説明

新規ルテニウム錯体及びこれを触媒とする光学活性アルコール化合物の製造方法

【課題】カルボニル化合物の不斉還元反応における反応性、エナンチオ選択性などの点で優れた触媒活性を有する新規ルテニウム錯体、それを用いた触媒、及びそれを用いた光学活性アルコール化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】下式(1)で示されるルテナサイクル構造を有するルテニウム錯体。


(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表し、R、R及びRは水素原子、アルキル基、アリール基等を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4は水素原子等を表し、nは0〜3の整数を表し、Arはアリーレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なルテニウム錯体とこれを触媒とする光学活性アルコール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性ジホスフィン化合物を配位子とする遷移金属錯体は、不斉反応の触媒として極めて有用であり、これまで数多くの触媒が開発されてきた。
その中でも不斉水素化反応において、ルテニウム−ジホスフィン−ジアミン錯体は塩基化合物との組み合わせで高活性な触媒として知られている(例えば特許文献1)。この錯体の合成方法としては、例えば錯体前駆体として[RuCl(p−cymene)]を用い、特定の溶媒中で、光学活性ジホスフィン、光学活性ジアミンを順次反応させる方法が知られている(特許文献2)。また、光学活性ジホスフィンとアミノ基を含む3座配位子を持つ錯体としては下記の式、
【0003】
【化1】

【0004】
で表される化合物が知られている(特許文献3)。
光学活性ジホスフィン化合物とジアミン化合物を配位子とするルテニウム金属錯体は、種々のカルボニル化合物を不斉水素化できることや、高い活性と高いエナンチオ選択性を示し、高い光学純度の光学活性アルコール化合物を与えるため、利用価値の高いものである。しかしながら、該触媒は全てのカルボニル化合物に対して必ずしも高い性能を示すとは限らないため、さらなる高活性な触媒の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−189600号公報
【特許文献2】WO2007/005550 A1
【特許文献3】WO2009/007443 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒活性が優れた新規な光学活性ジホスフィン化合物とジアミン化合物を配位子とするルテニウム金属錯体、それを用いた不斉還元触媒、及びそれを用いたカルボニル化合物の不斉水素化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、不斉還元反応において光学活性ジホスフィンと3座ジアミンリガンドを有する新規なルテニウム錯体を見出して、それを触媒として用いることで従来の触媒よりも高活性かつ高選択的に光学活性アルコールを得る方法を開発するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、新規なルテニウム錯体、並びにそれを含有してなる不斉還元触媒、及びそれを用いた不斉還元による光学活性アルコールの製造方法を提供する。
本発明は以下の[1]〜[21]の内容を含むものである。
[1]下記一般式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)で表されるルテニウム錯体。
[2]ルテニウム錯体が、下記一般式(2)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。R、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、三置換シリル基又は炭素数1〜20アルコキシ基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるルテニウム錯体である前記[1]に記載のルテニウム錯体。
[3]ルテニウム錯体が、下記一般式(3)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるルテニウム錯体である前記[1]又は[2]に記載のルテニウム錯体。
[4]P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(4)

P−Q−PR (4)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
で表されるジホスフィンである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のルテニウム錯体。
[5]前記[1]〜[4]におけるP⌒Pで表されるジホスフィンが、光学活性ジホスフィンである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のルテニウム錯体
[6]P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(5)で表される光学活性ジホスフィンである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のルテニウム錯体。
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。)
[7]一般式(4)におけるR、R、R及びR、並びに一般式(5)におけるR1’、R2’、R3’及びR4’が、3,5−キシリル基である前記[4]〜[6]のいずれかに記載のルテニウム錯体。
[8]前記[5]〜[7]のいずれかに記載のルテニウム錯体からなる不斉還元触媒。
[9]前記[8]に記載の不斉還元触媒を用いて、塩基化合物の存在下、カルボニル基を不斉水素化することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
[10]前記[8]に記載の不斉還元触媒を用いて、塩基化合物の存在下、カルボニル基を不斉水素移動還元することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
【0017】
[11]一般式(A)
[RuX(L)(P⌒P)]X (A)
(式(A)中、Ruはルテニウム原子を示し、Xはハロゲン原子を示し、Lはアレーンを示し、P⌒Pはジホスフィンを示す。)
で示されるルテニウム化合物に、一般式(8)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【0020】
【化7】

【0021】
で示されるルテニウム錯体の製造方法。
[12] 一般式(B)
[RuX2(L)] (B)
(式(B)中、Ruはルテニウム原子を示し、Xはハロゲン原子を示し、Lはアレーンを示し、mは2以上の自然数を示す。)
で示されるルテニウム化合物に、P⌒Pで表されるジホスフィンを反応させた後に、一般式(8)
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【0024】
【化9】

【0025】
で示されるルテニウム錯体の製造方法。
[13]反応が溶媒の存在下で行われ、使用する溶媒がアルコール溶媒であることを特徴とする前記[11]又は[12]に記載の製造方法。
[14]さらに、塩基を添加することを特徴とする前記[11]から[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(4)

P−Q−PR (4)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
で表されるジホスフィンである前記[11]から[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]P⌒Pで表されるジホスフィンが、光学活性ジホスフィンである前記[11]から[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(5)
【0026】
【化10】

(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。)
で表される光学活性ジホスフィンである前記[11]から[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]一般式(4)におけるR、R、R及びR、並びに一般式(5)におけるR1’、R2’、R3’及びR4’が、3,5−キシリル基である前記[15]から[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]前記一般式(1)におけるXがハロゲンイオンであるルテニウム錯体に、他のアニオン性基を有する化合物を反応させて、一般式(1)におけるXがハロゲンイオン以外のアニオン性基を有するルテニウム錯体の製造方法。
[20]他のアニオン性基を有する化合物が、カルボン酸のアルカリ金属塩、又はスルホン酸のアルカリ金属塩である前記[19]に記載の製造方法。
[21]カルボン酸のアルカリ金属塩が酢酸ナトリウムであり、スルホン酸のアルカリ金属塩がトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムである、前記[20]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によって、新規ルテニウム錯体及び該錯体を触媒とする光学活性アルコール化合物の製造方法が提供される。本発明による前記新規ルテニウム錯体触媒は、従来のジホスフィン及びジアミンを配位子とする光学活性なルテニウム錯体触媒に比べて、カルボニル化合物の不斉水素化反応における反応性、特に転化率や選択率に優れ、またエナンチオ選択性などの点においても優れ、工業的利用価値が極めて高いものである。
また、ルテニウム錯体は高価であることから、反応に使用するルテニウム錯体の投入量を最小限にすることが望ましい。本発明により、従来の不斉還元錯体よりも触媒量が少量で反応が進行する触媒活性の高い錯体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるルテニウム錯体は、−Ar−で表される二価のアリーレン基を有していることを特徴とするものであり、当該アリーレン基の一方がルテニウム原子とRu−炭素結合で結合し、他方が配位子のジアミン化合物の炭素鎖中の炭素原子と炭素−炭素結合で結合していることを特徴とするものである。そして、配位子のジアミン化合物の2個の窒素原子のいずれもがsp3混成であることを特徴とするものである。なお、当該アリーレン基はアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
本発明のルテニウム錯体は、ルテナサイクル構造を有するルテニウム錯体であることを特徴のひとつとしている。
本発明の一般式(1)のルテニウム錯体において、Arで表される、置換基を有していてもよいアリーレン基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の二価のアリーレン基、又は1個〜4個、好ましくは1〜3個又は1〜2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3〜8員、好ましくは5〜8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の二価のヘテロアリーレン基が挙げられる。好ましいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ピリジンジイル基、チオフェンジイル基、フランジイル基等が挙げられるが、フェニレン基が特に好ましい。二価のアリーレン基の結合する位置は特に制限はないが、隣接する2個の炭素原子の位置(オルト位)が好ましい。
また、前記アリーレン基に置換する置換基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、及び三置換シリル基等が挙げられる。
【0029】
以下、アリーレン基に置換する置換基について説明する。
直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、該アルキル基はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基で、1又は2以上置換されていてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したような炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
ヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
三置換シリル基としては、前記したアルキル基やアリール基で三置換されたシリル基が挙げられ、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
【0030】
本発明の一般式(1)、(2)及び(3)で表されるルテニウム錯体において、Xで表されるアニオン性基としては、ヒドリドイオン(H);塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、又はヨウ素イオン(I)等のハロゲンイオン、BH、BF、BPh、PF、アセトキシ基(OAc)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(OTf)等の複合アニオンなどが挙げられる。この中でもハロゲンイオンが好ましい。
本発明の一般式(1)、(2)及び(3)で表されるルテニウム錯体において、R、R、R、R、R、R、R、RN1、RN2、RN3及びRN4で表される基を以下に説明する。
【0031】
〜C20アルキル基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。
〜C20アルケニル基としては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖状又は分枝状のアルケニル基が挙げられ、例えば、エテニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、1−ブテン−2−イル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
〜C20アルコキシ基としては、前記した炭素数1〜20のアルキル基に酸素原子結合した基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリクロロメチル基などが挙げられる。
〜Cシクロアルキル基としては、炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられる。例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
三置換シリル基としては、前記したアルキル基やアリール基で三置換されたシリル基が挙げられ、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基などが挙げられる。
〜C20アラルキル基としては、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基に、前記した炭素数1〜19のアルキル基が結合した、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15、炭素数7〜10のアラルキル基が挙げられる。例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等が挙げられる。
また、前記C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、C〜Cシクロアルキル基、ヘテロアリール基、三置換シリル基、及びC〜C20アラルキル基に置換する置換基としては、前述したような直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、及び三置換シリル基等が挙げられる。
【0032】
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜14、炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したようなメチル基、イソプロピル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
置換基を有していてもよいヘテロ環基としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含む飽和又は不飽和の5員環又は6員環状の基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。これらヘテロ環基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述したようなメチル基、イソプロピル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
また、RとRとで形成するアルキレン基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、これらアルキレン基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
とRとで形成するアルキレンジオキシ基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレンジオキシ基が挙げられる。例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。
N1とRとで形成するアルキレン基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等が挙げられ、これらアルキレン基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0033】
本発明の一般式(1)、(2)及び(3)で表されるルテニウム錯体において、P⌒Pで表されるジホスフィン(ビスホスフィンということもある。)としては、ルテニウムに配位することができるジホスフィンであれば特に制限はないが、例えば下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。

P−Q−PR (4)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
【0034】
上記式中、R、R、R及びRで表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。
これらアリール基は1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
当該アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。
前記アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などが挙げられる。
【0035】
また、R、R、R及びRで表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基などの置換基で、1又は2以上置換されていてもよい。
置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルコキシ基などの置換基で、1又は2以上置換されていてもよい。
また、RとRとで及び/又はRとRとで形成してもよい環としては、R、R、R及びRが結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環などが挙げられ、これらの環は光学活性体でもよい。
【0036】
また、Qは、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、フェロセンジイル基などが挙げられる。
二価のアリーレン基としては、前記してきたアリール基から誘導される二価のアリーレン基が挙げられる。好ましいアリーレン基としてはフェニレン基が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;水酸基;アミノ基;又は置換アミノ基などで置換されていてもよい。
ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基及びビピリジンジイル基としては、軸不斉構造を有する1,1’−ビアリール−2,2’−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基及びビピリジンジイル基は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基などで置換されていてもよい。
パラシクロファンジイル基としては前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基などのアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基などで置換されていてもよい。
また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
これらの置換アミノ基としては、1個又は2個の炭素数1〜6のアルキルで置換されたアミノ基が挙げられる。
【0037】
一般式(4)で表されるジホスフィンの具体例としては、例えば公知の光学活性なジホスフィン類が挙げられ、そのうちの好ましい例の一つとして下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。)
で表される光学活性ジホスフィンが挙げられる。
一般式(5)における、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、アルキレン基、及びアルキレンジオキシ基は、いずれも前記したものが挙げられる。2個の基で形成される芳香環は、隣接する原子と共に6員の芳香環を形成する場合が挙げられる。これらの形成された芳香環は、アルキル基やアルコキシ基などで置換されていてもよい。
【0040】
前記した一般式(5)における好ましい例としては、例えば、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で、単数又は複数置換されていてもよいフェニル基であって、RとRとでテトラメチレン基;炭素数1〜4のアルキル基若しくはフッ素原子などで置換されていてもよいメチレンジオキシ基;又は隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成し、RとRとでテトラメチレン基;炭素数1〜4のアルキル基若しくはフッ素原子などで置換されていてもよいメチレンジオキシ基;又は隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成する場合が挙げられる。
さらに、本発明のより好ましい光学活性ジホスフィンの具体例としては、下記の一般式(6)又は一般式(7)で表される光学活性ジホスフィンが挙げられる。
【0041】
【化12】

【0042】
一般式(6)におけるRP1及びRP2の具体例、及び一般式(7)におけるRP3及びRP4の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基などが挙げられる。
【0043】
本発明の一般式(4)、(5)、(6)及び(7)で表されるジホスフィンの具体例としては、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(binap)、2,2’−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(tolbinap)、2,2’−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(xylbinap)、2,2’−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル(xylyl-H8-binap)、2,2’−ビス(ジ−p−t−ブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(segphos)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)(dm-segphos)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(xylyl-MeO-biphep)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン(xylyl-p-phos)、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン、4,12−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、4,12−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、1,1’−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン、1,13−ビス(ジフェニルホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン、1,13−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−7,8−ジヒドロ−6H−ジベンゾ[f,h][1,5]ジオキソニン(xylyl-C3-tunephos)、6,6’−ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−5,5’−ビ−1,4−ベンゾジオキシン(xylyl-synphos)等が挙げられる。
【0044】
上記以外にも、本発明で用いることのできるビスホスフィン化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、シクロヘキシルアニシルメチルホスフィン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5−ノルボルネン、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン、1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアルコール、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ジシクロペンタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、1,1−(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−6,6’−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、1,1−(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−6,6’−ジイル)ビス(メチレン)グアニジン、(6,6’−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6’−ビス(トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ジメタンアミン・臭化水素酸塩、(4,4’−ビス(トリメチルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(トリメチルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(トリイソプロピルシリル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホン酸、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホン酸、テトラエチル2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホネート、テトラエチル 2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイルジホスホネート、(4,4’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジクロロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジクロロ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジブロモ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジブロモ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルメタノール)、(4,4’−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’−ビス(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘキサコサフルオロ−7−(ペルフルオロヘキシル)トリデカン−7−イル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(7,7’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(7,7’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、4,4’−ジ−tert−ブチル−4,4’,5,5’−テトラヒドロ−3H,3’H−3,3’−ビジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスファピン、1,2−ビス(3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]ホスファピン−4(5H)−イル)ベンゼン、3,3’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビフェナンスレン、3,3’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−4,4’−ビフェナンスレン、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(メチレン)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノオキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノオキシ)−1,1’−ビナフチル、(3,3’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジメチル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジフェニル−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、N2,N2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、N2,N2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、(SP)−1−[(S)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(RP)−1−[(R)−α−(ジメチルアミノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンジル]−2−ジフェニルホスフィノフェロセン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジフェニルホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジシクロホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(S)−1−{SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(2−ノルボニル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルジ(3,5−キシリル)ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(R)−1−{(RP)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、(S)−1−{(SP)−2−[2−[ビス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェニル]フェロセニル}エチルビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、3,3’,4,4’−テトラメチル−1,1’−ジフェニル−2,2’,5,5’−テトラヒドロ−1H,1’H−2,2’−ビホスホール、1,1’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビホスホラン、2,2’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1H,1’H−1,1’−ビスイソホスホインドール、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)エタン、1,2−ビス(2,4−ジメチルホスフェタン−1−イル)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)ベンゼン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジエチルホスホラン−1−イル)フラン−2,5−ジオン、3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1−フェニル−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ビス(2,5−ジメチルホスホラン−1−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、1−((1R,2S,4R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−((2R,5S)−2,5−ジメチル−7−ホスファビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)ベンゼン、1,1’−(ベンゾ[b]チオフェン−2,3−ジイル)ビス(2,5−ジメチルホスホラン)、(2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−6,6’−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2’,4,4’−テトラメチル−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−2H,2’H−6,6’−ビベンゾ[b][1,4]ジオキセピン−7,7’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシ
リル)ホスフィン)、((6R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、((6R)−6,7−ジメチル−6,7−ジヒドロジベンゾ[e,g][1,4]ジオキソシン−1,12−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5,5’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチルビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジオール、(3,3’,6,6’−テトラメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’,6,6’−テトラメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(3,3’−ジイソプロピル−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(3,3’−ジイソプロピル−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(6,6’−ジメトキシ−3,3’−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(6,6’−ジメトキシ−3,3’−ビス(p−トリルオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジイル ビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−6,6’−ジメトキシビフェニル−3,3’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、(5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5,5’−ジクロロ−6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジアセテート、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジアセテート、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2,2−ジメチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2−メチルプロパノエート)、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイルビス(2−メチルプロパノエート、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ビフェニル−2,2’−ジイル ジシクロヘキサンカルボキシレート、(4,4’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(4,4’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4’,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(5−メトキシ−4,6−ジメチル−4’,6’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラメチル−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−7,7’−ビベンゾフラン、6,6’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−7,7’−ビベンゾフラン、(2,2,2’,2’−テトラフルオロ−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)、(2,2,2’,2’−テトラフルオロ−4,4’−ビベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5,5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィン)、2−(ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−[3,5−ジオサ−4−ホスファ−シクロヘプタ[2,1−a;3,4−a’]ジナフタレン−4−イル]−1,2−ジヒドロキノリン、4,12−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、7,7’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビインダン(Xyl-SDP)、7,7’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビインダン(SDP)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEphos)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(DIOP)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(PROPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(CHIRAPHOS)、1,2−ビス[(2−メトキシフェニル)(フェニル)ホスフィノ]エタン(DIPAMP)、3,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1−ベンジルピロリジン(DEGUPHOS)、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン(NORPHOS)、1−ターシャリーブトキシカルボニル−4−ジフェニルホスフィノ−2−(ジフェニルホスフィノメチル)ピロリジン(BPPM)、(2,2’−ビス−(ジベンゾフラン−3,3−ジイル)−ビス−ジフェニルホスフィン(BIBFUP)、2,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3‐ビナフト[b]フラン(BINAPFu)、2,2’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)‐3,3’‐ビ[ベンゾ[b]チオフェン](BITIANP)、N,N’−ジメチル−7,7’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−8,8’−ビ−2H−1,4−ベンズオキサジン(Xyl-Solphos)2,3−ビス(ターシャリーブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP)、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、2,4−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)ペンタン(XylSKEWPHOS)、4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2’,5,5’−テトラメチル−3,3’−ビチオフェン(TMBTP)、3,3’−ビス(ジフェニルホスホニル)−1,1’−2,2’−ビインドール(N-Me-2-BINPO)、(2,2’,5,5’−テトラメチル−3,3’−ビチオフェン−4,4’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(BITIANP)、(4,4’,6,6’−テトラメチル−3,3’−ビベンゾ[b]チオフェン−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(tetraMe-BITIANP)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ジメチル−1H,1’H−2,2’−ビインドール(BISCAP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビベンゾフラン(BICUMP)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビベンゾ[d]イミダゾール(BIMIP)などが挙げられる。
本発明で用いることのできる上記具体例で示したジホスフィンは、光学活性ジホスフィンであっても良い。
【0045】
続いて、本発明のルテニウム錯体の製造法について説明する。
本発明のルテニウム錯体は、一般式(A)で示されるルテニウム化合物にジアミン化合物を反応させることにより製造することができる。また、本発明のルテニウム錯体は、一般式(B)で示されるルテニウム化合物に、P⌒Pで表されるジホスフィン化合物を反応させた後にジアミン化合物を反応させることにより製造することができる。
一般式(B)で示されるルテニウム化合物(以下、アレーン錯体ともいう。)は、市販されているもの、又は既報の方法に準じて製造することができる。また、一般式(A)で示されるルテニウム化合物(以下、アレーン−ホスフィン錯体ともいう。)は、市販されているもの、又は既報の方法に準じてP⌒Pで表されるジホスフィン化合物と、一般式(B)で示されるアレーン錯体とを反応させて製造することもできる。
一般式(A)又は(B)におけるLで示されるアレーンとしては、ルテニウム原子に配位できる置換基を有してもよい炭素数6から20の炭素原子を有する芳香族化合物、好ましくは炭素環式芳香族化合物が挙げられる。好ましいアレーンとしては、ベンゼン;o−、m−、又はp−キシレン;o−、m−、又はp−シメン;メシチレンなどのトリメチルベンゼンなどが挙げられる。一般式(B)で示されるルテニウム化合物の好ましい例としては、例えば、[RuCl(benzene)]、[RuCl(p−cymene)]、[RuCl(mesitylene)]等の芳香族化合物が配位したルテニウム化合物が挙げられる。また、一般式(A)で示されるルテニウム化合物の好ましい例としては、例えば、[RuCl(benzene)(P⌒P)]Cl、[RuCl(p−cymene)(P⌒P)]Cl、[RuCl(mesitylene)(P⌒P)]Cl等の芳香族化合物が配位したルテニウム化合物が挙げられる。
ジアミン化合物としては、末端に2つのアミノ基を有し、少なくとも一方のアミノ基のα位にアリール基が置換しているジアミン化合物が挙げられ、好ましいジアミン化合物としては、下記一般式(8)、
【0046】
【化13】

【0047】
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表されるジアミン化合物が挙げられる。
式(8)中の各置換基の記号の意味は前述と同じ意味を表す。
【0048】
本発明で用いられる一般式(8)で表されるジアミン化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン(DPIPEN)、1−メチル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAMEN)、1−イソブチル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAIPEN)、1−フェニル−2,2−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1,1−ジフェニルエチレンジアミン(1,1−DPEN)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(DAEN)、1−イソプロピル−2,2−ビス(3−メトキシフェニル)エチレンジアミン(3−DAIPEN)等が挙げられる。上記のジアミン化合物は光学活性ジアミン化合物でも良い。光学活性ジアミン化合物の場合には、化合物の名称の前に(R)又は(S)などの光学活性であることを示す記号を付加する。
【0049】
本発明のルテニウム錯体を製造する方法は、具体的には以下の通りである。
アレーン−ホスフィン錯体の調整方法は、J.CHEM.SOC.,CHEM.COMMUN 1208(1989)等に記載されており、該アレーン−ホスフィン錯体を調製した溶液のまま、又は晶析、溶媒乾固等により得られた固形物を、アレーン−ホスフィン錯体に対し1当量以上、好ましくは1当量から20当量、より好ましくは1から10当量、更に好ましくは1.1〜5当量の一般式(8)で表されるジアミン化合物と反応させることにより本発明のルテニウム錯体の製造を行うことができる。また本製造法はアルコールの存在下で行われるが、該アルコールは単独又は他の溶媒と混合して使用することが好ましい。ここで用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコールが挙げられる。好ましいアルコールとしては、メタノール及びエタノールが挙げられる。また、添加物は必ずしも必要ではないが、アレーン−ホスフィン錯体に対し0.1から2当量、好ましくは0.5から1.5当量、更に好ましくは0.9から1.1当量の塩基を添加することにより効率よく錯体の製造を行うことができる。
即ち、本発明は、アレーン−ホスフィン錯体と一般式(8)で表されるジアミン化合物とを、低級アルコールの存在下で反応させて、一般式(1)で表されるルテニウム錯体を製造する方法を提供する。より詳細には、本発明の方法は、塩基、特に有機塩基の存在下で行われる。
【0050】
塩基の種類としては、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、炭酸カリウム(KCO)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、カリウムメトキシド(KOCH)、ナトリウムメトキシド(NaOCH)、リチウムメトキシド(LiOCH)、ナトリウムエトキシド(NaOCHCH)、酢酸ナトリウム(CHCONa)、カリウムイソプロポキシド(KOCH(CH)、カリウムtert−ブトキシド(KOC(CH)、カリウムナフタレニド(KC10)、炭酸セシウム(CsCO)、炭酸銀(AgCO)等が挙げられる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の有機アミン類が挙げられる。
【0051】
本発明のルテニウム錯体は、不斉還元触媒として極めて優れた触媒活性を有している。 本発明のルテニウム錯体を不斉還元触媒として用いることにより、カルボニル基を不斉還元してアルコール類を製造することができる。本発明の製造方法におけるカルボニル基としては、ケト基、エステル基などの炭素−酸素二重結合が挙げられるが、好ましいカルボニル基としてはケト基が挙げられる。特に、本発明の不斉還元触媒は、エナンチオ選択性などの点においても優れ、プロキラルなケト基から光学活性アルコールを製造する方法に適している。
【0052】
本発明のアルコール類の製造方法は、無溶媒又は溶媒中で好適に実施することができるが、溶媒を使用することが好ましい。用いられる溶媒としては、基質及び触媒を溶解できるものが好ましく、単一溶媒あるいは混合溶媒が用いられる。具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。この中でもエーテル類又はアルコール類が好ましく、特に好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール又は2−プロパノールが挙げられる。溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができる。反応は必要に応じ撹拌下に行われる。
触媒の使用量は、還元される基質、反応条件や触媒の種類等によって異なるが、通常、還元基質に対するルテニウム金属としてのモル比で0.00001モル%〜1モル%、好ましくは0.0001モル%〜0.5モル%の範囲である。
【0053】
また本発明の不斉還元はさらに塩基化合物を加えて行われるのが好ましい。用いられる塩基化合物としては、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、炭酸カリウム(KCO)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)等が挙げられる。有機塩基としては、カリウムメトキシド(KOCH)、ナトリウムメトキシド(NaOCH)、リチウムメトキシド(LiOCH)、ナトリウムエトキシド(NaOCHCH)、カリウムイソプロポキシド(KOCH(CH)、カリウムtert−ブトキシド(KOC(CH)、カリウムナフタレニド(KC10)等のアルカリ・アルカリ土類金属の塩、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン等の有機アミン類が挙げられる。また本発明で使用される塩基は水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物類であってもよい。また、本発明で用いられる塩基には、アミン−ホスフィンルテニウムヒドリド錯体を発生させるものであれば、上記塩基に限定されることなく、水素等も使用可能である。これら塩基は夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。これら塩基化合物としては、無機塩基、アルカリ・アルカリ土類金属の塩等が好ましい。
塩基化合物の使用量としては、ルテニウム錯体のモル数に対して、1〜10000当量、好ましくは10〜5000当量、若しくは還元基質に対する塩基化合物のモル比で0.00001モル%〜50モル%、好ましくは0.0001モル%〜30モル%の範囲である。
【0054】
本発明の方法において、不斉還元として不斉水素化を行う際の反応温度は、−30℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃である。反応温度が低すぎると未反応の原料が多く残存する場合があり、また高すぎると、原料、触媒等の分解が起こる場合があり、好ましくない。本発明においては、例えば不斉水素化反応は−30〜30℃の低温でも反応することができるという点に1つの特徴がある。
【0055】
本発明において、不斉水素化を行う際の水素の圧力は、本触媒系が極めて高活性であることから常圧で十分反応は進行するが、好ましくは0.1MPa〜10MPa、より好ましくは0.1MPa〜6MPa、さらに好ましくは0.1MPa〜2MPaである。また反応時問は1分〜72時間、好ましくは30分から48時間で十分に高い原料転化率を得ることができる。
【0056】
本発明の不斉還元において、不斉水素移動反応は水素供与体の共存下、本発明のルテニウム錯体を反応させることにより行われる。該水素供与体としては、ギ酸又はその塩、水酸基が置換している炭素原子のα 位に水素原子を有するアルコールである2−プロパノール等の水素移動型還元反応に一般的に用いられるようなものであれば特に限定されないが、2−プロパノールと塩基化合物との組み合わせが好ましい。ここで用いられる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミンなどの第3級有機アミン類やLiOH、NaOH、KOH、KCOなどの無機塩基が挙げられる。塩基は、ルテニウム錯体に対して過剰量、例えばモル比で1〜10000倍の範囲で用いられる。
反応は通常、水素供与体が液体であればそれを反応溶媒として利用できるが、原料を溶解させるために、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非水素供与性溶媒を単独又は混合して助溶媒として使用することも可能である。
【0057】
触媒であるルテニウム錯体の使用量は、通常、還元基質に対するルテニウム金属としてのモル比で0.000001モル%〜5モル%、好ましくは0.0001モル%〜2モル%の範囲から選ばれる。
還元基質に対する水素供与体の量としては、通常等モル量以上用いられ、このうち水素供与体がギ酸又はその塩である場合には、1.5倍モル量以上が好ましく、また、20倍モル量以下、好ましくは10倍モル量以下の範囲で用いられる。一方、水素供与体が2−プロパノール等の場合には、反応平衡の観点から基質に対して1000モル倍程度の過剰量が用いられる。
反応温度は−70〜100℃、好ましくは0〜70℃の範囲から選ばれる。
反応圧力は特に限定されず、通常0.5〜2気圧、好ましくは常圧のもとで行われる。 反応時間は0.5〜100時間、通常は1〜50時間である。
反応終了後は、抽出、濾過、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等、通常用いられる精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的のアルコール類を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0059】
H−NMRスペクトル及び31P−NMRスペクトルの測定はバリアン社製のMERCURY plus 300をMS測定は日本電子社製のJMS−T100GCVまたは島津製作所社製のLCMS−IT−TOFを使用した。
【0060】
(実施例1)
RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の製造:
【0061】
【化14】

【0062】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 3.07g(5.0mmol)、(S)−XylBINAP 7.35g(10.0mmol)及びメタノール110mLを200mL四つ口フラスコに入れた。混合物を50℃に加熱し2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylbinap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、ジエチルアミン736mg(10mmol)、(S)−DAIPEN 3.48g(11.1mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、酢酸ブチルに溶解し析出した塩を濾別した。濾液を濃縮後、ヘプタン(110mL)を加えた混合物を−10℃まで冷却し析出した結晶を濾過して表題化合物11.62g、収率98%で得た。
31P−NMR(C):δ
53.2(d, J=38.6Hz), 61.0(d, J=38.6Hz)
TOF−mass(FD):m/z=1184.3(理論値:1184.4)
ESI:m/z=1184.3967(理論値:1184.3890)
元素分析(wt%)Ru 8.6, P 5.2, Cl 3.1, H 5.77, C 71.48, N 2.29〔実測値〕
元素分析(wt%)Ru 8.5, P 5.2, Cl 3.0, H 6.2, C 72.0, N 2.4〔計算値〕
【0063】
(比較例1)
trans−RuCl[(R)−xylbinap][(R)−daipen]の製造:
【0064】
【化15】

【0065】
窒素気流下、[RuCl(p-cymene)((R)−xylbinap)]Cl 1.04g(1mmol)、トルエン10mLの混合液に(R)−DAIPEN 314.4mg(1mmol)を加え80℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮し表題化合物1.2gを得た。
31P−NMR(C):δ
44.1(d, J=37.3Hz), 46.0(d, J=37.3Hz)
TOF−mass(FD):m/z=1220.3(理論値:1221.9)
元素分析(wt%)Ru 8.1, P 4.6, Cl 5.9, H 5.81, C 69.86, N 2.21〔実測値〕
元素分析(wt%)Ru 8.3, P 5.1, Cl 5.8, H 6.1, C 69.8, N 2.3〔計算値〕
【0066】
(実施例2)
RuCl[(R)−xylbinap][(R)−daipen]の製造:
【0067】
【化16】

【0068】
(S)−XylBINAPを(R)−XylBINAP、(S)−DAIPENを(R)−DAIPENに変更した以外は、実施例1と同様に行い表題化合物を収率98%で得た。
【0069】
(実施例3)
RuCl[(R)−dm−segphos][(R)−daipen]の製造:
【0070】
【化17】

【0071】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 4.24g(6.92mmol)、(R)−DM−SEGPHOS 10.00g(13.83mmol)及びメタノール200mLを300mL四つ口フラスコに入れた。混合物を50℃に加熱し2時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、トリエチルアミン1.40g(13.8mmol)。(R)−DAIPEN 6.52g(20.7mol)を加えた後、45℃で20時間攪拌した。反応液を−10℃まで冷却し析出した結晶を濾過して表題化合物を収率59%で得た。
31P−NMR(CDCl):δ
51.0(d, J=37.3Hz), 55.8(d, J=37.4Hz)
TOF−mass(FD): m/z = 1172.3(理論値:1172.3)
【0072】
(比較例2)
trans−RuCl[(R)−dm−segphos][(R)−daipen]の製造:
【0073】
【化18】

【0074】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)((R)−dm−segphos)]Cl 1.03g(1mmol)、トルエン10mLの混合液に(R)−DAIPEN 314.4mg(1mmol)を加え80℃で2時間攪拌した。反応液を濃縮し表題化合物1.2gを得た。
31P−NMR(C):δ
46.3(d, J=37.4Hz), 47.0(d, J=38.6Hz)
比較例1及び2で示されるように、ジアミン化合物を、アルコール不存在下で反応させた場合には、Ru−炭素結合を有していないトランス体しか製造することができなかった。
【0075】
(実施例4)
RuI[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の製造:
【0076】
【化19】

【0077】
[RuCl(p−cymene)]を、[RuI(p−cymene)]に変更した以外は、実施例1と同様に行い表題化合物を収率55%で得た。
31P−NMR(C):δ
53.2(d, J=38.6Hz), 62.6(d, J=38.7Hz)
【0078】
(実施例5)
RuCl[(R)−dm−segphos][(S)−daipen]の製造:
【0079】
【化20】

【0080】
(R)−DAIPENを(S)−DAIPENに変更した以外は実施例3と同様に行い、表題化合物を収率60%で得た。
31P−NMR(C):δ
52.6(d, J=38.7Hz), 57.5(d, J=38.6Hz)
【0081】
(実施例6)
RuI[(R)−dm−segphos][(R)−daipen]の製造:
【0082】
【化21】

【0083】
[RuCl(p−cymene)]を、[RuI(p−cymene)]に変更した以外は、実施例3と同様に行い収率50%で得た。
31P−NMR(C):δ
52.1(d, J=38.7Hz), 57.6(d, J=38.7Hz)
【0084】
(実施例7)
RuCl[(R)−segphos][(R)−daipen]の製造:
【0085】
【化22】

【0086】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 153.1mg(0.25mmol)、(R)−SEGPHOS 305.3mg(0.5mmol)及びエタノール18mL、トルエン15mLを50mL四つ口フラスコに入れた。混合物を50℃に加熱し2時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、(R)−DAIPEN 471mg(1.50mmol)及びエタノール4mLの混合物中に滴下した後、同温で20時間攪拌した。反応液を−20℃まで冷却し析出した結晶を濾過して表題化合物を収率36%で得た。
31P−NMR(CDCl):δ
53.0(d, J=38.7Hz), 57.7(d, J=38.7Hz)
TOF−mass(FD):m/z=1060.8(理論値:1060.2)
【0087】
(実施例8)
RuCl[(S)−xylbinap][(S)−damen]の製造:
【0088】
【化23】

【0089】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 612.8mg(1.0mmol)、(S)−XylBINAP 1.47g(2.0mmol)及びメタノール15mLの混合物を50℃に加熱し2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylbinap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、ジエチルアミン147mg(2mmol)、(S)−1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロパン−1,2−ジアミン(以下、(S)−DAMENという。)0.86g(3.0mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物1.35g、収率59%で得た。
31P−NMR(C):δ
54.4(d, J=38.7Hz), 61.8(d, J=38.7Hz)
【0090】
(実施例9)
RuCl[(S)−xylyl−meo−biphep][(S)−daipen]の製造:
【0091】
【化24】

【0092】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 44.0mg(0.072mmol)、(S)−Xylyl−MeO−BIPHEP 99.8mg(0.144mmol)及びメタノール3mLの混合物を50℃に加熱し2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylyl−meo−biphep)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミン14.5mg(0.14mmol)、(S)−DAIPEN 67.9mg(0.216mmol)を加え、60℃で9時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物104.3mg、収率63%で得た。
31P−NMR(C):δ
52.1(d, J=38.7Hz), 58.6(d, J=39.9Hz)
TOF−mass(FD):m/z=1144
【0093】
(実施例10)
RuCl[(S)−xylyl−H8−binap][(S)−daipen]の製造:
【0094】
【化25】

【0095】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 61.2mg(0.1mmol)、 (S)−Xylyl−H8−BINAP 149.2mg(0.2mmol)及びメタノール3mLの混合物を50℃に加熱し2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylyl−H8−binap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミン20.3mg(0.2mmol)、(S)−DAIPEN 94.3mg(0.3mmol)を加え、60℃で8時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物110.0mg、収率46%で得た。
31P−NMR(C):δ
52.6(d, J=39.9Hz), 55.0(d, J=39.6Hz)
【0096】
(実施例11)
RuCl[(+)−xylyl−c3−tunephos][(S)−daipen]の製造:
【0097】
【化26】

【0098】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 61.2mg(0.1mmol)、(+)−Xylyl−C3−TUNEPHOS 141.4mg(0.2mmol)及びメタノール3mLの混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((+)−xylyl−c3−tunephos)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミン20.3mg(0.2mmol)、(S)−DAIPEN 95.1mg(0.3mmol)を加え、60℃で8時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物134.1mg、収率58%で得た。
31P−NMR(C):δ
53.6(d, J=38.7Hz), 57.5(d, J=38.6Hz)
【0099】
(実施例12)
RuCl[(R)−xylyl−synphos][(R)−daipen]の製造:
【0100】
【化27】

【0101】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 61.2mg(0.1mmol)、(R)−Xylyl−SYNPHOS 150.3mg(0.2mmol)及びメタノール3mLの混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((R)−xylyl−synphos)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミン20.3mg(0.2mmol)、(R)−DAIPEN 95.0mg(0.3mmol)を加え、60℃で8時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物124.9mg、収率52%で得た。
31P−NMR(Toluene−d):δ
52.0(d, J=40.1Hz), 57.5(d, J=39.9Hz)
【0102】
(実施例13)
RuCl[(S)−xylyl−p−phos][(S)−daipen]の製造:
【0103】
【化28】

【0104】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 61.2mg(0.1mmol)、(S)−Xylyl−P−Phos 151.5mg(0.2mmol)及びメタノール3mLの混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((R)−xylyl−P−phos)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、トリエチルアミン20.3mg(0.2mmol)、(S)−DAIPEN 95.1mg(0.3mmol)を加え、60℃で6時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製し、表題化合物149.6mg、収率62%で得た。
31P−NMR(Toluene−d):δ
52.1(d, J=38.6Hz), 58.3(d, J=39.9Hz)
【0105】
以下の実施例において、3−キヌクリジノールの転化率はガスクロマトグラフィー(HP−1、Agilent社製,注入口温度250℃,検出器温度250℃,カラム初期温度100℃(5分保持)−昇温速度10℃/分−最終温度250℃)を用い、また光学純度(%ee)は生成物をベンゾイル化した後、高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK AD−H,ダイセル化学工業社製,溶離液;ヘキサン:2−プロパノール:ジエチルアミン=90:10:0.1)を用いてそれぞれ測定した。
【0106】
(実施例14)
(S)−3−キヌクリジノールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、3−キヌクリジノン(2.5g,20.
0mmol)、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](0.5mg,0.40μmol,水素化基質の50,000分の1モル等量)を仕込んだ。窒素置換した後、2−プロパノール(15mL)及びカリウムt−ブトキシドの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,1.0mL,0.1mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧3MPaにて30℃、6時間攪拌した。反応液を分析したところ転化率99%以上、光学純度91.2%eeであった。
【0107】
(実施例15)
(S)−3−キヌクリジノールの製造:
実施例14において、反応温度30℃を10℃に変えた以外は実施例14と同じ操作を行った。反応液を分析したところ転化率99%以上、光学純度94.6%eeであった。
【0108】
(比較例3)
(S)−3−キヌクリジノールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、3−キヌクリジノン(1.0g,8.0mmol)、trans−RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](0.5mg,0.40μmol,水素化基質の20,000分の1モル等量)を仕込んだ。窒素置換した後、2−プロパノール(6mL)及びカリウムt−ブトキシドの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,0.4mL,0.04mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧3MPaにて30℃、6時間攪拌した。反応液を分析したところ転化率49.8%、光学純度86.2%eeであった。
実施例14及び比較例3との比較から、比較例3の触媒活性は実施例14の触媒活性の5分の1以下にとどまり、得られる生成物の光学純度も低いことを確認した。
【0109】
(実施例16)
(R)−3−キヌクリジノールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、3−キヌクリジノン(2.5g,20.0mmol)、前記実施例3で得られたRuCl[(R)−dm−segphos][(R)−daipen](0.5mg,0.40μmol,水素化基質の50,000分の1モル等量)を仕込んだ。窒素置換した後、2−プロパノール(15mL)及びt−BuOKの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,1.0mL,0.1mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧3MPaにて30℃、6時間攪拌した。反応液を分析したところ転化率99%以上、光学純度91.1%eeであった。
【0110】
(実施例17)
(R)−3−キヌクリジノールの製造:
実施例16において、反応温度30℃を10℃に変えた以外は実施例16と同じ操作を行った。反応液を分析したところ転化率99%以上、光学純度93.7%eeであった。
【0111】
(比較例4)
(R)−3−キヌクリジノールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、3−キヌクリジノン(1.0g,8.0mmol)、trans−RuCl[(R)−dm−segphos][(R)−daipen](0.5mg,0.40μmol,水素化基質の20,000分の1モル等量)を仕込んだ。窒素置換した後、2−プロパノール(6mL)及びt−BuOKの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,0.4mL,0.04mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧3MPaにて30℃、6時間攪拌した。反応液を分析したところ転化率26.7%、光学純度89.7%eeであった。
実施例16及び比較例4との比較から、比較例4の触媒活性は実施例16の触媒活性の5分の1以下にとどまり、得られる生成物の光学純度も低いことを確認した。
【0112】
以下の実施例において、3−(メチルアミノ)−1−(2−チエニル)プロパン−1−オールの転化率は高速液体クロマトグラフィー(イナートシルODS−SP、ジーエルサイエンス社製、溶離液;1%ギ酸水溶液:水:メタノール=5:90:5〜5:5:90)で、また光学純度(%ee)は生成物をベンゾイル化した後、高速液体クロマトグラフィー(CHIRAL CD−Ph、資生堂製,溶離液;0.2M 過塩素酸ナトリウム水溶液:アセトニトリル=30:70)を用いてそれぞれ測定した。
【0113】
(実施例18)
(1S)−3−(メチルアミノ)−1−(2−チエニル)プロパン−1−オールの製造
窒素雰囲気下、オートクレーブに3−メチルアミノ−1−チオフェン−2−イル−プロペノン(水素化基質)、前記実施例2で得られたRuCl[(R)−xylbinap][(R)-daipen](水素化基質の3000分の1モル等量)及び水酸化リチウム(ルテニウム触媒に対し50モル当量)を加え、窒素置換後にエタノール(水素化基質1gあたり3mL)を加え、水素置換後に水素圧4.5MPa、30℃にて6時間撹拌した。反応混合物をHPLCで分析したところ、転化率100%、選択率99.3%、光学純度99%ee以上であった。なお、転化率及び選択率は次の式により算出した。
転化率:100−(基質のHPLC面積%)
選択率:(主生成物のHPLC面積%)/(100−(基質のHPLC面積%))
【0114】
(比較例5)
実施例18において、RuCl[(R)−xylbinap][(R)−daipen]の代わりに、同量のtrans−RuCl[(R)-xylbinap][(R)−daipen]を用いたほかは、実施例18と同じ操作を行った。反応混合物をHPLCで分析したところ、光学純度99%ee以上であったが、転化率は83.9%で、選択率は69.2%しかなかった。
【0115】
(実施例19)
(1S)−3−(メチルアミノ)−1−(2−チエニル)プロパン−1−オールの製造:
実施例18において、RuCl[(R)−xylbinap][(R)−daipen]の使用量を水素化基質の9000分の1モル等量に変更した以外は、実施例18と同じ操作を行った。反応の結果をHPLCで分析したところ、転化率99.3%、選択率95.0%、光学純度99%ee以上であった。
【0116】
(実施例20)
(S)−1−フェニルエタノールの製造:
窒素雰囲気下、シュレンク管に、アセトフェノン(20mmol)、RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](水素化基質の100分の1モル等量)及びt−BuOK(ルテニウム触媒に対し5モル当量)を加え、窒素置換後に2−プロパノール(水素化基質100mgあたり8.3mL)を加え、30℃にて10分間撹拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィー(Chirasil−DEX CB)を用いて分析したところ、転化率94%、光学純度98.4%eeであった。
【0117】
(実施例21)
RuCl[(R)−tolbinap][(R)−daipen]の製造
【0118】
【化29】

【0119】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)((R)−tolbinap)]Cl 1.0g(0.85mmol)、(R)−DAIPEN 440mg(1.28mmol)、トリエチルアミン90mg(0.94mmol)及びメタノール10mLの混合物を、50℃で16時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物250mg、収率26%で得た。
31P−NMR(C):δ
60.8(d, J=39.9Hz), 53.0(J=39.9Hz)
【0120】
(実施例22)
RuCl[(S)−xylbinap][daen]の製造
【0121】
【化30】

【0122】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 153.1mg(0.25mmol)、(S)−XylBINAP 367.5mg(0.50mmol)及びメタノール10mLの混合物を55℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylbinap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、ジエチルアミン36.6mg(0.50mmol)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)エチレンジアミン(以下、DAENという) 149.8mg(0.55mmol)を加え、55℃で15時間攪拌した。反応液を0℃まで冷却し、析出した結晶を濾過して表題化合物を377.6mg、収率66%で得た。
31P−NMR(C):δ
55.0(d, J=40.1Hz), 61.3(d, J=38.7Hz)
【0123】
(実施例23)
RuCl[(S)−dm−segphos][daen]の製造
【0124】
【化31】

【0125】
(S)−XylBINAPを(S)−DM−SEGPHOSに変更した以外は、実施例23と同様に行い表題化合物を225,5mg、収率40%で得た。
31P−NMR(C):δ
54.2(d, J=40.1Hz), 57.5(d, J=40.1Hz)
【0126】
(実施例24)
RuCl[(S)−xylbinap][1,1−DPEN]の製造
【0127】
【化32】

【0128】
DAENを1,1−ジフェニルエチレンジアミン(以下、1,1−DPENという)に変更した以外は、実施例23と同様に行い表題化合物を414.2mg、収率77%で得た。
31P−NMR(C):δ
55.3(d, J=38.9Hz), 60.7(d, J=40.1Hz)
【0129】
(実施例25)
RuCl[(S)−binap][(S)−daipen]の製造
【0130】
【化33】

【0131】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)((S)−binap)]Cl 1.0g(1.08mmol)、(S)−DAIPEN 376.4mg(1.18mmol)、ジエチルアミン80mg(1.08mmol)及びメタノール10mLの混合物を、50℃で20時間攪拌した。反応液を0℃まで冷却し、析出した結晶を濾過して表題化合物を982.5mg、収率85%で得た。
31P−NMR(C):δ
54.6(d, J=40.1Hz), 62.0(d, J=40.1Hz)
【0132】
(実施例26)
RuCl[(S)−xylbinap][(S)−3−daipen]の製造
【0133】
【化34】

【0134】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 64.3mg(0.11mmol)、(S)−XylBINAP 162mg(0.22mmol)及びメタノール6mLの混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylbinap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、ジエチルアミン16mg(0.21mmol)、(S)−1−イソプロピル−2,2−ビス(3−メトキシフェニル)エチレンジアミン(以下、(S)−3−DAIPENという) 72.3mg(0.23mmol)を加え、50℃で20時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物110mg、収率44%で得た。
31P−NMR(C):δ
53.4(d, J=38.8Hz), 59.8(d, J=38.8Hz)
【0135】
(実施例27)
RuCl[(S)−xylbinap][(S)−dpipen]の製造
【0136】
【化35】

【0137】
窒素気流下、[RuCl(p−cymene)] 64.3mg(0.11mmol)、(S)−XylBINAP 162mg(0.22mmol)及びメタノール6mLの混合物を50℃に加熱し、2時間攪拌して[RuCl(p−cymene)((S)−xylbinap)]Clを調製した。反応液を室温まで冷却し、ジエチルアミン16mg(0.21mmol)、(S)−1−イソプロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン(以下、(S)−DPIPENという) 58.0mg(0.23mmol)を加え、50℃で20時間攪拌した。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物150mg、収率61%で得た。
31P−NMR(C):δ
53.0(d, J=38.9Hz), 59.7(d, J=38.9Hz)
【0138】
(実施例28)
Ru(OTf)[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の製造
【0139】
【化36】

【0140】
窒素気流下、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen] 1.00g(0.844mmol)、NaOTf(ナトリウム トリフラート(CFSONa)) 159.7mg(0.928mmol)及びトルエン20mLの混合物を、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ過し、得られたろ液の溶媒を減圧下除去し、表題化合物を1.10g、ほぼ定量的に得た。
31P−NMR(C):δ
52.5(d, J=37.5Hz), 58.6(d, J=37.5Hz)
19F−NMR(C):δ
−59.2(s)
TOF−mass(FD):m/z=1298.24(理論値1298.37)
【0141】
(実施例29)
Ru(OAc)[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の製造
【0142】
【化37】

【0143】
窒素気流下、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen] 100mg(0.0844mmol)、NaOAc 13.8mg(0.169mmol)及びトルエン2mLの混合物を、室温で10時間撹拌した。反応混合物をろ過し、得られたろ液の溶媒を減圧下除去し、表題化合物を95.2mg、収率93%で得た。
31P−NMR(C):δ
51.0(d, J=37.4Hz), 60.6(d, J=38.7Hz)
ESI:m/z=1209.4337(理論値:1209.4397([M+H]))
【0144】
(実施例30)
(S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、前記実施例5で得られたRuCl[(R)−dm−segphos][(S)−daipen](3.5mg,0.003mol,水素化基質の1,000分の1モル等量)を仕込み、窒素置換した後、2−プロパノール(3mL)、1−テトラロン(439mg,3mmol)及びt−BuOKの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,0.3mL,0.03mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧1MPaにて25℃、15時間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(Chirasil−DEX CB)を用いて分析したところ、転化率99%以上、光学純度96%eeであった。
【0145】
(比較例6)
(S)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフトールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、trans−RuCl[(R)−dm−segphos][(S)−daipen](3.6mg,0.003mol,水素化基質の1,000分の1モル等量)を仕込み、窒素置換した後、2−プロパノール(3mL)、1−テトラロン(439mg,3mmol)及びt−BuOKの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,0.3mL,0.03mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧1MPaにて25℃、15時間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(Chirasil−DEX CB)を用いて分析したところ、転化率42%、光学純度90%eeであった。
実施例30及び比較例6との比較から、比較例6の触媒活性は実施例30の触媒活性の2分の1以下にとどまり、得られる生成物の光学純度も低いことを確認した。
【0146】
(実施例31)
(S)−1−フェニル−1,2−エタンジオールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、2−ヒドロキシアセトフェノン(340mg,2.5mmol)、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](1.5mg,0.00125mol,水素化基質の2,000分の1モル等量)を仕込み、窒素置換した後、メタノール(1.25mL)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(1.9mg,0.0125mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧1MPaにて30℃、5時間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(HP−1)を用いて分析したところ、転化率は99%以上であった。光学純度は高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK AS−H,ダイセル化学工業社製,溶離液;ヘキサン:2−プロパノール=92:8)を用いて測定したところ、94%eeであった。
【0147】
(実施例32)
(S)−1−フェニル−1,2−エタンジオールの製造:
実施例31において、RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の使用量を(3.0mg,0.0025mol,水素化基質の1,000分の1モル等量)に、またメタノールの代わりに2−プロパノール(2.5mL)を用いたほかは、実施例31と同じ操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィー(HP−1)を用いて分析したところ、転化率は99%以上であった。光学純度は高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK AS−H,ダイセル化学工業社製,溶離液;ヘキサン:2−プロパノール=92:8)を用いて測定したところ、90%eeであった。
【0148】
(比較例7)
(S)−1−フェニル−1,2−エタンジオールの製造:
実施例32において、RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の代わりにtrans−RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]を用いたほかは、実施例32と同じ操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィー(HP−1)を用いて分析したところ、転化率は0%で表題化合物は得られなかった。
実施例32及び比較例6との比較から、trans−RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]に触媒活性がないことを確認した。
【0149】
(実施例33)
(S)−1−(4−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオールの製造:
攪拌子を入れた100mLオートクレーブに、2−ヒドロキシ−1−(4−メトキシフェニル)エタノン(415mg,2.5mmol)、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](3.0mg,0.0025mol,水素化基質の1,000分の1モル等量)を仕込み、窒素置換した後、メタノール(2.5mL)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(3.8mg,0.025mmol)を加えた。続いて水素置換した後、水素圧1MPaにて30℃、5時間攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィー(HP−1)を用いて分析したところ、転化率は99%以上であった。光学純度は高速液体クロマトグラフィー(CHIRALPAK AS−H,ダイセル化学工業社製,溶離液;ヘキサン:エタノール=95:5)を用いて測定したところ、97%eeであった。
【0150】
(実施例34)
(S)−1−フェニルエタノールの製造:
窒素雰囲気下、シュレンク管にアセトフェノン(120mg,1mmol)、前記実施例1で得られたRuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen](6.1mg,水素化基質の200分の1モル等量)及び2−プロパノール10mLの混合物に、t−BuOKの2−プロパノール溶液(0.1mol/L,0.25mL,0.025mmol)を加え、26℃にて1時間撹拌した。反応混合物をガスクロマトグラフィー(Chirasil−DEX CB)を用いて分析したところ、転化率96%、光学純度99%eeであった。
【0151】
(比較例8)
実施例34において、RuCl[(S)−xylbinap][(S)−daipen]の代わりに、同量のtrans−RuCl[(S)-xylbinap][(S)−daipen]を用いたほかは、実施例34と同じ操作を行った。反応混合物をガスクロマトグラフィー(Chirasil−DEX CB)を用いて分析したところ、転化率21%、光学純度90%eeであった。
実施例34及び比較例8との比較から、比較例8の触媒活性は実施例34の触媒活性の4分の1以下にとどまり、得られる生成物の光学純度も低いことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化38】

(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表す。R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
で表されるルテニウム錯体。
【請求項2】
ルテニウム錯体が、下記一般式(2)
【化39】

(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。R、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、3置換シリル基又は炭素数1〜20アルコキシ基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるルテニウム錯体である請求項1に記載のルテニウム錯体。
【請求項3】
ルテニウム錯体が、下記一般式(3)
【化40】

(式中、P⌒Pはジホスフィンを表し、Xはアニオン性基を表し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表す。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるルテニウム錯体である請求項1又は2に記載のルテニウム錯体。
【請求項4】
P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(4)

P−Q−PR (4)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
で表されるジホスフィンである請求項1〜3のいずれかに記載のルテニウム錯体。
【請求項5】
P⌒Pで表されるジホスフィンが、光学活性ジホスフィンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のルテニウム錯体。
【請求項6】
P⌒Pで表される光学活性ジホスフィンが、下記一般式(5)
【化41】

(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。)
で表される光学活性ジホスフィンである請求項1〜5のいずれかに記載のルテニウム錯体。
【請求項7】
一般式(4)におけるR、R、R及びR、並びに一般式(5)におけるR1’、R2’、R3’、R4’が、3,5−キシリル基である請求項6に記載のルテニウム錯体。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のルテニウム錯体からなる不斉還元触媒。
【請求項9】
請求項8に記載の不斉還元触媒を用いて、塩基化合物の存在下、カルボニル基を不斉水素化することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の不斉還元触媒を用いて、塩基化合物の存在下、カルボニル基を不斉水素移動還元することを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
【請求項11】
一般式(A)
[RuX(L)(P⌒P)]X (A)
(式(A)中、Ruはルテニウム原子を示し、Xはハロゲン原子を示し、Lはアレーンを示し、P⌒Pはジホスフィンを示す。)
で示されるルテニウム化合物に、一般式(8)
【化42】

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
を反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化43】

で示されるルテニウム錯体の製造方法。
【請求項12】
一般式(B)
[RuX2(L)] (B)
(式(B)中、Ruはルテニウム原子を示し、Xはハロゲン原子を示し、Lはアレーンを示し、mは2以上の自然数を示す。)
で示されるルテニウム化合物に、P⌒Pで表されるジホスフィンを反応させた後に、一般式(8)
【化44】

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロ環基を表すか、RとRとでアルキレン基又はアルキレンジオキシ基を形成してもよい。RN1、RN2、RN3及びRN4はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C20アルキル基、置換基を有してもよいC〜C20アルケニル基、置換基を有してもよいC〜C20アラルキル基、又は置換基を有してもよいC〜Cシクロアルキル基を表し、RN1、RN2、RN3及びRN4のうち少なくとも一つは水素原子である。また、RN1とRとでアルキレン基を形成してもよい。nは0〜3の整数を表し、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。)
を反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化45】

で示されるルテニウム錯体の製造方法。
【請求項13】
反応が溶媒の存在下で行われ、使用する溶媒がアルコール溶媒であることを特徴とする請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
さらに、塩基を添加することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(4)

P−Q−PR (4)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、RとRとで及び/又はRとRとで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基、ビピリジンジイル基、パラシクロファンジイル基、又はフェロセンジイル基を表す。)
で表されるジホスフィンである請求項11から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
P⌒Pで表されるジホスフィンが、光学活性ジホスフィンである請求項11から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
P⌒Pで表されるジホスフィンが、下記一般式(5)
【化46】

(式中、R1’、R2’、R3’及びR4’は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基;シクロペンチル基;又はシクロヘキシル基を表し、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R、R及びRのうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよく、R、R及びR10のうちの二つで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。また、RとRとで置換基を有していてもよいアルキレン基;置換基を有していてもよいアルキレンジオキシ基;又は置換基を有していてもよい芳香環を形成していてもよい。ただし、RとRは水素原子ではない。)
で表される光学活性ジホスフィンである請求項11から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
一般式(4)におけるR、R、R及びR、並びに一般式(5)におけるR1’、R2’、R3’及びR4’が、3,5−キシリル基である請求項15から17のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−246435(P2011−246435A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278416(P2010−278416)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】