説明

新規可食性水溶性フィルム

【課題】透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルム、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】海苔の成分である硫酸多糖ポルフィランをフィルム形成素材として用いてフィルムを製造することにより、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムを製造することができる。本発明により、加工が簡単で、安全性の高い天然植物素材由来の単一成分からなるフィルムの形成が可能であり、無味、無色、無臭で、透明性、柔軟性、耐熱性に富み、弾性力を持ち、かつ強度のある薄膜を形成し、水溶性、密着性を有するなど、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムの提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔の成分である硫酸多糖ポルフィランをフィルム形成素材として用いて製造された、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからオブラートのような可食性のフィルムを用いて、菓子類等の食品を包んでそのまま喫食できる包装形態としたり、或いは、散剤を包んで取り扱いを容易にしたりすることが行われてきた。近年は、食品や栄養剤、或いは医薬品等の包装材又は担体として、可食性フィルムが利用されており、各種の可食性フィルムが開発されている。可食性フィルム形成素材としては、主として天然の多糖類やペプチド、タンパク質等が用いられており、該天然素材は、単独で(単一成分で)フィルム形成に用いられたり、或いはその物性を改良するために、各種の成分を添加してフィルム形成に用いられている。
【0003】
可食性水溶性フィルムとしては、可食性、かつ水溶性の天然多糖或いはタンパク質類のフィルムが良く知られており、該フィルムについては、従来の技術として数多くの開示がある。また、主として、単一成分(化合物)からなるフィルムについては、これまでの開示を原料別に列記すると次のようなものが挙げられる:(1)澱粉(特開2000−342193号公報)、(2)澱粉誘導体(ヒドロキシプロピル誘導体)(特開2000−342193号公報)、(3)グルコマンナン(米国特許5695800号明細書)、(4)プルラン(特開平11−313619号公報、特開2003−96103号公報)、(5)カードラン(特開2000−157185号公報)、(6)カラギーナン、キサンタンガム等の多糖類(特開2000−41621号公報)、(7)キチン/キトサンのリゾチーム処理物(特開2004−217933号公報)、(8)コラーゲン(特開昭60−203149号公報、特開平2−124061号公報)、コラーゲン(エタノール媒質中に吐出成形したもの)(特開平6−228506号公報)、コラーゲンをUV照射して熱水溶解性を付与したもの(特開平9−124804号公報)、(9)カゼイン(特開昭51−121535号公報)、(10)ゼラチン(特開昭53−34939号公報)、ゼラチンをトランスグルタミナーゼで架橋したもの(特許第2866746号公報)、(11)大豆タンパク質(特開平7−227216号公報)。
【0004】
これらの可食性水溶性フィルムについては、フィルムの透明性、色、味、臭い、強度、柔軟性、弾力性、水溶性(速溶性、冷水溶解性)、耐熱性、成形性、保湿性、耐湿性、溶解後のべたつき感などの特性、コスト面など経済性、製造プロセスの簡便性などの観点からその長所、短所で評価される。例えば、澱粉はコスト的には安価であり、保湿能は高いが、単独ではフィルムの強度、柔軟性、弾力性、透明性に難点があり、その誘導体が検討されている。そこで、澱粉の欠点を改良するために誘導体を用いる他に、α化澱粉とプルランの混合物、ヒドロキシアルキル化澱粉を酵素処理後糖アルコールと混ぜたり(特開2005−21124号公報)、澱粉誘導体と糖アルコール、又は、単糖、2糖、オリゴ糖を混合したり(特開2004−248665号公報)、澱粉と脂肪酸塩を混合したりして(特開平9−295744号公報)、透明性、強度の改良を行なうことが開示されている。
【0005】
更に、澱粉誘導体(ヒドロキシプロピル化澱粉)において、単糖、2糖、オリゴ糖と混合してフィルム柔軟性、冷水可溶性を改良することの開示が(特開2000−342193号公報)、グルコマンナンについては、コンニャク粉の脱アセチル化によりフィルム化する際に、コンニャク粉+寒天+ゼラチンにより強度を高めることが開示されている(特許第3103799号公報)。
【0006】
微生物由来の多糖類プルランについては、無色、無味、無臭、透明性、成形性、付着性、保湿能など単独でも広い特性を有し、良いフィルム形成能を持ってはいるが、高湿度下での挙動、低湿度下での弾力性の低下などの課題もある。そこで、プルランにグリセリン、糖アルコールを加えることにより、湿度変化に安定性のあるフィルムを形成したり、また、プルランにトレハロースを加えることによって湿度変化に対する安定性の向上、例えば低湿度下でのひび割れ、強度の改善を図ったり(WO2002/088246)、更には、プルラン+ゼラチン、プルラン+カラギ−ナン、プルラン+カラギ−ナン+ゼラチン、プルラン+澱粉などの混合物で、接着性の良い薄膜フィルムを形成したり(特開平9−140330号公報)、その他、寒天+ゼラチンにより耐湿性、ヒートシール性の改良を行なうことの開示がある。
【0007】
タンパク質系の素材については、ゼラチン、カゼイン、大豆ペプチドなどの素材がフィルム形成に利用されているが、ゼラチンは25〜30℃で融解し、コラーゲンは40〜50℃で溶けるために、フィルムは加熱すると軟化、溶解、ブロッキングするなどの欠点があった。その欠点を改良するために、ゼラチンをトランスグルタミナーゼで架橋する方法(特許第2866746号公報)、及びコラーゲンフィルムの紫外線照射、加熱処理(特開平9−124804号公報)により、フィルムの耐熱性、耐湿性、強度を向上するなどの加工が行われている。また、前述したように、これらの欠点を補うためにタンパク系の素材は他の素材との混合によるフィルム化が行われている。例えば、カゼインアルカリ金属塩層と水溶性多糖類層との二重層にしてブロッキングを防ぐことが(特開平2−312555号公報)、大豆タンパク質又は大豆タンパク質とゼラチンと水溶性多糖類との二重層でできるフィルムとすることが(特許第2714701号公報)、開示されている。しかし、タンパク系の素材は共通して加熱すると着色する、アンモニア臭、ミルク臭、大豆臭など素材によって独特の臭気がでる、透明性が低いなどの問題がある。
【0008】
海藻由来の水溶性多糖類カラギ−ナン、アルギン酸についてはフィルムの高湿度下でのべとつき感、強度の問題があり、単独フィルムとしては使われず、したがって、アルギン酸ナトリウムは澱粉と混合することによって(特開平5−30891号公報)、アルギン酸ナトリウムと多価アルコールと混合することによって耐ブロッキング性、ヒートシール性を改良すること(特開平4−51852公報)、或いは、アルギン酸又はカラギーナンを、多価アルコール、糖アルコール、単糖類、二等類、オリゴ糖と混合することによって、フィルムの強度と、耐熱性、ヒートシール性を改善することが開示されている(特開昭62−126940公報)。
【0009】
上記のように、従来、種々のフィルム形成素材から、各種の可食性水溶性フィルムが開発され開示されているが、無味、無色、無臭で、透明性、柔軟性、耐熱性に富み、弾性力を持ち、かつ強度のある薄膜を形成し、水溶性、密着性を有するなど、総合的に優れた物性を持ち、食品用途、化粧品用途、或いは医薬用途に使用して優れた特性の単一素材からなる可食性水溶性フィルムは開示されていない。特に、単一素材(成分)からなるフィルムは、製造プロセスが簡単であり、コスト的にも安価であり、単一成分の素材特性がそのまま発揮できるなど商品価値もあり、単一成分であるため、安全性面からも消費者は納得しやすいなどの多くの利点を有するものであるが、該単一素材(成分)からなるフィルムで、上記のような総合的に優れた物性を持ち、食品用途、化粧品用途、或いは医薬用途に使用して優れた特性の可食性水溶性フィルムは開示されていない。
【特許文献1】特開昭51−121535号公報。
【特許文献2】特開昭53−34939号公報。
【特許文献3】特開昭60−203149号公報。
【特許文献4】特開昭62−126940公報。
【特許文献5】特開平2−124061号公報。
【特許文献6】特開平2−312555号公報。
【特許文献6】特開平4−51852号公報。
【特許文献7】特開平5−30891号公報。
【特許文献8】特開平6−228506号公報。
【特許文献9】特開平7−227216号公報。
【特許文献10】特開平9−124804号公報。
【特許文献11】特開平9−140330号公報。
【特許文献12】特開平9−124804号公報。
【特許文献13】特開平9−295744号公報。
【特許文献14】特開平11−313619号公報。
【特許文献15】特開2000−41621号公報。
【特許文献16】特開2000−157185号公報。
【特許文献17】特開2000−342193号公報。
【特許文献18】特開2003−96103号公報。
【特許文献19】特開2004−217933号公報。
【特許文献20】特開2004−248665号公報。
【特許文献21】特開2005−21124号公報。
【特許文献22】特許第2714701号公報。
【特許文献23】特許第2866746号公報。
【特許文献24】特許第3103799号公報。
【特許文献25】WO2002/088246。
【特許文献26】米国特許5695800号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルム、及びその製造方法を提供すること、特に、加工が簡単で、安全性の高い天然植物素材由来の単一成分からなるフィルムの形成が可能であり、無味、無色、無臭で、透明性、柔軟性、耐熱性に富み、弾性力を持ち、かつ強度のある薄膜を形成し、水溶性、密着性を有するなど、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムであり、食品用途、化粧品用途、或いは医薬用途に使用して優れた特性を発揮する可食性水溶性フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、海苔の成分である硫酸多糖ポルフィランをフィルム形成素材として用いてフィルムを製造することにより、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムを製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明の可食性水溶性フィルムは、特に、加工が簡単で、安全性の高い天然植物素材由来の単一成分からなるフィルムを形成して、無味、無色、無臭で、透明性、柔軟性、耐熱性に富み、弾性力を持ち、かつ強度のある薄膜を形成し、水溶性、密着性を有するなど、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムとすることが可能であり、該可食性水溶性フィルムを食品用途、化粧品用途、或いは医薬用途に使用して優れた特性を発揮する可食性水溶性フィルムとして提供することができる。
【0012】
本発明において、可食性水溶性フィルムのフィルム形成素材として用いるポルフィランとしては、海苔より抽出したポルフィランを脱色し、濃縮した粗精製ポルフィランを用いることができるが、ポルフィラン中の硫酸基の塩を、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩に変換して改質したポルフィランを特に好ましいフィルム形成素材として用いることができる。また、本発明においては、ポルフィランを用いたフィルムの製造を容易にするために、ポルフィランの分子量を、600,000から1,000までの範囲に調整することができる。本発明において、可食性水溶性フィルムはシート状のフィルム或いはカプセルの形状に形成することができるが、本発明におけるポルフィランをコーテイング剤として用いて、該ポルフィランの水溶液をコーテイング物質の表面に塗布して、被コーテイング物質の表面に被膜を形成させ、直接、被コーテイング物質の表面にフィルムを形成することもできる。本発明の可食性水溶性フィルムは、食品用、化粧品又は医薬用として用いることができる。
【0013】
本発明の可食性水溶性フィルムについて、更に、詳細に説明すると、天然素材の単一成分からなる可食性、水溶性フィルム、シートは数多く報告されている。これらの素材は個々には優れた性質を有してはいるが、透明性、味、臭、柔軟性、膜厚や強度等、その利用に際して要求される物性について、総合的に判断した場合には、総て良いという素材は現在のところない。その結果、各素材はこれらの欠点を補うために、単一素材ではなく、他の素材と混合したり、又は物理化学的に処理したり、加工したりする例が多い。しかしながら単一素材からなるフィルムは製造プロセスが簡単であり、コスト的にも安価であり、更に、単一成分の素材特性がそのまま発揮できるなど商品価値もあり、また、安全性面からも消費者は納得しやすいなどの利点もあることから、単一素材からなる総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムは、特に、その利用価値が高い。
【0014】
海苔のポルフィランは海苔から熱水で抽出される高分子のガラクトース多糖であり、その構造中に硫酸基を有するため分子量が高くても水溶性である。ポルフィランは粘性を有するが、広く伸ばして乾燥させるとフィルム状の薄膜を形成する。その膜は水溶性であり、冷水にも良く溶ける。また、ポルフィランは食経験の長い海苔の成分であることから、安全性は高く、可食性であり、口腔内で溶解するため、食品用途に有利に利用できる。また、ポルフィランフィルムは肌との密着性に優れ、化粧水を塗布後、皮膚に貼り付けると保湿能を付与するなどの特色を有するため、化粧品への利用性に優れ、また、医薬用用途としての利用価値も有している。
【0015】
本発明において、ポルフィランから形成したフィルムは、無色、無味、無臭で透明性が高く、耐熱性があり、強度は高い。また、柔軟性があり、保湿性に優れ、低湿度下においても弾力性を維持し、ひび割れは発生しないなど、多面的に優れた性質を有している。また、ポルフィランから形成したフィルムは水溶性が高く、低温においてもよく溶解する。保湿性は高いが、60〜70%ではべとつかないが、高湿度下(湿度80%以上)では付着が起こるなど耐湿性上の課題はあるが、総合的には優れたフィルムを単一成分で形成するなどの性質を具備するものである。
【0016】
更に、説明すると、日本人にとって海苔は好まれる食材の一つで、多い人で1日に5〜6枚、普通は1日に1〜2枚食べる人が多い。海苔に30%近く含まれる多糖類であるポルフィランはガラクトースおよびガラクトース誘導体からなる硫酸高分子多糖である。ポルフィランは硫酸基を有するために分子量が40万〜60万の高分子であっても水溶性であり、海苔は食経験の長いことから安全性の高い可食性多糖類である。本発明者は、ポルフィランを海苔から抽出後、イオン交換樹脂で生成し、中和して単一塩を得る改質ポルフィランの製造方法及びその用途について開示したが(特開2005−255932号公報)、その後、該ポルフィランを用いて、更に研究した結果、ポルフィラン水溶液をフィルム支持体上に塗布し、塗布膜を乾燥し、水分を除去することにより、物性の優れたポルフィランフィルムを得ることができた。該フィルムは、ポルフィラン単一成分からなる可食性フィルムとして形成することができ、該フィルムは、既知の天然素材単一成分からなる可食性フィルムに比較して総合的にみて極めて優れた性質を有するものである。
【0017】
すなわち、ポルフィランフィルムは、無味、無色、無臭であり、透明性は高く、さらに柔軟性に優れ、他の単一成分素材からなる膜より強度的に優れており、更に、水に対する溶解性は常温でも低温度下でも高く、保湿性は高く、低湿度下において折り曲げてもフィルムにヒビが入ることもなく、弾力性に優れている。また、通常条件の加温によって着色したり、溶けたりすることもない。80%以上の高湿度下に置いた場合はフィルム間で癒着するが、湿度60〜70%程度では癒着はなく、また、通常条件の加湿によっても湾曲する傾向はないなど、ポルフィラン単一成分のフィルムは、総合的観点から評価すると欠点が少なく極めて優れた性質を有する。
【0018】
背景技術の項で説明したように、既存の天然高分子多糖類からなるフィルムやシートは、単一成分からなる場合は幾つかの点では優れたものは持っていても、欠点も幾つか認められ、従って、その利用に際しての個々の素材の評価、判断は多くの観点から総合的にされなければならないから、利用に際しての要求を総合的に満足する物性のフィルムは、容易には得られていなかった。例えば澱粉系のフィルムは価格的に安いが、透明性、弾力性、強度的に欠点がある。また、寒天、グルコマンナンは透明性に問題のないものもあっても、強度、弾力性に欠ける。ゼラチン、コラーゲン、ペプチドなどタンパク系のフィルムは強度、弾力性は優れているが、透明性に欠け、温度が一定以上に上がると軟化、溶融したり、着色したり、また、匂いが出る場合もある。
【0019】
また、カラギーナン、アルギン酸などの海藻多糖類の単一成分から出来たフィルムは透明性、柔軟性に優れているが、強度、高湿度下でのべたつき感ではポルフィランと比較すると問題が多い。プルランについては非常に評価の高いフィルムであるが、後述するように強度的にポルフィランより劣り、弾力性では低湿度下では課題がある(WO2002/088246)。したがって、これらの素材は単一で用いた場合の欠点を補うために、前述したように複数素材を混合して用いたり、単糖、オリゴ多糖、糖アルコールなどを添加したり、誘導体を作ったり、架橋剤を加えたり、複数の膜を張り合わせたり、混合、加工処理によりその欠点を補ったフィルムをつくる方法が多数報告されている。これに対してポルフィランは、単一成分でフィルムを作成した場合、湿度60〜70%で癒着は起きないが、80%以上の高湿度下に曝した場合はフィルム間の癒着するという耐湿性上の課題はあるが、保存下での湿度対策さえ施すなどすれば、総合的にみて、比類ない優れた特性を発揮できる。
【0020】
すなわち具体的には本発明は、(1)ポルフィランをフィルム形成素材として用いて製造された可食性水溶性フィルムや、(2)可食性水溶性フィルムが、フィルム形成素材としてポルフィラン単一成分を用いて製造されたことを特徴とする上記(1)記載の可食性水溶性フィルムや、(3)ポルフィランが、ポルフィラン中の硫酸基の塩を、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩に変換して改質したポルフィランであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の可食性水溶性フィルムや、(4)ポルフィランの分子量が、600,000から1,000までの範囲に調整されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の可食性水溶性フィルムからなる。
【0021】
また本発明は、(5)可食性水溶性フィルムが、シート状のフィルムとして形成されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の可食性水溶性フィルムや、(6)可食性水溶性フィルムが、水溶性カプセルの形状に形成されることを特徴とする上記(1)又は(4)のいずれか記載の可食性水溶性フィルムや、(7)可食性水溶性フィルムが、食品用、化粧品又は医薬用として用いられることを特徴とする上記(5)又は(6)記載の可食性水溶性フィルムや、(8)上記(1)〜(4)のいずれか記載のポルフィランの水溶液を、フィルム支持体上に塗布或いはスプレイし、乾燥して、シート状のフィルムとして形成するか、又は、上記(1)〜(4)のいずれか記載のポルフィランの水溶液を、カプセル製造機を用いて、水溶性カプセルの形状に形成することを特徴とする上記(5)又は(6)記載の可食性水溶性フィルムの製造方法からなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、海苔の成分である硫酸多糖ポルフィランをフィルム形成素材として用いてフィルムを製造することよりなるもので、本発明により、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルム、及びその製造方法を提供することができる。本発明の可食性水溶性フィルムは、特に、加工が簡単で、安全性の高い天然植物素材由来の単一成分からなるフィルムとして形成して、無味、無色、無臭で、透明性、柔軟性、耐熱性に富み、弾性力を持ち、かつ強度のある薄膜を形成し、水溶性、密着性を有するなど、その可食性水溶性フィルムを利用するに際して要求される物性において、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムを、提供することが可能であり、本発明により、食品用途、化粧品用途、或いは医薬用途に使用して優れた特性を発揮する可食性水溶性フィルムを容易に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、海苔の成分である硫酸多糖ポルフィランをフィルム形成素材として用いてフィルムを製造することにより、透明性が高く、無味、無臭であり、柔軟性があり、強度的に強い、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムを製造することよりなる。本発明において、可食性水溶性フィルムを製造するには、例えば、ポルフィランの水溶液を、フィルム支持体上に塗布或いはスプレイし、乾燥して、シート状のフィルムとして形成するか、又は、ポルフィランの水溶液を、カプセル製造機を用いて、水溶性カプセルの形状に形成することにより製造される。本発明でフィルム形成素材として使用されるポルフィランは、紅藻類のアマノリ属海藻から、抽出、精製して得ることができる。
【0024】
ポルフィランはアマノリ属海藻に含まれる粘性多糖であり、水溶性であるために海苔を熱水で処理することで抽出される。本抽出液を活性炭、珪藻土など処理し、脱色後、濃縮して、粗ポルフィラン液を得ることが出来る。粗ポルフィラン液に、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を加えることにより、ポルフィランを沈殿として得ることができる。得られた沈殿は乾燥後、粉末として取得される。また、粗ポルフィラン液を噴霧乾燥、ドラムドライヤーによる乾燥、凍結乾燥などの手段によって粉末化することも出来る。これらのポルフィラン粉末は各種の塩の複合体、複合塩として存在する。
【0025】
天然のポルフィランは、上記のようにポルフィラン中の硫酸基の塩は、各種の塩の複合体、複合塩として存在するが、本発明において、それらの複合塩を用いることもできるが、可食性水溶性フィルムのフィルム形成素材として用いるポルフィランは、該ポルフィラン中の硫酸基の塩を、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩に変換した、単一塩として改質した、改質ポルフィランを用いることが特に好ましい。
【0026】
該改質ポルフィランを製造するには、天然のポルフィラン中の硫酸基より塩を解離させ、塩を除去し、ポルフィラン中の硫酸基の塩が解離して遊離の硫酸基となっているポルフィランとし、その硫酸基を所定の塩類を用いて該塩類の硫酸塩とするか、又は、ポルフィラン中の硫酸基の塩をイオン交換により変換して、所定の塩類の硫酸塩とすることにより、ポルフィラン中の硫酸基の塩が、所定の塩類に変換され、単一塩として改質されたポルフィランを製造することができる(特開2005−255932号公報)。かかる場合のポルフィランの硫酸塩としては、硫酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩等が挙げられる。
【0027】
すなわち、天然のポルフィラン中の硫酸塩を単一塩として、変換、精製したポルフィランを製造するには、海苔の熱水抽出液、粗ポルフィラン水溶液、水溶性有機溶媒沈殿物の再加水溶液、および噴霧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、凍結乾燥ポルフィランの再加水溶液をイオン交換処理、次いで中和処理することにより単一塩化することにより製造することができる。例えば、各種ポルフィラン水溶液を陽イオン交換樹脂に負荷し、カチオンを吸着除去後、陰イオン交換樹脂に負荷し、陰イオン交換樹脂にはアニオン系狭雑物を吸着させる。高分子ポルフィランは陰イオン交換樹脂に吸着せず、通過する。ポルフィランを含む通過液は遊離のポルフィランを含むため、pHは低下しており、苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化カルシウム等のアルカリ液、アルギニン、オルニチン、ヒスチヂンなどの塩基性アミノ酸液で中和することによってそれぞれのポルフィラン単一塩を得ることができる。
【0028】
上記のとおり本発明において、ポルフィランフィルムの作成は分子量40万〜60万の高分子ポルフィランを用いて作製することができるが、低分子化したポルフィランを用いることもできる。ポルフィラン水溶液は中性では変化ないが、低pHで放置すると分子量が低下する性質がある。したがって、低分子化ポルフィランを得るためには、pH5以下で放置すると時間経過と共に分子量の低下したポルフィランを得ることができるが、pH3以下においては低分子化があまりに早く進行するために、通常、pH3〜5の範囲内に保持すると分子量低下の調整がし易い。この分子量低下は温度が高いと早く進行するため、pHと温度を組み合わせすることにより任意の分子量のポルフィラン溶液を得ることができる。分子量の低下したポルフィランはポルフィランの酵素処理によっても得られる(日本水産学会誌、63,757−764、1997)。ポルフィランのフィルム化、シート化するには、各種分子量のポルフィランを用いて、フィルム化、シート化することが可能であるが、例えば、数十万から数百までの分子量のポルフィランを用いてフィルム化を行なうことは可能であるが、実用上、600,000から1、000の分子量範囲であることが望ましい。
【0029】
本発明において、可食性水溶性フィルムを、フィルム形成素材としてポルフィラン単一成分からなる可食性フィルムとして形成することができる。ポルフィランを単一成分から形成した可食性フィルムは、加工が簡単で、安全性の高い天然植物素材由来の単一成分からなるフィルムであり、しかも、総合的に優れた物性を持つ可食性水溶性フィルムとして製造することができる。すなわち、本発明において、ポルフィランの単一成分から形成されたフィルムは、例えば、引っ張り強度についてみれば、他の天然由来の代表的なフィルム形成素材であるデンプン又はプルランの単一成分から形成されたフィルムに比較して高いことが示されている。また、弾力性については、デンプン、又はプルラン由来の単一フィルムには、課題がある。すなわち、プルランフィルムは、低湿度下においては、ヒビ、割れが発生する。澱粉フィルムは、いずれの湿度条件下においても、ヒビ、割れが入り易く、低湿度下では特に顕著である。これに対し、本発明のポルフィランフィルムはヒビ、割れが全く発生せず、低湿度下でも柔軟性を保つなどの優れた性質を有する。また、水溶性に関しては、常温でも、低水温下でも溶解性は高く、他の素材フィルムに比較して総合的に優れた性質を示し、従来の天然高分子多糖由来フィルムと比較して、顕著に欠点の少ないフィルム形成することができる。
【0030】
本発明において、可食性水溶性フィルムは、シート状のフィルムとして、或いは、水溶性カプセルの形状に、形成することができる。また、本発明におけるポルフィランをコーテイング剤として用いて、該ポルフィランの水溶液をコーテイング物質の表面に塗布して、被コーテイング物質の表面に被膜を形成させ、直接、被コーテイング物質の表面にフィルムを形成することもできる。本発明において、可食性水溶性フィルムを、シート状のフィルムとして形成するには、ポルフィランの粗ポルフィラン水溶液、各種乾燥処理ポルフィランを含む水溶液、単一塩ポルフィラン水溶液のいずれを用いても、形成することができる。また、水溶性カプセルの形状に形成するには、ポルフィランの他に、グリセリン、ソルビトールなどの化合物をそれぞれ5〜25%(W/V%)濃度添加して行うことができる。
【0031】
本発明のシート状ポルフィランフィルムの製造は、例えば、ポルフィランの水溶液を、フィルム支持体上に塗布或いはスプレイし、乾燥して、シート状のフィルムとして形成することにより行なうことができる。該ポルフィランフィルムの製造においては、シート状のフィルムの形成を、例えば、本発明におけるフィルム形成素材のポルフィランの水溶液を、ポリエンチレンフタレート(PET)、オリエンテーションプロピルピレン(OPP)などのフィルム支持体上に塗布又はスプレイし、熱風式乾燥機で60〜140℃の熱風で、水分含量7.5〜15%まで乾燥させることにより行なうことができる。支持体の巻き取りとり速度は水分含量に応じて調整する。フィルム支持体から可食性フィルムを剥離させ、シート状のフィルム製造することができる。
【0032】
高分子ポルフィラン水溶液は、粘性があるために、高濃度に濃縮すると、濃縮機の壁に付着し、損失が発生するために、高濃度に濃縮することが困難である。通常は、10%(W/V%)、望ましくは、5〜2%(W/V%)濃度となる。この濃度でフィルム化すると、フィルムは8〜15μmと薄膜を形成する。一方、溶解に時間がかかるが、粉末化したポルフィランをゆっくり攪拌しつつ、高温の水溶液に時間をかけて溶解することにより、5〜20%(W/V%)高濃度のポルフィラン溶液を得ることも可能であり、より厚いフィルムを作成することも可能である。また、低分子量のポルフィランを使用すると、粘性が低下するために、より高濃度に濃縮可能となり、より厚いフィルムを作ることもできる。また、ポルフィラン液を重ねて支持体上に塗布、スプレイすることにより更にフィルムの厚さを厚くすることも可能である。フィルムの厚さは、4〜400μm、好ましくは、4〜40μmの範囲に調整可能である。フィルムを着色する場合には、フィルムの色調は色剤により、どのような色にも調整することも出来る。
【0033】
本発明において、可食性水溶性フィルムを、水溶性カプセルの形状で製造するには、ポルフィランの水溶液を用いて、公知の方法により製造することができる。該方法としては、打ち抜き法(Stamping method)、噴霧乾燥法、コアセルベーション法、押し出しによるカプセル化法、コーティング法等、公知の方法を用いることができる。本発明の可食性水溶性フィルムの水溶性カプセルの製造には、特に、打ち抜き法によるカプセル製造機を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の可食性水溶性フィルムは、各種用途に適用できる総合的に優れた物性を有し、ポルフィラン自体、食経験の長い海苔の成分であることから、安全性は高く、可食性であり、口腔内で溶解するため、食品用途に有利に利用することができる。また、ポルフィランフィルムは、肌との密着性に優れ、化粧水を塗布後、皮膚に貼り付けると保湿能を付与するなどの特色を有するため、化粧品への利用性に優れ、また、医薬用用途としての利用価値も有している。
【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
[フィルムの特性の比較]
本発明のポルフィラン単一成分よりなるフィルム(分子量40万を中心とする)の特性についてデンプン(コーン由来)、プルラン(分子量20万)、豚ゼラチン(分子量1000)など代表的な天然素材よりなるフィルムとの特性の比較について、実験データーを用い説明する。
【0037】
(実験I)
実験を通じてポルフィランフィルムと他の重要な天然素材フィルムとの性質との比較を実施した。なお、用いたポルフィランフィルムの厚さは8〜12μm、他の素材のフィルムはいずれも10〜12μmの厚さで調製した
(実験1−保湿性試験)
室温中湿度30%のデシケーターに48時間保管後、湿度20%のデシケーターに移し48時間後の重量変化を測定した。数値は湿度20%のデシケーターに移す前の重量を100とした値を重量変化をパーセントであらわした。結果は第1表に示した。その結果、ポルフィランとデンプンは2%以下の減量で高い保湿能が認められ、次いでプルランで、ゼラチンは約10%減量した。
【0038】
【表1】

【0039】
(実験2−耐湿性試験)
湿温中、湿度30%で48時間保管し平衡化後、40℃、湿度90%の環境試験機内に移し、48時間後の重量変化を測定した。結果は第2表に示した。各数値は湿度90%に移す前の重量を100とした重量相対値(%)である。水分の吸収量はポルフィランが最も多く、次いでデンプン、プルラン、ゼラチンの順であった。
【0040】
【表2】

【0041】
(実験3−引っ張り強度)
実験方法:フィルムの引っ張り強度を測定した。試験方法はオートグラフAGS‐5KND(島津製作所製)(使用ロードセル1kN)を用い、JISK7127;1999(JIS法プラスチック・引っ張り特性の試験方法・第3部:フィルムおよびシートの試験条件)に準拠して実施した。試験速度は50mm/分、標線間距離25mmとした。試験は5枚の断片の平均値とした。試験片は(1)温度23℃、湿度50℃、(2)温度25℃、湿度70%で1時間調整後、直ちに室温状態で測定した。上記(1)条件下での測定結果を表3に、(2)条件下での測定を表4に示した。ポルフィランとゼラチンの引っ張り強度は、ほぼ同等、プルランはやや低く、デンプンは強度的にはかなり低いことが明らかになった。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
(実験4−弾性試験)
実験方法:弾性についてはフィルムを同方向に180度曲げ伸ばしすることにより,ひび割れや破損が起きるかどうかを調べた。フィルムは、1)湿度30%で48時間放置、2)湿度20%で48時間放置し、直ちにフィルムを5回連続して折り曲げ、ひび割れ,破損を観察した.その結果を表5,6に示した。デンプンはいずれの湿度でもフィルムの破損が発生したが、プルランは湿度30%では破損は発生しなかったが、湿度が20%に低下した環境下では破損が発生した。一方、ポルフィラン、ゼラチンはいずれの環境下においても変化はなく弾力性を維持した。
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
(実験5−加温に対する挙動)
湿度20%、40℃に調整した環境試験機内に各フィルムサンプルをおき、フィルムの変化を観察した。その結果、表7に示したが、ゼラチンは軟化したが、他のサンプルは特に変化は認められなかった。
【0048】
【表7】

【0049】
(総合判定)
代表的な天然素材よりなる単一組成フィルムの特性を総合的に比較し、判定した。その結果を第8表に示した。その結果、総合判定ではポルフィランが最も高い点を獲得した。なお、判定は実験1〜5の結果を基に判定した。評価は5段階評価とし、5点;極めて優れている、4点;優れている、3点;標準、2点;劣っている、1点;極めて劣っている、で点数評価した。総合評価は各項目得点の合計とした。
【0050】
【表8】

【0051】
(実験II)
(実験6:各分子量のポルフィランフィルムの引っ張り強度についての比較試験)
分子量40万のポルフィラン2.5%濃度(w/v)水溶液を、pH4.0に希硫酸で調整し、55℃で所定の時間(0〜70分)放置した。予備実験から放置時間と分子量低下との関係を求め、所定の時間経過後NaOH液によりpHを中性に戻し、分子量20万、10万、5万、1万、5千、1千のポルフィランを含む溶液を調製した。これらの溶液から得たフィルムについて実験3に記載した実験法により引っ張り強度、弾性について比較試験をした。その結果を表9に示した。
【0052】
【表9】

【実施例2】
【0053】
[各種ポルフィランを用いたフィルムの調製]
(ポルフィラン調製工程例1):
九州有明産スサビノリの乾海苔1kgを沸騰した12kgの脱イオン水の懸濁し、95℃、3時間抽出を行った。次いで、抽出残査を50メッシュのシフターで濾別後、抽出液重量に対して1%相当の珪藻土と5%に相当する活性炭を添加して、遠心分離(14000rpm、10分)を行った。抽出残分、着色物及び臭いを完全に除去し、得られた溶液は固形分濃度が3%になるまで濃縮した。必要に応じて珪藻土、活性炭での処理を2〜3回繰り返し行った。
【0054】
(ポルフィラン調製工程例2):
ポルフィラン調製工程例1で得られた3%ポルフィラン溶液1kgを攪拌しつつ、最終濃度が90%になるようにエチルアルコールをゆっくり加えると白色沈殿を得た。沈殿は濾別、乾燥し、ポルフィラン粉末を得た。
【0055】
(ポルフィラン調製工程例3、ポルフィラン調製工程例4):
ポルフィラン調製工程例1で得られた3%ポルフィラン溶液4.5Lに脱イオン水4.5Lを加え、ダイヤイオンPK216(0.5L)カラムに通塔、次いでダイヤイオンPA412(1L)カラムに通塔し、流速3.5L/hrで流す。次いで脱イオン水3Lを通塔し、固形分濃度が0になるまで通塔液を採取する。通塔液は30%NaOH、または10%遊離アルギニン液にてpH6.5に中和し、ポルフィランNa塩液、ポルフィランアルギニン塩液を得た。本溶液に珪藻土を加え、濾過してポルフィランNa塩液(ポルフィラン調製工程例3)、ポルフィランアルギニン塩液(ポルフィラン調製工程例4)とした。
【0056】
(ポルフィラン調製工程例5):
ポルフィラン調製工程例3で得られたポルフィランNa塩溶液を濃縮して3%ポルフィラン水溶液を得た。本溶液を硫酸でpH4.0に調整し、55℃で0〜70分放置後、苛性ソーダーで再びpH6.5に中和することにより分子量の低下した各種ポルフィラン低分子溶液を得た。分子量は放置時間と共に低下し、その結果、分子量20万、10万、5万、1万、5千、1千の低分子化ポルフィランを得た。
【0057】
(フィルム調製例1)
ポルフィラン調製工程例1で製造したポルフィラン3%水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面にアプリケーターにより塗布し、塗布膜を70℃の熱風中を通過させて乾燥し、8〜12μmのポルフィラン単一フィルムを調製した。
【0058】
(フィルム調製例2)
ポルフィラン調製工程例2で製造したポルフィラン粉末40gを温イオン交換水500mlに、撹拌下、時間をかけてゆっくり溶解し、PETフィルム表面にアプリケーターに塗布し、塗布膜を70℃の熱風中を通過させて乾燥して20〜25μmの厚さのポルフィラン単一フィルムを調製した。
【0059】
(フィルム調製例3)
ポルフィラン調製工程例3で得た3%ポルフィランNa塩液及び、ポルフィラン調製工程例4で得た3%ポルフィランアルギニン塩液を、OPPフィルム表面にアプリケーターにより塗布し、塗布膜を70℃の熱風中を通過させて乾燥して10μmの厚さのポルフィランNa塩単一フィルム、ポルフィランアルギニン塩単一フィルムをそれぞれ調製した。
【0060】
(フィルム調製例4)
ポルフィラン調製工程例3で得た3%ポルフィランNa塩溶液をPETフィルム表面に塗布し、70℃の熱風中を通過させて乾燥して作成したPET上のポルフィランフィルムに、再度3%ポルフィランNa塩溶液を重ねて塗布し、80℃熱風中を通過させて乾燥し、20μmの厚さのポルフィランNa塩単一フィルムを作成した。
【0061】
(フィルム調製例5)
ポルフィラン調製工程例5で作成したそれぞれの分子量の低分子化ポルフィランNa溶液を固形分濃度3〜10%濃度に濃縮し、PETフィルム上に塗布し、熱風乾燥することによりそれぞれの分子量のポルフィラン単一フィルムを作成した。
【0062】
(カプセル調製例6)
ポルフィラン調製工程例2で製造したポルフィランNa塩粉末200gを温イオン交換水に撹拌下、時間をかけてゆっくり溶解し、グリセリン100g、ソルビトール100gを加え、2Lに調整する。この溶液を用い、ポルフィランフィルムを作成した。このフィルムを用い、打ち抜き式カプセル製造機を用いカプセルを製造した。
【実施例3】
【0063】
[フィルムの使用例]
実施例2のフィルム調製例3で得たポルフィランアルギニン塩フィルムを20×40mmに切り取り、皮膚化粧用のフィルムを作成した。21℃、湿度60%の室内で化粧水を塗布後、本フィルムを目の下の皮膚に貼り、指先で溶解、伸展させた。直ちにコルネオメーターで皮膚の水分量変化を測定した結果、皮膚の水分量は120分間変化なく維持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルフィランをフィルム形成素材として用いて製造された可食性水溶性フィルム。
【請求項2】
可食性水溶性フィルムが、フィルム形成素材としてポルフィラン単一成分を用いて製造されたことを特徴とする請求項1記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項3】
ポルフィランが、ポルフィラン中の硫酸基の塩を、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルギニン塩、オルニチン塩、又はヒスチジン塩に変換して改質したポルフィランであることを特徴とする請求項1又は2記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項4】
ポルフィランの分子量が、600,000から1,000までの範囲に調整されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項5】
可食性水溶性フィルムが、シート状のフィルムとして形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項6】
可食性水溶性フィルムが、水溶性カプセルの形状に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項7】
可食性水溶性フィルムが、食品用、化粧品又は医薬用として用いられることを特徴とする請求項5又は6記載の可食性水溶性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか記載のポルフィランの水溶液を、フィルム支持体上に塗布或いはスプレイし、乾燥して、シート状のフィルムとして形成するか、又は、請求項1〜4のいずれか記載のポルフィランの水溶液を、カプセル製造機を用いて、水溶性カプセルの形状に形成することを特徴とする請求項5又は6記載の可食性水溶性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−297555(P2007−297555A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128491(P2006−128491)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(391017986)株式会社白子 (14)
【Fターム(参考)】