説明

新規ノボラツク型化合物、樹脂、及びその製造法

【構成】フェノール類ジメチロール化合物とアリルナフトールを酸触媒下で反応させるか、ナフトール環含有ノボラック型樹脂にアリル基を導入させて得られるアリル基含有ノボラック化合物、又はそのエポキシ化物、これらを含む樹脂及びその製造法。
【効果】高耐熱、低吸水性の硬化物が得られ、なおかつシリコーン等による変性が可能であるため、電子部品の封止用、積層用樹脂材料等に使用される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品の封止又は積層用の材料として有用であり、各種の変性が可能な原料化合物、樹脂及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から電気・電子部品、特にICの封止剤の分野では、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤を主成分とした樹脂組成物が広く用いられている。
【0003】しかし、近年のICにおける高密度・高集積化は、封止剤硬化物に対して高耐熱化・低応力化、低吸水化を要求するようになった。とりわけ、ICの高密度実装におけるハンダ浴浸漬という苛酷な条件は、硬化物に対する高耐熱化、低応力化、低吸水化等の要求をますます強めている。
【0004】従来の組成物においてエポキシ樹脂として一般に用いられているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂では、ハンダ浴浸漬という苛酷な条件に対して耐熱性の面で不充分である。又、耐熱性を有するとして提案されている特開昭63−264622号公報記載のフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとフェノール類を縮合して得られるポリフェノールをエポキシ化したポリエポキシ化合物などでは硬化物の耐熱性の向上は認められるものの、軟化点の上昇、あるいは溶融粘度の上昇がみられ作業性を損なうという欠点を有し、又、吸水率の面でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂には及ばない。
【0005】一方、硬化剤として一般に使用されているフェノールノボラック樹脂は耐熱性の面で未だ不充分であり、低分子量体(2核体フェノールノボラック)を少なくする試みがなされているものの、ますます苛酷になっていく条件下(例えば、ハンダ浴浸漬)には満足な結果をもたらしていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで高耐熱性、低応力、低吸水性の硬化物を与え、更に良好な作業性を兼ね備えた樹脂の開発が待ち望まれている。本発明は、このように苛酷になっていく条件にも耐え得る化合物又は樹脂、すなわち高耐熱性、低吸水性でしかも低応力等の性質を合せ持った硬化物を得る為の原料化合物又は樹脂を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高耐熱性、低吸水性を兼ね備えた樹脂の開発を目的に鋭意検討した結果、ナフトール環を含む特定の構造の化合物中に、官能基であるアリル基を導入することにより上記目的を実現できることを見出だし本発明を完成するに至った。
【0008】即ち本発明は、(1)式[1]
【0009】
【化8】


【0010】(式中、Xは独立して水素原子、アリル基(−CH2 −CH=CH2 )又は式[2]
【0011】
【化9】


【0012】で表される基のいずれかを表し、同一であっても異なっていてもよく、R1 、R2 はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアリル基を表し、同一であっても異なっていてもよいが、R1 、R2 、Xのうち少なくとも一つはアリル基であり、nは0〜10の値を示す。)で表されるノボラック型樹脂、(2)式[3]
【0013】
【化10】


【0014】(式中、Xは独立して水素原子、アリル基又は式[2]で表される基のいずれかを表し、同一であっても異なっていてもよく、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、同一であっても異なっていてもよく、nは0〜10の値を示す。)で表されるノボラック型樹脂、(3)式[4]
【0015】
【化11】


【0016】(式中、Xは独立して水素原子、アリル基又は式[2]で表される基を示し、同一であっても異なっていてもよく、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、同一であっても異なっていてもよい。)で表されるノボラック型化合物、
【0017】(4)[4]で表されるノボラック型化合物を30重量%以上含んでなる、前記(1)記載の樹脂、(5)(A)式[5]
【0018】
【化12】


【0019】(式中、R1 は独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリ−ル基、ハロゲン原子又はアリル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)で表されるフェノール類ジメチロール化合物と式[6]
【0020】
【化13】


【0021】で表されるアリルナフトール類とを酸触媒下に脱水縮合させるか、B式[7]
【0022】
【化14】


(式中、R1 は式[5]の場合と同じ意味を有する。)で表されるフェノール類ノボラック化合物のアルカリ塩に、更にハロゲン化アリル化合物を反応させアリルエーテル化した後、必要により、クライゼン転位させ、必要により更にエピハロヒドリン化合物と反応させることを特徴とする、上記(1)、(2)、(3)又は(4)記載の化合物又は樹脂の製造法に関する。
【0024】本発明における、アリル基含有ノボラック型化合物又は樹脂の製造法としては大別して2種類あげることができる。以下詳細に説明する。
【0025】(製法1)前記式[5]で表されるフェノール類ジメチロール化合物と前記式[6]で表されるアリルナフトール類とを酸触媒下に脱水縮合させる方法。
【0026】この際使用するフェノール類ジメチロール化合物としては2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール、4,6−ジメチロール−2−メチルフェノール、2,6−ジメチロール−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメチロール−4−クロルフェノール、2,6−ジメチロール−4−ブロムフェノール、2,6−ジメチロール−4−フェニルフェノール、4,6−ジメチロール−2−アリルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0027】アリルナフトール類としては、2−アリル−1−ナフトール、4−アリル−1−ナフトールが好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、しゅう酸等が挙げられる。フェノ−ル類ジメチロール化合物1モルに対してアリルナフトール類を1.5〜2.2モル用いるのが好ましく、特に1.8〜2.0モル用いるのが好ましい。酸触媒はフェノ−ル類ジメチロール化合物の0.1〜30重量%用いるのが好ましい。
【0028】反応は、水の存在下で行っても良く、又、溶媒としてアルコール類やアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を用いてもよい。反応温度は、好ましくは50〜100℃で、反応時間は2〜10時間でよい。反応終了後、使用した酸触媒を中和あるいは水洗して中性に戻し、減圧下、溶媒を除去する。こうしてアリル基含有ノボラック樹脂(A)が得られる。
【0029】(製法2)例えば、前記式[5]で表されるフェノール類ジメチロール化合物と1−ナフトールとを酸触媒下に脱水縮合させて得られる前記式[7]で表されるフェノール類ノボラック化合物を含む樹脂をアルカリ塩にした後、ハロゲン化アリル化合物と反応させアリルエーテル化し、必要により、更に加熱によってクライゼン転位させる方法。
【0030】この際使用される前記式[5]で表されるフェノール類ジメチロール化合物としては前記フェノ−ル類ジメチロール化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。フェノ−ル類ジメチロール化合物1モルに対して1−ナフトールを2.0〜10.0モル用いるのが好ましく、特に3.5〜6.0モル用いるのが好ましい。酸触媒はフェノ−ル類ジメチロール化合物の0.1〜30重量%用いるのが好ましい。酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、しゅう酸等が挙げられる。
【0031】反応は、前記同様、水の存在下で行っても良く、又、溶媒としてアルコール類やアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を用いてもよい。反応温度は、40〜80℃で充分であり、反応時間は1〜8時間でよい。反応終了後、使用した酸触媒を中和あるいは水洗して中性に戻し、減圧下180℃〜200℃程で未反応ナフトールを除去することによりフェノ−ル類ノボラック化合物を含む樹脂が得られる。次いでこのフェノ−ル類ノボラック化合物を含む樹脂をアルカリ水溶液によって処理し、全水酸基量の5%〜100%をアルカリ塩にする。
【0032】アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液が用いられるが、特に水酸化ナトリウム水溶液が好適に使用される。水溶液の濃度は通常5%〜50%の範囲である。なお、この際、アセトン等の有機溶媒を併用することもできる。また、アセトン等の有機溶媒を用いて炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどによりアルカリ塩にすることも可能である。こうしてできたノボラック型樹脂の溶液に、ナトリウム塩量に応じた量の塩化アリル、臭化アリル等のハロゲン化アリル化合物を滴下する。この時、反応温度30℃〜60℃で発熱に注意しながらゆっくり滴下し、このまま2〜5時間撹拌しながら反応させる。反応終了後、メチルイソブチルケトン等の溶媒を加えて、水洗を繰り返した後、減圧下で溶媒を除去する。
【0033】必要により、こうして得られた水酸基の一部または全部がアリルエーテル化された樹脂を無溶媒下、あるいはN,Nジエチルアミン、エチルセロソルブ等の高沸点溶媒下で加熱することによりクライゼン転位をさせてアリル基含有樹脂を得ることができる。転位に要する温度及び反応時間は、使用するフェノール類ノボラック化合物を含む樹脂の種類及び平均分子量により異なるが通常170℃〜200℃の範囲で2〜10時間である。以上のようにしてクライゼン転位をした又はしていないアリル基含有ノボラック樹脂(B)が得られる。
【0034】前記の製法1、あるいは製法2によって得られたアリル基含有ノボラック樹脂は、このままエポキシ樹脂組成物等における高耐熱性、低吸水率性の硬化剤として用いることができる。更に分子中に導入された二重結合を利用してシリコーン化合物、或いはイミド化合物等によって変性を施すことが可能である。
【0035】又、こうして得られるアリル基含有ノボラック樹脂(A)、(B)あるいは、これらに変性を施したノボラック型樹脂(M)は、更にエピハロヒドリン化合物と以下のように反応させることによってエポキシ樹脂とすることができる。
【0036】この際、ジメチルスルホキシドの存在下で反応させることにより、得られるエポキシ樹脂は加水分解性塩素が著しく低減され、信頼性の向上が達成できる。エピハロヒドリン化合物の具体例としては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等が挙げられるが、工業的にはエピクロルヒドリンが好適に使用される。
【0037】反応は上記アリル基含有ノボラック樹脂(変性物も含む)とエピハロヒドリンとを、そのままあるいはジメチルスルホキシドを添加し、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミドなどの第4級アンモニウム塩または水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの存在下で反応させ、第4級アンモニウム塩などを用いた場合は、開環付加反応の段階で反応が止まるので次いで上記アルカリ金属水酸化物を加えて閉環反応させる。また、最初からアルカリ金属水酸化物を加えて反応させる場合は、開環付加反応および閉環反応を一気に行わせる。
【0038】エピハロヒドリンは、アリル基含有ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して通常1〜50モル、好ましくは3〜15モルの範囲で使用する。またジメチルスルホキシドを用いる場合、その使用量は、アリル基含有ノボラック樹脂100重量部に対して、20重量部〜200重量部が好ましい。
【0039】アルカリ金属水酸化物の使用量は、アリル基含有ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して好ましくは0.8〜1.5モル、特に好ましくは0.9〜1.3モルの範囲であり、第4級アンモニウム塩を使用する場合、その使用量はアリル基含有ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して通常0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
【0040】反応温度は通常30〜130℃好ましくは30〜100℃である。また、反応で生成した水を反応系外に除去しながら反応を進行させることもできる。反応終了後、副生した塩あるいはジメチルスルホキシドを水洗などにより除去し、更に過剰のエピハロヒドリンを留去させることにより本発明のノボラック型エポキシ樹脂を得ることができる。
【0041】又、更に不純物を取り除く為、得られたエポキシ樹脂に更に次のような処理を施してもよい。即ち、エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトンなどの溶媒に溶解し、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の存在下、50〜100℃で0.5〜3時間反応させ、反応終了後、水洗を繰り返し、水相を中性に戻してメチルイソブチルケトンなどの溶媒を減圧下に留去することによりエポキシ樹脂を得ることができ、このような処理工程をさらに設けることにより、より高純度のエポキシ樹脂が得られる。
【0042】この際、使用する水酸化ナトリウムなどのアルカリ水酸化物の使用量は、好ましくは、原料として用いたアリル基含有ノボラック樹脂の水酸基1モルに対して0.01〜0.2モルの範囲である。このようにして、より高純度なノボラック型エポキシ樹脂を得ることができる。こうして得られるノボラック型エポキシ樹脂はそのままエポキシ樹脂組成物等における高耐熱性、低吸水率性のエポキシ樹脂成分として用いることができる。さらに前記同様、分子中に導入された二重結合を利用してシリコーン化合物、或いはイミド化合物等によって変性を施すことが可能である。
【0043】このようにして、アリル基含有ノボラック樹脂(A)、(B)あるいはその変性物(M)、ノボラック型エポキシ樹脂(E)を得ることができるが、作業性の面での粘度を考えると前記(4)に記載の如く、式[4]で示されるような3核体化合物(即ち、式[1]においてn=0のもの)の含有量が30重量%以上であることが好ましく、特に35重量%以上であることが好ましい。
【0044】なお、本発明においてアリル基の少なくとも一部はベンゼン核又はナフタレン核に直接結合していることが好ましく、従って、上記製法2においてクライゼン転移を行うことが好ましい。
【0045】本発明の化合物又は樹脂は、樹脂組成物の成分として用いる際、他のエポキシ樹脂あるいは、硬化剤と併用することも可能である。従って、必要な量を添加しさらに変性を施すことにより任意(例えばシリコーン変性による可とう性の付与等)の性質を付与することもでき、組成物用化合物又は樹脂あるいはその原料化合物又は樹脂として幅広く用いることができる。又、これらを含む組成物を用いて得られる硬化物は優れた物性を有し、半導体封止用、積層用材料等に使用される。
【0046】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0047】(フェノール類ジメチロール化合物の合成)
合成例1.4−メチルフェノール162g(1.5モル)、パラホルムアルデヒド90g及び水100mlを温度計、冷却管、滴下ロート及び攪拌機を付けたフラスコに仕込み、窒素を吹き込みながら攪拌した。室温下、15%水酸化ナトリウム水溶液120g(水酸化ナトリウムとして0.45モル)を発熱に注意しながら液温が50℃を越えないようにゆっくり滴下した。
【0048】その後、水浴中で50℃まで加熱し、10時間反応させた。反応終了後、水300mlを加え室温まで冷却し発熱に注意しながら10%塩酸水溶液で中和し、その後析出した結晶を濾取した。濾液のpHが6〜7になるまで洗浄し、減圧下(10mmHg)50℃で乾燥し、白色結晶の2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール(MP)201gを得た。
【0049】合成例2.合成例1において4−メチルフェノールの代わりに2−メチルフェノールを162g(1.5モル)用い、15%水酸化ナトリウムを300g用い反応温度を30℃にした以外は合成例1と同様に反応を行い、4,6−ジメチロール−2−メチルフェノール(MO)を206g得た。
【0050】合成例3.4−t−ブチルフェノール225g(1.5モル)、パラホルムアルデヒド90g及び水100mlを温度計、冷却管、滴下ロート及び攪拌機を付けた1リットルのフラスコに仕込み、窒素を吹き込みながら攪拌した。室温下、15%水酸化ナトリウム水溶液120g(水酸化ナトリウムとして0.45モル)を発熱に注意しながら液温が50℃を越えないようにゆっくり滴下した。
【0051】その後、水浴中で50℃まで加熱し、10時間反応させた。反応終了後、水300mlを加え室温まで冷却し発熱に注意しながら10%塩酸水溶液で中和した。クロロホルムを500ml加えて油層を分離し、水/メタノール溶液(水/メタノール=80/20(重量%))にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。その後減圧下でクロロホルムを除去し粘稠な液体として2,6−ジメチロール−4−t−ブチルフェノール(BP)296g(純度85%)を得た。
【0052】合成例4.合成例1において4−メチルフェノールの代わりに4−クロルフェノールを193g(1.5モル)用いた以外は合成例1と同様にして、白色結晶の2,6−ジメチロール−4−クロルフェノール(CP)256gを得た。
【0053】合成例5.合成例3において4−t−ブチルフェノールの代わりに4−フェニルフェノールを255g(1.5モル)用いた以外は合成例1と同様にして、粘稠な液体として2,6−ジメチロール−4−フェニルフェノール(AP)316gを得た。
【0054】(アリルナフトールの合成)
合成例61−ナフトール144gと水酸化ナトリウム水溶液(20重量%)200gを反応器に仕込み50℃で撹拌した。ここに臭化アリル121gを発熱に注意しながら滴下し、40℃にて4時間反応させた。メチルイソブチルケトン500ミリリットルを加え水洗を繰り返した後、メチルイソブチルケトンを除去し、無溶媒下で180℃にて2時間反応(クライゼン転位)させた。こうして式[6]で表される2−あるいは4−アリル−1−ナフトールの混合物178gが得られた。(転位率98%、2位転位物:4位転位物=5:1)
【0055】(アリル基含有ノボラック樹脂の合成)
実施例1合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gと合成例6に示した方法で合成した2−アリル−1−ナフトール、4−アリル−1−ナフトールの混合物368gを温度計、撹拌機及び冷却管を付けたフラスコに仕込みメチルイソブチルケトン1000ミリリットルを加えて窒素雰囲気下で撹拌した。
【0056】そして、P−トルエンスルホン酸2gを発熱に注意しながら液温が50℃を越えないようにゆっくり添加した。添加後、水浴中で50℃まで加温し2時間反応させた後、更に80℃にて1時間反応を行い、反応液を分液ロートに移しメチルイソブチルケトン300ミリリットルを加えて水洗した。洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を減圧下に除去し、前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 はメチル基である。)で表される化合物を含む本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−1)を486g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は92℃で水酸基当量(g/mol)は168であった。
【0057】このようにして得られた本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−1)についてGPC分析を行い、前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 は水酸基に対して4位に結合しておりメチル基である。)で示される化合物のものと思われるピークを分取し、マススペクトル(FAB−MS)によって分析した結果M+ 500が得られた。従って、生成物(A−1)中には、前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 は水酸基に対して4位に結合しておりメチル基である。)で示される化合物が50重量%含まれていることが確認された。また、NMR分析によりアリル当量(g/mol)求めたところ262であった。
【0058】尚、GPCの分析条件は、次の通り。
GPC装置:島津製作所(カラム:TSK−G−3000XL(1本)+TSK−G−2000XL(2本))
溶 媒 :テトラヒドロフラン 1ml/min検 出 :UV(254nm)
【0059】実施例2実施例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gと合成例6に示した方法で合成した2−アリル−1−ナフトール、4−アリル−1−ナフトールの混合物368gに加えて1−ナフトール288gを用いた以外は実施例1と同様にして前記式[1](式中、Xは水素原子、R1 はメチル基、R2 は水素原子又はアリル基、n=0.2 である。)で表される本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−2)を488g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は89℃で水酸基当量(g/mol)は163であった。
【0060】本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−2)について実施例1と同様にして分析をした結果、生成物(A−2)中には、前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 は水酸基に対して4位に結合しておりメチル基である)で示される化合物が42重量%含まれていることが確認された。また、アリル当量(g/mol)は242であった。
【0061】実施例3実施例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノールの代わりに合成例2で得られた4,6−ジメチロール−2−メチルフェノール化合物168gを用いた以外は実施例1と同様にして前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 はメチル基である。)で表される化合物を含む本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−3)を478g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は86℃で水酸基当量(g/mol)は164であった。
【0062】本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−3)について実施例1と同様にして分析した結果、生成物(A−3)中には、前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 は水酸基に対して2位に結合しておりメチル基である。)で示される化合物が45重量%含まれていることが確認された。 また、アリル当量(g/mol)は253であった。
【0063】実施例4実施例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノールの代わりに合成例3で得られた2,6−ジメチロール−4−t- ブチルフェノール247gを用いた以外は実施例1と同様にして前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 はt- ブチル基である。)で表される化合物を含む本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−4)を509g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は89℃で水酸基当量(g/mol)は182であった。
【0064】本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−4)について実施例1と同様にして分析した結果、生成物(A−4)中には、前記式[4](式中、Xが水素原子、R1 は水酸基に対して4位に結合しておりt- ブチル基である。)で示される化合物が43重量%含まれていることが確認された。また、アリル当量(g/mol)は280であった。
【0065】実施例5実施例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノールの代わりに合成例4で得られた2,6−ジメチロール−4−クロルフェノール189gを用いた以外は実施例1と同様にして前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 は塩素原子である。)で表される化合物を含む本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−5)を506g得た。軟化温度(JIS K2425環球法)は92℃で水酸基当量(g/mol)は175であった。
【0066】本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−5)について実施例1と同様にして分析した結果M+ 520及び522が得られた。従って、生成物(A−5)中には、前記式[4](式中、Xが水素原子、R1 は水酸基に対して4位に結合しており塩素原子である。)で示される化合物が45重量%含まれていることが確認された。また、アリル当量(g/mol)は264であった。
【0067】実施例6実施例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノールの代わりに合成例5で得られた2,6−ジメチロール−4−フェニルフェノール230gを用いた以外は実施例1と同様にして前記式[4](式中、Xは水素原子、R1 はフェニル基である。)で表される化合物を含む本発明のアリル基含有ノボラック樹脂(A−6)を548g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は99℃で水酸基当量(g/mol)は188であった。
【0068】本発明のアリル基含有ノボラック樹脂である生成物(A−6)について実施例1と同様にして分析した結果M+ 562が得られた。従って、生成物(A−6)中には、前記式[4](式中、Xが水素原子、R1は水酸基に対して4位に結合しておりフェニル基である。)で示される化合物が45重量%含まれていることが確認された。また、アリル当量(g/mol)は283であった。
【0069】(ノボラック型エポキシ樹脂の合成)
実施例7温度計、撹拌装置、窒素導入管の付いた反応容器に実施例1で得た生成物(A−1)(水酸基当量(g/mol)168)168g、エピクロルヒドリン460g及びジメチルスルホキシド200gを仕込み窒素を吹き込みながら、水酸化ナトリウム41gを30℃の水浴中で発熱に注意しながら徐々に加えた。添加終了後、40℃にて1時間、50℃で2時間、更に70℃にて1時間反応を行った。
【0070】反応終了後、メチルイソブチルケトン500mlを加え、分液ロートに移し水層が中性になるまで水洗した。その後、油層から溶媒、未反応エピクロルヒドリンを減圧下に除去した。その後、再び反応器に仕込みメチルイソブチルケトンを500ml加えて溶解させ、20%水酸化ナトリウム水溶液20gを加えて70℃にて1時間、撹拌した。反応終了後、分液ロートに移し、水で洗浄を繰り返した。油層から溶媒を減圧下に除去し黄色の固体(EA−1)220gを得た。
【0071】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−1)の軟化点は75℃で、エポキシ当量(g/mol)は230、アリル当量(g/mol)は345であった。又、実施例1と同様にして分析を行い、M+ 668が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はメチル基でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、GPCのピークより、生成物(EA−1)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はメチル基でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物の含有量は、46重量%であった。この成分より低分子量の成分の合計量は5.2重量%であった。また、生成物(EA−1)の加水分解性塩素量を測定したところ、190ppmであった。
【0072】尚、加水分解性塩素量の測定は、以下の方法により行った。エポキシ樹脂をジオキサンに溶解し、1N−KOHエタノール溶液を加え、30分間煮沸還流した後、硝酸銀溶液にて電位差滴定により定量した。
【0073】実施例8実施例7において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例2で得た生成物(A−2)(水酸基当量(g/mol)163)163gを用いた以外は実施例7と同様にして黄色の固体(EA−2)212gを得た。
【0074】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−2)の軟化点は72℃で、エポキシ当量(g/mol)は211、アリル当量(g/mol)は350であった。又、実施例1と同様にして分析を行った結果、M+ 668が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表わされる基で、R1 はメチル基でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、この化合物の含有量は、37重量%であった。この成分より低分子量の成分の合計量は4.9重量%であった。 生成物(EA−2)の加水分解性塩素量を測定したところ、170ppmであった。
【0075】実施例9実施例7において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例3で得た生成物(A−3)(水酸基当量(g/mol)164)164gを用いた以外は実施例7と同様にして黄色の固体(EA−3)218gを得た。
【0076】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−3)の軟化点は72℃で、エポキシ当量(g/mol)は229、アリル当量(g/mol)は338であった。又、実施例1と同様にして分析した結果、M+ 668が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はメチル基でグリシジルオキシ基に対して2位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、この化合物の含有量は、39重量%であり、この成分より低分子量の成分の合計量は4.8重量%であった。 生成物(EA−3)の加水分解性塩素量を測定したところ、192ppmであった。
【0077】実施例10実施例7において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例4で得た生成物(A−4)(水酸基当量(g/mol)182)182gを用いた以外は実施例7と同様にして黄色の固体(EA−4)225gを得た。
【0078】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−4)の軟化点は78℃で、エポキシ当量(g/mol)は245、アリル当量(g/mol)は360であった。又、実施例1と同様にして分析を行い、M+ 710が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はt−ブチル基でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、この化合物の含有量は、37重量%であり、この成分より低分子量の成分の合計量は4.6重量%であった。 生成物(EA−4)の加水分解性塩素量を測定したところ、200ppmであった。
【0079】実施例11実施例7において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例5で得た生成物(A−5)(水酸基当量(g/mol)175)175gを用いた以外は実施例7と同様にして黄色の固体(EA−5)220gを得た。
【0080】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−5)の軟化点は83℃で、エポキシ当量(g/mol)は238、アリル当量(g/mol)は349であった。又、実施例1と同様にして分析を行い、M+ 688及び690が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 は塩素原子でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、この化合物の含有量は、40重量%であり、この成分より低分子量の成分の合計量は4.2重量%であった。生成物(EA−5)の加水分解性塩素量を測定したところ、176ppmであった。
【0081】実施例12実施例7において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例6で得た生成物(A−6)(水酸基当量(g/mol)188)188gを用いた以外は実施例7と同様にして黄色の固体(EA−6)232gを得た。
【0082】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EA−6)の軟化点は88℃で、エポキシ当量(g/mol)は253、アリル当量(g/mol)は370であった。又、実施例1と同様にして分析を行い、M+ 730が得られたことにより、この成分が式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はフェニル基でグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物であることが確認された。又、この化合物の含有量は、39重量%であり、この成分より低分子量の成分の合計量は4.5重量%であった。 生成物(EA−6)の加水分解性塩素量を測定したところ、198ppmであった。
【0083】(フェノ−ル類ノボラック化合物を含む樹脂の合成)
参考例1合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gと1−ナフトール576gを温度計、撹拌機及び冷却管を付けたフラスコに仕込みメタノール250ミリリットルを加えて窒素雰囲気下で撹拌混合した。
【0084】そして、P−トルエンスルホン酸2gを発熱に注意しながら液温が50℃を越えないようにゆっくり添加した。添加後、水浴中で60℃まで加温し2時間反応させた後更に80℃にて1時間反応を行い、反応液を分液ロートに移しメチルイソブチルケトン1000ミリリットルを加えて水洗した。洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒及び未反応1−ナフトールを減圧下に除去し、ノボラック型樹脂(C−1)を415g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は104℃で水酸基当量(g/mol)は141であった。
【0085】生成物(C−1)についてGPC分析を行い、式[7]で示される化合物のものと思われるピークを分取し、マススペクトル(FAB−MS)によって分析した。その結果M+ 420が得られた。従って、生成物(C−1)中には、式[7](式中、R1 はメチル基であり、水酸基に対して4位に結合している。)で示される化合物が52重量%含まれていることが確認された。
【0086】参考例2参考例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gの代わりに合成例2で得られた4,6−ジメチロール−2−メチルフェノール168gを用いた以外は参考例1と同様な操作を行いノボラック型樹脂(C−2)を413g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は97℃で水酸基当量(g/mol)は142であった。
【0087】生成物(C−2)について同様にして分析したところM+ 420が得られたことから、生成物(C−2)中には、式[7](式中、R1 はメチル基であり、水酸基に対して2位に結合している。)で示される化合物が50重量%含まれていることが確認された。
【0088】参考例3参考例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gの代わりに合成例3で得られた2,6−ジメチロール−4−t−ブチルフェノール247gを用いた以外は参考例1と同様な操作を行いノボラック型樹脂(C−3)を456g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は100℃で水酸基当量(g/mol)は155であった。
【0089】生成物(C−3)について同様にして分析したところM+ 462が得られたことから、生成物(C−3)中には、式[7](式中、R1 はt−ブチル基であり、水酸基に対して4位に結合している。)で示される化合物が51重量%含まれていることが確認された。
【0090】参考例4参考例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gの代わりに合成例4で得られた2,6−ジメチロール−4−クロルフェノール189gを用いた以外は参考例1と同様な操作を行いノボラック型樹脂(C−4)を415g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は102℃で水酸基当量(g/mol)は148であった。
【0091】生成物(C−4)について同様にして分析したところM+ 440及び442が得られたことから、生成物(C−4)中には、式[7](式中、R1 は塩素原子であり、水酸基に対して4位に結合している。)で示される化合物が54重量%含まれていることが確認された。
【0092】参考例5参考例1において合成例1で得られた2,6−ジメチロール−4−メチルフェノール168gの代わりに合成例5で得られた2,6−ジメチロール−4−フェニルフェノール230gを用いた以外は参考例1と同様な操作を行いノボラック型樹脂(C−5)を470g得た。軟化温度(JIS K2425 環球法)は112℃で水酸基当量(g/mol)は162であった。
【0093】生成物(C−5)について同様にして分析したところM+ 482が得られたことから、生成物(C−5 )中には、式[7](式中、R1 は塩素原子であり、水酸基に対して4位に結合している。)で示される化合物が50重量%含まれていることが確認された。
【0094】(アリル基含有ノボラック樹脂の合成)
実施例13温度計、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下ロートの付いた反応容器に参考例1で得た生成物(C−1)(水酸基当量(g/mol)141)141g、アセトン100ml、水酸化ナトリウム水溶液(40重量%)75gを仕込み、30℃にて窒素を吹き込みながら撹拌混合した。続いて、臭化アリル81gを発熱に注意しながらゆっくり滴下した。
【0095】滴下終了後、50℃にて2時間反応を行いメチルイソブチルケトンを500ml加えて分液ロートに移して水洗した。油層を再び反応器に移して130℃に加温し、撹拌しながら溶媒を留去した。その後、180℃に加温し5時間反応させた。その結果、淡茶色の樹脂(生成物B−1)166g(水酸基当量(g/mol)176)が得られた。NMR分析によりアリル当量(g/mol)は252であった。
【0096】実施例14実施例13において参考例1で得られた生成物(C−1)の代わりに参考例2で得られた生成物(C−2)142gを用いた以外実施例13と同様な操作により、淡茶色の樹脂(生成物B−2)171g(水酸基当量(g/mol)178)が得られた。アリル当量(g/mol)は256であった。
【0097】実施例15実施例13において参考例1で得られた生成物(C−1)の代わりに参考例3で得られた生成物(C−3)155gを用いた以外参考例実施例13と同様な操作により、淡茶色の樹脂(生成物B−3)178g(水酸基当量(g/mol)188)が得られた。アリル当量(g/mol)は276であった。
【0098】実施例16実施例13において参考例1で得られた生成物(C−1)の代わりに参考例4で得られた生成物(C−4)148gを用いた以外参考例実施例13と同様な操作により、淡茶色の樹脂(生成物B−4)172g(水酸基当量(g/mol)178)が得られた。アリル当量(g/mol)は267であった。
【0099】実施例17実施例13において参考例1で得られた生成物(C−1)の代わりに参考例5で得られた生成物(C−5)162gを用いた以外参考例実施例13と同様な操作により、淡茶色の樹脂(生成物B−5)186g(水酸基当量(g/mol)195)が得られた。アリル当量(g/mol)は289であった。
【0100】(アリル基含有ノボラック型エポキシ樹脂の合成)
実施例18温度計、撹拌装置、窒素導入管の付いた反応容器に実施例13で得た生成物(B−1)(水酸基当量(g/mol)176)176g、エピクロルヒドリン460g及びジメチルスルホキシド200gを仕込み窒素を吹き込みながら、水酸化ナトリウム41gを30℃の水浴中で発熱に注意しながら徐々に加えた。添加終了後、40℃にて1時間、50℃で2時間、更に70℃にて1時間反応を行った。
【0101】反応終了後、メチルイソブチルケトン500mlを加え、分液ロートに移し水層が中性になるまで水洗した。その後、油層から溶媒、未反応エピクロルヒドリンを減圧下に除去した。その後、再び反応器に仕込みメチルイソブチルケトンを500ml加えて溶解させ、20%水酸化ナトリウム水溶液20gを加えて70℃にて1時間、撹拌した。反応終了後、分液ロートに移し、水で洗浄を繰り返した。油層から溶媒を減圧下に除去し黄色の固体(EB−1)228gを得た。
【0102】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EB−1)の軟化点は80℃で、エポキシ当量(g/mol)は240で、アリル当量(g/mol)は352であった。また、GPCのピークより、生成物(EB−1)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はメチル基でありグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物の含有量は、45重量%であった。生成物(EB−1)の加水分解性塩素量を測定したところ、190ppmであった。
【0103】実施例19実施例18において、実施例13で得た生成物(B−1)176gの代わりに実施例14で得られた生成物(B−2)171gを用いた以外は実施例18と同様な操作により、黄色の固体(EB−2)224gを得た
【0104】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EB−2)の軟化点は75℃で、エポキシ当量(g/mol)は237で、アリル当量(g/mol)342であった。また、GPCのピークより、生成物(EB−2)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はメチル基でありグリシジルオキシ基に対して2位に結合している。)で表される化合物の含有量は、46重量%であった。生成物(EB−2)の加水分解性塩素量を測定したところ、171ppmであった。
【0105】実施例20実施例18において、実施例13で得た生成物(B−1)176gの代わりに実施例15で得られた生成物(B−3)188gを用いた以外は実施例18と同様な操作により、黄色の固体(EB−3)238gを得た
【0106】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EB−3)の軟化点は79℃で、エポキシ当量(g/mol)は256で、アリル当量(g/mol)は367であった。また、GPCのピークより、生成物(EB−3)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はt−ブチル基でありグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物の含有量は、45重量%であった。生成物(EB−3)の加水分解性塩素量を測定したところ、189ppmであった。
【0107】実施例21実施例18において、実施例13で得た生成物(B−1)176gの代わりに実施例16で得られた生成物(B−4)178gを用いた以外は実施例18と同様な操作により、黄色の固体(EB−4)228gを得た
【0108】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EB−4)の軟化点は83℃で、エポキシ当量(g/mol)は243で、アリル当量(g/mol)は354であった。また、GPCのピークより、生成物(EB−4)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 は塩素原子でありグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物の含有量は、48重量%であった。生成物(EB−4)の加水分解性塩素量を測定したところ、198ppmであった。
【0109】実施例22実施例18において、実施例13で得た生成物(B−1)176gの代わりに実施例17で得られた生成物(B−5)195gを用いた以外は実施例18と同様な操作により、黄色の固体(EB−5)245gを得た
【0110】本発明のエポキシ樹脂である生成物(EB−5)の軟化点は92℃で、エポキシ当量(g/mol)は262で、アリル当量(g/mol)は378であった。また、GPCのピークより、生成物(EB−5)中に含まれる式[4](式中、Xは式[2]で表される基で、R1 はフェニル基でありグリシジルオキシ基に対して4位に結合している。)で表される化合物の含有量は、43重量%であった。生成物(EB−5)の加水分解性塩素量を測定したところ、221ppmであった。
【0111】(シリコーン変性ノボラック型樹脂の合成)
応用例1温度計、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下ロート及び水分離装置の付いたガラス反応器に実施例1で得たアリル基含有ノボラック型樹脂(生成物(A−1)52.4g及びメチルイソブチルケトン500g、2重量%白金濃度の2−エチルヘキサノール変性塩化白金酸0.05gを仕込み1時間共沸脱水した後、還流下でシリコーンオイル(S)(チッソ(株)製、FM−1121、H当量:2334)466.8gを30分かけて滴下した。更に同温度で3時間反応させた後、水洗処理し溶媒を減圧下に除去して濃黄色粘性物518g(生成物M−1)を得た。
【0112】応用例2応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例2で得た生成物(A−2)48.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物514g(生成物M−2)を得た。
【0113】応用例3応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例3で得た生成物(A−3)50.6gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物515g(生成物M−3)を得た。
【0114】応用例4応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例4で得た生成物(A−4)56.0gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物521g(生成物M−4)を得た。
【0115】応用例5応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例5で得た生成物(A−5)52.8gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物518g(生成物M−5)を得た。
【0116】応用例6応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例6で得た生成物(A−6)56.6gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物522g(生成物M−6)を得た。
【0117】応用例7応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例13で得た生成物(B−1)50.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物516g(生成物M−7)を得た。
【0118】応用例8応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例14で得た生成物(B−2)51.2gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物516g(生成物M−8)を得た。
【0119】応用例9応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例15で得た生成物(B−3)55.2gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物520g(生成物M−9)を得た。
【0120】応用例10応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例16で得た生成物(B−4)53.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物519g(生成物M−10)を得た。
【0121】応用例11応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例17で得た生成物(B−5)57.8gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物523g(生成物M−11)を得た。
【0122】(シリコーン変性ノボラック型エポキシ樹脂の合成)
応用例12応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例7で得た生成物(EA−1)69.0gを用い、触媒量を0.07gに変えた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物534g(生成物ME−1)を得た。
【0123】応用例13応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例8で得た生成物(EA−2)70.0gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物535g(生成物ME−2)を得た。
【0124】応用例14応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例9で得た生成物(EA−3)67.6gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物533g(生成物ME−3)を得た。
【0125】応用例15応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例10で得た生成物(EA−4)72.0gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物537g(生成物ME−4)を得た。
【0126】応用例16応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例11で得た生成物(EA−5)69.8gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物535g(生成物ME−5)を得た。
【0127】応用例17応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例12で得た生成物(EA−6)74.0gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物538g(生成物ME−6)を得た。
【0128】応用例18応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例18で得た生成物(EB−1)70.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物536g(生成物ME−7)を得た。
【0129】応用例19応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例19で得た生成物(EB−2)68.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物534g(生成物ME−8)を得た。
【0130】応用例20応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例20で得た生成物(EB−3)73.4gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物539g(生成物ME−9)を得た。
【0131】応用例21応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例21で得た生成物(EB−4)70.8gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物536g(生成物ME−10)を得た。
【0132】応用例22応用例1において実施例1で得た生成物(A−1)の代わりに実施例22で得た生成物(EB−5)75.6gを用いた以外は応用例1と同様に処理し濃黄色粘性物540g(生成物ME−11)を得た。
【0133】応用実施例1〜22及び応用比較例1〜2硬化剤として生成物(M−1)〜(M−11)及び市販のフェノールノボラック樹脂を、エポキシ樹脂として生成物(ME−1)〜(ME−11)及び市販のエポキシ樹脂を用い、トリフェニルホスフィン(TPP)を硬化促進剤とし、これらを表1に示す割合で配合した組成物を70〜80℃で15分間ロール混練した。これを冷却後、粉砕、タブレット化し、更にトランスファー成型機により成型後、160℃で2時間予備硬化して、180℃で8時間、後硬化を行って硬化物(試験片)を得た。この硬化物のガラス転移温度(Tg)、曲げ弾性率及び吸水率を測定した。硬化物の評価結果を表1に示した。
【0134】以下に物性測定の条件を示した。
ガラス転移温度(Tg) :熱機械分析装置 真空理工(株)TM−7000昇温速度:2℃/min曲げ弾性率 :JIS K 6911
【0135】
吸水率 :試 験 片 直径 50mm(硬化物) 厚さ 3mm円板条 件 100℃の水中で24時間煮沸した後の重量増加量(重量%)
【0136】尚、配合した市販の樹脂は次のとおり。
PN(H−1) : (日本化薬 製) フェノールノボラック樹脂水酸基当量(g/eq)106軟化温度 83℃EOCN−1020 : (日本化薬 製)クレゾールノボラックエポキシ樹脂エポキシ当量(g/eq)200軟化温度 65℃EOCN−4400 : (日本化薬 製)クレゾールノボラックエポキシ樹脂エポキシ当量(g/eq)191軟化温度 63℃
【0137】表1の結果から明らかなように本発明の樹脂をシリコーン変性して得られる樹脂を用いて得られる硬化物はガラス転位温度が高く、吸水率が低い、なおかつ弾性率が低く、低応力化されているといった優れた物性を有する。
【0138】
表1の1 応用実施例 1 2 3 4 5 生成物(ME-1) 20 生成物(ME-2) 20 エポキシ 生成物(ME-3) 20 樹脂 生成物(ME-4) 20 生成物(ME-5) 20 EOCN-1020 100 100 100 100 100 硬化剤 PN(H-1) 60 60 60 60 60 硬化促進剤 TPP 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ガラス転移温度(℃) 164 165 162 163 165 曲げ弾性率 243 245 243 249 250(30℃、Kg/mm2
吸水率(重量%) 1.0 1.0 1.1 1.0 0.9
【0139】
表1の2 応用実施例 6 7 8 9 10 生成物(ME-6) 20 生成物(ME-7) 20 エポキシ 生成物(ME-8) 20 樹脂 生成物(ME-9) 20 生成物(ME-10) 20 EOCN-1020 100 100 100 100 100 硬化剤 PN(H-1) 60 60 60 60 60 硬化促進剤 TPP 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ガラス転移温度(℃) 164 165 163 165 163 曲げ弾性率 252 248 250 253 252(30℃、Kg/mm2
吸水率(重量%) 1.0 1.0 1.0 1.1 1.1
【0140】
表1の3 応用実施例 11 12 13 14 15 生成物(ME-11) 20 生成物(ME-1) 40 20 10 エポキシ 生成物(ME-2) 10 樹脂 EOCN-1020 100 100 100 100 100 PN(H-1) 60 70 53 53 53 硬化剤 生成物(M-1) 10 20 生成物(M-2) 10 硬化促進剤 TPP 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ガラス転移温度(℃) 163 169 168 170 163 曲げ弾性率 251 220 234 244 251 (30℃、Kg/mm2
吸水率(重量%) 1.1 1.0 1.1 1.0 1.1
【0141】
表1の4 応用実施例 16 17 18 19 20 エポキシ EOCN-1020 100 100 100 100 100 樹脂 生成物(M-3) 20 生成物(M-5) 20 硬化剤 生成物(M-7) 20 生成物(M-9) 20 生成物(M-11) 20 PN(H-1) 53 53 53 53 53 硬化促進剤 TPP 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ガラス転移温度(℃) 164 164 162 165 163 曲げ弾性率 253 256 248 250 249(30℃、Kg/mm2
吸水率(重量%) 1.0 1.0 1.0 1.1 1.0
【0142】
表1の5 応用実施例 応用比較例 20 21 22 1 2 生成物(ME-1) 20 生成物(ME-2) 20 10 エポキシ 生成物(ME-2) 樹脂 EOCN-1020 100 EOCN-4400 96 96 96 96 PN(H-1) 60 60 53 53 53 硬化剤 生成物(M-1) 10 硬化促進剤 TPP 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 ガラス転移温度(℃) 164 163 163 160 159 曲げ弾性率 254 250 251 300 303(30℃、Kg/mm2
吸水率(重量%) 1.0 1.0 0.9 1.3 1.3
【0143】
【発明の効果】本発明のアリル基含有化合物又は樹脂は、エポキシ樹脂組成物の成分として又はその原料として有用であり、本発明の樹脂を用いて得られる硬化物は、高耐熱性、低吸水性を兼ね備えている。従って、本発明の樹脂は、電子部品の封止材料、成形材料または積層用の材料として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式[1]
【化1】


(式中、Xは独立して水素原子、アリル基又は式[2]
【化2】


で表される基のいずれかを表し、同一であっても異なっていてもよく、R1、R2 はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、又はアリル基を表し、同一であっても異なっていてもよいが、R1 、R2 、Xのうち少なくとも一つはアリル基であり、nは0〜10の値を示す。)で表されるノボラック型樹脂。
【請求項2】式[3]
【化3】


(式中、Xは独立して水素原子、アリル基または請求項1の式[2]で表される基のいずれかを表し、同一であっても異なっていてもよく、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、同一であっても異なっていてもよく、nは0〜10の値を示す。)で表されるノボラック型樹脂。
【請求項3】式[4]
【化4】


(式中、Xは独立して水素原子、アリル基又は請求項1の式[2]で表される基を示し、同一であっても異なっていてもよく、R1 は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、同一であっても異なっていてもよい。)で表されるノボラック型化合物。
【請求項4】請求項3の式[4]で表されるノボラック型化合物を30重量%以上含んでなる、請求項1記載の樹脂。
【請求項5】 (A)式[5]
【化5】


(式中、R1 は独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリ−ル基、ハロゲン原子又はアリル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)で表されるフェノール類ジメチロール化合物と式[6]
【化6】


で表されるアリルナフトール類とを酸触媒下に脱水縮合させるか、(B)式[7]
【化7】


(式中、R1 は前記と同じ意味を有する。)で表されるフェノール類ノボラック化合物のアルカリ塩に、更にハロゲン化アリル化合物を反応させアリルエーテル化した後、必要によりクライゼン転位させ、必要により更にエピハロヒドリン化合物と反応させることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の化合物又は樹脂の製造法。