説明

新規エポキシ樹脂及びその製造方法、該エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂を必須成分とする硬化物

【課題】耐熱性等に優れた新規エポキシ樹脂の提供。
【解決手段】一般式(1)の新規エポキシ樹脂及びその製法、組成物及び硬化物。


式中、E1、E3は例えば、一般式(3)、E2は例えば、一般式(9)であり、A1,A2は酸無水物残基で炭化水素を示し、P、N、O原子含有可、nは自然数を示す。




(Rは炭化水素を示し、P、N、O原子を含んでも良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物に関し、本発明の新規エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物は塗料、接着剤、光造形、封止材、注型材、電気電子回路材料、光回路材料等に有用である。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品など広範囲に使用されている。近年更なる耐熱性の向上要求とともに、柔軟性や強靭性を併せ持つ材料の要求が高くなっている。
【0003】
一般的に耐熱性の高いエポキシ樹脂は1分子中に2.1個以上のエポキシ基を持った、いわゆる多官能型エポキシ樹脂がある。代表的な多官能エポキシ樹脂としてはYDPN−638(東都化成株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、YDCN−700(東都化成株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)等がある。しかし、これら多官能エポキシ樹脂は硬化後の架橋密度が高くなり耐熱性は得られるものの柔軟性は低下してしまう。
特許文献1には、プリント回路板において使用する感光画像形成性カチオン重合性組成物であって、多官能性エポキシ樹脂であるビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂及び、可塑剤としての役割を果す反応性希釈剤の混合物と、カチオン性光開始剤とからなる組成物を開示しているが、耐熱性は高いものの柔軟性は十分であるといえない問題があった。
【特許文献1】特開平62−102242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、新規エポキシ樹脂を鋭意検討し、下記一般式(1)で示される特定の構造を有する新規エポキシ樹脂が耐熱性と柔軟性の物性を両立出来ることを見いだし、本発明を完成したもので、耐熱性と柔軟性の物性を両立するという問題を解決しうるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、一般式(1)で示される新規なエポキシ樹脂を用いることにより解決することができる。即ち本願発明の要旨は一般式1で示される新規なエポキシ樹脂である。
【0006】
【化1】

【0007】
式中、E1、E3は一般式(2)〜一般式(7)を示し、E2は一般式(8)〜一般式(11)を示すが、一般式(3)がE1,E3の少なくとも1つであるか、E2の少なくとも1つが一般式(9)である。A1,A2は酸無水物残基であり炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い。nは0,1,2,3・・・・の整数を示す。
【0008】
【化2】

【0009】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0010】
【化3】

【0011】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0012】
【化4】

【0013】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0014】
【化5】

【0015】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0016】
【化6】

【0017】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0018】
【化7】

【0019】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0020】
【化8】

【0021】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0022】
【化9】

【0023】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0024】
【化10】

【0025】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【0026】
【化11】

【0027】
式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る新規なエポキシ樹脂は、特定の骨格を導入することにより耐熱性を向上することが出来、硬化物の柔軟性も併せ持つことが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明における新規エポキシ樹脂は一般式(1)で示されるものであり、式中のE1、E3は一般式(2)〜一般式(7)を示し、E2は一般式(8)〜一般式(11)を示すが、一般式(3)がE1,E3の少なくとも1つであるか、E2の少なくとも1つが一般式(9)である。
【0030】
本発明の新規エポキシ樹脂を製造する一つの方法として、1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物のカルボキシル基をすべてエポキシ樹脂と反応する方法がある。
【0031】
1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物と反応するエポキシ樹脂類は公知のエポキシ樹脂が使用でき、具体的には東都化成株式会社製のエポトートYD−128、エポトートYD−8125、エポトートYD−127、エポトートYD−825GS、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−901、エポトートYD−902、エポトートYD−903などのBPA型エポキシ樹脂、エポトートYDF−170、エポトートYDF−8170、エポトートYDF870GS、エポトートYDF−2001、エポトートYDF−2004などのBPF型エポキシ樹脂、ZX−1355、ZX−1711などのナフタレンジオール型エポキシ樹脂、エポトートYD−171、エポトートYD−172などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エポトートPG−207、エポトートPG−207GSなどの脂肪族エポキシ樹脂、エポトートST−3000、エポトートZX−1658、エポトートZX−1658GS、エポトートZX−1715、FX−318、丸善石油化学株式会社製のHBPA−DGE、DCPD−EP、MCPD−EP、TCPD−EP、CDA−EP、TD−EL、ジャパンエポキシレジン株式会社製YX8000、YX8034、ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド3000、水添ダイマー酸ジオールのエポキシ樹脂などの脂環エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0032】
反応はカルボキシル基1.0モルに対してエポキシ基が1.1モル以上、より好ましくは2.0モル以上、更に好ましくは3.0モル以上となるように配合して反応する。
【0033】
1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物とエポキシ樹脂類の反応は公知の合成方法で行うことが出来る。すなわち1分子中にエポキシ基を1個持ち且つカルボキシル基を1個持つ化合物と、エポキシ樹脂類を配合し加熱することによって反応することができる。必要に応じて不活性溶媒や触媒等を使用しても良い。反応温度は50℃から200℃であり、より好ましくは80℃から180℃である。反応はカルボキシル基の消失を機器分析によって確認するか、化学分析により酸価を測定し、カルボキシル基の消失を確認することによって終点を決定できる。反応時間は1時間から10時間である。
【0034】
使用可能な不活性溶媒としては水酸基を持たない溶媒が好ましく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0035】
使用可能な触媒としては2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムイオダイドなどのホスホニウム塩類などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0036】
1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物は、1分子中に水酸基を1個持ち、且つエポキシ基を1個持つ化合物と酸無水物類を含むカルボン酸類を反応することによっても得られるが、これらに限定されるものではなく1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持っている化合物であれば限定されない。
【0037】
反応に際しては水酸基1当量に対して、酸無水物当量1当量以下になるように反応をすることで、1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物を得ることが出来る。水酸基1当量に対して酸無水物当量1当量より大きい場合は酸無水物が残存するため、エポキシ樹脂類との反応の際にゲル化の可能性がある。水酸基1当量に対して酸無水物当量が1当量かそれより小さく0.5当量までが好ましい。水酸基当量と酸無水物当量を調整することで、水酸基を任意に調整することが出来る。
【0038】
1分子中にエポキシ基を1個、水酸基を1個持つ化合物としてはCDA−EP、TD−EL(丸善石油化株式会社製)やZX−1658B(東都化成株式会社製 シクロヘキサンジメタノールのモノエポキシ化物)、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールなどがある。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、へプタンジオール、オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール等の2価アルコールの一方のアルコール基をエポキシ化することによって得られる化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0039】
酸無水物類としてはイタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、2―カルボキシ―エチル―メチル―ホスフィン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタル酸無水物、特開平6−80765に記載の酸無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0040】
1分子中にエポキシ基を1個、水酸基を1個持つ化合物と酸無水物類を含むカルボン酸類の反応は、所定量の各化合物を仕込み加熱することによって反応が進行する。この際、必要に応じて不活性な溶媒や触媒等を使用しても良い。反応温度は50℃から180℃であり、より好ましくは80℃から150℃である。反応は酸無水物の消失を機器分析によって確認するか、化学分析により酸価を測定し、カルボキシル基の消失を確認することによって終点を決定できる。反応時間は1時間から10時間である。
【0041】
反応の際に使用できる不活性溶媒としては反応生成物が溶解することが必要であるが、非極性溶媒が好ましくベンゼン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0042】
1分子中にカルボキシル基を2個以上持つ化合物に、1分子中に水酸基を1個持ち且つエポキシ基を2個持つエポキシ樹脂類を反応することによっても1分子内に水酸基を1個以上持ち、且つエポキシ基を1個以上持つエポキシ樹脂を合成することが出来る。但し、カルボキシル基1個に対してエポキシ基2個の比率で反応する。
【0043】
1分子中にカルボキシル基を2個以上持つ化合物としてはシュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、セバシン酸、イタコン酸、シトラコン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、1分子中に水酸基を2個以上持つアルコール類と酸無水物類を含むカルボン酸類を反応することによって1分子中にカルボキシル基を2個以上持つ化合物を合成しても良い。また、その際に水酸基が残存していても良い。
【0044】
1分子中に水酸基を1個持つエポキシ樹脂は、水酸基を2個以上もつ化合物をエポキシ化する際に使用するアルカリ量や触媒量、反応温度や反応時間を調整することで合成することができる。
【0045】
1分子中にカルボキシル基を2個以上持つ化合物と、1分子中に水酸基を1個持ち且つエポキシ基を1個持つエポキシ樹脂類は公知の方法によって反応することが出来る。すなわち、所定量配合し、加熱することによって反応することができる。必要に応じて不活性溶媒や触媒等を使用しても良い。反応温度は50℃から200℃であり、より好ましくは80℃から180℃である。反応はカルボキシル基の消失を機器分析によって確認するか、化学分析により酸価を確認することによって終点を決定できる。反応時間は1時間から10時間である。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は本発明の新規エポキシ樹脂及び又はその他のエポキシ樹脂を配合することも出来る。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤はアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。また、光重合開始剤も挙げられる。光重合開始剤の具体例はルイス酸、ブレンステッド酸、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩などの各種オニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩が好ましく、スルホニウム塩のなかでも、芳香族スルホニウム塩がより好ましい。具体的にはサンエイドSI−60L,サンエイドSI−80L,サンエイドSI−100L(三新化学工業株式会社)、アデカオプトマーSP−150,アデカオプトマーSP−170(旭電化工業株式会社製)、CI−5102(日本曹達株式会社製)、サイラキュアUVI−6976,サイラキュアUVI−6992(ダウケミカル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく2種類以上混合して使用しても良い。
【0048】
上記光重合開始剤の配合量は、光照射条件、エポキシ樹脂の種類や量、光重合開始剤の種類、硬化物の厚さや形状等によって異なるが、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01重量部から10重量部である。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物は光重合開始剤以外に増感剤、老化防止剤、安定剤、可塑剤、ワックス、レベリング剤、充填剤、顔料、染料、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、防かび剤、粘度調整剤、溶剤等を配合しても良い。また、本発明の新規エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を本発明の効果を損なわない範囲において配合することも可能である。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は本発明のエポキシ樹脂組成物を光照射及びまたは加熱することによって得られる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させるときに照射する光としては、上記光重合開始剤により硬化できるものであれば、特に限定されず、光重合開始剤の種類に応じて任意の光を用いることができる。
【0051】
上記光として紫外線を用いる場合、光源としては、特に限定されず、例えば、蛍光ランプ、高圧水銀灯等の紫外線照射源として一般的なものを用いることができる。更に、光源として、例えば、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、殺菌灯、レーザー光、LED光等を使用してもよい。
【0052】
上記光の照度、照射量、照射時間は、光重合開始剤の種類・量、本発明のエポキシ樹脂骨格、添加剤、厚みなどにより異なるが、硬化物物性により適宜調整することが出来る。
【0053】
光硬化システムで通常行われるように光照射の前後で加熱硬化を行い、更に硬化を進めることも出来る。
【0054】
本発明の新規エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を用いることにより、耐熱性と可撓性を両立することが出来、塗料、接着剤、光造形、封止材、注型材、電気電子回路材料、光回路材料等に有用なエポキシ樹脂組成物、及びエポキシ樹脂硬化物が得られることを見いだしたものである。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
冷却管を設置したセパラブルフラスコにTD−EL(4,7−メタノ−2,3−エポキシオクタヒドロ−1H−インデン−オール 丸善石油化学株式会社製)164.5部とリカシッドMH−700(メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、新日本理化株式会社製)160.2部とトルエン17.0部を仕込み、窒素ガス雰囲気下撹拌しながら加熱昇温した。この時水酸基に対する酸無水物基は0.951であった。130℃で反応を行い酸無水物が無くなるまで反応を行った。この反応により1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物が得られた。続いてセロキサイド2021 300.8部、ZX−1658 374.4部を加えて加熱して均一とした。触媒としてTPP−BB(n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、北興化学工業株式会社製)を0.1部アセトンに溶解して系内に加えた。130℃で反応を行い、酸価が無くなったことを確認して反応終点とした。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は210.4g/eqだった。図1にGPCによる分子量分布を、図2にFTIRの測定結果を示す。
【0057】
実施例2
TD−ELを227.9部、リカシッドMH−700を222.2部、セロキサイド2021を200.7部、ZX−1658を349.1部とし、トルエンは使用しなかった。それ以外は実施例1と同様な操作を行った。水酸基に対する酸無水物基は0.952であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は272.1g/eqだった。
【0058】
実施例3
実施例1記載のセパラブルフラスコにTD−ELを267.1部、リカシッドMH−700を232.8部、セロキサイド2021を299.9部、ZX−1658を200.2部、トルエン26.3部を一括で仕込み、撹拌、昇温して均一にした。反応温度を90℃に保ち、酸無水物が無くなったことを確認するまで、保持した。この反応により1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物が得られた。触媒としてTPP−BBを0.1部アセトンに溶解して系内に加えた。130℃で反応を行い、酸価が無くなったことを確認して反応終点とした。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は313.9g/eqだった。
【0059】
実施例4
TD−ELを267.1部、リカシッドHNA−100(メチルナジック酸無水物、新日本理化株式会社製) 254.8部、セロキサイド2021を250.0部、ZX−1658 228.1部とし、トルエンは使用しなかった。それ以外は実施例1と同様な操作を行った。水酸基に対する酸無水物基は0.850であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は342.1g/eqだった。
【0060】
実施例5
TD−ELを164.0部、リカシッドMH−700を159.9部、セロキサイド2021を309.9部、HBPA−DGE(水添BPA型エポキシ樹脂、丸善石油化学株式会社製)を366.1部、トルエンを36.0部とした以外は実施例3と同様な操作を行った。水酸基に対する酸無水物基は0.799であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は271.6g/eqだった。
【0061】
比較例1
実施例1記載のセパラブルフラスコにペンタエリスリトール(三菱ガス化学株式会社製)43.3部、リカシッドMH−700を170.9部とトルエン37.8部を仕込み、窒素ガス雰囲気下撹拌しながら加熱昇温した。この時水酸基に対する酸無水物基は0.799であった。130℃で反応を行い酸無水物が無くなったことを確認してHBPA−DGEを785.8部加え、加熱して均一とした。触媒としてTPP−BBを0.1部アセトンに溶解して系内に加えた。150℃で反応を行い、酸価が無くなったことを確認して反応終点とした。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は420.8g/eqだった。
【0062】
比較例2
ペンタエリスリトールを48.9部、リカシッドMH−700を138.3部、HBPA−DGEを403.1部、セロキサイド2021を403.1部とした以外は実施例1と同様な操作を行った。この時水酸基に対する酸無水物基は0.572であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は273.5g/eqだった。
【0063】
比較例3
ペンタエリスリトールを38.5部、リカシッドHNA−100を207.6部、ZX−1658を261.2部、セロキサイド2021を492.8部とした以外は実施例1と同様な操作を行った。この時水酸基に対する酸無水物基は0.996であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は252.6g/eqだった。
【0064】
実施例1〜5、比較例1〜3で得られたエポキシ樹脂100部をシクロヘキサノンに溶解し、光重合開始剤としてサイラキュアUVI−6976(ダウケミカル社製)を0.5部配合した。離型フィルムにバーコーターで塗布し、150℃で30分間溶剤を除去し、ウシオ電機(株)製 ユニキュアシステムUVX−01212S1CS01 ランプ型式UVL−1500M2−N1で波長365nmにおける照度が10mW、積算光量8J/cm2で照射した。更に150℃で60分間後硬化を行い、硬化物を得た。
【0065】
硬化物を離型フィルムから剥がし、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6200DSCにてガラス転移温度を測定した。測定条件は室温から200℃まで10℃/分で昇温し、2サイクル目のデーターの最初の変曲点をガラス転移温度とした。表に結果を示す。
【0066】
50μmの硬化物を離型フィルムから剥がし、10mm×50mmの短冊状に切り取り、株式会社島津製作所製EZ−Sにて引っ張り試験を行った。チャック間30mmで引っ張り速度1mm/分で測定を行い、破断した時の伸び率を測定した。
【0067】
赤外吸光スペクトルはパーキンエルマージャパン製1760Xで測定を行った。分子量分布は東ソー株式会社製液体クロマトグラフィーHLC−8120にて測定を行った。
【0068】
【表1】

【0069】
以上、実施例1から3と比較例1〜3との比較により特定の骨格を有する新規エポキシ樹脂は耐熱性、可撓性共に向上することがわかる。比較例1の様にフィルム伸び率が高いエポキシ樹脂はガラス転移温度が低く、比較例3の様にガラス転移温度が高いとフィルム伸び率が低いが、実施例1〜5に示す様に本発明のエポキシ樹脂はガラス転移温度が高くフィルム伸び率も高い硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1で得られたエボキシ樹脂のGPCによる分子量分布を示す。
【図2】実施例1で得られたエボキシ樹脂のFTIRの測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される新規エポキシ樹脂。
【化1】

式中、E1、E3は一般式(2)〜一般式(7)を示し、E2は一般式(8)〜一般式(11)を示すが、一般式(3)がE1,E3の少なくとも1つであるか、E2の少なくとも1つが一般式(9)である。A1,A2は酸無水物残基であり炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い。nは0,1,2,3・・・・の整数を示す。
【化2】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化3】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化4】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化5】


式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化6】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化7】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化8】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化9】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化10】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い
【化11】

式中、Rは直鎖状、分岐状、環状、複素環状、芳香族などの炭化水素を示し、リン、窒素、酸素原子を含んでも良い。
【請求項2】
1分子中にエポキシ基を1個持ち、且つカルボキシル基を1個持つ化合物に、エポキシ樹脂類を反応して得られる請求項1記載の新規エポキシ樹脂。
【請求項3】
1分子中に水酸基を1個持ち、且つエポキシ基を1個持つ化合物と酸無水物類を含むカルボン酸類とエポキシ樹脂類を反応することによって得られる請求項1記載の新規エポキシ樹脂
【請求項4】
1分子中にカルボキシル基を2個持つ化合物又は酸無水物と1分子中に水酸基を1個持ち且つエポキシ基を1個持つ化合物とエポキシ樹脂類とを反応することによって得られる請求項1記載の新規エポキシ樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のエポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を熱硬化及び/又は光硬化させてなる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−280734(P2009−280734A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135629(P2008−135629)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】