説明

新規化合物IV

本発明は、式(I)の新規化合物、その化合物を含む医薬組成物、その製造方法、および、体重増加、2型糖尿病および脂質異常症に伴う状態に対する医薬品製造におけるレプチン受容体調節因子の模倣剤としての該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のモルホリン誘導体、この化合物を含む医薬組成物、その製造方法、および、体重増加、2型糖尿病および脂質異常症に伴う状態に対する医薬品製造におけるレプチン受容体調節因子の模倣剤としての上記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先進工業国における肥満の罹患率は増加しつつある。典型的には、最初に選択される治療は患者に食事および生活様式のアドバイスを与えることであり、例えば彼等の食事の脂肪含有量を減少させること、および、彼等の運動量を増加させることといったアドバイスを与える。しかしながら、何人かの患者はさらに、上述の食事および生活様式の変化に順応することによって得られた有益な結果を維持するために薬物療法を受ける必要がある場合がある。
【0003】
レプチンは、脂肪細胞で合成されるホルモンであり、これは視床下部で作用して食物の摂取と体重を低減させることができると考えられている(例えば、非特許文献1)を参照。
【0004】
肥満のヒトにおいて、循環血液中のレプチンに対する髄液中のレプチンの比率は減少することが示されている(非特許文献2)。これは、肥満の状態では、脳へレプチンを輸送する能力が不足していることを示す。実際に、肥満の動物モデル(NZOマウスおよびコレツキー(Koletsky)ラット)では、レプチン輸送の不足によって、脳のレプチン含量の減少が起こることが示されている(非特許文献3・4)。食事誘導性の肥満のげっ歯類(げっ歯類モデル、これはヒトの肥満に非常によく類似していると考えられており、例えば、非特許文献5を参照)に関する研究では、末梢血管から過量のレプチンを投与しても食事摂取と体重の減少に効果がないことが示されたが、それに対して脳に直接注射されたレプチンは、食事摂取と体重の減少において有効であった。また、循環血液中に過量のレプチンを含む肥満のヒトにおいて、レプチン受容体の継続的な刺激に対して、シグナル伝達系の感度が鈍くなることも示されている(非特許文献6)。
【0005】
Amgenは、組換えメチオニルヒトレプチンを用いた臨床試験を行っている。これらの試験から結果を総合すると、高血漿濃度のレプチンの存在下でさえも、体重減少は一定せず、試験された患者の同齢集団における平均体重の減少は比較的小さかった(非特許文献7)。
【0006】
レプチン遺伝子のコード配列が発見されてから、活性なフラグメントを発見しようとする数々の試みが文献で報告されている。その例は、非特許文献8であり、これは、N末端における活性なフラグメント(22〜56)を説明している。この配列は、脳室内に注射された場合に食事摂取の減少が示されが、それに対してC末端で確認された配列は、何の作用も有さないことが示された。またレプチンフラグメントは、特許文献1(国際特許出願WO97/46585)でも開示されている。
【0007】
上記配列のC末端部分を調べたその他の報告では、116〜130フラグメントによって黄体形成ホルモン生産が刺激される可能性があること(非特許文献9)、および、GHRH投与後のGH生産に対する作用(フラグメント126〜140)(非特許文献10)が報告されている。
【0008】
近年、レプチンは、炎症と関連付けられている。細菌感染および炎症中に循環血液中のレプチンレベルが上昇することが報告されている(非特許文献11およびそれに記載された参考文献を参照)。またレプチンは、炎症性細胞から炎症促進性サイトカインTNFおよびIL−6の放出を促進することによって炎症を増加させるように作用する可能性もある(非特許文献12)。
【0009】
これらの物質は順にインスリン受容体のシグナル伝達の有効性を減少させることにより、一般的に肥満の患者で観察されるインスリン抵抗性に関与する可能性がある(非特許文献13)。肥満には、(インスリン抵抗性およびII型糖尿病がある場合、およびそれらがない場合のいずれにおいても)連続的な低度の炎症が伴うと考えられている(非特許文献14〜16)。またレプチンは、マクロファージへの脂質の摂取および内皮機能障害を促進してアテローム斑形成を促進することによって、アテローム発生プロセスに関与する可能性もある(非特許文献13を参照)。
【0010】
またレプチンは、脂肪組識の増殖に関与するプロセスである新生血管の形成(血管新生)を促進することも示されている(非特許文献17)。また血管新生は、糖尿病性網膜症にも関与する(非特許文献18)。
【0011】
また血管新生は、異常な腫瘍細胞に供給される新生血管の増殖に関与するとも考えられている。多数の癌において、具体的にはヒトの乳癌、前立腺癌および消化管癌において、高いレプチンレベルが併発する(非特許文献19)。
【0012】
またレプチン受容体アゴニストも、創傷治癒を促進するための医薬品の製造で使用される場合がある(非特許文献20)。
さらに、脳においてレプチンのシグナル伝達を高めることは、抑うつ障害を治療するためのアプローチの一つとなり得ることが示されている(非特許文献21)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願WO97/46585
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bryson, J. M. (2000) Diabetes, Obesity and Metabolism 2:83-89
【非特許文献2】Koistinen et al. , (1998) Eur. J. Clin. Invest. 28:894-897
【非特許文献3】Kastin, A. J. (1999) Peptides 20:1449-1453
【非特許文献4】Banks, W. A. et al, (2002) Brain Res. 950:130-136
【非特許文献5】Van Heek et al. (1997) J. Clin. Invest. 99:385-390
【非特許文献6】Mantzoros, C. S, (1999) Ann. Intern. Med. 130:671-680
【非特許文献7】Obesity Strategic Perspective, Datamonitor, 2001
【非特許文献8】Samson et al. (1996) Endocrinol. 137:5182-5185
【非特許文献9】Gonzalez et al. , (1999) Neuroendocrinology 70:213-220
【非特許文献10】Hanew (2003) Eur. J. Endocrin. 149:407-412
【非特許文献11】Otero, M et al. (2005) FEBS Lett. 579:295-301
【非特許文献12】Zarkesh-Esfahani, H. et al. (2001) J. Immunol. 167:4593-4599
【非特許文献13】Lyon, C. J. et al. (2003) Endocrinol. 144:2195-2200
【非特許文献14】Browning et al. (2004) Metabolism 53:899-903, Inflammatory markers elevated in blood of obese women
【非特許文献15】Mangge et al. (2004) Exp. Clin. Endocrinol. Diabetes 112:378-382, Juvenile obesity correlates with serum inflammatory marker C-reactive protein
【非特許文献16】Maachi et al. (2004) Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 28:993-997, Systemic low grade inflammation in obese people
【非特許文献17】Bouloumie A, et al. (1998) Circ. Res. 83:1059-1066
【非特許文献18】Suganami, E. et al. (2004) Diabetes. 53:2443-2448
【非特許文献19】Somasundar P. et al. (2004) J. Surg. Res. 116:337-349
【非特許文献20】Gorden, P. and Gavrilova, O. (2003) Current Opinion in Pharmacology 3:655-659
【非特許文献21】Lu, Xin-Yun et al. (2006) PNAS 103:1593-1598
【発明の概要】
【0015】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、げっ歯類において体重および食事摂取を減少させるのに有効であることが見出された。理論に拘束されることは望まないが、式Iの化合物は、レプチン受容体のシグナル伝達経路を調節することが提唱されている。
【0016】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体のアゴニスト様特性を有する化合物は、レプチンのシグナル伝達に関する障害、加えて肥満のような体重増加に伴う状態の治療に有用な可能性がある。発明者等は、低分子物質であるCNS浸透剤のレプチン模倣剤は、限定的な脳への摂取系を迂回することができると仮説を立てている。さらに、この状況がヒトの肥満の状態を反映していると仮定すると、本発明者等は、作用の持続が時間比較的長いCNS活性レプチノイド(leptinoid)は、肥満の状態およびそれに付随する合併症、具体的には(ただしこれらに限定されないが)糖尿病に有効な治療となり得ると考えている。
【0017】
その他の実施態様において、レプチン受容体のアンタゴニスト様の特性を有する化合物は、炎症、アテローム性動脈硬化、糖尿病性網膜症および腎症の治療に有用な可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、暗期および明期それぞれのの間マウスの体重増加および体重減少を説明する略図である。このグラフは、24時間にわたる、大きな夜間の体重増加と比較的小さい体重変化との対比を説明する。
【図2】図2は、暗期の開始時から明期の開始時への(午後から午前)実施例1のマウスにおける体重への作用を示す。
【図3】図3は、暗期の開始時から明期の開始時への(午後〜午前)実施例2のマウスにおける体重への作用を示す。
【図4】図4は、JEG−3細胞による[H]−チミジン取り込みにおけるレプチンの濃度依存性の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第一の形態において、本発明は、式(I):
【0020】
【化1】

【0021】
の化合物またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体またはN−オキシド体に関し、ここで:
Aは、
【0022】
【化2】

【0023】
[式中:Xは、NまたはCHである]
および
【0024】
【化3】

【0025】
[式中:Xは、N(R)、CH(R)またはOである]
から選択され、
は、水素、C1−6アルキル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)、C1−6アシル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)、フェニルおよびベンジル(いずれもが、非置換またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)から選択され;
およびRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)およびC1−6アルコキシ(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)から独立して選択され;
Yは、CH、OまたはN(R)であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
aおよびbは、それぞれ独立して1、2または3であり;
cおよびdは、それぞれ独立して0、1または2であり;
eは、1、2または3であり;
ただし、
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−ピペリジニル)エチル;
・N−(4−ピペリジニルメチル)−4−モルホリンカルボキサミド;
・4−[1−オキソ−3−(4−ピペリジニル)プロピル]−モルホリン;
・4−[1−オキソ−3−(1−ピペラジニル)プロピル]−モルホリン;
・4−[3−[4−(4−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]−1−オキソプロピル]−モルホリン;
・N−[3−(1−ピペラジニル)プロピル]−4−モルホリンカルボキサミド;
・2−(ヒドロキシメチル)−4−モルホリンカルボン酸2−モルホリニルメチル;および
・N−[[4−(3,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−モルホリニル]メチル−4−モルホリンカルボキサミド
からなる群からは選択されない。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、Yは、Oである。
その他の好ましい実施態様において、Aは、
【0027】
【化4】

【0028】
である。
は、好ましくは、水素、C1−4アルキル、シアノ−C1−4アルキル、フェニルおよびベンジルから選択される。最も好ましい実施態様において、Rは、水素、メチル、シアノメチルまたはベンジルである。
【0029】
およびRは、好ましくは、水素およびC1−4アルキルから独立して選択される。最も好ましい実施態様において、RおよびRは、それぞれ独立して水素またはメチルである。
【0030】
具体的な好ましい式(I)の化合物は、式(I’):
【0031】
【化5】

【0032】
[式中:X、RおよびRならびにeは、式(I)で定義した通りである]
の化合物である。
好ましい式(I’)の化合物において、Rのいずれもがメチルである。2つのメチル基の相対的な立体配座がシスであることが特に好ましい。
【0033】
特に好ましい式(I)の化合物は:
・モルホリン−4−カルボン酸(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル;
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;および、
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−[4−(シアノメチル)ピペラジン−1−イル]エチル、
からなる群より選択される化合物である。
【0034】
本発明のその他の形態は、療法における使用のための式(I)の化合物である。
さらなる形態において、本発明は、本明細書において説明される障害または状態のいずれかの治療または予防に使用するための式(I)の化合物に関する。
【0035】
続いてさらなる形態において、本発明は、本明細書において説明される障害または状態のいずれかを治療または予防するための医薬品の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
【0036】
いくつかの実施態様において、前記化合物は、レプチン受容体への選択的な作用によって予防、治療または改善される状態を治療または予防するための医薬品の製造において用いてもよい。
【0037】
いくつかの実施態様において、前記化合物は、体重増加に伴う状態(具体的には代謝の状態)を治療または予防するための医薬品の製造において用いてもよい。体重増加に伴う状態としては、肥満または過体重の被検者において発生率が高い疾病、障害またはその他の状態が挙げられる。例としては:リポジストロフィ、HIVリポジストロフィ、糖尿病(2型)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、高血糖、高インスリン血症、脂質異常症、肝臓脂肪症、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患、黄斑変性症が挙げられる。いくつかの実施態様において、本化合物はまた、被検者の体重減少を維持するための医薬品の製造において用いてもよい。
【0038】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物はまた、創傷治癒を促進するための医薬品の製造において用いてもよい。
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物はまた、循環血液中のレプチン濃度の減少を引き起こす状態、加えて、その結果として免疫および生殖系の機能不全を引き起こす状態を治療または予防するための医薬品の製造において用いてもよい。このような状態および機能不全の例としては、重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性不妊症、免疫不全、および、低いテストステロンレベルに伴う状態が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物はまた、レプチン欠乏、または、レプチンもしくはレプチン受容体の突然変異の結果として生じる状態を治療または予防するための医薬品の製造において用いてもよい。
【0040】
いくつかのその他の実施態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、肥満および血漿レプチン過剰に伴う、および、その他の肥満に伴う合併症(例えばアテローム性動脈硬化)を低減させる際の炎症状態または疾病、低度の炎症を治療または予防するために用いてもよいし、および、メタボリックシンドロームおよび糖尿病で観察されるインスリン抵抗性を調整するために用いてもよい。
【0041】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、以下によって引き起こされる、または、それに付随する炎症を治療または予防するために用いることができる:癌(例えば、白血病、リンパ腫、癌腫、結腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、肝細胞癌、腎臓癌、黒色腫、肝臓、肺、乳房および前立腺への転移など);自己免疫疾患(例えば、臓器 移植による拒絶反応、紅斑性狼瘡、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶反応、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、I型糖尿病(糖尿病を発症させる膵島の破壊を含む)、および、糖尿病によって生じた炎症状態);自己免疫による傷害(例えば、多発性硬化症、ギラン−バレー症候群、重症筋無力症など);低い組織への血流量および炎症に伴う心臓血管に関する状態(例えば、アテローム、アテローム性動脈硬化、卒中、虚血再灌流傷害、跛行、脊髄の損傷、うっ血性心不全、血管炎、出血性ショック、クモ膜下出血後の血管痙攣、脳血管発作後の血管痙攣、胸膜炎、心嚢炎、糖尿病の心血管系の合併症);虚血再灌流傷害、虚血およびそれに付随する炎症、血管形成術後の再狭窄、および、炎症性動脈瘤;てんかん、神経変性(例えばアルツハイマー病)、関節炎(例えば、リウマチ様関節炎、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎)、線維症(例えば、肺、皮膚および肝臓の線維症)、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュ−ヘルクスハイマー反応、帯状ヘルペス、毒素ショック、大脳マラリア、ライム病、内毒素ショック、グラム陰性菌によるショック、出血性ショック、肝炎(組織の損傷またはウイルス感染のいずれかから生じるもの)、深在静脈血栓症、痛風;呼吸困難に伴う状態(例えば、慢性閉塞性肺疾患、障害物によって閉塞した気道、気管支収縮、肺血管収縮、妨げられた呼吸、慢性的な炎症性肺疾患、珪肺症、肺サルコーシス(pulmonary sarcosis)、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、肺気腫、気管支のアレルギーおよび/または炎症、喘息、枯草熱、鼻炎、春季結膜炎、および、成人呼吸窮迫症候群);皮膚の炎症に伴う状態(例えば、乾癬、湿疹、潰瘍、接触皮膚炎);腸の炎症に伴う状態(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎および発熱(pyresis)、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患);HIV(具体的にはHIV感染)、大脳マラリア、細菌性髄膜炎、骨粗鬆症およびその他の骨吸収性疾患、変形性関節症、子宮内膜症による不妊症、感染による発熱および筋肉痛、ならびに、過剰な抗炎症性細胞(例えば、好中球、好酸球、マクロファージ、および、T細胞)の活性が介在するその他の状態。
【0042】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、1型または2型糖尿病の大血管または微小血管の合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または、虚血またはアテローム性動脈硬化に起因する血管損傷を治療または予防するために用いてもよい。
【0043】
いくつかの実施態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、血管新生を阻害するために用いてもよい。血管新生を阻害する化合物は、肥満または肥満に伴う合併症を治療または予防するために用いてもよい。
【0044】
血管新生を阻害する化合物は、炎症性の糖尿病性網膜症、または、具体的には乳房、前立腺または消化管癌における腫瘍増殖に伴う合併症を治療または予防するために用いてもよい。
【0045】
さらなる形態において、本発明は、本明細書において説明される障害または状態のいずれかの治療または予防方法に関し、本方法は、被検者(例えば、それを必要とする被検者、例えば哺乳動物)に有効量の式Iの化合物を投与することを含む。
【0046】
本明細書において詳述された方法は、被検者が、具体的に定められた治療が必要であるかどうかを確認することを含む。このような治療を必要とする被検者の確認は、被検者または健康管理の専門家の判断で行ってもよく、さらにそれは主観的な判断であってもよいし(例えば意見)、または、客観的な判断であってもよい(例えば、試験または診断方法によって測定可能)。
【0047】
その他の形態において、本明細書に記載の方法は、治療の適用に対する被検者の応答をモニターすることをさらに含む方法を含む。このようなモニターは、治療計画のマーカーまたは指標として被検者の組織、流体、試料、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝物質などを周期的にサンプリングすることを含んでいてもよい。その他の方法において、被検者は、このような治療に対する適性の関連マーカーまたは指標を評価することによって予めスクリーニングされた被検者であるか、または、このような治療が必要であると確認された被検者である。
【0048】
一実施態様において、本発明は、治療の進行をモニターする方法を提供する。このような方法は、本明細書において詳述された障害または症状に罹った被検者、または、それらに罹りやすい被検者において、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書において、本明細書に記載された化合物によって調節されると述べられたあらゆる標的または細胞型)のレベル、または、診断測定(例えば、スクリーニング、分析)のレベルを決定する工程を含み、ここで被検者には、被検者の疾患または症状を治療するのに十分な治療的な量の本明細書に記載の化合物が投与される。マーカーで決定されるマーカーレベルを、健康で正常なコントロール、または、その他の罹患した患者のいずれかにおいて既にわかっているマーカーレベルと比較して、被検者の疾病の状態を確立することができる。好ましい実施態様において、被検者における第二のマーカーレベルを、第一のマーカーレベルの決定よりも後のタイムポイントで決定し、これらの2つのレベルを比較することによって疾病の経過または治療の有効性モニターすることができる。所定の好ましい実施態様において、本発明に係る治療を開始する前に、被検者におけるマーカーの治療前レベルを決定し;続いてこのマーカーの治療前レベルを治療開始後の被検者におけるマーカーレベルと比較して、治療の有効性を決定することができる。
【0049】
本方法の所定の実施態様において、被検者におけるマーカーレベルまたはマーカー活性は、少なくとも一回決定される。あるマーカーレベルを、例えば同じ患者、別の患者または正常な被検者から、その前またはその後に得られたマーカーレベルの他の測定値と比較することは、本発明に係る治療が望ましい作用を有するかどうか、さらにそれによって投与量レベルを必要に応じて調節するかどうかの決定において有用な場合もある。マーカーレベルの決定は、当業界でよく知られている、または、本明細書において説明されるあらゆる適切なサンプリング/発現分析方法を用いて行ってもよい。好ましくは、まず被検者から組織または体液サンプルを採取する。適切なサンプルの例としては、血液、尿、組織、口または頬の細胞、および、毛根を含む毛髪サンプルが挙げられる。その他の適切なサンプルは当業者でよく知られているものと思われる。サンプル中のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)の決定は当業界でよく知られているあらゆる適切な技術を用いて行ってもよく、このような技術としては、これらに限定されないが、酵素免疫検査法、ELISA、放射標識/分析技術、ブロッティング/化学発光法、リアルタイムPCRなどが挙げられる。
【0050】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物が中枢神経系を通過できる場合が有利な可能性がある。その他の実施態様において、式(I)の化合物がCNSを通過できない場合が有利な可能性がある。一般的には、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である化合物は、これらの化合物がCNSを通過できる場合、肥満、インスリン抵抗性または糖尿病(具体的にはグルコース不耐性)を治療または予防するのに特に有用であることが予想される。当業者であれば、化合物がCNSを通過できるかどうかを容易に決定することができる。使用可能な適切な方法は、生物学的方法の章で説明されている。
【0051】
レプチン受容体の応答は、あらゆる適切な方法で測定することもできる。これは、インビトロでレプチン受容体のシグナル伝達を測定することによって行ってもよい。例えば、レプチンまたは本発明の化合物のレプチン受容体への結合に応答するAkt、STAT3、STAT5、MAPK、shp2またはレプチン受容体のリン酸化を測定することもできる。Akt、STAT3、STAT5、MAPK、shp2またはレプチン受容体のリン酸化の程度は、例えばウェスタンブロッティングまたはELISAによって決定することができる。あるいは、STATレポーター分析を用いてもよく、例えばSTATで促進されるルシフェラーゼの発現を用いてもよい。このような分析に、レプチン受容体を発現する細胞系を用いてもよい。インビボの場合、レプチン受容体の応答は、レプチンまたは本発明の化合物の投与後の食事摂取および体重の減少を決定することによって測定することもできる。
【0052】
以下の生物学的方法で、本発明の化合物はレプチン受容体アゴニスト模倣剤なのか、または、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤なのかを決定するのに用いることができる分析および方法を説明する。
【0053】
式(I)の化合物は、その他の治療剤と共に投与してもよいし、または、それらなしで投与してもよい。
例えば、炎症を減少させることが望ましい場合、本化合物は、抗炎症薬(例えば疾患修飾性抗リウマチ薬であり、例えば、メトトレキセート、スルファサラジン、および、サイトカインを不活性化する物質、ステロイド、NSAID、カンナビノイド、タキキニン調節因子、または、ブラジキニン調節因子)と共に投与してもよい。抗腫瘍作用を提供することがが望ましい場合、式(I)の化合物は、細胞毒性薬(例えば、メトトレキセート、シクロホスファミド)またはその他の抗腫瘍薬と共に投与してもよい。
【0054】
式(I)の化合物は、例えば受容体の置換の実験または受容体のイメージングのようにインビトロまたはインビボで適用する場合、(例えばトリチウムまたは放射性ヨウ素で)放射標識してもよい。
【0055】
本発明のさらなる形態は、上記で定義された式(I)の化合物の製造方法に関する。
一実施態様において、本方法は:
(a)式(II):
【0056】
【化6】

【0057】
[式中:X、R、R、a、cおよびeは、式(I)で定義した通りである]
で示される化合物を、適切な溶媒(DCMなど)中の適切な塩基(NMMなど)の存在下、−10〜40℃でクロロギ酸4−ニトロフェニルまたは炭酸ビス(4−ニトロフェニル)と反応させ、
式(III):
【0058】
【化7】

【0059】
の化合物を生成させること:
(b)式(III)の化合物を、式(IV):
【0060】
【化8】

【0061】
[式中:R、bおよびdは、式(I)で定義した通りである]
の化合物と、適切な溶媒(DMFなど)中の適切な塩基(DIPEAまたはDMAPなど)の存在下、−10〜40℃で反応させ、式(I)の化合物を得ること;および、
(c)任意に、1以上の工程で、式(I)の化合物を式(I)の別の化合物に変換すること、
を含む。
【0062】
定義
以下の定義は、本明細書および添付の請求項の全体にわたって適用されるものとする。
特に他の規定または指定がない限り、用語「C1−6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。前記C1−6アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ならびに、直鎖および分岐鎖ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。「C1−6アルキル」の範囲に含まれる一部として、その全ての下位集団が考慮され、例えば、C1−5アルキル、C1−4アルキル、C1−3アルキル、C1−2アルキル、C2−6アルキル、C2−5アルキル、C2−4アルキル、C2−3アルキル、C3−6アルキル、C4−5アルキルなども考慮される。
【0063】
特に他の規定または指定がない限り、用語「C1−6アシル」は、自身の炭素原子を介して水素原子に結合したカルボニル基(すなわちホルミル基)、または、直鎖または分岐鎖C1−5アルキル基(ここでアルキルは上記で定義された通りである)に結合したカルボニル基を意味する。前記C1−6アシルの例としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、2−メチルプロピオニル、および、n−ペントイルが挙げられる。「C1−6アシル」の範囲に含まれる一部として、その全ての下位集団が考慮され、例えば、C1−5−アシル、C1−4−アシル、C1−3−アシル、C1−2−アシル、C2−6−アシル、C2−5−アシル、C2−4−アシル、C2−3−アシル、C3−6−アシル、C4−5−アシルなども考慮される。C1−6アシル基がハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されている可能性がある場合、前記置換基は、カルボニルの炭素原子に結合していてもよい。
【0064】
特に他の規定または指定がない限り、用語「C1−6アルコキシ」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコキシ基を意味する。前記C1−6アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、および、直鎖および分岐鎖ペントキシ、および、ヘキソキシが挙げられる。「C1−6アルコキシ」の範囲に含まれる一部として、その全ての下位集団が考慮され、例えば、C1−5アルコキシ、C1−4アルコキシ、C1−3アルコキシ、C1−2アルコキシ、C2−6アルコキシ、C2−5アルコキシ、C2−4アルコキシ、C2−3アルコキシ、C3−6アルコキシ、C4−5アルコキシなども考慮される。
【0065】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、または、ヨウ素を意味する。
「ヒドロキシ」は、−OHラジカルを意味する。
「ニトロ」は、−NOラジカルを意味する。
【0066】
「シアノ」は、−CNラジカルを意味する。
「任意の」または「任意に」は、その後に説明される事象または環境が必ずしも生じる必要はないことを意味しており、すなわちこの説明は、その事象または環境が発生する場合と、その事象または環境が発生しない場合とを含む。
【0067】
用語「哺乳動物」は、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、および、ウマ、サル、イヌ、ネコなどの生物を含み、好ましくはヒトである。被検者は、ヒト被検者であってもよいし、または、ヒト以外の動物、具体的には家畜(例えばイヌ)であってもよい。
【0068】
「医薬的に許容される」は、全般的に安全であり、非毒性であり、且つ生物学的にもそれ以外の状況でも有害ではない医薬組成物の製造において有用であることを意味し、さらに、獣医学的な使用、加えて人間用の製薬への使用に有用であることを含む。
【0069】
本明細書で用いられる「治療」は、上述された障害もしくは状態の予防を含み、または、上記障害が確立されてしまったら、上記障害の改良もしくは除去も含む。
「有効量」は、治療された被検者に治療効果を与える(例えば、疾病、障害もしくは状態またはそれらの症状を治療する、制御する、改良する、予防する、発病を遅延させる、または、それらを発症する危険を減少させる)化合物の量を意味する。
【0070】
治療効果は、客観的であってもよいし(すなわち、効果がいくつかの試験またはマーカーで測定可能である)、または、主観的であってもよい(すなわち被検者が効果の指標を示すか、または、効果を感じる)。
【0071】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下で、または、加溶媒分解によって生物学的に式(I)の活性化合物に変換される可能性がある化合物を意味する。プロドラッグは、それを必要とする被検者に投与された時点では不活性であるが、インビボで式(I)の活性化合物に変換することができる。プロドラッグは、典型的には、インビボで、例えば血液中での加水分解によって迅速に変換されて親化合物を生成することができる。プロドラッグ化合物は通常、哺乳動物における溶解性、組織適合性または遅延放出の利点を提供する(Silverman, R. B., The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, 2nd Ed., Elsevier Academic Press (2004), pp. 498-549を参照)。プロドラッグは、式(I)の化合物中に存在するヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基のような官能基を、慣例的な操作またはインビボのいずれかで修飾部分が切断されて親化合物が生じるように修飾することによって製造してもよい。プロドラッグの例としては、これらに限定されないが、ヒドロキシ官能基の酢酸、ギ酸およびコハク酸誘導体、または、アミノ官能基のフェニルカルバミン酸誘導体が挙げられる。
【0072】
本明細書および添付の請求項の全体にわたって、示された化学式または名称は、全てのそれらの塩、水和物、溶媒和物、N−オキシド体およびプロドラッグの形態も包含するものとする。
【0073】
さらに、示された化学式または名称は、全てのそれらの互変異性体および立体異性体も包含するものとする。立体異性体は、エナンチオマーおよびジアステレオ異性体を含む。
エナンチオマーは、それらの純粋な形態で存在していてもよいし、または、2種のエナンチオマーのラセミ体(均一)もしくは不均一な混合物として存在していてもよい。ジアステレオ異性体は、それらの純粋な形態で存在していてもよいし、または、ジアステレオ異性体の混合物として存在していてもよい。またジアステレオ異性体も幾何異性体を含み、これは、それらの純粋なシスまたはトランスの形態で存在していてもよいし、または、それらの混合物として存在していてもよい。
【0074】
式(I)の化合物は、そのまま用いてもよいし、または、必要に応じてそれらの薬理学的に許容できる塩(酸または塩基付加塩)として用いてもよい。以下で述べる薬理学的に許容できる付加塩は、本化合物が形成可能な、治療活性を有する非毒性の酸および塩基付加塩の形態を含むこととする。塩基性の特性を有する化合物は、塩基の形態を適切な酸で処理することによって、その医薬的に許容される酸付加塩に変換することができる。典型的な酸としては、無機酸、例えば塩化水素、臭化水素、水素 ヨウ化物、硫酸、リン酸;および、有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸、安息香酸、アスコルビン酸などが挙げられる。典型的な塩基付加塩の形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウム塩、および、医薬的に許容されるアミンとの塩、例えばアンモニア、アルキルアミン、ベンザチン、および、アミノ酸、例えばアルギニン、および、リシンである。また本明細書で用いられる付加塩という用語は、化合物およびその塩が形成可能な溶媒和物も含み、例えば水和物、アルコラートなどを含む。
【0075】
組成物
臨床用途の場合、本発明の化合物は、様々な投与様式のための医薬製剤に製剤化される。当然のことながら、本化合物は、生理学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤と共に投与してもよい。医薬組成物は、あらゆる適切な経路で投与してもよく、好ましくは経口、直腸、鼻、外用(口腔内および舌下を含む)、舌下、経皮、髄腔内、経粘膜、または、非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与によって投与してもよい。その他の製剤は、1回投与量で提供することが都合がよい場合があり、例えば錠剤および持続放出カプセルで提供したり、リポソームの形態で提供したりしてもよく、これらは当業界公知のあらゆる薬学的な方法によって製造してもよい。医薬製剤は、通常、活性物質またはその医薬的に許容される塩を従来の医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することによって製造される。賦形剤の例は、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶性セルロース、スターチ、グリコール酸ナトリウムスターチ、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、コロイド状二酸化ケイ素などである。このような製剤はまた、その他の薬理活性物質、および、従来の添加剤、例えば安定剤、湿潤剤、乳化剤、香料、緩衝液などを含んでいてもよい。活性化合物の量は、一般的には製剤中に0.1〜95重量%であり、好ましくは、非経口用の製剤中に0.2〜20重量%であり、より好ましくは、経口投与用の製剤中に1〜50重量%である。
【0076】
このような製剤は、例えば顆粒化、圧縮、マイクロカプセル化、スプレーコーティングなどのような既知の方法によってさらに調製することができる。上記製剤は、従来の方法によって錠剤、カプセル、顆粒、粉末、シロップ、懸濁液、坐剤または注射の投薬形態で調製してもよい。液体製剤は、水またはその他の適切な基剤に活性物質を溶解させること、または、懸濁することによって調製してもよい。錠剤および顆粒は、従来の方式でコーティングしてもよい。治療上有効な血漿濃度を長期間維持するために、本発明の化合物を徐放製剤に包含させていもよい。
【0077】
特定の化合物の用量レベルおよび投与頻度は、例えば、用いられる特定の化合物の効力、代謝的安定性、および、その化合物の作用の長さ、患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排泄の頻度、薬の組み合わせ、治療しようとする状態の重症度、および、治療を受ける患者などの様々な要因に応じて多様であると予想される。1日の投与量は、例えば体重1キロあたり約0.001mg〜約100mgの範囲であってもよく、これらは、1回で投与してもよいし、または、例えばそれぞれ約0.01mg〜約25mgの用量で複数回で投与してもよい。一般的には、このような投与量は経口投与されるが、非経口投与が選択される場合もある。
【0078】
本発明の化合物の製造
上記の式(I)の化合物は、従来の方法によって製造してもよいし、または、それと類似の方法で製造してもよい。式(I)の化合物の製造において、中央のウレタンまたは尿素リンカーの形成が主要な合成工程である。ウレタンまたは尿素リンカーを形成するために多数の活性化試薬を用いることができ、例えばアルコールのクロロホルメートを形成するためにはホスゲンを用いてもよく、または、イミダゾールカルボキシレートを形成するためには、カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いてもよい。典型的には、式(I)の化合物に包含されるウレタンリンカーは、活性化剤としてクロロギ酸4−ニトロフェニルまたは炭酸ビス(4−ニトロフェニル)を利用して合成されている。本発明の実施例に従った中間体および化合物の製造は、具体的には以下のスキーム1で明確にすることができる。本明細書においてスキーム中の構造における変数の定義は、本明細書において詳述された式において相当する位置の変数の定義に相応する。
【0079】
【化9】

【0080】
[式中:X、R〜Rおよびa〜eは、式(I)で定義した通りである]
典型的には、式(I)の化合物の合成は、アルコール部分を活性化することによって行われる。塩基(例えばNMM)の存在下でアルコール(II)のクロロギ酸4−ニトロフェニルまたは炭酸ビス(4−ニトロフェニル)で処理することにより、それに対応する炭酸4−ニトロフェニル誘導体(III)が得られる。それに続く工程で、活性な炭酸塩(III)を塩基(例えばDIPEAまたはDMAP)の存在下で適切なモルホリン誘導体(IV)で処理して、望ましい式(I)の化合物を得ることができる。
【0081】
あるいは、モルホリン誘導体(IV)は、塩基の存在下でクロロギ酸4−ニトロフェニルまたは炭酸ビス(4−ニトロフェニル)で処理して、それに対応するカルバメート誘導体を形成することによっても活性化することができる。続いてこのカルバメート中間体を塩基の存在下で適切なアルコール部分(II)で処理して、式(I)の化合物を得ることができる。
【0082】
ウレタンの形成は、典型的には2段階工程であるが、これは、ワンポット反応で活性化された中間体をその場で形成することによって行ってもよい。
式(I)の化合物を製造するのに必要な出発原料は、市販されているものでもよいし、または、当業界でよく知られている方法で製造してもよい。
【0083】
以下の実験の章で説明される方法は、化合物を遊離塩基の形態で、または酸付加塩として得るために行うことができる。医薬的に許容される酸付加塩は、従来の塩基化合物から酸付加塩を製造する手法に従って、適切な有機溶媒に遊離塩基を溶解させ、この溶液を酸で処理することにより得てもよい。付加塩を形成する酸の例は上述した通りである。
【0084】
式(I)の化合物は1個またはそれ以上の不斉炭素原子を有していてもよく、従ってそれらは、光学異性体の形態で、例えば、純粋なエナンチオマーとして、または、エナンチオマーの混合物(ラセミ化合物)として、または、ジアステレオ異性体を含む混合物として得られる可能性がある。純粋なエナンチオマーを得るための光学異性体の混合物の分離は当業界公知であり、例えば、光学的に活性な(キラル)酸を用いた塩の分別結晶、または、キラルカラムでのクロマトグラフィーによる分離によって達成される場合がある。
【0085】
本明細書において詳述された合成経路で用いられる化学物質としては、例えば、溶媒、試薬、触媒、ならびに基を保護する試薬および基を脱保護する試薬が挙げられる。
保護基の例は、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルおよびトリチル(トリフェニルメチル)である。また上述の方法はさらに、本明細書において具体的に述べられた工程の前または後のいずれかに、最終的に化合物が合成されるような適切な保護基を付加または除去する工程を含んでいてもよい。加えて、様々な合成工程を代替の配列または順序で行って、望ましい化合物を得ることもできる。適切な化合物の合成において有用な合成化学における変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当業界でよく知られており、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989) ; T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999) ; L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser rs Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994) ;および、L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)およびそれらのその後の版で説明されているものが挙げられる。
【0086】
以下の略語を用いた。
Boc tert−ブトキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP N,N−ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
ES エレクトロスプレー
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
HIV ヒト免疫不全ウィルス
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
ICV 脳室内
LCMS 液体クロマトグラフィー マススペクトロメトリー
M モル濃度
[MH] プロトン化分子イオン
NEt トリエチルアミン
NMM N−メチルモルホリン
RP 逆相
tert 第3級
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
以下の実施例で、添付の図面を参照しながら本発明の実施態様を説明するが、ここで図面は以下の通りである。
【0087】
図1は、暗期および明期それぞれのの間マウスの体重増加および体重減少を説明する略図である。このグラフは、24時間にわたる、大きな夜間の体重増加と比較的小さい体重変化との対比を説明する。
【0088】
図2は、暗期の開始時から明期の開始時への(午後から午前)実施例1のマウスにおける体重への作用を示す。
図3は、暗期の開始時から明期の開始時への(午後〜午前)実施例2のマウスにおける体重への作用を示す。
【0089】
図4は、JEG−3細胞による[H]−チミジン取り込みにおけるレプチンの濃度依存性の増加を示す。
本明細書における変数の何らかの定義で詳述された化学基の列挙には、いずれか一つの基として、または、列挙された基の組み合わせとしてのその変数の定義が含まれる。本明細書における実施態様の列挙には、いずれか一つの実施態様として、または、いずれかのその他の実施態様またはそれらの一部との組み合わせとしてのその実施態様が含まれる。
【0090】
ここで、以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明する。以下に記載の特定の実施例は、単なる説明として解釈されるものであり、開示されていない部分をいかなる方法でも限定しないこととする。これ以上詳述しないが、当業者であれば、本明細書における詳細な説明に基づいて本発明を最大限利用することが可能であると考えられる。本明細書において引用された全ての参考文献および出版物は、参照によりその全体は本発明に包含させる。
【実施例】
【0091】
実施例および中間体化合物
実験方法
全ての試薬は市販用グレードであり、特に他の規定がない限り、それらはそれ以上精製しないで入手した状態のままで用いた。不活性雰囲気下で行われる反応には市販の無水溶媒を用いた。その他全てのケースでは、特に他の規定がない限り試薬グレードの溶媒を用いた。分析LCMSは、アジレント(Agilent)1100HPLCシステムに連結されたウォーターズ(Waters)のZQマススペクトロメーターで行われた。分析HPLCは、アジレント1100システムで行われた。フラッシュクロマトグラフィーは、ストラタ(Strata)SI−1シリカギガチューブを備えたフラッシュ・マスター・パーソナル(Flash Master Personal)システムで行われた。逆相クロマトグラフィーは、メルク(Merck)のリコプレップ(LiChoprep(R))RP−18(40〜63μm)460×26mmカラムを備えたギルソン(Gilson)システムで、30mL/分、水中のメタノールの勾配で行われた。分取用HPLCは、フェノメネックス(Phenomenex)のハイドロRP(Hydro RP)150×20mmを備えたギルソンシステムで、20mL/分、水中のアセトニトリルの勾配で行われた。化合物は自動的にACD6.0または8.0を用いて命名された。
【0092】
分析HPLCデータは、以下によって得た。システムA:フェノメネックスのシナジー(Synergi)・ハイドロRP、(150×4.6mm,4μm)、勾配はHO(+0.1%TFA)中の5〜100%CHCN(+0.085%TFA)、1.5mL/分、勾配時間は7分間、200〜300nm、30℃。
【0093】
分析LCMSデータは、以下によって得た。
・システムB:フェノメネックスのシナジー・ハイドロRP(30×4.6mm,4μm)、勾配はHO(+0.1%TFA)中の5〜100%CHCN(+0.085%TFA)、1.5mL/分、勾配時間は1.75分間、30℃;
・システムC:フェノメネックスのシナジー・ハイドロRP(150×4.6mm,4μm)、勾配はHO(+0.1%TFA)中の5〜100%CHCN(+0.085%TFA)、1mL/分、勾配時間は7分間、30℃;または、
・システムD:フェノメネックスのシナジー・ハイドロRP(150×4.6mm,4μm)、勾配はHO(+0.1%TFA)中の5〜100%CHCN(+0.085%TFA)、1mL/分、勾配時間は8分間、25℃。
【0094】
実施例1
モルホリン−4−カルボン酸(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル塩酸塩
【0095】
【化10】

【0096】
4−ピペリジンメタノール(5.49g,47.7mmol)、および、NEt(6.6mL,47.7mmol)をDCM(100mL)に溶解させ、塩化ベンゾイル(5.6mL,48mmol)で処理した。この反応混合物を18時間撹拌し、続いてHClの2M水溶液(2×200mL)とNaCOの1M水溶液(100mL)とで連続的に洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮し、(4−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1−イル)(フェニル)メタノンをオレンジ色の油として得て、これをそのままにして結晶化した。この固体をアルゴン雰囲気下でTHF(100mL)に溶解させ、0℃に冷却し、THF(50mL,50mmol)中のLiAlHの1M溶液で処理した。この反応混合物を一晩そのままにして室温に温め、続いて水、NaOHの1M水溶液および追加の水を連続的に添加することによってクエンチした。この反応混合物をさらに3時間撹拌し、続いてセライトを通過させてろ過し、ろ液を真空中で約40mLの体積になるまで濃縮し、2つの20gアイソリュート(Isolute)HM−Nカートリッジを用いてEtOAcで溶出させることによって乾燥させた。溶出液を濃縮し、中間体(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メタノール(8.02g,82%)を黄色の油として得た。
【0097】
(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メタノールをDCM(200mL)に溶解させ、NMM(4.5mL)およびクロロギ酸4−ニトロフェニル(8.09g,40.1mmol)で処理し、18時間撹拌した。続いてこの反応混合物をNaCOの1M水溶液(200mL)とNaHCOの飽和水溶液(2×200mL)とで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮し、炭酸4−ニトロフェニル(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル(11.9g,82%)を黄色の固体として得た。
【0098】
炭酸4−ニトロフェニル(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチルの一部(777mg,2.10mmol)をDMF(5mL)に溶解させた。NEt(0.4mL,2.90mmol)、モルホリン(0.30mL,3.41mmol)およびDMAP(10mg)を添加し、この反応混合物を5日間撹拌し、その後真空中で濃縮した。残留物を、逆相クロマトグラフィー(水中の0〜100%MeOHの勾配を用いて溶出、各溶媒に1%ギ酸を含む)、続いて分取用HPLC(フェノメネックスのハイドロカラム、水中の0〜100%CHCNの勾配を用いて溶出)で精製し、無色のゴムを得て、これをDCM(5mL)に溶解させ、EtO(1mL)中の2MのHClで処理し、真空中で濃縮し、モルホリン−4−カルボン酸(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル塩酸塩(109mg,15%)を白色の固体として得た。
分析HPLC:純度100%(システムA,R=4.03分);分析LCMS:純度100%(システムD,R=4.27分)、ES:319[MH]。C1826のHRMS計算値:318.1943、実測値:318.1956。
【0099】
実施例2
(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−[4−(シアノメチル)ピペラジン−1−イル]エチルギ酸塩
【0100】
【化11】

【0101】
DCM(500mL)中の1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(51.7g,398mmol)の溶液に、NEt(70.0mL,526mmol)およびジ−tert−ブチルジカーボネート(80.0g,367mmol)を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌し、続いてNaCOの1M水溶液(2×300mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮し、tert−ブチル4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(66.0g,72%)を無色の油として得た。
分析LCMS:(システムB,R=1.54分)、ES:231.4[MH]
【0102】
炭酸ビス(p−ニトロフェニル)(1.52g,5.0mmol)をDCM(20mL)に溶解させた。前の工程からのtert−ブチル4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(1.15g,5.0mmol)とNMM(0.55mL,5.0mmol)とを添加し、この反応混合物を室温で16時間撹拌した。この反応混合物をDCM(40mL)で希釈し、NaHCO飽和水溶液(5×50mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮し、黄色の油を得た。この油を、再結晶によってEtOAcおよびヘプタンから精製し、炭酸4−ニトロフェニル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−1−イル)エチル(1.208g,61%)をオレンジ色の固体として得た。
分析LCMS:(システムB,R=1.90分)、ES:396.5[MH]
【0103】
炭酸4−ニトロフェニル2−(4−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン−1−イル)エチル(0.868g,2.19mmol)をDMF(10mL)に溶解させた。シス−2,6−ジメチルモルホリン(0.284mL,2.3mmol)とDIPEA(0.4mL,2.3mmol)とを添加し、この反応混合物を室温で48時間撹拌し、続いて真空中で濃縮し、黄色の油を得た。残留物をEtOAc(30mL)に溶解させ、NaCOの1M水溶液(6×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮し、tert−ブチル4−(2−(シス−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボキシロイルオキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(0.75g,92.5%)を薄黄色の油として得た。
分析LCMS:(システムB,R=1.72分)、ES:372.5[MH]
【0104】
前の工程からのtert−ブチル4−(2−(シス−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボキシロイルオキシ)エチル)ピペラジン−1−カルボン酸塩(0.75mg,約2mmol)をDCM(10mL)に溶解させた。TFA(2mL)を添加し、この反応混合物を室温で18時間撹拌し、続いて真空中で濃縮した。残留物を数滴のDIPEAと共にEtOAc(30mL)に溶解させ、続いてNaHCOの飽和水溶液(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮し、2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸シス−2−(ピペラジン−1−イル)エチルを黄色の油として得て、これをそれ以上精製しないで用いた。
【0105】
2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸シス−2−(ピペラジン−1−イル)エチルをTHF(10mL)に溶解させた。DIPEA(0.521mL,3mmol)とヨードアセトニトリル(0.145mL,2mmol)とを添加し、この反応混合物を室温で16時間撹拌し、続いて真空中で濃縮した。得られた残留物を、順相カラムクロマトグラフィー(DCM中の0〜5%MeOHの勾配を用いて溶出させた)、続いて逆相カラムクロマトグラフィー(水中の0〜100%MeOHの勾配を用いて溶出、各溶媒に1%ギ酸を含む)で精製し、(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−[4−(シアノメチル)ピペラジン−1−イル]エチルギ酸塩(193mg,27%)を無色の油として得た。
分析HPLC:純度98.6%(システムA,R=3.40mm);分析LCMS:純度100%(システムC,R=5.04分)、ES:311.5[MH]
1526のHRMS計算値:310.2005、実測値:310.2017。
【0106】
実施例3
(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチルギ酸塩
【0107】
【化12】

【0108】
DMF(200mL)中の1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(26g,0.2mol)の撹拌溶液にギ酸(752mL,0.2mol)とホルムアルデヒド(16.2g,0.2mol,37%水溶液)とを添加した。この反応混合物を慎重に100℃で2時間加熱し、続いて室温で一晩撹拌した。溶媒を真空中で除去した。この手順をさらに3回繰り返し、約100gの生成物を得た。粗生成物を合わせて、真空中で蒸留し、約74℃で、2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノール(51g,44%)を無色の液体として得た。
分析LCMS:(システムB,R=0.70分)、ES:145.1[MH]
【0109】
クロロギ酸4−ニトロフェニル(9.85g,49mmol)をDCM(200mL)に溶解させ、0℃に冷却した。前の工程からの2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノール(7.2g,50mmol)とNMM(6mL)とを添加し、この反応混合物を16時間にわたりそのままにして徐々に室温に温めた。この反応混合物を、NaCOの1M水溶液で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO)、ろ過し、真空中で濃縮し、炭酸4−ニトロフェニル2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(10.7g,71%)を黄色の油として得て、これをそのままにして凝固させた。
分析LCMS:純度約80%(システムB,R=1.70分)、ES:310.4[MH]
【0110】
炭酸4−ニトロフェニル2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(3.00g,9.71mmol)をDMF(40mL)に溶解させた。DIPEA(1.77mL,10.2mmol)とシス−2,6−ジメチルモルホリン(1.25mL,10.2mmol)とを添加し、この反応混合物を室温で24時間撹拌し、続いてこの反応混合物を真空中で濃縮した。残留物をEtOAc(100mL)に溶解させ、NaCOの1M水溶液(7×50mL)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィー(水中の0〜100%MeOHの勾配を用いて溶出、各溶媒中に1%ギ酸を含む)で精製し、(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチルギ酸塩(1.09g,20%)を無色の油として得た。
分析HPLC:純度89.6%(システムA,R=2.99分);分析LCMS:純度99%(システムC,R=4.68分)、ES:286.5[MH]
1427のHRMS計算値:285.2052、実測値:285.2063。
【0111】
生物学的試験
雄C57bl/6マウスにおける一晩の体重変化の測定
このモデルでは、有効血中濃度投与量を最大にするために、午後から午前の期間における化合物の体重増加に対する作用を研究した。典型的には、図1に示すように、マウスは暗期の間に体重が約1g増加したが、明期中にこの体重増加分の大半が失われた。24時間のあらゆる期間にわたる体重の差は極めて小さいが、暗期の開始時から明期の開始時への(午後〜午前)体重の差は最大であった。
【0112】
暗期中ずっと体重変化を測定することが重要である。マウスに活性化合物を2日連続で投与して、体重変化を第一の投与から48時間後に記録したところ、有意な作用は観察されなかった。しかしながら、暗期中の体重変化のみを考察した場合、有意で安定した作用が見られた。なぜならこれは、明期中にマウスの体重がリバウンドして暗期の間の体重増加の損失を補うためである。活性が非常に長く持続する化合物はまた、このリバウンドを減らして、48時間にわたり体重を減少させることができる。
【0113】
雄C57bl/6マウスにおける連続数日にわたる体重変化
暗期の開始時から明期の開始時への(午後〜午前)体重の差は、2日連続して午後から午後までの間に測定した体重の差よりも大きかった。従って、有効血中濃度投与量を最大にするために午後〜午前差に対する化合物の作用を研究した。
【0114】
C57bl/6マウスをグループ分けし(ケージ1つあたり5匹)、新環境順応のために5日間そのままにした。暗期になる直前に、1回用量(60mg/kg)を腹腔内(ip)投与した。
【0115】
化合物は、水に溶解させるか、3%以下のクレモフォール(Cremophor)(この場合、基剤にもクレモフォールを含む)に溶解させた。化合物の性質に応じてpHを最小5.5から最大の8に調節した。
【0116】
図2および3で示されるように、式(I)の化合物は、マウスにおいて体重を減少させるのに有用である。
非組換え系におけるレプチン分析
組換え系(例えば、ObRbでトランスフェクションされたHEK293細胞)は十分に特徴付けられているが、このような系は、レプチンがSTAT3リン酸化の非常に著しい増加を引き起こす場合、試験化合物のレプチン受容体に対する活性の正確な尺度を提供できないことが多かった。ほとんどの場合、受容体の過剰発現(加えて、異なる薬物が、レプチンとその受容体との会合によって発生したシグナル伝達経路の異なる部分に作用した可能性)のために、試験された薬物の活性がないという結果が得られたようである。
【0117】
非組換え系におけるレプチン受容体の発現は変動することが多いため、シグナルの安定性が実験の範囲内にとどまっている系を同定するには注意を払う必要がある。このような系を用いれば、レプチンに対する作用を評価することによって、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤を同定することができる(以下を参照)。
【0118】
レプチンは、主として脂肪細胞で生産されるが、ヒトの場合、レプチンをコードするmRNAは胎盤にも存在する。ここで、レプチンは、微小血管系において重要な血管増殖に関する役割を果たす可能性がある。天然細胞系においてこの仮説が用いられるかどうかを評価した。
【0119】
JEG−3プロトコール
JEG−3細胞(絨毛癌細胞系)において、レプチンは、増殖を3倍まで刺激することができる(Biol.Reprod.(2007)76:203−10)。またレプチンによって、JEG−3細胞における[H]−チミジン取り込みにおける濃度依存性も増加した(図4、100nMで最大の作用(EC50=2.1nM))。細胞に取り込まれた放射活性はその血管増殖活性の指標であり、これらは、液体シンチレーション・ベータ・カウンターを用いてカウント毎分(CPM)で測定した。
【0120】
この発見を応用すれば、化合物が、レプチンの細胞増殖に対する作用を再現することができるのか(レプチン受容体アゴニスト模倣剤)(すなわち、所定の化合物は、細胞により取り込まれた[H]−チミジンの増加を引き起こすと予想される)、または、レプチンが介在する[H]−チミジン取り込みの増加を防ぐことによってレプチンの作用を阻害することができるのか(アンタゴニストの作用)を試験することができる。
【0121】
このアプローチは、非組換え系を用いるという利点があり、さらに、適度な再現性と安定性がある。
脳への侵入の測定
実験動物(げっ歯類)に、一般的には静脈内(IV)または経口(PO)経路で調査中の基質を大量投与した。適切なタイムポイントで血液サンプルを採取し、得られた血漿を抽出し、基質濃度および必要に応じて代謝産物濃度に関して解析した。同様のタイムポイントで他のグループの動物を殺し、脳を単離し、脳の表面をきれいにした。続いて脳サンプルをホモジナイズし、抽出し、基質濃度および必要に応じて代謝産物濃度について解析した。あるいは、実験動物の1ヶ所またはそれ以上の脳の領域に微小透析プローブを埋め込み、その後の解析のために適切なタイムポイントでサンプルを回収した。この方法は、細胞外の基質濃度のみが測定できるという利点がある。続いて血漿の濃度と脳の濃度とを比較し、個々のタイムポイントの平均濃度を比較すること、または、濃度−時間プロットの濃度曲線下面積(AUC)を計算することのいずれかによって比率を計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体またはN−オキシド体であって、
Aは、
【化2】

[式中:X1は、NまたはCHである]
および
【化3】

[式中:Xは、N(R)、CH(R)またはOである]
から選択され、
1は、水素、C1−6アルキル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)、C1−6アシル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)、フェニルおよびベンジル(いずれもが、非置換またはハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、C1−6アルキルおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)から選択され;
およびRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)およびC1−6アルコキシ(非置換またはハロゲン、ヒドロキシおよびC1−6アルコキシから独立して選択される1以上の置換基で置換されていてもよい)から独立して選択され;
Yは、CH、OまたはN(R)であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
aおよびbは、それぞれ独立して1、2または3であり;
cおよびdは、それぞれ独立して0、1または2であり;
eは、1、2または3であり;
ただし、
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−ピペリジニル)エチル;
・N−(4−ピペリジニルメチル)−4−モルホリンカルボキサミド;
・4−[1−オキソ−3−(4−ピペリジニル)プロピル]−モルホリン;
・4−[1−オキソ−3−(1−ピペラジニル)プロピル]−モルホリン;
・4−[3−[4−(4−クロロフェニル)−1−ピペラジニル]−1−オキソプロピル]−モルホリン;
・N−[3−(1−ピペラジニル)プロピル]−4−モルホリンカルボキサミド;
・2−(ヒドロキシメチル)−4−モルホリンカルボン酸2−モルホリニルメチル;および
・N−[[4−(3,4−ジクロロフェニル)メチル]−2−モルホリニル]メチル−4−モルホリンカルボキサミド
からなる群からは選択されない、上記化合物。
【請求項2】
YがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、
【化4】

である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、C1−4アルキル、シアノ−C1−4アルキル、フェニルおよびベンジルから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、水素およびメチルからそれぞれ独立して選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
式(I’):
【化5】

[式中:X1、R1、Rおよびeは、請求項1で定義した通りである]
の化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
3のいずれもがメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記2つのメチル基が、シス型立体配座にある、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
・モルホリン−4−カルボン酸(1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル;
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−[4−(シアノメチル)ピペラジン−1−イル]エチル;および
・(2R,6S)−2,6−ジメチルモルホリン−4−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を、医薬的に許容される希釈剤または担体と共に、有効成分として含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
療法における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
体重増加に伴う状態または疾病の治療または予防における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
前記状態または疾病が、肥満、2型糖尿病、リポジストロフィ、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、高血糖、高インスリン血症、脂質異常症、肝臓脂肪症、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患または黄斑変性症である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性不妊症または免疫不全の治療または予防における使用、または、創傷治癒の治療における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
炎症状態または疾病、肥満および血漿レプチン過剰に伴う低度の炎症、アテローム性動脈硬化、1型または2型糖尿病の大血管または微小血管の合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または、虚血またはアテローム性動脈硬化に起因する血管損傷の治療または予防における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
血管新生の阻害における使用のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
体重増加に伴う状態または疾病の治療または予防用薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項18】
前記状態または疾病が、肥満、2型糖尿病、リポジストロフィ、インスリン抵抗性、メタボリック・シンドローム、高血糖、高インスリン血症、脂質異常症、肝臓脂肪症、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患または黄斑変性症である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性不妊症または免疫不全の治療または予防用薬剤の製造、または、創傷治癒の治療用薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
炎症状態または疾病、肥満および血漿レプチン過剰に伴う低度の炎症、アテローム性動脈硬化、1型または2型糖尿病の大血管または微小血管の合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または、虚血またはアテローム性動脈硬化に起因する血管損傷の治療または予防用薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
血管新生阻害における使用のための薬剤の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
体重増加に伴う状態または疾病を治療または予防する方法であって、このような治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に、有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、上記方法。
【請求項23】
前記状態または疾病が、肥満、2型糖尿病、リポジストロフィ、インスリン抵抗性、メタボリック・シンドローム、高血糖、高インスリン血症、脂質異常症、肝臓脂肪症、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患または黄斑変性症である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性不妊症または免疫不全を治療または予防する方法、または、創傷治癒を治療する方法であって、このような治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に、有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、上記方法。
【請求項25】
炎症状態または疾病、肥満および血漿レプチン過剰に伴う低度の炎症、アテローム性動脈硬化、1型または2型糖尿病の大血管または微小血管の合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または、虚血またはアテローム性動脈硬化に起因する血管損傷の治療または予防方法であって、このような治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に、有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、上記方法。
【請求項26】
血管新生を阻害する方法であって、このような治療を必要とするヒトを含む哺乳動物に、有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、上記方法。
【請求項27】
請求項1の化合物の製造方法であって、
(a)式(II):
【化6】

[式中:X1、R1、R2、a、cおよびeは、請求項1で定義した通りである]
の化合物を、適当な溶媒(DCMなど)中の適当な塩基(NMMなど)の存在下、−10〜40℃でクロロギ酸4−ニトロフェニルまたは炭酸ビス(4−ニトロフェニル)と反応させ、
式(III):
【化7】

の化合物を生成させること、
(b)式(III)の化合物を、式(IV):
【化8】

[式中:R3、bおよびdは、請求項1で定義した通りである]
の化合物と、適当な溶媒(DMFなど)中で適当な塩基(DIPEAまたはDMAPなど)の存在下、−10〜40℃で反応させ、式(I)の化合物を得ること、および
(c)任意に、1以上の工程で、式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物に変換すること、
を含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506298(P2011−506298A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536478(P2010−536478)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066917
【国際公開番号】WO2009/071678
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】