説明

新規化合物、近赤外線吸収剤及びこれを含有する合成樹脂組成物

【課題】近赤外線吸収剤として優れたホウ素化合物及びこれを用いた近赤外線吸収剤および該近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収性合成樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるホウ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホウ素化合物及びその用途に関し、詳しくは、近赤外領域に吸収を有し、近赤外線吸収剤として、レーザー光を利用した情報記録材料(例えば、光カード、有機光導電体、レーザー熱転写記録、レーザー感熱記録、レーザーダイレクト製版等)、近赤外線吸収能(又は熱線吸収能)を要求される器材(例えば、近赤外線吸収フィルター、プラズマディスプレー用フィルター、光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、保護眼鏡、シークレットインク、農業用フィルム、ガラス、自動車内外装材、樹脂成形体等)等に有用な新規なホウ素化合物に関する。また、該化合物を含有する合成樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外領域に吸収を有し、レーザー光を利用した情報記録材料(例えば、光カード、有機光導電体、レーザー熱転写記録、レーザー感熱記録、レーザーダイレクト製版等)、近赤外線吸収能(又は熱線吸収能)を要求される器材(例えば、近赤外線吸収フィルター、プラズマディスプレー用フィルター、光学フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス、保護眼鏡、シークレットインク、農業用フィルム、ガラス、自動車内外装材、樹脂成形体等)等に有用な近赤外線吸収色素の要求が高まっている。
【0003】
近赤外線吸収色素としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等が使用されている。
【0004】
しかしながら、これらの化合物の近赤外線吸収能力は満足いくものではなく、また可視光線の領域に吸収波長を有するため、透明性が必要とされる用途や着色を嫌う用途には使用できなかった。特に、これらの近赤外線吸収色素を近赤外線吸収剤として使用する場合、熱可塑性樹脂等の合成樹脂と組み合わせて使用することが多く、その場合、樹脂との相溶性に問題があったり、可視光線の領域に吸収波長を有することに起因して樹脂の透明性を損なったり、着色の問題があったり、或いはその他にも樹脂の物性を損なったりする場合が多かった。
このため、近赤外領域に最大吸収波長を有しながら、可視光領域の吸収が小さい化合物が必要とされていた。
【0005】
また、環境への負荷の問題、或いは、精密電子材料分野等、用途により、(重)金属元素の使用が問題となる場合もあり、金属錯体以外の近赤外線吸収剤が望まれている。
【0006】
一方、非特許文献1には、Nインディゴ錯体が記載されているが、これはβ−ジケトイミネート金属(パラジウム)錯体であり、これから本発明の知見を得ることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem.Commun,2010,Vol.46,pp.6753−6755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、近赤外線の波長領域に最大吸収波長を有しながら、しかも可視光領域の吸収が小さく、近赤外線吸収剤として優れる新規なホウ素化合物及びこれを用いた近赤外線吸収剤を提供することにある。さらに該近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収性合成樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する新規なホウ素化合物が、近赤外線の波長領域に最大吸収波長を有しながら、可視光領域の吸収が小さく、近赤外線吸収剤として優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるホウ素化合物を提供するものである。
【化1】

(式中、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基を示し、 R1〜R16で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。)
【0011】
また本発明は、前記ホウ素化合物を含有する近赤外線吸収剤を提供するものである。
【0012】
また本発明は、前記ホウ素化合物を含有する近赤外線吸収性合成樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
また本発明は、前記近赤外線吸収性合成樹脂組成物からなる近赤外線吸収材を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、近赤外線の波長領域に最大吸収波長を有しながら、しかも可視光領域の吸収が小さく、近赤外線吸収剤として優れる新規なホウ素化合物を提供することができる。また、該ホウ素化合物を含有する近赤外線吸収剤及び近赤外線吸収性合成樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1で合成した本発明の新規ホウ素化合物である化合物No.1の1H−NMRチャートを示す。
【図2】図2は、実施例1で合成した本発明の新規ホウ素化合物である化合物No.1のアセトン溶液の吸収スペクトルを示す。
【図3】図3は、実施例2で製造した本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物を用いた近赤外線吸収材であるポリカーボネート近赤外線吸収フィルムの吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
【0017】
先ず、本発明の新規ホウ素化合物について説明する。本発明の新規ホウ素化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化2】

(式中、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基を示し、 R1〜R16で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。)
【0018】
前記一般式(1)において、R1〜R16で示されるハロゲン原子の例を挙げると、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0019】
前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基の例を挙げると、非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−アミル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、1,3−ジメチルブチル、1−イソプロピルプロピル、1,2−ジメチルブチル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、1,4−ジメチルペンチル、tert−ヘプチル、2−メチル−1−イソプロピルプロピル、1−エチル−3−メチルブチル、n−オクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、2−メチルヘキシル、2−プロピルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、イソウンデシル、n−ドデシル、イソドデシル、n−トリデシル、イソトリデシル、n−テトラデシル、イソテトラデシル、n−ペンタデシル、イソペンタデシル、n−ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n−ヘプタデシル、イソヘプタデシル、n−オクタデシル、イソオクタデシル、n−ノナデシル、イソノナデシル、n−イコシル、イソイコシル等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数1〜20のアルキル基としては、前記アルキル基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0020】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基の例を挙げると、前記アルキル基に対応したものが挙げられ、具体的には、非置換の炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、1,2−ジメチル−プロポキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1,3−ジメチルブトキシ、1−イソプロピルプロポキシ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、前記アルコキシ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0021】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基の例を挙げると、非置換の炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数6〜20のアリール基としては、前記アリール基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0022】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の例を挙げると、前記アリール基に対応したものが挙げられ、具体的には、非置換の炭素原子数6〜20のアリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフトキシ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数1〜20のアリールオキシ基としては、前記アリールオキシ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0023】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基の例を挙げると、非置換の炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、スチリル、シンナミル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、前記アリールアルキル基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0024】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基の例を挙げると、非置換の炭素原子数5〜12のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、4−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数5〜12のシクロアルキル基としては、前記シクロアルキル基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0025】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルチオ基の例を挙げると、非置換の炭素原子数1〜20のアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、iso−プロピルチオ、n−ブチルチオ、iso−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、t−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、iso−ペンチルチオ、neo−ペンチルチオ、1,2−ジメチル−プロピルチオ、n−ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n−ヘプチルチオ、2−エチルヘキシルチオ、n−オクチルチオ、n−ノニルチオ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数1〜20のアルキルチオ基としては、前記アルキルチオ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられ、具体的には、メトキシエチルチオ、エトキシエチルチオ、プロポキシエチルチオ、ブトキシエチルチオ、アミノエチルチオ、n−ブチルアミノエチルチオ、ベンジルアミノエチルチオ、メチルカルボニルアミノエチルチオ、フェニルカルボニルアミノエチルチオ、メチルスルホニルアミノエチルチオ、フェニルスルホニルアミノエチルチオ、ジメチルアミノエチルチオ、ジエチルアミノエチルチオ等が挙げられる。
【0026】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基の例を挙げると、非置換の炭素原子数6〜20のアリールチオ基としては、フェニルチオ、ナフチルチオ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数6〜20のアリールチオ基としては、前記アリールチオ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられ、具体的には、4−メチルフェニルチオ、4−エチルフェニルチオ、4−プロピルフェニルチオ、4−t−ブチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、4−エトキシフェニルチオ、4−アミノフェニルチオ、4−アルキルアミノフェニルチオ、4−ジアルキルアミノフェニルチオ、4−フェニルアミノフェニルチオ、4−ジフェニルアミノフェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、4−クロロフェニルチオ、4−ブロモフェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、2−エチルフェニルチオ、2−プロピルフェニルチオ、2−t−ブチルフェニルチオ、2−メトキシフェニルチオ、2−エトキシフェニルチオ、2−アミノフェニルチオ、2−アルキルアミノフェニルチオ、2−ジアルキルアミノフェニルチオ、2−フェニルアミノフェニルチオ、2−ジフェニルアミノフェニルチオ、2−ヒドロキシフェニルチオ、4−ジメチルアミノフェニルチオ、4−メチルアミノフェニルチオ、4−メチルカルボニルアミノフェニルチオ、4−フェニルカルボニルアミノフェニルチオ、4−メチルスルホニルアミノフェニルチオ、4−フェニルスルホニルアミノフェニルチオ等が挙げられる。
【0027】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基の例を挙げると、非置換の炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、iso−プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ジペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ノニルアミノ、ベンジルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジn−プロピルアミノ、ジiso−プロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジ2−エチルヘキシルアミノ、ジノニルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基としては、前記アルキルアミノ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられる。
【0028】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基の例を挙げると、非置換の炭素原子数6〜20のアリールアミノ基としては、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ジフェニルアミノ等が挙げられる。置換基を有する炭素原子数6〜20のアリールアミノ基としては、前記アリールアミノ基が後述する置換基により置換されたものが挙げられ、具体的には、4−メチルフェニルアミノ、4−メトキシフェニルアミノ、ヒドロキシフェニルアミノ等が挙げられる。
【0029】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される基のうち隣り合う2個の基は連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに5員環又は6員環を形成してもよい。該5員環又は6員環は置換基を有していてもよい。
このような5員環としては、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等が挙げられ、また6員環としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピラジン環、ピロン環、ピロリジン環等が挙げられる。
【0030】
また、前記一般式(1)において、R1〜R16で示される、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基、前記R1〜R16で示される基のうち隣り合う2個の基が連結して形成される置換基を有していてもよい5員環又は6員環の、該置換基としては以下のものが挙げられる。尚、R1〜R16が、前記の炭素原子を含有する基であり、且つ、それらの基が、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めたR1〜R16全体の炭素原子数が、規定された範囲を満たすものとする。
【0031】
前記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、tert−アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;
メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、tert−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、tert−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、tert−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;
メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、tert−アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、tert−ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、tert−オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;
ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;
ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;
フェニル、ナフチル等のアリール基;
フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;
フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;
ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;
アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;
アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;
アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;
スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、
これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は、塩を形成していてもよい。
【0032】
前記一般式(1)におけるR1〜R16としては、近赤外線吸収能の点から、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0033】
本発明の前記一般式(1)で表される新規な化合物の具体例としては、下記の化合物No.1〜No.14が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
次に、本発明の前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の合成方法について説明する。
はじめに、原料のインディゴ骨格を有する化合物から中間体を得る工程について説明する。本工程では、溶媒中、インディコ骨格を有する化合物と、アニリン骨格を有する化合物を、四塩化チタンと1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)の存在下で反応させ中間体を得る。例えば、インディゴを原料とし、前記化合物No.1を合成するための中間体−1を合成する場合のスキームは下記スキーム1のようになる。
【0042】
【化10】

【0043】
中間体を得るのに使用される反応溶媒は、四塩化チタンとDABCOを不活性化させないものであれば特に限定されないが、インディゴ骨格を有する化合物を溶解するものが好ましく、具体例としては、芳香族系溶媒(トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、メシチレン、p−シメン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフサ)や脂肪族系高沸点溶媒(デカン等)等が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メシチレン、及びブロモベンゼンであり、より好ましくは、ブロモベンゼンである。
【0044】
反応温度は特に限定されないが、原料であるインディゴ骨格を有する化合物を溶解するのに必要な温度が好ましく、使用した溶媒を還流させる温度で反応させることが好ましい。これらの点から、100℃〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは130℃〜180℃である。
【0045】
反応時間は特に限定されず、反応の進行をHPLCやTLCで確認して、反応が完結するまで行えばよい。反応終了後は、抽出処理や精製処理等、後処理を行ってもよい。
【0046】
使用するアニリン骨格を有する化合物の使用量は、インディゴ骨格を有する化合物1モルに対して、2モル以上必要であり、好ましくは3〜4モルである。
また、使用する四塩化チタンの使用量は、インディゴ骨格を有する化合物1モルに対して、好ましくは2〜3モルである。
また、使用するDABCOの使用量は、インディゴ骨格を有する化合物1モルに対して、好ましくは8〜12モルである。
【0047】
次に、中間体から本発明の前記一般式(1)で表されるホウ素化合物を得る工程について説明する。
本工程では、溶媒中、前記の工程で得られた中間体を、ボリン酸エステル等のホウ素化合物と、四塩化チタン等のルイス酸の存在下に反応させて本発明のホウ素化合物を得る。例えば、前記スキーム1で得られた中間体−1から、本発明のホウ素化合物である化合物No.1を得るためのスキームは下記スキーム2のようになる。
【0048】
【化11】

【0049】
中間体から前記一般式(1)で表されるホウ素化合物を得るのに使用される反応溶媒は、四塩化チタン等のルイス酸を不活性化させないものであれば特に限定されないが、中間体を溶解するものが好ましく、具体例としては、芳香族系溶媒(トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、メシチレン、p−シメン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフサ)や脂肪族系高沸点溶媒(デカン等)等が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メシチレン、及びブロモベンゼンであり、より好ましくは、トルエンである。
【0050】
反応温度は特に限定されないが、中間体を溶解するのに必要な温度が好ましく、使用した溶媒を還流させる温度で反応させることが好ましい。これらの点から、50℃〜170℃の範囲が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃であり、さらに好ましくは90℃〜130℃である。
【0051】
反応時間は特に限定されず、反応の進行をHPLCやTLCで確認して、反応が完結するまで行えばよい。反応終了後は、使用したルイス酸を失活させる処理等の後処理や、抽出処理、晶析等の精製処理を行ってもよい。
【0052】
使用するホウ素化合物は、ボリン酸エステルが好ましく、ジフェニルボリン酸2−アミノエチルが特に好ましい。
使用するホウ素化合物の使用量は、中間体1モルに対して、2モル以上であり、好ましくは2.0〜2.2モルである。
【0053】
使用するルイス酸は、特に限定されないが、好ましくは、四塩化チタン、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化スズ、三フッ化ホウ素、及びこれらの臭化物であり、より好ましくは、塩化チタン、三フッ化ホウ素、及び塩化アルミニウムであり、最も好ましくは、四塩化チタンである。
使用するルイス酸の使用量は、中間体1モルに対して、好ましくは1〜4.4モルである。
【0054】
以上説明した本発明の前記一般式(1)で表されるホウ素化合物は、近赤外線領域に吸収を有し、また、可視光領域の吸収が少ないため、好適に近赤外線吸収剤として使用できる。
前記一般式(1)で表わされるホウ素化合物の光吸収特性は、特に限定されないが、近赤外線吸収剤としての用途を考えると、700〜1050nm、特に、700〜1000nmに吸収極大を有するものが好ましい。また、波長700〜1000nmの近赤外線を選択的に吸収することが好ましい。また、可視光領域の吸収がより少ないものが好ましい。
【0055】
次に、本発明の近赤外線吸収剤、近赤外線吸収性合成樹脂組成物及び近赤外線吸収材について説明する。
本発明の近赤外線吸収剤は、本発明の前記一般式(1)で表されるホウ素化合物を含有するものであり、本発明の前記一般式(1)で表わされるホウ素化合物そのものであってもよいし、本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物に使用できる任意の添加剤を適宜配合したものであってもよく、本発明のホウ素化合物以外の成分は特に限定されない。
【0056】
本発明の近赤外線吸収剤(本発明の前記一般式(1)で表わされるホウ素化合物)は、可視光領域の吸収が少なく、これを合成樹脂に使用しても、樹脂の透明性を損なわず、樹脂本来の色に影響を及ぼさないため、近赤外線吸収性合成樹脂組成物として使用することが好ましい。また耐熱性に優れるため、熱可塑性樹脂に練り込み型の近赤外線吸収剤として配合した近赤外線吸収性熱可塑性樹脂組成物として使用することも好ましい。
【0057】
本発明の近赤外線吸収剤中の前記一般式(1)で表わされるホウ素化合物の含有量は特に限定されないが、これを合成樹脂に使用する場合、後述する近赤外線吸収性合成樹脂組成物における前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の含有量の範囲となることが好ましい。
【0058】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物は、合成樹脂に、本発明の近赤外線吸収剤(前記一般式(1)で表わされるホウ素化合物)を含有させたものである。
【0059】
本発明に使用できる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0060】
前記熱可塑性樹脂の例としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、ポリ−4−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂及びこれらの共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ACS樹脂、SBS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等);ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステル及びポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2−オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル;ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物を挙げることができる。
【0061】
更に、前記熱可塑性樹脂は、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等のエラストマーであってもよい。
【0062】
前記熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0063】
前記フッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ぺルフルオロアルコキシフッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等が挙げられる。
【0064】
前記シリコーン樹脂の例としては、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0065】
更に合成樹脂の例を挙げると、シリコーンゴムポリエーテルスルホン、ポリサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等を挙げることができる。
【0066】
本発明では、これらの合成樹脂を単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。またこれらの合成樹脂はアロイ化されていてもよい。
【0067】
これらの合成樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に拘わらず使用することができる。
【0068】
前記合成樹脂の中でも、前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の相溶性と加工性の点から、熱可塑性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂の中でも特に、透明性と近赤外線吸収性から、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
【0069】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物中、前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜20質量部、より好ましくは0.01〜10質量部、最も好ましくは0.1〜5質量部である。前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の含有量が0.001質量部未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性があり、逆に20質量部を超えると、使用量に見合う効果が得られず経済的でない上、可視光領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0070】
前記一般式(1)で表されるホウ素化合物の合成樹脂への配合方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば合成樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合は、通常熱可塑性樹脂に各種添加剤を配合する場合に使用されている任意の方法を用いることができ、例えば、ロール混練り、バンパー混練り、押し出し機、ニーダー等により混合、練りこみして配合すればよい。
また各種溶媒中に前記一般式(1)で表されるホウ素化合物と前記合成樹脂を溶解又は分散して近赤外線吸収性合成樹脂組成物溶液を配合し使用してもよい。
【0071】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の合成樹脂に使用される添加剤を配合し、安定化してもよい。
【0072】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0073】
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0074】
前記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
前記チオエーテル系酸化防止剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0075】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−5'−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2'−ヒドロキシ−3'−第三ブチル−5'−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
前記紫外線吸収剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0076】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0077】
さらに本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物には、必要に応じて、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、無機リン系難燃剤、(ポリ)リン酸塩系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃助剤、充填剤、顔料、滑剤、発泡剤等の合成樹脂に通常配合される添加剤を添加してもよい。
【0078】
前記トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3−ヘキシレンジメランミン等が挙げられる。
【0079】
前記金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0080】
前記リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0081】
前記縮合リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0082】
前記(ポリ)リン酸塩系難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン等の(ポリ)リン酸のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0083】
前記その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、モンモリロナイト等の無機化合物、及びその表面処理品が挙げられ、市販品としては、例えば、TIPAQUE R−680(酸化チタン:石原産業(株)製)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)、DHT−4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、アルカマイザー4(亜鉛変性ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。 前記その他の有機系難燃助剤としては、例えば、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0084】
その他、本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物には、必要に応じて通常合成樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0085】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物に、前記一般式(1)で表されるホウ素化合物及び前記合成樹脂以外の任意の添加剤を使用する場合、その使用量は添加剤の種類等に応じて適宜選択することができるが、本発明の効果を損なわない観点から、好ましくは合成樹脂100質量部に対して、合計で20質量部以下とする。
【0086】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物は、成形することにより、近赤外線吸収材としての成形体とすることができる。成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、繊維、異形品等の種々の形状の成形品が製造できる。
【0087】
また、本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物を、各種溶剤に溶解しキャストフィルムを作製することで、近赤外線吸収材として、近赤外線吸収フィルムを作製することができる。
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物により得られる近赤外線吸収材は、近赤外線吸収能に優れる。
【0088】
本発明の近赤外線吸収性合成樹脂組成物及び近赤外線吸収材は、光カード、有機光導電体、レーザー熱転写記録材料、レーザー感熱記録材料、レーザーダイレクト製版用材料等の光情報記録材料;プラズマディスプレー用フィルター、薄型ディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用光学フィルター等の近赤外線吸収を目的とした各種光学フィルター;熱線遮蔽材、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽樹脂ガラス;保温蓄熱繊維;保護眼鏡、農業用フィルム、自動車内外装材、シート、その他各種樹脂成形体;シークレットインク、コーティング材等の近赤外線吸収能(熱線吸収能)を必要とされる各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例等により、さらに具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%及びppmは特に記載が無い限り質量基準である。
【0090】
〔実施例1〕化合物No.1の合成
100ml四つ口フラスコに、アニリン0.6ml(6.6mmol)、ブロモベンゼン40ml、及びジアザビシクロオクタン2.1g(19mmol)を加え、アルゴン中で攪拌した。その後、四塩化チタンの1mol/lトルエン溶液4.8ml(4.8mmol)を滴下した。滴下終了後、インジゴ0.55g(2.1mmol)を加え10時間還流状態で反応させた。反応終了後、アセトンを加え、ろ過し、ろ液を濃縮し緑色粉末を得た。これをジクロロメタン及び水で油水分離を行い、有機相を濃縮することで、紺色粉末の下記構造の中間体−1を0.5g得た(収率58%)。
【0091】
【化12】

【0092】
得られた中間体−1を0.2g(0.5mmol)、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル0.24g(1.05mmol)、四塩化チタン0.38g(0.38mmol)、及びトルエン50mlを三つ口フラスコ中で、窒素雰囲気下、2時間加熱還流した。室温に冷却後、メタノールを加え、ろ過により、紺色結晶粉末0.1gを得た。
【0093】
得られた紺色結晶粉末について、FT−IR測定及び1H−NMR測定を行った。FT−IR測定による分析結果を下記に示し、1H−NMR測定による分析結果を〔図1〕に示す。これらの測定結果により、得られた粉末は、下記構造式の化合物No.1と同定された。
【0094】
【化13】

【0095】
FT−IR測定結果(cm-1
3448、1685,1639,1608,1577,1531,1492,1473,1454,1431,1381,1330,1300,1207,1126、1072,1022,983,864,744,694
【0096】
また、得られた化合物No.1のアセトン溶液(濃度8mw%)の吸収スペクトルを測定した。測定は日本分光株式会社製V−670で行った。吸収スペクトルを〔図2〕に示す。最大吸収波長は798nmで、モル吸光係数ε=1.8×104mol-1cm-1であった。
【0097】
〔実施例2〕近赤外線吸収性合成樹脂組成物及び近赤外線吸収材の製造
100mlメスフラスコに、ポリカーボネート(ユーピロンS−3000F(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製))1.25g、実施例1で得られた化合物No.1の12.5mg、及びジクロロメタンを入れ、十分溶解させた後、100mlまでメスアップし、近赤外線吸収性合成樹脂組成物溶液を得た。この溶液10mlをシャーレに取り、ゆっくりと乾燥させることにより、近赤外線吸収材であるポリカーボネート近赤外線吸収フィルムを得た。得られたフィルムの厚さは90μmであった。また得られたポリカーボネート近赤外線吸収フィルムの吸収スペクトルを測定した。測定は日本分光株式会社製V−670で行った。吸収スペクトルを〔図3〕に示す。得られたフィルムの最大吸収波長は814nmであり、化合物No.1に換算したモル吸光係数ε=1.6×104Mol-1cm-1であることから、このフィルムが、近赤外線領域に良好な吸収を示すことが確認された。
【0098】
〔実施例3〕近赤外線吸収性合成樹脂組成物及び近赤外線吸収材の製造
ポリカーボネートの替わりにポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用し、フィルムの厚さを30μmとした以外は実施例2と同様にして、近赤外線吸収材であるPMMA近赤外線吸収フィルムを得た。得られたフィルムの最大吸収波長は813nmであり、化合物No.1に換算したモル吸光係数ε=1.6×104Mol-1cm-1であることから、このフィルムが、近赤外線領域に良好な吸収を示すことが確認された。
【0099】
〔評価例1〕
実施例2及び3で得られた近赤外線吸収フィルムのHaze値(透明性)を、JIS K7105に準拠して測定した。化合物No.1を使用しなかった以外は実施例2と同様にして作製したポリカーボネートフィルム(比較例1)、及び化合物No.1を使用しなかった以外は実施例3と同様にして作製したPMMAフィルム(比較例2)についても測定を行った。測定結果を〔表1〕に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
上記〔表1〕の結果から、本発明のホウ素化合物は、合成樹脂の透明性を損なわず、樹脂本来の色に影響を及ぼさないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるホウ素化合物。
【化1】

(式中、R1〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基を示し、 R1〜R16で示される基のうち隣り合う2個の基は、連結してそれぞれが結合する炭素原子と共に5員環又は6員環を形成してもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載のホウ素化合物を含有する近赤外線吸収剤。
【請求項3】
請求項1に記載のホウ素化合物を含有する近赤外線吸収性合成樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の近赤外線吸収性合成樹脂組成物からなる近赤外線吸収材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224593(P2012−224593A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94813(P2011−94813)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】