説明

新規前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド

本発明は、新規前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、並びに前記ポリペプチドの変異体、突然変異体及びフラグメントを含むそれらに関連する試薬、並びにそれらに対するリガンド及びアンタゴニスト、をコードするヒトゲノムにおけるオープンリーディングフレーム(ORF)を開示する。本発明は、これらの分子を同定して生成する方法、それらを含む医薬組成物を調製する方法、及び疾患の診断、予防及び処置においてそれらを使用する方法、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリペプチド、更に具体的には前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドをコードするものとしてヒトゲノムにおいて同定された核酸配列に関する。
【0002】
本明細書で引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、引用により全体が組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
既に多くの新規ポリペプチドが、同じファミリーの公知のポリペプチドに対する厳密な相同性の基準を適用することにより同定されている。しかし前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド(及び任意な他のタンパク質ファミリー)についてのヒトゲノム中のポリペプチド-コード配列中の実際の内容は依然不明であるので、オープンリーディングフレーム(ORF、すなわち、ヌクレオチドの連続的にコードしているトリプレットを含み、終止コドンによって中断されておらず、且つ潜在的にポリペプチドに翻訳されうるDNA配列)の解析において別の基準を適用することにより、前駆脂肪細胞因子−1様活性を有するポリペプチドをコードするDNA配列を同定することの可能性は尚も存在している。
【0004】
細胞が細胞外タンパク質を生成及び分泌する能力は、多くの生物学的プロセスの中心である。酵素、増殖因子、細胞外マトリックスタンパク質及びシグナル伝達分子は全て、細胞により分泌される。これは分泌小胞と原形質膜との融合を介している。全てではないがほとんどの場合において、タンパク質はシグナルペプチドにより小胞体に向かい、そして分泌小胞へと向かう。シグナルペプチドは、細胞質から、分泌小胞のような膜結合したコンパートメントへのポリペプチド鎖の輸送に影響を及ぼすcis-作用配列である。分泌小胞を標的としたポリペプチドは、細胞外マトリックスへ分泌されるか、又は原形質膜に保持されるかのいずれかである。細胞膜に保持されたポリペプチドは、1個又は複数の膜貫通ドメインを有するであろう。細胞の機能において中心的役割を果たす分泌タンパク質の例は、サイトカイン、ホルモン、細胞外マトリックスタンパク質(接着分子)、プロテアーゼ、増殖因子及び分化因子である。
【0005】
前駆脂肪細胞因子−1(Pref−1)は、胎児抗原1(FA1)、デルタ様(dlk)、又はストロマ細胞由来タンパク質−1(SCP−1)としても知られている、抗脂肪生成機能を有する上皮増殖因子(EGF)反復ドメイン含有膜貫通タンパク質である(Smas et al (1999) J Biol. Chem. 274, 12632-12641)。
【0006】
このタンパク質は、特定のシグナルを受けて成熟脂肪細胞に分化する前駆脂肪細胞で発現するが、貯蔵エネルギーとして脂肪を蓄積するよう機能する特殊の細胞である成熟細胞においては全く存在しない。可溶性前駆脂肪細胞因子−1を分化している3T3−L1前駆脂肪細胞培養物に添加することで、脂肪細胞へのそれらの分化は損なわれることが明らかとなっている。
【0007】
前駆脂肪細胞因子−1の選択的スプライス変異体は、多数存在すると考えられている。従って、前駆細胞因子−1は、脂肪生成のアジャクスタクリン(ajuxtacrine)及びパラクリン両方のレギュレーターとして機能するようである。可溶性前駆脂肪細胞因子−1は循環血中で検出可能であり、且つ翻訳後修飾の結果物である。前駆脂肪細胞因子−1のEGF反復ドメインは、種々の生物学的状況で細胞増殖及び分化を媒介する。これらのドメインは、前駆脂肪表現型を維持するために、細胞に対して、推定上の前駆脂肪細胞因子−1を結合させることに関与しているようである。
【0008】
胚の発生において、前駆脂肪細胞因子−1は、多数の組織、例えば、下垂体、肝臓、肺、舌及び椎骨で発現しており、これは、前駆脂肪細胞因子−1の発現が、末端分化を防ぎ、そして細胞増殖を可能にすることに関与しうることを示唆している。成体において、前駆脂肪細胞因子−1発現は、副腎皮質球状帯の分化に必須である(Raza et al (1998( Endocr. Res. 24, 977-81)。当該球状帯が分化しないことで、ナトリウムの再吸収の増大、水の再吸収の増大、それに伴う細胞外液量の増大及びカリウムの腎排泄の増大、が引き起こされうる。
【0009】
従って、前駆脂肪細胞因子−1の制御不全は、種々の症状、例えば肥満、臓器肥大、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性、高インスリン血、高血糖、高グリセリド血症)、副腎皮質機能障害、心筋及び骨格筋の肥大、脂肪異常栄養症、及び免疫系障害、自己免疫疾患及び免疫欠損、発育障害、ガン、自己免疫甲状腺疾患及び関連障害、例えば眼障害及び他の病理学的症状に至ることがある。特にこの理由により、前駆脂肪細胞因子−1、及びそれに関連する分子は、これらのタンパク質が関与しているとある病状に至る基礎的な経路の理解を深め、且つ、これらの障害を処置するのにより有効な遺伝子又は薬物治療を開発するのにかなり重要である。
【0010】
本発明の要約
本発明は、新規前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドをコードするヒトゲノム内のオープンリーディングフレーム(ORF)の同定に基づいている。このポリペプチドは、本明細書ではSCS0009と称する。SCS0009ポリペプチドに基づき、5個のスプライス変異体:SCS0009−SV1,SCS0009−SV2,SCS0009−SV3,SCS0009−SV4及びSCS0009−SV5が同定され、この中のSCS0009−SV3はこれまでに説明されていない。
【0011】
従って、本発明は、配列番号2、配列番号8が示すアミノ酸配列を有する、単離されたSCS0009ポリペプチド、並びに、前駆脂肪細胞因子−1様活性を有するポリペプチドとしての、それらの成熟型、それらのヒスチジンタグ付き型、変異体、及びフラグメント、を提供する。本発明はまた、それらをコードする核酸、当該核酸を含むベクター、及びこれらのベクター又は核酸を含む細胞、並びに他の関連する試薬、例えば融合タンパク質、リガンド、及びアンタゴニスト、を含む。
【0012】
本発明は、これらの分子を同定し、且つ生成するための方法、それらを含む医薬組成物を調製するための方法、並びに、疾患の診断、予防及び処置においてそれらを使用するための方法、を提供する。
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明の第一の側面に従い、前駆脂肪細胞因子−1様活性を有する単離されたポリペプチドであって:
a)配列番号2又は配列番号8に列挙されているアミノ酸配列;
b)配列番号2に列挙されている配列のポリペプチドの成熟型(配列番号3)又は配列番号8に列挙されている配列のポリペプチドの成熟型(配列番号9);
c)配列番号2に列挙されている配列のポリペプチドのヒスチジンタグ付き型(配列番号4)又は配列番号8に列挙されている配列のポリペプチドのヒスチジンタグ付き型(配列番号10)
d)配列番号2又は配列番号8に列挙されているアミノ酸配列の変異体であって、選択した配列において特定されている任意のアミノ酸が非保存的に置換されており、但し、当該配列中の15%未満のアミノ酸残基がそのように変化している、変異体;
e) a)からd)に示すアミノ酸配列の活性フラグメント、前駆体、塩、又は誘導体、
から成る群から選択されるポリペプチド、が提供される。
【0014】
本明細書に記載の新規ポリペプチドは、選択したアミノ酸の数及び位置が、既知の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドに匹敵する長さを有するタンパク質配列について規定されているヒト前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの共通配列を基に同定された。
【0015】
ヒトゲノムにおける既知のORF配列を翻訳することによって得られるアミノ酸配列の全体が、この共通配列を用いて挑戦され、そしてポジティブなヒットは、予測される構造的且つ機能的な「サイン」(N末端のシグナル配列及びC末端のアルファヘリックス)の存在について更にスクリーニングされ、そして最終的に、配列の特徴を既知の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドと比較することによって選択される。従って、本発明の新規ポリペプチドは前駆脂肪細胞因子−1様活性を有することが予想されうる。
【0016】
用語「活性な」及び「活性」は、本願において配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号8,配列番号9又は配列番号10に提示するアミノ酸配列の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドについて予測される前駆脂肪細胞因子−1様の特性を意味する。これらの特性には、前駆脂肪細胞の末端文化を防ぎ、且つ細胞増殖をさせる能力が含まれる。
【0017】
第二の側面において、本発明は、本発明の第一の側面のポリペプチドをコードしている精製された核酸分子を提供する。好ましくは、精製された核酸分子は、配列番号1又は配列番号7に列挙されている核酸配列(配列番号2又は配列番号8に列挙するアミノ酸配列の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドをコードしている)、特に、配列番号1においてヌクレオチド122で開始し、且つ1180で終了し、あるいは配列番号8においてヌクレオチド1で開始し、且つ1131で終了するコード配列、を含んで成るか、あるいは当該配列から成る。
【0018】
第三の側面において、本発明は、高ストリンジェントな条件下で、本発明の第二の側面の核酸分子とハイブリダイズする、精製された核酸分子を提供する。
【0019】
第四の側面において、本発明は、本発明の第二又は第三の側面の核酸分子を含む、発現ベクターなどの、ベクターを提供する。
【0020】
第五の側面において、本発明は、本発明の第四の側面のベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。
【0021】
第六の側面において、本発明は、本発明の第一の側面のポリペプチドと特異的に結合し、且つ好ましくはこのメタロプロテアーゼ活性を阻害するリガンドを提供する。本発明のポリペプチドに対するリガンドは、天然の又は修飾された基質、酵素、受容体、最大2000Da、好ましくは800Da又はそれ未満の小型の天然又は合成の有機分子のような小型有機分子、ペプチドミメティクス、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前述のものの構造的又は機能的ミメティクスを含む、様々な形であってよい。
【0022】
第七の側面において、本発明は、本発明の第一の側面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現を変更するか、又は本発明の第一の側面のポリペプチドの活性を制御するのに有効である化合物を提供する。
【0023】
本発明の第七の側面の化合物は、遺伝子の発現のレベル又はポリペプチドの活性を増加する(アゴニスト作用)又は減少する(アンタゴニスト作用)のいずれかであってもよい。重要なことは、本発明の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの機能の同定は、疾患の治療及び/又は診断に有効である化合物を同定することが可能であるスクリーニング法をデザインすることができる。
【0024】
第八の側面において、本発明は、治療又は診断において使用するための、本発明の第一の側面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の側面の核酸分子、又は本発明の第四の側面のベクター、又は本発明の第五の側面の宿主細胞、又は本発明の第六の側面のリガンド、又は本発明の第七の側面の化合物を提供する。これらの分子は、肥満、臓器肥大、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性、高インスリン血、高血糖、高グリセリド血症)、副腎皮質機能障害、心筋及び骨格筋の肥大、脂肪異常栄養症、及び免疫系障害、自己免疫疾患及び免疫欠損、発育障害、ガン、自己免疫甲状腺疾患及び関連障害、例えば眼障害及び他の病理学的症状の処置のための医薬の製造においても使用されうる。
【0025】
第九の側面において、本発明は、患者において疾患を診断する方法であって、当該患者の組織において、本発明の第一の側面のポリペプチドをコードしている天然の遺伝子の発現レベル又は本発明の第一の側面のポリペプチドの活性を評価すること、及び当該発現のレベル又は活性を対照レベルと比較することを含む方法を提供し、ここで当該対照レベルとは異なるレベルは、疾患の指標である。このような方法は、in vitroで実行されることが好ましいであろう。同様の方法を用い、患者における疾患の治療的処置をモニタリングすることができ、ここで経時的に対照レベルへと向かうポリペプチド又は核酸分子の発現のレベル又は活性の変化は、疾患の回復の指標である。
【0026】
本発明の第一の側面のポリペプチドを検出する好ましい方法は:(a)本発明の第六の側面のリガンド、例えば抗体を、生物学的試料と、リガンド−ポリペプチド複合体を形成するのに適した条件下で接触する工程;及び(b)当該複合体を検出する工程、を含んで成る。
【0027】
本発明の第九の観点に従う多数の異なるそのような方法が存在するのは当業者にとって自明であり、例えば、短いプローブによる核酸ハイブリダイゼーション法、点変異解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、及び、抗体を用いて異常なタンパク質レベルを検出する方法である。同様の方法を短期又は長期的に用いて、疾患の治療的処置が患者においてモニタリングされることが可能となりうる。本発明はまた、これらの疾患診断方法に有用なキットも提供する。
【0028】
第十の側面において、前駆脂肪細胞因子−1様タンパク質として本発明の第一の側面のポリペプチドの使用を提供する。適当な使用には、分泌型糖タンパク質としての使用であって、特に、前駆脂肪細胞の末端分化を防ぎ、且つ細胞増殖をさせる状況での使用が含まれる。
【0029】
第十一の側面において、本発明は、本発明の第一の側面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の側面の核酸分子、又は本発明の第四の側面のベクター、又は本発明の第五の側面の宿主細胞、又は本発明の第六の側面のリガンド、あるいは本発明の第七の側面の化合物を、医薬として許容できる担体と組合わせて含有する医薬組成物を提供する。
【0030】
第十二の側面において、本発明は、疾患の診断又は処置、例えば肥満、臓器肥大、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性、高インスリン血、高血糖、高グリセリド血症)、副腎皮質機能障害、心筋及び骨格筋の肥大、脂肪異常栄養症、及び免疫系障害、自己免疫疾患及び免疫欠損、発育障害、ガン、自己免疫甲状腺疾患及び関連障害、例えば眼障害及び他の病理学的症状の予防処置のための医薬の製造における使用のための、本発明の第一の側面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の側面の核酸分子、又は本発明の第四の側面のベクター、又は本発明の第五の側面の宿主細胞、又は本発明の第六の側面のリガンド、あるいは本発明の第七の側面の化合物を提供する。
【0031】
第十三の側面において、本発明は、患者へ、本発明の第一の側面のポリペプチド、又は本発明の第二もしくは第三の側面の核酸分子、又は本発明の第四の側面のベクター、又は本発明の第五の側面の宿主細胞、又は本発明の第六の側面のリガンド、あるいは本発明の第七の側面の化合物を投与することを含む、患者の疾患を治療する方法を提供する。
【0032】
本発明の第一の側面のポリペプチドをコードする天然の遺伝子の発現、又は本発明の第一の側面のポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で低下する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアゴニストであるべきである。逆に、前記天然の遺伝子の発現又はポリペプチドの活性が、健常な対象者の発現のレベル又は活性と比較したとき罹患患者で上昇する疾患については、この患者に投与される前記ポリペプチド、核酸分子、リガンド又は化合物はアンタゴニストであるべきである。このようなアンタゴニストの例にはアンチセンス核酸分子、リボザイム及びリガンド、例えば抗体が含まれる。
【0033】
第十四の側面において、本発明は、本発明の第一の側面のポリペプチドを高レベル、低レベルで発現、又は発現しないように形質転換したトランスジェニック又はノックアウト非ヒト動物を提供する。このようなトランスジェニック動物は、疾患の研究用モデルとして非常に有用であり、さらに前記疾患の治療又は診断に有効な化合物の同定を目的とするスクリーニング方法で用いることもできる。
【0034】
本発明を利用するために用いることができる標準的な技術及び手法の要約は、下記で提供される。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、細胞株、ベクター及び試薬に限定されないことは理解されよう。本明細書で用いられる専門用語は単に特定の態様を説明するためのものであり、この用語によって本発明の範囲を限定しようとするものではないこともまた理解されよう。本発明の範囲は添付の請求の範囲の用語によってのみ限定される。
【0035】
本明細書では、ヌクレオチド及びアミノ酸についての標準的な略語が用いられる。
【0036】
本発明の実施では別に指示がなければ、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の通常の技術が用いられ、これらの技術は当業者の技術範囲内である。
【0037】
このような技術は、文献で完全に説明されている。特に適切な解説書の例には以下が含まれる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vol.I及びII (D.N. Glover編集、1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編集、1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Transcription and Translation (B.D. Hames及びS.J. Higgins編集、1984);Animal Cell Culture (R.I. Freshney編集、1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the Methods in Enzymology series (Academic Press, Inc.)特にVol. 154及び155;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos編集、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer及びWalker編集、1987, Academic Press, London);Scopes, (1987) Protein Purification: Principles and Practice, Second Edition (Springer Verlag, NY);及びHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell編集、1986)。
【0038】
本発明の第一の側面は、配列番号2、配列番号3、配列番号4.配列番号8、配列番号9又は配列番号10に列挙するアミノ酸配列の変異体を含み、ここで、選択された配列で特定された任意のアミノ酸は、非保存的に置換され、但し当該配列中の15%未満のアミノ酸残基がそのように変更されている。指定された数の非保存的置換を有するタンパク質配列は、通常利用可能なバイオインフォマティクスツールを用いて同定することができる(Mulder NJ及びApweiler R, 2002; Rehm BH, 2001)。
【0039】
このような配列に加え、一連のポリペプチドは、本発明の開示の一部を形成する。前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドはN末端配列のタンパク質分解性の除去(シグナルペプチダーゼ及び他のタンパク質分解酵素による)を含む成熟過程を進行することが分かっているので、本明細書は、配列番号2に列挙する配列のポリペプチドの成熟型(配列番号4)又は配列番号8に列挙する配列のポリペプチドの成熟型(配列番号9)も特許請求する。成熟型は、前駆脂肪細胞因子−1様活性を示し並びにin vivo(発現している細胞又は動物によるもの)もしくはin vitro(精製されたポリペプチドの特異的酵素による修飾によるもの)における翻訳後成熟過程から生じるあらゆるポリペプチドを含むことが意図されている。他の選択的(alternative)成熟型も、糖又はリン酸のような化学基の付加から生じ得る。本願はまた、配列番号2に列挙する配列のポリペプチドのヒスチジンタグ付き型(配列番号4)又は配列番号8に列挙する配列のポリペプチドのヒスチジンタグ付き型(配列番号10)も特許請求する。
【0040】
特許請求する他のポリペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4.配列番号8、配列番号9又は配列番号10が示すアミノ酸配列活性変異体であって、選択した配列において特定されている任意のアミノ酸が非保存的に置換されており、但し、当該配列中の15%未満、好ましくは10%、5%、3%、又は1%未満のアミノ酸残基がそのように変化している、変異体である。指定のパーセンテージは、開示した新規アミノ酸配列全体について測定されされなければならない。
【0041】
本発明によると、あらゆる置換が、分子の構造及び生物学的機能を保存するために、好ましくは「保存的」置換又は「安全」置換であるべきであり、これは、十分に類似の化学的特性を有するアミノ酸を導入する、一般的に定義されている置換のことである(例えば、塩基性正電荷アミノ酸は別の塩基性正電荷アミノ酸によって置換されるべきである)。
【0042】
文献は、保存的アミノ酸置換の選択が、タンパク質の配列及び/又は構造に対する統計的及び/又は物理化学的研究に基づいて実施されうる多数のモデルを提供している(Rogov Si and Nekrasov AN, 2001)。タンパク質デザイン実験は、アミノ酸の特異的なサブセットの使用が、折りたたみ可能で且つ活性なタンパク質を生成することができ、その結果、タンパク質構造内に容易に適合され且つ、機能的且つ構造的ホモログ及びパラログを検出するために使用されうるアミノ酸の「同義」置換の分類に役立つ(Murphy LR et al., 2000)。同義アミノ酸群及び更に好ましい同義アミノ酸群を表1に示す。
【0043】
相当の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドに関して、同等の、又は改善された活性を有する活性変異体は、コードDNAの常用の突然変異誘発技術、コードDNA配列のレベルでのコンビナトリアル技術(例えば、DNAシャッフリング、ファージディスプレー/セレクション)から、あるいはコンピューター支援設計研究、続く従来技術において説明されているような所望の活性についてのバリデーション、から生じることがある。
【0044】
特異的な非保存的突然変異も、異なる目的で本発明のポリペプチド内に導入されることがある。前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの親和性を低下する変異は、その再使用能及び再循環能を高め、これはその治療効能を高める可能性がある(Robinson CR, 2002)。最終的には本発明のポリペプチド中に存在する免疫原性エピトープが、ワクチン開発のために活用されるか(Stevanovic S, 2002)、もしくはタンパク質安定性を増大する変異を選択し、それらを補正するための公知の方法に従いそれらの配列を修飾することにより排除され得る(van den Burg B及びEijsink V, 2002;国際公開公報第02/05146号、第00/34317号、第98/52976号)。
【0045】
本発明の更に別のポリペプチドは、上述の配列のアミノ酸配列の活性なフラグメント、前駆体、塩、又は機能的に等価の誘導体である。
【0046】
フラグメントは、それらの機能を変化することなく末端又は内部のアミノ酸の欠失を提示すべきであり、そして、前記タンパク質の機能的な高次構造に必須のアミノ酸を除去又は置換することなく、一般的に数個のアミノ酸、例えば10個以下、好ましくは3個以下のものを包含すべきである。小さいフラグメントは、抗原決定基を形成することがある。
【0047】
「前駆体」は、細胞又は身体への投与前又は後に代謝的で且つ酵素的なプロセシングにより本発明の化合物へと変換されうる化合物である。
【0048】
用語「塩」は、本明細書では、本発明のポリペプチドのカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当業界で知られている手段によって形成することができ、そして無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄又は亜鉛の塩など、及び、例えばアミンで形成されるような有機性塩、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、プロカインなどを含む。酸付加塩には、例えば、鉱酸、例えば塩酸又は硫酸との塩、及び有機酸、例えば酢酸又はシュウ酸との塩、が含まれる。そのような塩のいずれも、本発明のペプチド及びポリペプチド又はそれらの類似体と実質的に同様の活性を有するはずである。
【0049】
用語「誘導体」は、本明細書で使用する場合、アミノ酸部分の側鎖又はアミノ末端又はカルボキシ末端の基の上に存在する官能基から、既知の方法に従い調製されうる誘導体を意味する。そのような分子は、通常一次配列を変化させない他の修飾、例えば、ポリペプチドのin vivo又はin vitroでの化学的誘導体化(アセチル化又はカルボキシル化)であって、ペプチドの合成及びプロセシングの間に又は更なるプロセシング段階において、当該ペプチドのリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホスレオニン残基の導入)又はグリコシル化(哺乳類のグリコシル化酵素にポリペプチドを曝露することによるもの)のパターンを修飾することによって生成されるもの、からも生じることがある。あるいは、誘導体は、前記カルボキシル基のエステル又は脂肪族アミド及び遊離アミノ基のN−アシル誘導体又は遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体を含み、且つ、例えばアルカノイル基又はアリール基として、アシル基により形成される。
【0050】
前記誘導体の生成は、内部又は末端の位置において、適切な残基の部位指定の修飾を包含してもよい。付着に使用する残基は、ポリマーの付着が可能な側鎖(すなわち、官能基を有する側鎖、例えばリジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジン等)を有するはずである。あるいは、ポリマーの付着が可能な側鎖を有する残基は、前記ポリペプチドのアミノ酸を置換することができ、あるいは前記ポリペプチドの内部又は末端の位置で付加することができる。また、遺伝学的にコードされているアミノ酸の側鎖は、ポリマー付着のために化学的に修飾されることがあり、あるいは適切な側鎖の官能基を有する非天然アミノ酸も利用されることがある。好ましい付着方法は、ペプチド合成と化学的ライゲーションの組み合わせを利用する。有利には、水溶性ポリマーの付着が、生分解性リンカーを介して、特にタンパク質のアミノ末端領域でなされる。そのような修飾は、前記リンカーの分解時にポリマーの修飾無しに前記タンパク質を放出する前駆体(又は「プロドラッグ」)型のタンパク質を提供するように働く。
【0051】
ポリマー付着は、アンタゴニストの特定の位置で自然に発生するアミノ酸の側鎖又はアンタゴニストの特定の位置で自然に発生するアミノ酸を置換する天然若しくは非天然の側鎖に対してだけでなく、標的の位置でアミノ酸の側鎖に付着する炭水化物又は他の部分に対してもなされうる。希少な又は非天然のアミノ酸も、特異的に操作された菌種においてタンパク質を発現することによって導入されうる(Bock A, 2001)。
【0052】
上文で示した変異体は全て、自然に発生するものでも、ヒト以外の生物において同定されるものでも、あるいは、化学合成、部位指定突然変異誘発技術、又は任意な他の適当な既知の技術により調製される人工的なもの、であってもよく、これは当業界で提示されている技術を用いて当業者によってルーチンに得ることができ、そして試験することができる、実質的に相当の突然変異型又は短縮型のペプチドの有限集合を提供する。
【0053】
本願で開示されている新規アミノ酸配列は、異なる種類の試薬及び分子を提供するために使用されうる。これらの化合物の例は、それらの完全配列又は特異的フラグメント、例えば抗原決定基を用いて同定されうる結合タンパク質又は抗体である。ペプチドライブラリーは、特許請求の範囲のアミノ酸配列に結合する抗体又は他のタンパク質をスクリーニングし、そして特徴付けるための、そして同様の結合特性を有する前記ポリペプチドの別の型を同定するための既知の方法(Tribbick G, 2002)において使用されうる。
【0054】
本明細書は、先に説明されたポリペプチドのいずれかを含む融合タンパク質も開示している。これらのポリペプチドは、このポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性を著しく損なうことも、追加の特性を提供する可能性もなく、本明細書において開示されたタンパク質配列とは異種のタンパク質配列を含むべきである。このような特性の例は、より容易な精製手法、より長い体液中の半減期の維持、追加の結合部分、末端タンパク質分解性の消化による成熟、又は細胞外局在化がある。この後者の特徴は、先の定義に含まれる融合タンパク質又はキメラタンパク質の特定群を定義するために特に重要であり、その理由はこれは、クレームの分子が、これらのポリペプチドの単離及び精製が促進される空間のみではなく、一般に前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド及びそれらの受容体が相互作用する空間にも、局在化することを可能にするからである。
【0055】
前記部分、リガンド及びリンカーの設計は、融合タンパク質の構築、精製、検出及び使用のための方法及び戦略同様、文献において開示されている(Nilsson J et al., 1997; Methods Enzymol, Vol. 326-328, Academic Press, 2000)。本発明の融合タンパク質に含まれうる好ましいタンパク質配列は、これらのタンパク質配列膜結合タンパク質、イムノグロブリンの定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド含有タンパク質、エクスポートシグナル含有タンパク質、に属する。これらの配列の特徴及びそれらの特異的な使用は詳細に開示されており、例えばアルブミンタン融合タンパク質(WO01/77137)、多量体化ドメインを含む融合タンパク質(WO01/02240、WO00/24782)、免疫複合体(Garnett MC, 2001)、又はアフィニティークロマトグラフィーによる組み換え産物の精製を可能にする配列を含む融合タンパク質(Constans A, 2002; Burgess RR and Thompson NE, 2002; Lowe CR et al., 2001; Sheibani N, 1999)である。
【0056】
本発明のポリペプチドは、それらに特異的に結合するリガンドを生成し、そして特徴付けるために使用されうる。これらの分子は、天然又は人工の、化学的観点(結合タンパク質、抗体、分子インプリンティングポリマー)から非常に異なるものであってもよく、そして当業界の技術(WO 02/74938 ; Kuroiwa Y et al., 2002; Haupt K, 2002; van Dijk MA and van de Winkel JG, 2001; Gavilondo JV and Larrick JW, 2000)を適用することによって生成されてもよい。そのようなリガンドは、それらを生成せしめたポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性を拮抗化し、又は阻害することができる。特に、共通で且つ効率的なリガンドは、膜結合タンパク質又は抗体の細胞外ドメインで表され、これは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、又は抗原結合フラグメントの形態であってもよい。
【0057】
上述のポリペプチド及びポリペプチドベースの誘導体化された試薬は、所望の使用方法及び/又は製造方法に従い、別の型、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞毒性物質の中から選択される分子との活性のある接合体又は複合体であってもよい。
【0058】
特定の分子、例えばペプチドミメティクス(peptide mimetic)も、本発明のポリペプチドの配列及び/又は構造を基に設計されることがある。ペプチドミメティクス(peptidomimeticとも称される)は、アミノ酸の側鎖の、アミノ酸のキラリティーの、及び/又はペプチド主鎖のレベルで化学的に修飾されたペプチドである。これらの変更は、向上した調製、性能及び/又は薬物動態の特徴を有する本発明のポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを提供することが意図される。
【0059】
例えば、前記ペプチドが、問題のある対象へのインジェクションの後にペプチダーゼによる開裂を受けやすい場合、非開裂性のペプチドミメティクスによる特に感受性のあるペプチド結合の置換は、より安定で且つその結果治療薬として更に有用なペプチドを提供することができる。同様に、L−アミノ酸残基の置換は、タンパク質分解に対してほとんど感受性がないペプチドであって、最終的にペプチド以外の有機化合物により類似のペプチドを賦与する標準的な方法である。アミノ末端のブロッキング基、例えばt−ブチルオキシカルボニル、アセチル、テイル(theyl)、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル(suberyl)、アジピル、アゼライル(azelayl)、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、及び2,4−ジニトロフェニルも有用である。増大した性能、延長された活性、精製の容易さ、及び/又は増大した半減期を提供する多くの他の修飾が従来技術で開示されている(WO 02/10195; Villain M et al., 2001)。
【0060】
ペプチドミメティクスに含まれるアミノ酸誘導体にとって好ましい別の同義群は、表IIに規定されているものである。アミノ酸誘導体の非限定的なリストには、アミノイソ酪酸(Aib)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−COOH、インドリン−2カルボン酸、4−ジフルオロ−プロリン、L−チアゾリジン−4−カルボン酸、L−ホモプロリン、3,4−デヒドロプロリン、3,4−ジヒドロキシ−フェニルアラニン、シクロヘキシル−グリシン、及びフェニルグリシンも含まれる。
【0061】
「アミノ酸誘導体」とは、20個の遺伝子でコードされる天然のアミノ酸とは異なるアミノ酸又はアミノ酸様の化学的存在物を意図する。特に、アミノ酸誘導体は、置換型又は非置換型の直鎖若しくは分枝、又は環状のアルキル部分を含むことがあり、且つ1又は複数のヘテロ原子を含むことがある。アミノ酸誘導体は、新規に生成されてもよく、又は商業的供給源(Calbiochem-Novabiochem AG, Switzerland; Bachem, USA)から入手してもよい。
【0062】
タンパク質の構造及び機能をプローブし、そして/あるいは改善させるために、in vitro及びin vivo両方の翻訳系を用いて非天然アミノ酸誘導体をタンパク質に組み込む種々の方法論が文献において開示されている(Dougherty DA, 2000)。非ペプチドミメティクスと同様、ペプチドミメティクスの合成及び開発のための技術も当業界で周知である(Golebiowski A et al., 2001; Hruby VJ and Balse PM, 2000; Sawyer TK, in "Structure Based Drug Design", edited by Veerapandian P, Marcel Dekker Inc., pg. 557-663,1997)。
【0063】
本発明の別の目的は、前駆脂肪細胞因子−1様活性を有する本発明のポリペプチド、それらに対して生成する抗体又は結合タンパク質と結合するポリペプチド、相当の融合タンパク質、あるいは上文で開示したアンタゴニスト活性を有する突然変異体、をコードする単離された核酸にある。好ましくは、これらの核酸は、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド122〜1180で規定されるポリヌクレオチド、配列番号7、配列番号7のヌクレオチド1〜1131で規定されるポリヌクレオチドから成る群から選択されるDNA配列又は前記DNA配列のいずれかの相補体、を含んで成るべきである。
【0064】
あるいは、本発明の核酸は、配列番号1、配列番号1のヌクレオチド122〜1180で規定されるポリヌクレオチド、配列番号7、配列番号7のヌクレオチド1〜1131で規定されるポリヌクレオチドから成る群から選択される核酸又は前記DNA配列のいずれかの相補体と、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、あるいは少なくとも約30個のヌクレオチドの範囲にわたり少なくとも約85%の同一性を示すはずである。
【0065】
用語「高ストリンジェントな条件」は、非常に類似の分子の会合を容易にするハイブリダイゼーション反応における条件であって、50%ホルムアルデヒド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性してせん断されたサケ精子DNAを含んで成る溶液中で60〜65℃一晩インキュベーションし、続いて0.1xSSC中フィルターを同一の温度で洗浄することに存するものを意味する。
【0066】
実質的に同一のヌクレオチド配列を含むこれらの核酸は、コードされたポリペプチドを維持し、修飾し、導入し、又は発現するために使用されうるプラスミド、ベクター及び任意な他のDNAコンストラクトに含まれることがある。特に、前記核酸分子が発現制御配列と作用可能に連結しているベクターは、原核又は真核宿主細胞における、コードされたポリペプチドの発現を可能にしうる。
【0067】
用語「実質的に同一のヌクレオチド配列」は、遺伝コードの縮重が原因で、所定のアミノ酸配列をもコードする全ての他の核酸配列を含む。この意味で、文献は、組換え体の発現にとって好ましい又は最適化されたコドンに対する示唆を提供している(Kane JF et al., 1995)。
【0068】
核酸及びベクターは、異なる目的で細胞内に導入されることがあり、その結果トランスジェニック細胞及び動物を生成せしめる。本発明のポリペプチドを発現することができる細胞の産生方法は、そのようなベクター及び核酸で細胞を遺伝子操作することを含んで成る。
【0069】
特に、宿主細胞(例えば、細菌細胞)は、本発明の核酸及びベクターによってコードされたポリペプチドの一過性又は安定性の発現を可能にする形質転換によって修飾されることがある。あるいは、前記分子は、正常な発現レベルと比較した場合に、本発明のポリペプチドの増強又は低下した発現レベルを有するトランスジェニック動物細胞又はヒト以外の動物を生成させるために(非相同組換え/相同組換え又はそれらの安定な組込み及び維持を可能にする任意な他の方法による)使用されることがある。そのような正確な修飾は、本発明の核酸及び、例えば遺伝子治療(Meth. Enzymol., vol. 346,2002)又は部位特異的なリコンビナーゼ(Kolb AF, 2002)に関連する技術、を利用することによって得ることができる。本願で開示する前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドを基にしたそれらの機能の系統だった研究のためのモデル系も、ヒト細胞系へのジーンターゲティングによって生成されうる(Bunz F, 2002)。
【0070】
遺伝子サイレンシング法を実施して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の内在性発現をダウンレギュレートすることもできる。RNA干渉(RNAi)(S.M. Elbashir ら. Nature 2001, 411, 494-498)は、使用可能な配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのための1つの方法である。短いdsRNAオリゴヌクレオチドをin vitroで合成して細胞内に導入する。これらdsRNAオリゴヌクレオチドの配列特異的結合によって標的mRNAの分解が開始され、標的タンパク質の発現が減少又は阻害される。
【0071】
上記に述べた遺伝子サイレンシング法の有効性は、ポリペプチド発現の測定(例えばウェスタンブロットによる)、又はTaqManベースの方法を用いるRNAレベルの測定によって評価することができる。
【0072】
本発明のポリペプチドは、当業界で知られている任意な方法、例えば組換えDNA関連技術、及び化学合成技術、によって調製されることもある。特に、本発明のポリペプチドを生成する方法は、上述のように、核酸又はベクターが発現する条件下で宿主細胞又はトランスジェニック細胞を培養し、そして培養物から前記核酸又はベクターによってコードされるポリペプチドを回収することを含んで成ることもある。例えば、ベクターが、細胞外又はシグナルペプチド含有タンパク質との融合タンパク質としてポリペプチドを発現する場合、組換え産物は細胞外空間に分泌されることがあり、そして、培養細胞から、更なる処理の観点で更に容易に回収され、且つ精製されることがあり、あるいは、当該細胞は直接使用され、又は投与されることがある。
【0073】
本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、任意の適当な手段(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接的なマイクロインジェクション等)によって適切な宿主細胞に導入されうる、適当なエピソームの又は非相同/相同組換えのベクター内に挿入され、そしてライゲーションされることがある。特定のプラスミド又はウイルスベクターを選択するのに重要な因子は、ベクターを含むレシピエント細胞が当該ベクターを含まないそれらのレシピエント細胞から容易に認識され、且つ選択されうることの容易さ;特定の宿主で望まれるベクターのコピー数;及び異なる主の宿主細胞間でベクターを「シャトル」し得ることが望ましいか否か、を含む。
【0074】
ベクターは、転写開始/終結制御配列の支配下での原核又は真核宿主細胞による本発明のポリペプチドを含む単離されたポリペプチド又は融合ポリペプチドの発現を可能にするはずであり、これらは、前記細胞において構成的に活性又は誘導性のものが選択される。前記細胞が実質的に豊富な細胞系は、続いて安定な細胞系を提供するよう単離されうる。
【0075】
異なる転写制御配列及び翻訳制御配列は、真核生物宿主(例えば、酵母、昆虫、植物、又は哺乳類の細胞)に対し、その宿主の性質に依存して利用することができる。それらは、ウイルス源、例えばアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルス等に由来してもよく、ここでは、制御シグナルが、高レベルで発現する特定の遺伝子と関連している。例としてはヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母GAL4遺伝子プロモーター等がある。転写開始制御シグナルは、抑制及び活性を可能にして、その結果前記遺伝子発現が調節されうるようなものが選択されうる。導入されたDNAによって安定して形質転換された細胞は、前記発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することによって選択されうる。当該マーカーはまた、栄養要求宿主に対する光合成栄養、殺生物耐性、例えば抗生物質、又は重金属、例えば銅、等をも提供しうる。選択マーカー遺伝子は、発現されるDNA遺伝子配列に直接連結されるか、あるいは同時トランスフェクションによって同一の細胞内に導入されうる。
【0076】
宿主細胞は原核生物又は真核生物のいずれかのものでありうる。好ましいものは、真核生物宿主、例えば哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であり、それは、それらがタンパク質に対する翻訳後修飾、例えば正確な折りたたみ及びグリコシル化を提供するためである。酵母もグリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実施しうる。多くの組換えDNAストラテジーが存在しており、これらは、酵母内で所望のタンパク質の産生に利用されうる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する。酵母は、クローン化哺乳類遺伝子産物のリーダー配列を認識し、そしてリーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。
【0077】
本発明の上文で言及した態様は、新規前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの配列に対して本願が提示する開示を、一般的な分子生物学的技術の知識と組み合わせることによって達成されうる。
【0078】
多数の本及び概説が、ベクター及び原核生物又は真核生物宿主細胞を用いて組換えタンパク質をどのようにクローン化し、そして産生するかについての技術を提供しており、例えばオックスフォード大学出版局によって発行されている「A Practical Approach」のシリーズの中の幾つかのタイトルである ("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995;"DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996;"Protein Expression", 1999;"Protein Purification Techniques", 2001).。
【0079】
更に、最新のより重点的な文献は、ハイスループットな様式でポリペプチドを発現する技術(Chambers SP, 2002; Coleman TA, et al., 1997)、治療的用途を有する組換えタンパク質の大規模産生のために産業上利用される細胞系及び方法(Andersen DC and Krummen L, 2002; Chu L and Robinson DK, 2001)、及び注目のポリペプチドを発現する別の真核生物発現系であって、所望のタンパク質の経済的な産生についてかなりの可能性を有すると考えられるもの、例えばトランスジェニック植物を基にしたもの(Giddings G, 2001)又は酵母ピキア・パストリス(Pichia pastors)を基にしたもの(Lin Cereghino GP et al., 2002)、の概論を提供する。組換えタンパク質産物は、発現したポリペプチドの量及び質を証明するため(Baker KN et al., 2002)、生物学的同等性及び免疫原性の問題があるか否かを調べるのと同様に(Schellekens H, 2002; Gendel SM, 2002)、種々の分析技術により迅速にモニタリングされうる。
【0080】
全体的に、合成前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドは文献において開示されており、そして、短い長さで示した本発明の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドに有効に適用されうる多数の化学合成技術の例が、固相又は液相合成技術として文献にて利用可能となっている。合成されるポリペプチドのカルボキシ末端に相当するアミノ酸は、有機溶媒中で不溶の支持体に結合し、そして、適切な保護基で保護されたそれらのアミノ基及び側鎖の官能基を有するアミノ酸がカルボキシ末端からアミノ末端へと順番に1つずつ縮合するものと、樹脂又は前記ペプチドのアミノ基の保護基と結合したアミノ酸が放出されるものとの交互の反復反応によって、ペプチド鎖はその結果この様式で伸長される。固層合成法は、使用する保護基の型に依存して、tBoc法及びFmoc法に大きく分類される。典型的に使用される保護基には、tBoc(t−ブトキシカルボニル)、Cl−Z(2−クロロベンジルオキシカルボニル)、Br−Z(2−ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4’−ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)及びCl2−Bzl(2,6−ジクロロベンジル)がアミノ基の場合に含まれ;NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル)がグアミジノ基の場合に含まれ;そしてtBu(t−ブチル)がヒドロキシル基の場合に含まれる。所望のペプチドの合成後、それは脱保護反応にかけられ、そして固体の支持体から切り離される。そのようなペプチド切断反応は、Boc法の場合フッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を用いて、そしてFmoc法の場合TFAを用いて実施されうる。
【0081】
本発明のポリペプチドの精製は、この目的のために知られている方法、すなわち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動等の任意な常用の方法、のうちのいずれか1つによって実施されうる。本発明のタンパク質を精製するために優先して使用されうる追加の精製手順は、標的タンパク質に結合し、且つ、産生され、そしてカラム内に含まれるゲルマトリックス上に固定される、モノクローナル抗体又は親和性の基を用いるアフィニティークロマトグラフィーである。タンパク質は、ヘパリン又は特異的抗体によりカラムと結合し、一方、不純物はカラムを通過する。洗浄後、タンパク質はpH又はイオン強度の変化によってゲルから溶出される。あるいは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)を使用することができる。溶出は、タンパク質精製に一般的に利用される水−アセトニトリルベースの溶媒を用いて実施されうる。
【0082】
本発明の新規ポリペプチドの開示、及びそれらに関連して開示されている試薬(抗体、核酸、細胞)の開示はまた、細胞への又は動物内でのそれらの発現レベルを増強し、又は低下させる化合物をスクリーニングし、そして特徴付けることを可能にする。
【0083】
「オリゴヌクレオチド」は、化学合成されうる一本鎖ポリデオキシヌクレオチド又は二本の相補的なポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかを意味する。そのような合成オリゴヌクレオチドは、5’ホスフェートを有さず、そのためキナーゼの存在下ホスフェートをATPと一緒に添加しないことには別のオリゴヌクレオチドとライゲーションしないであろう。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸されていないフラグメントにライゲーションするであろう。
【0084】
本発明は、本発明の化合物の精製された調製物(ポリペプチド、核酸、細胞等)を含む。精製された調製物とは、本明細書で使用する場合、乾燥重量当たり少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%本発明の化合物を含む調製物を意味する。
【0085】
本願は、一連の新規前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド及び複数の可能性のある用途を有する関連試薬を開示する。特に、本発明のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性の増大が疾患の治療又は予防において望まれる場合はいつでも、試薬、例えば開示されている前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、相当の融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コード核酸、発現細胞、又はそれらの発現を増強する化合物が使用されうる。
【0086】
従って、本発明は、開示された前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、対応する融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コード核酸、発現している細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、活性成分として含有する、本発明のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性の増加が必要である疾患の治療又は予防のための医薬組成物を開示している。これらの医薬組成物の調製方法は、開示される前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、相当の融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コード核酸、発現細胞、又はそれらの発現を増強する化合物を、医薬として許容される担体と一緒に組み合わせることを含んで成る。本発明のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性の増加が必要である疾患を治療又は予防する方法は、治療として有効量の、開示される前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、相当の融合タンパク質及びペプチドミメティクス、コード核酸、発現細胞、又はそれらの発現を増強する化合物、の投与を含んで成る。
【0087】
本願で開示されている試薬の中でも、本発明のポリペプチドの発現又は活性を低下させるリガンド、アンタゴニスト又は化合物は、複数の用途を有し、特に、これらは、本発明のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連した疾患の治療又は診断において使用されうる。
【0088】
従って、本発明は、本発明のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連する疾患の処置又は予防のための医薬組成物であって、そのようなポリペプチドの発現又は活性を低下させるリガンド、アンタゴニスト又は化合物のうちの1つを活性成分として含む医薬組成物を開示する。これらの医薬組成物の調製方法は、前記のリガンド、アンタゴニスト、又は化合物を、医薬として許容される担体と一緒に組み合わせることを含んで成る。本発明のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連する疾患の処置又は予防のための方法は、治療的に有効量のアンタゴニスト、リガンド又は化合物の投与を含んで成る。
【0089】
本発明の医薬組成物は、前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド又は関連試薬に加え、医薬として許容される適当な担体、生物学的に適合性のある媒体及び添加物を含んでもよく、これらは動物への投与に適したものであり(例えば、生理学的食塩水)、且つ、活性化合物を医薬として使用されうる調製物へと処理するのを容易にする助剤(賦形剤、安定化剤、佐剤、又は希釈剤)を最終的に含んで成るものである。
【0090】
医薬組成物は、投与形態の要求に合致する任意の許容される方法で製剤化されうる。例えば、生体材料、糖−高分子複合体、ポリエチレングリコール及び他の天然又は合成ポリマーは、薬物送達の有効性に関して活性成分を改善するのに使用されうる。特定の投与形態を評価する技術及びモデルは文献に開示されている(Davis BG and Robinson MA, 2002; Gupta P et al., 2002; Luo B and Prestwich GD, 2001; Cleland JL et al., 2001; Pillai O and Panchagnula R, 2001)。
【0091】
これらの目的に適したポリマーは生体適合性があり、すなわち、それらは生物系に対して非毒性であり、そして多数のそのようなポリマーは既知である。そのようなポリマーは天然で疎水性又は親水性であっても、生分解性、非生分解性、又はそれらの組み合わせであってもよい。これらのポリマーには、天然ポリマー(例えばコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸)、並びに合成ポリマー(例えばポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物)が含まれる。疎水性の非分解性ポリマーの例には、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリメチルメタエリラート(methaerylate)が含まれる。親水性の非分解性ポリマーの例には、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、及びそれらのコポリマーが含まれる。連続反復単位として好ましいポリマーには、エチレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(PEG)がある。
【0092】
任意の許容される投与形態は、活性成分の所望の血液レベルを確立するために、当業者によって使用され、そして決定されうる。例えば、投与は、種々の非経口経路、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、経鼻、経皮、経口、又は頬側でなされることがある。本発明の医薬組成物はまた、維持又は制御放出剤形、例えば蓄積注射、浸透ポンプ等を含むものであって、既定の速度での前記ポリペプチドの長期投与のためのもので、好ましくは正確な投与量の単回投与に適した単位剤形で投与されてもよい。
【0093】
非経口投与は、ボーラス注入又は時間をかけての漸進的な潅流によってもよい。非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液が含まれ、これらは当業界で知られている佐剤又は賦形剤を含むことがあり、且つルーチンな方法に従い調製されうる。尚、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与されることがある。適当な親油性溶媒又は媒体には、脂肪油、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばごま油、例えば合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドが含まれる。懸濁液の粘性を増大させる物質を含みうる水性注射懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる。任意に、懸濁液はまた安定化剤を含んでもよい。医薬組成物は注射による投与に適した溶液を含み、且つ、賦形剤と一緒に約0.01〜99.99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を含む。
【0094】
用語「治療的に有効量」とは、疾患の経過及び重症度に影響を及ぼし、そのような病状の緩和又は寛解を導くのに十分な量の活性成分を意味する。有効量は、投与経路及び患者の症状に依存する。
【0095】
用語「医薬として許容される」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、且つ投与される宿主にとって毒性でない任意の担体を包含することを意味する。例えば、非経口投与の場合、上記活性成分は、単位剤形で、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー液のような媒体中で製剤化されうる。担体はまた、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギ、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び種々の油から選択することができ、これらは、石油、動物、植物又は合成起源のもの(ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油)を含む。
【0096】
投与される用量は、レシピエントの年齢、性別、健康、及び体重、併用の処置の種類、もしあるのであれば、処置の頻度、及び所望の効果の性質、に依存する。用量は、当業者によって理解され、且つ決定可能なように、個々の対象者に合わせられる。各処置に必要とされる総量は、複数回投与又は単回投与によって投与されうる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその症状に対する、又は当該症状のほかの症候に対する他の治療薬と一緒に投与されうる。通常、活性成分の一日量は、0.01〜100ミリグラム/キログラム体重/日含まれる。通常、分割量又は維持放出形態で与えると、1〜40ミリグラム/キログラム/日が所望の結果を得るのに有効である。第二又はその後の投与は、個体に対して投与された最初又は前回の用量と同一、それ未満、又はそれ以上の用量で実施されうる。
【0097】
治療目的又は製造目的を有する方法とは異なる複数のほかの方法が、本願で開示されている前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド及び関連試薬を利用することができる。
【0098】
最初の例において、本発明の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドに関連する疾患を処置するのに有効な候補化合物をスクリーニングする方法であって:
(a)そのようなポリペプチドを発現する宿主細胞、当該ポリペプチドの増大した又は低下した発現レベルを有するトランスジェニックなヒト以外の動物、又はトランスジェニック動物細胞を、候補化合物と接触させること;及び
(b)前記動物又は細胞に対する化合物の効果を決定すること、
を含んで成る方法が提供される。
【0099】
第二の例において、本発明のポリペプチドのアンタゴニスト/阻害物質又はアゴニスト/活性化物質としての候補化合物を同定する方法であって:
(a)前記ポリペプチドと、前記化合物、及び哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜と
を接触させること;及び
(b)前記の分子が、前記ポリペプチドと前記哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜との相互作用、又は当該相互作用から生じる応答、を阻止又は増強するか否かを決定すること、
を含んで成る方法が提供される。
【0100】
第三の例において、試料中の本発明のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定する方法は、当該ポリペプチド又はそのコードRNA/DNAのいずれかを検出することができる。従って、そのような方法は:
(a)タンパク質含有試料を準備すること;
(b)前記試料と本発明のリガンドとを接触させること;及び
(c)前記ポリペプチドに結合した前記リガンドの存在を決定し、それにより前記試料中のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定すること、
を含んで成る。
【0101】
あるいは、前記方法は:
(a)核酸含有試料を準備すること;
(b)前記試料と本発明の核酸とを接触させること;及び
(c)当該核酸と前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションを決定し、それにより前記試料中の核酸の存在を決定すること、
を含んで成る。
【0102】
この意味において、配列番号1又は配列番号7に示すヌクレオチド配列に由来したプライマー配列を、更にポリメラーゼ連鎖反応増幅により、試料中の本発明のポリペプチドの転写産物又はこれをコードしている核酸の量を決定するために使用することができる。
【0103】
本発明の更なる目的は、試料中の本発明の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するためのキットであって、本願で開示されている1又は複数の試薬:本発明の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド、アンタゴニスト、リガンド又はペプチドミメティクス、単離された核酸又はベクター、医薬組成物、発現細胞、あるいは発現レベルを増大又は低下させる化合物、を含んで成るキットである。
【0104】
このようなキットは、in vitro診断法又はスクリーニング法において使用することができ、それらの実際の組成物は、試料の具体的様式(例えば、患者由来の生物学的試料組織)、及び測定される分子種に適合されるべきである。例えば、前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの濃度を測定することが望ましい場合、キットは、ウェスタンブロットで得られるシグナルを比較するために、精製された形の抗体及び対応するタンパク質を含有してもよい。あるいは、前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの転写産物の濃度を測定することが望ましい場合は、このキットは、対応するORF配列でデザインされた特異的核酸プローブを含むか、又はそのようなプローブを含有する核酸アレイの形であってよい。これらのキットは、タンパク質-、ペプチドミメティクス-、又は細胞-ベースのマイクロアレイの形であっても良く(Templin MFら, 2002;Pellois JPら, 2002;Blagoev B及びPandey A, 2001)、本明細書で明らかにされたタンパク質、ペプチドミメティクス及び細胞を使用することにより、ハイ-スループットプロテオミクス試験を可能にする。
【0105】
治療的用途
SCS0009核酸分子、それらのポリペプチド、並びにアゴニスト及びアンタゴニストは、本明細書に列記されたものを含む多くの疾患、障害又は状態を治療、診断、改善、又は予防に使用される。
【0106】
SCS0009ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストは、SCS0009ポリペプチドの活性を調節する分子、SCS0009ポリペプチドの成熟型の少なくとも1つの活性を増加又は減少するいずれかの分子を含む。アゴニスト又はアンタゴニストは、SCS0009ポリペプチドと相互作用するタンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、又は低分子量の分子のような、コファクターであってもよく、これによりそれらの活性を調節する。
【0107】
潜在的なポリペプチドアゴニスト又はアンタゴニストには、SCS0009ポリペプチドの可溶型又は膜結合型のいずれかと反応する抗体が含まれる。SCS0009ポリペプチドの発現を調節する分子は、典型的には、発現のアンチセンスレギュレーターとして作用することができるSCS0009ポリペプチドをコードしている核酸を含む。
【0108】
本願は、新規な前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド及び、前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドが関与している疾患及び症状、例えば肥満、臓器肥大、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性、高インスリン血、高血糖、高グリセリド血症)、副腎皮質機能障害、心筋及び骨格筋の肥大、脂肪異常栄養症(OMIM*269700を参照のこと)、及び免疫系障害、自己免疫疾患及び免疫欠損(Jensenらは、DLK1がCNSにおいて発現していることを証明した。Neuroreport. 2001 Dec 21; 12 (18) :3959-63)、発育障害、ガン、自己免疫甲状腺疾患及び関連障害、例えば眼障害及び前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドが関与している他の病理学的症状、の処置又は予防において、適切に製剤化された医薬組成物の活性成分として有用でありうる一連の関連試薬を開示する。
【0109】
Moonらは、Pref−1が発育遅延、肥満、眼裂縮小、骨格奇形、及び血清脂質代謝物の増大を示すことを証明している(Yang Soo moon et al. Moleculat and Cellular Biology. 2002. Vol. 22 (15): 5585-5592)。SCS0009核酸分子自体、それらのポリペプチド、アゴニスト及びアンタゴニストは、発育遅延、肥満、裂縮小、骨格奇形、及び血清脂質代謝物の増大を診断又は処置するのに有用なようである。
【0110】
Murphyらは、DLK1が第14染色体の単為生殖二染色体(UDP)と関連している不均一な表現型に寄与しうることを示唆している(Murphy SK et al. Hum. Mutat. 2003 Ju1 ; 22 (1) : 92-7)。更に、Suttonらの論文は、DLK1が精神遅滞の開始及び母性の単為生殖二染色体に関与しうることを示唆している(Am J Med Genet. 2002 Sep 15 ; 112 (1) : 23-7)。尚、Kobayashiらは、DLK1がUDPで観察される脊柱側弯症の表現型に寄与しうることを指摘している(Kobayashi S et al. Gene Cells. 2000 Dec; 5 (12): 1029-37)。SCS0009核酸自体、そのポリペプチド、アゴニスト及びアンタゴニストは、精神遅滞、母性の単為生殖二染色体又は脊柱側弯症を診断又は処置するのに有用なようである。
【0111】
Van Limptは、DLK1が神経芽細胞腫の細胞系のサブセットにおいて高度に発現していることを証明した(Int. J Cancer. 2003 May 20; 105 (1) : 61-9;van Limpt V et al. Med Pediatr Oncol. 2000 Dec; 35 (6): 554-8;及びOnline Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *176290: http ://www.ncbi.nlm.nih.qov/entrez/query.fcgi?db=OMIMも参照のこと)。SCS0009核酸自体、そのポリペプチド、アゴニスト及びアンタゴニストは、神経芽細胞腫、クロム親和細胞腫、肺ガン、神経内分泌腫瘍を診断又は処置するのに有用なようである。
【0112】
Doggetらは、DLK1が正常な造血に必須であり、且つ異常な発現が骨髄異形成症候群の推奨マーカーであると述べている(Dogget KL et al. J Cell. Bioichem. 2002; 86 (1) : 56-66)。SCS0009核酸自体、そのポリペプチド、アゴニスト及びアンタゴニストは、骨髄異形成症候群を診断又は処置するのに有用なようである。
【0113】
本発明のポリペプチド及び関連試薬の治療的用途は、創薬及び前臨床開発時の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチド及び他の生物学的産物の評価に関して、動物細胞、組織を使用するin vivo/in vitroアッセイ手段によるか、又は公知のin silico/コンピュータ支援の方法(Johnson DE及びWolfgang GH, 2000)により、評価(安全性、薬物動態及び有効性に関して)される。
【0114】
本発明は、以降、以下の実施例により特定の態様を参照して説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものとして解されるべきではない。当該説明の内容は、上文の教示に照らして、そしてそれ故に、特許請求の範囲の意味及び目的を超えて広げることなく、当業者によって実施されうる全ての改変及び置換を含んで成る。
【0115】
【表1】

【表2】

【実施例1】
【0116】
実施例1:
ASTRALデータベース(Brenner SEら, "The ASTRAL compendium for protein structure and sequence analysis", Nucleic Acids Res., 2000 Jan 1; 28(1): 254-6)から得たEGFタンパク質ドメイン配列を用い、ヒトゲノム配列(Celeraデータベース)から予測された遺伝子の相同タンパク質配列を検索した。このタンパク質配列は、下記の3種のプログラムのひとつにより作成された、遺伝子予測及びそれらの翻訳から得た:Genescan (Burge C, Karlin S., "Prediction of complete gene structures in human genomic DNA”, J Mol Biol., 1997 Apr 25; 268(1): 78-94)、Grail(Xu Y, Uberbacher EC., “Automated gene identification in large-scale genomic sequences", J Comput Biol., 1997 Fall; 4(3): 325-38)及びFgenesh(Celera社独自のソフトウェア)。
【0117】
EGFドメインの配列プロファイルは、相同配列を並置し及び配列プロファイルを作成するアルゴリズムである、PIMAII(Profile Induced Multiple Alignment;ボストン大学ソフトウェア、verII, Das S及びSmith TF, 2000)を用いて作成した。相同性は、クエリープロファイルとヒット配列の間のグローバル-ローカルアラインメントを作成するPIMAIIを用いて検出した。この場合、このアルゴリズムは、クエリーとしてのEGF機能ドメインのプロファイルと共に使用した。PIMAIIは、クエリープロファイルを、タンパク質配列に翻訳された遺伝子予測のデータベースと比較し、その結果そのドメインを含むDNA配列との合致を同定することができる。更にこの配列の公知のEFG含有タンパク質とのBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;NCBI ver2)による比較は、一番近いホモログを同定した(Gish W, States DJ., "Identification of protein coding regions by database similarity search", Nat Genet., 1993 Mar; 3(3): 266-72;Pearson WR, Miller W., "Dynamic programming algorithms for biological sequence comparison", Methods Enzymol., 1992; 210: 575-601;Altschul SFら,"Basic local alignment search tool", J Mol Biol., 1990 Oct 5; 215(3): 403-10)。検出に使用したPIMAIIパラメータは、PIMA先行(prior)アミノ酸確率行列及びZ-カットオフスコア10であった。使用したBLASTパラメータは以下であった:比較行列=BLOSUM62;ワードレングス=3;カットオフE値=10;ギャップオープニング及びイクステンション=デフォルト;フィルターなし。
【0118】
一旦機能ドメインがこの配列において同定されたならば、これらの遺伝子は、一番近いホモログの配列を用いgenewiseアルゴリズムで再度予測した(Birney Eら,"PairWise and Search Wise: finding the optimal alignment in a simultaneous comparison of a protein profile against all DNA translation frames", Nucleic Acids Res., 1996 Jul 15; 24(14): 2730-9)。
【0119】
相同EGFドメインのプロファイルは、PERL(Practical Extraction and Report Language)及びPIMAIIに記載されたPSI-BLAST(Altshulら 1997)スクリプトを用い自動的に作成した。
【0120】
EGFドメインプロファイルを基に作成された当初のクエリーとの464のマッチの中で全部で55種の予測された遺伝子は、新規である可能性があると判断されたので選択した。
【0121】
これらの新規性のあるタンパク質配列は最終的には、BLASTを用いるタンパク質データベース(SwissProt/Trembl, Human IPI and Derwent GENESEQ)の検索により評価し、及び特定のアノテーションは、アミノ酸配列相同性を基に寄与することができる。
【0122】
実施例2:
実施例1に記載の方法により単離されたひとつの配列は、本明細書においてSCS0009ポリペプチド配列と称されるものである。
【0123】
当該タンパク質は、多数の特許出願において同定されているより長い配列の短いバージョンに相当し、これは、当該タンパク質の中心領域に存在する6個のEGFリピートの第三番目のものを本質的に欠いている(図1を参照のこと)。幾つかのフラグメントは、EGFとの相同性に基づいて同定された。
【0124】
これらの特許出願のなかでも、WO0157233(HYSEQ)は、Pref−1との相同性が約50%のタンパク質を記載し、そして多数の異なるタンパク質、例えばコムギ胚芽凝集素、ラミニン、凝固因子、フィブリリン、TNF−RI、IGF−R1、及びe−セレクチンと相同の部分を記載している。
【0125】
前駆脂肪細胞因子−1(Pref−1、SWISSPROT Q09163;脂肪細胞阻害タンパク質、デルタ様タンパク質、及び胎児抗原1とも称される)は、脂肪細胞の文化を阻害し、且つGHの抗脂肪生成効果を媒介することが知られている膜タンパク質である。ノックアウトマウスは、発育遅延、肥満、眼裂縮小、骨格奇形、及び血清脂質代謝物の増大を示し、これは、Prf−1が脂肪組織塊の恒常性にとって重要であることを示唆している。複数の選択的スプライス変異体が知られているが、大部分が、膜貫通/細胞内配列を含んでなるC末端領域において異なる。
【0126】
実施例3−SCS0009並びにスプライス変異体SCS0009−SV3及びSCS0009−SV4の同定及びクローニング:
3.1 序論:
SCS0009は、6個のエキソンに及ぶ、352アミノ酸のEGFドメイン含有タンパク質をコードする、前駆脂肪細胞因子−1/デルタ様タンパク質と相同性のある、1663のヌクレオチドのcDNA予測である。SCS0009は、Celera (hCP1782513.1), NAgeneseq (AAH78208), AAgeneseq (ADA06923)及びSwissprot (AAQ88493)のスプライス変異体である。後者の配列は、当該予測のアミノ酸90と91との間に追加の31個のアミノ酸を含む。31個のアミノ酸が挿入されている配列をSCS0009−SV5と称する。SCS0009のスプライス変異体と思われる2つのイメージクローンも同定した。SCS0009−SV3(イメージクローン5478078)は、アミノ酸84の後に6個のアミノ酸の欠失を含んでいることを除き、SV5と同一である。SCS0009−SV4(イメージクローン3349698)は、SCS0009−SV5の短縮バージョンである。これらのスプライス変異体のアラインメントを図2に示す。
【0127】
スプライス変異体3,4及び5に加え、本発明者はまた、SCS0009予測の最初の62アミノ酸を欠失し、それ故に予測されるシグナルペプチド配列を含まない2つの追加のスプライス変異体を同定した。SV1も他のスプライス変異体に見られる31アミノ酸の挿入を含んだ。SV2は、31アミノ酸の挿入の上流の6アミノ酸の欠失を除き、SV1と同一であった。SCS0009とSV1及びSV2とのアラインメントを図3に示す。
【0128】
SCS0009の発現コンストラクト及びそのスプライス変異体は以下の通り生成した:イメージクローン5478078を鋳型として使用し、SCS0009−SV4のC末端6HISタグ付きバージョンを生成せしめた。SCS0009−SV5はSV3から構築した。SCS0009はSV5から構築した。
【0129】
3.2 SCS0009−SV3のクローニング
SCS0009は、6個のエキソンに及ぶ、352アミノ酸のEGFドメイン含有タンパク質をコードする、前駆脂肪細胞因子−1/デルタ様タンパク質と相同性のある、1663のヌクレオチドのcDNA予測である。SCS0009のコード配列(図4)を含むイメージクローン(5478078)は、ATCC(プラスミドID14670)から購入し、そしてSP6及びT7プライマー(表1)を用いて配列確認した。当該イメージクローンのcDNAインサートは、エキソン3の末端に18ヌクレオチド(6アミノ酸)の欠失を有する点でSCS0009予測と異なる。また、これはエキソン4の5’側に93ヌクレオチドの伸長を含み(31アミノ酸の挿入を生じる)(図5)、そしてその結果SCS0009のスプライス変異体であると思われ、これをSCS0009−SV3と称した(図6)。
【0130】
3.2.1 SCS0009−SV3の哺乳類細胞発現ベクターの構築
プラスミド14670をPCR鋳型として使用し、SCS0009−SV3のORF配列と6HISタグをコードする3’配列とを含むpEAK12d(図7)及びpDEST12.2(図8)の発現クローンを、Gateway(登録商標)クローニング法(Invitrogen)を用いて生成せしめた。
【0131】
3.2.2 インフレーム6HISタグ配列と融合したGateway適合SCS0009−SV3ORFの生成
Gatewayクローニング法の第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5’末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3’末端で隣接した、SCS0009−SV3のORFを生成する2段階のPCR反応に関連している(Gateway適合cDNA)。第一のPCR反応液(最終容量50μl)は以下を含有している:プラスミド14670を1μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)( SCS0009−SV3−EX1及びSCS0009−SV3−EX3)を各0.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0132】
第二のPCR反応液(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各Gateway変換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクルとした。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0133】
3.2.3 Gateway適合SCS0009−SV3ORFのGatewayエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
Gatewayクローニング法の第二段階は、下記のような、Gateway改変PCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図9)へのサブクローニングを伴う:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリDH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(登録商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0134】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ番号4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定にかけた。これらのプライマー配列は表1に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ番号LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。
【0135】
正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR−SCS0009−SV3−6HIS、プラスミドID14879、図10)のプラスミド溶出液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図3及び4)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応液において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリDH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(登録商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0136】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R及びSCS0009−SV3−SP1プライマーにより、DNA配列決定にかけた。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev及びSCS0009−SV3−SP1プライマーにより、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は表1に示す。
【0137】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、配列を確認した各クローン(pEAK12d−SCS0009−SV3−6HIS、プラスミドID14885、図11、及びpDEST12.2−SCS0009−SV3−6HIS、プラスミドID14889、図12)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0138】
【表3】

下線の配列=コザック配列
太字=停止コドン
イタリックの配列=Hisタグ
【0139】
3.3 SCS0009−SV4のクローニング
SCS0009は、6個のエキソンに及ぶ、352アミノ酸のEGFドメイン含有タンパク質をコードする、前駆脂肪細胞因子−1/デルタ様タンパク質と相同性のある、1663のヌクレオチドのcDNA予測である。SCS0009のコード配列(図3)を含むイメージクローン(3349698)は、ATCC(プラスミドID14680)から購入し、そしてSP6及びT7プライマー(表1)を用いて配列確認した。当該イメージクローンのcDNAインサートは、SCS0009予測と、当該予測のエキソン4の5’側に93ヌクレオチドの伸長(31アミノ酸の挿入を生じる)を含む点で異なる。エキソン4の末端付近に、フレームシフトをもたらす133bpの欠失及び、SCS0009の短縮バージョンを生成する接近している停止コドンもある(図14)。それ故に、前記イメージクローンのcDNAは、SCS0009のスプライス変異体であると思われ、これをSCS0009−SV4と称した。SCS0009と当該スプライス変異体とのアラインメントを図15に示す。
【0140】
3.3.1 SCS0009−SV4の哺乳類細胞発現ベクターの構築
プラスミド14680をPCR鋳型として使用し、SCS0009−SV4のORF配列と6HISタグをコードする3’配列とを含むpEAK12d(図16)及びpDEST12.2(図17)の発現クローンを、Gateway(登録商標)クローニング法(Invitrogen)を用いて生成せしめた。
【0141】
3.3.2 インフレーム6HISタグ配列と融合したGateway適合SCS0009−SV4ORFの生成
Gatewayクローニング法の第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5’末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3’末端で隣接した、SCS0009−SV4のORFを生成する2段階のPCR反応を伴う(Gateway適合cDNA)。第一のPCR反応液(最終容量50μl)は以下を含有している:プラスミド14680を1μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を10μl、MgSO4(50mM)を1μl、遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0009−SV4−EX1及びSCS0009−SV4−EX2)を各0.5μl、及びPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)0.5μl。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0142】
第二のPCR反応液(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各Gateway変換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクルとした。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0143】
3.3.3 Gateway適合SCS0009−SV4ORFのGatewayエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
Gatewayクローニング法の第二段階は、下記のような、Gateway改変PCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図18)へのサブクローニングを伴う:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリDH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0144】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ番号4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13及びM13RevプライマーによるDNA配列決定にかけた。これらのプライマー配列は表1に示す。配列決定反応液は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ番号LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。
【0145】
正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR−SCS0009−SV4−6HIS、プラスミドID15055、図19)のプラスミド溶出液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図16及び17)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応液において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリDH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(登録商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0146】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F及びpEAK12Rプライマーにより、DNA配列決定にかけた。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Revプライマーにより、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は表1に示す。
【0147】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、配列を確認した各クローン(pEAK12d−SCS0009−SV4−6HIS、プラスミドID15061、図20、及びpDEST12.2−SCS0009−SV4−6HIS、プラスミドID15063、図21)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0148】
【表4】

下線の配列=コザック配列
太字=停止コドン
イタリックの配列=Hisタグ
【0149】
3.4 エキソン構築によるSCS0009のクローニング
SCS0009は、6個のエキソンに及ぶ、352アミノ酸のタンパク質をコードする、前駆脂肪細胞因子−1/デルタ様タンパク質と相同性のある、1663のヌクレオチドの予測である(図22)。SCS0009予測の種々のスプライス変異体が既にクローニングされている。当該SCS0009予測と最も近い配列同一性を有するバージョンは、SCS0009−SV5と称され(プラスミドID.14846)、エキソン3と4との間の31アミノ酸の挿入の存在のみがSCS0009と異なる。SCS0009タンパク質を生成させるために:
−SCS0009のエキソン1〜3及びエキソン4〜5がPCRによりプラスミドID.14846(pCR4−TOPO−SCS0009−SV5)から増幅された。
−ゲル精製したエキソンを混合し、そして新規PCR反応を実施して再構築したDNAを増幅させた。
−SCS0009のコード配列に相当する完全長のPCR産物(図24)をpCR−BluntII−TOPOクローニングベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、そして次にpDONR201(Gatewayエントリーベクター)及び発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2(発現ベクター)内にInvitrogen Gateway(登録商標)法を用いてサブクローニングした。
【0150】
3.4.1 プラスミドID.14846(pCR4−TOPO−SCS0009−SV5)からの、SCS0009をコードするエキソンのPCR増幅
PCRプライマーは、SCS0009のエキソン1〜3及びエキソン4〜5を増幅するために設計した(表1)。エキソン3のリバースプライマー(SCS0009−AP2)は、SCS0009のエキソン4とその5’末端において18bp重複している。エキソン4のフォワードプライマー(SCS0009−AP3)は、SCS0009のエキソン3とその5’末端において18bp重複している。
【0151】
SCS0009のエキソン1〜3を表す産物を生成させるために、PCR反応は、100ngのプラスミドID.14846、1.5μlの10mMdNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、1μlのMgSO4(Invitrogen)、1.5μlのSCS0009−AP1(10μM)、1.5μlのSCS0009−AP1(10μM)、10μlのSCS0009−AP2(10μM)、10μlの10xPfx緩衝液及び0.5μlのPfxポリメラーゼ(2.5U/μl)(Invitrogen)を含む50μlの最終体積で実施した。PCR条件は、94℃で5分;94℃で15秒、68℃で1分を25サイクル;68℃で7分の伸長サイクル;及び4℃の保持サイクル、とした。反応産物は0.8%アガロースゲル(1xTAE)上に流し、そして正確なサイズ(292bp)のPCR産物を、取扱説明書に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製し、50μl滅菌水中に回収した。SCS0009のエキソン4〜5を示す産物は、PCRプライマーにSCS0009−AP3/SCS0009−AP4が使用されたことを除き、同一の方法を用いて生成し、そして精製した。SCS0009−AP3/SCS0009−AP4PCR産物は806bpであった。
【0152】
3.4.2 SCS0009ORFを生成させるためのエキソン1〜3及びエキソン4〜5の構築
エキソン1〜3及び4〜5は、2μlのゲル精製エキソン1〜3産物、2μlのゲル精製エキソン4〜5産物、14846、1.5μlの10mMdNTP(Amersham Pharmacia Biotech)、1μlのMgSO4(Invitrogen)、1.5μlのSCS0009−AP1(10μM)、1.5μlのSCS0009−AP1(10μM)、10μlのSCS0009−AP4(10μM)、10μlの10xPfx緩衝液及び0.5μlのPfxポリメラーゼ(2.5U/μl)(Invitrogen)を含む50μlのOCR反応液中で構築した。PCR条件は、94℃で5分;94℃で15秒、68℃で1分を25サイクル;68℃で7分の伸長サイクル;及び4℃の保持サイクル、とした。反応産物は0.8%アガロースゲル(1xTAE)上に流し、そして正確なサイズ(1062bp)のPCR産物を、取扱説明書に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製し、50μl滅菌水中に回収し、そしてサブクローニングまで−20℃で保存した。
【0153】
3.4.3 PCR産物のサブクローニング
PCR産物は、Invitrogen Corporationから購入したトポイソメラーゼI改変クローニングベクター(pCR−BluntII−TOPO)に、製造業者の指定した条件を用いサブクローニングした。簡単に述べると、ゲル精製したPCR産物4μlを、1μlのTOPOベクター及び1μl塩溶液と共に、室温で15分間インキュベーションした。その後反応混合液を、E.コリ株TOP10(Invitrogen)へ、下記のように形質転換した:ワンショットTOP10細胞の50μlアリコートを、氷上で解凍し、2μlのTOPO反応液を添加した。この混合液を、15分間氷上でインキュベーションし、その後42℃で正確に30秒間インキュベーションすることによりヒートショックした。試料を氷上に戻し、温SOC培地(室温)250μlを添加した。試料を、振盪しながら(220rpm)、37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0154】
3.4.4 コロニーPCR
コロニーを、滅菌した爪楊枝を用い、50μl滅菌水中に接種した。播種材料のうち10μlのアリコートが、1xAmplitaq(登録商標)緩衝液、200μMのdNTP、20ピコモルのT7プライマー、20ピコモルのSP6プライマー、1ユニットのAmplitaq(登録商標)(Perkin Elmer)を含む20μlの合計の反応液量中で、MJ Research DNA Engineを用い、PCRにかけられた。サイクリング条件は以下の通りである:94℃で2分間;94℃で30秒間、48℃で30秒間及び72℃で1分間を30サイクル。試料は、次の解析まで4℃で維持した(保持サイクル)
【0155】
PCR反応産物を、1X TAE緩衝液中1%アガロースゲル上で分析した。予想されたPCR産物サイズ(1062bP+マルチクローニング部位又はMCSに起因する186bp)を生じたコロニーを、振盪しながら(220rpm)で、カナマイシン(40μg/ml)を含有する5ml L-ブロス(LB)中で一晩37℃で増殖した。
【0156】
3.4.5 プラスミドDNAの調製及び配列決定
ミニプレッププラスミドDNAは、FastPlasmid(登録商標)ミニキット(Eppendorf)を用い、取扱説明書に従い、1.5mlの培養液から調製した。プラスミドDNAは、50μlの溶出緩衝液(10mM Tris−Cl、0.1mM EDTA、pH8.5)で溶出した。DNA濃度は、Spectromax190分光計(Molecular Devices)を用いて測定した。プラスミドDNA(200〜500ng)を、T7プライマー及びSP6プライマーにより、Big DyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ番号4390246)を製造業者の指示に従い使用し、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は表1に示すとおりである。配列決定反応液を、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ番号LSKS09624)を使用し精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで分析した。
【0157】
配列解析は、予測されたSCS0009配列との100%の一致を含むクローンを同定した。クローニングしたcDNAフラグメントの配列を図24に示す。クローニングしたPCR産物(pCR−BluntII−TOPO−SCS0009)(プラスミドID.14893)のプラスミドマップを図25に示す。
【0158】
3.4.6 SCS0009の哺乳類細胞発現ベクターの構築
プラスミド14893をPCR鋳型として使用し、SCS0009のORF配列と6HISタグをコードする3’配列とを含むpEAK12d(図27)及びpDEST12.2(図28)の発現クローンを、Gateway(登録商標)クローニング法(Invitrogen)を用いて生成せしめた。
【0159】
3.4.7 インフレーム6HISタグ配列と融合したGateway適合SCS0009ORFの生成
Gatewayクローニング法の第一段階は、attB1組換え部位及びコザック配列が5’末端に隣接し、並びにインフレームで6ヒスチジン(6HIS)タグ、停止コドン及びattB2組換え部位をコードしている配列が3’末端で隣接した、SCS0009のORFを生成する2段階のPCR反応を伴う(Gateway適合cDNA)。第一のPCR反応液(最終容量50μl)は以下を含有している:プラスミド14893を1μl(40ng)、1.5μlのdNTP(10mM)、10μlの10X Pfxポリメラーゼ緩衝液、1μlのMgSO4(50mM)、各0.5μlの遺伝子特異的プライマー(100μM)(SCS0009−EX1及びSCS0009−EX2)、及び0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)。このPCR反応は、95℃で2分間の最初の変性工程、それに続く94℃で15秒;55℃で30秒及び68℃で2分間の12サイクル;並びに、4℃の保持サイクルを用い行った。この増幅産物を、1X TAE緩衝液(Invitrogen)中の0.8%アガロースゲル上で可視化し、予測された分子量に移動した産物を、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲルから精製し、50μl滅菌水中に回収した。
【0160】
第二のPCR反応液(最終容量50μl)は、精製されたPCR1産物10μl、dNTP(10mM)を1.5μl、10X Pfxポリメラーゼ緩衝液を5μl、MgSO4(50mM)を1μl、各Gateway変換プライマー(100μM)(GCPフォワード及びGCPリバース)0.5μl、及びPlatinum Pfx DNA ポリメラーゼ0.5μlを含んだ。第2のPCR反応条件は:95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒及び68℃で2分間を4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒及び68℃で2分間を25サイクル;引き続き4℃の保持サイクルとした。PCR産物は、製造業者の指示に従い、Wizard PCRプレップDNA精製システム(Promega)を用いゲル精製した。
【0161】
3.4.8 Gateway適合SCS0009ORFの、GatewayエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
Gatewayクローニング法の第二段階は、下記のような、Gateway改変PCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221(Invitrogen、図26)へのサブクローニングを伴う:PCR2由来の精製産物5μlを、pDONR221ベクター(0.1μg/μl)1.5μl、BP緩衝液2μl及びBPクロナーゼ酵素混合物(Invitrogen)1.5μlと共に、最終容量10μlで室温で1時間インキュベーションした。この反応を、プロテアーゼK 1μl(2μg/μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリ株DH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(登録商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0162】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。プラスミドDNA(150-200ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystems カタログ番号4390246)を製造業者の指示に従い用い、21M13、M13Rev及びSCS0009−SP1プライマーによるDNA配列決定にかけた。これらのプライマー配列は表1に示す。配列決定反応は、Dye-Exカラム(Qiagen)又はMontage SEQ 96クリーナッププレート(Millipore カタログ番号LSKS09624)を用いて精製し、その後Applied Biosystems 3700シークエンサーで解析した。正確な配列を含むこれらのクローンのひとつ(pENTR−SCS0009−6HIS、プラスミドID15057、図29)のプラスミド溶出液(2μl又は約150ng)を、最終容量10μl中にpEAK12dベクター又はpDEST12.2ベクター(図27及び28)のいずれか(0.1μg/μl)1.5μl、LR緩衝液2μl及びLRクロナーゼ(Invitrogen)1.5μlを含有する組換え反応液において使用した。この混合物を、室温で1時間インキュベーションし、プロテアーゼK(2μg/μlを1μl)の添加により停止し、37℃で更に10分間インキュベーションした。この反応液のアリコート(1μl)を用い、E.コリDH10B細胞を、以下の通りエレクトロポレーションにより形質転換した:DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の25μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合液1μlを添加した。混合物を、冷却した0.1cmエレクトロポレーション用キュベットに移し、細胞をBioRad Gene-Pulser(登録商標)を製造業者の推奨プロトコールに従い使用しエレクトロポレーションした。予め室温に温めたSOC培地(0.5ml)を、エレクトロポレーション直後に添加した。この混合物を、15mlのスナップ-キャップチューブに移し、振盪しながら(220rpm)37℃で1時間インキュベーションした。その後形質転換混合物のアリコート(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL-ブロス(LB)プレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベーションした。
【0163】
プラスミドミニ-プレップDNAを、Qiaprep Turbo 9600 ロボット型システム(Qiagen)を用い、得られた各ベクターでサブクローニングした6種のコロニー由来の5ml培養物から調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、pEAK12F、pEAK12R及びSCS0009−SP1プライマーにより、DNA配列決定にかけた。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500ng)を、先に説明したように、21M13及びM13Rev及びSCS0009−SV3−SP1プライマーにより、DNA配列決定にかけた。プライマー配列は表1に示す。
【0164】
Sambrook J.らの説明した方法(1989 (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press))により、CsCl勾配で精製されたマキシ-プレップDNAを、配列を確認した各クローン(pEAK12d−SCS0009−6HIS、プラスミドID15062、図30、及びpDEST12.2−SCS0009−6HIS、プラスミドID15064、図31)のひとつの500ml培養物から調製した。プラスミドDNAは、濃度1μg/μlで滅菌水(又は10mM Tris-HCl、pH8.5)中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0165】
【表5】

下線の配列=コザック配列
太字=停止コドン
イタリックの配列=Hisタグ
【0166】
実施例4:ACA0009ドメインの同定及び説明
4.1 同定
SMART(http://smart.embl-heidelberg.de/)と称されるバイオインフォマティクスツールを用い、SCS0009並びにスプライシング変異体SCS0009−SV3の推定ドメインを同定した。結果は図2に示す。尚、Prositeも、これらの配列について行った(http ://us.expasy.org/prosite/)。
【0167】
【表6】

【0168】
【表7】

【0169】
【表8】

【0170】
部分的なScanPrositeの結果:
SCS0009
PDOC00016 PS00016 RGD 細胞接着配列 [パターン] [警告:発生確率が高いパターン]。382-384 RGD
【0171】
4.2 ドメインの説明
・EGF 上皮増殖因子様ドメイン。Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約30〜40個のアミノ酸残基長の配列は、非常に多数の他のタンパク質、ほとんどの動物タンパク質において、より多く又はより少なく保存された形で存在する、MEDLINE:、MEDLINE:88196363MEDLINE:84117505MEDLINE:91145344MEDLINE:85063790MEDLINE:で示される。EGF様パターンの1又は複数のコピーを含むことが現時点でわかっているタンパク質のリストは多く、且つ変動する。無関係のタンパク質であるように見えるEGFドメインの機能的意義は、未だ明らかではない。しかし共通の特徴は、これらの反復単位は、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン又は分泌されることがわかっているタンパク質において認められることである(例外:プロスタグランジンG/Hシンターゼ)。EGFドメインは、ジスルフィド結合を伴うことが示されている(EGFにおいて)6個のシステイン残基を含む。この主要構造は、2本鎖β-シート、それに続くループと、C-末端の短い2本鎖シートである。保存されたシステイン間のサブドメインは、長さが変動する。
【0172】
・GF CA. カルシウム-結合EGF様ドメイン. Interproアノテーション:
上皮増殖因子(EGF)の配列中に認められる約40個のアミノ酸残基長の配列は、ほとんどの動物の多数の膜結合タンパク質及び細胞外タンパク質において存在することが証明されている(IPR000561参照)。これらのタンパク質の多くは、それらの生物学的機能についてカルシウムを必要とし、及びカルシウム結合部位は、一部のEGF様ドメインのN末端に位置することがわかっている。カルシウム結合は、多くのタンパク質−タンパク質相互作用にとって重要である。ヒトの第IX凝固因子について、カルシウム-リガンドは2個の五角錐を形成することが示されている。第1、3及び4番目の保存された負電荷又は極性の残基は、側鎖リガンドである。後者は、ヒドロキシル化される可能性がある(IPR000152参照)。保存された芳香族残基に加え、第二の保存された負の残基は、カルシウム-結合部位の安定化に関連していると考えられる。非-カルシウム結合EGF様ドメインにおけるように、6個の保存されたシステインが存在し、カルシウム-結合は厳密に局所的な構造変化のみを誘導するので、両方の型の構造は非常に類似している。
【化1】

'n':負電荷又は極性の残基 [DEQN]
'b':可能性のあるβ-ヒドロキシル化された残基 [DN]
'a':芳香族アミノ酸
'C':ジスルフィド結合に関連した、システイン
'x':任意のアミノ酸。
【0173】
PS00016;RGD
フィブロネクチンで見られる配列Arg-Gly-Aspは、その細胞表面受容体、インテグリンとの相互作用に重要である。「RGD」トリペプチドと称されるものも、多くの他のタンパク質配列において見られ、これは細胞接着において役割を果たすことが証明されている。これらのタンパク質は以下である:コラーゲンの一部の形、フィブリノーゲン、ビトロネクチン、フォンウィルブランド因子(VWF)、ヘビのディスインテグリン、及び粘菌ディスコイジン。「RGD」トリペプチドは、他のタンパク質においても見られ、ここで、これは、常にではないが同一の目的に役立つことがある。
【0174】
4.3 結論
実施例1で提案したコメントに加え、SMARTの結果(図32)に基づき、SCS0009、SCS0009−SV3及びSCS0009−SV5が共通のドメイン機構を有することは明らかである。しかしながら、SCS0009−SV3又はSCS0009−SV5と異なり、SCS0009はRGDトリペプチド配列を含み、これは、SCS0009が、細胞接着に関与する、インテグリン細胞表面受容体と相互作用しうることを示唆している。SCS0009及びSCS0009−SV3は更に、ジロイシン、ER膜保持シグナル(C末端のKKXX様モチーフ:KTTA、並びにC3HC4型の推定のジンクフィンガー(PSORTにより同定されたもの:http://psort.nibb.ac.jp/form2.html、結果は示さない)。そのようなものとして、SCSOOO9は、そのシグナル伝達経路において、SCS0009−SV3及びSCS0009−SV5と比較して固有の特徴を示す。説明したスプライス変異体の中でも、SCS0009−SV4は膜貫通ドメインを含まない。そのようなものとして、それは分泌タンパク質に相当することがあり、これはin vivoで内在性(integral)SCS0009アンタゴニストとして働くと思われる。更に、未知のプロテアーゼの作用に曝露される場合、DLK1は胎児性抗原1(FA1)と称される可溶性ペプチドを生成する(Jensen et al.)。従って、可溶性SCS0009及びSCS0009−SV3(SCS0009の他のスプライス変異体についても同様)は、FA1の作用を通じて生成されうると思われる。これらの可溶性SCS0009ポリペプチドも、in vivoで内在性SCS0009アンタゴニストとして働くようであり、そして上文の治療用途で説明したような士官の診断及び処置において特に有用であることを示すと思われる。
【0175】
実施例5:タンパク質機能の生物学的関連性の探索に適した代謝内分泌学アッセイ
多数の代謝内分泌学関連アッセイが本出願人により開発され、そして、これらはタンパク質機能の生物学的関連性の探索に役立つ。本出願人により開発された代謝内分泌学関連アッセイの例には、代謝内分泌学のための細胞ベースのアッセイが含まれる。これらを以下考察する。
【0176】
5.1 脂肪細胞への分化のアッセイ:
脂肪細胞分化の阻害は、糖尿病及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のような疾患におけるインスリン抵抗性を軽減させるのに重要であると考えられている脂肪量の減少のためのin vitroモデルである。この目的は、前駆脂肪細胞が脂肪細胞に分化するのを阻害するタンパク質を同定することである。3T3−L1マウス前駆脂肪細胞系は、インスリン+IBMXにより脂肪細胞を分化するよう誘導される。分化がTNF−α+シクロヘキサミドにより阻害されるという知見をポジティブコントロールとして使用する。
【0177】
5.2 トリチウム標識グルコースの取り込み(3T3 L1):
この目的は、糖尿病又はPCOSの間の脂肪におけるインスリン抵抗性のモデルとしてのグルコース取り込みを刺激するタンパク質を同定することである。使用する脂肪細胞は、分化しているマウス3T3−L1脂肪細胞である。
【0178】
5.3 トリチウム標識グルコースの取り込み(一次ヒト脂肪細胞):
この目的は、糖尿病又はPCOSの間の脂肪におけるインスリン抵抗性のモデルとしてのグルコース取り込みを刺激するタンパク質を同定することである。一次ヒト脂肪細胞を使用する。
【0179】
5.4 トリチウム標識グルコースの取り込み(一次ヒト骨格筋細胞):
この目的は、糖尿病又はPCOSの間の脂肪におけるインスリン抵抗性のモデルとしてのグルコース取り込みを刺激するタンパク質を同定することである。一次ヒト骨格筋細を筋管に分化させ、続いて当該アッセイに使用する。
【0180】
【表9】

【表10】

【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】SCS0009のORFと既知の関連ポリペプチド配列とのアラインメント。
【図2】SCS0009予測の予測アミノ酸配列とスプライス変異体SV3、SV4及びSV5とのClustal Wアラインメント。
【図3】SCS0009の予測アミノ酸配列とスプライス変異体SV3、SV1及びSV2とのClustal Wアラインメント。
【図4−1】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図4−2】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図5】イメージクローン5478078(SCS0009−SV3)のcDNAインサートのヌクレオチド配列と翻訳。
【図6】SCS0009の予測アミノ酸配列とSCS0009−SV3とのアラインメント。
【図7】発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図8】発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図9】pDONR221のマップ。
【図10】pENTR−SCS0009SV3−6HISのマップ。
【図11】pEAK12d−SCS0009SV3−6HISのマップ。
【図12】pDEST12.2−SCS0009SV3−6HISのマップ。
【図13−1】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図13−2】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図14】イメージクローン3349698(SCS0009−SV4)のcDNAインサートのヌクレオチド配列と翻訳。
【図15】SCS0009の予測アミノ酸配列とSCS0009−SV4とのアラインメント。
【図16】発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図17】発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図18】pDONR221のマップ。
【図19】pENTR−SCS0009SV4−6HISのマップ。
【図20】pEAK12d−SCS0009SV4−6HISのマップ。
【図21】pDEST12.2−SCS0009SV4−6HISのマップ。
【図22−1】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図22−2】SCS0009予測のヌクレオチド配列と翻訳。
【図23−1】SCS0009配列を生成させるために使用したSCS0009−AP1、−AP2、−AP3及び−AP4プライマーの位置を示すSCS0009−SV5PCR産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図23−2】SCS0009配列を生成させるために使用したSCS0009−AP1、−AP2、−AP3及び−AP4プライマーの位置を示すSCS0009−SV5PCR産物のヌクレオチド配列と翻訳。
【図24】クローニングしたSCS0009ORFのヌクレオチド配列及び翻訳。
【図25】pCR−BluntII−TOPO−SCS0009のマップ。
【図26】pDONR221のマップ。
【図27】発現ベクターpEAK12dのマップ。
【図28】発現ベクターpDEST12.2のマップ。
【図29】pENTR−SCS0009−6HISのマップ。
【図30】pEAK12d−SCS0009−6HISのマップ。
【図31】pDEST12.2−SCS0009−6HISのマップ。
【図32】SCS009ポリペプチドのSMARTドメインアラインメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆脂肪細胞因子−1様活性を有する単離されたポリペプチドであって:
a.配列番号2又は8に列挙されているアミノ酸配列;
b.配列番号2又は8に列挙されている配列のポリペプチドの成熟型(配列番号3又は9);
c.配列番号2又は8に列挙されている配列のポリペプチドのヒスチジンタグ付き型(配列番号4又は10);
d.配列番号2又は8に列挙されているアミノ酸配列の変異体であって、選択した配列において特定されている任意のアミノ酸が非保存的に置換されており、但し、当該配列中の15%未満のアミノ酸残基がそのように変化している、変異体;
e.a.〜d.に示すアミノ酸配列の活性フラグメント、前駆体、塩、又は誘導体、
から成る群から選択されるポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2、3、4、8、9又は10に示す配列のいずれかの天然の対立遺伝子変異体である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
変異体が一塩基多型の翻訳である、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2、3、4、8、9、10又はそれらのフラグメントに対して生成する抗体又は結合タンパク質と特異的に結合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドを含んで成る融合タンパク質。
【請求項6】
これらのタンパク質配列:膜結合タンパク質、イムノグロブリン定常領域、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質、シグナルペプチド含有タンパク質、エクスポートシグナル含有タンパク質、に属する1又は複数のアミノ酸配列、を更に含んで成る、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記アンタゴニストが、相当のポリペプチドの1又は複数の残基の非保存的置換及び/又は欠失から生じるアミノ酸配列を含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドのアンタゴニスト。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合するリガンド。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性を拮抗又は阻害する、請求項8に記載のリガンド。
【請求項10】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、抗原結合フラグメント、又は膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、である、請求項9に記載のリガンド。
【請求項11】
放射性標識、蛍光標識、ビオチン、又は細胞毒性物質の中から選択される分子との活性な接合体(conjugate)又は複合体(complex)の形態の、請求項1〜7又は10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの配列及び/又は構造に基づいて設計されるペプチドミメティクス。
【請求項13】
a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の前駆脂肪細胞因子−1様活性を有するポリペプチド;
b)請求項5又は6に記載の融合タンパク質;又は
c)請求項7に記載のアンタゴニスト、
から成る群から選択される単離されたポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項14】
配列番号1、配列番号1のヌクレオチド122〜1180で規定されるポリヌクレオチド、配列番号7、配列番号7のヌクレオチド1〜1131で規定されるポリヌクレオチドから成る群から選択されるDNA配列又は前記DNA配列のいずれかの相補体、を含んで成る請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
a)高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし;又は
b)配列番号1、配列番号1のヌクレオチド122〜1180で規定されるポリヌクレオチド、配列番号7、配列番号7のヌクレオチド1〜1131で規定されるポリヌクレオチドから成る群から選択される核酸、又は前記DNA配列の相補体と、少なくとも約30個のヌクレオチドの範囲にわたり少なくとも約85%の同一性を示す、
精製された核酸。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の核酸を含んで成るベクター。
【請求項17】
前記核酸分子が、原核又は真核宿主細胞におけるコードポリペプチドの発現を可能にする発現制御配列と作用可能に連結している、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
請求項15に記載の精製された核酸によりコードされるポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜7又は18のいずれか1項に記載のポリペプチドを発現することができる細胞を産生する方法であって、請求項13〜17のいずれか1項に記載のベクター又は核酸で細胞を遺伝子操作することを含んで成る方法。
【請求項20】
請求項13〜17のいずれか1項に記載のベクター又は核酸で形質転換した宿主細胞。
【請求項21】
請求項13〜17のいずれか1項に記載のベクター又は核酸で形質転換されたトランスジェニック動物細胞であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの増強又は低下した発現レベルを有する細胞。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの増強又は低下した発現レベルを有するよう形質転換された、トランスジェニックなヒト以外の動物。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチドを生成するための方法であって、請求項20又は21に記載の細胞を核酸又はベクターが発現する条件下で培養し、そして前記核酸又はベクターによってコードされるポリペプチドを培養物から回収することを含んで成る方法。
【請求項24】
細胞又は動物における請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現レベルを増強させる化合物。
【請求項25】
細胞又は動物における請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの発現レベルを低下させる化合物。
【請求項26】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAである、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、あるいは請求項24〜26のいずれか1項に記載の化合物を含む、精製された調製物。
【請求項28】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性の増大が必要とされる場合の疾患の治療又は予防における、請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、あるいは請求項24に記載の化合物、の使用。
【請求項29】
前駆脂肪細胞因子−1様活性の増大を必要とする疾患の処置又は予防のための医薬組成物であって、請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、あるいは請求項24に記載の化合物を活性成分として含む医薬組成物。
【請求項30】
医薬組成物の調製法であって、請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、あるいは請求項24に記載の化合物を、医薬として許容される担体と組み合わせることを含んで成る調製方法。
【請求項31】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの前駆脂肪細胞因子−1様活性の増大を必要とする疾患の処置又は予防のための方法であって、治療的に有効量の、請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、あるいは請求項24に記載の化合物の投与を含んで成る方法。
【請求項32】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連する疾患の治療又は予防における、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、あるいは請求項25又は26に記載の化合物の使用。
【請求項33】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連する疾患の治療又は予防のための医薬組成物であって、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、あるいは請求項25又は26に記載の化合物を活性成分として含む医薬組成物。
【請求項34】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの過剰な前駆脂肪細胞因子−1様活性に関連する疾患の処置又は予防のための医薬組成物の調製のための方法であって、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、あるいは請求項25又は26に記載の化合物を、医薬として許容される担体と組み合わせることを含んで成る方法。
【請求項35】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドに関連する疾患の処置又は予防のための方法であって、治療的に有効量の、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、あるいは請求項25又は26に記載の化合物の投与を含んで成る方法。
【請求項36】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドに関連する疾患を処置するのに有効な候補化合物をスクリーニングするための方法であって:
a)前記ポリペプチドの増強又は低下された発現レベルを有する、請求項20に記載の細胞、請求項21に記載のトランスジェニック動物細胞、又は請求項22に記載のトランスジェニックなヒト以外の動物を、候補化合物と接触させること、及び
b)前記動物又は細胞に対する前記化合物の効果を決定すること、
を含んで成る方法。
【請求項37】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドのアンタゴニスト/阻害物質又はアゴニスト/活性化物質としての候補化合物を同定するための方法であって:
a)前記ポリペプチドを、前記化合物、及び当該ポリペプチドに結合することができる、哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜とを接触させること;及び
b)前記の分子が、前記ポリペプチドと前記哺乳類細胞又は哺乳類細胞膜との相互作用、又は当該相互作用から生じる応答、を阻止又は増強するか否かを測定すること、
を含んで成る方法。
【請求項38】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドの活性及び/又は存在を決定するための方法であって:
a)タンパク質含有試料を準備すること;
b)前記試料と請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンドとを接触させること;及び
c)前記ポリペプチドに結合した前記リガンドの存在を決定すること、
を含んで成る方法。
【請求項39】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする転写物又は核酸の存在又は量を決定するための方法であって:
a)核酸含有試料を準備すること;
b)前記試料と請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸とを接触させること;及び
c)前記核酸と前記試料中の核酸とのハイブリダイゼーションを決定すること、
を含んで成る方法。
【請求項40】
ポリメラーゼ連鎖反応により試料中の請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする転写物又は核酸の存在又は量を決定するための配列番号1又は7に列挙されているヌクレオチド配列由来のプライマーの使用。
【請求項41】
試料中の請求項1〜4のいずれか1項に記載の前駆脂肪細胞因子−1様ポリペプチドの活性及び/又は存在を測定するためのキットであって、1又は複数の以下の試薬:請求項1〜6又は18のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項7に記載のアンタゴニスト、請求項8〜10のいずれか1項に記載のリガンド、請求項11に記載のポリペプチド、請求項12に記載のペプチドミメティクス、請求項13〜17のいずれか1項に記載の核酸、請求項20又は21に記載の細胞、請求項24〜26のいずれか1項に記載の化合物、請求項29又は33に記載の医薬組成物、を含んで成るキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2007−523592(P2007−523592A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566057(P2004−566057)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/051092
【国際公開番号】WO2004/063222
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】