説明

新規ターメロン誘導体

【課題】新規なアセチルコリンエステラーゼ(AchE)阻害剤を提供する。
【解決手段】(+)-(S)-ar-ターメロン、又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンを生物変換することにより得られる新規ターメロン誘導体は、新規なアセチルコリンエステラーゼ(AchE)阻害剤として、アルツハイマー型認知症の予防又は治療となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(+)-(S)-ar-ターメロン((+)-(S)-ar-Turmerone)又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン((+)-(S)-Dihydro-ar-turmerone)を生物変換(biotransformation)して得られる化合物又はその塩、該化合物又はその塩を有効成分として含有するアセチルコリンエステラーゼ(以下、AChEともいう)阻害剤及び該化合物又はその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(-)-α-ビサボロール、(+)-(S)-ar-ターメロン及び(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン等に代表されるビサボラン(bisabolane)型のセスキテルペノイドは、揮発性の天然物質として極めて安定に存在しており、生物学的活性の観点から数多く研究されている(特許文献1及び非特許文献1〜4参照)。
(+)-(S)-ar-ターメロン(1)及び(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2)について、以下の式に表す。
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【0005】
これらのビサボラン型のテルペノイドである、(+)-(S)-ar-ターメロンや(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンは、AChEに対して有力な阻害活性を有することを我々が報告した(非特許文献5参照)。
【0006】
ところで、先進工業国において、アルツハイマー型認知症(AD)は、高齢者人口の急速な増加に伴い、深刻な問題になっており、ADの治療に対してAChE阻害剤が有用であるということが報告されている。AChE阻害剤としては、いくつかの合成化合物(例えば、タクリン、リバスチグミン(rivadtigmine)、ドネペジル及びガランタミン等)が知られているが、これらの化合物は、脳や周辺組織のコリン作動性刺激(cholinergic stimulation)による{さどう せい しげき}副作用が懸念される(非特許文献6)。そのため、新規なAChE阻害剤を有する化合物、特に、副作用の低い天然物由来の阻害剤が深く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−157205号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Itokawa, H.; Hirayama, F.; Funakoshi, K.; Takeya, K. Chem. Pharm. Bull. 1985, 33, 3488-3492.
【非特許文献2】Jayamasinghe, L.; Kumarihamy, B. M. M.; Jayamarathana, K. H. R. N. Udishani, N. W. M. G. Bandara, B. M. R.; Hara, N.; Fujimoto, Y. Phytochemistry. 2003, 62, 637-641.
【非特許文献3】Imai, S.; Morikiyo, M.; Furihata, K.; Hayakawa, Y.; Seto, H. Agric. Biol. Chem. 1990, 54 (9), 2367-2371.
【非特許文献4】Ferrreira, L. A. F.; Henriques, O. B.; Andreoni, A. A. S.; Vital, G. R. F.; Campos, M. M. C.; Habermehl, G. G.; Moraes, V. L. G. Toxicon. 1992, 30, 1211-1218.
【非特許文献5】Fujiwara, M.; Yagi, N.; Miyazawa, M. J. Agric. Food Chem. 2010. 58, 2824-2829.
【非特許文献6】Zarotsky, V.; Sramek, J. J.; Cutler, N. R. Am. J. Health-Syst Pharm. 2003, 60(5), 446-452.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンを生物変換して得られる新規な化合物又はその塩、該化合物又はその塩を有効成分として含有するAChE阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、天然物由来の(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンが強いAChE阻害活性を示すことに着目し、これらの化合物を原料として生物変換することにより、新規な化合物を得た。さらに、この新規化合物は、強いAChE阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の化合物又はその塩、及び該化合物又はその塩を含むAChE阻害及び該化合物又はその塩の製造方法を提供する。
【0012】
項1.一般式(A1):
【0013】
【化3】

【0014】
(式(A)中、Rは、水素又は炭素数1〜3の低級アルキル基であり、Rは、水素又はヒドロキシル基であり、Rは、
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R3aは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアセチル基である)、
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R3aは、前記と同じである)、又は
【0019】
【化6】

【0020】
である)
で表される化合物又はその塩。
【0021】
項2.一般式(A1)が、
【0022】
【化7】

【0023】
、又は:
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、R、R、又はRは、前記式と同じである)
で表される項1に記載の化合物又はその塩。
【0026】
項3.一般式(A)が、一般式(3):
【0027】
【化9】

【0028】
一般式(4):
【0029】
【化10】

【0030】
一般式(5):
【0031】
【化11】

【0032】
又は
一般式(6):
【0033】
【化12】

【0034】
で表される項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【0035】
項4.一般式(7):
【0036】
【化13】

【0037】
で表される項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【0038】
項5.項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその塩を有効成分として含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
【0039】
項6.項5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する老人性認知症の予防又は治療薬。
【0040】
項7.項5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有するアルツハイマー型認知症の予防又は治療薬。
【0041】
項8.項1〜3のいずれかに記載の化合物又はその塩の製造方法であって、(+)-(S)-ar-ターメロンを生物変換することを特徴とする製造方法。
【0042】
項9.項1、2又は4に記載の化合物又はその塩の製造方法であって、(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンを生物変換することを特徴とする製造方法。
【0043】
項10.黒色{こくしょく}アスペルギルス菌により生物変換する請求項8又は9に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明の一般式(A)で表される化合物又はその塩は新規であり、高いAChE阻害活性を有しているため、老人性認知症、特に、アルツハイマー型認知症の治療薬又は予防薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1におけるA. nigerによって(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の生物変換の経時変化を表すグラフである。
【図2】実施例2におけるA. nigerによって(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(1)の生物変換の経時変化を表すグラフである。
【図3】実施例1で得られた化合物(5)及び(6)について観測されたNOE及びHMBCを示す。
【図4】試験例で実施したAChE活性に対する化合物(3)〜(7)の阻害効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一般式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)ともいう)又はその塩は、以下に示すものである。
【0047】
【化14】

【0048】
式(A)中、Rは、水素又は炭素数1〜3の低級アルキル基である。
【0049】
は、水素又はヒドロキシル基であり、より具体的には、Rが水素である場合には、
【0050】
【化15】

【0051】
であることが好ましく、Rが、ヒドロキシル基である場合には、
【0052】
【化16】

【0053】
であることが好ましい。
【0054】
一般式(A)におけるRは、
【0055】
【化17】

【0056】
(式中、R3aは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアセチル基である)、
【0057】
【化18】

【0058】
(式中、R3aは、前記と同じである)、又は
【0059】
【化19】

【0060】
である。
【0061】
化合物(A)の具体例としては、一般式(3):
【0062】
【化20】

【0063】
一般式(4):
【0064】
【化21】

【0065】
一般式(5):
【0066】
【化22】

【0067】
一般式(6):
【0068】
【化23】

【0069】
一般式(7):
【0070】
【化24】

【0071】
で表される化合物(以下、化合物(3)〜(7))が挙げられ、これらの化合物がAChE阻害活性において、特に有用であるという点から好ましい。
【0072】
化合物(A)は、(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン等から生物変換することにより代謝産物として製造され、(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンの生物変換には、黒色{こくしょく}アスペルギルス菌(Aspergillus niger(以下、A. nigerともいう))が用いられる。
【0073】
原料として用いられる(+)-(S)-ar-ターメロン(1)及び(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2)は、以下のような構造式を有する化合物であって、「Fujiwara, M.; Yagi, N.; Miyazawa, M. J. Agric. Food Chem.2010. 58, 2824-2829.」に記載される方法により、イエローバタイ(P. dasyrachis)から単離することができる。
【0074】
【化25】

【0075】
【化26】

【0076】
生物変換する方法としては、前記(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンを添加した培地中に菌糸体をさらに加えることによって行われる。
【0077】
菌糸体としては、Aspergillus niger等のAspergillus属、Chaetonium globosum等のChaetomium属、Cladosporium cladosporioides等のCladosporium属、Gliocladium virens等のGliocladium属、Aureobasidium pullulans等のAureobasidium属、Penicillium funiculosum等のPenicillium属、Rhizopus oryzae等のRhizopus属、Fusarium属、Alternaria属、Tyromyces属、Coriolus属、Myrothecium属、Mucor属、Epicoccum属、Trychoderma属、Phoma属、Geotrichum属、Monilia属等が挙げられ、これらの中で、Aspergillus属が好ましく、Aspergillus nigerがより好ましい。
【0078】
生物変換後、生成物と菌糸体を分離し、必要に応じて、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することにより得られる。
【0079】
また、(+)-(S)-ar-ターメロン又は(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン等の原料を生物変換して得られる化合物において、置換基として有するカルボン酸基やヒドロキシル基を既知の反応により、エステル化、アルコキシ化、アセチル化することにより、前記化合物(A)を得ることが可能であり、また、既知の塩基と反応させることによって、化合物(A)の塩を得ることが可能である。
【0080】
なお前述のように、(+)-(S)-ar-ターメロンを生物変換することによって前記化合物(3)〜(6)を製造した場合、化合物(3)〜(6)から化合物(3)を分離し、分離した化合物(3)をさらに生物変換することによって、化合物(5)及び化合物(6)を製造することも可能である。また、化合物(3)〜(6)から化合物(4)を分離し、分離した化合物(4)をさらに生物変換することによって、化合物(5)を製造することも可能である。
【0081】
ここで、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)を出発物質とした場合の生物変換経路を以下に示す。(+)-(S)-ar-ターメロン(1)は、生物変換によって、15位の炭素で酸化、及び7位の炭素で立体特異的に酸化され、化合物(3)が生成される。化合物(3)は、さらに生物変換により、12位の炭素で化合物(3)と同じタイプの酸化により化合物(5)が得られ、また、化合物(3)において4−メチル−フラノ環が形成されることにより化合物(6)が生成されるものと推測される(経路a)。
【0082】
また、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)は、生物変換によって、12位の炭素及び15位の炭素で、前記と同じようなタイプの酸化が生じ、化合物(4)が生成される。化合物(4)は、さらに生物変換によって、7位の炭素で立体特異的な酸化され化合物(5)が生成されるものと推測される(経路b)。
【0083】
【化27】

【0084】
本発明の化合物(A)又はその塩は、AChE阻害活性を有している。そのため、化合物(A)又はその塩はそのままAChE阻害剤として用いることが可能である。
【0085】
ACE阻害剤は、各種用途に用いることができる。例えば、AChE阻害剤を医薬品として用いる場合、哺乳動物(特に、ヒト)における老人性痴呆患症の予防薬又は治療薬、特にアルツハイマー型認知症の予防薬又は治療薬として用いられる。
【0086】
AChE阻害剤は、慣用されている方法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の剤に製剤化することができる。
【0087】
製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、及び必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分及び配合量を適宜選択して常法により製剤化される。
【0088】
医薬製剤を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常用いられる方法であればよく、経口投与でも非経口投与でもよい。本発明にかかる医薬の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、疾患の具体的な種類等に応じて、製剤学的な有効量を適宜選ぶことができる。
【0089】
AChE阻害剤は、製剤全体に対し、通常0.01〜100重量%程度(好ましくは、0.1〜5重量%程度)含有していればよい。
【0090】
また、AChE阻害剤は、例えば、清涼飲料、乳製品(加工乳、ヨーグルト)、菓子類(ゼリー、チョコレート、ビスケット、ガム、錠菓)等の各種飲食品に配合することもできる。
【実施例】
【0091】
次に、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0092】
実施例1
・黒色{こくしょく}アスペルギルス菌(fungus aspergillus niger)の培養
蒸留水1L中に、ショ糖(15g)、グルコース(15g)、ポリペプトン(5g)、塩化カリウム(500mg)、硫酸マグネシウム(500mg)、リン酸二水素カリウム(1g)及び硫酸第二鉄(10mg)を含むオートクレーブした培養液を調製し、500ml三角フラスコに前記培養液を250ml添加し、さらに、4℃で寒天培地上で保持した黒色{こくしょく}アスペルギルスNBRC 4414 ((独)製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門(NITE Biological Resource Center)から購入)の胞子を添加し、培養した。培養液は、2日間インキュベーターで、28℃の温度で振とうしながら保持した。50mlペトリ皿に培養地30mlをのせ、さらに得られた菌糸体を移植させ、36〜48時間(菌糸体が培養地の表面積の60〜80%を占めるまで)培養した。
【0093】
・(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の代謝化合物の製造
前記培養した培地に、さらにジメチルスルホキシド(DMSO)200μlに溶解させた(+)-(S)-ar-ターメロン(1)を3mg添加した。なお、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)は、「Fujiwara, M.; Yagi, N.; Miyazawa, M. J. Agric. Food Chem.2010. 58, 2824-2829.」に記載される方法により、P. dasyrachisから単離したものであり、以下に示すものである。
【0094】
(+)-(S)-ar-ターメロン(1);
淡黄色オイル;
[α]29D+ 63.7° (c = 1.00, CHCl3);
IR (film) cm-1: 1685, 1620;
1H-NMR (CDCl3, 700 MHz) δTM 7.10 (4H, brs, ArH), 6.02 (1H, m, H-10), 3.29 (1H, m, H-7), 2.71 (1H, dd, J = 15.5, 6.0 Hz, H-8), 2.61 (1H, dd, J = 15.5, 8.3 Hz, H-8), 2.31 (3H, s, H-15), 2.10 (3H, s, H-13), 1.85 (3H, d, J =1.2, H-12), 1.24 (3H, d, J = 6.9 Hz, H-14); 13C NMR,; (表2参照)
EIMS m/z (relative intensity) 216 (M+ 30 %), 201 (23 %), 132 (22 %), 119 (75 %), 117 (14 %), 91 (16 %), 83 (100 %), 77 (7 %), 55 (18 %);
HR-EIMS 216.1602 (M+, C15 H20O, calcd. 216.1582).
前記(+)-(S)-ar-ターメロン(1)を添加した培地を28℃、静置条件下で培養し、ペトリ皿中の培地及び菌糸体を濾過することにより分離した。分離した菌糸体は、pH4にまで酸性にし、酢酸エチル30mlで3回抽出した。得られた抽出物を、無水Na2SO4によって乾燥し、減圧することによって酢酸エチルを除去した。
【0095】
(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の代謝産物の存在を確認するために、薄層クロマトグラフィー(TLC)及び高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。なお、TLC分析は、プレコートされたシリカゲルプレート(60 F254)(Merck社製)を用いて行い、スポットは、バニリン硫酸塩(vanillic sulphate)試薬を散布した後、加熱することによって可視化することにより確認した。また、HPLCの条件を以下に示す。
・LC-10Ai装置((株)島津製作所製)
・UV ディテクター(SPD-M10A)
・カラム(AR-IIカラム(4.6×250 mm) (ナカライテスク(株)製) )
・移動層(1ml/min)(CH3CN-H2O liner gradient (0 min, 70:30; 50 min, 30:70, v/v))
図1に、培養したA. nigerによる(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の生物変換の経時的変化を示す。図1におけるプロット(■)は、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)を表し、プロット(○)は化合物(3)を表し、プロット(□)は、化合物(4)を表し、プロット(●)は化合物(5)を表し、プロット(▲)は化合物(6)を表す。
【0096】
前記の結果より、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)を生物変換した代謝産物において、化合物(5)及び化合物(6)が主生成物であり、化合物(3)及び化合物(4)が少量、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)から生物変換されることにより得られたことが確認できた。
【0097】
・(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の代謝産物の単離
DMSO(20 ml)に溶解させた(+)-(S)-ar-ターメロン(1)(300 mg)を上記培地に添加した。培養時間(3日間)の経過後、培地と菌糸体を濾過によって分離した。培養液をpH4まで酸性にし、酢酸エチル500 mlで3回抽出した。得られた抽出物を、減圧することによって酢酸エチルを除去し、粗成生物(400 mg)を得た。抽出物をNaHCO3の5%水溶液及び酢酸エチルで分液し、酢酸エチル層を取り出し、減圧することによって乾燥して、中性分画(neutral fraction)を得た。アルカリ層を、2NのHClでpH3になるまで酸性にし、水と酢酸エチルにより抽出した。抽出物(酢酸エチル層)を、減圧することによって酢酸エチルを除去し、酸性分画(acid fraction)を得た。酸性分画(acid fraction)をさらに、CH2Cl2/MeOHでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200〜300メッシュのシリカゲル60(Merck社製))により精製することにより、2つの分画を得た。分画したフラクションを、さらに、semi-preparative reversed-phase HPLC(CH3CN-H2O (60:40, v/v + 0.05% CH3COOH))によって、分画することによって、化合物(3)(30 mg)、化合物(4)(25mg)、化合物(5)(90 mg)及び化合物(6)(66 mg)をそれぞれ得た。
【0098】
・化合物(3)の同定
化合物(3)について、HR-FABMS、IRスペクトル、1H NMR、13C NMR、HMBC、及び旋光度測定により同定した。なお、HR-FABMSは、日本電子(株)製のJEOL the Tandem MS station JMS-700を用い、IRスペクトルは日本分光(株)製のFT/IR-470 Plus Fourier Transform Infrared Spectrometerを用い、1H- and 13C-NMR, COSY, heteronuclear multiple quantum coherence (HMQC), heteronucler multiple bond coherence (HMBC), NOESYは、日本分光(株)製のJEOL ECA spectrometers (600 MHz 及び700 MHz の1H NMR並びに 150 MHz and 175 MHz の13C-NMR)によって、旋光度は、日本分光(株)製のCo. LTDDIP-1000によってそれぞれ測定した。
【0099】
HR-FABMSにより測定した[M+H] +は、m/z 263.1284 (calcd. 263.3105 for C15H19O4)であり、親基質である(+)-(S)-ar-ターメロン(1)より46atomic mass unit(amu)大きく、C15H18O4であると示唆される。
【0100】
IRスペクトル測定により、3440cm−1、及び1685 cm-1に吸収ピークが観測された。これにより、化合物(3)には、ヒドロキシル基及びカルボニル基が存在することが確認できた。
【0101】
(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の1H NMR と比較して、化合物(3)の1H NMRは、15位のメチル基と7位のメチン基のピークの消失が確認できた。
【0102】
化合物(3)と(+)-(S)-ar-ターメロン(1)との13C NMRの比較により、13個のピークは互いに類似したケミカルシフトを示した。残りの2つの13Cのケミカルシフトにおいて、化合物(3)のピークには、オキシ基を有する四級炭素(δC 73.7)と、カルボン酸基の炭素(δC170.4)が確認できた。
【0103】
13C NMRにより、カルボン酸基の15位の炭素でカップリングされた芳香族化合物の4位の四級炭素のupfield shift及び芳香族化合物の1位の四級炭素のdownfield shiftが観測され、化合物(3)においてα,β-共役カルボキル基が存在することを示唆した。
【0104】
化合物(3)のHMBC測定によって、8位の炭素のプロトン(δH 3.17及び2.89)/7位の炭素、14位のプロトン(δH 1.52)/7位の炭素との間のHMBCにより、8位の炭素において2つの炭素との結合を有し、また、2位、6位の炭素のプロトン(δH 7.55)/7位の炭素との間のHMBCにより、7位の炭素において3つの炭素との結合を有することを確認した。
【0105】
なお、プロトンと炭素の同定は、H-H COSY, HSQC及びHMBCにより確認できた。
【0106】
以上の結果から、化合物(3)の構造は、新規化合物である(+)-7-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸であることが確認できた。
【0107】
次に、化合物(3)の7位の炭素の絶対配置について、「Reiter, M.; Turner, H.; Gouverneur, V. Chem. Eur. J. 2006, 12, 7190-7203. 」に記載される方法によって同定した。化合物(3)を以下に示すテトラヒドロ-2-(4-カルボメトキシフェニル)-2,6,6-トリメチル-4H-ピラン-4-オン(8)へと変換した後、CDスペクトル測定を行った。その結果、S体であることを特定した。なお、CDスペクトルは、(株)堀場製作所製のHoriba SEPA-200 polarimeterを用いて測定した。CDスペクトルにより、化合物(8)は、負のコットン効果を示した[262 nm (△e−7.67), 290 nm (△e−40.7), 355 nm (△e−2.01)]。
【0108】
【化28】

【0109】
以上より、化合物(3)は、(+)-(7S)-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸であることが同定できた。
【0110】
化合物(3)((+)-(7S)-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸);
無色粉末;
[α]24.1D+ 5.93° (c = 0.30, CHCl3);
IR (KBr) νmax: 3440, 1685 cm-1;
1H NMR 及び13C NMR; (表1及び2参照)
HR-FABMS m/z 263.1284 [M+H]+ (calcd. C15H19O4, for 263.1283).
【0111】
・化合物(4)の同定
化合物(4)について、以下の方法により同定した。
【0112】
HR-FABMSより、親基質である(+)-(S)-ar-ターメロン(1)より46amu大きく、分子式C15H18O4を有していることが示唆される。
【0113】
化合物(4)のIRスペクトルは、3392 cm-1及び1689 cm-1であり、ヒドロキシル基及びカルボニル基の存在が確認できた。(+)-(S)-ar-ターメロン(1)の1H NMRとの比較で、CH2OH基の存在及び2つのメチル基の消失が確認できた。このことから、化合物(4)が、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)のヒドロキシル化によって生成されたことを示唆している。
【0114】
1H NMR 及び13C NMRの測定結果より、化合物(3)及び化合物(4)は類似の化合物であることが確認できた。1H NMR 及び13C NMRの測定結果より、化合物(3)と同様、化合物(4)においても15位の炭素にカルボキシル基を有することが確認できた。
【0115】
核オーバーハウザー効果(NOE)の測定で、化合物(4)は、10位のプロトン(δH6.43)と12位のプロトン(δH4.04)との間でNOEが観測された。
【0116】
以上の結果より、化合物(4)の構造が、(+)-(10E)-12-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸であることが同定できた。
化合物(4)((+)-(10E)-12-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸);
無色オイル;
[α]28.4D+ 48.6° (c = 0.34, Acetone);
IR (film) νmax: 3392, 1689 cm-1;
1H NMR 及び13C NMR;(表1及び2参照)
HR-FABMS m/z 263.1287 [M+H]+ (calcd. C15H19O4, for 263.1283).
【0117】
・化合物(5)の同定
化合物(5)について、以下の方法により同定した。
【0118】
HR-FABMSより、親基質である(+)-(S)-ar-ターメロン(1)より62 amu大きく、分子式C15H18O5を有していることが示唆される。
【0119】
1H NMR 及び13C NMRの測定結果より、化合物(5)はメチル基の消失及び12位の炭素(δH 4.02)の付加的なdownfield shiftの出現以外は、化合物(3)と類似した結果となった。このことから、12位の炭素であるメチル基が、選択的にヒドロキシメチル基へとヒドロキシル化していることがわかった。
【0120】
NOE実験で、化合物(5)は、10位の炭素のプロトン(δH 6.43)と12位の炭素のプロトン(δH 4.02)との間に、NOEが観測された(図3参照)。
【0121】
以上の結果より、化合物(5)の構造が、(+)-(10E)-7,12-ジヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸であることが同定できた。
【0122】
(+)-(10E)-(7S)-7,12-ジヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸(5);
無色オイル;
[α]27.0D+ 2.04° (c = 1.37, Acetone);
IR (film) νmax: 3395, 1692 cm-1;
1H NMR 及び13C NMR(表1及び2参照); HR-FABMS m/z 279.1234 [M+H]+ (calcd. C15H19O5, for 279.1232).
【0123】
・化合物(6)の同定
化合物(6)について、以下の方法により同定した。
【0124】
HR-FABMSより、分子式C15H16O4を有することを示した。
【0125】
1H NMRの測定結果より、化合物(3)及び化合物(6)は類似の化合物であることが確認できた。化合物(3)と化合物(6)との1H NMRの比較により、δH1.87の13位の炭素のメチルプロトンが消失し、オレフィンのプロトン(δH 7.06)が現れたことが確認できた。以上の結果より、化合物(6)は、15位の炭素に、α,β−共役カルボキシ基を有していることが確認できた。
【0126】
また、化合物(3)と化合物(6)との13C NMRの比較により、9位の炭素においてケトンシグナルの消失を示した。
【0127】
HMBC測定により、(i)8位の炭素のプロトン/1、7、9、10及び14位の炭素のHMBC、(ii)12位の炭素のプロトン/10、11及び13位の炭素のHMBC、(iii)13位の炭素のプロトン/9、10及び11位の炭素のHMBCの関係を示した。
【0128】
以上のHMBCの関係の結果より、化合物(6)には、4-メチル-フラノ環の存在が確認できた(図3)。また、化合物(6)の構造が、(+)-15-カルボキシ-9,13-エポキシ-7-ヒドロキシ-9,13-デヒドロ-ar-クルクメンであることが分かった。
【0129】
化合物(6)((+)-15-カルボキシ-9,13-エポキシ-(7S)-ヒドロキシ-9,13-デヒドロ-ar-クルクメン);
無色粉末;
[α]24.2D+ 78.1° (c = 0.53, CHCl3);
IR (KBr)νmax: 3562, 1682 cm-1;
1H NMR 及び13C NMR;(表1及び2参照)
HR-FABMS m/z 261.1154 [M+H]+ (calcd. C15H17O4, for 261.1126).
【0130】
実施例2
(+)-(S)-ar-ターメロン(1)に代えて、実施例1と同様に、化合物(3)である(+)-(7S)-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸及び化合物(4)である(+)-(10E)-2-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸を用いた以外は、実施例1と同様に、培養したA. nigerを用いて同じ生物変換をおこなった。
【0131】
培養後、化合物(3)である(+)-(7S)-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸からは化合物(5)及び化合物(6)が、化合物(4)である(+)-(10E)-2-ヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸からは化合物(5)がそれぞれ酢酸エチルの抽出により単離された。
【0132】
両方の化合物(5)は、実施例1において単離された(+)-(10E)-(7S)-7,12-ジヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸と同様の旋光度を示した。
【0133】
前述のとおり、7位の炭素において、化合物(5)及び化合物(6)の絶対配置は、S体であることが確認できた。以上より、化合物(5)が(+)-(10E)-(7S)-12-ジヒドロキシ-デヒドロ-ar-トドマツ酸、及び化合物(6)が(+)-15-カルボキシ-9,13-エポキシ-(7S)-ヒドロキシ-9,13-デヒドロ-ar-クルクメンであることが同定できた。
【0134】
実施例3
実施例1と同様の方法で培養した培地に、さらにDMSO18mlに溶かした(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2)270mgを添加した。なお、(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2)は、「Fujiwara, M.; Yagi, N.; Miyazawa, M. J. Agric. Food Chem. 2010. 58, 2824-2829.」に記載される方法により、P. dasyrachisから単離したものであり、以下に示すものである。
【0135】
(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2);
無色オイル;
[α]29D+ 32.1°(c = 1.01, CHCl3);
IR (film) cm-1: 1712, 1514;
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 7.10 (4H, brs, ArH), 3.28 (1H, ddd, J = 8.0, 7.2, 6.3 Hz, H-7), 2.68 (1H, dd, J = 16.1, 6.3 Hz, H-8), 2.58 (1H, dd, J = 16.1, 8.0 Hz, H-8), 2.31 (3H, s, H-15), 2.19 (2H, m, H-10), 2.08 (1H, m, H-11), 1.23 (3H, d, J = 7.2 Hz, H-14), 0.85 (6H, d, J = 4.6 Hz, H-12,13);
13C NMR; (表2参照)
EIMS m/z (相対強度) 218 (M+ 26 %), 203 (25 %), 161 (19 %), 119 (100 %), 105 (13 %), 91 (13 %), 85 (13 %), 57 (18 %);
HR-EIMS 218.1777 (M+, C15H22O, calcd. 218.1741).
【0136】
・(+)-(S)-ar-ジヒドロ-ターメロン(2)の化合物(7)の単離
DMSOに溶解させた(+)-(S)-ar-ジヒドロ-ターメロン(2)を実施例1で調製した培地に添加した。培養時間(3日間)の経過後、培地と菌糸体を濾過によって分離した。培養液をpH4まで酸性にし、酢酸エチル500mlで3回抽出した。得られた抽出物を、減圧することによって酢酸エチルを除去し、粗成生物(350mg)を得た。
【0137】
図2に、培養したA. nigerによる(+)-(S)-ar-ジヒドロ-ターメロン(2)の生物変換の経時的変化を示す。図2におけるプロット(■)は、(+)-(S)-ar-ジヒドロ-ターメロン(2)を表し、プロット(●)は化合物(7)を表す。
【0138】
抽出物をNaHCO3の5%水溶液及び酢酸エチルで分液し、酢酸エチル層を取り出し、減圧することによって乾燥して、中性分画(neutral fraction)(123mg)を得た。アルカリ層を、2NのHClでpH3になるまで酸性にし、水と酢酸エチルにより抽出した。抽出物(酢酸エチル層)を、減圧することによって酢酸エチルを除去し、酸性分画(acid fraction)(190mg)を得た。酸性分画(acid fraction)をさらに、CH2Cl2/MeOHでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200〜300メッシュのシリカゲル60(Merck社製))により精製することにより、2つの分画を得た。分画したフラクションを、さらに、semi-preparative reversed-phase HPLC(CH3CN-H2O (60:40, v/v + 0.05% CH3COOH))によって分画し、化合物(7)を得た。
【0139】
・化合物(7)の同定
HR-FABMSにより、化合物(7)は分子式C15H20O5であることが同定できた。
【0140】
化合物(7)の1H NMR データは、10位、11位の炭素の二重結合が消失し、10位、11位の炭素のプロトンが観測できた以外は、化合物(3)と類似した。13C NMRの10位、11位のupfield shiftより、二重結合の消失及びヒドロキシル基の存在が示唆された。
【0141】
化合物(7)のHMBC測定により、11位の炭素において、ヒドロキシル基を有することを示唆する11位の炭素(10位、12位及び13位の炭素のプロトンとともに)に対するHMBC関係を示した。
【0142】
以上の結果より、化合物(7)が(+)-7,11-ジヒドロキシ-ar-トドマツ酸であることを確認した。
【0143】
化合物(7)((+)-7,11-ジヒドロキシ-ar-トドマツ酸);
無色オイル;
[α]25.2D-7.11° (c =1.62, CHCl3);
IR (film)νmax: 3431, 1695 cm-1;
1H NMR 及び 13C NMR(表1及び2参照);
HR-FABMS m/z 281.1400 [M+H]+ (calcd. C15H21O5, for 281.1389).
表1に、(+)-(S)-ar-ターメロン(1)、(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロン(2)、及び化合物(3)〜(7)のH NMRスペクトルのデータを表1に、13C NMRスペクトルのデータを表2に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
試験例
AChE阻害試験法
AChE阻害試験は、Fujiwara, M.; Yagi, N.; Miyazawa, M. J. Agric. Food Chem. 2010. 58, 2824-2829.の方法に従って行った。
【0147】
ヒト赤血球AChE 溶液(0.037 unit/mL in 0.01 M リン酸緩衝液, pH 7.4)20μl、阻害剤(化合物(3)〜(7)の各メタノール水溶液)20μl、発色剤(5-5’ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、(0.15 mM in 0.1 M リン酸緩衝液, pH 7.4))200 ml、基質(アセチルコリン アイオダイド(ATC)水溶液(最終濃度0.25 mM))30 mlを含むウェルをそれぞれ調製した。
【0148】
なお、コントロールウェルとして、阻害剤に代えてメタノールを用いて前記のウェルを調製した。
【0149】
実験方法としては、基質を添加し終えた時間を起点とし、前記混合物を室温で15分間インキュベートし、混合物の405nmにおける吸光度を測定した。AChE活性の阻害割合を以下の式によって算出した。なお、吸収光度は、(株)日立製作所製のU-2000A UV-Vis spectrophotometerによるUVスペクトルを測定することによって求めた。
【0150】
I(%) = {(Acontrol − Asample) / Acontrol} × 100%
式中、Asampleは、各阻害剤を含むサンプルの各吸光度を表し、Acontrolはコントロールウェルの吸光度を表す。なお、各サンプルについて少なくとも3回測定を行いその平均値を示した。測定結果を図4に示す。図4に示すように、化合物3〜7は、強いAChE阻害活性値を示していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A):
【化1】

(式(A)中、Rは、水素又は炭素数1〜3の低級アルキル基であり、Rは、水素又はヒドロキシル基であり、Rは、
【化2】

(式中、R3aは、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又はアセチル基である)、
【化3】

(式中、R3aは、前記と同じである)、又は
【化4】

である)
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
一般式(A)が、式:
【化5】

、又は
【化6】

(式中、R、R、又はRは、前記式と同じである)
で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
一般式(A)が、一般式(3):
【化7】

一般式(4):
【化8】

一般式(5):
【化9】

又は
一般式(6):
【化10】

で表される請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
一般式(7):
【化11】

で表される請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその塩を有効成分として含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
【請求項6】
請求項5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する老人性認知症の予防又は治療薬。
【請求項7】
請求項5に記載のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有するアルツハイマー型認知症の予防又は治療薬。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又はその塩の製造方法であって、(+)-(S)-ar-ターメロンを生物変換することを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1、2又は4に記載の化合物又はその塩の製造方法であって、(+)-(S)-ジヒドロ-ar-ターメロンを生物変換することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
黒色{こくしょく}アスペルギルス菌により生物変換する請求項8又は9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225478(P2011−225478A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95996(P2010−95996)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】