説明

新規乳酸菌およびこの乳酸菌を用いる発酵食品の製造方法

【課題】原料に含まれるタンパク質および脂質をよく分解し、ペプチドや遊離アミノ酸、香気を生成することで、風味豊かな発酵漬物その他の発酵食品を製造する。
【解決手段】発酵食品の製造には、タンパク質および脂質を分解する能力を有し、過剰な酸味を生産しない乳酸菌であって、受領番号:NITE AP−332号として寄託されているエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1である新規乳酸菌を使用する。発酵漬物を製造する場合、新規乳酸菌をスターターカルチャーとして野菜、果実、水産物などの漬物原料、または、米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの漬物床原料に添加して発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する新規乳酸菌に関する。本発明の新規乳酸菌は、タンパク質および脂質をよく分解し、過剰な酸味を生産しない能力を有するもので、発酵漬物その他の発酵食品を製造するためのスターターカルチャー(種菌)として好ましく用いられる。
【背景技術】
【0002】
元来、漬物は野菜の保存食品として、多量の食塩を添加して製造されてきた。これは食塩の高い浸透圧を利用して有害な微生物の生育を阻止し、耐塩性のある有用な微生物を徐々に生育させて漬物特有の風味を形成するものである。しかし戦後、汗を流して労働する機会が減少し、食塩の摂取量を1日10g以下にするように勧告され、食塩に対する日本人の認識が変わった。これに伴って漬物の低食塩化が進み、野菜の保存食であった漬物がサラダ風の食品へと変化し、「たくあん漬」、「しょうゆ漬」などの伝統的漬物も低食塩化する傾向にある。
【0003】
漬物の低食塩化にともなう問題点として、有害微生物の増殖による白濁、異臭などの品質劣化があり、クレームによる返品が多発している。その対策として業界ではpH調整や低温下での製造・流通が行われているが、短期間で風味を付与させるため、有用な微生物が有効に活用されず、化学調味料などが多用されるといった新たな問題が生じている。
【0004】
一方、ヨーグルト、チーズなどの発酵乳製品では、原材料に乳酸菌をスターターカルチャー(種菌)として接種することで、食中毒菌や腐敗菌の生育阻止、品質の均一化、製造期間の短縮、熟成による好ましい風味の形成などを達成している。この種のスターターカルチャーにおいては、乳酸菌を単独で接種しても効果は限定されることや、ファージによる汚染を防止するため、複数の乳酸菌を接種したり、他の微生物と混合して培養するなどの工夫が必要であるが、これらの微生物が相乗的に作用し合って発酵乳製品の品質を向上させている。
【0005】
日本の漬物、とりわけ発酵漬物の製造では、乳酸菌を始めとするスターターカルチャーの利用技術はあまり確立されていない。それは漬物の多くは食塩含有量が高く、また発酵漬物は主に冬季に製造されるため、腐敗微生物の生育は抑制され、自然界に存在する微生物の中で主に乳酸菌や酵母などの有用微生物の作用によって、漬物が自然と製造できたためと考えられる。
【0006】
なお、漬物製造に乳酸菌を用いる先行技術としては、例えば特許文献1〜3が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3091196号公報
【特許文献2】特許第3479913号公報
【特許文献3】特許第3435461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景の下、本発明者らは、これまでに野菜、果物、水産物、発酵食品などから乳酸菌を分離し、日本人の嗜好に合致した漬物の製造に適する乳酸菌の検索をおこなってきた。その中で、漬物の原料となる野菜、水産物中のタンパク質に対し優れた分解能力を発揮し、ペプチドや遊離アミノ酸を増加させる能力に優れ、適度な酸味を生成する新規乳酸菌を見い出し、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株と命名した。
本菌株は、タンパク質のみならず、脂質を分解する酵素をも併せもっており、このような脂質分解酵素によって発酵食品の香りを誘導し得ることも知見した。
さらに、本菌株は、他の微生物の共存下でよく生育し、タンパク質および脂質の分解作用を良好に発揮させることについても知見するに至った。
【0009】
本発明の目的は、発酵漬物を製造するためのスターターカルチャーとして有用な微生物を見い出すことにある。
また、本発明の他の目的は、原料に含まれるタンパク質および脂質をよく分解し、ペプチドや遊離アミノ酸、香気を生成するとともに、酸味の過剰な生成を抑えた風味豊かな発酵漬物その他の発酵食品を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための第1発明による新規乳酸菌は、タンパク質および脂質を分解する能力を有し、過剰な酸味を生産しない乳酸菌であって、受領番号:NITE AP−332号として寄託されているエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1であることを特徴としている。
【0011】
第2発明による発酵漬物用スターターカルチャーは、前記第1発明の新規乳酸菌を含有してなることを特徴とする。
第3発明による発酵漬物用スターターカルチャーは、前記第1発明の新規乳酸菌と、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケィ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・キムチ(Lactobacillus kimchii)のうち少なくとも一種の乳酸桿菌とを含有してなることを特徴とする。
第4発明による発酵漬物の製造方法は、前記第2または第3発明のスターターカルチャーを、野菜、果実、水産物などの漬物原料に添加して発酵させることを特徴とする。
第5発明による発酵漬物の製造方法は、前記第2または第3発明のスターターカルチャーを、米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの漬物床原料に添加して発酵させることを特徴とする。
【0012】
第6発明による発酵漬物の製造方法は、
A.米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの原料に、請求項1記載の新規乳酸菌を接種して発酵させて漬物床を得る工程、
B.米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの原料に、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケィ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・キムチ(Lactobacillus kimchii)のうち少なくとも一種の乳酸桿菌を接種して発酵させて漬物床を得る工程、
C.前記工程AおよびBにより得られた漬物床を混合して得られる混合漬物床に、野菜、果実、水産物などの漬物原料を漬け込む工程を含むことを特徴とする。
第7発明による発酵漬物の製造方法は、前記第4〜第6発明のいずれか一に記載の製造方法であって、乳酸菌の発酵温度を、漬け込み開始温度からしだいに低下させるように調節することで、漬物の過剰な酸味の生成を抑えることを特徴とする。
第8発明による発酵漬物は、前記第4〜第7発明のいずれか一に記載の製造方法により得られることを特徴とする。
【0013】
第9発明による発酵食品用スターターカルチャーは、前記第1発明の新規乳酸菌を含有してなることを特徴とする。
第10発明による発酵食品の製造方法は、前記第9発明の新規乳酸菌を含むスターターカルチャーを原料に添加して発酵させることを特徴とする。
第11発明の発酵食品は、前記第9発明の製造方法により得られることを特徴とする。
第12発明の廃棄物の処理方法は、漬物その他の食品の製造過程で生じる食材廃棄物に、前記第1発明の新規乳酸菌を添加して発酵させることで、該食材廃棄物中の糖質および/またはタンパク質を分解することを特徴とする。
【0014】
本発明による新規乳酸菌、すなわちエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、後述の試験結果に示すように、発酵漬物の製造においてスターターとして有益であったので、平成19年3月5日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターへ寄託した。
同センターによる受領番号は、NITE AP−332、受領日は2007年3月7日である。
【0015】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株の諸性質の試験結果は以下のとおりである。
《1》形態的性質
検鏡の結果(形状および大きさ) : 連鎖球菌 大きさ1μ
【0016】
《2》培養的性質
(1)リトマスミルク試験 : 酸形成あり、凝固性あり
(2)食塩6.5%での生育 : 陽性
(3)pH 9.6での生育 : 陽性
(4)10℃での生育 : 陽性
(5)45℃での生育 : 陽性
【0017】
《3》生理学的性質
(1)グラム染色 : 陽性
(2)カタラーゼ試験 : 陰性
(3)ガス生産(グルコース) : なし
(4)発酵形式 : ホモ乳酸発酵
(5)乳酸の光学活性 : L型
(6)アルギニンからアンモニア分解性 : 陽性
(7)糖の発酵性の有無(発酵した糖を陽性とした)
グリセリン 陽性
エリスリトール 陰性
D−アラビノース 陰性
L−アラビノース 陰性
リボース 陽性
D−キシロース 陰性
L−キシロース 陰性
ガラクトース 陽性
D−グルコース 陽性
D−フルクトース 陽性
D−マンノース 陽性
ラムノース 陰性
イノシトール 陽性
マンニトール 陽性
ソルビトール 陽性
α−メチル−D−グリコシド 陰性
N−アセチルグルコサミン 陽性
アミグダリン 陽性
アルブチン 陽性
エスクリン 陽性
サルシン 陽性
セロビオース 陽性
マルトース 陽性
ラクトース 陽性
メリビオース 陰性
サッカロース 陽性
トレハロース 陽性
イヌリン 陰性
D−ラフィノース 陰性
グリコーゲン 陰性
キシリトール 陰性
β−ゲンチオビオース 陽性
グルコネート 陽性
【0018】
本発明者らは、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株の命名にあたり、乳酸菌実験マニュアル(小崎道雄監修 朝倉書店:1992年版、134ページ)に記載された方法により、分離した微生物の同定を行った。
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、グラム染色は陽性、カタラーゼ試験陰性、ホモ乳酸発酵を示し、連鎖球菌、生産する乳酸はL型であることからStreptococci属の乳酸菌である。
さらに、10℃、45℃、6.5%食塩存在下、pH9.6のいずれの条件においても生育し、アルギニンからアンモニア分解性を示し、アラビノースを発酵しないことからエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)と同定するに至った。
そして、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する乳酸菌の中で、AK−1株はタンパク質および脂質の分解能力が高く、糖の資化性も他と同一性がみられないことから新規乳酸菌であることが判明した。
【0019】
一般に、乳酸菌は、生育のためにあらゆる栄養素(ビタミン、アミノ酸、核酸など)が存在しないと、生育や代謝できない。しかし、一部の乳酸菌はプロテアーゼやペプチダーゼを持っていて、タンパク質を分解して生育に必要なアミノ酸を得ている。同様に弱いながらリパーゼを持っている乳酸菌もあり、トリグリセライドから脂肪酸を遊離させ、自らの細胞膜形成のために取り込んでいる。
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、比較的高い塩分の存在下、かつ低温下でも生育が可能で、プロテアーゼやペプチダーゼによるタンパク質の分解能力が高く、リパーゼによる脂質の分解能力も高い。さらに、乳酸を過剰に生成しない性質をもつため、発酵食品の酸味を抑えることができる。
【0020】
本発明は、上記のような特徴をもつエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株が、発酵漬物その他の発酵食品の製造に対して有用であることを見い出したものである。
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する乳酸菌は、人間の腸内に常在していること、整腸剤として医薬品で使用されている経緯があり、安全性は高い。さらに、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は食品原材料から分離されることから、これらの生産する物質を含め、安全性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、発酵漬物を製造するためのスターターカルチャーとして最適な乳酸菌である。
また、その特徴を生かして、漬物以外の発酵食品を製造するためのスターターカルチャーとして使用することもできる。
さらには、漬物その他の食品の製造過程で生じる食材廃棄物を分解するための処理剤として用いることもできる。
【0022】
[発酵漬物の原料]
本発明において、漬物および漬物床の原料は、通常用いられるものと同様な食材が使用される。
例えば、漬物の原料としては、キュウリ、ニンジン、ダイコン、ハクサイ、キャベツ、タマネギ、トマト等の野菜、メロン、スイカ等の果物、イワシ、サバ、イカ、エビ等の水産物等を用いるとよい。
また、漬物床の原料としては、米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳、海草等を用いるとよい。
これらの原料は、生のままで使用してもよいし、必要に応じて加熱殺菌処理等を施してもよい。
【0023】
なお、近年は、野菜や果物の品種改良が進み、栽培のし易さ、見栄えや日持ちが良く、アクなどの収斂(しゅうれん)味が少ない品種が多く流通している。これらはサラダなどの生食や一般の料理には適しているが、発酵漬物に用いると、歯切れ、発酵し易さ、発酵中における安定性などで劣っていることがあり、適した品種とはいえない。そこで、むしろ日本の地域で古くから栽培が続けられてきた野菜や果物を原料として用いることが望ましい。
【0024】
例えば、愛知県では「あいちの伝統野菜」として県内各地で栽培されてきた在来品種を認定している。具体的には宮重ダイコン、方領ダイコン、守口ダイコン、八事五寸ニンジン、碧南鮮紅五寸ニンジン、木之山五寸ニンジン、愛知本長ナス、青大キュウリ、ファーストトマト、愛知縮緬カボチャ、渥美アールスメロン、カリモリ、大高菜、野崎2号ハクサイ、野崎中生キャベツ、愛知白早生タマネギ、知多3号タマネギ、知多早生タマネギなどがあるが、これらの野菜を原料として用いれば、風味豊かな品質のよい発酵漬物を製造し得る。
【0025】
[他の微生物の混合の有効性]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、野菜や水産物、もしくは米糠の存在下において、10℃から40℃でよく生育し、接種後に乳酸菌数が増加する。さらに得られた漬物は酸味をあまり生成せず、色調を保つ特徴を持つ。
【0026】
一方、ザウエルクラウト(キャベツなどの酢漬け)などの漬物用スターターとして市販されている乳酸菌ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)は、野菜中でよく生育、発酵し、発酵漬物のえぐ味を緩和して風味をまろやかにするが、流通中に過剰な酸味を生産することや、変色を伴う場合があり、日本人の嗜好には不向きな製品となることがある。
【0027】
そこで、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株と混合して接種することにより、お互いの長所を発揮することが可能である。すなわち、AK−1株によって発酵漬物に優れた旨みと香りを与えて酸味を程よい程度に抑え、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)によって発酵漬物のえぐ味を取り除いて風味をさらに豊かにすることができる。
そして、上記の効果は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)の他、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケィ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・キムチ(Lactobacillus kimchii)などの乳酸桿菌についても、同様な効果を期待することができる。
【0028】
このようにラクトバチルス属の乳酸菌には、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株に対して互いの長所を補うことのできるものが存在しており、これらを混合したものを発酵漬物用スターターカルチャーとして用いることで、発酵漬物の品質を高めることが可能になる。
【0029】
また、発酵漬物用スターターカルチャーとしてエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を使用する場合には、タンパク分解性の増強、ファージによる汚染防止、増殖の促進、あるいは耐塩性の向上等の目的で、上記の乳酸桿菌とともに他の微生物を混合することが望ましい。
【0030】
このような微生物としては、例えば、バチルス(Bacillus)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属などのグラム陽性菌、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・パラメセンテロイデス(Leuconostoc paramesenteroides)、ロイコノストック・シトロボラム(Leuconostoc citrovorum)、ロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)、テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)、ペディオコッカス・アシディラクチ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、エンテロコッカス・フェシュム(Enterococcus faecium)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ジアチラクチス(Lactococcus diacetylactis)などの乳酸球菌が挙げられる。その他、AK−1株以外のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)を混合することももちろん可能である。
これらの微生物を適宜ブレンドすることで、漬物原料に最適なスターターカルチャーを得ることができる。
【0031】
[発酵漬物の温度調節(温度低下の有効性)]
円谷らは岐阜県高山市などで生産されている発酵漬物である「赤かぶ漬」について研究報告している(円谷悦造,渡辺篤,正井博之,日本食品工業学会誌,29巻,202ページ,1982年)。それによれば、赤かぶ漬は原料を18〜20℃といった比較的気温の高い時期に漬け込み、原料の赤かぶや容器に付着している乳酸菌が酸を生産することで、他の腐敗菌の生育を阻止する環境を整える。ついで15℃、10℃、5℃、0℃というように徐々に気温が低下するため、100gあたり0.7gほどの酸の生成にとどまり、風味成分が形成されるものと考えられる。岐阜県高山市周辺のような寒冷な気候下では、自然に野菜を発酵させても乳酸発酵は円滑に進行するが、日本の多くの暖地では不可能である。
【0032】
そこで、わが国で地域を選ばずに発酵漬物を製造するためには、乳酸菌をはじめとする微生物を原料に混合接種すること、並びに発酵温度をしだいに低下させて、乳酸発酵を制御しつつ、乳酸菌の持つプロテアーゼやペプチダーゼ、リパーゼなどの酵素を作用させることが、発酵漬物の品質向上のために有効であると考えられる。
【0033】
本発明の発酵温度の調節については、漬け込み開始温度から0℃程度まで2〜6ヶ月程度の期間で徐々に低下させていくのが望ましい。この間、連続的に温度を低下させてもよいし、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃というように段階的に発酵温度を低下させるようにしてもよい。
【0034】
[発酵漬物以外の発酵食品の製造]
前述したように、本発明によるエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、プロテアーゼやペプチダーゼによるタンパク質の分解能力、およびリパーゼによる脂質の分解能力に優れ、乳酸を過剰に生成しないという特徴をもつ。
このような特徴を生かして、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を、発酵漬物以外の発酵食品を製造するためのスターターカルチャーとして適用することが可能である。
例えば、清酒製造、みそ・たまり・醤油製造、ヨーグルト製造、納豆製造、くさや、健康食品(サプリメント)、土壌改良材、発酵調味料、サイレージ(干し草)、パン、乳酸、発酵豆乳、チーズ、なれずし、発酵ソーセージ、発酵ハム、その他の発酵食品の製造にエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を使用すると、発酵食品の風味を豊かにし品質向上につながることが期待される。
【0035】
[食材廃棄物へのAK−1株の適用]
漬物の製造では、野菜、果実、米糠、調味料、香辛料、糖類、アミノ酸液などの原料の一部が廃棄物として生じる。また、海外より塩蔵した野菜を輸入し、日本国内で脱塩したのちに調味、包装する製品も多い。このような廃棄物は、漬物以外の食品の製造過程においても同様に生じている。
【0036】
近年、このような食材廃棄物の処理が問題となっており、より低コストでしかも最終処理品が付加価値のある方法が求められてきた。そこで、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株をこれらの廃棄物に接種すると、タンパク質や脂質の分解を促進するため、有益な有機肥料とすることが可能である。
また、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、食塩6.5%存在下でも生育するため、塩分を含んだ漬物などの製造過程の廃棄物中でも代謝に問題はない。
さらに、本菌株は、ホモ乳酸発酵を示す乳酸菌であり、しかも発酵させて得られる乳酸の光学活性はL型である。このため、発酵食品の製造過程で生じた廃棄物に接種することで、純度の高いL−乳酸を得ることができ、ポリ乳酸などの生分解性に優れた素材の製造にも適した本菌株を役立てることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の各種作用・効果等の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0038】
[糠味噌漬の製造]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を用いて米糠を発酵させて発酵米糠を製造した。これに野菜、水産物等を漬けることで糠味噌漬が完成する。図1に糠味噌漬の製造方法のフローチャートを示した。
【0039】
米糠(品種;コシヒカリ、精米歩合90%)に食塩水(6.5%)を加え、よく混合して糠味噌を作成した。これを80℃、15分間加熱殺菌し、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株乳酸菌を1グラムあたり10の7乗の乳酸菌数となるように接種した。これを10℃、及び20℃の条件で発酵させた。なお、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株はMRS培地で30℃、24時間前培養し、集菌して滅菌水で洗浄した後に使用した。
【0040】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌の乳酸菌数の変化を図2に示した。
【0041】
図2に示すように、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌は、20℃のときだけでなく、10℃でも速やかに乳酸菌数が増加し、1gあたりの乳酸菌数が10の8乗の菌数を1か月以上にわたって維持した。このように接種した乳酸菌が迅速に菌叢形成することにより、腐敗を防止することが可能である。
【0042】
[タンパク質の分解性の確認試験]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌について、タンパク質の分解性の確認試験を行った。
糠味噌サンプルとして、10℃でそれぞれ5日、15日、33日発酵させたもの、および、20℃でそれぞれ5日、15日、33日発酵させたものを採取し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。その結果を図3に示した。
【0043】
図3に示したとおり、糠味噌にエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種して発酵させることで、20KDa以上のタンパク質のバンドが消失したことから、タンパク質が低分子化したことが明らかである。このことから発酵中にプロテアーゼが生成し、より低分子のタンパク質やペプチドが増加することが判る。
【0044】
糠味噌に含まれる遊離アミノ酸を調査したところ、発酵が進行するに従い、スレオニン、プロリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、ヒスチジンなどの遊離アミノ酸が増加し、特に、旨みに関与するグルタミン酸は大きく増加した。このことから、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種することにより、多くのアミノ酸が増加することが明らかとなった。
【0045】
[酸味抑制の確認試験]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌(20℃で発酵させたもの)について、乳酸の含量変化を測定した。
なお、比較例として、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) IFO 3070株を接種した糠味噌(20℃で発酵させたもの)について、乳酸の含量を測定した。
【0046】
図4に示すように、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌を20℃で発酵させて11日経過しても、100グラムあたり0.2グラムしか乳酸が生成されず、それ以降もわずかな増加にとどまった。
これに対し、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) IFO 3070株を同様に接種して10日間発酵させたものは、100gあたり0.9gの乳酸が生成し、酸味が過剰となった。
この結果、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株によれば、糠味噌の発酵過程で過剰な酸味の生成を抑えることが判る。
【0047】
[脂質分解性の確認試験]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した牛乳について、脂質分解性の確認試験を行った。
試験方法は、牛乳に乳酸菌(AK−1株)を接種し、30℃で7日間発酵を行い、この発酵乳について脂肪分を抽出精製し、ジアゾメタンでメチル化したものをガスクロマトグラフに供し、脂肪酸の分析を行った。
比較例として、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)IFO 12007、およびラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、IFO 12004についても、同様な条件で脂肪酸の分析を行った。
原料の牛乳に対する発酵乳中の遊離脂肪酸量の相対値について、分析結果を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種したものは、比較例による乳酸菌株を接種したものよりも、遊離脂肪酸量が多く生成し、牛乳中の脂質を効果的に分解した。
発酵食品の原料は、通常、加熱殺菌してから使用することが多い。そのため原料に含まれていたリパーゼなどの酵素は効力が消失し、接種する微生物群の酵素により、風味成分が形成させるものと考えられる。エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株によれば、リパーゼによるの高い脂質分解作用により、発酵乳中の脂肪酸含量を増加させ、さらに化学変化をおこして低分子のアルデヒド、ケトンを発生させて特有の香りを形成することができる。
【0050】
[混合乳酸菌による風味確認試験]
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を主体として、他の乳酸菌を混合して製造した発酵漬物について、その風味確認試験を行った。
試験には、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株の他、
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) IFO 3070株、ペディオコッカス・アシディラクチ(Pediococcus acidilactici) IFO 3076株、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) IAM 1647株、ストレプトコッカス・ラクチス (Streptococcus lactis )527株を使用した。
【0051】
試験方法は、以下の手順により行った。
図5に示すように、まず、米糠(品種;コシヒカリ、精米歩合90%)に食塩水(6.5%)を加え、よく混合して糠味噌を作成した。これを80℃、15分間加熱殺菌し、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を1グラムあたり10の7乗の乳酸菌数となるように接種して20℃の条件で発酵させた。
【0052】
同様にラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) IFO 3070株、ペディオコッカス・アシディラクチ(Pediococcus acidilactici) IFO 3076株、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) IAM 1647株、ストレプトコッカス・ラクチス (Streptococcus lactis )527株についても、それぞれ単独に接種して発酵させた。
【0053】
次いで、各乳酸菌により発酵させた糠味噌を調合し、これに漬物原料としてキュウリを加え、15℃で20時間漬込んだのちの食感を評価した。
なお、比較対照として、各乳酸菌により発酵させた糠味噌を調合しないものについても、同様な条件でキュウリを漬け込んで食感を評価した。結果を表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
表2において、発酵漬物の食感は、「旨み」、「香り」、「酸味」、「えぐ味」の各項目に分け、それぞれ食感が極めて良好であるものを「◎」、やや良好であるものを「○」、良好でないものを「△」とした。
【0056】
表2に示されるように、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を単独で用いる場合(実施例1)には、「旨み」、「香り」および「酸味」が極めて良好で、「えぐ味」の評価がやや良好であるのに対し、他の乳酸菌を混合した場合(実施例2)は、全ての評価項目で極めて良好な結果であった。これは、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株のみを用いる場合に不足する食感を、他の乳酸菌、特に、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) IFO 3070株の長所で補ったものと考えられる。
なお、本試験においては、漬物床としての糠味噌を調合することにより、各乳酸菌を混合したが、各乳酸菌を予め混合したものを糠味噌に接種するようにしても同様な結果が得られる。
すなわち、単独の乳酸菌で発酵漬物を製造するよりも、各種乳酸菌を混合して互いの長所を生かして発酵漬物を製造することが有効である。
【0057】
[食材廃棄物に対する分解性の確認試験]
漬物製造時に発生する廃棄物(タンパク系)の分解性について次のようなモデル試験を実施した。
糠味噌漬の製造工場等では、米糠などのタンパク質を含有する廃棄物が生じている。本試験では、廃棄物(タンパク系)のモデルとして、タンパク質(主にカゼイン)を多く含むスキムミルク(タンパク質含量:35.9%)を使用した。
【0058】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を1グラムあたり10の7乗の乳酸菌数となるように10%スキムミルクに接種し、30℃7日間発酵させた。
比較対照として、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) AHU 1526株、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)ATCC 14432株についても、同様な条件で発酵させた。さらに乳酸菌を接種しない対照区を設け、30℃7日間保存した。
以上の試料について遊離アミノ酸含量を調査し、表3に示した。
【0059】
【表3】

【0060】
表3によれば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種したものは、他の試料に比較して、スキムミルク中のタンパク質が多く分解されており、各種アミノ酸が生成することが判る。
これにより、漬物製造時に排出される廃棄物中のタンパク質をよく分解し、遊離アミノ酸まで分解することが考えられる。このアミノ酸が土壌中の他の微生物の窒素栄養源となり、より生分解性が高まることで堆肥化が促進されることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を主体に、野菜、水産物、米糠等に接種することで、原料に含まれるタンパク質をよく分解し、ペプチドや遊離アミノ酸を生成することで、風味豊かな発酵漬物を得ることができる。
【0062】
本発明のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、野菜、水産物、米糠中で過剰な酸味を生成しないため、日本人の嗜好にあった発酵漬物を製造することができる。
【0063】
本発明のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株は、野菜、水産、米糠に接種することで、得られる発酵漬物の変色を防止、あるいは延滞させることが可能である。このため見た目の良い発酵漬物を製造することができる。
【0064】
さらに、本発明のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株によれば、タンパク質および脂質を効果的に分解するため、発酵漬物以外の発酵食品の製造に用いても、その旨みや香りを向上させることができる。
【0065】
さらには、本発明のエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株によれば、タンパク質および脂質を効果的に分解するため、漬物その他の食品製造の過程で発生する食材廃棄物の処理剤として効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】新規乳酸菌であるエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌漬の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌の乳酸菌数の変化を示すグラフである。
【図3】エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌についてタンパク質の分解性を試験した結果を示すポリアクリルアミドゲル電気泳動写真である。
【図4】エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株を接種した糠味噌漬の乳酸含量の推移を示すグラフである。
【図5】エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1株に他の乳酸菌を混合した糠味噌漬の製造工程を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質および脂質を分解する能力を有し、過剰な酸味を生産しない乳酸菌であって、受領番号:NITE AP−332号として寄託されているエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)AK−1である新規乳酸菌。
【請求項2】
請求項1記載の新規乳酸菌を含有してなる、発酵漬物用スターターカルチャー。
【請求項3】
請求項1記載の新規乳酸菌と、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケィ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・キムチ(Lactobacillus kimchii)のうち少なくとも一種の乳酸桿菌とを含有してなる、発酵漬物用スターターカルチャー。
【請求項4】
請求項2または3記載のスターターカルチャーを、野菜、果実、水産物などの漬物原料に添加して発酵させる、発酵漬物の製造方法。
【請求項5】
請求項2または3記載のスターターカルチャーを、米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの漬物床原料に添加して発酵させる、発酵漬物の製造方法。
【請求項6】
A.米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの原料に、請求項1記載の新規乳酸菌を接種して発酵させて漬物床を得る工程、
B.米糠、米粉、ふすま、小麦粉、そば粉、大豆粉、牛乳、脱脂粉乳などの原料に、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サケィ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・キムチ(Lactobacillus kimchii)のうち少なくとも一種の乳酸桿菌を接種して発酵させて漬物床を得る工程、
C.前記工程AおよびBにより得られた漬物床を混合して得られる混合漬物床に、野菜、果実、水産物などの漬物原料を漬け込む工程
を含むことを特徴とする、発酵漬物の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項記載の製造方法であって、乳酸菌の発酵温度を、漬け込み開始温度からしだいに低下させるように調節することで、漬物の過剰な酸味の生成を抑える、発酵漬物の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項記載の製造方法により得られる、発酵漬物。
【請求項9】
請求項1記載の新規乳酸菌を含有してなる、発酵食品用スターターカルチャー。
【請求項10】
請求項9記載の新規乳酸菌を含むスターターカルチャーを原料に添加して発酵させる、発酵食品の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の製造方法により得られる、発酵食品。
【請求項12】
漬物その他の食品の製造過程で生じる食材廃棄物に、請求項1記載の新規乳酸菌を添加して発酵させることで、該食材廃棄物中の糖質および/またはタンパク質を分解する、廃棄物の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−237141(P2008−237141A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84431(P2007−84431)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】