説明

新規ポリオキサレート

【課題】 従来技術の問題点である耐熱性の大幅に向上したイソソルビド系生分解性ポリエステルを提供すること。
【解決手段】 イソソルビドにシュウ酸ジエステルを組み合わせることによって得られるイソソルビド系ポリエステルであり、下記式で表される構造単位を主繰り返し単位として含む新規ポリオキサレートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有すると共に耐熱性も優れたイソソルビド系ポリエステル(新規ポリオキサレート)に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平11−241004号公報
【非特許文献1】Polym.Bull.,11,365(1984)
【非特許文献2】Makromol.Chem.,194,53(1993)
【非特許文献3】J.Polymer Sci.:Part A:Polymer Chemistry,33、2813(1995)
【非特許文献4】J.Appl.Polymer Sci.,62,2257(1996)
【非特許文献5】J.Appl.Polymer Sci.,77,338(2000)
【0003】
近年、地球環境に与えるプラスチックの廃棄問題の解決策として、ポリ乳酸に代表される再生可能な植物資源由来の原料を利用した材料開発が盛んである。その一つとして、でんぷんやセルロース等の多糖類からの分解及び変性によって得られる原料、中でも、でんぷんの加水分解により生成するグルコースを還元及び分子内脱水環化して得られるイソソルビドとジカルボン酸誘導体とから得られるポリエステルがよく知られている。
【0004】
イソソルビドを用いたポリエステルとしては、例えば、イソソルビドとテレフタル酸クロリドとから得られるポリエステル(非特許文献1,2)や、イソソルビドと芳香族又は脂環式ジカルボン酸とから得られるポリエステル(特許文献1)が開示されているが、特に後者は液晶用途を目的としたものであり、耐熱性や生分解性等については何の記述もされていない。
【0005】
その他、イソソルビドと脂肪族ジカルボン酸誘導体とから得られるポリエステルとして、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のそれぞれの酸クロリド化合物を使用して合成されるポリエステルが知られている(非特許文献3,4,5)。しかし、これらのポリエステルはいずれも生分解性を有するが、融点を示さず、非晶性であり、ガラス転移温度も最も高いコハク酸クロリドを使用した場合で高々36℃程度と非常に低く、プラスチックとしての実用性に欠けるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の問題点である耐熱性の大幅に向上したイソソルビド系生分解性ポリエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イソソルビドにシュウ酸ジエステルを組み合わせることによって下記式で表されるイソソルビド系ポリエステル(新規ポリオキサレート)が得られ、このポリエステルにより前記課題が解決できることを見出した。特に、本発明のイソソルビド系ポリエステルの非常に高いガラス転移温度は、従来公知のイソソルビド系ポリエステルのガラス転移温度からは全く予測できなかったものである。
【0008】
即ち、本発明は、(1)式(I)で表される構造単位を主繰り返し単位として含む新規ポリオキサレート、(2)式(I)で表される構造単位からなる、第1の発明に記載の新規ポリオキサレート、(3)式(I)で表される構造単位とは異なるエステル単位及び/又は乳酸単位を追加繰り返し単位として含む、第1の発明に記載の新規ポリオキサレートにある。
【0009】
【化1】

【0010】
また、本発明は、(4)前記1〜3のいずれか記載のポリオキサレートからなり、酸素透過度が1.0ml・mm/m・day・atm以下であることを特徴とするポリオキサレートフィルムにもある。
【発明の効果】
【0011】
後述の実施例からも明らかなように、本発明の新規ポリオキサレートは、耐熱性、耐薬品性に優れたポリマーであるので、成形品や繊維等として、更に透明性も非常に良好であるので、フィルム、シート、容器等として有用であり、自動車、電気・電子、精密機器、食品、農業、家庭・日用雑貨等の広い分野において、各種部材、部品、資材として使用できる。
【0012】
また、本発明のポリオキサレートフィルムは、耐熱性、耐薬品性、透明性に加え、酸素バリア性に優れているので、食品、医薬品、化粧品、精密機器,家電製品等の包装材料或いは包装容器として特に有用である。なお、本発明のポリオキサレート及びポリオキサレートフィルムは、生分解性を有する上に再生可能な植物資源由来の原料を利用しているため、廃棄に伴う地球環境への負荷が非常に少ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリオキサレートは、前記式(I)で表される構造単位を主繰り返し単位として含むものであり、このポリオキサレートは、前記式(I)で表される構造単位からなるものであってもよく、また、前記式(I)の主繰り返し単位以外に、それとは異なる追加エステル単位及び/又は乳酸単位を追加繰り返し単位として含むものであってもよい。
【0014】
前者の場合、本発明のポリオキサレートは式(II)で表すことができ、ここで「n」は重合度を表す正の整数で分子量に関連づけられる。後者の場合、追加繰り返し単位の割合は、前述の本発明の効果(特に高耐熱性;ガラス転移温度が160℃以上であること)や、本発明のポリオキサレートが有する本来の特性(生分解性)を損なわない範囲であればよく、例えば、全繰り返し単位(主繰り返し単位と追加繰り返し単位の合計)に対して50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。なお、本発明のポリオキサレートは、分子量や分子量分布に特別の制限はないが、数平均分子量が10000〜100000の範囲であるものがより好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
本発明のポリオキサレートは、主原料であるイソソルビドとシュウ酸又はその誘導体(シュウ酸ジエステル、シュウ酸ジクロリド等)との重縮合反応により製造することができるが、イソソルビドとシュウ酸ジエステルとの重縮合反応によって製造することが特に好ましい。シュウ酸又はその誘導体1モルに対するイソソルビドの使用割合は、0.95〜1.05モル、更には0.98〜1.02モル、特に等モルであることが好ましく、後述のようにこれらが追加の酸成分やアルコール成分で置換される場合も、追加の酸成分とアルコール成分の割合は適宜選択できるが、全酸成分に対する全アルコール分の割合は上記と同様であることが好ましい。
【0017】
シュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジアルキル(シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル等)、シュウ酸ジアリール(シュウ酸ジフェニル、シュウ酸ジp−トリル等)、或いはこれらの組み合わせが使用できる。
【0018】
イソソルビドは、式(III)で示される、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール又は1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトールとも呼ばれる二環状エーテル(テトラヒドロフラン環)のジオールであり、前記構造単位のジオール部分を構成する。
【0019】
【化3】

【0020】
なお、イソソルビドの立体構造より、前記式(I)で表される構造単位は、通常は下式で表される2種の構造単位を含んでなる。また、前記式(II)における構造単位もこの2種の構造単位を含むものである。
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
本発明のポリオキサレートが追加繰り返し単位として前記式(I)とは異なる追加エステル単位を含む場合、前記重縮合反応において、シュウ酸又はその誘導体(シュウ酸成分)の一部が追加の酸成分で置換される。追加酸成分としては、シュウ酸とは異なる他のジカルボン酸(テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等)、シュウ酸誘導体とは異なる他のジカルボン酸誘導体(例えば、テレフタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等のジカルボン酸ジエステル)、炭酸ジエステル(炭酸ジメチル、炭酸ジフェニル等)、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。この置換割合は、前記のように本発明の効果や本発明のポリオキサレートが有する本来の特性を損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば、追加酸成分が、全酸成分(シュウ酸成分と追加酸成分の合計)に対して50モル%以下、好ましくは30モル%以下であればよい。
【0024】
また、同様に追加エステル単位を含む場合、前記重縮合反応において、イソソルビド(主アルコール成分)の一部は追加アルコール成分で置換される。この置換割合も、前記のように本発明の効果や本発明のポリオキサレートが有する本来の特性を損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば、追加アルコール成分が、全アルコール成分(主アルコール成分と追加アルコール成分の合計)に対して50モル%以下、好ましくは30モル%以下であればよい。
【0025】
追加アルコール成分としては、前記式で表されるイソソルビドの立体異性体(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イディトール)、脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(トランス(又はシス)−1,4−シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族ジオール(p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、o−キシリレングリコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等)、イソソルビド及びイソソルビド異性体とは異なる複素環式多価アルコール(D−ソルビトール等)、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
本発明のポリオキサレートが追加繰り返し単位として乳酸単位を含む場合、前記重縮合反応において、全繰り返し単位に対して乳酸単位が前記範囲内になるように、主原料のイソソルビド及びシュウ酸又はその誘導体に、乳酸、ポリ乳酸、ラクチド等の乳酸成分が添加される。なお、本発明のポリオキサレートは、追加繰り返し単位として追加エステル単位と乳酸単位の両者を前記範囲で含んでいてもよい。
【0027】
本発明のポリオキサレートは、前記のイソソルビドとシュウ酸又はその誘導体(好ましくはシュウ酸ジエステル)をバッチ式又は連続式で重縮合反応(好ましくは溶融重合)させることにより得ることができる。このとき、必要に応じて、追加繰り返し単位の構成成分が添加される。具体的には、以下の操作で示されるような、(i)前重縮合工程、(ii)後重縮合工程の順で行うのが好ましい。
【0028】
(i)前重縮合工程:シュウ酸ジエステルとイソソルビドを反応器に仕込んで、反応器内を窒素置換した後、攪拌及び/又は窒素バブリングしながら突沸させないように徐々に昇温する。反応圧力は常圧でよいが、反応温度は、最終到達温度が120〜230℃、更には130〜200℃の範囲になるように制御するのが好ましい。反応の進行に伴って、反応液中には生成したアルコール(メタノール等)が含まれてくる。
【0029】
重縮合反応では、必要に応じて触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、P、Ti、Ge、Zn、Fe、Sn、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Ce、Li、Ca、Hfなどの化合物が好ましく挙げられる。この中では、有機チタン化合物、有機スズ化合物が好ましく、例えば、チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等)、ジスタノキサン化合物(1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等)、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレートなどが高活性で好適である。触媒添加量及び触媒添加時期は、ポリオキサレートを速やかに得られる条件であれば、特に制限されないが、シュウ酸ジエステル1モルに対して10−5〜10−3モルであることが好ましい。
【0030】
(ii)後重縮合工程:次いで、前重縮合工程の最終到達温度で、反応器内を攪拌及び/又は窒素バブリングしながら突沸させないように徐々に減圧して、圧力を500〜100mmHg(66.5〜13.3kPa)にして数時間保持し、生成したアルコールを留出させる。その後、更に昇温及び減圧して、アルコールを完全に留出させる。最終到達圧力は、3.0mmHg(400Pa)より低い圧力、更には1.0mmHg(133Pa)以上で3.0mmHg(400Pa)より低い、特に1.0〜2.0mmHg(133〜266Pa)の範囲の圧力であることが好ましい。また、反応温度は、最終到達温度が160〜300℃、更には180〜250℃の範囲になるように制御することが好ましい。
【0031】
このように、本発明では、シュウ酸ジエステルとイソソルビドを、(I)前重縮合工程で、最終到達温度が120〜230℃になるように昇温して反応させ、次いで、(II)後重縮合工程で、最終到達温度が160〜300℃の範囲になるように昇温すると共に最終到達圧力が3.0mmHg(400Pa)より低い圧力となるように減圧しながらアルコールを留出させて反応させて製造することが好ましい。
【0032】
本発明のポリオキサレートはそれ単独で使用することができるが、必要に応じて他の成分(添加剤、他の重合体等)を単独又は複数で配合して組成物(該ポリオキサレートを含んでなる材料;粉末、チップ、ビーズ等)として使用することもできる。この配合量は本発明の効果を損なわない範囲であるが、好ましくはポリオキサレートの0.01〜10重量%の範囲で配合される。配合できる添加剤としては、例えば、結晶核剤、顔料、染料、耐熱剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤(タルク、クレイ、モンモリロナイト、マイカ、ゼオライト、ゾノトライト、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末等)、強化材(ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維等)、難燃剤、可塑剤、防水剤(ワックス、シリコンオイル、高級アルコール、ラノリン等)、耐加水分解安定剤(ポリカルボジイミド系樹脂等)などが挙げられる。
【0033】
また、配合できる他の重合体としては、天然又は合成高分子が挙げられる。天然高分子としては、例えば、デンプン、酢酸セルロース、キトサン、アルギン酸、天然ゴムなどが挙げることができ、合成高分子としては、例えば、ポリカプロラクトン又はその共重合体、ポリ乳酸又はその共重合体、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、コハク酸/アジピン酸コポリエステル、コハク酸/テレフタル酸コポリエステル、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、(3−ヒドロキシブタン酸/4−ヒドロキシブタン酸)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリグルタミン酸エステル、ポリエステルゴム、ポリアミドゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水添SBS等のゴム又はエラストマーなどを挙げることができる。
【0034】
本発明のポリオキサレートは、押出成形、射出成形、プレス成形、中空成形、真空成形などの一般的な溶融成形法を適用して、成形品、フィルム、シート、繊維、不織布、容器などに成形することができる。更に、この成形物を一軸又は二軸延伸することもできる。また、溶剤に溶かした溶液を使用して成形物を製造することもできる。これら本発明のポリオキサレートから得られる成形物は高い耐熱性を有するものであり、熱可塑性プラスチックが用いられる公知の各種用途に利用することができる。更に、本発明のポリオキサレートは、生分解性に優れたプラスチックとしての公知の各種用途に利用できる。
【0035】
本発明のポリオキサレートフィルムは、前記ポリオキサレートをフィルム状に成形することで得られ、酸素透過度が1.0ml・mm/m・day・atm(4.13×10−7ml・mm/m・hr・Pa)以下、好ましくは0.8ml・mm/m・day・atm(3.30×10−7ml・mm/m・hr・Pa)以下のものである。なお、酸素透過度は、厚さ180μmのフィルムについて「ASTM D3985」による測定値を厚さ1mmに換算したものである。
【0036】
本発明のポリオキサレートフィルムの厚さは、酸素透過度が前記範囲であって、所望の機械的強度及び可撓性が得られる範囲であれば特に制限されないが、通常5〜300μm程度、更には10〜200μm程度であることが好ましい。フィルムが薄すぎると所望の機械的強度が得られず、破れやピンホール等の欠陥が生じ易くなり、逆に厚すぎると満足できる可撓性が得られない。
【0037】
前記の一般的な成形法で得られたポリオキサレートフィルムは、ガラス転移温度以上の適切な温度(好ましくは160〜200℃)で、一定幅の一軸延伸、逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸することができ、延伸により機械的特性を向上させることができる。長さ延伸倍率は、好ましくは1.5〜6.0、更に好ましくは2.5〜6.0の範囲である。長さ延伸倍率が1.5以下では実質的に延伸の効果が認められないことがあり、また6以上ではフィルムの均一性が失われることがある。二軸延伸において、面積延伸率は2.25〜36の範囲であることが好ましい。更に、延伸後に熱処理(ヒートセット)を施すことにより寸法を安定させてもよい。この熱処理は、例えば、170〜210℃で1〜300秒施される。
【0038】
本発明のポリオキサレートフィルムは、透明性、ガスバリアー性、生分解性に優れているため、ラップ用フィルム及び各種物品の包装材料(包装容器)として利用できる。包装の形態は特に制限はないが、家庭用ラップ、パウチ(含スタンディング)、スキンパック、シュリンク包装、ピロー包装、ロケット包装、ブリスターパック、深絞り包装、トレー・カップ包装、ポーションパック、ストリップ包装などに使用できる。
【0039】
被包装物は、食品、医薬品、化粧品、精密機械、家電製品など特に制限はない。具体例としては、小麦粉、米、餅、麺、即席麺などの穀類と穀類加工品;食肉、食肉加工品、食肉惣菜、鶏卵などの食肉と食肉加工品;牛乳、バター、チーズなどの牛乳と乳製品;生鮮食、水産加工品、食肉練り製品、削り節などの生鮮魚と水産加工品;野菜、果実、果実飲料、カット野菜などの野菜・果実;菓子、パン、キャンディ、チョコレートなどの菓子・パン;水産発酵食品、味噌、醤油、漬物、日本酒、ワインなどの発酵食品;マヨネーズ、ドレッシング、トマトケチャップ、タレ、食酢、食用油などの調味料;日本茶、コーヒー、ウーロン茶、紅茶、清涼飲料、香辛料などの嗜好品;レトルト食品、冷凍食品、佃煮、珍味などの調理加工食品;弁当惣菜、調理パン、サンドウィッチ、こんにゃく、豆腐、米飯などの日配調理食品;固形製剤、液剤、軟膏剤などの医療品;化粧品、粉末洗剤、歯磨き、シャンプー、固形石鹸、紙おむつ、生理用品などの化粧品やトイレタリー;パソコン、プリンター、カメラ、テレビ、冷蔵庫、携帯オーディオ機器、電池、ICチップ、光及び/又は磁気記録メディアなどの精密機械や家電製品などが挙げられる。
【0040】
また、本発明のポリオキサレートフィルムは、例えば、農業・園芸用のマルチフィルム、シードテープ、発芽シート、養生シート、苗木ポット、防鳥ネット、農薬袋、堆肥用ゴミ袋などの農業・園芸用品、生ゴミ袋、水切り袋、スーパーのショピングバッグなどの家庭用品、窓枠封筒、印刷紙用カバーフィルムなどの事務用品などの用途にも好ましく使用することができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、ポリオキサレートの評価は次の1〜4のように、フィルム成形及びその評価は次の5〜7のようにそれぞれ行った。
【0042】
1.還元粘度(ηSP/c)
ポリオキサレートのヘキサフルオロイソプロパノール溶液(濃度:0.5g/dl)を使用して25℃で測定した。
【0043】
2.ガラス転移温度(T)及び融点(T
DSC測定により求めた(昇温及び降温速度:10℃/分、窒素雰囲気下)。
【0044】
3.生分解特性
試験容器(ガラス製,容量1L)にコンポストを入れ、その中に顆粒状にしたポリオキサレートを埋設した後、容器を58℃に保持して、その下部から上部の方向へ空気(脱CO2後、58℃の水中を通過させて加湿したもの)を流通させると共に、容器からの排出ガスをNaOH水溶液に導入して排出ガス中のCO2を吸収させた。分解率は、所定時間経過後のCO2発生量からブランク試験のCO2発生量を差し引いて、試料からのCO2発生量を求め、この値の試料からの理論CO2発生量に対する割合(百分率)によって求めた。なお、CO2発生量は、NaOH水溶液中の無機体炭素濃度(滴定による)を測定して算出した。
【0045】
4.透明性及び耐薬品性
ポリオキサレートのヘキサフルオロイソプロパノール溶液(濃度:10重量%)を調製して室温でガラス板上にキャストした後、これを室温で乾燥して溶媒を除去し、厚み約100μmのフィルムを作製した。このフィルムの目視により透明性を判断し、更に、このフィルムから1cm角の試験片を切り出して室温で各種薬品に24時間浸漬した後、試験片の外観の目視観察により耐薬品性を判断した。
【0046】
5.フィルム成形
カトーテック製真空シート作成装置を使用し、ポリイミドフィルムを離型シートとして、ポリオキサレート約2.5gを熱板上に載せ、真空ポンプで減圧しながら240℃で3分間保持して充分に溶融させ、100kgf/cm(10MPa)で1分間圧縮した。その後、離型シートごと取り出して室温下で空冷し、厚さ180〜300μm及び直径80〜100mmのフィルムを得た。
【0047】
6.酸素透過度
上記フィルムから切り出した試験片について、MOCON製試験機OX−TRAN2/20−MHを使用し、温度23℃、湿度0%RH及び65%RHの条件で、「ASTM D3985」に基づいて測定した。
【0048】
7.引張特性
オリエンテック製引張試験機テンシロンを使用し、上記フィルムから打ち抜いたダンベル型JIS3号引張試験片について、温度23℃、湿度50%RHの条件下、引張速度10mm/分で引張特性を測定した。
【0049】
〔実施例1〕
直径約30mmφのガラス製反応管(空冷管、窒素バブリング用チューブを備える)に、シュウ酸ジフェニル24.223g(0.1mol)、イソソルビド14.616g(0.1mol)及びブチルチンヒドロキシオキシドヒドレート(CSn(O)OH・xHO)2.1mg(シュウ酸ジフェニルに対して0.01mol%)を仕込んで、内部を窒素で置換した。次いで、以下のように重縮合反応(前重縮合工程と後重縮合工程)を行った。なお、昇温及び反応中は窒素バブリング(50ml/分)を行った。
【0050】
(i)前重縮合工程:前記反応管をオイルバス中に設置して、室温から190℃まで1.5時間かけて昇温しながら反応させた。内容物は、バス温が約140℃になったときに均一の溶融液になった。
【0051】
(ii)後重縮合工程:バス温を190℃に保ったままで減圧を開始して約1時間で300mmHg(39.9kPa)に減圧し、更に100mmHg(13.3kPa)に減圧して1時間反応させた。この間にフェノールが留出し始めた。次いで、バス温を200℃へ上げると共に真空度を徐々に上げながら2時間反応させた。最終到達圧力は0.5mmHg(66.5Pa)であった。得られたポリオキサレート(PISOX−1)の物性測定結果を表1にまとめて示す。また、1H−NMRスペクトルを図1に示す。なお、ポリオキサレートの数平均分子量は1H−NMRにより求め、図1において「n」は重合度を表す。1H−NMRは、日本電子製JNM−EX400WBを使用して、溶媒:DMSO−d、積算回数:32回、試料濃度:5重量%の条件で測定した。
【0052】
〔実施例2〕
攪拌棒を備えた直径約30mmφのガラス製反応管を使用して、イソソルビド使用量を14.373g(0.09834mol)に変え、後重縮合工程において、フェノールが留出し始めた後、バス温を215℃へ上げると共に真空度を徐々に上げながら7時間反応させたほかは、実施例1と同様に反応を行ってポリオキサレート(PISOX−2)を得た。その物性測定結果を表1に示す。
【0053】
〔実施例3〕
イソソルビド使用量を14.382g(0.0984mol)に変えたほかは、実施例2と同様に反応を行ってポリオキサレート(PISOX−3)を得た。その物性測定結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のイソソルビド系ポリエステル(新規ポリオキサレート)は、生分解性を有するため、廃棄に伴う地球環境への負荷が少なく、自動車、電気・電子、精密機器、食品、農業、家庭・日用雑貨等の広い分野において、各種部材、部品、資材として(例えば、成形品、フィルム、シート、容器、繊維等として)使用できる。
また、本発明のポリオキサレートフィルムは、耐熱性、耐薬品性、透明性に加え、酸素バリア性に優れているので、食品、医薬品、化粧品、精密機器,家電製品等の包装材料或いは包装容器として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1で得られたポリオキサレート(PISOX−1)のH−NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造単位を主繰り返し単位として含む新規ポリオキサレート。
【化1】

【請求項2】
前記式(I)で表される構造単位からなる、請求項1記載の新規ポリオキサレート。
【請求項3】
前記式(I)で表される構造単位とは異なるエステル単位及び/又は乳酸単位を追加繰り返し単位として含む、請求項1記載の新規ポリオキサレート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のポリオキサレートからなり、酸素透過度が1.0ml・mm/m・day・atm以下であることを特徴とするポリオキサレートフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−161017(P2006−161017A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123332(P2005−123332)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】