説明

新規リン系ビフェノールおよびその誘導体の製造方法

【課題】原料コストが高く、溶解性および反応性が悪く、工業的な応用に限られている従来のDOPOBQ(DOPOとベンゾキノンの反応物)に比べて、応用範囲の広いリン系ビフェノールを提供する。
【解決手段】有機環状リン化合物DOPO(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)と、アセトフェノンに代表されるケトン系化合物と、フェノール、及び、酸触媒とを用いて得られる、下記式代表される構造を備えたリン系化合物、及びその製造方法。並びに、このリン系化合物を用いて誘導体群を生成するものを含む新規リン系ビフェノールおよびその誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリン系ビフェノール誘導体群およびその製造方法に関し、特にリン系ビフェノールから派生した誘導体群の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、火災は人類の生命・財産を脅かす最も大きな事故の一つである。したがって、場所の特性および建築の種類が異なれば、必要とされる防火材料もまた異なる。従来の防火用難燃性材料の多くは、ハロゲンを含有する化合物を添加することで、耐熱性の高い組成物を形成している。これらは、燃焼抑制についてはそれなりの効果があるものの、耐腐食性は十分ではなく、そして有害物質、例えば、人体において新陳代謝の失調、緊張、睡眠障害、頭痛、眼疾患、動脈硬化、肝臓の腫瘍などの疾病を引き起こし、そして動物実験でも発ガン性が認められているダイオキシンなどを発生しかねない。
【0003】
近年来、有機リン系化合物は、高分子重合体に対して優れた難燃性を備え、しかもハロゲンを含む難燃剤と比較しても、有機リン系化合物は、煙、つまり有毒ガスを発生することがなく、さらには加工性に優れ、添加量は少なくてよく、発煙量も低いなどの長所を備えていることが、研究により明らかになっている。しかも有機リン系反応基を高分子の主な構造中に導入することで、重合体の難燃効果はより高くなる。
【0004】
リン化合物DOPO(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン 10−オキシド)は、例えば、ベンゾキノン、オキシラン、マレイン酸、ビスマレイミド、ジアミノベンゾフェノンおよびテレフタルジカルボキサルデヒド(carboxaldehyde)といった電子不足化合物と反応する活性水素原子を提供する分子であり、その誘導体は学術界および産業界で高い注目を浴びている。
【0005】
1991年にはSmith, C. D. et alが、DOPOとベンゾキノンとから下記の構造を有するDOPOBQを合成している。
【化1】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DOPOBQはリン系ビフェノール単量体の前駆体であるが、原料コストが高い上、溶解性および反応性が悪く、工業的な応用が限られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明では、リン含有化合物の応用範囲を広げるためのリン系ビフェノールを提供するものである。
本発明ではさらに、末端に反応性の官能基を有するリン系ビフェノール誘導体群を合成するためのリン系ビフェノール誘導体群の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明によれば、化学式1に示す構造を備えたリン系化合物を提供する。
【化2】

式中、R〜Rは、水素、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子とすることができ、Rは、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCF、ハロゲン原子または−Arとすることができ、A、Bはそれぞれ、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCNおよび
【化3】

からなる群から選択することができる。
【0009】
Ar、ArおよびArはそれぞれ下記からなる群から選択することができる。
【化4】

式中、上記のRは、水素、ハロゲン原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子を含むことができ、Rは、−OH、−NH、−NO、−SH、−COOH、−SOH、−COH、−NHCOCH、−OCHとすることができ、Rは、−CH−、−(CHCH−、−CO−、−SO−、−O−、−NH−であるか、または単結合であり、Rは、−(CH−、または単結合であり、m、nはそれぞれ0〜4の整数であり、z、pは1〜20の整数である。
【0010】
本発明によれば、リン系ビフェノール(DDP)誘導体を合成する製造方法を提供するものであり、化学式2に示す有機環状リン化合物と、化学式3に示すケトン系化合物と、化学式4に示す化合物と、酸触媒とで、R〜Rがアルキル基またはフェニル基であるリン系化合物を合成するものを含む。
【化5】

【化6】

【化7】

【0011】
リン系化合物はさらに、エポキシ基を含む化合物、シアン酸エステルまたはベンゾオキサジンを有するリン系化合物を含む。
【0012】
本発明の一実施例によれば、リン系ベンゾオキサジン(Benzoxazines)を合成する反応の概略図は以下のとおりとなる。
【化8】

式中、R’は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ハロゲン、ニトリル基、フェノキシ基、C〜Cシクロアルキル基であってもよく、または下記のとおりである。
【化9】

式中、Rは、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、フェノキシ基、C−Cシクロアルキル基またはハロゲンであり、Rは、−OH、−NH、−NO、−SH、−COOH、−SOH、−COH、−NHCOCHまたは−OCHであり、n、mはそれぞれ0〜4の整数とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記によれば、本発明のリン系ビフェノールは末端に反応性官能基を有しており、エポキシ樹脂、シアン酸エステル、ベンゾオキサジン等の材料を合成するために用いることができ、しかもエポキシ樹脂の硬化剤として用いることもできる。したがって、本発明のリン系ビフェノールは、高価なDOPOBQに代わって、工業上の発展のためにより応用しやすいものとなる。
【0014】
本発明のリン系ビフェノールの主な構造は、エポキシ樹脂中のエポキシ基との反応性を有し、この反応性官能基はリン系化合物の側鎖位置にあるため、一般的なリン系化合物またはエポキシ樹脂と比べても優れた耐熱性を備えており、難燃性の組成物とするに適するうえ、加工性質にも影響はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記およびその他の目的、特徴、長所および実施例をより理解しやすくするため、添付の図面の詳細な説明を下記のとおり行う。
【図1A】リン系化合物AのH NMRスペクトルである。
【図1B】リン系化合物Aの13CNMR スペクトルである。
【図1C】リン系化合物Aの31P NMRスペクトルである。
【図2A】リン系化合物BのH NMR スペクトルである。
【図2B】リン系化合物Bの13CNMR スペクトルである。
【図2C】リン系化合物Bの31P NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の構成的特徴、作業方法、目的および長所をより理解しやすくするために、下記に反応の流れを図示するが、これは説明を目的とするものに過ぎず、本発明の範囲を限定するために用いるものではない。
【0017】
本発明のリン系ビフェノール(DDP)誘導体の製造方法は、化学式2に示す有機環状リン化合物と、化学式3に示すケトン系化合物と、化学式4に示す化合物と、酸触媒とを用いて、Rがメチル基であり、A、BがOHであるリン系化合物Aを合成することを含む。
【化10】

【化11】

【化12】

式中、R〜Rは、水素、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子とすることができ、Rは、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCF、ハロゲン原子または−Arとすることができ、A、Bはそれぞれ、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCNおよび
【化13】

からなる群から選択することができる。Ar、ArおよびArはそれぞれ下記のグル−プからなる群から選択することができる。
【0018】
【化14】

式中、Ar、ArおよびArのRは、水素、ハロゲン原子、C〜C10 アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子を含むことができ、Rは、−OH、−NH、−NO、−SH、−COOH、−SOH、−COH、−NHCOCH、−OCHとすることができ、Rは、−CH−、−(CHCH−、−CO−、−SO−、−O−、−NH−であるか、または単結合であり、Rは−(CH−、または単結合であり、m、nはそれぞれ0〜4の整数であり、z、pは1〜20の整数である。
【0019】
化学式2、化学式3、化学式4で示す化合物と、酸触媒とで合成したリン系化合物Aは、化学式5に示す構造を備えている。さらにリン系化合物Aを用いて、化学式6に示す構造を備えたエポキシ基を含む化合物A−epを合成する。リン系化合物Aは、化学式7で示す構造を備えたシアン酸エステルA−cyを合成することができる。リン系化合物Aは、化学式8で示す構造を備えたベンゾオキサジンを有するA−bzを合成することができる。
【化15】

【0020】
合成例1:化合物Aの合成
本発明の実施例により、有機環状リン系化合物DOPO、フェノール、4’−ヒドロキシアセトフェノンおよび酸触媒を用いて、Rがメチル基であり、A、BがOHであるリン系化合物Aを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0021】
有機環状リン系化合物DOPO(9−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)10.81g(0.05mol)、フェノール23.28g(0.25mol)、4’−ヒドロキシアセトフェノン6.81g(0.05mol)、p−トルエンスルホン酸0.216g(DOPOの2重量%)を、250mlの三口フラスコに入れた。
【0022】
次に、フラスコの温度を130℃まで加熱して、24時間反応させた後に撹拌を停止した。フラスコを室温にまで冷却してエタノールを溶解させ、熱水に入れて析出させた後ろ過・乾燥させて、85%の収率で、融点が306℃の産物Aを得た。
【0023】
図1A〜図1Cは、それぞれ、リン系化合物AのH NMRスペクトル、13C NMRスペクトルおよび31P NMRスペクトルを示す。
【0024】
合成例2:化合物A−cyの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Aを用いてA−cyを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0025】
無水アセトン(70g)を三口フラスコ中に投入した。フラスコを−15℃にまで冷却した後、BrCN 7.2027g(0.068mol)を加えるとともに撹拌し、同時に温度を−25℃以下にまで下げた。また、8.5684g(0.02mol)のリン系化合物AおよびEtN 6.1321g(0.0606mol)を無水アセトン(100g)に充分に溶解させた後、漏斗でフラスコ中にゆっくりと滴下するとともに、温度を−30℃に維持したまま、2時間反応させた。反応温度が−30℃にまで戻ったとき、反応液を脱イオン水中に滴下して洗浄し、臭化アンモニウム塩を除去した。ろ過した後、すべての沈殿物をCHCl/HOで抽出した。有機相を集めて、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを除去した後、室温下にて回転式蒸発器でCHClを除去し、固体のシアン酸エステル(cyanate ester)を得た。
【0026】
合成例3:化合物A−epの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Aを用いてA−epを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0027】
214gのリン系化合物Aを準備し、925gのエピクロルヒドリンを3リットルのフラスコ内に加えて、常圧下にて均一な混合溶液になるまで撹拌した後、190mmHgの絶対圧力の下で70℃まで反応温度を上げるとともに、4時間の間に20%の水酸化ナトリウム溶液200gを数回に分けて加えて、加えると同時にフラスコ内の水を共沸蒸発させた。反応終了後、減圧蒸留によりエピクロルヒドリンおよび溶剤を蒸留して純化させ、産物をメチルエチルケトンおよび脱イオン水で溶解させ、樹脂中の塩化ナトリウムを水で洗浄し、さらに減圧蒸留により溶剤を蒸留して純化することで、242当量の、エポキシ基を含む白色のA−EPOXY(A−ep)を得た。
【0028】
合成例4:化合物A−bzの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Aを用いてベンゾオキサジンを有するA−bzを合成した。その工程は以下のとおりである。
ホルムアルデヒド3.246g(0.04mol)をジオキサン1.2mlに溶かして、5Mの溶液A’を調製する。さらにメチルアミン1.55g(0.02mol)をジオキサン(3ml)に溶かして、10Mの溶液B’を調製した。100mlのフラスコ内に溶液A’を入れて、冷涼な状態で窒素ガスを加えた。次に溶液B’を毎秒一滴の方式でフラスコ内に滴下して、温度を10℃以下に調節して、滴下が終了した後さらに30分間反応させた。リン系化合物A 4.284g(0.01mol)をフラスコ内に加えて、対流するまで加熱し、10時間反応させる。反応が終了した後、真空濃縮機で溶剤を吸引乾燥させて、産物をCHClに溶かし、0.1Mの水酸化ナトリウムで抽出するとともに、脱イオン水で三回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後にろ過し、真空オーブンで加熱乾燥させて、76%の収率で、ピンク色の固体を得た。
【0029】
本発明の実施例によれば、反応触媒には、上記の合成例1〜4に使用される触媒の他にも、例えば酢酸、メタンスルホン酸、カルマガイト(Calmagite)、硫酸、オルタニル酸(Orthanilic acid)、3−ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、HSO、HCl、HBr、HI、HF、CFCOOH、HNOもしくはHPOなどのブレンステッド酸、または例えばAlCl、BF、FeBr、FeCl、BCl、TiClなどのルイス酸を含むその他の酸触媒を使用しても良い。触媒の用量は0.1重量%〜30重量%とすることができる。
【0030】
本発明の他の実施例によれば、リン系ビフェノール(DDP)誘導体の製造方法は、化学式2、化学式3、化学式4で示す化合物および酸触媒を用いて、Rがベンゼン環であり、A、BがOHであるリン系化合物Bを合成することを含む。
【0031】
このうち、リン系化合物Bは化学式9で示す構造を備えている。さらに、リン系化合物Bを用いて、化学式10で示す構造を備えた、エポキシ基を含む化合物B−epを合成した。リン系化合物Bを用いて、化学式11で示す構造を備えたシアン酸エステルB−cyを合成することもできる。また、リン系化合物Bを用いて、化学式12で示す構造を備えたベンゾオキサジンを有するB−bzを合成することもできる。
【化16】

【0032】
合成例5:化合物Bの合成
本発明の実施例により、有機環状リン系化合物DOPO、フェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノンおよび酸触媒を用いて、Rがベンゼン環であり、A、BがOHであるリン系化合物Bを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0033】
有機環状リン系化合物DOPO(9−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)10.81g(0.05mol)、フェノール23.28g(0.25mol)、4−ヒドロキシベンゾフェノン9.91g(0.05mol)、p−トルエンスルホン酸0.216g(DOPOの2重量%)を、250mlの三口フラスコに入れた。
【0034】
次に、反応温度を130℃まで加熱して、24時間反応させた後に撹拌を停止した。フラスコを室温にまで冷却し、エタノールを溶解させて熱水に入れて析出し、ろ過・乾燥させて、87%の収率で、融点が288℃の産物Bを得た。
【0035】
図2A〜図2Cは、それぞれ、リン系化合物BのH NMRスペクトル、13C NMRスペクトルおよび31P NMRスペクトルを示す。
【0036】
合成例6:化合物B−cyの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Bを用いてB−cyを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0037】
無水アセトン(70g)を三口フラスコ中に投入した。フラスコを−15℃にまで冷却した後、BrCN 7.2027g(0.068mol)を加えるとともに撹拌し、同時に温度を−25℃以下にまで下げた。また、リン系化合物B 9.8096g(0.02mol)およびEtN 6.1321g(0.0606mol)を無水アセトン100gに充分に溶解させた後、漏斗でフラスコ中にゆっくりと滴下するとともに、温度を−30℃に維持したまま、2時間反応させた。反応温度が−30℃にまで戻ったとき、反応液を脱イオン水中に滴下して洗浄し、臭化アンモニウム塩を除去した。ろ過した後、すべての沈殿物をCHCl/HOで抽出した。有機相を集めて、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを除去した後、室温下にて回転式蒸発器でCHClを除去し、固体のシアン酸エステル(cyanate ester)を得た。
【0038】
合成例7:化合物B−epの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Bを用いてB−epを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
【0039】
245gのリン系化合物Bを準備し、925gのエピクロルヒドリンを3リットルのフラスコ内に加えて、常圧下にて均一な混合溶液になるまで撹拌した後、190mmHgの絶対圧力の下で70℃まで反応温度を上げるとともに、4時間の間に20%の水酸化ナトリウム溶液200gを数回に分けて加えて、加えると同時にフラスコ内の水を共沸蒸発させた。反応終了後、減圧蒸留によりエピクロルヒドリンおよび溶剤を蒸留して純化させ、産物をメチルエチルケトンおよび脱イオン水で溶解させて、樹脂中の塩化ナトリウムを水で洗浄し、さらに減圧蒸留により溶剤を蒸留して純化することで、286当量の、エポキシ基を含む淡黄色のB−EPOXY(B−ep)を得た。
【0040】
合成例8:ポリマB−bzの合成
本発明の実施例により、リン系化合物Bを用いてベンゾオキサジンを有するB−bzを合成した。その合成の工程は以下のとおりである。
ホルムアルデヒド3.246g(0.04mol)をジオキサン1.2mlに溶かして、5Mの溶液A’を調製した。さらにメチルアミン1.55g(0.02mol)をジオキサン(3ml)に溶かして、10Mの溶液B’を調製した。100mlのフラスコに溶液A’を入れて、冷涼な状態で窒素ガスを加えた。次に溶液B’を毎秒一滴の方式でフラスコ内に滴下して、温度を10℃以下に調節して、滴下が終了した後さらに30分間反応させた。4.904g(0.01mol)のリン系化合物Bをフラスコに加えて、対流するまで加熱し、10時間反応させる。反応が終了した後、真空濃縮機で溶剤を吸引乾燥させて、産物をCHClに溶かし、0.1Mの水酸化ナトリウムで抽出するとともに脱イオン水で三回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて水分を除去した後にろ過し、真空オーブンで加熱乾燥させて、80%の収率で、淡黄色の固体を得た。
【0041】
本発明の実施例によれば、前記反応触媒として、上記の合成例4〜8に使用される触媒の他にも、例えば酢酸、メタンスルホン酸、カルマガイト、硫酸、オルタニル酸、3−ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、HSO、HCl、HBr、HI、HF、CFCOOH、HNOもしくはHPOなどのブレンステッド酸、または例えばAlCl、BF、FeBr、FeCl、BCl、TiClなどのルイス酸を含むその他の酸触媒を使用しても良い。触媒の用量は0.1重量%〜30重量%とすることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施例を上記のように開示したが、これは本発明の範囲を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の技術的思想および範囲を逸脱することなく、各種変更および付加を行うことができるので、本発明の範囲は特許請求の範囲により限定されるものを基準とすべきである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のリン系ビフェノールは末端に反応性官能基を有しており、エポキシ樹脂、シアン酸エステル、ベンゾオキサジン等の材料の合成に用いることができ、しかもエポキシ樹脂の硬化剤として用いることもできる。したがって、本発明のリン系ビフェノールは高価なDOPOBQに代わって、工業上の発展のためにより容易に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で示す構造を備えることを特徴とするリン系化合物。
【化1】

式中、R〜Rは、水素、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子であり、Rは、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCF、ハロゲン原子または−Arであり、A、Bはそれぞれ、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCNおよび
【化2】

からなる群から選択することができ、Ar、ArおよびArはそれぞれ下記からなる群から選択することができ、
【化3】

は、水素、ハロゲン原子、C〜C10アルキル基、C〜C10アルコキシ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10シクロアルキル基、−CF、−OCFまたはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数であり、Rは、−OH、−NH、−NO、−SH、−COOH、−SOH、−COH、−NHCOCH、または−OCHであり、nは0〜4の整数であり、Rは、−CH−、−(CHCH−、−CO−、−SO−、−O−、−NH−であるか、または単結合であり、Rは、−(CH−であるか、または単結合であり、zおよびpは、それぞれ1〜20の整数である。
【請求項2】
化学式2に示す有機環状リン化合物と、化学式3に示すケトン系化合物と、化学式4に示す化合物と、酸触媒とを用いて反応を行うことにより、化学式1に示すリン系ビフェノール誘導体を生成することを特徴とする、リン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
化学式2、化学式3、化学式4で示す化合物と、酸触媒とを用いて反応を行うことを含み、化学式2の化合物において、R〜Rが水素であり、化学式3の化合物において、Arがフェニル基であり、Aが−OHであり、Rがメチル基であり、化学式4の化合物において、Arがフェニル基であり、Bが−OHであり、下記構造のリン系化合物を合成することを特徴とする、請求項2に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【化7】

【請求項4】
酸触媒がブレンステッド酸またはルイス酸を含むことを特徴とする、請求項3に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項5】
ブレンステッド酸が、酢酸、メタンスルホン酸、カルマガイト、硫酸、オルタニル酸、3−ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、HSO、HCl、HBr、HI、HF、CFCOOH、HNOまたはHPOを含むことを特徴とする、請求項4に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項6】
ルイス酸が、AlCl、BF、FeBr、FeCl、BClまたはTiClを含むことを特徴とする、請求項4に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項7】
化学式2、化学式3、化学式4で示す化合物と、酸触媒とを用いて反応を行うことを含み、化学式2の化合物において、R〜Rが水素であり、化学式2の化合物において、R〜Rが水素であり、化学式3の化合物において、Arがフェニル基であり、Aが−OHであり、Rがフェニル基であり、化学式4の化合物において、Arがフェニル基であり、Bが−OHであり、下記構造のリン系化合物を合成することを特徴とする、請求項2に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【化8】

【請求項8】
酸触媒がブレンステッド酸またはルイス酸を含むことを特徴とする、請求項7に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項9】
ブレンステッド酸が、酢酸、メタンスルホン酸、カルマガイト、硫酸、オルタニル酸、3−ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、HSO、HCl、HBr、HI、HF、CFCOOH、HNOまたはHPOを含むことを特徴とする、請求項8に記載の請求項1に記載の化学式1の化合物の製造方法。
【請求項10】
ルイス酸が、AlCl、BF、FeBr、FeCl、BClまたはTiClを含むことを特徴とする、請求項8に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項11】
酸触媒の用量が、0.1重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項3または7に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項12】
末端にベンゾオキサジンを有するリン系ビフェノール誘導体を合成することをさらに含み、下記の反応:
【化9】

式中、R’は、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ハロゲン、ニトリル基、フェノキシ基、C〜Cシクロアルキル基、または、
【化10】

である
を含むことを特徴とする、請求項2に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。
【請求項13】
が、水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、フェニル基、ビフェニル基、フェノキシ基、C−Cシクロアルキル基またはハロゲンであり、Rが、−OH、−NH、−NO、−SH、−COOH、−SOH、−COH、−NHCOCHまたは−OCHであり、n、mがそれぞれ0〜4の整数であることを特徴とする、請求項12に記載のリン系ビフェノール誘導体の製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate


【公開番号】特開2013−35848(P2013−35848A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198484(P2012−198484)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2009−163461(P2009−163461)の分割
【原出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【出願人】(595009383)長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司 (23)
【Fターム(参考)】