説明

新規スピロピペリジン化合物

下記の式の化合物:


またはその製薬的に許容し得る塩および医薬組成物、ならびに糖尿病を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規スピロピペリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病を治療するための現在承認されている医薬の投与は、時々、低血糖症、肝臓障害、胃腸疾患、体重増加を含む望ましくない副作用、またはPPARγ活性と関連し得る他の望ましくない作用と関連している。
【0003】
GPR40は、主に齧歯動物の膵臓ベータ細胞、インスリノーマ細胞株、およびヒトの小島において高レベルで発現すると報告されているGタンパク質共役受容体である。この受容体は培地および長鎖脂肪酸により活性化されるので、その受容体はFFAR1(遊離脂肪酸受容体1)としても知られている。インスリン分泌のグルコース依存性は、GPR40を活性化する重要な特徴であり、この受容体は2型糖尿病(「T2D」)の治療における使用を有効に開発するための優れた標的となる。
【0004】
最近公開された特許文献1(「’908」)は概して、炭化水素スピロ基特性を有する化合物を開示し、Gタンパク質共役受容体40(「GPR40」)調節因子として活性を有すると記載している。’908開示の化合物は、スピロ特性においてヘテロ原子を含まない炭化水素スピロ基を必要とする化合物である。対照的に、多くの現在特許請求されているスピロピペリジン化合物は、検出可能なPPAR活性を有さないGPR40の所望の選択的活性化を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第2009/0170908A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の化合物はGPR40の有効な活性化因子である。本発明は、市販の治療剤と比べて特有な薬理学的機構を介して作用する所望の新規治療オプションを提供し、さらに、PPARガンマと比べてGPR40を選択的に活性化する化合物を提供する。選択的GPR40活性化因子としての、本発明の化合物の薬理学的プロファイルは、特にT2Dの治療の使用に好適であり得る。加えて、選択的GPR40調節は、PPARガンマ調節に関連する作用を回避することによってT2Dの治療に使用するための特に好適な安全性プロファイルを提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記式の化合物:
【化1】

(式中、
は、H、FおよびClからなる群より選択され、
は、Hまたは−C≡CCHであり、
Xは、−CHCH−、−CH=CH−、および−N(R)CH−からなる群より選択され、
は、HおよびC1−3アルキルからなる群より選択され、
は、−C(R)−および−N−からなる群より選択され、
は、H、OCH、およびCHからなる群より選択され、
は、−S−および−O−からなる群より選択され、
は、−C(R)−および−N−からなる群より選択され、
は、H、OCH、およびCHからなる群より選択され、
ここで、ZおよびZからなる群より選択される少なくとも1つは−C(R)−または−C(R)−である)
またはその製薬的に許容し得る塩に関する。
【0008】
本発明のさらなる実施形態は、医薬の製造に使用するための本発明によって特許請求される化合物またはその製薬的に許容し得る塩の使用を提供する。本発明の別の実施形態は、糖尿病の治療に使用するための医薬である。本発明のさらなる実施形態は、治療として使用するための本明細書に特許請求される化合物またはその製薬的に許容し得る塩の使用である。本発明のさらなる実施形態は、糖尿病の治療に使用するための本発明によって特許請求される化合物、またはその製薬的に許容し得る塩である。さらに、本発明は、医薬として使用するための本発明によって特許請求される化合物に関する。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、哺乳動物において糖尿病を治療するための方法であって、本発明によって特許請求される化合物またはその製薬的に許容し得る塩を哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明はまた、本発明によって特許請求される化合物、またはその製薬的に許容し得る塩と、製薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物に関する。さらなる実施形態は、第2の薬剤をさらに含む本発明の医薬組成物である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、PPARガンマと比べてGPR40を選択的に活性化する。例示した化合物のPPAR活性についての相対的IC50は概して10μMより高く、このような化合物がPPARアイソフォームを活性化しないことを示唆する。
【0012】
が−C≡CCHである場合、式Iの化合物はキラル中心を有する。本発明は、ラセミ化合物および個々の異性体の両方を意図する。Rが−C≡CCHである場合、S異性体が通常好ましい。
【0013】
が−C≡CCHである式Iの化合物が好ましい。加えて、RがHであり、RがFである化合物が好ましい。Rが−C≡CCHである場合、RがHである化合物が好ましい。Xが−CHCH−および−CH=CH−から選択される化合物が好ましい。Xが−CH=CH−である化合物が好ましい。Zが−S−である化合物が好ましい。Zが−C(R)−である化合物が好ましい。Zが−C(R)−である化合物が好ましい。RがHおよびCHから選択される化合物が好ましい。RがHである化合物が好ましい。Xが−N(CH)CH−である化合物が好ましい。
【0014】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはHであり、Rは−C≡CCHであり、−Xは−CH=CH−であり、Zは−S−である)を提供する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはHであり、Rは−C≡CCHであり、−Xは−CH=CH−であり、Zは−S−であり、Zは−C(R)−であり、Zは−C(R)−である)を提供する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはHであり、Rは−C≡CCHであり、−Xは−CH=CH−であり、Zは−S−であり、Zは−C(R)−であり、Zは−CH−である)を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはFまたはClであり、RはHであり、Xは−CH=CH−であり、Zは−S−である)を提供する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはFであり、RはHであり、Xは−CH=CH−であり、Zは−S−であり、Zは−C(R)−であり、Zは−C(R)−である)を提供する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RがHである場合、RはFまたはClである)を提供する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはHであり、Rは−C≡CCHであり、Zは−S−であり、Xは−CH=CH−または−N(CH)CH−である)を提供する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物またはその製薬的に許容し得る塩(式中、RはHであり、Rは−C≡CCHであり、Zは−S−であり、Xは−CH=CH−または−N(CH)CH−であり、ZはC(R)−であり、Zは−CH−である)を提供する。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態は、式Iの化合物(式中、Rは−C≡CCHである)のS異性体である。
【0023】
本発明の好ましい化合物は下記式の化合物:
【化2】

またはその製薬的に許容し得る塩である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の化合物は好ましくは種々の経路によって投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。そのような医薬組成物およびそれを調製するためのプロセスは当該技術分野において周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(A.Gennaroら,eds.,21st ed.,Mack Publishing Co.,2005)を参照のこと。
【0025】
「製薬的に許容し得る塩」とは、臨床および/または獣医用途に受容可能であるとみなされる本発明の化合物の塩を指す。製薬的に許容し得る塩およびそれらを調製するための一般的方法は当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahlら,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,(VCHA/Wiley−VCH,2002);S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,1997年1月を参照のこと。
【0026】
用語「製薬的に許容し得る担体」とは、担体、希釈剤、賦形剤、および塩が、組成物の他の成分と医薬的に適合可能であることを意味する。
【0027】
本明細書で使用する略語は、Aldrichimica Acta,Vol.17,No.1,1984に従って定義される。他の略語は以下のように定義する:「Prep」は調製例を指し;「Ex」は実施例を指し;「min」は分を指し;「ADDP」は1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジンを指し;「DCM」はジクロロメタンを指し;「EtOAc」は酢酸エチルを指し;「THF」はテトラヒドロフランを指し;「T」は保持時間を指し;「IC50」は薬剤について可能な最大阻害反応の50%を生じるその薬剤の濃度を指し;「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を指し;「DTT」はジチオスレイトールを指し;「F12」はハムF12培地を指し;「FBS」はウシ胎児血清を指し;「HEK」はヒト胎児腎臓を指し;「PPAR」はペルオキシソーム増殖剤応答性受容体を指し;「PPRE」はペルオキシソーム増殖剤応答性エレメントを指し;「RPMI」はRoswell Park Memorial Instituteを指し;「TK」はチミジンキナーゼを指し;「RFU」は相対蛍光単位を指し;「ESI」はエレクトロスプレーイオン化を指す。
【0028】
以下のスキームにおいて、他に示さない限り、全ての置換基は上記に定義した通りである。試薬および出発物質は一般に当業者に容易に利用可能である。他のものは、既知の構造的に同様の化合物の合成と同様である有機化学および複素環化学の標準的な技術、ならびにいずれかの新規手順を含む、以下のスキーム、調製例、および実施例に記載される手順によって作製され得る。
【0029】
【化3】

式Iの化合物はスキームIに示すような反応に従って調製できる。スキームI(工程1a)は、適切な置換ピペリジン(3)を用いる置換または非置換芳香族複素環ブロモメチル化合物(1)のアルキル化により、工程2におけるエステルの還元後、置換芳香族複素環メチルアルコール(5)を得ることを示す。次いで化合物(5)はさらにヒドロキシルでの光延反応を介して伸長またはアルキル化され、脱保護されて、式Iの化合物を得ることができる。PG’’はエステルなどの酸ならびにまたカルバミン酸塩およびアミドなどのアミノ基のために開発された保護基である。そのような保護基は周知であり、当該技術分野において理解されている。例えば、GreeneおよびWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,上記を参照のこと。
【0030】
式(1)の化合物をアルキル化条件下で式(3)の化合物と反応させる(工程1a)。当業者は、複素環臭化物およびアミンの反応から得られるアミンアルキル化のための多くの方法および試薬が存在することを理解するだろう。例えば、ジイソプロピルエチルアミンまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下で、適切な式(1)の化合物と、式(3)のトリフルオロ酢酸塩またはHCl塩などの適切なアミンまたはアミン塩との反応により式(4)の化合物を得る。式4のエステルを、工程2において、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウムまたは水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いてアルコールに還元させて、化合物(5)を得ることができる。次いで化合物(5)を光延条件下で式(7)の化合物でさらにアルキル化し、脱保護して、式(I)の化合物を得ることができる(工程4a)。光延条件は当該技術分野において周知であり、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、またはトリエチルホスフィンなどのホスフィンおよびADDPなどのアゾジカルボニルまたはジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)などのアゾジカルボキシレートを用いる、アルコール(5)とフェノール(7)などの求核試薬との反応を含む。別法として、化合物(5)をメチルスルホニルなどの保護基で保護して、化合物(6、工程3)を得ることができる。次いで化合物6を、炭酸セシウムなどの塩基を用いて(7)と反応させ、続いて酸を脱保護して、式Iの化合物を得ることができる。別のバリエーションにおいて、式(1)の化合物を、工程1bに示すように、水素化ジイソブチルアルミニウムなどの還元剤を用いてブロモメチル複素環メチルアルコール(2)に還元できるか、または化合物(2)は商業的に入手可能であり得、ジイソプロピルエチルアミンまたは炭酸セシウムなどの塩基の存在下で式(3、工程1c)の適切なアミンまたはアミン塩でアルキル化して、化合物(5)を得て、次いで上記のように実施して、式(I)の化合物を得ることができる。
【0031】
任意選択の工程において、式(I)の化合物の製薬的に許容し得る塩は、標準的な条件下で適切な溶媒中での式(I)の適切な酸と、適切な製薬的に許容し得る塩基との反応により形成できる。加えて、このような塩の形成はエステルの加水分解と同時に起こり得る。このような塩の形成は周知であり、当該技術分野において理解されている。
【0032】
【化4】

スキームII、工程1において、保護ピペリジン−4−カルボキシアルデヒド(8)を酸触媒環化において置換フェニルヒドラジン(9)と反応させて、置換スピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン](10)を得て、それを次いでアルキル化して式(I)の化合物を得ることができる。例えば、フェニルヒドラジン(9)およびトリフルオロ酢酸などの適切な酸に、窒素保護−4−ホルミル−ピペリジン(8)を加える。適切な反応時間の後、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤およびメタノールなどのアルコールを加えて、所望の置換スピロ{インドリン−3,4’−保護ピペリジン](10)を得る。工程2において、例えば酢酸などの適切な酸およびメタノールなどのアルコール中で適切なアルデヒドおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの適切な還元剤を用いる還元的アルキル化によって、(10)のインドリン窒素をアルキル化できる。ピペリジン窒素上の保護基を、水素化または酸性条件などの当該技術分野において周知の標準的な条件下で除去して、化合物(11)を得ることができる。次いで工程3において化合物(11)を、上記のスキームI、工程1aに記載したように(1)でアルキル化して、化合物(12)を得ることができ、工程4において上記のスキームI(工程1aおよび2)において記載したように還元して、化合物(5’)を得ることができる。化合物(5’)を、実質的に化合物(5)と同様にスキームIについて記載したように実施して、式(I)の化合物を得ることができる。
【0033】
【化5】

スキームIIIにおいて、置換複素環酸を、DIBAL−Hなどの還元剤を用いて当該技術分野において周知の条件下で還元して、工程1において化合物(2)を得ることができる。工程2において、メチルアルコール、化合物(2)を、イミダゾールおよびtert−ブチルクロロジメチルシランなどの塩基を用いてtert−ブチル−ジメチルシランなどの保護基で保護して、(14)を得ることができる。化合物(14)を、炭酸カリウムなどの塩基を用いて化合物(7)でアルキル化し、脱保護して、工程3において化合物(15)を得ることができる。化合物(15)のメチルアルコールを、デス・マーチン・ペルヨージナンなどの酸化剤でアルデヒドに変換して、工程4において化合物(16)を得ることができるか、または三臭化リンなどの臭素化条件を用いて臭化物に変換して、化合物(16)を得ることができる。次いで化合物(16)を、シアノ水素化ホウ素ナトリウムとの還元的アルキル化などの当該技術分野において周知の条件下(スキームI)で化合物(3)でアルキル化し、続く脱保護により、式(I)の化合物を得ることができる。別法として、臭化物を、炭酸セシウムまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基を用いて化合物(3)でアルキル化し、脱保護して、式(I)の化合物を得ることができる。
【実施例】
【0034】
調製例および実施例
以下の調製例および実施例は本発明をさらに例示し、式(I)の化合物の典型的な合成を表す。本発明の化合物についての名称は一般にIUPACNAME(商標)、ACDLABS(商標)またはSymyx Draw3.2によって提供される。
【0035】
調製例1
ベンジルスピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート
【化6】

トルエン/アセトニトリルの49/1溶液(50mL)中のフェニルヒドラジン(1.29g、12.0mmol)およびトリフルオロ酢酸(3.0mL)の溶液を35℃にて加熱する。4−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(2.7g、10.91mmol)をトルエン/アセトニトリルの49/1溶液(10mL)に溶解し、混合物に滴下して加える(国際公開第2005046682号パンフレット)。混合物を35℃にて一晩攪拌する。得られた溶液を0℃に冷却し、メタノール(5mL)を加える。NaBH(0.619g、16.38mmol)を溶液にゆっくりと加え、混合物を45分間攪拌する。混合物をNHOH水溶液(6%、25mL)およびブライン(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させて、黄色の固体を得る。粗固体をEtOAcから再結晶して、淡黄色の固体(1.25g、第1の収集物)を得る。母液を蒸発させ、ヘキサン:酢酸エチル(8:2)で溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、全収率(2.4g、84%)で淡黄色の固体(1.2g、第2の収集物)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 323(M+H)
【0036】
調製例2
ベンジル1−メチルスピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート
メタノール(6.0L)中のベンジル1,2−ジヒドロ−1’H−スピロ[インドール−3,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート(315g、977.5mmol)、ホルムアルデヒド(40%水溶液、138mL、4.9mol)および酢酸(279mL、4.9mol)の0℃の溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(184g、2.9mmol)を2時間にわたって一部ずつ加える(いくらかの泡立ちが観察される)。反応混合物を室温まで加温し、6時間攪拌する。混合物のpHを10%NaHCO溶液で約8に調整し、EtOAc(3×5.0L)で抽出する。合わせた抽出物を水(2×2.5L)およびブライン(2.5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させて、淡黄色の固体(310g、98.3%)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 337(M+H)
【0037】
調製例3
1−メチルスピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン]
メタノール(50mL)中のベンジル1−メチルスピロ[インドリン(indoleine)−3,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート(0.85g、2.52mmol)の溶液に、Pd(OH)/C(10%、0.15g)を加え、混合物を16時間バルーンで水素化する。反応混合物を珪藻土で濾過し、メタノール(50mL)で洗浄し、乾燥するまで蒸発させて、標題化合物(0.5g、98%)を得る。ESI/MS m/z 203.4(M+H)
【0038】
調製例4
(3S)−3−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサ−4−イン酸
【化7】

3−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサ−4−イン酸鏡像異性体を、キラルクロマトグラフィー[カラムキラルパックIA(250mm×4.6mm)]、移動相(A)n−ヘキサン、移動相(B)0.01%TFAを含むイソプロピルアルコール;組成(85:15)、流速1.0mL/分、検出225nm)により分離して、標題化合物(4.2g、50.58%)を得る(保持時間7.96)。ESI/MS m/z 203(M+H)。鏡像異性体の混合物もまた、国際公開第2005086661号パンフレットに記載されているものと同様の方法を用いるキラル分割により分離して、標題化合物を得る。
【0039】
調製例5
メチル5−(ブロモメチル)−4−メチル−チオフェン−2−カルボキシレート
【化8】

ジクロロメタン(20mL)中のメチル4−メチルチオフェン−2−カルボキシレート(2.7g、6.4mmol)の溶液に、0〜5℃にて、48%HBr水溶液(12mL)、HSO(6mL)、ZnBr(5.4g)、およびHCHO(2.2mL、37%)を加える。混合物を室温にて16時間攪拌する。溶液を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出し、NaHCO溶液、飽和ブライン溶液、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、オフホワイトの固体(3.5g、81%)として標題化合物を得る。
【0040】
調製例6
エチル2−(2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−オキソ−アセテート
【化9】

DCM(150.0mL)中の1−アミノ−プロパン−2−オール(15.0g、199.7mmol)の攪拌溶液に、0℃にてトリエチルアミン(43.30mL、299.56mmol)を加える。クロロ−オキソ−酢酸エチルエステル(22.35mL、199.7mmol)を0℃にて反応混合物に滴下して加え、反応混合物を室温にて16時間攪拌する。混合物を0℃にて水(100mL)で希釈し、DCM(2×100mL)で抽出し、水(2×50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させる。粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(3.0:7.0)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色のゲル(10.7g、31.0%)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 176.2(M+H)
【0041】
調製例7
エチル2−(アセトニルアミノ)−2−オキソ−アセテート
【化10】

DCM(100.0mL)中のエチル2−(2−ヒドロキシプロピルアミノ)−2−オキソ−アセテート(10.7g、61.07mmol)の攪拌溶液に、0℃にてデス・マーチン・ペルヨージナン(25.9g、61.07mmol)を加える。反応混合物を室温にて2時間攪拌し、0℃にて水(100mL)で希釈し、DCM(2×100mL)で抽出する。合わせた有機層を水(2×50mL)および飽和ブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させる。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(1:1)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色の油(9.2g、87.03%)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 174.1(M+H)
【0042】
調製例8
エチル5−メチルオキサゾール−2−カルボキシレート
【化11】

トルエン(100.0mL)中のエチル2−(アセトニルアミノ)−2−オキソ−アセテート(9.2g、53.12mmol)の攪拌溶液に、POCl(4.95mL、53.12mmol)を加え、反応混合物を16時間還流する。反応混合物を冷却し、少しずつ水(100.0mL)に加え、激しく攪拌する。有機層を飽和NaHCO溶液(2×50mL)、水(2×50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させる。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(8.0:2.0)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、黄色の油として標題化合物(5.1g、61.9%)を得る。ESI/MS m/z 156.21(M+H)
【0043】
調製例9
エチル5−(ブロモメチル)オキサゾール−2−カルボキシレート
四塩化炭素(50.0mL)中のエチル5−メチルオキサゾール−2−カルボキシレート(5.1g、32.87mmol)およびNBS(8.19g、46.02mmol)の攪拌溶液に、過酸化ベンゾイル(0.79g、3.29mmol)を加え、反応混合物を16時間還流する。混合物を室温まで冷却し、珪藻土で濾過する。濾液を真空中で濃縮し、粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(9.2:0.8)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、淡褐色の油として(4.8g、62.33%)の標題化合物を得る。ESI/MS m/z (79Br/81Br)234.1/236.1[M+H]
【0044】
調製例10
メチル3−メトキシチオフェン−2−カルボキシレート
アセトン(50mL)中の3−ヒドロキシ−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(5g、31.6mmol)およびKCO(22.2g、161mmol)の混合物に、CHI(10.8mL、173mmol)を0℃にて滴下して加える。反応混合物を55℃にて4時間加熱し、室温まで冷却し、珪藻土で濾過し、濾液を真空下で濃縮する。残渣を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出する。合わせた有機層をブライン溶液(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させて、茶色の固体として標題化合物(5.9g)を得る。ESI/MS m/z 173.1/236.1(M+H)
【0045】
調製例11
メチル5−(ブロモメチル)−3−メトキシ−チオフェン−2−カルボキシレート
無水ジクロロメタン(50mL)中の3−メトキシ−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(5g、29mmol)の溶液に、HBr水溶液(22mL、37%)、98%HSO(11mL)、ZnBr(8.5g)およびホルムアルデヒド水溶液(37%、3.8mL)を0℃にて連続して加える。反応混合物を室温にて14時間攪拌する。有機層を分離し、水層をDCM(2×200mL)で抽出する。合わせた有機層をブライン溶液(200mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で蒸発させる。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(9.5:0.5)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(4.4g、60%)を得る。ESI/MS m/z 267.1(M+H)
【0046】
調製例12
(5−ブロモメチル−3−メトキシ−チオフェン−2−イル)−メタノール
無水ジクロロメタン(50mL)中の5−ブロモメチル−3−メトキシ−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(1.4g、5.2mmol)の溶液に、−78℃にて水素化ジイソブチルアルミニウム(ヘキサン中に1M、21.0mL、21.1mmol)を滴下して加える。添加の完了後、混合物を室温まで加温し、2時間攪拌する。反応混合物を−40℃にて水(15mL)でクエンチし、混合物を室温にて30分間攪拌する。反応混合物を珪藻土で濾過する。濾液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、淡黄色の液体として標題化合物(1.2g、96%)を得る。H NMR(400MHz,d DMSO)7.46(s,1H),4.58(s,2H),3.84(s,3H),3.73(s,2H)。
【0047】
調製例13
[5−(ブロモメチル)−3−メトキシ−2−チエニル]メトキシ−tert−ブチル−ジメチル−シラン
【化12】

無水ジクロロメタン(10mL)中の(5−ブロモメチル−3−メトキシ−チオフェン−2−イル)−メタノール(0.6g、2.5mmol)の溶液に、0℃にてイミダゾール(0.516g、7.59mmol)およびtert−ブチルクロロジメチルシラン(0.412g、2.75mmol)を加える。反応混合物を室温まで加温し、1時間攪拌する。反応混合物を水でクエンチし、濃縮する。残渣をDCMに溶解し、水(25mL)およびブライン(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、標題化合物(0.9g)を得る。ESI/MS m/z (79Br/81Br)351/353.1[M+H]
【0048】
調製例14
エチル3−[4−[[5−[(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシメチル]−4−メトキシ−2−チエニル]メトキシ]−2−フルオロ−フェニル]プロパノエート
【化13】

アセトニトリル(15mL)中の3−(2−フルオロ−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオン酸エチルエステル(1.03g、4.8mmol)の溶液に、室温にて炭酸カリウム(2.31g、16.8mmol)および(5−ブロモメチル−3−メトキシ−チオフェン−2−イルメトキシ)−tert−ブチル−ジメチル−シラン(1.7g、4.8mmol)を加え、反応混合物を3時間還流する。反応混合物を濃縮し、水で希釈し、EtOAc(2×30mL)で抽出する。合わせた抽出物を水(15mL)および飽和ブライン(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(9.6:0.4)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(0.5g、21%)を得る。H NMR(400MHz,DMSOd)δ7.51(s,1H),7.26−7.2(t,J=8.4Hz,1H),6.92−6.89(d,J=12Hz,1H),6.83−6.81(d,J=7.6Hz,2H),4.92(s,2H),4.82(s,2H),4.10−4.05(q,J=6.4Hz,2H),3.82(s,3H),2.86−2.82(t,J=16Hz,2H),2.61−2.55(m,2H),1.21−1.17(t,J=6.8Hz,3H),0.89(s,9H),0.13(s,6H)。
【0049】
調製例15
エチル3−[2−フルオロ−4−[[5−(ヒドロキシメチル)−4−メトキシ−2−チエニル]メトキシ]フェニル]プロパノエート
THF(5mL)中の3−{4−[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−4−メトキシ−チオフェン−2−イルメトキシ]−2−フルオロ−フェニル}−プロピオン酸エチルエステル(0.5g、1.0mmol)の溶液に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(THF中の1M溶液、2mL、2.0mmol)を0℃にて加え、反応混合物を25℃にて30分間攪拌する。反応混合物を水でクエンチし、残渣まで濃縮する。残渣をEtOAcで抽出し、水(15mL)およびブライン(15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、標題化合物(0.4g)を得る。H NMR(400MHz,DMSO d)δ7.41(s,1H),7.19−7.15(t,J=8.8Hz,1H),6.85−6.75(m,2H),5.32(br,1H),4.85(s,2H),4.55(s,2H),4.04−4.00(q,J=7.2Hz,2H),3.75(s,3H),3.58(s,1H)3.16−3.12(t,J=15.2Hz,3H),2.79−2.76(t,J=14.8Hz,2H),2.55−2.51(t,J=15.2Hz,2H),1.28−1.22(t,J=7.2Hz,3H)。
【0050】
調製例16
エチル3−[2−フルオロ−4−[(5−ホルミル−4−メトキシ−2−チエニル)メトキシ]フェニル]プロパノエート
【化14】

0℃に冷却した、無水ジクロロメタン(10mL)中のエチル3−[2−フルオロ−4−[[5−(ヒドロキシメチル)−4−メトキシ−2−チエニル]メトキシ]フェニル]プロパノエート(1.6g、4.3mmol)の溶液に、デス・マーチン・ペルヨージナン(2.76g、6.5mmol)を加える。反応混合物を室温まで加温し、2時間攪拌する。反応混合物を水(15mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出し、水(15mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾燥するまで蒸発させる。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(8.8:1.2)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(0.8g、50%)を得る。ESI/MS m/z 367.1(M+H)
【0051】
調製例17
エチル5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チオフェン−2−カルボキシレート
方法A
【化15】

エタノール(28mL)中のスピロ[インデン−1,4’−ピペリジン](1.4g、6.3mmol)の溶液に、室温にて、メチル5−(ブロモメチル)チオフェン−2−カルボキシレート(1.78g、7.6mmol)およびジイソプロピルアミン(3.31mL、19mmol)を加え、反応混合物を90℃にて16時間攪拌する。混合物を濃縮し、水で希釈し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出する。合わせた抽出物を水(50mL)および飽和ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、標題化合物(1.5g、58%)を得る。ESI/MS m/z 340.1(M+H)
【0052】
方法B
スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]塩酸塩(128.0g、560mmol)を30℃にて窒素雰囲気下でエタノール(1.5L)に溶解する。ジイソプロピルエチルアミン(407.4mL、1.68mol)を30℃にて10分にわたって滴下して加え、20分間攪拌する。メチル5−(ブロモメチル)チオフェン−2−カルボキシレート(LCMSにより約50%純粋)(300g、1.27mol)を30℃にて加え、30℃にて10分間攪拌し、混合物を1時間45分、60℃で加熱する。出発物質の存在を示したTLCにより、反応をモニターする。反応物を30℃にて13時間攪拌する。反応混合物を濃縮し、DCM(10L)に溶解する。HCl(1N、1.5L)を絶えず攪拌しながら滴下して加え、白色の固体沈殿物を収集する。物質をDCM(1L)に溶解し、10分間攪拌し、濾過し、真空下(44℃)で乾燥させて、標題化合物(150.0g、76%)を得る。ESI/MS m/z 340.1(M+H)
【0053】
以下の化合物を調製例17の方法(方法A)に記載されるように実質的に調製する。
【0054】
【表1−1】

【表1−2】

a.粗生成物
b.H NMR(400MHz,DMSO−d):δ7.53(s,0.5H),7.21−7.12(m,2H),3.76(s,1.5H),3.65(s,1H),2.84−2.82(d,J=8Hz,2H),2.26−2.21(t,J=8Hz,1H),2.16(s,1.5H),1.96−1.92(d,J=8Hz,1H),1.79(s,1H),1.45−1.42(m,1H)。
【0055】
調製例28
[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−2−チエニル]メタノール
方法A
【化16】

ジクロロメタン(30mL)中のエチル5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チオフェン−2−カルボキシレート(1.5g、4.4mmol)の溶液に、−78℃にてDIBAL−H(11mL、11.06mmol)を加える。反応混合物を室温にて1時間加温し、その後、0℃にて水を滴下して加える。混合物を珪藻土で濾過し、ジクロロメタンで抽出し、乾燥するまで濃縮して、標題化合物(1.05g、76%)を得る。ESI/CMS m/z 312.1(M+H)
【0056】
方法B
メチル5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チオフェン−2−カルボキシレート(150.0g、446.0mmol)を、30℃にて窒素雰囲気下で無水ジクロロメタン(3L)に溶解する。混合物を−78℃に冷却し、DIBAL−H(トルエン中の1.0M溶液)(1.2L、960mmol)を、絶えず攪拌しながら1時間にわたって窒素雰囲気下、−78℃にて滴下して加える。反応混合物を0℃まで徐々に加温し、0℃にて3時間、30℃にて3時間攪拌する。混合物を−78℃に冷却し、飽和NHOH水溶液(1L)を滴下して加え、続いて、DCM(5.0L)を滴下して加える。混合物を室温まで加温し、DCMで抽出し、水(2L)および飽和ブライン(2L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発する。ジエチルエーテル(500mL)を残渣に加え、混合物を30分間攪拌する。形成する沈殿物を濾過し、濾液を乾燥するまで蒸発させ、固体と合わせて、白色の固体として標題化合物(88.0g、64%)を得る。ESI/MS m/z 312.1(M+H)
【0057】
以下の化合物を調製例28の方法(方法A)に記載されるように実質的に調製する。
【0058】
【表2−1】

【表2−2】

【0059】
調製例39
4−メチル−5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チアゾール−2−カルバルデヒド
【化17】

THF中の2−ブロモ−4−メチル−5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チアゾール(3.8g、10.12mmol)の溶液に、−78℃にてn−BuLi(0.713g、11.13mmol)を加える。混合物を−45℃まで加温し、30分間攪拌する。DMF(1.5mL)を−78℃にて混合物に滴下して加え、混合物を室温までゆっくり加温し、1時間攪拌する。混合物を−78℃に冷却し、水、続いてNHCl溶液で希釈する。混合物を酢酸エチルで抽出し、NaSOで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させて、標題化合物(2.8g、85%)を得る。ESI/MS m/z 325(M+H)
【0060】
以下の化合物を調製例39の方法に記載されるように実質的に調製する。
【0061】
【表3】

【0062】
調製例41
5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン−‘イルメチル)−4−メチル−チアゾール−2−メタノール
【化18】

DCM(6mL)中の4−メチル−5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)チアゾール−2−カルバルデヒド(0.600g、1.8mmol)の溶液に、−78℃にてDIBAL−H(ヘキサン中の1M溶液、0.52g、3.6mL、3.6mmol)を加え、混合物を室温まで加温し、1時間攪拌する。混合物を−78℃に冷却し、水でクエンチし、濾過し、DCMで抽出し、乾燥するまで蒸発させて、標題化合物(0.500g、83%)を得る。ESI/MS m/z 327(M+H)
【0063】
以下の化合物を調製例41の方法に記載されるように実質的に調製する。
【0064】
【表4】

【0065】
調製例43
[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)オキサゾール−2−イル]メチルメタンスルホネート
【化19】

DCM(10.0mL)中の[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)オキサゾール−2−イル]メタノール(0.15g、0.51mmol)の0℃の攪拌溶液に、トリエチルアミン(0.18mL、1.26mmol)およびメタンスルホニルクロリド(0.05mL、0.61mmol)を加える。反応混合物を0℃にて1時間攪拌する。反応混合物を水(20.0mL)およびブライン(10.0mL)で洗浄し、DCMで抽出し、NaSOで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させて、茶色の液体として粗生成物(0.18g)を得る。
【0066】
以下の化合物を調製例43の方法に記載されるように実質的に調製する。
【0067】
【表5】

【0068】
調製例45
エチル(3S)−3−[4−[[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−2−チエニル]メトキシ]フェニル]ヘキサ−4−イノエート
方法A
【化20】

THF(5mL)中の1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン(1.30g、5.1mmol)の溶液に、0℃にてトリブチルホスフィン(1.21g、6.0mmol)を加える。0℃にて15分後、THF(5mL)中の[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−2−チエニル]メタノール(0.8g、3.4mmol)の溶液を加え、反応混合物を0℃にて15分間攪拌し、続いてTHF(5mL)中のエチル(3S)−3−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサ−4−イノエート(1.07g、3.4mmol)を加える。反応混合物を室温にて16時間攪拌し、濾過し、水で希釈し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出する。合わせた抽出物を水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(8.5:1.5)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(1.1g、61%)を得る。ESI/MS m/z 526.2(M+H)
【0069】
方法B
エチル(3S)−3−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサ−4−イノエート(30.0g、129.0mmol)を、窒素雰囲気下でTHF(600ml)に溶解し、0℃まで冷却する。DIAD(31.3g、154.9mol)を0℃にてゆっくり加え、攪拌し、混合物を30分間攪拌する。最小量のTHFに溶解した、PPh(40.65g、154.9mmol)および(5−[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−2−チエニル]メタノール(48.26g、154.9mmol)の溶液を0℃にて反応混合物に加え、その混合物を室温まで加温し、12時間攪拌する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル(300mL)に溶解し、水(2×10容量)およびブライン(10容量)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させる。粗物質を、ヘキサン:酢酸エチル(9.0:1.0)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(33.0g、48.6%)を得る。H NMR(DMSO−d)δ7.44−7.42(d,1H),7.32−7.27(m,2H),7.22−7.12(m,2H),7.03−7.02(d,1H),6.97−6.92(m,3H),6.89−6.88(d,1H),6.79−677(d,1H),6.69−6.67(d,1H),5.21(s,2H),4.02−4.01(m,1H),3.77(s,2H),2.94−2.91(d,2H),2.68−2.62(m,3H),2.41−2.36(m,2H),2.10−2.03(m,2H),1.77(s,3H),1.39(s,1H),1.27−1.14(m,4H),1.13−1.11(t,3H)。
【0070】
以下の化合物を調製例45の方法(方法A)に記載されるように実質的に調製する。
【0071】
【表6−1】

【表6−2】

【表6−3】

a.H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.18−7.14(m,4H),7.12−7.08(m,1H),6.94−6.93(d,J=4Hz,1H),6.82(s,1H),6.70−6.66(m,2H),5.12(s,2H),4.14−4.09(q,J=4Hz,2H),3.74(s,2H),2.92−2.86(m,6H),2.60−2.56(m,2H),2.24−2.04(m,2H),2.01−1.90(m,5H),1.28−1.23(m,6H)。
b.粗生成物
【0072】
調製例65
エチル(3S)−3−[4−[[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)オキサゾール−2−イル]メトキシ]フェニル]ヘキサ−4−イノエート
【化21】

アセトニトリル(10.0mL)中の[5−(1H’−スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−1,3−オキサゾール−2−イル]メチルメタンスルホネート(0.18g、0.48mmol)の攪拌溶液に、CsCO(0.39g、1.2mmol)およびエチル(3S)−3−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサ−4−イノエート(0.13g、0.57mmol)を加える。反応混合物を80℃にて1時間攪拌し、珪藻土で濾過する。濾液を乾燥するまで蒸発させ、ヘキサン:酢酸エチル(6.0:4.0)で溶出する、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色の油(0.07g、28.2%)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 511.5(M+1)。
【0073】
以下の化合物を調製例65の方法に記載されるように実質的に調製する。
【0074】
【表7】

【0075】
調製例67
エチル3−[2−フルオロ−4−[[4−メトキシ−5−[(1−メチルスピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン]−1’−イル)メチル]−2−チエニル]メトキシ]フェニル]プロパノエート
【化22】

0℃にて、メタノール中のエチル3−[2−フルオロ−4−[(5−ホルミル−4−メトキシ−2−チエニル)メトキシ]フェニル]プロパノエート(0.4g、1.0mmol)の溶液に、1−メチルスピロ[インドリン−3,4’−ピペリジン(0.258g、1.0mmol)、およびNaCNBH(0.273g、4.3mmol)を加える。反応混合物を室温まで加温し、12時間攪拌する。混合物を水(15mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機層を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗物質を分取TLCにより精製して、無色の液体(0.2g、33%)として標題化合物を得る。ESI/MS m/z 553.2(M+H)
【0076】
以下の化合物を調製例67の方法に記載されるように実質的に調製する。
【0077】
【表8】

【0078】
実施例1
(3S)−3−[4−[[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’−イルメチル)−2−チエニル]メトキシ]フェニル]ヘキサ−4−イン酸
方法A
【化23】

エタノール(6mL)中のエチル(3S)−3−[4−[[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’イルメチル)−2−チエニル]メトキシ]フェニル]ヘキサ−4−イノエート(1.1g、2.0mmol)の溶液に、5MのNaOH(0.83mL、4.1mmol)を加え、混合物を、90℃にて5分間、マイクロ波条件下で反応させる。混合物を濃縮し、水に溶解し、2NのHClで酸性化し、クロロホルム(2×50mL)で抽出する。合わせた抽出物を飽和NaHCO(2×5mL)、NHCl(2×5mL)、水(2×5mL)および飽和ブライン(2×5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、オフホワイトの固体として標題化合物(0.746g、71%)を得る。HNMR(DMSOd,400 MHz)δ12.2(bs,1H),7.43−7.41(d,J=7.2Hz,1H),7.31−7.25(dd,J=6.8Hz,3H),7.21−7.13(m,J=7.2Hz,2H),7.02−7.01(d,J=3.2Hz,1H),6.96−6.94(d,J=8.4Hz,1H),6.92−6.90(d,J=5.6Hz,1H),6.88−6.87(d,J=2.8Hz,1H)6.77−6.76(d,J=5.2Hz,1H)5.19(s,2H),3.94(s,1H),3.76(s,2H),2.94−2.901(t,J=11.2Hz,2H),2.59−2.57(d,J=7.6Hz,2H),2.41−2.36(t,J=11.2Hz,2H),2.08−2.03(t,J=10.4Hz,2H),1.76(s,3H),1.22(s,2H),ESI/MSm/z498(M+H)
【0079】
方法B
エチル(3S)−3−[4−[[5−(スピロ[インデン−1,4’−ピペリジン]−1’イルメチル)−2−チエニル]メトキシ]フェニル]ヘキサ−4−イノエート(33.0g、62.7mol)をエタノール(600mL)に溶解し、混合物を10〜15℃に冷却する。5MのNaOH(5.02g、125.5mmol)をゆっくりと加え、混合物を10分間攪拌し、その後、2時間80℃で加熱する。溶媒を蒸発させ、混合物を最小量の水に溶解する。pHを1NのHCl溶液で約7.0に調整する。溶液を酢酸エチル(2×300mL)で抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させる。粗物質に、メチルt−ブチルエーテル(300mL)および0.2%のメタノールを加え、混合物を30分間攪拌する。得られた沈殿物を濾過し、48℃にて真空下で乾燥させて、クリーム色の固体として標題化合物(24.0g、76%)を得る。H NMR(DMSO−d)δ12.217(s,1H),7.438−7.421(d,1H),7.330−7.271(m,3H),7.228−7.126(m,2H),7.046−7.039(d,1H),6.978−6.906(m,4H),6.795−6.781(d,1H),5.213(s,2H),3.972−3.928(m,1H),3.788(bs,2H),2.945(m,2H),2.608−2.589(d,2H),2.422(m,2H),2.107−2.051(m,2H),1.778−1.772(s,3H),1.233−1.148(m,2H)。
【0080】
以下の化合物を実施例1の方法(方法A)に記載されるように実質的に調製する。
【0081】
【表9−1】

【表9−2】

【表9−3】

【表9−4】

【表9−5】

【0082】
T2Dの原因は、2倍のインスリン抵抗性、および循環グルコースレベルを低下させるために適切な量のインスリンを生成する膵臓ベータ細胞の進行性破壊であると考えられている。正常なインスリンレベルが、骨格筋および脂肪組織を含む、標的組織内の循環血漿グルコースを処理できない場合、インスリン抵抗性が発達する。インスリン抵抗性に起因する過度に高いグルコースレベルを補償するために膵臓がさらにインスリンを生成するので、膵臓ベータ細胞は最終的に消耗し、分泌のためにさらにインスリンが利用できなくなる。時間が経つと、膵臓ベータ細胞は完全に機能しなくなり、T2Dを有するヒトは1型糖尿病を有するヒトと同様になる。高レベルの循環グルコースは糖尿病の特徴であり、心臓病および脳卒中、高血圧、失明、腎臓および神経障害、感染、ならびに歯周病などの重篤な合併症を最終的に導き得る。従って、運動;適切なダイエット;経口抗糖尿病治療;および最終的にインスリンにより、可能な限り早期にT2Dを抑制し、治療することが重要である。本発明によって特許請求される化合物は、さらなる薬理学的な治療選択を提供する。選択的にGPR40を調節する化合物が特に好適であり得る。
【0083】
GPR40:情報
最近、Nagasumiにより報告されているインスリンIIプロモーターの制御下でヒトGPR40遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスを用いる研究の結果により、GPR40が、特にインスリン耐性の齧歯動物モデルにおいて、インビボでのGDISおよび血漿グルコース濃度の調節において重要な役割を果たすことがさらに支持されている。Nagasumi Kら,Overexpression of GPR40 in pancreatic β−cells augments glucose−stimulated insulin secretion and improves glucose tolerance in normal and diabetic mice Diabetes 58:1067−1076,2009。Briscoe CPら,The orphan G protein−coupled receptor GPR40 is activated by medium and long chain fatty acids,Journal Biological Chemistry 278:11303−11311,2003もまた参照のこと。これらの見解は、新規GPR40調節因子化合物の開発が特にT2Dの治療の使用に望まれ得ることをさらに支持している。
【0084】
カルシウム流出一次アッセイ
本明細書に例示した化合物を以下に記載するように実質的に試験すると、カルシウム流出一次アッセイについて1μMより低いEC50値示す。
【0085】
このアッセイは、リガンドがGPR40に結合し、活性化する場合に生じる細胞内カルシウム濃度の増加を測定することによって化合物をスクリーニングするために使用し、これにより、GPR40アゴニストの効果および有効性を実証する。37℃および5%COにて10%FBSおよび800μg/mlジェネティシンを添加した3:1の比のダルベッコ改変イーグル培地とF12培地中に維持した、HEK293細胞を過剰発現するヒトGPR40 cDNAをこの研究のために利用する。アゴニストアッセイを、アッセイバッファー(1×HBSS(ハンクス平衡塩溶液)および20mMのHEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)中の脂肪酸を含まないBSAの存在(0.1%)または非存在下で、Calcium 4 Dyeアッセイキット(Molecular Devices)を用いて実施する。蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)を用いて、受容体活性化を細胞内カルシウムの増加として測定する。ベースラインより上の蛍光の最大変化を用いて、アゴニスト反応を測定する。濃度対相対的蛍光単位(RFU)をプロットすることによってエクセルフィットソフトウェア(バージョン4;IDBS)を用いて、化合物のEC50(最大反応の半分における有効濃度)値を計算する。天然のリガンドであるリノール酸と比較した化合物によって示される最大反応に基づいて有効性の割合を計算する。このアッセイにおいて試験した場合、実施例1の試験化合物は91+/−9%の有効性で114+/−93nMのEC50を有する。これらの結果はさらに、GPR40アゴニストとしての所望の効果および有効性を実証する。
【0086】
グルコース依存性インスリン分泌(GDIS)アッセイ
GPR40の活性化は高グルコース濃度に依存するインスリン分泌を生じることが知られているため、上記のGPR40一次アッセイにおいて細胞内カルシウムを増加させることが知られている化合物をさらに特徴付けるために2つの別のアッセイ系(インスリノーマ細胞株および初代齧歯動物小島)を開発する。
【0087】
マウスインスリノーマ細胞株Min6を用いてGDISアッセイを実施する。Min6細胞を、37℃および5%COにて非必須アミノ酸、10%FBS、50mMの2−メルカプトエタノールおよび1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に維持する。実験の日に、グルコースを含まない200μlの予熱したクレブスリンゲルバッファーで細胞を2回洗浄する。2.5mMグルコースを含有する追加の200μLの予熱したクレブスリンゲルバッファーを使用して、細胞を飢餓し、その後、高濃度のグルコース(25mM)の存在下で化合物を添加する。プレートを37℃で2時間インキュベートする。2時間のインキュベーションの終わりに、上清をミリポアフィルタープレートに穏やかに移し、200g(重力)にて3分間回転させる。メルコディアインスリン測定キットを用いてインスリンをアッセイする。1μMでの実施例1および25mMグルコースのMin6細胞への添加により、25mMグルコース単独で達成されるものと比べてインスリン分泌の統計的に有意な2倍の増加が生じる。
【0088】
初代齧歯動物膵臓ランゲルハンス島を用いるGDISアッセイもまた、例示した化合物を特徴付けるために使用する。コラゲナーゼ消化およびHistopaque密度勾配分離によって膵島をオスのSD(Sprague Dawley)ラットから単離する。単離プロセスからの回収を容易にするために、GlutaMAXn(安定化した、L−グルタミンのジペプチド形態(Invitrogenカタログ番号61870−010))を含むRPMI−1640培地中で小島を一晩培養する。48ウェルプレート内のEBSS(アール平衡塩溶液)バッファー中での90分のインキュベーションによってインスリン分泌を測定する。手短に述べると、小島を最初に30分間、2.8mMグルコースを有するEBSS中でプレインキュベートし、次いで、150μlの2.8mMグルコースを含有する48ウェルプレート(4小島/ウェル)に移し、90分間、試験化合物の存在下または非存在下で2.8または11.2mMのグルコースを含む150μlのEBSSでインキュベートする。インキュベーションの終わりにウェルからバッファーを除去し、ラットインスリンELISAキット(Mercodia)を用いてインスリンレベルをアッセイする。このアッセイ系において、異なる濃度における実施例1の投与により、11.2mMグルコース単独で達成されるものと比べてインスリンの2〜4倍の増加が生じる。
【0089】
選択性アッセイ:
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α、δ、およびγ結合および機能アッセイ:
GPR40はPPARγに対するリガンドにより活性化されることが知られているため、PPARα、PPARδ、およびPPARγ結合および機能アッセイにおいて例示した化合物を試験して、GPR40に対する例示した化合物の選択性を測定する。本明細書に例示した化合物を、PPAR結合について以下に記載するように実質的に試験すると、概して10μM濃度の試験化合物で1000nMより高い結合値を有し、PPAR活性について陰性であるとみなされる。
【0090】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)技術を用いて、PPARα、δ、およびγ受容体に対する化合物の結合親和性を評価する。受容体をケイ酸イットリウムストレプトアビジンコーティングSPAビーズに結合させるために、ビオチン化オリゴヌクレオチドダイレクトリピート2(DR2)を使用する。PPARα、δ、γおよびレチノイドX受容体(RXR)αはHEK293細胞において過剰発現し、特異的受容体を含有する細胞溶解物を個々のアッセイにおいて用いる。10mMのHEPES pH7.8、80mMのKCl、0.5mMのMgCl、1mMのDTT、0.5%の3[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−プロパンスルホン酸(CHAPS)、および4.4%のウシ血清を含有する結合バッファー中でDR2を30分にわたってSPAビーズに結合させる。αおよびδ受容体アッセイについて、放射性標識した(約0.033.8μCiH)PPARα/δ二重アゴニスト基準化合物、およびγ受容体アッセイについて、放射性標識した(約0.037.3μCiH)PPARγアゴニスト基準化合物、110.3μgのイットリウムSPAストレプトアビジンコーティングビーズ、0.126nMのHDオリゴDR2、および上記の結合バッファー+14%グリセロール中の0.3μgのPPARαと0.5μgのRXRα、0.5μgのPPARδと0.5μgのRXRα、または1.25μgのPPARγと3.03μgのRXRαのいずれか、および5μgの剪断したサケ精子DNAの存在下で11の濃度の化合物のうちの1つを含む各ウェル中で細胞溶解物をインキュベートする。αおよびδ受容体アッセイについて、10,000nMの非標識PPARα/δ二重アゴニスト基準化合物、およびγ受容体アッセイについてPPARγアゴニスト基準化合物の存在下で非特異的結合を測定する。結合反応(96ウェル[Costar3632]プレート中に100μl/ウェル)を10時間インキュベートし、Wallac Microbetaで壊変毎分(dpm)をカウントする。4パラメーターロジスティック式を用いて11点濃度反応曲線をフィッティングすることによって化合物に対する受容体結合親和性(IC50)を測定する。チェン−プルソフ式を用いたIC50および飽和結合によって測定したKdからKを測定する。実施例1の化合物に関して、10μMまでの濃度で3つのPPAR結合アッセイのいずれも結合は検出されない。従って、本明細書に記載したアッセイは、実施例1の化合物が望ましくないPPAR活性を回避しながら、GPR40を選択的に活性化することを支持する。例示した化合物の相対的IC50は概してPPARアイソフォームに関して10μMより高く、その化合物が望ましいGPR40活性化をもたらしつつPPAR活性を回避することを支持している。
【0091】
Gal4 PPARα、Gal4 PPARδ、およびPPARγ受容体機能アッセイも使用して、例示した化合物の選択性をモニターする。アフリカミドリザルの腎組織由来のCV1細胞をFugeneを用いて種々の受容体およびレポータープラスミドにトランスフェクトする。Gal4 PPARαおよびPPARδアッセイについて、アデノウイルスの主要後期プロモーターによって駆動されるホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流でクローニングした、酵母転写タンパク質Gal4反応エレメントの5つのタンデムコピーを含有するレポータープラスミドを、Gal4 DNA結合ドメイン(DBD)を含有するハイブリッドタンパク質を構成的に発現するシミアンウイルス40(SV40)により駆動されるプラスミドと一緒にトランスフェクトし、PPARαまたはPPARδのいずれかのリガンドが結合する。PPARγアッセイに関して、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動されるPPARγおよびRXRαの両方をコードするプラスミドを、TKプロモーターおよび受容体反応エレメント(2×PPRE)によって駆動されるルシフェラーゼレポーターcDNAを含有するプラスミドと一緒にトランスフェクトする。5%活性炭処理済(charcoal−stripped)FBSを含むDMEM培地入りのT225cm細胞培養フラスコ中で細胞をトランスフェクトする。一晩のインキュベーション後、トランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、5%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地入りの不透明な96ウェルディッシュに播種し(15,000細胞/ウェル)、4時間インキュベートし、半対数希釈率(half log dilution)で0.17nM〜10μMの試験化合物または基準化合物に曝露する。化合物との24時間のインキュベーション後、細胞を溶解し、発光によって受容体活性化の尺度としてルシフェラーゼ活性を測定する。データを4パラメーターフィットロジスティックモデルにフィッティングして、EC50値を測定する。最大刺激の割合を10μMの適切なPPARアゴニスト基準化合物で得た最大刺激に対して測定する。上記の特異的PPAR共トランスフェクション(CTF)/機能アッセイにおいて10μM以下で試験した場合、実施例1の化合物を用いてPPARα、PPARδ、またはPPARγの機能的活性化は検出されない。従って、このアッセイは、望まれるように、例示した化合物がPPARアゴニスト活性を回避することを支持している。
【0092】
インビボでの効果:腹腔内グルコース耐性試験(IPGTT)
抗糖尿病効果、すなわちインスリンの増加およびグルコース濃度の低下を生じる、インビボでGPR40を活性化する例示した化合物の能力を試験するために、4日間の腹腔内グルコース耐性試験(ipGTT)研究を、IPGTTにおいて試験した各化合物を用いて行う。
【0093】
オスのBalb/c(アルビノマウス)マウス(8〜9週齢)を単一に収容し、通常の齧歯動物の食餌および水を自由に与える。動物を秤量し、体重により無作為化し、毎日、体重を記録する。研究開始後、1日に1回、3日間、メチルセルロースおよびtween−80を有する製剤を用いて動物に経口投与する。4日のIPGTT研究の前の晩に、クリーンケージ中で動物を一晩絶食させる。IPGTT(4日)の朝、IPGTT(グルコース2g/kg、i.p.)の60分前に、動物に化合物またはビヒクル単独を経口投与する。グルコースチャレンジ後、0、3、7、15、30、および60分に得た尾部の血液から血中グルコース濃度を測定する。血漿を単離し、それぞれのインスリン濃度を測定するために使用する。t=0からt=60分までの血糖可動域プロファイルを使用して、各処置についての濃度曲線下面積(AUC)を積分する。グルコース低下の割合を、ビヒクル群のAUCに対して化合物のAUCデータから算出する。0.1、0.3、1.0、3.0、または10mg/kgにて試験化合物を経口投与し、陽性対照を10mg/kgにて投与する。実施例1の化合物のいずれの濃度または陽性対照は、GTTの間、3分の時点でグルコース濃度を顕著に低下させない。対照的に、7分の時点での0.3、1.0、3.0、および10mg/kg用量の実施例1の化合物および陽性対照、ならびに15、30、および60分の時点での0.1、0.3、1.0、および3.0mg/kg用量の実施例1の化合物でグルコース濃度は顕著に低下する。陽性対照は30および60分の時点でグルコース濃度を顕著に低下させる。グルコース低下についてAUCに基づいた実施例1の化合物についてのEC50は0.21mg/kgである。この研究において、インスリン濃度は、GPR40の活性化と一致する3.0および10.0mg/kg用量の実施例1の化合物で顕著に増加した。この研究の結果は、実施例1によるGPR40の活性化がインビボでの抗糖尿病効果を導くことを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式の化合物:
【化1】

(式中、
は、H、FおよびClからなる群より選択され、
は、Hまたは−C≡CCHであり、
Xは、−CHCH−、−CH=CH−、および−N(R)CH−からなる群より選択され、
は、HおよびC1−3アルキルからなる群より選択され、
は、−C(R)−および−N−からなる群より選択され、
は、H、OCH、およびCHからなる群より選択され、
は、−S−および−O−からなる群より選択され、
は、−C(R)−および−N−からなる群より選択され、
は、H、OCH、およびCHからなる群より選択され、
ここで、ZおよびZからなる群より選択される少なくとも1つは−C(R)−または−C(R)−である)
またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項2】
がHである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
が−C≡CCHである、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
前記化合物がS異性体である、請求項3に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
がFであり、RがHである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
が−S−である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が−C(R)−である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
がHまたはCHである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
が−C(R)−である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
がHである、請求項9に記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
Xが−CH=CH−である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項12】
Xが−N(R)CH−である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
がCHである、請求項12に記載の化合物またはその塩。
【請求項14】
前記化合物は製薬的に許容し得る塩である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
下記の式の化合物
【化2】

またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項16】
製薬的に許容し得る担体と、請求項1〜15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物またはその製薬的に許容し得る塩とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
別の薬剤をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬的に許容し得る塩を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における糖尿病を治療する方法。
【請求項19】
治療に使用するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬的に許容し得る塩。
【請求項20】
糖尿病の治療に使用するための請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬的に許容し得る塩。

【公表番号】特表2013−512277(P2013−512277A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542076(P2012−542076)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057359
【国際公開番号】WO2011/066183
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】