説明

新規ポリペプチドおよびそのDNA

【課題】新規ポリペプチドおよびそのDNAの提供。
【解決手段】本発明は、FGFに類似構造を有することを特徴とする新規ポリペプチドおよびその塩などに関する。
【効果】本発明のタンパク質(ポリペプチド)、その部分ペプチドまたはそれらの塩、およびそれらをコードするDNAは、抗体および抗血清の入手、本発明のタンパク質(ポリペプチド)の発現系の構築、同発現系を用いた医薬品候補化合物のスクリーニングなどとして用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はFibroblast Growth Factor(FGF)に類似の構造を有することを特徴とする新規ポリペプチド、その部分ペプチドおよびそれらをコードするDNAなどに関する。
【0002】
【従来の技術】Fibroblast growth factor(FGF)は1973年にウシの下垂体抽出液からマウス3T3細胞の分裂を促す因子(マイトジェン)として最初見出され、(Nature249, 123(1974))その後、ヘパリン結合性などの化学的性質が明らかになった。1980年代になって、この活性を示す分子量約一万数千の蛋白質が精製され、cDNAクローニングもなされて、FGF-1およびFGF-2の実体が明確になった。一方、これらFGFと構造が関連する因子が、癌遺伝子として、あるいは様々な細胞に対するマイトジェンとして、さらには相同性遺伝子のスクリーニングから次々に同定されて、現在までに哺乳類において19種類のメンバーからなるFGFファミリーが知られるようになった(図3)。一方、最近のゲノムやcDNAの配列解析の急速な進展により、膨大なDNA情報が入手可能になった。これらのDNAの中にはこれまで未知であった生理活性物質をコードするものが含まれているものと推定される。しかしながらゲノムDNA配列やExpressed Sequence Tag(EST)から、未知の生理活性物質を探そうとしても、類似した配列はまったく無関係な蛋白の遺伝子や非翻訳領域のDNA配列にも見出され、さらには偽遺伝子の存在の可能性もあるため、それらの中からどれが本当の生理活性物質であるかどうかを確定することは困難であった。FGFファミリーの受容体としては現在までに、4種類(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)が知られている。これら4種類はすべて1回膜貫通受容体であり、細胞内にキナーゼドメインを持つことが知られている。さらにタンパク質レベルでは、遺伝子それぞれから多くのバリアントがmRNAの選択スプライシングによって作られることも明らかになった。また上述の19種類のFGFファミリーはこれらの受容体に交差反応性を示すことが知られている。
【0003】一方これらのFGFファミリーの生理活性に関してはさまざまな報告がある。特に研究の歴史が比較的長いFGF-1やFGF-2、FGF-7などはかなりよく知られている(EMBO(European Molecular Biology Organization) Journal 5, 2523(1986), FEBS Letters 213, 189(1987), Science 233, 545 (1986)等)。しかし、新しく見出されたばかりのFGFに関してはまだ不明な点が多い。これらに関して現在までに得られている知見をまとめると、FGFは極めて多種類の細胞に対して細胞増殖、細胞の維持、組織の形成、増強、新生、分化など多方面にわたる機能があるということができる。特に、マイトジェン(細胞分裂誘発因子)としての活性、血管新生、軟骨形成、神経細胞の維持などの機能が注目されている。FGF-2は該機能に関し、広い活性を示すことが知られているが、その他の因子の関わりについては不明の点が多い。発生、分化の過程に関しては、FGFファミリーのすべてのメンバーが何らかの形で、ある因子は胚葉レベルの広い範囲で、別の因子は限られた組織の限られた細胞種の増殖や分化に機能していることが推測されている。上記のように、FGFファミリーのタンパク質に関しては、多くの非常に重要な生理作用が報告されている。しかし既に報告されている19種以外に哺乳動物で知られているFGFファミリーは知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、未知のFGFファミリーに属するタンパク質を見出し、それを利用した新たな生理活性物質を含有してなる疾患の予防、治療、診断薬の開発が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者たちは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プライマーを作製し、ヒト膵臓およびラット肝臓cDNAを鋳型とするPCRにより、新規な塩基配列を有するcDNAをクローニングすることに成功した。そして、本発明者らは、得られたcDNAにコードされているタンパク質が有用なFGFファミリーであることを見出し、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、(1)配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、(2)配列番号:11で表されるアミノ酸配列のN末端から第113番目(Gly)ないし第136番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有する上記(1)記載のタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、(3)上記(1)記載のタンパク質または上記(2)記載の部分ペプチドをコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、(4)配列番号:12で表わされる塩基配列を有する上記(3)記載のDNA、(5)上記(4)記載のDNAを含有する組換えベクター、(6)上記(5)記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、(7)上記(6)記載の形質転換体を培養し、上記(1)記載のタンパク質または上記(2)記載の部分ペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、または上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造方法、(8)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬、(9)■上記(3)記載のDNA、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドをコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNAを含有してなる医薬、(10)細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用を有する上記(8)または(9)記載の医薬、(11)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、(12)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、(13)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有するレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット、および(14)上記(12)記載のスクリーニング方法または上記(13)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるレセプターアゴニストまたはアンタゴニスト等を提供する。
【0007】さらには、本発明は、(15)(i)レセプターまたはその部分ペプチドに、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を接触させた場合と、(ii)レセプターまたはその部分ペプチドに、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩および試験化合物を接触させた場合において、該レセプターまたはその部分ペプチドと■上記(1)項記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩との結合量を測定し、比較することを特徴とする上記(12)記載のスクリーニング方法、(16)(i)レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を接触させた場合と、(ii)レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩および試験化合物を接触させた場合において、該レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分と■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩との結合量を測定し、比較することを特徴とする上記(12)項記載のスクリーニング方法、(17)(i)レセプターを含有する細胞に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を接触させた場合と、(ii)レセプターを含有する細胞に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩および試験化合物を接触させた場合において、該レセプターを含有する細胞におけるレセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)などの活性を測定して、比較することを特徴とする上記(12)記載のスクリーニング方法、
【0008】(18)上記(12)および上記(15)〜(17)のいずれかに記載のスクリーニング方法または上記(13)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるレセプターアゴニストを含有してなる医薬、(19)創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの予防・治療剤である上記(18)記載の医薬、(20)上記(12)および上記(15)〜(17)のいずれかに記載のスクリーニング方法または上記(13)項記載のスクリーニング用キットを用いて得られるレセプターアンタゴニストを含有してなる医薬、(21)胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの予防・治療剤である上記(20)記載の医薬、(22)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、(23)(i)レセプターを含有する細胞に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を接触させた場合と、(ii)レセプターを含有する細胞に、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩および試験化合物を接触させた場合において、■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を測定し、比較することを特徴とする上記(22)記載のスクリーニング方法、(24)■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有する■上記(1)項記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、および
【0009】(25)上記(22)〜(23)記載のスクリーニング方法または上記(24)記載のスクリーニング用キットを用いて得られる■上記(1)記載のタンパク質もしくはその塩、■上記(2)記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩等を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のタンパク質としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、および配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質(好ましくは、FGF(Fibroblast Growth Factor ; 線維芽細胞増殖因子)様タンパク質)があげられる。本発明のタンパク質は、例えば、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底核、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸、十二指腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、また合成タンパク質であってもよい。
【0011】配列番号:1と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。配列番号:11と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
【0012】配列番号:1と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する本発明のタンパク質または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質としては、上記のとおり配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質を有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。以下、本明細書において、「配列番号:1で表されるアミノ酸と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質および配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質」または「配列番号:1で表されるアミノ酸と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩および配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその塩」を単に「本発明のタンパク質」と略称する場合がある。実質的に同質の活性としては、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などが同等(例、約0.5〜2倍程度)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。また、本発明のタンパク質には、■配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、■配列番号:1で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、■配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するタンパク質、■配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、■配列番号:11で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、■配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。上記のようにアミノ酸配列が欠失または置換されている場合、その欠失または置換の位置としては、特に限定されない。
【0013】本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質や配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明のタンパク質は、C末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。ここでエステル基のRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明のタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。さらに、本発明のタンパク質には、上記したタンパク質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0014】本発明のタンパク質の部分ペプチド(以下、配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチド、配列番号:11で表されるアミノ酸配列のN末端から第113番目(Gly)ないし第136番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドのみならず、それらのアミドもしくはそれらのエステルまたはそれらの塩を総称して、本発明のタンパク質の部分ペプチドと称する場合がある)としては、前記した本発明のタンパク質と同質の活性、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などを有するペプチドであれば何れのものであってもよい。具体的には、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第29番目(His)〜第209番目(Ser)のアミノ酸配列を有する部分ペプチド、■配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第112番目(Gly)〜135番目(Tyr)のアミノ酸配列を有する部分ペプチド、■配列番号:11で表されるアミノ酸配列の第30番目(Tyr)〜第208番目(Ser)のアミノ酸配列を有する部分ペプチド、■配列番号:11で表されるアミノ酸配列の第113番目(Gly)〜第136番目(Ser)のアミノ酸配列を有する部分ペプチドなどが好ましく用いられる。
【0015】さらに、本発明の部分ペプチドとしては、配列番号:1または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチドと実質的に同質の活性を有する部分ペプチドが好ましい。実質的に同質の活性としては、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)が同等(例、約0.5〜2倍程度)であることが好ましいが、これらの活性の程度やペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。また、これら本発明の部分ペプチドには、本発明のタンパク質の(拮抗)阻害型である、すなわち、本発明のタンパクの有する活性を阻害する活性を有するものも含まれる。
【0016】さらに、本発明の部分ペプチドには、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するタンパク質の部分ペプチド、または、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するタンパク質の部分ペプチドが用いられ、より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドなど、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜20個程度、好ましくは1〜9個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドなども含まれる。
【0017】また、本発明の部分ペプチドのC末端は通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、前記した本発明のタンパク質のごとく、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)(Rは前記と同意義を示す)であってもよい。さらに、本発明の部分ペプチドには、上記した部分ペプチドにおいて、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。本発明のタンパク質またはその部分ペプチドの塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。本発明のタンパク質またはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞、組織または血漿から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後述するタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のタンパク質合成法またはこれに準じて製造することもできる。ヒトや温血動物の細胞、組織または血漿から製造する場合、ヒトや温血動物の細胞または組織のホモジナイズ上清および血漿を硫安沈澱、エタノール沈澱、酸抽出、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、レクチンカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0018】本発明のタンパク質、その部分ペプチドもしくはそれらの塩またはそれらのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
【0019】上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なったのちに樹脂に添加することができる。保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、クロロホルム、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、DMF、ジメチルスルホキシド、ピリジン、クロロホルム、ジオキサン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、N-メチルピロリドンあるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーアミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。カルボキシル基の保護基としては、例えばアルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどのエステル基)、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル、フェナシンエステル、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが用いられる。
【0020】セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0021】原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。タンパク質のアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質とを製造し、この両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質を得ることができる。この粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質のアミド体を得ることができる。タンパク質のエステル体を得るには、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質のアミド体と同様にして、所望のタンパク質のエステル体を得ることができる。
【0022】本発明のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のタンパク質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としてはたとえば、以下の■〜■に記載された方法があげられる■M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)■SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)■泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験 丸善(株) (1975年)
■矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV 205、(1977年)■矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のタンパク質を精製単離することができる。上記方法で得られるタンパク質が遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0023】本発明のタンパク質をコードするDNAとしては、前述した本発明のタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。具体的には、本発明の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、■配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNA、■配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズし、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質と同質の活性、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などを有するタンパク質をコードするDNAなどが用いられる。また、本発明の配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、■配列番号:12で表わされる塩基配列を有するDNA、■配列番号:12で表わされる塩基配列を有するDNAにハイブリダイズし、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質と同質の活性、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖・遊走・分化活性(作用)などを有するタンパク質をコードするDNAなどが用いられる。配列番号:2または配列番号:12で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2または配列番号:12で表わされる塩基配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0024】ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook etal., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表わされる塩基配列を有するDNAなどが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:12で表される塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0025】本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第29番目(His)〜第209番目(Ser)のアミノ酸配列を有する部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列の第85〜627番目、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第112番目(Gly)〜135番目(Tyr)のアミノ酸配列を有する部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列の第334〜405番目の塩基配列を有するDNAなどが、配列番号:11で表されるアミノ酸配列の第30番目(Tyr)〜第208番目(Ser)のアミノ酸配列を有する部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:12で表される塩基配列の第88〜624番目、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列の第113番目(Gly)〜136番目(Tyr)のアミノ酸配列を有する部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列の第337〜408番目の塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0026】本発明のタンパク質またはその部分ペプチド(以下、本発明のタンパク質およびその部分ペプチドを単に本発明のタンパク質と称する場合がある)をコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて、PCR法によって前記DNAライブラリー等から目的とするDNAを増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域を有するDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。クローン化された本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5'末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3'末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0027】ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどがあげられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0028】発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によっても選択できる。また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、タンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、例えばインシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを細胞に導入することによって形質転換体を製造することができる。
【0029】宿主としては、例えばエシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。バチルス属菌としては、例えばバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。酵母としては、例えばサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストチス(Pichia pastoris)などが用いられる。昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィトロ(in Vitro),13, 213-217,(1977))などが用いられる。昆虫としては、例えばカイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
【0030】動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−1、COS−7、Vero細胞、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、L細胞、ミエローマ細胞、ヒトFL細胞、293細胞、C127細胞、BALB3T3細胞、Sp-2/O細胞などが用いられる。これらの中でもCHO細胞、CHO(dhfr-)細胞、293細胞などが好ましい。エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なわれる。酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)に記載の方法に従って行なわれる。昆虫細胞や昆虫を形質転換するには、例えばバイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988))などに記載の方法に従って行なうことができる。動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新 細胞工学実験プロトコール,263−267(1995)(秀潤社発行)に記載の方法に従って行なうことができる。
【0031】発現ベクターの細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法〔Graham F. L. and van der Eb A. J.ヴィロロジー(Virology) 52, 456-467(1973)〕、DEAE−dextran法〔Sompayrac L.M. and Danna K.J. プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)78, 7575-7578, 1981〕、リポフェクション法〔Malone R.W. et al. プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc.Natl. Acad. Sci. USA)86, 6077-6081, 1989〕、電気穿孔法〔Nuemann E. et al. エンボ・ジャーナル(EMBO J.) 1, 841-845(1982)〕等があげられる。このようにして、本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。なお、動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択することができる。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、dhfr遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、dhfr遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。上記の形質転換体を本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドを生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩を製造することができる。
【0032】宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ用いられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
【0033】宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding ofthe Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。特に、CHO(dhfr-)細胞およびdhfr遺伝子を選択マーカーとして用いる場合、チミジンをほとんど含まない透析ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いるのが好ましい。
【0034】上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により本発明のタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用い得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク変性剤や、トリトンX−100(登録商標。以下、TMと略称する場合がある)などの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。かくして得られる本発明のタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。なお、組換え体が産生する本発明のタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0035】本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体は、本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩(以下、本発明のタンパク質と略記する場合がある)を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。本発明のタンパク質に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)は、本発明のタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクロナール抗体産生細胞の作製本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なうことができる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリがあげられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施できる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどがあげられるが、好ましくはPEGが用いられる。骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0036】モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが用いられる。モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクロナール抗体の精製モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈澱法、等電点沈澱法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0037】〔ポリクローナル抗体の作製〕本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のポリクローナル抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合で結合させる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0038】本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAに相補的な塩基配列を有するアンチセンスDNAとしては、本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの塩基配列またはその一部の塩基配列に相補的な塩基配列を有し、該タンパク質または部分ペプチドの発現を抑制し得る作用を有するオリゴヌクレオチドまたはその誘導体であれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの全塩基配列または部分塩基配列と約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列などがあげられる。特に、本発明のDNAまたはmRNAの全塩基配列うち、本発明のタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)と約40%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが好適である。これらのアンチセンスDNAは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0039】本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩は、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの作用を有している。したがって、本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩はさまざまな用途に用いることができる。以下に、本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩(本発明のタンパク質と略記する場合がある)、本発明のタンパク質をコードするDNA(本発明のDNAと略記する場合がある)、本発明のタンパク質に対する抗体(本発明の抗体と略記する場合がある)およびアンチセンスDNAの用途を説明する。
【0040】(1)各種疾病の治療・予防剤などの医薬本発明のタンパク質は、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用、血管新生作用などを有し、後述の実施例2(図5)、実施例4(図9)に示されているとおり、本発明のタンパク質は精巣、肝臓、胎児肝臓、膵臓、骨格筋、白色脂肪組織で高発現している。本発明のタンパク質および本発明のDNAは、例えば創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの予防・治療剤などの医薬として有用である。加えて、本発明のタンパク質および本発明のDNAは、肥満症などの予防・治療薬などの医薬として有用である。本発明のタンパク質または本発明のDNAを上記の医薬として使用する場合は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のタンパク質あるいはDNAを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。本発明のDNAを用いる場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って投与することができる。錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
【0041】このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。該タンパク質またはDNAの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に通常成人の動脈硬化症患者(60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象組織、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常成人の動脈硬化症患者(体重60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0042】(2)遺伝子診断剤本発明のDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)における本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAの異常(遺伝子異常)を検出することができる。したがって、本発明のDNAは、本発明のタンパク質が関与する各種疾病の遺伝子診断剤として有用である。例えば、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAが損傷し、欠損し、あるいはタンパク質の発現が減少していることが検出された場合は、例えば、創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの疾病である可能性があると診断することができる。一方、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAが増加し、あるいはタンパク質の発現が増加していることが検出された場合は、例えば、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患である可能性ありと診断することができる。また、発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAが増加または減少し、あるいはタンパク質の発現が増加または減少していることが検出された場合は、上記の疾患の他、肥満症などの疾患である可能性ありと診断することができる。本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings ofthe National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
【0043】(3)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩の定量本発明の抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のタンパク質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法、および(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法を提供する。上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のタンパク質のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
【0044】また、本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、モノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて本発明のタンパク質の定量を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質の定量法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが、上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが、蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが、発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどがそれぞれ用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0045】抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラスなどが用いられる。サンドイッチ法においては不溶化したモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化したモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のタンパク質量等を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0046】本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0047】これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のタンパク質の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGYVol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のタンパク質を感度良く定量することができる。
【0048】さらには、本発明の抗体を用いて本発明のタンパク質の濃度を定量することによって、本発明のタンパク質が関与する各種疾病の診断を行なうことができる。例えば、本発明のタンパク質の濃度が減少している場合は、例えば、創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの疾患である可能性ありと診断できる。一方、本発明のタンパク質の濃度が増加している場合は、例えば、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患である可能性ありと診断できる。また、本発明の抗体のうち、本発明のタンパク質の活性を中和することができる抗体は、例えば胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。また、発明のタンパク質の濃度が増加または減少している場合は、本発明の抗体は、上記の疾患の他、肥満症の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。さらに、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク質を検出するために使用することができる。さらに、本発明のタンパク質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタンパク質を検出するために使用することができる。
【0049】(4)医薬候補化合物のスクリーニング(A)レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法本発明のタンパク質とそのレセプターを用いたリガンド・レセプター結合アッセイ系を構築することによって、本発明のタンパク質と同様の作用を有する医薬候補化合物のスクリーニングや、本発明のタンパク質の作用を阻害する医薬候補化合物のスクリーニングを行なうことができる。すなわち、本発明は、本発明のタンパク質を用いるレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。より具体的には、本発明は、(1)(i)レセプターまたはその部分ペプチドに、本発明のタンパク質を接触させた場合と(ii)レセプターまたはその部分ペプチドに、本発明のタンパク質および試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、および(2)(i)レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に、本発明のタンパク質を接触させた場合と(ii)レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に、本発明のタンパク質および試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
【0050】具体的には、本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、レセプターまたはレセプターを含有する細胞等に対する本発明のタンパク質の結合量、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などを測定して、比較することを特徴とするものである。より具体的には、本発明は、(1a)(i)標識した本発明のタンパク質を、レセプターまたはその部分ペプチドに接触させた場合と、(ii)標識した本発明のタンパク質および試験化合物を、レセプターまたはその部分ペプチドに接触させた場合における、標識した本発明のタンパク質の該レセプターまたはその部分ペプチドまたはそれらの塩に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、(2a)(i)標識した本発明のタンパク質を、レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に接触させた場合と、(ii)標識した本発明のタンパク質および試験化合物を、レセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分に接触させた場合における、標識した本発明のタンパク質の該細胞またはその細胞膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、および(2b)(i)本発明のタンパク質を、レセプターを含有する細胞に接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質および試験化合物を、レセプターを含有する細胞に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などを測定し、比較することを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
【0051】上記の(1a)または(2a)のスクリーニング方法において、レセプターに結合して、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害する化合物がレセプターアゴニストまたはアンタゴニストとして選択できる。上記(2b)のスクリーニング方法において、レセプターに結合し、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を促進する活性、血管新生促進活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などを有する化合物をレセプターアゴニストとして選択することができ、一方、該細胞刺激活性を抑制する活性、血管新生阻害活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの作用を抑制する化合物をレセプターアンタゴニストとして選択することができる。また、上記の(1a)または(2a)のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害する活性が認められた試験化合物の中で、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を有する化合物をレセプターアゴニストとして選択することができ、これらの活性を抑制する化合物をレセプターアンタゴニストとして選択することができる。
【0052】本発明のスクリーニング方法に用いられるレセプターとしてはヒトあるいは温血動物由来のFGFファミリーの受容体(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)などが好ましく用いられる。これらのレセプターおよび本発明のタンパク質に対するレセプターは、自体公知のタンパク質の精製方法に従って入手することができ、また、自体公知の遺伝子工学的手法に従って該レセプターをコードするDNAをクローニングした後、前記した本発明のタンパク質の発現方法に従って目的とするレセプターを入手することもできる。該レセプターの部分ペプチドとしては、全長レセプターを適当に切断して得られる部分ペプチドを用いることができる。標識した本発明のタンパク質としては、例えば、〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した本発明のタンパク質などを用いることができる。
【0053】本発明のスクリーニング方法に用いられる上記レセプターを含有する細胞としては、前記した本発明のタンパク質を発現させるために用いる宿主細胞として列記したものと同様のものを用いることができるが、なかでも、CHO細胞などが好ましい。レセプターを含有する細胞は、レセプターをコードするDNAを用いて、自体公知の方法、例えば、前記した本発明のタンパク質の発現方法などに従って製造することができる。また、上記レセプターを含有する細胞として、CL8細胞株(ボーン(BONE), 18, 159-169, 1996)、OK細胞株(アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY)253, E221-E227, 1987)などの株化細胞を用いることもできる。本発明のスクリーニング方法において、レセプターを含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化することができる。固定化方法は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。
【0054】上記レセプターを含有する細胞の細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などがあげられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したレセプターまたは本発明のタンパク質と、細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。該レセプターを含有する細胞やその細胞膜画分中のレセプターの量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0055】試験化合物としては、例えばタンパク質、タンパク、非タンパク質性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。本発明のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質とレセプターとの反応は、通常約37℃で数時間行なうことができる。具体的には、上記の(1a)または(2a)のスクリーニング方法を実施するには、まず、本発明のレセプターを含有する細胞またはその細胞膜画分、あるいはレセプターまたはその部分ペプチドを、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどの、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的で、PMSF、ロイペプチン、バシトラシン、アプロチニン、E−64(タンパク質研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。一方、細胞が固定化細胞の場合、培養器に固定化させたまま、つまり細胞を生育させた状態で、あるいはグルタルアルデヒドやパラホルムアルデヒドで固定した細胞を用いて、本発明のタンパク質とレセプターを結合させることができる。
【0056】この場合、該緩衝液は培地やハンクス液などが用いられる。そして、0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(例えば、2000Ci/mmolの場合、約10000cpm〜1000000cpm)の標識した本発明のタンパク質(例えば、〔125I〕で標識した本発明のタンパク質)を添加し、同時に10-4M〜10-10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のタンパク質を加えた反応チューブも用意する。反応は0℃から50℃、望ましくは4℃から37℃で20分から24時間、望ましくは30分から3時間行なう。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性(例えば、〔125I〕の量)を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで測定する。濾過には、マニホールドやセルハーベスターを用いることができるが、セルハーベスターを用いることが効率を上げるために望ましい。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えばカウント(B0−NSB)の50%以下になる試験化合物をアゴニストまたはアンタゴニスト候補化合物として選択することができる。
【0057】また、上記(2b)のスクリーニング方法を実施するためには、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って測定することができる。具体的には、まず、レセプターを含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質((例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0058】血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用の測定は自体公知の方法に準じて測定することができる。上記(2b)のスクリーニング方法において、試験化合物を添加した際にレセプターを含有する細胞が、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用の上昇などを示した場合、該試験化合物をレセプターアゴニスト候補化合物として選択することができる。一方、試験化合物を添加した際にレセプターを含有する細胞が、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用の低下などを示した場合、該試験化合物をレセプターアンタゴニスト候補化合物として選択することができる。
【0059】本発明のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質、好ましくはさらに、レセプターを含有する細胞もしくはその細胞膜画分等を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものがあげられる。
〔スクリーニング用試薬〕
■測定用緩衝液および洗浄用緩衝液Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
■レセプター標品本発明のタンパク質に対するレセプターなどを含有するCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
■標識した本発明のタンパク質標品本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩を〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したもの。
■本発明のタンパク質標準液本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩を0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで0.1mMとなるように溶解し、−20℃で保存したもの。
【0060】〔測定法〕
■12穴組織培養用プレートにて培養した組換え型レセプターを含有するCHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
■10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、5nMの標識した本発明のタンパク質を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物のかわりに10-4Mの本発明のタンパク質を5μl加えておく。
■反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識した本発明のタンパク質を0.5mlの0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
■液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。なお、〔125I〕で標識されている場合は、液体シンチレーターと混合することなしに直接ガンマーカウンターで測定できる。
【0061】
【数1】
PMB=100×(B−NSB)/(B0−NSB)
PMB:Percent Maximum BindingB :検体を加えた時の結合量NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
【0062】以上のとおり、本発明のタンパク質はレセプターアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングするための試薬として有用である。本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害する化合物であり、具体的には、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの作用を有する化合物またはその塩(いわゆる、レセプターアゴニスト)、あるいは該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用を抑制する化合物またはその塩(いわゆる、レセプターアンタゴニスト)である。
【0063】レセプターアゴニストは、本発明のタンパク質が有する生理活性の全部または一部を有しているので、該生理活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。例えば、創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの疾病の予防・治療剤などの医薬として有用である。一方、レセプターアンタゴニストは、本発明のタンパク質が有する生理活性の全部または一部を抑制することができるので、該生理活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。例えば、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患の予防・治療剤などの医薬として有用である。また、レセプターアゴニストまたはアンタゴニストは、上記の疾患の他、肥満症などの疾患の予防・治療剤などの医薬として有用である。上記レセプターアンタゴニストまたはレセプターアゴニストを上記の医薬として使用する場合は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、上記レセプターアンタゴニストまたはレセプターアゴニストを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
【0064】このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。該レセプターアゴニストの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に通常成人の動脈硬化症患者(60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象組織、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常成人の動脈硬化症患者(体重60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。該レセプターアンタゴニストの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に通常成人の癌患者(60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象組織、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常成人の癌患者(体重60kgとして)においては、一日につき有効成分を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0065】(B)本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼ阻害剤のスクリーニング方法およびスクリーニング用キット本発明のタンパク質またはその塩は生体内に存在するプロテイナーゼによって切断され、失活すると考えられる。したがって、本発明のタンパク質および本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを用いることによって、本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物を選択することができる。該プロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物は、生体内における本発明のタンパク質の失活を防ぐことにより、細胞間接触に依存しない発明のタンパク質の活性を促進することができるので、例えば、創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの疾患の予防・治療剤などの医薬として期待できる。すなわち、本発明は、本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。より具体的には、本発明は、(1)(i)本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼと本発明のタンパク質とをインキュベートした後、レセプターを含有する細胞に接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼおよび試験化合物と本発明のタンパク質とをインキュベートした後、レセプターを含有する細胞に接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。具体的には、本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を測定して、比較することを特徴とするものである。
【0066】より具体的には、本発明は、(1a)(i)本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼと本発明のタンパク質とをインキュベートした後、レセプターを含有する細胞に接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼおよび試験化合物と本発明のタンパク質とをインキュベートした後、レセプターを含有する細胞に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を測定し、比較することを特徴とする本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0067】上記のスクリーニング方法において、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を促進する試験化合物を本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物またはその塩として選択することができる。本発明のスクリーニング方法に用いられるレセプターとしては、ヒトあるいは温血動物のFGFファミリー受容体(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)が用いられる。本発明のタンパク質に対するレセプターは、自体公知のタンパク質の精製方法に従って入手することができ、また、自体公知の遺伝子工学的手法に従って該レセプターをコードするDNAをクローニングした後、前記した本発明のタンパク質の発現方法に従って目的とするレセプターを入手することもできる。
【0068】本発明のスクリーニング方法に用いられる上記レセプターを含有する細胞としては、前記した本発明のタンパク質を発現させるために用いる宿主細胞として列記したものと同様のものを用いることができるが、なかでも、CHO細胞などが好ましい。レセプターを含有する細胞は、レセプターをコードするDNAを用いて、自体公知の方法、例えば、前記した本発明のタンパク質の発現方法などに従って製造することができる。また、上記レセプターを含有する細胞として、CL8細胞株(ボーン(BONE), 18, 159-169, 1996)、OK細胞株(アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY)253, E221-E227, 1987)などの株化細胞を用いることもできる。
【0069】本発明のスクリーニング方法において、レセプターを含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化することができる。固定化方法は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。上記レセプターを含有する細胞の細胞膜画分としては、前記したものと同様のものを用いることができる。試験化合物としては、例えばタンパク質、タンパク、非タンパク質性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。本発明のスクリーニング方法において、プロテイナーゼと本発明のタンパク質とのインキュベートは、通常数時間、約37℃で行なうことができる。また、この反応混合物とレセプターを含有する細胞との反応は、通常数時間、約37℃で行なうことができる。レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの測定は前記と同様にして行なうことができる。
【0070】本発明のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質および本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを、好ましくはさらに、レセプターを含有する細胞を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものがあげられる。
〔スクリーニング用試薬〕
■測定用緩衝液および洗浄用緩衝液Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
■レセプター標品本発明のタンパク質に対するレセプターなどを含有するCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
■本発明のタンパク質標品本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩■本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼ標品本発明のタンパク質を分解するプロテナーゼ
【0071】〔測定法〕
■本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼと本発明のタンパク質とを約37℃で数時間インキュベートする。
■本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼおよび試験化合物と本発明のタンパク質とを約37℃で数時間インキュベートする。
■上記■および■で得られる反応混合物を、それぞれ本発明のタンパク質に対するレセプターを含有する細胞と約37℃で数時間培養する。
■次いで、該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などを前記の方法に従って測定する。
【0072】以上のとおり、本発明のタンパク質は本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害する活性を有する化合物またはその塩をスクリーニングするための試薬として有用である。本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のタンパク質を分解するプロテイナーゼを阻害し、該プロテイナーゼによる本発明のタンパク質の失活を抑制する化合物である。したがって、該化合物は、細胞間接触に依存しない本発明のタンパク質による該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)、血管新生活性(作用)、細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用などの活性を促進することができ、例えば創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病など疾患の予防・治療のための安全で低毒性な医薬として有用である。また、該化合物は上記の疾患の他、肥満症などの疾患の予防・治療剤としても有用である。本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の治療・予防剤として使用する場合、前記したレセプターアゴニスト/アンタゴニストと同様にして実施することができる。
【0073】(C)本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法本発明のタンパク質は、ヒトあるいは温血動物のFGFファミリー受容体(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)(以下、レセプターと略記する)に特異的に結合することができるので、本発明のタンパク質と該レセプターを用いたリガンド・レセプター結合アッセイ系を構築することによって、本発明のタンパク質が該レセプターに結合した後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングを行なうことができる。すなわち、本発明は、本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。より具体的には、本発明は、(1)(i)レセプターを含有する細胞に、本発明のタンパク質を接触させた場合と(ii)レセプターを含有する細胞に、本発明のタンパク質および試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のクリーニング方法を提供する。
【0074】具体的には、本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば本発明のタンパク質とレセプターが結合した後の細胞内シグナル伝達などを測定して、比較することを特徴とするものである。より具体的には、本発明は、(1a)(i)本発明のタンパク質を、レセプターを含有する細胞に接触させた場合と、(ii)本発明のタンパク質および試験化合物を、レセプターを含有する細胞に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0075】上記(1a)のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害せず、本発明のタンパク質による該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を促進する化合物を、本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を促進する化合物またはその塩として選択することができる。一方、本発明のタンパク質とレセプターとの結合を阻害せず、本発明のタンパク質による該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を阻害する作用を有する化合物を、本発明のタンパク質とレセプターとの結合後の細胞内シグナル伝達を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。すなわち、本スクリーニング方法は、本発明のタンパク質とレセプターとの結合に影響を与えず、レセプター結合後の細胞内シグナル伝達を調節(促進または抑制)する化合物を選択する方法であるので、本スクリーニング方法に用いる試験化合物としては、前記したレセプターアゴニスト/アンタゴニストのスクリーニング方法において、レセプターアゴニストまたはアンタゴニストとして選択されなかった化合物を用いるのが望ましい。
【0076】本発明のスクリーニング方法に用いられるレセプターとしては、ヒトあるいは温血動物のFGFファミリー受容体(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)などが用いられる。本発明のタンパク質に対するレセプターは、自体公知のタンパク質の精製方法に従って入手することができ、また、自体公知の遺伝子工学的手法に従って該レセプターをコードするDNAをクローニングした後、前記した本発明のタンパク質の発現方法に従って目的とするレセプターを入手することもできる。該レセプターの部分ペプチドとしては、全長レセプターを適当に切断して得られる部分ペプチドを用いることができる。本発明のスクリーニング方法に用いられる上記レセプターを含有する細胞としては、前記した本発明のタンパク質を発現させるために用いる宿主細胞として列記したものと同様のものを用いることができるが、なかでも、CHO細胞などが好ましい。レセプターを含有する細胞は、レセプターをコードするDNAを用いて、自体公知の方法、例えば、前記した本発明のタンパク質の発現方法などに従って製造することができる。また、上記レセプターを含有する細胞として、CL8細胞株(ボーン(BONE), 18, 159-169, 1996)、OK細胞株(アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY)253, E221-E227, 1987)などの株化細胞を用いることもできる。
【0077】本発明のスクリーニング方法において、レセプターを含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化することができる。固定化方法は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。上記レセプターを含有する細胞の細胞膜画分としては、前記と同様のものが用いられる。試験化合物としては、例えば、タンパク質、タンパク、非タンパク質性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。本発明のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質とレセプターを含有する細胞との反応は、通常約37℃で数時間行なうことができる。上記(1a)のスクリーニング方法において、本発明のタンパク質による該レセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)の測定は前記と同様にして行なうことができる。上記(1a)のスクリーニング方法において、試験化合物を添加した際に、本発明のタンパク質によるレセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)が促進された場合、該試験化合物をレセプター結合後の細胞内シグナル伝達を促進する化合物またはその塩として選択することができる。一方、試験化合物を添加した際に、本発明のタンパク質によるレセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)が阻害された場合、該試験化合物をレセプター結合後の細胞内シグナル伝達を促進する化合物またはその塩化合物として選択することができる。
【0078】本発明のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質を、好ましくはさらに、レセプターを含有する細胞を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものがあげられる。
〔スクリーニング用試薬〕
■測定用緩衝液および洗浄用緩衝液Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
■レセプター標品本発明のタンパク質に対するレセプターを含有するCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
■本発明のタンパク質標品本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩〔測定法〕細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を前記の方法に従って測定する。
【0079】以上のとおり、本発明のタンパク質はレセプター結合後の細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングするための試薬として有用である。本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のタンパク質とレセプターが結合した後のレセプターを介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+濃度の変動、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、pHの低下など)を促進する化合物またはその塩、あるいは該細胞刺激活性を阻害する化合物またはその塩である。本発明のタンパク質とレセプターが結合した後の細胞内シグナル伝達を促進する化合物またはその塩は、例えば、創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの疾病の予防・治療剤などの安全で低毒性な医薬として有用である。
【0080】本発明のタンパク質とレセプターが結合した後の細胞内シグナル伝達を阻害する化合物またはその塩は、例えば、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患の予防・治療剤などの安全で低毒性な医薬として有用である。本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の治療・予防剤として使用する場合、前記したレセプターアゴニスト/アンタゴニストと同様にして実施することができる。また、該細胞内シグナル伝達を促進または阻害する化合物またはその塩は、上記の疾患の他、肥満症などの疾患の予防・治療剤などの安全で低毒性な医薬として有用である。
【0081】(4)アンチセンスDNA本発明のタンパク質をコードするDNAまたはmRNAに相補的に結合し、該DNAもしくはmRNAや本発明のタンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスDNAは、生体内において上記の作用を発揮する本発明のタンパク質またはそれをコードするDNAの機能を抑制することができる。したがって、該アンチセンスDNAは、例えば、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、卵巣癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性膵炎、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、エイズ感染症、慢性肝炎、急性肝炎、肝硬変、肝臓癌、膵臓癌などの疾患の予防・治療剤として使用することができる。また、該アンチセンスDNAは、上記の疾患の他、肥満症などの疾患の予防・治療剤として使用することができる。該アンチセンスDNAを上記の治療・予防剤として使用する場合、前記した本発明のタンパク質またはDNAを含有する各種疾病の治療・予防剤と同様にして実施することができる。さらに、該アンチセンスDNAは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0082】(5)DNA転移動物の作製さらに本発明は、本発明のタンパク質をコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。すなわち、本発明は、(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の動物、および(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクター、および(5)第(4)記載の組換えベクターを含有してなる遺伝子治療用医薬などを提供するものである。
【0083】本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とする本発明の外来性DNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
【0084】非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。該異常DNAとしては、異常な本発明のタンパク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0085】本発明のタンパク質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、ウィルス(例、シミアンウィルス、サイトメガロウィルス、モロニー白血病ウィルス、JCウィルス、乳癌ウィルス、ポリオウィルスなど)に由来するDNAのプロモーター、各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)および鳥類(ニワトリなど)由来のものとしては、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられるが、好ましくは全身で高発現することが可能なサイトメガロウィルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどを用いることができる。
【0086】上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウィルス由来、各種哺乳動物および鳥類由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウィルスのSV40ターミネターなどが用いられる。その他、目的DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5´上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3´下流に連結することも目的により可能である。正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、ヒトなど)由来のDNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、ヒトなど)由来のRNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。受精卵細胞段階における本発明のDNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明のDNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明のDNAを保持することを意味する。DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明のDNAを有する。
【0087】本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配によりDNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。受精卵細胞段階における本発明のDNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明のDNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のDNAを過剰に有することを意味する。DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明のDNAを過剰に有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のタンパク質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能亢進症や、本発明のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
【0088】一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配によりDNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のタンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質による正常タンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
【0089】また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、■組織培養のための細胞源としての使用、■本発明のDNA転移哺乳動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたタンパク質組織を分析することによる、本発明のタンパク質により特異的に発現あるいは活性化するタンパク質との関連性についての解析、■DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、■上記■記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および■本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のタンパク質産生細胞の特定化、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のタンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のタンパク質が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0090】(6)ノックアウト動物の作製さらに、本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。すなわち、本発明は、(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、(2)大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を有する細胞である第(1)項記載の胚幹細胞、(3)ネオマイシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹細胞、(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載の胚幹細胞、(6)本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物、(7)レポーター遺伝子が本発明のタンパク質のプロモーターの制御下で発現しうる第(6)項記載の動物、(8)レポーター遺伝子が大腸菌由来β−ガラクトシダーゼ遺伝子である第(7)項記載の動物、(9)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記載の動物、(10)ゲッ歯動物がマウスである第(9)項記載の動物、および(11)第(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のタンパク質のプロモーター活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0091】本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
【0092】また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0093】また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschmanら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討において有用である。本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0094】本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
【0095】このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。また、本発明のタンパク質発現不全マウスは、本発明のタンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0096】また、本発明のタンパク質の構造遺伝子をレポーター遺伝子で置換された本発明のタンパク質発現動物では、レポーター遺伝子が本発明のタンパク質のプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、本発明のタンパク質のプロモーターの活性を検出することができる。例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のタンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または7℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mMEDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。このような本発明のタンパク質発現不全動物は、本発明のタンパク質のプロモーターを活性化または不活化する物質をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のタンパク質発現不全に起因する各種疾患の原因究明または治療薬の開発に大きく貢献することができる。
【0097】本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸cDNA :相補的デオキシリボ核酸A :アデニンT :チミンG :グアニンC :シトシンRNA :リボ核酸mRNA :メッセンジャーリボ核酸dATP :デオキシアデノシン三リン酸dTTP :デオキシチミジン三リン酸dGTP :デオキシグアノシン三リン酸dCTP :デオキシシチジン三リン酸ATP :アデノシン三リン酸EDTA :エチレンジアミン四酢酸SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0098】Gly :グリシンAla :アラニンVal :バリンLeu :ロイシンIle :イソロイシンSer :セリンThr :スレオニンCys :システインMet :メチオニンGlu :グルタミン酸Asp :アスパラギン酸Lys :リジンArg :アルギニンHis :ヒスチジンPhe :フェニルアラニンTyr :チロシンTrp :トリプトファンPro :プロリンAsn :アスパラギンGln :グルタミンpGlu :ピログルタミン酸Me :メチル基Et :エチル基Bu :ブチル基Ph :フェニル基TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
【0099】また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos :p−トルエンスルフォニル CHO :ホルミル Bzl :ベンジル Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル Bom :ベンジルオキシメチル Z :ベンジルオキシカルボニル Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル Boc :t−ブトキシカルボニル DNP :ジニトロフェノール Trt :トリチル Bum :t−ブトキシメチル Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ− 1,2,3−ベンゾトリアジン HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド DCC :N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0100】本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕後述の実施例1で取得された本発明のヒト由来タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕後述の実施例1で取得された本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕後述の実施例1で用いられたプライマーFFF1の塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕後述の実施例1で用いられたプライマーFFF3の塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕後述の実施例1で用いられたプライマーFFR1の塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕後述の実施例1で用いられたプライマーFFR3の塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕後述の実施例2で用いられたプライマーFF2の塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕後述の実施例2で用いられたプライマーFF3の塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕後述の実施例3で用いられたプライマーrFFの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕後述の実施例3で用いられたプライマーrFRの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕後述の実施例3で取得された本発明のラット由来タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕後述の実施例3で取得された本発明のラット由来タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕後述の実施例4で用いられたプライマーmrFGLFの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕後述の実施例4で用いられたプライマーrFGLRの塩基配列を示す。後述の実施例1で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli) JM109/pTAhPDF24は、2000年8月28日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−7286として、2000年8月17日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16467として寄託されている。後述の実施例3で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli) JM109/pTArPDF2は、2000年8月28日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−7285として、2000年8月17日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16466として寄託されている。
【0101】
【実施例】以下に、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0102】実施例1 ヒト膵臓cDNA画分からのPCR法による新規FGFファミリーcDNAの取得クローンテック社より購入したヒト膵臓cDNA 2μlを鋳型として、以下の4種類の合成DNAを用いて、nested PCRによる増幅を行った。
FFF1:5'-GAGATCACCTGAGGACCCGAGCCATTG-3'(配列番号:3)
FFF3:5'-ATGGACTCGGACGAGACCGGGTTCGAG-3'(配列番号:4)
FFR1:5'-AGATGTCATAGTAAACAGCCTCTGGCT-3'(配列番号:5)
FFR3:5'-TCAGGAAGCGTAGCTGGGGCTTCGGCC-3'(配列番号:6)
一回目のPCRの反応液はcDNA溶液2μl、0.5μl FFF1(10 μM)、0.5μl FFR1(10 μM)、2.5μl添付の10 x反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl Klen Taq(クローンテック)、16.5μl大塚蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液をThermal Cycler 9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃・2分の変性の後、98℃・10秒、65℃・20秒、72℃・30秒のサイクルを30回繰り返した。さらに、一回目のPCR産物を100倍に希釈し、二回目のPCRを行った。二回目のPCRの反応液は希釈した一回目のPCR反応産物溶液2μl、0.5μl FFF3(10μM)、0.5μl FFR3(10μM)、2.5μl添付の10 x反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl Klen Taq(クローンテック)、16.5μl大塚蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液をThermalCycler9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃・2分の変性の後、98℃・10秒、65℃・20秒、72℃・30秒のサイクルを30回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約600 bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQuiagen PCR purification Kitを用いて精製し、直接配列決定を行ったところ図1R>1で示す配列(配列番号:2)が得られた。図1のDNA配列から予測されるアミノ酸配列は図2に示すもの(配列番号:1)であった。その配列の中には112番目Glyから135番目Tyrまで(下線部)のFGFファミリーでよく保存されている配列(Gly-x-Leu-x-[Ser or Thr or Ala or Gly or Pro]-x(6,7)-[Asp or Glu]-Cys-x-[Phe or Met]-x-Glu-x(6)-Tyr、xはどのアミノ酸でも良い)に類似の配列が存在した。得られた配列の相同性を調べたところ、既知FGFファミリーと高い相同性を示した。その系統樹を図3に示す。また最も高い相同性を示したものはヒト型FGF19(Biochim. Biophys. Acta 1444 (1), 148-151 (1999))でありその相同性は37%であった。ヒト型FGF19およびマウス型FGF15と本発明の配列番号:1の比較を図4に示す。また、得られたDNAを調製しTAクローニングキット(インビトロゲン社)を用いてベクターに導入し、大腸菌JM109を形質転換して形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli) JM109/pTAhPDF24を得た。
【0103】実施例2 新規FGFファミリー遺伝子のヒト臓器でのmRNAの分布クローンテック社より購入したヒトの30種類の臓器由来のpoly(A)+RNAを用いてRT-PCRにより発現分布を調べた。cDNAの合成は各1μgのpoly(A)+RNA(Clontech社)を鋳型として、Superscript2逆転写酵素(Gibco BRL社)とランダムプライマーおよび添付のバッファーを用いて42℃にて1時間の反応を行いcDNA合成した。その反応産物をエタノール沈殿にて精製した後、250mlのTEに溶解した。PCRには下に示すプライマーを用いた。
FF2:5'-TTGATGGACTCGGACGAGACCGGGTTC-3'(配列番号:7)
FF3:5'-TTCGGACTGGTAAACATTGTATCCGTC-3'(配列番号:8)
PCRの反応液はcDNA溶液1 μl、FF2 プライマー0.5 μl(10 μM)、FR3プライマー0.5 μl(10 μM)、2.5・添付の10 x反応液、2.5μl dNTP(10μM)、0.5μl Klen Taq(クローンテック)、16.5μl蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液をThermalCycler9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃・2分の変性の後、98℃・10秒、65℃・20秒、72℃・20秒のサイクルを35回繰り返した。PCR産物の5μlを用いて電気泳動を行い約600bpのPCR産物の増幅を比較し図5に示す結果を得た。図5に示すようにこの遺伝子は肝臓、胎児肝臓、膵臓、骨格筋などで高い発現が認められた。このことから配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する本発明のタンパク質またはその塩はこれらの臓器で重要な役割を果たしていることが示唆された。
【0104】実施例3 ラット肝臓cDNA画分からのPCR法による新規FGFファミリーcDNAの取得クローンテック社より購入したラット肝臓Marathon ready cDNA 4μlを鋳型として、以下の2種類の合成DNAを用いて、PCRによる増幅を行った。
rFF:5'-TTCTCACAGAGCGCGGCATTGATGGAC-3'(配列番号:9)
rFR:5'-TAGAATCGGGAAGATTCAAGATGCATA-3'(配列番号:10)
PCRの反応液はcDNA溶液4μl、0.5μl rFF(10 μM)、0.5μl rFR(10 μM)、2.5μl添付の10 x反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl Klen Taq(クローンテック社)、14.5μl蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液をThermalCycler9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃・2分の変性の後、98℃・10秒、65℃・20秒、72℃・30秒のサイクルを35回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約600bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQuiagen PCR purification Kitを用いて精製し、直接配列決定を行ったところ図6で示す配列が得られた。図6のDNA配列から予測されるアミノ酸配列は図7に示すものであった。その配列の中には109番目Glyから133番目Tyrまで(下線部)のFGFファミリーでよく保存されている配列(Gly-x-Leu-x-[Ser orThr or Ala or Gly or Pro]-x(6,7)-[Asp or Glu]-Cys-x-[Phe or Met]-x-Glu-x(6)-Tyr)に類似の配列が存在した。また最初のMetから29番目のAlaまでは分泌シグナルと予想された。実施例1で得られた配列の相同性を調べたところ、その相同性はアミノ酸レベルで77%であった。ヒト型とラット型のアミノ酸配列の比較を図8に示す。また、得られたDNAを調製しTAクローニングキット(インビトロゲン社)を用いてベクターに導入し、大腸菌JM109を形質転換して形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichiacoli) JM109/pTArPDF2を得た。
【0105】実施例4 新規FGFファミリー遺伝子のラット臓器でのmRNAの分布Wistarラット(日本SLC社)より調製した55種の臓器由来のpoly(A)+RNAを用いてSequence Detection System model 7700(PEバイオシステムズ社)により発現分布を調べた。cDNAの合成は各160ngのpoly(A)+RNA(Clontech社)を鋳型として、AMV逆転写酵素(宝酒造社)とランダムプライマーおよび添付のバッファーを用いて42℃にて30分にて行って、cDNAを得た。その反応産物をエタノール沈殿にて精製した後、40μlのTEに溶解した。発現定量には下に示すプライマーおよびプローブを用いた。
mrFGLF:5'-TCTCTATGGATCGCCTCACTTTG-3'(配列番号:13)
rFGLR:5'-CACATTGTATCCGTCCTTAAGCAG-3'(配列番号:14)
rFGFL: 5'-(FAM)TCCTGAGGCCTGCAGTTTCAGAGAGCT(TAMRA)-3'反応液はcDNA溶液0.5μl、100μM のmrFGLFプライマー 0.05μl、100μMのrFGLRプライマー 0.05 μl、5μMのプローブrFGFL 0.5μl、TaqMan universal master mix(PEバイオシステムズ) 12.5 μlに蒸留水を加えて合計25 μlにした。反応条件は50℃・2分、95℃・10分の後、95℃・15秒、60℃・1分のサイクルを40回繰り返した。図9に示すようにこの遺伝子は、精巣で最も高い発現が認められたが、ヒト型と同様に肝臓、膵臓で高い発現が検出された。また白色脂肪組織でも比較的高い発現が検出された。このことから配列番号:11で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩はこれらの臓器で重要な役割を果たしていることが示唆された。
【0106】
【発明の効果】本発明のタンパク質およびそれをコードするDNAは、例えば創傷、火傷、血栓症、動脈硬化症、肝臓病、膵臓病、糖尿病などの予防・治療剤などの医薬として有用である。加えて、本発明のタンパク質および本発明のDNAは、肥満症などの予防・治療薬などの医薬として有用である。また、本発明のタンパク質およびそれをコードするDNAは、本発明のタンパク質の活性を促進もしくは阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。さらに、本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質の検出、定量、中和等に使用することができる。
【0107】
【配列表】
[Sequence Listing]<110> Takeda Chemical Industries, Ltd.<120> Novel polypeptide and its DNA<130> B00241<150> JP 2000-213385<151> 2000-07-10<150> JP 2000-240398<151> 2000-08-03<160> 14<210> 1<211> 209<212> PRT<213> Human<400> 1Met Asp Ser Asp Glu Thr Gly Phe Glu His Ser Gly Leu Trp Val Ser 5 10 15 Val Leu Ala Gly Leu Leu Leu Gly Ala Cys Gln Ala His Pro Ile Pro 20 25 30 Asp Ser Ser Pro Leu Leu Gln Phe Gly Gly Gln Val Arg Gln Arg Tyr 35 40 45 Leu Tyr Thr Asp Asp Ala Gln Gln Thr Glu Ala His Leu Glu Ile Arg 50 55 60 Glu Asp Gly Thr Val Gly Gly Ala Ala Asp Gln Ser Pro Glu Ser Leu 65 70 75 80Leu Gln Leu Lys Ala Leu Lys Pro Gly Val Ile Gln Ile Leu Gly Val 85 90 95 Lys Thr Ser Arg Phe Leu Cys Gln Arg Pro Asp Gly Ala Leu Tyr Gly 100 105 110 Ser Leu His Phe Asp Pro Glu Ala Cys Ser Phe Arg Glu Leu Leu Leu 115 120 125 Glu Asp Gly Tyr Asn Val Tyr Gln Ser Glu Ala His Gly Leu Pro Leu 130 135 140 His Leu Pro Gly Asn Lys Ser Pro His Arg Asp Pro Ala Pro Arg Gly145 150 155 160Pro Ala Arg Phe Leu Pro Leu Pro Gly Leu Pro Pro Ala Leu Pro Glu 165 170 175 Pro Pro Gly Ile Leu Ala Pro Gln Pro Pro Asp Val Gly Ser Ser Asp 180 185 190 Pro Leu Ser Met Val Gly Pro Ser Gln Gly Arg Ser Pro Ser Tyr Ala 195 200 205 Ser209<210> 2<211> 627<212> DNA<213> Human<400> 2ATGGACTCGG ACGAGACCGG GTTCGAGCAC TCAGGACTGT GGGTTTCTGT GCTGGCTGGT 60CTTCTGCTGG GAGCCTGCCA GGCACACCCC ATCCCTGACT CCAGTCCTCT CCTGCAATTC 120GGGGGCCAAG TCCGGCAGCG GTACCTCTAC ACAGATGATG CCCAGCAGAC AGAAGCCCAC 180CTGGAGATCA GGGAGGATGG GACGGTGGGG GGCGCTGCTG ACCAGAGCCC CGAAAGTCTC 240CTGCAGCTGA AAGCCTTGAA GCCGGGAGTT ATTCAAATCT TGGGAGTCAA GACATCCAGG 300TTCCTGTGCC AGCGGCCAGA TGGGGCCCTG TATGGATCGC TCCACTTTGA CCCTGAGGCC 360TGCAGCTTCC GGGAGCTGCT TCTTGAGGAC GGATACAATG TTTACCAGTC CGAAGCCCAC 420GGCCTCCCGC TGCACCTGCC AGGGAACAAG TCCCCACACC GGGACCCTGC ACCCCGAGGA 480CCAGCTCGCT TCCTGCCACT ACCAGGCCTG CCCCCCGCAC TCCCGGAGCC ACCCGGAATC 540CTGGCCCCCC AGCCCCCCGA TGTGGGCTCC TCGGACCCTC TGAGCATGGT GGGACCTTCC 600CAGGGCCGAA GCCCCAGCTA CGCTTCC 627<210> 3<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 3GAGATCACCT GAGGACCCGA GCCATTG 27<210> 4<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 4ATGGACTCGG ACGAGACCGG GTTCGAG 27<210> 5<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 5AGATGTCATA GTAAACAGCC TCTGGCT 27<210> 6<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 6TCAGGAAGCG TAGCTGGGGC TTCGGCC 27<210> 7<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 7TTGATGGACT CGGACGAGAC CGGGTTC 27<210> 8<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 8TTCGGACTGG TAAACATTGT ATCCGTC 27<210> 9<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 9TTCTCACAGA GCGCGGCATT GATGGAC 27<210> 10<211> 27<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 10TAGAATCGGG AAGATTCAAG ATGCATA 27<210> 11<211> 208<212> PRT<213> Rat<400> 11Met Asp Trp Met Lys Ser Arg Val Gly Ala Pro Gly Leu Trp Val Cys1 5 10 15 Leu Leu Leu Pro Val Phe Leu Leu Gly Val Cys Glu Ala Tyr Pro Ile 20 25 30 Ser Asp Ser Ser Pro Leu Leu Gln Phe Gly Gly Gln Val Arg Gln Arg 35 40 45 Tyr Leu Tyr Thr Asp Asp Asp Gln Asp Thr Glu Ala His Leu Glu Ile 50 55 60 Arg Glu Asp Gly Thr Val Val Gly Thr Ala His Arg Ser Pro Glu Ser65 70 75 80Leu Leu Glu Leu Lys Ala Leu Lys Pro Gly Val Ile Gln Ile Leu Gly 85 90 95 Val Lys Ala Ser Arg Phe Leu Cys Gln Gln Pro Asp Gly Thr Leu Tyr 100 105 110 Gly Ser Pro His Phe Asp Pro Glu Ala Cys Ser Phe Arg Glu Leu Leu 115 120 125 Leu Lys Asp Gly Tyr Asn Val Tyr Gln Ser Glu Ala His Gly Leu Pro 130 135 140 Leu Arg Leu Pro Gln Lys Asp Ser Gln Asp Pro Ala Thr Arg Gly Pro145 150 155 160Val Arg Phe Leu Pro Met Pro Gly Leu Pro His Glu Pro Gln Glu Gln 165 170 175 Pro Gly Val Leu Pro Pro Glu Pro Pro Asp Val Gly Ser Ser Asp Pro 180 185 190 Leu Ser Met Val Glu Pro Leu Gln Gly Arg Ser Pro Ser Tyr Ala Ser 195 200 205 208<210> 12<211> 624<212> DNA<213> Rat<400> 12ATGGACTGGA TGAAATCTAG AGTTGGGGCC CCGGGACTGT GGGTCTGTCT CCTGCTGCCT 60GTCTTCCTGC TGGGGGTGTG CGAGGCATAC CCCATCTCTG ACTCCAGCCC CCTCCTCCAG 120TTTGGGGGTC AAGTCCGACA GAGGTATCTC TACACAGATG ACGACCAGGA CACCGAAGCC 180CACCTGGAGA TCAGGGAGGA CGGAACAGTG GTGGGCACAG CACACCGCAG TCCAGAAAGT 240CTCCTGGAGC TCAAAGCCTT GAAGCCAGGG GTCATTCAAA TCCTGGGTGT CAAAGCCTCT 300AGGTTTCTTT GCCAACAACC AGATGGAACT CTCTATGGAT CGCCTCACTT TGATCCTGAG 360GCCTGCAGTT TCAGAGAGCT GCTGCTTAAG GACGGATACA ATGTGTACCA GTCTGAGGCC 420CATGGCCTGC CCCTGCGTCT GCCCCAGAAG GACTCCCAGG ATCCAGCAAC CCGGGGACCT 480GTGCGCTTCC TGCCCATGCC AGGCCTGCCC CACGAGCCCC AAGAGCAACC AGGAGTCCTT 540CCCCCAGAGC CCCCAGATGT GGGTTCCTCC GACCCCCTGA GCATGGTAGA GCCTTTGCAA 600GGCCGAAGCC CCAGCTATGC ATCT 624<210> 13<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 13TCTCTATGGA TCGCCTCACT TTG 23<210> 14<211> 24<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> Primer<400> 14CACATTGTAT CCGTCCTTAA GCAG 24
【0108】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた本発明のFGF様タンパク質をコードするcDNAの塩基配列を示す。
【図2】実施例1で得られた本発明のヒト型FGF様タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3】実施例1で得られた本発明のヒト型FGF様タンパク質と既知FGFとの系統図を示す。
【図4】実施例1で得られた本発明のヒト型FGF様タンパク質(newFGF.PRO)、ヒト型FGF19(Fgf19.pro)、およびマウス型FGF15(mFG15.PRO)のアミノ酸配列の比較を示す。
【図5】実施例2で行われた本発明の新規FGF様タンパク質のヒト臓器でのmRNAの発現部分の結果を示す。図中、レーン1は脳(Brain)、レーン2は小脳(Cerebellum)、レーン3は海馬(Hippocampus)、レーン4は視床下部(Hypothalamus)、レーン5は下垂体(Pituitary)、レーン6は脊髄(Spinal cord)、レーン7は甲状腺(Thyroid gland)、レーン8は胸腺(Thymus)、レーン9は気管(Trachea)、レーン10は唾液腺(Salivary gland)、レーン11は心臓(Heart)、レーン12は肺(Lung)、レーン13は肝臓(Liver)、レーン14は脾臓(Spleen)、レーン15は膵臓(Pancreas)、レーン16は腎臓(Kidney)、レーン17は副腎(Adrenal gland)、レーン18は胃(Stomach)、レーン19は小腸(Small intestine)、レーン20は骨格筋(Skeletal muscle)、レーン21は前立腺(Prostate)、レーン22は精巣(Testis)、レーン23は子宮(Uterus)、レーン24は胎盤(Placenta)、レーン25は乳腺(Mammary gland)、レーン26は骨髄(Bone marrow)、レーン27はリンパ節(Lymph node)、レーン28は胎児脳(Fetal brain)、レーン29は胎児肝臓(Fetal liver)、レーン30は胎児腎臓(Fetal kidney)での発現を示す。
【図6】実施例3で得られた本発明のラット型FGF様タンパク質をコードするcDNAの塩基配列を示す。
【図7】実施例3で得られた本発明のラット型FGF様タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図8】実施例1で得られた本発明のヒト型FGF様タンパク質のアミノ酸配列と実施例3で得られた本発明のラット型FGF様タンパク質のアミノ酸配列との比較を示す。図中、Human.PROは実施例1で得られた本発明のヒト型FGF様タンパク質のアミノ酸配列を示し、Rat.PROは実施例3で得られた本発明のラット型FGF様タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図9】実施例4で行われた本発明の新規FGF様タンパク質のラット臓器でのmRNAの発現部分の結果を示す。図の横軸中、1は全脳(Whole)、2は大脳皮質(Cerebral)、3は線状条体(Striatum)、4は海馬(Hippocam)、5は視床(Thalamus)、6は視床下部(Hypothala)、7は中脳(Midbrain)、8は小脳(Cerebellum)、9は延髄(Medulla)、10は眼(Eye)、11は下垂体(Pituitary)、12は脊髄(Spinal)、13は甲状腺(Thyroid)、14は気管(Trachea)、15は胸腺(Thymus)、16は顎下腺(Submandi)、17は心臓(Heart)、18は肺(Lung)、19は肝臓(Liver)、20は脾臓(Spleen)、21は膵臓(Pancreas)、22はリンパ節(Lymph)、23は腎臓(Kidney)、24は副腎(Adrenal)、25は膀胱(Urinary)、26は胃(Stomach)、27は十二指腸(Duodenum)、28は空腸(Jejunum)、29は回腸(Ileum)、30は盲腸(Caecum)、31は結腸(Colon)、32は直腸(Rectum)、33は骨格筋(Skeletal)、34は前立腺(Prostate)、35は精嚢(Seminal)、36は精巣(Testis)、37は卵巣(Ovary)、38は子宮(Uterus)、39は胎盤(Placenta)、40は皮膚(Skin)、41は気管骨(Femur)、42は骨髄(Bone)、43は肋軟骨(Costal)、44は胎児(Fetus)、45は白色脂肪組織(White)、46は褐色脂肪組織(Brown)、47は乳腺(Mammary)、48は胎児全脳(NeonatesWhole)、49は胎児心臓(Neonates Heart)、50は胎児肺(Neonates Lung)、51は胎児腎臓(Neonates Kidney)、52は胎児胃(Neonates Stomach)、53は胎児腸(Neonates Intestine)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩。
【請求項2】配列番号:11で表されるアミノ酸配列のN末端から第113番目(Gly)ないし第136番目(Tyr)の部分アミノ酸配列を含有する請求項1記載のタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
【請求項3】請求項1記載のタンパク質または請求項2記載の部分ペプチドをコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA。
【請求項4】配列番号:12で表わされる塩基配列を有する請求項3記載のDNA。
【請求項5】請求項4記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項6】請求項5記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項7】請求項6記載の形質転換体を培養し、請求項1記載のタンパク質または請求項2記載の部分ペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1記載のタンパク質もしくはその塩、または請求項2記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造方法。
【請求項8】■請求項1記載のタンパク質もしくはその塩、■請求項2記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬。
【請求項9】■請求項3記載のDNA、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドをコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNAを含有してなる医薬。
【請求項10】細胞増殖、細胞の維持、組織の形成・増強・新生・分化作用を有する請求項8または9記載の医薬。
【請求項11】■請求項1記載のタンパク質もしくはその塩、■請求項2記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体。
【請求項12】■請求項1記載のタンパク質もしくはその塩、■請求項2記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とするレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法。
【請求項13】■請求項1記載のタンパク質もしくはその塩、■請求項2記載の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、■配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその塩、または■配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端から第112番目(Gly)ないし第135番目(Tyr)のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有するレセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット。
【請求項14】請求項12記載のスクリーニング方法または請求項13記載のスクリーニング用キットを用いて得られるレセプターアゴニストまたはアンタゴニスト。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−112772(P2002−112772A)
【公開日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−271516(P2000−271516)
【出願日】平成12年9月4日(2000.9.4)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】