説明

新規化合物およびそれを用いた有機デバイス

【課題】電荷輸送材料として優れた特性を有する新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式で表される化合物。


[R1〜R3は置換基、n1およびn2は0〜5の整数、n3は0〜4の整数、Xはアルキレン基、スルホン基等の連結基、mは2〜4の整数し、R4は脂肪族環状連結基、R5〜R10は水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送材料として有用な新規化合物、およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。これまでにも、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。なかでも、リン光材料は励起三重項状態を使用することができ、量子効率が高いことから発光材料として注目を集めている。しかしながら、リン光材料には、トリプレット−トリプレット失活を起こしやすいという共通の課題があるため、そのような失活を抑えるための様々な検討がなされている(非特許文献1参照)。
【0003】
トリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物は、従来のカルバゾール系化合物に比べて最低励起三重項エネルギー準位が高いことから、発光材料のホスト材料として注目されている。例えば特許文献1には、最低励起三重項エネルギー準位が2.65eV以上である化合物を選択して用いることにより発光効率を改善することが記載されており、下記の構造を有する化合物に発光材料をドープした層を4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)層に積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
【化1】

【0004】
非特許文献2には、下記のトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物にイリジウム(III)ビス(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)ピコリナート(Flrpic)をドープした発光層に4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)からなるホール輸送層を積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
【化2】

【0005】
非特許文献3には、下記のトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物からなる層に、9−(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル)−3−(ジブロモフェニルホスホリル)−9H−カルバゾール(mCPPO1)にビス(3,5−ジフルオロ−4−シアノフェニル)ピリジン)イリジウムピコリナート(FCNIrpic)をドープした発光層を積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。この文献には、このような構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、高い発光効率を達成しうることが記載されている。
【化3】

【0006】
非特許文献4には、下記のトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物にイリジウム(III)ビス(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)ピコリナート(Flrpic)をドープした発光層に、4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)からなるホール輸送層を積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。この文献には、このような構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、高い発光効率を達成しうることが記載されている。
【化4】

【0007】
非特許文献5には、下記のトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物が記載されている。この文献には、これらのトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物を電子輸送材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
【化5】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2006/130353号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】L.Xiao, Adv. Mater. 2011, 23, 926-952
【非特許文献2】P.A.Vecchi et.al., Organic Letters, 2006, Vol.8, No.19, 4211-4214
【非特許文献3】S.O.Jeon, Adv. Mater. 2011, XX, 1-6
【非特許文献4】C. Han, Chem. Eur. J. 2011, 17, 5800-5803
【非特許文献5】Chem. Mater., 2010, 22, 5678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようにトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物については、これまで種々の検討がなされてきた。しかしながら、トリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物のすべてについて網羅的な研究がされ尽くされているとは言えない。また、トリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物の化学構造とその化合物の電子デバイス材料としての有用性の間には、明確な関係が見出されるに至っておらず、化学構造に基づいて電子デバイス材料としての有用性を予測することは困難な状況にある。さらに、トリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物は、合成が必ずしも容易ではないことから、化合物を提供すること自体に困難が伴うこともある。そこで、本発明者らは、これまでに開発されるに至っていない新たなトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む化合物の合成を試みるとともに、合成された新規化合物の電子デバイス材料としての有用性を評価することを検討した。すなわち、本発明者らは、電子デバイス材料として有用なトリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む新規化合物を提供することを課題として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、トリフェニルホスフィンオキサイド構造を含む特定の構造を有する新規化合物に、電子デバイス材料として優れた性質があることを見出した。本発明者らは、この知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0012】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
【化6】

[一般式(1)において、R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表し、n1およびn2は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n3は0〜4のいずれかの整数を表し、Xは下記のいずれかの構造を有する連結基を表し、mはXの連結基の価数に等しく、2〜4のいずれかの整数を表す。
【化7】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(1)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。また、Xが>PO−である場合、一般式(1)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3',3”位で連結する。]
【0013】
[2] 下記一般式(2)で表される化合物。
【化8】

[一般式(2)において、R11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X11は、下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化9】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(2)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。]
【0014】
[3] 下記一般式(2−1)で表される化合物。
【化10】

[一般式(2−1)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X21は、下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化11】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【0015】
[4] 下記一般式(2−2)で表される化合物。
【化12】

[一般式(2−2)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X22は下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化13】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【0016】
[5] 下記一般式(2−3)で表される化合物。
【化14】

[一般式(2−3)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X23は下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化15】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【0017】
[6] 前記連結基が下記の構造を有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物。
【化16】

[7] 前記連結基が下記のいずれかの構造を有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物。
【化17】

[8] 前記連結基が下記の構造を有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の化合物。
【化18】

[9] 77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位が2.80eV以上であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の化合物。
[10] 77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位が2.95eV以上であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の化合物。
【0018】
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物からなる電荷輸送材料。
[12] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物を用いた有機デバイス。
[13] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化合物は、電荷輸送材料として優れた物性を有しており、電子デバイス材料として有用である。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は発光効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】製造例の有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成を示す概略断面図である。
【図2】製造例1における電流密度と量子効率の関係を示すグラフである。
【図3】製造例1における電流密度と量子効率の関係を示す別のグラフである。
【図4】製造例1における電流密度と量子効率の関係を示すさらに別のグラフである。
【図5】製造例2における電流密度と量子効率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0022】
[本発明の化合物]
本発明の化合物は、下記の一般式(1)で表される構造を有する化合物である。
【化19】

【0023】
一般式(1)において、Xは後掲のいずれかの構造を有する連結基を表し、mはXの連結基の価数に等しく、2〜4のいずれかの整数を表す。R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表し、n1およびn2は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n3は0〜4のいずれかの整数を表す。n1が2〜5のいずれかの整数であるとき、n1個のR1はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n2が2〜5のいずれかの整数であるとき、n2個のR2はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、また、n3が2〜4のいずれかの整数であるとき、n3個のR3はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、m個の各構造単位におけるR1、R2、R3、n1、n2およびn3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR1どうし、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR2どうし、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR3どうしは、それぞれ結合して当該ベンゼン環の隣り合う炭素原子とともに環状構造を形成してもよい。
【0024】
一般式(1)におけるXは、下記のいずれかの構造を有する連結基である。ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(1)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。また、Xが>PO−である場合、トリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3',3”位で連結する。
【化20】

【0025】
上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。脂肪族環状連結基は、炭素原子からなる環状骨格を含むものであり、環状骨格を構成する炭素原子で連結する基である。環状骨格を構成する炭素原子数は3〜8であることが好ましく、4〜7であることがより好ましく、5または6であることがさらに好ましく、6であることがさらにより好ましい。脂肪族環状連結基の具体例として、1,1−シクロブチレン基、1,2−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,1−シクロヘプチレン基、1,2−シクロヘプチレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロヘプチレン基、1,1−シクロオクチレン基、1,2−シクロオクチレン基、1,3−シクロオクチレン基、1,4−シクロオクチレン基、2,2−アダマンチレン基、2,4−アダマンチレン基を挙げることができる。好ましい脂肪族環状連結基の具体例として、1,1−シクロペンチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,1−シクロヘプチレン基、1,2−シクロヘプチレン基、1,3−シクロヘプチレン基、2,2−アダマンチレン基、1,4−アダマンチレン基を挙げることができ、さらに好ましい脂肪族環状連結基の具体例として、1,1−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、2,2−アダマンチレン基、1,4−アダマンチレン基を挙げることができる。
4が表す脂肪族環状連結基は置換されていてもよい。置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を挙げることができ、これらの置換基の説明と好ましい範囲については下記の対応する基の記載を参照することができる。
【0026】
上記連結基の構造において、R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。
【0027】
5およびR6として採用しうるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることがさらに好ましい。
5、R6、R7、R8、R9およびR10として採用しうるアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)がさらにより好ましい。環状のアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
5、R6、R7、R8、R9およびR10として採用しうるアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)がさらにより好ましい。
【0028】
上記アルキル基は、さらに置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換されている場合の置換基としては、例えばアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を挙げることができ、置換基としてのアリール基の説明と好ましい範囲については上記アリール基の記載を参照することができる。
また、上記アリール基は、さらに置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換されている場合の置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を挙げることができ、アルキル基とアリール基の説明と好ましい範囲については上記アルキル基と上記アリール基の記載を参照することができる。
置換基として採用しうるアルコキシ基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルコキシ基である。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)がさらにより好ましい。環状のアルコキシ基としては、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基を挙げることができる。
置換基として採用しうるアリールオキシ基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリールオキシ基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)がさらにより好ましい。
8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0029】
4、R5、R6、R7、R8、R9またはR10を有する上記連結基の構造のうち、好ましい構造の具体例を以下に挙げる。
【化21】

【0030】
一般式(1)におけるXとして、例えば以下の連結基を群としてまとめることができる。
【化22】

【0031】
一般式(1)におけるXとして、例えば以下の連結基も群としてまとめることができる。
【化23】

【0032】
一般式(1)におけるXは2価の連結基であることが好ましく、mは2であることが好ましい。
【0033】
一般式(1)におけるR1、R2およびR3が表す置換基として、例えば置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基を挙げることができる。好ましいのは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、より好ましいのは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基である。
【0034】
置換基として採用しうるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基の説明と好ましい範囲については、上記のR5、R6、R7、R8、R9およびR10が表すアルキル基とアリール基の説明と好ましい範囲、および上記の置換基として採用しうるアルコキシ基とアリールオキシ基の説明と好ましい範囲と同じである。
置換基として採用しうるアルケニル基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルケニル基である。アルケニル基の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜6であることがさらに好ましく、2または3であること(すなわちビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基)がさらにより好ましい。環状のアルケニル基としては、例えばシクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基を挙げることができる。アルケニル基はさらに置換されていてもよく、その場合の置換基としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。これらの置換基の説明と好ましい範囲は、上記のR5、R6、R7、R8、R9およびR10が表すアルキル基とアリール基の説明と好ましい範囲、および上記の置換基として採用しうるアルコキシ基とアリールオキシ基の説明と好ましい範囲と同じである。
置換基として採用しうるアミノ基には、無置換のアミノ基と置換アミノ基が含まれる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基を挙げることができる。これらの置換基の説明と好ましい範囲は、上記のR5、R6、R7、R8、R9およびR10が表すアルキル基とアリール基の説明と好ましい範囲と同じである。
置換基として採用しうるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子がより好ましく、フッ素原子がさらにより好ましい。
【0035】
一般式(1)におけるR1、R2およびR3が表す置換基として、下記一般式(11)で表される置換基も挙げることができる。
【化24】

【0036】
一般式(11)において、X51は後掲のいずれかの構造を有する2価の連結基を表す。R51、R52およびR53は各々独立に置換基を表し、n51およびn52は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n53は0〜4のいずれかの整数を表す。n51が2〜5のいずれかの整数であるとき、n51個のR51はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n52が2〜5のいずれかの整数であるとき、n52個のR52はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、また、n53が2〜4のいずれかの整数であるとき、n53個のR53はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。また、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR51どうし、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR52どうし、ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合するR53どうしは、それぞれ結合して当該ベンゼン環の隣り合う炭素原子とともに環状構造を形成してもよい。一般式(11)のR51、R52およびR53の置換基の具体例と好ましい範囲は、一般式(1)のR1、R2およびR3の置換基の具体例と好ましい範囲と同じである。
【0037】
一般式(11)におけるX51は、下記のいずれかの構造を有する連結基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の説明と好ましい範囲は、一般式(1)におけるものと同じである。本発明の化合物では、X51はXと同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【化25】

【0038】
一般式(1)におけるR1、R2およびR3が表す置換基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、分子中に複数のR1が存在する場合、複数のR1が表す置換基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。分子中に複数のR2が存在する場合や、分子中に複数のR3が存在する場合も同じである。
【0039】
一般式(1)におけるn1、n2およびn3は各々独立に0〜3のいずれかの整数であることが好ましく、0〜2のいずれかの整数であることがより好ましい。また、n1、n2およびn3がすべて0であるものも好ましい。
【0040】
一般式(1)で表される化合物の中では、下記一般式(2)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化26】

【0041】
一般式(2)において、X11は後掲のいずれかの構造を有する2価の連結基を表す。R11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表す。n11が2〜5のいずれかの整数であるとき、n11個のR11はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n12が2〜5のいずれかの整数であるとき、n12個のR12はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n13が2〜4のいずれかの整数であるとき、n13個のR13はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n21が2〜5のいずれかの整数であるとき、n21個のR21はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n22が2〜5のいずれかの整数であるとき、n22個のR22はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n23が2〜4のいずれかの整数であるとき、n23個のR23はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(2)のR11、R12、R13、R21、R22およびR23の置換基の具体例と好ましい範囲は、一般式(1)のR1、R2およびR3の置換基の具体例と好ましい範囲と同じである。
【0042】
一般式(2)におけるX11は、下記のいずれかの構造を有する連結基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の説明と好ましい範囲は、一般式(1)におけるものと同じである。ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(2)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。
【化27】

【0043】
一般式(2)におけるX11として、例えば以下の連結基を群としてまとめることができる。
【化28】

【0044】
一般式(2)は、以下の一般式(2−1)、一般式(2−2)および一般式(2−3)を包含する。その中では、一般式(2−1)で表される化合物と一般式(2−3)で表される化合物がより好ましい。一般式(2−1)で表される化合物は結晶化しにくい点で好ましく、一般式(2−3)で表される化合物は最低励起三重項エネルギー準位が高い点で好ましい。
【0045】
【化29】

【0046】
一般式(2−1)におけるR11、R12、R13、R21、R22、R23、n11、n12、n13、n21、n22およびn23の説明と具体例と好ましい範囲については、式(2)と同じである。一般式(2−1)におけるX21は、下記のいずれかの構造を有する連結基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の説明と好ましい範囲は、一般式(1)におけるものと同じである。
【0047】
【化30】

【0048】
一般式(2−1)におけるX21として、例えば以下の連結基を群としてまとめることができる。
【化31】

その中では、以下の連結基群が好ましい。
【化32】

【0049】
【化33】

【0050】
一般式(2−2)におけるR11、R12、R13、R21、R22、R23、n11、n12、n13、n21、n22およびn23の説明と具体例と好ましい範囲については、式(2)と同じである。一般式(2−2)におけるX22は、下記のいずれかの構造を有する連結基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の説明と好ましい範囲は、一般式(1)におけるものと同じである。
【0051】
【化34】

【0052】
一般式(2−2)におけるX22として、例えば以下の連結基を群としてまとめることができる。
【化35】

その中では、以下の連結基群が好ましい。
【化36】

【0053】
【化37】

【0054】
一般式(2−3)におけるR11、R12、R13、R21、R22、R23、n11、n12、n13、n21、n22およびn23の説明と具体例と好ましい範囲については、式(2)と同じである。一般式(2−3)におけるX23は、下記のいずれかの構造を有する連結基である。R4、R5、R6、R7、R8およびR9の説明と好ましい範囲は、一般式(1)におけるものと同じである。
【0055】
【化38】

【0056】
一般式(2−3)におけるX23として、例えば以下の連結基を群としてまとめることができる。
【化39】

【0057】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下の具体例の構造式の中でPhはフェニル基を表す。
【0058】
【化40】

【0059】
【化41】

【0060】
[本発明の化合物の合成法]
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(1)で表される化合物の合成は、既知の合成法や条件を適宜組み合わせることにより行うことができる。
例えば、好ましい合成法として、下記のスキーム1で表される合成法を挙げることができる。すなわち、一般式(21)で表されるトリフェニルフォスフィン2〜4量体を、対応する一般式(1)のトリフェニルフォスフィンオキサイド2〜4量体へ変換する合成法を挙げることができる。この変換に際しては、過酸化水素を用いることが好ましい。反応条件は、トリフェニルフォスフィンをトリフェニルフォスフィンオキサイドに変換する際に採用される公知の反応条件を参考にすることができる。
【0061】
【化42】

【0062】
一般式(21)で表される化合物は、公知の合成法を適宜選択して組み合わせることにより合成することができる。例えば以下のスキーム2にしたがって、一般式(22)で表されるジフェニルホスフィン誘導体と一般式(23)で表されるフェニル2〜4量体とをカップリングさせることにより、対応する一般式(21)で表される化合物を合成することができる。一般式(22)のZ1と一般式(23)のZ2は、カップリング反応を効率良く進行させるような組み合わせを選択する。例えば、Z1としてNaを選択し、Z2としてフッ素原子などのハロゲン原子を好ましく選択することができる。
【化43】

【0063】
[本発明の化合物の物性]
一般式(1)で表される化合物は、77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位が比較的高く、電荷輸送材料として優れた性質を有しているため、有機エレクトロルミネッセンス素子などの電子デバイスに効果的に用いることができる。77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位は、2.80eV以上であることが好ましく、2.85eV以上であることがより好ましく、2.90eV以上であることがさらに好ましく、3.00eV以上であることがさらにより好ましく、3.03eV以上であることが特に好ましい。本発明における最低励起三重項エネルギー準位は、石英基板上に形成した薄膜の77°KにおけるPLスペクトルを測定し、最も短波側のピーク値のエネルギーを算出することにより決定した値である。したがって、本発明における最低励起三重項エネルギー準位の値は、溶液状態において測定されたものとは数値が異なる。薄膜状態において高い最低励起三重項エネルギー準位を有する材料を提供するためには、分子間の水素結合による会合を防ぐことが重要であり、そのためには一般式(1)で表される構造が有利であることを本発明者らは見出した。
【0064】
一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができるデバイスの種類は特に制限されないが、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子や電子写真用感光体を挙げることができる。また、光電変換素子にも効果的に用いることができるため、有機薄膜太陽電池にも有効に用いることができる。さらに有機トランジスタとしても有効に用いることができる。以下において、代表的なデバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
【0065】
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
典型的な有機エレクトロルミネッセンス素子は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、有機層、陰極が積層された構造を有する。有機層は、有機化合物を含む層を複数積層した構造であることが一般的であり、その機能に応じて各層は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などと呼ばれる。本明細書では、有機エレクトロルミネッセンス素子の一般的な構成例として、陽極、主として第1有機材料により構成される第1有機層、主として第2有機材料により構成される第2有機層、陰極をこの順に積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明する。
第1有機層は主としてホール輸送機能を果たす層であり、第1有機層に発光材料をドープしたときには第1有機層は発光材料へ電子を輸送する機能も果たす。第1有機層は、そのような機能を果たす第1有機材料から主として形成されており、ここでいう「主として」とは第1有機層を構成する有機材料の中で最も含有量が多い有機材料を意味する。通常は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上の含有量を示す。
第2有機層は主として電子輸送機能を果たす層であり、第2有機層に発光材料をドープしたときには第2有機層は発光材料へホールを輸送する機能も果たす。第2有機層は、そのような機能を果たす第2有機材料から主として形成されており、ここでいう「主として」とは第2有機層を構成する有機材料の中で最も含有量が多い有機材料を意味する。通常は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上の含有量を示す。
【0066】
有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する陽極と第1有機層の間には、他の層が積層されていてもよい。例えば、ホール注入機能を有する有機層、ホール輸送機能を有する有機層、電子ブロッキング機能を有する有機層が積層されていてもよい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する陰極と第2有機層の間にも、他の層が積層されていてもよい。例えば、電子注入機能を有する有機層、電子輸送機能を有する有機層、ホールブロッキング機能を有する有機層が積層されていてもよい。
【0067】
有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光材料は第1有機層か第2有機層の少なくとも一方に含まれている。したがって、発光材料は第1有機層のみに含まれていてもよいし、第2有機層のみに含まれていてもよいし、第1有機層と第2有機層の両方に含まれていてもよい。好ましいのは、第1有機層のみに含まれている態様と第2有機層のみに含まれている態様であり、より好ましくは第1有機層にのみ含まれている態様である。
有機エレクトロルミネッセンス素子の第1有機層のみに発光材料が含まれている場合、第2有機層の厚みを40nm以上にすることが好ましく、50nm以上にすることがより好ましい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子の第2有機層にのみ発光材料が含まれている場合に、第1有機層の厚みを30nm以上にすることが好ましく、50nm以上にすることがより好ましい。このような態様を採用することによって、発光材料が添加された有機層で発生したエキシトンの消光が抑えられ、発光効率が大きく増大する。
【0068】
発光材料の含有量は、発光材料が含まれている有機層の0.1重量%以上であることが好ましく、
1.0重量%以上であることがより好ましく、3.0重量%以上であることがさらに好ましい。また、発光材料の含有量は、発光材料が含まれている有機層の30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、下記の式(A)および式(B)を満たすことが好ましい。
式(A) T1(第1) − T1(発光) > 0.19eV
式(B) T1(第2) − T1(発光) > 0.24eV
上式において、T1(第1)は第1有機材料の77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表し、T1(第2)は第2有機材料の77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表し、T1(発光)は発光材料の77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を表す。
【0070】
従来の研究では、発光材料の最低励起三重項エネルギー準位と、その発光材料を添加した有機層を構成する有機材料の最低励起三重項エネルギー準位との関係が、もっぱら注目されてきた。これに対して本発明者らは、発光材料を添加した層に隣接する有機層を構成する有機材料の薄膜での最低励起三重項エネルギー準位についても考慮する必要があることを初めて見出した。そして、そのような隣接する有機層を構成する有機材料の薄膜での最低励起三重項エネルギー準位と発光材料の薄膜での最低励起三重項エネルギー準位との間に一定以上のエネルギー差が存在することも、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を高めるために重要であることを見出した。上記の式(A)および式(B)は、このような知見に基づいて導出されたものである。
【0071】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに下記の式(A−1)を満たすものであることが好ましく、式(A−2)を満たすものであることがより好ましく、式(A−3)を満たすものであることがより好ましい。
式(A−1) T1(第1) − T1(発光) > 0.21eV
式(A−2) T1(第1) − T1(発光) > 0.23eV
式(A−3) T1(第1) − T1(発光) > 0.25eV
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらに下記の式(B−1)を満たすものであることが好ましく、式(B−2)を満たすものであることがより好ましく、式(B−3)を満たすものであることがより好ましい。
式(B−1) T1(第2) − T1(発光) > 0.29eV
式(B−2) T1(第2) − T1(発光) > 0.34eV
式(B−3) T1(第2) − T1(発光) > 0.40eV
【0072】
一般式(1)で表される化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の第1有機材料として用いてもよいし、第2有機材料として用いてもよいし、第1有機材料および第2有機材料の両方として用いてもよい。好ましいのは、第1有機材料としてのみ用いる場合と、第2有機材料としてのみ用いる場合である。一般式(1)で表される化合物を第2有機材料として用いる場合、発光材料は第1有機材料中に含まれていることが好ましいが、第2有機材料に含まれていてもよい。
【0073】
以下において、本発明において第2有機材料として使用することができる一般式(1)以外の化合物を例示する。本発明において用いることができる第2有機材料は、これらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化44】

【0074】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる第1有機材料として、例えば、下記の一般式(4)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【化45】

【0075】
一般式(4)において、Zはq価の連結基を表し、qは2〜4のいずれかの整数を表す。R41およびR42は各々独立に置換基を表し、n41およびn42は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表す。n41が2〜4のいずれかの整数であるとき、n41個のR41はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n42が2〜4のいずれかの整数であるとき、n42個のR42はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、q個の各構造単位におけるR41、R42、n41およびn42は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0076】
一般式(4)におけるZは、芳香環または複素環を含む連結基であることが好ましい。芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が融合した融合環であってもよい。芳香環の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることがさらにより好ましい。芳香環の具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環を挙げることができる。複素環は、単環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が融合した融合環であってもよい。複素環の炭素数は5〜22であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜14であることがさらに好ましく、5〜10であることがさらにより好ましい。複素環を構成する複素原子は窒素原子であることが好ましい。複素環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。一般式(4)におけるZは、芳香環または複素環を含むとともに、非芳香族連結基を含んでいてもよい。そのような非芳香族連結基として、以下の構造を有するものを挙げることができる。
【化46】

【0077】
上記の非芳香族連結基におけるR7、R8、R9およびR10の説明と好ましい範囲については、上記の一般式(1)のXの説明と好ましい範囲の記載を参照することができる。
また、一般式(4)におけるR41およびR42の置換基の説明と好ましい範囲については、上記の一般式(1)のR1およびR2の説明と好ましい範囲の記載を参照することができる。さらに、一般式(4)におけるn41と42の説明と好ましい範囲については、上記の一般式(1)のn3の説明と好ましい範囲の記載を参照することができる。
【0078】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる第1有機材料として、例えば、下記の一般式(5)で表される化合物も好ましく用いることができる。
【化47】

【0079】
一般式(5)において、R51、R52およびR53は各々独立に置換基を表し、n51およびn52は各々独立に1〜4のいずれかの整数を表し、n53は1〜5のいずれかの整数を表す。少なくとも1つのR51、少なくとも1つのR52、および少なくとも1つのR53は、アリール基である。n51が2〜4のいずれかの整数であるとき、n51個のR51はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n52が2〜4のいずれかの整数であるとき、n52個のR52はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、n53が2〜5のいずれかの整数であるとき、n53個のR53はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(5)におけるR51、R52およびR53の置換基およびアリール基の説明と好ましい範囲については、上記の一般式(1)のR1、R2およびR3の説明と好ましい範囲の記載を参照することができる。さらに、一般式(5)におけるn51、n52およびn53は1〜3であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0080】
以下において、一般式(4)または一般式(5)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(4)または一般式(5)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化48】

【0081】
なお、本発明において第1有機材料として使用することができる化合物は一般式(4)または一般式(5)で表される化合物に限定されるものではなく、例えば以下の化合物を始めとする有機エレクトロルミネッセンス素子に通常用いられる有機化合物も採用することが可能である。
【化49】

【0082】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる発光材料は、発光させたい波長等を考慮して選択することができる。例えば、リン光発光材料、熱活性化型遅延蛍光材料、エキサイプレックス型発光材料などを適宜選択して用いることができる。
リン光発光材料としては、従来公知の種々の金属錯体を挙げることができる。本発明では特に深い青色のリン光を発光する材料を好ましく選択することができる。リン光発光材料としては、例えば、Flrpic、FCNIr、Ir(dbfmi)、FIr6、Ir(fbppz)2(dfbdp)、FIrN4などのIr錯体や、後掲の[Cu(dnbp)(DPEPhos)]BF4や、[Cu(dppb)(DPEPhos)]BF4、[Cu(μ−l)dppb]2、[Cu(μ−Cl)DPEphos]2、Cu(2−tzq)(DPEPhos)、[Cu(PNP)]2、compound 1001、Cu(Bpz4)(DPEPhos)などのCu錯体、FPt、Pt−4などのPt錯体を好ましい例として挙げることができる。これらの構造を以下に示す。
【0083】
【化50】

【0084】
【化51】

【0085】
【化52】

【0086】
上に代表的なリン光発光材料を記載したが、本発明に用いることができるリン光発光材料はこれらに限定されるものではなく、例えば、シーエムシー出版、「有機ELのデバイス物理・材料化学・デバイス応用」の第9章に記載されている材料を用いることも可能である。
【0087】
熱活性化型遅延蛍光材料としては、例えば下記のPIC−TRZ、[Cu(PNP−tBu)]2を好ましい例として挙げることができる。
【化53】

【0088】
エキサイプレックス型発光材料としては、例えば下記のm−MTDATAとPBD、PyPySPyPyとNPB、PPSPPとNPBを好ましい例として挙げることができる。
【化54】

【0089】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を構成するその他の材料については、既知の材料の中から適宜選択して最適化することができる。例えば、陽極と第1有機層の間には、上記のようにホール注入層を設けることが好ましいが、そのようなホール注入層を構成する材料として、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)、酸化モリブデン等の金属酸化物、公知のアニリン誘導体を好ましく用いることができる。また、第2有機材料と陰極の間には、公知のホールブロッキング材料を用いた層を挿入することが好ましい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する各層や電極を製造する際には、既知の製造方法を適宜選択して採用することができる。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子には、公知の技術や公知の技術から容易に想到しうる様々な改変を必要に応じて加えることができる。
【0090】
[有機薄膜太陽電池]
一般式(1)で表される化合物は、有機薄膜太陽電池にも効果的に用いることができる。
典型的な有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。一般式(1)で表される化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。一般式(1)で表される化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。
一般式(1)で表される化合物を用いる有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。一般式(1)で表される化合物を用いる有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。また、本発明の化合物を用いる有機薄膜太陽電池には、公知の技術や公知の技術から容易に想到しうる様々な改変を必要に応じて加えることができる。
【実施例】
【0091】
以下に合成例、試験例および製造例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0092】
(合成例1)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物9を合成した。
【化55】

【0093】
化合物101とn−ブチルリチウムを−80℃で2時間反応させた後、(C652PClを添加して−80℃でさらに2時間反応させた。得られた化合物102に過酸化水素を1時間反応させた後、酢酸エチルを溶出液としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、クロロホルム/エーテル中で再結晶することにより化合物9を白色結晶として得た(収率70%)。
【0094】
(合成例2)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物13を合成した。
【化56】

【0095】
化合物111とn−ブチルリチウムを−80℃で2時間反応させた後、(C652PClを添加して−80℃でさらに2時間反応させた。得られた化合物112とn−ブチルリチウムを−80℃で2時間反応させた後、(C652PClを添加して−80℃でさらに2時間反応させた。得られた化合物113に過酸化水素を1時間反応させた後、酢酸エチルを溶出液としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、クロロホルム/エーテル中で再結晶することにより化合物13を白色結晶として得た(収率35%)。
【0096】
(合成例3)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物15を合成した。
【化57】

【0097】
THF中において化合物121と金属ナトリウムを−80℃で反応させた。得られた化合物122を化合物123と混合してTHF中にて−80℃で12時間反応させた。得られた化合物124に過酸化水素を1時間反応させた後、酢酸エチル/メタノール(100:4)を溶出液としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチル/エーテル中で再結晶することにより化合物15を透明な結晶として得た(収率54%)。
【0098】
(合成例4)
合成例1〜3と同様にして、化合物1〜8、10〜12、14、16〜18も合成した。
【0099】
(試験例1)
本試験例において、合成例1〜4において合成した化合物1〜18の77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位を測定した。
石英基板上に各化合物を真空蒸着することにより、厚さ100〜200nmの化合物の薄膜を形成した。このサンプルを77°Kに冷却してPLスペクトルを測定した。PLスペクトルの最も短波側のピーク値のエネルギーを算出し、それを化合物の最低励起三重項エネルギー準位とした。
結果を後掲の表1に示す。
【0100】
(製造例1)
本製造例において、種々の化合物を用いて図1に示す構造の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、その発光効率を評価した。
(1)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
ガラス1上にインジウム・スズ酸化物(ITO)2をおよそ30〜100nmの厚さで製膜し、さらにその上にポリ(エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)3を30nmの厚さで製膜した。次いで、[Cu(dnbp)(DPEPhos)]BF4、[Cu(μ−l)dppb]2、FlrPicのいずれか1つの発光材料を10重量%ドープしたPYD2(第1有機材料)を有機溶媒に溶解させてスピンコートすることにより、第1有機層4を30nmの厚さで製膜した。さらにその上に、下記の構造を有するBPhen、TPBI、TmPyPB、SPPO1、TSPO1、PO15、化合物2、化合物15のいずれか1つの第2有機材料を真空蒸着することにより第2有機層5を50nmの厚さで製膜した。次いで、フッ化リチウム(LiF)6を0.5nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)7を100nmの厚さに蒸着して、図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
【0101】
(2)発光効率の評価
半導体パラメータ−アナライザーおよびパワーメータを用いて、上記(1)で製造した各有機エレクトロルミネッセンス素子の電流−電圧−輝度(J-V-L)特性を測定した。ELスペクトルはマルチチャンネル分光器を用いて測定した。これらの結果より、量子効率の算出を行った。
図2〜4にその結果を示す。リン光材料であるFlrPicを発光材料として用いて、第2有機材料として化合物2や化合物15を用いた場合には、18%という極めて高い量子効率が得られた。また、Cu錯体である[Cu(dnbp)(DPEPhos)]BF4を発光材料として用いて、第2有機材料として化合物2を用いた場合にも、15%を超える高い量子効率が得られた。
また、第1有機材料として用いたPYD2の代わりに、CzSi、PO12、mCP、SimCP、SimCP2、CBPEまたはCBZを用いて、同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を製造して発光効率を評価したところ、第2有機材料として本発明の化合物を用いた場合に同様に高い発光効率が認められた。
【0102】
(製造例2)
本製造例において、発光材料を添加する有機層を変えた有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して、その発光効率を評価した。
製造例1の製法にしたがって、ガラス1上、インジウム・スズ酸化物(ITO)2、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)3、FlrPicをドープしたPYD2の第1有機層4、化合物2の第2有機層5、フッ化リチウム(LiF)6、アルミニウム(Al)7を、製造例1と同じ厚さで製膜し、これをデバイスIとした。
FlrPicをドープする層を第1有機層から第2有機層に変えた点を変更して、その他はデバイスIと同様に製膜して、デバイスIIを作製した。
FlrPicをドープする層を第1有機層と第2有機層の両方に変えた点を変更して、その他はデバイスIと同様に製膜して、デバイスIIIを作製した。
【0103】
各デバイスの発光効率を製造例1と同様に評価した結果を図5に示す。
いずれのデバイスにおいても、15%を超える高い量子効率が得られた。特に、第1有機層のみに発光材料をドープしたデバイスIと第2有機層のみに発光材料をドープしたデバイスIIにおいて、一段と高い量子効率が得られた。
【0104】
(製造例3)
本製造例において、合成例で合成した化合物1〜16を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子を製造して、量子効率を測定した。
ガラス1上にインジウム・スズ酸化物(ITO)2をおよそ30〜100nmの厚さで製膜し、さらにその上にポリ(エチレンジオキシ)チオフェン(PEDOT)3を40nmの厚さで製膜した。次いで、FlrPicまたは[Cu(dnbp)(DPEPhos)]+のいずれか1つの発光材料を10重量%ドープしたPYD2(第1有機材料)を有機溶媒に溶解させてスピンコートすることにより、第1有機層4を30nmの厚さで製膜した。さらにその上に、表1に記載の第2有機材料を真空蒸着することにより第2有機層5を50nmの厚さで製膜した。次いで、フッ化リチウム(LiF)6を0.7nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)7を100nmの厚さに蒸着して、図1に示す層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子とした。製造例1と同じ方法により量子効率を測定した結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1の結果から明らかなように、本発明の化合物1〜16を用いて製造した有機エレクトロルミネッセンス素子は、いずれも高い発光効率を達成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の化合物は、電荷輸送材料として優れた特性を有する新規化合物である。このため、本発明の化合物を用いれば、種々の有機デバイスに応用することが可能である。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子などの表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリアの分野への応用が期待される。特に、本発明の化合物を遅延蛍光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率が高い。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0108】
1 ガラス
2 ITO
3 PEDOT
4 第1有機層
5 第2有機層
6 LiF
7 Al

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[一般式(1)において、R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表し、n1およびn2は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n3は0〜4のいずれかの整数を表し、Xは下記のいずれかの構造を有する連結基を表し、mはXの連結基の価数に等しく、2〜4のいずれかの整数を表す。
【化2】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(1)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。また、Xが>PO−である場合、一般式(1)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3',3”位で連結する。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化3】

[一般式(2)において、R11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X11は、下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化4】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
ただし、Xが−O−または−(R7)P(=O)−である場合、一般式(2)のトリフェニルホスフィンオキサイド構造の3,3'位で連結する。]
【請求項3】
下記一般式(2−1)で表される化合物。
【化5】

[一般式(2−1)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X21は、下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化6】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【請求項4】
下記一般式(2−2)で表される化合物。
【化7】

[一般式(2−2)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X22は下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化8】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【請求項5】
下記一般式(2−3)で表される化合物。
【化9】

[一般式(2−3)におけるR11、R12、R13、R21、R22およびR23は各々独立に置換基を表し、n11、n12、n21およびn22は各々独立に0〜5のいずれかの整数を表し、n13およびn23は各々独立に0〜4のいずれかの整数を表し、X23は下記のいずれかの構造を有する連結基を表す。
【化10】

上記連結基の構造において、R4は置換もしくは無置換の脂肪族環状連結基を表す。R5およびR6は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R7、R8およびR9は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R8およびR9の少なくとも一方は、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。]
【請求項6】
前記連結基が下記の構造を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化11】

【請求項7】
前記連結基が下記のいずれかの構造を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化12】

【請求項8】
前記連結基が下記の構造を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化13】

【請求項9】
77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位が2.80eV以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
77°Kにおける最低励起三重項エネルギー準位が2.95eV以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物からなる電荷輸送材料。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を用いた有機デバイス。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6788(P2013−6788A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140047(P2011−140047)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】