新規モリブデン錯体
【課題】水素の生成を経由せずに窒素からアンモニアを合成するための触媒として使用できる新規化合物を提供する。また、このようなアンモニア合成触媒の製造方法及び使用方法、並びにこのようなアンモニア合成触媒の製造で用いられる中間体化合物を提供する。
【解決手段】例えば下記構造のモリブデン錯体が例示される:
【解決手段】例えば下記構造のモリブデン錯体が例示される:
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なモリブデン錯体に関する。特に本発明は、水素を経由せずにアンモニアを合成するためのアンモニア合成触媒として用いることができる新規なモリブデン錯体に関する。また、本発明は、このような錯体の製造方法、使用方法、及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアの化学合成は、約100年前にドイツの研究者ハーバーとボッシュが初めて大量生産に成功した。ハーバー−ボッシュ合成法は、下記の式に示す反応であり、簡便で且つ比較的効率も高いので、現在も基本的には変更されずに用いられている:
N2+3H2→3NH3 (約400℃)
【0003】
このようなアンモニアの合成のための水素は、従来、メタン(CH4)を主成分とする天然ガスを用いて得られている。また、このようなアンモニアの合成のための水素を水の電気分解によって得ることも提案されている。しかしながらいずれの場合にも、水素の生成には大きなエネルギーが必要とされている。
【0004】
したがって、水素の生成を経由せずにアンモニアを合成することが検討されている。例えば、非特許文献1では、補助的な官能基として1,1’−ビス(ジエチルホスフィノ)フェロセンを有するタングステン又はモリブデンの二窒素錯体を、室温においてメタノール中で過剰量の硫酸と反応させることによって、アンモニアを生成することを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Masahiro Yuki, Yoshihiro Miyake and Yoshiaki Nishibayashi, Organometallics, 2008, 27 (15), pp3947−3953 ”Synthesis and Reactivity of Tungsten−and Molybdenum−Dinitrogen Complexes Bearing Ferrocenyldiphosphines toward Protonolysis”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記記載のように、水素の生成を経由せずにアンモニアを合成することが検討されている。したがって、本発明では、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成するための触媒として使用できる新規な錯体を提供する。また、本発明は、このような錯体の製造方法、使用方法、及び中間体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定のモリブデン錯体によって、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成できることを見出してなされたものであり、本発明は、このようなモリブデン錯体及びその製造方法、このようなモリブデン錯体の前駆体及びその製造方法、並びにこのようなモリブデン錯体を用いる水素の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明のモリブデン錯体を触媒として使用することによって、水素の生成を経由せずに、効果的に窒素からアンモニアを合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)》
本発明の第1のモリブデン錯体は、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成するための触媒として用いることができるものであり、下記の式(I)を有する:
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(I)において、及びR1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R1とR2、及び/又はR3とR4は、互いに結合して環を形成していてもよい。また、PR1R2とPR3R4とは、同じであっても異なっていてもよい。また更に、R1〜R4は全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0012】
上記式(I)において、Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、Raは存在せず、芳香環が無置換であってもよい。また、Raが2又は3個存在する場合には、これらのRaが互いに結合して環を形成していてもよい。また更に、Raが2又は3個存在する場合には、これらは、全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0013】
上記式(I)において、L1は、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される。
【0014】
具体的には、本発明の第1のモリブデン錯体は、下記の式(II)〜(IV)のいずれかを有することができる:
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
(式(II)〜(IV)において、iPrはi−プロピル、Meはメチル、Phはフェニルを表す)。
【0019】
《本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の製造方法》
上記式(I)〜(IV)を有する本発明の第1のモリブデン錯体は、下記の式(V)を有するモリブデン錯体の配位子L1〜L4のうちの3つを、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む方法によって製造することができる:
【0020】
【化5】
【0021】
(L1〜L4はそれぞれ独立に、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される);
【0022】
【化6】
【0023】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりである)。
【0024】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)》
本発明の第2のモリブデン錯体は、本発明の第1のモリブデン錯体の前駆体として使用できるものであり、下記の式(VII)を有する:
【0025】
【化7】
【0026】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりであり、且つ
X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される)。
【0027】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)の製造方法》
本発明の第2のモリブデン錯体は、下記の式(VIII)を有するモリブデン錯体の配位子Y1〜Y3を、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む方法によって製造することができる:
【0028】
【化8】
【0029】
(X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択され、且つ
Y1〜Y3はそれぞれ独立に、ピンサー型配位子によって置換できる配位子、例えばテトラヒドロフランである);
【0030】
【化9】
【0031】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりである)。
【0032】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)からの本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の製造方法》
本発明の第1のモリブデン錯体は、本発明の第2のモリブデン錯体の配位子X1〜X3のうちの2つを、二窒素配位子で置換することを含む方法によって製造することができる。
【0033】
《シリルアミン及び/又はアンモニアの合成》
シリルアミンを製造する本発明の方法は、上記式(I)〜(IV)のいずれかの本発明の第1のモリブデン錯体を触媒として用いて、下記の式で表す反応によってシリルクロリドからシリルアミンを生成することを含む:
SiRpRqRrCl + 1/2N2 + Na
→ N(SiRpRqRr)3 + NaCl
【0034】
この反応においてRp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、Rp、Rq及びRrのうちの2又は3個が互いに結合して環を形成していてもよい。また、Rp、Rq及びRrは全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0035】
シリルアミンを製造するこの方法は、テトラヒドロフラン等の非水溶媒中で、窒素雰囲気雰囲気において、穏やかな条件で行うことができ、例えば室温において行うことができる。
【0036】
また、アンモニアを製造する本発明の方法は、シリルアミンを製造する本発明の方法でのようにしてシリルアミンを得、そしてこのようにして得られたシリルアミンを下記の式で表す反応によって加水分解することを含む:
N(SiRpRqRr)3 + 3H2O
→ 3SiRpRqRr(OH) + NH3
(Rp、Rq及びRrは上記記載のとおりである)。
【0037】
アンモニアを製造するこの方法は例えば、過剰量の硫酸及び水をシリルアミンに加えることによって行うことができる。
【0038】
《定義》
本発明において「リンを配位部分として有する配位子」は例えば、式PR5R6R7で表される配位子であり、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R5、R6、及びR7はのうちの2又は3個が互いに結合して環を形成していてもよい。また、R5〜R7は全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0039】
したがって例えば、「PR5R6R7」で表される配位子としては、第三級ホスフィン、例えばトリメチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、及びメチルジフェニルホスフィン及びジメチルフェニルホスフィンのようなアルキルアリールホスフィンを選択することができる。
【0040】
本発明において「窒素を配位部分として有する配位子」は例えば、式NR8R9で表される配位子であり、ここで、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R8及びR9は互いに結合して環を形成していてもよい。また、R8及びR9は同じでも、異なっていてもよい。
【0041】
したがって例えば、「NR8R9」で表される配位子としては、アニリンのような含窒素芳香族を選択することができる。
【0042】
本発明において「二窒素を配位部分として有する配位子」は例えば、式NNR10で表される配位子であり、ここで、R10は、結合、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。
【0043】
したがって例えば、「NNR10」で表される配位子としては、二窒素(NN、すなわちR10は結合)を選択することができ、この二窒素を介して錯体が二量体を形成するようにしてもよい。
【0044】
本発明において、「C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基」は、限定されるものではないが、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基、C2〜C6のアルキニル基、C2〜C6のアルキニル基、C3〜C6のシクロアルキル基、C3〜C6のシクロアルケニル基、C3〜C6のシクロアルキニル基、及びC6〜C14のアリール基からなる群より選択することができる。
【0045】
本発明において「C1〜C6のアルキル基」としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等を挙げることができる。
【0046】
本発明において「C2〜C6のアルケニル基」としては、限定されるものではないが、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、アリル、i−プロペニル、1,3−ブタジエニル、1−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等を挙げることができる。
【0047】
本発明において「C2〜C6のアルキニル基」としては、限定されるものではないが、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル等を挙げることができる。
【0048】
本発明において「C3〜C6のシクロアルキル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0049】
本発明において「C3〜C6のシクロアルケニル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピエニル、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0050】
本発明において「C3〜C6のシクロアルキニル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピニル、シクロブチニル、シクロペンチニル、シクロヘキシニル等を挙げることができる。
【0051】
本発明において「C6〜C14のアリール基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等を挙げることができる。
【実施例】
【0052】
実施例1:本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)(trans−[Mo(N2)2(PMePh2)(iPrPNP)](iPrPNP=2,6−ビス(ジ−iso−プロピルホスフィノメチル)ピリジン))の合成
窒素雰囲気下、50mLシュレンクに、モリブデン窒素錯体trans−[Mo(N2)2(PMePh2)4](260.1mg,0.273mmol,IR(KBr,cm−1):1932cm−1(VNN))を加え、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた後、ピンサー型配位子であるiPrPNP(126.9mg,0.374mmol)を加えて50℃で1日間攪拌する。得られた暗い紫色の溶液を、真空下で溶媒を留去した後、ジエチルエーテルで洗浄することで、標題のモリブデン錯体が、紫色の固体(65.6mg,0.095mmol,収率35%)として得られる。この合成の全反応は、下記に示すようなものである:
【0053】
【化10】
【0054】
生成物についての分析結果を下記に示す:
【0055】
31P{1H}NMR(C6D6):δ 72.4(d,2JPP=5.5Hz,iPrPNP,2P),41.6(t,2JPP=5.5Hz,PMePh2,1P)。
1H NMR(C6D6):δ 7.89−7.83(m,4H),7.25−7.18(m,4H),7.09−7.03(m,2H),6.82−6.69(m,3H),3.13−3.11(m,CH2PiPr2,4H),2.33(d,2JPH=4.9Hz,PMePh2,3H),2.00−1.85(m,CHMe2,4H),1.13−1.05(m,CHMe2,12H),0.92−0.85(m,CHMe2,12H)。
IR(KBr):1912cm−1(vN≡N)。
【0056】
実施例2:本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)([MoCl3(tBuPNP)](tBuPNP=2,6−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ピリジン)の合成
窒素雰囲気下、20mLシュレンクに、モリブデン錯体[MoCl3(thf)3](56.3mg,0.134mmol)及びiBuPNP(60.2mg,0.152mmol)を加え、THF(5mL)を加えて50℃で20時間攪拌する。反応後、真空下で溶媒を留去することで、黄褐色の固体が得られる。これを塩化メチレン(4mL)で抽出し、その抽出液にゆっくりとヘキサンを加えて二層再結晶を行うことで得られる橙色結晶を真空乾燥することで、標題のモリブデン錯体が褐色の固体(66.0mg,0.110mmol,収率82%)として得られる。この合成の全反応は、下記に示すようなものである:
【0057】
【化11】
【0058】
上記反応式において、tBuはt−ブチル基であり、thfはテトラヒドロフランである。
【0059】
標題のモリブデン錯体の立体構造及び結晶学的データを下記に示す。
【0060】
【化12】
【0061】
【表1】
【0062】
実施例3:本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)を用いた本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の合成
実施例2で得られた本発明の第2のモリブデン錯体を前駆体として用いて、本発明の第1のモリブデン錯体を合成する。この合成においては、実施例2で得られたモリブデン錯体を、テトラヒドロフラン溶媒中で、6当量のNa−Hgアマルガム及び過剰量のピリジンと混合し、室温で一晩にわたって撹拌して、本発明の錯体を合成した。この合成の全反応は下記に示すようなものである。
【0063】
【化13】
【0064】
実施例4:本発明の第1のモリブデン錯体によるアンモニアの合成
常圧の窒素雰囲気において、テトラヒドロフラン40mL中で、実施例1で得られた触媒量(0.015mmol)のモリブデン錯体を、過剰量のナトリウム(60mmol)及びトリメチルシリルクロリド(60mmol)と室温で混合した。下記に示す反応によって、トリメチルシリルクロリドからトリメチルシリルアミンが生成されることを確認した:
Si(CH3)3Cl + 1/2N2 + Na
→ N(Si(CH3)3)3 + NaCl
【0065】
また、上記のようにして得たトリメチルシリルアミンに水を加え、トリメチルシリルアミンが下記に示す反応で加水分解してアンモニアを生成することを確認した:
N(Si(CH3)3)3 + 3H2O
→ 3Si(CH3)3(OH) + NH3
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なモリブデン錯体に関する。特に本発明は、水素を経由せずにアンモニアを合成するためのアンモニア合成触媒として用いることができる新規なモリブデン錯体に関する。また、本発明は、このような錯体の製造方法、使用方法、及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアの化学合成は、約100年前にドイツの研究者ハーバーとボッシュが初めて大量生産に成功した。ハーバー−ボッシュ合成法は、下記の式に示す反応であり、簡便で且つ比較的効率も高いので、現在も基本的には変更されずに用いられている:
N2+3H2→3NH3 (約400℃)
【0003】
このようなアンモニアの合成のための水素は、従来、メタン(CH4)を主成分とする天然ガスを用いて得られている。また、このようなアンモニアの合成のための水素を水の電気分解によって得ることも提案されている。しかしながらいずれの場合にも、水素の生成には大きなエネルギーが必要とされている。
【0004】
したがって、水素の生成を経由せずにアンモニアを合成することが検討されている。例えば、非特許文献1では、補助的な官能基として1,1’−ビス(ジエチルホスフィノ)フェロセンを有するタングステン又はモリブデンの二窒素錯体を、室温においてメタノール中で過剰量の硫酸と反応させることによって、アンモニアを生成することを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Masahiro Yuki, Yoshihiro Miyake and Yoshiaki Nishibayashi, Organometallics, 2008, 27 (15), pp3947−3953 ”Synthesis and Reactivity of Tungsten−and Molybdenum−Dinitrogen Complexes Bearing Ferrocenyldiphosphines toward Protonolysis”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記記載のように、水素の生成を経由せずにアンモニアを合成することが検討されている。したがって、本発明では、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成するための触媒として使用できる新規な錯体を提供する。また、本発明は、このような錯体の製造方法、使用方法、及び中間体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定のモリブデン錯体によって、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成できることを見出してなされたものであり、本発明は、このようなモリブデン錯体及びその製造方法、このようなモリブデン錯体の前駆体及びその製造方法、並びにこのようなモリブデン錯体を用いる水素の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明のモリブデン錯体を触媒として使用することによって、水素の生成を経由せずに、効果的に窒素からアンモニアを合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)》
本発明の第1のモリブデン錯体は、水素の生成を経由せずに、窒素からアンモニアを合成するための触媒として用いることができるものであり、下記の式(I)を有する:
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(I)において、及びR1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R1とR2、及び/又はR3とR4は、互いに結合して環を形成していてもよい。また、PR1R2とPR3R4とは、同じであっても異なっていてもよい。また更に、R1〜R4は全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0012】
上記式(I)において、Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、Raは存在せず、芳香環が無置換であってもよい。また、Raが2又は3個存在する場合には、これらのRaが互いに結合して環を形成していてもよい。また更に、Raが2又は3個存在する場合には、これらは、全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0013】
上記式(I)において、L1は、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される。
【0014】
具体的には、本発明の第1のモリブデン錯体は、下記の式(II)〜(IV)のいずれかを有することができる:
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
(式(II)〜(IV)において、iPrはi−プロピル、Meはメチル、Phはフェニルを表す)。
【0019】
《本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の製造方法》
上記式(I)〜(IV)を有する本発明の第1のモリブデン錯体は、下記の式(V)を有するモリブデン錯体の配位子L1〜L4のうちの3つを、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む方法によって製造することができる:
【0020】
【化5】
【0021】
(L1〜L4はそれぞれ独立に、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される);
【0022】
【化6】
【0023】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりである)。
【0024】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)》
本発明の第2のモリブデン錯体は、本発明の第1のモリブデン錯体の前駆体として使用できるものであり、下記の式(VII)を有する:
【0025】
【化7】
【0026】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりであり、且つ
X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される)。
【0027】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)の製造方法》
本発明の第2のモリブデン錯体は、下記の式(VIII)を有するモリブデン錯体の配位子Y1〜Y3を、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む方法によって製造することができる:
【0028】
【化8】
【0029】
(X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択され、且つ
Y1〜Y3はそれぞれ独立に、ピンサー型配位子によって置換できる配位子、例えばテトラヒドロフランである);
【0030】
【化9】
【0031】
(R1〜R4及びRaは、式(I)に関して上記記載のとおりである)。
【0032】
《本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)からの本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の製造方法》
本発明の第1のモリブデン錯体は、本発明の第2のモリブデン錯体の配位子X1〜X3のうちの2つを、二窒素配位子で置換することを含む方法によって製造することができる。
【0033】
《シリルアミン及び/又はアンモニアの合成》
シリルアミンを製造する本発明の方法は、上記式(I)〜(IV)のいずれかの本発明の第1のモリブデン錯体を触媒として用いて、下記の式で表す反応によってシリルクロリドからシリルアミンを生成することを含む:
SiRpRqRrCl + 1/2N2 + Na
→ N(SiRpRqRr)3 + NaCl
【0034】
この反応においてRp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、Rp、Rq及びRrのうちの2又は3個が互いに結合して環を形成していてもよい。また、Rp、Rq及びRrは全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0035】
シリルアミンを製造するこの方法は、テトラヒドロフラン等の非水溶媒中で、窒素雰囲気雰囲気において、穏やかな条件で行うことができ、例えば室温において行うことができる。
【0036】
また、アンモニアを製造する本発明の方法は、シリルアミンを製造する本発明の方法でのようにしてシリルアミンを得、そしてこのようにして得られたシリルアミンを下記の式で表す反応によって加水分解することを含む:
N(SiRpRqRr)3 + 3H2O
→ 3SiRpRqRr(OH) + NH3
(Rp、Rq及びRrは上記記載のとおりである)。
【0037】
アンモニアを製造するこの方法は例えば、過剰量の硫酸及び水をシリルアミンに加えることによって行うことができる。
【0038】
《定義》
本発明において「リンを配位部分として有する配位子」は例えば、式PR5R6R7で表される配位子であり、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R5、R6、及びR7はのうちの2又は3個が互いに結合して環を形成していてもよい。また、R5〜R7は全て同じでも、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0039】
したがって例えば、「PR5R6R7」で表される配位子としては、第三級ホスフィン、例えばトリメチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、及びメチルジフェニルホスフィン及びジメチルフェニルホスフィンのようなアルキルアリールホスフィンを選択することができる。
【0040】
本発明において「窒素を配位部分として有する配位子」は例えば、式NR8R9で表される配位子であり、ここで、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。ここで、R8及びR9は互いに結合して環を形成していてもよい。また、R8及びR9は同じでも、異なっていてもよい。
【0041】
したがって例えば、「NR8R9」で表される配位子としては、アニリンのような含窒素芳香族を選択することができる。
【0042】
本発明において「二窒素を配位部分として有する配位子」は例えば、式NNR10で表される配位子であり、ここで、R10は、結合、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される。
【0043】
したがって例えば、「NNR10」で表される配位子としては、二窒素(NN、すなわちR10は結合)を選択することができ、この二窒素を介して錯体が二量体を形成するようにしてもよい。
【0044】
本発明において、「C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基」は、限定されるものではないが、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基、C2〜C6のアルキニル基、C2〜C6のアルキニル基、C3〜C6のシクロアルキル基、C3〜C6のシクロアルケニル基、C3〜C6のシクロアルキニル基、及びC6〜C14のアリール基からなる群より選択することができる。
【0045】
本発明において「C1〜C6のアルキル基」としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等を挙げることができる。
【0046】
本発明において「C2〜C6のアルケニル基」としては、限定されるものではないが、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、アリル、i−プロペニル、1,3−ブタジエニル、1−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等を挙げることができる。
【0047】
本発明において「C2〜C6のアルキニル基」としては、限定されるものではないが、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル等を挙げることができる。
【0048】
本発明において「C3〜C6のシクロアルキル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0049】
本発明において「C3〜C6のシクロアルケニル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピエニル、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0050】
本発明において「C3〜C6のシクロアルキニル基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のシクロプロピニル、シクロブチニル、シクロペンチニル、シクロヘキシニル等を挙げることができる。
【0051】
本発明において「C6〜C14のアリール基」としては、限定されるものではないが、置換又は非置換のフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等を挙げることができる。
【実施例】
【0052】
実施例1:本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)(trans−[Mo(N2)2(PMePh2)(iPrPNP)](iPrPNP=2,6−ビス(ジ−iso−プロピルホスフィノメチル)ピリジン))の合成
窒素雰囲気下、50mLシュレンクに、モリブデン窒素錯体trans−[Mo(N2)2(PMePh2)4](260.1mg,0.273mmol,IR(KBr,cm−1):1932cm−1(VNN))を加え、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解させた後、ピンサー型配位子であるiPrPNP(126.9mg,0.374mmol)を加えて50℃で1日間攪拌する。得られた暗い紫色の溶液を、真空下で溶媒を留去した後、ジエチルエーテルで洗浄することで、標題のモリブデン錯体が、紫色の固体(65.6mg,0.095mmol,収率35%)として得られる。この合成の全反応は、下記に示すようなものである:
【0053】
【化10】
【0054】
生成物についての分析結果を下記に示す:
【0055】
31P{1H}NMR(C6D6):δ 72.4(d,2JPP=5.5Hz,iPrPNP,2P),41.6(t,2JPP=5.5Hz,PMePh2,1P)。
1H NMR(C6D6):δ 7.89−7.83(m,4H),7.25−7.18(m,4H),7.09−7.03(m,2H),6.82−6.69(m,3H),3.13−3.11(m,CH2PiPr2,4H),2.33(d,2JPH=4.9Hz,PMePh2,3H),2.00−1.85(m,CHMe2,4H),1.13−1.05(m,CHMe2,12H),0.92−0.85(m,CHMe2,12H)。
IR(KBr):1912cm−1(vN≡N)。
【0056】
実施例2:本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)([MoCl3(tBuPNP)](tBuPNP=2,6−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ピリジン)の合成
窒素雰囲気下、20mLシュレンクに、モリブデン錯体[MoCl3(thf)3](56.3mg,0.134mmol)及びiBuPNP(60.2mg,0.152mmol)を加え、THF(5mL)を加えて50℃で20時間攪拌する。反応後、真空下で溶媒を留去することで、黄褐色の固体が得られる。これを塩化メチレン(4mL)で抽出し、その抽出液にゆっくりとヘキサンを加えて二層再結晶を行うことで得られる橙色結晶を真空乾燥することで、標題のモリブデン錯体が褐色の固体(66.0mg,0.110mmol,収率82%)として得られる。この合成の全反応は、下記に示すようなものである:
【0057】
【化11】
【0058】
上記反応式において、tBuはt−ブチル基であり、thfはテトラヒドロフランである。
【0059】
標題のモリブデン錯体の立体構造及び結晶学的データを下記に示す。
【0060】
【化12】
【0061】
【表1】
【0062】
実施例3:本発明の第2のモリブデン錯体(前駆体)を用いた本発明の第1のモリブデン錯体(触媒)の合成
実施例2で得られた本発明の第2のモリブデン錯体を前駆体として用いて、本発明の第1のモリブデン錯体を合成する。この合成においては、実施例2で得られたモリブデン錯体を、テトラヒドロフラン溶媒中で、6当量のNa−Hgアマルガム及び過剰量のピリジンと混合し、室温で一晩にわたって撹拌して、本発明の錯体を合成した。この合成の全反応は下記に示すようなものである。
【0063】
【化13】
【0064】
実施例4:本発明の第1のモリブデン錯体によるアンモニアの合成
常圧の窒素雰囲気において、テトラヒドロフラン40mL中で、実施例1で得られた触媒量(0.015mmol)のモリブデン錯体を、過剰量のナトリウム(60mmol)及びトリメチルシリルクロリド(60mmol)と室温で混合した。下記に示す反応によって、トリメチルシリルクロリドからトリメチルシリルアミンが生成されることを確認した:
Si(CH3)3Cl + 1/2N2 + Na
→ N(Si(CH3)3)3 + NaCl
【0065】
また、上記のようにして得たトリメチルシリルアミンに水を加え、トリメチルシリルアミンが下記に示す反応で加水分解してアンモニアを生成することを確認した:
N(Si(CH3)3)3 + 3H2O
→ 3Si(CH3)3(OH) + NH3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)を有する、モリブデン錯体:
【化1】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
L1は、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される)。
【請求項2】
下記の式(II)〜(IV)のいずれかを有する、請求項1に記載のモリブデン錯体:
【化2】
【化3】
【化4】
(iPrはi−プロピル、Meはメチル、Phはフェニルを表す)。
【請求項3】
下記の式(V)を有するモリブデン錯体の配位子L1〜L4のうちの3つを、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む、請求項1又は2に記載のモリブデン錯体の製造方法:
【化5】
(L1〜L4はそれぞれ独立に、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される);
【化6】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項4】
下記の式(VII)を有する、モリブデン錯体:
【化7】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される)。
【請求項5】
下記の式(VIII)を有するモリブデン錯体の配位子Y1〜Y3を、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む、請求項4に記載のモリブデン錯体の製造方法:
【化8】
(X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択され、且つ
Y1〜Y3はそれぞれ独立に、前記ピンサー型配位子によって置換できる配位子である);
【化9】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項6】
請求項4に記載のモリブデン錯体の配位子X1〜X3のうちの2つを、二窒素配位子で置換することを含む、請求項1又は2に記載のモリブデン錯体を製造する方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の前記モリブデン錯体を触媒として用いて、下記に表す反応で、シリルクロリドからシリルアミンを生成することを含む、シリルアミンの製造方法:
SiRpRqRrCl + 1/2N2 + Na
→ N(SiRpRqRr)3 + NaCl
(Rp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項8】
請求項7に記載の方法でシリルアミンを得、そしてこのようにして得られたシリルアミンを下記の式で表す反応で加水分解することを含む、アンモニアの合成方法:
N(SiRpRqRr)3 + 3H2O
→ 3SiRpRqRr(OH) + NH3
(Rp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項1】
下記の式(I)を有する、モリブデン錯体:
【化1】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
L1は、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される)。
【請求項2】
下記の式(II)〜(IV)のいずれかを有する、請求項1に記載のモリブデン錯体:
【化2】
【化3】
【化4】
(iPrはi−プロピル、Meはメチル、Phはフェニルを表す)。
【請求項3】
下記の式(V)を有するモリブデン錯体の配位子L1〜L4のうちの3つを、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む、請求項1又は2に記載のモリブデン錯体の製造方法:
【化5】
(L1〜L4はそれぞれ独立に、リンを配位部分として有する配位子、窒素を配位部分として有する配位子、及び二窒素を配位部分として有する配位子からなる群より選択される);
【化6】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項4】
下記の式(VII)を有する、モリブデン錯体:
【化7】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される)。
【請求項5】
下記の式(VIII)を有するモリブデン錯体の配位子Y1〜Y3を、下記の式(VI)を有するピンサー型配位子によって置換することを含む、請求項4に記載のモリブデン錯体の製造方法:
【化8】
(X1〜X3はそれぞれ独立に、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択され、且つ
Y1〜Y3はそれぞれ独立に、前記ピンサー型配位子によって置換できる配位子である);
【化9】
(R1〜R4はそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択され、且つ
Raは随意に、芳香環の1〜3個の水素を置換している基であり、C1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項6】
請求項4に記載のモリブデン錯体の配位子X1〜X3のうちの2つを、二窒素配位子で置換することを含む、請求項1又は2に記載のモリブデン錯体を製造する方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の前記モリブデン錯体を触媒として用いて、下記に表す反応で、シリルクロリドからシリルアミンを生成することを含む、シリルアミンの製造方法:
SiRpRqRrCl + 1/2N2 + Na
→ N(SiRpRqRr)3 + NaCl
(Rp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【請求項8】
請求項7に記載の方法でシリルアミンを得、そしてこのようにして得られたシリルアミンを下記の式で表す反応で加水分解することを含む、アンモニアの合成方法:
N(SiRpRqRr)3 + 3H2O
→ 3SiRpRqRr(OH) + NH3
(Rp、Rq及びRrはそれぞれ独立に、水素、及びC1〜C14の鎖状、環状又は分岐状の炭化水素基からなる群より選択される)。
【公開番号】特開2010−195703(P2010−195703A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41282(P2009−41282)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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