説明

新規エステル交換反応触媒及びその調製のための方法

本発明は、一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する新規エステル交換反応触媒を提供する。上記触媒は、アルコールとの反応に関するグリセリド、脂肪酸エステル及び環状カーボネートの効率的エステル交換反応のために有益である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規エステル交換反応触媒及びそれの調製のための方法に関する。本発明は、これら触媒を使用するエステル交換反応方法にも関する。さらに特別には、本発明は、一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する固体双金属シアン化物エステル交換反応触媒に関する。
【0002】
発明の背景
エステル交換反応は、(i)メチルメタクリレートからより高度のアクリル樹脂の製造(樹脂及び塗料用)、(ii)(ポリエステル製造における)ジメチルテレフタレート(DMT)とエチレングリコールからのポリエチレンテレフタレート(PET)、(iii)ラクトンと大環状物を導く分子内エステル交換反応、(iv)植物油からのアルコキシエステル(バイオジーゼル)及び(v)エチレンカーボネートとメタノールからのジメチルカーボネート(アルキル化剤、オクタン価向上剤及びポリカーボネート前駆体)とエチレングリコール(U.Schuchardt et al.,J,Braz.Chem.Soc.9(1998)199)の共合成のような幾つかの工業的プロセスに重要な工程である。酸と塩基は、エステル交換反応速度を加速することが知られている(J.Otera Chem.Rev.93(1993)1449)。鉱酸と塩基以外でも、金属アルコキシド(アルミニウムイソプロポキシド、テトラアルコキシチタン、(RO)Cu(PPh、PdMe(OCHCFPh(dpe))、有機錫アルコキシド等)、非イオン性塩基(アミン、ジメチルアミノピリジン、グアニジン等)及びリパーゼ酵素もこれら交換反応を触媒する(J. Otera Chem.Rev.93(1993)1449)。
【0003】
アルカリ金属アルコキシド(メタノリシスのためのCHONa)は、低モル濃度(0.5モル%)で適用されたとしても、短時間(30分間)の反応でアルコールとトリグリセリドのエステル交換反応で脂肪酸アルキルエステルの非常にい高収率(>98%)を与えることから、最も活性な触媒である(J.Food Composition and Analysis Year 2000,Vol.13,page 337-343)。しかしながら、それらは、高品質の油と水の不在を必要とし、それらを典型的な工業的プロセスに対して不適当にする(J.Braz.Chem.Soc.Vol.9,No1,Year 1998,pages199-210)。アルカリ金属水酸化物(NaOH及びKOH)は、金属アルコキシドより安価であるが、触媒濃度を増加させる(1−2モル%)ことを必要とする。KOHと他のアルカリ金属水酸化物は、バイオジーゼルよりも多い鹸化生成物をもたらすことから、NaOHは、KOHより優れている。最近、リパーゼを使用する酵素エステル交換反応が、副産物として生成されるグルセロールが簡単に回収することができ、脂肪酸エステルの精製が簡単に行えることから、トリグリセリドのエステル交換反応のためにより魅力的になってきた(J.Mol.Catal.B:Enzymatic Vol.17,Year 2002,pages133-142)
ひまわり油及び大豆油からの脂肪酸メチルエステルの合成における固定化リパーゼの使用が、SoumananouとBornscheuerとWtanabe等により報告された(Enzy.Microbiol.Tech.Vol.33,Year2003,page 97;J.Mol.Catal.B:Enzymatic Vol.17,Year202,page151-155)。かれらは、固定化酵素が、活性の有意な損失もなく、5バッチ操業の間120時間少なくとも活性であることを見出した。調査された種々のリパーゼの中でも、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens Amano AK)からの酵素が、最高の油の変換を示した。KhareとNakajimaも、固定化リパーゼ酵素の使用を報告した(Food Chem.Vol.68,Year 2000,page 153-157)。
【0004】
米国特許第5713965号は、ムコール ミーヘイ(Mucor miehei)或いはカンジダ アンタルチカ(Candida Antartica)由来のリパーゼ触媒を使用して、アルカン、アレーン、塩素化溶媒或いは石油エーテルのような有機溶媒の存在下、短鎖アルコールとのトリグリセリドのエステル交換反応による、バイオジーゼル、潤滑剤及び燃料並びに潤滑剤用添加剤の製造を記載している。特許番号WO 00/05327A1、WO 02/28811 A1、WO 2004/148311 A1、Wo 2005/021697 A1及びWO 2005/016560 A1並びに米国特許第5578090号、6855838号、6822105号、6768015号、6712867号、6642399号、6399800号、6398707号、6015440号も、リパーゼ触媒か金属イオン触媒の何れかを使用する脂肪酸アルキルエステルの製造を教示している。WO 2004/085583 A1は、大体通常の圧力での短時間で超強酸特性を有する固体酸触媒の存在下メタノールとエタノールによる脂肪のエステル交換反応を記載している。
【0005】
固体触媒による均一系触媒の置き換えは、処理費用を無くす。反応の最後に、固体触媒は生成物混合物から簡単なろ過により回収され再使用することができる。Leclercq等(J.Am.Oil.Chem.Soc.Vol.78,Year 2001,page 1161)は、Cs交換NaX及び商用ハイドロタルサイト(KW2200)触媒の存在下、ナタネ油のエステル交換反応を研究した。275という高いメタノール対油比で、メタノール還流下22時間の反応時間で、Cs交換NaXは、70%の変換を与えたが、一方ハイドロタルサイトによっては34%の変換が得られた。ETS-4とETS-10触媒は、夫々220℃で1.5時間の反応時間で、85.7%及び52.7%の変換を与えた(米国特許第5508457号)。Suppes等(J.Am.Oil.Chem.Soc.Vol.78,Year 2001,page 139)は、触媒として炭酸カルシウム石を使用して、240℃で78%及び160℃で>95%の変換を達成した。最近、Suppes等はメタノールとの大豆油のエステル交換反応において、NaO及びソジウムアジドで封入されたNa、K及びCs交換ゼオライトX、ETS-10、NaXの使用を報告した(Appl.Catal.A:Gen.Vol.257,Year 2004,page213)。Furyta等(Catal,Commun.Vol.5,Year 2004,page 721-723)は、硫酸錫とジルコン酸の固体超酸触媒を使用して200−300℃でメタノールによる大豆油のエステル交換反応を述べている。植物油のアルコール分解のためのイオン性液体での固定化錫錯体の使用が、Abreu等により報告された(J.Mol.Catal.a:Chem.Vol.227,Year 2005,page 263-267; J.Mol.Catal.a:Chem.Vol.209,Year 2004,page 29-33)。Kim等は、植物油のメタノリシスのための不均一系塩基触媒(Na/NaOH/Al)の使用を報告した。エステル交換反応のためのより効率的で再使用可能な固体触媒が非常に望まれている。
【0006】
本発明は、先行技術のプロセスの欠点を解消するものである。本発明は、ZnCl水溶液、KFe(CN)水溶液及び3級ブタノールに溶解したトリ-ブロックコポリマー ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)を周囲条件下で反応し、固体触媒を分離し、乾燥すること含むエステル交換触媒の調製を扱う。シアノ架橋により連結する活性部位でのZnとFeの共存が、エステル交換反応を効率的にする。触媒は、遠心或いは単純ろ過により簡単に分離され再使用することができる。先行技術の触媒とは異なり、本発明の触媒は、反応混合物への金属イオンの浸出がないことが観察された。最も重要なことは、触媒は高度に効率的で、穏やかな条件で反応を実行するために、ほんの少しの量(油の1%)が必要とされるだけである。
【0007】
発明の目的
本発明の主な目的は、エステル交換反応のための効率的で再使用可能である不均一系触媒を提供することである。
【0008】
他の目的は、エステル交換反応のための効率的で再使用可能である不均一系触媒の調製方法を提供することである。
【0009】
発明の概要
本発明を導く研究において、双金属シアン化物触媒は、高度に効率的で、更なる再使用のために生成物から簡単に分離できることが見出された。先行技術の触媒、鉱酸、アルカリ塩基及びリパーゼは、触媒分離のための追加的費用が必要となる。簡単に分離できる触媒、例えば本発明の触媒は、有利なものであり、経済的で生態学的にやさしいプロセスを導くことができる。したがって、本発明の固体触媒は、効率的なだけではなく、殆どの先行技術の触媒に特徴的な触媒回収の冗長なプロセスを回避する。
【0010】
したがって、本発明は、一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する新規エステル交換反応触媒を提供する。
【0011】
本発明の具体例では、触媒は、シアニド基により架橋されたZn2+及びFe2+イオンを含む。
【0012】
更に別の具体例では、触媒は、以下の特性を有する。
【0013】
合計表面積(SBET) 35―40m/g
外部表面積(SEXTN) 22-25m/g
ミクロ孔面積 14―18m/g
平均孔径 3-5nm
全孔体積 0.03―0.04cc/g
C含有% 23―25
H含有% 2.2―2.9
N含有% 17―18
形態学(SEM) 球状粒子
更に他の具体例では、得られたエステル交換反応触媒は、アルコールとの反応に関するグリセリド、脂肪酸エステル環状カーボネートの効率的エステル交換反応のために有益である。
【0014】
更に別の具体例では、触媒は、活性の有意な損失なく、いくつかのリサイクルエステル交換反応実験に再利用可能である。
【0015】
本発明は、更に、以下の工程を含む、一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する新規エステル交換反応触媒の調製方法を提供する。
【0016】
a)ZnClを水と3級ブタノールの混合物中に溶解する工程、
b)工程(a)で得られた前記溶液を、KFe(CN)水溶液に、撹拌しながら添加する工程、
c)工程(b)で得られた前記結果混合物に、3級ブタノールと水の混合物中に溶解したトリ-ブロックコポリマー ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)を25-70℃の範囲の温度で撹拌しながら添加する工程、
d)固形生成物を得るために、工程(c)で得られた前記反応混合物をろ過し、引き続き蒸留水で洗浄し、20-50℃の範囲の温度で乾燥する工程、
e)所望のエステル交換反応触媒を得るために、150-200℃の範囲の温度で、上記乾燥固形生成物を活性化する工程。
【0017】
更に別の具体例では、触媒は、シアニド基により架橋されたZn2+及びFe2+イオンを含む。
【0018】
更に別の具体例では、工程(a)において、使用される水中の3級ブタノール濃度は、20-30%(v/v)の範囲である。
【0019】
更に別の具体例では、工程(c)において、使用される水と3級ブタノールの混合物中の、トリ-ブロックコポリマー ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)の濃度は、30-40%(V/V)の範囲である。
【0020】
更に別の具体例では、工程(c)において、使用される混合溶媒混合物中の水に対する3級ブタノールの比は、20:1〜30:1(v/v)の範囲である。
【0021】
更に別の具体例では、得られた触媒は、アルコールに関する反応でのグリセリド、脂肪酸エステル及び環状カーボネートの効率的エステル交換反応のために有益である。
【0022】
更に別の具体例では、得られた触媒は、活性の有意な損失なく、いくつかのリサイクルエステル交換反応実験に再利用可能である。
【0023】
本発明は、以下に例により説明されるが、それは単なる例示であり、如何なる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
例1
この例は、本発明のFe-Zn双金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製では、K[Fe(CN)](0.01モル)が、2度蒸留された水(40ml)中に溶解された(溶液-1)。ZnCl(0.1モル)が、蒸留水(100ml)と3級ブタノール(20ml)の混合物中に溶解された(溶液-2)。ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)(15g)が、2mlの蒸留水と40mlの3級ブタノールの混合物中に溶解された(溶液-3)。溶液2が、溶液1に激しく撹拌されながら50℃で60分間かけて添加された。添加中に白色の沈殿物が生じた。次いで、溶液3が、前記混合物に5分間かけて添加され、撹拌が更に1時間続けられた。生成した固形物はろ過され、蒸留水(500ml)で洗浄され、25℃で乾燥された。この材料は、反応に使用するに先立って、180-200℃で4時間活性化された。
【0025】
例2
この例は、本発明のFe-Zn双金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製では、K[Fe(CN)](0.01モル)が、2度蒸留された水(40ml)中に溶解された(溶液-1)。ZnCl(0.1モル)が、蒸留水(100ml)と3級ブタノール(20ml)の混合物中に溶解された(溶液-2)。ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)(15g)が、2mlの蒸留水と40mlの3級ブタノールの混合物中に溶解された(溶液-3)。溶液2が、溶液1に激しく撹拌されながら70℃で60分間かけて添加された。添加中に白色の沈殿物が生じた。次いで、溶液3が、前記混合物に5分間かけて添加され、撹拌が更に1時間続けられた。生成した固形物はろ過され、蒸留水(500ml)で洗浄され、100℃で乾燥された。この材料は、反応に使用するに先立って、180-200℃で4時間活性化された。
【0026】
例3
この例は、本発明のFe-Zn双金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製では、K[Fe(CN)](0.01モル)が、2度蒸留された水(40ml)中に溶解された(溶液-1)。ZnCl(0.1モル)が、蒸留水(100ml)と3級ブタノール(20ml)の混合物中に溶解された(溶液-2)。ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)(15g)が、2mlの蒸留水と40mlの3級ブタノールの混合物中に溶解された(溶液-3)。溶液2が、溶液1に激しく撹拌されながら50℃で60分間かけて添加された。添加中に白色の沈殿物が生じた。次いで、溶液3が、前記混合物に5分間かけて添加され、撹拌が更に1時間続けられた。生成した固形物はろ過され、蒸留水(500ml)で洗浄され、25℃で乾燥された。この材料は、反応に使用するに先立って、180-200℃で4時間活性化された。
【0027】
例4
この例は、本発明のFe-Co双金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製では、K[Co(CN)](0.01モル)が、2度蒸留された水(40ml)中に溶解された(溶液-1)。ZnCl(0.01モル)が、蒸留水(100ml)と3級ブタノール(20ml)の混合物中に溶解された(溶液-2)。ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)(15g)が、2mlの蒸留水と40mlの3級ブタノールの混合物中に溶解された(溶液-3)。溶液2が、溶液1に激しく撹拌されながら50℃で60分間かけて添加された。添加中に白色の沈殿物が生じた。次いで、溶液3が、前記混合物に5分間かけて添加され、撹拌が更に1時間続けられた。生成した固形物はろ過され、蒸留水(500ml)で洗浄され、25℃で乾燥された。この材料は、反応に使用するに先立って、180-200℃で4時間活性化された。
【0028】
例5
この例は、本発明のFe-Co双金属シアン化物触媒の調製を示す。典型的な触媒調製では、K[Co(CN)](0.01モル)が、2度蒸留された水(40ml)中に溶解された(溶液-1)。ZnCl(0.1モル)が、蒸留水(100ml)と3級ブタノール(20ml)の混合物中に溶解された(溶液-2)。ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)(15g)が、2mlの蒸留水と40mlの3級ブタノールの混合物中に溶解された(溶液-3)。溶液2が、溶液1に激しく撹拌されながら50℃で60分間かけて添加された。添加中に白色の沈殿物が生じた。次いで、溶液3が、前記混合物に5分間かけて添加され、撹拌が更に1時間続けられた。生成した固形物はろ過され、蒸留水(500ml)で洗浄され、25℃で乾燥された。この材料は、反応に使用するに先立って、180-200℃で4時間活性化された。
【0029】
例6
この例は、エステル交換触媒双金属シアン化物Fe-Znを使用する、メタノールとのココナツ油のエステル交換反応による脂肪酸メチルエステルの調製を記載する。典型的反応では、商用のココナツ油(5g)、メタノール(油:メタノールモル比=1:6)及び双金属シアン化物触媒(50mg、油の1重量%)が、テフロン(登録商標)ライナーを有する100mlのステンレス鋼製オートクレーブ中に装填された。オートクレーブは閉止され、回転合成反応器(Hiro co.,Japan,Mode-KH 02回転速度=30rpm)に置かれ、反応は自発(autogeneous)圧力で、170℃4時間実行された。次いで25℃まで冷却しおかれた。
【0030】
最初に、触媒は、反応混合物から遠心/ろ過により分離された。次いで、真空蒸留により、反応混合物中の未反応アルコールが除去された。ペット エーテル(60ml)とメタノール(20ml)が、反応混合物から副産物であるグリセロールを分離するために添加された。副産物であるグリセロールを含むメタノール層が分離された。グリセロール分離プロセスは、2-3度繰り返された。グリセロールが、真空下メタノールを蒸留することにより単離された。最後にエーテル部分がエステル化生成物を得るために蒸留された。エステル化生成物部分(100mg)が、ガスクロマトグラフによる分析のためにジクロロメタン(1g)で希釈された。生成物は、GC-MSにより同定された。
【0031】
例7
この例は、本発明のエステル交換触媒を使用する、メタノールとのヒマワリ油のエステル交換反応による脂肪酸メチルエステルの調製を示す。典型的反応では、商用のヒマワリ油(5g)、メタノール(油:メタノールモル比=1:6)及び双金属シアン化物Fe-Zn触媒(50mg、油の1重量%)が、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼製オートクレーブ中に装填された。オートクレーブは閉止され、回転合成反応器(Hiro co.,Japan,Mode-KH 02回転速度=30rpm)に置かれ、反応は自発圧力で、170℃4時間実行された。次いで25℃まで冷却しおかれた。生成物は、蒸留により単離され、ガスクロマトグラフにより分析された。
【0032】
例8
この例は、本発明のエステル交換触媒を使用する、メタノールとの大豆油のエステル交換反応による脂肪酸メチルエステルの調製を記載する。典型的反応では、大豆油(5g)、メタノール(油:メタノールモル比=1:6)及び双金属シアン化物Fe-Zn触媒(50mg、油の1重量%)が、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼製オートクレーブ中に装填された。オートクレーブは閉止され、回転合成反応器(Hiro Co.,Japan,Mode-KH 02回転速度=30rpm)に置かれ、反応は自発圧力で、170℃4時間実行された。次いで25℃まで冷却しおかれた。生成物は、蒸留により単離され、ガスクロマトグラフにより分析された。
【0033】
例9
この例は、本発明のエステル交換触媒を使用する、n-オクタノールとのマーガリン油のエステル交換反応による脂肪酸メチルエステルの調製を記載する。典型的反応では、マーガリン油(5g)、n-オクタノール(油:アルコールモル比=1:6)及び双金属シアン化物Fe-Zn触媒(50mg、油の1重量%)が、テフロンライナーを有する100mlのステンレス鋼製オートクレーブ中に装填された。オートクレーブは、次いで回転合成反応器(Hiro Co.,Japan,Mode-KH 02回転速度=30rpm)に置かれ、反応は、170℃4時間実行された。次いで25℃まで冷却しおかれた。生成物は、蒸留により単離され、ガスクロマトグラフにより分析された。
【0034】
例10
この例は、本発明のエステル交換触媒を使用する、メタノールとのポリプロピレンカーボネートのエステル交換反応によるジエチルカーボネートの調製を示す。典型的エステル交換反応では、ポリプロピレンカーボネート(1.02g、10ミリモル)、メタノール(100ml)及び触媒(250mg)が、100mlの熱水反応器中に装填された。反応は、170℃で8時間実行された。内容物は室温まで冷却しおかれた。触媒は、反応混合物からろ過により分離された。次いで、アルコールが、蒸留により反応混合物から分離された。生成物は、カラムクロマトグラフ(ペット エーテル:ジクロロメタン=1:1その後ジクロロメタン:メタノール=95:5を使用)により単離された。生成物は、ガスクロマトグラフによっても分析され、H NMR、FT-IR及びGCMSにより同定された。
【0035】
例11
この例は、本発明のエステル交換触媒を使用する、エタノールとのポリプロピレンカーボネートのエステル交換反応によるジエチルカーボネートの調製を示す。典型的エステル交換反応では、ポリプロピレンカーボネート(1.02g、10ミリモル)、エタノール(100ml)及び触媒(250mg)が、100mlの熱水反応器中に装填された。反応は、170℃で8時間実行された。内容物は室温まで冷却しおかれた。触媒は、ろ過により反応混合物から分離された。次いで、アルコールが、蒸留により反応混合物から分離された。生成物は、カラムクロマトグラフ(ペット エーテル:ジクロロメタン=1:1その後ジクロロメタン:メタノール=95:5を使用)により単離された。生成物は、ガスクロマトグラフによっても分析され、H NMR、FT-IR及びGCMSにより同定された。
【0036】
例12
この例は、メタノールとのポリプロピレンカーボネートのエステル交換反応によるジエチルカーボネートの調製のための3回のリサイクル実験における本発明のエステル交換触媒の再使用可能性を示す。典型的エステル交換反応では、ポリプロピレンカーボネート(1.02g、10ミリモル)、メタノール(100ml)及び3回使用された触媒(250mg)が、100mlの熱水反応器中に装填された。反応は、170℃で8時間実行された。内容物は室温まで冷却しおかれた。触媒は、ろ過により反応混合物から分離された。次いで、アルコールが、蒸留により反応混合物から分離された。生成物は、カラムクロマトグラフ(ペット エーテル:ジクロロメタン=1:1その後ジクロロメタン:メタノール=95:5を使用)により単離された。生成物は、ガスクロマトグラフによっても分析され、H NMR、FT-IR及びGCMSにより同定された。
【0037】
表2は、例6−12で例示された触媒活性の研究結果を挙げている。
【数1】

【0038】
効果
1.上記プロセスは、エステル交換反応の範囲で有効な再使用可能な固体触媒を示す。
【0039】
2.触媒は、穏やかな条件でさえ高活性であり、反応での固体触媒からの金属イオンの浸出は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する新規エステル交換反応触媒。
【請求項2】
シアニド基により架橋されたZn2+及びFe2+イオンを含む、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
以下の特性を有する、請求項1記載の触媒。
合計表面積(SBET) 35―40m/g
外部表面積(SEXTN) 22-25m/g
ミクロ孔面積 14―18m/g
平均孔径 3-5nm
全孔体積 0.03―0.04cc/g
C含有% 23―25
H含有% 2.2―2.9
N含有% 17―18
形態学(SEM) 球状粒子
【請求項4】
アルコールとの反応に関するグリセリド、脂肪酸エステル及び環状カーボネートの効率的エステル交換反応のために有益である、請求項1記載の新規触媒。
【請求項5】
活性の有意な損失なく、いくつかのリサイクルエステル交換反応実験に再利用可能である、請求項1記載の新規触媒。
【請求項6】
以下の工程を含む、一般式
Zn(CN)(ROH).xZnCl.yH
(ここで、Rは、3級ブチルであり、Mは、Fe、Co及びCrから選択される遷移金属イオンであり、xは、0〜0.5であり、yは、3〜5であり、nは、10或いは12である)を有する新規エステル交換反応触媒の調製方法。
a)ZnClを水と3級ブタノールの混合物中に溶解する工程、
b)工程(a)で得られた前記溶液を、KFe(CN)水溶液に、撹拌しながら添加する工程、
c)工程(b)で得られた前記結果混合物に、3級ブタノールと水の混合物中に溶解したトリ-ブロックコポリマー ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(EO20-PO70-EO20、分子量約5800)を25-70℃の範囲の温度で撹拌しながら添加する工程、
d)固形生成物を得るために、工程(c)で得られた前記反応混合物をろ過し、引き続き蒸留水で洗浄し、20-50℃でそれを乾燥する工程、
e)所望のエステル交換反応触媒を得るために、150-200℃の範囲の温度で、上記乾燥固形生成物を活性化する工程。
【請求項7】
触媒が、シアニド基により架橋されたZn2+及びFe2+イオンを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(a)において、使用される水中の3級ブタノール濃度は、20-30%(V/V)の範囲である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
工程(c)において、使用される水と3級ブタノールの混合物中の、トリ-ブロックコポリマー ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)の濃度は、30-40%(V/V)の範囲である、請求項6記載の方法。
【請求項10】
工程(c)において、使用される混合溶媒混合物中の水に対する3級ブタノールの比は、20:1〜30:1(V/V)の範囲である、請求項6記載の方法。
【請求項11】
得られた触媒が、アルコールとの反応に関するグリセリド、脂肪酸エステル及び環状カーボネートの効率的エステル交換反応のために有益である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
得られた触媒が、活性の有意な損失なく、いくつかのリサイクルエステル交換反応実験に再利用可能である、請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2009−511260(P2009−511260A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535194(P2008−535194)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/IN2006/000393
【国際公開番号】WO2007/043062
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【Fターム(参考)】