説明

新規ベクター

本発明は、工業的に安全に及び/又は安価で効率よく、遺伝子組換え技術によりポリエステル生産するための方法を提供する。 本発明は、より工業的に安全であることを特徴とする広宿主域ベクター、該ベクターに少なくともポリエステル合成酵素遺伝子を導入したポリエステル合成酵素発現プラスミド、該プラスミドを含むポリエステル合成能を有する形質転換体、および該プラスミドまたは形質転換体を使用したポリエステルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、広宿主域ベクターpJRD215ベクターを改良して作成した新規ベクター、およびそれを用いたポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
現在までに数多くの微生物において、エネルギー貯蔵物質としてポリエステルを菌体内に蓄積することが知られている。その代表例としては3−ヒドロキシ酪酸(以下3HBと略す)のホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と略す)であり、1925年にBacillus megateriumで最初に発見された。P(3HB)は熱可塑性高分子であり、自然環境中で生物的に分解されることから、環境にやさしいグリーンプラスチックとして注目されている。しかし、P(3HB)は結晶性が高いため、硬くて脆い性質を持っていることから実用的には応用範囲が限られる。この為、この性質の改良を目的とした研究がなされてきた。
その中で、3−ヒドロキシ酪酸(3HB)と3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とからなる共重合体(以下P(3HB−co−3HV)と略す)の製造方法が開示されている(例えば、特開昭57−150393号公報、特開昭59−220192号公報参照)。このP(3HB−co−3HV)はP(3HB)に比べると柔軟性に富むため、幅広い用途に応用できると考えられた。しかしながら、実際のところP(3HB−co−3HV)は3HVモル分率を増加させても、それに伴う物性の変化が乏しく、特にフィルム等に使用するのに要求される柔軟性が向上しないため、シャンプーボトルや使い捨て剃刀の取っ手等、硬質成型体の分野にしか利用されなかった。
近年、3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと略す)との2成分共重合ポリエステル(以下P(3HB−co−3HH)と略す)およびその製造方法について研究がなされた(特開平5−93049号公報、特開平7−265065号公報)。これら文献のP(3HB−co−3HH)の製造方法は、土壌より単離されたアエロモナス・キャビエを用いてオレイン酸等の脂肪酸やオリーブオイル等の油脂から発酵生産するものであった。また、P(3HB−co−3HH)の性質に関する研究もなされている(Y.Doi,S.Kitamura,H.Abe,Macromolecules 28,4822−4823(1995))。この報告では炭素数が12個以上の脂肪酸を唯一の炭素源としてアエロモナス・キャビエを培養し、3HHが11〜19mol%のP(3HB−co−3HH)を発酵生産している。このP(3HB−co−3HH)は3HHモル分率の増加にしたがって、P(3HB)の硬くて脆い性質から次第に柔軟な性質を示すようになり、P(3HB−co−3HV)を上回る柔軟性を示すことが明らかにされた。しかしながら、本製造方法では菌体生産量4g/L、ポリマー含量30%でありポリマー生産性が低いことから、実用化に向け更に高い生産性が得られる方法が探索された。
当該P(3HB−co−3HH)は3HHモル分率を変えることで、硬質ポリマーから軟質ポリマーまで幅広い物性を持つため、テレビの筐体等のように硬さを要求されるものから糸やフィルム等のような柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できる。しかしながら、これらの製造方法では本ポリマーの生産性が依然として低く、本ポリマーの実用化に向けた生産方法としては未だ不十分といわざるを得ない。
P(3HB−co−3HH)を生産するアエロモナス・キャビエよりポリヒドロキシアルカン酸(PHA)シンターゼ遺伝子がクローニングされた(特開平10−108682号公報、T.Fukui,Y.Doi,J.Bacteriol,179,15,4821−4830(1997))。本遺伝子をラルストニア・ユートロファ(旧アルカリゲネス・ユートロファス)に導入した形質転換体を用いてP(3HB−co−3HH)の生産を行った結果、菌体生産性は4g/L、ポリマー含量は30%であった。更に本形質転換体を炭素源として植物油脂を用いて培養した結果、菌体含量4g/L、ポリマー含量80%が達成された(T.Hukui等,Appl.Microbiol.Biotecnol.49,333(1998))。本研究で使用されたPHA合成酵素発現プラスミドは、pJRD215(ATCC 37533)にポリエステル合成酵素遺伝子を導入したpJRDEE32やpJRDEE32d13等であった(特開平10−108682号公報)。その後、本酵素に対して種々のPHA合成酵素変異体が作られた。その中で、149番目のアミノ酸アスパラギンがセリンに置換された変異体酵素や、171番目のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異体酵素は、大腸菌内でのPHA合成酵素活性や3HH組成が向上していることが示されている(T.Kichise等、Appl.Environ.Microbiol.68,2411−2419(2002))。
pJRD215は、広宿主域ベクターであるRSF1010の誘導体であり、接合伝達性を有している(J.Davison,M.Heusterspreute等,Gene,51,275−280(1987))。
接合伝達とは、異なる形質を持つ細菌を混合培養した時に起こる現象であり、ある細菌(供与菌)の遺伝子の一部が、他の細菌(受容菌)に移ることを指す。接合伝達能力の強度は、供与体の染色体上あるいは供与体が持つプラスミド上の接合伝達に関与する遺伝子によって決定される。接合伝達に関与する遺伝子には、自己伝達性遺伝子traおよび共役伝達性遺伝子mob、そしてoriT配列がある。traがコードするタンパク質は、供与菌・受容菌間の相互作用に関与する。mobがコードするタンパク質はoriT配列にニックを入れる機能、さらに一本鎖となったDNAを安定に運ぶ機能を有する。oriT配列は、ニックサイトとニックが入るための認識配列から成る。これら3種が共存してはじめて接合伝達が起こる。
pJRD215構築のもとになったRSF1010の研究はこれまでさかんに行われている。接合伝達性に関するmobB遺伝子の部分欠失、あるいはmobA,mobB両遺伝子の部分欠失、あるいはoriT配列の部分欠失により、エシェリキア・コリでは複製されるプラスミドの数が上昇し、接合伝達性が大幅に除去されることがすでに知られている(J.Frey,M.M.Bagdasarian,M.Bagdasarian,Gene,113,101−106(1992))。また、RSF1010のoriT領域、mob遺伝子領域と高い相同性を示すプラスミドR1162を用いた研究では、mobA遺伝子の180番目以降のアミノ酸を欠失した場合、あるいはmobA遺伝子の25番目のアミノ酸残基をチロシンからフェニルアラニンに置換することにより、mobタンパク質の機能が不活化したとの報告がある(E.C.Becker,R.J.Meyer,J.Biol.Chem,277,14575−14580(2002))。
しかし、RSF1010のmobA遺伝子は複製に関与するrepB遺伝子と一部重複しているため(P.Scholz,V.Haring等,Gene,75,271−288(1989))、シュードモナス・プチダではmobA,mobB遺伝子を部分欠失させるとベクターが複製しないという報告もあり(M.M.Bagdasarian,P.Scholz等,Banbury Report,24,209−223(1986))、ラルストニア・ユートロファでこのような改変ベクターが複製されるかは不明であった。
また、pJRD215は、接合伝達に関与する遺伝子のうち、mob遺伝子群およびoriT配列を有するため、工業スケールでのポリエステル製造時にpJRD215を保有する形質転換体が万が一漏洩した場合、RP4のようにtra遺伝子含有プラスミドを持つ微生物と接触すると、接合伝達が生じる可能性があり、組換え体の封じ込めといった安全面での課題を有していた。
また、これまでラルストニア・ユートロファPHB−4株(DSM541)(ポリエステル合成能欠損株)への形質転換法として、主として用いられてきたのは、上記の接合伝達法であった。したがって接合伝達能を失わせた場合、接合伝達法以外の方法、すなわちエレクトロポレーション法やカルシウム法等を用いて形質転換することが必須となる。しかし、pJRD215ベクターを宿主であるラルストニア・ユートロファPHB−4株に導入する場合、そのプラスミドの大きさから形質転換効率が著しく低下することが経験的に知られていた。
従って、接合伝達能力を欠失させた場合、宿主の形質転換を容易に行うため、ポリエステル合成酵素発現プラスミドの改良といった新たな課題が生じる。このため、エレクトロポレーション法等を用いて本ベクターを宿主であるラルストニア・ユートロファPHB−4株に導入する場合に、形質転換効率の向上のため、プラスミドサイズの小型化が望まれていた。
発明の要約
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、従来用いていた広宿主域ベクターpJRD215から、mob遺伝子群の部分欠失もしくは塩基置換、および/または、oriT配列の部分欠失もしくは全欠失を行うことにより、ベクターの持つ接合伝達能力を著しく低下させ、工業的により安全に使用可能なベクターが得られることを見いだした。
また、操作性向上のため、広宿主域ベクターpJRD215から、不要な遺伝子配列部分、すなわちストレプトマイシン耐性遺伝子およびcos配列を欠失させることにより、形質転換効率の向上した小型ベクターが得られることを見いだした。
さらに、作製したそれらのベクターに、アエロモナス・キャビエ由来のP(3HB−co−3HH)共重合体を合成する酵素発現ユニット(EE32、EE32d13、N149S、D171G、F353T等)を挿入した発現プラスミドを、ラルストニア・ユートロファに遺伝子導入した該形質転換体を用いて、ポリエステルを製造することに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、より工業的に安全であることを特徴とする広宿主域ベクター、該ベクターに少なくともポリエステル合成酵素遺伝子を導入したポリエステル合成酵素発現プラスミド、該プラスミドを含むポリエステル合成能を有する形質転換体、および該プラスミドを使用したポリエステルの製造方法に関する。
つまり、本発明は、接合伝達能力の一部または全てを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;接合伝達能力の一部または全てを欠失し、かつ、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;上記ポリエステル合成酵素発現プラスミドによって形質転換された形質転換体;ポリエステルが、下式(1)

(式中、m、nは1以上の整数を表す)で示される、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)である、上記発現プラスミドまたは形質転換体を用いたポリエステルの製造方法、に関する。
発明の詳細な開示
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル合成酵素発現プラスミドは、接合伝達能力の一部または全てを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;接合伝達能力の一部または全てを欠失し、かつ、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミドである。
ベクター作製
まず、ベクターの作製について説明する。
全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されているように行うことができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。なお、酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。また、クローニング宿主としては、特に限定はないが、例えば大腸菌等が挙げられる。
本発明において使用するベクターとしては、接合伝達性遺伝子を持つ広宿主域ベクターであれば特に制限はないが、特開平7−265065号公報に記載のpJRD215を好ましく使用することができる。また、pJRD215の塩基配列を配列番号1に示す。
ベクターから接合伝達能を低下あるいは欠失させるには、接合伝達性に関与する遺伝子領域を全欠失、部分欠失、塩基挿入、塩基置換等のいずれかを行うことによって、その機能を低下あるいは欠失させることができる。
例えばpJRD215であれば、mobA、mobB、mobC、oriT配列に対し、全欠失、部分欠失、塩基挿入、塩基置換等のいずれかを行う。mobA、mobB、mobC、oriT配列のうちのどの遺伝子の機能を欠失させてもよいが、特に、可動性に必須であるmobA遺伝子、あるいはニックサイトを持つoriT配列に対して上記の操作を行うことが好ましい。また、機能を低下あるいは欠失させる遺伝子は、1種類でもよいが2種類以上ならばさらに好ましい。
なお、pJRD215は、RSF1010の誘導体であるため、P.Scholz,V.Haring等,Gene,75,271−288(1989)でのRSF1010の定義をそのまま引用することができる。すなわち、pJRD215のoriT配列は配列番号1の3081〜3169であり、ニックサイトは3138と3139の間と定義できる。また、mobA遺伝子は配列番号1の3250〜4407、mobB遺伝子は配列番号1の3998〜4411と定義することができる。
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域の欠失または変異であるポリエステル合成酵素発現プラスミドとしては、例えば、pJRD215(配列番号1)の3215〜4075を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド;pJRD215の3737〜4378を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド;pJRD215の4000〜4378を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド;pJRD215の3323のアデニンをチミンへ置換したポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
また、接合伝達能力の一部または全ての欠失が、oriT領域の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミドとしては、例えば、pJRD215(配列番号1)の3132〜3145を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド;pJRD215の3132〜3169を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
さらに、接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域およびoriT領域の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミドとしては、例えば、mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3145の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミド;
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215の3132〜3169の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミド;
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215の3132〜3178の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミド;
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215の3132〜3214の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミド;
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215の3095〜3214の欠失であるポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
ここで、mob遺伝子領域の欠失は、mob遺伝子部分を含む制限酵素断片の欠失、またはPCRを用いた欠失等により行うことができる。また、mob遺伝子領域の変異は、部位特異的変異導入法等により行うことができる。さらに、oriT領域の欠失は、上記mob遺伝子領域の欠失の場合と同様に、oriT部分を含む制限酵素断片の欠失、またはPCRを用いた欠失等により行うことができる。
また、形質転換効率の向上のためにプラスミドを小型化するには、ポリエステル合成酵素遺伝子の発現およびプラスミド複製に不要である部分を欠失させることにより行える。例えば、使用するベクターに抗生物質耐性遺伝子が2つ以上あるならば、そのどちらかを欠失させることができる。
例えばpJRD215の場合、カナマイシン耐性遺伝子あるいはストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失させることが可能であるが、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失させることが好ましい。
また、pJRD215の場合、プラスミドの小型化を目的とし、プラスミドの複製に関与しないマルチクローニングサイトやcos領域等も欠失させることができる。マルチクローニングサイトおよびラムダファージ由来のcos領域は、明確に定義されていないが、J.Davison,M.HeustersPreute等,Gene,51,275−280(1987)より、配列番号1の9680〜10130付近がマルチクローニングサイトであり、9260〜9660付近がcos領域であるといえる。
ストレプトマイシン耐性遺伝子領域を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミドとしては、例えば、pJRD215(配列番号1)の206〜1690を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
cos領域を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミドとしては、例えば、pJRD215(配列番号1)の9237〜10127を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド;pJRD215の8915〜10055を欠失させたポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
ストレプトマイシン耐性遺伝子領域の欠失、cos領域の欠失、マルチクローニングサイトの欠失も、上記mob遺伝子領域の欠失と同様にして行うことができる。
また、接合伝達能力の一部または全てを欠失し、かつ、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミドも好適に用いることができる。なお、当該ポリエステル合成酵素発現プラスミドは、上述の接合伝達能力の一部または全ての欠失およびストレプトマイシン耐性遺伝子の欠失を組み合わせることにより得ることができる。
さらに、cos領域の欠失やマルチクローニングサイトの欠失を組み合わせることもでき、例えば、接合伝達能力の一部または全てを欠失し、かつ、cos領域及び/又はマルチクローニングサイトを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失し、かつ、cos領域及び/又はマルチクローニングサイトを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド;接合伝達能力の一部または全てを欠失し、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失し、かつ、cos領域及び/又はマルチクローニングサイトを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド等が挙げられる。
次に、ポリエステル合成酵素発現プラスミドの作製について説明する。
上記のようにして作製したベクターに、ポリエステル合成酵素遺伝子を挿入することにより、本発明のポリエステル合成酵素発現プラスミドを作製することができる。
ポリエステル合成酵素遺伝子としては、構造遺伝子のほかに、プロモーター、ターミネーター等、宿主菌で機能する発現ユニットを有していればよい。
ポリエステル合成酵素遺伝子は、アエロモナス・キャビエ由来のものが好ましく、例えば、特開平10−108682号公報に記載されているアエロモナス・キャビエ由来の遺伝子断片EE32、EE32d13等を用いることができる。また、T.Kichise等、Appl.Environ.Microbiol.68,2411−2419(2002)に記載されている、149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(N149S変異体遺伝子)、171番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(D171G変異体遺伝子)、あるいは、コンピューター上での酵素の立体構造または予想される立体構造を基に有用なアミノ酸変異を特定可能なプログラム等、例えばShrike(特開2001−184831)により設計された、353番目のアミノ酸のフェニルアラニンがスレオニンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(F353T変異体遺伝子)、または、上記置換の内のいずれか2つ以上のアミノ酸置換が組み合わされたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子(上記変異を組み合わせた変異体遺伝子)等を好ましく用いることができる。なお、ポリエステル合成酵素発現プラスミドには、上記発現ユニットが1個以上複数個存在してもよい。
形質転換体の作製
次に、形質転換体の作製について説明する。
本発明の形質転換体は、上記ポリエステル合成酵素発現プラスミドによって形質転換されたものである。つまり、本発明の形質転換体は、上記で得られたポリエステル合成酵素発現プラスミドを、当該プラスミドに適合する宿主中に導入することにより得られる。
宿主としては、特に制限はないが、天然から単離された微生物や、菌株の寄託機関(例えばIFO、ATCC等)に寄託されている徴生物等を使用できる。具体的にはラルストニア(Ralstonia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等の細菌類を使用することができる。好ましくはラルストニア属であり、より好ましくはラルストニア・ユートロファである。
微生物へのポリエステル合成酵素発現プラスミドの導入は、公知の方法により行うことができる。例えば、エレクトロポレーション法(Current Protocols in Morecular Biology、1巻、1.8.4頁、1994年)や、カルシウム法(Lederberg.E.M.et al.,J.Bacteriol.119.1072(1974))等を用いることができる。
本発明に用いる好ましい形質転換体としては、例えば、宿主としてのラルストニア・ユートロファに、各ポリエステル合成酵素発現プラスミドを導入した形質転換体等が挙げられる。具体的には、以下に示す形質転換体等が挙げられる。pJRDdcmBEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdcmBEE32d13(受託番号FERM P−19352、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdcm25YFEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdcm25YFEE32d13(受託番号FERM P−19353、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdcm163EE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdcm163EE32d13(受託番号FERM P−19354、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdTcsEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdTcsEE32d13(受託番号FERM P−19355、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdTcEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdTcEE32d13(受託番号FERM BP−08624、原寄託日平成15年5月16日の国内寄託をブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)、
pJRDdncEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdncEE32d13(受託番号FERM BP−08625、原寄託日平成15年5月16日の国内寄託をブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)、
pJRDdsEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdsEE32d13(受託番号FERM P−19358、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdmsEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdmsEE32d13(受託番号FERM BP−08626、原寄託日平成15年5月16日の国内寄託をブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)、
pJRDdmEE32d13を導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdmEE32d13(受託番号FERM P−19360、寄託日平成15年5月16日)、
pJRDdTc171DGを導入した形質転換体である、Ralstonia eutropha PHB−4/pJRDdTc171DG(受託番号FERM BP−08623、寄託日平成16年2月13日、ブダペスト条約に基づく国際寄託)。
なお、これら形質転換体はいずれも、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
ポリエステル生産
次に、ポリエステルの生産について説明する。
本発明のポリエステルの製造方法は、上記発現プラスミドまたは形質転換体を用い、下式(1)

(式中、m、nは1以上の整数を表す)で示される、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)を製造する方法である。
ポリエステルの生産においては、糖、油脂または脂肪酸を炭素源として与え、炭素源以外の栄養源である窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を含む培地を用いて、上記形質転換体を培養することができる。
例えば、ラルストニア属、アエロモナス属、エシェリキア属、アルカリゲネス属またはシュードモナス属に属する微生物等の細菌を宿主として得られた形質転換体を、培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源を与え、場合によっては、窒素源、無機塩類および有機栄養源のうちのいずれかを制限した培地、例えば窒素源を0.01〜0.1%に制限した培地等を用いることができる。
糖としては、例えばグルコース、フラクトース等の炭水化物が挙げられる。油脂としては、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂、例えばヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。脂肪酸としては、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体が挙げられる。
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
そのほかの有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸;ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
また、培養液中に、ベクターに存在する耐性遺伝子に対応する抗生物質(カナマイシン等)を添加しても良い。
培養温度は、その菌の生育可能な温度であればよいが、20℃から40℃が好ましい。培養時間は、特に制限はないが、1〜7日間程度で良い。
その後、得られた該培養菌体からポリエステルを回収すればよい。
本発明において、菌体からのポリエステルの回収は、例えば次のような方法により行うことができる。培養終了後、培養液から、遠心分離器等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてポリエステルを抽出する。このポリエステルを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてポリエステルを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてポリエステルを回収する。
得られたポリエステルの平均分子量や3HH組成(mol%)の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法や核磁気共鳴法等により行うことができる。あるいは、ポリエステル生産確認の簡易法としては、Nileredを用いた染色法を利用できる。すなわち、組換え菌が生育する培地にNileredを加え、組換え菌を1〜7日間培養し、組換え菌が赤変するか否かを観察することにより、ポリエステル生産の有無を確認できる。
接合伝達能の評価
次に、接合伝達能の評価について説明する。作製したベクターの接合伝達能は、以下の方法で評価することができるが、この方法に限定されるものではない。
まず、評価するベクターを、tra遺伝子を持つ細菌に形質転換し、これを供与菌とする。tra遺伝子を持つ細菌としては、例えばエシェリキア・コリS17−1株等を用いることができる。受容菌としては、供与菌と共存培養でき、かつ、評価するベクターがその細胞内で複製できる細菌であればどのようなものでも用いることができるが、混合培養後に供与菌と分離できるよう、供与菌とは異なる抗生物質耐性を持つものが望ましい。
次に、供与菌と受容菌それぞれを、あらかじめ適当な培地で培養して増やし、それぞれを混合した後、適当な培地に接種することにより混合培養を行う。
この時用いる培地としては、固体、液体のどちらを用いてもよく、抗生物質は添加しない。混合培養の培養温度は、供与菌、受容菌が生育可能な温度であればよいが、20℃から40℃が好ましい。培養時間には特に制限はないが、5時間から20時間が好ましい。
接合伝達能の評価は、受容菌あたりの接合伝達頻度を算出することにより行うが、この方法に限定されるものではない。接合伝達頻度の算出方法は、以下の実施例に詳しく記載する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のmob領域欠失ベクターおよびストレプトマイシン耐性遺伝子欠失ベクター構築図である。
図2は、本発明のcos領域oriT領域欠失ベクター構築図である。
図3は、本発明のmob遺伝子領域部分欠失cos領域欠失ベクター構築図である。
図4は、本発明のmob遺伝子領域部分欠失cos領域欠失ベクター構築図である。
図5は、本発明のmobA遺伝子変異cos領域欠失ベクター構築図である。
図6は、本発明のmob領域およびoriT領域欠失ベクター構築図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、これら実施例にその技術範囲を限定するものではない。
(実施例1) mobA,mobB遺伝子部分欠失
プラスミドpJRD215を制限酵素Van91Iで切断することにより、mobAおよびB遺伝子の一部分を欠失させた約9.5kbのDNA断片を得た。これを、DNA Ligation Kit Ver.1(宝酒造(株)製)を用いて自己連結させ、プラスミドpJRDdmを得た(図1)。当該プラスミドpJRDdmは、pJRD215の3215〜4075を欠失させたものである。
(実施例2) cos領域欠失およびoriT領域欠失
プラスミドpJRD215を制限酵素SpeIとBglIIで切断したものを、DNA Blunting Kit(宝酒造(株)製)を用いて平滑末端化し、自己連結させた。このプラスミドをpJRDdcとする(図2)。当該プラスミドpJRDdcは、pJRD215の8915〜10055を欠失させたものである。
次に、プラスミドpJRDdcを鋳型として、配列番号4と配列番号6で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約0.5kbのDNA断片を得た。また、同様にpJRDdcを鋳型として、配列番号5と配列番号7で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約2.4kbのDNA断片を得た。得られた2断片に重複部分があることを利用して、オーバーラップPCR法を行った。ポリメラーゼとしてはPyrobest(宝酒造(株)製)を用いた。このオーバーラップPCR法により得られた約2.8kbの断片を制限酵素EcoO109IとAf1IIIで切断し、同様にEcoO109IとAflIIIで切断しておいた上記のpJRDdcと連結させた。これにより、pJRDdTcを得た(図2)。当該プラスミドpJRDdTcは、pJRD215の3132〜3169を欠失させ、かつ、cos領域を欠失させたものである。
また同様に、pJRDdcを鋳型として、配列番号4と配列番号8で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約0.5kbのDNA断片を得た。また、同様にpJRDdcを鋳型として、配列番号5と配列番号9で示されるプライマーを用いてPCR反応を行い、約2.4kbのDNA断片を得た。得られた2断片に重複部分があることを利用して、オーバーラップPCR法を行った。ポリメラーゼとしてはPyrobestを用いた。このオーバーラップPCR法により得られた約2.8kbの断片を制限酵素EcoO109IとAflIIIで切断し、同様に制限酵素EcoO109IとAflIIIで切断したpJRDdcと連結させた。これにより、pJRDdncを得た(図2)。当該プラスミドpJRDdncは、pJRD215の3132〜3145を欠失させ、かつ、cos領域を欠失させたものである。
(実施例3) pJRDdmからcos領域欠失およびmob遺伝子領域欠失あるいは変異導入
プラスミドpJRDdmを制限酵素SpeIとBglIIで切断したものを、DNA Blunting Kit(宝酒造(株)製)を用いて平滑末端化し、自己連結させた。このプラスミドをpJRDdcmとする(図3)。
次に、pJRDdcmを鋳型とし、配列番号5と配列番号10で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。得られたDNA断片を制限酵素Van91IとAflIIIで切断し、同様に制限酵素Van91IとAflIIIで切断したpJRDdcmに連結し、プラスミドpJRDdcm4380を得た(図3)。
一方、pJRD215を鋳型として、配列番号11と12で示されるプライマーを用いてPCR反応を行った。ポリメラーゼとしてはPyrobestを用いた。得られた約1.5kbのDNA断片を制限酵素XhoIとPstIで切断し、制限酵素XhoIとPstIで切断したpSTV28ベクター(宝酒造(株)社製使用)に挿入し、pSTVmobを作成した。次に、pSTVmob中のVan91Iサイト3つあるうちの2番目のVan91Iサイトを欠失するため、PCRプライマーとして配列番号13と配列番号14を用いてpSTVmobを増幅した。ポリメラーゼとしてはPfu(Stratagene社製)を用いた。PCR反応後、制限酵素DpnIを加え鋳型としたプラスミドを切断し、エシェリキア・コリJM109株に形質転換し、形質転換体よりVan91Iサイトを1つ欠失したプラスミドpSTVmob−delVanを得た(図4)。
次に、鋳型としてpSTVmob−delVanを用い、プライマーとして配列番号15と配列番号16を用いてPCR反応を行った。ポリメラーゼとしてはPyrobestを用いた。増幅した断片を制限酵素Van91Iで切断し、Van91I処理したpJRDdcm4380と連結することにより、pJRDdcm163を得た(図4)。当該プラスミドpJRDdcm163は、pJRD215の3737〜4378を欠失させ、かつ、cos領域を欠失させたものである。
同様に、鋳型としてpSTVmob−delVanを用い、プライマーとして配列番号15と配列番号17を用いてPCR反応を行った。ポリメラーゼとしてはPyrobestを用いた。増幅した断片を制限酵素Van91Iで切断し、Van91I処理したpJRDdcm4380と連結することにより、pJRDdcmBを得た(図4)。当該プラスミドpJRDdcmBは、pJRD215の4000〜4378を欠失させ、かつ、cos領域を欠失させたものである。
次に、pJRD215(配列番号1)の3323のアデニンをチミンに置換するために、すなわちmobA遺伝子の25番目のアミノ酸残基をチロシンからフェニルアラニンに置換するために、以下の作業を行った。pSTVmob−delVanを鋳型とし、PCRプライマーとして配列番号18と配列番号19を用いて増幅した。ポリメラーゼとしてはPfuを用いた。PCR反応後、制限酵素DpnIを加え鋳型としたプラスミドを切断し、エシェリキア・コリJM109株に形質転換し、形質転換体よりpSTVmob25YFを得た(図5)。pSTVmob25YFをVan91I処理して得られた約0.9kbの断片を、Van91Iで切断したpJRDdcに連結し、pJRDdcm25YFを得た(図5)。当該プラスミドpJRDdcm25YFは、pJRD215の3323のアデニンをチミンへ置換し、かつ、cos領域を欠失させたものである。
(実施例4) ストレプトマイシン耐性遺伝子欠失
pJRD215および実施例1〜3で得たベクターpJRDdm、pJRDdTc、pJRDdnc、pJRDdcm163、pJRDdcmB、pJRDdcm25YFを、制限酵素EcoICRIとPshAIで切断することにより、ストレプトマイシン耐性遺伝子(strAおよびstrB遺伝子)のうち約1.5kbを欠失させ、平滑末端となった約8.0kbのDNA断片を得た。これを自己連結させ、プラスミドpJRDds、pJRDdms、pJRDdTcs、pJRDdncs、pJRDdscm163、pJRDdscmB、pJRDdscm25YFを得た(図1)。これらプラスミドは、用いたプラスミドにおいて、さらにpJRD215の206〜1690を欠失させたものである。
(実施例5) pJRDdmsからcos領域およびマルチクローニングサイト欠失
実施例4で得られたプラスミドpJRDdmsを制限酵素NheIとEcoRIで切断したものを、配列番号2(順鎖)および配列番号3(逆鎖)に示す合成DNA配列と連結させた。このことにより、cos配列およびマルチクローニングサイトを含む約0.9kbを、合成DNA45bpと置き換えることにより完全に欠失させ、約7.1kbのプラスミドpJRDdmscを得た(図1)。
(実施例6) mob領域およびoriT領域欠失ベクター作製
次に、配列番号20と配列番号21で示されるプライマーを用いてpJRD215を鋳型としてPCR反応を行い、約1kbのDNA断片を得た。ポリメラーゼとしては、Pyrobestを用いた。このDNA断片を制限酵素SfiIとVan91Iで切断した後、同じく制限酵素SfiIとVan91Iで切断したプラスミドpJRDdmおよびpJRDdmsとそれぞれ連結し、プラスミドpJRDdmT1およびpJRDdmsT1を得た(図6)。
同様に、配列番号20と配列番号22で示されるプライマーを用いてpJRD215を鋳型としてPCR反応を行い、約1kbのDNA断片を得、このDNA断片を制限酵素SfiIとVan91Iで切断した後、同じく制限酵素SfiIとVan91Iで切断したプラスミドpJRDdmおよびpJRDdmsとそれぞれ連結し、プラスミドpJRDdmT2およびpJRDdmsT2を得た(図6)。
さらに同様に、配列番号20と配列番号23で示されるプライマーを用いてpJRD215を鋳型としてPCR反応を行い、約1kbのDNA断片を得、このDNA断片を制限酵素SfiIとVan91Iで切断した後、同じく制限酵素SfiIとVan91Iで切断したプラスミドpJRDdmおよびpJRDdmsとそれぞれ連結し、プラスミドpJRDdmT3およびpJRDdmsT3を得た(図6)。
(実施例7) ポリエステル生産用発現プラスミド作製、および形質転換体構築
N149S変異体、D171G変異体、F353T変異体遺伝子断片は、それぞれPCR法により作成した。例えば、D171G変異はアエロモナス・キャビエ由来PHA合成酵素の171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がグリシンに置換されている。従って、特開平10−108682号公報に記載されているアエロモナス・キャビエ由来の遺伝子断片EE32d13を、一旦pUC19のEcoRIサイトにサブクローニングしておき、配列番号24と配列番号25で示される合成DNAをプライマーとして用いてPCRを行った。その条件は(1)94℃で2分、(2)94℃で30秒、(3)55℃で30秒、(4)72℃で2分、(2)から(4)を25サイクル、(5)72℃で5分であり、ポリメラーゼとしてはEx Taqポリメラーゼ(宝バイオ製)を用いた。
実施例1〜5で得たベクターpJRDds、pJRDdm、pJRDdms、pJRDdTc、pJRDdTcs、pJRDdnc、pJRDdcm163、pJRDdcmB、pJRDdcm25YFを、それぞれ制限酵素EcoRIで切断し、アエロモナス・キャビエ由来の遺伝子断片EE32d13、または、N149S変異体、D171G変異体、F353T変異体の遺伝子断片をそれぞれ、上記プラスミドのEcoRIサイトに挿入し、発現プラスミドpJRDdsEE32d13、pJRDdmEE32d13、pJRDdmsEE32d13、pJRDdTcEE32d13、pJRDdTc149NS、pJRDdTc171DG、pJRDdTc353FT、pJRDdTcsEE32d13、pJRDdncEE32d13、pJRDdcm163EE32d13、pJRDdcmBEE32d13、pJRDdcm25YFEE32d13をそれぞれ作製した。
これらの発現プラスミドを含むラルストニア・ユートロファの形質転換体を電気パルス法により作製した。つまり、遺伝子導入装置はBiorad社製のジーンパルサーを用い、キュベットは同じくBiorad社製のgap0.2cmのものを用いた。キュベットに、コンピテント細胞400μlとプラスミド20μlを注入してパルス装置にセットし、静電容量25μF、電圧1.5kV、抵抗値800Ωの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベット内の菌液をNutrientBroth培地(DIFCO社製)で30℃、3時間振とう培養し、選択プレート(NutrientAgar培地(DIFCO社製)、カナマイシン100mg/l)で、30℃にて2日間培養して、形質転換体をそれぞれ取得した。
これらの形質転換体はそれぞれ、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託を行った(pJRDdcmBEE32d13形質転換体=FERM P−19352、pJRDdcm25YFEE32d13形質転換体=FERM P−19353、pJRDdcm163EE32d13形質転換体=FERM P−19354、pJRDdTcsEE32d13形質転換体=FERM P−19355、pJRDdTcEE32d13形質転換体=FERM BP−08624、pJRDdncEE32d13形質転換体=FERM BP−08625、pJRDdsEE32d13形質転換体=FERM P−19358、pJRDdmsEE32d13形質転換体=FERM BP−08626、pJRDdmEE32d13形質転換体=FERM P−19360、pJRDdTc171DG形質転換体=FERM BP−08623)。
(実施例8) 形質転換体を使用したポリエステル生産
実施例7で得られた形質転換体を、Nilered含有培地(リン酸水素2ナトリウム・12水塩 9g、リン酸2水素カリウム 1.5g、塩化アンモニウム 0.05g、硫酸マグネシウム・7水塩 0.02g、フルクトース 0.5g、塩化コバルト・6水塩 0.25ppm、塩化鉄(III)・6水塩 16ppm、塩化カルシウム・2水塩 10.3ppm、塩化ニッケル・6水塩0.12ppm、硫酸銅・5水塩 0.16ppm、Nilered 0.5mg、寒天 15g/1L)に播種し、30℃で1週間培養した。培養後、全ての株が赤変し、菌体内にポリエステルを蓄積していることが判明した。
(実施例9) 形質転換体の接合伝達能評価
実施例7に記載した発現プラスミドのうち、pJRDdmEE32d13、pJRDdmsEE32d13、pJRDdTcEE32d13、pJRDdncEE32d13について接合伝達能評価を行った。コントロールにはpJRDEE32d13を用いた。
これらの発現プラスミドで形質転換されたエシェリキア・コリS17−1株を供与菌とし、エシェリキア・コリXL10−gold株を受容菌とした。供与菌、受容菌それぞれをTB培地(Tryptone 1.2%、Yeast extract 2.4%、グリセロール 0.4%)に植菌し、37℃で1晩培養した。LBプレート(Tryptone 1%、Yeast extract 0.5%、NaCl 1%、寒天1.5%)上に滅菌済のニトロセルロースフィルタを載せ、培養液をそれぞれ供与菌10μlと受容菌10μlに混合させ、その混合培養液をニトロセルロースフィルタ上に接種した。37℃で5〜15時間培養した後、ニトロセルロースフィルタを生理食塩水1mlの入ったチューブに移し、十分懸濁してニトロセルロースフィルタ上の菌を浮遊させた。
こうして得られた混合菌の懸濁液を10〜10倍希釈し、カナマイシン50μg/mlとクロラムフェニコール20μg/mlを含むLBプレート、およびクロラムフェニコール20μg/mlのみを含むLBプレートに、それぞれ100μlずつプレーティングし、37℃で1晩培養した。培養後、それぞれの出現コロニー数を数えたところ、表1に示す結果となった。

エシェリキア・コリS17−1株はクロラムフェニコール感受性かつカナマイシン感受性である。一方、エシェリキア・コリXL10−gold株は、クロラムフェニコール耐性かつカナマイシン感受性である。エシェリキア・コリS17−1株の形質転換に用いた発現プラスミドは全てカナマイシン耐性遺伝子を含むので、発現プラスミドを保持する菌はカナマイシン耐性となる。したがって、クロラムフェニコール20μg/mlのみを含むLBプレートでは、エシェリキア・コリXL10−gold株の総数を検出でき、カナマイシン50μg/mlとクロラムフェニコール20μg/mlを含むLBプレートでは、発現プラスミドが伝達されたエシェリキア・コリXL10−gold株が検出できる。
そこで、受容菌あたりの接合伝達頻度は、細胞懸濁液100μl中に含まれる、接合伝達により発現プラスミドが導入されたエシェリキア・コリXL10−gold株数を、エシェリキア・コリXL10−gold株の総数で割ることにより計算した。また、導入されたXL10−goldの数が0であった場合は、導入されたXL10−goldの数を仮に1とおいて受容菌あたりの接合伝達頻度を算出し、得られた接合伝達頻度未満と表す。以下に実際の算出値を示す。
表1の結果より、pJRDdmEE32d13がtra遺伝子と共存した場合の受容菌あたりの接合伝達頻度は、9/1007×10−5=8.9×10−8;pJRDdmsEE32d13がtra遺伝子と共存した場合の受容菌あたりの接合伝達頻度は、13/183×10−7=7.1×10−9;pJRDdTcEE32d13がtra遺伝子と共存した場合の受容菌あたりの接合伝達頻度は、1/301×10−5=3.3×10−8未満;pJRDdncEE32d13がtra遺伝子と共存した場合の受容菌あたりの接合伝達頻度は、1/420×10−5=2.4×10−8未満であった。
同様の方法でpJRD215EE32d13の接合伝達頻度を別途試験した場合の、受容菌あたりの接合伝達頻度は、318/513×10−3=6.2×10−4であったため、pJRDdmEE32d13、pJRDdmsEE32d13、pJRDdTcEE32d13、pJRDdncEE32d13は、pJRD215EE32d13よりも1/10〜1/10倍以下に接合伝達頻度が落ちており、tra遺伝子と共存した場合においても接合伝達性は実質的にないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
上述したように、新規ベクター、特にラルストニア・ユートロファで複製可能な新規ベクターを用いた遺伝子組換え技術により、工業的に安全に及び/又は安価で効率よく、ポリエステル生産することが可能となった。
【配列表】














【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合伝達能力の一部または全てを欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項2】
ベクターがpJRD215(配列番号1)である請求の範囲第1項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項3】
プラスミドに含有されるポリエステル合成酵素遺伝子が、以下の(1)〜(5)のいずれか1つ以上の遺伝子である請求の範囲第1または2項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド;
(1)アエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(2)149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(3)171番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(4)353番目のアミノ酸のフェニルアラニンがスレオニンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(5)上記(2)から(4)の置換の内、いずれか2つ以上のアミノ酸置換が組み合わされたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子。
【請求項4】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域の欠失または変異である請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項5】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失である請求の範囲第4項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項6】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3737〜4378の欠失である請求の範囲第4項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項7】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の4000〜4378の欠失である請求の範囲第4項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項8】
mob遺伝子領域の変異が、pJRD215(配列番号1)の3323のアデニンからチミンへの置換である請求の範囲第4項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項9】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、oriT領域の欠失である請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項10】
oriT領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3132〜3145の欠失である請求の範囲第9項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項11】
oriT領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3132〜3169の欠失である請求の範囲第9項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項12】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域およびoriT領域の欠失である請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項13】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3145の欠失である請求の範囲第12項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項14】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3169の欠失である請求の範囲第12項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項15】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3178の欠失である請求の範囲第12項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項16】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3214の欠失である請求の範囲第12項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項17】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3095〜3214の欠失である請求の範囲第12項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項18】
ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項19】
ベクターがpJRD215(配列番号1)である請求の範囲第18項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項20】
プラスミドに含有されるポリエステル合成酵素遺伝子が、以下の(1)〜(5)のいずれか1つ以上の遺伝子である請求の範囲第18または19項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド;
(1)アエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(2)149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(3)171番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(4)353番目のアミノ酸のフェニルアラニンがスレオニンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(5)上記(2)から(4)の置換の内、いずれか2つ以上のアミノ酸置換が組み合わされたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子。
【請求項21】
ストレプトマイシン耐性遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の206〜1690の欠失である請求の範囲第18〜20項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項22】
接合伝達能力の一部または全てを欠失し、かつ、ストレプトマイシン耐性遺伝子を欠失したポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項23】
ベクターがpJRD215(配列番号1)である請求の範囲第22項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項24】
プラスミドに含有されるポリエステル合成酵素遺伝子が、以下の(1)〜(5)のいずれか1つ以上の遺伝子である請求の範囲第22または23項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド;
(1)アエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(2)149番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(3)171番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグリシンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(4)353番目のアミノ酸のフェニルアラニンがスレオニンに置換されたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子、
(5)上記(2)から(4)の置換の内、いずれか2つ以上のアミノ酸置換が組み合わされたアエロモナス・キャビエ由来であるポリエステル合成酵素遺伝子。
【請求項25】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域の欠失または変異である請求の範囲第22〜24項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項26】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失である請求の範囲第25項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項27】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3737〜4378の欠失である請求の範囲第25項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項28】
mob遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の4000〜4378の欠失である請求の範囲第25項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項29】
mob遺伝子領域の変異が、pJRD215(配列番号1)の3323のアデニンからチミンへの置換である請求の範囲第25項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項30】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、oriT領域の欠失である請求の範囲第22〜24項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項31】
oriT領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3132〜3145の欠失である請求の範囲第30項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項32】
oriT領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の3132〜3169の欠失である請求の範囲第30項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項33】
接合伝達能力の一部または全ての欠失が、mob遺伝子領域およびoriT領域の欠失である請求の範囲第22〜24項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項34】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3145の欠失である請求の範囲第33項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項35】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3169の欠失である請求の範囲第33項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項36】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3178の欠失である請求の範囲第33項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項37】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3132〜3214の欠失である請求の範囲第33項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項38】
mob遺伝子領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3215〜4075の欠失であり、かつoriT領域の欠失がpJRD215(配列番号1)の3095〜3214の欠失である請求の範囲第33項記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項39】
ストレプトマイシン耐性遺伝子領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の206〜1690の欠失である請求の範囲第22〜24項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項40】
cos領域をさらに欠失した請求の範囲第1〜39項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項41】
cos領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の9237〜10127の欠失である請求の範囲第40項に記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項42】
cos領域の欠失が、pJRD215(配列番号1)の8915〜10055の欠失である請求の範囲第40項に記載のポリエステル合成酵素発現プラスミド。
【請求項43】
請求の範囲第1〜42項のいずれかに記載のポリエステル合成酵素発現プラスミドによって形質転換された形質転換体。
【請求項44】
宿主がラルストニア・ユートロファである請求の範囲第43項記載の形質転換体。
【請求項45】
ポリエステルが、下式(1)

(式中、m、nは1以上の整数を表す)で示される、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸からなる共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)である、請求の範囲第1〜44項のいずれかに記載の発現プラスミドまたは形質転換体を用いたポリエステルの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/074476
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502794(P2005−502794)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002005
【国際出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】