説明

新規テトラフェノール置換プロパノン化合物及びそれを有効成分とする肉芽形成促進剤並びに癌細胞アポトーシス誘導剤

【課題】リュウケツジュ(Dracaena draco L)が生産する樹脂物質に含まれる活性成分から、これまで知られていなかった新規化合物を単離して、その化学構造を解明し、その医薬としての新らしい用途を開発する。
【解決手段】一般式


[R1〜R6は水素原子又は低級アルキル基、XはO又はH(OH)]で表わされる化合物少なくとも1種を有効成分とした肉芽形成促進剤及び癌細胞アポトーシス誘導剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リュウゼツラン科植物に属するリュウケツジュ(Dracaena draco L)が生産する樹脂物質の構成成分である新規化合物及びそれを有効成分とする生理活性剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古代から、ドラゴンの血(Dragon´s blood)と称する創傷治療薬が世界各地において使用されていた。このドラゴンの血は、各種の植物が生産する樹脂物質から製造されたものの総称であり、生産する植物は多岐にわたっており、主なものとしては、リュウゼツラン科、リュウゼツラン属のドラセーナ(Dracaena)類、ヤシ科、キリンケツ属のデモノロプス(Daemonorops)類、トウダイグサ科、ハズ属のクロトン(Croton)類などが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
この中のドラセーナ類を原植物とするドラゴンの血は、主に中東、中国、日本において、デモノロプス類は主として南東アジア、特にインドネシアにおいて、クロトン類は主として新旧両大陸の熱帯地方において用いられており、特に、ドラセーナ類を原植物とするドラゴンの血は、中国、日本ではキリンケツ又はその乾燥物である血竭として知られ、刀傷の治療薬として尊重されていた。
このため、これらの創傷治療薬の活性成分の探索も行われており、これまでいくつかの報告もなされているが(非特許文献2、3参照)、まだ十分に解明されていない。
【0004】
また、リュウケツジュの含有成分については、フラボン類、ドラコルホージン(dracorhodin)やドラコルビン(dracorudin)のような赤色色素類、ホモイソフラボン類、ジヒドロシャルコンのようなステロイド配糖体が報告されている(非特許文献4、5参照)。
【0005】
他方、このような創傷治療薬についての生理活性の検討も行われ、例えばヤシ科(Polmae)、キリンケツヤシ(Daemonorops draco BLUME)のエッセンスからなる真皮コラーゲン線維束再構築剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】「アナリスト(Analyst)」、第128巻、2004年、p.135−138
【非特許文献2】「薬学雑誌」、第112巻、1991年、p.259−271
【非特許文献3】「プランタ・メジカ(Planta Medica)」、第55巻、1989年、p.140−143
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツ(J.Nat.Prod.)」、第63巻、2000年、p.1297−1299
【非特許文献5】「フィトケミストリー(Phytochemistry)」、第50巻、1999年、p.805−813
【特許文献1】特開2002−29985号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リュウケツジュ(Dracaena draco L)が生産する樹脂物質すなわちキリンケツ中に含まれる活性成分から、これまで知られていなかった新規化合物を単離して、その化学構造を解明し、かつその医薬としての新らしい用途を開発することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、キリンケツの抽出画分に含まれる化合物の単離及びその構造解析を行った結果、その活性成分がこれまで文献未載の新規化合物であり、これが特定の薬理作用を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中のR1〜R6は水素原子又は低級アルキル基、XはO又はH(OH)である]
で表わされる化合物、この化合物の少なくとも1種を有効成分とする肉芽形成促進剤及び癌細胞アポトーシス誘導剤を提供するものである。
【0010】
本発明化合物の製造原料として用いられるキリンケツから活性画分を分離するには、例えばキリンケツをエーテルで抽出し、次にエーテル可溶部に、ほぼ同量のヘキサンを加え、沈殿する不溶部をさらにエーテルとヘキサンの等容混合物で洗い、残存する不溶部(以下KFという)を回収する。
【0011】
次いで、このKFをシリカゲルに吸着させ、溶媒A(酢酸エチルとヘキサンの等容混合物)及び溶媒B(酢酸エチルとヘキサンとの体積比25:20の混合物)を用いて、順次溶離させたところ、溶媒Bによる溶離画分に肉芽形成促進作用が認められたので、この画分をさらに薄層クロマトグラフィーにより、KF−A、KF−B及びKF−Cに分画した。これらの画分は、1H−核磁気共鳴スペクトルの類似した化合物で構成されていることから、これらはヒドロキシ基の数及びその結合位置の相違による異性体であると考えられる。
これらの画分について確認された肉芽形成促進作用の増加率はKF−A 19.7%、KF−B 35.8%、KF−C 42.2%であった。
【0012】
次に、これらの画分で最も強い活性を示したKF−Bを中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)により精製することにより、構造式(II)
【化2】

で示される化合物、すなわち1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐3‐{4‐ヒドロキシ‐5‐[1‐(4‐ヒドロキシ‐2‐メトキシフェニル)プロピル]‐2‐メトキシフェニル}‐1‐プロパノンが融点76〜78℃、屈折率[α]D25+9.61°(c=0.113、メタノール)をもつ無色結晶として得られる。この化合物のアセチル化誘導体は、融点57〜59℃、屈折率[α]D25+10.98°(c=0.080、メタノール)をもつ無色結晶である。
【0013】
前記式(II)で示される化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に、1H−核磁気共鳴スペクトルを図2に、13C−核磁気共鳴スペクトルを図3に、またマススペクトルを図4にそれぞれ示す。
また、核磁気共鳴スペクトルの1H−1HCOSY及びSelected NOESYを測定により、式(II)に示される官能基の位置を同定した。
【0014】
本発明の化合物は、肉芽形成促進作用及び癌細胞に対する選択的アポトーシス誘導作用を有するので、創傷治療薬、癌治療薬として有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キリンケツの生産する樹脂物質から、有用な薬理活性を示す新規化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
キリンケツ(中国河北省安国産)から抽出した不溶部(KF)5.5gをシリカゲル(メルク社製)100gに吸着させ、これを酢酸エチルとヘキサンとの体積比1:1の混合溶媒及び酢酸エチルとヘキサンとの体積比25:20の混合溶媒を用いて順次溶離させ、後者の溶離画分をさらに薄層クロマトグラフィーによりKF−A 500mg、KF−B 350mg、及びKF−C 300mgに分画した。
次に、画分KF−B 30mgを中圧液体クロマトグラフィー(溶出溶媒CHCl3:CH3OH=6:1)により精製し、精製物7mgを得た。この精製物をカラムクロマトグラフィー(径25mm、長さ170mm;溶出溶媒CHCl3:CH3OH=2:1)で、さらに精製することにより、1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐3‐{4‐ヒドロキシ‐5‐[1‐(4‐ヒドロキシ‐2‐メトキシフェニル)プロピル]‐2‐メトキシフェニル}‐1‐プロパノン5mgを得た。
この化合物の構造は赤外線吸収スペクトル、1H−核磁気共鳴スペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル、マススペクトルにより同定された。
【実施例2】
【0018】
以下に示す方法により、実施例1で得た本発明化合物の肉芽形成作用について試験した。
(1)コットンペレット法による肉芽形成に及ぼす影響の検討:
8週齢雄性Wistar系ラットでコットンぺレット法を用いて肉芽組織形成を調べた。すなわち、ラット背部に左右対称となるように切り込みを入れ、実験群として試料(不溶部KF)を浸み込ませた脱脂綿を、コントロール群には何も浸み込ませない脱脂綿をそれぞれ皮下に埋め込んだ。10日後、脱脂綿の周りに形成された肉芽組織を取り出し、60℃で24時間乾燥した後の質量を測定した。
また、コラーゲン合成の指標としてその肉芽のヒドロキシプロリン含量を測定し、肉芽形成能の評価とした。さらに、形成された肉芽組織の抗I、III型コラーゲン抗体による免疫染色、H−E染色を行い、その組織観察を行った。
【0019】
(2)ヒドロキシプロリンの定量:
ヒドロキシプロリンを酸化、脱炭酸し、生じたピロールをp‐ジメチルベンズアルデヒドで発色させる定量法を用いて、乾燥肉芽組織中の含量を測定した。
【0020】
(3)ヒト皮膚繊維芽細胞の培養:
ヒト皮膚繊維芽細胞はペニシリン・ストレプトマイシン(最終濃度それぞれ、50U/ml、50μg/ml)、10%FCS含有Dulbecco´s modified Eagle medium(DMEM)で、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
【0021】
(4)試料のヒト皮膚繊維芽細胞に及ぼす細胞増殖能の検討:
試料の及ぼす影響はWST−1試験により評価した。すなわち、細胞を一定量播種し、各濃度の試料をエタノールに溶かして添加後、5日間培養した。培養後WST−1試薬を10μl添加し、37℃で2時間インキュベート後、450nmの吸光度を測定した。同量のエタノールを添加して培養したときの吸光度をコントロールとし、相対値で比較した。
【0022】
(5)試料のヒト皮膚繊維芽細胞のコラーゲン合成能に及ぼす影響の検討:
ヒト皮膚繊維芽細胞を0.4×105cells/mlの濃度で6ウェルプレートに3mlずつ播種し、コンフルエントに達するまで培養後、0.1mMアスコルビン酸、50mMβ‐アミノプロピオニトリルを加えた、DMEM(FCS−)に交換し、3日間培養した。培養後、氷冷下にて細胞をセルスクレイパーで剥がし、培養上清ごとに集めた。氷冷下にて10秒間×3回超音波処理を行った後、凍結乾燥したものを試料として用いて試験し、以下の結果を得た。
【0023】
図5は、試料として不溶部KFを0.01mg、0.1mg及び1mg用いたときの肉芽組織の質量とコントロールの肉芽組織の質量を対比して棒グラフで示したものである。このグラフから0.1mg及び0.01mgの試料については、コントロールとの間に大きな差は認められないが、1mgの試料については、コントロールに比べ有為差(p<0.05)の増加があったことが分る。
また、図6は、この場合の免疫染色(右側)及びH−E染色(左側)したものについての40倍拡大写真である。
【0024】
次に図7は、試料及びコントロールにより得られた肉芽のヒドロキシプロリンの含量を示す棒グラフであり、この図から上記と同じく1mgの試料において有為差が認められることが分る。
図8は、このようにして形成された肉芽組織を抗I型、抗III型コラーゲン抗体により免疫染色した場合についての40倍拡大写真である。
また、図9は、試料として不溶部KFを0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/ml及び20μg/mlの濃度で用いた場合のヒト皮膚繊維芽細胞への影響を、コントロールに対する百分比で示した棒グラフである。この図から分るように、試料濃度1μg/mlまではほとんど変化は認められないが、それ以上の濃度では細胞数が明らかに減少している。
図10は、試料濃度1μg/mlで用いた場合の培養した細胞のヒドロキシプロリン含量をコントロールと対比して示した棒グラフであり、これによるとコラーゲン合成に有為な促進効果(p<0.01)が奏されることが分る。
【実施例3】
【0025】
以下の方法によりアポトーシス誘導作用を試験した。
(1)試料の調製:
試料KFは2mg/mlの濃度でDMSOに溶かし、0.2μmの酢酸セルロースフィルターでフィルター滅菌したものを用いた。
【0026】
(2)HL−60細胞に対する効果の検討:
ヒト前骨髄性白血病細胞株HL−60は10%非流動化FBSを添加したRPMI1640培地を用い、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。HL−60を1×104個/mlの細胞密度で24ウェルプレートに500μl播種後、KFを添加し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。コントロールには希釈に用いた滅菌DMSOを用いた。4日間培養後、トリパンブルー細胞染色法で細胞を染め分け、血球計算板でカウントし、染色されない細胞を生細胞、染色された細胞を死細胞とし生存率(viablity:%)と細胞数を求めた。また、HL−60を1×105個/mlの細胞密度で播種したものも同様に測定した。
【0027】
(3)ヒト正常リンパ球における効果の検討:
ヒト正常リンパ球は同意を得た被験者から末梢血の採血を行い、ヒトリンパ球、単球、好中球分離溶液、モノ・ポリ分離溶液(大日本製薬社製)を用いて分離した。その後の操作は実施例2(8)と同様に行った。
【0028】
(4)HL−60におけるカスパーゼ−3活性の検討:
HL−60を5×105個/mlの細胞密度で6ウェルプレートに3ml播種し、KFを30μl各wellに添加し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。コントロールは同量のDMSOを用いた。0、5、10、24、48時間後に細胞懸濁液を回収し、4℃、2500rpm、5min遠心し、培地を除去後、PBSを洗い、再び遠心し、PBSを除いた細胞塊を試料とした。カスパーゼ−3活性はCaspase−3/CPP32 Colorimetric Assay Kit(Bio Vision)により測定した。
【0029】
(5)HL−60におけるアガロースゲルによるDNA ladderの検出:
HL−60を5×105個/mlの細胞密度で6ウェルプレートに3ml播種し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。コントロールには同量のDMSOを用いた。細胞懸濁液を回収し、4℃、2500rpm、5min遠心し、培地を除去後、PBSを洗い、再び遠心し、PBSを除いた細胞塊を試料とした。細胞塊に100μlのcell lysis bufferを加え、4℃、10min放置後、15000rpm、20min遠心し、上清を回収した。
【0030】
上清にRnaseA5μlを加え、50℃で1hインキュベートした。イソプロパノール120μlと5MNaClを20μlを加え、ボルテックスし、−20℃で一晩放置した。4℃、15000rpm、20min遠心し、上清を除去しエタノールでDNAをリンスし、風乾させた。これをTEbuffer20μlに溶かし、DNA試料とし、1.8%のアガロースゲルでTBEbufferを用いて泳動した。泳動終了後、エチルジブロマイドでDNAを染色し、UVをあて視覚化したものをポラロイドカメラで撮影した。
【0031】
(6)HL−60における形態学的変化の観察:
HL−60を5×105個/mlの細胞密度で6ウェルプレートに3ml播種し、KFを30μl各wellに添加し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で培養した。コントロールには同量のDMSOを用いた。細胞懸濁液を回収し、4℃、3000rpm、5min遠心し、培地を除去後、PBSを洗い、再び遠心し、PBSを除いた細胞塊を1%グルタルアルデヒドで4℃で一晩固定した。PBSで洗浄後、ヘキスト33256で細胞内DNAを蛍光顕微鏡で核の状態を観察した。
【0032】
図11及び図12は、試料として不溶部KFを、またコントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)をそれぞれ用い、これらをヒト前骨髄性白血病細胞株HL−60に添加した場合の細胞生存率(%)及び増殖抑制率すなわち1ml中の細胞数を示す棒グラフである。このグラフから細胞生存率、細胞数の濃度依存的な阻害が認められることから、不溶部KFが癌細胞に対し、選択的なアポトーシス誘導作用を示すことが分る。このものの増殖抑制率のIC50は約8μ/ml、4μ/wellであった。
【0033】
また、比較実験として、ヒト末梢血から分離したヒト正常リンパ球での細胞毒性を調べたところ、その生存率はコントロールのDMSOとほぼ同じあり、細胞数はコントロールよりもやや増加の傾向がみられた。このように、試料が正常細胞に対し、毒性を示さないことから癌細胞に選択的に作用することが分る。
【0034】
アポトーシスによる細胞死の生化学的特徴の1つに、モノ及びオリゴヌクレオゾームの長さでのDNAの断片化が挙げられる。これらのDNA断片はアガロースゲル電気泳動において約180bpサブユニットの倍数により構成される独特のラダーパターンとして観測される。これに対し、ネクローシスではDNAはランダムに分解されるためラダー(ladder)は観測されない。
図13は、HL−60を試料として不溶部KFを用いて処理したものについてアガロースゲル電気泳動した場合のパターンを示したもので、レーン1はDNAラダーマーカー、レーン2はコントロール(DMSO)、レーン3は試料についてのものである。この図からラダーの存在が確認できる。
【0035】
このDNAラダーは、電気泳動法で染色体DNAを解析するときに、約180bpの塩基対の整数倍の大きさのDNAバンドが階段状に認められることをいい、DNA断片化ともいう。正常の細胞では認められないが、アポトーシスを誘導した細胞のDNAで認められる。これはアポトーシスが誘導される際に、DNAがヌクレオソーム単位に規則的に切断された結果である。アポトーシスの指標とされている。
【0036】
カスパーゼ−3は様々なアポトーシスシグナルにより最終的に活性化されるカスパーゼ群の酵素であり、カスパーゼ−3の活性化がDNAを分解するDNaseへと伝達されるため、アポトーシスの実行因子として中心的な働きを有している。
図14は、試料として不溶部KFを用い、これを投与した後のカスパーゼ−3の活性の経時的変化を示す折れ線グラフである。この図から、投与5時間後に最大活性を示すことが分る。このことから細胞死がアポトーシスに基づくことが明らかになった。
【0037】
このカスパーゼは、ICEファミリープロテアーゼともいい、細胞死の実行と炎症反応に重要なサイトカインのプロセッシングに機能する一群のシステインプロテアーゼである。哺乳類から多くの同族体が得られており、少なくとも12種が知られている。
カスパーゼ(caspase)のcはシステインプロテアーゼを示し、aspaseは基質側の切断部位のアミノ酸残基にアスパラギン酸を要求するというこのファミリーのユニークな基質特異性に由来する。
カスパーゼは、その基質特異性から3群に分類され、I群はカスパーゼ−1に代表されるサイトカインのプロセッシングと細胞死に、II群はカスパーゼ−3やCED−3に代表される細胞死の実行に、III群はカスパーゼ−8に代表され、カスパーゼのタンパク質分解カスケードの上流に位置し、細胞死のシグナルを伝える働きに関与する。
【0038】
図15及び図16は、アポトーシスを起こしたことを証明するための細胞の形態学的変化を示す顕微鏡写真で、図15はコントロールのへキスト33258で染色されたHL−60細胞であり、図16は試料として不溶部KFを添加したものである。前者では核の変化が認められないのに対し、後者では核全体に断片化し、球状になったものが凝集している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の新規化合物は、創傷治療剤、癌治療剤などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】式(II)で示される化合物の赤外線吸収スペクトル図。
【図2】式(II)で示される化合物の1H−核磁気共鳴スペクトル図。
【図3】式(II)で示される化合物の13C−核磁気共鳴スペクトル図。
【図4】式(II)で示される化合物のマススペクトル図。
【図5】実施例2において、試料として不溶部KFを0.01mg、0.1mg及び1mg用いたときの肉芽組織の質量とコントロールの肉芽組織の質量を対比した棒グラフ。
【図6】免疫染色(右側)及びH−E染色(左側)したものについての40倍拡大写真図。
【図7】実施例2において、試料及びコントロールにより得られた肉芽のヒドロキシプロリンの含量を示す棒グラフ。
【図8】肉芽組織を抗I型、抗III型コラーゲン抗体により免疫染色した場合についての40倍拡大写真図。
【図9】試料として不溶部KFを0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/ml及び20μg/mlの濃度で用いた場合のヒト皮膚繊維芽細胞への影響をコントロールに対する百分比で示した棒グラフ。
【図10】試料濃度1μg/mlで用いた場合の培養した細胞のヒドロキシプロリン含量をコントロールと対比して示した棒グラフ。
【図11】試料として不溶部KFを、またコントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)をそれぞれ用い、これらをヒト前骨髄性白血病細胞株HL−60に添加した場合の細胞生存率(%)を示す棒グラフ。
【図12】試料として不溶部KFを、またコントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)をそれぞれ用い、これらをヒト前骨髄性白血病細胞株HL−60に添加した場合の増殖抑制率(1ml中の細胞数)を示す棒グラフ。
【図13】HL−60を試料として不溶部KFを用いて処理したものについてアガロースゲル電気泳動した場合のパターンを示す図。
【図14】試料として不溶部KFを用い、これを投与した後のカスパーゼ−3の活性の経時的変化を示す折れ線グラフ。
【図15】コントロールのへキスト33258で染色されたHL−60細胞を示す顕微鏡写真図。
【図16】試料として不溶部KFをHL−60細胞に添加した顕微鏡写真図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

[式中のR1〜R6は水素原子又は低級アルキル基、XはO又はH(OH)である]
で表わされる化合物。
【請求項2】

【化2】

で表わされる請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物の少なくとも1種を有効成分とする肉芽形成促進剤。
【請求項4】
リュウケツジュ(Dracaena draco L)が生産する樹脂物質の抽出成分からなる請求項3記載の肉芽形成促進剤。
【請求項5】
請求項1記載の化合物の少なくとも1種を有効成分とする癌細胞アポトーシス誘導剤。
【請求項6】
リュウケツジュ(Dracaena draco L)が生産する樹脂物質の抽出成分からなる請求項5記載の癌細胞アポトーシス誘導剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−241078(P2006−241078A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59599(P2005−59599)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(597057988)
【Fターム(参考)】