新規フィブリリン−様ポリペプチド
本発明は、新規フィブリリン-様ポリペプチドをコードしているヒトゲノム中のオープンリーディングフレーム(ORF)、並びに該ポリペプチドの変異体、変異体及び断片に加え、それらに対するリガンド及びアンタゴニストを含むそれに関連した試薬を明らかにしている。本発明は、これらの分子を同定し作成する方法、これらを含有する医薬組成物を調製する方法、並びにこれらを疾患の診断、予防及び治療に使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトゲノムにおいて、新規ポリペプチド、より詳細にはフィブリリン-様ポリペプチドをコードしているとして同定された核酸配列に関する。
【0002】
本願明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全体が参照として組込まれている。
【背景技術】
【0003】
既に多くの新規ポリペプチドが、同じファミリーの公知のポリペプチドに対する厳密な相同性の判定を適用することにより同定されている。しかしフィブリリン-様ポリペプチド(及びいずれか他のタンパク質ファミリー)についてのヒトゲノム中のポリペプチド-コード配列中の実際の内容は依然不明であるので、ヒトゲノムに存在するオープンリーディングフレーム(ORF、すなわち、停止コドンにより中断されず、且つポリペプチドに翻訳可能なアミノ酸をコードしているヌクレオチドの連続3文字を含むゲノム配列)の全体に対する、選択的及び厳密性のより少ない相同性/構造の基準を適用することにより、フィブリリン-様ポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードしているDNA配列を同定する可能性が依然存在する。
【0004】
細胞が細胞外タンパク質を生成及び分泌する能力は、多くの生物学的プロセスの中心である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は全て、細胞により分泌される。これは分泌小胞の、細胞膜との融合を介している。全てではないがほとんどの場合において、タンパク質はシグナルペプチドにより小胞体に向かい、そして分泌小胞へ向かう。シグナルペプチドは、細胞質から、分泌小胞のような膜結合したコンパートメントへのポリペプチド鎖の輸送に影響を及ぼすcis-作用配列である。分泌小胞を標的としたポリペプチドは、細胞外マトリックスへ分泌されるか、又は原形質膜に保持されるかのいずれかである。原形質膜に保持されたポリペプチドは、1個又は複数の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能において中心的役割を果たす分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着分子)、プロテアーゼ、増殖因子及び分化因子である。
【0005】
ミクロフィブリル束及びこれらの束に関連して認められたタンパク質、特に接着分子は、皮膚科学において、特に加齢、損傷、又は太陽によりダメージを受けた皮膚の研究の分野で関心が高い。フィブリリンミクロフィブリルは、皮膚の連続する弾性のあるネットワーク(continuous elastic network)を規定し、真皮-表皮接合部から伸びている測定可能なエラスチンを欠いているミクロフィブリル束として、並びに深い真皮網状層に存在する厚い弾性線維の構成要素として真皮に存在する。
【0006】
フィブリリン-1は、アミノ-末端アナフラトキシン-様モジュール、それに続く9個の上皮増殖因子(EGF)-様モジュール、及び選択的スプライシングに応じて、4個の可能性のあるカルボキシ末端を伴う、モジュラー糖タンパク質である。フィブリリン-2は、フィブロネクチン又はフィブリンのいずれかを含むミクロフィブリルに密に会合して頻繁に認められる、新規細胞外マトリックスタンパク質である。従ってフィブリリン及びそれらに関連した分子は、特に皮膚を加齢、損傷、もしくは太陽により受けるダメージから守るための用途、又はこれらからダメージを受けた皮膚を回復するための用途にとって興味深いものである。更にこれらの分子は、一般に結合組織及び接着分子並びに関連機構の研究において興味深いものである。フィブリリン、及び関連分子は更に、Adamsら, J. Mol. Biol., 272(2): 226-36 (1997);Kielty及びShuttleworth, Microsc. Res. Tech., 38(4): 413-27 (1997);並びに、Child, J. Card. Surg., 12(2Supp.): 131-3 (1997)で説明される。
【0007】
従ってフィブリリン及びそれらの関連分子は、特に皮膚を加齢、損傷、もしくは太陽により受けるダメージから守るための用途、又はこれらによりダメージを受けた皮膚を回復するための用途にとって特に興味深いものである。更にこれらの分子は、一般に結合組織及び接着分子並びに関連機構の研究において興味深いものである。
【0008】
フィブリリンの細胞外マトリックス構造の形成及び/又は安定化における正確な役割、加えてそれらの細胞挙動に対する作用は、現在研究中である。しかし、新規フィブリリン-様タンパク質の同定は、これらのタンパク質が関連したある種の病態につながる基礎となる経路の理解が増加し、これらの障害を治療するためにより有効な遺伝子療法又は薬物療法が開発される上で非常に重要であることは明らかである。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、新規フィブリリン-様ポリペプチドをコードしているヒトゲノムにおけるオープンリーディングフレーム(ORF)の同定を基にしている。このポリペプチドは、本明細書において、SCS0008ポリペプチドと称される。予測SCS0008の完全長コード配列を基に、SCS0008の2種のスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2が追加的に発見された。SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、本明細書においてSCS0008と称する。
【0010】
従って本発明は、フィブリリン-様ポリペプチドの活性を有するポリペプチドとして、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18で記載されたアミノ酸配列、並びにそれらの成熟型、ヒスチジン型、変異体及び断片を有する、単離されたSCS0008ポリペプチドを提供する。本発明は、それらをコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、及びこれらのベクター又は核酸を含む細胞に加え、融合タンパク質、リガンド及びアンタゴニストなどのその他の関連試薬も含む。
【0011】
本発明は、これらの分子を同定及び作成する方法、それらを含有する医薬組成物を調製する方法、並びに疾患の診断、予防及び治療にそれらを使用する方法を提供する。
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明の第一の局面に従い、下記からなる群より選択されるフィブリリン-様活性を有する、単離されたポリペプチドが提供される:
a)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載の、アミノ酸配列;
b)配列が、配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)で記載されている、ポリペプチドの成熟型;
c)配列が、配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されたポリペプチドの、ヒスチジンタグ型;
d)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載されたアミノ酸配列の変異体であり、ここで選択された配列において特定されたいずれかのアミノ酸が非-保存的に置換され、但し15%を超えないその配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている変異体;
e) a)からd)に示されたアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩、又は誘導体。
【0013】
本明細書に説明された新規SCS0008ポリペプチドは、独自仕様のバイオインフォマティクス技術を基に同定された。EGFドメインは、データベース検索のためのクエリー配列として使用され、最終のアノテーションは、アミノ酸配列の相同性の基礎に貢献している。
【0014】
ヒトゲノム内の公知のORFの翻訳により得られたアミノ酸配列全体が、このコンセンサス配列を使用しチャレンジされ、陽性ヒットは更に、この性質のポリペプチドの特徴を示す予測された特異的構造及び機能の"サイン"の存在についてスクリーニングされ、かつ最後に公知のフィブリリン-様ポリペプチドを伴う配列特徴と比較することにより選択された。従って本発明の新規ポリペプチドは、フィブリリン-様活性を有すると予測することができる。
【0015】
用語"活性のある"及び"活性"は、本明細書において、それらのアミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18で示された、フィブリリン-様ポリペプチドについて予測されたフィブリリン-様特性を意味する。これらの特性は、結合組織中にミクロフィブリル束を形成する能力を有する。
【0016】
第二の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている精製された核酸分子を提供する。好ましくは、精製された核酸分子は、配列番号:1(そのアミノ酸配列は配列番号:2に記載のフィブリリン-様ポリペプチドをコードしている)、配列番号:5(配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードしている)、又は配列番号:12(配列番号:13に記載のアミノ酸配列をコードしている)に記載の核酸配列を有する。
【0017】
第三の局面において、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で、本発明の第二の局面の核酸分子とハイブリダイズする精製された核酸分子を提供する。
【0018】
第四の局面において、本発明は、本発明の第二又は第三の局面の核酸分子を含む、発現ベクターなどの、ベクターを提供する。
【0019】
第五の局面において、本発明は、本発明の第四の局面のベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。
【0020】
第六の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドのフィブリリン-様活性に特異的に結合し、及び好ましくはこれを阻害するリガンドを提供する。本発明のポリペプチドへのリガンドは、天然の又は修飾された基質、酵素、受容体、最大2000Da、好ましくは800Da又はそれ未満の小型の天然又は合成の有機分子のような小型有機分子、ペプチドミメティクス、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述のものの構造的又は機能的ミメティクスを含む、様々な形であってよい。
【0021】
第七の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現を変更するか、又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性を調節するのに有効である化合物を提供する。
【0022】
本発明の第七の局面の化合物は、遺伝子の発現のレベル又はポリペプチドの活性を増加する(アゴニスト作用)又は減少する(アンタゴニスト作用)のいずれかであることができる。重要なことは、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドの機能の同定は、疾患の治療及び/又は診断に有効である化合物を同定することが可能であるスクリーニング法をデザインすることができる。
【0023】
第八の局面において、本発明は、治療又は診断において使用するための、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、又は本発明の第七の局面の化合物を提供する。これらの分子は、皮膚が加齢、損傷又は太陽によるダメージを受けているもののような疾患の治療のための、又はこれらからの、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)、更には下記の治療的使用において言及された状態及び障害により、ダメージを受けた皮膚を回復するための、医薬品の製造に使用することもできる。
【0024】
第九の局面において、本発明は、該患者の組織において、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性を評価すること、及び該発現のレベル又は活性を対照レベルと比較することを含む、患者において疾患を診断する方法を提供し、ここで該対照レベルとは異なるレベルは、疾患の指標である。このような方法は、in vitroで実行されることが好ましいであろう。同様の方法を用い、患者における疾患の治療的処置をモニタリングすることができ、ここで経時的に対照レベルへと向かうポリペプチド又は核酸分子の発現のレベル又は活性の変化は、疾患の回復の指標である。
【0025】
本発明の第一の局面のポリペプチドを検出する好ましい方法は、下記の工程を含む:
(a)本発明の第六の局面のリガンド、例えば抗体を、生物学的試料と、リガンド-ポリペプチド複合体を形成するのに適した条件下で接触する工程;及び
(b)該複合体を検出する工程。
【0026】
例えば、短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった、多くの異なる本発明の第九の局面のような方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様の方法を短期又は長期ベースで用いて、患者においてモニタリングされる疾患の治療的処置を可能にすることができる。本発明はまた、これらの疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0027】
第十の局面において、フィブリリン-様タンパク質として本発明の第一の局面のポリペプチドの使用を提供する。適当な使用は、そのタンパク質の、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン、パールカン、フィブリン及びフィブリノーゲンのような他の細胞外マトリックスタンパク質との相互作用を介した、結合組織線維、基底膜及び血栓のような細胞外マトリックス構造に結合する能力の結果である、特に組織の修復及び再建の状況における、分泌された糖タンパク質としての使用を含む。
【0028】
第十一の局面では、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、又は本発明の第七の局面の化合物を、医薬として許容できる担体と組合わせて含有する医薬組成物を提供する。
【0029】
第十二の局面では、本発明は、皮膚が加齢、損傷又は太陽によるダメージを受けているもののような疾患の診断もしくは治療のための、又はこれらからの、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)、更には下記の治療的使用において言及された状態及び障害により、ダメージを受けた皮膚を回復するための医薬品の製造において使用するための、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、あるいは本発明の第七の局面の化合物を提供する。
【0030】
第十三の局面では、本発明は、患者へ、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、あるいは本発明の第七の局面の化合物を投与することを含む、患者の疾患を治療する方法を提供する。
【0031】
本発明の第一の局面のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現、又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で低下する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で上昇する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアンタゴニストであるべきである。このようなアンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド、例えば抗体が含まれる。
【0032】
第十四の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドを高レベル、低レベルで発現、又は発現しないように形質転換したトランスジェニック又はノックアウト非ヒト動物を提供する。このようなトランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
【0033】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び手法の要約は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、この用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
【0034】
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられ、これらの技術は当業者の技術範囲内である。
【0035】
このような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vol.I及びII (D.N. Glover編集、1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編集、1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Transcription and Translation (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney編集、1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154及び155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos編集、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer及びWalker編集、1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell編集、1986)。
【0036】
本発明の第一の局面は、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17及び配列番号:18に記載されたアミノ酸配列の変異体を含み、ここで選択された配列で特定されたいずれかのアミノ酸は、非-保存的に置換され、但し15%を超えない配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている。指定された数の非-保存的置換を有するタンパク質配列は、通常利用可能なバイオインフォマティクスツールを用いて同定することができる(Mulder NJ及びApweiler R, 2002; Rehm BH, 2001)。
【0037】
このような配列に加え、一連のポリペプチドは、本発明の開示の一部を形成する。フィブリリン-様ポリペプチドは、N-末端配列のタンパク質分解性の除去(シグナルペプチダーゼ及び他のタンパク質分解性酵素による)を含む成熟過程を進行することが分かっているので、本明細書は、配列が配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)に記載されているポリペプチドの成熟型も請求する。成熟型は、フィブリリン-様活性を示し並びにin vivo(発現している細胞又は動物により)もしくはin vitro(精製されたポリペプチドの特異的酵素による修飾による)における翻訳後成熟過程から生じるあらゆるポリペプチドを含むことが意図されている。他の選択的(alternative)成熟も、糖又はリン酸のような化学基の付加から生じ得る。本願は、配列が配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されているポリペプチドヒスチジンタグ型も請求している。
【0038】
他の請求されたポリペプチドは、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17又は配列番号:18によりもたらされたアミノ酸配列の活性変異体であり、ここで選択された配列中の特定されたアミノ酸は、非-保存的に置換され、但し15%を超えない、好ましくは10%、5%、3%、又は1%を超えない、配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている。示された割合は、開示した新規アミノ酸配列全体について測定されなければならない。
【0039】
本発明において、分子の構造及び生物学的機能を保存するために、あらゆる置換は、好ましくは"保存的な"又は"安全な"置換であり、これは通常十分に類似した化学特性を有するアミノ酸を導入する置換を定義している(例えば、塩基性、正電荷アミノ酸は、別の塩基性、正電荷アミノ酸と置換されなければならない)。
【0040】
文献は、保存的アミノ酸置換の選択が、タンパク質の配列及び/又は構造の統計学的及び物理化学的試験を基に行われ得る多くのモデルを提供している(Rogov SI and Nekrasov AN, 2001)。タンパク質構造をより容易に適応することができ並びに機能的及び構造的ホモログ及びパラログを検出するために使用することができるアミノ酸"同義"置換の分類を補助する、アミノ酸の特異的サブセットの使用は、折畳み可能で活性のあるタンパク質を生成することができるタンパク質デザイン実験が示されている(Murphy LRら, 2000)。同義アミノ酸の群及びより好ましい同義アミノ酸の群は、表Iに示している。
【0041】
対応するフィブリリン-様ポリペプチドに関して、同等の、又は改善された活性を有する活性変異体は、通常のコードDNAの突然変異誘発技術から、コードDNA配列のレベルでのコンビナトリアル技術(例えば、DNAシャッフリング、ファージディスプレイ/選択)から、又はコンピュータ支援によるデザイン研究、それに続く先行技術に説明されたような望ましい活性に関するバリデーションから生じることができる。
【0042】
特異的、非-保存的変異を、異なる目的で本発明のポリペプチド中に導入することもできる。フィブリリン-様ポリペプチドの親和性を低下する変異は、その再使用能及び再循環能を高め、これはその治療効能を高める可能性がある(Robinson CR, 2002)。最終的には本発明のポリペプチド中に存在する免疫原性エピトープが、ワクチン開発のために活用されるか(Stevanovic S, 2002)、もしくはタンパク質安定性を増大する変異を選択し、それらを補正するための公知の方法に従いそれらの配列を修飾することにより排除され得る(van den Burg B及びEijsink V, 2002;国際公開公報第02/05146号、第00/34317号、第98/52976号)。
【0043】
別の本発明の代替ポリペプチドは、先に説明されたアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩又は機能的-等価の誘導体である。
【0044】
断片は、それらの機能を変更しない末端又は内部のアミノ酸の欠失が存在し、かつそのタンパク質の機能的コンホメーションに重要であるアミノ酸を除去又は置き換えを伴うことなく、一般に数個のアミノ酸、例えば10個以下、好ましくは3個以下のアミノ酸が関与するはずである。小さい断片は、抗原決定基を形成することがある。
【0045】
"前駆体"は、細胞又は体への投与の前後に、代謝的及び酵素的プロセッシングにより、本発明の化合物へ転換され得る化合物である。
【0046】
本明細書における用語"塩"は、本発明のポリペプチドのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成され、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄又は亜鉛の塩など、並びに有機塩基との塩、例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニンもしくはリシン、ピペリジン、プロカインなどにより形成された塩を含む。酸付加塩は、例えば、塩酸又は硫酸などのような鉱酸との塩、及び酢酸又はシュウ酸などの有機酸との塩を含む。このような塩のいずれも、本発明のペプチド及びポリペプチド又はそれらのアナログと実質的に類似した活性を有さなければならない。
【0047】
本明細書の用語"誘導体"は、公知の方法に従い、アミノ酸部分の側鎖又はアミノ-もしくはカルボキシ-末端基に存在する官能基から調製することができる誘導体を意味する。このような分子は、一次配列は通常変更しない他の修飾、例えばポリペプチドのin vivo又はin vitro化学的誘導体化(アセチル化又はカルボキシル化)、その合成時及びプロセッシング時に又はさらなるプロセッシング工程において、ペプチドのリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、もしくはホスホトレオニン残基の導入)又はグリコシル化(ポリペプチドの哺乳類グリコシル化酵素への曝露による)のパターンの修飾により作成されたものからも生じる。あるいは誘導体は、カルボキシル-基のエステル又は脂肪族アミド、並びに遊離アミノ基のN-アシル誘導体又は遊離のヒドロキシル-基のO-アシル誘導体を含んでもよく、これらは例えばアルカノイル-又はアリール-基のようなアシル-基により形成される。
【0048】
これらの誘導体の生成は、内部又は末端の位置での、適当な残基の位置指定修飾に関連し得る。付着に使用される残基は、ポリマー付着されやすい側鎖を有するものでなければならない(すなわち、官能基を保持するアミノ酸側鎖、例えばリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジンなど)。あるいは、ポリマー付着されやすい側鎖を有する残基は、このポリペプチドのアミノ酸と置き換えられるか、又はこのポリペプチドの内部もしくは末端の位置で付加され得る。同じく、遺伝子コードされたアミノ酸の側鎖も、ポリマー付着のために化学的に修飾することができるか、又は適当な側鎖官能基を伴う非天然のアミノ酸を使用することができる。好ましい付着法は、ペプチド合成及び化学的連結の組合せを使用する。有利なことに、水溶性ポリマーの付着は、生分解性リンカー、特にタンパク質のアミノ-末端領域を介するであろう。このような修飾は、リンカーの分解時に、ポリマー修飾を伴うことなく、タンパク質を放出する前駆体(又は"プロドラッグ")型でタンパク質を提供するように作用する。
【0049】
ポリマー付着は、アンタゴニストの特定の位置で天然に生じるアミノ酸の側鎖に対し又はアンタゴニストの特定の位置で天然に生じるアミノ酸を置き換える天然もしくは非天然のアミノ酸の側鎖に対してのみではなく、標的位置でアミノ酸の側鎖に付着されている糖鎖又は他の部分に対しても生じる。稀な又は非天然のアミノ酸も、特に操作された細菌株においてこのタンパク質を発現することにより導入することができる(Bock A, 2001)。
【0050】
先に示した全ての変異体は、ヒト以外の生物において同定される、天然のもの、又は化学合成、位置指定突然変異誘発技術、もしくはそれらに適したいずれか他の公知の技術により調製される、人工のものであることができ、これは、先行技術において示された技術を使用する当業者により日常的に入手及び試験され得る実質的に対応する突然変異誘発されたもしくは切断されたペプチドもしくはポリペプチドの限られたセットを提供する。
【0051】
本明細書で開示した新規アミノ酸配列は、様々な種類の試薬及び分子を提供するために使用することができる。これらの化合物の例は、それらの完全配列又は特定の断片、例えば抗原決定基を用い同定することができる結合タンパク質又は抗体である。請求されたアミノ酸配列に結合する抗体又は他のタンパク質をスクリーニングし及び特徴決定するために、並びに類似の結合特性を有する本発明のポリペプチドの代替物を同定するために、公知の方法でペプチドライブラリーを使用することができる(Tribbick G, 2002)。
【0052】
本明細書は、先に説明されたポリペプチドのいずれかを含む融合タンパク質も開示している。これらのポリペプチドは、このポリペプチドのフィブリリン-様活性を著しく損なうことも、追加の特性を提供する可能性もなく、本明細書において開示されたタンパク質配列とは異種のタンパク質配列を含むべきである。このような特性の例は、より容易な精製手法、より長い体液中の半減期の維持、追加の結合部分、末端タンパク質分解性の消化による成熟、又は細胞外局在化がある。この後者の特徴は、先の定義に含まれる融合タンパク質又はキメラタンパク質の特定群を定義するために特に重要であり、その理由はこれは、請求された分子が、これらのポリペプチドの単離及び精製が促進される空間のみではなく、一般にフィブリリン-様ポリペプチド及びそれらの受容体が相互作用する空間にも、局在化することを可能にするからである。
【0053】
融合タンパク質の構築、精製、検出及び使用のための、部分、リガンド、及びリンカーのデザイン並びに、方法及び戦略も、文献において明らかにされている(Nilsson Jら、1997; Methods Enzymol, Vol.326-328, Academic Press, 2000)。融合タンパク質に含まれ得る好ましい1又は複数のタンパク質配列は、以下のタンパク質配列に属する:膜-結合タンパク質、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド-含有タンパク質、輸送シグナル-含有タンパク質。これらの配列の特徴及びそれらの具体的用途は、例えば、アルブミン融合タンパク質(国際公開公報第01/77137号)、多量体化ドメインを含む融合タンパク質(国際公開公報第01/02440号、第00/24782号)、免疫複合体(Garnett MC, 2001)、又はアフィニティークロマトグラフィーによる組換え産物の精製に使用される追加配列を提供する融合タンパク質(Constans A, 2002;Burgess RR及びThompson NE, 2002; Lowe CRら, 2001;J. Bioch. Biophy. Meth., vol.49 (1-3), 2001;Sheibani N, 1999)について、詳細に説明されている。
【0054】
本発明のポリペプチドは、それらに特異的に結合するリガンドを作成及び特徴決定するために使用することができる。これらの分子は、天然又は人工のものであり、化学的観点から非常に異なり(結合タンパク質、抗体、分子によりインプリンティングされたポリマー)、並びに当該技術分野における指導を適用することにより作成することができる(国際公開公報第02/74938;Kuroiwa Yら, 2002;Haupt K, 2002;van Dijk MA及びvan de Winkel JG, 2001;Gavilondo JV及びLarrick JW, 2000)。このようなリガンドは、それに対してリガンドが生じるポリペプチドのフィブリリン-様活性を拮抗又は阻害することができる。特に、共通及び効果的リガンドは、膜-結合したタンパク質の細胞外ドメイン又はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、もしくは抗原結合断片であることができる抗体により表される。
【0055】
先に説明されたポリペプチド及びポリペプチド-ベースの誘導された試薬は、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞傷害性物質の中で選択された分子との活性接合体又は複合体のように、望ましい使用及び/又は生成の方法に従い、別の形であることができる。
【0056】
ペプチドミメティクスのような特定の分子も、本発明のポリペプチドの配列及び/又は構造に基づいてデザインすることができる。ペプチドミメティクス(peptide mimetics)(ペプチドミメティクス(peptidomimetics)とも称される)は、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド骨格のレベルで化学的に修飾されたペプチドである。これらの変更は、改善された調製、効能及び/又は薬物動態の特徴を伴う、本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを提供することが意図される。
【0057】
例えば、ペプチドがペプチダーゼにより切断され易い場合、その後の対象への注射は問題があり、切断不可能なペプチドミメティクスと結合した特に感受性のあるペプチドの交換は、より安定した、従って治療薬としてより有用なペプチドを提供することができる。同様に、L-アミノ酸残基の置換は、そのペプチドをタンパク質分解に対してより非感応性とし、最終的にはペプチド以外の有機化合物とより類似性とする、標準の方法である。同じく、アミノ-末端ブロック基、例えば、t-ブチルオキシカルボニル、アセチル、テニル、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、及び2,4-ジニトロフェニルなども有用である。増大した効能、延長された活性、精製の容易さ、及び/又は延長された半減期を提供する多くの他の修飾は、先行技術において明らかにされている(国際公開公報第02/10195号;Villain Mら、2001)。
【0058】
ペプチドミメティクスに含まれたアミノ酸誘導体の好ましい代替の、同義語の群は、表IIに定義されたものである。網羅的でないアミノ酸誘導体のリストは、アミノイソ酪酸(Aib)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-COOH、インドリン-2-カルボン酸、4-ジフルオロ-プロリン、L-チアゾリジン-4-カルボン酸、L-ホモプロリン、3,4-デヒドロ-プロリン、3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニン、シクロヘキシル-グリシン、及びフェニルグリシンを含む。
【0059】
"アミノ酸誘導体"は、20種の遺伝子コードされた天然のアミノ酸のひとつ以外のアミノ酸又はアミノ酸-様化学的部分を意図している。特にアミノ酸誘導体は、置換された又はされない、線状、分枝した、又は環状のアルキル部分を含むことができ、1個又は複数のヘテロ原子を含むことができる。アミノ酸誘導体は、新規で作成されるか又は商業的供給源(Calbiochem-Novabiochem AG, Switzerland; Bachem, USA)から入手することができる。
【0060】
タンパク質構造及び機能を調べ及び/又は改善するために、in vitro及びin vivoの両翻訳システムを使用し、天然のアミノ酸誘導体をタンパク質に組込む様々な方法が、文献において明らかにされている(Dougherty DA, 2000)。ペプチドミメティクスに加え非-ペプチドミメティクスの合成及び開発の技術は、当該技術分野において周知である(Golebiowski Aら, 2001;Hruby VJ及びBalse PM, 2000;Sawyer TK, "Structure Based Drug Design"、Veerapandian P編集、Marcel Dekker Inc., pg. 557-663,1997)。
【0061】
本発明の別の目的は、フィブリリン-様活性を有する本発明のポリペプチド、抗体に結合するポリペプチド又はそれらに対して作成された結合タンパク質、対応する融合タンパク質、又は前述のアンタゴニスト活性を有する変異体をコードしている単離された核酸である。好ましくは、これらの核酸は、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12、配列番号:1のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1425で終わる)、配列番号:5のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1590で終わる)、配列番号:12のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1503で終わる)、又は該DNA配列の相補体からなる群より選択されるDNA配列を含まなければならない。
【0062】
あるいは、本発明の核酸は、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12からなる核酸と、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするか、又は少なくとも約30ヌクレオチドの範囲にわたり、少なくとも約85%の同一性を示すか、又は該DNA配列の相補体である。
【0063】
用語"高ストリンジェンシー条件"とは、50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNAを含有する溶液中で60〜65℃で一晩インキュベーションし、続いてフィルターを同じ温度で0.1xSSC中で洗浄するというハイブリダイゼーション反応の条件を意味する。
【0064】
これらの核酸は、実質的に同じヌクレオチド配列を含み、これらは、コードポリペプチドの維持、修飾、導入、又は発現に使用することができる、プラスミド、ベクター及びいずれか他のDNA構築体を含むことができる。特に該核酸分子が発現制御配列に作用可能に連結されているベクターは、コードされたポリペプチドの原核又は真核宿主細胞において発現が可能である。
【0065】
用語"実質的に同じヌクレオチド配列"は、遺伝暗号の縮重により、所定のアミノ酸配列を同じくコードしている他の核酸配列全てを含む。この意味で、文献は、組換え発現のために好ましい又は最適化されたコドンの指標を提供している(Kane JF ら., 1995)。
【0066】
核酸及びベクターは、異なる目的で細胞へ導入され、トランスジェニック細胞及び生物を作出する。本発明のポリペプチドを発現することが可能である細胞を作出するプロセスは、そのようなベクター及び核酸により細胞を遺伝子操作することを含む。
【0067】
特に、宿主細胞(例えば、細菌細胞)は、本発明の核酸及びベクターによりコードされたポリペプチドの一過性又は安定した発現を可能にする形質転換により修飾することができる。あるいは該分子は、本発明のポリペプチドの発現レベルを正常な発現レベルと比較した場合に、本発明のポリペプチドの増大した又は減少した発現レベルを有するトランスジェニック動物細胞又は非-ヒト動物を作出するために(非-相同/相同組換えによるか、又はそれらの安定した組込み及び維持を可能にするいずれか他の方法により)使用することができる。そのような正確な修飾は、本発明の核酸及び関連技術、例えば、遺伝子治療(Meth. Enzymol., vol. 346,2002)、又は部位特異的レコンビナーゼ(Kolb AF, 2002)の使用により得ることができる。それらの機能の系統的研究のために本明細書において明らかにされたフィブリリン-様ポリペプチドを基にしたモデルシステムも、ヒト細胞株への遺伝子標的化により作成することができる(Bunz F, 2002)。
【0068】
遺伝子サイレンシング法を実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir ら. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAオリゴヌクレオチドの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
【0069】
上記に述べた遺伝子サイレンシング法の有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、又はTaqManベースの方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0070】
本発明のポリペプチドは、組換えDNA-関連技術、及び化学合成技術を含む、当該技術分野において公知であるいずれかの方法により調製することができる。特に、本発明のポリペプチドを作成する方法は、先に説明した宿主又はトランスジェニック細胞の、核酸又はベクターが発現される条件下での培養、並びに該核酸又はベクターでコードされたポリペプチドの培養物からの回収を含む。例えば、ベクターがポリペプチドを細胞外タンパク質又はシグナル-ペプチド含有タンパク質との融合タンパク質として発現する場合、この組換え産物は、細胞外間隙に分泌され、更なるプロセッシングの観点で、培養された細胞からより容易に収集及び精製することができるか、あるいは、この細胞は直接使用又は投与することができる。
【0071】
本発明のタンパク質をコードしているDNA配列は、エピソーマル又は非-相同/相同組込みベクターへ挿入及び連結することができ、これはいずれか適当な手段(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入など)により適当な宿主細胞へ導入することができる。特定のプラスミド又はウイルスベクターを選択する重要な要因は、以下を含む:ベクターを含むレシピエント細胞が認識され及びベクターを含まないそれらのレシピエント細胞から選択されることの容易さ;特定の宿主中で望ましいベクターのコピー数;並びに、異なる種の宿主細胞間でベクターを"シャトル"することが望ましいかどうか。
【0072】
これらのベクターは、その細胞内で構成的に活性があるか又は誘導性であるように選択され、転写開始/終結調節配列の制御下で原核又は真核宿主細胞において、本発明のポリペプチドを含む単離されたタンパク質又は融合タンパク質の発現を可能にしなければならない。その後このような細胞内で豊富な細胞株は、単離され、安定した細胞株を提供する。
【0073】
真核宿主(例えば、酵母、昆虫、植物、又は哺乳類の細胞)について、宿主の性質に応じて、様々な転写調節配列及び翻訳調節配列を使用することができる。これらは、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなどのウイルス給源に由来することができ、ここでこれらの調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関連している。例として、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、初期SV40プロモーター、酵母のgal4遺伝子プロモーターなどがある。転写開始調節シグナルは、遺伝子の発現が変調され得るように、抑制又は活性化することができるものを選択することができる。導入されたDNAにより安定して形質転換された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することにより選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主に対する光栄養性、殺生物耐性、例えば抗生物質、又は銅などの重金属なども提供することができる。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA遺伝子配列に直接連結するか、又は同じ細胞に同時トランスフェクションにより導入される。
【0074】
宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞のいずれかであってよい。真核宿主は、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類細胞が好ましく、その理由は、これらはタンパク質に、正確な折畳み及びグリコシル化を含む、翻訳後修飾を提供するからである。同じく酵母細胞で、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行することができる。酵母における所望のタンパク質の生成に利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する多くの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物中でリーダー配列を認識し、及びリーダー配列を保有するペプチド(すなわち、プレ-ペプチド)を分泌する。
【0075】
本発明の前述の態様は、新規フィブリリン-様ポリペプチドの配列に関する本明細書に提供された開示を、通常の分子生物学技術の知識と組合せて実現することができる。
【0076】
多くの書籍及び概説が、ベクター及び原核又は真核宿主細胞を用い、いかにして組換えタンパク質をクローニング及び生成するかを提供しており、一部はOxford University Pressにより発行された"A Practical Approach"シリーズである("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995;"DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996;"Protein Expression", 1999;"Protein Purification Techniques", 2001)。
【0077】
更に、改訂され及びより集約された文献は、ハイ-スループット法でポリペプチドを発現するための技術の総説(Chambers SP, 2002;Coleman TAら, 1997)、治療用用途を有する組換えタンパク質の大規模生成のために工業的に使用される細胞システム及びプロセスの総説(Andersen DC及びKrummen L, 2002, Chu L及びRobinson DK, 2001)、並びにトランスジェニック植物(Giddings G, 2001)又は酵母Pichia pastoris(Lin Cereghino GPら, 2002)を基にしたもののような、所望のタンパク質の経済的生成の可能性がかなりある、関心のあるポリペプチドを発現するための選択的真核細胞発現システムの総説を提供する。組換えタンパク質産物は、精製時に様々な解析技術により迅速にモニタリングすることができ、発現されたポリペプチドの量及び品質を証明し(Baker KN ら., 2002)、更には生物学的平衡及び免疫原性に問題があるかどうかをチェックする(Schellekens H, 2002;Gendel SM, 2002)。
【0078】
総合的に合成フィブリリン-様ポリペプチドは、化学的合成技術の文献、及び多くの例において明らかにされており、これらは固相又は液相合成技術として、それらの短い長さが文献において入手することができるならば、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドに効果的に適用することができる。例えば、合成されるペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸は、有機溶媒に不溶性の支持体に結合され、並びに適当な保護基で保護されたそれらのアミノ基及び側鎖官能基を伴うアミノ酸が、カルボキシ-末端からアミノ-末端の順番で1個毎に縮合されるような反応、並びに樹脂又はペプチドのアミノ基の保護基に結合したアミノ酸が放出される反応の交互反復により、ペプチド鎖がこの様式で延長される。固相合成法は、使用される保護基の種類に応じて、tBoc法とFmoc法に大きく分類される。典型的には、使用される保護基は、アミノ基についてtBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl-Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br-Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tds(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)及びCl2-Bzl(2,6-ジクロロベンジル);グアニジノ基について、NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル);並びに、ヒドロキシル基についてtBu(t-ブチル)である。所望のペプチドの合成後、脱保護反応が施され、固相から切断される。このようなペプチド切断反応は、Boc法についてはフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸により、並びにFmoc法についてはTFAにより実行することができる。
【0079】
本発明のポリペプチドの精製は、この目的に関して公知の方法、すなわち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動などを含む従来の手法のいずれかにより行うことができる。本発明のタンパク質の精製に優先的に使用される更なる精製手法は、標的タンパク質に結合し並びにカラム内に含まれたゲルマトリックス上に生成及び固定される、モノクローナル抗体又はアフィニティー基を使用するアフィニティークロマトグラフィーである。このタンパク質は、ヘパリン又は特異的抗体によりカラムに結合する一方で、不純物は通過するであろう。洗浄後、pH又はイオン強度の変化により、このタンパク質はゲルから溶離される。あるいは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)を使用することができる。溶離は、タンパク質精製に一般に使用される水-アセトニトリル-ベースの溶媒を用いて行うことができる。
【0080】
本発明の新規ポリペプチド、及びそれらに関連して明らかにされた試薬(抗体、核酸、細胞)の開示は、細胞又は動物におけるそれらの発現レベルを増強又は低下する化合物のスクリーニング及び特徴付けも可能にする。
【0081】
"オリゴヌクレオチド"は、化学的に合成することができる一本鎖ポリデオキシヌクレオチド又は二本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかを意味する。このような合成オリゴヌクレオチドは、5'リン酸を含まず、従って他のオリゴヌクレオチドに、キナーゼの存在下でATPによりリン酸を添加することなく連結しないであろう。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていない断片に連結するであろう。
【0082】
本発明は、本発明の化合物の精製された調製物(ポリペプチド、核酸、細胞など)を含む。本明細書で使用される精製された調製物は、本発明の化合物を乾燥重量当たり少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%含有する調製物を意味する。
【0083】
本明細書は、いくつかの可能性のある用途を有する一連の新規フィブリリン-様ポリペプチド及び関連試薬を開示している。特に本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が疾患の治療又は予防において望ましい場合は、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞のような試薬、又はそれらの発現を増強する化合物が使用される。
【0084】
従って本発明は、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、活性成分として含有する、本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要である疾患の治療又は予防のための医薬組成物を開示している。これらの医薬組成物の調製プロセスは、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、医薬として許容できる担体と一緒にすることを含む。本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要である疾患を治療又は予防する方法は、治療的有効量の開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物の投与を含む。
【0085】
本明細書において開示された試薬の中で、本発明のポリペプチドの発現又は活性を低下するリガンド、アンタゴニスト又は化合物は、いくつかの用途を有し、特にこれらは、本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は診断において使用され得る。
【0086】
従って本発明は、活性成分として、そのようなポリペプチドの発現又は活性を低下するリガンド、アンタゴニスト、化合物を含有している、本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患を治療又は予防するための医薬組成物を開示している。これらの医薬組成物の調製法は、このリガンド、アンタゴニスト、又は化合物を、医薬として許容できる担体と一緒にすることを含む。本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防の方法は、治療的有効量のアンタゴニスト、リガンド又は化合物を投与することを含む。
【0087】
本発明の医薬組成物は、フィブリリン-様ポリペプチド又は関連試薬に加え、適当な医薬として許容できる担体、動物への投与に適した、生物学的に適合性のある溶剤及び添加剤(例えば、生理食塩水)を含み、最終的には活性化合物の医薬として使用することができる調製物への処理を促進する、助剤(賦形剤、安定化剤、アジュバント又は希釈剤など)を含有する。
【0088】
この医薬組成物は、投与様式の必要性に合致するいずれかの許容できる方法で製剤化することができる。例えば、バイオマテリアル、糖-高分子接合体、ヒドロゲル、ポリエチレングリコール及び他の天然の又は合成のポリマーを用い、薬物送達効率に関して活性成分を改善することができる。具体的投与様式を確証するための技術及びモデルは、文献に明らかにされている(Davis BG及びRobinson MA, 2002;Gupta Pら, 2002; Luo B及びPrestwich GD, 2001;Cleland JLら, 2001; Pillai O及びPanchagnula R, 2001)。
【0089】
これらの目的に適したポリマーは、生体適合性、すなわち生物学的システムに対して無毒のものであり、そのようなポリマーの多くは公知である。このようなポリマーは、事実上疎水性又は親水性で、生分解性、非-生分解性、又はそれらの組合せであってよい。これらのポリマーは、天然のポリマー(コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸など)に加え、合成ポリマー(ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物など)を含む。疎水性非-分解性ポリマーの例は、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリメチルメタクリレートがある。親水性非-分解性ポリマーの例は、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、及びそれらのコポリマーを含む。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)のような、エチレンオキシドの連続する反復単位を含む。
【0090】
活性成分の所望の血中レベルを確立するために許容できる投与様式を、当業者は使用及び決定することができる。例えば投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、経口、又は口腔内の経路などの様々な非経口経路であってよい。本発明の医薬組成物は、予め定められた速度でのポリペプチドの持続投与のために、デポ注射、浸透圧ポンプなどを含む、持続放出又は制御放出剤形で、好ましくは正確な投与量の単回投与のための単位剤形で、投与することもできる。
【0091】
非経口投与は、ボーラス注射又は時間をかけた段階注入であることができる。非経口投与のための調製物は、滅菌した水性又は非-水性の液剤、懸濁剤、及び乳剤を含み、これらは当該技術分野において公知の助剤又は賦形剤を含有してもよく、並びに慣習的方法に従い調製することができる。加えて、油性注射用懸濁剤として適している、活性化合物の懸濁剤を投与しても良い。適当な親油性溶媒又は溶剤は、ゴマ油のような脂肪油、ゴマ油のような合成脂肪酸エステル、又はオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステルを含む。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランのような、懸濁剤の粘度を増加する物質を含有してもよい。任意に、懸濁剤は、安定化剤を含有してもよい。医薬組成物は、注射投与に適した溶液を含み、これは賦形剤と共に、活性化合物の約0.01〜99.99%、好ましくは約20〜75%含む。
【0092】
語句"治療的有効量"は、疾患の経過及び重症度に影響を及ぼし、そのような病理の低下又は寛解につながるのに十分な活性成分の量を意味する。有効量は、投与経路及び患者の状態によって決まるであろう。
【0093】
語句"医薬として許容できる"は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、及び投与される宿主に対し毒性がない担体を含むことを意味する。例えば、非経口投与に関して、前記活性成分は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンゲル液のような溶剤中に、注射用の単位剤形で製剤することができる。担体は、デンプン、セルロース、タルク、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及びワセリン、動物性、植物性もしくは合成起源の様々な油分(ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油)から選択することもできる。
【0094】
投与される量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態及び体重、存在するならば併用治療の種類、治療頻度、望ましい作用の性質に応じて決定されることも、理解される。投与量は、当業者に理解及び決定されるように、個々の対象にあわせることができる。各治療に必要な総用量は、反復用量又は単回用量で投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対する、もしくは状態の他の症状に対する他の治療薬と組合せて投与されてもよい。通常の活性成分の一日量は、0.01〜100mg/kg体重/日で構成される。分割用量で、又は持続放出剤形で投与される通常1〜40mg/kg体重/日が、所望の結果を得るために有効である。2回目又は引き続きの投与は、その個人に投与された初回もしくは前回の用量と同じ、より少ない又はより多い投与量で行うことができる。
【0095】
治療的又は生成目的を有する方法とは別に、いくつかの他の方法が、本明細書において明らかにされたフィブリリン-様ポリペプチド及び関連試薬を使用する。
第一の例において、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドに関連した疾患の治療に有効な候補化合物をスクリーニングするための方法が提供され、該方法は:
(a)そのようなポリペプチドを発現する宿主細胞、当該ポリペプチドの増強又は減少された発現レベルを有する非-ヒトトランスジェニック動物あるいはトランスジェニック動物細胞を、候補化合物と接触する工程、及び
(b)化合物の動物又は細胞に対する作用を決定する工程を含む。
【0096】
第二の例において、候補化合物を、本発明のポリペプチドのアンタゴニスト/インヒビター又はアゴニスト/アクチベーターとして同定する方法が提供され、この方法は:
(a)ポリペプチド、化合物、及び哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜を接触する工程;及び
(b)この分子が、哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜と、ポリペプチドの相互作用、又はそのような相互作用から生じる反応を、ブロック又は増強するかどうかを測定する工程を含む。
【0097】
第三の例において、試料中の本発明のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する方法は、ポリペプチド又はコードしているRNA/DNAのいずれかを検出することができる。従って、このような方法は:
(a)タンパク質-含有試料を提供する工程;
(b)該試料を、本発明のリガンドと接触する工程;及び
(c)該ポリペプチドと結合した該リガンドの存在を決定し、これにより該試料中のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する工程を含む。
【0098】
別の方法は:
(a)核酸-含有する試料を提供する工程;
(b)該試料を、本発明の核酸と接触する工程;及び
(c)該核酸の、試料中の(into)核酸とのハイブリダイゼーションを決定し、これにより試料中の核酸の存在を決定する工程を含む。
【0099】
この意味において、配列番号:1、配列番号:5、又は配列番号:12に記載のヌクレオチド配列に由来したプライマー配列を、更にポリメラーゼ連鎖反応増幅により、試料中の本発明のポリペプチドをコードしている転写産物又は核酸の存在又は量を決定するために使用することができる。
【0100】
本発明の更なる目的は、本明細書で開示する1又は複数の試薬:本発明のフィブリリン-様ポリペプチド、アンタゴニスト、リガンド又はペプチドミメティクス、単離された核酸又はベクター、医薬組成物、発現している細胞、又は発現レベルを増加もしくは減少する化合物を含む、試料中の本発明のフィブリリン-様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するキットである。
【0101】
このようなキットは、in vitro診断法又はスクリーニング法において使用することができ、それらの実際の組成物は、試料の具体的様式(例えば、患者由来の生物学的試料組織)、及び測定される分子種に適合されなければならない。例えば、フィブリリン-様ポリペプチドの濃度を測定することが望ましい場合、キットは、ウェスタンブロットで得られるシグナルを比較するために、精製された形の抗体及び対応するタンパク質を含有してもよい。あるいは、フィブリリン-様ポリペプチドの転写産物の濃度を測定することが望ましい場合は、このキットは、対応するORF配列でデザインされた特異的核酸プローブを含むか、又はそのようなプローブを含有する核酸アレイの形であってよい。これらのキットは、タンパク質-、ペプチドミメティクス-、又は細胞-ベースのミクロアレイの形であっても良く(Templin MFら, 2002;Pellois JPら, 2002;Blagoev B及びPandey A, 2001)、本明細書で明らかにされたタンパク質、ペプチドミメティクス及び細胞を使用することにより、ハイ-スループットプロテオミクス試験を可能にする。
【0102】
本明細書は、皮膚が加齢、損傷もしくは太陽によりダメージを受けたもの、又はそれらからダメージを受けた皮膚の回復のため、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)のような、疾患及び状態の治療又は予防において、適宜製剤された医薬組成物中の活性成分として有用である、新規フィブリリン-様ポリペプチド及び一連の関連試薬を開示している。
【0103】
本発明のポリペプチド及び関連試薬の治療的用途は、薬物発見及び前臨床開発時のフィブリリン-様ポリペプチド及び他の生物学的産物のバリデーションに関して、動物細胞、組織を使用するin vivo/in vitroアッセイ手段によるか、又は公知のin silico/コンピュータ支援の方法(Johnson DE及びWolfgang GH, 2000)により、評価(安全性、薬物動態及び有効性に関して)される。
【0104】
治療的用途
SCS0008核酸分子、それらのポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストは、本明細書に列記されたものを含む多くの疾患、障害又は状態を治療、診断、改善、又は予防に使用される。
【0105】
SCS0008ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストは、SCS008ポリペプチドの活性を調節する分子、SCS0008ポリペプチドの成熟型の少なくとも1種の活性を増加又は減少するいずれかの分子を含む。アゴニスト又はアンタゴニストは、SCS0008ポリペプチドと相互作用するタンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、又は低分子量の分子のような、コファクターであってもよく、これによりそれらの活性を調節する。
【0106】
可能性のあるポリペプチドアゴニスト又はアンタゴニストは、SCS0008ポリペプチドの可溶型又は膜-結合型のいずれかと反応する抗体を含む。SCS0008ポリペプチドの発現を調節する分子は、典型的には、発現のアンチセンスレギュレーターとして作用することができるSCS0008ポリペプチドをコードしている核酸を含む。
【0107】
Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチン(又はPOEM)は、α8β1インテグリンの新規リガンドであることを示した。SCS0008は、ネフロネクチンのヒトオルソログであるように見え、及びSCS0008ポリペプチドはRGDインテグリン結合トリペプチドを含む(実施例4)ので、SCS0008は、恐らくα8β1インテグリンのリガンドとしても作用するであろう。α8β1インテグリンは、特定の疾患の発症に関係することは分かっているので、リガンドとしてのSCS0008は、それらの障害の開始に寄与する因子として作用するであろう。加えて、Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチンは、以下に言及した臓器及び組織を含む、多くの組織において発現されることを示している。従って本発明のSCS0008ポリペプチドは、単に以下に言及する組織及び臓器において有用なだけではなく、Morimuraら及びBrandenbergerらが言及したもの全てにおいて有用である。
【0108】
Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチンは、腎臓の形態発生及び機能に関連することを示している。Miner Jeffreyは、ネフロネクチンは、濾過関門の確立及び維持において役割を果たし得ることを示唆している(Jeffrey H. Miner, The Journal of Cell Biology, Volume 154, Number 2, July 23,2001, pp. 257-259)。更にMiner Jeffreyは、ネフロネクチン及びラミニン-10は、ヴォルフ管及び尿管芽基底膜中に同時局在するように見え、平行又は共通のいずれかの経路により、これらは効率的尿管芽の外側伸展及び枝分かれを促進するために互いに相互作用し及び/又は協力することが可能であることを指摘している。加えて、Brandenbergerらは、分泌されたグリア細胞-由来の神経栄養因子(GDNF)は、尿管芽の内側伸展を制御することが示されたこと、並びにα8β1は、このシグナル伝達経路に恐らく関与していることを指摘している。GDNF-リガンドGFRα1(同じくGFRα2、GFRα3、GFRα4)は、RETチロシンキナーゼを活性化することも知られている。Schuchardtらは、RETは、尿管芽の成長及び分岐に必要とされることを認めた。Eya1は、ヒトの腎臓及び尿管の先天性奇形にも関連している(CAKUT;Nakanishi K, Yoshikawa N. Pediatr Int. 2003 Oct; 45 (5): 610-6.)。このようなSCS0008核酸分子、それらのポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニスト、特にSCS0008-SV2(これは腎臓由来のスプライシング変異体である、実施例3)は、腎臓の分岐欠損、嚢腫、結石、膀胱尿管灌流、腎不全、濾過障壁の欠損、水腎、腎臓及び尿管の先天性奇形(CAKUT)、例えば両側性腎欠損の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008アンタゴニスト、特にSCS0008-SV2アンタゴニスト(例えば、SCS0008に標的化された抗体)は、腎臓癌、特に腎形成異常又は形成不全の診断又は治療において有用であることができる。
【0109】
Luら(Lu Mら, J Cell Sci. 2002 Dec 1; 115 (Pt 23): 4641-8)は、α8β1インテグリンは、正常肺の肺胞間質細胞により発現され、線維症発症時にアップレギュレーションされることを示した。α8β1インテグリンの別のリガンド、潜伏(latency)-随伴ペプチド(LAP)-トランスフォーミング増殖因子-β1(TGFβ1)の結合は、細胞増殖を生じ、その結果線維症の発症に重要である。理論に因われることを欲するものではないが、SCS0008は、同様にα8β1インテグリン結合によりこの細胞増殖に関連される。加えて、Sparrow及びLambは、GDNFは気道平滑筋(ASM)により生成されるように見え、これは始原の肺の内在成分であり、平滑筋発生に関連している(Sparrow MP, Lam JP. Respir Physiol Neurobiol., 2003 Sep 16; 137(2-3): 361-72)。Levineらは、活性化された肝サテライト細胞、及び肝における筋線維芽細胞の同等物におけるα8β1インテグリンの新規発現を明らかにした(Levine Dら, Am J Pathol. 2000 Jun; 156(6): 1927-35)。Bauhauらは、1型神経線維腫症におけるGDNFの役割を示唆している(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM)参照、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query fegi? ab=OMIM, OMIM*600837)。神経線維腫症は、大頭蓋症、蝶形骨形成異常、リッシュ結節(虹彩過誤腫)、緑内障、隔離症、腎動脈狭窄、高血圧、脊柱側彎症、脊椎披裂、偽関節、長骨皮質の薄化、局所的骨過形成、膝蓋骨欠如、神経線維腫、叢状神経線維腫、カフェ-オ-レ斑、腋窩雀斑(Axillary freckling)、鼠径部雀斑、精神遅滞、30%学習障害、10%軽度精神遅滞、水管狭窄、水頭症、新生物形成で、視神経膠腫、髄膜腫、視床下部腫瘍、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、十二指腸類癌腫、ソマトスタチノーマ、副甲状腺腺腫、褐色細胞腫、CNSを含む複数の他の部位の腫瘍などを含む、多種多様な臨床的概要を示す。従って、本発明のSCS0008ポリペプチド、それらのアゴニスト又はアンタゴニストは、神経線維腫症の個々の又は組合せた症状又は臨床の転帰を低下するか又は診断もしくは治療する上で有用でもある。加えて、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト、並びに特にSCS0008-SV1(これは、肺由来のスプライシング変異体である、実施例3)は、線維症、好ましくは肺線維症、肝線維症、1型神経線維腫、Watson症候群、又は難治性の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の診断又は治療において有用であることができる。加えて、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト、特にSCS0008-SV1は、平滑筋発生において有用であることができる。
【0110】
Brandenbergerらは、α8β1を介して作用するネフロネクチンは、GDNFの増強された発現を生じるシグナル伝達経路を誘導するか、あるいは細胞外マトリックスにおけるこの因子の分泌又はその局在化を促進することにより、GDNFと相乗作用することを示唆した。GDNFは、特定の疾患の発達に関連することはわかっているので、SCS0008は、可能性のあるリガンドとして又は少なくともGDNFの発現を増強することにより、それらの障害の発生に寄与する因子として十分に作用するであろう。Matti Airaksinen及びMart Saarmaは、脳におけるGDNFファミリーの役割を検証している(Matti S. Airaksinen and Mart Saarma, Nature Reviews, Volume 3, May 2002, pp.383-394)。彼らは、GDNFは、運動ニューロン疾患又は運動ニューロン損傷(GDNFは、長期の運動ニューロン生存及び末梢神経損傷後の軸索再生を支援することができる)、知覚再生(GDNFは、疼痛の神経病理モデルにおいて強力な鎮痛作用を生じ、かつ知覚軸索の脊髄への戻り再生を引き起こすことができ;局所的GDNF発現は、シュワン細胞の病巣への移動を生じ、これは損傷後の軸索再生の髄鞘再生につながる、Blesch Aら, J Comp Neurol. 2003 Dec 15; 467(3): 403-17)、糖尿病ニューロパシー、ニューロパシー疼痛、虚血又は卒中を含む知覚障害(酸素欠乏症の前又は直後に投与されたGDNFは、虚血性脳損傷を軽減することができる)に関連し、好ましくはGDNFは、卒中の初期相、癲癇(GDNFは痙攣感受性を変更する)、パーキンソン病又は多発性硬化症のような神経変性障害(GDNFは、神経毒が誘導したドパミン作用性ニューロンの死滅を妨げ、並びに機能回復を促進することができる;好ましくはGDNFは、ヘパリンと同時投与される;同じく、Jeffrey H. Kordower, Ann Neurol 2003, 53 (suppl 3): S120-134、及びBleschらも参照)、並びに最後に耽溺時(GDNFのVTAへの注入は、慢性コカイン及びモルフィンへの生化学的適応に加え、コカインの報酬効果(rewarding effect)をブロックする)に投与されなければならないことを指摘している。Jollivetらは、GDNF-放出するミクロスフェアは、パーキンソン病の治療における有望な戦略であることを示している(Jollivet Cら, Biomaterials. 2004 Feb; 25(5): 933-42)。同様に、SCS0008-放出するミクロスフェアを使用することができる。Naganoらは、GDNFは、坐骨神経結紮(慢性狭窄性損傷)又は脊髄神経結紮に使用することができることを示唆している(Nagano Nら、Br J Pharmacol. 2003 Dec; 140(7): 1252-60)。Taiらは、GDNFは、脊髄損傷(SCI)又は脊髄挫傷の治療に使用することができることを示唆している(Tai MHら、Exp Neurol. 2003 Oct; 183(2): 508-15)。Ochiai Hらは、新生児の神経節前エルブ麻痺モデルにおけるGDNFの局所投与は、欠損の著しい改善を生じることを示している(Ochiai Hら、Neurosurgery. 2003 Oct; 53(4): 973-7)。Aszmanらは、運動ニューロンの外因性栄養支援(例えば、GNDF及び/又はBDNF)は、重度の新生児神経叢障害の全ての種類の治療において役割を有することを示している(例えば、産科腕神経叢病巣;Aszmann OCら、Plast Reconstr Surg. 2002 Sep 15; 110(4): 1066-72)。Tolbert及びClarkは、GDNFは、遺伝性プルキンエ細胞の変性及び歩行失調の開始を遅延することを指摘している(Tolbert DL, Clark BR. Exp Neurol. 2003 Sep; 183(1) : 205-19)。シュワン細胞は、神経鞘腫を発症する素因がある(Bartolami Sら, J Neurobiol. 2003 Dec; 57(3): 270-90)。従って、GDNF又はSCS0008のアンタゴニスト(抗体)を使用することにより、神経鞘腫を治療するか、又は延長線上で他の脳関連の癌を治療することができる。Perez-Garciaらは、GDNFにより誘導された[Ca2+] Iの変化は、カルモジュリンによるPI 3-キナーゼ活性化の直接の調節に関連している機構を通じ、神経生存を促進することを示し、その結果神経栄養因子により媒介された神経生存のためのシグナル伝達カスケードにおけるCa2+及びカルモジュリンの中心的役割を示唆している(Perez-Garcia MJら, J Biol Chem., 2003 Nov 20, Epub;同じく、Wang Jら, Neurosignals. 2003 Mar-Apr; 12(2): 78-88も参照)。SCS0008ポリペプチドは、3種のカルシウム-結合EGF-様ドメインを含むので、前述の機構へのSCS0008ポリペプチドの関与及びその結果の神経生存は、増強される。McBrideらは、GDNFの線条へのウイルス-媒介型遺伝子導入は、ハンチントン病の齧歯類モデルにおける神経解剖学的及び行動学的保護を提供することを示している(McBride JLら, Exp Neurol. 2003 Jun; 181(2): 213-23)。Alberchらは、神経栄養因子(例えば、GDNF)は、ハンチントン病又は多系統萎縮症のような、線条体黒質の変性障害に影響を及ぼす基底神経節回路の選択的保護を提供することができることを示唆している(Alberch Jら、Brain Res Bull., 2002 Apr ; 57(6): 817-22)。ラミニン-10及びβ1インテグリンも、神経生存に関連している(Chen Zu-Linら、Molecular Biology of the Cell, 2003 Jul. Vol. 14: 2665-2676)。Chenらは、ラミニン-10は、神経死に対し保護することを示している。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、変性障害、線条体黒質の変性障害、ハンチントン病、多系統萎縮症の診断又は治療において有用であることができる。
【0111】
従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、運動ニューロン疾患、運動ニューロン損傷、おきまりの(favorising)知覚再生、糖尿病ニューロパシー、虚血又は卒中におけるニューロパシー疼痛を含む知覚障害(好ましくはSCS0008は、卒中の初期相において投与されなければならない)、癲癇、パーキンソン病又は多発性硬化症のような神経変性障害(好ましくは、SCS0008はヘパリンと及び/又はミクロスフェア手段により同時投与される)、線条体黒質の変性障害、ハンチントン病、多系統萎縮症、坐骨神経結紮(慢性狭窄性損傷)又は脊髄神経結紮、脊髄損傷(SCI)もしくは脊髄狭窄、新生児の神経節前エルブ麻痺、産科腕神経叢病巣のような新生児神経叢障害;遺伝性プルキンエ細胞の変性及び歩行失調の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008は、単独で、又は栄養因子(例えば、ニュールツリン(neurturin)、アルテミン、パーセフィン(persephin)、神経増殖因子、脳-由来神経栄養因子、GDNF)、ヘパリン又は他の治療薬と組合せて投与される。SCS0008のアンタゴニスト(例えば抗体)を使用し、神経鞘腫又は他の脳に関連した癌を治療することができる。
【0112】
GDNFは、下位消化管の神経叢における神経節細胞の欠損を特徴とする先天性障害である、ヒルシュスプルング病(HSCR)に関連しているように見える(Garcia-Barcelo Mら、Clin Chem. 2003 Nov 18. Epub;同じく、Benailly HKら、Clim Genet. 2003 Sep; 64(3): 204-9参照;同じくOMIM*600837参照)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、ヒルシュスプルング病(HSCR)、換気症候群(オンディーヌののろい)の診断又は治療において有用であることができる。
【0113】
上皮増殖因子(EGF)受容体ファミリーからのシグナルは、ラミニンへのインテグリン-依存型接着と一緒に、癌の疾患進行及び転移に寄与すると考えられる(Zamurs Iら, Biomed Chromatogr. 2003 Mar-Apr; 17(2-3): 201-11)。Zamursらは、結腸癌細胞株は、複数のインテグリン受容体を介しラミニン-10を分泌及び接着すること、並びにEGFは、同じ基質(substrate)のこれらの細胞の散在及び移動を刺激することを示した。ラミニン-10/11も、中程度に分化した結腸癌の浸潤端に存在することが示された。Guらは、ラミニン10-11は、β1インテグリン経路の活性化により、ヒト肺癌細胞の移動を強力に推進することを報告している(Gu Jら、Exp Dermatol., 2002 Oct; 11(5): 387-97)。ラミニン及びインテグリンは、膵臓機能にも関連している。Funahashiらは、膵臓癌細胞における一部のインテグリンサブユニットの発現は、GDNFにより増強されることを示した。このGDNFによる接着能及び侵襲能の増強及び関係の増加は、GDNF受容体又はインテグリンβ1サブユニットのブロックにより阻害された(Funahashi Hら、Pancreas, 2003 Aug; 27(2): 190-6)。Okadaらも、GDNFは、in vitroにおいて膵臓癌細胞侵襲を促進することを報告している(Okada Yら, Surgery, 2003 Aug; 134(2): 293-9)。Japonらは(2002)、GDNFは、下垂体部腫瘍、より詳細には腺腫、コルチコトロピノーマ、ソマトトロピノーマ、プロラクチノーマに関連していることを示唆している(OMIM*600837参照)。RET遺伝子及び最終的にはGDNF遺伝子は、多発性内分泌腫瘍IIA型及びIIB型に加え、髄質性甲状腺癌に関連している(OMIM*164761及びOMIM*162300)。ネフロネクチン同様、Eyes absent 1 (EYA1)のホモ接合性は、尿管芽出芽の不在とそれに続く後腎誘導の欠損を生じる(OMIM*601653)。加えて、GDNF発現は、Eya1-/-後腎間葉においては検出されなかった(OMIM*601653)。従ってネフロネクチン及びEya1は相互作用するであろう。Eya1は、鰓性耳腎形成異常及び鰓性耳腎症候群に関連している。従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)に加えSCS0008-SV1及びSCS008-SV2のアンタゴニスト(これらは各々、好ましくは肺癌又は腎癌に使用される)は、膵臓癌、下垂体部腫瘍、より詳細には腺腫、コルチコトロピノーマ、ソマトトロピノーマ、プロラクチノーマ、並びに多発性内分泌腫瘍IIA型及びIIB型、髄質性甲状腺癌、肺癌、乳頭状甲状腺癌、結腸の神経節細胞欠損、結腸癌、MEN2-関連腫瘍、褐色細胞腫、筋萎縮側索硬化症、鰓耳腎形成異常及び鰓性耳腎症候群の診断又は治療に有用であることができる。
【0114】
ラミニン-10とネフロネクチンの間の可能性のある相互作用又は協力の観点から(前記参照)、ラミニン-10が関連している障害は、本発明のSCS0008ポリペプチドにより治療又は診断することができる。Spessottoらは、白血病性細胞の優先的移動運動は、ラミニンのアイソフォーム8及び10に向かうことを示した(Spessotto Pら, Matrix Biol., 2003 Jun; 22(4): 351-61)。これらのラミニンとの運動性-促進する相互作用は、β1インテグリンにより媒介される。加えて、Yu及びTaltsは、インテグリン及びα-ディストログリカンの両方が癌細胞上で発現され、その結果ラミニン-10/11への結合は、内皮及び上皮基底膜を通じた細胞移動にとって重要であり、従って転移にとって重要であることを指摘している(Yu H及びTatls JF, Biochem J., 2003.371: 289-299)。彼らは更に、Ca2+イオンが、いずれかの方法でα5LG4-5を通じたα-ディストログリカンとラミニン10/11の間の相互作用に関与しているように見えることも追加している。理論に囚われることを欲するものではないが、ネフロネクチンは、この相互作用において、そのカルシウム-結合EGFドメインを介して役割を有するであろう。Liらは、ラミニン-10は、毛包発達を回復し、その結果皮膚発達欠損の補正を可能にすることができることを示した(Li Jら, Embo J., 2003 May 15; 22(10): 2400-10)。ラミニン及びβ1インテグリンは、造血にも関連し(Gu YCら, Blood, 2003 Feb 1; 101(3): 877-85)、更には創傷修復時の血管新生にも関連している(Li Jら, Microsc Res Tech., 2003 Jan 1; 60(1): 107-14)。Kikkawaらは、Lutheran式血液型タンパク質(Lu)は、ラミンα5のIgスーパーファミリー膜貫通受容体であること、並びにLuは、鎌状細胞疾患及び癌を含む、正常及び罹患の両プロセスに関連していると考えられることを指摘している(Kikkawa Yら, J Biol Chem., 2002 Nov 22; 277(47): 44864-9)。彼らは、Luはラミニン10/11にin vivo及びin vitroにおいて特異的に結合することも示している。加えて、ラミニン-β1は、新生児弛緩性皮膚、マルファン症候群様又はマルファン症候群、及びくも指症に関連している(OMIM*150240)。
【0115】
従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)に加え、SCS0008-SV1及びSCS008-SV2アンタゴニスト(これらは各々、好ましくは肺癌又は腎癌に使用される)は、白血病、癌の転移の低下又は阻害において、診断又は治療に有用である。
【0116】
従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストは、皮膚発達欠損、造血-関連疾患、鎌状細胞疾患、新生児弛緩性皮膚、マルファン症候群様又はマルファン症候群及びくも指症、並びに創傷修復における好ましい血管新生の診断又は治療において有用であることができる。
【0117】
Yomogidaらは、ヒトGDNF cDNAのセルトリ細胞へのトランスフェクション後のマウス精巣における胚性幹細胞(GSC)の劇的増殖を示した(Yomogida Kら, Biol Reprod., 2003 Oct; 69(4): 1303-7)。従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、胚性幹細胞の増幅において有用であることができる。
【0118】
Sariola及びMengは、GDNFは、セルトリ細胞により発現されると述べ、かつGDNFは、未分化の精原細胞において細胞の運命の決定を調節することを示した。加えて、彼らは、精巣においてGDNFを過剰発現しているマウスにおいて、未分化の精原細胞は細管に蓄積し、精子は生成されず、このマウスは不妊症であることを示している。数年後に彼らは、GDNF過剰発現しているマウスは、頻繁に(89%)精巣癌を発症し、その大半は両側性(56%)であり、この癌は古典的男性精上皮腫に類似していることを認めた。従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)は、男性不妊症、精上皮腫の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、精原細胞の発生、増殖、及び分化において有用である。
【0119】
Thibaultら(Thibault Gら, Am J Physiol Cell Physio., 2001 Nov; 281(5): C1457-67)は、ラットの心線維芽細胞は、α8β1インテグリンを保有することを認めた。加えて、心線維芽細胞のアンジオテンシンII(ANGII)又はTGFβ1による刺激は、タンパク質の増加及びα8β1インテグリン受容体密度の50%の強調を生じる。先天性又は後天性の低いネフロン数は、単に腎不全のみではなく、高血圧ものリスクの増加に結びつけられている(Cullen-McEwen LAら, Hypertension, 2003 Feb; 41(2): 335-40)。Cullenらは、GDNFヘテロ接合体マウスは、上昇した動脈圧、糸球体肥大及び濾過過剰を有することを示している。Wintourらは、GDNFは、成人の高血圧発症及び心血管系疾患にかかりやすくする因子であることを指摘している(Wintour EMら, Placenta., 2003 Apr; 24 Suppl A: S65-71)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、高血圧又は心血管系疾患の診断又は治療において有用であることができる。
【0120】
Chenらは、専らその標的においてGDNFの増大したレベルは、発達上の細胞死の間に通常死亡する動眼神経の30%をレスキューし、そのレスキュー率は、全身GDNF適用によるものに類似していることを示している(Chen Jら, Mol Cell Neurosci., 2003 Sep; 24(1) : 41-56)。Wordingerらは、オートクリン及び/又はパラクリンGDNFシグナル伝達の可能性は、緑内障病理に関連した組織である篩板内に存在することを述べている(Wordinger RJら, Mol Vis., 2003 Jun 16; 9: 249-56)。加えて、RothermelとLayerは、GDNFは、少なくともin vitroにおいて、杆状体(rod)受容体に影響を及ぼすことを示唆している(Rothermel A, Layer PG., Invest Ophtalmol Vis Sci., 2003 May; 44(5): 2221-8)。発達段階に応じて、GDNFは、それらの増殖、分化及び生存を調節する。Karlssonらは、GDNF標識は、トリ胚の4-5日目の網膜において主に認められるが、弱い標識は、後期の(later)細胞で散在した網膜細胞においても認められることを示している(Karlsson Mら, Mech Dev., 2002 Jun; 114(1-2) : 161-5)。彼らは、c-ret標識は、神経節細胞、無軸索細胞及び水平細胞上に;GRFα1は無軸索細胞及び水平細胞上に;並びに、GFRα2は神経節細胞、無軸索細胞及び光受容器上に認められることも示している。Ljubimovらは、基底膜(BM)成分、特にフィブロネクチン及びラミニン-10は、白内障手術後(PCS)の角膜において、大きく変動する(40-60%)ことを示した。加えて彼らは、テネイシン-C及びフィブリリン-1はほとんどの罹患した角膜において認められるが、PCS角膜においては認められないことを発見した(Ljubimov AVら, Cornea. 2002 Jan; 21(1): 74-80)。Eya1は、白内障にも関連している(OMIM*601653参照)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、動眼神経ニューロン、光受容器、及び特に桿状受容体(ロゼット球)、神経節細胞、無軸索細胞及び水平細胞の発達、増殖、分化及び生存において有用であるか、又は角膜浮腫疾患、フックス角膜ジストロフィー、白内障又は眼球損傷の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)は、緑内障の診断又は治療において有用であることができる。
【0121】
Gladsonらは、α8β1インテグリンは、新生仔ラット星状細胞において発現されることを確立した。彼らは、未刺激の新生仔ラット星状始原細胞は、α8β1及びα5β5インテグリンを利用し、ビトロネクチンに接着すること、及びこの接着は、1型プラスミノーゲン活性化阻害因子(PAI-1)により調節されることも明らかにしている。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、胚マトリックス出血及び梗塞の診断又は治療において有用であることができる。
【0122】
Littlewoodらは、α8β1インテグリンは毛細胞分化及び不動線毛成熟を調節すること、及びインテグリン遺伝子の変異は、内耳疾患につながり得ることを示唆している(Littlewood Evans Aら, Nat Genet., 2000 Apr; 24(4): 424-8)。更に、GDNFは、生後の内耳における役割(蝸牛において認められたGDNF発現)に加え、発達時のその役割を果たすことが示唆されている(Stankovic KM, Corfas G. Hear Res., 2003 Nov; 185(1-2): 97-108)。Kawamotoらは、GDNF及びTGF-β1のアデノウイルス-媒介(demiated)した過剰発現は、耳毒性外傷から蝸牛有毛細胞及び聴覚を保護することを示唆している(Kawamoto Kら, Mol Ther., 2003 Apr; 7(4): 484-92)。彼らは、内耳のGDNF過剰発現は、耳毒性により誘導された変性から有毛細胞を保護することも指摘している。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、単独で、又はTGF-β1と組合せて、内耳疾患、内耳障害(例えば、耳毒性外傷)、鼓室階線維症、又は内耳有毛細胞(蝸牛有毛細胞)の発生、分化及び生存を診断又は治療する上で有用であることができる。
【0123】
Moursiらは、細胞外マトリックスとの直接の骨芽細胞相互作用は、α5ss1、α3ss1、α8ss1を含むインテグリン受容体の選択された群により媒介されることを示した。更にMorimuraらは、骨芽細胞の細胞分化の初期段階におけるPOEMの役割、並びにPOEMは、α8β1インテグリンを介したシグナル伝達により、及び細胞-細胞相互作用の媒介により、骨芽細胞の機能において重要な役割を果たすことを示唆している。POEMは、成長、骨代謝、並びにカルシウム及びリン酸のホメオスタシスに密に関連している内分泌器官(副甲状腺、甲状腺、下垂体及び松果体)において発現される。彼らは、このデータは、POEMとカルシウム代謝の間の関係を示唆していることも付け加えた。加えてSCS0008は、3種のEGF-カルシウム結合モチーフを含んでいる。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、成長障害、骨代謝、並びにカルシウム及びリン酸のホメオスタシスに加え、骨芽細胞細胞分化の診断又は治療において有用であることができる。
【0124】
SCS0008タンパク質において、いくつかのドメインが同定されており、これらはSCS0008に関連した疾患の指標である。SMART(Simple Modular Architecture Research Tool、これは遺伝的モバイルドメインの同定及びアノテーション、並びにドメイン構造の解析を可能にする、http://smart.embl-heidelberg.de/)及びドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているそのOMIM(Online Mendelian Inheritance in Man、これはヒト遺伝子及び遺伝的障害を類別しているデータベースである、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/ query.fcgi?db=OMIM)を用い、SCS0008に認められたドメインに関連したヒト疾患を検索することができる(実施例4参照)。EGF-様ドメイン又はカルシウム-結合EGFドメインに関連したOMIMヒト疾患の検索が行われた。これらの疾患の一部は既に先に言及されており、本発明のSCS0008ポリペプチドがこれらの疾患の診断又は治療において有用である可能性を増強している。
【0125】
従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト(抗体としてのSCS0008アンタゴニストは、下記の全ての癌の種類において有用である)は、重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高い骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、Beals症候群、冠動脈心臓疾患、非小細胞肺癌、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、慢性耳炎、良性前立腺肥大、進行した脳腫瘍、膀胱癌、十二指腸潰瘍、転移性乳癌、前立腺癌、乾癬、ヒト子宮平滑筋腫、胃潰瘍、円板状エリスマトーデス、扁平苔癬、結腸直腸癌、急性心筋梗塞、進行性悪性神経膠腫、子宮内膜癌、悪性神経膠腫、頭部及び頚部又は肺の癌、乳癌、喉頭及び下咽頭の癌腫、卵巣腫瘍、疱疹性角膜潰瘍、及び静脈性潰瘍の診断又は治療において有用であることができる。
【0126】
本発明はここで、いかなる意味においても本発明を制限するものではない下記実施例により、具体的態様について説明される。説明の内容は、前記内容を鑑み当業者は実践することができ、結果的に特許請求の範囲の意味及び目的を逸脱しない、あらゆる変更及び交換を含む。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【実施例】
【0129】
実施例1:
ASTRALデータベース(Brenner SEら, "The ASTRAL compendium for protein structure and sequence analysis", Nucleic Acids Res., 2000 Jan 1; 28(1): 254-6)から得たEGFタンパク質ドメイン配列を用い、ヒトゲノム配列(Celeraデータベース)から予測された遺伝子において相同タンパク質配列を検索した。このタンパク質配列は、下記の3種のプログラムのひとつにより作成された、遺伝子予測及びそれらの翻訳から得た:Genescan (Burge C, Karlin S., "Prediction of complete gene structures in human genomic DNA”, J Mol Biol., 1997 Apr 25; 268(1): 78-94)、Grail(Xu Y, Uberbacher EC., “Automated gene identification in large-scale genomic sequences", J Comput Biol., 1997 Fall; 4(3): 325-38)及びFgenesh(Celera社独自のソフトウェア)。
【0130】
EGFドメインの配列プロファイルは、相同配列を並置し及び配列プロファイルを作成するアルゴリズムである、PIMAII(Profile Induced Multiple Alignment;ボストン大学ソフトウェア、verII, Das S及びSmith TF, 2000)を用いて作成した。相同性は、クエリープロファイルとヒット配列の間のグローバル-ローカルアラインメントを作成するPIMAIIを用いて検出した。この場合、このアルゴリズムは、クエリーとしてのEGF機能ドメインのプロファイルと共に使用した。PIMAIIは、クエリープロファイルを、タンパク質配列に翻訳された遺伝子予測のデータベースと比較し、その結果そのドメインを含むDNA配列との合致を同定することができる。更にこの配列の公知のEFG含有タンパク質とのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;NCBI ver2)による比較は、一番近いホモログを同定した(Gish W, States DJ., "Identification of protein coding regions by database similarity search", Nat Genet., 1993 Mar; 3(3): 266-72;Pearson WR, Miller W., "Dynamic programming algorithms for biological sequence comparison", Methods Enzymol., 1992; 210: 575-601;Altschul SFら,"Basic local alignment search tool", J Mol Biol., 1990 Oct 5; 215(3): 403-10)。検出に使用したPIMAIIパラメータは、PIMA先行(prior)アミノ酸確率行列及びZ-カットオフスコア10であった。使用したBLASTパラメータは以下であった:比較行列=BLOSUM62;ワードレングス=3;カットオフE値=10;ギャップオープニング及びイクステンション=デフォルト;フィルターなし。
【0131】
一旦機能ドメインがこの配列において同定されたならば、これらの遺伝子は、一番近いホモログの配列を用いgenewiseアルゴリズムで再度予測した(Birney Eら,"PairWise and Search Wise: finding the optimal alignment in a simultaneous comparison of a protein profile against all DNA translation frames", Nucleic Acids Res., 1996 Jul 15; 24(14): 2730-9)。相同EGFドメインのプロファイルは、PERL(Practical Extraction and Report Language)及びPIMAIIに記載されたPSI-BLAST(Altshulら 1997)スクリプトを用い自動的に作成した。
【0132】
EGFドメインプロファイルを基に作成された当初のクエリーとの464のマッチの中で全部で55種の予測された遺伝子は、新規である可能性があると判断されたので選択した。
【0133】
これらの新規性のあるタンパク質配列は最終的には、BLASTを用いるタンパク質データベース(SwissProt/Trembl, Human IPI and Derwent GENESEQ)の検索により評価し、及び特定のアノテーションは、アミノ酸配列相同性を基に寄与することができる。
【0134】
実施例2:
実施例1に説明された方法により単離されたひとつの配列は、本明細書においてSCS0008ポリペプチド配列と称されるものである。
【0135】
この配列は、ヒトフィブリリン2(更には他のEGFドメイン含有タンパク質)と中央領域において約50%の相同性で存在するにもかかわらず、これはむしろ、ネフロネクチン又はPOEMと称されるふたつの別の群により最近クローニングされた異なる細胞外マトリックスタンパク質をコードしているマウス遺伝子のヒトのより短いスプライシング変異体であると見なされる(Morimuraら, J Biol Chem, 2001 Nov 9; 276(45): 42172-81;Brandenbergerら, J Cell Biol, 2001 Jul 23; 154(2): 447-58;コメント:J Cell Biol., 2001 Jul 23; 154(2): 257-9参照)。このタンパク質は、α8β1インテグリンのリガンドとして作用する接着分子としてこれまで特徴付けられ、かつ様々な臓器、特に腎臓の発達及び機能に関連している。比較的大きいヒト変異体も発見された(SCEP-39 (INCYTE W00248337);SEQID34 (CURAGEN W00110902);SEQID82 (CURAGEN WO0110902);NOV5 (CURAGEN W00257452);PR0334 (GENENTECH W00104311);PR026 (GENENTECH W00104311);及び、PR0334 (GENENTECH W09914328))を参照)が、これらのいずれも、マウス配列としては、提出された配列には対応せず、これらは特に同定された全ての関連するヒト/マウス配列において共通である中央領域及びC-末端領域を欠いている(図1参照)。第一の配列は、最後のEGFドメイン及びプロリン-リッチ領域の間に位置した領域に対応している。
【0136】
実施例3−SCS0008のスプライシング変異体の同定及びクローニング
3.1 緒言
SCS0008は、フィブリリンとの相同性を伴う406個のアミノ酸のEGFドメイン-含有タンパク質をコードしている1700のcDNA予測である。SCS0008予測の完全コード配列を基にしたネストPCRプライマーを用い、各々、ヒト肺(SV1)及びヒト腎臓(SV2)由来のSCS0008の2種のスプライシング変異体を得た。SV1及び2のSCS0008とのアラインメントを図2に示した。
【0137】
SV1は、エキソン8の55個のアミノ酸伸長及び変異Q159Hを含む。SV2も、エキソン8の55個のアミノ酸伸長及び変異Q159Hを含むが、これはエキソン9を欠いている。SV2のクローニング型も、PCR誘導した変異F3Lを含み、これは後にサブクローニング時に補正される。両方のスプライシング変異体は、発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのゲートウェイクローニング法を用い、C-末端6HISタグをサブクローニングした。
【0138】
3.2 SCS0008-SV1のクローニング
3.2.1 ヒト肺cDNAの調製
第一鎖cDNAを、正常肺総RNA(Clontech)から、SuperscriptII RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従って用い、調製した。最終容量12μlとなるよう、1μlのオリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)、2μgヒト肺総RNA、1μlの10mM dNTP混合物(中性pHのdATP、dGTP、dCTP及びdTTP各10mM)及び滅菌蒸留水を、1.5mlエッペンドルフチューブ中で一緒にし、65℃で5分間加熱し、その後氷冷した。内容物を短時間遠心し収集し、4μlの5X第一鎖緩衝液、2μlの0.1M DTT、及び1μlのRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40単位/μl, Invitrogen)を添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後1μl(200単位)のSuperScriptII酵素を添加し、ピペッティングにより穏やかに混合した。この混合物は、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。このcDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNaseH(Invitrogen)1μl(2単位)を添加し、この反応混合液を、37℃で20分間インキュベーションした。最終の反応混合液21μlを、滅菌水179μlを添加することにより希釈し、総容量200μlとした。
【0139】
3.2.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
仮想cDNAの完全なコード配列を増幅するために、Primer Designerソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、長さ18〜25塩基のPCRプライマー対をデザインした。55±10℃近傍のTm及びGC含量40〜60%を有するようにPCRプライマーを最適化した。非特異的プライミングをほとんど又は全く伴わず、標的配列(SCS0008)に対して高度の選択性を有するプライマーを選択した。
【0140】
3.2.3 ヒト肺cDNA由来のSCS0008のPCR増幅
遺伝子特異的クローニングプライマー(SCS0008-CP1及びSCS0008-CP2、図3、図4及び表3)を、SCS0008予測の全コード配列にわたる1323bpのcDNA断片を増幅するようにデザインした。遺伝子特異的クローニングプライマーSCS0008-CP1及びSCS0008-CP2を、鋳型としてヒト肺cDNAと共に使用した。PCRは、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを用い、1X AmpiiTaq緩衝液、200μM dNTP、SCS0008-CP1、50pmole SCS0008-CP2、2.5ユニットのAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)及び100ngの肺cDNAを含有する最終容量50μlで行った:94℃で2分間;94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間を40サイクル;引き続き72℃で7分間を1サイクル、並びに4℃での保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い直接精製した。PCR産物を、滅菌水50μlで溶離し、次に増幅産物10μlを鋳型として用い、使用したプライマーがネストプライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestであること以外は前述の条件を用いる第二のPCR反応を行った。増幅産物は、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化し、及び予測された分子量近傍に移動する単独のPCR産物を、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い、ゲルから精製した。PCR産物は、滅菌水50μlで溶離し、直接サブクローニングした。
【0141】
3.2.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物は、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4-TOPO)に、Invitrogen Corporationから購入したTOPOクローニングキットを用い、製造業者の指定した条件を用いサブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、1μlのTOPOベクター及び1μl塩溶液と共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、2μlのTOPO反応液を添加した。この混合液を、15分間氷上でインキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることによりヒートショックした。試料を氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μlを添加した。試料を、振盪しながら(220rpm)、37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。挿入断片を含有するアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRにより同定した。
【0142】
3.2.5 コロニーPCR
コロニーを、滅菌した爪楊枝を用い、50μl滅菌水中に接種した。その後、接種物10μlのアリコートは、使用したプライマーがT7及びT3であること以外は、前述のように、総反応容量20μlでPCRにかけられた。サイクリング条件は以下のようであった:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。その後試料を4℃で維持し(保持サイクル)、その後更に分析した。
【0143】
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分析した。予想されたPCR産物サイズ(マルチクローニング部位又はMCSのために+105bp)を生じたコロニーを、振盪しながら(220rpm)で、アンピシリン(100μg/ml)を含有する5ml L-ブロス(LB)中で一晩37℃で増殖した。
【0144】
3.2.6 プラスミドDNA調製物及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAを、培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ#1460)を製造業者の指示に従い使用し調製した。プラスミドDNAを、滅菌水100μlで溶離した。このDNA濃度を、Eppendorf BO分光計により測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)は、T7プライマー及びSP6プライマーにより、Big DyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造業者の指示に従い使用し、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は、表3に示した。配列決定反応を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0145】
クローニングしたcDNA挿入断片の配列分析は、アミノ酸置換Q159Hにつながる、ヌクレオチド681での単独の点変異を除き、エキソン1-8にわたる予測されたSCS0008配列とのマッチを明らかにした。同じく、エキソン8の末端での165bp挿入断片が存在し、これは配列決定された全てのクローンにおいて検出された55アミノ酸のインフレーム挿入につながった。クローニングしたcDNA断片の配列を、図4に示した。
【0146】
3.3 SCS00008-SV1のための哺乳類細胞発現ベクターの構築
次にDNA配列決定により同定されたSCS0008-SV1のコード配列(ORF)を含むpCR4-TOPO クローン(pCR4-TOPO-SCS0008SV1、プラスミドID, 14630)(図5)を用い、ゲートウェイ(商標)クローニング法(Invitrogen)を使用し、この挿入断片を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図6)及びpDEST12.2(図8)へサブクローニングした。
【0147】
3.3.1 インフレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性SCS0008-SV1 ORFの作成
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5'末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3'末端に隣接した、SCS0008-SV1のORFを作成する2工程PCR反応に関連している(ゲートウェイ互換性cDNA)。第一のPCR反応(最終容量50μl)は以下を含有している:pCR4-TOPO-SCS0008-SV1(プラスミドID 14630)1μl(40ng)、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0008-SV1-EX1及びSCS0008-SV1-EX2)を各0.5μl、1OX Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)を2.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0148】
第二のPCR反応(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は以下であった:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクル。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0149】
3.3.2 ゲートウェイ互換性SCS0008-SV1 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、下記のような、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図7)へのサブクローニングに関連している:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0150】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ#. 4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定を行った。これらのプライマー配列は表3に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#. LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミド ID 14877、図9)のプラスミド溶離液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図4及び5)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0151】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。プライマー配列は表3に示す。
【0152】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミドID 14883、図10、及びpDEST12.2-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミドID 14887、図11)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0153】
【表3】
【0154】
3.4 SCS0008-SV2のクローニング
3.4.1 ヒト腎臓cDNAの調製
第一鎖cDNAを、正常腎臓総RNA(Clontech)から、Superscript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用し調製した。オリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)1μl、ヒト肺総RNA 2μg、10mM dNTP混合物(各dATP、dGTP、dCTP及びdTTPが10mM、中性pH)1μl、及び滅菌蒸留水を最終容量12μlとなるよう、1.5mlエッペンドルフチューブ中で一緒にし、65℃で5分間加熱し、その後氷上で冷却した。これらの内容物を、短い遠心で収集し、5X第一鎖緩衝液4μl、0.1M DTT 2μl、及びRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40ユニット/μl, Invitrogen)1μlを添加した。このチューブの内容物を穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後1μl(200ユニット)のSuperScript II酵素を添加し、ピペッティングで穏やかに混合した。この混合物を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。このcDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen)1μl(2ユニット)を添加し、この反応混合物を、37℃で20分間インキュベーションした。最終の21μl反応混合液を、滅菌水179μlを添加することにより希釈し、総容量200μlとした。
【0155】
3.4.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
長さ18〜25塩基のPCRプライマー対を、Primer Designerソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、仮想cDNAの完全なコード配列の増幅のためにデザインした。PCRプライマーは、55±10℃近傍のTm及びGC含量40〜60%を有するようにPCRプライマーを最適化した。非特異的プライミングをほとんど又は全く伴わず、標的配列(SCS0008)に対して高度の選択性を有するプライマーを選択した。
【0156】
3.4.3 ヒト腎臓cDNA由来のSCS0008のPCR増幅
遺伝子特異的クローニングプライマー(SCS0008-CP1及びSCS0008-CP2、図12、図13及び表4)を、SCS0008予測の全コード配列にわたる1323bpのcDNA断片を増幅するようにデザインした。遺伝子特異的クローニングプライマーSCS0008-CP1及びSCS0008-CP2を、鋳型としてヒト腎臓cDNAと共に使用した。PCRは、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを用い、1X AmpliTaq緩衝液、200μM dNTP、SCS0008-CP1、50pmole SCS0008-CP2、2.5ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)及び100ngの肺cDNAを含有する最終容量50μlで行った:94℃で2分間;94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間を40サイクル;引き続き72℃で7分間を1サイクル、並びに4℃での保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い直接精製した。PCR産物を、滅菌水50μlで溶離し、次に増幅産物10μlを鋳型として用い、使用したプライマーがネストプライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestであること以外は前述の条件を用いる第二のPCR反応を行った。増幅産物は、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化し、及び予測された分子量近傍に移動する単独のPCR産物を、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い、ゲルから精製した。PCR産物は、滅菌水50μlで溶離し、直接サブクローニングした。
【0157】
3.4.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物は、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4-TOPO)に、Invitrogen Corporationから購入したTOPOクローニングキットを用い、製造業者の指定した条件を用いサブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、1μlのTOPOベクター及び1μl塩溶液と共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、2μlのTOPO反応液を添加した。この混合液を、15分間氷上でインキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることによりヒートショックした。試料を氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μlを添加した。試料を、振盪しながら(220rpm)、37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。挿入断片を含有するアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRにより同定した。
【0158】
3.4.5 コロニーPCR
コロニーを、滅菌した爪楊枝を用い、50μl滅菌水中に接種した。その後、接種物10μlのアリコートは、使用したプライマーがT7及びT3であること以外は、前述のように、総反応容量20μlでPCRにかけた。サイクリング条件は以下のようであった:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。その後試料を4℃で維持し(保持サイクル)、その後更に分析した。
【0159】
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分析した。予想されたPCR産物サイズ(マルチクローニング部位又はMCSのために+105bp)を生じたコロニーを、振盪しながら(220rpm)で、アンピシリン(100μg/ml)を含有する5ml L-ブロス(LB)中で一晩37℃で増殖した。
【0160】
3.4.6 プラスミドDNA調製物及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAを、培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ#1460)を製造業者の指示に従い使用し調製した。プラスミドDNAを、滅菌水100μlで溶離した。このDNA濃度を、Eppendorf BO分光計により測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)は、T7プライマー及びSP6プライマーにより、Big DyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造業者の指示に従い使用し、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は、表4に示した。配列決定反応を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0161】
クローニングしたcDNA挿入断片の配列分析は、アミノ酸置換F3Lにつながるヌクレオチド213(TからG)及びアミノ酸置換Q159Hにつながる681(GからC)での単独の点変異を除き、エキソン1-8にわたる予測されたSCS0008配列とのマッチを明らかにした。同じく、エキソン8の末端に165bp挿入断片が存在し、これは配列決定された全てのクローンにおいて検出された55アミノ酸のインフレーム挿入につながった。配列決定した9個のクローン中3個において、87bp欠失(エキソン9に相当)も検出した。これらの3個のクローンは恐らく、エキソン9を欠いているSCS0008のスプライシング変異体(SCS0008-SV2)を表しているであろう。クローニングしたSCS0008-SV2 cDNA断片の配列を、図13に示した。
【0162】
3.5 SCS00008-SV2のための哺乳類細胞発現ベクターの構築
次にDNA配列決定により同定されたSCS0008-SV2のコード配列(ORF)を含むpCR4-TOPO クローン(pCR4-TOPO-SCS0008SV2、プラスミドID, 14631)(図14)を用い、ゲートウェイ(商標)クローニング法(Invitrogen)を使用し、この挿入断片を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図15)及びpDEST12.2(図16)へサブクローニングした。
【0163】
3.5.1 インフレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性SCS0008-SV2 ORFの作成
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5'末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3'末端に隣接した、SCS0008-SV2のORFを作成する2工程PCR反応に関連している(ゲートウェイ互換性cDNA)。第一のPCR反応(最終容量50μl)は以下を含有している:pCR4-TOPO-SCS0008-SV2(プラスミドID 14631)1μl(40ng)、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0008-SV2-EX1及びSCS0008-SV2-EX2)を各0.5μl、1OX Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)を2.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0164】
第二のPCR反応(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は以下であった:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクル。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0165】
3.5.2 ゲートウェイ互換性SCS0008-SV2 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、下記のような、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図17)へのサブクローニングに関連している:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0166】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ#. 4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定を行った。これらのプライマー配列は表4に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#. LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミド ID 14878、図18)のプラスミド溶離液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図4及び5)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、LR反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0167】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。プライマー配列は表4に示す。
【0168】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミドID 14884、図19、及びpDEST12.2-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミドID 14888、図20)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0169】
【表4】
【0170】
実施例4:SCS0008ドメインの同定及び説明
4.1 同定
SMART(http://smart.embl-heidelberg.de/)と称されるバイオインフォマティクスツールを用い、SCS0008並びにスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2の推定ドメインを同定した。結果は図21に示し、これはマウスのオルソログネフロネクチン、他の公知のヒトSCS0008のスプライシング変異体、並びに類似ドメイン組織を示すひとつのタンパク質、すなわちEGFL6も示している。加えて、Prositeも、これらの配列について行った(http ://us.expasv.org/prositel)。
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【0174】
部分的ScanPrositeの結果:
・SCS0008:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。327-329 RGD
・SCS0008-SV1:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。380-382 RGD
・SCS0008-SV2:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。380-382 RGD
【0175】
4.2 ドメインの説明
・EGF 上皮増殖因子-様ドメイン。Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約30〜40個のアミノ酸残基長の配列は、非常に多数の他のタンパク質、ほとんどの動物タンパク質において、より多く又はより少なく保存された形で存在する、MEDLINE:、MEDLINE:88196363、MEDLINE:84117505、MEDLINE:91145344、MEDLINE:85063790、MEDLINE:で示される。現在、EGF-様パターンの1又は複数のコピーを含むことがわかっているタンパク質のリストは、大きく変動する。無関係のタンパク質であるように見えるEGFドメインの機能的意義は、未だ明らかではない。しかし共通の特徴は、これらの反復単位は、膜-結合タンパク質又は分泌されることがわかっているタンパク質の細胞外ドメインにおいて認められることである(例外:プロスタグランジンG/Hシンターゼ)。EGFドメインは、ジスルフィド結合に関連することが示されている(EGFにおいて)6個のシステイン残基を含む。この主要構造は、2本鎖β-シート、それに続くループと、C-末端の短い2本鎖シートである。保存されたシステイン間のサブドメインは、長さが変動する。
【0176】
・GF CA. カルシウム-結合EGF-様ドメイン. Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約40個のアミノ酸残基長の配列は、ほとんどの動物の多数の膜結合タンパク質及び細胞外タンパク質において存在するように見える(IPR000561参照)。これらのタンパク質の多くは、それらの生物学的機能についてカルシウムを必要とし、及びカルシウム-結合部位は、一部のEGF-様ドメインのN-末端に位置することがわかっている。カルシウム-結合は、多くのタンパク質-タンパク質相互作用にとって重要である。ヒトの第IX凝固因子について、カルシウム-リガンドは2個の五角錐を形成することが示されている。第1、3及び4番目の保存された負電荷又は極性の残基は、側鎖リガンドである。後者は、ヒドロキシル化される可能性がある(IPR000152参照)。保存された芳香族残基に加え、第二の保存された負の残基は、カルシウム-結合部位の安定化に関連していると考えられる。非-カルシウム結合EGF-様ドメインにおけるように、6個の保存されたシステインが存在し、カルシウム-結合は厳密に局所的な構造変化のみを誘導するので、両方の型の構造は非常に類似している。
【化1】
'n':負電荷又は極性の残基 [DEQN]
'b':可能性のあるβ-ヒドロキシル化された残基 [DN]
'a':芳香族アミノ酸
'C':ジスルフィド結合に関連した、システイン
'x':いずれかのアミノ酸。
【0177】
・MAM. メプリン、A5、受容体タンパク質チロシンリン酸化酵素μ(及びその他)のドメイン. SMARTアノテーション及びInterproアノテーション:
恐らく接着機能を有する。メプリンMAMドメインの変異は、メプリンオリゴマーにおいて非共有結合に影響を及ぼすであろう。受容体チロシンリン酸化酵素μ-様分子において、MAMドメインは、同種親和性の細胞-細胞相互作用に重要である。170個のアミノ酸ドメイン、いわゆるMAMドメインは、機能的に多様なタンパク質の細胞外領域において認められる。これらのタンパク質は、モジュラー、シグナルペプチドを含む受容体-様構造、N-末端細胞外ドメイン、1個の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有する。このようなタンパク質は、メプリン(細胞表面糖タンパク質);A5抗原(発達上-調節された細胞表面タンパク質);及び、受容体-様チロシンタンパク質リン酸化酵素を含む。MAMドメインは、接着機能を有すると考えられる。これは、恐らくジスルフィド橋を形成する4個の保存されたシステイン残基を含む。
【0178】
・PS00016;RGD
フィブロネクチンにおいて認められる配列Arg-Gly-Aspは、その細胞表面受容体、インテグリンとの相互作用に重要である。'RGD'トリペプチドと称されるものも、多くの他のタンパク質配列において認められており、これは細胞接着において役割を果たすことが示されている。これらのタンパク質は以下である:コラーゲンの一部の形、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、フォンビルブラント因子(VWF)、ヘビのディスインテグリン、及び粘菌ディスコイジン。'RGD'トリペプチドは、他のタンパク質においても認められ、そこでは同じ目的のために役立つことがあるが、常にではない。
【0179】
4.2 結論
結論は、SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、他のアラインした配列と比べて、全てMAMドメインを欠いていることを特徴とする、特定のドメイン組織を示すことを示している(図21参照)。前述のように、MAMドメインは、接着機能を有する。加えて、Morimuraらは、MAMドメインを伴わない変異体POEM-Fc分子は、細胞表面から引き離され、並びにCOS-7細胞において発現される場合、細胞抽出物よりもむしろ培養培地中において主に引き離されることを示した。彼らは、MAMドメインは細胞表面局在化において重大な役割を果たすことを示唆することにより、結論付けた。興味深いことに、彼らは、メプリン、A5タンパク質、ニューロピリン-1、ニューロピリン-2、及び受容体タンパク質-チロシンリン酸化酵素を含むMAMドメインファミリーは、同種-又は異種親和性MAMドメイン相互作用を介し、細胞接着活性を媒介することを指摘し、これはMAMドメインはタンパク質-タンパク質相互作用を介した細胞表面結合に関連していること、並びにこれらの分子は、POEMの候補受容体分子として有用であることという仮説を裏付けている。従ってSCS0008並びにスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、同種-又は異種親和性MAMドメイン相互作用を形成することができない。その結果、本発明のタンパク質は、恐らく細胞表面に結合することができず、独自の特性を示すであろう。別の可能性は、本発明の配列は、ネフロネクチンに結合するもの以外の別のMAM受容体分子に結合することができる、異なるMAMドメインを含むことである。
【0180】
加えてMorimuraらは、POEMにおいてRGDインテグリン結合モチーフを同定し、かつ彼らは、Brandenbergerら同様、POEMは、α8β1インテグリンの新規特異的リガンド分子であることを示した。RGDインテグリン結合モチーフは、SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2に存在し(4.2参照)、このことはα8β1インテグリンは、これらのタンパク質の特異的リガンドであることも示唆している。しかし、Brandenbergerらは、α8β1インテグリンはPOEMのアミノ酸382-561に含まれるように見えることを示した。従って、エキソン9を欠いているSCS0008-SV2は、α8β1インテグリンに結合しないであろう。
【0181】
実施例5:同定されたドメインに関連した疾患の同定
SMART及びドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているそのOMIMを用い、SCS0008又はSCS0008-SVS1又はSCS0008-SV2において認められたこれらのドメインに関連したヒト疾患を、検索することができる(表8及び9)。相補的検索は、アノテーションしたドメインに関しOMIMにより行った。
【0182】
[SMARTアノテーション]
ドメインに関連することが認められた疾患
1)SwissProt配列及びEGF-様ドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているOMIM
【0183】
【表8】
【0184】
他のOMIMヒト疾患の検索は、EGF-様ドメインに関連することがある。
【0185】
重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、Beals症候群、冠動脈心臓疾患、非小細胞肺癌、潰瘍性大腸炎又は直腸炎、子宮内膜症、慢性耳炎、良性前立腺肥大、進行した脳腫瘍、膀胱癌、十二指腸潰瘍、転移性乳癌、前立腺癌、乾癬、ヒト子宮平滑筋腫、胃潰瘍、円板状エリスマトーデス、扁平苔癬、結腸直腸癌、急性心筋梗塞、進行性悪性神経膠腫、子宮内膜癌、悪性神経膠腫、頭部及び頚部又は肺の癌、乳癌、喉頭及び下咽頭の癌腫、卵巣腫瘍、疱疹性角膜潰瘍、及び静脈性潰瘍。
【0186】
2)SwissProt配列及びEGF CAドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているOMIM
【0187】
【表9】
【0188】
他のOMIMヒト疾患の検索は、EGF-様ドメインに関連することがある。
【0189】
重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症及び冠動脈心臓疾患。
【0190】
実施例6:タンパク質機能の生物学的関連を調べるのに適した神経学的アッセイ
本出願人により、多くの神経学的アッセイが開発されており、タンパク質機能の生物学的関連研究において使用される。本出願人により開発された神経学的アッセイの例は、4種のアッセイを含む。これらを以下に説明する。
【0191】
A.稀突起膠細胞-ベースのアッセイ
稀突起膠細胞は、CNSにおけるミエリン形成に寄与している。多発性硬化症において、これらは、攻撃される最初の細胞であり、それらの喪失は重大な行動障害につながる。炎症の抑制に加え、MSにおいて生じる病巣の不完全な髄鞘再生の増強が、MSの治療戦略として提唱されている。ニューロン同様、成熟稀突起膠細胞は分裂しないが、新規稀突起膠細胞は、前駆体から生じる。成人脳中にはごくわずかなこれらの前駆細胞が存在し、例え胚であっても、前駆細胞の数は、HTSには適さない。Oli-neuは、t-neu癌遺伝子により、稀突起膠細胞前駆体の不死化により得られたマウス細胞株である。これらは良く研究され、若い稀突起膠細胞の生物学を研究するための代表的細胞株として受入れられている。これらの細胞は、ふたつのアッセイ型において使用することができる。
【0192】
ひとつは、稀突起膠細胞増殖を刺激する因子を同定するためであり、他方は、それらの分化を促進する因子を見つけるためである。両方の事象は、脱髄性疾患の再生の補助及び再修復の観点で重要である。
【0193】
別の可能性のある細胞株は、ヒト細胞株M03-13である。M03-13は、rabdo-筋肉腫細胞の成人稀突起膠細胞との融合から生じた。しかしこれらの細胞は、低下した稀突起膠細胞への分化能を有し、それらの増殖率は、増殖アッセイを行うには十分ではない。それにもかかわらず、これらは、稀突起膠細胞のある特徴を発現し、並びにそれらの形態は、核移行試験に良く適合されている。従ってこの細胞株は、各々、NF-κB、Stat-1及びStat-2である、3種の転写因子の核移行を基にしたアッセイにおいて使用することができる。Jak/Stat転写経路は、IFNα、β、γ、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-6;IL-5)又はホルモン(例えば、GH、TPO、EPO)などの多くの因子により活性化される複合経路である。この反応の特異性は、活性化されたStatの組合せに依存している。例えば、IFN-βは、Stat1、2及び3の核移行を活性化するのに対し、IFN-γはStat1のみを活性化することは注目される。同様に、多くのサイトカイン及び増殖因子はNF-κB移行を誘導した。これらのアッセイにおいて、目的は、所定のタンパク質の活性化経路の像を得ることである。
【0194】
B.星状細胞-ベースのアッセイ
星状細胞の生物学は非常に複雑であるが、二つの全般的状態が認められる。静止状態と称されるひとつの状態において、星状細胞は、グルタミン酸をポンプ輸送し及びエネルギーに満ちた下層をニューロン及び稀突起膠細胞へ提供することにより、ニューロンの代謝及び興奮のレベルを調節する。活性化状態において、星状細胞は、ケモカイン及びサイトカイン、更には一酸化窒素を生成する。第一の状態は、正常で健康であると見なされるのに対し、第二の状態は、炎症、卒中又は神経変性疾患時に生じる。この活性化状態が持続する場合は、病態とみなされるはずである。
【0195】
多くの因子及び多くの経路が、星状細胞活性化を変調することが知られている。星状細胞活性化を変調する新規因子U373細胞を同定するために、星細胞腫起源のヒト細胞株を使用することができる。NF-κB、c-Junに加えStatは、星状細胞活性化において中心的役割を果たすことが分かっているシグナル伝達分子である。
【0196】
NF-κB、c-Jun並びにStat1、2及び3の核移行ベースの一連のスクリーニングを、実行することができる。これらの経路のプロトタイプなアクチベーターは、IL-1b、IFN-β又はIFN-γである。この目的は、CNS疾患の治療における治療薬として使用することができるタンパク質を同定することである。
【0197】
C.ニューロン-ベースのアッセイ
ニューロンは、非常に複雑で多様な細胞であるが、これらは全て二つの点で共通である。第一に、これらは分裂後細胞であること、第二に、これらは他の細胞を神経支配することである。これらの生存は、神経支配された標的細胞において産生されることが多い栄養因子の存在に関連している。多くの神経変性疾患において、標的神経支配の喪失は、細胞体の無栄養及びアポトーシスによる細胞死につながる。従って、標的の欠乏を補充する栄養因子の同定は、神経変性疾患の治療において重要である。
【0198】
この観点において、ラットPC12細胞のサブクローンであるNS1細胞を使用する生存アッセイを行うことができる。これらの細胞は数年来使用されており、最初に多くの神経生物学的知識がこれらの細胞について得られ、その後始原ニューロンについてニューロンの生存及び分化に関連した経路(MEK、PI3K、CREB)を含むことが確認された。対照的に、マウス神経芽腫であるN2A細胞は、古典的神経栄養因子には反応しないが、Jun-キナーゼインヒビターは、血清涸渇により誘導されたアポトーシスを妨害する。従ってこれらのふたつの細胞株に関するアッセイは、"生存を促進する"タンパク質の様々な種類を見つける助けとなるであろう。
【0199】
本発明者らが前記アッセイにおいて、増殖及び分化の両方を促進する因子を同定することは重要である。ニューロン分化を特異的に促進する因子を同定するために、神経突起伸長を基にしたNS1分化アッセイを使用することができる。神経変性疾患における軸索又は樹状突起の発芽を促進することは、二つの理由で利点であろう。これは最初に、変性ニューロンが再生し及び標的細胞との接触を再確立することを補助する。第二にこれは、パーキンソン病又はADなどの神経変性疾患の終末相を遅延する補償現象である、健常な線維からのいわゆる側枝発芽を増強する。
【0200】
D.内皮細胞-ベースのアッセイ
脳と血管の間の血液脳関門(BBB)は、皮質性脊髄液と血清の組成の間の差異によるものである。BBBは、内皮細胞と星状細胞の間の密な接触から生じる。これは脳内の白血球の進入を防止することにより、免疫寛容状態を維持し、かつ同じ細胞内シグナル伝達経路を使用するふたつの平行した内分泌系の発達を可能にする。しかし多くの疾患又は外傷において、BBBの完全性は変更され、白血球に加え血清タンパク質が脳に進入し、神経炎症を誘発する。BBBの簡単なin vitroモデルはないが、ヒト胚性臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のような、始原内皮細胞の培養物は、BBB生物学の一部の特徴を模倣すると考えられる。例えばBBB漏出は、細胞内カルシウム放出を刺激するタンパク質により誘導される。BBB完全性を変調するタンパク質を同定する観点で、トロンビンを伴う又は伴わないカルシウム動員アッセイを、HUVECについて行うことができる。
【0201】
実施例7:タンパク質機能の生物学的関連を調べるのに適した線維芽細胞アッセイ
本出願人により、多くの線維芽細胞アッセイが開発され、タンパク質機能の生物学的関連の研究に使用されている。本出願人により開発された線維芽細胞アッセイの例は、8種の型のアッセイを含む。これらを以下に説明する。
【0202】
線維芽細胞の活性化及び病的増殖は、線維症として公知の表現型につながる重要な工程である。線維症は、細胞外マトリックス、特にコラーゲンの過剰な付着を特徴としている。線維芽細胞を含むストロマ細胞は、特異的プロ-及び抗-線維症性タンパク質を発現する。ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、良く特徴付けられた抗-線維症性分子である。加えて、酸化的ダメージ及び前-炎症刺激は、筋線維芽細胞表現型へ、最終的には線維症へつながる主要な事象であることが提唱されている。NF-κBは、酸化的ストレス及び炎症反応のメディエーターである。線維芽細胞の生物学を基に、本発明者らは、4種の細胞-ベースのアッセイ、すなわち線維芽細胞増殖アッセイ、コラーゲン生成アッセイ、NF-κB活性化アッセイ及びKGF生成アッセイを開発した。
【0203】
A.ヒト線維芽細胞増殖アッセイ
線維芽細胞の活性化及び病的増殖は、線維症として知られている表現型につながる重要な工程である。このアッセイは、細胞の核酸に結合したCyQUANT GR色素により媒介された蛍光増強を基にしており、ヒト皮膚-由来の線維芽細胞の新規タンパク質及び小型分子に対する増殖反応を測定する。
【0204】
B.ヒト線維芽細胞によるI型コラーゲン生成
線維症は、細胞外マトリックス、特にコラーゲンの過剰な付着を特徴としている。I型コラーゲンの過剰生成は、全身性硬化症の主な症状発現である。TGFβは、コラーゲンのin vitro及びin vivoにおける生成をアップレギュレーションすることがわかっている。本発明者らは、新規プロ-又は抗-線維症性分子の、ヒト皮膚-由来の線維芽細胞による基本的又はTGFβ-刺激したレベルのI型コラーゲン生成を変調する能力を試験するために、細胞-ベースのアッセイを開発した。
【0205】
C. ヒト線維芽細胞によるケラチノサイト増殖因子(KGF)生成
KGFは、正常及び病的な成長及び発達時の、多くの臓器(肺、膵臓、腎臓、前立腺、乳腺、子宮)におけるストロマの上皮に対する相互作用の重要なメディエーターである。KGFは特に、ストロマ細胞により特異的に生成され、及びその受容体は特に上皮細胞により発現される。KGFは、線維症の病態生理学的反応過程における重要なプレーヤーであり、従ってこれらの反応のマーカーとして使用することができることが提唱されている。KGF ELISAアッセイが開発されており、これはヒト肺-由来の線維芽細胞を使用し、KGF生成は、IL-1β及びTNFαにより有意にアップレギュレーションされ、並びにTGFβによりダウンレギュレーションされる。これらのサイトカインは、KGF生成を誘導することが可能である新規タンパク質のスクリーニングにおいて参照分子として使用されるであろう。
【0206】
D. 線維芽細胞におけるNF-κB転写活性化
酸化的ダメージ及び前-炎症刺激は、筋線維芽細胞表現型へ、最終的には線維症へつながる主要な事象であることが提唱されている。NF-κBは、酸化的ストレス及び炎症反応のメディエーターである。Swiss 3T3線維芽細胞は、安定して組込まれたNF-κB-SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)構築体により生成された。NF-κB-SEAPは、NF-κB経路の活性化の直接測定を可能にするκエンハンサーへの転写因子の結合を測定するためにデザインされた。SEAP酵素は、培養培地へ分泌され、そのため試料は、細胞を収集することなく、転写活性のためにアッセイの様々な時点で収集することができる。Swiss 3T3-NF-κB-SEAP細胞株は、新規機能ゲノムタンパク質を試験するための、細胞-ベースのアッセイとして使用することができ、小型分子、特に予測された前-/抗-炎症活性を伴うものの試験について非常に将来性がある。
【0207】
E.線維芽細胞における結合組織増殖因子(CTGF)プロモーター活性化/抑制
38-kDシステイン-リッチタンパク質であるCTGFは、線維芽細胞による細胞外マトリックスエレメントの生成を刺激する。CTGFの過剰発現が、肺、皮膚、肝臓、腎臓及び血管を含む多くの線維症性ヒト組織において報告されている。In vitroにおいて、TGFβは、ヒト肺線維芽細胞においてCTGF遺伝子転写を活性化する。CTGFプロモーター-レポーターが、レポーターとして分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)を伴い構築され、並びにSwiss 3T3線維芽細胞が、安定して組込まれたCTGF-SEAP構築体により生成された。これらの線維芽細胞を用い、CTGFプロモーターは、SARP-1、OPG及びFSHによりダウンレギュレーションされ、TGFβによりアップレギュレーションされることが示された。
【0208】
F. KL-6生成
KL-6は、肺腺癌-関連したタンパク質として当初発見され、後にMUC-1と称されるが、これは現在クラスター9抗原と分類されている高分子量糖タンパク質である。KL-6は、特発性肺線維症(IPF)及び他の肺の間質性疾患を伴う患者の血清及びBALFにおいて上昇する。IPFに罹患した患者の肺組織において、KL-6抗体で標識された大半の細胞は、II型肺胞上皮細胞を再生している。ふたつのペプチドを、KL-6に対するポリクローナル抗体を生成するようにデザインした。KL-6 ELISAを用い、ヒト肺-由来のII型肺胞上皮細胞によるKL-6生成を測定することができる。
【0209】
G.可溶性組換えTRAIL(TNF-関連アポトーシス-誘導リガンド)により処理したL-929線維芽細胞のアポトーシスの中和
TRAILは、オステオプロテゲリン(OPG)についての細胞リガンドのひとつであることが示されている。このアッセイは、OPGの生物学的活性を測定するために使用することができる。
【0210】
H. ヒト線維芽細胞によるRANKL(NF-κBリガンドの受容体アクチベーター)生成
RANKLは、OPGに関する別のリガンドである。このアッセイは、OPGの生物学的活性を測定するために使用することもできる。
【0211】
実施例8:タンパク質機能の生物学的関連の調査に適したリプロダクティブヘルスアッセイ
本出願人らは、多くのリプロダクティブヘルス関連アッセイを開発し、SCS0008タンパク質機能の生物学的関連の研究において使用している。男性不妊におけるSCS0008の関係の可能性の観点において(「治療的使用」の項参照)、このようなアッセイは、特に関連があるように見える。本出願人により開発されたリプロダクティブヘルス関連アッセイは、リプロダクティブヘルスに関する18種の細胞-ベースのアッセイを含んでいる。これらを以下に説明する。
【0212】
A. 始原ヒト子宮平滑筋増殖アッセイ:
子宮平滑筋細胞の増殖は、女性における子宮類線維疾患における腫瘍が発症する前徴である。このアッセイにおいて、目的は、始原ヒト子宮平滑筋の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
【0213】
B. JEG-3移植アッセイ:
JEG-3細胞は、移植時の胚盤胞のモデルとして使用される絨毛栄養膜ヒト癌細胞株である。Ishikawa細胞は、脱落膜モデルとして使用される比較的未-分化の子宮内膜ヒト癌細胞株である。JEG-3細胞は、ヒト脱落膜組織へ"移植される"。このアッセイにおいては、Ishikawa細胞又はIshikawa-馴化培地が下側チャンバーに配置された場合に、蛍光標識されたJEG-3細胞がマトリゲルで被覆した多孔質膜を通って、上側チャンバーから下側チャンバーへ侵入する2-チャンバーシステムが使用される。移動する細胞は、プレートリーダーで定量される。この目的は、in vivoにおける移植補助において使用するためのJEG-3細胞の侵入を増大するタンパク質を同定することである。
【0214】
C.オステオポンチンビーズアッセイ(Ishikawa細胞):
Ishikawaヒト子宮内膜癌細胞を、移植のモデルとして使用する。ヒトにおける移植時に、胚盤胞により発現されたタンパク質に結合すると考えられる子宮内膜により、様々なインテグリンが発現される。Ishikawa細胞は、文献において、"着床の窓"時に子宮内膜により発現されたインテグリンであるavb3を発現することが示されている。このインテグリンは、栄養膜により発現されたオステオポンチンに結合すると考えられる。このアッセイにおいて、オステオポンチン-被覆した蛍光ビーズは、胚盤胞を描き、及びIshikawa細胞は、エストラジオールによるそれらの処理によりそれらと結合することを受入れるようになる。この目的は、着床時の子宮内膜の受容力を増加することの補助としてのIshikawa細胞のオステオポンチン-ビーズへの結合能を増大するタンパク質を同定することである。
【0215】
D. HuF6アッセイ:
HuF6細胞は、始原ヒト子宮線維芽細胞である。これらの細胞は、IL-1βによるそれらの治療により脱落膜形成するように誘導することができる。脱落膜形成のマーカーは、PGE2生成であり、これはELISAにより測定される。この目的は、妊娠初期に脱落膜形成を増強する方法として、HuF6細胞により、PGE2の生成を増加するタンパク質を同定することである。
【0216】
E.子宮内膜症アッセイ:
腹膜のTNFαは、腹膜中皮細胞上に接着し及び増殖するよう、子宮から脱落した内膜細胞を誘導することにより、子宮内膜症において役割を果たす。このアッセイにおいて、BEND細胞は、TNFαで処理され、これは子宮内膜症時の接着のアッセイとして、それらのフィブロネクチン-被覆した蛍光ビーズへの結合能を増加する。この目的は、TNFαの、細胞のビーズ-結合能を刺激する能力を低下又は阻害するタンパク質を同定することである。
【0217】
F. hLHRにより安定してトランスフェクションされたJC-410ブタ顆粒膜細胞を使用するcAMPアッセイ:
多嚢胞性卵巣症候群において、下垂体由来のLHは比較的高く、卵巣包膜細胞からのアンドロゲンの産出を誘導する。このアッセイは、PCOS時の卵巣でのLHの作用を低下するために使用されるLHシグナル伝達のインヒビターを調べるために使用する。JC-410ブタ顆粒膜細胞株は、ヒトLH受容体により安定してトランスフェクションされている。LHによる治療は、cAMP生成を生じる。
【0218】
G. hFSHRにより安定してトランスフェクションされたJC-410ブタ顆粒膜細胞を使用するcAMPアッセイ:
JC-410ブタ顆粒膜細胞株は、ヒトFSHRにより安定してトランスフェクションされている。FSHによる治療は、このアッセイにおいて測定されるcAMP生成を刺激する。この目的は、顆粒膜細胞において、FSH作用を増強するタンパク質を同定することである。
【0219】
H. LβT2(マウス)下垂体細胞アッセイ:
LβT2は、不死化されたマウス下垂体性腺刺激細胞株である。アクチビン単独又はGnRH+アクチビンによる刺激は、FSHの分泌を生じる(GnRH単独による刺激は、LH分泌を生じる)。これらの細胞は、FSH生成を刺激するためにGnRHと共調して作用するタンパク質を見つけるために、GnRH+バイオスクリーンタンパク質で処理されるか、又はこれらは、アクチビン単独のようにFSH分泌を刺激することができるタンパク質を見つけるために、バイオスクリーンタンパク質単独で処理することができる。
【0220】
I.卵丘(cumulus)拡張アッセイ:
マウスの卵丘-卵母細胞複合体(2/ウェル)を使用する卵丘-拡張アッセイは、卵母細胞成熟に影響を及ぼすタンパク質をアッセイ(卵丘拡張により測定される)するために、96-ウェルフォーマットでバリデーションされている。ふたつの96-ウェルプレートを、1アッセイにつき処理し、毎週2アッセイを行うことができる。バイオスクリーンタンパク質が、ただひとつの濃度でアッセイされる場合、全てのバイオスクリーンIタンパク質を1ヶ月以内にアッセイすることができる。リードアウトは、拡張に関するイエス/ノーの回答であるか、又は画像解析プログラムを使用し、定量的方法で拡張を測定することができる。
【0221】
J. RWPE増殖アッセイ:
良性前立腺肥大は、アポトーシスによりバランスがとれていない、前立腺上皮及びストロマの成長、その結果としてのこの臓器の肥大を特徴としている。RWPEは、HPV-18により不死化された通常のヒト前立腺上皮細胞株であり、始原ヒト前立腺上皮細胞の代わりに使用することができる。
【0222】
K. HT-1080線維肉腫侵襲アッセイ:
このアッセイは、JEG-3移植アッセイ(前記)の陽性細胞対照として開発された。これは、癌転移に関するモデルとしてよく確立されたアッセイである。蛍光-標識したHT-1080ヒト線維肉腫細胞を、2-チャンバーシステムの上側チャンバーにおいて培養し、刺激し、多孔質マトリゲル-被覆膜を通じ下側チャンバーへ侵襲させ、そこで定量した。この目的は、この侵襲を阻害するタンパク質を同定することである。これらの細胞を、血清を下側チャンバーへ添加することにより、侵襲するように刺激し、及びドキシサイクリンにより阻害した。
【0223】
L. 始原ヒト子宮平滑筋アッセイ:
子宮類線維疾患の重要なもののひとつは、平滑筋腫になり始める子宮平滑筋細胞によるコラーゲン沈着である。始原ヒト子宮平滑筋を刺激し、TGFβで処理することによりコラーゲンを生成し、これはRebifをブロックした。この目的は、この線維症性表現型を阻害するタンパク質を発見することである。
【0224】
M. ヒト平滑筋腫細胞の増殖アッセイ:
ヒト平滑筋腫細胞株を、増殖アッセイにおける子宮類線維疾患のモデルとして使用した。この細胞は、非常にゆっくり成長し、本発明者らは、エストラジオール及び増殖因子でこれらを処理することによりこれらを刺激し、より迅速に成長させた。この目的は、平滑筋腫細胞のエストラジオール依存型の成長を阻害するタンパク質を同定することである。
【0225】
N. 937移動アッセイ:
子宮内膜病巣は、免疫細胞を腹膜腔に動員するサイトカインを分泌する。これらの免疫細胞(特に活性化されたマクロファージ及びTリンパ球)は、子宮内膜症において一般的である炎症症状を媒介する。RANTESは、子宮内膜ストロマ細胞により生成され及び腹水中に存在することが示されている。このアッセイにおいて、活性化されたマクロファージのモデルとして使用される単球系細胞株であるU937は、2-チャンバー培養システムの下側レベルを、上側チャンバーから移動するように処理することにより誘導することができる。これらの細胞が蛍光色素と共に予め装載された場合、これらは下側チャンバーにおいて定量することができる。この目的は、U937細胞の移動を阻害するタンパク質を同定することである。
【0226】
O. JEG3ヒト栄養膜アッセイ:
胚盤胞の栄養膜は、母親による胚の免疫拒絶反応の防止に重要であると考えられるクラスI HLA分子HLA-Gを生成する。子癇前症時に、HLA-Gレベルは低いか又は存在せず、これは恐らく母親の免疫干渉により、子宮内膜及び螺旋動脈への栄養膜の浸潤不良のような顕著な症状を生じるであろう。JEG-3ヒト栄養膜細胞株は、HLA-Gを生成し、これはIL-10又はLIFによる処理により増加することができる。ELISAを用い、JEG-3細胞によるHLA-G生成を測定することができ、この目的は、HLA-G生成を増加することができる他のタンパク質を発見することである。
【0227】
P.始原ラット卵巣分散性アッセイ:
JC-410-FSHR/LHR細胞株からの認知可能量のステロイド類の測定は困難であるので、未熟ラットから摘出した卵巣全体由来の始原細胞を使用するアッセイが開発されている。最初に、FSH及び/又はLH処理後、これらの培養物からのエストラジオール生成を測定する。従ってこの目的は、ゴナドトロピンが刺激したステロイド生成を増強するタンパク質、又はこれらの培養物によるステロイド生成を増大するように単独で作用するタンパク質を同定することである。
【0228】
Q.マウスIVFアッセイ:
このアッセイにおいて、卵母細胞の受精能により測定された精子機能が、精子の受精能を刺激するタンパク質を発見する目的で、アッセイされる。
【0229】
R.始原ヒト前立腺ストロマ細胞増殖アッセイ:
BPHの上皮成分のアッセイは、既に説明されている(前記「RWPEアッセイ」の項参照)。このアッセイは、BPH時のこれらの細胞の増殖のモデルとして、始原ヒト前立腺ストロマ細胞を使用する。この目的は、これらの細胞の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
【0230】
【表10】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】図1:SCS0008 ORFと、公知の関連ポリペプチド配列とのアラインメント。
【図2】図2:SCS0008の予測されたアミノ酸配列の、クローニングされたスプライシング変異体SCS0008SV1及びSCS0008SV2に関する推定されたアミノ酸配列との、Clustal W アラインメント。
【図3−1】図3:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図3−2】図3:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図4−1】図4:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図4−2】図4:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図5】図5:pCR4-TOPO-SCS0008SV1のマップ。
【図6】図6:発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図7】図7:pDONR221のマップ。
【図8】図8:発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図9】図9:pENTR-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図10】図10:pEAK12d-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図11】図11:pDEST12.2-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図12−1】図12:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図12−2】図12:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図13−1】図13:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図13−2】図13:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図14】図14:pCR4-TOPO-SCS0008-SV2のマップ。
【図15】図15:発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図16】図16:発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図17】図17:pDONR221のマップ。
【図18】図18:pENTR-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図19】図19:pEAK12d-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図20】図20:pDEST12.2-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図21−1】図21:SCS0008、SCS0008-SV1、SCS0008-SV2、マウスネフロネクチン、及び他の関連配列のSMARTドメインアラインメント。
【図21−2】図21:SCS0008、SCS0008-SV1、SCS0008-SV2、マウスネフロネクチン、及び他の関連配列のSMARTドメインアラインメント。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトゲノムにおいて、新規ポリペプチド、より詳細にはフィブリリン-様ポリペプチドをコードしているとして同定された核酸配列に関する。
【0002】
本願明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全体が参照として組込まれている。
【背景技術】
【0003】
既に多くの新規ポリペプチドが、同じファミリーの公知のポリペプチドに対する厳密な相同性の判定を適用することにより同定されている。しかしフィブリリン-様ポリペプチド(及びいずれか他のタンパク質ファミリー)についてのヒトゲノム中のポリペプチド-コード配列中の実際の内容は依然不明であるので、ヒトゲノムに存在するオープンリーディングフレーム(ORF、すなわち、停止コドンにより中断されず、且つポリペプチドに翻訳可能なアミノ酸をコードしているヌクレオチドの連続3文字を含むゲノム配列)の全体に対する、選択的及び厳密性のより少ない相同性/構造の基準を適用することにより、フィブリリン-様ポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードしているDNA配列を同定する可能性が依然存在する。
【0004】
細胞が細胞外タンパク質を生成及び分泌する能力は、多くの生物学的プロセスの中心である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は全て、細胞により分泌される。これは分泌小胞の、細胞膜との融合を介している。全てではないがほとんどの場合において、タンパク質はシグナルペプチドにより小胞体に向かい、そして分泌小胞へ向かう。シグナルペプチドは、細胞質から、分泌小胞のような膜結合したコンパートメントへのポリペプチド鎖の輸送に影響を及ぼすcis-作用配列である。分泌小胞を標的としたポリペプチドは、細胞外マトリックスへ分泌されるか、又は原形質膜に保持されるかのいずれかである。原形質膜に保持されたポリペプチドは、1個又は複数の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能において中心的役割を果たす分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着分子)、プロテアーゼ、増殖因子及び分化因子である。
【0005】
ミクロフィブリル束及びこれらの束に関連して認められたタンパク質、特に接着分子は、皮膚科学において、特に加齢、損傷、又は太陽によりダメージを受けた皮膚の研究の分野で関心が高い。フィブリリンミクロフィブリルは、皮膚の連続する弾性のあるネットワーク(continuous elastic network)を規定し、真皮-表皮接合部から伸びている測定可能なエラスチンを欠いているミクロフィブリル束として、並びに深い真皮網状層に存在する厚い弾性線維の構成要素として真皮に存在する。
【0006】
フィブリリン-1は、アミノ-末端アナフラトキシン-様モジュール、それに続く9個の上皮増殖因子(EGF)-様モジュール、及び選択的スプライシングに応じて、4個の可能性のあるカルボキシ末端を伴う、モジュラー糖タンパク質である。フィブリリン-2は、フィブロネクチン又はフィブリンのいずれかを含むミクロフィブリルに密に会合して頻繁に認められる、新規細胞外マトリックスタンパク質である。従ってフィブリリン及びそれらに関連した分子は、特に皮膚を加齢、損傷、もしくは太陽により受けるダメージから守るための用途、又はこれらからダメージを受けた皮膚を回復するための用途にとって興味深いものである。更にこれらの分子は、一般に結合組織及び接着分子並びに関連機構の研究において興味深いものである。フィブリリン、及び関連分子は更に、Adamsら, J. Mol. Biol., 272(2): 226-36 (1997);Kielty及びShuttleworth, Microsc. Res. Tech., 38(4): 413-27 (1997);並びに、Child, J. Card. Surg., 12(2Supp.): 131-3 (1997)で説明される。
【0007】
従ってフィブリリン及びそれらの関連分子は、特に皮膚を加齢、損傷、もしくは太陽により受けるダメージから守るための用途、又はこれらによりダメージを受けた皮膚を回復するための用途にとって特に興味深いものである。更にこれらの分子は、一般に結合組織及び接着分子並びに関連機構の研究において興味深いものである。
【0008】
フィブリリンの細胞外マトリックス構造の形成及び/又は安定化における正確な役割、加えてそれらの細胞挙動に対する作用は、現在研究中である。しかし、新規フィブリリン-様タンパク質の同定は、これらのタンパク質が関連したある種の病態につながる基礎となる経路の理解が増加し、これらの障害を治療するためにより有効な遺伝子療法又は薬物療法が開発される上で非常に重要であることは明らかである。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、新規フィブリリン-様ポリペプチドをコードしているヒトゲノムにおけるオープンリーディングフレーム(ORF)の同定を基にしている。このポリペプチドは、本明細書において、SCS0008ポリペプチドと称される。予測SCS0008の完全長コード配列を基に、SCS0008の2種のスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2が追加的に発見された。SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、本明細書においてSCS0008と称する。
【0010】
従って本発明は、フィブリリン-様ポリペプチドの活性を有するポリペプチドとして、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18で記載されたアミノ酸配列、並びにそれらの成熟型、ヒスチジン型、変異体及び断片を有する、単離されたSCS0008ポリペプチドを提供する。本発明は、それらをコードしている核酸、そのような核酸を含むベクター、及びこれらのベクター又は核酸を含む細胞に加え、融合タンパク質、リガンド及びアンタゴニストなどのその他の関連試薬も含む。
【0011】
本発明は、これらの分子を同定及び作成する方法、それらを含有する医薬組成物を調製する方法、並びに疾患の診断、予防及び治療にそれらを使用する方法を提供する。
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明の第一の局面に従い、下記からなる群より選択されるフィブリリン-様活性を有する、単離されたポリペプチドが提供される:
a)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載の、アミノ酸配列;
b)配列が、配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)で記載されている、ポリペプチドの成熟型;
c)配列が、配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されたポリペプチドの、ヒスチジンタグ型;
d)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載されたアミノ酸配列の変異体であり、ここで選択された配列において特定されたいずれかのアミノ酸が非-保存的に置換され、但し15%を超えないその配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている変異体;
e) a)からd)に示されたアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩、又は誘導体。
【0013】
本明細書に説明された新規SCS0008ポリペプチドは、独自仕様のバイオインフォマティクス技術を基に同定された。EGFドメインは、データベース検索のためのクエリー配列として使用され、最終のアノテーションは、アミノ酸配列の相同性の基礎に貢献している。
【0014】
ヒトゲノム内の公知のORFの翻訳により得られたアミノ酸配列全体が、このコンセンサス配列を使用しチャレンジされ、陽性ヒットは更に、この性質のポリペプチドの特徴を示す予測された特異的構造及び機能の"サイン"の存在についてスクリーニングされ、かつ最後に公知のフィブリリン-様ポリペプチドを伴う配列特徴と比較することにより選択された。従って本発明の新規ポリペプチドは、フィブリリン-様活性を有すると予測することができる。
【0015】
用語"活性のある"及び"活性"は、本明細書において、それらのアミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18で示された、フィブリリン-様ポリペプチドについて予測されたフィブリリン-様特性を意味する。これらの特性は、結合組織中にミクロフィブリル束を形成する能力を有する。
【0016】
第二の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている精製された核酸分子を提供する。好ましくは、精製された核酸分子は、配列番号:1(そのアミノ酸配列は配列番号:2に記載のフィブリリン-様ポリペプチドをコードしている)、配列番号:5(配列番号:6に記載のアミノ酸配列をコードしている)、又は配列番号:12(配列番号:13に記載のアミノ酸配列をコードしている)に記載の核酸配列を有する。
【0017】
第三の局面において、本発明は、高ストリンジェンシー条件下で、本発明の第二の局面の核酸分子とハイブリダイズする精製された核酸分子を提供する。
【0018】
第四の局面において、本発明は、本発明の第二又は第三の局面の核酸分子を含む、発現ベクターなどの、ベクターを提供する。
【0019】
第五の局面において、本発明は、本発明の第四の局面のベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。
【0020】
第六の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドのフィブリリン-様活性に特異的に結合し、及び好ましくはこれを阻害するリガンドを提供する。本発明のポリペプチドへのリガンドは、天然の又は修飾された基質、酵素、受容体、最大2000Da、好ましくは800Da又はそれ未満の小型の天然又は合成の有機分子のような小型有機分子、ペプチドミメティクス、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述のものの構造的又は機能的ミメティクスを含む、様々な形であってよい。
【0021】
第七の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現を変更するか、又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性を調節するのに有効である化合物を提供する。
【0022】
本発明の第七の局面の化合物は、遺伝子の発現のレベル又はポリペプチドの活性を増加する(アゴニスト作用)又は減少する(アンタゴニスト作用)のいずれかであることができる。重要なことは、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドの機能の同定は、疾患の治療及び/又は診断に有効である化合物を同定することが可能であるスクリーニング法をデザインすることができる。
【0023】
第八の局面において、本発明は、治療又は診断において使用するための、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、又は本発明の第七の局面の化合物を提供する。これらの分子は、皮膚が加齢、損傷又は太陽によるダメージを受けているもののような疾患の治療のための、又はこれらからの、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)、更には下記の治療的使用において言及された状態及び障害により、ダメージを受けた皮膚を回復するための、医薬品の製造に使用することもできる。
【0024】
第九の局面において、本発明は、該患者の組織において、本発明の第一の局面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性を評価すること、及び該発現のレベル又は活性を対照レベルと比較することを含む、患者において疾患を診断する方法を提供し、ここで該対照レベルとは異なるレベルは、疾患の指標である。このような方法は、in vitroで実行されることが好ましいであろう。同様の方法を用い、患者における疾患の治療的処置をモニタリングすることができ、ここで経時的に対照レベルへと向かうポリペプチド又は核酸分子の発現のレベル又は活性の変化は、疾患の回復の指標である。
【0025】
本発明の第一の局面のポリペプチドを検出する好ましい方法は、下記の工程を含む:
(a)本発明の第六の局面のリガンド、例えば抗体を、生物学的試料と、リガンド-ポリペプチド複合体を形成するのに適した条件下で接触する工程;及び
(b)該複合体を検出する工程。
【0026】
例えば、短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法といった、多くの異なる本発明の第九の局面のような方法が存在することは、当業者には明らかであろう。同様の方法を短期又は長期ベースで用いて、患者においてモニタリングされる疾患の治療的処置を可能にすることができる。本発明はまた、これらの疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0027】
第十の局面において、フィブリリン-様タンパク質として本発明の第一の局面のポリペプチドの使用を提供する。適当な使用は、そのタンパク質の、フィブロネクチン、ラミニン、ナイドジェン、パールカン、フィブリン及びフィブリノーゲンのような他の細胞外マトリックスタンパク質との相互作用を介した、結合組織線維、基底膜及び血栓のような細胞外マトリックス構造に結合する能力の結果である、特に組織の修復及び再建の状況における、分泌された糖タンパク質としての使用を含む。
【0028】
第十一の局面では、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、又は本発明の第七の局面の化合物を、医薬として許容できる担体と組合わせて含有する医薬組成物を提供する。
【0029】
第十二の局面では、本発明は、皮膚が加齢、損傷又は太陽によるダメージを受けているもののような疾患の診断もしくは治療のための、又はこれらからの、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)、更には下記の治療的使用において言及された状態及び障害により、ダメージを受けた皮膚を回復するための医薬品の製造において使用するための、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、あるいは本発明の第七の局面の化合物を提供する。
【0030】
第十三の局面では、本発明は、患者へ、本発明の第一の局面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の局面の核酸分子、又は本発明の第四の局面のベクター、又は本発明の第五の局面の宿主細胞、又は本発明の第六の局面のリガンド、あるいは本発明の第七の局面の化合物を投与することを含む、患者の疾患を治療する方法を提供する。
【0031】
本発明の第一の局面のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現、又は本発明の第一の局面のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で低下する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で上昇する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアンタゴニストであるべきである。このようなアンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド、例えば抗体が含まれる。
【0032】
第十四の局面において、本発明は、本発明の第一の局面のポリペプチドを高レベル、低レベルで発現、又は発現しないように形質転換したトランスジェニック又はノックアウト非ヒト動物を提供する。このようなトランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
【0033】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び手法の要約は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、この用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
【0034】
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられ、これらの技術は当業者の技術範囲内である。
【0035】
このような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vol.I及びII (D.N. Glover編集、1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編集、1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Transcription and Translation (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney編集、1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154及び155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos編集、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer及びWalker編集、1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell編集、1986)。
【0036】
本発明の第一の局面は、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17及び配列番号:18に記載されたアミノ酸配列の変異体を含み、ここで選択された配列で特定されたいずれかのアミノ酸は、非-保存的に置換され、但し15%を超えない配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている。指定された数の非-保存的置換を有するタンパク質配列は、通常利用可能なバイオインフォマティクスツールを用いて同定することができる(Mulder NJ及びApweiler R, 2002; Rehm BH, 2001)。
【0037】
このような配列に加え、一連のポリペプチドは、本発明の開示の一部を形成する。フィブリリン-様ポリペプチドは、N-末端配列のタンパク質分解性の除去(シグナルペプチダーゼ及び他のタンパク質分解性酵素による)を含む成熟過程を進行することが分かっているので、本明細書は、配列が配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)に記載されているポリペプチドの成熟型も請求する。成熟型は、フィブリリン-様活性を示し並びにin vivo(発現している細胞又は動物により)もしくはin vitro(精製されたポリペプチドの特異的酵素による修飾による)における翻訳後成熟過程から生じるあらゆるポリペプチドを含むことが意図されている。他の選択的(alternative)成熟も、糖又はリン酸のような化学基の付加から生じ得る。本願は、配列が配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されているポリペプチドヒスチジンタグ型も請求している。
【0038】
他の請求されたポリペプチドは、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17又は配列番号:18によりもたらされたアミノ酸配列の活性変異体であり、ここで選択された配列中の特定されたアミノ酸は、非-保存的に置換され、但し15%を超えない、好ましくは10%、5%、3%、又は1%を超えない、配列中のアミノ酸残基がそのように変更されている。示された割合は、開示した新規アミノ酸配列全体について測定されなければならない。
【0039】
本発明において、分子の構造及び生物学的機能を保存するために、あらゆる置換は、好ましくは"保存的な"又は"安全な"置換であり、これは通常十分に類似した化学特性を有するアミノ酸を導入する置換を定義している(例えば、塩基性、正電荷アミノ酸は、別の塩基性、正電荷アミノ酸と置換されなければならない)。
【0040】
文献は、保存的アミノ酸置換の選択が、タンパク質の配列及び/又は構造の統計学的及び物理化学的試験を基に行われ得る多くのモデルを提供している(Rogov SI and Nekrasov AN, 2001)。タンパク質構造をより容易に適応することができ並びに機能的及び構造的ホモログ及びパラログを検出するために使用することができるアミノ酸"同義"置換の分類を補助する、アミノ酸の特異的サブセットの使用は、折畳み可能で活性のあるタンパク質を生成することができるタンパク質デザイン実験が示されている(Murphy LRら, 2000)。同義アミノ酸の群及びより好ましい同義アミノ酸の群は、表Iに示している。
【0041】
対応するフィブリリン-様ポリペプチドに関して、同等の、又は改善された活性を有する活性変異体は、通常のコードDNAの突然変異誘発技術から、コードDNA配列のレベルでのコンビナトリアル技術(例えば、DNAシャッフリング、ファージディスプレイ/選択)から、又はコンピュータ支援によるデザイン研究、それに続く先行技術に説明されたような望ましい活性に関するバリデーションから生じることができる。
【0042】
特異的、非-保存的変異を、異なる目的で本発明のポリペプチド中に導入することもできる。フィブリリン-様ポリペプチドの親和性を低下する変異は、その再使用能及び再循環能を高め、これはその治療効能を高める可能性がある(Robinson CR, 2002)。最終的には本発明のポリペプチド中に存在する免疫原性エピトープが、ワクチン開発のために活用されるか(Stevanovic S, 2002)、もしくはタンパク質安定性を増大する変異を選択し、それらを補正するための公知の方法に従いそれらの配列を修飾することにより排除され得る(van den Burg B及びEijsink V, 2002;国際公開公報第02/05146号、第00/34317号、第98/52976号)。
【0043】
別の本発明の代替ポリペプチドは、先に説明されたアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩又は機能的-等価の誘導体である。
【0044】
断片は、それらの機能を変更しない末端又は内部のアミノ酸の欠失が存在し、かつそのタンパク質の機能的コンホメーションに重要であるアミノ酸を除去又は置き換えを伴うことなく、一般に数個のアミノ酸、例えば10個以下、好ましくは3個以下のアミノ酸が関与するはずである。小さい断片は、抗原決定基を形成することがある。
【0045】
"前駆体"は、細胞又は体への投与の前後に、代謝的及び酵素的プロセッシングにより、本発明の化合物へ転換され得る化合物である。
【0046】
本明細書における用語"塩"は、本発明のポリペプチドのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当該技術分野において公知の手段により形成され、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄又は亜鉛の塩など、並びに有機塩基との塩、例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニンもしくはリシン、ピペリジン、プロカインなどにより形成された塩を含む。酸付加塩は、例えば、塩酸又は硫酸などのような鉱酸との塩、及び酢酸又はシュウ酸などの有機酸との塩を含む。このような塩のいずれも、本発明のペプチド及びポリペプチド又はそれらのアナログと実質的に類似した活性を有さなければならない。
【0047】
本明細書の用語"誘導体"は、公知の方法に従い、アミノ酸部分の側鎖又はアミノ-もしくはカルボキシ-末端基に存在する官能基から調製することができる誘導体を意味する。このような分子は、一次配列は通常変更しない他の修飾、例えばポリペプチドのin vivo又はin vitro化学的誘導体化(アセチル化又はカルボキシル化)、その合成時及びプロセッシング時に又はさらなるプロセッシング工程において、ペプチドのリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、もしくはホスホトレオニン残基の導入)又はグリコシル化(ポリペプチドの哺乳類グリコシル化酵素への曝露による)のパターンの修飾により作成されたものからも生じる。あるいは誘導体は、カルボキシル-基のエステル又は脂肪族アミド、並びに遊離アミノ基のN-アシル誘導体又は遊離のヒドロキシル-基のO-アシル誘導体を含んでもよく、これらは例えばアルカノイル-又はアリール-基のようなアシル-基により形成される。
【0048】
これらの誘導体の生成は、内部又は末端の位置での、適当な残基の位置指定修飾に関連し得る。付着に使用される残基は、ポリマー付着されやすい側鎖を有するものでなければならない(すなわち、官能基を保持するアミノ酸側鎖、例えばリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジンなど)。あるいは、ポリマー付着されやすい側鎖を有する残基は、このポリペプチドのアミノ酸と置き換えられるか、又はこのポリペプチドの内部もしくは末端の位置で付加され得る。同じく、遺伝子コードされたアミノ酸の側鎖も、ポリマー付着のために化学的に修飾することができるか、又は適当な側鎖官能基を伴う非天然のアミノ酸を使用することができる。好ましい付着法は、ペプチド合成及び化学的連結の組合せを使用する。有利なことに、水溶性ポリマーの付着は、生分解性リンカー、特にタンパク質のアミノ-末端領域を介するであろう。このような修飾は、リンカーの分解時に、ポリマー修飾を伴うことなく、タンパク質を放出する前駆体(又は"プロドラッグ")型でタンパク質を提供するように作用する。
【0049】
ポリマー付着は、アンタゴニストの特定の位置で天然に生じるアミノ酸の側鎖に対し又はアンタゴニストの特定の位置で天然に生じるアミノ酸を置き換える天然もしくは非天然のアミノ酸の側鎖に対してのみではなく、標的位置でアミノ酸の側鎖に付着されている糖鎖又は他の部分に対しても生じる。稀な又は非天然のアミノ酸も、特に操作された細菌株においてこのタンパク質を発現することにより導入することができる(Bock A, 2001)。
【0050】
先に示した全ての変異体は、ヒト以外の生物において同定される、天然のもの、又は化学合成、位置指定突然変異誘発技術、もしくはそれらに適したいずれか他の公知の技術により調製される、人工のものであることができ、これは、先行技術において示された技術を使用する当業者により日常的に入手及び試験され得る実質的に対応する突然変異誘発されたもしくは切断されたペプチドもしくはポリペプチドの限られたセットを提供する。
【0051】
本明細書で開示した新規アミノ酸配列は、様々な種類の試薬及び分子を提供するために使用することができる。これらの化合物の例は、それらの完全配列又は特定の断片、例えば抗原決定基を用い同定することができる結合タンパク質又は抗体である。請求されたアミノ酸配列に結合する抗体又は他のタンパク質をスクリーニングし及び特徴決定するために、並びに類似の結合特性を有する本発明のポリペプチドの代替物を同定するために、公知の方法でペプチドライブラリーを使用することができる(Tribbick G, 2002)。
【0052】
本明細書は、先に説明されたポリペプチドのいずれかを含む融合タンパク質も開示している。これらのポリペプチドは、このポリペプチドのフィブリリン-様活性を著しく損なうことも、追加の特性を提供する可能性もなく、本明細書において開示されたタンパク質配列とは異種のタンパク質配列を含むべきである。このような特性の例は、より容易な精製手法、より長い体液中の半減期の維持、追加の結合部分、末端タンパク質分解性の消化による成熟、又は細胞外局在化がある。この後者の特徴は、先の定義に含まれる融合タンパク質又はキメラタンパク質の特定群を定義するために特に重要であり、その理由はこれは、請求された分子が、これらのポリペプチドの単離及び精製が促進される空間のみではなく、一般にフィブリリン-様ポリペプチド及びそれらの受容体が相互作用する空間にも、局在化することを可能にするからである。
【0053】
融合タンパク質の構築、精製、検出及び使用のための、部分、リガンド、及びリンカーのデザイン並びに、方法及び戦略も、文献において明らかにされている(Nilsson Jら、1997; Methods Enzymol, Vol.326-328, Academic Press, 2000)。融合タンパク質に含まれ得る好ましい1又は複数のタンパク質配列は、以下のタンパク質配列に属する:膜-結合タンパク質、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド-含有タンパク質、輸送シグナル-含有タンパク質。これらの配列の特徴及びそれらの具体的用途は、例えば、アルブミン融合タンパク質(国際公開公報第01/77137号)、多量体化ドメインを含む融合タンパク質(国際公開公報第01/02440号、第00/24782号)、免疫複合体(Garnett MC, 2001)、又はアフィニティークロマトグラフィーによる組換え産物の精製に使用される追加配列を提供する融合タンパク質(Constans A, 2002;Burgess RR及びThompson NE, 2002; Lowe CRら, 2001;J. Bioch. Biophy. Meth., vol.49 (1-3), 2001;Sheibani N, 1999)について、詳細に説明されている。
【0054】
本発明のポリペプチドは、それらに特異的に結合するリガンドを作成及び特徴決定するために使用することができる。これらの分子は、天然又は人工のものであり、化学的観点から非常に異なり(結合タンパク質、抗体、分子によりインプリンティングされたポリマー)、並びに当該技術分野における指導を適用することにより作成することができる(国際公開公報第02/74938;Kuroiwa Yら, 2002;Haupt K, 2002;van Dijk MA及びvan de Winkel JG, 2001;Gavilondo JV及びLarrick JW, 2000)。このようなリガンドは、それに対してリガンドが生じるポリペプチドのフィブリリン-様活性を拮抗又は阻害することができる。特に、共通及び効果的リガンドは、膜-結合したタンパク質の細胞外ドメイン又はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、もしくは抗原結合断片であることができる抗体により表される。
【0055】
先に説明されたポリペプチド及びポリペプチド-ベースの誘導された試薬は、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞傷害性物質の中で選択された分子との活性接合体又は複合体のように、望ましい使用及び/又は生成の方法に従い、別の形であることができる。
【0056】
ペプチドミメティクスのような特定の分子も、本発明のポリペプチドの配列及び/又は構造に基づいてデザインすることができる。ペプチドミメティクス(peptide mimetics)(ペプチドミメティクス(peptidomimetics)とも称される)は、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド骨格のレベルで化学的に修飾されたペプチドである。これらの変更は、改善された調製、効能及び/又は薬物動態の特徴を伴う、本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを提供することが意図される。
【0057】
例えば、ペプチドがペプチダーゼにより切断され易い場合、その後の対象への注射は問題があり、切断不可能なペプチドミメティクスと結合した特に感受性のあるペプチドの交換は、より安定した、従って治療薬としてより有用なペプチドを提供することができる。同様に、L-アミノ酸残基の置換は、そのペプチドをタンパク質分解に対してより非感応性とし、最終的にはペプチド以外の有機化合物とより類似性とする、標準の方法である。同じく、アミノ-末端ブロック基、例えば、t-ブチルオキシカルボニル、アセチル、テニル、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、及び2,4-ジニトロフェニルなども有用である。増大した効能、延長された活性、精製の容易さ、及び/又は延長された半減期を提供する多くの他の修飾は、先行技術において明らかにされている(国際公開公報第02/10195号;Villain Mら、2001)。
【0058】
ペプチドミメティクスに含まれたアミノ酸誘導体の好ましい代替の、同義語の群は、表IIに定義されたものである。網羅的でないアミノ酸誘導体のリストは、アミノイソ酪酸(Aib)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-COOH、インドリン-2-カルボン酸、4-ジフルオロ-プロリン、L-チアゾリジン-4-カルボン酸、L-ホモプロリン、3,4-デヒドロ-プロリン、3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニン、シクロヘキシル-グリシン、及びフェニルグリシンを含む。
【0059】
"アミノ酸誘導体"は、20種の遺伝子コードされた天然のアミノ酸のひとつ以外のアミノ酸又はアミノ酸-様化学的部分を意図している。特にアミノ酸誘導体は、置換された又はされない、線状、分枝した、又は環状のアルキル部分を含むことができ、1個又は複数のヘテロ原子を含むことができる。アミノ酸誘導体は、新規で作成されるか又は商業的供給源(Calbiochem-Novabiochem AG, Switzerland; Bachem, USA)から入手することができる。
【0060】
タンパク質構造及び機能を調べ及び/又は改善するために、in vitro及びin vivoの両翻訳システムを使用し、天然のアミノ酸誘導体をタンパク質に組込む様々な方法が、文献において明らかにされている(Dougherty DA, 2000)。ペプチドミメティクスに加え非-ペプチドミメティクスの合成及び開発の技術は、当該技術分野において周知である(Golebiowski Aら, 2001;Hruby VJ及びBalse PM, 2000;Sawyer TK, "Structure Based Drug Design"、Veerapandian P編集、Marcel Dekker Inc., pg. 557-663,1997)。
【0061】
本発明の別の目的は、フィブリリン-様活性を有する本発明のポリペプチド、抗体に結合するポリペプチド又はそれらに対して作成された結合タンパク質、対応する融合タンパク質、又は前述のアンタゴニスト活性を有する変異体をコードしている単離された核酸である。好ましくは、これらの核酸は、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12、配列番号:1のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1425で終わる)、配列番号:5のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1590で終わる)、配列番号:12のコード配列(コード領域はヌクレオチド205で始まり1503で終わる)、又は該DNA配列の相補体からなる群より選択されるDNA配列を含まなければならない。
【0062】
あるいは、本発明の核酸は、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12からなる核酸と、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするか、又は少なくとも約30ヌクレオチドの範囲にわたり、少なくとも約85%の同一性を示すか、又は該DNA配列の相補体である。
【0063】
用語"高ストリンジェンシー条件"とは、50%のホルムアミド、5倍のSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mLの変性せん断サケ精子DNAを含有する溶液中で60〜65℃で一晩インキュベーションし、続いてフィルターを同じ温度で0.1xSSC中で洗浄するというハイブリダイゼーション反応の条件を意味する。
【0064】
これらの核酸は、実質的に同じヌクレオチド配列を含み、これらは、コードポリペプチドの維持、修飾、導入、又は発現に使用することができる、プラスミド、ベクター及びいずれか他のDNA構築体を含むことができる。特に該核酸分子が発現制御配列に作用可能に連結されているベクターは、コードされたポリペプチドの原核又は真核宿主細胞において発現が可能である。
【0065】
用語"実質的に同じヌクレオチド配列"は、遺伝暗号の縮重により、所定のアミノ酸配列を同じくコードしている他の核酸配列全てを含む。この意味で、文献は、組換え発現のために好ましい又は最適化されたコドンの指標を提供している(Kane JF ら., 1995)。
【0066】
核酸及びベクターは、異なる目的で細胞へ導入され、トランスジェニック細胞及び生物を作出する。本発明のポリペプチドを発現することが可能である細胞を作出するプロセスは、そのようなベクター及び核酸により細胞を遺伝子操作することを含む。
【0067】
特に、宿主細胞(例えば、細菌細胞)は、本発明の核酸及びベクターによりコードされたポリペプチドの一過性又は安定した発現を可能にする形質転換により修飾することができる。あるいは該分子は、本発明のポリペプチドの発現レベルを正常な発現レベルと比較した場合に、本発明のポリペプチドの増大した又は減少した発現レベルを有するトランスジェニック動物細胞又は非-ヒト動物を作出するために(非-相同/相同組換えによるか、又はそれらの安定した組込み及び維持を可能にするいずれか他の方法により)使用することができる。そのような正確な修飾は、本発明の核酸及び関連技術、例えば、遺伝子治療(Meth. Enzymol., vol. 346,2002)、又は部位特異的レコンビナーゼ(Kolb AF, 2002)の使用により得ることができる。それらの機能の系統的研究のために本明細書において明らかにされたフィブリリン-様ポリペプチドを基にしたモデルシステムも、ヒト細胞株への遺伝子標的化により作成することができる(Bunz F, 2002)。
【0068】
遺伝子サイレンシング法を実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir ら. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAオリゴヌクレオチドの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
【0069】
上記に述べた遺伝子サイレンシング法の有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、又はTaqManベースの方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0070】
本発明のポリペプチドは、組換えDNA-関連技術、及び化学合成技術を含む、当該技術分野において公知であるいずれかの方法により調製することができる。特に、本発明のポリペプチドを作成する方法は、先に説明した宿主又はトランスジェニック細胞の、核酸又はベクターが発現される条件下での培養、並びに該核酸又はベクターでコードされたポリペプチドの培養物からの回収を含む。例えば、ベクターがポリペプチドを細胞外タンパク質又はシグナル-ペプチド含有タンパク質との融合タンパク質として発現する場合、この組換え産物は、細胞外間隙に分泌され、更なるプロセッシングの観点で、培養された細胞からより容易に収集及び精製することができるか、あるいは、この細胞は直接使用又は投与することができる。
【0071】
本発明のタンパク質をコードしているDNA配列は、エピソーマル又は非-相同/相同組込みベクターへ挿入及び連結することができ、これはいずれか適当な手段(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入など)により適当な宿主細胞へ導入することができる。特定のプラスミド又はウイルスベクターを選択する重要な要因は、以下を含む:ベクターを含むレシピエント細胞が認識され及びベクターを含まないそれらのレシピエント細胞から選択されることの容易さ;特定の宿主中で望ましいベクターのコピー数;並びに、異なる種の宿主細胞間でベクターを"シャトル"することが望ましいかどうか。
【0072】
これらのベクターは、その細胞内で構成的に活性があるか又は誘導性であるように選択され、転写開始/終結調節配列の制御下で原核又は真核宿主細胞において、本発明のポリペプチドを含む単離されたタンパク質又は融合タンパク質の発現を可能にしなければならない。その後このような細胞内で豊富な細胞株は、単離され、安定した細胞株を提供する。
【0073】
真核宿主(例えば、酵母、昆虫、植物、又は哺乳類の細胞)について、宿主の性質に応じて、様々な転写調節配列及び翻訳調節配列を使用することができる。これらは、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなどのウイルス給源に由来することができ、ここでこれらの調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関連している。例として、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、初期SV40プロモーター、酵母のgal4遺伝子プロモーターなどがある。転写開始調節シグナルは、遺伝子の発現が変調され得るように、抑制又は活性化することができるものを選択することができる。導入されたDNAにより安定して形質転換された細胞は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することにより選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主に対する光栄養性、殺生物耐性、例えば抗生物質、又は銅などの重金属なども提供することができる。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA遺伝子配列に直接連結するか、又は同じ細胞に同時トランスフェクションにより導入される。
【0074】
宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞のいずれかであってよい。真核宿主は、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類細胞が好ましく、その理由は、これらはタンパク質に、正確な折畳み及びグリコシル化を含む、翻訳後修飾を提供するからである。同じく酵母細胞で、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行することができる。酵母における所望のタンパク質の生成に利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する多くの組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物中でリーダー配列を認識し、及びリーダー配列を保有するペプチド(すなわち、プレ-ペプチド)を分泌する。
【0075】
本発明の前述の態様は、新規フィブリリン-様ポリペプチドの配列に関する本明細書に提供された開示を、通常の分子生物学技術の知識と組合せて実現することができる。
【0076】
多くの書籍及び概説が、ベクター及び原核又は真核宿主細胞を用い、いかにして組換えタンパク質をクローニング及び生成するかを提供しており、一部はOxford University Pressにより発行された"A Practical Approach"シリーズである("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995;"DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996;"Protein Expression", 1999;"Protein Purification Techniques", 2001)。
【0077】
更に、改訂され及びより集約された文献は、ハイ-スループット法でポリペプチドを発現するための技術の総説(Chambers SP, 2002;Coleman TAら, 1997)、治療用用途を有する組換えタンパク質の大規模生成のために工業的に使用される細胞システム及びプロセスの総説(Andersen DC及びKrummen L, 2002, Chu L及びRobinson DK, 2001)、並びにトランスジェニック植物(Giddings G, 2001)又は酵母Pichia pastoris(Lin Cereghino GPら, 2002)を基にしたもののような、所望のタンパク質の経済的生成の可能性がかなりある、関心のあるポリペプチドを発現するための選択的真核細胞発現システムの総説を提供する。組換えタンパク質産物は、精製時に様々な解析技術により迅速にモニタリングすることができ、発現されたポリペプチドの量及び品質を証明し(Baker KN ら., 2002)、更には生物学的平衡及び免疫原性に問題があるかどうかをチェックする(Schellekens H, 2002;Gendel SM, 2002)。
【0078】
総合的に合成フィブリリン-様ポリペプチドは、化学的合成技術の文献、及び多くの例において明らかにされており、これらは固相又は液相合成技術として、それらの短い長さが文献において入手することができるならば、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドに効果的に適用することができる。例えば、合成されるペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸は、有機溶媒に不溶性の支持体に結合され、並びに適当な保護基で保護されたそれらのアミノ基及び側鎖官能基を伴うアミノ酸が、カルボキシ-末端からアミノ-末端の順番で1個毎に縮合されるような反応、並びに樹脂又はペプチドのアミノ基の保護基に結合したアミノ酸が放出される反応の交互反復により、ペプチド鎖がこの様式で延長される。固相合成法は、使用される保護基の種類に応じて、tBoc法とFmoc法に大きく分類される。典型的には、使用される保護基は、アミノ基についてtBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl-Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br-Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tds(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)及びCl2-Bzl(2,6-ジクロロベンジル);グアニジノ基について、NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル);並びに、ヒドロキシル基についてtBu(t-ブチル)である。所望のペプチドの合成後、脱保護反応が施され、固相から切断される。このようなペプチド切断反応は、Boc法についてはフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸により、並びにFmoc法についてはTFAにより実行することができる。
【0079】
本発明のポリペプチドの精製は、この目的に関して公知の方法、すなわち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動などを含む従来の手法のいずれかにより行うことができる。本発明のタンパク質の精製に優先的に使用される更なる精製手法は、標的タンパク質に結合し並びにカラム内に含まれたゲルマトリックス上に生成及び固定される、モノクローナル抗体又はアフィニティー基を使用するアフィニティークロマトグラフィーである。このタンパク質は、ヘパリン又は特異的抗体によりカラムに結合する一方で、不純物は通過するであろう。洗浄後、pH又はイオン強度の変化により、このタンパク質はゲルから溶離される。あるいは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)を使用することができる。溶離は、タンパク質精製に一般に使用される水-アセトニトリル-ベースの溶媒を用いて行うことができる。
【0080】
本発明の新規ポリペプチド、及びそれらに関連して明らかにされた試薬(抗体、核酸、細胞)の開示は、細胞又は動物におけるそれらの発現レベルを増強又は低下する化合物のスクリーニング及び特徴付けも可能にする。
【0081】
"オリゴヌクレオチド"は、化学的に合成することができる一本鎖ポリデオキシヌクレオチド又は二本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかを意味する。このような合成オリゴヌクレオチドは、5'リン酸を含まず、従って他のオリゴヌクレオチドに、キナーゼの存在下でATPによりリン酸を添加することなく連結しないであろう。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていない断片に連結するであろう。
【0082】
本発明は、本発明の化合物の精製された調製物(ポリペプチド、核酸、細胞など)を含む。本明細書で使用される精製された調製物は、本発明の化合物を乾燥重量当たり少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%含有する調製物を意味する。
【0083】
本明細書は、いくつかの可能性のある用途を有する一連の新規フィブリリン-様ポリペプチド及び関連試薬を開示している。特に本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が疾患の治療又は予防において望ましい場合は、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞のような試薬、又はそれらの発現を増強する化合物が使用される。
【0084】
従って本発明は、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、活性成分として含有する、本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要である疾患の治療又は予防のための医薬組成物を開示している。これらの医薬組成物の調製プロセスは、開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、医薬として許容できる担体と一緒にすることを含む。本発明のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要である疾患を治療又は予防する方法は、治療的有効量の開示されたフィブリリン-様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コードしている核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物の投与を含む。
【0085】
本明細書において開示された試薬の中で、本発明のポリペプチドの発現又は活性を低下するリガンド、アンタゴニスト又は化合物は、いくつかの用途を有し、特にこれらは、本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は診断において使用され得る。
【0086】
従って本発明は、活性成分として、そのようなポリペプチドの発現又は活性を低下するリガンド、アンタゴニスト、化合物を含有している、本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患を治療又は予防するための医薬組成物を開示している。これらの医薬組成物の調製法は、このリガンド、アンタゴニスト、又は化合物を、医薬として許容できる担体と一緒にすることを含む。本発明のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防の方法は、治療的有効量のアンタゴニスト、リガンド又は化合物を投与することを含む。
【0087】
本発明の医薬組成物は、フィブリリン-様ポリペプチド又は関連試薬に加え、適当な医薬として許容できる担体、動物への投与に適した、生物学的に適合性のある溶剤及び添加剤(例えば、生理食塩水)を含み、最終的には活性化合物の医薬として使用することができる調製物への処理を促進する、助剤(賦形剤、安定化剤、アジュバント又は希釈剤など)を含有する。
【0088】
この医薬組成物は、投与様式の必要性に合致するいずれかの許容できる方法で製剤化することができる。例えば、バイオマテリアル、糖-高分子接合体、ヒドロゲル、ポリエチレングリコール及び他の天然の又は合成のポリマーを用い、薬物送達効率に関して活性成分を改善することができる。具体的投与様式を確証するための技術及びモデルは、文献に明らかにされている(Davis BG及びRobinson MA, 2002;Gupta Pら, 2002; Luo B及びPrestwich GD, 2001;Cleland JLら, 2001; Pillai O及びPanchagnula R, 2001)。
【0089】
これらの目的に適したポリマーは、生体適合性、すなわち生物学的システムに対して無毒のものであり、そのようなポリマーの多くは公知である。このようなポリマーは、事実上疎水性又は親水性で、生分解性、非-生分解性、又はそれらの組合せであってよい。これらのポリマーは、天然のポリマー(コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸など)に加え、合成ポリマー(ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物など)を含む。疎水性非-分解性ポリマーの例は、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリメチルメタクリレートがある。親水性非-分解性ポリマーの例は、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、及びそれらのコポリマーを含む。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)のような、エチレンオキシドの連続する反復単位を含む。
【0090】
活性成分の所望の血中レベルを確立するために許容できる投与様式を、当業者は使用及び決定することができる。例えば投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、経口、又は口腔内の経路などの様々な非経口経路であってよい。本発明の医薬組成物は、予め定められた速度でのポリペプチドの持続投与のために、デポ注射、浸透圧ポンプなどを含む、持続放出又は制御放出剤形で、好ましくは正確な投与量の単回投与のための単位剤形で、投与することもできる。
【0091】
非経口投与は、ボーラス注射又は時間をかけた段階注入であることができる。非経口投与のための調製物は、滅菌した水性又は非-水性の液剤、懸濁剤、及び乳剤を含み、これらは当該技術分野において公知の助剤又は賦形剤を含有してもよく、並びに慣習的方法に従い調製することができる。加えて、油性注射用懸濁剤として適している、活性化合物の懸濁剤を投与しても良い。適当な親油性溶媒又は溶剤は、ゴマ油のような脂肪油、ゴマ油のような合成脂肪酸エステル、又はオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステルを含む。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランのような、懸濁剤の粘度を増加する物質を含有してもよい。任意に、懸濁剤は、安定化剤を含有してもよい。医薬組成物は、注射投与に適した溶液を含み、これは賦形剤と共に、活性化合物の約0.01〜99.99%、好ましくは約20〜75%含む。
【0092】
語句"治療的有効量"は、疾患の経過及び重症度に影響を及ぼし、そのような病理の低下又は寛解につながるのに十分な活性成分の量を意味する。有効量は、投与経路及び患者の状態によって決まるであろう。
【0093】
語句"医薬として許容できる"は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、及び投与される宿主に対し毒性がない担体を含むことを意味する。例えば、非経口投与に関して、前記活性成分は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンゲル液のような溶剤中に、注射用の単位剤形で製剤することができる。担体は、デンプン、セルロース、タルク、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及びワセリン、動物性、植物性もしくは合成起源の様々な油分(ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油)から選択することもできる。
【0094】
投与される量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態及び体重、存在するならば併用治療の種類、治療頻度、望ましい作用の性質に応じて決定されることも、理解される。投与量は、当業者に理解及び決定されるように、個々の対象にあわせることができる。各治療に必要な総用量は、反復用量又は単回用量で投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対する、もしくは状態の他の症状に対する他の治療薬と組合せて投与されてもよい。通常の活性成分の一日量は、0.01〜100mg/kg体重/日で構成される。分割用量で、又は持続放出剤形で投与される通常1〜40mg/kg体重/日が、所望の結果を得るために有効である。2回目又は引き続きの投与は、その個人に投与された初回もしくは前回の用量と同じ、より少ない又はより多い投与量で行うことができる。
【0095】
治療的又は生成目的を有する方法とは別に、いくつかの他の方法が、本明細書において明らかにされたフィブリリン-様ポリペプチド及び関連試薬を使用する。
第一の例において、本発明のフィブリリン-様ポリペプチドに関連した疾患の治療に有効な候補化合物をスクリーニングするための方法が提供され、該方法は:
(a)そのようなポリペプチドを発現する宿主細胞、当該ポリペプチドの増強又は減少された発現レベルを有する非-ヒトトランスジェニック動物あるいはトランスジェニック動物細胞を、候補化合物と接触する工程、及び
(b)化合物の動物又は細胞に対する作用を決定する工程を含む。
【0096】
第二の例において、候補化合物を、本発明のポリペプチドのアンタゴニスト/インヒビター又はアゴニスト/アクチベーターとして同定する方法が提供され、この方法は:
(a)ポリペプチド、化合物、及び哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜を接触する工程;及び
(b)この分子が、哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜と、ポリペプチドの相互作用、又はそのような相互作用から生じる反応を、ブロック又は増強するかどうかを測定する工程を含む。
【0097】
第三の例において、試料中の本発明のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する方法は、ポリペプチド又はコードしているRNA/DNAのいずれかを検出することができる。従って、このような方法は:
(a)タンパク質-含有試料を提供する工程;
(b)該試料を、本発明のリガンドと接触する工程;及び
(c)該ポリペプチドと結合した該リガンドの存在を決定し、これにより該試料中のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する工程を含む。
【0098】
別の方法は:
(a)核酸-含有する試料を提供する工程;
(b)該試料を、本発明の核酸と接触する工程;及び
(c)該核酸の、試料中の(into)核酸とのハイブリダイゼーションを決定し、これにより試料中の核酸の存在を決定する工程を含む。
【0099】
この意味において、配列番号:1、配列番号:5、又は配列番号:12に記載のヌクレオチド配列に由来したプライマー配列を、更にポリメラーゼ連鎖反応増幅により、試料中の本発明のポリペプチドをコードしている転写産物又は核酸の存在又は量を決定するために使用することができる。
【0100】
本発明の更なる目的は、本明細書で開示する1又は複数の試薬:本発明のフィブリリン-様ポリペプチド、アンタゴニスト、リガンド又はペプチドミメティクス、単離された核酸又はベクター、医薬組成物、発現している細胞、又は発現レベルを増加もしくは減少する化合物を含む、試料中の本発明のフィブリリン-様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するキットである。
【0101】
このようなキットは、in vitro診断法又はスクリーニング法において使用することができ、それらの実際の組成物は、試料の具体的様式(例えば、患者由来の生物学的試料組織)、及び測定される分子種に適合されなければならない。例えば、フィブリリン-様ポリペプチドの濃度を測定することが望ましい場合、キットは、ウェスタンブロットで得られるシグナルを比較するために、精製された形の抗体及び対応するタンパク質を含有してもよい。あるいは、フィブリリン-様ポリペプチドの転写産物の濃度を測定することが望ましい場合は、このキットは、対応するORF配列でデザインされた特異的核酸プローブを含むか、又はそのようなプローブを含有する核酸アレイの形であってよい。これらのキットは、タンパク質-、ペプチドミメティクス-、又は細胞-ベースのミクロアレイの形であっても良く(Templin MFら, 2002;Pellois JPら, 2002;Blagoev B及びPandey A, 2001)、本明細書で明らかにされたタンパク質、ペプチドミメティクス及び細胞を使用することにより、ハイ-スループットプロテオミクス試験を可能にする。
【0102】
本明細書は、皮膚が加齢、損傷もしくは太陽によりダメージを受けたもの、又はそれらからダメージを受けた皮膚の回復のため、更には多発性硬化症、癌、骨折もしくは病変後の骨、関節もしくは靱帯の再建、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管系疾患及び線維症(肝線維症、腎線維症、肝炎及び腎障害を含む)のような、疾患及び状態の治療又は予防において、適宜製剤された医薬組成物中の活性成分として有用である、新規フィブリリン-様ポリペプチド及び一連の関連試薬を開示している。
【0103】
本発明のポリペプチド及び関連試薬の治療的用途は、薬物発見及び前臨床開発時のフィブリリン-様ポリペプチド及び他の生物学的産物のバリデーションに関して、動物細胞、組織を使用するin vivo/in vitroアッセイ手段によるか、又は公知のin silico/コンピュータ支援の方法(Johnson DE及びWolfgang GH, 2000)により、評価(安全性、薬物動態及び有効性に関して)される。
【0104】
治療的用途
SCS0008核酸分子、それらのポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストは、本明細書に列記されたものを含む多くの疾患、障害又は状態を治療、診断、改善、又は予防に使用される。
【0105】
SCS0008ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストは、SCS008ポリペプチドの活性を調節する分子、SCS0008ポリペプチドの成熟型の少なくとも1種の活性を増加又は減少するいずれかの分子を含む。アゴニスト又はアンタゴニストは、SCS0008ポリペプチドと相互作用するタンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、又は低分子量の分子のような、コファクターであってもよく、これによりそれらの活性を調節する。
【0106】
可能性のあるポリペプチドアゴニスト又はアンタゴニストは、SCS0008ポリペプチドの可溶型又は膜-結合型のいずれかと反応する抗体を含む。SCS0008ポリペプチドの発現を調節する分子は、典型的には、発現のアンチセンスレギュレーターとして作用することができるSCS0008ポリペプチドをコードしている核酸を含む。
【0107】
Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチン(又はPOEM)は、α8β1インテグリンの新規リガンドであることを示した。SCS0008は、ネフロネクチンのヒトオルソログであるように見え、及びSCS0008ポリペプチドはRGDインテグリン結合トリペプチドを含む(実施例4)ので、SCS0008は、恐らくα8β1インテグリンのリガンドとしても作用するであろう。α8β1インテグリンは、特定の疾患の発症に関係することは分かっているので、リガンドとしてのSCS0008は、それらの障害の開始に寄与する因子として作用するであろう。加えて、Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチンは、以下に言及した臓器及び組織を含む、多くの組織において発現されることを示している。従って本発明のSCS0008ポリペプチドは、単に以下に言及する組織及び臓器において有用なだけではなく、Morimuraら及びBrandenbergerらが言及したもの全てにおいて有用である。
【0108】
Morimuraら及びBrandenbergerらは、ネフロネクチンは、腎臓の形態発生及び機能に関連することを示している。Miner Jeffreyは、ネフロネクチンは、濾過関門の確立及び維持において役割を果たし得ることを示唆している(Jeffrey H. Miner, The Journal of Cell Biology, Volume 154, Number 2, July 23,2001, pp. 257-259)。更にMiner Jeffreyは、ネフロネクチン及びラミニン-10は、ヴォルフ管及び尿管芽基底膜中に同時局在するように見え、平行又は共通のいずれかの経路により、これらは効率的尿管芽の外側伸展及び枝分かれを促進するために互いに相互作用し及び/又は協力することが可能であることを指摘している。加えて、Brandenbergerらは、分泌されたグリア細胞-由来の神経栄養因子(GDNF)は、尿管芽の内側伸展を制御することが示されたこと、並びにα8β1は、このシグナル伝達経路に恐らく関与していることを指摘している。GDNF-リガンドGFRα1(同じくGFRα2、GFRα3、GFRα4)は、RETチロシンキナーゼを活性化することも知られている。Schuchardtらは、RETは、尿管芽の成長及び分岐に必要とされることを認めた。Eya1は、ヒトの腎臓及び尿管の先天性奇形にも関連している(CAKUT;Nakanishi K, Yoshikawa N. Pediatr Int. 2003 Oct; 45 (5): 610-6.)。このようなSCS0008核酸分子、それらのポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニスト、特にSCS0008-SV2(これは腎臓由来のスプライシング変異体である、実施例3)は、腎臓の分岐欠損、嚢腫、結石、膀胱尿管灌流、腎不全、濾過障壁の欠損、水腎、腎臓及び尿管の先天性奇形(CAKUT)、例えば両側性腎欠損の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008アンタゴニスト、特にSCS0008-SV2アンタゴニスト(例えば、SCS0008に標的化された抗体)は、腎臓癌、特に腎形成異常又は形成不全の診断又は治療において有用であることができる。
【0109】
Luら(Lu Mら, J Cell Sci. 2002 Dec 1; 115 (Pt 23): 4641-8)は、α8β1インテグリンは、正常肺の肺胞間質細胞により発現され、線維症発症時にアップレギュレーションされることを示した。α8β1インテグリンの別のリガンド、潜伏(latency)-随伴ペプチド(LAP)-トランスフォーミング増殖因子-β1(TGFβ1)の結合は、細胞増殖を生じ、その結果線維症の発症に重要である。理論に因われることを欲するものではないが、SCS0008は、同様にα8β1インテグリン結合によりこの細胞増殖に関連される。加えて、Sparrow及びLambは、GDNFは気道平滑筋(ASM)により生成されるように見え、これは始原の肺の内在成分であり、平滑筋発生に関連している(Sparrow MP, Lam JP. Respir Physiol Neurobiol., 2003 Sep 16; 137(2-3): 361-72)。Levineらは、活性化された肝サテライト細胞、及び肝における筋線維芽細胞の同等物におけるα8β1インテグリンの新規発現を明らかにした(Levine Dら, Am J Pathol. 2000 Jun; 156(6): 1927-35)。Bauhauらは、1型神経線維腫症におけるGDNFの役割を示唆している(Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM)参照、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query fegi? ab=OMIM, OMIM*600837)。神経線維腫症は、大頭蓋症、蝶形骨形成異常、リッシュ結節(虹彩過誤腫)、緑内障、隔離症、腎動脈狭窄、高血圧、脊柱側彎症、脊椎披裂、偽関節、長骨皮質の薄化、局所的骨過形成、膝蓋骨欠如、神経線維腫、叢状神経線維腫、カフェ-オ-レ斑、腋窩雀斑(Axillary freckling)、鼠径部雀斑、精神遅滞、30%学習障害、10%軽度精神遅滞、水管狭窄、水頭症、新生物形成で、視神経膠腫、髄膜腫、視床下部腫瘍、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、十二指腸類癌腫、ソマトスタチノーマ、副甲状腺腺腫、褐色細胞腫、CNSを含む複数の他の部位の腫瘍などを含む、多種多様な臨床的概要を示す。従って、本発明のSCS0008ポリペプチド、それらのアゴニスト又はアンタゴニストは、神経線維腫症の個々の又は組合せた症状又は臨床の転帰を低下するか又は診断もしくは治療する上で有用でもある。加えて、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト、並びに特にSCS0008-SV1(これは、肺由来のスプライシング変異体である、実施例3)は、線維症、好ましくは肺線維症、肝線維症、1型神経線維腫、Watson症候群、又は難治性の急性呼吸促迫症候群(ARDS)の診断又は治療において有用であることができる。加えて、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト、特にSCS0008-SV1は、平滑筋発生において有用であることができる。
【0110】
Brandenbergerらは、α8β1を介して作用するネフロネクチンは、GDNFの増強された発現を生じるシグナル伝達経路を誘導するか、あるいは細胞外マトリックスにおけるこの因子の分泌又はその局在化を促進することにより、GDNFと相乗作用することを示唆した。GDNFは、特定の疾患の発達に関連することはわかっているので、SCS0008は、可能性のあるリガンドとして又は少なくともGDNFの発現を増強することにより、それらの障害の発生に寄与する因子として十分に作用するであろう。Matti Airaksinen及びMart Saarmaは、脳におけるGDNFファミリーの役割を検証している(Matti S. Airaksinen and Mart Saarma, Nature Reviews, Volume 3, May 2002, pp.383-394)。彼らは、GDNFは、運動ニューロン疾患又は運動ニューロン損傷(GDNFは、長期の運動ニューロン生存及び末梢神経損傷後の軸索再生を支援することができる)、知覚再生(GDNFは、疼痛の神経病理モデルにおいて強力な鎮痛作用を生じ、かつ知覚軸索の脊髄への戻り再生を引き起こすことができ;局所的GDNF発現は、シュワン細胞の病巣への移動を生じ、これは損傷後の軸索再生の髄鞘再生につながる、Blesch Aら, J Comp Neurol. 2003 Dec 15; 467(3): 403-17)、糖尿病ニューロパシー、ニューロパシー疼痛、虚血又は卒中を含む知覚障害(酸素欠乏症の前又は直後に投与されたGDNFは、虚血性脳損傷を軽減することができる)に関連し、好ましくはGDNFは、卒中の初期相、癲癇(GDNFは痙攣感受性を変更する)、パーキンソン病又は多発性硬化症のような神経変性障害(GDNFは、神経毒が誘導したドパミン作用性ニューロンの死滅を妨げ、並びに機能回復を促進することができる;好ましくはGDNFは、ヘパリンと同時投与される;同じく、Jeffrey H. Kordower, Ann Neurol 2003, 53 (suppl 3): S120-134、及びBleschらも参照)、並びに最後に耽溺時(GDNFのVTAへの注入は、慢性コカイン及びモルフィンへの生化学的適応に加え、コカインの報酬効果(rewarding effect)をブロックする)に投与されなければならないことを指摘している。Jollivetらは、GDNF-放出するミクロスフェアは、パーキンソン病の治療における有望な戦略であることを示している(Jollivet Cら, Biomaterials. 2004 Feb; 25(5): 933-42)。同様に、SCS0008-放出するミクロスフェアを使用することができる。Naganoらは、GDNFは、坐骨神経結紮(慢性狭窄性損傷)又は脊髄神経結紮に使用することができることを示唆している(Nagano Nら、Br J Pharmacol. 2003 Dec; 140(7): 1252-60)。Taiらは、GDNFは、脊髄損傷(SCI)又は脊髄挫傷の治療に使用することができることを示唆している(Tai MHら、Exp Neurol. 2003 Oct; 183(2): 508-15)。Ochiai Hらは、新生児の神経節前エルブ麻痺モデルにおけるGDNFの局所投与は、欠損の著しい改善を生じることを示している(Ochiai Hら、Neurosurgery. 2003 Oct; 53(4): 973-7)。Aszmanらは、運動ニューロンの外因性栄養支援(例えば、GNDF及び/又はBDNF)は、重度の新生児神経叢障害の全ての種類の治療において役割を有することを示している(例えば、産科腕神経叢病巣;Aszmann OCら、Plast Reconstr Surg. 2002 Sep 15; 110(4): 1066-72)。Tolbert及びClarkは、GDNFは、遺伝性プルキンエ細胞の変性及び歩行失調の開始を遅延することを指摘している(Tolbert DL, Clark BR. Exp Neurol. 2003 Sep; 183(1) : 205-19)。シュワン細胞は、神経鞘腫を発症する素因がある(Bartolami Sら, J Neurobiol. 2003 Dec; 57(3): 270-90)。従って、GDNF又はSCS0008のアンタゴニスト(抗体)を使用することにより、神経鞘腫を治療するか、又は延長線上で他の脳関連の癌を治療することができる。Perez-Garciaらは、GDNFにより誘導された[Ca2+] Iの変化は、カルモジュリンによるPI 3-キナーゼ活性化の直接の調節に関連している機構を通じ、神経生存を促進することを示し、その結果神経栄養因子により媒介された神経生存のためのシグナル伝達カスケードにおけるCa2+及びカルモジュリンの中心的役割を示唆している(Perez-Garcia MJら, J Biol Chem., 2003 Nov 20, Epub;同じく、Wang Jら, Neurosignals. 2003 Mar-Apr; 12(2): 78-88も参照)。SCS0008ポリペプチドは、3種のカルシウム-結合EGF-様ドメインを含むので、前述の機構へのSCS0008ポリペプチドの関与及びその結果の神経生存は、増強される。McBrideらは、GDNFの線条へのウイルス-媒介型遺伝子導入は、ハンチントン病の齧歯類モデルにおける神経解剖学的及び行動学的保護を提供することを示している(McBride JLら, Exp Neurol. 2003 Jun; 181(2): 213-23)。Alberchらは、神経栄養因子(例えば、GDNF)は、ハンチントン病又は多系統萎縮症のような、線条体黒質の変性障害に影響を及ぼす基底神経節回路の選択的保護を提供することができることを示唆している(Alberch Jら、Brain Res Bull., 2002 Apr ; 57(6): 817-22)。ラミニン-10及びβ1インテグリンも、神経生存に関連している(Chen Zu-Linら、Molecular Biology of the Cell, 2003 Jul. Vol. 14: 2665-2676)。Chenらは、ラミニン-10は、神経死に対し保護することを示している。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、変性障害、線条体黒質の変性障害、ハンチントン病、多系統萎縮症の診断又は治療において有用であることができる。
【0111】
従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、運動ニューロン疾患、運動ニューロン損傷、おきまりの(favorising)知覚再生、糖尿病ニューロパシー、虚血又は卒中におけるニューロパシー疼痛を含む知覚障害(好ましくはSCS0008は、卒中の初期相において投与されなければならない)、癲癇、パーキンソン病又は多発性硬化症のような神経変性障害(好ましくは、SCS0008はヘパリンと及び/又はミクロスフェア手段により同時投与される)、線条体黒質の変性障害、ハンチントン病、多系統萎縮症、坐骨神経結紮(慢性狭窄性損傷)又は脊髄神経結紮、脊髄損傷(SCI)もしくは脊髄狭窄、新生児の神経節前エルブ麻痺、産科腕神経叢病巣のような新生児神経叢障害;遺伝性プルキンエ細胞の変性及び歩行失調の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008は、単独で、又は栄養因子(例えば、ニュールツリン(neurturin)、アルテミン、パーセフィン(persephin)、神経増殖因子、脳-由来神経栄養因子、GDNF)、ヘパリン又は他の治療薬と組合せて投与される。SCS0008のアンタゴニスト(例えば抗体)を使用し、神経鞘腫又は他の脳に関連した癌を治療することができる。
【0112】
GDNFは、下位消化管の神経叢における神経節細胞の欠損を特徴とする先天性障害である、ヒルシュスプルング病(HSCR)に関連しているように見える(Garcia-Barcelo Mら、Clin Chem. 2003 Nov 18. Epub;同じく、Benailly HKら、Clim Genet. 2003 Sep; 64(3): 204-9参照;同じくOMIM*600837参照)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、ヒルシュスプルング病(HSCR)、換気症候群(オンディーヌののろい)の診断又は治療において有用であることができる。
【0113】
上皮増殖因子(EGF)受容体ファミリーからのシグナルは、ラミニンへのインテグリン-依存型接着と一緒に、癌の疾患進行及び転移に寄与すると考えられる(Zamurs Iら, Biomed Chromatogr. 2003 Mar-Apr; 17(2-3): 201-11)。Zamursらは、結腸癌細胞株は、複数のインテグリン受容体を介しラミニン-10を分泌及び接着すること、並びにEGFは、同じ基質(substrate)のこれらの細胞の散在及び移動を刺激することを示した。ラミニン-10/11も、中程度に分化した結腸癌の浸潤端に存在することが示された。Guらは、ラミニン10-11は、β1インテグリン経路の活性化により、ヒト肺癌細胞の移動を強力に推進することを報告している(Gu Jら、Exp Dermatol., 2002 Oct; 11(5): 387-97)。ラミニン及びインテグリンは、膵臓機能にも関連している。Funahashiらは、膵臓癌細胞における一部のインテグリンサブユニットの発現は、GDNFにより増強されることを示した。このGDNFによる接着能及び侵襲能の増強及び関係の増加は、GDNF受容体又はインテグリンβ1サブユニットのブロックにより阻害された(Funahashi Hら、Pancreas, 2003 Aug; 27(2): 190-6)。Okadaらも、GDNFは、in vitroにおいて膵臓癌細胞侵襲を促進することを報告している(Okada Yら, Surgery, 2003 Aug; 134(2): 293-9)。Japonらは(2002)、GDNFは、下垂体部腫瘍、より詳細には腺腫、コルチコトロピノーマ、ソマトトロピノーマ、プロラクチノーマに関連していることを示唆している(OMIM*600837参照)。RET遺伝子及び最終的にはGDNF遺伝子は、多発性内分泌腫瘍IIA型及びIIB型に加え、髄質性甲状腺癌に関連している(OMIM*164761及びOMIM*162300)。ネフロネクチン同様、Eyes absent 1 (EYA1)のホモ接合性は、尿管芽出芽の不在とそれに続く後腎誘導の欠損を生じる(OMIM*601653)。加えて、GDNF発現は、Eya1-/-後腎間葉においては検出されなかった(OMIM*601653)。従ってネフロネクチン及びEya1は相互作用するであろう。Eya1は、鰓性耳腎形成異常及び鰓性耳腎症候群に関連している。従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)に加えSCS0008-SV1及びSCS008-SV2のアンタゴニスト(これらは各々、好ましくは肺癌又は腎癌に使用される)は、膵臓癌、下垂体部腫瘍、より詳細には腺腫、コルチコトロピノーマ、ソマトトロピノーマ、プロラクチノーマ、並びに多発性内分泌腫瘍IIA型及びIIB型、髄質性甲状腺癌、肺癌、乳頭状甲状腺癌、結腸の神経節細胞欠損、結腸癌、MEN2-関連腫瘍、褐色細胞腫、筋萎縮側索硬化症、鰓耳腎形成異常及び鰓性耳腎症候群の診断又は治療に有用であることができる。
【0114】
ラミニン-10とネフロネクチンの間の可能性のある相互作用又は協力の観点から(前記参照)、ラミニン-10が関連している障害は、本発明のSCS0008ポリペプチドにより治療又は診断することができる。Spessottoらは、白血病性細胞の優先的移動運動は、ラミニンのアイソフォーム8及び10に向かうことを示した(Spessotto Pら, Matrix Biol., 2003 Jun; 22(4): 351-61)。これらのラミニンとの運動性-促進する相互作用は、β1インテグリンにより媒介される。加えて、Yu及びTaltsは、インテグリン及びα-ディストログリカンの両方が癌細胞上で発現され、その結果ラミニン-10/11への結合は、内皮及び上皮基底膜を通じた細胞移動にとって重要であり、従って転移にとって重要であることを指摘している(Yu H及びTatls JF, Biochem J., 2003.371: 289-299)。彼らは更に、Ca2+イオンが、いずれかの方法でα5LG4-5を通じたα-ディストログリカンとラミニン10/11の間の相互作用に関与しているように見えることも追加している。理論に囚われることを欲するものではないが、ネフロネクチンは、この相互作用において、そのカルシウム-結合EGFドメインを介して役割を有するであろう。Liらは、ラミニン-10は、毛包発達を回復し、その結果皮膚発達欠損の補正を可能にすることができることを示した(Li Jら, Embo J., 2003 May 15; 22(10): 2400-10)。ラミニン及びβ1インテグリンは、造血にも関連し(Gu YCら, Blood, 2003 Feb 1; 101(3): 877-85)、更には創傷修復時の血管新生にも関連している(Li Jら, Microsc Res Tech., 2003 Jan 1; 60(1): 107-14)。Kikkawaらは、Lutheran式血液型タンパク質(Lu)は、ラミンα5のIgスーパーファミリー膜貫通受容体であること、並びにLuは、鎌状細胞疾患及び癌を含む、正常及び罹患の両プロセスに関連していると考えられることを指摘している(Kikkawa Yら, J Biol Chem., 2002 Nov 22; 277(47): 44864-9)。彼らは、Luはラミニン10/11にin vivo及びin vitroにおいて特異的に結合することも示している。加えて、ラミニン-β1は、新生児弛緩性皮膚、マルファン症候群様又はマルファン症候群、及びくも指症に関連している(OMIM*150240)。
【0115】
従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)に加え、SCS0008-SV1及びSCS008-SV2アンタゴニスト(これらは各々、好ましくは肺癌又は腎癌に使用される)は、白血病、癌の転移の低下又は阻害において、診断又は治療に有用である。
【0116】
従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストは、皮膚発達欠損、造血-関連疾患、鎌状細胞疾患、新生児弛緩性皮膚、マルファン症候群様又はマルファン症候群及びくも指症、並びに創傷修復における好ましい血管新生の診断又は治療において有用であることができる。
【0117】
Yomogidaらは、ヒトGDNF cDNAのセルトリ細胞へのトランスフェクション後のマウス精巣における胚性幹細胞(GSC)の劇的増殖を示した(Yomogida Kら, Biol Reprod., 2003 Oct; 69(4): 1303-7)。従って、SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、胚性幹細胞の増幅において有用であることができる。
【0118】
Sariola及びMengは、GDNFは、セルトリ細胞により発現されると述べ、かつGDNFは、未分化の精原細胞において細胞の運命の決定を調節することを示した。加えて、彼らは、精巣においてGDNFを過剰発現しているマウスにおいて、未分化の精原細胞は細管に蓄積し、精子は生成されず、このマウスは不妊症であることを示している。数年後に彼らは、GDNF過剰発現しているマウスは、頻繁に(89%)精巣癌を発症し、その大半は両側性(56%)であり、この癌は古典的男性精上皮腫に類似していることを認めた。従ってSCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)は、男性不妊症、精上皮腫の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、精原細胞の発生、増殖、及び分化において有用である。
【0119】
Thibaultら(Thibault Gら, Am J Physiol Cell Physio., 2001 Nov; 281(5): C1457-67)は、ラットの心線維芽細胞は、α8β1インテグリンを保有することを認めた。加えて、心線維芽細胞のアンジオテンシンII(ANGII)又はTGFβ1による刺激は、タンパク質の増加及びα8β1インテグリン受容体密度の50%の強調を生じる。先天性又は後天性の低いネフロン数は、単に腎不全のみではなく、高血圧ものリスクの増加に結びつけられている(Cullen-McEwen LAら, Hypertension, 2003 Feb; 41(2): 335-40)。Cullenらは、GDNFヘテロ接合体マウスは、上昇した動脈圧、糸球体肥大及び濾過過剰を有することを示している。Wintourらは、GDNFは、成人の高血圧発症及び心血管系疾患にかかりやすくする因子であることを指摘している(Wintour EMら, Placenta., 2003 Apr; 24 Suppl A: S65-71)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、高血圧又は心血管系疾患の診断又は治療において有用であることができる。
【0120】
Chenらは、専らその標的においてGDNFの増大したレベルは、発達上の細胞死の間に通常死亡する動眼神経の30%をレスキューし、そのレスキュー率は、全身GDNF適用によるものに類似していることを示している(Chen Jら, Mol Cell Neurosci., 2003 Sep; 24(1) : 41-56)。Wordingerらは、オートクリン及び/又はパラクリンGDNFシグナル伝達の可能性は、緑内障病理に関連した組織である篩板内に存在することを述べている(Wordinger RJら, Mol Vis., 2003 Jun 16; 9: 249-56)。加えて、RothermelとLayerは、GDNFは、少なくともin vitroにおいて、杆状体(rod)受容体に影響を及ぼすことを示唆している(Rothermel A, Layer PG., Invest Ophtalmol Vis Sci., 2003 May; 44(5): 2221-8)。発達段階に応じて、GDNFは、それらの増殖、分化及び生存を調節する。Karlssonらは、GDNF標識は、トリ胚の4-5日目の網膜において主に認められるが、弱い標識は、後期の(later)細胞で散在した網膜細胞においても認められることを示している(Karlsson Mら, Mech Dev., 2002 Jun; 114(1-2) : 161-5)。彼らは、c-ret標識は、神経節細胞、無軸索細胞及び水平細胞上に;GRFα1は無軸索細胞及び水平細胞上に;並びに、GFRα2は神経節細胞、無軸索細胞及び光受容器上に認められることも示している。Ljubimovらは、基底膜(BM)成分、特にフィブロネクチン及びラミニン-10は、白内障手術後(PCS)の角膜において、大きく変動する(40-60%)ことを示した。加えて彼らは、テネイシン-C及びフィブリリン-1はほとんどの罹患した角膜において認められるが、PCS角膜においては認められないことを発見した(Ljubimov AVら, Cornea. 2002 Jan; 21(1): 74-80)。Eya1は、白内障にも関連している(OMIM*601653参照)。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、動眼神経ニューロン、光受容器、及び特に桿状受容体(ロゼット球)、神経節細胞、無軸索細胞及び水平細胞の発達、増殖、分化及び生存において有用であるか、又は角膜浮腫疾患、フックス角膜ジストロフィー、白内障又は眼球損傷の診断又は治療において有用であることができる。SCS0008アンタゴニスト(例えば、SCS0008を標的とする抗体)は、緑内障の診断又は治療において有用であることができる。
【0121】
Gladsonらは、α8β1インテグリンは、新生仔ラット星状細胞において発現されることを確立した。彼らは、未刺激の新生仔ラット星状始原細胞は、α8β1及びα5β5インテグリンを利用し、ビトロネクチンに接着すること、及びこの接着は、1型プラスミノーゲン活性化阻害因子(PAI-1)により調節されることも明らかにしている。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、胚マトリックス出血及び梗塞の診断又は治療において有用であることができる。
【0122】
Littlewoodらは、α8β1インテグリンは毛細胞分化及び不動線毛成熟を調節すること、及びインテグリン遺伝子の変異は、内耳疾患につながり得ることを示唆している(Littlewood Evans Aら, Nat Genet., 2000 Apr; 24(4): 424-8)。更に、GDNFは、生後の内耳における役割(蝸牛において認められたGDNF発現)に加え、発達時のその役割を果たすことが示唆されている(Stankovic KM, Corfas G. Hear Res., 2003 Nov; 185(1-2): 97-108)。Kawamotoらは、GDNF及びTGF-β1のアデノウイルス-媒介(demiated)した過剰発現は、耳毒性外傷から蝸牛有毛細胞及び聴覚を保護することを示唆している(Kawamoto Kら, Mol Ther., 2003 Apr; 7(4): 484-92)。彼らは、内耳のGDNF過剰発現は、耳毒性により誘導された変性から有毛細胞を保護することも指摘している。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、単独で、又はTGF-β1と組合せて、内耳疾患、内耳障害(例えば、耳毒性外傷)、鼓室階線維症、又は内耳有毛細胞(蝸牛有毛細胞)の発生、分化及び生存を診断又は治療する上で有用であることができる。
【0123】
Moursiらは、細胞外マトリックスとの直接の骨芽細胞相互作用は、α5ss1、α3ss1、α8ss1を含むインテグリン受容体の選択された群により媒介されることを示した。更にMorimuraらは、骨芽細胞の細胞分化の初期段階におけるPOEMの役割、並びにPOEMは、α8β1インテグリンを介したシグナル伝達により、及び細胞-細胞相互作用の媒介により、骨芽細胞の機能において重要な役割を果たすことを示唆している。POEMは、成長、骨代謝、並びにカルシウム及びリン酸のホメオスタシスに密に関連している内分泌器官(副甲状腺、甲状腺、下垂体及び松果体)において発現される。彼らは、このデータは、POEMとカルシウム代謝の間の関係を示唆していることも付け加えた。加えてSCS0008は、3種のEGF-カルシウム結合モチーフを含んでいる。従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニストは、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、成長障害、骨代謝、並びにカルシウム及びリン酸のホメオスタシスに加え、骨芽細胞細胞分化の診断又は治療において有用であることができる。
【0124】
SCS0008タンパク質において、いくつかのドメインが同定されており、これらはSCS0008に関連した疾患の指標である。SMART(Simple Modular Architecture Research Tool、これは遺伝的モバイルドメインの同定及びアノテーション、並びにドメイン構造の解析を可能にする、http://smart.embl-heidelberg.de/)及びドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているそのOMIM(Online Mendelian Inheritance in Man、これはヒト遺伝子及び遺伝的障害を類別しているデータベースである、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/ query.fcgi?db=OMIM)を用い、SCS0008に認められたドメインに関連したヒト疾患を検索することができる(実施例4参照)。EGF-様ドメイン又はカルシウム-結合EGFドメインに関連したOMIMヒト疾患の検索が行われた。これらの疾患の一部は既に先に言及されており、本発明のSCS0008ポリペプチドがこれらの疾患の診断又は治療において有用である可能性を増強している。
【0125】
従ってSCS0008核酸分子、ポリペプチド、並びにそれらのアゴニスト及びアンタゴニスト(抗体としてのSCS0008アンタゴニストは、下記の全ての癌の種類において有用である)は、重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高い骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、Beals症候群、冠動脈心臓疾患、非小細胞肺癌、潰瘍性大腸炎、子宮内膜症、慢性耳炎、良性前立腺肥大、進行した脳腫瘍、膀胱癌、十二指腸潰瘍、転移性乳癌、前立腺癌、乾癬、ヒト子宮平滑筋腫、胃潰瘍、円板状エリスマトーデス、扁平苔癬、結腸直腸癌、急性心筋梗塞、進行性悪性神経膠腫、子宮内膜癌、悪性神経膠腫、頭部及び頚部又は肺の癌、乳癌、喉頭及び下咽頭の癌腫、卵巣腫瘍、疱疹性角膜潰瘍、及び静脈性潰瘍の診断又は治療において有用であることができる。
【0126】
本発明はここで、いかなる意味においても本発明を制限するものではない下記実施例により、具体的態様について説明される。説明の内容は、前記内容を鑑み当業者は実践することができ、結果的に特許請求の範囲の意味及び目的を逸脱しない、あらゆる変更及び交換を含む。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【実施例】
【0129】
実施例1:
ASTRALデータベース(Brenner SEら, "The ASTRAL compendium for protein structure and sequence analysis", Nucleic Acids Res., 2000 Jan 1; 28(1): 254-6)から得たEGFタンパク質ドメイン配列を用い、ヒトゲノム配列(Celeraデータベース)から予測された遺伝子において相同タンパク質配列を検索した。このタンパク質配列は、下記の3種のプログラムのひとつにより作成された、遺伝子予測及びそれらの翻訳から得た:Genescan (Burge C, Karlin S., "Prediction of complete gene structures in human genomic DNA”, J Mol Biol., 1997 Apr 25; 268(1): 78-94)、Grail(Xu Y, Uberbacher EC., “Automated gene identification in large-scale genomic sequences", J Comput Biol., 1997 Fall; 4(3): 325-38)及びFgenesh(Celera社独自のソフトウェア)。
【0130】
EGFドメインの配列プロファイルは、相同配列を並置し及び配列プロファイルを作成するアルゴリズムである、PIMAII(Profile Induced Multiple Alignment;ボストン大学ソフトウェア、verII, Das S及びSmith TF, 2000)を用いて作成した。相同性は、クエリープロファイルとヒット配列の間のグローバル-ローカルアラインメントを作成するPIMAIIを用いて検出した。この場合、このアルゴリズムは、クエリーとしてのEGF機能ドメインのプロファイルと共に使用した。PIMAIIは、クエリープロファイルを、タンパク質配列に翻訳された遺伝子予測のデータベースと比較し、その結果そのドメインを含むDNA配列との合致を同定することができる。更にこの配列の公知のEFG含有タンパク質とのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;NCBI ver2)による比較は、一番近いホモログを同定した(Gish W, States DJ., "Identification of protein coding regions by database similarity search", Nat Genet., 1993 Mar; 3(3): 266-72;Pearson WR, Miller W., "Dynamic programming algorithms for biological sequence comparison", Methods Enzymol., 1992; 210: 575-601;Altschul SFら,"Basic local alignment search tool", J Mol Biol., 1990 Oct 5; 215(3): 403-10)。検出に使用したPIMAIIパラメータは、PIMA先行(prior)アミノ酸確率行列及びZ-カットオフスコア10であった。使用したBLASTパラメータは以下であった:比較行列=BLOSUM62;ワードレングス=3;カットオフE値=10;ギャップオープニング及びイクステンション=デフォルト;フィルターなし。
【0131】
一旦機能ドメインがこの配列において同定されたならば、これらの遺伝子は、一番近いホモログの配列を用いgenewiseアルゴリズムで再度予測した(Birney Eら,"PairWise and Search Wise: finding the optimal alignment in a simultaneous comparison of a protein profile against all DNA translation frames", Nucleic Acids Res., 1996 Jul 15; 24(14): 2730-9)。相同EGFドメインのプロファイルは、PERL(Practical Extraction and Report Language)及びPIMAIIに記載されたPSI-BLAST(Altshulら 1997)スクリプトを用い自動的に作成した。
【0132】
EGFドメインプロファイルを基に作成された当初のクエリーとの464のマッチの中で全部で55種の予測された遺伝子は、新規である可能性があると判断されたので選択した。
【0133】
これらの新規性のあるタンパク質配列は最終的には、BLASTを用いるタンパク質データベース(SwissProt/Trembl, Human IPI and Derwent GENESEQ)の検索により評価し、及び特定のアノテーションは、アミノ酸配列相同性を基に寄与することができる。
【0134】
実施例2:
実施例1に説明された方法により単離されたひとつの配列は、本明細書においてSCS0008ポリペプチド配列と称されるものである。
【0135】
この配列は、ヒトフィブリリン2(更には他のEGFドメイン含有タンパク質)と中央領域において約50%の相同性で存在するにもかかわらず、これはむしろ、ネフロネクチン又はPOEMと称されるふたつの別の群により最近クローニングされた異なる細胞外マトリックスタンパク質をコードしているマウス遺伝子のヒトのより短いスプライシング変異体であると見なされる(Morimuraら, J Biol Chem, 2001 Nov 9; 276(45): 42172-81;Brandenbergerら, J Cell Biol, 2001 Jul 23; 154(2): 447-58;コメント:J Cell Biol., 2001 Jul 23; 154(2): 257-9参照)。このタンパク質は、α8β1インテグリンのリガンドとして作用する接着分子としてこれまで特徴付けられ、かつ様々な臓器、特に腎臓の発達及び機能に関連している。比較的大きいヒト変異体も発見された(SCEP-39 (INCYTE W00248337);SEQID34 (CURAGEN W00110902);SEQID82 (CURAGEN WO0110902);NOV5 (CURAGEN W00257452);PR0334 (GENENTECH W00104311);PR026 (GENENTECH W00104311);及び、PR0334 (GENENTECH W09914328))を参照)が、これらのいずれも、マウス配列としては、提出された配列には対応せず、これらは特に同定された全ての関連するヒト/マウス配列において共通である中央領域及びC-末端領域を欠いている(図1参照)。第一の配列は、最後のEGFドメイン及びプロリン-リッチ領域の間に位置した領域に対応している。
【0136】
実施例3−SCS0008のスプライシング変異体の同定及びクローニング
3.1 緒言
SCS0008は、フィブリリンとの相同性を伴う406個のアミノ酸のEGFドメイン-含有タンパク質をコードしている1700のcDNA予測である。SCS0008予測の完全コード配列を基にしたネストPCRプライマーを用い、各々、ヒト肺(SV1)及びヒト腎臓(SV2)由来のSCS0008の2種のスプライシング変異体を得た。SV1及び2のSCS0008とのアラインメントを図2に示した。
【0137】
SV1は、エキソン8の55個のアミノ酸伸長及び変異Q159Hを含む。SV2も、エキソン8の55個のアミノ酸伸長及び変異Q159Hを含むが、これはエキソン9を欠いている。SV2のクローニング型も、PCR誘導した変異F3Lを含み、これは後にサブクローニング時に補正される。両方のスプライシング変異体は、発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのゲートウェイクローニング法を用い、C-末端6HISタグをサブクローニングした。
【0138】
3.2 SCS0008-SV1のクローニング
3.2.1 ヒト肺cDNAの調製
第一鎖cDNAを、正常肺総RNA(Clontech)から、SuperscriptII RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従って用い、調製した。最終容量12μlとなるよう、1μlのオリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)、2μgヒト肺総RNA、1μlの10mM dNTP混合物(中性pHのdATP、dGTP、dCTP及びdTTP各10mM)及び滅菌蒸留水を、1.5mlエッペンドルフチューブ中で一緒にし、65℃で5分間加熱し、その後氷冷した。内容物を短時間遠心し収集し、4μlの5X第一鎖緩衝液、2μlの0.1M DTT、及び1μlのRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40単位/μl, Invitrogen)を添加した。このチューブの内容物を、穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後1μl(200単位)のSuperScriptII酵素を添加し、ピペッティングにより穏やかに混合した。この混合物は、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。このcDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNaseH(Invitrogen)1μl(2単位)を添加し、この反応混合液を、37℃で20分間インキュベーションした。最終の反応混合液21μlを、滅菌水179μlを添加することにより希釈し、総容量200μlとした。
【0139】
3.2.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
仮想cDNAの完全なコード配列を増幅するために、Primer Designerソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、長さ18〜25塩基のPCRプライマー対をデザインした。55±10℃近傍のTm及びGC含量40〜60%を有するようにPCRプライマーを最適化した。非特異的プライミングをほとんど又は全く伴わず、標的配列(SCS0008)に対して高度の選択性を有するプライマーを選択した。
【0140】
3.2.3 ヒト肺cDNA由来のSCS0008のPCR増幅
遺伝子特異的クローニングプライマー(SCS0008-CP1及びSCS0008-CP2、図3、図4及び表3)を、SCS0008予測の全コード配列にわたる1323bpのcDNA断片を増幅するようにデザインした。遺伝子特異的クローニングプライマーSCS0008-CP1及びSCS0008-CP2を、鋳型としてヒト肺cDNAと共に使用した。PCRは、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを用い、1X AmpiiTaq緩衝液、200μM dNTP、SCS0008-CP1、50pmole SCS0008-CP2、2.5ユニットのAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)及び100ngの肺cDNAを含有する最終容量50μlで行った:94℃で2分間;94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間を40サイクル;引き続き72℃で7分間を1サイクル、並びに4℃での保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い直接精製した。PCR産物を、滅菌水50μlで溶離し、次に増幅産物10μlを鋳型として用い、使用したプライマーがネストプライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestであること以外は前述の条件を用いる第二のPCR反応を行った。増幅産物は、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化し、及び予測された分子量近傍に移動する単独のPCR産物を、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い、ゲルから精製した。PCR産物は、滅菌水50μlで溶離し、直接サブクローニングした。
【0141】
3.2.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物は、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4-TOPO)に、Invitrogen Corporationから購入したTOPOクローニングキットを用い、製造業者の指定した条件を用いサブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、1μlのTOPOベクター及び1μl塩溶液と共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、2μlのTOPO反応液を添加した。この混合液を、15分間氷上でインキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることによりヒートショックした。試料を氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μlを添加した。試料を、振盪しながら(220rpm)、37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。挿入断片を含有するアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRにより同定した。
【0142】
3.2.5 コロニーPCR
コロニーを、滅菌した爪楊枝を用い、50μl滅菌水中に接種した。その後、接種物10μlのアリコートは、使用したプライマーがT7及びT3であること以外は、前述のように、総反応容量20μlでPCRにかけられた。サイクリング条件は以下のようであった:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。その後試料を4℃で維持し(保持サイクル)、その後更に分析した。
【0143】
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分析した。予想されたPCR産物サイズ(マルチクローニング部位又はMCSのために+105bp)を生じたコロニーを、振盪しながら(220rpm)で、アンピシリン(100μg/ml)を含有する5ml L-ブロス(LB)中で一晩37℃で増殖した。
【0144】
3.2.6 プラスミドDNA調製物及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAを、培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ#1460)を製造業者の指示に従い使用し調製した。プラスミドDNAを、滅菌水100μlで溶離した。このDNA濃度を、Eppendorf BO分光計により測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)は、T7プライマー及びSP6プライマーにより、Big DyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造業者の指示に従い使用し、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は、表3に示した。配列決定反応を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0145】
クローニングしたcDNA挿入断片の配列分析は、アミノ酸置換Q159Hにつながる、ヌクレオチド681での単独の点変異を除き、エキソン1-8にわたる予測されたSCS0008配列とのマッチを明らかにした。同じく、エキソン8の末端での165bp挿入断片が存在し、これは配列決定された全てのクローンにおいて検出された55アミノ酸のインフレーム挿入につながった。クローニングしたcDNA断片の配列を、図4に示した。
【0146】
3.3 SCS00008-SV1のための哺乳類細胞発現ベクターの構築
次にDNA配列決定により同定されたSCS0008-SV1のコード配列(ORF)を含むpCR4-TOPO クローン(pCR4-TOPO-SCS0008SV1、プラスミドID, 14630)(図5)を用い、ゲートウェイ(商標)クローニング法(Invitrogen)を使用し、この挿入断片を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図6)及びpDEST12.2(図8)へサブクローニングした。
【0147】
3.3.1 インフレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性SCS0008-SV1 ORFの作成
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5'末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3'末端に隣接した、SCS0008-SV1のORFを作成する2工程PCR反応に関連している(ゲートウェイ互換性cDNA)。第一のPCR反応(最終容量50μl)は以下を含有している:pCR4-TOPO-SCS0008-SV1(プラスミドID 14630)1μl(40ng)、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0008-SV1-EX1及びSCS0008-SV1-EX2)を各0.5μl、1OX Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)を2.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0148】
第二のPCR反応(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は以下であった:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクル。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0149】
3.3.2 ゲートウェイ互換性SCS0008-SV1 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、下記のような、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図7)へのサブクローニングに関連している:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0150】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ#. 4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定を行った。これらのプライマー配列は表3に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#. LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミド ID 14877、図9)のプラスミド溶離液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図4及び5)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0151】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。プライマー配列は表3に示す。
【0152】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミドID 14883、図10、及びpDEST12.2-SCS0008-SV1-6HIS、プラスミドID 14887、図11)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0153】
【表3】
【0154】
3.4 SCS0008-SV2のクローニング
3.4.1 ヒト腎臓cDNAの調製
第一鎖cDNAを、正常腎臓総RNA(Clontech)から、Superscript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用し調製した。オリゴ(dT)15プライマー(500μg/ml, Promega)1μl、ヒト肺総RNA 2μg、10mM dNTP混合物(各dATP、dGTP、dCTP及びdTTPが10mM、中性pH)1μl、及び滅菌蒸留水を最終容量12μlとなるよう、1.5mlエッペンドルフチューブ中で一緒にし、65℃で5分間加熱し、その後氷上で冷却した。これらの内容物を、短い遠心で収集し、5X第一鎖緩衝液4μl、0.1M DTT 2μl、及びRNaseOUT組換えリボヌクレアーゼインヒビター(40ユニット/μl, Invitrogen)1μlを添加した。このチューブの内容物を穏やかに混合し、42℃で2分間インキュベーションし、その後1μl(200ユニット)のSuperScript II酵素を添加し、ピペッティングで穏やかに混合した。この混合物を、42℃で50分間インキュベーションし、その後70℃で15分間加熱することにより失活した。このcDNAに相補的なRNAを除去するために、大腸菌RNase H(Invitrogen)1μl(2ユニット)を添加し、この反応混合物を、37℃で20分間インキュベーションした。最終の21μl反応混合液を、滅菌水179μlを添加することにより希釈し、総容量200μlとした。
【0155】
3.4.2 PCRのための遺伝子特異的クローニングプライマー
長さ18〜25塩基のPCRプライマー対を、Primer Designerソフトウェア(Scientific & Educational Software, PO Box 72045, Durham, NC 27722-2045, USA)を用い、仮想cDNAの完全なコード配列の増幅のためにデザインした。PCRプライマーは、55±10℃近傍のTm及びGC含量40〜60%を有するようにPCRプライマーを最適化した。非特異的プライミングをほとんど又は全く伴わず、標的配列(SCS0008)に対して高度の選択性を有するプライマーを選択した。
【0156】
3.4.3 ヒト腎臓cDNA由来のSCS0008のPCR増幅
遺伝子特異的クローニングプライマー(SCS0008-CP1及びSCS0008-CP2、図12、図13及び表4)を、SCS0008予測の全コード配列にわたる1323bpのcDNA断片を増幅するようにデザインした。遺伝子特異的クローニングプライマーSCS0008-CP1及びSCS0008-CP2を、鋳型としてヒト腎臓cDNAと共に使用した。PCRは、以下のようにプログラムされたMJ Research DNA Engineを用い、1X AmpliTaq緩衝液、200μM dNTP、SCS0008-CP1、50pmole SCS0008-CP2、2.5ユニットAmpliTaq(商標)(Perkin Elmer)及び100ngの肺cDNAを含有する最終容量50μlで行った:94℃で2分間;94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間を40サイクル;引き続き72℃で7分間を1サイクル、並びに4℃での保持サイクル。PCR産物は、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い直接精製した。PCR産物を、滅菌水50μlで溶離し、次に増幅産物10μlを鋳型として用い、使用したプライマーがネストプライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestであること以外は前述の条件を用いる第二のPCR反応を行った。増幅産物は、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中0.8%アガロースゲル上で可視化し、及び予測された分子量近傍に移動する単独のPCR産物を、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用い、ゲルから精製した。PCR産物は、滅菌水50μlで溶離し、直接サブクローニングした。
【0157】
3.4.4 PCR産物のサブクローニング
PCR産物は、トポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR4-TOPO)に、Invitrogen Corporationから購入したTOPOクローニングキットを用い、製造業者の指定した条件を用いサブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、1μlのTOPOベクター及び1μl塩溶液と共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、大腸菌株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、2μlのTOPO反応液を添加した。この混合液を、15分間氷上でインキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることによりヒートショックした。試料を氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μlを添加した。試料を、振盪しながら(220rpm)、37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。挿入断片を含有するアンピシリン耐性コロニーを、コロニーPCRにより同定した。
【0158】
3.4.5 コロニーPCR
コロニーを、滅菌した爪楊枝を用い、50μl滅菌水中に接種した。その後、接種物10μlのアリコートは、使用したプライマーがT7及びT3であること以外は、前述のように、総反応容量20μlでPCRにかけた。サイクリング条件は以下のようであった:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。その後試料を4℃で維持し(保持サイクル)、その後更に分析した。
【0159】
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分析した。予想されたPCR産物サイズ(マルチクローニング部位又はMCSのために+105bp)を生じたコロニーを、振盪しながら(220rpm)で、アンピシリン(100μg/ml)を含有する5ml L-ブロス(LB)中で一晩37℃で増殖した。
【0160】
3.4.6 プラスミドDNA調製物及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAを、培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)又はWizard Plus SVミニプレップキット(Promega カタログ#1460)を製造業者の指示に従い使用し調製した。プラスミドDNAを、滅菌水100μlで溶離した。このDNA濃度を、Eppendorf BO分光計により測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)は、T7プライマー及びSP6プライマーにより、Big DyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ#4390246)を製造業者の指示に従い使用し、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は、表4に示した。配列決定反応を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0161】
クローニングしたcDNA挿入断片の配列分析は、アミノ酸置換F3Lにつながるヌクレオチド213(TからG)及びアミノ酸置換Q159Hにつながる681(GからC)での単独の点変異を除き、エキソン1-8にわたる予測されたSCS0008配列とのマッチを明らかにした。同じく、エキソン8の末端に165bp挿入断片が存在し、これは配列決定された全てのクローンにおいて検出された55アミノ酸のインフレーム挿入につながった。配列決定した9個のクローン中3個において、87bp欠失(エキソン9に相当)も検出した。これらの3個のクローンは恐らく、エキソン9を欠いているSCS0008のスプライシング変異体(SCS0008-SV2)を表しているであろう。クローニングしたSCS0008-SV2 cDNA断片の配列を、図13に示した。
【0162】
3.5 SCS00008-SV2のための哺乳類細胞発現ベクターの構築
次にDNA配列決定により同定されたSCS0008-SV2のコード配列(ORF)を含むpCR4-TOPO クローン(pCR4-TOPO-SCS0008SV2、プラスミドID, 14631)(図14)を用い、ゲートウェイ(商標)クローニング法(Invitrogen)を使用し、この挿入断片を哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図15)及びpDEST12.2(図16)へサブクローニングした。
【0163】
3.5.1 インフレーム6HISタグ配列に融合したゲートウェイ互換性SCS0008-SV2 ORFの作成
ゲートウェイクローニングプロセスの第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5'末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3'末端に隣接した、SCS0008-SV2のORFを作成する2工程PCR反応に関連している(ゲートウェイ互換性cDNA)。第一のPCR反応(最終容量50μl)は以下を含有している:pCR4-TOPO-SCS0008-SV2(プラスミドID 14631)1μl(40ng)、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0008-SV2-EX1及びSCS0008-SV2-EX2)を各0.5μl、1OX Enhancer(商標)溶液(Invitrogen)を2.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0164】
第二のPCR反応(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各ゲートウェイ転換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は以下であった:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクル。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0165】
3.5.2 ゲートウェイ互換性SCS0008-SV2 ORFのゲートウェイエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
ゲートウェイクローニングプロセスの第二段階は、下記のような、ゲートウェイ改変PCR産物のゲートウェイエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図17)へのサブクローニングに関連している:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0166】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ#. 4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定を行った。これらのプライマー配列は表4に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ#. LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミド ID 14878、図18)のプラスミド溶離液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図4及び5)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、大腸菌DH10B細胞を、下記のエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、LR反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上に播種し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0167】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev、SCS0008SV1-SP1及びSCS0008SV1-SP2プライマーにより、DNA配列決定した。プライマー配列は表4に示す。
【0168】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、各配列が証明されたクローン(pEAK12d-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミドID 14884、図19、及びpDEST12.2-SCS0008-SV2-6HIS、プラスミドID 14888、図20)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0169】
【表4】
【0170】
実施例4:SCS0008ドメインの同定及び説明
4.1 同定
SMART(http://smart.embl-heidelberg.de/)と称されるバイオインフォマティクスツールを用い、SCS0008並びにスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2の推定ドメインを同定した。結果は図21に示し、これはマウスのオルソログネフロネクチン、他の公知のヒトSCS0008のスプライシング変異体、並びに類似ドメイン組織を示すひとつのタンパク質、すなわちEGFL6も示している。加えて、Prositeも、これらの配列について行った(http ://us.expasv.org/prositel)。
【0171】
【表5】
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【0174】
部分的ScanPrositeの結果:
・SCS0008:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。327-329 RGD
・SCS0008-SV1:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。380-382 RGD
・SCS0008-SV2:
>PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。380-382 RGD
【0175】
4.2 ドメインの説明
・EGF 上皮増殖因子-様ドメイン。Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約30〜40個のアミノ酸残基長の配列は、非常に多数の他のタンパク質、ほとんどの動物タンパク質において、より多く又はより少なく保存された形で存在する、MEDLINE:、MEDLINE:88196363、MEDLINE:84117505、MEDLINE:91145344、MEDLINE:85063790、MEDLINE:で示される。現在、EGF-様パターンの1又は複数のコピーを含むことがわかっているタンパク質のリストは、大きく変動する。無関係のタンパク質であるように見えるEGFドメインの機能的意義は、未だ明らかではない。しかし共通の特徴は、これらの反復単位は、膜-結合タンパク質又は分泌されることがわかっているタンパク質の細胞外ドメインにおいて認められることである(例外:プロスタグランジンG/Hシンターゼ)。EGFドメインは、ジスルフィド結合に関連することが示されている(EGFにおいて)6個のシステイン残基を含む。この主要構造は、2本鎖β-シート、それに続くループと、C-末端の短い2本鎖シートである。保存されたシステイン間のサブドメインは、長さが変動する。
【0176】
・GF CA. カルシウム-結合EGF-様ドメイン. Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約40個のアミノ酸残基長の配列は、ほとんどの動物の多数の膜結合タンパク質及び細胞外タンパク質において存在するように見える(IPR000561参照)。これらのタンパク質の多くは、それらの生物学的機能についてカルシウムを必要とし、及びカルシウム-結合部位は、一部のEGF-様ドメインのN-末端に位置することがわかっている。カルシウム-結合は、多くのタンパク質-タンパク質相互作用にとって重要である。ヒトの第IX凝固因子について、カルシウム-リガンドは2個の五角錐を形成することが示されている。第1、3及び4番目の保存された負電荷又は極性の残基は、側鎖リガンドである。後者は、ヒドロキシル化される可能性がある(IPR000152参照)。保存された芳香族残基に加え、第二の保存された負の残基は、カルシウム-結合部位の安定化に関連していると考えられる。非-カルシウム結合EGF-様ドメインにおけるように、6個の保存されたシステインが存在し、カルシウム-結合は厳密に局所的な構造変化のみを誘導するので、両方の型の構造は非常に類似している。
【化1】
'n':負電荷又は極性の残基 [DEQN]
'b':可能性のあるβ-ヒドロキシル化された残基 [DN]
'a':芳香族アミノ酸
'C':ジスルフィド結合に関連した、システイン
'x':いずれかのアミノ酸。
【0177】
・MAM. メプリン、A5、受容体タンパク質チロシンリン酸化酵素μ(及びその他)のドメイン. SMARTアノテーション及びInterproアノテーション:
恐らく接着機能を有する。メプリンMAMドメインの変異は、メプリンオリゴマーにおいて非共有結合に影響を及ぼすであろう。受容体チロシンリン酸化酵素μ-様分子において、MAMドメインは、同種親和性の細胞-細胞相互作用に重要である。170個のアミノ酸ドメイン、いわゆるMAMドメインは、機能的に多様なタンパク質の細胞外領域において認められる。これらのタンパク質は、モジュラー、シグナルペプチドを含む受容体-様構造、N-末端細胞外ドメイン、1個の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有する。このようなタンパク質は、メプリン(細胞表面糖タンパク質);A5抗原(発達上-調節された細胞表面タンパク質);及び、受容体-様チロシンタンパク質リン酸化酵素を含む。MAMドメインは、接着機能を有すると考えられる。これは、恐らくジスルフィド橋を形成する4個の保存されたシステイン残基を含む。
【0178】
・PS00016;RGD
フィブロネクチンにおいて認められる配列Arg-Gly-Aspは、その細胞表面受容体、インテグリンとの相互作用に重要である。'RGD'トリペプチドと称されるものも、多くの他のタンパク質配列において認められており、これは細胞接着において役割を果たすことが示されている。これらのタンパク質は以下である:コラーゲンの一部の形、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、フォンビルブラント因子(VWF)、ヘビのディスインテグリン、及び粘菌ディスコイジン。'RGD'トリペプチドは、他のタンパク質においても認められ、そこでは同じ目的のために役立つことがあるが、常にではない。
【0179】
4.2 結論
結論は、SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、他のアラインした配列と比べて、全てMAMドメインを欠いていることを特徴とする、特定のドメイン組織を示すことを示している(図21参照)。前述のように、MAMドメインは、接着機能を有する。加えて、Morimuraらは、MAMドメインを伴わない変異体POEM-Fc分子は、細胞表面から引き離され、並びにCOS-7細胞において発現される場合、細胞抽出物よりもむしろ培養培地中において主に引き離されることを示した。彼らは、MAMドメインは細胞表面局在化において重大な役割を果たすことを示唆することにより、結論付けた。興味深いことに、彼らは、メプリン、A5タンパク質、ニューロピリン-1、ニューロピリン-2、及び受容体タンパク質-チロシンリン酸化酵素を含むMAMドメインファミリーは、同種-又は異種親和性MAMドメイン相互作用を介し、細胞接着活性を媒介することを指摘し、これはMAMドメインはタンパク質-タンパク質相互作用を介した細胞表面結合に関連していること、並びにこれらの分子は、POEMの候補受容体分子として有用であることという仮説を裏付けている。従ってSCS0008並びにスプライシング変異体SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2は、同種-又は異種親和性MAMドメイン相互作用を形成することができない。その結果、本発明のタンパク質は、恐らく細胞表面に結合することができず、独自の特性を示すであろう。別の可能性は、本発明の配列は、ネフロネクチンに結合するもの以外の別のMAM受容体分子に結合することができる、異なるMAMドメインを含むことである。
【0180】
加えてMorimuraらは、POEMにおいてRGDインテグリン結合モチーフを同定し、かつ彼らは、Brandenbergerら同様、POEMは、α8β1インテグリンの新規特異的リガンド分子であることを示した。RGDインテグリン結合モチーフは、SCS0008、SCS0008-SV1及びSCS0008-SV2に存在し(4.2参照)、このことはα8β1インテグリンは、これらのタンパク質の特異的リガンドであることも示唆している。しかし、Brandenbergerらは、α8β1インテグリンはPOEMのアミノ酸382-561に含まれるように見えることを示した。従って、エキソン9を欠いているSCS0008-SV2は、α8β1インテグリンに結合しないであろう。
【0181】
実施例5:同定されたドメインに関連した疾患の同定
SMART及びドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているそのOMIMを用い、SCS0008又はSCS0008-SVS1又はSCS0008-SV2において認められたこれらのドメインに関連したヒト疾患を、検索することができる(表8及び9)。相補的検索は、アノテーションしたドメインに関しOMIMにより行った。
【0182】
[SMARTアノテーション]
ドメインに関連することが認められた疾患
1)SwissProt配列及びEGF-様ドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているOMIM
【0183】
【表8】
【0184】
他のOMIMヒト疾患の検索は、EGF-様ドメインに関連することがある。
【0185】
重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症、Beals症候群、冠動脈心臓疾患、非小細胞肺癌、潰瘍性大腸炎又は直腸炎、子宮内膜症、慢性耳炎、良性前立腺肥大、進行した脳腫瘍、膀胱癌、十二指腸潰瘍、転移性乳癌、前立腺癌、乾癬、ヒト子宮平滑筋腫、胃潰瘍、円板状エリスマトーデス、扁平苔癬、結腸直腸癌、急性心筋梗塞、進行性悪性神経膠腫、子宮内膜癌、悪性神経膠腫、頭部及び頚部又は肺の癌、乳癌、喉頭及び下咽頭の癌腫、卵巣腫瘍、疱疹性角膜潰瘍、及び静脈性潰瘍。
【0186】
2)SwissProt配列及びEGF CAドメイン内のミスセンス変異に関連したヒト疾患を管理しているOMIM
【0187】
【表9】
【0188】
他のOMIMヒト疾患の検索は、EGF-様ドメインに関連することがある。
【0189】
重度の古典的又は古典的又は軽度の変動型又は新生児型又は非定型マルファン症候群、大動脈瘤、マルファン症候群様骨格症候群、ヴァイル-マルケサーニ症候群、MASP2欠損症、第IX因子欠損症、巨赤血球性貧血、偽軟骨形成不全症、骨端形成異常、弛緩性皮膚、脳回欠損症候群(好ましくはNorman-Roberts型)、骨粗鬆症-偽神経膠腫症候群、大理石骨症、骨内膜過類骨症、骨硬化症、高骨量障害、クモ肢、小顎症、先天性脊柱後側弯症、再発性静脈性又は腸間膜静脈もしくは大脳静脈又は動脈の血栓症、表在性血栓性静脈炎、ワーファリン誘導した皮膚壊死、顎後退性脊柱側彎症、胸部脊柱前彎症、脊椎すべり症、腰仙両拡張症及び冠動脈心臓疾患。
【0190】
実施例6:タンパク質機能の生物学的関連を調べるのに適した神経学的アッセイ
本出願人により、多くの神経学的アッセイが開発されており、タンパク質機能の生物学的関連研究において使用される。本出願人により開発された神経学的アッセイの例は、4種のアッセイを含む。これらを以下に説明する。
【0191】
A.稀突起膠細胞-ベースのアッセイ
稀突起膠細胞は、CNSにおけるミエリン形成に寄与している。多発性硬化症において、これらは、攻撃される最初の細胞であり、それらの喪失は重大な行動障害につながる。炎症の抑制に加え、MSにおいて生じる病巣の不完全な髄鞘再生の増強が、MSの治療戦略として提唱されている。ニューロン同様、成熟稀突起膠細胞は分裂しないが、新規稀突起膠細胞は、前駆体から生じる。成人脳中にはごくわずかなこれらの前駆細胞が存在し、例え胚であっても、前駆細胞の数は、HTSには適さない。Oli-neuは、t-neu癌遺伝子により、稀突起膠細胞前駆体の不死化により得られたマウス細胞株である。これらは良く研究され、若い稀突起膠細胞の生物学を研究するための代表的細胞株として受入れられている。これらの細胞は、ふたつのアッセイ型において使用することができる。
【0192】
ひとつは、稀突起膠細胞増殖を刺激する因子を同定するためであり、他方は、それらの分化を促進する因子を見つけるためである。両方の事象は、脱髄性疾患の再生の補助及び再修復の観点で重要である。
【0193】
別の可能性のある細胞株は、ヒト細胞株M03-13である。M03-13は、rabdo-筋肉腫細胞の成人稀突起膠細胞との融合から生じた。しかしこれらの細胞は、低下した稀突起膠細胞への分化能を有し、それらの増殖率は、増殖アッセイを行うには十分ではない。それにもかかわらず、これらは、稀突起膠細胞のある特徴を発現し、並びにそれらの形態は、核移行試験に良く適合されている。従ってこの細胞株は、各々、NF-κB、Stat-1及びStat-2である、3種の転写因子の核移行を基にしたアッセイにおいて使用することができる。Jak/Stat転写経路は、IFNα、β、γ、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-6;IL-5)又はホルモン(例えば、GH、TPO、EPO)などの多くの因子により活性化される複合経路である。この反応の特異性は、活性化されたStatの組合せに依存している。例えば、IFN-βは、Stat1、2及び3の核移行を活性化するのに対し、IFN-γはStat1のみを活性化することは注目される。同様に、多くのサイトカイン及び増殖因子はNF-κB移行を誘導した。これらのアッセイにおいて、目的は、所定のタンパク質の活性化経路の像を得ることである。
【0194】
B.星状細胞-ベースのアッセイ
星状細胞の生物学は非常に複雑であるが、二つの全般的状態が認められる。静止状態と称されるひとつの状態において、星状細胞は、グルタミン酸をポンプ輸送し及びエネルギーに満ちた下層をニューロン及び稀突起膠細胞へ提供することにより、ニューロンの代謝及び興奮のレベルを調節する。活性化状態において、星状細胞は、ケモカイン及びサイトカイン、更には一酸化窒素を生成する。第一の状態は、正常で健康であると見なされるのに対し、第二の状態は、炎症、卒中又は神経変性疾患時に生じる。この活性化状態が持続する場合は、病態とみなされるはずである。
【0195】
多くの因子及び多くの経路が、星状細胞活性化を変調することが知られている。星状細胞活性化を変調する新規因子U373細胞を同定するために、星細胞腫起源のヒト細胞株を使用することができる。NF-κB、c-Junに加えStatは、星状細胞活性化において中心的役割を果たすことが分かっているシグナル伝達分子である。
【0196】
NF-κB、c-Jun並びにStat1、2及び3の核移行ベースの一連のスクリーニングを、実行することができる。これらの経路のプロトタイプなアクチベーターは、IL-1b、IFN-β又はIFN-γである。この目的は、CNS疾患の治療における治療薬として使用することができるタンパク質を同定することである。
【0197】
C.ニューロン-ベースのアッセイ
ニューロンは、非常に複雑で多様な細胞であるが、これらは全て二つの点で共通である。第一に、これらは分裂後細胞であること、第二に、これらは他の細胞を神経支配することである。これらの生存は、神経支配された標的細胞において産生されることが多い栄養因子の存在に関連している。多くの神経変性疾患において、標的神経支配の喪失は、細胞体の無栄養及びアポトーシスによる細胞死につながる。従って、標的の欠乏を補充する栄養因子の同定は、神経変性疾患の治療において重要である。
【0198】
この観点において、ラットPC12細胞のサブクローンであるNS1細胞を使用する生存アッセイを行うことができる。これらの細胞は数年来使用されており、最初に多くの神経生物学的知識がこれらの細胞について得られ、その後始原ニューロンについてニューロンの生存及び分化に関連した経路(MEK、PI3K、CREB)を含むことが確認された。対照的に、マウス神経芽腫であるN2A細胞は、古典的神経栄養因子には反応しないが、Jun-キナーゼインヒビターは、血清涸渇により誘導されたアポトーシスを妨害する。従ってこれらのふたつの細胞株に関するアッセイは、"生存を促進する"タンパク質の様々な種類を見つける助けとなるであろう。
【0199】
本発明者らが前記アッセイにおいて、増殖及び分化の両方を促進する因子を同定することは重要である。ニューロン分化を特異的に促進する因子を同定するために、神経突起伸長を基にしたNS1分化アッセイを使用することができる。神経変性疾患における軸索又は樹状突起の発芽を促進することは、二つの理由で利点であろう。これは最初に、変性ニューロンが再生し及び標的細胞との接触を再確立することを補助する。第二にこれは、パーキンソン病又はADなどの神経変性疾患の終末相を遅延する補償現象である、健常な線維からのいわゆる側枝発芽を増強する。
【0200】
D.内皮細胞-ベースのアッセイ
脳と血管の間の血液脳関門(BBB)は、皮質性脊髄液と血清の組成の間の差異によるものである。BBBは、内皮細胞と星状細胞の間の密な接触から生じる。これは脳内の白血球の進入を防止することにより、免疫寛容状態を維持し、かつ同じ細胞内シグナル伝達経路を使用するふたつの平行した内分泌系の発達を可能にする。しかし多くの疾患又は外傷において、BBBの完全性は変更され、白血球に加え血清タンパク質が脳に進入し、神経炎症を誘発する。BBBの簡単なin vitroモデルはないが、ヒト胚性臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のような、始原内皮細胞の培養物は、BBB生物学の一部の特徴を模倣すると考えられる。例えばBBB漏出は、細胞内カルシウム放出を刺激するタンパク質により誘導される。BBB完全性を変調するタンパク質を同定する観点で、トロンビンを伴う又は伴わないカルシウム動員アッセイを、HUVECについて行うことができる。
【0201】
実施例7:タンパク質機能の生物学的関連を調べるのに適した線維芽細胞アッセイ
本出願人により、多くの線維芽細胞アッセイが開発され、タンパク質機能の生物学的関連の研究に使用されている。本出願人により開発された線維芽細胞アッセイの例は、8種の型のアッセイを含む。これらを以下に説明する。
【0202】
線維芽細胞の活性化及び病的増殖は、線維症として公知の表現型につながる重要な工程である。線維症は、細胞外マトリックス、特にコラーゲンの過剰な付着を特徴としている。線維芽細胞を含むストロマ細胞は、特異的プロ-及び抗-線維症性タンパク質を発現する。ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、良く特徴付けられた抗-線維症性分子である。加えて、酸化的ダメージ及び前-炎症刺激は、筋線維芽細胞表現型へ、最終的には線維症へつながる主要な事象であることが提唱されている。NF-κBは、酸化的ストレス及び炎症反応のメディエーターである。線維芽細胞の生物学を基に、本発明者らは、4種の細胞-ベースのアッセイ、すなわち線維芽細胞増殖アッセイ、コラーゲン生成アッセイ、NF-κB活性化アッセイ及びKGF生成アッセイを開発した。
【0203】
A.ヒト線維芽細胞増殖アッセイ
線維芽細胞の活性化及び病的増殖は、線維症として知られている表現型につながる重要な工程である。このアッセイは、細胞の核酸に結合したCyQUANT GR色素により媒介された蛍光増強を基にしており、ヒト皮膚-由来の線維芽細胞の新規タンパク質及び小型分子に対する増殖反応を測定する。
【0204】
B.ヒト線維芽細胞によるI型コラーゲン生成
線維症は、細胞外マトリックス、特にコラーゲンの過剰な付着を特徴としている。I型コラーゲンの過剰生成は、全身性硬化症の主な症状発現である。TGFβは、コラーゲンのin vitro及びin vivoにおける生成をアップレギュレーションすることがわかっている。本発明者らは、新規プロ-又は抗-線維症性分子の、ヒト皮膚-由来の線維芽細胞による基本的又はTGFβ-刺激したレベルのI型コラーゲン生成を変調する能力を試験するために、細胞-ベースのアッセイを開発した。
【0205】
C. ヒト線維芽細胞によるケラチノサイト増殖因子(KGF)生成
KGFは、正常及び病的な成長及び発達時の、多くの臓器(肺、膵臓、腎臓、前立腺、乳腺、子宮)におけるストロマの上皮に対する相互作用の重要なメディエーターである。KGFは特に、ストロマ細胞により特異的に生成され、及びその受容体は特に上皮細胞により発現される。KGFは、線維症の病態生理学的反応過程における重要なプレーヤーであり、従ってこれらの反応のマーカーとして使用することができることが提唱されている。KGF ELISAアッセイが開発されており、これはヒト肺-由来の線維芽細胞を使用し、KGF生成は、IL-1β及びTNFαにより有意にアップレギュレーションされ、並びにTGFβによりダウンレギュレーションされる。これらのサイトカインは、KGF生成を誘導することが可能である新規タンパク質のスクリーニングにおいて参照分子として使用されるであろう。
【0206】
D. 線維芽細胞におけるNF-κB転写活性化
酸化的ダメージ及び前-炎症刺激は、筋線維芽細胞表現型へ、最終的には線維症へつながる主要な事象であることが提唱されている。NF-κBは、酸化的ストレス及び炎症反応のメディエーターである。Swiss 3T3線維芽細胞は、安定して組込まれたNF-κB-SEAP(分泌型アルカリホスファターゼ)構築体により生成された。NF-κB-SEAPは、NF-κB経路の活性化の直接測定を可能にするκエンハンサーへの転写因子の結合を測定するためにデザインされた。SEAP酵素は、培養培地へ分泌され、そのため試料は、細胞を収集することなく、転写活性のためにアッセイの様々な時点で収集することができる。Swiss 3T3-NF-κB-SEAP細胞株は、新規機能ゲノムタンパク質を試験するための、細胞-ベースのアッセイとして使用することができ、小型分子、特に予測された前-/抗-炎症活性を伴うものの試験について非常に将来性がある。
【0207】
E.線維芽細胞における結合組織増殖因子(CTGF)プロモーター活性化/抑制
38-kDシステイン-リッチタンパク質であるCTGFは、線維芽細胞による細胞外マトリックスエレメントの生成を刺激する。CTGFの過剰発現が、肺、皮膚、肝臓、腎臓及び血管を含む多くの線維症性ヒト組織において報告されている。In vitroにおいて、TGFβは、ヒト肺線維芽細胞においてCTGF遺伝子転写を活性化する。CTGFプロモーター-レポーターが、レポーターとして分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)を伴い構築され、並びにSwiss 3T3線維芽細胞が、安定して組込まれたCTGF-SEAP構築体により生成された。これらの線維芽細胞を用い、CTGFプロモーターは、SARP-1、OPG及びFSHによりダウンレギュレーションされ、TGFβによりアップレギュレーションされることが示された。
【0208】
F. KL-6生成
KL-6は、肺腺癌-関連したタンパク質として当初発見され、後にMUC-1と称されるが、これは現在クラスター9抗原と分類されている高分子量糖タンパク質である。KL-6は、特発性肺線維症(IPF)及び他の肺の間質性疾患を伴う患者の血清及びBALFにおいて上昇する。IPFに罹患した患者の肺組織において、KL-6抗体で標識された大半の細胞は、II型肺胞上皮細胞を再生している。ふたつのペプチドを、KL-6に対するポリクローナル抗体を生成するようにデザインした。KL-6 ELISAを用い、ヒト肺-由来のII型肺胞上皮細胞によるKL-6生成を測定することができる。
【0209】
G.可溶性組換えTRAIL(TNF-関連アポトーシス-誘導リガンド)により処理したL-929線維芽細胞のアポトーシスの中和
TRAILは、オステオプロテゲリン(OPG)についての細胞リガンドのひとつであることが示されている。このアッセイは、OPGの生物学的活性を測定するために使用することができる。
【0210】
H. ヒト線維芽細胞によるRANKL(NF-κBリガンドの受容体アクチベーター)生成
RANKLは、OPGに関する別のリガンドである。このアッセイは、OPGの生物学的活性を測定するために使用することもできる。
【0211】
実施例8:タンパク質機能の生物学的関連の調査に適したリプロダクティブヘルスアッセイ
本出願人らは、多くのリプロダクティブヘルス関連アッセイを開発し、SCS0008タンパク質機能の生物学的関連の研究において使用している。男性不妊におけるSCS0008の関係の可能性の観点において(「治療的使用」の項参照)、このようなアッセイは、特に関連があるように見える。本出願人により開発されたリプロダクティブヘルス関連アッセイは、リプロダクティブヘルスに関する18種の細胞-ベースのアッセイを含んでいる。これらを以下に説明する。
【0212】
A. 始原ヒト子宮平滑筋増殖アッセイ:
子宮平滑筋細胞の増殖は、女性における子宮類線維疾患における腫瘍が発症する前徴である。このアッセイにおいて、目的は、始原ヒト子宮平滑筋の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
【0213】
B. JEG-3移植アッセイ:
JEG-3細胞は、移植時の胚盤胞のモデルとして使用される絨毛栄養膜ヒト癌細胞株である。Ishikawa細胞は、脱落膜モデルとして使用される比較的未-分化の子宮内膜ヒト癌細胞株である。JEG-3細胞は、ヒト脱落膜組織へ"移植される"。このアッセイにおいては、Ishikawa細胞又はIshikawa-馴化培地が下側チャンバーに配置された場合に、蛍光標識されたJEG-3細胞がマトリゲルで被覆した多孔質膜を通って、上側チャンバーから下側チャンバーへ侵入する2-チャンバーシステムが使用される。移動する細胞は、プレートリーダーで定量される。この目的は、in vivoにおける移植補助において使用するためのJEG-3細胞の侵入を増大するタンパク質を同定することである。
【0214】
C.オステオポンチンビーズアッセイ(Ishikawa細胞):
Ishikawaヒト子宮内膜癌細胞を、移植のモデルとして使用する。ヒトにおける移植時に、胚盤胞により発現されたタンパク質に結合すると考えられる子宮内膜により、様々なインテグリンが発現される。Ishikawa細胞は、文献において、"着床の窓"時に子宮内膜により発現されたインテグリンであるavb3を発現することが示されている。このインテグリンは、栄養膜により発現されたオステオポンチンに結合すると考えられる。このアッセイにおいて、オステオポンチン-被覆した蛍光ビーズは、胚盤胞を描き、及びIshikawa細胞は、エストラジオールによるそれらの処理によりそれらと結合することを受入れるようになる。この目的は、着床時の子宮内膜の受容力を増加することの補助としてのIshikawa細胞のオステオポンチン-ビーズへの結合能を増大するタンパク質を同定することである。
【0215】
D. HuF6アッセイ:
HuF6細胞は、始原ヒト子宮線維芽細胞である。これらの細胞は、IL-1βによるそれらの治療により脱落膜形成するように誘導することができる。脱落膜形成のマーカーは、PGE2生成であり、これはELISAにより測定される。この目的は、妊娠初期に脱落膜形成を増強する方法として、HuF6細胞により、PGE2の生成を増加するタンパク質を同定することである。
【0216】
E.子宮内膜症アッセイ:
腹膜のTNFαは、腹膜中皮細胞上に接着し及び増殖するよう、子宮から脱落した内膜細胞を誘導することにより、子宮内膜症において役割を果たす。このアッセイにおいて、BEND細胞は、TNFαで処理され、これは子宮内膜症時の接着のアッセイとして、それらのフィブロネクチン-被覆した蛍光ビーズへの結合能を増加する。この目的は、TNFαの、細胞のビーズ-結合能を刺激する能力を低下又は阻害するタンパク質を同定することである。
【0217】
F. hLHRにより安定してトランスフェクションされたJC-410ブタ顆粒膜細胞を使用するcAMPアッセイ:
多嚢胞性卵巣症候群において、下垂体由来のLHは比較的高く、卵巣包膜細胞からのアンドロゲンの産出を誘導する。このアッセイは、PCOS時の卵巣でのLHの作用を低下するために使用されるLHシグナル伝達のインヒビターを調べるために使用する。JC-410ブタ顆粒膜細胞株は、ヒトLH受容体により安定してトランスフェクションされている。LHによる治療は、cAMP生成を生じる。
【0218】
G. hFSHRにより安定してトランスフェクションされたJC-410ブタ顆粒膜細胞を使用するcAMPアッセイ:
JC-410ブタ顆粒膜細胞株は、ヒトFSHRにより安定してトランスフェクションされている。FSHによる治療は、このアッセイにおいて測定されるcAMP生成を刺激する。この目的は、顆粒膜細胞において、FSH作用を増強するタンパク質を同定することである。
【0219】
H. LβT2(マウス)下垂体細胞アッセイ:
LβT2は、不死化されたマウス下垂体性腺刺激細胞株である。アクチビン単独又はGnRH+アクチビンによる刺激は、FSHの分泌を生じる(GnRH単独による刺激は、LH分泌を生じる)。これらの細胞は、FSH生成を刺激するためにGnRHと共調して作用するタンパク質を見つけるために、GnRH+バイオスクリーンタンパク質で処理されるか、又はこれらは、アクチビン単独のようにFSH分泌を刺激することができるタンパク質を見つけるために、バイオスクリーンタンパク質単独で処理することができる。
【0220】
I.卵丘(cumulus)拡張アッセイ:
マウスの卵丘-卵母細胞複合体(2/ウェル)を使用する卵丘-拡張アッセイは、卵母細胞成熟に影響を及ぼすタンパク質をアッセイ(卵丘拡張により測定される)するために、96-ウェルフォーマットでバリデーションされている。ふたつの96-ウェルプレートを、1アッセイにつき処理し、毎週2アッセイを行うことができる。バイオスクリーンタンパク質が、ただひとつの濃度でアッセイされる場合、全てのバイオスクリーンIタンパク質を1ヶ月以内にアッセイすることができる。リードアウトは、拡張に関するイエス/ノーの回答であるか、又は画像解析プログラムを使用し、定量的方法で拡張を測定することができる。
【0221】
J. RWPE増殖アッセイ:
良性前立腺肥大は、アポトーシスによりバランスがとれていない、前立腺上皮及びストロマの成長、その結果としてのこの臓器の肥大を特徴としている。RWPEは、HPV-18により不死化された通常のヒト前立腺上皮細胞株であり、始原ヒト前立腺上皮細胞の代わりに使用することができる。
【0222】
K. HT-1080線維肉腫侵襲アッセイ:
このアッセイは、JEG-3移植アッセイ(前記)の陽性細胞対照として開発された。これは、癌転移に関するモデルとしてよく確立されたアッセイである。蛍光-標識したHT-1080ヒト線維肉腫細胞を、2-チャンバーシステムの上側チャンバーにおいて培養し、刺激し、多孔質マトリゲル-被覆膜を通じ下側チャンバーへ侵襲させ、そこで定量した。この目的は、この侵襲を阻害するタンパク質を同定することである。これらの細胞を、血清を下側チャンバーへ添加することにより、侵襲するように刺激し、及びドキシサイクリンにより阻害した。
【0223】
L. 始原ヒト子宮平滑筋アッセイ:
子宮類線維疾患の重要なもののひとつは、平滑筋腫になり始める子宮平滑筋細胞によるコラーゲン沈着である。始原ヒト子宮平滑筋を刺激し、TGFβで処理することによりコラーゲンを生成し、これはRebifをブロックした。この目的は、この線維症性表現型を阻害するタンパク質を発見することである。
【0224】
M. ヒト平滑筋腫細胞の増殖アッセイ:
ヒト平滑筋腫細胞株を、増殖アッセイにおける子宮類線維疾患のモデルとして使用した。この細胞は、非常にゆっくり成長し、本発明者らは、エストラジオール及び増殖因子でこれらを処理することによりこれらを刺激し、より迅速に成長させた。この目的は、平滑筋腫細胞のエストラジオール依存型の成長を阻害するタンパク質を同定することである。
【0225】
N. 937移動アッセイ:
子宮内膜病巣は、免疫細胞を腹膜腔に動員するサイトカインを分泌する。これらの免疫細胞(特に活性化されたマクロファージ及びTリンパ球)は、子宮内膜症において一般的である炎症症状を媒介する。RANTESは、子宮内膜ストロマ細胞により生成され及び腹水中に存在することが示されている。このアッセイにおいて、活性化されたマクロファージのモデルとして使用される単球系細胞株であるU937は、2-チャンバー培養システムの下側レベルを、上側チャンバーから移動するように処理することにより誘導することができる。これらの細胞が蛍光色素と共に予め装載された場合、これらは下側チャンバーにおいて定量することができる。この目的は、U937細胞の移動を阻害するタンパク質を同定することである。
【0226】
O. JEG3ヒト栄養膜アッセイ:
胚盤胞の栄養膜は、母親による胚の免疫拒絶反応の防止に重要であると考えられるクラスI HLA分子HLA-Gを生成する。子癇前症時に、HLA-Gレベルは低いか又は存在せず、これは恐らく母親の免疫干渉により、子宮内膜及び螺旋動脈への栄養膜の浸潤不良のような顕著な症状を生じるであろう。JEG-3ヒト栄養膜細胞株は、HLA-Gを生成し、これはIL-10又はLIFによる処理により増加することができる。ELISAを用い、JEG-3細胞によるHLA-G生成を測定することができ、この目的は、HLA-G生成を増加することができる他のタンパク質を発見することである。
【0227】
P.始原ラット卵巣分散性アッセイ:
JC-410-FSHR/LHR細胞株からの認知可能量のステロイド類の測定は困難であるので、未熟ラットから摘出した卵巣全体由来の始原細胞を使用するアッセイが開発されている。最初に、FSH及び/又はLH処理後、これらの培養物からのエストラジオール生成を測定する。従ってこの目的は、ゴナドトロピンが刺激したステロイド生成を増強するタンパク質、又はこれらの培養物によるステロイド生成を増大するように単独で作用するタンパク質を同定することである。
【0228】
Q.マウスIVFアッセイ:
このアッセイにおいて、卵母細胞の受精能により測定された精子機能が、精子の受精能を刺激するタンパク質を発見する目的で、アッセイされる。
【0229】
R.始原ヒト前立腺ストロマ細胞増殖アッセイ:
BPHの上皮成分のアッセイは、既に説明されている(前記「RWPEアッセイ」の項参照)。このアッセイは、BPH時のこれらの細胞の増殖のモデルとして、始原ヒト前立腺ストロマ細胞を使用する。この目的は、これらの細胞の増殖を阻害するタンパク質を同定することである。
【0230】
【表10】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】図1:SCS0008 ORFと、公知の関連ポリペプチド配列とのアラインメント。
【図2】図2:SCS0008の予測されたアミノ酸配列の、クローニングされたスプライシング変異体SCS0008SV1及びSCS0008SV2に関する推定されたアミノ酸配列との、Clustal W アラインメント。
【図3−1】図3:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図3−2】図3:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図4−1】図4:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図4−2】図4:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図5】図5:pCR4-TOPO-SCS0008SV1のマップ。
【図6】図6:発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図7】図7:pDONR221のマップ。
【図8】図8:発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図9】図9:pENTR-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図10】図10:pEAK12d-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図11】図11:pDEST12.2-SCS0008SV1-6HISのマップ。
【図12−1】図12:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図12−2】図12:SCS0008予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図13−1】図13:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図13−2】図13:プライマーSCS0008-CP1nest及びSCS0008-CP2nestを使用しクローニングされたSCS0008産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図14】図14:pCR4-TOPO-SCS0008-SV2のマップ。
【図15】図15:発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図16】図16:発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図17】図17:pDONR221のマップ。
【図18】図18:pENTR-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図19】図19:pEAK12d-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図20】図20:pDEST12.2-SCS0008SV2-6HISのマップ。
【図21−1】図21:SCS0008、SCS0008-SV1、SCS0008-SV2、マウスネフロネクチン、及び他の関連配列のSMARTドメインアラインメント。
【図21−2】図21:SCS0008、SCS0008-SV1、SCS0008-SV2、マウスネフロネクチン、及び他の関連配列のSMARTドメインアラインメント。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載のアミノ酸配列;
b)配列が、配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)に記載されている、ポリペプチドの成熟型;
c)配列が、配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されている、ポリペプチドのヒスチジンタグ型;
d)アミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載された変異体であり、ここで選択された配列で特定される任意のアミノ酸は、非-保存的に置換されているが、但し15%を超えない配列のアミノ酸残基がそのように変化している、変異体;
e)a)からd)記載のアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩、又は誘導体;
からなる群より選択される、フィブリリン-様活性を有する単離されたポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、又は配列番号:14に記載のいずれかの配列の天然の対立遺伝子変異体である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
変異体は、一塩基多型の翻訳である、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列が配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載されたポリペプチド又はそれらの断片に対する抗体又は結合タンパク質に特異的に結合する、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドを含有する融合タンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質は、これらのタンパク質配列:膜-結合タンパク質、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド-含有タンパク質、輸送シグナル-含有タンパク質に属する1又は複数のアミノ酸配列を更に含む、請求項6記載の融合タンパク質。
【請求項7】
対応するポリペプチドへの1個又は複数の残基の非-保存的置換及び/又は欠失から生じるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのアンタゴニスト。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドに特異的に結合する、リガンド。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性を拮抗又は阻害する、請求項8記載のリガンド。
【請求項10】
膜-結合タンパク質のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、抗原結合断片、又は細胞外ドメインである、請求項9記載のリガンド。
【請求項11】
放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞傷害性物質中で選択された分子との、活性接合体又は複合体の形である、請求項1〜6のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの配列及び/又は構造を基にデザインされた、ペプチドミメティクス。
【請求項13】
b)請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様活性を有するポリペプチド;
c)請求項5又は6記載の、融合タンパク質;又は、
d)請求項7記載のアンタゴニスト;
からなる群より選択される単離されたポリペプチドをコードしている単離された核酸。
【請求項14】
配列番号:1、配列番号:1のヌクレオチド205-1425からなるDNA配列、又は配列番号:5、配列番号:5のヌクレオチド205-1590からなるDNA配列、又は配列番号:12、配列番号:12のヌクレオチド205-1503からなるDNA配列、あるいは前記DNA配列のいずれかの相補体を含む、請求項13記載の核酸。
【請求項15】
配列番号:1、配列番号:1のヌクレオチド205-1425、又は配列番号:5のDNA配列、配列番号:5のヌクレオチド205-1590からなる配列、又は配列番号:12、配列番号:12のヌクレオチド205-1503からなる配列、あるいは前記DNA配列のいずれかの相補体を含む群より選択される核酸と、
b)高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするか;又は
c)少なくとも約30個のヌクレオチドの範囲にわたり少なくとも約85%の同一性を示す、精製された核酸。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
前記核酸分子は、発現制御配列に作用可能に連結され、コードされたポリペプチドの原核又は真核宿主細胞における発現を可能にしている、請求項16記載のベクター。
【請求項18】
請求項13〜15のいずれか1項記載の精製された核酸によりコードされたポリペプチド。
【請求項19】
細胞を、請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で遺伝子操作することを含む、請求項1〜7又は18のいずれか1項記載のポリペプチドを発現することが可能である細胞を作出するプロセス。
【請求項20】
請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で形質転換された宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの増加又は減少した発現レベルを有する、請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で形質転換された、トランスジェニック動物細胞。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを増加又は減少するように形質転換されている、非-ヒトトランスジェニック動物。
【請求項23】
請求項20又は21記載の細胞を、核酸又はベクターが発現される条件下で培養すること、並びに培養物から該核酸又はベクターによりコードされたポリペプチドを回収することを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの作出法。
【請求項24】
細胞又は動物において、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを増強する化合物。
【請求項25】
細胞又は動物において、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを低下する化合物。
【請求項26】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAである、請求項24記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24〜26のいずれか1項記載の化合物を含有する、精製された調製物。
【請求項28】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要とされる場合の疾患の治療又は予防における、請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物の使用。
【請求項29】
活性成分としての、請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物の、フィブリリン-様活性の増加が必要な疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項30】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物を、医薬として許容できる担体と共に含有することを含む、医薬組成物の調製法。
【請求項31】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物を治療的有効量投与することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加を必要とする疾患の治療又は予防の方法。
【請求項32】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防における、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物の使用。
【請求項33】
活性成分として、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項34】
請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物を、医薬として許容できる担体と共に含有することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防のための医薬組成物の調製法。
【請求項35】
請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドに関連した疾患の治療又は予防の方法。
【請求項36】
請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様ポリペプチドに関連した疾患の治療に対し有効な候補化合物をスクリーニングする方法であって:
b)候補化合物と、ポリペプチドの増強又は低下された発現レベルを有する、請求項20記載の細胞、請求項21記載のトランスジェニック動物細胞、又は請求項22記載の非-ヒトトランスジェニック動物とを、接触すること;及び
c)この化合物の動物又は細胞に対する作用を決定すること;
を含む方法。
【請求項37】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのアンタゴニスト/インヒビター又はアゴニスト/アクチベーターとして候補化合物を同定する方法であって:
a)前記ポリペプチドを、前記化合物、及び前記ポリペプチドと結合することが可能な哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜と接触すること;及び
b)分子が、ポリペプチドの相互作用をブロックもしくは増強するかどうか、又は哺乳類細胞もしくは哺乳類細胞膜との、そのような相互作用から生じる反応を、測定すること;
を含む方法。
【請求項38】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する方法であって:
a)タンパク質を含有する試料を提供すること;
b)前記試料と、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンドとを接触すること;及び
c)前記ポリペプチドと結合したリガンドを決定すること;
を含む方法。
【請求項39】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの転写産物又はこれをコードしている核酸の存在又は量を決定する方法であって:
a)核酸を含有する試料を提供すること;
b)前記試料と、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸を接触すること;及び
c)前記核酸と、前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションを決定すること;
を含む方法。
【請求項40】
ポリメラーゼ連鎖反応により、試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている転写産物又は核酸の存在又は量を決定するための、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12に記載されたヌクレオチド配列由来のプライマーの使用。
【請求項41】
1又は複数の以下の試薬:請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、請求項11記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、もしくは請求項24〜26のいずれか1項記載の化合物、請求項29又は33記載の医薬組成物を含む、試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するためのキット。
【請求項1】
a)配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載のアミノ酸配列;
b)配列が、配列番号:2(配列番号:3)、配列番号:6(配列番号:8)、配列番号:7(配列番号:9)、配列番号:13(配列番号:15)、配列番号:14(配列番号:16)に記載されている、ポリペプチドの成熟型;
c)配列が、配列番号:2(配列番号:4)、配列番号:6(配列番号:10)、配列番号:7(配列番号:11)、配列番号:13(配列番号:17)、配列番号:14(配列番号:18)に記載されている、ポリペプチドのヒスチジンタグ型;
d)アミノ酸配列が、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載された変異体であり、ここで選択された配列で特定される任意のアミノ酸は、非-保存的に置換されているが、但し15%を超えない配列のアミノ酸残基がそのように変化している、変異体;
e)a)からd)記載のアミノ酸配列の活性断片、前駆体、塩、又は誘導体;
からなる群より選択される、フィブリリン-様活性を有する単離されたポリペプチド。
【請求項2】
配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、又は配列番号:14に記載のいずれかの配列の天然の対立遺伝子変異体である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
変異体は、一塩基多型の翻訳である、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列が配列番号:2、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:13、配列番号:14に記載されたポリペプチド又はそれらの断片に対する抗体又は結合タンパク質に特異的に結合する、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドを含有する融合タンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質は、これらのタンパク質配列:膜-結合タンパク質、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド-含有タンパク質、輸送シグナル-含有タンパク質に属する1又は複数のアミノ酸配列を更に含む、請求項6記載の融合タンパク質。
【請求項7】
対応するポリペプチドへの1個又は複数の残基の非-保存的置換及び/又は欠失から生じるアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのアンタゴニスト。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドに特異的に結合する、リガンド。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性を拮抗又は阻害する、請求項8記載のリガンド。
【請求項10】
膜-結合タンパク質のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、抗原結合断片、又は細胞外ドメインである、請求項9記載のリガンド。
【請求項11】
放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞傷害性物質中で選択された分子との、活性接合体又は複合体の形である、請求項1〜6のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの配列及び/又は構造を基にデザインされた、ペプチドミメティクス。
【請求項13】
b)請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様活性を有するポリペプチド;
c)請求項5又は6記載の、融合タンパク質;又は、
d)請求項7記載のアンタゴニスト;
からなる群より選択される単離されたポリペプチドをコードしている単離された核酸。
【請求項14】
配列番号:1、配列番号:1のヌクレオチド205-1425からなるDNA配列、又は配列番号:5、配列番号:5のヌクレオチド205-1590からなるDNA配列、又は配列番号:12、配列番号:12のヌクレオチド205-1503からなるDNA配列、あるいは前記DNA配列のいずれかの相補体を含む、請求項13記載の核酸。
【請求項15】
配列番号:1、配列番号:1のヌクレオチド205-1425、又は配列番号:5のDNA配列、配列番号:5のヌクレオチド205-1590からなる配列、又は配列番号:12、配列番号:12のヌクレオチド205-1503からなる配列、あるいは前記DNA配列のいずれかの相補体を含む群より選択される核酸と、
b)高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするか;又は
c)少なくとも約30個のヌクレオチドの範囲にわたり少なくとも約85%の同一性を示す、精製された核酸。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項17】
前記核酸分子は、発現制御配列に作用可能に連結され、コードされたポリペプチドの原核又は真核宿主細胞における発現を可能にしている、請求項16記載のベクター。
【請求項18】
請求項13〜15のいずれか1項記載の精製された核酸によりコードされたポリペプチド。
【請求項19】
細胞を、請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で遺伝子操作することを含む、請求項1〜7又は18のいずれか1項記載のポリペプチドを発現することが可能である細胞を作出するプロセス。
【請求項20】
請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で形質転換された宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの増加又は減少した発現レベルを有する、請求項13〜17のいずれか1項記載のベクター又は核酸で形質転換された、トランスジェニック動物細胞。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを増加又は減少するように形質転換されている、非-ヒトトランスジェニック動物。
【請求項23】
請求項20又は21記載の細胞を、核酸又はベクターが発現される条件下で培養すること、並びに培養物から該核酸又はベクターによりコードされたポリペプチドを回収することを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリペプチドの作出法。
【請求項24】
細胞又は動物において、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを増強する化合物。
【請求項25】
細胞又は動物において、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの発現レベルを低下する化合物。
【請求項26】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAである、請求項24記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24〜26のいずれか1項記載の化合物を含有する、精製された調製物。
【請求項28】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加が必要とされる場合の疾患の治療又は予防における、請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物の使用。
【請求項29】
活性成分としての、請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物の、フィブリリン-様活性の増加が必要な疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項30】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物を、医薬として許容できる担体と共に含有することを含む、医薬組成物の調製法。
【請求項31】
請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、あるいは請求項24記載の化合物を治療的有効量投与することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのフィブリリン-様活性の増加を必要とする疾患の治療又は予防の方法。
【請求項32】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防における、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物の使用。
【請求項33】
活性成分として、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項34】
請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物を、医薬として許容できる担体と共に含有することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの過剰なフィブリリン-様活性に関連した疾患の治療又は予防のための医薬組成物の調製法。
【請求項35】
請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、あるいは請求項25又は26記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドに関連した疾患の治療又は予防の方法。
【請求項36】
請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様ポリペプチドに関連した疾患の治療に対し有効な候補化合物をスクリーニングする方法であって:
b)候補化合物と、ポリペプチドの増強又は低下された発現レベルを有する、請求項20記載の細胞、請求項21記載のトランスジェニック動物細胞、又は請求項22記載の非-ヒトトランスジェニック動物とを、接触すること;及び
c)この化合物の動物又は細胞に対する作用を決定すること;
を含む方法。
【請求項37】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドのアンタゴニスト/インヒビター又はアゴニスト/アクチベーターとして候補化合物を同定する方法であって:
a)前記ポリペプチドを、前記化合物、及び前記ポリペプチドと結合することが可能な哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜と接触すること;及び
b)分子が、ポリペプチドの相互作用をブロックもしくは増強するかどうか、又は哺乳類細胞もしくは哺乳類細胞膜との、そのような相互作用から生じる反応を、測定すること;
を含む方法。
【請求項38】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する方法であって:
a)タンパク質を含有する試料を提供すること;
b)前記試料と、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンドとを接触すること;及び
c)前記ポリペプチドと結合したリガンドを決定すること;
を含む方法。
【請求項39】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドの転写産物又はこれをコードしている核酸の存在又は量を決定する方法であって:
a)核酸を含有する試料を提供すること;
b)前記試料と、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸を接触すること;及び
c)前記核酸と、前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションを決定すること;
を含む方法。
【請求項40】
ポリメラーゼ連鎖反応により、試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のポリペプチドをコードしている転写産物又は核酸の存在又は量を決定するための、配列番号:1、配列番号:5、配列番号:12に記載されたヌクレオチド配列由来のプライマーの使用。
【請求項41】
1又は複数の以下の試薬:請求項1〜6又は18のいずれか1項記載のポリペプチド、請求項7記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項記載のリガンド、請求項11記載のポリペプチド、請求項12記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項記載の核酸、請求項20又は21記載の細胞、もしくは請求項24〜26のいずれか1項記載の化合物、請求項29又は33記載の医薬組成物を含む、試料中の請求項1〜4のいずれか1項記載のフィブリリン-様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2007−525142(P2007−525142A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566056(P2004−566056)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051089
【国際公開番号】WO2004/063226
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051089
【国際公開番号】WO2004/063226
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
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