説明

新規ペプチド

【課題】本発明は、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチド式(1):Leu−Arg−Xaa−Asn(式中Xaaは、His、Lys、又はArgのいずれかで表される)が、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する新規素材として利用され得ることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩に関する。さらに本発明は、これらの新規ペプチド等を含む組成物、これらの新規ペプチド等を利用する方法、これらの新規ペプチド等の使用、ならびにこれらの新規ペプチド等をコードするポリヌクレオチド等に関する。本発明の新規ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、細胞におけるコラーゲンの産生を促進させるために利用され得る。
【背景技術】
【0002】
従来、動物の結合組織には、その主要成分として、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ラミニンなどが含まれていることが分かっている。なかでも、コラーゲンは、後述の通り、結合組織において重要な役割を果たしている。
【0003】
即ち、コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要蛋白質であり、特にヒトの体の総蛋白質の30%近くをコラーゲンが占める。コラーゲンの主たる機能は、生体組織の骨格構造の形成にあるので、動物の組織形態の骨格構造を構成する主成分として皮膚、軟骨組織、角膜、心臓、肝臓等に広く分布する。コラーゲンは、各種細胞の接着、細胞の分化や増殖に対して特異的に作用し、細胞機能の調節因子としての役割も持っているため、コラーゲンの減少は、角膜潰瘍等の角膜障害、リューマチ、関節炎、変形性関節炎、骨関節炎等の関節障害、炎症性疾患等の様々な疾患を引き起こすことがある。また近年コラーゲンには、消化器官での潰瘍の進行を抑制したり、血圧上昇を抑制したりする機能もあることが見出されてきている。
【0004】
皮膚真皮細胞外マトリックスでは、コラーゲン線維が網目状の束を形成することにより組織形態を維持している。コラーゲン線維は、成熟し増殖して架橋形成が進行すると太く直線的な線維束となり、若い皮膚での適度なハリを与えている。しかし、老化した皮膚では線維芽細胞の活性(例えば、コラーゲン産生活性等)が低下するのに伴い、真皮細胞外マトリックスのコラーゲン線維が著しく減少したり、異常な老化架橋が形成されるため硬直して、本来の弾力性に富むハリが失われてしまう。その結果、皮膚にはシワやタルミが形成される。光老化によるヘアレスマウスのコラーゲン線維束構造の変化が詳細に検討され(非特許文献1参照)、UVBを照射したヘアレスマウスには、シワが形成され、シワの形成と一致するようにコラーゲン線維束構造が崩壊し皮膚弾力性が低下していくことが示されている。また、コラーゲンは水分保持機能に優れていることも知られている。
【0005】
コラーゲンの減少による状態を改善するために、種々のコラーゲン合成促進物質が見出されている。例えば、レチノイン酸(例えば、非特許文献2参照)、グリシンおよびプロリンおよびアラニンからなる3種アミノ酸を含有する製剤(例えば、特許文献1参照)、カンゾウ、ソウハクヒ、アロエ、スギナ、キンギンカ、オウバク、ガイヨウまたはゲンチアナ等の植物抽出物(例えば、特許文献2参照)、TGF−β、アスコルビン酸類等が知られている。また別のコラーゲン合成促進物質として、タイプIプロコラーゲンの182〜241残基のペプチド(例えば、非特許文献3参照)およびこのタイプIプロコラーゲンの182〜241残基のペプチドから選択されたLys−Thr−Thr−Lys−Serペプチド(例えば、非特許文献4参照)が知られている。さらに、Leu−Glu−His等の特定配列を有するペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩(特許文献3参照)や、ダイズタンパク質のプロテアーゼ加水分解物(特許文献4参照)が、細胞におけるコラーゲン産生を促進し得ることも近年見出されている。
【0006】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【特許文献1】特開平7−194375号公報
【特許文献2】特開2001−206835号公報
【特許文献3】特開2007−145795号公報
【特許文献4】国際公開第2007/049400号パンフレット
【非特許文献1】Fragrance Journal、4、p36-37、1998
【非特許文献2】R.Marksら、British Journal of Dermatology、122、91-98、1990
【非特許文献3】K.Katayamaら、Biochemistry、30、7097-7104、1991
【非特許文献4】K.Katayamaら、J.Biol.Chem.、268(14)、9941-9944、1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する更なる有用な新規素材の開発が望まれていた。
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する新規素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチドが、安全でありかつ有意なコラーゲンの産生促進能を有する新規素材として利用され得ることを見出した。
具体的には、培養ヒト正常皮膚由来線維芽細胞に本願のペプチドを添加することで、該細胞のコラーゲン産生量が有意に増加することを明らかにした。さらに、本願ペプチドの誘導体を同様に添加した場合にも、培養ヒト正常皮膚由来線維芽細胞のコラーゲン産生量が増加することを明らかにし、これにより本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔12〕を提供するものである。
〔1〕 式(I):Leu−Arg−Xaa−Asn
(式中Xaaは、His、Lys、又はArgのいずれかで表される)
で表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
〔2〕 〔1〕に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含む組成物。
〔3〕 〔1〕に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含有するコラーゲン産生を促進するための組成物。
〔4〕 産生を促進させるコラーゲンがI型コラーゲンおよび/またはIII型コラーゲンである事を特徴とする〔3〕に記載の組成物。
〔5〕 前記組成物が、医薬組成物、化粧料組成物、食品組成物又は飼料用組成物である、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕前記〔1〕記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩、あるいは前記〔2〕記載の組成物を用いて、細胞におけるコラーゲンの産生を促進する方法。
〔7〕細胞におけるコラーゲンの産生を促進するための組成物の製造のための、前記〔1〕記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用。
〔8〕前記〔1〕記載のペプチドをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド。
〔9〕前記〔1〕記載のペプチドをコードする塩基配列に対するアンチセンス配列からなるポリヌクレオチド。
〔10〕前記〔8〕又は〔9〕記載のポリヌクレオチドを含む、プラスミド。
〔11〕前記〔8〕又は〔9〕記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
〔12〕前記〔8〕又は〔9〕記載のポリヌクレオチドを含む、形質転換体。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、コラーゲンの産生促進能を有する新規素材が提供される。また本発明のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、細胞に作用させても細胞数を有意に減少させないことが示されている。従って、本発明により、コラーゲンの産生促進能を有し、かつ細胞毒性を示さずに安全に使用され得る新規ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩が提供される。
【0011】
〔発明の実施の形態〕
本発明者らは、特定のアミノ酸配列を有する新規ペプチドを添加することにより、細胞におけるコラーゲンの産生促進能を有意に向上させることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0012】
本発明は、下記式(I)で表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を提供する。
式(I):Leu−Arg−Xaa−Asn
(式中Xaaは、His、Lys、又はArgのいずれかで表される)(一文字略記:LRXN、配列番号:1)
ここで、His、Lys、Argは、全て塩基性アミノ酸であり、これらの置換は所謂保存的置換に該当する。
【0013】
本明細書中において、「ペプチドの誘導体」とは、例えば、ペプチドをアセチル化、パルミトイル化、ミリスチル化、アミド化、アクリル化、ダンシル化、ビオチン化、リン酸化、サクシニル化、アニリド化、ベンジルオキシカルボニル化、ホルミル化、ニトロ化、スルフォン化、アルデヒド化、環状化、グリコシル化、モノメチル化、ジメチル化、トリメチル化、グアニジル化、アミジン化、マレイル化、トリフルオロアセチル化、カルバミル化、トリニトロフェニル化、ニトロトロポニル化、またはアセトアセチル化した誘導体等をいう。この中でもパルミトイル化は、細胞への浸透性が高くなることが期待されるので好ましく、またN末端のアセチル化、C末端のアミド化、C末端のメチル化は、末端からペプチドを分解するエキソペプチダーゼに対する抵抗性が付与され、生体中における安定性が高くなることが期待されるので好ましい。
【0014】
本明細書において、「塩」とは、ペプチドまたはその誘導体の薬理学的に許容される任意の塩(無機塩および有機塩を含む)をいい、例えば、ペプチドまたはその誘導体のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等)等が挙げられ、好ましくは、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩および酢酸塩であり、より好ましくはアンモニウム塩および酢酸塩である。
【0015】
本発明のペプチドは、当該分野で公知の方法により作製され得る。例えば、本発明のペプチドは、化学合成方法(例えば、固相法(例えば、Fmoc法)、液相法等)により合成されてもよく、また遺伝子組換え発現等の方法により作製されてもよい。なお本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、L−体であってもD−体であってもよいが、好ましくはL−体である。
【0016】
さらに本発明のペプチドは、目的のアミノ酸配列を含むタンパク質のアミノ酸配列中から、目的のアミノ酸配列からなるペプチドをプロテアーゼ処理等の公知の手段によって切り出すことによっても調製され得る。天然のタンパク質をプロテアーゼで加水分解して得られるペプチドは、化学合成方法で製造する場合よりもコスト面から有利となる。さらに、天然のタンパク質をプロテアーゼで加水分解して得られるペプチドは、生体に対してより安全であると考えられる。従って、このようにして得られたペプチドは、生体への適用に対しより高い安全性が求められる内服剤や食品、敏感肌用化粧料、飼料などに好適に使用され得る。
【0017】
本発明のペプチドの誘導体は、当該分野で公知の方法により、作製され得る。
本発明のペプチドの塩もまた、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に作製され得る。
以上のようにして得られた本発明のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、細胞におけるコラーゲンの産生を促進するために使用することができる。
【0018】
本明細書において用語「細胞におけるコラーゲンの産生促進能を有する」とは、目的のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を細胞に作用させた場合に、当該目的のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を細胞に作用させない場合と比較して、細胞におけるコラーゲンの産生量が増加することを意味する。例えば、この用語は、ヒト細胞の培養系試験において目的のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を1000μg/mlの濃度で作用させた場合に、当該目的のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を作用させない場合と比較して、細胞におけるコラーゲン産生量が、例えば約110%以上、より好ましくは約120%以上、さらに好ましくは約130%以上まで達することを意味する。また特定の態様では、当該用語における細胞とは線維芽細胞を意味し、さらに特定の態様では、皮膚線維芽細胞を意味する。
【0019】
コラーゲンには20数種類の異なった型、またそれらを構成する約25種類のα鎖が存在することが知られており、それらをコードする遺伝子はそれぞれクローニングされ、塩基配列が解明されている(Connective Tissue and Its Heritable Disorders;, pp149-165, Weily-Liss Inc.発行 (1993))。
【0020】
本発明のペプチドにより産生が促進されるコラーゲンの型は特に限定されないが、現在知られているタイプIからタイプXXIコラーゲンを含むすべてのコラーゲン、好ましくはタイプIコラーゲンまたはタイプIIIコラーゲンを挙げることができる。該コラーゲンの由来は特に制限されないが、好ましくは哺乳動物由来、より好ましくはヒト由来のコラーゲンを挙げることが出来る。本発明において産生が促進されるコラーゲンは、N末端およびC末端にプロペプチドが結合している、プロコラーゲン分子の状態であってもよいし、プロペプチドが除去された状態であってもよい。
【0021】
具体的には、後述の実施例に示すように、本願のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を添加した培養液で皮膚線維芽細胞を培養することにより、該細胞のコラーゲン産生量が増加する。
【0022】
本発明はまた、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含むことを特徴とする組成物を提供する。かかる特徴を有することにより、該組成物は例えば、医薬組成物、食品組成物、化粧料組成物または飼料用組成物として、さらにコラーゲンに関連する生理状態の解明のための研究試薬として好適に使用され得る。
【0023】
本発明の医薬組成物には製剤上許容される担体、基剤、および/または添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
医薬組成物としては、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する疾患の治療剤または予防剤が挙げられる。具体的には、本発明の医薬組成物は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、骨関節炎等の関節疾患用の治療剤および/または予防剤として、角膜潰瘍などの角膜障害の治療剤および/または予防剤として、消化器官の潰瘍の治療剤および/または予防剤として、血圧上昇を抑制するための治療剤および/または予防剤として、また、紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの予防剤および/または治療剤として、さらに皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する予防剤および/または治療剤として好適に使用され得る。
【0024】
本発明の食品組成物には食品衛生上許容される配合物を本発明の目的を達成する範囲内で適宜混合して、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品等に加工して利用することができる。
これらの食品組成物は、例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善用または予防用の食品として使用されうる。具体的には、本発明の食品組成物は、関節痛や高血圧などの症状に対する改善および/または予防のための食品として、または紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの改善および/または予防のための食品として、さらに皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する改善および/または予防のための食品として好適に使用され得る。また、本発明の食品組成物は、コラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善および/または予防のために用いられるものである旨の表示を付した食品であることが好ましい。
【0025】
本発明の化粧料組成物には化粧料調製上許容される担体、基剤、および/または添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
化粧料組成物としては、例えば、紫外線曝露、加齢等による皮膚のシワもしくはタルミの予防および/または改善のための化粧料、皮膚の弾力性、保湿性、もしくはハリの低下に対する予防および/または改善のための化粧料が挙げられる。
【0026】
本発明の飼料用組成物には衛生上許容される配合物、添加物等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。
飼料用組成物としては、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、ウマ等の家畜や、イヌ、ネコ等のペット動物におけるコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する状態の改善用および/または予防用の飼料が挙げられる。具体的には、本発明の組成物は、角膜潰瘍等の角膜障害、リューマチ、関節炎、変形性関節炎、骨関節炎等の関節障害、炎症性疾患等の様々なコラーゲン量の低下やコラーゲンの変性などに起因する疾患の改善用および/または予防用の飼料としても好適に用いられ得る。
【0027】
本発明の組成物における前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の含有量は、ペプチド等の種類、組成物の剤型等によっても異なるが、一般には、高いコラーゲン産生促進効果を得る観点から及び製剤化の観点から、好ましくは0.0001〜70重量%、より好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.001〜20重量%、さらにより好ましくは0.01〜10重量%、さらにより好ましくは0.05〜10重量%、さらにより好ましくは0.12〜10重量%である。
一態様において、本組成物は、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩が、例えば0.05重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.12重量%以上となるようにいったん精製されたものを、前記含有量になるように配合することにより、調製され得る。
【0028】
担体としては、例えば、糖類(例えば、マンニトール、乳糖、デキストラン等)、セルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、結晶性セルロース等)、水難溶性ガム類(例えば、アラビアガム、トラガントガム等)、架橋ビニル重合体、脂質類等が1種または2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0029】
基剤としては、例えば、水、油脂類、鉱物油類、ロウ類、脂肪酸類、シリコーン油類、ステロール類、エステル類、金属石鹸類、アルコール等が1種または2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0030】
添加剤としては、例えば、界面活性剤、可溶化成分、乳化剤、油分、安定化剤、増粘剤、防腐剤、結合剤、滑沢剤、分散剤、pH調整剤、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、経皮吸収促進剤、抗酸化剤、崩壊剤、可塑剤、緩衝剤、ビタミン類、アミノ酸類、着色剤、香料等が1種または2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0031】
さらに本発明の組成物には、必要に応じて他の有用な作用を付加するために、美白成分、抗炎症成分、抗菌成分、細胞賦活化成分、収斂成分、抗酸化成分、ニキビ改善成分、コラーゲン等の生体成分合成促進成分、血行促進成分、保湿成分、老化防止成分等の各種成分を1種または2種以上組み合わせて配合されてもよい。
【0032】
本発明の組成物は、外用剤(外用に供される、医薬組成物および化粧料組成物を含む)、内服剤(内服に供される、医薬組成物、食品組成物および飼料用組成物を含む)等の任意の剤型であり得、好ましくは外用剤として使用され得る。
【0033】
外用剤としては、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ローション状、ペースト状、ムース状、ジェル状、シート状(基材担持)、エアゾール状、スプレー状等の任意の形態で使用され得る。
化粧料組成物としては、例えば、ローション、乳液、クリーム、オイル、パック等の基礎化粧料、またファンデーション、頬紅、口紅等のメーキャップ化粧料、さらに洗顔料、クレンジング、ボディ洗浄料等の洗浄料、入浴剤等の任意の形態で使用され得る。
【0034】
内服剤としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゲル剤、リポソーム剤、エキス剤、チンキ剤、レモネード剤、ゼリー剤等の任意の形態で使用され得る。
また食品組成物とする場合には、パン、麺、惣菜、食肉加工食品(例えば、ハム、ソーセージなど)、水産加工食品、調味料(例えば、ドレッシングなど)、乳製品、菓子(例えば、ビスケット、キャンディー、ゼリー、アイスクリームなど)、スープ、ジュースなどの任意の一般の食品形態としても提供され得る。このような形態にする場合、本発明のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩は、目的とする食品の性質等に依存して、当業者に公知の方法により適宜配合され得る。
飼料用組成物としては、任意の形態で使用され得るため、特に限定は無い。
【0035】
本発明の組成物は、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩が細胞におけるコラーゲン産生促進能を有することを利用して、使用対象におけるコラーゲンの産生を促進するために使用され得る。
本発明はさらに、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩、あるいは前記組成物を用いることを特徴とする、細胞におけるコラーゲンの産生を促進する方法を提供する。
【0036】
本発明の方法においては、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩をコラーゲンの産生促進効果が得られる有効量以上用いればよい。
すなわち、本発明の方法における前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用量は通常、外用剤の場合には、成人1人体重約50kgあたり好ましくは約0.1μg〜2g/日である。また、内服剤の場合における当該使用量は通常、成人1人体重約50kgあたり好ましくは約0.001〜10000mg/日、より好ましくは約0.1〜1000mg/日、さらに好ましくは約1〜100mg/日である。
【0037】
本発明の方法は、さらに前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩、あるいは前記組成物を、皮膚に適用する工程を含んでいてもよい。この場合の前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の皮膚への適用量は、好ましくは約1ng〜500μg/cm2、より好ましくは約0.01〜50μg/cm2、さらに好ましくは約0.1〜10μg/cm2である。
【0038】
本発明はさらに、細胞におけるコラーゲンの産生を促進するための組成物、好ましくは外用剤として使用され得る組成物の製造のための、前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用を提供する。
前記ペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩の使用量は、前記組成物中の含有量となるように使用すればよい。
【0039】
本発明はさらに、前記ペプチドをコードする塩基配列からなることを特徴とするポリヌクレオチドを提供する。
本発明のポリヌクレオチドは、前記ペプチドをコードする限り、特に限定されない。例えば、LRXNをコードするポリヌクレオチドとしては、遺伝暗号表に従いLRXNコードすることが明らかな任意の配列が、コドン使用頻度等に応じて適宜使用され得る。好ましくは、例えば下記配列:
CTT CGC CAC AAC (配列番号:5、LRHNをコード)
CTC CGC AAG AAT (配列番号:6、LRKNをコード)
CTT CGC CGC AAC (配列番号:7、LRRNをコード)
が挙げられる。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、当該分野で公知の方法により作製され得る。例えば、市販のDNA合成機(例えばApplied Biosystems3400DNA合成機、Applied Biosystems社製)を用いて作製することができる。
【0041】
本発明はさらに、前記ペプチドをコードする塩基配列に対するアンチセンス配列からなることを特徴とするポリヌクレオチドを提供する。かかるポリヌクレオチドもまた、前述と同様にして作製することができる。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術により前記ペプチドを発現させるために、または遺伝子治療等において、あるいはコラーゲンに関連する生理状態の解明のための研究試薬として利用することができる。
さらに、かかるポリヌクレオチドを使用することにより、以下に述べる本発明のプラスミドまたは発現ベクターを作製することができる。
【0043】
本発明はさらに、前記ポリヌクレオチドを含むことを特徴とするプラスミドを提供する。
本発明のプラスミドは、特に限定されないが、例えばpBR系プラスミド、pUC系プラスミド等の公知のプラスミドに、一般的な分子生物学的実験手法を使用して本発明のポリヌクレオチドを組込んで作製できる。
【0044】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクターを提供する。
本発明の発現ベクターは、特に限定されないが、例えばpcDNA3、pSD64、λファージベクター等の公知のベクターに、一般的な分子生物学的実験手法を使用して本発明のポリヌクレオチドを発現可能な状態で組込んで作製できる。
【0045】
以上のようにして得られたプラスミドまたは発現ベクターを使用することにより、以下に述べる形質転換体を作製することができる。
本発明はさらに、前記ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする形質転換体を提供する。
【0046】
本発明の形質転換体は、前記プラスミドまたは発現ベクターを所望の宿主に導入すること、または前記ポリヌクレオチドを直接宿主の染色体に組込むこと等により得ることができる。宿主としては特に限定されず、例えば大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等を使用することができる。発現ベクターを宿主へ導入する方法としては、例えばカルシウム処理法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法等の公知の方法を用いればよい。
以上のようにして得られた形質転換体を適当な条件下で培養して前記ペプチドを発現させ、これを精製することにより、前記ペプチドを得ることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕 ペプチド(1)Leu−Arg−Lys−Asn(一文字略記:LRKN、配列番号:3)の調製
1)ペプチドの合成
ペプチドを、ペプチド自動合成装置(アプライドバイオ社製:Model 433A)を用いて、Fmoc法による固相合成法により合成した。具体的な手順は以下の通りである:まず固相合成用樹脂にFmoc−Asn(Trt)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、次いでこの樹脂を洗浄後、Fmoc−Lys(tBoc)−OHをAsnのN末端に導入する。次いで保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Arg(Pmc)−OHをLysのN末端に導入する。次いで保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Leu−OHをArgのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去した後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合、AsnのTrt基、LysのtBoc基とArgのPmc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することによりLRKNを得た。
【0048】
2)合成ペプチドの純度検定
得られた精製物を分析用逆相高速液体クロマトグラフィー[カラム:Inertsil ODS−3 (内径: 4.6mm、長さ: 250mm) 、GL Sciences社製、;移動相:溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸、100%アセトニトリル)のグラジエント(0分(溶媒B=0%)〜40分(溶媒B=60%));流速:1.2 ml/分;検出法:波長 220nmにおける吸光度]に付したところ、10.8分に単一の鋭いピークが示され、純度は99.2%であった。
【0049】
〔実施例2〕ペプチド(2)Leu−Arg−His−Asn(一文字略記:LRHN、配列番号:2)の調製
LRHNペプチドを実施例1に示した方法と同様に合成し、精製した。得られた精製物を分析用逆相高速液体クロマトグラフィー[カラム:Inertsil ODS−3 (内径: 4.6mm、長さ: 250mm) 、GL Sciences社製、;移動相:溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸、100%アセトニトリル)のグラジエント(0分(溶媒B=0%)〜40分(溶媒B=60%));流速:1.2 ml/分;検出法:波長 220nmにおける吸光度]に付したところ、10.4分に単一の鋭いピークが示され、純度は99.4%であった。
【0050】
〔実施例3〕ペプチド(3)Leu−Arg−Arg−Asn(一文字略記:LRRN、配列番号:4)の調製
LRRNペプチドを実施例1に示した方法と同様に合成し、精製した。得られた精製物を分析用逆相高速液体クロマトグラフィー[カラム:Inertsil ODS−3 (内径: 4.6mm、長さ: 250mm) 、GL Sciences社製、;移動相:溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸)および溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸、100%アセトニトリル)のグラジエント(0分(溶媒B=0%)〜40分(溶媒B=60%));流速:1.2 ml/分;検出法:波長 220nmにおける吸光度]に付したところ、10.6分に単一の鋭いピークが示され、純度は98.7%であった。
【0051】
〔実施例4〕ペプチド誘導体(1)-1 C末端アミド化LRKNの調製
Fmoc法による固相合成法(L.A.Carpino, G.Y.Han, J.Am.Chem.Soc., 92, 5748 (1970))に従い、LRKNペプチドのC末端アミド化誘導体を作製した。まず、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂にFmoc−Asn(Trt)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去した。次いで、この樹脂を洗浄後、Fmoc−Lys(tBoc)−OHをAsnのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Arg(Pmc)−OHをLysのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、この樹脂を洗浄後、Fmoc−Leu−OHをArgのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去した後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合、AsnのTrt基、LysのtBoc基とArgのPmc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することにより、C末端をアミド化したLRKNを得た。なお、得られた精製物を実施例1に示した方法と同様の純度検定に付したところ、得られた精製物の純度は98.5%であった。
【0052】
〔実施例5〕ペプチド誘導体(2)-1 N末端アセチル化LRHNの調製
Fmoc法による固相合成法(L.A.Carpino, G.Y.Han, J.Am.Chem.Soc., 92, 5748 (1970))に従い、LRHNペプチドのN末端アセチル化誘導体を作製した。まず、固相合成用樹脂にFmoc−Asn(Trt)−OHのC末端を結合させてから、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、次いで、この樹脂を洗浄後、Fmoc−His(Trt)−OHをAsnのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、再度この樹脂を洗浄後、Fmoc−Arg(Pmc)−OHをHisのN末端に導入した。次いで、保護基(Fmoc)をピペリジン処理で除去し、この樹脂を洗浄後、N−acetyl−LeucineをArgのN末端に導入した。次いで、この樹脂を洗浄後、TFA(トリフルオロ酢酸)により、ペプチドのC末端と樹脂との結合、AsnおよびHisのTrt基とArgのPmc基を切断することにより脱保護した。最後に、分取HPLCで未反応物を除去して精製することにより、N末端をアセチル化したLRHNを得た。なお、得られた精製物を実施例1に示した方法と同様の純度検定に付したところ、得られた精製物の純度は97.2%であった。
【0053】
〔実施例6〕ペプチド誘導体(2)-2 C末端アミド化LRHNの調製
C末端アミド化LRHNを、実施例4と同様に合成及び精製することにより得た。なお得られた精製物を実施例1に示した方法と同様の純度検定に付したところ、得られた精製物の純度は98.4%であった。
【0054】
〔実施例7〕LRXNペプチドのI型コラーゲン産生促進能の検討
ペプチド(1)Leu−Arg−Lys−Asn(一文字略記:LRKN、配列番号:3)
ペプチド(2)Leu−Arg−His−Asn(一文字略記:LRHN、配列番号:2)
ペプチド(3)Leu−Arg−Arg−Asn(一文字略記:LRRN、配列番号:4)
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、合成したLRKN、LRHN又はLRRNペプチドをそれぞれ1000μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたI型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法(Anti-Human Procollagen typeI C-peptide EIA Kit;タカラバイオ株式会社製)で定量した。ここで、被験ペプチドを添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のI型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のI型コラーゲン量を算出した。
【0055】
【表1】

本結果より、LRKN、LRHN又はLRRNペプチドを添加した培養液で培養した細胞では、コントロールよりもI型コラーゲン産生量が顕著に増加することが明らかとなった。
さらに、培養液を採取した後の細胞についてWST-8法により生細胞数を計測した。より詳細には、400μl培地中40μlの割合でWST-8試薬(Cell Counting Kit-8(同人化学研究所製))を添加したものに培地交換し、次いで2時間培養後、その上清を100μl分取し吸光度を測定した。その結果、本願ペプチドを添加した培養液で培養されることによる生細胞数の有意な減少は認められず、生体に対して安全に使用できるものであることが確認された。
【0056】
〔実施例8〕LRXNペプチド誘導体のI型コラーゲン産生促進能の検討
ペプチド(1)Leu−Arg−Lys−Asn(一文字略記:LRKN、配列番号:3)
ペプチド誘導体(1)-1;C末端アミド化LRKN
ペプチド(2)Leu−Arg−His−Asn(一文字略記:LRHN、配列番号:2)
ペプチド誘導体(2)-1;N末端アセチル化LRHN
ペプチド誘導体(2)-2;C末端アミド化LRHN
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、下記の表に記載したペプチド誘導体を1000μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたI型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法(Anti-Human Procollagen typeI C-peptide EIA Kit;タカラバイオ株式会社製)で定量した。ここで、被験ペプチド誘導体を添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のI型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のI型コラーゲン量を算出した。
【0057】
【表2】

本結果より、本願ペプチド誘導体を添加した培養液で培養した細胞では、コントロールよりもI型コラーゲン産生量が顕著に増加することが明らかとなった。
また実施例7に示したものと同様のWST-8法に供して生細胞数への影響を調べたところ、生細胞数の有意な減少は認められず、本願ペプチド誘導体も生体に対して安全に使用できるものであることが確認された。
【0058】
〔実施例9〕LRXNペプチドのIII型コラーゲン産生促進能の検討
ペプチド(1)Leu−Arg−Lys−Asn(一文字略記:LRKN、配列番号:3)
ペプチド(2)Leu−Arg−His−Asn(一文字略記:LRHN、配列番号:2)
70歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、下記の表に記載したペプチドをそれぞれの濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIII型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法で定量した(一次抗体としてGoat Anti-Type III collagen-BIOT(Southern Biotech社製)を使用;二次抗体としてMAB1343 MS X Hu collagen Type III(CHEMICON international社製)を使用)。ここで、被験ペプチドを添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のIII型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のIII型コラーゲン量を算出した。
【0059】
【表3】

本結果より、本願ペプチドを添加した培養液で培養した細胞では、コントロールよりもIII型コラーゲン産生量が顕著に増加することが明らかとなった。
【0060】
〔実施例10〕LRXNペプチドのIII型コラーゲン産生促進能の検討
ペプチド(3)Leu−Arg−Arg−Asn(一文字略記:LRRN、配列番号:4)
18歳女性由来ヒト正常皮膚由来線維芽細胞を、48ウェルカルチャープレート中で培養した。より詳細には、1.0×10細胞/ウェルの密度でプレートに播種し、37℃で、5%炭酸ガスおよび95%空気の環境下で48時間培養を行った。培養液は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)に牛胎仔血清(FBS)を10重量%の濃度で含有した培地を各ウェル400μlずつ使用した。次いで、上記培養液からFBSを抜いた無血清培地に交換し、さらに24時間培養した。その後、培養液を除去して、上記ペプチド(3)を1000μg/mL濃度で溶解させた培地に交換した。72時間培養した後、培養液を採取し、培養液中に分泌されたIII型コラーゲン濃度を、酵素結合免疫測定法で定量した(一次抗体としてGoat Anti-Type III collagen-BIOT(Southern Biotech社製)を使用;二次抗体としてMAB1343 MS X Hu collagen Type III(CHEMICON international社製)を使用)。ここで、被験ペプチドを添加しない培地を400μl添加したものをコントロールとして用い、それぞれの定量結果をもとに、コントロール培養液中のIII型コラーゲン量を100%として各被験培養液中のIII型コラーゲン量を算出した。
【0061】
【表4】

本結果より、本願ペプチドを添加した培養液で培養した細胞では、コントロールよりもIII型コラーゲン産生量が顕著に増加することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):Leu−Arg−Xaa−Asn
(式中Xaaは、His、Lys、又はArgのいずれかで表される)
で表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を含む組成物。

【公開番号】特開2009−184984(P2009−184984A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28093(P2008−28093)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】