説明

新規セスタテルペン化合物、抗菌剤及び皮膚外用剤

【課題】少なくとも皮膚炎の原因菌に対して抗菌活性を示す新規化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物。


(式中、Rは炭素数3〜5のカルボキシアルキレンカルボニル基又は水素原子を表す。Rは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規セスタテルペン化合物、並びにこれを含有する抗菌剤及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アクネ菌(Propionibacterium acnes)やブドウ球菌(Staphylococcus属細菌)は、皮膚の常在菌として知られる一方で、皮膚の炎症にも深く関与している。
アクネ菌は、皮脂をグリセリンと脂肪酸に分解して皮膚を弱酸性に保つことで病原菌の侵入や繁殖を抑える役割を担っているが、皮脂が毛穴等に詰まった状態が続くと、この皮脂を栄養としてアクネ菌が増殖し、これが引き金となってニキビ等の炎症が引き起こされる。アクネ菌はポルフィリンを産生することが知られており、このポルフィリンもニキビの悪化に関与すると考えられている。
一方、ブドウ球菌は、ヒトの皮膚や腸に存在し、通常は無害である。しかし、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のように毒性の強いものは、傷口の化膿やとびひ等の原因菌としても知られ、炎症を起こした傷口から体内に侵入して髄膜炎、肺炎、腹膜炎、敗血症等を引き起こすこともある。
【0003】
皮膚の炎症の予防・改善には、炎症の原因菌の増殖を効果的に制御することが重要であり、皮膚の健康の維持・改善に有用な新たな抗菌性薬剤の開発が望まれていた。
【0004】
ユニコーン(True unicorn)は、ユリ科ソクシンラン属に属する植物であり、その抽出物は、胃粘液分泌促進、子宮強壮、子宮鎮痛等の生理作用を示すことが知られている。ユニコーンに由来する生理活性物質としては、ステロイド配糖体の一種であるジオスゲニンの存在が報告されており、このジオスゲニンは、エストロゲン様作用を示すことで、上記生理作用に関与すると考えられている。
しかし、上記ジオスゲニンを除いては、ユニコーンに由来する生理活性物質を特定した報告はなく、ユニコーンに由来する抗菌成分の存在も知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗菌活性を示す新規化合物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、ユニコーン(True unicorn)の抽出物が皮膚炎の原因菌に対して抗菌活性を有することを見い出した。さらに、ユニコーン抽出物から抗菌活性成分の同定を試みたところ、これまで知られていない新規な構造のセスタテルペン化合物群を単離することに成功した。本発明はこれらの知見に基づき完成させるに至ったものである。
【0007】
本発明は、 下記一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物に関する。
【0008】
【化1】

(式中、Rは炭素数3〜5のカルボキシアルキレンカルボニル基又は水素原子を表す。Rは炭素数が1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。)
【0009】
また、本発明は、上記セスタテルペン化合物を含有する組成物に関する。
また、本発明は、上記セスタテルペン化合物を有効成分として含有する抗菌剤に関する。
また、本発明は、上記セスタテルペン化合物を有効成分として含有する皮膚外用剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセスタテルペン化合物は、少なくとも皮膚炎原因菌に対して優れた抗菌活性を示す新規な化合物である。
また、本発明の組成物、皮膚外用剤及び抗菌剤は、少なくとも皮膚炎原因菌に対して優れた抗菌活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。
本発明のセスタテルペン化合物は、上記一般式(I)で表される。
上記一般式(I)中、Rは、下記式(A)で表される炭素数3〜5のカルボキシアルキレンカルボニル基、又は水素原子である。
【0012】
【化2】

【0013】
上記一般式(A)で表されるカルボキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基(一般式(A)中、−(CH)−)は、メチレン基(n=1)又はエチレン基(n=2)であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。すなわち、上記カルボキシアルキレンカルボニル基の炭素数は、3又は4であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0014】
上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。当該アルキル基はメチル基(炭素数1)又はエチル基(炭素数2)であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0015】
本発明のセスタテルペン化合物は、下記式(II)〜(V)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
セスタテルペンとは、炭素数25(C25)のイソプレン構造を有する化合物の総称である。上記一般式(I)において、R及びRが共に水素原子である化合物は、イソプレン構造を有するC25化合物であり、セスタテルペンに分類される。一方、R及びRの少なくとも一方が炭素原子を含む基である場合は、セスタテルペンの誘導体として位置付けられる。本明細書において、「セスタテルペン化合物」とは、セスタテルペン及びセスタテルペン誘導体の双方を含む概念として用いる。
【0021】
本発明のセスタテルペン化合物は抗菌活性を示す。当該「抗菌」には、菌の増殖を抑制することと菌を死滅させることの両概念が包含される。本発明のセスタテルペン化合物はグラム陽性菌に対して優れた抗菌活性を示し、例えば、アクネ菌やブドウ球菌等に対して抗菌活性を示しうる。
本発明のセスタテルペン化合物は、アクネ菌(Propionibacterium acnes)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等の皮膚の炎症の原因菌に対して特に優れた抗菌活性を示しうる。中でも、後述する実施例に示すように、上記式(II)、(III)及び(V)で表される化合物は、アクネ菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性に特に優れている。
【0022】
本発明のセスタテルペン化合物は、特定の植物から抽出することにより得ることができる。上記植物の例として、ユニコーンが挙げられる。具体的には、ユニコーンの任意の部位、例えば、根、茎、全草、葉、花等を材料として特定の溶媒を用いて抽出操作を行い、アクネ菌等に抗菌活性を有する抽出物を得、上記抽出物を液液分配やカラムクロマトグラフィー等の通常の分画手法を組合わせて順次分画していき、得られた画分の抗菌活性を指標に比活性の高い画分を得ていくことで、本発明のセスタテルペン化合物を単離することができる。
【0023】
上述したユニコーン抽出物の調製には、ユニコーンの上記各部位をそのまま、又は乾燥粉砕して用いることができ、これらの水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いてもよい。また、これらを精油等により精製したものを用いてもよい。本発明に用いるユニコーン抽出物は、上記各部位のいずれかの抽出物であってもよいし。2種以上の部位からの抽出物であってもよい。本発明に用いるユニコーン抽出物として、根茎部の抽出物を好適に用いることができる。また、ユニコーン抽出物として市販品を用いることもできる。
【0024】
上記ユニコーン抽出物の抽出に用いうる溶媒として、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;及びピリジン類等が挙げられ、これら2種以上混合溶媒を用いることができるが、水性アルコールを含有する溶媒を用いることが好ましく、エタノールを含有する溶媒を好適に用いることができる。エタノールを含有する溶媒はエタノール水溶液であることが好ましく、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%の濃度のエタノール水溶液である。
【0025】
また、抽出条件も通常の条件を適用できる。例えば、抽出原料となるユニコーンの特定の部位を、好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜60℃、さらに好ましくは10〜30℃の温度下で、好ましくは1時間〜3週間、より好ましくは5時間〜1週間程度、上記溶媒中に浸漬又は加熱還流することでユニコーン抽出物を得ることができる。
また、本発明におけるユニコーン抽出物として市販品を用いることもできる。
【0026】
また、本発明のセスタテルペン化合物は、通常の方法により化学合成することができる。
【0027】
本発明の組成物は、本発明のセスタテルペン化合物を含有する。本発明の組成物には、本発明のセスタテルペン化合物に包含される1種又は2種以上の化合物が含有される。
【0028】
本発明の組成物に含まれうる、本発明のセスタテルペン化合物以外の成分に特に制限はなく、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。
組成物の形態に特に制限はなく、例えば、液体、流動体、粉体、固体、半固形体、乳化物、ゲル、クリーム、軟膏、ローション等が挙げられる。
【0029】
本発明の組成物の用途に特に制限はないが、抗菌活性を示す薬剤として好適に用いることができる。特に、皮膚炎の原因菌であるアクネ菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌等に対する抗菌用途に好適に用いることができる。
【0030】
本発明の抗菌剤は、本発明のセスタテルペン化合物の1種又は2種以上を有効成分として含有する。本発明のセスタテルペン化合物以外に、本発明の抗菌剤に含有されうる他の成分の例としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の抗菌剤中の本発明のセスタテルペン化合物の含有量に特に制限はないが、固形分換算で0.00001〜10質量%であることが好ましく、0.0001〜5質量%であることがより好ましい。
【0031】
本発明の抗菌剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧料でありうる。本発明の抗菌剤の形態に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤、点鼻剤、坐剤、点滴剤、点眼剤等の形態をとることができる。
皮膚外用剤の形態では、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、ゲル系、軟膏系、クリーム、ミスト、エアゾール、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、幅広い形態をとりうる。また、皮膚外用剤の形態における製品形態としては、ボディー化粧料、化粧水、乳液、クリーム及びパック等のフェーシャル化粧料、ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ及びサンスクリーン等のメーキャップ化粧料、メーク落とし、洗顔料及びボディーシャンプー等の皮膚洗浄料、ヘアーリンス及びシャンプー等の毛髪化粧料、浴用剤、軟膏、制御放出パッチ剤、貼付剤、あぶら取り紙、芳香化粧料等が挙げられる。
また、経口剤の形態の例としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤及び吸入剤などが挙げられる。
本発明の抗菌剤は、本発明のセスタテルペン化合物を抗菌成分とし、皮膚炎の炎症原因菌であるアクネ菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌等に対する抗菌作用を示す。この抗菌作用により、ニキビや化膿等の皮膚炎の症状を予防することができ、また、これらの皮膚炎の症状を緩和・改善することができる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、本発明のセスタテルペン化合物の1種又は2種以上を有効成分とし、皮膚炎の炎症原因菌であるアクネ菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌等に対する抗菌作用を示す。この抗菌作用により、ニキビや化膿等の皮膚炎の症状を予防することができ、また、これらの皮膚炎の症状を緩和・改善することができる。すなわち、本発明の皮膚外用剤は、抗菌性の皮膚外用剤として好適に用いることができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、本発明のセスタテルペン化合物以外の成分を含んでもよい。このような成分の例としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、粉体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の皮膚外用剤中の本発明のセスタテルペン化合物の含有量に特に制限はないが、固形分換算で0.00001〜10質量%であることが好ましく、0.0001〜5質量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧料でありうる。本発明の皮膚外用剤の形態に特に制限はなく、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、ゲル系、軟膏系、クリーム、ミスト、エアゾール、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、幅広い形態をとりうる。また、本発明の皮膚外用剤の製品形態も任意であり、例えば、ボディー化粧料、化粧水、乳液、クリーム及びパック等のフェーシャル化粧料、ファンデーション、おしろい、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ及びサンスクリーン等のメーキャップ化粧料、メーク落とし、洗顔料及びボディーシャンプー等の皮膚洗浄料、ヘアーリンス及びシャンプー等の毛髪化粧料、浴用剤、軟膏、制御放出パッチ剤、貼付剤、あぶら取り紙、芳香化粧料等が挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤の使用量は、有効成分である本発明のセスタテルペン化合物の含有量により異なるが、例えば、クリーム状、軟膏状及び液状製剤の場合、皮膚面1cm当たり0.0001〜20mg使用するのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
製造例 本発明のセスタテルペン化合物の抽出
ユニコーン根茎部の粉砕物(Monteagle Herbs社より入手)160.83gを50質量%エタノール水溶液800mLに3日間浸漬した。この浸漬液をろ過して得られたろ液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、固形分11.82gを得た。この固形分を液液分配(酢酸エチル/水)に供し、酢酸エチル相を濃縮することで酢酸エチル可溶画分を6.21gを得た。これをハイフラッシュカラム(山善社製;60×180mm)に通し、クロロフォルム/メタノール混合溶媒で溶出させることで13の画分(EA−1〜EA−13)を得た。さらに、画分EA−7(2.38g)のうち、45.9mgをODS−3カラム(GLサイエンス社製;10×250mm)に通し、アセトニトリル/水(0.1%ギ酸)混合溶媒で溶出させて、3つの画分(EA−7−1〜EA−7−3)を得た。また、画分EA−9(794.2mg)のうち、39.71mgをODS−3カラム(GLサイエンス社製;10×250mm)に通し、アセトニトリル/水(0.1%ギ酸)混合溶媒で溶出させて、7つの画分(EA−9−1〜EA−9−7)を得た。EA−7−1〜EA−7−3、EA−9−3及びEA−9−4の各画分に存在する単離成分(それぞれ、単離成分EA−7−1〜EA−7−3、EA−9−3及びEA−9−4と呼ぶ。)に関して、NMRスペクトルを測定した。
得られたNMRスペクトルの結果及びこれらのNMRスペクトルから決定した各単離成分の化学構造を表1〜3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
試験例1 単離成分の活性評価−1
単離成分EA−7−1〜EA−7−3、EA−9−3及びEA−9−4を各々エタノールに溶解させて1mg/mL溶液を調製し、終濃度0.1mg/mLでアクネ菌に対する抗菌活性を評価した。抗菌活性は、ルシフェラーゼを利用してATP量を定量する市販キット(商品名:BacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay、Progega社製)を用いて評価した。
変法GAM培地(日水製薬社製)を用いて37℃で、3日間嫌気培養したアクネ菌(Propionibacterium acnes)JCM6425株の培養液10μLと、変法GAM培地80μL及び評価サンプル10μLを96穴プレートのウェル内で混合し、37℃で20時間嫌気培養した。培養後、BacTiter-GloTM 試薬100μLをウェルに添加し、1420 Multilabel Counter(Wallac社製)を用いて、530nmの蛍光強度(励起光:488nm)を定量した。また、上記単離成分の代わりにエタノールを添加した系を陰性コントロールとして同様の試験を行った。
結果を下記表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4より、本発明の単離成分EA−7−1、EA−7−2及びEA−9−4において蛍光強度の明らかな低下が認められ、これらの単離成分がアクネ菌に対して優れた抗菌活性を示すことがわかった。
【0044】
試験例2 単離成分の活性評価−2
単離成分(EA−7−1〜EA−7−3、EA−9−3及びEA−9−4)を各々エタノールに溶解させて1mg/mL溶液を調製し、終濃度0.1mg/mLで黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を評価した。抗菌活性は、ルシフェラーゼを利用してATP量を定量する市販キット(商品名:BacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay、Progega社製)を用いて評価した。
SCD培地(ダイゴ社製)を用いて37℃で、1日間好気培養した黄色ブドウ球菌(Staphyllococus aureus)IFO13276株の培養液10μLと、SCD培地80μLおよび評価サンプル10μLを96穴プレートのウェル内で混合し、37℃で20時間好気培養した。培養後、BacTiter-GloTM 試薬100μLをウェルに添加し、1420 Multilabel Counter(Wallac社製)を用いて、530nmの蛍光強度を定量した。また、上記単離成分の代わりにエタノールを添加した系を陰性コントロールとして同様の試験を行った。
結果を下記表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
表5より、単離成分EA−7−1、EA−7−2、EA−9−3及びEA−9−4において明らかな蛍光強度の低下が認められ、これらの単離成分が黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を示すことがわかった。特に、アクネ菌に体する抗菌活性が認められた単離成分EA−7−1、EA−7−2及びEA−9−4において、黄色ブドウ球菌に対しても高い抗菌活性を認めた。
【0047】
試験例3 単離成分を配合したローション(皮膚外用剤及び抗菌剤の一形態)の評価
単離成分(EA−7−1、EA−7−2及びEA−9−4)を用いて、これらを1%(w/v)配合したローションを下記表6に示す処方で調製した。
【0048】
【表6】

【0049】
上記ローション(1)〜(3)について、上記試験例1と同様に市販キットを用いて、培養液中の終濃度10%(単離成分の終濃度1mg/ml)でのアクネ菌に対する抗菌評価を行った。その結果、単離成分を含まないローションを用いたコントロールに比べて、単離成分を含むローション(1)〜(3)では蛍光強度が有意に減少していた。すなわち、単離成分(EA−7−1、EA−7−2及びEA−9−4)は、皮膚外用剤の形態においても抗菌活性を示すことがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物。
【化1】

(式中、Rは炭素数3〜5のカルボキシアルキレンカルボニル基又は水素原子を表す。Rは炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。)
【請求項2】
一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物が、下記式(II)〜(V)のいずれかで表される、請求項1に記載のセスタテルペン化合物。
【化2】

【化3】


【化4】

【化5】

【請求項3】
請求項1又は2に記載のセスタテルペン化合物を含有する組成物。
【請求項4】
下記一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物を有効成分として含有する抗菌剤。
【化6】

【請求項5】
一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物が、下記式(II)〜(V)のいずれかで表される、請求項4に記載の抗菌剤。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【請求項6】
下記一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物を有効成分として含有する皮膚外用剤。
【化11】

【請求項7】
一般式(I)で表されるセスタテルペン化合物が、下記式(II)〜(V)のいずれかで表される、請求項6に記載の皮膚外用剤。
【化12】

【化13】


【化14】

【化15】


【公開番号】特開2012−206962(P2012−206962A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72569(P2011−72569)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】