説明

新規化合物及びその製造方法

【課題】保存安定性がよく、ハロゲン化物イオンを含まない1級アミン構造を有する(メ
タ)アクリルアミド化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。



一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物及びその製造方法に関する。より詳しくは、1級アミン構造を有する(メタ)アクリルアミドの塩で、ラジカル重合性を有する新規化合物及びその製造方法に関する。本発明の化合物及びその重合物は、高分子界面活性剤・シャンプー組成物・親水性部材・コーティング材料などの多様な分野に利用される。
【背景技術】
【0002】
一級アミン構造を有するラジカル重合性単量体、及びその重合物は、生物医学(薬物、遺伝子キャリア)、高分子界面活性剤、シャンプー組成物、親水性部材、コーティング材料などに利用されているが、合成難度が高く、また、保存安定性も悪いことから、あまり十分には利用が進んでいない。
【0003】
特許文献1には、N−アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N−(2−アミノエチル)アクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドなど、及びその製造法が記載されている。しかしながら、ここで得られた(メタ)アクリルアミドは、経時で着色したり、熱重合が進行したり、保存安定性の悪さが問題であった。
特許文献2には、アミノアルキルアクリル酸エステルリン酸塩について記載がある。しかしながら、アミノアルキルアクリル酸エステルのリン酸塩は、経時においてヒドロキシアルキルアクリルアミドに変化してしまうという保存安定性の問題があった。
非特許文献1には、1級アミン構造を有するメタクリルアミド塩酸塩、例えば、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミドの塩酸塩について報告があるが、塩酸塩のようにハロゲン化物イオンを含むと、金属を腐食させる問題を有していた。また、水溶液にした場合、酸性が強く、保存時に熱重合が進行する問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−68456号公報
【特許文献2】特開昭50−89407号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 46, 4984-4996 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、保存安定性がよく、ハロゲン化物イオンを含まない1級アミン塩構造を有する(メタ)アクリルアミド化合物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
1.下記一般式(1)で表される化合物。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。
【0011】
2.前記一般式(1)中、xが1又は2であることを特徴とする前記1記載の化合物。
3.前記一般式(1)中、Lが−O−、二価の脂肪族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる炭素数2〜100の二価の連結基であることを特徴とする前記1又は2に記載の化合物。
4.前記一般式(1)中、Lがエチレン基であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
5.前記一般式(1)中、Lが一般式(A)で表される二価の連結基であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、L、Lはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表し、nは0〜45の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
6.一般式(2)で表されるジアミン化合物にメタクリル酸無水物又はアクリル酸無水物を、pKa2.0以上の有機酸がジアミン化合物1モルに対して0.5〜5.0モルの割合で存在する条件下で反応させ、反応後に燐酸を添加し、有機溶剤で抽出精製を行うことを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。
一般式(2)中、Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保存安定性がよく、ハロゲン化物イオンを含まない1級アミン構造を有する(メタ)アクリルアミド化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるラジカル重合性単量体である。
【0019】
【化5】

【0020】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。
【0021】
Lで表される二価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、更に分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基、オキシアルキレン基及びポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでもアルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、オキシアルキレン基及びポリオキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基及びポリオキシアルキレン基が更に好ましい。オキシアルキレン基及びポリオキシアルキレン基としては、一般式(A)で表される構造であることが好ましい。
Lの炭素原子数は、2乃至100であることが好ましく、2乃至30であることがより好ましく、2乃至20であることが更に好ましく、2乃至10であることが最も好ましい。
【0022】
二価の脂肪族基が有してもよい置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基及びアシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
Lで表される二価の芳香族基は、置換基を有してもよいアリーレン基を意味する。具体的には、置換又は無置換の、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基などが挙げられる。なかでもフェニレン基が好ましい。
二価の芳香族基が有してもよい置換基の例としては、上記二価の脂肪族基が有してもよい置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
【0024】
Lは、−O−、二価の脂肪族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましく、Lで表される二価の連結基としては、炭素原子数1〜8のアルキレン基または一般式(A)で表される連結基が好ましい。
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、L、Lはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表し、nは0〜45の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【0027】
Lで表される二価の連結基としての、炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、原料入手性の観点から、炭素原子数1〜6のアルキレン基が好ましく、更に炭素原子数2〜4の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素原子数2の直鎖アルキレン基すなわちエチレン基が最も好ましい。
【0028】
一般式(A)で表される連結基としては、原料入手性の観点から、LおよびLは同一であることが好ましく、炭素数2〜3の直鎖アルキレン基であることが特に好ましい。R、Rは、少なくともどちらか一方が水素原子であることが好ましく、いずれも水素原子であることがより好ましい。nは1〜10であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
【0029】
本発明の一般式(1)で表されるラジカル重合性単量体は、文献既知の手法でも合成することはできるが、大量製造の観点から次のルートで合成する方法が好ましい。
【0030】
【化7】

【0031】
すなわち、一般式(2)で表されるジアミン化合物に対して、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸無水物を好ましくは水若しくは水と有機溶剤との混合溶剤中で反応させた後に、燐酸、及び任意に水を添加し、一般式(1)で表される化合物を含む水溶液に対して有機溶剤を用いて抽出精製を行い、不純物を有機層側に取り除き、一般式(1)で表される化合物を得る方法である。
【0032】
上記一般式(2)と一般式(3)において、Lは一般式(1)のLと同義であり、Rは一般式(1)のRと同義である。
【0033】
この方法では、通常反応に不活性な有機溶剤なら、任意に使用することができる。溶剤として例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0034】
抽出精製に用いる有機溶剤(抽出溶剤)としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−イソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、などのエステル類、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、3−メチル−1−ブタノール又はベンジルアルコールなどのアルコール類を用いることができる。これらは1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。回収率、二液層の分離性を重視する場合は、酢酸エチル、メチル−tert−ブチルエーテル、又はヘキサンを用いることが好ましい。
【0035】
抽出溶剤の使用量は特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物を含む水溶液量に対して0.05質量倍以上、20質量倍以下の範囲であることが好ましい。
【0036】
抽出精製の回数は、1回だけでもよいし、2回以上行ってもよい。
【0037】
上記反応は、任意の温度で行うことができるが、収率の観点から、−10〜50℃の間で行うことが好ましく、−10〜30℃がより好ましく、−10〜10℃であることが最も好ましい。
【0038】
更に、上記反応では、収率向上の観点から、有機溶剤溶解性が高く、かつ燐酸の第一解離よりも弱酸である有機酸、すなわちpKaが2.0以上の有機酸を加えて反応を行うことが好ましい。有機酸を加えることにより、反応選択性が向上し、収率が向上する。また、有機酸であることにより有機溶剤溶解性が高く、燐酸よりも弱酸であるため、抽出精製時に有機層側に取り除くことができ、容易に精製することができる。
【0039】
このようなpKaの有機酸としては、カルボン酸類が好ましい。
カルボン酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタクリル酸、酪酸などの炭素原子数1〜7の脂肪族カルボン酸; 安息香酸、4−メチル安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−フルオロル安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−t−ブトキシカルボニルアミノ安息香酸、4−シアノ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、ナフチルカルボン酸のような、置換基として炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基又はイソブトキシ基、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、更に好ましくはメトキシ基である。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。)を有してもよい炭素原子数6〜10のアリールカルボン酸; 及びオキサゾリジン−4−カルボン酸,チアゾリジン−4−カルボン酸、2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸、ニコチン酸、キノリンカルボン酸のような、窒素、酸素及び硫黄原子から成る群から選択されるヘテロ原子を1乃至3個有し、フェニル環と縮環してもよい5乃至6員の複素環カルボン酸が挙げられる。
これらの中でも、有機溶剤溶解性の観点から、安息香酸、4−メチル安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−フルオロル安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−t−ブトキシカルボニルアミノ安息香酸、4−シアノ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、ナフチルカルボン酸のような、置換基として炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基又はイソブトキシ基、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、更に好ましくはメトキシ基である。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又は沃素原子、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。)を有してもよい炭素原子数6〜10のアリールカルボン酸が好ましく、原料入手性の観点から、安息香酸が最も好ましい。
【0040】
上記有機酸は、一般式(2)で表されるジアミン化合物1モルに対して、0.01〜10.0モルの割合で用いることが好ましく、0.5〜5.0モルの割合で用いることがより好ましく、1.5〜3.0モルの割合で用いることが最も好ましい。
上記範囲の有機酸を用いることで、ジアミン化合物とメタクリル酸無水物又はアクリル酸無水物との反応性が適度に低下し、反応選択性が向上し、収率が向上する。
【0041】
また、抽出精製時に加えるリン酸量により、一般式(1)中のxを調節することができる。すなわち、リン酸量を、一般式(1)中のアンモニウム塩当量に対して、1当量を加えるとx=1となり、2当量加えるとx=2となり、3当量加えるとx=3となる。
抽出精製時の精製の容易さから、リン酸量は、1又は2当量であることが好ましく、1当量が最も好ましい。そのため、一般式(1)中、x=1又は2が好ましく、1であることが最も好ましい。
【0042】
前記一般式(1)の化合物は、一般的なラジカル重合法により、ラジカル重合物を合成することが可能である。一般的なラジカル重合法とは、例えば、新高分子実験学3(高分子学会編、共立出版、1996年3月28日発行)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版、1992年5月発行)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善、昭和55年11月20日発行)、物質工学講座高分子合成化学(東京電気大学出版局、1995年9月発行)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0043】
また、単一重合体であってもよいが、一般式(1)のラジカル重合性単量体ではない他の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。一般式(1)のラジカル重合性単量体と共重合させることができる単量体としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれる単量体が挙げられる。
【0044】
具体的には、アクリル酸エステル類としては、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましく、より具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)が挙げられる。
メタクリル酸エステル類としては、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましく、より具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)が挙げられる。
スチレン類としては、スチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲン含有スチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)が挙げられる。
その他の具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等も挙げられる。
【0045】
本発明の化合物を用いて得られる重合物は、その質量平均分子量は、取り扱い性の観点から、2,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜500,000であることが最も好ましい。
【0046】
一般式(1)で表される化合物の具体例を、以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【実施例】
【0050】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
[合成例1]
N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(M−1)の合成
2リットルの三口フラスコに、エチレンジアミン(和光純薬工業(株)製)27.0g、イオン交換水225g、メタノール225gを加え、内温5℃に冷却した。更に、安息香酸(和光純薬工業(株)製)114.3gを加え、内温5℃以下を維持したまま、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製)118.1gを1時間掛けて滴下した。滴下終了後、内温5℃以下を維持したまま3時間攪拌し、室温に戻し、85質量%燐酸水溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、反応液のpHを3.0に調節した。
上記反応液に酢酸エチル1064g及びイオン交換水327gを加え抽出精製を行い、水層を収集する。集めた水層を、酢酸エチル1リットルで2回、ヘキサン1リットルで1回洗浄し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシルを13.5mg加え、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(12.5質量%水溶液)366.0gを得た(収率45%)。
塩基滴定及びNMR測定から、化合物の同定を行った。
1H−NMR(400 MHz, D2O): δ 5.687(t, J = 0.8 Hz, 1H), 5.422 (t, J= 0.8 Hz,
1H), 3.493 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.099 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 1.852 (s, 3H).
【0052】
[合成例2]
N−(4−アミノブチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(M−3)の合成
2リットルの三口フラスコに、ブタンジアミン(東京化成工業(株)製)39.67g、イオン交換水225g、メタノール225gを加え、内温5℃に冷却した。更に、安息香酸(和光純薬工業(株)製)114.3gを加え、内温5℃以下を維持したまま、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製)118.1gを1時間掛けて滴下した。滴下終了後、内温5℃以下を維持したまま3時間攪拌し、室温に戻し、85質量%燐酸水溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、反応液のpHを3.0に調節した。
上記反応液に酢酸エチル1064g及びイオン交換水327gを加え抽出精製を行い、水層を収集する。集めた水層を、酢酸エチル1リットルで2回、ヘキサン1リットルで1回洗浄し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシルを13.5mg加え、N−(4−アミノブチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(13.3質量%水溶液)413.1gを得た(収率48%)。
塩基滴定及びNMR測定から、化合物の同定を行った。
1H−NMR(400 MHz, D2O): δ 5.58(s, 1H), 5.33 (s, 1H), 3.20 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.91 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 1.82 (s, 3H), 1.60-1.5 (m, 4H).
【0053】
[合成例3]
N−(2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(M−5)の合成
1リットルの三口フラスコに、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン(東京化成工業(株)製)38.9g、イオン交換水112g、メタノール112gを加え、内温5℃に冷却した。更に、安息香酸(和光純薬工業(株)製)59.4gを加え、内温5℃以下を維持したまま、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製)60.0gを1時間掛けて滴下した。滴下終了後、内温5℃以下を維持したまま3時間攪拌し、室温に戻し、85質量%燐酸水溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、反応液のpHを3.0に調節した。
上記反応液に酢酸エチル575g及びイオン交換水178gを加え抽出精製を行い、水層を収集する。集めた水層を、酢酸エチル1リットルで2回、ヘキサン1リットルで1回洗浄し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシルを6.7mg加え、N−(2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(15.0質量%水溶液)236.2gを得た(収率43%)。
塩基滴定及びNMR測定から、化合物の同定を行った。
1H−NMR(400 MHz, D2O): δ 5.69 (s, 1H), 5.32 (s, 1H), 3.7-3.5 (m, 8H), 3.25 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.19 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 1.80 (s, 3H).
【0054】
[合成例4]〜[合成例8]
上記合成例1の安息香酸の量を変更する以外は、合成例1と同じ方法で、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド=一リン酸塩(M−1)を合成した。
安息香酸量、及び収率を下記表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
[合成例9]
N−(3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)メタクリルアミド=一リン酸塩(M−8)の合成
1リットルの三口フラスコに、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成工業(株)製)44.1g、イオン交換水96.2g、メタノール96.2gを加え、内温5℃に冷却した。更に、安息香酸(和光純薬工業(株)製)gを加え、内温5℃以下を維持したまま、メタクリル酸無水物(アルドリッチ社製)61.7gを1時間掛けて滴下した。滴下終了後、内温5℃以下を維持したまま3時間攪拌し、室温に戻し、85質量%燐酸水溶液(和光純薬工業(株)製)を加え、反応液のpHを3.0に調節した。
上記反応液に酢酸エチル982g及びイオン交換水144gを加え抽出精製を行い、水層を収集する。集めた水層を、酢酸エチル0.4リットルで2回、メチルt−ブチルエーテル0.4リットルで1回洗浄し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシルを3.9mg加え、N−(3−(2−(2−(3−アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)メタクリルアミド=一リン酸塩(17.8質量%水溶液)156.7gを得た(収率36%)。
塩基滴定及びNMR測定から、化合物の同定を行った。
1H−NMR(400 MHz, D2O): δ 5.57 (s, 1H), 5.34 (s, 1H), 3.7-3.4 (m, 12H), 3.21 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 3.01 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 1.85 (m, 5H), 1.72 (m, 2H).
【0057】
上記(M−1)、(M−3)、(M−5)、(M−8)以外の実施例に用いた本発明の化合物(M−2)、(M−4)、(M−6)、(M−7)は、(M−1)、(M−3)、(M−5)、(M−8)のジアミン成分を変更すること、及び燐酸量を変えることにより、同様に合成した。
【0058】
【化11】

【0059】
[実施例1〜8及び比較例1〜5]
上記方法で合成した本発明の化合物の保存安定性、及びアルミ腐食性の評価を実施した。比較例には、下記の比較用化合物(R−1)〜(R−5)を使用した。
【0060】
【化12】

【0061】
(保存安定性評価)
サンプル瓶に、各化合物の10質量%水溶液を作製して、55℃のオーブンの中で1週間放置した。1週間後、ポリマー状粘調物の沈降の有無を目視で確認した。
結果を表2に示した。表2中、○は沈降なし、×は沈降ありを表す。
【0062】
(アルミ腐食性評価)
各化合物の10質量%水溶液にアルミ板を浸漬させて、3日間室温で放置後、アルミ板の腐食性を目視で確認した。
結果を表2に示した。表2中、○は腐食なし、×は腐食ありを表す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2の結果から明らかなように、本発明の化合物は、保存安定性に優れ、金属と接触をしても腐食を引き起こさず、有用性の高い化合物である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の化合物は、高分子界面活性剤・シャンプー組成物・親水性材料・コーティング材料、印刷版材料などの組成物、などに使用できる。更には、本発明の化合物は、高分子界面活性剤・シャンプー組成物・親水性材料・コーティング材料、印刷版材料などの組成物に使用できる高分子化合物の中間体として使用できる。特に、本発明の化合物、又は本発明の化合物を中間体として用いた高分子化合物は、金属腐食性がないことから、アルミ支持体を好ましく使用している材料、例えば、特開2009−262523号公報に記載のような平版印刷版原版に好ましく使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】


一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)中、xが1又は2であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)中、Lが−O−、二価の脂肪族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる炭素数2〜100の二価の連結基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)中、Lがエチレン基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Lが一般式(A)で表される二価の連結基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【化2】


(式中、L、Lはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を表し、nは0〜45の整数を表す。nが2以上の整数である場合、複数のR及び複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【請求項6】
下記一般式(2)で表されるジアミン化合物にメタクリル酸無水物又はアクリル酸無水物を、pKa2.0以上の有機酸がジアミン化合物1モルに対して0.5〜5.0モルの割合で存在する条件下で反応させ、反応後に燐酸を添加し、有機溶剤で抽出精製を行うことを特徴とする一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化3】


【化4】


一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。xは、1〜3の整数を表す。
一般式(2)中、Lは、−O−、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。

【公開番号】特開2012−144513(P2012−144513A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253229(P2011−253229)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】