説明

新規化合物

【課題】π電子共役系の発達したオリゴアリーレン誘導体を効率よく製造するための前駆体となるアセチレン誘導体及びジルコナシクロペンタジエン誘導体を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)及び(2)で表される新規化合物。


(式(1)中、A1は、1価の芳香族基を表し、A2は、2価の芳香族基を表し、Z1は、炭素原子数3〜5の直鎖脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2を表す。また、式(2)中、A1、A2及びnは、式(1)と同様の基であり、環B1は、5〜7員環を表し、Cpはシクロペンタジエンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアセチレン誘導体及びジルコナシクロペンタジエン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴアリーレン誘導体は、優れた熱安定性及び化学安定性を有する化合物であり、π電子共役系が発達しており、その特異な物性から、導電性ポリマー、電界発光素子、光電変換素子等への応用が期待されている。中でもチオフェン環を有するオリゴアリーレン誘導体は、高い特性を有することから盛んに検討されている。従来、オリゴアリーレン誘導体を製造する方法として、コオリゴマーに用いるコンポーネントをひとつひとつ繋いでいく方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、コオリゴマーのπ共役系をより拡大しようとすると、生成物の収率が低下してしまうという問題があり、複数種のオリゴアリーレン誘導体を効率よく、選択的に製造する方法が望まれていた。チオフェン環を形成する方法として、ジルコニウム化合物とアセチレン誘導体を用いた製造方法が特許文献2、非特許文献1及び2で開示されている。
よって、メタラシクロペンタジエンを有するオリゴアリーレン誘導体は、チオフェン環を有するオリゴアリーレン誘導体を効率よく製造するための前駆体として好ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特WO2008/032715号
【特許文献2】特開2010−180151号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Takahashi et al., J. Am. Chem. Soc., 1996, 118 5154-5155
【非特許文献2】T. Takahashi et al., J. Am. Chem. Soc., vol.121, No.48, 1999, 11095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、π電子共役系の発達したオリゴアリーレン誘導体を効率よく製造するための前駆体となるアセチレン誘導体及びジルコナシクロペンタジエン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物がオリゴアリーレン誘導体を製造するための前駆体として好適であることを知見し、更に、特定の製造工程を経ることで該中間体を選択的に効率よく製造することが可能であることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(1)で表される新規化合物を提供するものである。
【0008】
【化1】

(式中、A1は、1価の芳香族基を表し、A2は、2価の芳香族基を表し、Z1は、炭素原子数3〜5の直鎖脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2を表す。)
【0009】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される新規化合物を提供するものである。
【0010】
【化2】

(式中、A1は、1価の芳香族基を表し、A2は、2価の芳香族基を表し、環B1は、5〜7員環を表し、nは1又は2を表し、Cpはシクロペンタジエンを表す。)
【0011】
また、本発明は、上記一般式(1)又は(2)中のA1又はA2の少なくとも一つがチオフェン環を有する化合物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
上記一般式(2)で表される化合物は、π電子共役系の発達したオリゴアリーレン誘導体を選択的に効率よく製造可能であるため有用であり、上記一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(2)で表される化合物の前駆体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の新規化合物及びその好ましい製造方法について、好ましい実施形態に基づき詳細を説明する。但し、本発明は、以下の説明により何ら限定されるものではない。
【0014】
<一般式(1)で表される新規化合物>
上記一般式(1)におけるA1が表す1価の芳香族基としては、置換されてもよい炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素環基又は置換されてもよい炭素原子数3〜20の芳香族ヘテロ環基が挙げられる。
上記芳香族炭化水素環基としては、無置換芳香族炭化水素環基又は脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素環基(但し、脂肪族炭化水素基を含めた炭素原子数が6〜20であるもの)が挙げられ、芳香族ヘテロ環基としては、無置換芳香族ヘテロ環基又は脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基(但し、脂肪族炭化水素基を含めた炭素原子数が3〜20であるもの)が挙げられる。
【0015】
上記無置換芳香族炭化水素環基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレイル、ピレニル等が挙げられる。
【0016】
上記の脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素環基としては、例えば上記無置換芳香族炭化水素環基が炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で1〜3箇所置換されたものが挙げられ、該炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
上記炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基は、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR−、又は−C=C−で中断されていてもよく、Rは炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、その例としては、上記芳香族炭化水素環基を置換してもよい炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基の説明で例示した基が挙げられ、該炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基を中断する基に炭素原子を含む場合、中断される基を含めた炭素原子数が1〜5である。
【0017】
上記無置換芳香族ヘテロ環基としては、フラニル、チオフェニル、クロメニル、ベンゾチオフェニル、ビフラニル、ターフラニル、ビチオフェニル、ターチオフェニル、セレノフェニル、ビセレノフェニル、ターセレノフェニル等が挙げられる。
【0018】
上記の脂肪族炭化水素基で置換された芳香族ヘテロ環基としては、例えば上記無置換芳香族ヘテロ環基が炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で1〜3箇所置換されたものが挙げられ、上記炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基は、上記芳香族炭化水素環基を置換してもよい炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様の基である。
【0019】
以上に挙げた芳香族炭化水素環基又は芳香族ヘテロ環基は、更に置換されていてもよく、芳香族炭化水素環基及び芳香族ヘテロ環基を置換してもよい基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、−NRR’基等が挙げられ、R及びR’は上記A1が表す1価の芳香族基又は上記芳香族炭化水素環基を置換してもよい炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様の基を表す。
【0020】
上記例示したA1が表す1価の芳香族基の中でも、無置換の芳香族ヘテロ環基が好ましく、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ビチオフェニル若しくターチオフェニル等の1価のチオフェン環、又はセレノフェニル、ビセレノフェニル、又はターセレノフェニル等の1価のセレノフェン環であることが、光電変換素子等に用いた場合の特性に優れる点で更に好ましく、チオフェニル、ビチオフェニル、又はターチオフェニルである場合、原料の入手が容易であるため特に好ましい。
【0021】
上記一般式(1)におけるA2が表す2価の芳香族基としては、上記A1が示す1価の芳香族基から水素原子が1つ脱離した基が挙げられ、中でも上記A1と同様の理由で、無置換の芳香族ヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは、2価のチオフェン、ベンゾチオフェン、ビチオフェン若しくはターチオフェン等の2価のチオフェン環、又はセレノフェン等の2価のセレノフェン環である事が更に好ましく、2価のチオフェン、ビチオフェン、又はターチオフェンである事が特に好ましい。
【0022】
上記一般式(1)におけるZ1が表す炭素原子数3〜5の直鎖脂肪族炭化水素基としては、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルが挙げられ、これらの基は炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で1〜4箇所置換されていてもよく、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基は、上記芳香族炭化水素環基を置換してもよい炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様の基である。
【0023】
上記一般式(1)で表わされる新規化合物の中でも、光電変換素子等に用いた場合の特性に優れる点又は原料の入手が容易である点から、上記一般式(1)中のA1又はA2の少なくとも一つがチオフェン環を有する化合物、特に、A1及びA2の両方がチオフェン環を有する化合物が好ましい。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下のNo.1−1〜1−22の化合物が挙げられるが、本発明の新規化合物はこれらに限定されるものではない。
【0025】
【化3】

【0026】
【化3A】

【0027】
上記一般式(1)で表される新規化合物は、nが1である場合、以下の反応式(ア)に示す方法により効率よく得ることができるが、その合成方法には特に限定されない。即ち、ビスアルキン体(11)とモノハロゲン化アリール体(12)とをクロスカップリング反応により、中間体(13)とした後に、中間体(13)2当量とジハロゲン化アリール体(14)1当量をクロスカップリング反応することにより合成することができる。
【0028】
【化4】

(式中、A1、A2、及びZ1は、上記一般式(1)と同様の基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0029】
上記反応式(ア)において、ビスアルキン体(11)とモノハロゲン化アリール(12)の反応は、等モル量で反応させることが副生成物の量が少なくなる点で好ましい。また、中間体(13)とジハロゲン化アリール体(14)は、ジハロゲン化アリール体(14)を1当量としたとき、中間体(14)は少なくとも2当量が必要であり、2当量以上であれば特に限定されないが、目的化合物の収率が高く、低コストな点で、好ましくは2.1〜3.0当量であり、更に好ましくは2.3〜2.5当量である。
【0030】
また、上記一般式(1)におけるnが2である化合物は、以下の反応式(イ)に示す方法により効率よく得ることができるが、その合成方法には特に限定されない。即ち、上記中間体(13)1等量とジハロゲン化アリール体(14)1等量をクロスカップリング反応により中間体(15)とした後に、ビスアルキン体(11)とクロスカップリング反応させることにより合成することができる。
【0031】
【化5】

(式中、A1、A2及びZ1は、上記一般式(1)と同様の基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0032】
上記反応式(イ)において、中間体(13)とジハロゲン化アリール体(14)は、等モル量で反応させることが副生成物の量が少なくなる点で好ましい。また、中間体(15)とビスアルキン体(11)は、ビスアルキン体(11)を1当量としたとき、中間体(15)は少なくとも2当量が必要であり、2当量以上であれば特に限定されないが、目的化合物の収率が高く、低コストな点で、好ましくは2.1〜3.0当量であり、更に好ましくは2.3〜2.5当量である。
【0033】
本発明の上記一般式(1)で表される新規化合物は、以下に説明する上記一般式(2)の前駆体として好適に用いることができる他、有機半導体材料として、キャリア輸送材料等に用いることができる。
【0034】
<一般式(2)で表される新規化合物>
上記一般式(2)におけるA1及びA2が表す基としては、上記一般式(1)におけるA1及びA2で例示したものが挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)における環B1が表す5〜7員環としては、脂肪族炭化水素環、即ち、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチルが挙げられ、これらの環は、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で1〜4箇所置換されていてもよく、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基は、上記芳香族炭化水素環基を置換してもよい炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様の基であり、中でも、共平面性及び溶解性の点から、無置換のシクロペンチル又は炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で1〜2箇所置換されたシクロペンチルが好ましい。
【0036】
また、環B1が、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基で置換される場合、溶解性及び共平面性の点から、下記一般式(2)−1で表わされるように、環中の炭素原子の一つ(X1)が、2箇所、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基(R1及びR2)で置換されていることが好ましく、特に、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基が同一の基であることが特に好ましい。
【0037】
【化5A】

(式中、A1、A2及びnは、上記一般式(2)と同様であり、環B1'は、5〜7員環を表し、X1は炭素原子を表し、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基は、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2−、−NR−又は−C=C−で中断されていてもよく、Rは炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0038】
上記一般式(2)で表わされる新規化合物の中でも、光電変換素子等に用いた場合の特性に優れる点又は原料の入手が容易である点から、上記一般式(2)中のA1又はA2の少なくとも一つがチオフェン環を有する化合物、特に、A1及びA2の両方がチオフェン環を有する化合物が好ましい。
【0039】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、以下のNo.2−1〜2−22の化合物が挙げられるが、本発明の新規化合物はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化6】

【0041】
【化6A】

【0042】
【化6B】

【0043】
【化6C】

【0044】
上記一般式(2)で表される新規化合物は、以下の反応式(ウ)に示す方法により得ることができるが、その合成方法には特に限定されない。即ち、Cp2ZrCl2を2当量のn−BuLiにより還元し、そこへ上記一般式(1)で表される化合物を反応させることにより環化した上記一般式(2)を得ることが出来る。
【0045】
【化7】

(式中、A1、A2、環B1、Cp及びnは、上記一般式(2)と同様の基を表し、Z1は、上記一般式(1)と同様の基を表す。)
【0046】
本発明の上記一般式(2)で表される新規化合物は、以下の反応式(エ)に示す方法により、電界発光素子、光電変換素子等に有用なチオフェン誘導体(3)へ容易に変換することが出来るため、チオフェン誘導体(3)の前駆体として好適に用いることが出来る他、SiCl2を用いることでシロール誘導体、また、ジメチルアセチレンジカルボキシレート及び塩化銅を用いることでフェニレン誘導体を合成するための前駆体等に用いることができる。
【0047】
【化8】

(式中、A1、A2、環B1、Cp、及びnは、上記一般式(2)と同様の基を表す。)
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)化合物No.2−1の製造
<ステップ1>1−(2,2’−ビチオフェン)−4,4−ビス(ブトキシメチル)−1,6−ヘプタジイン(下記〔化9〕に示される中間体A−1)の製造
4,4−ビス(ブトキシメチル)−1,6−ヘプタジイン(3.36g、12.7mmol)、2−ブロモ−5−(2’−チエニル)チオフェン(3.11g、12.7mmol)、Pd(PPh34(147mg、0.127mmol)、CuI(48mg、0.254mmol)及びトリエチルアミン(5ml)を、テトラヒドロフラン(40ml)中で混合し、室温にて攪拌させながら12時間反応させた。得られた反応溶液を、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(ヘキサン:酢酸エチル=25:1の移動相溶媒)で精製することにより、無色透明液体(3.7g、単離収率68%)を得た。目的物であることは、1H−NMR、13C−NMR、及び高分解能質量分析スペクトル(HRMS)にて確認した。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.21(dd、J=0.8,5.1Hz、1H)、7.15(dd、J=0.8,3.9Hz、1H)、6.99−7.03(m、3H)、3.42−3.47(m、8H)、2.62(s、2H)、2.42(d、J=2.8Hz、1H)、2.00(t、J=2.8Hz、1H)、1.52−1.58(m、4H)、1.36−1.43(m、4H)、0.93(t、J=7.5Hz、6H)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):δ=137.5、136.9、131.8、127.8、124.7、123.9、123.2、122.8、92.3、81.1、77.2、75.5、71.5、71.2、70.3、42.4、31.7、23.3、22.2、19.3
HRMS(EI):428.1843(計算値);428.1843(測定値)
【0050】
【化9】

【0051】
<ステップ2>化合物No.1−1の製造
ステップ1で得られた中間体A−1(1.89g、4.4mmol)、5,5’−ジブロモ−(2,2’−ビチオフェン)(583mg、1.8mmol)、Pd(PPh34(42mg、0.036mmol)、CuI(14mg、0.072mmol)及びトリエチルアミン(1.7ml)を、テトラヒドロフラン(10ml)中で混合し、45℃にて攪拌させながら12時間反応させた。得られた反応溶液を、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(ヘキサン:酢酸エチル=15:1の移動相溶媒)で精製することにより淡黄色液体(1.56g、単離収率85%)を得た。目的物であることは、1H−NMR、13C−NMR、及び高分解能質量分析スペクトル(HRMS)にて確認した。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.22(dd、J=0.8,4.8Hz、2H)、7.16(dd、J=0.8,3.6Hz、2H)、7.00−7.05(m、8H)、6.97−6.99(dd、J=0.8,3.6Hz、2H)、3.46−3.51(m、16H)、2.68(s、8H)、1.55−1.62(m、8H)、1.39−1.47(m、8H)、0.96(dt、J=7.2,7.6Hz、12H)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):δ=137.6、136.9、136.8、131.9、131.8、127.8、124.6、123.9、123.4、123.2、123.1、122.7、92.7、92.3、75.63、75.56、71.8、71.3、43.0、31.7、23.7、19.4、13.9
HRMS(EI):1018.3285(計算値);1018.3280(測定値)
【0052】
<ステップ3>化合物No.2−1の製造
Cp2ZrCl2(371mg、1.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液を−78℃に冷却し、n−BuLi(1.62M/ヘキサン溶液、2.54mmol)を滴下し、同温のまま1時間反応させた。次に、ステップ2で得られた化合物No.1−1(507mg、0.49mmol)のテトラヒドロフラン溶液を混合し、30〜35℃にて5時間反応させた。溶媒を減圧留去し、残渣を少量のトルエンで分散し、窒素下でろ過し、ヘキサンで繰り返し残渣を洗浄した。残渣を乾燥させ、目的物を窒素下で1H−NMR及び13C−NMRで確認した。
1H−NMR(400MHz、C66):7.35(d、J=4.0Hz、2H)、7.22(d、J=3.6Hz、2H)、7.08(dd、J=1.2,3.2Hz、2H)、6.75(dd、J=1.2,5.2Hz、2H)、6.71(dd、J=3.6,5.2Hz、2H)、6.46(d、J=4.0Hz、2H)、6.38(d、J=4.0Hz、2H)、6.01(s、20H)、3.44(s、8H)、3.36(t、J=6.0Hz、8H)、3.17(s、4H)、3.14(s、4H)、1.45−1.55(m、8H)、1.31−1.41(m、8H)、0.85(t、J=7.2Hz、12H)
13C−NMR(100MHz、C66):172.1、171.8、150.4、149.9、138.7、137.3、136.3、129.6、129.3、128.5、127.8、127.3、124.0、123.9、123.5、123.3、110.6、74.2、71.3、44.7、42.9、42.8、32.0、19.7、14.1
【0053】
(実施例2)化合物No.2−2の製造
<ステップ1>1−(5’−ブロモ−2,2’−ビチオフェニル)−7−(2,2’−ビチオフェニル)−4,4−ビス(ブトキシメチル)−1,6−ヘプタジイン(下記〔化10〕に示される中間体A−2)の製造
上記実施例1のステップ1で得られた中間体A−1(1.89g、4.4mmol)、5,5’−ジブロモ−(2,2’−ビチオフェン)(583mg、1.8mmol)、Pd(PPh34(42mg、0.036mmol)、CuI(14mg、0.072mmol)及びトリエチルアミン(1.7ml)を、THF(10ml)にて混合し、室温にて攪拌させながら12時間反応させた。得られた反応溶液を、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(ヘキサン:酢酸エチル=25:1の移動相溶媒)で精製することにより、黄色液体(1.51g、単離収率51%)を得た。目的物であることは、1H−NMR、13C−NMR、及び高分解能質量分析スペクトル(HRMS)にて確認した。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.20−7.24(m、1H)、7.14−7.18(m、1H)、7.00−7.06(m、4H)、6.96(dd、J=0.8,4.0Hz、1H)、6.94(d、J=4.0Hz、1H)、6.89(d、J=4.0Hz、1H)、3.48−3.53(m、8H)、2.70(s、4H)、1.50−1.70(m、4H)、1.30−1.50(m、4H)、0.98(t、J=7.5Hz、6H)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):δ=138.3、137.5、136.8、136.4、131.8、130.6、127.8、124.6、123.9、123.8、123.4、123.3、123.1、122.7、111.3、92.8、92.2、75.5、75.4、71.8、71.2、43.0、31.6、23.7、19.3、13.9
HRMS(EI):670.0703(計算値);670.0700(測定値)
【0054】
【化10】

【0055】
<ステップ2>化合物No.1−2の製造
4,4−ビス(ブトキシメチル)−1,6−ヘプタジイン(193mg、0.73mmol)、ステップ1で得られた中間体A−2(1.18g、1.75mmol)、Pd(PPh34(23mg、0.02mmol)、CuI(8mg、0.04mmol)及びトリエチルアミン(0.7ml)をテトラヒドロフラン(8ml)中で混合し、45℃にて攪拌させながら12時間反応させた。シリカゲルカラムクロマトグラフ法(ヘキサン:酢酸エチル=6:1の移動相溶媒)で精製することにより黄色粘稠体(675mg、単離収率64%)を得た。目的物であることは、1H−NMR、13C−NMR、及び高分解能質量分析スペクトル(HRMS)にて確認した。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.22(dd、J=1.2,5.1Hz、2H)、7.16(dd、J=0.8,3.6Hz、2H)、6.96−7.05(m、14H)、3.45−3.52(m、24H)、2.67(s、12H)、1.52−1.62(m、12H)、1.37−1.47(m、12H)、0.95(t、J=7.5Hz、12H)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):δ=137.5、136.97、136.94、136.8、131.9、131.8、127.8、124.6、123.9、123.4、123.2、123.16、123.11、122.7、92.7、92.6、92.3、75.6、75.5、71.8、71.3、43.0、31.7、23.7、19.4、13.9
HRMS(EI):1444.4972(計算値);1444.4990(測定値)
【0056】
<ステップ3>化合物No.2−2の製造
Cp2ZrCl2(63mg、0.215mmol)のテトラヒドロフラン溶液を−78℃に冷却し、n−BuLi(1.62M/ヘキサン溶液、0.43mmol)を滴下し、同温のまま1時間反応させた。次に、ステップ2で得られた化合物No.1−1(80mg、0.055mmol)のテトラヒドロフラン溶液を混合し、30〜35℃にて5時間反応させた。溶媒を減圧留去し、残渣を少量のトルエンで分散し、窒素下でろ過し、ヘキサンで繰り返し残渣を洗浄した。残渣を乾燥させ、目的物を窒素下で1H−NMR及び13C−NMRで確認した。
1H−NMR(400MHz、C66):7.35(d、J=3.2Hz、4H)、7.22(d、J=4.0Hz、2H)、7.09(d、J=2.8Hz、2H)、6.72(m、4H)、6.46(m、4H)、6.38(d、J=3.2Hz、2H)、6.02(s、30H)、3.44(s、12H)、3.36(t、J=6.4Hz、12H)、3.18(s、8H)、3.14(s、4H)、1.45−1.55(m、12H)、1.31−1.41(m、12H)、0.85(m、18H)
13C−NMR(100MHz、C66):172.1、172.0、171.8、150.4、150.0、149.9、138.8、137.5、137.3、136.3、129.7、129.5、129.3、128.5、127.8、127.5、127.4、127.3、124.0、123.9、123.6、123.3、110.5、74.2、71.3、44.7、42.9、42.8、32.0、19.7、14.1
【0057】
上記結果から明らかなように、上記一般式(2)で表わされる化合物(化合物No.2−1及びNo.2−2)は、上記一般式(1)で表される化合物(化合物No.1−1及びNo.1−2)から、効率よく製造できることが確認された。
得られた上記一般式(2)で表わされる化合物(化合物No.2−1及びNo.2−2)は、塩化硫黄(S2Cl2)と反応させることにより、チオフェン誘導体(3)へ容易に変換することが出来るため、チオフェン誘導体(3)の前駆体として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される新規化合物。
【化1】

(式中、A1は、1価の芳香族基を表し、A2は、2価の芳香族基を表し、Z1は、炭素原子数3〜5の直鎖脂肪族炭化水素基を表し、nは1又は2を表す。)
【請求項2】
1又はA2の少なくとも一つの基がチオフェン環を有する請求項1に記載の新規化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される新規化合物。
【化2】

(式中、A1は、1価の芳香族基を表し、A2は、2価の芳香族基を表し、環B1は、5〜7員環を表し、nは1又は2を表し、Cpはシクロペンタジエンを表す。)
【請求項4】
1又はA2の少なくとも一つの基がチオフェン環を有する請求項3に記載の新規化合物。

【公開番号】特開2013−32313(P2013−32313A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169521(P2011−169521)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「日本化学会第91春季年会(2011)講演予稿集II」、社団法人日本化学会、平成23年3月11日発行
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】