説明

新規マクロライド及びその使用

本発明は、式(I)で表されるマクロライド化合物、前記化合物の医薬としての使用、特に、炎症性疾患及びアレルギー性疾患を治療又は予防するための使用、前記化合物を含有する医薬組成物、並びにその調製方法に関する。本発明は、特に、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害を主に通じて媒介される抗炎症活性を有し、それによって慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎もしくは炎症性腸疾患等の炎症性疾患及びアレルギー性疾患、又は癌等の増殖性疾患の治療及び/又は予防に対して有用なものになるマクロライド化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規マクロライド化合物、特に炎症性疾患及びアレルギー性疾患の治療又は予防のための医薬としての前記化合物の使用、前記化合物を含有する医薬組成物、及びそれを調製するための方法に関する。本発明は、特に、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害を主に通じて媒介される抗炎症活性を有し、それによって慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎もしくは炎症性腸疾患等の炎症性疾患及びアレルギー性疾患、又は癌等の増殖性疾患の治療及び/又は予防に対して有用なものになるマクロライド化合物に関する。
【0002】
環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、細胞における重要な二次伝達物質である。サイクリックAMPレベルの上昇は、リンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、及び肺上皮細胞を含む様々な種類の炎症性細胞及び免疫細胞における細胞応答を抑制することが知られている。cAMPの細胞内濃度は、アデニリルシクラーゼ及び環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)によって調節される。PDEは、環状ヌクレオチドであるcAMP及びcGMPを、AMP及びGMPに加水分解することによって不活性化する酵素のファミリーである。cAMP特異的酵素であるPDE4は、炎症促進性細胞における主な酵素である。PDE4は、炎症過程に関与していることが示されている(例えば、Lipworth B. J., Lancet (2005) 365, p. 167又はGiembycz M. A., Curr. Opin. Pharmacol. (2005), 5, p. 238を参照されたい)。したがって、PDE4の阻害剤は、喘息、慢性気管支炎、気腫、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、乾癬、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、クローン病、成人型呼吸窮迫症候群及び多発性硬化症等の炎症性疾患及びアレルギー性疾患の治療及び/又は予防に有用である。また、PDE4阻害剤は、ヒトの癌等の増殖性疾患の治療にも有用である(例えば、Cancer Research, 2007, 67, p. 5248を参照されたい)。
【0003】
多数のPDE4阻害剤が文献中に開示されている。(例えばJ. O. Odingo, Expert. Opin. Ther. Patents, 2005, 15(7), 773; M. Hendrix, C. Kallus, Methods and Principles in Medicinal Chemistry (2004), Vol. 22 (Chemogenomics in Drug Discovery), 243-288 (Wiley-VCH)を参照されたい)。公知のPDE4阻害剤の多くは、嘔吐及び頭痛等の用量制限副作用を示す。
【0004】
置換11,12−環式カルバマート部分構造を有するエリスロマイシン誘導体が、多数の刊行物(例えば、Antimicrob. Agents Chemother. 1989, 33, 78; Bioorg. Med. Chem. Lett., 1999, 9, 3075)に記載されている。これらのマクロライド誘導体の多くは、大環状ラクトンの3位に結合している置換もしくは非置換のクラジノース糖部分を有するか、又は3−ヒドロキシ基がケト基に酸化されている。
【0005】
エリスロマイシン骨格の3位にヒドロキシル基を有する化合物は、様々なエリスロマイシン誘導体の合成において中間体として見出されており、例えば、WO2004/013153にも開示されている。3−アシル誘導体の形成は、例えば、J. Med. Chem. 2003, 46, 2706に記載されている。
【0006】
ホスホジエステラーゼ4の阻害剤であるマクロライド誘導体は、WO2008/017696に開示されている。
【0007】
上に引用された参照文献に記載されている分子の大部分は、抗感染活性を有する。しかし、病原性細菌によって引き起こされるのではない疾患の長期治療にエリスロマイシン誘導体を用いることが予測される場合、抗生物質耐性細菌の発生を回避するために抗感染活性を有しない化合物を用いることが望ましい。デソサミン部分の修飾によって抗菌活性をなくすことができると報告されている。以下の刊行物:WO2007/129646、WO2004/013153、及びBioorg. Med. Chem. 2007, 15, 3266によって例証されるように、エリスロマイシン誘導体のデソサミン糖部分の様々な修飾について文献中に記載されている。
【0008】
WO2006/087644、WO2007/054904、WO2008/106226、及びWO2008/072034に、置換11,12−環式カルバマート部分構造及び修飾デソサミン糖部分を有するマクロライド誘導体が開示されている。また、修飾デソサミン部分及び場合により11,12−環式カルバマート部分構造を有する様々な14−、15−、及び16−員のマクロライドがUS2008/045585A1に記載されている。しかし、これら化合物がホスホジエステラーゼ4の阻害剤であるとは記載されていない。
【0009】
驚くべきことに、特定の側鎖で置換された11,12−環式カルバマート部分構造を有する特定のマクロライド化合物が、有意な抗菌活性を有さずホスホジエステラーゼを阻害すること、特にPDE4を選択的に阻害することが見出され、これは、この種の分子についてこれまで報告されていない新規に見出された活性である。したがって、これらマクロライドは、例えば癌等の増殖性疾患に加えて、炎症性疾患及びアレルギー性疾患の治療及び/又は予防に有用である。本明細書に記載される分子は、現在公知であるPDE4阻害剤とは構造的に異なるので、前述の副作用を克服する可能性を有している。
【0010】
したがって、本発明は、式I:
【化1】


[式中、
R1は、残基−X−Qであり;
Xは、結合であるか、又は水素原子並びにC、N、O及びSから選択される1〜7個の原子からなる直鎖基であり、前記原子のうちの2個まではNであってよく、そして1個はO又はSであってよく、1個の炭素原子はCO基として存在してもよく、そして硫黄原子はSO基として存在してもよく、そして2個の隣接するC原子は−CH=CH−もしくは−C≡C−として存在してもよく、そして基Xは、非置換であるか又は置換されており;
Qは、残基−V−A1−L−A2−Wであるか、又はXが結合を表さない場合は−NR6R7であってもよく;
Vは、場合により置換される二価の芳香族基又は複素環基であり;
Wは、場合により置換されるアリール又はヘテロシクリルであり;
A1及びA2は、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基であり;
Lは、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、−O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、−NH(CO)O−であるか、あるいはA1及び/又はA2が存在する場合は存在しなくてもよく;
R2はOR2aであるか、又は
【化2】


(式中、
【化3】


は、連結結合を表す)であり;
R2aは、水素、アセチル、−(C=O)CHNR2bR2c、又は−(C=O)CHCHNR2bR2cであり;
R2b及びR2cは、互いに独立して、水素であるか、あるいは置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであって、ここで、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよいか、あるいはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよい4員〜7員の環を形成し;
R3は、水素であるか、又は
R2及びR3が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、C=O基を表し;
Zは、
【化4】


(式中、
【化5】


は、連結結合を表す)であり;
R4は、−OR4aであり;
R5は、−NR5bR5cであるか;又は、
R4が、
R5と一緒になって、基−O(CO)NR45−を表し;
R4aは、水素であるか、あるいは置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであって、1個以上の単結合が二重結合及び/又は三重結合によって置換されてもよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよく、2個までの原子がN、O又はSであってよく;
R45は、水素又はC1−C6アルキルであり;
R5b、R5cは、互いに独立して、水素であるか、置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであって、そしてそのうちの2個までの原子がN、O、又はSであってよく、1個の炭素原子がC=O又は−(C=O)ヘテロシクリルとして存在してもよいか、あるいはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよい4員〜7員の環を形成し;
R6及びR7は、独立して、水素、メチル;アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキル基から選択される場合により置換される基から選択され、そしてR6及びR7のうちの1個は、基−L−A2−Wであってもよく;
ここで、アルキル基は、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ又はC−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換アルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、及びオキソから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく、そして
但し、R5はジメチルアミノ基ではない]
で表されるマクロライド化合物又は式(I)で表される化合物の薬学的に許容しうる塩、N−オキシド、もしくはインビボで分解可能なエステルに関する。
【0011】
更に、用語「マクロライド化合物」とは、本発明において、式(I)で表される化合物の薬学的に許容しうる塩類、特にこのような酸付加塩類、及びN−オキシド、ならびにインビボで分解可能なエステルを含むと理解される。
【0012】
本発明の化合物は、炎症過程に関与していることが示されているホスホジエステラーゼ(PDE)、特にPDE4、特にヒトのホスホジエステラーゼ及びPDE4(例えば、Lipworth B. J., Lancet (2005) 365, p. 167 or Giembycz M. A., Curr. Opin. Pharmacol. (2005), 5, p. 238を参照されたい)に対して実質的な阻害活性を示す。したがって、本発明の更なる局面は、ホスホジエステラーゼ、特にホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害によって寛解又は軽減され得る、例えば哺乳類等の動物から選択される被験体、特にヒトにおける疾患及び疾病を治療するための本発明に係る化合物の使用である。この活性に基づいて、本化合物は、炎症性疾患の予防及び/又は治療に加えて、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防、ならびにこのような被験体の体細胞の無制御な細胞の成長、増殖、及び/又は生存に関連する疾患、例えば癌の予防及び/又は治療に特に有用である。ヒトに使用することが好ましい。
【0013】
このような疾患の特に重要な例は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、乾癬又は炎症性腸疾患、及び前記癌疾患である。
【0014】
本発明の化合物の具体的な利点は、任意の有意な抗菌活性を有しておらず、そのため、前記使用中に抗生物質耐性細菌が発生するリスクをもたらすことなく、上記のような、炎症性疾患の予防及び/又は治療に加えて、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防、ならびにこのような被験体の体細胞の無制御な細胞の成長、増殖、及び/又は生存に関連する疾患、例えば癌の予防及び/又は治療に使用できるという点である。
【0015】
本発明の目的のために、「芳香族基」及び「アリール」という用語は、1個以上の好ましくは6員核及び6〜14個の炭素原子を有する芳香族基を指す。例としては、特にフェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリルである。これら基は、例えば、以下に定義されるようなアルキル;メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はn−ブトキシ等のC−Cアルコキシ等の低級アルコキシ;シクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ等のC−Cシクロアルキルオキシ又はC−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ;以下に定義されるようなハロゲン;ジフルオロメチル又はトリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基;ジフルオロメトキシ等のハロゲン置換アルコキシ基;シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基から選択される1、2、3、又は4個の置換基で更に置換されてもよい。アリール基に1個超の置換基が結合している場合、これらの置換基は同一であっても互いに異なっていてもよい。また、例えば、特定の基の様々な可能な位置異性体(構造異性体)も本発明の範囲に包含され、例えば、「ジメトキシフェニル」は、両方のメトキシ置換基が2,3−位、2,4−位、2,5−位、2,6−位、3,4−位、3,5−位、及び3,6−位においてフェニル基に結合できることを意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「複素環基」又は「ヘテロシクリル」は、硫黄、酸素、及び好ましくは窒素からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有している、不飽和の、部分的に不飽和の、又は飽和の、非置換又は置換の5〜10員(単環式又は二環式の)複素環系を指す。例示的な複素環式置換基は、例えば、以下の基:ピペリジニル、モルホリニル、2−、3−又は4−ピリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、1H−ピラゾール−1−イル、1H−イミダゾール−1−イル、1H−イミダゾール−2−イル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラゾリル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、例えば、1H−[1,2,4]−トリアゾール−1−イル、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル、チエニル、フリル(2−フラニル又は3−フラニル)、1H−アゼピニル、テトラヒドロチオフェニル、3H−1,2,3−オキサチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジチオールイル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、4H−1,2,4−オキサジアジニル、1,2,5−オキサチアジニル、1,2,3,5−オキサチアジアジニル、1,3,4−チアジアゼピニル、1,2,5,6−オキサトリアゼピニル、オキサゾリジニル、テトラヒドロチエニル等、あるいは、縮合複素環系、例えばキノリニル等、例えばキノリン−8−イル、キノリン−5−イル、キノリン−2−イル、キノリン−6−イル、キノリン−3−イル、イソキノリニル(6−イソキノリニル)、キナゾリニル、1H−ベンゾトリアゾリル、1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、5H−イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−1−イル、3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリニル、チエノ[2,3−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル(例えば、2−ベンゾチアゾリル)、1H−ベンゾイミダゾリル、1H−インドリル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、プリニル、例えば9H−プリン−9−イル、6−アミノ−9H−プリン−9−イル、2,6−ジアミノ−9H−プリン−9−イル、1H−プリン−6−イル、1H−2,3−ジヒドロインドール−1−イル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、2,3−ベンゾオキサゾリニル、1,2−ジヒドロ−オキサゾロ[5,4−c]ピリジニル、6−キノキサリニル、2−ベンゾ[b]チエン−3−イル、3,4−ジヒドロ−1H−2−オキソ−キノリン−6−イルを含むが、これらに限定されない。
【0017】
ヘテロシクリル基は、1個以上の置換基によって更に置換されてもよい。このような置換基は、例えば、以下に定義されるようなアルキル基、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はn−ブトキシ等のC−Cアルコキシ等の低級アルコキシ;シクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ等のC−Cシクロアルキルオキシ又はC−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ;以下に定義されるハロゲン;トリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基;ジフルオロメチルオキシ等のハロゲン置換アルコキシ基;シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、オキソ基を含む。ヘテロシクリル基に1個超の置換基が結合している場合、これら置換基は同一であっても互いに異なっていてもよい。様々な位置異性体も本発明の範囲内に含まれ、例えば、「ジメチルピリジル」は、全ての化学的に可能な位置においてピリジルに両方のメチル置換基が結合し得ることを意味する。例えば、両方のメチル置換基は、3,4−位、4,5−位、5,6−位、3,5−位、3,6−位、及び4,6−位において2−ピリジルに結合し得る。両方のメチル置換基は、2,4−位、2,5−位、2,6−位、4,5−位、4,6−位、及び5,6−位において3−ピリジルに結合し得る。両方のメチル置換基は、2,3−位、2,5−位、2,6−位、及び3,5−位において4−ピリジルに結合し得る。
【0018】
ヘテロシクリル基に特に好ましい置換基は、アルキル、アルコキシ、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであり、ここで、アルキル及びアルコキシは、上記に定義された通りである。
【0019】
好ましい置換複素環の例は、1H−ピリミジン−2,4−ジオン、1H,3H−ピリミジン−2,4−ジオン−5−メチル、1H−ピリミジン−4−アミノ−2−オン、6−アミノ−9H−プリン、6−ジメチルアミノ−9H−プリン、2、6−ジアミノ−9H−プリン、6−アミノ−8−[(3−ピリジニルメチル)アミノ]−9H−プリン、4−アミノ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、4−メトキシ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、1−エチル−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、4−フェニル−1H−ピラゾール、3−(ピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール、3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル、3−(ピリジン−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル、3−(ピリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−イル、3−(ピリジン−3−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール、3−(ピリジン−4−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール、及び2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン、3,5−ジクロロ−ピリジンである。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する分岐鎖又は直鎖の飽和炭化水素基を指す。このような基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等である。このようなアルキル基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はn−ブトキシ等のC−Cアルコキシ等の低級アルコキシ;シクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ等のC−Cシクロアルキルオキシ又はC−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ;以下に定義されるハロゲン;ジフルオロメチル又はトリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基;シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、又はオキソから選択される1個以上の置換基で更に置換されてもよい。1個超の置換基が存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0021】
脂肪族基という用語は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する分岐鎖又は好ましくは直鎖の炭化水素基を指し、これは、飽和していてもよく、不飽和であってもよい。例は、アルキル、ビニル、n−プロペニル、n−プロピニル、ブテニル基、ブタジエニル、ペンテニル基等について言及されたものを含む。
【0022】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくはフッ素及び塩素を指す。
【0023】
「ヘテロシクリルアルキル」及び「アラルキル」等の組合せにおいて、その一部である「ヘテロシクリル」、「アル(ar)」、すなわちアリール、及び「アルキル」は、上記意味を有する。
【0024】
−Cアルキレン基という用語は、例えば、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン又はn−ブチレン等を指す。
【0025】
式I中、R1は、式−X−Qで表される残基である。
【0026】
Xは、結合である;すなわち「存在しない」か、あるいは、水素原子、ならびにC、N、O、及び/又はSから選択される7個までの原子でからなる直鎖基であり、前記原子のうちの2個までの原子がNであってよく、1個の原子がO又はSであってよく、1個の炭素原子がCO基として存在してもよく、そして硫黄原子がSO基として存在してもよい。2個の隣接するC原子は、−CH=CH−又は−C≡C−として存在してもよい。基Xは非置換であってもよく、置換されていてもよい。既に示されているように、7個までの原子を有するスペーサー基Xは、C原子を飽和させてメチレン基を形成するか、又はN原子を飽和させてアミノ基を形成するために更なる水素原子を有していてもよい。好ましくは、このスペーサは、C、N、O及び/又はSから選択される2〜5個の原子からなる。
【0027】
好ましい基Xは、炭素原子を介して環式カルバマートの窒素原子に結合している、(CH、(CHOCH、(CHNCH(CH、(CHCOO、(CHCONH;O(CH、又はHN(CH(式中、n及びpは2、3又は4であり、そして、mは0又は好ましくは1、2、もしくは3である)及び前記基の窒素原子を介して環式カルバマートの窒素原子に結合しているNH(CH(式中、nは、上に定義された通りであり、より好ましくはnは、2又は3である)である。
【0028】
特に好ましい基Xは、n−ブチレンであり、そして、より好ましくは、1,2−エチレン、n−プロピレン又はイソプロピレン、及びO(CH又はHN(CH(式中、pは3又は4、好ましくは3である)である。
【0029】
式I中、Qは、式−V−A1−L−A2−Wで表される残基である。あるいは、Xが結合を表さない場合、式I中のQは、−NR6R7であってもよい。
【0030】
Vは、場合により置換される二価の芳香族基又は複素環基、例えば、具体的に上に言及されたもののうちの1つである。
【0031】
式Iで表される化合物の別の好ましい基では、Vは以下の式:
【化6】


[式中、
【化7】


は、フェニレン環であるか、あるいは、1個、好ましくは2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−1)個、好ましくは〜(x−2)個、特に4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の二価の脂肪族複素環又は芳香族複素環であり、R12及びR13は、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C−Cアルキル基、ハロゲン置換C−Cアルコキシ基、シアノ、ニトロ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、オキソ基からなる群より選択されるか;あるいは、アリール又はヘテロシクリルであって、これらは、非置換であるか、又はアリール若しくはヘテロシクリル以外の上記に指定された置換基のうちの1個以上で置換されていてもよいか、あるいは、置換基R12及びR13の両方が、環:
【化8】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員又は6員の芳香環、又は2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−2)個、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の脂肪族複素環又は芳香族複素環を形成してもよい]によって表される二価の基であり、そして、Vは、R12及びR13について定義された種類の1〜4個の置換基を一度に有することができ、そして基Vの一方又は両方の環のいずれかに自由原子価が存在してもよい。
【0032】
Vの特に好ましい意味は、以下:
【化9】


を含む。
【0033】
式I中のWは、アリール、又は好ましくはヘテロシクリルのいずれかであってよく、両方、上に説明された通りである。
【0034】
式Iの好ましい態様では、Wは、以下の式:
【化10】


[式中、
【化11】


は、フェニル環であるか、あるいは、1個、好ましくは2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−1)個、好ましくは〜(x−2)個、特に4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の一価の脂肪族複素環又は芳香族複素環であり、R14及びR15は、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C−Cアルキル基、ハロゲン置換C−Cアルコキシ基、シアノ、ニトロ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、及びオキソ基からなる群より選択されるか;あるいは、置換基R14及びR15の両方が、環:
【化12】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員又は6員の芳香環、又は2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−2)個、好ましくは4個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の脂肪族複素環又は芳香族複素環を形成してもよい]で表される基を表し、そして、Wは、R14及びR15について定義された種類の1〜4個の置換基を一度に有することができ、そして基Wのいずれかの環に自由原子価が存在してもよい。
【0035】
Wの特に好ましい例は、以下:
【化13】


(式中、R16は、水素又はC−Cアルキル、特にメチルである。)
の基である。
【0036】
基−V−A1−L−A2−W中、基A1及びA2は、一般に、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基である。Lは、一般に、このような基中、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、−O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、及び−NH(CO)O−から選択されるが、A1及び/又はA2が存在する場合は存在しなくてもよい。
【0037】
本発明に係るマクロライド化合物の好ましい例では、A1及びA2は、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基を表すかであり;そして、Lは、−NH−、−(CO)NH−及び−NH(CO)−から選択されるか;あるいは、A1及び/又はA2が存在する場合は存在しない。
【0038】
特に好ましい式(I)で表される化合物は、
A1、A2が、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基であり;
Lが、−NH−、−(CO)NH−、又は−NH(CO)−であり;
Vが、以下の式:
【化14】


で表される二価の基であり、そして、
Wが、以下の式:
【化15】


で表される基である化合物である。
【0039】
また、本発明に係る化合物、特に前段落で言及した化合物であって、Xが、−CH−CH−CH−又は−CH−CH−CH−CH−、特に−CH−CH−CH−、あるいは、好ましくは、それぞれNH基又はO原子を介して残基Qに結合している−CH−CH−CH−NH−又は−CH−CH−CH−O−である化合物が好ましい。
【0040】
本発明に係る対応するマクロライド化合物の好ましい例は、Qが以下の式:
【化16】


を有する式Iで表される化合物である。
【0041】
式I中、Xが結合を表さない場合、Qは、−NR6R7であってもよい。この場合、R6及びR7は、独立して、例えば上に説明した通り、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキルから選択されてよく、そして、R6及びR7のうちの1個は、基−L−A2−Wであってもよく;式中、L、A2及びWは、上に言及された意味のうちの1つを有する。
【0042】
本発明に係る好ましい例は、R6がアリール又はアラルキルであり、そして、以下の式:
【化17】


(式中、
【化18】


はメトキシ残基を意味する)
の1つによって表される更なる化合物である。
【0043】
本発明に係る対応するマクロライド化合物の好ましい例は、Qが基−NR6R7であり、そして、以下の式:
【0044】
【化19】


(式中、
【化20】


は、メトキシ残基を意味する)
の1つによって表される、式Iで表される化合物である。
【0045】
同様に、R5が−NR5aR5bである式Iで表される化合物も好ましい。
【0046】
本発明の化合物の更に好ましい態様は、以下:
R4aが、水素、C1−C6アルキル又はビニル、好ましくは、水素又はC1−C6アルキルである化合物、
R2が、
【化21】


(式中、
【化22】


は、連結結合を表す)である化合物、
R2aが水素である化合物、
R2及びR3が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、C=O基を表す化合物
を含む。
【0047】
本発明の化合物の具体例は、例えば、
【化23】




を含む。
【0048】
既に上に示した通り、式Iで表されるマクロライド化合物は、必要に応じて、薬学的に許容しうる酸付加塩として存在してもよく、そして使用することができる。無機酸との塩類だけでなく、有機酸との塩類も考えられる。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等が、このような塩類の例である。
【0049】
更に、式Iで表される化合物は、インビボで分解可能なエステルの形態、例えば、糖部分の2’−ヒドロキシ基でのエステルであってもよい。適切なエステルは、一般的に、酢酸エステル、ピバロイルエステル、酒石酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル等である。
【0050】
薬学的に許容しうる酸付加塩又はインビボで分解可能なエステルを含む本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患等の疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【0051】
また、本発明の化合物、及びその薬学的に許容しうる酸付加塩又はインビボで分解可能なエステルは、慢性気管支炎、気腫、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、乾癬、敗血症性ショック、成人型呼吸窮迫症候群及び多発性硬化症等の疾患の予防及び/又は治療、ならびに無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連するヒト(+動物)の疾患、例えば癌の治療に用いることもできる。
【0052】
本発明に係る化合物は、医薬として使用することができる。したがって、本発明の更なる態様は、炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは動物、例えば哺乳類、好ましくはヒトから選択される被験体に属する細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患を治療及び予防するための、式Iで表される化合物、その薬学的に許容しうる酸付加塩、N−オキシド又はインビボで分解可能なエステルを含む医薬であり、例えば腸内(経口)投与用医薬製剤の形態である。本発明に係る製品は、例えば、錠剤、フィルムコーティング錠、糖コーティング錠、硬及び軟カプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態等で経口的に、又は坐剤の形態等で直腸的に、又は例えば注射によって非経口的に、又は吸入によって経鼻的に、又は経皮的に、又は例えば局所投与によって局所的に投与することができ、好ましくは、前記化合物は、局所的に又は経口的に投与される。
【0053】
適切で、無毒で、不活性で、治療上適合する固体又は液体の担体材料、及び必要である場合、成分を通常の医薬用佐剤と合わせて剤形にする等、当業者によく知られている従来の手順を使用して、これらの化合物を含有する医薬組成物を調製することができる。
【0054】
前記化合物は、最終的に適切な経口、非経口、又は局所用の剤形の組成物に具体化されると考えられる。本発明の組成物は、任意成分として、医薬製剤の生産において通常使用される様々な佐剤のいずれかを含有することができる。したがって、例えば、望ましい経口剤形に本組成物を調剤する際に、任意成分、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム又はラクトース等の充填剤;デンプン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は架橋ポリビニルピロリドン等の崩壊剤;及びタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤を使用してもよい。しかし、本明細書において指定される任意成分は、単なる一例として挙げられるものであり、本発明は、その使用に限定されるものではないことを十分理解すべきである。本発明の実施において、当技術分野において周知である他のこのような佐剤を使用してもよい。
【0055】
無機担体材料だけでなく有機担体材料もこのような担体材料として適切である。したがって、錠剤、フィルムコーティング錠、糖コーティング錠及び硬カプセル剤について、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩類を使用してもよい。軟カプセル剤に適切な担体は、例えば、(活性物質の性質に応じて)植物油、ろう、脂肪、並びに半固体及び液体のポリオールである。液剤及びシロップ剤の調製に適切な担体物質は、例えば、水、アルコール、ポリオール、サッカロース、転化糖及びグルコースである。坐剤に適切な担体材料は、例えば、天然油又は硬化油、ろう、脂肪、及び半液体又は液体のポリオールである。
【0056】
医薬用佐剤としては、通常の保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を調整するための塩類、バッファ、コーティング剤、及び酸化防止剤が考えられる。
【0057】
式Iで表される化合物及びその薬学的に許容しうる塩類、特に酸付加塩、又はN−オキシドもしくはインビボで分解可能なエステルは、非経口投与するために用いることができ、そして、この目的のためには、水又は等張の食塩溶液等の慣習的に用いられている試薬で希釈するための凍結乾燥物もしくは乾燥粉末として注射用製剤にすることが好ましい。
【0058】
式Iで表される化合物及びその酸付加塩、N−オキシド、又はインビボで分解可能なエステルは、局所投与するために用いることができ、そして、この目的のためには、軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤として製剤化することが好ましい。
【0059】
哺乳類、ヒト及び非ヒトにおける炎症性疾患及びアレルギー性疾患の治療及び/又は予防のために、約10mg〜約2000mg、特に約50mg〜約1000mgの1日投与量が通常であり、当業者は、投与量が、年齢、前記哺乳類の状態、及び予防又は治療される疾患の種類にも依存することを認識する。1日投与量は、単回用量で投与してもよく、いくつかの用量に分けてもよい。約10mg、100mg、250mg、500mg及び1000mgの平均単回用量が考えられ得る。
【0060】
式Iで表される化合物の調製は、例えば、スキーム1〜6に従って行うことができる。
【0061】
本発明の化合物は、クラリスロマイシンから出発して調製することができる。Rp及びRpが、H、アセチル、ベンゾイルであるか、又は任意の他の適切なヒドロキシル保護基である、式II、III及びIVで表される化合物の調製は、当技術分野において周知である(スキーム1)。Rp及びRpが、例えばアセチル又はベンゾイルである式IIで表される化合物を得るためには、例えば、Baker et al., J.Org. Chem. 1988, 53, 2340-2345及びKashimura et al., J. Antibiotics, 2001, 54, 664-678に記載されている通り、適切な酸無水物又は酸塩化物との反応によって、市販されているクラリスロマイシンの2’−及び4”−ヒドロキシル基を連続して又は同時に保護してよい。次いで、式IIで表される化合物は、例えば、Baker et al., J.Org. Chem. 1988, 53, 2340-2345に記載されているのと同様の方法で、式IVの化合物に変換することができる。式IVで表される化合物は、例えば、NaH等の塩基の存在下で、DMFもしくはTHF、又はこれらの混合物等の溶媒中にて、カルボニルジイミダゾール(CDI)と反応して、式Vで表される化合物を形成する。また、−40℃〜50℃の温度で、NaHMDS等の塩基の存在下にて、THF等の溶媒中で、式IIで表される化合物をCDIで長時間処理することによって、式Vで表される化合物を調製することもできる。式VIIの化合物は、0℃〜80℃の温度で、場合により例えばDBU等の塩基の存在下で、例えばDMF、アセトニトリル、又は水とアセトニトリルとの混合物等の溶媒中にて、式Vで表される化合物を適切なアミンR1−NH2と反応させることにより調製することができる(例えば、J. Med. Chem. 1998, 41, 4080)。中間体VIは、単離してもよく、次いで0℃〜80℃の温度で、例えばNaH又はDBU等の塩基の存在下で、例えばDMF、THF、又はアセトニトリル等の溶媒中に、環化させることができる。
【0062】
【化24】

【0063】
【化25】

【0064】
R5b及びR5cが、上に定義された通りであるがメチルではない式Ia及びIbで表される化合物は、式VIIで表される化合物から調製することができる(スキーム2)。例えば、文献(J. Med. Chem., 1995, 38, 1793; J. Org. Chem. 2000, 65, 3875)に記載されている手順に従って、光下でヨウ素又はN−ヨードスクシンイミドを用いてN−脱メチル反応を実施して、式VIII又は式Xで表される化合物を得る。例えば、好ましくは室温で、メタノール等の溶媒中にて、NaCNBH等の還元剤の存在下で、適切なアルデヒドを用いて還元的アミノ化することによって、あるいは、DMF、アセトニトリル、トルエン等の溶媒中で、水素化ナトリウム又は炭酸ナトリウム等の塩基の存在下で、ハロゲン化アルキルを用いてアルキル化することによって、置換基R5b及びR5cを導入して、式IX又はXIIで表される化合物を得る。2つの基R5b及びR5cは、同時に導入しても連続して導入してもよく、好ましくは連続して導入される。また、式VIII、X及びXIで表される化合物は、アミド結合の形成について当技術分野において公知である標準的な条件下で、置換クロロホルメート、置換カルボニルクロリド、又はカルボン酸と反応することができる。次いで、任意のスキーム3〜6に従って式IX及びXIIで表される化合物を更に修飾することができ、必要に応じて脱保護した後、Ia又はIbで表される化合物を得る。
【0065】
R4がO−R4aである一般式Icで表される化合物は、一般式VIIで表される化合物から調製することができる。保護基Rp1は、下記手順か、又は例えば、T. W. Green et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載されている手順に従って除去することができる。例えば、DMF、THF、DMSO、アセトン、又はこれらの混合物等の溶媒中にて、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム等の塩基の存在下で、ハロゲン化アルキルで処理、当技術分野において公知の方法に従って、式XIIIで表される化合物の2’位のヒドロキシル基をアルキル化することができ、式XIVで表される化合物を得る(スキーム3)。また、エステル結合の形成について当技術分野において公知である標準的な条件下で、置換クロロホルメート、置換カルボニルクロリド、又はカルボン酸と式XIIIで表される化合物とを反応させることができ、式XIVで表される化合物を得る。次いで、スキーム2、4、5及び/又は6のいずれかに従って式XIVで表される化合物を更に修飾することができ、必要に応じて脱保護した後、一般式Icで表される化合物を得る。
【0066】
【化26】

【0067】
化合物XVから出発するスキーム4に要約されている通り、スキーム1〜6のいずれかに従って式Idで表される化合物を調製することができ、次いで必要に応じて脱保護してもよい(Bioorg. Med. Chem. 2007, 15, 3266)。あるいは、Bioorg. Med. Chem. 2007, 15, 3266に記載されているのと同様の方法に従って化合物VIIから出発して式Idで表される化合物を調製する。
【0068】
【化27】

【0069】
化合物XIXから出発して、式Ieで表される化合物を合成することもできる(J. Med. Chem. 1998, 41, 4080)。次いで、スキーム1〜6のいずれかに従って式XIXで表される化合物を更に修飾して、必要に応じて脱保護した後、一般式Ieで表される化合物を得る(スキーム5)。あるいは、当技術分野において周知の方法(例えばWO03/072588)に従って、式VIIで表される化合物から出発して、式Ieで表される化合物を調製することもできる。
【0070】
【化28】

【0071】
【化29】

【0072】
周知の手順(例えば、J. Med. Chem. 1998, 41, 4080)に従って、一般式VIIで表される化合物を酸で処理すると、式XXで表される化合物が得られる。ヒドロキシル基をエステル化するための周知の方法に従って、2−クロロアセチルクロリド、2−クロロ酢酸無水物、又は2−クロロ酢酸と、式XXで表される化合物とを反応させることにより、Rb=−CHClである式XXIで表される化合物を得ることができる。次いで、例えばジメチルアミン又はモルホリン等の適切な求核剤と、この化合物とを反応させて、必要に応じて脱保護させた後、式Igで表される化合物が得られる(スキーム6)。化合物XXを塩化アクロイルと反応させて、Rbが−CH=CHである化合物XXIを得た後、例えばジメチルアミン又はモルホリン等の適切な求核剤と反応させるのと同様の方法で、必要に応じて脱保護させた後、式Ihで表される化合物が得られる。無水酢酸と反応させることによって、化合物XXから式Ifで表される化合物が調製される。
【0073】
一般式Iで表される化合物を得るための中間体の脱保護は、例えば、T. W. Green et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載されている標準的な手順に従って行われる。Rp1及びRp2がアセチル及びベンゾイル等のアシル保護基である場合、0°〜60°でメタノール中にて攪拌することによって、又は3〜12時間還流メタノール中にてDBUで前記化合物を処理することによって(J. Antibiotics, 2001, 54(8), 664)、又はメタノール/ジクロロメタン中にてグアニジン/グアニジニウム硝酸塩で(Tetrahedron Letters 1997, 38(9), 1627)、もしくはメタノール中にて炭酸カリウムで、もしくはメタノール中にてMeONaの混合物で、好ましくは5〜7時間還流メタノール中にてDBUで処理することによって、保護基が除去される。
【0074】
スキーム1に概説されるように、一般式Iで表される化合物の合成の過程における任意の適切な段階で、スキーム2〜6における一般項に記載されている通り、マクロラクトン環の3位(すなわち、R2−R3)、並びに糖部分の2’ 位及び3’位(すなわちR4−R5)を修飾してもよい。例えば、式VIIで表される化合物から出発して、又は式Vで表される化合物から出発して、又はクラリスロマイシンから出発して、スキーム2に概説されている通り、置換基R5b及び/又はR5cを導入することができる。このような修飾のための適切な時点は、当業者に周知である通り、適用される条件の性質に依存し、そして、T. W. Green et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載されている標準的な手順に従って、適切な保護基で特定の官能基を保護し、次いで脱保護することを必要とする場合がある。
【0075】
スキーム1〜6に記載されている個々の修飾は、一般式Iで表される化合物を得るための分子と同じ分子を用いて連続して実施することができる、すなわち、例えばスキーム5に記載されているようなマクロラクトン環の3位における修飾は、例えばスキーム2に記載されている糖部分の修飾と組み合わせてもよいことが理解される。官能基に対する干渉を避けるために、当業者は適切な順序で反応を行い、必要に応じて官能基を保護し、続いて脱保護する。
【0076】
更に、式Iで表される化合物におけるR1及び上述のような中間体のR1は、更に修飾されてもよいことが理解される。例えば、当技術分野において周知の方法に従ってエステル基を加水分解し、得られた酸をアミンとカップリングさせて、アミドを形成することができる。
【0077】
実施例
以下の実施例は、本発明を更に例証するために記載され、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものであると解釈されるものではない。
【0078】
【表1】



【0079】
一般的な注釈:分析HPLC:系Aa:カラム:Bischoff Prontosil 120-3-C18 SH 3μm、75×4.6mm;流速:1.2mL/分;検出:ELSD、UV;移動相A:水+3%アセトニトリル+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜2分、5%のBで一定;2〜5分、Bを5%から30%まで直線的に増加;5〜18分、Bを30%から55%まで直線的に増加;18〜23.5分、Bを55%から95%まで直線的に増加;23.5〜35分、95%のB。系Ba:カラム:SunFire C18、3.5μm、150×4.6mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜2分、20%のBで一定;2〜5分、Bを20%から60%まで直線的に増加;5〜20分、Bを60%から90%まで直線的に増加;20〜30分、Bを90%から95%まで直線的に増加。系Ca:カラム:SunFire C18、5μm、250×4.6mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜5分、Bを20%から60%まで直線的に増加;5〜20分、Bを60%から90%まで直線的に増加;20〜30分、Bを90%から95%まで直線的に増加。系Da:カラム:SunFire C18、5μm、250×4.6mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜2分、20%のB;2〜5分、Bを20%から42%まで直線的に増加;5〜20分、Bを42%から80%まで直線的に増加;20〜30分、Bを80%から95%まで直線的に増加。系Ea:カラム:Prontosil 120-3-C18 ace-EPS 3μm、150×4.6mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜2分、20%のBで一定;2〜5分、Bを20%から42%まで直線的に増加;5〜20分、Bを42%から80%まで直線的に増加;20〜30分、Bを80%から95%まで直線的に増加。系Fa:カラム:Prontosil 120-3-C18 SH 3μm、150×4.6mm;流速:1.0mL/分;検出:ELSD、254nm;移動相A:水+0.1%のTFA;移動相B:アセトニトリル+0.1%のTFA;勾配:0〜5分、10%のBで一定;5〜20分、Bを10%から58%まで直線的に増加;20〜30分、Bを58%から95%まで直線的に増加。
【0080】
略語:HPLC 高速液体クロマトグラフィー;DMSO ジメチルスルホキシド;DBU ジアザビシクロウンデカン;DCM ジクロロメタン;DMF ジメチルホルムアミド;THF テトラヒドロフラン、MS 質量分析;NMR 核磁気共鳴;ESI エレクトロスプレーイオン化。
【0081】
実施例1
R1が3−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル−メチル)−アミノ]プロピルであり、R2がO−クラジノシルであり、R3が水素であり、R4がヒドロキシルであり、そしてR5がメチル−(モルホリン−4−カルボニル)−アミノである式Iで表される化合物、I−1の調製
【0082】
A]化合物1−Aの調製
【化30】


1.408g(6.48mmol)の3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニルアミン(Garcia et al., JOC, 2005, 70, p 1050)を20mLのトルエンに溶解させ、1.197g(6.6mmol)の3,5−ジクロロ−4−ピリジンカルボキサルデヒド、3.6mL(25.9mmol)のトリエチルアミン、及び1.85mL(32.4mmol)の酢酸を添加する。2時間、25℃で混合物を攪拌し、次いで、1.629g(25.9mmol)のNaBHCNを添加し、そして、前記混合物を1時間25℃で撹拌する。溶媒を蒸発させ、そして、粗生成物をシリカゲル(石油エーテル/酢酸エチル15:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、淡黄色の固体として1.98g(82%)の所望の生成物を得る。
1H NMR (DMSO-d6): 8.61(s, 2H); 6.70 (d, 1H); 6.30(d, 1H); 6.15 (dd, 1H); 5.55 (t, 1H); 4.65 (m, 1H); 4.36 (d, 2H); 3.59 (s, 3H); 1.77-1.81 (m, 2H); 1.64-1.67 (m, 4H); 1.53-1.56 (m, 2H).
【0083】
B]化合物1−Bの調製
【化31】


0.38g(0.99mmol)の化合物1−Aを15mLのメタノールに溶解させ、0.26g(1.28mmol)の3−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)−プロピオンアルデヒド、0.1mLの酢酸、及び0.125g(1.98mmol)のNaBHCNを溶液に添加する。3.5時間、28℃で前記混合物を撹拌し、次いで、溶媒を蒸発させる。粗生成物をシリカゲル(石油エーテル(酢酸エチル10:1→5:1)上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、淡黄色の固体として380mg(65%)の所望の生成物を得る。
【0084】
C]化合物1−Cの調製
【化32】


0.38g(0.69mmol)の化合物1−Bを20mLのエタノールに溶解させ、1mLのヒドラジン水和物溶液(85%)を溶液に添加する。出発物質が残らなくなるまで(約1.5時間)、70℃で反応混合物を撹拌する。反応中に形成された沈殿物を濾取し、減圧下で濾液を濃縮して粗生成物を得、これをシリカゲル(DCM:MeOH 50:1→20:1)上でカラムクロマトグラフィーによって精製して黄色の油状物として0.23g(79%)の所望の生成物を得る。
1H NMR (CDCl3): 8.43 (s, 2H); 6.74 (d, 1H); 6.52 (d, 1H); 6.49 (dd, 1H); 4.67 (m, 1H); 4.41 (s, 2H); 3.77 (s, 3H); 3.13 (t, 2H); 2.63 (m, 2H); 1.52-1.86 (m, 10H).
【0085】
D]化合物1−D(Rp1及びRp2がアセチルである式Vで表される化合物)の調製
【化33】


1.0g(24.6mmol)の水素化ナトリウム(油中60%)を100mLのDMFに溶解させる。混合物を−10℃に冷却し、10g(12.3mmol)のRp1及びRp2がアセチルである式VIで表される化合物(WO2008017696、実施例1)を添加する。この混合物に、カルボニルジイミダゾール(CDI)6.06g(36.9mmol)のDMF50mL溶液を添加する。1時間、−10℃で前記混合物を撹拌し、混合物の温度を0℃に維持しながら150mLの水を添加する。固体を濾取し、冷水で濾過ケーキを洗浄し、次いで、ジエチルエーテルに溶解させた。MgSO上で前記溶液を乾燥させて、減圧下で濃縮する。
【0086】
粗生成物(9.99g)をシリカゲル(DCM:MeOH 40:1)上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体として5.56gの所望の生成物(56%)を得る。
MS (ESI): 908.3 ([MH]+)
保持時間(系Aa):14.8分。
【0087】
E]化合物1−Eの調製
【化34】


2.0g(2.2mmol)の化合物1−Dを40mLのメタノールに溶解させ、2mLの水及び0.92gの酢酸ナトリウムを添加する。混合物を10分間攪拌し、そして、1.8g(7.09mmol)のヨウ素を添加する。暗色の混合物を25〜30℃で1時間撹拌する。Naの飽和水溶液で反応混合物をクエンチする。真空内で溶媒を除去し、残留物をDCM中に取り出す。水及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得る。前記粗生成物を、第2のバッチ(0.2gの1−Dから調製された)の生成物と合わせ、そして、シリカゲル(DCM/MeOH 200:1→60:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、1.04g(48%)の淡黄色の発泡体を得る。
【0088】
F]化合物1−Fの調製
【化35】


0.46g(0.51mmol)の化合物1−Eの20mL無水THF溶液に、窒素雰囲気下で0.2mLのジイソプロピル−エチルアミンを添加する。10分間室温で混合物を撹拌し、そして、79mg(0.51mmol)のモルホリノ−4−カルボニルクロリドを添加する。16時間室温で反応混合物を撹拌し、次いで、減圧下で溶媒を除去し、残留物をDCM中に取り出す。水及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 80:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色の発泡体として370mg(56%)の所望の生成物を得る。
【0089】
G]化合物1−Gの調製
【化36】


300mg(0.3mmol)の化合物1−Fを10mLのDMFに溶解させ、そして、126mg(0.3mmol)の化合物I−C及び136mg(0.89mmol)のDBUを添加する。4日間、60℃で混合物を撹拌し、そして、溶媒を蒸発させる。残留物をDCM中に取り出し、水及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 120:1→60:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、そして分取HPLCによって精製して、淡黄色の発泡体として110mg(27%)の所望の生成物を得る。
MS (ESI): 1362.6, 1364.6 ([MH]+)
【0090】
H]化合物I−1の調製
【化37】


350mg(0.26mmol)の化合物1−Gを15mLのメタノールに溶解させ、380mg(2.5mmol)のDBUを添加する。混合物を60時間65℃で撹拌する。減圧下で溶媒を除去し、残留物を100mLのDCM中に取り出す。有機層を水で2回洗浄し、そして、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮する。粗生成物を第2のバッチ(0.11gのI−Gから調製された)の生成物と合わせ、そして、分取HPLCによって精製して(カラム:Phenomenex Gemini C18、110A、5μm、150×21.2mm;流速:12mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.05%のアンモニア;移動相B:アセトニトリル;勾配:10分でアセトニトリルを70から90%まで直線的に増加;5分間、100%のアセトニトリル)淡黄色の固体として60mgの所望の生成物を得る。
MS(ESI): 1278.5, 1280.6 [MH]+
保持時間(系Ba):19.4分。
【0091】
実施例2
R1が3−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル−メチル)−アミノ]プロピルであり、R2がOHであり、R3が水素であり、R4がヒドロキシルであり、そしてR5がメチル−(モルホリン−4−カルボニル)−アミノである式Iで表される化合物、I−2の調製
【0092】
A]化合物I−2の調製
【化38】


235mg(0.18mmol)の化合物I−1を20mLのCHCNに溶解させ、10mLの1N HCl水溶液を添加する。混合物を5時間、27℃で攪拌し、次いで、5%のNaHCO水溶液で処理して、pHを7〜8に調整する。減圧下で溶媒を除去し、残留物を50mLのDCM中に取り出す。有機層を水で2回洗浄し、そして、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 100:1→40:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって、そして、分取HPLC(カラム:XBridge Prep C18 OBD、5μm、150×19mm;流速:10mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.05%のアンモニア;移動相B:アセトニトリル;勾配:13分でアセトニトリルを70から90%まで直線的に増加;3分間、100%のアセトニトリル)によって精製して、淡黄色の固体として70mg(34%)の所望の生成物を得る。
1H NMR (CDCl3, diagnostic signals only): 0.80 (t, 3H), 1.05 (d, 3H), 1.09 (d, 3H), 1.11 (d, 3H), 1.25 (d, 3H), 1.27 (d, 3H), 1.33 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 2.50-2.61 (m, 1H), 2.62-2.72 (m, 1H), 2.78 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 2.95-3.05 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.87-3.96 (m, 1H), 4.18 (m, 1H (OH)), 4.40 (d, 1H), 4.49 (s, 2H), 4.71 (m, 1H), 4.97 (dd, 1H), 6.45-6.52 (m, 2H), 6.69-6.74 (m, 1H), 8.41 (s, 2H)
MS(ESI): 1120.5, 1122.5 [MH]+
保持時間(系Ca):18.4分間
【0093】
実施例3
R1が3−[5−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル−アミノカルボニル)−2−メトキシ−フェノキシ]プロピルであり、R2がO−クラジノシルであり、R3が水素であり、R4がヒドロキシルであり、そしてR5がメチル−(モルホリン−4−カルボニル)−アミノである式Iで表される化合物、I−3の調製
【0094】
A]化合物3−Aの調製
【化39】


200mg(1.19mmol)のイソバニリン酸を10mLのDMFに溶解させ、493mg(3.57mmol)の炭酸カリウム、及び0.35mL(3.57mmol)の1−ブロモ−3−クロロプロパンを添加する。混合物を4時間50℃に加熱する。続いて、20mLの水を添加し、20mLの酢酸エチルで水層を2回抽出する。有機層を合わせ、そして、溶媒を減圧下で蒸発させる。20mLのTHF及び20mLのメタノールに残留物を溶解させ、そして、20mLの4N NaOH水溶液を添加する。室温で2時間、反応混合物を撹拌し、そして、有機溶媒を蒸発させる。水相を濃HCl水溶液でpH=7に調整し、生成物を沈殿させ、これを濾過によって単離し、そして、水で洗浄して、白色の固体として100mgの所望の生成物を得る。
1H NMR (DMSO-d6): 2.13-2.19 (m, 2H), 3.76-3.79 (m, 2H), 3.82 (s, 3H), 4.08-4.11 (m, 2H), 7.03 (d, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.56 (d, 1H), 12.7 (bs, 1H)
【0095】
B]化合物3−Bの調製
【化40】


292mg(6.99mmol)の水素化ナトリウム(鉱油中55〜60%分散液)を10mLのDMFに懸濁させ、そして、1.266g(7.77mmol)の4−アミノ−3,5−ジクロロピリジンを添加する。30℃で3時間混合物を攪拌して「溶液A」を得る。
【0096】
500mg(2.05mmol)の化合物3−A、932mg(2.45mmol)のHATU及び317mg(2.45mmol)のエチル−ジイソプロピル−アミンを10mLのDMFに溶解させ、得られた溶液を60分間30℃で撹拌する。0〜10℃で溶液A(上記を参照されたい)を滴下し、そして、15分間この温度で前記混合物を撹拌する。HCl水溶液の添加によって混合物のpHを6に調整し、そして、DMFを減圧下で蒸発させる。残留物を50mLの酢酸エチルに溶解させ、有機層を50mLの0.5N HCl水溶液で2回洗浄し、50mLの水で洗浄し、そして50mLのブラインで2回洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空内で濃縮して粗生成物を得る。粗生成物をシリカゲル(石油エーテル/酢酸エチル3:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体として360mgの所望の生成物を得る。
1H NMR (DMSO-d6): 2.16-2.20 (m, 2H), 3.78-3.81 (m, 2H), 3.84 (s, 3H), 4.12-4.15 (m, 2H), 7.12 (d, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.67 (d, 1H), 8.72 (s, 2H), 10.40 (bs, 1H)
【0097】
C]化合物3−Cの調製
【化41】


オートクレーブ内で300mg(0.77mmol)の化合物3−Bを60mLの無水THFに溶解させ、そして、14gの液体アンモニアを−70℃で添加する。混合物を1日間90℃で撹拌する。減圧下で溶媒を除去し、そして、残留物をシリカゲル(DCM/MeOH 5:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、薄茶色の固体として230mg(81%)の所望の生成物を得る。
1H NMR (CD3OD): 2.17-2.23 (m, 2H), 3.21-3.24 (m, 2H), 3.96 (s, 3H), 4.24-4.27 (m, 2H), 7.15 (d, 1H), 7.63 (d, 1H), 7.74 (dd, 1H), 8.63 (s, 2H)
MS(ESI): 370.0, 372.0 [MH]+
【0098】
D]化合物3−Dの調製
【化42】


1000mg(1.12mmol)の化合物1−Eを15mLの無水DMFに溶解させ、そして、456mg(1.23mmol)の化合物3−C及び550mg(3.61mmol)のDBUを添加する。22時間、60〜65℃で前記混合物を撹拌し、そして、溶媒を蒸発させる。残留物をDCM中に取り出し、有機層を水で2回し、そしてブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 200:1→70:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体として450mg(32%)の所望の生成物を得る。
MS(ESI): 1195.4 [MH]+
【0099】
E]化合物3−Eの調製
【化43】


1.53g(1.28mmol)の化合物3−Dを40mLのメタノールに溶解させ、そして、1.5gのDBUに添加する。48時間、60〜65℃で混合物を撹拌し、0.5gのKCOを添加し、72時間、60〜65℃で混合物を撹拌して、化合物3−Dと標的化合物との混合物を得る。溶媒を蒸発させ、残留物をDCM中に取り出し、水及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 100:1→10:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、淡黄色の発泡体として132mg(9%)の所望の生成物を得る。
MS(ESI): 1111.2, 1113.3 [MH]+
【0100】
F]化合物I−3の調製
【化44】


132mg(0.12mmol)の化合物3−Eを窒素雰囲気下で10mLの無水THFに溶解させ、そして、80mg(0.62mmol)のジイソプロピル−エチルアミン及び53mg(0.35mmol)のモルホリノ−4−カルボニルクロリドを添加する。20時間、15℃で混合物を撹拌し、次いで、減圧下で溶媒を除去し、そして、残留物をDCM中に取り出す。水で有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を、シリカゲル(DCM/MeOH 120:1→70:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、次いで、分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini C18、110A、5μm、150×21.2mm;流速:13mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%のアンモニア;移動相B:メタノール;勾配:10分でメタノールを55から75%まで直線的に増加;5分間100%メタノール)によって精製して、白色の固体として45mgの所望の生成物(15%)得る。
1H NMR (CDCl3, diagnostic signals only): 0.79 (t, 3H), 0.98-1.05 (m, 6H), 1.09 (d, 3H), 1.16 (d, 3H), 1.21 (d, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.27 (d, 3H), 1.33 (s, 3H), 1.38 (s, 3H), 2.82 (s, 3H), 2.99 (s, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 4.27-4.36 (m, 1H), 4.43 (d, 1H), 4.85 (d, 1H), 4.93 (dd, 1H), 6.97 (d, 1H), 7.67-7.78 (m, 2H), 8.54 (s, 2H), 8.84 (s, 1H)
MS(ESI): 1224.4, 1226.4 [MH]+
保持時間(系Da):20.1分。
【0101】
実施例4
R1が3−[5−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル−アミノカルボニル)−2−メトキシ−フェノキシ]プロピルであり、R2がOHであり、R3が水素であり、R4がヒドロキシルであり、そしてR5がメチル−(モルホリン−4−カルボニル)−アミノである式Iで表される化合物、I−4の調製
【0102】
A]化合物I−4の調製
【化45】


実施例2の工程Aに記載されている手順に従って、化合物I−4を調製する。
1H NMR (CDCl3,特徴的なシグナルのみ): 0.79 (t, 3H), 1.01 (d, 3H), 1.05 (d,3H), 1.09 (d, 3H), 1.21 (d, 3H), 1.26 (d, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.42 (s, 3H), 2.35-2.47 (m. 1H), 2.61-2.71 (m, 1H) 2.79 (s, 3H), 2.96 (s, 3H), 2.99-3.08 (m, 1H), 3.14-3.25 (m, 2H), 3.93 (s, 3H), 4.03-4.12 (m, 1H), 4.27-4.35 (m, 1H), 4.39 (d, 1H), 5.03 (dd, 1H), 6.98 (d, 1H), 7.67-7.75 (m, 2H), 8.54 (s, 2H), 8.82 (s, 1H)
MS(ESI): 1066.4, 1068.4 [MH]+
保持時間(系Ea):14.6分。
【0103】
実施例5
R1が3−[5−(3,5−ジクロロピリジン−4−イル−アミノカルボニル)−2−メトキシ−フェノキシ]プロピルであり、R2が2−モルホリン−4−イル−アセトキシであり、R3が水素であり、R4がヒドロキシルであり、そしてR5が(2−ジメチルアミノ−アセチル)−メチル−アミノである式Iで表される化合物、I−5の調製
【0104】
A]化合物5−Aの調製
【化46】


実施例3の工程Dに記載されている手順に従って、化合物1−D(実施例1)及び化合物3−C(実施例3)から化合物5−Aを調製する。
MS(ESI): 605.3 [(M+2H)/2]+
【0105】
B]化合物5−Bの調製
【化47】


5.8gの化合物5−Aの100mLアセトニトリル溶液に、30℃で100mLのHCl水溶液(1N)をゆっくり添加する。出発物質が残らなくなるまで(約12時間)、得られた混合物をこの温度で撹拌する。反応混合物に50mLのNaHCO水溶液(飽和溶液)を慎重に添加する。減圧下で有機溶媒を除去し、そして、水層を30mLのDCMで2回抽出した。NaSO上で有機層を乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色の固体として4.0gの粗生成物を得る。DCM/MeOH(50/1)を使用してシリカゲル上でクロマトグラフィーによって粗生成物を精製して、白色の発泡体として2.0gの所望の化合物を得る。
MS (ESI): 1011.3 [MH]+, 506.0 [(M+2H)/2]+
【0106】
C]化合物5−Cの調製
【化48】


2.0g(1.98mmol)の化合物5−Bを50mLのDCMに溶解させ、0.74g(4.36mmol)のクロロ酢酸無水物及び0.48g(3.96mmol)のDMAPを混合物に添加する。26℃で混合物を撹拌し、10分後、0.39gのピリジンを添加する。1時間、30℃で反応物を撹拌し、続いて、50mLの水に注ぐ。100mLのDCMで前記混合物を2回抽出する。合わせた有機層をHCl(5%)水溶液、水、NaHCO飽和水溶液及びブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、オフホワイトの固体として2.2gの所望の生成物を得る。更に精製することなく、粗生成物を次の工程に使用する。
MS(ESI): 544.2 [(M+2H)/2]+
【0107】
D]化合物5−Dの調製
【化49】


2.2g(2.2mmol)の化合物5−Cの50mLアセトニトリル溶液に、1.7g(12.2mmol)のKCO、61mg(0.4mmol)のヨウ化ナトリウム及び0.42g(4.4mmol)のモルホリンを添加する。6時間、50℃で混合物を撹拌し、そして、減圧下で溶媒を除去する。残留物を50mLのDCM中に取り出し、水、HCl水溶液(5%)、飽和NaHCO水溶液及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をシリカゲル(DCM/MeOH 70:1)上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色の発泡体として1.2g(52%)の所望の生成物を得る。
MS(ESI): 569.5 [(M+2H)/2]+
【0108】
E]化合物5−Eの調製
【化50】


1.2gの化合物5−Dを50mLのメタノールに溶解させ、出発物質が残らなくなるまで(約12〜18時間)、26℃で撹拌する。得られた混合物を次の工程に直接使用する。
MS(ESI): 1094.3 [MH]+, 547.7 [(M+2H)/2]+
【0109】
F]化合物5−Fの調製
【化51】


実施例5の工程Eで得られた1.2g(1.1mmol)の化合物5−Eの溶液に、5mLの水及び0.45g(5.48mmol)の酢酸ナトリウムを添加する。5分後、0.56g(2.18mmol)のヨウ素を添加し、出発物質が残らなくなるまで60℃で混合物を撹拌する。Naの1M飽和水溶液で反応混合物をクエンチする。真空下で溶媒を除去し、残留物をDCM中に取り出す。NaHCO(5%)水溶液、水、及びブラインで有機層を洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、淡黄色の発泡体として1gの粗生成物を得る。
MS(ESI): 1080.2 [MH]+, 540.7 [(M+2H)/2]+
【0110】
G]化合物I−5の調製
【化52】


72mg(0.7mmol)のN,N−ジメチル−グリシン及び93mg(0.72mmol)のジイソプロピル−エチルアミンの10mL DMF溶液に、274mg(0.72mmol)のHATU(2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)を添加する。5分間混合物を撹拌し、10mLのDMFに溶解している化合物5−F 420mg(0.39mmol)を添加する。得られた混合物を室温で1時間撹拌する。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物を分取HPLC(カラム:XBridge Prep C18 OBD、5μm、150×19mm;流速:15mL/分;検出:210nm;移動相A:水+0.05%のアンモニア;移動相B:アセトニトリル;勾配:10分でアセトニトリルを40〜70%まで直線的に増加;5分間100%のアセトニトリル)によって精製して、白色の固体として116mgの所望の生成物を得る。
MS(ESI): 1165.4 [MH]+, 583.4 [(M+2H)/2]+
保持時間(系Ea):14.6分。
【0111】
生物活性
本発明の化合物は、ヒトのホスホジエステラーゼ(PDE)、特にPDE4に対して実質的な阻害活性を示す。化合物の阻害活性を判定するために以下のアッセイを使用する。
【0112】
アッセイ
PDE4は、cAMPを特異的に加水分解し、生成物AMPを放出する。インビトロにおける酵素アッセイにおいて、前記化合物によるPDE阻害の効力を判定する。アッセイは市販されており(IMAP(商標)FPアッセイ、Molecular Devices Corp.(MDS))、ヒトPDE4の使用のために最適化されている。蛍光標識されたcAMPをPDE4で加水分解し、第2の工程で、標識された生成物を大きな結合パートナーに結合させて、蛍光偏光法(FP)測定により生成物を検出する。
【0113】
Thorpy et al. 1992 (J. Pharmacol. Exp. Ther. 263: 1195)に従って、未分化のヒト単球細胞(U−937)からPDE4を部分的に精製する。最終製剤は、cAMPに対して特異的であり、アッセイの検出限界を超えるcGMPを加水分解しなかった。更に、PDE4製剤は、PDE4特異的及び非特異的なPDE阻害剤を用いた阻害研究によって検証される。
【0114】
試験化合物の原液をDMSO中にて作製し、アッセイバッファ(10mMのトリス−HCl、10mMのMgCl、0.1%のBSA、0.05%のNaN、pH7.2)で所望の濃度に希釈する。アッセイで使用される溶液は、2%のDMSOを含むアッセイバッファ中に試験化合物を含有していた。
【0115】
10μLの基質(製造業者によって推奨される濃度)を5μLの適切に希釈されたPDE及び5μLの試験化合物溶液と混合する。2%のDMSOを含む5μLの反応バッファを対照反応に使用する。アッセイにおけるDMSOの最終濃度は0.5%であり、これはPDE活性を有意には変化させなかった。90分間室温でインキュベーションした後、製造業者によって指定されている通り60μLの結合試薬を添加する。結合を30分間進行させ、蛍光偏光を測定する。デュープリケートで試験化合物の希釈系列をアッセイすることにより、PDE阻害の用量依存性を測定する。測定された活性から曲線の当てはめによってIC50値を決定する。
【0116】
結果:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化53】


[式中、
R1は、残基−X−Qであり;
Xは、結合であるか、又は水素原子並びにC、N、O及びSから選択される1〜7個の原子からなる直鎖基であり、前記原子のうちの2個まではNであってよく、そして1個はO又はSであってよく、1個の炭素原子はCO基として存在してもよく、そして硫黄原子はSO基として存在してもよく、そして2個の隣接するC原子は−CH=CH−もしくは−C≡C−として存在してもよく、そして基Xは、非置換であるか又は置換されており;
Qは、残基−V−A1−L−A2−Wであるか、又はXが結合を表さない場合は−NR6R7であってもよく;
Vは、場合により置換される二価の芳香族基又は複素環基であり;
Wは、場合により置換されるアリール又はヘテロシクリルであり;
A1及びA2は、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基であり;
Lは、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、−O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、−NH(CO)O−であるか、あるいはA1及び/又はA2が存在する場合は存在しなくてもよく;
R2はOR2aであるか、又は
【化54】


(式中、
【化55】


は、連結結合を表す)であり;
R2aは、水素、アセチル、−(C=O)CHNR2bR2c、又は−(C=O)CHCHNR2bR2cであり;
R2b及びR2cは、互いに独立して、水素であるか、あるいは置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであって、ここで、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよいか、あるいはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよい4員〜7員の環を形成し;
R3は、水素であるか、又は
R2及びR3が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、C=O基を表し;
Zは、
【化56】


(式中、
【化57】


は、連結結合を表す)であり;
R4は、−OR4aであり;
R5は、−NR5bR5cであるか;又は、
R4が、
R5と一緒になって、基−O(CO)NR45−を表し;
R4aは、水素であるか、あるいは置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであって、ここで、1個以上の単結合が二重結合及び/又は三重結合によって置換されてもよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよく、そして2個までの原子がN、O又はSであってよく;
R45は、水素又はC1−C6アルキルであり;
R5b、R5cは、互いに独立して、水素であるか、置換されているか、又は非置換であってよいC1−C6アルキルであり、そしてそのうちの2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=O又は−(C=O)ヘテロシクリルとして存在してもよいか、あるいはこれらが結合している窒素原子と共に、2個までの原子がN、O、又はSであってよく、そして1個の炭素原子がC=Oとして存在してもよい4員〜7員の環を形成し;
R6及びR7は、独立して、水素、メチル;アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキル基から選択される場合により置換される基から選択され、そしてR6及びR7のうちの1個は、基−L−A2−Wであってもよく;
ここで、アルキル基は、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ又はC−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換アルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、及びオキソから選択される1個以上の置換基で置換されてもよく、そして
但し、R5はジメチルアミノ基ではない]
で表されるマクロライド化合物又は式(I)で表される化合物の薬学的に許容しうる塩、N−オキシド、もしくはインビボで分解可能なエステル。
【請求項2】
R4aが、C1−C6アルキル又は水素、好ましくは水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R5が、−NR5bR5cである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R4が、R5と一緒になって、基−O(CO)NR45−を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R3が、水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R2が、
【化58】


(式中、
【化59】


は、連結結合を表す)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2aが、水素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R2aが、−(C=O)CHNR2bR2c又は−(C=O)CHCHNR2bR2cである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R2及びR3が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、C=O基を表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Qが、残基−V−A1−L−A2−Wである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Vが、以下の式:
【化60】


[式中、
【化61】


は、フェニレン環であるか、あるいは、1個、好ましくは2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−1)個、好ましくは〜(x−2)個、特に4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の二価の脂肪族複素環又は芳香族複素環であり、R12及びR13は、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C−Cアルキル基、ハロゲン置換C−Cアルコキシ基、シアノ、ニトロ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、オキソ基からなる群より選択されるか;あるいは、アリール又はヘテロシクリルであって、これらは、非置換であるか、又はアリール若しくはヘテロシクリル以外の上記に指定された置換基のうちの1個以上で置換されていてもよいか、あるいは、置換基R12及びR13の両方が、環:
【化62】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員又は6員の芳香環、又は2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−2)個、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の脂肪族複素環又は芳香族複素環を形成してもよい]によって表される二価の基であり、そして、Vは、R12及びR13について定義された種類の1〜4個の置換基を一度に有することができ、そして基Vの一方又は両方の環のいずれかに自由原子価が存在してもよい、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Vが、以下の式:
【化63】


によって表される二価の基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Wが、アリール、又は好ましくはヘテロシクリルである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Wが、以下の式:
【化64】


[式中、
【化65】


は、フェニル環であるか、あるいは、1個、好ましくは2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−1)個、好ましくは〜(x−2)個、特に4個以下、より好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の一価の脂肪族複素環又は芳香族複素環であり、R14及びR15は、独立して、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキルオキシ、C−Cシクロアルキル−C−Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C−Cアルキル基、ハロゲン置換C−Cアルコキシ基、シアノ、ニトロ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−C)アルキルアミノ、C−Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、及びオキソ基からなる群より選択されるか;あるいは、置換基R14及びR15の両方が、環:
【化66】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員又は6員の芳香環、又は2個〜(x−1)個(xは、5〜8、好ましくは5又は6)の炭素原子と、1〜(x−2)個、好ましくは3個以下の、硫黄並びに好ましくは酸素及び窒素からなる群より選択されるヘテロ原子とを含有する、x員の飽和又は不飽和の脂肪族複素環又は芳香族複素環を形成してもよい]で表される基であり、そして、Wは、R14及びR15について定義された種類の1〜4個の置換基を一度に有することができ、そして基Wのいずれかの環に自由原子価が存在してもよい、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Wが、以下の式:
【化67】


(式中、R16は、水素又はC−Cアルキルである)
の1個によって表される基である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Wが、以下の式:
【化68】


の1個によって表される基である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
Qが、−NR6R7である、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
A1、A2が、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基であり;そして、
Lが、−NH−、−(CO)NH−、もしくは−NH(CO)−であるか、又は存在しない、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
A1、A2が、互いに独立して、存在しないか、又はC−Cアルキレン基であり;
Lが、−NH−、−(CO)NH−、又は−NH(CO)−であり;
Vが、以下の式:
【化69】


で表される二価の基であり、そして、
Wが、以下の式:
【化70】


で表される基である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Xが、−CH−CH−CH−又は−CH−CH−CH−CH−、あるいは、好ましくは、それぞれNH基又はO原子を介して残基Qに結合している−CH−CH−CH−NH−又は−CH−CH−CH−O−である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
R6が、以下の式:
【化71】


(式中、
【化72】


は、メトキシ残基を表す)
の1個によって表される基である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
−NR6R7が、以下の式:
【化73】


(式中、
【化74】


は、メトキシ残基を意味する)
の1個によって表される基である、請求項17又は20に記載の化合物。
【請求項23】
以下の式:
【化75】


の1個を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
以下の式:
【化76】


の1個を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
抗生物質耐性細菌を生じさせないように抗菌活性を実質的に有しない、請求項1から24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容しうる担体とを含む医薬。
【請求項27】
動物及び好ましくはヒトから選択される被験体における疾病及び/又は疾患を予防及び/又は治療する方法における使用のための請求項26に記載の医薬であって、前記方法が、前記被験体におけるホスホジエラスターゼ、特にホスホジエラスターゼ4の阻害に基づく医薬。
【請求項28】
前記被験体における、炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは動物、特に哺乳類、又はヒトの細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患、例えば癌を予防及び/又は治療するための、請求項26又は27に記載の医薬。
【請求項29】
喘息、慢性気管支炎、気腫、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、乾癬、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血症性ショック、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、例えばクローン病、成人型呼吸窮迫症候群、又は多発性硬化症を予防及び/又は治療するための、請求項26から28のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項30】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、関節リウマチ、乾癬又はアトピー性皮膚炎を予防及び/又は治療するための、請求項26から29のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項31】
医学的療法における使用のため、特に、炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトから選択される被験体の細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患を予防及び/又は治療するための、請求項1から24のいずれか一項、または特に請求項25に記載の化合物。
【請求項32】
下記のような治療を必要としている被験体における、炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトから選択される被験体の細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患、例えば癌を治療又は予防するための方法であって、前記炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する前記疾患の予防又は治療に有効な量の請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物が被験体に投与される方法。
【請求項33】
ヒトのホスホジエラスターゼ、特にヒトのホスホジエラスターゼ4の阻害によって寛解し得る障害又は疾患に罹患しているヒトを治療するための方法であって、前記障害又は疾患を寛解させるのに有効な量の請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物が前記ヒトに投与される方法。
【請求項34】
前記障害又は疾患が、炎症性又はアレルギー性の疾患又は障害、あるいは動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトから選択される被験体の細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
炎症性疾患又はアレルギー性疾患、あるいは動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトから選択される被験体の細胞の無制御な細胞の成長、増殖及び/又は生存に関連する疾患、例えば癌を予防及び/又は治療する医薬を製造するための請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
ヒトのホスホジエラスターゼ、特にヒトのホスホジエラスターゼ4の阻害によって寛解し得る障害又は疾患を治療する医薬を製造するための請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2013−501757(P2013−501757A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524239(P2012−524239)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061822
【国際公開番号】WO2011/018510
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501241380)バジリア ファルマスーチカ アーゲー (24)
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica AG
【Fターム(参考)】