説明

新規化合物ラマリン及びその用途

本発明はラマリナ・テレブラタ(Ramalina terebrata)から分離した抗酸化活性に優れた新規化合物に関する。南極地衣類であるラマリナ・テレブラタ(Ramalina terebrata)から分離した抗酸化活性に優れた新規化合物であるラマリン、前記ラマリンの製造方法、前記ラマリンを有効性分として含有する医薬組成物、機能性食品及び機能性化粧料組成物に関する。本発明に係るラマリンは、市販される既存の抗酸化剤よりはるかに優れた抗酸化効果を示し、酸化関連疾患治療剤や、老化防止用機能性食品、美白及びシワ改善用機能性化粧品等に広く活用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマリナ・テレブラタ(Ramalina terebrata)から分離した抗酸化活性に優れた新規化合物に関し、より詳しくは南極地衣類であるラマリナ・テレブラタから分離した抗酸化活性に優れた新規化合物であるラマリン、前記ラマリンの製造方法、前記ラマリンを有効性分として含有する医薬組成物、機能性食品及び機能性化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物は正常な代謝過程と外部資源から活性酸素種(reactive oxgen species、以下、ROSという)と活性窒素種(reactive nitrogen species)を蓄積する。スーパーオキサイド陰イオン(O)、水酸ラジカル(OH)、過酸化水素(H)及び次亜塩素酸(hypocholorous acid,HOCl)のようなROSは、炎症、心血管疾患、癌、老化関連疾患、代謝疾患及びアテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)と関連がある(Ames, B.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:7915, 1993)。ROSは、不飽和脂肪酸を攻撃して、細胞膜の脂質過酸化を起こし、膜の流動性を減少させ、酵素レセプターの活性を減少させ、細胞膜蛋白質に損傷を与えて、その結果、細胞の不活性化を招く(Dean, R.T. and Davies, M.J., Trends. Biochem., Sci., 18:437, 1993)。
【0003】
生物は、ROSの有毒性に対抗する自然な防御機構を有しているが、それにも拘らず、細胞の一生の間ROSの蓄積が増加すると非可逆的な酸化損傷が起こる(Tseng, T.H. et al., Food Chem. Toxicol., 35:1159, 1997)。従って、自由ラジカル中間体を除去して酸化過程を遅らせたり、抑制する抗酸化剤が求められている。いくつかの強力な合成抗酸化剤が既に開発されたが(Shimizu, K. et al., Lipids, 36:1321, 2001)、これらは非常に強力な発癌物質であることが確認された(Wichi, H.P. et al., Food Chem. Toxicol. 26:717-72, 1988)。そのため、健康用サプリメントとして使うために天然資源から抗酸化剤を分離する必要性が生じた。フェノール化合物、窒素化合物及びカルテノイド(Velioglu, Y.S. et al., J. Agric. Food Chem., 46:113, 1998)を含んだ幅広い天産物質が抗酸化能を有している。
【0004】
地衣類は、花をつけない植物(non-flowering plants)と似ており、かび(mycobiant)及び藻類(alga, photobiant)及び/またはシアノバクテリアの共生連合(symbiotic association)である。地衣類において、かびは葉状体または典型的な二次代謝産物を含有している苔化された基質を形成する(Ahmadjin, V. The lichen symbiosis. Wiley, New York, pp. 1-6, 1993)。地衣類は十分量の天然サンプルを収集し難く、大量栽培技術が知られていないため、高等植物よりは研究が十分には行われていなかった。地衣類の組織培養法、大量生産方法及び生化学的分析方法等の改善に伴い、これに対する研究が活発に行われている(Behera, B.C. et al., Lebensm. Wiss. Technol., 39:805, 2006)。細胞毒性、殺真菌、抗微生物、抗酸化及び抗炎症性等の生物学的活性を有する脂肪酸、デプシド(depside)及びデプシドン(depsidones)、ジベンゾフラン(debenzofurans)、ジテルペン(diterpenes)、アントラキノン(anthraquinones)、ナフトキノン(naphtoquinones)、ウスニック酸(usninic acid)、プルビン酸(pulvinic acids)、キサントン(xanthones)及びエピジチオピペラジンジオン(epidithiopiperazinediones)を含む化合物が地衣類から分離された(Muller, K., Appl. Microbiol. Biotechnol., 56:9-16, 2001)。抗酸化活性を有すると知られている多くの地衣類が、熱帯及び亜熱帯起源の種である。極地方の地衣類に対する抗酸化活性に対する研究は非常に少ないのが現状である(Bhattarai, H.D. et al., J. Nat. Med., 62:481, 2008)。
【0005】
そこで、本発明者等は多様な抗酸化活性を有する南極地衣類から抗酸化活性を有する新規化合物を分離しようと鋭意努力した結果、多様な抗酸化活性を有する南極地衣類であるラマリナ・テレブラタから抗酸化活性の非常に優れた新規抗酸化化合物であるラマリンを分離して本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ラマリナ・テレブラタ由来新規化合物であるラマリン及びその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記ラマリンを有効性分として含有する抗酸化用組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記ラマリンを有効性分として含有する機能性食品及び機能性化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、一観点において、本発明は化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を提供する。
【化1】

【0010】
本発明は、また、(a)ラマリナ・テレブラタの乾燥サンプルを水、C〜Cの低級アルコールまたはこれらの混合溶媒から選択された極性溶媒を利用して、粗抽出する段階:(b)前記粗抽出液からヘキサン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素及びペンタンからなる群から選択される非極性溶媒に抽出される分画を除去する段階:及び(c)前記非極性溶媒抽出分画が除去された抽出物を液体クロマトグラフィーに適用して、抗酸化活性を示す分画を取得する段階を含む化学式1の構造を有するラマリンの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する抗酸化用組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、有効成分として、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)または薬学的に許容可能なその塩を、薬学的に許容される担体または賦形剤とともに含有する酸化関連疾患の予防及び治療用医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する機能性食品及び機能性化粧料組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るラマリンの高分離能ESI−MSスペクトルを示した図である。
【図2】本発明に係るラマリンのH NMRスペクトルを示した図である。
【図3】本発明に係るラマリンの13C NMRスペクトルを示した図である。
【図4】本発明に係るラマリンのDPPH自由ラジカル除去能を分析した結果を示した図である。
【図5】本発明に係るラマリンのABTS自由ラジカル除去能を分析した結果を示した図である。
【図6】本発明に係るラマリンのFe+3に対する還元能を分析した結果を示した図である。
【図7】本発明に係るラマリンの過酸化物除去能を分析した結果を示した図である。
【図8】本発明に係るラマリンのチロシナーゼ阻害活性を分析した結果を示した図である。
【図9】LPSまたはPMAで活性化したRaw264.7細胞にてラマリンのH生成阻害能を確認した結果を示した図である。
【図10】LPSで活性化したRaw264.7細胞にてラマリンのNO生成阻害能を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)に関する。
【化2】

【0016】
本発明のラマリンは、南極地衣類であるラマリナ・テレブラタから分離した抗酸化活性を有する新規化合物であり、前記ラマリンは高分解能ES−MSとH NMR及び13C NMRスペクトルを利用して確認した結果、分子量254.1141、分子式C1116の化合物で化学式1の構造を有すると確認し、ラマリナ・テレブラタから分離した化合物であるため、「ラマリン」と命名した。
【0017】
他の観点において、本発明は、また、(a)ラマリナ・テレブラタの乾燥サンプルを水、C〜Cの低級アルコールまたはこれらの混合溶媒から選択された極性溶媒を利用して、粗抽出する段階:(b)前記粗抽出液からヘキサン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素及びペンタンからなる群から選択される非極性溶媒に抽出される分画を除去する段階:及び(c)前記非極性溶媒抽出分画が除去された抽出物を液体クロマトグラフィーに適用して、抗酸化活性を示す分画を取得する段階を含む化学式1の構造を有するラマリンの製造方法に関する。
【0018】
本発明の一様態において、ラマリンはメタノール:水(70:30v/v)混合溶液を利用して冷抽出と熱抽出を行い、粗抽出物を得て、前記得られた粗抽出物をヘキサン(hexane)で抽出して、極性が低い色素を除去して、残った液状をクロロホルムで抽出して、極性が低いか中間の化合物を除去した。残った水溶性抽出物は、メタノール(in water)溶液でグラジエント溶媒システムで分画した結果、0%メタノールで多くのDPPH自由ラジカルに対する活性(IC50=8μg/mL)が示され、前記活性分画を、C18ODSカラムを使った分取(semi preparative)逆相HPLCに互いに異なる溶媒で2回適用させて取得した。
【0019】
さらに他の観点において、本発明は、また、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する抗酸化用組成物に関する。
【0020】
本発明では、ラマリンの抗酸化活性を分析するために、DPPH自由ラジカル除去能、ABTS除去能、Fe+3イオンに対する還元能、スーパーオキシドラジカル除去能及びチロシナーゼ活性阻害能を確認した。前記分析結果を表1にまとめた。表1に示したように、DPPH自由ラジカル除去において、ラマリンは市販される抗酸化剤であるBHA(Butylated hydroxyanisole)より約5倍優れた活性を示し、ABTS自由ラジカル除去においてはビタミンE類似体であるトロロクス(Trolox)より約27倍優れた効果を見せ、Fe+3をFe+2イオンで還元させる能力は市販される抗酸化剤であるBHT(butylated hydroxytoluene)より約25倍優れている。スーパーオキシドラジカル除去においても、ラマリンはアスコルビン酸より1.2倍優れた効果を見せた。
【0021】
また、ラマリンは皮膚細胞に美白効果を示すチロシナーゼ酵素活性阻害能においても、市販コウジ酸(Kojic acid)より1.25倍高い活性を示した。
【0022】
【表1】

【0023】
また、ラマリンはマクロファージにおけるH及びNO生成を抑制する効果を示した。
本発明の一実施例において、ラットのマクロファージ細胞にラマリンを処理した結果、ラマリンを処理した細胞でH及びNO生成が確実に阻害されることを確認された(図9及び図10)。
【0024】
さらに他の観点において、本発明は、有効成分として、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)または薬学的に許容可能なその塩を、薬学的に許容される担体または賦形剤とともに含有する酸化関連疾患の予防及び治療用医薬組成物に関する。
【0025】
本発明において、前記酸化関連疾患は、癌、老化、冠状動脈硬化、糖尿病、てんかん、神経退行性疾患を意味する。
【0026】
本発明に係る医薬組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口及び非経口投与が望ましい。本明細書に用いられた用語「非経口」とは、皮下、血内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜、病巣内及び頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の医薬組成物は、また直腸投与のための座薬の形態で投与される。
【0027】
本発明の医薬組成物はこれらに限定されるのではないが、カプセル、精製及び水性懸濁液及び溶液を含んで経口的に許容されるいかなる容量型でも経口投与される。経口用精製の場合、よく使われる担体としてはラクトース及びとうもろこし澱粉が含まれる。さらに、マグネシウムステアレートのような潤滑剤が典型的に添加される。カプセル型として経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥されたとうもろこし澱粉が含まれる。水性懸濁液が経口投与される際に活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と配合される。必要に応じて、甘味剤及び/または風味剤及び/または着色剤が添加される。
【0028】
本発明の医薬組成物の投与量レベルは、用いられた特定化合物の活性、年令、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬品配合、及び予防または治療される特定疾患の重症度を含んだ多くの要因によって多様に変わる。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラーリ、懸濁剤に剤形できる。
【0029】
さらに他の観点において、本発明は、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する機能性食品に関する。
【0030】
本発明の機能性食品は、酸化予防のための薬剤、食品及び飲料等に多様に利用される。本発明の機能性食品としては、例えば、各種食品類、キャンディ、チョコレート、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などが挙げられ、粉末、顆粒、錠剤、カプセルまたは飲料の形態で使える。
【0031】
本発明の前記抽出物は、糖尿及び肥満予防を目的に食品または飲料に添加される。この時、食品または飲料中の前記抽出物の量は、一般的に本発明の健康機能食品組成物は全体食品重量の0.01乃至50重量%、望ましくは0.1乃至20重量%に加えられ、健康飲料組成物は、100mLを基準に0.02乃至10g、望ましくは0.3乃至1gの割合で加えられる。
【0032】
本発明の健康飲料組成物は、指示された割合で必須成分として前記抽出物を含有する他には液体成分には特別な制限はなく、通常の飲料と共に種々の香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有してもよい。前記天然炭水化物としては、モノサッカライド、例えば、葡萄糖、及び果糖等、ジサッカライド、例えば、マルトース、及びスクロース等、ポリサッカライド、例えば、デキストロン、シクロデキストリン等のような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、及びエリスリトール等の糖アルコールである。前記以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、クルチルリチン)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を有利に使用できる。前記天然炭水化物の比は、本発明の組成物100mL当り一般に約1乃至20g、望ましくは約5乃至12gである。
【0033】
前記の他に本発明の組成物は種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤等の風味剤、着色剤及び充填鎮剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸(pectic acid)及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤等を含有してもよい。その他に本発明の組成物は、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、独立的にまたは組合せて用いてもよい。このような添加剤の比は、さほど重要ではないが本発明の組成物100重量部当り0乃至約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0034】
さらに他の観点において、本発明は、化学式1の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する機能性化粧料組成物に関する。
本発明の化粧料組成物は、一般的な乳化剤形及び可溶化剤形の形態で製造することができる。乳化剤形の化粧品としては、栄養化粧水、クリーム、エッセンス等があって、可溶化剤形の化粧品としては柔軟化粧水がある。
【0035】
本発明に適合する化粧品の剤形としては、例えば、溶液、ゲル、固体またはペーストの無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球、またはイオン型(リポソーム)、非イオン型の小嚢分散剤の形態、クリーム、スキンローション、パウダー、軟膏、スプレーまたはコンシールスティックの形態で提供される。また、泡沫(foam)の形態または圧縮された推進剤をさらに含有したエアゾールの形態にも製造される。
【0036】
本発明の化粧料組成物は、さらに脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または油性と調和活性剤、脂質小嚢または化粧品に通常用いられる任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野において通常用いられる補助剤を含有してもよい。そして、前記成分等は、皮膚科学分野において、一般に用いられる量で導入される。
【0037】
本発明の機能性化粧料組成物は、抗酸化能に優れ、保存安全性を有し、美白、シワ改善効果が優れているため、皮膚老化を防止するための機能性化粧品として有効に使用される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって、本発明をより一層詳細に説明する。この実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界の通常の知識を有する者には自明である。
[実施例1]クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)菌株によるグリセロールから3−ヒドロキシプロピオン酸の生産
[実施例1]ラマリナ・テレブラタの大量抽出
ラマリナ・テレブラタは、南極大陸キングジョージ島に群落を成し自生する地衣類であり、キングジョージ島で容易に採取することができる。
完全に凍結乾燥され、粉砕された地衣類ラマリナ・テレブラタサンプル672gをメタノール:水(70:30v/v)混合溶液を利用して室温で冷抽出した後、45〜50℃の水槽で熱抽出した。前記抽出物をろ過した後、溶媒を45℃の真空状態で蒸発させた。前記抽出過程を3回繰り返して、抽出可能な全ての化合物を抽出して、凍結乾燥を経て、最終的に83gの粗抽出物が得られ、前記粗抽出物は使用時まで−20℃に保管した。
【0039】
[実施例2]ラマリン(ramalin)の精製及び構造分析
実施例1で取得した粗抽出物を1Lの蒸溜水に溶かした後、1Lのヘキサンで3回抽出して、極性が低い色素を除去した。残った液相を1Lのクロロホルムで3回抽出して、極性が低いか極性が中間の化合物を除去した。残った水溶性抽出物は、DPPH自由ラジカルに対しIC50=9μg/mLの高い除去活性を示し、C18ODSカラム(150cm×3cm)を用いて、自動MPLC(mild pressure liquid chromatography)に適用させた。0%、20%、40%、60%、80%及び100%のメタノール(in water)溶液でグラジエント溶媒システムで行った結果、0%メタノールで多くのDPPH自由ラジカルに対する活性(IC50=8μg/mL)が示され、前記活性分画を、C18ODSカラム(250cm×10cm)を使った分取逆相HPLCに流速2mL/minで分取した。用いられた溶媒システムを表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
その結果、18.88分の5番目のピークで多くのDPPH自由ラジカルに対する活性(IC50=1μg/mL)が示され、前記活性分画を2回目に、C18ODSカラム(250cm×10cm)を用いた分取逆相HPLCに流速2mL/minで分取した。用いられた溶媒システムを表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
その結果、8.26分に取得した2回目の分画でDPPH自由ラジカルに対する活性がIC50=0.99μg/mLのラマリンが得られ、前記分画を構造分析に使用した。
【0044】
[実施例3]ラマリンの構造分析
高分解能ES−MSの陽性モードと陰性モードを共に使って、化合物のフラグメンテーションパターン検出し、DO+Acetone dH NMRと13C NMR(400MHz)を行って、化合物の最終構造を確認した。
【0045】
その結果、図1に示したように、高分解能ES−MSの陽性モードで化合物の分子量が254.1141であり、炭素11個、水素16個、窒素3個及び酸素4個を有する、分子式C1116の化合物で表わされ、前記データはH NMRと13C NMRスペクトルを介して再確認され、構造は次のとおりとなった(図2及び図3)。
【化3】

【0046】
[実施例4]ラマリンの抗酸化活性測定
(1)DPPH自由ラジカル除去能
ラマリンのDPPH自由ラジカル除去能はBloisの方法(Blois, M.S., Nature, 26:1199, 1958)を変形した方法を使った。まず、1.1−diphenyl−2−picryl−hydazil 0.1mmol(in methanol)溶液を製造し、DPPH溶液250μLをいくつかの濃度(0〜10μg/mL)のラマリン(in methanol)溶液750μLと混合した。前記混合溶液を室温で30分間反応させ、DPPH自由ラジカルの含有量を測定するために、UV−Visibleスペクトロフォトメーター(SCINCO-AMERICA)を利用して、517nmで吸光度を測定した。陽性対照群としていくつかの濃度のBHAを使用し、反応混合物がない試験サンプルを陰性対照群として用いた。反応混合物の吸光度が減少するほど、抽出物が高い自由ラジカル除去活性を有する。全ての実験は3回繰り返し行った。
【0047】
その結果、図4に示したように、ラマリンのDPPH自由ラジカル除去能は、濃度依存的であり、ラマリンのIC50値は0.99±0.08μg/mLであり、BHAのIC50値は4.97±0.9μg/mLであった。前記結果はDPPH自由ラジカル除去能において、ラマリンが陽性対照群であるBHAより約5倍優れていることを示す。
【0048】
(2)ABTS除去能
ABTS除去能は、市販されている水溶性ビタミンE類似体のトロロクス(6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxilic acid)と比較して測定した(Rice-Evans, C. and Miller, N.J., Meth. Enzymol., 234:279, 1994)。0〜40μg/mL濃度のラマリンを抗酸化分析キット(Product code CS0790, Sigma, USA)プロトコルに記載された280μLの反応混合物を含有する自由ラジカル(陽イオン)生成システムに適用した。反応混合物の緑色発色量を、スペクトロフォトメーターを利用して405nmで測定した。実験は3回繰り返し行い、反応混合物がない試験サンプルを陰性対照群として使った。
【0049】
その結果、図5に示したように、ラマリンのABTS除去能は濃度依存的であり、ラマリンのIC50値は1.7±0.2μg/mLであり、トロロクスのIC50値は46.35±5.1μg/mLであった。前記結果は、ABTS除去能において、ラマリンが陽性対照群のBHAより約27倍優れていることを示す。
【0050】
(3)還元能分析
ラマリンの還元能は、Oyzaizuの方法を少し変形して測定した(Oyaizu, M., Jpn. J. Nutr., 44:307-315, 1986)。0〜20μg/mLのラマリン溶液100μLを燐酸バッファー(0.2mol/L,pH6.6)250μL及びフェリシアン化カリウム(potassium ferricyanid)(10g/L)250μLと混合した。前記反応混合液を50℃で20分間反応させた後、150μLのトリクロロ核酸(trichloroacetic acid)(100g/L)を添加した。その後、FeCl(1g/L)750μLを反応混合液添加した後、700nmで吸光度を測定した。BHTを陽性対照群として用いて、反応混合液がない試験サンプルを陰性対照群として使い、実験を3回繰り返し行った。
【0051】
その結果、図6に示したように、ラマリンは濃度依存的にFe+3をFe+2で還元させ、1μgのBATが0.04μgのラマリンと同じ還元能を示した。これはラマリンが市販抗酸化剤より高い還元力を有することを示す。
【0052】
(4)スーパーオキシド陰イオン(super oxide anion)除去能
ラマリンのスーパーオキシド陰イオン(super oxide anion)除去能は、Beauchamp and Fridovichの方法に従っていくつかの濃度のBHAと比較して測定した(Beauchamp, C. and Fridovich, I., Anal. Biochem., 44:276, 1971)。
【0053】
50mM燐酸バッファー(pH7.6)、20μgリボフラビン、12mM EDTA、0.1mg NBT及び0〜20μgのラマリンを添加して、反応混合液を製造した。前記反応混合液を3分間光に照射した後、毛布を覆って暗くした。590nmで減少した吸光度を測定して、増加した過酸化物除去能を確認した。反応混合液がない試験サンプルを陰性対照群として使い、実験を3回繰り返し行った。
【0054】
その結果、図7に示したように、ラマリンは濃度依存的パターンで青いformazen形成を阻害し、ラマリンのIC50値は10.2±1.2μg/mLであり、市販抗酸化剤のアスコルビン酸のIC50値は12.7±1.2μg/mLであった。これはラマリンのスーパーオキシド陰イオン除去能が市販される対照群より優れていることを示す。
【0055】
(5)チロシナーゼ(tyrosinase)阻害能分析
ラマリンのチロシナーゼ阻害能は、Higuchiの方法を少し変形して測定した(Higuchi, M. et al., Planta Med., 59:253, 1993)。0.1M燐酸バッファー(pH6.8)333μL、0.5mM L−DOPA溶液165μL、蒸留水333μL及び0〜10μgのラマリンで構成された反応混合液にマッシュルームチロシナーゼ(440U/mL)67μLを添加した。前記反応混合液を室温で5分間反応させた後、アジ化ナトリウム(sodium azide,1M)33μLを添加して反応を終了させて、471nmで吸光度を測定した。陽性対照群としてはコウジ酸を使い、反応混合液がない試験サンプルを陰性対照群として使い、実験を3回繰り返し行った。
【0056】
その結果、図8に示したように、ラマリンのマッシュルームチロシナーゼ阻害は、濃度依存的パターンを示し、ラマリンのIC50値は4±0.4μg/mLであり、陽性対照群のコウジ酸のIC50値は5±0.5μg/mLであった。これはラマリンのチロシナーゼ阻害能が市販される対照群より優れていることを示す。
【0057】
[実施例5]マクロファージにおける酸化ストレス抑制能確認
過度な酸化ストレスは、マクロファージの異常機能を誘導して、細胞調節障害をもたらすため、ラマリンがマウスマクロファージで抗酸化能を示すのかを確認した。
【0058】
Raw264.7細胞(Korean Cell Line Bank, Seoul, South Korea)を10%FBS、2mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンが添加されたDMEM(Gibco-BRL, USA)培地で37℃、5%COインキュベーターで培養した。Raw264.7細胞を刺激するために、細胞を1×10細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに分株し、一晩培養させた後、E.coli LPS(serotype O111:B4, Sigma, USA)またはPMA(Phorbol myristate acetate, Sigma, USA)の存在下または非存在下でラマリンまたは10μMデキサメタゾンを含有するDMEMで培地を交換して、さらに24時間培養させた。前記培養培地を過酸化水素(H)アッセイ及びNO(nitiric oxide)アッセイに使った。
【0059】
(1)過酸化水素(H)アッセイ
の細胞内生産量をDHRを利用した方法(Roesler, C. et al., Int. J. Immunopharmacol, 13:27-37, 1991)で測定した。
【0060】
ROSが細胞内で生産される間、非蛍光DHRがHによって酸化され、非可逆的に緑色蛍光化合物であるローダミン123(rhodamine 123,R123)に転換される。R123は、膜非透過性化合物として細胞内に蓄積される。
【0061】
10μMのDHRを前記LPSまたはPMAを含有した培地に培養されたRaw264.7細胞を含有する各々の96ウェルに添加して、37℃で30分間反応させた。前記培地をラマリン(0.125μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL及び1μg/mL)またはPBSを含有するDMEMに入れ替えて、37℃で3時間反応させた後、488nmの吸光度で各ウェルのR123の濃度を測定した。
【0062】
その結果、図9に示したように、ラマリンはHの分泌を濃度依存的な方式で阻害することを確認することができた。
【0063】
(2)NOアッセイ
前記LPSまたはPMAの存在または非存在下でラマリン(0.5μg/mL、1μg/mL及び2μg/mL)または10μMデキサメタゾンを含有するDMEMで培地を入れ替えて、さらに24時間培養させた。
【0064】
亜硝酸塩(nitrite)の生産量を前記培養培地で測定した。100μLの培養培地と同量のGriess試薬(2.5% phosphoric acidに1% sulfanilamide及び0.1% N-1-naphylenediamine dihydrochlorideを含有した試薬)を添加して、室温で10分間反応させた。亜硝酸塩の濃度は、540nmでODを測定して確認し、各実験は3回繰り返した。
【0065】
その結果、図10に示したように、LPSで活性化したRaw264.7細胞でラマリンを添加した場合、NO(nitric oxide)の分泌が明確に減ったことを確認することができた。
【0066】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記術は単に望ましい実施様態であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求範囲及びその等価物によって定義される。
【産業上利用の可能性】
【0067】
本発明に係るラマリンは、市販される既存の抗酸化剤よりはるかに優れた抗酸化効果を示し、酸化関連疾患治療剤や、老化防止用機能性食品、美白及びシワ改善用機能性化粧品等に広く活用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式1:
【化1】

の構造を有する化合物(ラマリン)。
【請求項2】
南極地衣類であるラマリナ・テレブラタ(Ramalina terebrata)から分離された請求項1に記載の化合物(ラマリン)。
【請求項3】
以下の段階を含む、化学式1:
【化2】

の構造を有する化合物(ラマリン)の製造方法:
(a)ラマリナ・テレブラタの乾燥サンプルを水、C〜Cの低級アルコールまたはこれらの混合溶媒から選択された極性溶媒を利用して、粗抽出する段階:
(b)前記粗抽出液からヘキサン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素及びペンタンからなる群から選択される非極性溶媒に抽出される分画を除去する段階:及び
(c)前記非極性溶媒抽出分画が除去された抽出物を液体クロマトグラフィーに適用して、抗酸化活性を示す分画を取得する段階。
【請求項4】
化学式1:
【化3】

の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する抗酸化用組成物。
【請求項5】
有効性分として、化学式1:
【化4】

の構造を有する化合物(ラマリン)または薬学的に許容可能なそれの塩を、薬学的に許容される担体または賦形剤とともに含有する酸化関連疾患の予防及び治療用医薬組成物。
【請求項6】
酸化関連疾患は癌、老化、冠状動脈硬化、糖尿病、てんかん、神経退行性疾患である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
化学式1:
【化5】

の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する機能性食品。
【請求項8】
化学式1:
【化6】

の構造を有する化合物(ラマリン)を有効性分として含有する機能性化粧品組成物。
【請求項9】
前記機能性化粧品組成物は美白またはシワ改善用である請求項8に記載の機能性化粧品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−508229(P2012−508229A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535518(P2011−535518)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006562
【国際公開番号】WO2010/053327
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511113350)コリア オーシャン リサーチ アンド ディベロップメント インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】