説明

新規化合物、電荷輸送性膜、及び光電変換デバイス

【課題】高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とする電荷輸送性膜に有用な新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物〔一般式(I)中、Fは電荷輸送性サブユニットを示し、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上6以下の整数を示し、nは2以上3以下の整数を示す。〕。
【化1】




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、電荷輸送性膜、及び光電変換デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機太陽電池など電子デバイスに用いられる、有機化合物を用いた電荷輸送性能を有する膜(以下、「電荷輸送性膜」と称する。)が盛んに開発されている。
【0003】
例えば、電子写真感光体の分野では、以下のような電荷輸送性膜が提案されている。
特許文献1には、有機−無機ハイブリッド材料によるものが提案されている。
特許文献2には、連鎖重合性材料によるものが提案されている。
特許文献3には、アクリル系材料によるものが提案されている。
特許文献4、5には、放射線架橋剤と電荷輸送物質からなり、放射線架橋されたものが提案されている。
なお、ここに提案されている電荷輸送性膜は、電子写真感光体の最表面層として適用したものである。
また、有機ELデバイスの分野では、以下のような電荷輸送性膜が提案されている。
非特許文献6には、有機−無機ハイブリッド材料によるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−019749号公報
【特許文献2】特開2005−234546号公報
【特許文献3】特開2000−66424号公報
【特許文献4】特開2004−240079号公報
【特許文献5】特開2007−156081号公報
【非特許文献6】Polymer Mater Sci Eng 83,239 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とする電荷輸送性膜に有用な新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0007】
【化1】




【0008】
上記一般式(I)中、Fは電荷輸送性サブユニットを示し、Lはアルキレン基、−C=C−(アルケニル基)、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上6以下の整数を示し、nは2以上3以下の整数を示す。
【0009】
請求項2に係る発明は、下記一般式(II)で表される請求項1に記載の化合物である。
【0010】
【化2】




【0011】
上記一般式(II)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは上記一般式(III)で表される基を示す。kは0又は1を示し、c1〜c5はそれぞれ0〜2の整数を示し、c1〜c5の全てが同時に0になることはない。
上記一般式(III)中、Lはアルキレン基、−C=C−(アルケニル基)、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。nは2以上3以下の整数を示す。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記一般式(I)で表される化合物中の下記部分構造、及び前記一般式(III)で表される基が、下記一般式(IV−1)で表される基又は一般式(IV−2)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の化合物である。
【0013】
【化3】



【0014】
上記一般式(IV−1)及び(IV−2)中、Xは連結基を示し、pは0又は1を示す。なお、上記部分構造において波線はFで示される電荷輸送性サブユニットとの結合部位を示す。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記一般式(I)で表される化合物中の下記部分構造、及び前記一般式(III)で表される基が、下記一般式(V−1)で表される基又は一般式(V−2)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の化合物である。
【0016】
【化4】



【0017】
上記一般式(V−1)及び(V−2)中、X’は連結基を示し、p’は0又は1を示す。なお、上記部分構造において波線はFで示される電荷輸送性サブユニットとの結合部位を示す。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜である。
【0019】
請求項6に係る発明は、熱ラジカル発生剤又はその誘導体を更に含有する請求項5に記載の電荷輸送性膜である。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項5又は請求項6に記載の電荷輸送性膜を備えた光電変換デバイスである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、前記一般式(I)で表される化合物でない場合に比べ、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とする電荷輸送性膜に有用な新規化合物が得られる。
請求項2に係る発明によれば、前記一般式(II)で表される化合物でない場合に比べ、電荷輸送性能に優れた電荷輸送性膜に有用な新規化合物が得られる。
請求項3に係る発明によれば、前記一般式(IV−1)又は(IV−2)で表される基を有しない場合に比べ、さらに高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とする電荷輸送性膜に有用な新規化合物が得られる。
請求項4に係る発明によれば、前記一般式(V−1)又は(V−2)で表される基を有しない場合に比べ、さらに高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とし、特に電荷輸送性能に優れた電荷輸送性膜に有用な新規化合物が得られる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、前記一般式(I)で表される化合物の重合体を含まない電荷輸送性膜に比べ、機械的強度及び電荷輸送性能の両方に優れた電荷輸送性膜が得られる。
請求項6に係る発明によれば、熱ラジカル発生剤又はその誘導体を含まない電荷輸送性膜に比べ、機械的強度及び電荷輸送性能の両方により優れた電荷輸送性膜が得られる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、前記一般式(I)で表される化合物の重合体を含まない電荷輸送性膜を備えた場合に比べ、機械的強度及び電荷輸送性能の両方に優れた光電変換デバイスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】例示化合物CTM−11のIRスペクトルデータである。
【図2】例示化合物CTM−12のIRスペクトルデータである。
【図3】例示化合物CTM−15のIRスペクトルデータである。
【図4】例示化合物CTM−16のIRスペクトルデータである。
【図5】例示化合物CTM−17のIRスペクトルデータである。
【図6】例示化合物CTM−41のIRスペクトルデータである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔新規化合物〕
本実施形態に係る新規化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0026】
【化5】




【0027】
上記一般式(I)中、Fは電荷輸送性サブユニットを示し、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上6以下の整数を示し、nは2以上3以下の整数を示す。
【0028】
一般式(I)中のFとして示される電荷輸送性サブユニットとしては、電荷輸送性能を有する化合物に由来するサブユニットであればよく、具体的には、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物、などの電荷輸送性能を有する化合物に由来するサブユニットが挙げられる。
中でも、電荷移動度、酸化安定性などの面で優れる、トリアリールアミン化合物に由来するサブユニットであることがよい。
【0029】
一般式(I)中のLをして示される(n+1)価の連結基としては、具体的には、アルキレン基と、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群から選ばれる基と、を組み合わせてなる3価又は4価の基が挙げられる。アルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基とは、アルカン若しくはアルケンから水素原子を取り除いた基を意味する。以下、同様である。
より具体的には、3価の連結基の場合には、以下のような基が挙げられる。下記に示す3価の連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
*−(CH)a−CH[−C(=O)−O−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−CH−O−(CH)b−]
*−CH=C[−C(=O)−O−(CH)b−]
*−CH=C[−(CH)c−O−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−C(=O)−N(R)−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−C(=O)−S−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−(CH)c−N(R)−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−(CH)c−S−(CH)b−]
【0030】
【化6】



【0031】
*−O−(CH)d−CH[−(CH)c−O−(CH)b−]
*−(CH)f−O−(CH)d−CH[−(CH)c−O−(CH)b−]
ここで、上記の3価の連結基中、a、b、c、d、e、及びfは、メチレン基の繰り返し単位を示し、1以上10以下(望ましくは1以上4以下)の整数を示す。
【0032】
また、Lが4価の連結基の場合には、具体的には、以下のような基が挙げられる。下記に示す4価の連結基中、「*」は、Fと連結する部位を示している。
【0033】
【化7】



【0034】
ここで、上記の4価の連結基中、b、c、及びgは、メチレン基の繰り返し単位を示し、1以上10以下(望ましくは1以上4以下)の整数を示す。
【0035】
一般式(I)中のLを表す連結基において、「−N(R)−」のRが表すアルキル基としては、炭素数1以上10以下(望ましくは1以上5以下)の直鎖状、分枝状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、nプロピル基、isoプロピル基、ブチル基、t−ブチル機、ペンチル基等が挙げられる。
「−N(R)−」のRが表すアリール基としては、炭素数6以上20以下(望ましくは6以上12以下)のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下(望ましくは7以上14以下)のアラルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナルチルエチル基等が挙げられる。
【0036】
一般式(I)中の芳香環に結合されているLとビニル基との位置関係としては、メタ位、パラ位が挙げられる。一般式(I)中に芳香環は複数存在するが、この複数存在する芳香環においてLとビニル基との結合位置関係は、メタ位のみ、パラ位のみであってもよいし、メタ位とパラ位とが混在していてもよい。
溶解度の点からは混合体が好ましく、電荷輸送剤の製造性の点からは、再結晶による精製が可能になる場合が多いため、メタ位のみ、パラ位のみで構成されることが好ましく、特にパラ体が好ましい。
【0037】
一般式(I)中のmは1以上6以下の整数であり、電荷輸送性能を上げるためには、mは1以上3以下が好ましく、強度を上げるためには2以上6以下)であることがよい。
【0038】
本実施形態に係る新規化合物は、特に望ましくは、一般式(I)中のFとしてトリアリールアミン系化合物に由来する電荷輸送性サブユニットを有するものが挙げられる。具体的には、下記一般式(II)で表される化合物であることが望ましい。
【0039】
【化8】



【0040】
上記一般式(II)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは上記一般式(III)で表される基を示す。kは0又は1を示し、c1〜c5はそれぞれ0〜2の整数を示し、c1〜c5の全てが同時に0になることはない。
上記一般式(III)中、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。nは2以上3以下の整数を示す。
【0041】
一般式(II)中のAr乃至Arで示される置換若しくは未置換のアリール基は、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、「(D)」以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
また、Ar乃至Arとしては、下記構造式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記構造式(1)乃至(7)は、各Ar乃至Arに連結され得る「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0042】
【化9】



【0043】
上記構造式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表す。
上記構造式(2)及び(3)中、R10乃至R12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。また、tは1以上3以下の整数を表す
上記構造式(7)中、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表す。
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0044】
【化10】



【0045】
上記構造式(8)及び(9)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。
また、前記構造式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記構造式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。また、sはそれぞれ0又は1を表す。
【0046】
【化11】



【0047】
上記構造式(10)乃至(17)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
前記構造式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0048】
【化12】



【0049】
また、一般式(II)中のArは、kが0のときは置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基が挙げられる。また、kが1のとき、Arは置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
また、置換アリーレン基における置換基としては、Ar乃至Arの説明で、置換アリール基における「D」以外の置換基として挙げられているものと同様である。
【0050】
一般式(II)中のDで示される前記一般式(III)で表される基におけるLは、一般式(I)の説明中のLと同義であり、具体的に例示した各基が望ましいものとして挙げられる。
【0051】
一般式(II)中のc1〜c5はそれぞれ0〜2の整数を示し、c1〜c5の全てが同時に0になることはない。つまり、一般式(II)中のDの総数は1以上であることを意味し、Dの総数は望ましくは1以上4以下である。
【0052】
次に、一般式(I)中の下記部分構造及び一般式(III)で表される基として望ましい構造について説明する。
下記部分構造及び一般式(III)で表される基としては、下記一般式(IV−1)で表される基、一般式(IV−2)で表される基、下記一般式(V−1)で表される基、又は一般式(V−2)で表される基が、電気特性と硬化度の両立の点から望ましい。
【0053】
【化13】



【0054】
一般式(IV−1)及び(IV−2)中、Xは連結基を示し、pは0又は1を示す。
また、一般式(V−1)及び(V−2)中、X’は連結基を示し、p’は0又は1を示す。
なお、上記部分構造において波線はFで示される電荷輸送性サブユニットとの結合部位を示す。
【0055】
上記X及びX’で示される連結基としては、−CH=や炭素数1以上のアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、及び−S−、又はこれらを2種以上組み合わせた基等が挙げられる。
【0056】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。なお、一般式(I)で表される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
まず、一般式(I)中のFで表される電荷輸送性サブユニット(前記部分構造を除く骨格)の具体例、及び前記部分構造(一般式(III)で表される基)の具体例を例示し、その後ろに、これらの組み合わせについて表1及び表2に記載し、これを一般式(I)で表される化合物の具体例(例示化合物)とした。
なお、以下に示す各種の具体例において「*」は連結部位を意味する。ここで、表1に記載の例示化合物において、化合物No.のCTM−1は、Fで表される電荷輸送性サブユニットの具体例(表1中「骨格」と記載):(1)−1と、前記部分構造(一般式(III)で表される基、表1中「官能基」と記載)の具体例:(III)−1と、を組み合わせてなるものであって、「*」で連結した化合物を示している。具体的には、CTM−1は、以下の構造を示すものである。
【0057】
【化14】



【0058】
【化15】



【0059】
【化16】



【0060】
【化17】



【0061】
【化18】



【0062】
【化19】

【0063】
【化20】



【0064】
【化21】



【0065】
【化22】



【0066】
【化23】

【0067】
【化24】

【0068】
【表1】



【0069】
【表2】

【0070】
次に、一般式(I)で表される化合物の合成法について説明する。
一般式(I)で表される化合物の合成は以下にあげるような一般の電荷輸送材料の合成、反応に用いるものを応用することができる。具体的には実施例に挙げた方法を用いることができる。
ホルミル化:電子供与性基を持つ芳香族化合物・複素環化合物・アルケンにホルミル基を導入するのに適した反応。DMFとオキシ三塩化リンを用いるのが一般的であり、反応温度は室温から100℃程度で行われることが多い。
エステル化:有機酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応。脱水剤を共存させたり、水を系外へ除去することで平衡をエステル側へ偏らせる手法を用いることが好ましい。
エーテル化:アルコキシドと有機ハロゲン化合物を縮合させるウィリアムソン合成法が一般的である。
水素添加:種々の触媒を用いて不飽和結合に水素を反応させる方法。
【0071】
本実施形態に係る新規化合物(一般式(I)で表される化合物)は、Fで示される電荷輸送性サブユニットから、1つの連結基Lを介して2つ又は3つの連鎖重合性の反応性基(スチレン基)を有する化合物である。
本発明者らの詳細な検討により、電荷輸送性化合物の硬化度、即ち架橋部位数を上げると電荷輸送性能が悪くなることが明らかとなった。原因は必ずしも明らかではないが、現段階では電荷輸送性化合物の硬化度、即ち架橋部位数を上げると、硬化(架橋)させた際に電荷輸送性部位(電荷輸送性サブユニット)に歪みが生じるためであると推測している。
しかしながら、一般式(I)で表される化合物は、1つの連結基Lを介して2つ又は3つの連鎖重合性の反応性基を有する構造であるため、高い硬化度、架橋部位数を保ちつつもこの連結基Lの存在により、硬化(架橋)させた際に電荷輸送性サブユニットに歪みを発生させ難く、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立が可能となる。
【0072】
また、従来用いられていた、(メタ)アクリル基を有する電荷輸送性化合物は、上記のようにひずみを生じやすい上に、反応性部位は親水性が高く、電荷輸送性部位は疎水性が高いため、ミクロ相分離しやすいのに対し、一般式(I)で表される化合物は、スチレン基を反応性基として有しており、更に、硬化(架橋)させた際に電荷輸送性部位(電荷輸送性サブユニット)に歪みを生じさせ難い連結基Lを有している構造であること、反応性部位、電荷輸送性部位ともに疎水性のため相分離が起きにくおため、効率的な電荷輸送性能と高強度化が図れると考えられる。その結果として、この一般式(I)で表される化合物の重合体を含む電荷輸送性膜は、機械的強度に優れると共に、電荷輸送性能(電気特性)がより優れるものと考えられる。
このような点から、本実施形態に係る新規化合物(一般式(I)で表される化合物)は電荷輸送性膜に有用である。
【0073】
〔電荷輸送性膜〕
本実施形態に係る電荷輸送性膜は、前記した本実施形態に係る新規化合物(一般式(I)で表される化合物)の重合体を少なくとも含むことを特徴とする。一般式(I)で表される化合物は、高い硬化度と優れた電荷輸送性能との両立を可能とするため、この化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜は、機械的強度及び電荷輸送性能の両方に優れた電荷輸送性膜となる。
この重合体は、一般式(I)で表される化合物を、熱、光、電子線などのエネルギーにより重合させることで得られる。
また、この重合体を含む電荷輸送性膜は、一般式(I)で表される化合物と、必要に応じた他の成分と、を含有する組成物を調製し、この組成物を熱、光、電子線などのエネルギーにより重合(硬化)させることで得られる。
【0074】
本実施形態に係る電荷輸送性膜中の一般式(I)で表される化合物の重合体の含有量としては、電荷輸送性膜の用途に応じた電荷輸送性能をもとに設定されればよく、一般的には、電荷輸送性膜中に5質量%以上100質量%以下(望ましくは40質量%以上100質量%以下)の範囲にて設定されればよい。
なお、本実施形態に係る電荷輸送性膜中には、一般式(I)で表される化合物の重合体の他、一般式(I)で表される化合物自体(未反応の状態)が含有されていてもよい。
【0075】
一般式(I)で表される化合物は、連鎖重合性の官能基の官能数、即ち、前記部分構造(一般式(III)で表される基)の数が異なるものを併用することで、電荷輸送性能を低下させることなく、電荷輸送性膜(硬化物)の強度を調整してもよい。
具体的には、前記した一般式(III)で表される化合物は、電荷輸送性能を低下させることなく、電荷輸送性膜(硬化物)の強度を調整する目的で、官能基数が2以上の化合物と、官能基数がそれよりも小さい化合物と、を併用してもよい。
このような併用の場合、官能基数が2以上の化合物の含有量は、一般式(III)で表される化合物の総含有量の5質量%以上95質量%以下(望ましくは10質量%以上90質量%以下)の範囲にて設定されればよい。
【0076】
また、電荷輸送性膜は、熱ラジカル発生剤又はその誘導体を含有していてもよい。つまり、電荷輸送性膜の成膜には、熱ラジカル発生剤又はその誘導体が用いられてもよい。
ここで、「熱ラジカル発生剤の誘導体」とは、熱によってラジカルを発生させた後の反応残さ、もしくはラジカル活性種が重合末端に結合したものを意味する。
【0077】
ここで、電荷輸送性膜(架橋膜)は、上記各成分を含む電荷輸送性膜形成用の組成物を、熱、光、電子線など様々な方法にて硬化することで得られるが、硬化膜の電気特性、機械的強度等の特性のバランスを取るためには熱硬化が望ましい。通常、一般的なアクリル塗料などを硬化する際には無触媒で硬化が可能な電子線、短時間で硬化が可能な光重合が好適に用いられる。しかしながら、ほとんどの電荷輸送性サブユニットは光重合に用いられる光を吸収する構造であり、吸収後副反応を起こし電荷輸送性能が著しく劣化することが多い、また、得られる硬化膜の表面性状を高めるため、穏やかに反応を進められる熱硬化が望ましい。
したがって、熱硬化は無触媒で行ってもよいが、上記熱ラジカル発生剤又はその誘導体を触媒として用いることが望ましい。
熱ラジカル発生剤は特に限定されないが、副反応防止のために、10時間半減期温度が40℃以上110℃以下のものが望ましい。
【0078】
熱ラジカル発生剤としては、V−30(10時間半減期温度:104℃)、V−40(同:88℃)、V−59(同:67℃)、V−601(同:66℃)、V−65(同:51℃)、V−70(同:30℃)、VF−096(同:96℃)、Vam−110(同:111℃)、Vam−111(同:111℃)、VE−073(同:73℃)(以上、和光純薬工業製)、OTAZO−15(同:61℃)、OTAZO−30(同:57℃)、AIBN(同:65℃)、AMBN(同:67℃)、ADVN(同:52℃)、ACVA(同:68℃)(以上、大塚化学社製)等のアゾ系開始剤;
パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーへヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(以上、日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(以上、化薬アクゾ社製)、ルペロックス LP(同:64℃)、ルペロックス 610(同:37℃)、ルペロックス 188(同:38℃)、ルペロックス 844(同:44℃)、ルペロックス 259(同:46℃)、ルペロックス 10(同:48℃)、ルペロックス 701(同:53℃)、ルペロックス 11(同:58℃)、ルペロックス 26(同:77℃)、ルペロックス 80(同:82℃)、ルペロックス 7(同:102℃)、ルペロックス 270(同:102℃)、ルペロックス P(同:104℃)、ルペロックス 546(同:46℃)、ルペロックス 554(同:55℃)、ルペロックス 575(同:75℃)、ルペロックス TANPO(同:96℃)、ルペロックス 555(同:100℃)、ルペロックス 570(同:96℃)、ルペロックス TAP(同:100℃)、ルペロックス TBIC(同:99℃)、ルペロックス TBEC(同:100℃)、ルペロックス JW(同:100℃)、ルペロックス TAIC(同:96℃)、ルペロックス TAEC(同:99℃)、ルペロックス DC(同:117℃)、ルペロックス 101(同:120℃)、ルペロックス F(同:116℃)、ルペロックス DI(同:129℃)、ルペロックス 130(同:131℃)、ルペロックス 220(同:107℃)、ルペロックス 230(同:109℃)、ルペロックス 233(同:114℃)、ルペロックス 531(同:93℃)(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0079】
熱ラジカル発生剤又はその誘導体は、電荷輸送性膜形成用の組成物中の反応性化合物(一般式(I)で表される化合物+その他の反応性化合物)に対して0.001質量%以上10質量%以下含有することが望ましく、0.01質量%以上5質量%以下含有することがより望ましく、0.1質量以上3質量%以下含有することが更に望ましい。
【0080】
ここで、電荷輸送性膜を形成する際に用いる他の成分としては、電荷輸送性膜の用途に応じて適宜選択されればよく、例えば、硬化・重合に関わる化合物として、電荷輸送性能を有しない重合性化合物や、電荷輸送性能を有するものの一般式(I)で表される化合物とは異なる化合物であるもの、更には、重合性を有さない電荷輸送性化合物や、界面活性剤、他の熱硬化性樹脂、酸化防止剤等が挙げられる。
【0081】
具体的には、電荷輸送性能を有しない重合性化合物として以下のものを上げることができる。
1官能のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0082】
2官能のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3‐プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレート、トリシクロデカンメタノールジメタクリレート等が挙げられる。
【0083】
3官能以上のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌルトリアクリレートが挙げられる。
また、ラジカル重合性のオリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0084】
電荷輸送性能を有するものの一般式(I)で表される化合物とは異なる化合物としては、アクリル基をもつもの、反応性水酸基を有するもの、アルコキシシリル基を有するものなどがあげられる。
【0085】
重合性を有さない電荷輸送性化合物としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送性材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
界面活性剤としては、例えば、(A)フッ素原子を有するアクリルモノマーを重合してなる構造、(B)炭素−炭素二重結合及びフッ素原子を有する構造、(C)アルキレンオキサイド構造、(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造のうち1種以上の構造を分子内に含む界面活性剤である。
具体的には、ポリフローKL−600(共栄社化学社製)、エフトップEF−351、EF−352、EF−801、EF−802、EF−601(以上、JEMCO社製)、フタージェント100、100C、110、140A、150、150CH、A−K、501、250、251、222F、FTX−218、300、310、400SW、212M、245M、290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S、FTX−209F、FTX−213F、FTX−222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTX−240G、FTX−204D、FTX−280D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D(ネオス株式会社製)等、PE−M、PE−L(以上、和光純薬工業社製)、消泡剤No.1、消泡剤No.5(以上、花王社製)、KF351(A)、KF352(A)、KF353(A)、KF354(A)、KF355(A)、KF615(A)、KF618、KF945(A)、KF6004(以上、信越化学工業社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460(以上、GE東芝シリコン社製)、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、341、344、345、346、347、348、370、375、377,378、UV3500、UV3510、UV3570等(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社社製)等が挙げられる。
【0087】
他の熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。
【0088】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0089】
本実施形態に係る電荷輸送性膜は、例えば、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機太陽電池等に用いられる。
【0090】
〔光電変換デバイス〕
本実施形態に係る光電変換デバイスは、前述した本実施形態に係る電荷輸送性膜を備えることを特徴とする。
前述したように、本実施形態に係る電荷輸送性膜は、機械的強度及び電荷輸送性能の両方に優れるため、光電変換デバイスにおいて機械的強度が求められる層に好適に適用しうる。
【0091】
本実施形態に係る光電変換デバイスとしては、例えば、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機太陽電池等が挙げられる。
具体的には、例えば、有機ELデバイスは、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される。該有機化合物層の少なくとも一層に本発明の電荷輸送膜を用いることができ、その層構成は特に限定されない。具体的には発光層、正孔輸送層、正孔注入層として、前述した本実施形態に係る電荷輸送性膜を適用する。
また、例えば、有機薄膜トランジスタは、対向して設けられたソース電極及びドレイン電極の双方に接する有機半導体層と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の双方から離間したゲート電極および前記有機半導体層とゲート電極間に配置される絶縁層を有するものである。前記有機半導体層に少なくとも一層に本発明の電荷輸送膜を用いることができ、その層構成は特に限定されない。
【実施例】
【0092】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
[合成例1:CTM−11の合成]
例示化合物であるCTM−11について、以下のスキームにて合成した。
【0094】
【化25】



【0095】
三つ口フラスコに、上記化合物(1)25g、トルエン250ml、EthylMaronate12.8gを採取、溶解させた。その後、ピペリジン3.4g、酢酸3.6gを加え130℃で2時間撹拌した。さらにピペリジン0.68g、酢酸0.72gを加え130℃で1時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=10/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(2)33.3gを得た。
続いて、ナス型フラスコに、オイル状の上記化合物(2)33.3gをとり、THF200mlに溶解させ、エタノール50ml、10%Pd/C2gを加え、水素ガス供給元につなぎ24時間撹拌し、減圧下溶剤を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(3)32.3gを得た。
そして、ナス型フラスコに、オイル状の上記化合物(3)25gをとり、THF200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させたものを、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。析出した固体をトルエン100mlで2回洗浄した。その後、その個体とDMF200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分、70℃で7時間撹拌した。その後室温まで冷却し、トルエン500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−11を27.1g得た。
【0096】
得られたCTM−11は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−11のIRスペクトルデータを、図1に示す。
【0097】
[合成例2:CTM−12の合成]
例示化合物であるCTM−12について、以下のスキームにて合成した。
【0098】
【化26】



【0099】
合成例1と同様な方法で合成した上記化合物(3)25gを、THF250mlに溶解し水素化アルミニウムリチウム8.9gを加え室温にて2時間撹拌した。その後水500ml、トルエン1Lを加え、セライトを敷いたろ紙で固形分をろ別した。さらに有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後ヘキサン20ml、酢酸エチル30mlから再結晶し淡桃色の固体状の上記化合物(4)18.5gを得た。
続いて、固体状の上記化合物(4)16.5gをTHF200mlに溶解し4−クロロメチルスチレン18g、カリウム tert−ブトキシド11.9gを徐々に加え、70℃で16時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状のCTM−12を20.3g得た。
【0100】
得られたCTM−12は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−12のIRスペクトルデータを、図2に示す。
【0101】
[合成例3:CTM−15の合成]
例示化合物であるCTM−15について、以下のスキームにて合成した。
【0102】
【化27】



【0103】
三つ口フラスコに、上記化合物(5)25g、トルエン250ml、EthylMaronate 12.8gを採取、溶解させた。その後、ピペリジン3.4g、酢酸3.6gを加え130℃で2時間撹拌した。さらにピペリジン0.68g、酢酸0.72gを加え130℃で1時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(6)31.2gを得た。
続いて、ナス型フラスコにオイル状の上記化合物(6)31.2gをとり、THF200mlに溶解させ、エタノール50ml、10%Pd/C2gを加え、水素ガス供給元につなぎ24時間撹拌し、減圧下溶剤を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(7)29.8gを得た。
そして、ナス型フラスコにオイル状の上記化合物(7)25gをとり、THF200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させたものを、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。析出した固体をトルエン100mlで2回洗浄した。その後、その個体とDMF200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分、70℃で7時間撹拌した。その後室温まで冷却し、トルエン500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−15を25.3g得た。
【0104】
得られたCTM−15は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−15のIRスペクトルデータを、図3に示す。
【0105】
[合成例4:CTM−16の合成]
例示化合物であるCTM−16について、以下のスキームにて合成した。
【0106】
【化28】



【0107】
合成例3と同様な方法で合成した上記化合物(7)25gをTHF250mlに溶解し水素化アルミニウムリチウム9.2gを加え室温にて2時間撹拌した。その後水500ml、トルエン1Lを加え、セライトを敷いたろ紙で固形分をろ別した。さらに有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=2/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(8)17.8gを得た。
続いて、オイル状の上記化合物(8)16.0gをTHF200mlに溶解し4−クロロメチルスチレン17.5g、カリウムtert−ブトキシド11.2gを徐々に加え、70℃で16時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状のCTM−16を18.7g得た。
【0108】
得られたCTM−16は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−16のIRスペクトルデータを、図4に示す。
【0109】
[合成例5:CTM−17の合成]
例示化合物であるCTM−17について、以下のスキームにて合成した。
【0110】
【化29】



【0111】
合成例3と同様に上記化合物(5)から上記化合物(6)を合成した。
ナス型フラスコにオイル状の上記化合物(6)27.5gをとり、THF200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させたものを、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。二層に分離した下層をトルエン100mlで2回洗浄した。その後、その下層とDMF200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分、70℃で7時間撹拌した。その後室温まで冷却し、酢酸エチル500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−17を18.4g得た。
【0112】
得られたCTM−17は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−17のIRスペクトルデータを、図5に示す。
【0113】
[合成例6:CTM−41の合成]
例示化合物であるCTM−41について、以下のスキームにて合成した。
【0114】
【化30】

【0115】
三つ口フラスコに、上記化合物(9)25g、トルエン350ml、EthylMaronate22.1gを採取した。その後、ピペリジン1.56g、酢酸1.65gを加え130℃で2.5時間撹拌した。さらにピペリジン0.78g、酢酸0.83gを加え130℃で1時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=10/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(10)28.5gを得た。
続いて、ナス型フラスコに、オイル状の上記化合物(10)28.5gをとり、THF200mlに溶解させ、エタノール25ml、10%Pd/C2gを加え、水素ガス供給元につなぎ24時間撹拌し、減圧下溶剤を留去した。その後、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の上記化合物(11)27.1gを得た。
そして、化合物(11)27.1gを、THF250mlに溶解し水素化アルミニウムリチウム6.2gを加え室温にて2時間撹拌した。その後水500ml、酢酸エチル1Lを加え、セライトを敷いたろしで固形分をろ別した。さらに有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後ラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:酢酸エチル)にて精製し、オイル状の上記化合物(12)19.1gを得た。
続いて、上記化合物(12)19.1gをTHF200mlに溶解し4−クロロメチルスチレン23.7gカリウム tert−ブトキシド17.4gを徐々に加え、70℃で16時間撹拌した。その後室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。その後カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状のCTM−41を20.3g得た。
【0116】
得られたCTM−41は、IRスペクトルにより構造を同定した。
CTM−41のIRスペクトルデータを、図6に示す。
【0117】
[実施例1A]
(電荷輸送性膜の作製とその電荷輸送性能の確認)
−サンプル作製−
前述のようにして合成したCTM−11を0.23g採取し、安定剤不含のTHF0.77gに溶解させ、熱ラジカル発生剤V−601:0.005gを溶解させた液を、ITO表面上にギャップコーターで塗布し、酸素濃度200ppm以下のグローブボックス中で145℃、35分にて製膜し、膜厚約7μmの膜を得た。
その後スパッタリング法により半透明金電極を作製し、CTL単層のサンドイッチ型セルを作製した。
【0118】
−電荷移動度の測定−
電荷移動度は、Time of Flight (TOF)法により測定を行った。
CTM−11の電場30[V/μm]における電荷移動度は6.0×10−6[cm/Vs]であった。
【0119】
[実施例2A〜6A]
前述のようにして合成したCTM−12、CTM−15、CTM−16、CTM−17、及びCTM−41のそれぞれについても、実施例1Aと同様にしてサンプルを作製し、実施例1Aと同様に電荷移動度の測定を行った。
その結果、電場30[V/μm]における電荷移動度はそれぞれ、CTM−12:3.2×10−5[cm/Vs]、CTM−15:3.81×10−6[cm/Vs]、CTM−16:3.3×10−5[cm/Vs]、CTM−17:4.0×10−6[cm/Vs]、CTM−41:7.3×10−6[cm/Vs]であった。
【0120】
[比較例1A、2A]
下記に示すCTM−ref1、CTM−ref2についても実施例1Aと同様にしてサンプルを作製し、実施例1Aと同様に電荷移動度の測定を行った。
その結果、電場30[V/μm]における電荷移動度はそれぞれ、CTM−ref1:8.4×10−7[cm/Vs]、CTM−ref2:7.1×10−7[cm/Vs]であった。
【0121】
【化31】



【0122】
実施例1A〜6A、比較例1A、2Aから明らかなように、本実施形態に係る新規化合物を用いた硬化膜(電荷輸送性膜)は、従来より知られているCTM−ref1、CTM−ref2を用いた硬化膜(電荷輸送性膜)と比較して、非常に優れた電荷輸送能を有することが分かる。
【0123】
本実施形態に係る新規化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜は様々な光電変換デバイスに用いることができる。
光電変換デバイスとしては、例えば、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機太陽電池等が挙げられる。以降実施形態の一つとして有機ELデバイスの例を示すが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0124】
[実施例B1]
ガラス基板上にITO膜を備えるITOガラス基板を用意し、そのITO膜を2mm幅の短冊状にエッチングしてITO電極(陽極)を形成した。このITOガラス基板を、イソプロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
次に、ITOガラス基板のITO電極が形成されている面上に、昇華精製した銅フタロシアニンを真空蒸着することにより厚さ0.015μmの薄膜を形成した。
次いで、前述のようにして合成したCTM−15:2質量部、安定剤不含テトラヒドロフラン(THF)100質量部に溶解し、更に開始剤V−601(和光純薬社製)0.3質量部を溶解させ薄膜形成用塗布液を得た。この塗布液を銅フタロシアニン膜上に塗布し、酸素濃度約80ppmの雰囲気下で150℃、40分加熱し、厚さ0.050μmの薄膜を形成した。
次に、上記薄膜上に、発光材料としての下記式で表される化合物(Alq)を蒸着することにより厚さ0.060μmの発光層を形成した。
【0125】
【化32】



【0126】
更に、上記発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.13μm厚の短冊状のMg−Ag電極(陰極)を形成し、有機電界発光素子を得た。なお、ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの延在方向が直交するように形成した。得られた有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
真空中(0.133Pa)で、ITO電極をプラス(陽極)、Mg−Ag電極をマイナス(陰極)とし、これらの間に直流電圧を印加して発光させた。そのときの最高輝度は850cd/m、駆動電圧は8.4mA/cm、素子寿命は45時間であった。
このように、本実施形態に係る新規化合物の重合体を含む電荷輸送性膜を適用した有機電界発光素子は、優れた電気特性を得ることができ、モルホルジー変化がなく長寿命な素子を形成可能であることが確認された。
【0127】
[実施例B2]
前述のようにして合成したCTM−41についても、実施例B1と同様にしてサンプルを作製し、実施例B1と同様に、最高輝度、駆動電圧、及び素子寿命の測定を行った。
その結果、最高輝度は870cd/m、駆動電圧は8.3mA/cm、素子寿命は50時間であった。
このように、本実施形態に係る新規化合物の重合体を含む電荷輸送性膜を適用した有機電界発光素子は、優れた電気特性を得ることができ、モルホルジー変化がなく長寿命な素子を形成可能であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】



〔一般式(I)中、Fは電荷輸送性サブユニットを示し、Lはアルキレン基、−C=C−(アルケニル基)、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。mは1以上6以下の整数を示し、nは2以上3以下の整数を示す。〕
【請求項2】
下記一般式(II)で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】



〔一般式(II)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは上記一般式(III)で表される基を示す。kは0又は1を示し、c1〜c5はそれぞれ0〜2の整数を示し、c1〜c5の全てが同時に0になることはない。
上記一般式(III)中、Lはアルキレン基、−C=C−(アルケニル基)、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、及びアルカン若しくはアルケンから誘導される3価又は4価の基からなる群より選択される2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。nは2以上3以下の整数を示す。〕
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物中の下記部分構造、及び前記一般式(III)で表される基が、下記一般式(IV−1)で表される基又は一般式(IV−2)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【化3】



〔一般式(IV−1)及び(IV−2)中、Xは連結基を示し、pは0又は1を示す。なお、上記部分構造において波線はFで示される電荷輸送性サブユニットとの結合部位を示す。〕
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物中の下記部分構造、及び前記一般式(III)で表される基が、下記一般式(V−1)で表される基又は一般式(V−2)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【化4】



〔一般式(V−1)及び(V−2)中、X’は連結基を示し、p’は0又は1を示す。なお、上記部分構造において波線はFで示される電荷輸送性サブユニットとの結合部位を示す。〕
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜。
【請求項6】
熱ラジカル発生剤又はその誘導体を更に含有する請求項5に記載の電荷輸送性膜。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の電荷輸送性膜を備えた光電変換デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60422(P2013−60422A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180682(P2012−180682)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】