としてのセルロースアセテートフタレートは、あるいはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーは、沈澱防止剤として、そしてエステルフタレート等のような可塑剤は沈澱防止剤として用いられ得る。
前記の好ましい成分の他に、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤等は、特に化合物が経口的に投与される場合に、本発明の化合物の投与処方物に付加され得る。
【0198】
皮膚発赤の治療の一手段として式(II)、式(IIA)および/または式(IIB)の化合物を用いる場合には、化合物は、代替的に、薬学的に許容可能な担体と一緒に、膏薬または軟膏として局所的に投与され得る。
【0199】
前記のように生化学的試験試薬として式(II)、式(IIA)および/または式(IIB)の化合物を用いる場合には、本発明の化合物は、有機溶媒または含水有機溶媒中に溶解され、種々の培養細胞系のいずれかに直接適用され得る。使用可能な有機溶媒としては、例えばメタノール、メチルスルホキシド等が挙げられる。処方物は、例えば有機溶媒または含水有機溶媒を用いて調製される粉末、粒状またはその他の固体阻害剤または液体阻害剤であり得る。細胞周期阻害剤として用いるための本発明の化合物の好ましい濃度は、一般的に約1〜約100μg/mlの範囲であるが、最も適切な使用量は、当業者に理解されるように、培養細胞系の種類および使用目的によって変化する。さらに、ある種の用途においては、前記の範囲外の量を用いることが必要であるし、あるいは当業者に選択され得る。
【0200】
本発明は、薬学的に許容可能な担体を含む薬剤組成物中に式(II)、式(IIA)および/または式(IIB)の組成物も包含する。このような組成物は、貯蔵のために、そしてその後の投与のために調製され得る。療法的使用のための許容可能な担体または希釈剤は、製薬業界で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。例えば、このような組成
物は、経口投与のための錠剤、カプセルまたは溶液、直腸または膣投与のための座薬、注射投与のための滅菌溶液または懸濁液として処方され、使用され得る。注射用剤は慣用的形態で、液体溶液または懸濁液として、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態として、あるいは乳濁液として調製され得る。適切な賦形剤としては、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システイン等が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、所望により、注射用薬剤組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤等を含有し得る。所望により、吸収増強調製物(例えばリポソーム)が利用され得る。
【0201】
用量として必要とされる組成物の製薬的有効量は、投与経路、治療される動物の種類、ならびに考察中の特定の動物の身体特性による。用量は、所望の作用を達成するよう適合され得るが、しかし体重、食餌、共在薬のような因子、ならびに医学業界の当業者が認識するであろうその他の因子による。
【0202】
前記のように、本発明の製品または組成物は、単独で、または互いに組合せて、あるいは他の治療薬または診断薬と組合せて用いられ得る。これらの製品は、インビボ(in vivo)またはインビトロ(in vitro)で利用され得る。有用な投与量、および最も有用な投
与様式は、年齢、体重および治療される動物、用いられる特定の化合物、これらの単数または複数の組成物が用いられる特殊な使用によって変化する。特定の障害のための管理または治療における用量は、治療される症状の重症度および投与経路に伴って、そして疾患症状およびそれらの重症度によって変わり、本発明の組成物は、全身的にまたは局所的に処方され、投与され得る。処方および投与のための種々の技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA(1990)に見出され得る。
【0203】
種々の参考文献、出版物および特許が本明細書中で言及されている。法的に許される程度に、これらの参考文献、出版物および特許の各々は、その記載内容が全体として本明細
書中に引用される。
【実施例】
【0204】
以下の実施例は本発明の特定の好ましい実施形態を説明するためのものであって、本発明によりもたらされる保護の範囲を限定するものではない。以下の実施例、特に実施例1〜8は、本明細書中に記載した化合物の種類のそれぞれの化合物が合成されたことを実証する。実施例9〜17は、漸増用量の、実施例1で合成されたような式(I)の化合物、ならびに10μg/mlという高濃度の実施例1および特に実施例2〜5の方法にしたがって合成されるような本明細書中でTTL1〜TTL4で示される式(IIB)の化合物で処置されたヒト効能および安全性に関する許容可能な予備モデルを示す哺乳動物細胞において、未処置対照と比較して同様の成育可能性を示したが、これは、TNF−α合成に及ぼす評価化合物の抑制作用が直接細胞傷害性作用により媒介されなかったことを示す。
【0205】
本発明のある種の好ましい化合物を用いたその後の試験は、TNF−αおよびIL−1合成の抑制に際して、式(I)の合成化合物と比較した場合、TTL1が約10倍大きい
活性を示すことを実証した。付加的化学修飾を含有するTTL3は、TTL1の約100倍の活性を示した。式(I)の化合物と同様に、TTL1もTTL3もIL−6合成を有意に抑制しなかったということに留意することが重要である。
【0206】
実施例1
式(I)および(II)の化合物の立体選択的合成 式(I)の化合物の第一の立体選
択的合成が成し遂げられている。我々の合成計画は、(−)ウィーランド−ミーシャーケトン(107)から離れて(図18を参照)、101のC環の構築のためにディールス−アルダー環付加反応を要求する。記載された合成は、101の提唱された立体化学的特性を確証し、未調査種類の生物学的活性ジテルペンへの効率的進入を示す。
【0207】
韓国に成育する落葉灌木であるAcanthopanax koreanum Nakai(ウコギ科Araliaceae)
の根樹皮は、強壮薬、鎮静薬として、ならびにリウマチおよび糖尿病の治療のための薬剤として、伝統的に用いられてきた(Medicinal Plants of East and Southeast Asia, Perry, L.M.; Metzger, J. Eds.; MIT Press, Cambridge, MA and London, 1980)。この民
間薬の薬理学的活性抽出物の試験中に、Chungおよび共同研究者等は、その後アカント酸
(101)と呼ばれた新規のジテルペンを単離し、構造的に特性化した((a)Kim, Y.H., Chung, B.S., Sankawa, U., J. Nat. Prod., 1988, 51, 1080-1083;(b)Kang, H.-S.,
Kim, Y.-H, Lee, C.-S, Lee, J.-J, Choi, I, Pyun, K,-H., Cellular Immunol. 1996, 170, 212-221.;(c)Kang, H.-S, Song, H. K, Lee, J.-J, Pyun, K.-H, Choi, I., Mediators Inflamm. 1998, 7, 257-259)。
【0208】
生合成見地から、101は、ピマル酸(102)により代表され得るピマラジエンジテルペンのかなり大きいファミリーに属する(Ruzicka, L.; Sternbach, L.; J. Am. Chem.
Soc. 1948, 70, 2081-2085; Ireland, R.E.; Schiess, P.W. Tetrahedron Lett. 1960, 25, 37-43; Wenkert, E.; Buckwalter, B.L. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 4367-4372; Wenkert, E.; Chamberlin, J. W. J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 688-693)。式(I)の化合物の構造は、剛性三環式コアを横断する例外的結合性により識別され、これはその薬理学的プロフィールを説明可能に保持され得る。実際、この化合物の近年の単離は、その生物学的活性への試験を可能にし、その医学的可能性を立証した(Kang, H.-S., Kim, Y.-H, Lee, C.-S, Lee, J.-J, Choi, I, Pyun, K,-H., Cellular Immunol. 1996, 170, 212-221.; Kang, H.-S, Song, H. K, Lee, J.-J, Pyun, K.-H, Choi, I., Mediators Inflamm. 1998, 7, 257-259)。特に、アカント酸は、おそらくは前炎症性サイトカイン:腫瘍
壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン−1(IL−1)の産生を抑制することにより生じると思われる有望な抗炎症性および抗繊維症性活性を示すことが見出され
た(Tumor Necrosis Factors. The Molecules and their Emerging Role in Medicine" B. Beutler, Ed., Raven Press, N.Y. 1992;Aggarwal, B.; Puri, R. Human Cytokines:Their Role in Disease and Therapy:Blackwell Science, Inc.; USA., 1995; Thorpe, R.; Mire-Sluis, A. Cytokines; Academic Press; San Diego, 1998; Kurzrock, R.; Talpaz, M. Cytokines:Interleukins and Their Receptors: Kluwer Academic Publishers:USA., 1995; Szeckanecz,Z.; Kosh, A. E.) Kunkel, S.L.; Strieter, R.M. Clinical Pharmacol. 1998, 12, 377-390; Camussi, G.; Lupin, E. Drugs 1998, 55, 613-620; Newton, R.C.; Decicco, C.P. J. Med. Chem. 1999, 42, 2295-2314)。
【0209】
この抑制は、同一条件下では、IL−6またはIFN−γ(インターフェロン−γ)の産生は影響されなかったため、濃度依存性およびサイトカイン特異的であった。さらに、アカント酸は、経口投与時に活性であることが判明し、マウスおよびラットにおいて実施した実験では最小毒性を示した。
【0210】
101により示される異例の構造および有望な薬理学的活性の組合せは、我々の合成試験( Xiang, A. X.;Watson, D. A.; Ling, T.; Theodorakis, E.A.. J. Org. Chem. 1998, 63, 6774-6775; Ling, T.; Xiang, A.X.; Theodorakis, E.A. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1999, 38, 3089-3091を参照)のこのファミリーの生物学的に重要な代謝物質への
拡張を促した。本実施例は、(−)アカント酸および実施例2〜6に示したような式(II)の化合物の立体選択的全合成を提供し、式(IIB)の化合物の全合成のための基礎を提供する。本実施例は、101の構造および絶対的な立体化学を確証する。
【0211】
アカント酸に対するレトロ合成戦略は、図20に示されている。101のC環は、ディールス−アルダー環付加反応により構築されるよう意図されており、それにより、ジエノフィル103および適切に置換されたジエン、例えば104を典型的な結合対象として明示する(Oppolzer, W in Comprehensive Org. Synthesis, Trost, B.M.Ed.; Oxford, N.Y.; Pergamon Press, 1991, 315-399を参照)。この反応は、C9〜C11結合での不飽和、ならびにC8およびC13炭素での所望の立体化学をともに誘導し、式(II)の化合物および式(IIB)の化合物の合成間の便利な分岐点を可能にする。ジエン104は、そのC4第四級中心がβ−ケトエステル107の立体制御化アルキル化により形成されるよう突出されたケトン105の官能化により生成され得る。この分析は、推定出発物質としての(−)ウィーランド−ミーシャーケトン107の使用を示唆した。アカント酸の合成へのこのような計画の適用は、図21および23に模式図5および6として示されている。化合物はすべて、申し分ないスペクトルおよび分析データを示した。
【0212】
合成は、光学的に純粋なエノン107を用いて開始したが、これは、D−プロリン媒介性不斉ロビンソン環化により容易に利用可能であった(収率75〜80%、>95%ee)(Buchschacher, P.; Fuerst, A.; Gutzwiller, J. Org. Synth. Coll. Vol. VII 1990, 368-3372を参照)。107のC9ケトン基の選択的ケタール化とその後のメチルシアノホルメートによるエノン官能価を横断するアルキル化は、全収率50%でケトエステル106をもたらした(Crabtree, S.R.; Mander, L.N.; Sethi, P.S. Org. Synth. 1992, 70, 256-263を参照)。C4位置での所望の官能価を誘導するために、第二還元的アルキル
化手法を実行した(Coates, R.M.; Shaw, J.E. J. Org. Chem. 1970, 35, 2597-2601; Coates, R.M.; Shaw, J.E. J. Org. Chem. 1970, 35, 2601-2605を参照)。化合物106をまず、対応するメトキシメチルエーテル108に変換したが、これは、液体アンモニアおよびヨードメタン中のリチウムでの処理時に、全収率58%で単一ジアステレオマーとしてエステル110を生じた(Welch, S.C.;Hagan, C.P. Synthetic Commun. 1973, 3, 29-32; Welch, S.C.;Hagan, C.P.; Kim,J.H.; Chu, P.S. J. Org. Chem. 1977, 42, 2879-2887; Welch, S.C.;Hagan, C.P.; White, D.H.; Fleming, W.P.; Trotter, J.W. J. Amer. Chem. Soc. 1977, 99, 549-556を参照)。この付加の立体選択性は、妨げられたエクアト
リアル側でアルキル化を受ける中間体エノラート109の強い選択性から生じる。
【0213】
すぐに用いることのできる二環式コアを用いて、C環を構築した。メタクロレイン103(例えば、図21を参照)および硫黄含有ジエン104間のディールス−アルダー反応により、C環を形成した。110のC9ケタールの酸触媒性脱保護化と、結果的に生じたケトン105の、リチウムアセチリド−エチレンジアミン複合体を用いたその後のアルキル化により、104の合成を開始した(Das, J.; Dickinson, R.A.; Kakushima, M.; Kingston, G.M.; Reid, G.R.; Sato, Y.; Valenta, Z. Can. J. Chem. 1984, 62, 1103-1111を参照)。この系列は、C9での8:1ジアステレオマー性混合物として(示された異性体の方を選んで)アルキン111を、全収率86%で生じさせた。この時点で、ディールス−アルダー反応のジアステレオマー選択性を、非官能化ジエン(例えば112)の使用の総合的な実行可能性と同様に、評価した。このために、プロパルギルアルコール111のジアステレオマー混合物を部分的に還元し(H2、リンドラー触媒)、脱水して(BF3・Et2O)、ジエン112を収率90%で生成した(Coisne, J.-M.; Pecher, J.; Declercq, J.-P.; Germain, G.; van Meerssche, M. Bull. Soc. Chim. Belg. 1980, 89, 551-557)。25℃での正味条件下での112およびメタクロレイン(103)間のディールス−アルダー環付加は、定量的収率で、ホウ水素化ナトリウムによる還元後に分離される2つのジアステレオマー性アルデヒドの混合物を生じた。その結果生じるアルコール114および115を対応するp−ブロモベンゾエートエステル(それぞれ化合物116および117)に変換したが、これは、ジクロロメタン/エタノールによる結晶化の際にX線分析に適した結晶を生成した(図22)。
【0214】
X線分析の結果は、三環系はC4位置に予期された立体化学的性質を有することを確立し、ディールス−アルダー反応が排他的エンド配向で進行したことを確証した。メタクロレインは、シクロペンタジエンと反応すると、エキソ(exo)ディールス−アルダー産物
を生成することが示された(Kobuke, Y.; Fueno, T.; Furukawa, J. J. Am. Chem. Soc. 1970, 92, 6548-6553)。この驚くべき観察はメチル基が示す立体的な反発を元に正当化
される。次に、還元後、環付加の主要産物は、C8中心に所望の立体化学特性を有し、それにより、α−面(底面側攻撃)からの103(例えば図21参照)との反応を受けるジエン112の強い選択性を実証するアルコール114であることが示された。さらに、これらのデータは、アカント酸の合成が進入中のジエノフィルの配向の反転を要することを示した。
【0215】
進入中ジエノフィルの反転が存在しない、以下の実施例2〜8で考察するように、式(IIB)の全体的に新規の化合物を合成した。適切な置換化ジエノフィルの選択は、式(IIB)の化合物のR11およびR12基の本質的に無制限の選択を可能にする。
【0216】
ジエンの末端の原子軌道係数を変えることにより、式(I)の化合物、その天然類似体、ならびに式(II)および(IIA)の化合物の合成に必要なジエノフィルの反転を成し遂げたが、これは、環付加中の異種原子含有ジエン、例えば104の使用を支持する(全般的には、Overman, L.E.; Petty, C.B.; Ban, T.; Huang, G.T. J. Am. Chem. Soc. 1983, 105, 6335-6338; Trost, B.M.; Ippen,J.; Vladuchick, W. C. J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 8116-8118; Cohen, T.; Kozarych, Z. J. Org. Chem. 1982, 47, 4008-4010; Hopkins, P.B.; Fuchs, P.L. J. Org. Chem. 1978, 43, 1208-1217; Petrzilka, M.; Grayson, J.I. Synthesis, 1981, 753-786 参照)。ジエン104の構築および101の合成のためのその利用は、図23、模式図6に示されている。
【0217】
アルキン111上へのチオフェノールのラジカル付加(Greengrass, C.W.; Hughman, J.A.; Parsons, P.J. J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1985, 889-890)と、その結果生じたアリル性アルコールのその後のPOCl3媒介性脱水により(Trost, B.M.; Jungheim, L.
N. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 7910-7925; Mehta, G.; Murthy, A.N.; Reddy, D.S.;
Reddy, A.V. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 3443-3452 )、化合物104を生成した(2段階、収率70%)。興味深いことに、この脱水をBF3・Et2Oを用いても試みたが、しかしこの場合には有効でないことが立証された。用意できた実質量の104を用いて、ジエノフィルとして103を用いてディールス−アルダー反応を調べた。いくつかの熱(−78〜80℃)およびルイス酸−(BF3・Et2O、TiCl4、AlCl3およびSnCl4 )触媒化ディールス−アルダー条件を試験した。最良の結果は、−20℃で塩化メチレン中のSnCl4を用いて得られ、アルデヒド118をジアステレオマーの4.2
:1混合物として収率84%で生じた。生成物特性化を簡単にし、適切な分離を可能にするために、この混合物をNaBH4で還元し、ラネーNiを用いて還元的に脱硫した。こ
のようにして、アルコール119および120を全収率91%で得た。これらの化合物の構造を、103および112間の反応から単離された生成物と比較することにより、定めた。デス−マーチン(Dess-Martin)ペルヨージナン(periodinane)による主ジアステレオマー120の処理とその後のウィティッヒメチル化はC13中心でのアルケン官能価をインストールし、全収率86%で121を生成した。次にC−19カルボン酸を脱保護化した。還流DMF中のLiBrへの121の曝露は、アシルオキシ官能価のSN2型置換を介して、収率93%でアカント酸101を生じた(Bennet, C.R.; Cambie, R.C. Tetrahedron
1967, 23, 927-941参照)。合成性101は、天然産物に関して報告されたものと同一の分光スペクトルデータおよび分析データを有した。
【0218】
本実施例は、化合物101の簡潔な立体選択的合成を提供する。合成戦略は、C13およびC8炭素中心に立体化学特性を設定するジエン104およびメタクロレイン(103)間のディールス−アルダー反応の実行を特徴とした。記載した101の合成は、14の段階(エノン107で出発する)を要し、全収率約9%で進行した。我々の戦略の全体的効率および転用性は、改良型薬理学的プロフィールを有する意図された類似体の調製を基礎にする。
【0219】
実施例2〜8
式(IIB)の化合物の立体選択的合成 実施例1に略記し、図23、模式図6に示し
た手法を、変更、省略を加えて実行し、式(II)または式(IIB)の化合物を得た。
【0220】
実施例2
図21に図示したような実施例1の手法にしたがって、本明細書中でTTL4と呼ばれる化合物を合成し、本明細書中でTTL4と呼ばれる化合物114を得た。
【0221】
実施例3
図21に図示したような実施例1の手法にしたがって、本明細書中でTTL2と呼ばれる化合物を合成し、化合物114を得た。図23の工程(h)に示した反応と同様に、化合物114を、160℃で約3時間、DMF中の3.0当量のLiBrと反応させて、本明細書中でTTL2と呼ばれる化合物を収率約93%で得た。
【0222】
実施例4
図14に図示したような手法にしたがって、本明細書中でTTL3と呼ばれる化合物を合成し、化合物13を得た。この化合物は、本明細書中ではTTL3と呼ばれる。
【0223】
実施例5
図14に図示したような手法にしたがって、本明細書中でTTL1と呼ばれる化合物を合成し、化合物13を得た。この化合物は、本明細書中ではTTL1と呼ばれる。
【0224】
実施例6
15が水素であり、R9およびR15が別々にC1〜C6のアルキルおよびC1〜C6の置換
アルキルから成る群から選択される式(IIB)の化合物を、実施例1の手法にしたがって合成するが、但し、ジエノフィルは、本実施例の場合と同様に、R15が水素であり、R9およびR15が別々にC1〜C6のアルキルおよびC1〜C6の置換アルキルから成る群から
選択される式(III)の化合物のうちの1つから選択される。
【0225】
実施例7
特に、R14が水素であり、R9およびR15が別々にC1〜C6のアルキルおよびC1〜C6
の置換アルキルから成る群から選択される式(IIB)の化合物を、実施例1の手法にしたがって合成するが、但し、ジエノフィルは、本実施例の場合と同様に、R14が水素であり、R9およびR15が別々にC1〜C6のアルキルおよびC1〜C6の置換アルキルから成る
群から選択される式(III)の化合物のうちの1つから選択される。
【0226】
実施例8
14が水素であり、R9およびR15が別々にC2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換ア
ルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから成る群から選択される式(IIB)の化合物を、実施例1の手法にしたがって合成するが、但し、ジエノフィルは、本実施例の場合と同様に、R14が水素であり、R9およびR15が別々にC2〜C6のアル
ケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから成る群から選択される式(III)の化合物のうちの1つから選択される。
【0227】
実施例9〜17
材料と方法 種々の作用物質、例えばリポ多糖(LPS)または熱殺害性黄色ブドウ球
菌(SAC)のようなグラム陽性作用物質による刺激の前に、種々の用量の式(I)の合成化合物および類似体のパネル(0.5%DMSO中に稀釈)を用いて、ネズミマクロファージ細胞RAW264.7(1x106/ml)を30〜60分間、前処理した。72
時間に亘って収集した上清を、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−10、IL−18およびその他のサイトカインのレベルに関して、ELISAまたはバイオアッセイにより検定する。カスパーゼ活性(Nr−1、Nr.3)、NF−kB、MAP−キナーゼ活性(P38、ERKおよびJNK)のような特定のサイトカインシグナリング経路に及ぼす式(I)、(II)、(IIA)および(IIB)の合成化合物の作用を評価するための付加的試験も実施する。
【0228】
結果
漸増用量の式(I)および(IIB)の合成化合物、特に10ug/mlという高い濃度で本明細書中でTTL1およびTTL3と呼ばれるもので処理したネズミRAW264.7細胞は、未処理対象と比較して同様の成育可能性を示すことを前臨床試験は実証したが、これは、TNF−α合成に及ぼす式(I)および(IIB)の合成化合物の抑制作用が直接的細胞傷害性作用により媒介されなかったことを示す。
【0229】
実施例1により合成されるような式(I)の化合物、TTL1(実施例2により合成される)およびTTL3(実施例4により合成される)を用いたその後の試験は、TTL1が、TNF−αおよびIL−1合成の抑制に際して、実施例1により合成されるような式(I)の化合物と比較して、約10倍の活性を示すことを実証した。実施例4により合成されるようなTTL3は、付加的化学修飾を含有し、実施例2により合成されるようなTTL1より約100倍も高い活性を示した。実施例1により合成されるような式(I)の化合物と同様に、類似体TTL1もTTL3もIL−6合成を有意に抑制しなかった、ということが注目される。TTL1は、TNF−αおよびIL−1合成の抑制に際して、実施例1により合成されるような式(I)の化合物と比較して、10倍の活性を示した。
【0230】
付加的化学修飾を含有するTTL3は、TTL1の約100倍の活性を示した。実施例1により合成されるような式(I)の化合物と同様に、類似体がIL−6合成を有意に抑制しなかったことに注目するのは同じく重要である。
【0231】
【表1】

【0232】
【表2】

【0233】
本発明の適用および原則を説明するために、本発明の特定の実施形態を例として示し、詳細に述べてきたが、本発明は、このような原則を逸脱しない限り他の形態でも実施し得る、と理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造:
【化1】

(式中、R3〜R5、R7、R8およびR11〜R15のいずれかが水素でないか、R2またはR6またはR9がメチルでないか、あるいはR10がCH2でない場合には、R1は水素、ハロゲ
ン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のア
シル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、
1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5〜C12のアリールから成る群から選択されるが、しかし
3〜R5、R7、R8、R11〜R13がすべて水素であり、R2、R6およびR9が各々メチ
ルであり、そしてR10がCH2である場合には、R1は水素、ハロゲン、C1〜C12のカル
ボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C2〜C12のエステル
、C2〜C12の第二級アミド、(C1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、メチル−アセチルエーテル以外の(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C2〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアリールから選択され、
2およびR9は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニ
ル、C1〜C12のアルコール、C1〜C12のアシルおよびC5〜C12のアリールから選択さ
れ、
3〜R5、R7、R8およびR11〜R13は各々別々に、水素、ハロゲン、C1〜C12のア
ルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニ
ル、C2〜C12のアルキニルおよびC5〜C12のアリールから選択され、
6は、水素、ハロゲン、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC2〜C12のアルキニルから選択され、
10は、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C12のアルコールおよびC5〜C12のアリールから選択され、
14およびR15は別々に、水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6
置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C1〜C6のアルコールおよびC5〜C6のアリールから選択される)
を有する化合物であって、前記化合物のプロドラッグエステルおよびそれらの酸付加塩を含む化合物。
【請求項2】
1が、水素、ハロゲン、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化アシル、C1〜C12のアシル残基、C2〜C12のエステル、C2〜C12の第二級アミド、(C1〜C12
(C1〜C12)の第三級アミド、C2〜C12のアルコール、メチル−アセチルエーテル以外の(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C2〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アル
キル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5〜C12のアリール
から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
1が、水素、ハロゲン、COOH、C1〜C12のカルボン酸、C1〜C12のハロゲン化
アシル、C1〜C12のアシル残基、C1〜C12のエステル、C1〜C12の第二級アミド、(
1〜C12)(C1〜C12)の第三級アミド、C1〜C12のアルコール、(C1〜C12)(C1〜C12)のエーテル、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5〜C12のアリールから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項4】
1がC1〜C12のエステルおよびC1〜C12のアシル残基から成る群から選択される請
求項1記載の化合物。
【請求項5】
1がC2〜C6のエステルから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項6】
1が第二級アミドおよび第三級アミドから成る群から選択される請求項1記載の化合
物。
【請求項7】
1がケトンである請求項1記載の化合物。
【請求項8】
10がC1〜C6のアルキル基およびC2〜C6のアルケニル基から成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項9】
3〜R5、R7、R8、R11〜R15が各々水素である請求項1記載の化合物。
【請求項10】
3〜R5、R7、R8、R11〜R15が各々水素であり、R2、R6およびR9が各々メチル
であり、そしてR10がCH2である請求項9記載の化合物。
【請求項11】
15が水素であり、そしてR14が水素、ハロゲン、CH2、C1〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、C2〜C6のア
ルコール、およびC5〜C6のアリールから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項12】
15が水素であり、そしてR14が水素、ハロゲン、C2〜C6のアルコール、C2〜C6のアルキル、C1〜C6の置換アルキル、C2〜C6のアルケニル、C2〜C6の置換アルケニル、およびC5〜C6のアリールから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物を含有する、炎症、結核性胸膜炎、リウマチ様胸膜炎、癌、心臓血管性疾患、皮膚発赤、糖尿病、移植片拒絶、中耳炎(内耳感染)、副鼻腔炎およびウイルス感染から成る群から選択される疾患症状の治療剤。
【請求項14】
2つまたはそれ以上の環を有するジエンをジエノフィル化合物と反応させて3つまたはそれ以上の環を有する合成化合物を生成するディールス−アルダー反応を実施する過程と、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物を生成する過程と
を包含する請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物の合成方法。
【請求項15】
1とR2が同時にメチルではない請求項1記載の化合物。
【請求項16】
1とR2が同一でない請求項1記載の化合物。
【請求項17】
2が水素、ハロゲン、C2〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アルキル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニル、C2〜C12のアルキニル、C1〜C12のアルコ
ール、C1〜C12のアシルおよびC5〜C12のアリールから選択される請求項1記載の化合物。
【請求項18】
1がC1〜C12のカルボン酸である請求項1記載の化合物。
【請求項19】
1またはR2がC1〜C12のアシル残基、C1〜C12のアルキル、C1〜C12の置換アル
キル、C2〜C12のアルケニル、C2〜C12の置換アルケニルおよびC5〜C12のアリール
から成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項20】
実質的に明細書本文に記載された化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−211162(P2012−211162A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137825(P2012−137825)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2000−621320(P2000−621320)の分割
【原出願日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【出願人】(501443342)ネレアス ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド (1)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】