説明

新規ピリドン誘導体

【課題】新規ピリドン誘導体の医薬への適用。
【解決手段】一般式(I)


[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、水酸基等を意味し;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子等を意味し;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を意味する]で表される化合物。神経ペプチドが関与する各種の疾患に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の分野において有用である。更に詳しくは、本発明の新規ピリドン誘導体は、神経ペプチドY受容体拮抗物質として、各種の循環器系疾患、中枢神経系疾患、代謝系疾患等の処置剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
神経ペプチドY(以下NPYと称す)は36アミノ酸からなるペプチドであり、1982年、立元らにより豚脳より初めて単離された[ネイチャー(Nature)、296巻、659頁(1982年)]。NPYは中枢神経系及び末梢神経系に広く分布し、神経系における最も多量に存在するペプチドの一つとして、生体において多様な機能を司っている。すなわち、NPYは中枢において食欲促進物質として働くとともに、各種ホルモンの分泌又は神経系の作用を介して脂肪蓄積を顕著に促進する。NPYの脳室内連続投与はこれらの作用に基づき、肥満及びインスリン抵抗性を誘発することが知られている[インターナショナル・ジャーナル・オブ・オベシティー(International Jounal of Obesity)、19巻、517頁(1995年);エンドクリノロジー(Endocrinology)、133巻、1753頁(1993年)]。また、その他、うつ病、不安、統合失調、痛み、痴呆及び概日リズムの調節などの中枢作用を持つことが知られている[ドラッグス(Drugs)、52巻、371頁(1996);ザ・ジャーナル・オブ・ニュウロサイエンス(The Journal of Neuroscience)、18巻、3014頁(1998年)]。更に、末梢では、NPYは交感神経終末にノルエピネフリンと共存し、交感神経系の緊張性と関係している。NPYの末梢投与は血管収縮を引き起こし、またノルエピネフリンを初めとする他の血管収縮物質の作用を増強することが知られている[ブリティシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、95巻、419頁(1988年)]。更に交感神経系の亢進にともなう心肥大を助長することも報告されている[プロシーディング・ナショナル・アカデミック・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academic Science USA)、97巻、1595頁(2000)]。
【0003】
その他、性ホルモン及び成長ホルモンの分泌能、性及び生殖機能、消化管運動、気管支収縮、炎症及びアルコールに対する嗜好性への関与も報告されている[ライフ・サイエンス(Life Science)、55巻、551頁(1994年);ザ・ジャーナル・オブ・アレルギー・アンド・クリニカル・イムノロジー(The Journal of Allergy and Immunology)、101巻、S345頁(1998年);ネイチャー(Nature)、396巻、366頁(1998年)]。
【0004】
NPYは、その類縁体であるペプタイドYY及びパンクレアティック・ポリペプタイドと一部共通の受容体を介して、多種多様な薬理作用を有する。これらNPYによる薬理作用は少なくとも5種類の受容体の単独あるいは相互作用を介して惹起されることが知られている[トレンヅ・イン・ニューロサイエンス(Trends in Neuroscience)、20巻、294頁(1997年)]。
【0005】
NPY Y1受容体を介する中枢作用としては、顕著な食欲促進作用が報告されている[エンドクリノロジー(Endocrinology)、137巻、3177頁(1996年):エンドクリノロジー(Endocrinology)、141巻、1011頁(2000年)]。更に不安感や痛みへの関与も報告されている[ネイチャー(Nature)、259巻、528頁(1993年);ブレイン・リサーチ(Brain Research)、859巻、361頁(2000年)]。また、末梢においては強力な血管収縮作用を介した血圧上昇作用が報告されている[フェブス・レター(FEBS Letters)、362巻、192頁、(1995年):ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)、4巻、722頁(1998年)]。
【0006】
NPY Y2受容体を介する作用としては、神経終末において各種神経伝達物質の放出を阻害することが知られている[ブリティシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、102巻、41頁(1991年):シナプス(Synapse)2巻、299頁(1988年)]。また、末梢においては、これら神経伝達物質の制御あるいは直接の作用として、血管又は輸精管の収縮に関与する[ザ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、261巻、863頁(1992年);ブリティシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、100巻、190頁(1990年)]。また、脂肪組織においては、脂肪分解作用の抑制が知られている[エンドクリノロジー(Endocrinology)、131巻、1970頁(1992年)]。更に消化管においては、イオン分泌を阻害することが報告されている[ブリティシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、101巻、247頁(1990年)]。一方、記憶及び不安感等の中枢作用も知られている[ブレイン・リサーチ(Brain Research)、503巻、73頁(1989年):ペプタイド(Peptides)、19巻、359頁(1998年)]。
【0007】
NPY Y3受容体は、主に脳幹及び心臓に発現しており、血圧、心拍数の制御に関与していることが報告されている[ザ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、258巻、633頁(1991年);ペプタイド(Peptides)、11巻、545頁(1990年)]。更に、副腎においてはカテコールアミンの分泌に関与することが知られている[ザ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、244巻、468頁(1988年);ライフ・サイエンス(Life Science)、50巻、PL7頁(1992年)]。
【0008】
NPY Y4受容体は特にパンクレアティック・ポリペプタイドとの親和性が高く、薬理作用としては、膵外分泌及び消化管運動の抑制が報告されている[ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)、85巻、1411頁(1983年)]。更に中枢においては、性ホルモンの分泌を促進することが知られている[エンドクリノロジー(Endocrinology)、140巻、5171頁(1999年)]。
【0009】
NPY Y5受容体を介する作用としては、食欲促進効果を含む脂肪蓄積作用が顕著である[ネイチャー(Nature)、382巻、168頁(1996年);アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(American Journal of Physiology)、277巻、R1428頁(1999年)]。また、痙攣及びてんかんへの関与又は痛み及びモルヒネ投与の中止に伴う禁断症状への関与更に概日リズムの調節等の中枢作用が報告されている[ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)、3巻、761頁(1997年);プロシーディング・ナショナル・アカデミック・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academic Science USA)、96巻、13518頁(1999年);ザ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、284巻、633頁(1998年);ザ・ジャーナル・オブ・ニュウロサイエンス(The Journal of Neuroscience)、21巻、5367頁(2001年)]。更に末梢においては、利尿作用及び血糖降下作用が報告されている[ブリティシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、120巻、1335頁(1998年);エンドクリノロジー(Endocrinology)、139巻、3018頁(1998年)]。更に交感神経系の亢進にともなう心肥大を助長することも報告されている[プロシーディング・ナショナル・アカデミック・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academic Science USA)、97巻、1595頁(2000)]。
【0010】
NPYの機能は中枢又は末梢神経系に存在するNPY受容体を結合することにより発現される。したがって、NPYのNPY受容体との結合を阻害すれば、NPYの作用発現を阻止することができる。その結果、NPYのNPY受容体結合に拮抗する物質はNPYが関与する各種疾患、例えば狭心症、急性・うっ血性心不全、心筋梗塞、高血圧、腎臓病、電解質異常、血管れん縮等の循環器系疾患、例えば過食症、うつ病、不安、痙攣、てんかん、痴呆、痛み、アルコール依存症、薬物の断薬に伴う禁断症状、概日リズムの変調、統合失調症、記憶障害、睡眠障害、認知障害等の神経系疾患、例えば肥満症、糖尿病、ホルモン分泌異常、痛風、脂肪肝等の代謝性疾患、不妊、早産、性機能障害等の生殖系疾患、消化管系疾患、呼吸器系疾患、炎症性疾患又は緑内障等の予防又は治療における有用性が期待できる[トレンヅ・イン・ファーマコロジカル・サイエンス(Trends in Pharmacological Science)、15巻、153頁(1994年);ライフ・サイエンス(Life Science)、55巻、551頁(1994年);ドラッグス(Drugs)、52巻、371頁(1996年);ザ・ジャーナル・オブ・アレルギー・アンド・クリニカル・イムノロジー(The Journal of Allergy and Immunology)、101巻、S345頁(1998年);ネイチャー(Nature)、396巻、366頁(1998年);ザ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、284巻、633頁(1998年);トレンヅ・イン・ファーマコロジカル・サイエンス(Trends in Pharmacological Science)、20巻、104頁(1999年);プロシーディング・ナショナル・アカデミック・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academic Science USA)、97巻、1595頁(2000);ザ・ジャーナル・オブ・ニュウロサイエンス(The Journal of Neuroscience)、21巻、5367頁(2001年);ファルマコロジー・アンド・セラピューティクス(Pharmacology & Therapeutics)、65巻、397頁(1995年);エンドクリノロジー(Endocrinology)140巻、4046頁(1999年);アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(American Jounarl of Physiology)、280巻、R1061頁(2001年);アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(American Jounarl of Physiology)、278巻、R1627頁(2000年);カレント・オピニオン・イン・クリニカル・ニュウトリション・アンド・メタボリック・ケア(Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care)2巻、425頁(1999年);カレント・リュウマトロジー・レポーツ(Current Rheumatology Reports)3巻、101頁(2001年)、アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピレイトリー・アンド・クリティカル・ケア・メディスン(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)165巻、1217頁(2002年)]。
【0011】
また、最近、本発明者らの研究により、ある種のNPY受容体拮抗物質が、高コレステロール血症、高脂血症、動脈硬化症の予防又は治療において有用であることが見出された(国際公開第99/27965号パンフレット)。
【0012】
国際公開第01/62738号パンフレット(特許文献1)には、種々のイミダゾリン誘導体が開示され、当該誘導体が、優れたNPY受容体拮抗作用を有し、更には脳内移行性又は脳脊髄液移行性等の体内動態に優れることが記載されている。しかしながら、該公報には本発明化合物についての具体的な記載はない。
【発明の開示】
【0013】
本発明の目的は、NPY拮抗作用を有する新規な薬剤を提供することにある。
【0014】
本発明者らは、一般式(I)
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基又はアラルキルオキシ基を意味し;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はハロ低級アルキル基を意味し;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を意味する(ただし、Rが水素原子の場合、
【0017】
【化2】

で表される基及び
【0018】
【化3】

で表される基は、同時に6−フルオロ−3−ピリジル基及び4−フルオロフェニル基を意味しない)]で表される化合物がNPY拮抗作用を有し、また、例えば脳内移行性又は脳脊髄液移行性等の体内動態に優れること、更には当該化合物が極めて優れた安全性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明化合物(I)は、NPY拮抗作用を有し、例えば脳内移行性又は脳脊髄液移行性等の体内動態に優れ、また、安全性も高いため、NPYが関与する各種の疾患、例えば狭心症、急性・うっ血性心不全、心筋梗塞、高血圧、腎臓病、電解質異常、血管れん縮等の循環器系疾患、例えば過食症、うつ病、不安、痙攣、てんかん、痴呆、痛み、アルコール依存症、薬物の断薬に伴う禁断症状、概日リズムの変調、統合失調症、記憶障害、睡眠障害、認知障害等の神経系疾患、例えば肥満症、糖尿病、ホルモン分泌異常、痛風、脂肪肝等の代謝性疾患、不妊、早産、性機能障害等の生殖系疾患、消化管系疾患、呼吸器系疾患、炎症性疾患又は緑内障等の処置剤として有用である。
【0020】
特に、本発明化合物(I)は、例えば過食症、肥満症、糖尿病等の処置剤として有用である。
【0021】
本発明は、一般式(I)で表される化合物又はその塩並びにそれらの製造法及び用途に関する。
【0022】
以下に、本明細書において用いられる用語の意味を記載し、本発明について更に詳細に説明する。
【0023】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
【0024】
「低級アルキル基」とは、炭素数1ないし6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
「ハロ低級アルキル基」とは、置換可能な任意の位置が1又は2以上、好ましくは1ないし3の同一又は異なる前記ハロゲン原子で置換された前記低級アルキル基を意味し、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基等が挙げられる。
【0026】
「低級アルコキシ基」とは、炭素数1ないし6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を意味し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
「アリール基」としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0028】
「アラルキル基」とは、置換可能な任意の位置が1又は2以上、好ましくは1の前記アリール基で置換された前記低級アルキル基を意味し、例えばベンジル基、1−フェニルエチル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0029】
「アラルキルオキシ基」とは、前記アラルキル基を有するアラルキルオキシ基を意味し、例えばベンジルオキシ基、1−フェニルエチルオキシ基、フェネチルオキシ基、1−ナフチルメチルオキシ基、2−ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
一般式(I)で表される化合物の「塩」とは、医薬として許容されうる慣用的なものを意味し、例えば塩基性の複素環基における酸付加塩の塩類を挙げることができる。
【0031】
該酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、りん酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えばマレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、くえん酸塩、アスコルビン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられる。
【0032】
「処置剤」とは、各種疾患に対して治療及び/又は予防の目的で供せられる薬剤を意味する。
【0033】
前記一般式(I)で表される本発明の化合物を更に具体的に開示するため、式(I)において用いられる各種記号につき、その好適な具体例を挙げて更に詳細に説明する。
【0034】
は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基又はアラルキルオキシ基を意味し、一般式(I)中、式(a)
【0035】
【化4】

で表される基上の存在可能な任意の位置に存在することができる。
【0036】
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はハロ低級アルキル基を意味し、一般式(I)中、式(b)
【0037】
【化5】

で表されるピリジル基上の存在可能な任意の位置に存在することができる。また、当該ピリジル基は、結合可能な任意の位置において隣接するイミダゾリン環の4位と結合することができる。
【0038】
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を意味し、イミダゾリン環の4位と結合するフェニル基上の存在可能な任意の位置に存在することができる。
【0039】
なお、一般式(I)中、Rが水素原子の場合、
【0040】
【化6】

で表される基及び
【0041】
【化7】

で表される基が、同時に6−フルオロ−3−ピリジル基及び4−フルオロフェニル基であるときは、本発明の範囲から除外される。
【0042】
一般式(Ia)
【0043】
【化8】

[式中、Rは前記の意味を有する]で表される化合物及び一般式(Ib)
【0044】
【化9】

[式中、R2bはハロゲン原子又はハロ低級アルキル基を意味し、Rは前記の意味を有する(ただし、Rが水素原子の場合、R2bはフッ素原子を意味しない)]で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物に包含される。
【0045】
一般式(Ia−1)
【0046】
【化10】

[式中、Rは前記の意味を有する]で表される化合物は、一般式(Ia)で表される化合物に包含される。
【0047】
一般式(Ia)又は(Ia−1)で表される化合物のうち、例えばRが水素原子、ハロゲン原子又は水酸基、より好ましくは水素原子である化合物等が好適である。
【0048】
一般式(Ia)又は(Ia−1)において、Rのハロゲン原子としては、例えばフッ素原子等が好適である。
【0049】
一般式(Ib−1)
【0050】
【化11】

[式中、R1bはハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基又はアラルキルオキシ基を意味し、R2bは前記の意味を有する]で表される化合物は、一般式(Ib)で表される化合物に包含される。
【0051】
一般式(Ib−1)で表される化合物のうち、例えばR2bがフッ素原子又はトリフルオロメチル基である化合物等が好適であり、更にR1bがハロゲン原子又は低級アルキル基である化合物等がより好ましい。
【0052】
一般式(Ib−2)
【0053】
【化12】

[式中、R1baはハロゲン原子を意味する]で表される化合物及び一般式(Ib−3)
【0054】
【化13】

[式中、R1bbは低級アルキル基を意味する]で表される化合物は、一般式(Ib−1)で表される化合物に包含される。
【0055】
一般式(Ib−2)で表される化合物のうち、例えばR1baのハロゲン原子がフッ素原子である化合物等が好適ある。
【0056】
一般式(Ib−3)で表される化合物のうち、例えばR1bbの低級アルキル基がメチル基である化合物等が好適ある。
【0057】
本発明の化合物は、その置換基の態様によって、光学異性体、ジアステレオ異性体、幾何異性体等の立体異性体又は互変異性体が存在する場合があるが、本発明の化合物はこれら全ての立体異性体、互変異性体及びそれらの混合物をも包含する。
【0058】
本発明化合物の種々の結晶、水和物及び溶媒和物も本発明の範囲に属する。
【0059】
更に本発明化合物のプロドラッグもまた本発明の範囲に属する。一般的に、そのようなプロドラッグは、生体内で必要とされる化合物に容易に変換されうる本発明化合物の機能的誘導体である。したがって、本発明に係る各種疾患の処置方法においては、「投与」という言葉は、特定した化合物の投与のみならず、患者に投与した後、生体内で当該特定した化合物に変換される化合物の投与を含む。適当なプロドラッグ誘導体の選択及び製造のための常套手段は、例えば“Design of Prodrugs” ed. H.Bundgaard, Elsevier,1985等に記載され、ここに引用してその記載全体を本願明細書の一部となす。これらの化合物の代謝物は、本発明化合物を生物学的環境に置くことによって産生される活性化合物を含み、本発明の範囲に属する。
【0060】
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5R)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5R)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(5−フルオロ−2−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(5−フルオロ−2−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(3−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(3−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(3−フルオロ−2−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(3−フルオロ−2−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−クロロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−クロロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
4−クロロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
4−クロロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
4−シアノ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
4−シアノ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−ベンジルオキシ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−ベンジルオキシ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−トリフルオロメチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−トリフルオロメチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−4−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−4−メチル−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−クロロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
3−クロロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−フルオロ−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−フルオロ−2(1H)−ピリジノン、
5−クロロ−6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−クロロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−5−メチル−2(1H)−ピリジノン、
6−[(4R,5S)−4−(6−ジフルオロメチル−3−ピリジル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン又は
6−[(4S,5S)−4−(6−ジフルオロメチル−3−ピリジル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン等が挙げられ、中でも
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン、
5−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン又は
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノン等が好適である。
【0061】
次に、本発明に係る化合物の製造法について説明する。
【0062】
本発明化合物(I)は、例えば下記の製造法又は実施例に示す方法等により製造することができる。ただし、本発明化合物(I)の製造法はこれら反応例に限定されるものではない。
【0063】
製造法1
一般式(II)
【0064】
【化14】

[式中、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物と、一般式(III)
【0065】
【化15】

[式中、Pは水素原子又は水酸基の保護基を意味し;R1pは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、低級アルコキシ基、アラルキルオキシ基又は保護されていてもよい水酸基を意味し;Rはアミノ基又は低級アルコキシ基を意味する]で表される化合物の酸付加塩とを反応させ、一般式(IV)
【0066】
【化16】

[式中、P、R1p、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物とし、所望により保護基を除去することにより、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0067】
上記反応において、反応物質中の反応に関与しない水酸基は、適宜、水酸基の保護基で保護した後に反応を行い、反応後に当該保護基を除去することができる。
【0068】
「水酸基の保護基」としては、例えばトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等の低級アルキルシリル基;例えばメトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基等の低級アルコキシメチル基;例えばテトラヒドロピラニル基;例えばトリメチルシリルエトキシメチル基;例えばベンジル基、p−メトキシベンジル基、2,3−ジメトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、トリチル基等のアラルキル基;例えばホルミル基、アセチル基等のアシル基等が挙げられ、特にメトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、トリチル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、tert−ブチルジメチルシリル基、アセチル基等が好ましい。
【0069】
一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物の酸付加塩との反応は、通常、化合物(II)の1モルに対して、化合物(III)の酸付加塩を1モルないし過剰モル、好ましくは1モルないし5モル用いて行われる。
【0070】
化合物(III)の酸付加塩としては、例えば塩酸塩等が好ましい。
【0071】
反応は、通常、不活性溶媒中で行われ、当該不活性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等又はその混合溶媒等が好適である。
【0072】
反応温度は、通常、−30℃ないし200℃、好ましくは0℃ないし150℃である。
【0073】
反応時間は、通常、30分間ないし7日間、好ましくは2時間ないし5日間である。
【0074】
反応終了後、通常の処理を行い、一般式(IV)で表される化合物の粗生成物を得ることができる。このようにして得られた一般式(IV)で表される化合物を、常法に従って精製し、又は精製することなく、所望により、水酸基の保護基の除去反応を行うことにより、一般式(I)の化合物を製造することができる。
【0075】
保護基の除去法は、当該保護基の種類及び目的化合物(I)の安定性等により異なるが、例えば文献記載の方法[プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley & Sons社(1981年)参照]又はそれに準じる方法に従って、例えば酸又は塩基を用いる加溶媒分解、すなわち、例えば0.01モルないし大過剰の酸、好ましくはトリフルオロ酢酸、ギ酸、塩酸等、又は等モルないし大過剰の塩基、好ましくは水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を作用させる方法;水素化金属錯体等を用いる化学的還元又はパラジウム−炭素触媒、ラネーニッケル触媒等を用いる接触還元等により行われる。
【0076】
製造法2
一般式(II)
【0077】
【化17】

[式中、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物と、一般式(V)
【0078】
【化18】

[式中、P及びR1pは前記の意味を有する]で表される化合物とを反応させ、一般式(IV)
【0079】
【化19】

[式中、P、R1p、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物とし、所望により保護基を除去することにより、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0080】
一般式(II)で表される化合物と一般式(V)で表される化合物との反応は、通常、化合物(II)の1モルに対して、化合物(V)を0.5モルないし5モル、好ましくは0.7モルないし3モル用いて行われる。
【0081】
反応は、通常、無溶媒で行うか、不活性溶媒中で行われ、当該不活性溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン等又はその混合溶媒等が好適である。
【0082】
反応温度は、通常、−20℃ないし反応に用いる溶媒の沸点、好ましくは0℃ないし200℃である。
【0083】
反応時間は、通常、30分間ないし3日間、好ましくは3時間ないし24時間である。
【0084】
また上記反応は、触媒量のルイス酸の存在下行うことが好ましく、当該ルイス酸としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム、トリフルオロメタンスルホン酸イッテリビウム、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン等が挙げられる。
【0085】
当該ルイス酸の使用量としては、通常、一般式(II)で表される化合物1モルに対して、1モル%ないし50モル%、好ましくは3モル%ないし30モル%である。
【0086】
ルイス酸の存在下反応を行う場合、無溶媒で行うか、又は、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン等又はその混合溶媒で行うことが好ましい。
【0087】
反応温度は、通常、0℃ないし反応に用いる溶媒の沸点、好ましくは室温ないし150℃である。
【0088】
反応時間は、通常、1時間ないし7日間、好ましくは2時間ないし24時間である。
【0089】
反応終了後、生成物に保護基が存在する場合、当該保護基を除去した後に、又は生成物に保護基が存在しない場合はそのまま通常の処理を行い、一般式(I)の化合物を製造することができる。
【0090】
保護基の除去及び後処理等は、前記製造法1に記載した方法に準じて行うことができる。
【0091】
製造法3
一般式(II)
【0092】
【化20】

[式中、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物と、一般式(VI)
【0093】
【化21】

[式中、P及びR1pは前記の意味を有する]で表される化合物とを反応させ、一般式(VII)
【0094】
【化22】

[式中、P、R1p、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物とし、次いで該化合物(VII)を分子内環化縮合反応に付すことにより、一般式(IV)
【0095】
【化23】

[式中、P、R1p、R、R、R及びRは前記の意味を有する]で表される化合物とし、所望により保護基を除去することにより、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。
【0096】
一般式(II)で表される化合物と一般式(VI)で表される化合物との反応は、通常、化合物(II)の1モルに対して、化合物(VI)を0.5モルないし過剰モル、好ましくは1モルないし2モル用いて行われる。
【0097】
反応は、通常、不活性溶媒中で行われ、当該不活性溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ピリジン等又はその混合溶媒等が好適である。
【0098】
また、上記反応は縮合剤の存在下行うことが好ましく、当該縮合剤としては、例えばN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルりん酸アジド、1,1−カルボニルジイミダゾール等を使用することができる。
【0099】
当該縮合試薬は、通常、式(II)で表される化合物1モルに対して、1モルないし過剰モル、好ましくは1モルないし3モルを用いて行うことができる。
【0100】
反応温度は、通常、−20℃ないし反応に用いる溶媒の沸点、好ましくは0℃ないし60℃である。
【0101】
反応時間は、通常、30分間ないし3日間、好ましくは1時間ないし24時間である。
【0102】
反応終了後、通常の処理を行い、一般式(VII)で表される化合物の粗生成物を得ることができる。このようにして得られた一般式(VII)で表される化合物を、常法に従って精製し、又は精製することなく、次の分子内環化縮合反応に付すことができる。
【0103】
化合物(VII)から化合物(IV)を製造する分子内環化縮合反応は、通常、不活性溶媒中又は無溶媒で行われる。
【0104】
当該不活性溶媒としては、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等又はその混合溶媒等が好適である。
【0105】
反応温度は、通常、室温ないし反応に用いる溶媒の沸点、好ましくは、80℃ないし190℃である。
【0106】
反応時間は、通常、5時間ないし7日間、好ましくは12時間ないし3日間である。
【0107】
また、上記環化反応は、脱水剤又は触媒量のルイス酸の存在下行うこともできる。当該脱水剤としては、例えばオキシ塩化りん、五塩化りん、ポリりん酸、塩化チオニル等が挙げられ、当該ルイス酸としては、例えばトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、トリフルオロメタンスルホン酸ランタニド等が挙げられる。このとき、無溶媒で反応を行うか、又は例えば塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン等又はその混合溶媒中反応を行うことが好ましい。
【0108】
当該脱水剤の使用量は、通常、一般式(VII)で表される化合物1モルに対して、1モルないし過剰モル、好ましくは2ないし10モルである。当該ルイス酸の使用量は、1モル%ないし50モル%、好ましくは5モル%ないし30モル%である。
【0109】
反応温度は、通常、室温ないし反応に用いる溶媒の沸点が好適である。
【0110】
反応時間は、通常、1時間ないし7日間、好ましくは5時間ないし3日間である。
【0111】
反応終了後、生成物に保護基が存在する場合、当該保護基を除去した後に、又は生成物に保護基が存在しない場合はそのまま通常の処理を行い、式(I)の化合物を製造することができる。
【0112】
保護基の除去及び後処理等は、前記製造法1に記載した方法に準じて行うことができる。
【0113】
一般式(I)の化合物は、通常の分離手段により容易に単離精製できる。かかる手段としては、例えば溶媒抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー等を例示できる。
【0114】
これらの化合物は、常法により医薬として許容されうる塩とすることができ、また逆に塩から遊離化合物への変換も常法に従って行うことができる。
【0115】
一般式(II)、(III)、(V)又は(VI)で表される化合物は、例えば市販品を用いるか、公知の方法若しくはそれに準じる方法、又は実施例・参考例に記載する方法等を必要に応じ適宜組み合わせることにより製造することができる。
【0116】
本発明の化合物の医薬としての有用性は、例えば下記の薬理試験例において証明される。
【0117】
薬理試験例1(NPY結合阻害試験)
ヒトNPY Y5受容体をコードするcDNA配列[国際特許出願WO96/16542号明細書参照]を、発現ベクターpcDNA3、pRc/RSV(インビトロジェン社製)及びpCI−neo(プロメガ社製)にクローニングした。得られた発現ベクターをカチオン性脂質法[プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the united states of America)、84巻、7413頁(1987年)参照]を用いて宿主細胞COS−7、CHO及びLM(tk−)(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)にトランスフェクトし、NPY Y5受容体発現細胞を得た。
【0118】
NPY Y5受容体を発現させた細胞から調製した膜標品を被検化合物及び20,000cpmの[125I]ペプタイドYY(NEN社製)とともに、アッセイ緩衝液(10mM 塩化マグネシウム、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド、0.1%バシトラシン及び0.5%ウシ血清アルブミンを含む25mM Tris緩衝液、pH7.4)中で25℃、2時間インキュベーションした後、グラスフィルターGF/Cにて濾過した。0.3%BSAを含む5mM Tris緩衝液、pH7.4にて洗浄後、グラスフィルター上の放射活性を求めた。非特異的結合は1μM ペプタイドYY存在下で測定し、特異的ペプタイドYY結合に対する被験化合物の50%阻害濃度(IC50値)を求めた[エンドクリノロジー(Endocrinology)、131巻、2090頁(1992年)参照]。その結果、実施例1の化合物のIC50値は2.8nMであった。
【0119】
上記のとおり、本発明の化合物はNPY Y5受容体に対するペプタイドYY(NPYと同族物質)の結合を強力に阻害した。
【0120】
薬理試験例2(D−Trp34NPYにより誘発される摂食行動に対する拮抗試験)
ケタミン・キシラジン麻酔下(74及び11mg/kg腹腔内単回投与)、雄性SDラット(7−8週齢、200−300g)の第3脳室に脳定位固定的に慢性ガイドカニューレ(26ゲージ、長さ11mm)を挿入、歯科用レジンで固定した。ガイドカニューレの先端の位置はbregmaより後方2.2mm、正中線上、頭蓋骨表面より深さ8mmとした。約1週間の回復期間の後、D−Trp34NPY(1μg/0.4μL/head、0.05%ウシ血清アルブミンを含む人工脳脊髄液)を第3脳室内に投与した。被験化合物はD−Trp34NPY投与の2時間前に0.5%メチルセルロース水溶液に懸濁して経口投与し、D−Trp34NPY投与後2時間の摂餌量を測定した。
【0121】
その結果、本発明の化合物は第3脳室内に投与したD−Trp34NPY(NPYと同族物質)による摂食量の増加を10mg/kgで有意に抑制した。
【0122】
薬理試験例3(体内動態試験)
一晩絶食したSD系雄性ラット(7−10週齢、200−400g)に被験化合物を経口又は静脈内投与し、所定の時間にヘパリナイズドキャピラリーを用い、尾静脈から約100μLを採血した。血液を遠心分離(4℃、6000回転、10分間)して血漿を得た。血漿に3倍量のエタノール(内部標準物質を含む)を添加、攪拌し、−20℃にて20分間放置した後、遠心分離(4℃、10,000回転、10分間)した。上清をLC/MS/MSにて分析し、相対検量線法により血漿中濃度を定量した。
【0123】
その結果、実施例1の化合物は生物学的利用率51%、血中半減期2.5時間であった。
【0124】
薬理試験例4(脳/脳脊髄液移行性試験)
SD系雄性ラット(7−10週齢、200−400g)に被験化合物を経口又は静脈内投与し、所定の時間にエーテル麻酔下、腹部大動脈よりヘパリン処理注射筒を用いて全採血した。その後頭部皮膚を切開し、歯科用30G針を頸椎間に刺し入れ、更にくも膜下腔まで挿入した。歯科用30G針に接続されたチューブを通し1mL注射筒に50−100μLの脳脊髄液を採取した後、脳を摘出した。血液試料を遠心分離(4℃、6000回転、10分間)して得た血漿に3倍量のエタノール(内部標準物質を含む)を加えて攪拌した。脳試料は2mLの水を加えホモジナイズし、その一部をとり3倍量のエタノール(内部標準物質を含む)を加え攪拌した。脳脊髄液は3倍量のエタノール(内部標準物質を含む)を加え攪拌した。以上のサンプルを−20℃にて20分間放置した後、遠心分離(4℃、12,000g、10分間)し、上清をLC/MS/MSにて分析し、相対検量線法により血漿中、脳内、及び脳脊髄液内濃度を定量した。
【0125】
その結果、実施例1の化合物は、経口投与(10mg/kg)後1時間に脳内濃度0.29nmol/g、脳脊髄液内濃度0.106μM、血漿中濃度2.79μMを示した。
薬理試験例5(一般症状観察)
ICR系雄性マウス(4−6週齢)を一晩絶食させ、被験化合物を経口投与し、30分、1、2、3、4、24時間後に一般症状観察を行なった。観察項目は常同、洗顔(身繕い)、発声、探索行動、よろめき歩調、挙尾反応、震顫(ふるえ)、痙攣、体姿勢、立毛、苦悶反応(悶え反応)、眼裂、眼球突出、皮膚色、呼吸数、排尿、排便、流涎、流涙、驚き反応、攻撃性、握力、角膜反射、体温、躯体緊張、立ち直り反射、痛覚反応、死の28項目とした。
【0126】
その結果、実施例1の化合物(100mg/kg)の投与により、一般症状に対する影響は認められなかった。
薬理試験例6(消化管運動)
ICR系雄性マウス(4−6週齢)を一晩絶食させ、被験化合物を経口投与し、その1時間後に0.5%の炭末懸濁液(0.1ml/10g体重)を経口投与した。炭末懸濁液の投与1時間後に動物の消化管を摘出し、幽門から炭末が到達している部分までの腸の長さを測定し炭末移行率を求めた。
【0127】
その結果、実施例1の化合物(100mg/kg)は消化管運動に対し影響を及ぼさなかった。
薬理試験例7(イヌ循環器機能)
雄性ビーグル犬(9ヶ月齢以上、体重10−15kg)を用い、イソフルラン麻酔及び人工呼吸下で、動脈圧の測定及び薬物投与用に左大腿動、静脈にそれぞれカニュレーションを行った。左室圧の測定用に、カテ先圧トランスデューサーを左頚動脈から左室内に留置した。肺動脈圧 、右房圧、心拍出量の測定用にスワンガンツカテーテルを頚静脈から経右室的に肺動脈に留置した。大腿血流量の測定用に、右大腿動脈にトランジットドップラー血流プローブ を装着した。手術操作終了後、溶媒を静脈カニューレから投与した。引き続き被験薬物を静脈内投与し、投与直後、10、20、30及び60分後に各パラメータの測定を行なった。パラメータとしては、動脈圧、左室圧、肺動脈圧、右房圧、心拍出量、大腿血流量、心拍数、心電図、左室収縮力(左室圧の一次微分)、総末梢血管抵抗、体温、動脈の血液ガスの測定を行なった。
【0128】
その結果、実施例1の化合物(3及び10mg/kg)の投与により、イヌの心循環機能に対する影響は認められなかった。
【0129】
一般式(I)で表される化合物は、経口又は非経口的に投与することができ、そしてそのような投与に適する形態に製剤化することにより、NPYが関与する各種の疾患、例えば狭心症、急性・うっ血性心不全、心筋梗塞、高血圧、腎臓病、電解質異常、血管れん縮等の循環器系疾患、例えば過食症、うつ病、不安、痙攣、てんかん、痴呆、痛み、アルコール依存症、薬物の断薬に伴う禁断症状、概日リズムの変調、統合失調症、記憶障害、睡眠障害、認知障害等の神経系疾患、例えば肥満症、糖尿病、ホルモン分泌異常、痛風、脂肪肝等の代謝性疾患、不妊、早産、性機能障害等の生殖系疾患、消化管系疾患、呼吸器系疾患、炎症性疾患又は緑内障等の処置剤として供することができる。本発明の化合物を臨床的に用いるにあたり、その投与形態に合わせ、薬剤学的に許容される添加剤を加えて各種製剤化の後投与することも可能である。その際の添加剤としては、製剤分野において通常用いられる各種の添加剤が使用可能であり、例えばゼラチン、乳糖、白糖、酸化チタン、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水りん酸カルシウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、植物油、ベンジルアルコール、アラビアゴム、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、シクロデキストリン又はヒドロキシプロピルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0130】
これらの添加剤との混合物として製剤化される剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくは坐剤等の固形製剤;又は例えばシロップ剤、エリキシル剤若しくは注射剤等の液体製剤等が挙げられ、これらは、製剤分野における通常の方法に従って調製することができる。なお、液体製剤にあっては、用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させる形であってもよい。また、特に注射剤の場合、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖液に溶解又は懸濁させてもよく、更に緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0131】
これらの製剤は、本発明の化合物を全薬剤1.0〜100重量%、好ましくは1.0〜60重量%の割合で含有することができる。これらの製剤は、また、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。
【0132】
本発明化合物は代謝障害及び/又は摂食障害の処置に有用な他剤と組み合わせて使用することができる。そのような組み合わせの個々の成分は、処置期間中、別々の異なる時に又は同時に、分割された又は単一の製剤で投与することができる。したがって、本発明は同時の又は時間が異なる投与の全てを含むと解釈すべきであり、本発明における投与はそのように解釈すべきである。本発明化合物と代謝障害及び/又は摂食障害の処置に有用な他剤との組み合わせの範囲には、原則として代謝障害及び/又は摂食障害の処置に有用ないかなる医薬製剤との組み合わせも包含される。
【0133】
本発明の化合物を例えば臨床の場で使用する場合、その投与量及び投与回数は、患者の性別、年齢、体重、症状の程度及び目的とする処置効果の種類と範囲等により異なるが、一般に経口投与の場合、成人1日あたり、0.01〜100mg/kg、好ましくは0.03〜1mg/kgを1〜数回に分けて、また非経口投与の場合は、0.001〜10mg/kg、好ましくは0.001〜0.1mg/kgを1〜数回に分けて投与するのが好ましい。
【0134】
通常の内科医、獣医又は臨床医は病状進行を阻止し、抑制し又は停止させるに必要な効果的薬物量を容易に決定し処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0135】
実施例・参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0136】
構造式中、“*”を付した化合物は、該記号を付した不斉炭素原子上の立体配置が実質的に単一の化合物であることを意味する。
【0137】
なお、融点はMP−S3モデル(柳本製作所製)を用いて測定し、補正を加えず記した。
実施例1
6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノンの製造
(1)N−[(1S,2R)−2−アミノ−2−(4−フルオロフェニル)−2−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1−メチルエチル]−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−2−ピリジンカルボキサミドの製造
(1R,2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1,2−プロパンジアミン(25.6g)と6−ヒドロキシ−2−ピリジンカルボン酸(14.9g)を250mLのピリジンと250mLのジクロロメタンの混合溶液に溶解した後、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(24.3g)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮後、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、水と飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:0→10:1)で精製することにより、目的化合物を淡黄色固体を得た。その固体を酢酸エチルに懸濁し、1N水酸化ナトリウム溶液を加えた後、室温で激しく攪拌した。水層を2N塩酸で中和した後、除去した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去することにより、目的化合物(18.4g)を淡黄色固体をして得た。
(2)6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン(結晶形A)の製造
N−[(1S,2R)−2−アミノ−2−(4−フルオロフェニル)−2−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1−メチルエチル]−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−2−ピリジンカルボキサアミド(16g)を400mLのトルエンに懸濁した後、共沸脱水を行いながら10時間加熱還流した。反応液を減圧下濃縮後、得られた残差をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→10:1)で精製することにより表題化合物の黄色油状物を得た。得られた黄色油状物を80mLのイソプロパノールに溶解し、室温で130mLの水を加えた。この溶液を3時間室温にて放置し、生じた無色結晶を濾取した。得られた結晶を500mLの水に懸濁し、室温で14時間攪拌した。再び結晶を濾取し、真空下30℃で24時間乾燥し、表題化合物(結晶形A)(11.2g)を無色塊状結晶(融点125−126℃)として得た。
【0138】
[α]25:−273゜(c1.0,エタノール)
【0139】
【表1】

上記粉末X線回折分析データは自動X線装置RINT−Ultima+システム(2kW)(Rigaku International Corporation製造)によって測定した。分析方法は次のとおりである。
【0140】
X線放射源:Cu
チューブ電圧/チューブ電流:40kV/30mA
モノクロメーター:自動モノクロメーター
ゴニオメーター:広角ゴニオメーター
スキャンステップ:0.02deg.
スキャン速度:2.00deg./min.
ディバージェンス・スリット(divergence slit):1deg.
スキャッターリング・スリット(scattering slit):1deg.
レシービング・スリット(receiving slit):0.15mm
測定温度:室温
(3)6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン(結晶形A)の無色プレート状結晶の製造
上記(2)で得られた無色塊状晶(結晶形A)(2mg)を1mLのエタノールに溶解した後、約200μLの水を加えた。その容器の口をパラフィルムで覆い、パラフィルムに針で数個の穴を開け、3日間室温で放置し、表題の結晶を得た。
(4)6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン(結晶形B)の製造
上記(2)で得られた黄色油状物(1.21g)を100mLの酢酸エチルに溶解し、約300mLのn−ヘプタンを加えた。この溶液を2時間0℃で放置し、生じた無色結晶を濾取した。得られた結晶を真空下40℃で17時間乾燥し、表題化合物(結晶形B)(0.84g)を無色塊状結晶(融点115−118℃)として得た。
【0141】
【表2】

上記粉末X線回折分析データは実施例1(2)と同じ条件で測定された。
(5)6−[(4R,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(2−フルオロ−4−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノン(結晶形A)の製造(別法)
上記(4)の結晶(結晶形B)(24mg)を1mLの水に懸濁した後、室温で3日間攪拌した。遠心分離処理後(10000rpm,10分間)、上澄みを除いた。得られた結晶を減圧下乾燥することにより、表題化合物(結晶形A)を無色プリズム状結晶として得た。
実施例2
5−フルオロ−6−[(4S,5S)−4−(4−フルオロフェニル)−4−(6−フルオロ−3−ピリジル)−5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル]−2(1H)−ピリジノンの製造
実施例1に準じて、国際公開第01/62738号パンフレット参考例5−1記載の光学活性な(2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(6−フルオロ−3−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンと3−フルオロ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−2−ピリジンカルボン酸を反応させることにより表題化合物を得た。
【0142】
HNMR(400MHz,CDCl,δppm)0.89(3H,d,J=6.8Hz),4.85(1H,q,J=6.8Hz),6.77(1H,dd,J=3.6Hz,9.2Hz),7.05(1H,dd,J=2.4,8.0Hz),7.06−7.11(2H,m),7.29−7.33(2H,m),7.57(1H,t,J=9.6Hz),8.01−8.06(1H,m),8.33(1H,d,J=2.4Hz)
[α]25:−304゜(c1.0,エタノール)
実施例3
参考例4のジアミンを原料とした、光学活性な6−[(5S)−4−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−4−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−2−イミダゾリン−2−イル]−3−メチル−2(1H)−ピリジノンの製造
2−ベンジルオキシ−6−シアノ−3−メチルピリジン(90mg)のメタノール溶液にナトリウムメトキシド(4mg)を加え、50℃で48時間攪拌した。反応液の温度を室温まで下げた後に、メタンスルホン酸(44mg)を加え室温で30分間攪拌した。その反応液に参考例4のジアミン(89mg)を加え、50℃で60時間攪拌した。有機溶媒を減圧下留去後、得られた残渣をクロロホルムに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製することにより、目的のベンジル体(103mg)を無色油状物として得た。得られたベンジル体(103mg)を5mLのトリフルオロ酢酸に溶解し、室温で16時間攪拌した後、トリフルオロ酢酸を減圧下留去した。残渣をクロロホルムに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製することにより、表題化合物(51mg)を白色固体として得た。
【0143】
HNMR(400MHz,CDOD,δppm)0.89(3H,d,J=6.4Hz),2.16(3H,s),4.80−5.00(1H,m),6.84(1H,d,J=7.2Hz),7.09(2H,t,J=8.4Hz),7.31(1H,s),7.40−7.60(3H,m),7.76(1H,d,J=8.0Hz),7.93(1H,d,J=7.2Hz),8.56(1H,s)
[α]25:−194゜(c1.0,エタノール)
参考例1
(1S,2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンの製造
【0144】
【化24】

(1)t−ブチル N−[(1S)−2−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−2−オキソエチル]カルバメイトの製造
t−ブチル N−{(1S)−2−[メトキシ(メチル)アミノ]−1−メチル−2−オキソエチル}カルバメイト(50g)のテトラヒドロフラン溶液(700mL)を、別途調整された2.5M 4−フルオロフェニルマグネシウムブロミド−テトラヒドロフラン溶液(300mL)に、0℃でゆっくり滴下した後、反応液を室温で14時間攪拌した。0℃に冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、エーテルで2回抽出した。有機層を飽和飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C−300;ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、表題の化合物を得た。
(2)(1S,2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンの製造
t−ブチル N−[(1S)−2−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−2−オキソエチル]カルバメイトと(R)-(+)-2−メチル−2−プロパンスルフィンアミドを、脱水剤の存在下縮合させることにより、t−ブチル N−[(1S)−2−[((R)−t−ブチルスルフィニル)イミノ]−2−(4−フルオロフェニル)−1−メチルエチル]カルバメイト得た。そのスルフィニルイミン体(80mg)のトルエン溶液(2mL)に1.0Mトリメチルアルミニウム−ヘキサン溶液(0.43mL)を−78℃で加え、5分間攪拌した。得られた溶液を、2−フルオロ−4−ピリジルリチウム溶液[4−フルオロ−2−ブロモピリジン(114mg)と1.56Mブチルリチウム−ヘキサン溶液(0.46mL)をジエチルエーテル溶媒中(3mL)で−78℃で反応させることにより調整]に、−78℃でゆっくり滴下した。滴下終了後、テトラヒドロフラン(3mL)を加え、反応液を−78℃で2.5時間攪拌した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、室温まで昇温した。得られた反応液をセライトで濾過し、濾液の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C−300;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することにより、t−ブチル N−[(1S,2S)−2−[(t−ブチルスルフィニル)アミノ]−2−(4−フルオロフェニル)−2−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1−メチルエチル]カルバメイト(49mg)を得た。その生成物を4N塩化水素−ジオキサン溶液で処理することにより、光学活性な表題のジアミンを得た。
【0145】
HNMR(300MHz,CDCl,δppm):1.03(3H,d,J=6.3Hz),1.91(4H,brs),4.10(1H,q,J=6.3Hz),6.98−7.48(6H,m),8.12(1H,d,J=5.1Hz)
参考例2
(1R,2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンの製造
【0146】
【化25】

t−ブチル N−[(1S)−2−[((R)−t−ブチルスルフィニル)イミノ]−2−(2−フルオロ−4−ピリジル)−1−メチルエチル]カルバメイトに参考例1の方法に準じて、4−フルオロフェニルリチウムを反応させた後、酸性条件下で脱保護することにより表題のジアミンを得た。
【0147】
HNMR(300MHz,CDCl,δppm):0.98(3H,d,J=6.4Hz),4.07(1H,q,J=6.4Hz),6.98−7.07(2H,m),7.10(1H,s),7.24(1H,dt,J=5.4Hz,1.7Hz),7.48−7.58(2H,m),8.11(1H,d,J=5.3Hz)
参考例3
光学活性な(2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンの製造
【0148】
【化26】

t−ブチル N−[(1S)−2−[((R)−t−ブチルスルフィニル)イミノ]−2−(4−フルオロフェニル)−1−メチルエチル]カルバメイトに参考例1の方法に準じて、6−トリフルオロメチル−3−ピリジルリチウムを反応させた後、酸性条件下で脱保護することにより表題のジアミンを得た。
【0149】
HNMR(300MHz,CDCl,δppm):1.03(3H,d,J=6.3Hz),4.14(1H,q,J=6.3Hz),7.01(2H,t,J=9.0Hz),7.42−7.47(2H,m),7.61(1H,d,J=8.1Hz),8.10(1H,dd,J=2.1Hz,8.4Hz),8.90(1H,d,J=2.1Hz)
参考例4
光学活性な(2S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)−1,2−プロパンジアミンの製造(参考例3の化合物の1位のエピマー)
【0150】
【化27】

t−ブチル N−[(1S)−2−[((R)−t−ブチルスルフィニル)イミノ]−1−メチル−2−(6−トリフルオロメチル−3−ピリジル)エチル]カルバメイトに参考例1の方法に準じて、4−フルオロフェニルリチウムを反応させた後、酸性条件下で脱保護することにより表題のジアミンを得た。
【0151】
HNMR(400MHz,CDCl,δppm):0.99(3H,d,J=6.4Hz),4.12(1H,q,J=6.4Hz),7.00(2H,d,J=10.0Hz),7.50−7.60(2H,m),7.61(1H,d,J=8.0Hz),8.03(1H,d,J=8.0Hz),8.83(1H,s)
参考例5
2−ベンジルオキシ−6−シアノ−3−メチルピリジンの製造
【0152】
【化28】

2−ブロモ−6−シアノ−3−メチルピリジン(272mg)とベンジルアルコール(156mg)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)に水素化ナトリウム(40mg)を加え、1時間加熱環流した。室温まで放冷した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)で精製することにより、表題化合物(161mg)を無色液体として得た。
【0153】
HNMR(400MHz,CDCl,δppm)2.28(3H,s),5.40(2H,s),7.20−7.30(1H,m),7.30−7.40(3H,m),7.40−7.50(3H,m)
参考例6
3−フルオロ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−2−ピリジンカルボン酸の製造
【0154】
【化29】

3−フルオロ−2−メトキシカルボニルピリジン−N−オキシド(5.00g)のジメチルホルムアミド溶液(12mL)に、氷浴下無水トリフルオロ酢酸(24mL)をゆっくりと加え、室温で3時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、氷浴下、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液をゆっくりと加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた淡黄色固体をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下乾燥することにより、表題化合物のメチルエステル体を淡黄色固体(2.73g)として得た。得られたメチルエステル体を塩基性条件下で加水分解することにより、表題化合物を無色固体(2.05g)として得た。
HNMR(400MHz,DMSO−d,δppm):6.81(1H,dd,J=3.2,9.2Hz),7.66(1H,t,J=9.2Hz)

製剤例1
実施例1の化合物20.0g、乳糖417g、結晶セルロース80g及び部分アルファー化デンプン80gをV型混合機を用いて混合した後、ステアリン酸マグネシウム3.0gを加え混合した。混合末を常法に従い打錠し直径7.0mm、1錠の重量150mgの錠剤3000錠を得た。
【0155】
一錠(150mg)あたりの含有量
実施例1の化合物5.0mg
乳糖104.25mg
結晶セルロース20.0mg
部分アルファー化デンプン20.0mg
ステアリン酸マグネシウム0.75mg

製剤例2
ヒドロキシプロピルセルロース2910 10.8g及びポリエチレングリコール6000 2.1gを精製水172.5gに溶解した後、二酸化チタン2.1gを分散し、コーティング液を調製した。別に調製した製剤例1の錠剤2500錠にハイコーターミニを用いてコーティング液をスプレーコーティングし、重量155mgのフィルムコート錠を得た。
【0156】
一錠(155mg)あたりの含有量
製剤例1の錠剤150mg
ヒドロキシプロピルセルロース2910 3.6mg
ポリエチレングリコール6000 0.7mg
二酸化チタン0.7mg
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の化合物は、NPY拮抗作用を有し、例えば脳内移行性又は脳脊髄液移行性等の体内動態に優れ、また、安全性も高いため、NPYが関与する各種の疾患、例えば狭心症、急性・うっ血性心不全、心筋梗塞、高血圧、腎臓病、電解質異常、血管れん縮等の循環器系疾患、例えば過食症、うつ病、不安、痙攣、てんかん、痴呆、痛み、アルコール依存症、薬物の断薬に伴う禁断症状、概日リズムの変調、統合失調症、記憶障害、睡眠障害、認知障害等の神経系疾患、例えば肥満症、糖尿病、ホルモン分泌異常、痛風、脂肪肝等の代謝性疾患、不妊、早産、性機能障害等の生殖系疾患、消化管系疾患、呼吸器系疾患、炎症性疾患又は緑内障等の処置剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ib−1)
【化1】

[式中、R1bはハロゲン原子、シアノ基、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基又はアラルキルオキシ基を意味し;R2bはハロゲン原子又はハロ低級アルキル基を意味する]で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
2bがフッ素原子又はトリフルオロメチル基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
1bがハロゲン原子又は低級アルキル基である請求項2記載の化合物。
【請求項4】
一般式(Ib−2)
【化2】

[式中、R1baはハロゲン原子を意味する]で表される化合物である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
1baのハロゲン原子がフッ素原子である請求項4記載の化合物。
【請求項6】
一般式(Ib−3)
【化3】

[式中、R1bbは低級アルキル基を意味する]で表される化合物である請求項1記載の化合物。
【請求項7】
1bbの低級アルキル基がメチル基である請求項6記載の化合物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかの化合物又はその塩を有効成分とする神経ペプチドY受容体拮抗剤。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかの化合物又はその塩を有効成分とする過食症、肥満症又は糖尿病の処置剤。

【公開番号】特開2010−189417(P2010−189417A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92748(P2010−92748)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2003−576427(P2003−576427)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000005072)萬有製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】