説明

新規ポリアミド

【課題】ハンドリング性と耐熱性と製膜性に優れ、着色が少ない新規ポリアミドの提供。
【解決手段】下式で表されるユニットを必須ユニットとして含有するポリアミドを用いる。


(式中、X、Y及びZは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基等を表し、kは0〜4、pは0〜8、rは0〜4、xは0〜4、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリング性に優れ、着色が少なく、耐熱性と製膜性に優れる新規ポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド系材料は、耐熱性、透明性、物理的強度、絶縁性、耐溶剤性、電気絶縁性に優れていることから、例えば、光学フィルム又は光学シート(偏光板、位相差板、反射防止板等のディスプレイ表示用部材)のほか、自動車部品、機械部品、接着剤向け等に使用されている。
【0003】
上記の条件を満たすような耐熱性が良好なポリアミドの前駆体となるジアミン化合物としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン及びその骨格に置換基を導入した誘導体の検討が数多く行われており、例えば、特許文献1〜3が開示されている。
【0004】
通常、ポリアミドは溶剤に溶解させ、基材に直接塗布し保護膜を形成させて使用するため、溶剤溶解時の粘度が低いことが求められる。しかし、特許文献1〜3に記載されているようなフルオレン骨格を有するジアミン化合物から得られるポリアミドは、樹脂組成物において、粘度が高く、ハンドリング性が悪いという問題があった。また、フルオレン骨格を有するポリアミドは可視光領域に吸収があり、着色しているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−31341号公報
【特許文献2】特開平7−149892号公報
【特許文献3】特開2008−81418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハンドリング性に優れ、着色が少なく、耐熱性と製膜性に優れる新規ポリアミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定のユニットを含有してなるポリアミドが上記目的を達成し得ることを知見した。
即ち、本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I)で表されるユニットを必須ユニットとして含有することを特徴とする新規ポリアミドを提供するものである。
【化1】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の炭素−炭素結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは0〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよく、
Aは炭素原子数1〜22の炭化水素基、又は直接結合を表す。)
【0008】
また、本発明は、上記ポリアミドを使用して形成される光学フィルム、光学シート、自動車部品、機械部品、部品接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層間絶縁膜としての層配線基板の層間絶縁材料、半導体素子の表層の保護膜又はカラーフィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミドは、ハンドリング性に優れ、着色が少なく、耐熱性と製膜性に優れている。そのため、本発明のポリアミドは光学フィルム、光学シート、自動車部品、機械部品、部品接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層間絶縁膜としての層配線基板の層間絶縁材料、半導体素子の表層の保護膜又はカラーフィルター等に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の新規ポリアミドについて好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
本発明の新規ポリアミドは、上記一般式(I)で表されるユニットを必須ユニットとすることを特徴としている。
【0012】
上記一般式(I)のX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、モノフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、テトラフルオロエチル、トリフルオロエチル、ジフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、パーフルオロブチル、トリクロロメチル、ジクロロメチル、モノクロロメチル、トリクロロエチル、ジクロロエチル、テトラクロロプロピル、トリクロロプロピル、トリブロモメチル、ジブロモメチル、モノブロモメチル、トリブロモエチル、ジブロモエチル、トリブロモプロピル、ジヨードメチル、モノヨードメチル、メトキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ、メチルチオ、エトキシ、エトキシメチル、エトキシエチル、エチルチオ、ビニルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ブチルチオ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ペンチルチオ、イソペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、1−フェナントリル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、3−フルオレニル、9−フルオレニル、1−テトラヒドロナフチル、2−テトラヒドロナフチル、1−アセナフテニル、1−インダニル、2−インダニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,5−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェニル、2,5−ジ−t−アミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、4−トリクロロフェニル、4−トリフルオロフェニル、パーフルオロフェニル等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、3−メチルフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2,3−ジメチルフェノキシ、2,4−ジメチルフェノキシ、2,5−ジメチルフェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、3,4−ジメチルフェノキシ、3,5−ジメチルフェノキシ、2,3,4−トリメチルフェノキシ、2,3,5−トリメチルフェノキシ、2,3,6−トリメチルフェノキシ、2,4,5−トリメチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシ、3,4,5−トリメチルフェノキシ、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ、ペンタメチルフェノキシ、エチルフェノキシ、n−プロピルフェノキシ、イソプロピルフェノキシ、n−ブチルフェノキシ、sec−ブチルフェノキシ、tert−ブチルフェノキシ、n−ヘキシルフェノキシ、n−オクチルフェノキシ、n−デシルフェノキシ、n−テトラデシルフェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ、1−アントリルオキシ、1−フェナントリルオキシ、o−トリルオキシ、m−トリルオキシ、p−トリルオキシ、9−フルオレニルオキシ、1−テトラヒドロナフトキシ、2−テトラヒドロナフトキシ、1−アセナフテニルオキシ、1−インダニルオキシ、2−インダニルオキシ等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2,3−ジメチルフェニルチオ、2,4−ジメチルフェニルチオ、2,5−ジメチルフェニルチオ、2,6−ジメチルフェニルチオ、3,4−ジメチルフェニルチオ、3,5−ジメチルフェニルチオ、2,3,4−トリメチルフェニルチオ、2,3,5−トリメチルフェニルチオ、2,3,6−トリメチルフェニルチオ、2,4,5−トリメチルフェニルチオ、2,4,6−トリメチルフェニルチオ、3,4,5−トリメチルフェニルチオ、2,3,4,5−テトラメチルフェニルチオ、2,3,4,6−テトラメチルフェニルチオ、2,3,5,6−テトラメチルフェニルチオ、ペンタメチルフェニルチオ、エチルフェニルチオ、n−プロピルフェニルチオ、イソプロピルフェニルチオ、n−ブチルフェニルチオ、sec−ブチルフェニルチオ、tert−ブチルフェニルチオ、n−ヘキシルフェニルチオ、n−オクチルフェニルチオ、n−デシルフェニルチオ、n−テトラデシルフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、1−アントリルチオ、1−フェナントリルチオ、o−トリルチオ、m−トリルチオ、p−トリルチオ、9−フルオレニルチオ、1−テトラヒドロナフチルチオ、2−テトラヒドロナフチルチオ、1−アセナフテニルチオ、1−インダニルチオ、2−インダニルチオ等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基としては、例えば、スチリル、4−フルオロスチリル等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、4−クロロフェニルメチル、ベンジルオキシ、1−ナフチルメトキシ、2−ナフチルメトキシ、1−アントリルメトキシ等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)における隣接するX同士で形成される環構造としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環及びナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、アセナフテン環、インダン環、テトラリン環等の縮合環が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基及び複素環基を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0021】
尚、上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるアルキル基等の基を置換してもよいハロゲン原子の置換数及び置換位置は任意である。
【0022】
上記一般式(I)におけるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びにアリール基中の炭素−炭素結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、不飽和結合、−O−又は−S−の中断位置は任意であり、−O−又は−S−が各環と直接結合するものも含む。
これらの中でも、上記一般式(I)における各基が以下の条件を満たす化合物が、原料が入手容易であり生産性が良く、保存安定性に優れるため好ましい。
【0023】
xが2又は3、好ましくは2である化合物;yが0である化合物;kが0〜2、好ましくは0又は1、より好ましくは0である化合物、kが1以上の場合、Xが炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又はX同士で形成した環が芳香環である化合物;pが0〜2、好ましくは1又は2である化合物、pが1以上の場合、Yが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又はフェニル基、より好ましくはメチル基又はフェニル基である化合物;rが0〜2、好ましくは0又は1、より好ましくは0である化合物、rが1以上の場合、Zが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基である化合物である。
【0024】
また、Aはポリアミド製造時に使用する溶媒に対する溶解性が高いため、芳香族環を有する炭素原子数6〜22の炭化水素基が好ましく、芳香族環を有する炭素原子数6〜12の炭化水素基がより好ましく、生産性がよいため、下記一般式(IV)で表される炭化水素基又は下記一般式(V)で表される炭化水素基が更に好ましく、下記一般式(V)で表される炭化水素基が最も好ましい。
【化2】

【化3】

【0025】
なお、上記一般式(I)で表されるユニットは、下記一般式(II)で表されることが好ましい。
【化4】

(式中、Z、r及びAは、上記一般式(I)と同じであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である。)
また、下記一般式(II)におけるY1及びY2の組み合わせとしては、(1)Y1及びY2が水素原子である;(2)Y1が水素原子であり、Y2が炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である;(3)Y1とY2がそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である;が挙げられるが、Y1及びY2の組み合わせとしては、上記(2)又は(3)が好ましい。Y1及びY2の組み合わせが上記(2)又は(3)の場合、Y1及びY2が炭素原子数1〜10のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。尚、Y1及びY2の組み合わせが上記(3)の場合、Y1及びY2は同一でも異なる置換基でもよい。
【0026】
本発明の一般式(I)で表されるユニットを有するポリアミドを製造する方法は、特に限定されないが、一般式(I)で表されるユニットが、原料としての下記一般式(III)で表されるジアミン化合物と炭素原子数2〜24のジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物を重縮合して形成されることが好ましい。尚、本明細書では、ジカルボン酸及びジカルボン酸の酸ハロゲン化物をジカルボン酸類と表記する。
【化5】

(式中、X、Y、Z、k、p、x、y及びrは、上記一般式(I)と同じである。)
【0027】
上記ジアミン化合物において、光学異性体が存在する場合があるが、どの異性体であってもよく、以下の本文中に示す化合物は、特定の光学異性体に制限するものではない。
【0028】
上記一般式(III)で表されるジアミン化合物としては、例えば、下記の化合物No.1〜No.52が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
上記一般式(I)で表されるユニットの原料となるジアミン化合物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、J.Org.Chem.1981,46,2974に記載されている方法に準拠して製造した3,3−ジメチル−1−インダノンと市販されているアニリンを反応させる方法が挙げられる。
【0039】
上記一般式(I)で表されるユニットの原料となる炭素原子数2〜24のジカルボン酸類(上記一般式(I)においてAで表される炭素原子数1〜22の炭化水素基、又は直接結合を有するカルボン酸、若しくは該炭素原子数1〜22の炭化水素基を有する酸ハロゲン化物)としては、上記の炭素原子数の範囲であれば特に限定されない。
【0040】
上記一般式(I)のユニットのポリアミドを製造する時に使用することが出来るジカルボン酸類としては、特に限定されず、任意のジカルボン酸又はそれらの酸ハロゲン化物を使用することが可能であり、例えば、シュウ酸、アジピン酸、オクタメチレンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、3,3−ジエチルコハク酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2 ,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1 ,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等、アミノ酸として、ペンタメチレンアミノカルボン酸、デカメチレンアミノカルボン酸、ウンデカメチレンアミノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4 ,4 '−オキシ二安息香酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−メチレン二安息香酸、4,4'−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3'−カルボニル二安息香酸、4,4'−カルボニル二安息香酸、4,4'−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるほか、イソフタル酸5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、上述したジカルボン酸の酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0041】
本発明のポリアミドは、一般式(I)で表されるユニットが必須ユニットであり、一般式(I)で表されるユニット単独で構成されていてもよいが、一般式(I)で表されるユニット以外の任意のユニットを有していてもよい。本発明のポリアミドの分子内に一般式(I)で表されるユニットが多い場合は、重合する時に重合度をコントロールすることが困難になる場合がある。又、一般式(I)で表されるユニットが少なすぎるとポリアミドの粘度が高くなる場合がある。
【0042】
上記の一般式(I)で表されるユニット以外のユニットとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、一般式(I)以外の構造のポリアミド等が挙げられ、一般式(I)以外の構造のポリアミドのユニットが製造容易なため好ましい。
一般式(I)以外の構造のポリアミドのユニットは、一般式(III)以外の構造のジアミン化合物とジカルボン酸類との縮合物であることが、より好ましい。
上記の理由から、本発明のポリアミドにおいて、一般式(I)で表されるユニットの含有量が1モル%〜80モル%であることが好ましく、10モル%〜70モル%であることがより好ましく、40モル%〜60モル%であることが更に好ましい。
【0043】
上記の一般式(III)以外の構造のジアミン化合物としては、例えば、特開2010−189578号公報の段落〔0023〕〜〔0026〕や特開2010−235859号公報の段落〔0018〕に記載されている脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物が挙げられる。
【0044】
より具体的に、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、並びに該9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン骨格に置換基を導入した誘導体を挙げることができる。
【0045】
上記の一般式(III)以外の構造のジアミン化合物の中でも4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0046】
ジアミン化合物全量に対する一般式(III)で表されるジアミン化合物の使用量は、ポリアミドにおける一般式(I)で表されるユニットの含有量の好ましい理由と同様の理由により、1モル%〜80モル%であることが好ましく、10モル%〜70モル%であることがより好ましく、40モル%〜60モル%であることが更に好ましい。
【0047】
上記一般式(I)を除くユニットのポリアミドを製造する時に使用することが出来るジカルボン酸類としては、特に限定されず、任意のジカルボン酸又はそれらの酸ハロゲン化物を使用することが可能であり、例えば、シュウ酸、アジピン酸、オクタメチレンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、3,3−ジエチルコハク酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2 ,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1 ,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等、アミノ酸として、ペンタメチレンアミノカルボン酸、デカメチレンアミノカルボン酸、ウンデカメチレンアミノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4 ,4 '−オキシ二安息香酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−メチレン二安息香酸、4,4'−メチレン二安息香酸、4,4’−チオ二安息香酸、3,3'−カルボニル二安息香酸、4,4'−カルボニル二安息香酸、4,4'−スルフォニル二安息香酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるほか、イソフタル酸5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテレフタル酸、上述したジカルボン酸の酸ハロゲン化物が挙げられる。
【0048】
本発明のポリアミドの平均重合度は特に限定されないが、好ましくは2〜5000の数である。また重量平均分子量は上述した平均重合度の範囲内ならば特に制限されないが、低すぎると耐熱性が不十分となる場合があり、高すぎると溶剤溶解性が悪くなる場合があるため、5000〜1000000が好ましく、10000〜500000がより好ましい。
【0049】
次に、本発明のポリアミドの製造方法について説明する。本発明のポリアミドは、複数のジアミン化合物を用いることにより製造することができる。例えば、上記一般式(III)で表されるジアミン化合物のうち、2種以上を併用することができる。また、使用するジアミン化合物が1種であるか2種以上であるかにかかわらず、上記ジカルボン酸類、すなわち、一般式(I)で表されるユニットの原料となるジカルボン酸類及び/又は一般式(I)以外の構造のポリアミドのユニットの原料となるジカルボン酸類についても1種又は2種以上用いることができる。本発明のポリアミドを製造する具体的な方法としては、例えば、有機溶剤中でジカルボン酸ジクロリドとジアミン化合物とを反応させる方法、ジカルボン酸とジアミン化合物を脱水縮合させる方法が挙げられる。
【0050】
本発明のポリアミドを製造する時のジアミン化合物とジカルボン酸類の使用量は、特に限定されないが、該ジアミン化合物に対して、該ジカルボン酸類の使用量が98〜102モル%であることが好ましい。ジカルボン酸類の使用量が98モル%未満、又は102モル%超の場合は、物理的強度が大幅に低下する場合がある。
【0051】
本発明のポリアミドを製造する時の反応温度(重縮合反応の温度)は、使用するジアミン化合物及びジカルボン酸類の種類により異なるが、ジカルボン酸類としてジカルボン酸ジクロリドを使用する場合は有機溶媒中で10℃〜30℃で攪拌し、製造することが好ましい。又、ジカルボン酸類としてジカルボン酸を使用する場合は有機溶媒中で水を留去しながら50℃〜125℃で攪拌し、製造することが好ましい。
【0052】
本発明のポリアミドを製造する時の上記有機溶媒は特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセルソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド、1,3-ジメチル‐2‐イミダゾリジノン等が挙げられ、中でも、1−メチル−2−ピロリジノンが好ましい。
【0053】
本発明のポリアミドは、耐熱性が高く、着色が少ないため透明性が高く、強度が高いため、フィルム成型又はシート成型によく用いられる溶液流延、プレス、射出成型等の各種成型法により製膜することが可能である。
【0054】
本発明のポリアミドの用途は、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル等の各種ディスプレイの表示材料として使用される光学フィルム又は光学シート(偏光板、位相差板、反射防止板等の表示用部材)のほか、自動車部品、機械部品、部品接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層間絶縁膜としての層配線基板の層間絶縁材料、半導体素子の表層の保護膜又はカラーフィルター等の用途に好適に用いられる。これらの中でも、光学フィルム又は光学シートに使用することが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中、「部」とは「質量部」を意味する。実施例1−1〜1−2は、上記一般式(III)で表されるジアミン化合物の製造例を示す。実施例2−1〜2−2は、上記一般式(III)で表されるジアミン化合物を用いた本発明のポリアミドの製造例を示す。比較例2−1〜2−3は、比較ポリアミドの製造例を示す。実施例3−1〜3−2及び比較例3−1〜3−3は、それぞれ実施例2−1〜2−2で得られた本発明のポリアミド(以下、実施ポリアミドともいう)及び比較ポリアミドの性能試験を示す。実施例4−1〜4−2及び比較例4−1〜4−2は、それぞれ実施ポリアミドの性能試験及び比較ポリアミドの性能試験を示す。
【0056】
[実施例1−1]1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3,3−ジメチルインダン(ジアミン化合物No.3)の製造:
攪拌機、温度計、窒素導入管、ディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに3,3−ジメチル−1−インダノン13.1g、o−トルイジン52.7g及び35%塩酸17.0gを仕込み、窒素フロー下、125〜200℃で攪拌し、o−トルイジンを還流させながら生成する水を系外に排出し、15時間反応させた。25℃まで冷却した後、48%水酸化ナトリウム水溶液13.5gと水50gを加え中和し、トルエン100gを加えた後、この有機層に水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。有機層を減圧蒸留にてトルエンと未反応のトルイジンを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行ったところ、4.40g の透明褐色固体が得られた。下記の1H−NMR、IRの分析結果から該固体は目的のジアミン化合物No.3であることを確認した(収率20%)。
【0057】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
1.10(s:6H),1.95(s:6H),2.66(s:2H),4.57(br:4H),6.42−6.48(m:2H),6.52−6.58(m:2H),6.68(s:2H),6.80(d:1H),7.09−7.20(m:3H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3446,3365,3281,3015,2952,2893,1622,1504,1475,1449,1406,1380,1361,1286,1154,1079,1079,1031,999,977,890,821,761,741
【0058】
[実施例1−2]1,1−ビス(4−アミノフェニル)−3,3−ジメチルインダン(ジアミン化合物No.1)の製造:
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに、3,3−ジメチル−1−インダノン10.0g、アニリン塩酸塩16.1g及びアニリン34.9gを仕込み、窒素フロー下、120〜185℃で攪拌し、アニリンを還流させながら、生成する水を系外に排出し、10時間反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液10.3g、水50gを加えて中和し、酢酸エチル100gを加えた後、この有機層に水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。有機層を減圧蒸留にて酢酸エチルと未反応のアニリンを留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行い、溶媒を減圧留去し、80℃で4時間乾燥したところ、4.02gの赤褐色固体が得られた。下記の1H−NMR、IRの分析結果から該固体は目的のジアミン化合物No.1であることを確認した(収率20%)。
【0059】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
1.14(s:6H),2.68(s:2H),4.71−4.90(m:4H),6.44(d:4H),6.70(d:4H),6.79(d:1H),7.08−7.28(m:3H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3433,3349,3216,3026,2953,2861,1621,1511,1475,1449,1381,1361,1283,1185,1131,1079,1015,828,763
【0060】
[実施例2−1]実施ポリアミド樹脂No.1の合成
温度計、窒素導入管、攪拌機を備えた500ml四つ口フラスコによく乾燥した1−メチル−2−ピロリジノン118g、1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3,3−ジメチルインダン5.00g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.05gを仕込み、25℃で攪拌して溶解させた。この溶液にテレフタル酸クロライド6.17gを液温が40℃を超えないようにゆっくりと加え、窒素フロー下で25℃にて3時間攪拌した。さらに炭酸カルシウム3.04gを加えて1時間攪拌して中和し、ガラス繊維ろ紙でろ過をすることで粘調な溶液を得た。この溶液を激しく攪拌している水2000mlへゆっくりと滴下し1時間攪拌し、沈殿した固形物をろ取した。ろ取した固形物をメタノール1000ml中に加え、25℃、1時間攪拌した。攪拌終了後、固形物をろ取して、この固形物を80℃で6時間の減圧乾燥を行い、本発明の実施ポリアミド樹脂No.1を9.10g得た。
【0061】
〔実施例2−2〕実施ポリアミド樹脂No.2の合成
温度計、窒素導入管、攪拌機を備えた500ml四つ口フラスコによく乾燥した1−メチル−2−ピロリジノン80.0g、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−3,3−ジメチルインダン3.00g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.83gを仕込み、攪拌して溶解させた。この溶液にテレフタル酸クロライド3.70gを液温が40℃を超えないようにゆっくりと加え、窒素フロー下で室温にて3時間攪拌した。さらに炭酸カルシウム1.95gを加えて1時間攪拌して中和し、ガラス繊維ろ紙でろ過をすることで粘調な溶液を得た。この溶液を激しく攪拌している水2000mlへゆっくりと滴下し1時間攪拌し、沈殿した固形物をろ取した。ろ取した固形物をメタノール1000ml中に加え、25℃、1時間攪拌した。攪拌終了後、固形物をろ取して、固形物を80℃で6時間の減圧乾燥を行い、本発明の実施ポリアミド樹脂No.2を7.04g得た。
【0062】
[比較例2−1]比較ポリアミド樹脂No.1の合成
温度計、窒素導入管、攪拌機を備えた500ml四つ口フラスコによく乾燥した1−メチル−2−ピロリジノン273g、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン5.00g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.42gを仕込み、25℃で攪拌して溶解させた。この溶液にテレフタル酸クロライド8.97gを液温が40℃を超えないようにゆっくりと加え、窒素フロー下で室温にて25℃で攪拌した。さらに炭酸カルシウム4.42gを加えて1時間攪拌中和し、ガラス繊維ろ紙でろ過をすることで粘調な溶液を得た。この溶液を激しく攪拌している水2000mlへゆっくりと滴下し1時間攪拌し、沈殿した固形物をろ取した。ろ取した固形物をメタノール1000ml中に加え、25℃、1時間洗浄した。攪拌終了後、固形物をろ取して、この固形物を80℃で6時間の減圧乾燥を行い、比較ポリアミド樹脂No.1を15.7g得た。
【0063】
[比較例2−2]比較ポリアミド樹脂No.2の合成
温度計、窒素導入管、攪拌機を備えた1000ml四つ口フラスコによく乾燥した1−メチル−2−ピロリジノンの403g、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン8.70g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル5.00gを仕込み、25℃で攪拌して溶解させた。この溶液にテレフタル酸クロライド10.14gを液温が40℃を超えないようにゆっくりと加え、窒素フロー下、25℃で3時間攪拌した。さらに炭酸カルシウム5.03gを加えて1時間攪拌中和し、ガラス繊維ろ紙でろ過をすることで粘調な溶液を得た。この溶液を激しく攪拌している水2000mlへゆっくりと滴下し1時間攪拌し、沈殿した固形物をろ取した。ろ取した固形物をメタノール1000ml中に加え、25℃、1時間攪拌した。攪拌終了後、固形物をろ取して、この固形物を80℃で6時間の減圧乾燥を行い、比較ポリアミド樹脂No.2を18.6g得た。
【0064】
[比較例2−3]比較ポリアミド樹脂No.3の合成
温度計、窒素導入管、攪拌機を備えた1000ml四つ口フラスコによく乾燥した1−メチル−2−ピロリジノン348g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.00gを仕込み、攪拌して溶解させた。この溶液にテレフタル酸クロライド10.14gを液温が40℃を超えないようにゆっくりと加え、窒素フロー下で25℃にて3時間攪拌した。さらに炭酸カルシウム5.03gを加えて1時間攪拌中和し、ガラス繊維ろ紙でろ過をすることで粘調な溶液を得た。この溶液を激しく攪拌している水2000mlへゆっくりと滴下し1時間攪拌し、沈殿した固形物をろ取した。ろ取した固形物をメタノール1000ml中に加え、25℃、1時間攪拌した。攪拌終了後、固形物をろ取して、この固形物を80℃で6時間の減圧乾燥を行い、比較ポリアミド樹脂No.3を13.5g得た。
【0065】
[実施例3−1〜3−2、比較実施例3−1〜3−3]実施ポリアミドNo.1〜No.2及び比較ポリアミドNo.1〜No.3の評価
実施例2−1〜2−2、比較例2−1〜2−3で得られた実施ポリアミド樹脂No.1〜No.2及び比較ポリアミド樹脂No.1〜No.3の「耐熱性」と「溶解性」について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0066】
〔耐熱性〕
SIIナノテクノロジー社製「TG/DTA6200」を用い、窒素100ml/分フロー下、昇温速度10℃/分にて加熱重量減少測定を行い、2.0%重量減少温度(Td2)を各ポリアミドについて求めた。なお、400℃まで到達後も2.0%の重量減少が確認されなかったポリアミドのTd2は>400℃とした。
【0067】
〔溶解性〕
10%溶解性試験として、それぞれ表1記載のポリアミド樹脂0.50gと1−メチル−2−ピロリジノン4.50gをサンプル管に加えて密栓し、シェーカー(サーモニクス(株)社製、モデル名:Z−2、試験温度:25℃)で、スピードを2に合わせ、60分間振動させた。目視で確認して10分以内に溶解したものを○、60分以内に溶解したものを△、60分経ってもゲル状のものが残っていたもの、濁っていたものを×とした。また、5%溶解性試験として、10%溶解性試験で使用した1−メチル−2−ピロリジノンを、4.50gの代わりに9.50g用いて10%溶解性試験と同様の試験を行った。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例4−1〜4−2、比較例4−1〜4−2]実施ポリアミドフィルムNo.1〜No.2及び比較ポリアミドフィルムNo.1〜No.2の製造と評価
実施例2−1〜2−2、比較例2−1〜2−2で得られた実施ポリアミド樹脂No.1〜No.2及び比較ポリアミド樹脂No.1〜No.2をそれぞれ0.50gと、1−メチル−2−ピロリジノン9.50gをサンプル管にとり、溶解させ、ポリアミド溶液を得た。それぞれ10cm×10cmのガラス板にアプリケーターで塗布し、150℃、1時間で加熱乾燥した後、ガラス基板よりフィルムを剥離し、型枠にはめ込み280℃で30分加熱乾燥を行い、実施ポリアミドフィルムNo.1、No.2及び比較ポリアミドフィルムNo.1、No.2を得た。フィルムが得られたものはミツトヨ株式会社製リニヤゲージLGF−0110Lを使用して膜厚を測定し、それぞれ膜厚が5μmの均一なフィルムであることを確認した。
得られたフィルムの「製膜性」と「透過率」について下記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0070】
〔製膜性〕
280℃加熱後のフィルムの状態について目視で確認し、良好なフィルムが得られたものを○、フィルム表面に曇りや発泡が見られたものを×とした。
【0071】
〔透過率〕
日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光度計V-570を用いて可視光領域の透過率を測定し、400nm及び600nmにおける透過率の値を求めた。
【0072】
【表2】

【0073】
本発明の実施ポリアミドは耐熱性が高く、溶解性が良く、良好なフィルムを製膜することが出来たが、比較ポリアミドNo.1では耐熱性に劣り、また製膜時にフィルムの表面に濁りが生じるなど製膜性でも劣っていた。比較ポリアミドNo.2は、製膜性には問題ないが透過率は可視光領域に吸収が見られ、本発明の実施ポリアミドに比較して溶剤溶解性が劣りハンドリング性が悪いため、フィルム製造時に多量の溶剤を必要とし、製造に制約を与える懸念がある。また比較ポリアミドNo.3は製膜に充分な量を溶剤に溶解させることが出来ず、フィルムを製造できなかった。
【0074】
以上より、本発明のポリアミドは、製膜性、耐熱性、透明性に優れている。このため、本発明のポリアミドは、光学フィルム、光学シート、自動車部品、機械部品、部品接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層間絶縁膜としての層配線基板の層間絶縁材料、半導体素子の表層の保護膜又はカラーフィルター等に好適に用いられ、産業上有用であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるユニットを必須ユニットとして含有することを特徴とするポリアミド。
【化1】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の炭素―炭素結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは0〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよく、
Aは炭素原子数1〜22の炭化水素基、又は直接結合を表す。)
【請求項2】
上記ポリアミドは、一般式(I)で表されるユニットのほかに、任意のユニットとして一般式(I)以外の構造のポリアミドのユニットを含有しており、
上記ポリアミドにおいて、一般式(I)で表されるユニットの含有量が1モル%〜80モル%であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
上記一般式(I)のユニットが下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド。
【化4】

(式中、Z、r及びAは、上記一般式(I)と同じであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である。)
【請求項4】
上記一般式(I)で表されるユニットが、下記一般式(III)で表されるジアミン化合物と炭素原子数2〜24のジカルボン酸類を重縮合して形成されるユニットであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のポリアミド。
【化5】

(式中、X、Y、Z、k、p、x、y及びrは、上記一般式(I)と同じである。)
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のポリアミドを使用して形成される光学フィルム、光学シート、自動車部品、機械部品、部品接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層間絶縁膜としての層配線基板の層間絶縁材料、半導体素子の表層の保護膜又はカラーフィルター。

【公開番号】特開2013−87127(P2013−87127A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225951(P2011−225951)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】