説明

新規共重合体ラテックスの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紙塗工用、カーペットパッキング用、繊維結合用あるいは粘接着剤用に供される新規共重合体ラテックスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、合成共重合体ラテックスは、例えば紙塗工用バインダー、カーペットバックサイシング用バインダー、不織布や人工皮革などの繊維結合用バインダー、あるいは各種材料の粘接着剤などとして広く用いられている。そして、共重合体ラテックスがこのような用途に用いられる場合、該共重合体ラテックスは接着強度が高く、かつ耐水性、乾燥加熱による耐ブリスター性などに優れていることが要求される。
【0003】たとえば、塗工紙は、紙の印刷適性の向上および光沢などの光学的特性の向上を目的として、抄造された原紙表面に、カオリンクレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの顔料、それらのバインダーとしての共重合体ラテックスおよび保水剤あるいは補助バインダーとしてのスターチ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を主構成成分とする塗料が塗工されたものであって、従来からスチレンとブタジエンを主要単量体成分とし、これらを乳化重合して得られたスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、いわゆるSB系ラテックスがバインダーとして汎用的に用いられている。
【0004】ところで、近年、カラー印刷された雑誌類やパンフレット、広告類の需要の拡大に伴って塗工紙の生産が著しく増大している。特に、オフセット印刷での高速印刷化傾向に伴い、塗工紙および顔料バインダーの品質に対する要求水準もますます高度化しており、そのため、塗工紙の品質の中でも特にインクピック抵抗性、いわゆるピック強度の向上が強く求められている。しかも、このピック強度性能は他の印刷物性、すなわち湿潤ピック強度、耐ブリスター性、網点再現性などとは負の相関関係にあるため、これらの諸物性を高水準にバランス化させる改良が一段と要求されている。
【0005】塗工紙のこれらの性質は、顔料バインダーとして用いられるSB系ラテックスの設計に特に強く依存することから、これまで該SBラテックスの性能について種々の検討が加えられてきた。たとえば、共重合体ラテックス皮膜のベンゼン、トルエン、テトラヒドロフランなどの溶剤に対する不溶解部分の割合がピック強度と耐ブリスター性の支配因子であることが確認されていることから、この面より種々の検討がなされており、具体的にはラテックス中の共重合体の組成およびゲル分率を特定の範囲に調整することにより、優れた性能を発揮させることが提案されている(特公昭59−3598号公報、特公昭60−17879号公報、特開昭58−4894号公報)。このラテックスのゲル分率は単量体組成、重合温度をはじめとした様々な重合因子によって変化するが、これを所望の水準に調整する方法は連鎖移動剤の添加が一般的かつ簡便である。連鎖移動剤として、従来はおもに四塩化炭素に代表されるハロゲン化炭化水素、t−あるいはn−ドデシルメルカプタンに代表されるアルキルメルカプタン、スルフィドなどが使用されていた。
【0006】しかしながら、一般的には塗工紙のピック強度はSB系ラテックスにおいてそのゲル分率が75〜95重量%の範囲で最も高くなるのに対して、耐ブリスター性はゲル分率の低いものほど良好となることが認められており、ピック強度と耐ブリスター性の両方を同時に高い水準にまで向上させるには、前記技術はいずれも十分に満足しうるものではない。
【0007】さらに、オフセット印刷における湿潤ピック強度に最適なブタジエン単位の分率は34重量%以下であり、ピック強度の最適なブタジエン単位の分率とは相違するため、この両物性を同時に高い水準にすることは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来技術では不可能な、印刷のより一層の高速化に対応することができる高品質の塗工紙の製造を可能にするバインダーとしての共重合体ラテックス、およびカーペットバックサイジングならびに粘接着剤における高接着力を有する共重合体ラテックスの製造方法の提供が本発明の課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような事情のもとで、上記の課題を満たすべく鋭意検討をおこなった結果、後記の実施例で例示するように、ジエン系乳化共重合体ラテックスの製造にあたって、連鎖移動剤として従来ラジカル重合反応の連鎖移動剤あるいは重合度調整剤としては周知(英国特許第725,869号明細書、特開昭61−155413号公報、特開昭61−134701号公報など)である核置換α−メチルスチレンの二量体(A)と硫黄元素を含む連鎖移動剤(B)を組み合わせて用い、しかもこの内特定量のAを予め添加すること、及び複数の単量体の内特定の単量体の全量又は一部を重合開始前に予め添加しておくとともに、重合開始前に添加されなかった残りの単量体を重合開始時から連続的に添加することにより得られた共重合ラテックスが意外にも前記の性能を発現することを見いだしてなされたものである。
【0010】即ち、本発明は、(a)ジエン、(b)エチレン性不飽和カルボン酸および(c)これらと共重合可能なその他の単量体の乳化共重合にあたって、連鎖移動剤として下記化2で示される核置換α−メチルスチレンの二量体(A)と硫黄元素を含む連鎖移動剤(B)を組み合わせて用い、しかもこの内全単量体100重量部に対し0.1ないし4重量部の該核置換α−メチルスチレンの二量体(A)は重合開始前に予め添加しておき、上記エチレン性不飽和カルボン酸(b)の全量又は一部も重合開始前に添加しておき、さらに、上記共役ジエン(a)の全量、上記その他の単量体(c)の全量および上記エチレン性不飽和カルボン酸(b)の残量は、重合開始時から連続的に添加することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法である。
【0011】
【化2】


【0012】以下、本発明を詳細に説明する。ラテックスのゲル分率を所望の水準に調整する方法は連鎖移動剤の添加が一般的かつ簡便であるが本発明の共重合体ラテックスを調製する乳化重合においては、上記化2で示される核置換α−メチルスチレンの二量体(A)と硫黄を含む連鎖移動剤(B)を組み合わせて、用いることを特徴とする。
【0013】上記化2で示される核置換α−メチルスチレンの二量体(A)の具体例としては、o−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、3,4−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−α−メチルスチレン−o−クロル−α−メチルスチレン、m−クロル−α−メチルスチレン、p−クロル−α−メチルスチレン、2,5−ジクロル−α−メチルスチレン、3,4−ジクロル−α−メチルスチレン、3,5−ジクロル−α−メチルスチレン、3−クロル−2−メチル−α−メチルスチレン、4−クロル−3−メチル−α−メチルスチレン、3−ブロム−2−メチル−α−メチルスチレン、3−ブロム−4−メチル−α−メチルスチレン、3−フルオル−4−メチル−α−メチルスチレン、p−クロルメチル−α−メチルスチレン、2,6−ジメトキシ−α−メチルスチレン、p−(2−クロロエトキシ)−α−メチルスチレン、4−メチル−2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−グリシジル−α−メチルスチレン、4−アセチル−α−メチルスチレン、p−メチルメルカプト−α−メチルスチレン、p−エチルメルカプト−α−メチルスチレンなどの二量体を挙げることができる。本発明においては、上記の核置換α−メチルスチレンの二量体はすべて用いることができるが、好ましい具体例としては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどを挙げることができる。硫黄元素を含む連鎖移動剤(B)の例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのアルカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノールなどのチオアルキルアルコール、チオグリコール酸、チオプロピオン酸などのチオアルキルカルボン酸、チオグリコール酸オクチルエステル、チオプロピオン酸オクチルエステルなどのチオカルボン酸アルキルエステル、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラフェニルチウラムジスルフィドなどのテトラアルキルチウラムジスルフィドを挙げることができる。本発明においては、好ましい具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチルエステル、テトラメチルチウラムジスルフィドを挙げることができる。
【0014】(A)と(B)の配合重量の和は、全単量体100重量部に対し0.1ないし10.0重量部であることが好ましい。また核置換α−メチルスチレンの二量体(A)と硫黄を含む連鎖移動剤(B)はさらに他の周知の連鎖移動剤(C)と併用して使うこともできる。その他の連鎖移動剤(C)の例としては、ターピノーレン、ジペンテン、t−テルビネンおよび四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素を挙げることができる。
【0015】また本重合においては、全単量体100重量部に対し0.1ないし4重量部の該核置換α−メチルスチレンの二量体(A)を重合開始前に予め添加することが必要である。重合開始前に予め添加する量が0.1重量部未満では本発明の効果が発揮されず、また、4重量部以上では本発明の効果が発揮されないばかりか、重合速度の低下などの不都合を生じる。
【0016】ラテックス重合体は、共役ジエン、エチレン性不飽和カルボン酸、およびこれらと共重合可能なその他の単量体から構成される単量体を乳化共重合させて得られる。共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどがある。その使用量は全単量体基準で20〜90重量%の範囲であることが望ましい。さらに塗工紙用共重合体ラテックスの場合、この共役ジエンの一層好ましい量の範囲は20〜70重量%である。
【0017】エチレン性不飽和カルボン酸は0.5〜10重量%の範囲であることが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの一塩基性カルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの二塩基性カルボン酸およびそのモノエステルなどを挙げることができる。その他の単量体の例のなかでもっとも代表的かつ有効にもちいられるのは芳香族(ジ)ビニル化合物であり、ついで(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、エチレン性アミドモノマーなどである。
【0018】芳香族(ジ)ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼンなどがあげられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0019】シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどがあげられる。エチレン性アミドモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。そのほかに、酢酸ビニルのごときビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデンのごときハロゲン化ビニル、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性アミンモノマー、スチレンスルホン酸ソーダなどを例示することができる。
【0020】本発明の製造方法は、特定の連鎖移動剤の添加方法及び単量体の添加方法を除けば従来公知の製造法を用いることができる。すなわち、水、界面活性剤、全単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤および必要ならばその他の原料を基本構成とする分散系において、全単量体を重合体粒子の水分散液とする製造法で、一般的に重合体濃度は40〜60重量%の範囲である。共重合体ラテックスの粒子径は界面活性剤およびまたはシードラテックスの使用割合によって調整することができ、概ねその使用割合を高くするど生成共重合体ラテックスの粒子径は小さくなる。
【0021】ここで、粒子径の好ましい範囲は0.05〜1μmであり、さらに好ましくは0.07〜0.5μmである。界面活性剤としては、脂肪酸せっけん、ロジン酸せっけん、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤がある。界面活性剤は通常、アニオン性界面活性剤単独またはアニオン性/ノニオン性の混合系で用いられ、全単量体に対する使用割合としては0.05〜2重量%の割合が一般的である。
【0022】重合開始剤としては、熱または還元性物質の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるもので,水溶性または油溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などが一般的に用いられる。その例としてはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、特にペルオキソ二硫酸塩が最も好ましくもちいられる。重合開始剤の使用割合は全単量体に対して通常0.2〜1.5重量%である。なお、重合温度は通常60〜90℃の範囲が一般的であるが、重合速度の促進あるいはより低温での重合を望むときには重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸あるいはその塩、エリソルビン酸あるいはその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤に組み合わせてもちいる、いわゆるレドックス重合法を用いることができる。
【0023】また、所望によって種々の重合調整剤を添加することもしばしばおこなわれる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのpH調節剤やエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどの各種キレート剤などである。本発明により製造された共重合体ラテックスを紙塗工用塗料のバインダーとして用いるにおいては通常の実施態様でおこなうことができる。すなわち、分散剤を溶解させた水中に無機顔料およびまたは有機顔料、水溶性高分子、各種添加剤とともに共重合体ラテックスを混合し、均一分散液とする態様である。そして、この塗料は各種ブレードコーター、ロールコーターなど通常の方法によって原紙に塗工することができる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各特性は次のようにして求めた。
(1)紙塗工性能(イ)耐ブリスター性RI印刷試験機(明製作所製)を用いて塗工紙の両面を印刷インク(大日本インキ化学社製、Webb Zett黄)0.3mlをべた刷りする。この印刷された塗工紙を適当な大きさに裁断し、その試験片を所定の温度に調整したシリコンオイル恒温槽に浸してブリスターが発生するか否かを観察する。恒温槽の温度を変化させてこの試験をおこない、ブリスターの発生が認められる最低温度を求める。この温度が高いものほど耐ブリスター性に優れる。
【0025】(ロ)ドライピック強度RI印刷試験機を用いて、印刷インク(東華色素社製、SDスーパーデラックス50紅B;タック値18)0.4ml5回重ね刷りをおこない、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その程度を観察する。評価は10点評価法でおこない、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
【0026】(ハ)湿潤ピック強度RI印刷試験機を用いて、塗工紙表面を吸水ロールで湿してから、印刷インク(東華色素社製、SDスーパーデラックス50紅B;タック値18)0.4ml1回刷りをおこない、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その程度を観察する。評価は10点評価法でおこない、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
【0027】
【実施例1〜4および比較例1〜2】核置換α−メチルスチレンの二量体として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンと2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテンとを95:5の割合で含有する混合物(以下α−MSDという)を使用した。直径0.03μmのシード粒子(ポリスチレン)の水性分散体(シード固形分濃度25重量%)3.0重量部を、かくはん装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れ、さらに水70重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部、イタコン酸2.5重量部および表1に示す核置換α−メチルスチレンの二量体を仕込み、内温を80℃に昇温し、ついで表1に示すモノマーおよび連鎖移動剤からなる油性混合液と、水15重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.2重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部からなる水溶液とをそれぞれ4時間および5時間をかけて一定の流速で添加した。その後、80℃の温度をそのまま1時間保ったのち冷却した。ついで生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体等を除去し、網目75μmのろ布でろ過した。なお、すべての共重合体ラテックスは最終的に固形分濃度が50重量%になるように調整した。
【0028】
【応用例1】実施例1〜4および比較例1〜2で調製した共重合体ラテックスについて、紙塗工用バインダーとしての性能評価をおこなった。その結果を表4に示す。なお、塗工塗料は表2に示す配合で、不揮発分濃度が63重量%になる水量で高速かくはん機で調製した。塗料のpHはアンモニア水で9.0に調整した。この塗料を用いての塗工紙の調製条件を表3に示す。
【0029】表4から、本発明の製造方法で製造した共重合体ラテックスをバインダーとして用いた塗工紙は、ピック強度と他の物性が高度にバランスされたものであることが理解される。

【比較例3】
核置換α−メチルスチレンダイマーは実施例1〜4および比較例1〜2と同じものを用いた。直径0.03μmのシード粒子(ポリスチレン)の水性分散体(シード固形分濃度25重量%)3.0重量部を、かくはん装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れ、さらに水70重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部、イタコン酸2.5重量部および表1の実施例1と同じ量の核置換α−メチルスチレンの二量体を仕込み、内温を80℃に昇温した。次に表1の実施例1と同じ組成のモノマーおよび連鎖移動剤からなる油性混合液の25%を一括添加すると同時に、水15重量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部、水酸化ナトリウム0.2重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部からなる水溶液を所要時間5時間で一定流速での添加を始め重合を開始した。重合開始1時間後、残りの油性混合液を3時間かけて一定流速で添加した。その後、80℃の温度をそのまま1時間保ったのち冷却し他の実施例、比較例と同様の処理を行った。応用例1と同様にして比較例3の塗工紙物性評価を行った結果を表4に併せて示した。
【0030】
【表1】


【0031】
【表2】


【0032】
【表3】


【0033】
【表4】


【0034】
【発明の効果】本発明方法によると、印刷塗工紙におけるピック強度と他の性能とのバランスを向上させうる高性能の共重合体ラテックスを容易に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)共役ジエン、(b)エチレン性不和カルボン酸および(c)これらと共重合可能なその他の単量体の乳化共重合にあたって、連鎖移動剤として下記化1で示される核置換α−メチルスチレンの二量体(A)と硫黄元素を含む連鎖移動剤(B)を組み合わせて用い、しかもこの内全単量体100重量部に対し0.1ないし4重量部の該核置換α−メチルスチレンの二量体(A)は重合開始前に予め添加しておき、上記エチレン性不飽和カルボン酸(b)の全量又は一部も重合開始前に添加しておき、さらに、上記共役ジエン(a)の全量、上記その他の単量体(c)の全量および上記エチレン性不飽和カルボン酸(b)の残量は、重合開始時から連続的に添加することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法。
【化1】


【特許番号】特許第3121620号(P3121620)
【登録日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【発行日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−5940
【出願日】平成3年1月22日(1991.1.22)
【公開番号】特開平4−239502
【公開日】平成4年8月27日(1992.8.27)
【審査請求日】平成10年1月9日(1998.1.9)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)
【参考文献】
【文献】特開 平3−109451(JP,A)
【文献】特開 平3−109470(JP,A)