説明

新規ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される新規ビス(ホルミルフェニル)化合物並びに多核ポリフェノール化合物

【課題】感光性レジストの原料として有用なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される多核ポリフェノール化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物。


代表的な化合物としては、2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール,2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンなどが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される新規なビス(ホルミルフェニル)化合物並びに多核ポリフェノール化合物に関し、詳しくは、フェニル基とフェノール性水酸基が置換したベンゼン核に2つのアルキレン基を介して各々ヒドロキシ置換ホルミルフェニル基を有する新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物、及びこのようなビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の3つのヒドロキシ基をエステル基又はカルボキシル基含有エーテル基で置換した新規なビス(ホルミルフェニル)化合物、さらにこのようなビス(ホルミルフェニル)化合物の2つの分子末端ホルミル基にさらに各々2つのヒドロキシフェニル基が置換した多核ポリフェノール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物としては、いくつかの化合物が知られており、例えば、4,4’−メチレンビス(2−ホルミルフェノール)等のビス(ヒドロキシ−ホルミル)アルカン類(特許文献1)、2,6−ビス[(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−シクロヘキシルフェノール等の分子中央のヒドロキシルフェニル核のヒドロキシル基に対しオルソ位にメチレン基を介してヒドロキシホルミルフェニル基を有するビス(ヒドロキシベンズアルデヒド)化合物(特許文献2)、1−[α−メチル−α−(3−ホルミル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α,α−ビス(3−ホルミル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等のアルコキシカルボニルメチルオキシ基が置換した2つのベンゼン環を持つビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物(特許文献3)などが知られている。
【0003】
また、そのようなビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物から誘導される、ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物のヒドロキシ基をエステル基又はカルボキシル基含有エーテル基で置換したビス(ホルミルフェニル)化合物として、例えば、ビス[3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル]メタン等(特許文献1)、2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン等(特許文献4)などが知られている。さらに、このようなエステル基又はカルボキシル基含有エーテル基置換ビス(ホルミルフェニル)化合物の2つの分子末端ホルミル基にさらに各々2つのヒドロキシフェニル基が置換した多核ポリフェノール化合物として、例えば、ビス[3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル]メタン等(特許文献1)、2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン等(特許文献4)、1−[α−メチル−α−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシ−5−メチルフェニル}エチル]−4−[α,α−ビス{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシ−5−メチルフェニル}エチル]ベンゼン等(特許文献3)などが知られている。
【0004】
このような化合物は、従来、例えば、感光性レジストの原料の分野において用いられてきているが、近年、レジストの解像度、コントラスト、酸解離性溶解抑制基が脱離した部分のアルカリ現像液に対するアルカリ溶解性、或いはアルカリ溶解速度などの改良と共に、特に耐熱性の更なる改良が求められてきており、上記したような従来知られている酸解離性溶解抑制基の置換した多核フェノール化合物の改良が望まれている。また、同時にその出発原料となるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の改良及びそれから誘導される、多核フェノール化合物の直接原料となるエステル基又はカルボキシル基含有エーテル基置換ビス(ホルミルフェニル)化合物の改良が望まれている。さらに、従来のこのような化合物は、特に耐熱性の良い化合物においては工業的に純度を向上させることが難しく、高純度品を工業的に容易に得ることのできる化合物であることも望まれている。
【0005】
例えば、ヒドロキシカルボニルフェニルメチルオキシ基が置換した2つのベンゼン環が、メチレン基で結合したビス(ホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される多核ポリフェノール化合物(特許文献1)や、アルキル基で置換されたフェノール類又はビスフェノール類の中心骨格に、2つのヒドロキシホルミルフェニル基がメチレン基で結合した分子骨格を持つ、ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される多核ポリフェノール化合物(特許文献2)などは、耐熱性やアルカリ溶解性が十分でなく問題があった。また、ヒドロキシカルボニルメチルオキシ基が置換した3つのベンゼン環を有するトリス(ホルミルフェニル)化合物及び多核ポリフェノール化合物(特許文献3)は耐熱性に優れ、アルカリ溶解性も良好であるものの、結晶化が困難であるために、工業的に高純度品を得ることが難しく、製造工程の操作性にも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/044568号
【特許文献2】再公表特許第2006/090757号公報
【特許文献3】国際公開第2007/142353号
【特許文献4】国際公開第2009/069450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酸解離性溶解抑制基が置換可能なカルボキシル基やアルコキシカルボニル基を有する従来の多核ポリフェノール化合物及びその中間原料のビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導されるビス(ホルミルフェニル)化合物における上述したような状況に鑑みてなされたものであって、製造時において溶剤により容易に結晶性乃至非結晶性固体として析出分離でき、しかも得られた化合物は耐熱性、溶媒等への溶解性に優れ、例えば、酸解離性溶解抑制基を導入して感光性レジストとして使用された場合において、露光等により溶解抑制基が脱離した後の、レジストのアルカリ溶解性、或いはアルカリ溶解速度に優れる新規な多核ポリフェノール化合物を提供することを目的とする。また、そのような多核ポリフェノール化合物の中間原料としても有用な、工業的に容易に高純度品が得られ、しかも耐熱性、溶媒等への溶解性に優れた新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導されるビス(ホルミルフェニル)化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため多核ポリフェノール化合物について、特に溶剤からの晶析や沈殿により容易に高純度品が得られる事、感光性レジスト原料とした場合の耐熱性の向上、さらにアルカリ溶解性、アルカリ溶解速度の向上について鋭意検討した結果、フェニル基とフェノール性水酸基が置換したベンゼン核に2つのアルキレン基を介して各々ヒドロキシ置換ホルミルフェニル基を有する構造を分子骨格中心とする新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物、そのビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の3つのベンゼン核に置換したフェノール性水酸基が各々エステル基又はカルボキシル基含有のエーテル基で置換されており、しかもエーテル基が単環又は縮合環芳香族炭化水素、又は単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい脂肪族飽和炭化水素カルボキシル基乃至アルキルエステル基である新規なビス(ホルミルフェニル)化合物、また、そのビス(ホルミルフェニル)化合物の分子両末端の2つのホルミルフェニル基のベンゼン核に置換したホルミル基が、各々少なくとも1以上のフェノール性水酸基を有する2つのフェニル基で置換されている新規な多核ポリフェノール化合物を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明による新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)

(式中、Rはフェニル基を示し、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示し、R、R、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、mは0〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。m、nが2以上の場合、R、Rは各々同一であっても異なっていても良い。)
【0010】
また、下記一般式(2)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の好ましい態様である。
一般式(2)

(式中、R、R3、、R、R、R、m、及びnは一般式(1)のそれと同じであり、R1aは炭素原子数1〜4のアルキル基及び/又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、pは0〜3の整数を表す。)
【0011】
また、下記一般式(3)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(1)及び(2)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様である。
一般式(3)

(式中、R、R3、、R、R、R、m、及びnは一般式(1)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0012】
また、本発明による新規なビス(ホルミルフェニル)化合物は、下記一般式(4)で表される。
一般式(4)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していても良い炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
【0013】
また、下記一般式(5)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物の好ましい態様である。
一般式(5)

(式中、R、R、R、R、R、R、R8、9、m及びnは一般式(4)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0014】
また、下記一般式(6)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(4)及び(5)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様である。
一般式(6)

(式中、R、R3、、R、R、R、R8、R9、m、及びnは一般式(4)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0015】
また、本発明による新規な多核ポリフェノール化合物は、下記一般式(7)で表される。
一般式(7)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、R、Rは一般式(4)のそれと同じであり、Xは下記一般式(8)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。)
【0016】
一般式(8)

(式中、R10は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又はフェニル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合は同一でも異なっていても良い。)
【0017】
また、下記一般式(9)で表される多核ポリフェノール化合物は本発明の上記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物の好ましい態様である。
一般式(9)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R9、X、m、nは一般式(7)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0018】
また、下記一般式(10)で表される多核ポリフェノール化合物は本発明の上記一般式(7)及び(9)で表される多核ポリフェノール化合物のより好ましい態様である。
一般式(10)

(式中、R、R3、、R、R、R、R、R、X、m、及びnは一般式(7)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【発明の効果】
【0019】
本発明の新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は、製造時において溶剤により容易に結晶性乃至非結晶性固体として析出分離でき、しかもガラス転移温度が高いなどの耐熱性に優れ、また両末端のフェニル核に反応性に富むホルミル基とフェノール性水酸基をもつので反応性に優れ、例えばフェノール性水酸基とハロゲン化炭化水素との反応によって得られるエーテル化合物や、ホルミル基とフェノール類との反応によって得られる種々の多核ポリフェノール化合物の中間原料、感光性レジスト、フェノール樹脂或いはエポキシ樹脂の原料や改質剤などとして好適に利用される。
【0020】
また、本発明の今ひとつの上記ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物から誘導される新規なビス(ホルミルフェニル)化合物は、製造時において溶剤により容易に結晶性乃至非結晶性固体として析出分離でき、中心骨格が上記ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)でありホルミル基及びカルボキシ置換芳香族炭化水素基又はアルコキシカルボニル置換芳香族炭化水素基が結合したエーテル基をフェニル核置換基として有するので、耐熱性に優れ、しかもホルミル基によるフェノール類等との反応性にも優れ、或いは、末端エステル基或いはカルボキシル基による反応性も優れているので、フェノール樹脂等の改質剤やフォトレジスト原料のほか、フェノール類等との反応によって得られる種々の多核フェノール化合物の中間原料、耐熱性に優れた多核芳香族化合物等の反応性中間原料等として有用である。
【0021】
また本発明のさらに今ひとつの上記ビス(ホルミルフェニル)化合物から誘導される多核ポリフェノールは、製造時において溶剤により容易に結晶性乃至非結晶性固体として析出分離でき、更にこれに4つのヒドロキシフェニル基が結合しているので、ガラス転移温度が高いなどの耐熱性に優れ、また、アルカリ溶解性、アルカリ溶解速度にも優れるので感光性レジスト原料として有用であり、さらに、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の原料や改質剤などとして好適に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による新規なビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は下記一般式(1)で表される。
一般式(1)

(式中、Rはフェニル基を示し、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示し、R、R、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、mは0〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。m、nが2以上の場合、R、Rは各々同一であっても異なっていても良い。)
【0023】
上記一般式(1)において、Rはフェニル基を示し、その置換位置はヒドロキシル基に対して、p−位またはo−位であることが好ましく、p−位であることが更に好ましい。また、フェニル基には1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキル基及び/又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基が置換していても良い。そのようなアルキル基及び/又はアルコキシ基の炭素原子数は1〜2が好ましく、具体的にはメチル基、メトキシ基が好ましい。
また、R、R及びR、Rが結合している炭素原子の、中央のベンゼン環に対する結合位置は、中央のベンゼン環に結合したヒドロキシル基に対して、オルソ,オルソ−位又はオルソ,パラ−位が好ましく、オルソ,オルソ−位が更に好ましい。
【0024】
したがって、一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の好ましい態様は下記一般式(2)で表される。
一般式(2)

(式中、R、R3、、R、R、R、m、及びnは一般式(1)のそれと同じであり、R1aは炭素原子数1〜4のアルキル基及び/又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、pは0〜3の整数を表す。)
【0025】
また、R、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示し、炭素原子数1〜8のアルキル基は、芳香族炭化水素基やアルコキシ基で置換されていてもよく、またアルキル基は直鎖状、分枝鎖状または環状でもよい。直鎖状または分枝鎖状の場合には炭素原子数1〜4が好ましく、環状の場合には炭素原子数5〜8が好ましい。
【0026】
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基、ベンジル基等の芳香族置換アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は炭素原子数1〜4が好ましい。
また、mは0または1〜3の整数を表し、好ましくは0、1または2であり、nは0または1〜2の整数を表し、好ましくは0または1であり、m、nが2以上の場合はR、Rは各々同一であっても、異なっていてもよい。
【0027】
上記一般式(1)において、R、R、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。また、R又はRの少なくとも一方及び、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
また、ホルミル基が結合したフェニル基に置換する水酸基の位置は、R、RまたはR、Rが結合している炭素原子の結合位置に対してオルソ位またはパラ位が好ましく、パラ位がさらに好ましい。
【0028】
したがって、一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様は下記一般式(3)で表される。
一般式(3)

(式中、R、R3、、R、R、R、m、及びnは一般式(1)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0029】
従って、本発明の一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物としては、具体的には、例えば、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール

2,6−ビス{(2,5−ジメチル−3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール、
2,6−ビス{(5−シクロヘキシル−3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール、
2,4−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−6−フェニルフェノール、
2,6−ビス{(5−ホルミル−2−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール、
2,6−ビス{1−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}−4−フェニルフェノール、
2,6−ビス{1−メチル−1−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}−4−フェニルフェノールなどが挙げられる。
【0030】
次に、本発明の今ひとつの化合物である、前記ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物から誘導されるビス(ホルミルフェニル)化合物は、下記一般式(4)で表される。
一般式(4)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していても良い炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
【0031】
上記一般式(4)において、式中、R、Rは直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基の場合には炭素原子数1〜4が好ましく、環状のアルキル基の場合には炭素原子数5〜8が好ましい。また、R又はRの少なくとも一方及び、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。Rは2価の飽和炭化水素基、アルキル基が置換していてもよい炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい脂肪族飽和炭化水素基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基である。
【0032】
が2価の飽和炭化水素基である場合、具体的には例えばメチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,1−プロピリデン、1,4−ブチレン、2−メチル−1,3−プロピレン、ヘキサメチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、1,1−エチリデン、2,4−ブチレン、1,1−n−ヘキシリデン等の直鎖状、分枝鎖状のアルキレン基またはアルキリデン基が挙げられる。好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基である。また、Rがアルキル基が置換していてもよい炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基である場合、具体的には例えばp−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン、2−プロピル−1,4−フェニレンなどの単環式芳香族炭化水素基、1,5−ナフチレン、2,7−ナフチレン、アントラセン−2,7−ジイル、フルオレン−2,7−ジイルなどの縮合環式芳香族炭化水素基などが挙げられる。好ましくは単環式芳香族炭化水素基である。
【0033】
また、前記Rが炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基において、芳香族炭化水素基を有する脂肪族飽和炭化水素基としては、主鎖に単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基が好ましく、下記一般式(15)で表される。
一般式(15)

式中、R11、R13は各々独立して炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素を示し、
c、eは1または0であり、dは1であり、但し、R11+R13の合計炭素原子数は1〜8であり、c、eは共に0であることはなく、R12は炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を示す。また、R12で表される炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基としては、Rが炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基である場合の、単環又は縮合環芳香族炭化水素基と同じである。
【0034】
従って、炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、具体的には例えば、

等があげられる。
【0035】
また、一般式(4)におけるR、或いはRが一般式(15)で表される場合のR11においては、フェニルオキシ基に結合している炭素原子は酸に安定である理由で1級又は2級の炭素原子が好ましい。
また、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、炭素原子数1〜6のアルキル基としては直鎖状又は分枝鎖状又は環状のアルキル基であり、具体的には例えば、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソプロピル、n−プロピル、シクロヘキシル等が挙げられる。好ましくは1級又は2級アルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝鎖状の1級又は2級アルキル基である。
【0036】
従って、一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物において、フェニルオキシ基に結合したエステル置換炭化水素基、詳細には−RCOORで示されるカルボキシ炭化水素基又はアルコキシカルボニル炭化水素基としては、具体的には例えば、カルボキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、カルボキシプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基、3−メトキシカルボニル−2−メチル−1−プロピル基、メトキシカルボニルプロピル基、或いは、

などがあげられる。
【0037】
また、本発明の上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の好ましい態様に対応して、下記一般式(5)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物の好ましい態様である。
一般式(5)

(式中、R、R、R、R、R、R、R8、9、m及びnは一般式(4)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0038】
また、本発明の上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様に対応して、下記一般式(6)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物は本発明の上記一般式(4)及び(5)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様である。
一般式(6)

(式中、R、R3、、R、R、R、R8、R9、m、及びnは一般式(4)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0039】
従って、本発明の上記一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物としては、具体的には、例えば、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、

2,6−ビス{(2,5−ジメチル−3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(5−シクロヘキシル−3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,4−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−6−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(5−ホルミル−2−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{1−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)エチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{1−メチル−1−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)エチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、

2,6−ビス[{2,5−ジメチル−3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{5−シクロヘキシル−3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,4−ビス[{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−6−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{5−ホルミル−2−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}エチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−メチル−1−{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}エチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼンなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明のさらに今ひとつの化合物である、前記ビス(ホルミルフェニル)化合物から誘導される新規な多核ポリフェノール化合物は、下記一般式(7)で表される。
一般式(7)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、R、Rは一般式(4)のそれと同じであり、Xは下記一般式(8)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。)
【0041】
一般式(8)

(式中、R10は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又はフェニル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合R10は同一でも異なっていても良い。)
【0042】
上記一般式(7)において、式中、R、Rは直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基の場合には炭素原子数1〜4が好ましく、環状のアルキル基の場合には炭素原子数5〜8が好ましい。また、R又はRの少なくとも一方及び、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。Rが2価の飽和炭化水素基である場合、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基が好ましい。Rがアルキル基が置換していてもよい炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基である場合、単環式芳香族炭化水素基が好ましい。前記Rが炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基としては、主鎖に単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基が好ましい。また、Xは上記一般式(8)で表されるヒドロキシフェニル基であり、一般式(8)において、式中、R10は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又はフェニル基を示し、R10が炭素原子数1〜8のアルキル基である場合、芳香族炭化水素基やアルコキシ基で置換されていてもよく、また直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい。直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、直鎖状又は分枝鎖状アルコキシ基いずれかの場合には炭素原子数1〜4が好ましく、環状アルキル基又は環状アルコキシ基の場合には炭素原子数5〜8が好ましい。具体的には例えば前記した一般式(1)に於けるRと同じである。
10がフェニル基である場合、フェニル基には1〜3個の炭素原子数1〜4のアルキル基及び/又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基が置換していても良い。
【0043】
また、一般式(8)においては、下記一般式(8a)で表される態様が好ましい。
一般式(8a)

(式中、R10a、R10b及びR10cは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又はフェニル基を示す。)
【0044】
また一般式(8a)においてR10bはメチル基又は水素原子が好ましく、また、一般式(8)中、b=4即ちR10が4置換である場合、水酸基の置換位置は、R又はRが結合した炭素原子の結合位置に対しオルソ−位が好ましい。
【0045】
また、本発明の上記一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物の好ましい態様に対応して、下記一般式(9)で表される多核ポリフェノール化合物は本発明の上記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物の好ましい態様である。
一般式(9)

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R9、X、m、nは一般式(7)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0046】
また、本発明の上記一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物のより好ましい態様に対応して、下記一般式(10)で表される多核ポリフェノール化合物は本発明の上記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物のより好ましい態様である。
一般式(10)

(式中、R、R3、、R、R、R、R、R、X、m、及びnは一般式(7)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(2)のそれと同じである。)
【0047】
従って、本発明の上記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物としては、具体的には、例えば、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、

2,6−ビス[{3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(5−シクロヘキシル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシ−2,5−ジメチルフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシ−5−メチルフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,4−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−6−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{5−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−2−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}エチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−メチル−1−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}エチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、

2,6−ビス[{3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(5−シクロヘキシル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−2,5−ジメチルフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−5−シクロヘキシルフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,4−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−6−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[{5−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−2−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}エチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
2,6−ビス[1−メチル−1−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}エチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン、
等があげられる。
【0048】
このような本発明による上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物は、その製造方法については特に制限はなく、例えば、ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物に対応するビス(ヒドロキシフェニル)化合物を、例えば、下記反応式(1)に示すように、公知のDuff反応に準じて、トリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解することにより、或いは、下記反応式(2)に示すように、ビス(ヒドロキシフェニル)化合物をメチロール化した後、トリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解させることにより容易に得ることができる。また、下記反応式(3)に示すように一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシメチル)フェノール類と一般式(12)で表されるヒドロキシベンズアルデヒド類をリン酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒存在下で反応させることにより得ることができる。
【0049】
反応式(1)

反応式(2)

反応式(3)

(一般式(11)、(12)の式中、R、R、R、R、R、R、R、m及びnは一般式(1)のそれと同じである)
【0050】
本発明による上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物の製造方法を上記反応式(3)の方法を例にとり更に詳細に説明する。
上記反応式(3)において、原料である一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシアルキル)−フェノール類において、
一般式(11)

式中、R、R、R、R、R、R及びnは一般式(1)のそれと同じであり、このような化合物としては具体的には例えば、2,6−ジ(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノール、2,6−ジ(ヒドロキシメチル)−3−メチル−4−フェニルフェノール、2,6−ジ(1−ヒドロキシエタン−1−イル)−4−フェニルフェノール、2,6−ジ(1−ヒドロキシ−1−メチルエタン−1−イル)−4−フェニルフェノール、2,4−ジ(ヒドロキシメチル)−6−フェニルフェノール、などが挙げられる。
【0051】
また、もう一方の原料である一般式(12)で表されるヒドロキシベンズアルデヒド類において、
一般式(12)

式中、R、mは一般式(1)のそれと同じであり、このような化合物としては具体的には例えば、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0052】
上記一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシアルキル)フェノール類と一般式(12)で表されるヒドロキシベンズアルデヒド類を酸触媒の存在下に反応させることにより、一般式(1)のビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物を得ることができる。
【0053】
具体的には、例えば、反応式(3)において、一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシメチル)フェノール類においてRが置換基を持たないフェニル基であり、R、R、R、Rがすべて水素原子、nが0である2,6−ジ(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノール、一般式(12)で表されるヒドロキシベンズアルデヒド類においてmが0である2−ヒドロキシベンズアルデヒドである場合の反応式を示す。
反応式(4)

【0054】
上記一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシメチル)フェノール類と一般式(12)で表されるヒドロキシベンズアルデヒド類との反応において、ヒドロキシベンズアルデヒド類は、ジ(ヒドロキシメチル)フェノール類1モルに対して、通常、2.1〜10モルの範囲、好ましくは、4〜8モルの範囲で用いられる。
また、上記の反応において用いられる酸触媒としては、中程度の強度の酸が好ましく、従って、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等のハロゲン化アルキルカルボン酸、リン酸、シュウ酸、ニトロアルキルカルボン酸、ハロゲン化安息香酸、ニトロ安息香酸、カルボキシル基を有する弱酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの中ではリン酸が好ましい。
【0055】
このような酸触媒は、その使用量に特に制限はないが、通常、例えば、ヒドロキシベンズアルデヒド類1モルに対して0.1〜10モルの範囲、好ましくは0.3〜4モルの範囲で用いられる。
また、上記の反応においては、反応溶媒は用いなくてもよいが、反応操作などで必要に応じて反応溶媒を用いてもよい。
【0056】
用いられる反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、好ましいものとして例えば、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトンなどの脂肪族ケトン類、トルエン、キシレン、クメン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類及び酢酸、エーテル等を挙げることが出来る。これらの反応溶媒は、通常ヒドロキシベンズアルデヒド類に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜2重量部の範囲で用いられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
反応温度は、通常、0〜80℃の範囲、好ましくは、10〜70℃の範囲であり、更に詳細には、酸触媒がリン酸の場合は、40〜60℃の範囲が好ましく、酸触媒がトリフルオロ酢酸の場合は、20〜40℃の範囲が好ましい。
反応は、窒素気流下に撹拌しながら、通常、5〜50時間程度行なえばよい。
反応終了後、精製方法としては、例えば、反応終了後、得られた反応液にアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、酸触媒を中和し、必要ならばトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル等の水と分離する溶剤を添加し、その後、水層を分離すると共に油層を水洗し、得られた油層から、溶媒及び必要に応じてヒドロキシベンズアルデヒド類を留去した後、これに晶析溶媒を添加し、晶析、濾過することによって、粗結晶を得る。この操作を複数回行ってもよい。得られた粗結晶は必要に応じてさらに精製してもよい。
【0058】
このようにして目的とするビス(ヒドロキシホルミルフェノール)化合物を高純度で得ることができる。
上記反応式(3)において、原料である一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシアルキル)フェノール類は、その製造法については特に制限はなく、公知の方法で製造できる。
例えば、下記反応式(3a)で表されるように一般式(11a)で表されるフェニル置換フェノール類と、一般式(11b)で表されるアルデヒド類とを塩基触媒の存在下に反応させて一般式(11)で表されるジ(ヒドロキシアルキル)フェノール類を得ることができる。
【0059】
反応式(3a)

【0060】
一般式(11b)において、式中「R又はR」は、R又はRに各々対応していることを表し、「R又はR」はR又はRに各々対応していることを表す。また、R、R、R、Rは一般式(11)のそれと同じであり、2種類以上の混合物であってもよい。
具体的には、一般式(11a)のフェニル置換フェノールがp−フェニルフェノール、一般式(11b)のアルデヒド類がホルムアルデヒドである場合の2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノールを得る反応は下記のように表される。

【0061】
次に、本発明による一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェノール)化合物の製造方法については、特に制限はないが、好ましくは、目的とする一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェノール)化合物に対応する前記、得られたビス(ヒドロキシホルミルフェノール)化合物を原料とし、これに例えば、下記一般式(13)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素を、公知のフェニルエーテル製造方法にしたがって、下記反応式(5)に示すように塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0062】
一般式(13)

一般式(13)において、式中、Zはハロゲン原子を示し、R、Rは一般式(4)のそれと同じである。Zで示されるハロゲン原子としては塩素原子又は臭素原子が好ましい。
反応式(5)

【0063】
具体的には、例えば、Rは置換基を有しないフェニル基、R、R、R、Rがすべて水素原子、m、nが共に0、Rはメチレン基、Rがメチル基、Zが塩素原子である場合の反応式を示す。
反応式(6)

【0064】
また、Rは置換基を有しないフェニル基、R、R、R、Rがすべて水素原子、m、nが共に0、Rはベンジレン基、Rがメチル基、Zが塩素原子である場合の反応式を示す。
反応式(7)

【0065】
反応式(6)又は(7)で例示される製造方法においては、原料の一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物と一般式(13)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素との反応において、ハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素は、ビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物1モルに対して、通常、1.1〜10モルの範囲、好ましくは3.0〜8.0モルの範囲で用いられる。
反応に際し、用いられる塩基としては、有機塩基或いは無機塩基いずれも使用することができるが、有機塩基としては、好ましくは例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のヒドロキシ4級アミン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBUと略称)などが挙げられる。
【0066】
また、無機塩基としては、好ましくは例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等の水素化アルカリ金属類、t−ブトキシカリウムのようなアルコキシアルカリ金属類などが挙げられる。好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩である。
このような塩基の添加量としては、一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物1モルに対して通常、3〜4モル倍の範囲、好ましくは3.3モル倍〜3.7モル倍の範囲である。
【0067】
反応に際し用いられる溶媒は、好ましくは例えば、ジオキサン、THFのようなエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド類のようなアミド類、ピリジン、4−メチルピリジン、N−メチルピロリドン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホン酸アミド等、或いはこれらの混合物を挙げることができる。
使用する溶媒の量は、反応容積率等の観点から、通常、原料のビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物1重量部に対し、1重量部〜10重量部の範囲、好ましくは2〜5重量部の範囲である。
また、必要に応じて、エーテル化反応を促進するためにヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物、銅、塩化銅のような銅化合物、相間移動触媒等の反応促進添加剤を添加しても良い。
反応に際し、反応原料の仕込み方法、順序には制限はないが、通常、一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物と塩基を混合してオキシ塩とした後、その混合液に一般式(13)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素類を加える方法が、収率が良い理由で好ましい。
【0068】
反応は、通常、温度20℃〜200℃の範囲、好ましくは40℃〜120℃の範囲で、数時間、例えば、2〜20時間、行なえばよい。また、反応圧力は通常、微減圧〜微加圧の範囲、好ましくは常圧程度である。
反応終了後、例えば、反応混合物に適宜の有機溶剤と水とを加え、洗浄し、水層を分離除去し、必要に応じて、得られた有機層を酸水溶液で洗浄、中和し、有機層から溶剤を留出させ除去し、残渣に有機溶剤を加えて晶析、濾過することによって、本発明の今ひとつの化合物である一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物を高純度で得ることができる。
【0069】
また、一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物において、Rが水素原子である場合の、エーテル基がカルボキシ炭化水素オキシ置換体を得るには、その製造方法については特に制限されないが、好ましくは、例えば、上記、得られたビス(ホルミルフェニル)化合物の内、R9が1級又は2級アルキル基であるアルコキシカルボニル炭化水素基(−R8COOR9)置換体を無溶媒又は溶媒中、アルカリの存在下に加水分解して、容易にカルボキシ炭化水素基(−R8COOH)置換体を得ることができる。
【0070】
例えば、下記反応式(8)に示すように、上記反応式(6)で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンを、無溶媒又は溶媒中、アルカリの存在下に加水分解すると2,6−ビス{(3−ホルミル−4−カルボキシメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−カルボキシメトキシベンゼンを得ることができる。
反応式(8)

【0071】
上記反応式(8)で例示される、一般式(4)においてR9が水素原子である場合のビス(ホルミルフェニル)化合物の製造方法においては、公知のエステル基の加水分解反応と同様に、原料であるR9がアルキル基のビス(ホルミルフェニル)化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−R8COOR9)のR9が1級アルキル基であると加水分解反応が容易であるので好ましい。
従って、このようなビス(ホルミルフェニル)化合物を水酸化ナトリウムやテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液で加水分解することにより容易に一般式(4)において、Rが水素原子である場合のカルボキシ炭化水素置換体を得ることができる。
【0072】
加水分解反応に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機の強アルカリ水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド等の有機の強アルカリ水溶液が好ましく、そのアルカリ濃度は5〜50%の範囲、好ましくは10〜30%の範囲である。用いられるアルカリの量は、原料のビス(ホルミルフェニル)化合物1モルに対して通常、2モル倍〜6モル倍の範囲、好ましくは2モル倍〜4モル倍の範囲である。反応温度は、通常、0〜100℃の範囲、好ましくは20〜60℃の範囲である。このような反応条件において、反応は、通常0.5〜10時間程度で終了する。
反応終了後、必要に応じて水と分離する溶剤を加えて洗浄し、油層を除去する。その後、水と分離する溶剤及び酸を加えてアルカリ水溶液及び目的物のアルカリ塩を中和した後、水層を除去して得られた油層から前述のような公知の方法に従って、反応生成物を精製し、また、必要に応じて、高純度品を得ることもできる。
【0073】
次に、本発明による今ひとつの新規な化合物である上記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物の製造方法については、特に制限はないが、好ましくは、目的とする一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物に対応する前記、得られたビス(ホルミルフェニル)化合物と下記一般式(14)で表されるフェノール類を下記反応式(9)に示すように酸触媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
反応式(9)

一般式(14)

(式中、R10、a、bは一般式(8)のそれと同じである。)
【0074】
より具体的には、一般式(4)においてRが置換基を有しないフェニル基、R、R、R、Rがすべて水素原子、m、nが共に0、Rはメチレン基、Rがメチル基、一般式(14)においてaが1、bが2、R10がメチル基である場合の反応を例示する。
反応式(10)

【0075】
上記反応式(9)において、反応生成物の一般式(7)における置換基Xは上記一般式(8)で表されるフェニル基であり、一般式(14)のフェノール類と一般式(4)のホルミル基との反応に由来するものである。従って、一般式(14)のフェノール類としては、フェニル核に置換した水酸基に対し、フェニル核のo−位又はp−位の少なくとも一つが未置換である必要がある。詳しくは、アルキル基、アルコキシ基及び/又はフェニル基の置換基数が3以下で、水酸基数が1である場合は水酸基に対してp−位が未置換のフェノール類が合成上好ましく、アルキル基、アルコキシ基及び/又はフェニル基の置換基数が4の場合は水酸基のo−位が未置換であるフェノール類が合成上好ましい。
【0076】
このような一般式(14)で表されるフェノール類として、具体的には例えば、水酸基が一つのものとして、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−キシレノール、2,4−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、2−エチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−tert−オクチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、2−メチル−5−メトキシフェノール、2−n−ヘキシルオキシフェノール、2−n−オクチルオキシフェノール等が、又、水酸基が2以上のものとして、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4−メチルカテコール、3−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、ピロガロール等が挙げられる。
【0077】
上記反応式(9)で例示したように、ビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類との反応において、用いるフェノール類の量はビス(ホルミルフェニル)化合物1モル部に対し、使用するフェノール類により好ましい添加量範囲は異なるが、通常、4〜20モル部の範囲、好ましくは4〜13モル部の範囲で用いられる。
また、反応溶媒は用いてもよく、また、用いなくてもよい。しかしながら、ビス(ホルミルフェニル)化合物に対するフェノール類のモル比が小さいか、又はフェノール類の融点が高く反応原料の溶解が困難な場合には溶媒を用いることが好ましい。用いられる反応溶媒としては、例えば、メタノール、ブタノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
このような溶媒は、特に制限はないが、通常、用いるフェノール類に対して0.1重量倍〜10重量倍の範囲、好ましくは0.5重量倍〜7重量倍の範囲で用いられる。
【0078】
上記反応式(9)において例示される製造方法において、酸触媒としては、反応混合液に溶解する酸が好ましく、従って、無機酸、有機スルホン酸やカルボン酸等の有機酸で、強酸から中程度の強さの酸が用いられる。具体的には、例えば、35%塩酸、塩化水素ガス、硫酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。このような酸触媒の使用量は酸の強さ等により好ましい範囲は異なるが、通常、フェノール類に対して1重量%〜50重量%の範囲で用いられる。
反応は、通常、温度0℃〜100℃の範囲、好ましくは20℃〜60℃の範囲において、空気中、より好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気中、攪拌しながら、通常、1〜20時間程度行えばよい。
上記製造方法においては、公知の方法に従って、反応によって生成する多核フェノール化合物を必要に応じて分離精製することができる。
そこで、反応終了後、得られた反応液に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、酸を中和し、次いで水層を分離除去するために必要に応じてトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン又はエーテル等の水と分離可能な溶媒を加え、その後、水層を分離すると共に油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒や未反応原料のフェノール類を留出させ、除去した後、これに溶媒を添加し、晶析又は沈析濾別することによって、結晶性或いは非結晶性の固体を得る。必要に応じて、更に高純度物として取り出すために、同様の晶析又は沈析操作を1回〜複数回行ってもよい。
【0079】
また、前記一般式(7)で表される多核ポリフェノール化合物において、Rが水素原子である場合の、エーテル基がカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)を得るには、その製造方法については特に制限されないが、例えば、前記したビス(ホルミルフェニル)化合物の場合と同様の方法で、水酸化ナトリウムやテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液でエステル基を加水分解することにより、例えば、下記反応式(11)に例示するように多核ポリフェノール化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)のRが1級アルキル基であるアルコキシカルボニル炭化水素基置換体(−RCOOR)から容易にカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)を得ることができる。
【0080】
反応式(11)

【0081】
加水分解反応終了後、必要に応じて水と分離する溶剤を加えて洗浄し、油層を除去する。その後、水と分離する溶剤及び酸を加えてアルカリ水溶液及び目的物のアルカリ塩を中和した後、水層を除去して得られた油層から前述のような公知の方法に従って目的物の取り出し及び精製を行うことができる。
また、一般式(4)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)のRが3級アルキル基である場合は、下記反応式(12)に例示するように、このようなビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類との前記した反応において、アルコキシカルボニル炭化水素基置換体(−RCOOR)のR即ち3級アルキル基が脱離し、フェノール類との反応と同時にカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)が生成し、カルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)をもつ多核ポリフェノールを得ることができる。
【0082】
あるいは、一般式(4)においてRが水素原子であるビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類とを反応させても得ることができる。
反応式(12)

【実施例】
【0083】
参考例1
2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノール(DML−PPP)の合成
p−フェニルフェノール170.2g(1.0mol)とトルエン255.3gを容量5Lの4つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、温度40℃程度において16%水酸化カリウム水溶液350.6g(1.0mol)を添加し、その後1時間撹拌させた。次いで、撹拌下に35%ホルムアルデヒド水溶液300.0g(3.5mol)を40〜42℃に保ちながら1.5時間かけて添加し反応を行った。その後、40℃で撹拌下に、6.5時間反応を行った。
反応終了後、10℃まで冷却し、16%硫酸水溶液259.7gを加えて中和を行い、40℃まで昇温後、10分間静置した後、水層を抜き取った。その後、水200.0gを加えて同様の操作で水洗、水層除去を行った。得られた油層から45℃、減圧下で溶媒151.0gを留去し、トルエン334.0g、メチルイソブチルケトン23.0gを加えて冷却した。析出している固体をろ別し、乾燥して白色粉末の2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノール144.6g(純度:95.6%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。p−フェニルフェノールに対する収率は62.8%であった。
【0084】
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0085】
【表1】

【0086】
実施例1
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール(BisSA−PPP)の合成
サリチルアルデヒド439.6g(3.6mol)、89%燐酸水溶液293.1gを容量2Lの4つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、参考例1で得られた2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−フェニルフェノール(DML−PPP) 138.2g(0.6mol)を60℃で4.5時間かけて撹拌下に添加し反応を行った。さらにその後、60℃を保ちながら撹拌下に5時間反応を続けた。
この反応液にメチルイソブチルケトン439.6g、水100.0gを加えて撹拌した後、静置して水層を抜き取った。さらに水250.0gを加えて水洗し、水層を分離除去した。その後、得られた油層から125℃、減圧下で溶媒923.9gを留去し、トルエン526.2gを加えた。この溶液を28℃まで冷却し、冷却過程で析出した結晶をろ別して、粗製物A362.1gを得た。
【0087】
得られた粗製物Aとメチルイソブチルケトン536.0g、 水100.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、60℃まで昇温して結晶を溶解後、静置して水層を抜き取った。得られた油層から常圧下で溶媒348.8gを留去し、トルエン270.0gを加え、さらに常圧下で溶媒446.1gを留去し、トルエン580.0gを加えた。途中で結晶が析出した。この溶液を25℃まで冷却し、析出物をろ別し、粗製物B180.8gを得た。
その後、得られた粗製物Bとメチルエチルケトン100.0g 、トルエン200.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、60℃まで昇温して結晶を溶解後、常圧下で溶媒149.8gを留去し、トルエン150.0gを加え、さらに常圧下で溶媒99.3gを留去し、トルエン100.0gを加えた。この溶液を20℃まで冷却し、冷却過程で析出した結晶をろ過、乾燥して淡黄白色粉末の2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール82.9g(純度95.5%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料のDML−PPPに対する収率は31.5%であった。
【0088】
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0089】
【表2】

【0090】
実施例2
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン(BSAPPP−TCM)の合成
実施例1で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール(BisSA−PPP) 41.7g(0.095 mol)、N−メチルピロリドン104.3gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、溶解後、反応容器を窒素置換した。この溶液を50℃まで昇温後、よう化カリウム6.3g(3.8×10−2 mol)、炭酸カリウム47.3g(0.34mol)を加えて1時間撹拌した。次いで、そこにクロロ酢酸メチル72.1g(0.67mol)を1時間30分かけて撹拌下に滴下し、反応を行った。さらに60℃で撹拌下に6時間反応を続けた。
反応終了液にメチルイソブチルケトン124.4g、水180.0gを加えた後、静置して水層を抜き取り、さらに水120.0gを加えて同様に水洗、水層除去の操作を3回行った。得られた油層から減圧下で溶媒132.9gを留去し、トルエン120.0gを加え冷却し、冷却過程で析出した結晶をろ別し、乾燥して淡黄白色粉末の2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン41.2g(純度95.7%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料のBisSA−PPPに対する収率は66.2%であった。
【0091】
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0092】
【表3】

【0093】
実施例3
2,6−ビス[{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン(BSAPPP−TBAM)の合成
実施例1で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−フェニルフェノール(BisSA−PPP) 39.5g(0.09 mol)、N−メチルピロリドン99.0gを容量500mLの4つ口フラスコに仕込み溶解後、反応容器を窒素置換した。この溶液を50℃まで昇温後、よう化カリウム5.9g(3.6×10−2 mol)、炭酸カリウム44.8g(0.32mol)を加えて1時間攪拌させた。次いで60℃まで昇温し、そこにクロロメチル安息香酸メチル64.8g(0.36mol)を1時間10分かけて撹拌下に添加して反応を行った。さらに60℃で20時間撹拌下に反応を続けた。
反応終了液にメチルイソブチルケトン159.0g、水160.0gを加えて、静置して水層を抜き取り、さらに水80.0gを加えて同様の操作で水洗、水層除去を3回行った。少し経過すると得られた油層から結晶が析出した。この溶液にメチルイソブチルケトン80.0gを加えた後、25℃まで冷却を行い、析出物をろ過して粗製物80.7gを得た。
【0094】
得られた粗製物とメチルイソブチルケトン90.0g、 テトラヒドロフラン150.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、65℃まで昇温して結晶を溶解後、常圧下で溶媒100.5gを留去し、メチルイソブチルケトン30.0gを加え冷却し、冷却過程で析出した結晶を濾別した後、乾燥して白色粉末の2,6−ビス[{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン44.2g(純度95.0%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料のBisSA−PPPに対する収率は55.6%であった。
【0095】
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0096】
【表4】

【0097】
実施例4
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン(Tek25X−BSAPPP−TC)の合成
2,5−キシレノール14.0g(11.5×10−2mol)、メタノール21.0g、35%塩酸水溶液5.6gを容積500mLの4つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、実施例2で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン(BSAPPP−TCM) 15.1g(2.3×10−2mol)を40℃で1.5時間かけて撹拌下に添加し反応を行った。その後、撹拌下40℃でさらに19時間反応を行った。反応中に結晶が析出した。
【0098】
反応終了後、メタノール34.5gを添加し、25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液21.1gで中和を行い、メチルイソブチルケトン49.0g、 水52.0gを加えて60℃に昇温溶解させた。次いで、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加え、同様の操作で水洗、水層除去を行った。得られた油層に25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液58.6gを加えて、50℃で30分撹拌して加水分解反応を行い、静置して上層を抜き取った。残った水層にメチルイソブチルケトン49.8gを加え、50℃で混合後、35%塩酸水溶液17.6gを加えて中和を行い、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加えて同様の操作で70℃にて水洗、水層除去を行った。得られた油層から減圧下で溶媒37.3gを留去し、メチルイソブチルケトン9.0g、トルエン49.0gを加えて冷却し、冷却過程で析出した結晶をろ別、乾燥して淡黄色粉末の2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン18.0g(純度94.5%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料のBSAPPP−TCMに対する収率は73.5%であった。
【0099】
ガラス転移温度:144.3℃(示差走査熱量測定法)
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0100】
【表5】

【0101】
実施例5
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン(Tek25X−BSAPPP−TBAC)の合成
2,5−キシレノール10.7 g(8.8×10−2mol)、メタノール69.5gを容積500mLの4つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、塩化水素ガスを系内が飽和するまで吹き込み、実施例3で得られた2,6−ビス[{3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン(BSAPPP−TBAM)15.5g(1.8×10−2mol)を35℃で2時間かけて撹拌下に添加し反応を行った。その後、撹拌下40℃で更に6時間反応を行った。反応中に結晶が析出した。
反応終了後、25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液174.8gを添加して中和し、メタノール24.0gを加えて60℃で1時間撹拌した。この溶液を冷却し、結晶を濾別して粗製物57.2gを得た。
【0102】
得られた粗製物とメチルイソブチルケトン70.0g、 水30.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、70℃まで昇温して溶解後、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加え、同様の操作で水洗、水層除去を行った。得られた油層に25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液44.6gを加えて、50℃で30分撹拌して加水分解反応を行い、静置して上層を抜き取った。残った水層にメチルイソブチルケトン45.0gを加え、50℃で混合後、35%塩酸水13.4gを加えて中和を行い、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加えて同様の操作で70℃にて水洗、水層除去を行った。得られた油層にトルエン22.0gを加えて冷却し、冷却過程で析出した結晶を濾別、乾燥して白色粉末の2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシ−4−フェニルベンゼン15.5g(純度96.3%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料のBSAPPP−TBAMに対する収率は68.4%であった。
【0103】
ガラス転移温度:156.2℃ (示差走査熱量測定法)
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0104】
【表6】

【0105】
実施例6
2,6−ビス[{3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−1−カルボキシメトキシ−4−フェニルベンゼン(Tek236T−BSAPPP−TC)の合成
2,3,6−トリメチルフェノール12.3 g(9.0×10−2mol)、メタノール18.5g、35%塩酸水溶液4.9gを容積500mLの4つ口フラスコに仕込み、反応容器を窒素置換した後、実施例2で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−フェニル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン(BSAPPP−TCM) 11.8g(1.8×10−2mol)を50℃で2時間かけて撹拌下に添加し反応を行った。その後、50℃を保ちながら更に6時間撹拌下に反応を行った。
【0106】
反応終了後、25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液17.8gを添加して反応液を中和し、メチルイソブチルケトン40.4g、 水20.2gを加えた後、60℃まで昇温した。次いで、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加え、同様の操作で水洗、水層除去を行った。得られた油層に25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液45.9gを加えて、60℃で30分攪拌して加水分解反応を行い、静置して上層を抜き取った。50℃で残った水層とメチルイソブチルケトン40.4gを混合後、35%塩酸水溶液13.8gを加えて中和を行い、静置して水層を抜き取り、さらに水25.0gを加えて同様の操作で70℃にて水洗、水層除去を行った。得られた油層から減圧下で溶媒29.8gを留去し、メチルイソブチルケトン6.0g、トルエン60.6gを加え冷却し、冷却過程で析出した結晶をろ別し、乾燥して目的物である茶白色粉末17.1g(純度93.0%、高速液体クロマトグラフィー分析)を得た。原料BSAPPP−TCMに対する収率は84.7%であった。
【0107】
ガラス転移温度:146.5℃ (示差走査熱量測定法)
プロトンNMR分析
(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0108】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

で表されるビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物。
(式中、Rはフェニル基を示し、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基を示し、R、R、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、mは0〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。m、nが2以上の場合、R、Rは同一であっても異なっていても良い。)
【請求項2】
一般式(3)

で表される請求項1に記載のビス(ヒドロキシホルミルフェニル)化合物。
(式中、R、R3、、R、R、R、m、及びnは一般式(1)のそれと同じであり、R1aは炭素原子数1〜4のアルキル基及び/又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示し、pは0〜3の整数を表す。)
【請求項3】
一般式(4)

で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物。
(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していても良い炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
【請求項4】
一般式(6)

で表される請求項3に記載のビス(ホルミルフェニル)化合物。
(式中、R、R3、、R、R、R、R8、R9、m、及びnは一般式(4)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(3)のそれと同じである。)
【請求項5】
一般式(7)

で表される多核ポリフェノール化合物。
(式中、R、R、R、R、R、R、R、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、R、Rは一般式(4)のそれと同じであり、Xは下記一般式(8)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。)
一般式(8)

(式中、R10は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又はフェニル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合R10は同一でも異なっていても良い。)
【請求項6】
一般式(10)

で表される請求項5に記載の多核ポリフェノール化合物。
(式中、R、R3、、R、R、R、R、R、X、m、及びnは一般式(7)のそれと同じであり、R1a及びpは一般式(3)のそれと同じである。)

【公開番号】特開2011−84481(P2011−84481A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236354(P2009−236354)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】