説明

新規塗装用多官能基シルセスキオキサン類

本発明は、多官能基シルセスキオキサン、その生成方法、およびその塗装に関し、少なくとも1つの第1の面と、前記少なくとも1つの第1の面から離れた少なくとも1つの第2の面と、少なくとも1つの第1の面に結合する少なくとも1つの第1の官能基と、第1の官能基とは異なり少なくとも1つの第2の面に結合している少なくとも1つの第2の官能基とを含む多面体シルセスキオキサンを含む。具体的な一観点において、シルセスキオキサンのシリカは、オクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサンオクタアニオンを経て米のもみ殻灰から誘導できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は2007年6月15日出願の仮米国特許出願第60/944,115号に基づく優先権を主張し、該出願を本明細書において参照により援用する。
【0002】
政府所有の権利の記載
本発明の一部は、米国空軍契約FA8650−05−C−5046に基づく米国政府による支援を受けている。米国政府は本発明の特定権利を有する。
【0003】
本発明は、シルセスキオキサン類、特に米もみ殻灰由来のシリカより誘導される多官能基シルセスキオキサン類に関する。
【背景技術】
【0004】
シルセスキオキサン類(SQs)は、通常の直径が約1nmで、デカルト空間内で各官能基が異なる8面体の一つを占めるような立方対称性(複数の立方晶構造)を示すことのできる独特な分子である。そのため、このような化合物は、1、2、または3次元で、1ナノメータ単位で、ナノ複合/ハイブリッド材料を構築する可能性をもたらす。さらにその核部分はシリカの剛性および熱容量を付与し、これらの化合物を大変強固なものにする。原則として、このナノメータベースでの「立方晶」組立て能力は、ナノメータスケールでの調整(例えば、材料特性の調整)を可能にする。そのようなスケールでの調整により、特性の全般的な最適化を用途ごとに比較的低コストで実現することができる。さらにまた、高い再現性や予見性が期待でき、より有効な材料設計の実現に役立つ。このような情報は、以下の参考文献の1つまたはそれ以上から得ることができる。全文献を本明細書に参照により援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,927,301号明細書(Laineら)
【特許文献2】米国特許出願公開第20060083925号明細書(Laineら)
【特許文献3】米国特許出願公開第20050142054号明細書(Hasegawaら)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.Sulaiman,C.M.Brick,C.M.De Sana,J.M.Katzenstein,R.M.Laine,R.A.Basheer,“Tailoring the Global Properties of Nanocomposites.Epoxy Resins with Very Low Coefficients of Thermal Expansion,”Macromolecules 39 5167−9(2006)
【非特許文献2】M.Z.Asuncion,R.M.Laine,“Silsesquioxane Barriermaterial,”MacroMoleculesin press Jan.(2007)
【非特許文献3】<http://www.mayaterials.com/html/coatings.html>(2007年6月15日現在のアドレス)
【非特許文献4】C.Brick,E.R.Chan,S.C.Glotzer,D.C.Martin,R.M.Laine,“Self‐lubricating nano ball bearings,”Adv.Mater.19 82−9(2007)
【非特許文献5】R.M.Laine,J.Choi,I.Lee,“Organic‐Inorganic Nanocomposites with Completely Defined Interfacial Interactions,”Adv.Mater.13,800−3(2001)
【非特許文献6】C.Zhang,T.J.Bunning,R.M.Laine,“Synthesis and Characterization of Liquid Crystalline(LC) Silsesquioxanes”Chem.of Mater.;13;3653−62(2001)
【非特許文献7】J.Choi,J.Harcup,A.F.Yee,Q.Zhu,R.M.Laine,“Organic/inorganic hybrid composites from cubic Silsesquioxanes”J.Am.Chem.Soc.123,11420−30(2001)
【非特許文献8】R.Tamaki,Y.Tanaka,M.Z.Asuncion,J.Choi,R.M.Laine,“Octa(aminophenyl)Silsesquioxane as a Nanoconstruction Site,”J.Am.Chem.Soc.123,12416−7(2001)
【非特許文献9】R.Tamaki,J.Choi,R.M.Laine“A Polyimide Nanocomposite from Octa(aminophenyl)−Silsesquioxane”Chem.Materials 15,793−7(2003)
【非特許文献10】J.Choi,R.Tamaki,S.G.Kim,R.M.Laine,“Organic/Inorganic Imide Nanocomposites from Aminophenylsilsesquioxanes,”Chem.Mater.15 3365-3375(2003)
【非特許文献11】Jiwon Choi,Albert F.Yee,and Richard M.Laine,“Organic/Inorganic Hybrid Composites from Cubic Silsesquioxanes.Epoxy Resins of Octa(dimethylsiloxy−ethylcyclohexylepoxide)Silsesquioxane,”Macromolecules 15,5666 - 82(2003)
【非特許文献12】J.Choi,A.F.Yee,R.M.Laine,“Toughening of cubic silsesquioxane epoxy nanocomposites using core shell rubber particles;a three component hybrid system,”Macromol.37 3267‐76(2004)
【非特許文献13】M.Z.Asuncion,I.Hasegawa,J.Kampf,R.M.Laine,“The selective dissolution of rice hull ash to form [OSiO1.5]8[R4N]8(R=Me,CH2CH2OH) octasilicates.Basic nanobuilding blocks and possible models of intermediates formed during biosilification processes,”Materials Chemistry 15,2114‐20(2005)
【非特許文献14】R.M.Laine,“Nano‐building blocks based on the [OSiO1.5]8 Silsesquioxanes,”J.Mater.Chem.,15,3725-44(2005)
【非特許文献15】N.Takamura,L.Viculis,R.M.Laine “A completely discontinuous organic/inorganic hybrid nanocomposite based on reactions of [HMe2SiOSiO1.5]8with vinylcyclohexene,”International Polymers Journal web published 16 April(2007)
【非特許文献16】A.R.Bassindale,H.Chen,Z.Liu,I.A.MacKinnon,D.J.Parker,P.G.Taylor,Y.Yang,M.E.Light,P.N.Norton,M.B.Hursthouse,J.Organomet.Chem.2004,689,3287
【非特許文献17】(a)A.Sellinger,R.M.Laine,“Silsesquioxanes as Synthetic Platforms.Thermally and Photo Curable Inorganic/Organic Hybrids,”Macromol.29,2327−30(1996)
【非特許文献18】(b)A.Sellinger,R.M.Laine,“Silsesquioxane as Synthetic Platforms.III.Photocurable,Liquid Epoxides as Inorganic/Organic Hybrid Precursors,”Chem.Mater.8,1592−3(1996)
【非特許文献19】H.W.Ro,K.Char,E‐C.Jeon,H‐J.Kim,K.Kwon,H‐J.Lee,J‐K.Lee,H‐W Rhee,C.L.Soles,D.Y.Yoon,High Modulus Spin‐On Organosilicates for Nanoporous Glasses,”Adv.Mater.19 705−710(2007)
【非特許文献20】Controlled Interphases in Compositematerial,H.Ishida Ed.,Elsevier Press,New York,1990
【非特許文献21】(a)D.E.Leyden,Ed.Silanes,Surfaces and Interfaces;Gordon and Breach:New York,1986
【非特許文献22】(b)E.P Plueddemann;Silane Coupling Agents;Plenum:New York,1982
【非特許文献23】J.Chojnowski,W.Fortuniak,P.Ros‘ciszewski,W.Werel,J.Lukasiak,W.Kamysz,R.Halasa,Biocidal PolySilsesquioxanes:“PolySilsesquioxanes and Oligosilsesquioxanes Sub‐stituted by alkylammonium Salts as Antibacterial Biocides”J.Inorganic and OrganoMetallic Poly.and Mater.,16,219(2006)
【非特許文献24】S.P.Denyer,“Mechanisms of Action of Antibacterial Biocides International Biodeterioration&Biodegradation(1995)221−245
【非特許文献25】T.Tashiro,“Antibacterial and Bacterium Adsorbing Macromolecules,”Macromol.Mater.Eng.286,63−87(2001)
【非特許文献26】O.Shchegolikhina,Y.Pozdniakova,M.Antipin,D.KAtsoulis,N.Auner,B.Herrschaft,“Synthesis and Structure of Sodium Phenylsiloxanolates,”Organometallics,19,1077−82(2000)
【非特許文献27】K.A.Andrianov,V.S.Tikhonov,G.P.Makhneva,G.S.Chernov,“Synthesis of Polycyclic Tetramethyltetraphenylcyclooctasilsesesquioxane,”Izvestiya Akademii Nauk SSSR,Seriya Khimicheskaya,4,956−957(1973)
【0007】
この成長分野においては、独特な特性を有する様々な材料がいまなお要求されている。さらに、改良された機能性ナノメータ材料を選択的に設計するための代替案もいまなお要求されている。さらにまた、代替となる新規材料を再生可能または永続的な資源から開発することが引き続き必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この成長分野において、独特な特性を有する様々な材料がいまなお要求されている。さらに、改良された機能性ナノメータ材料を選択的に設計するための代替案もいまなお要求されている。さらにまた、代替となる新規材料を再生可能または永続的な資源から開発することが引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規特性を有する改良された多官能基シルセスキオキサン類、これらの材料を生成するための新規方法、およびこれらの材料の使用方法を提供することにより、上記要求を満たす。本発明の一態様は、多官能基シルセスキオキサンに関し、この多官能基シルセスキオキサンは、(a)少なくとも1つの第1の面と、前記少なくとも1つの第1の面から離れた少なくとも1つの第2の面とを有する多面体シルセスキオキサンと、(b)前記少なくとも1つの第1の面に結合する少なくとも1つの第1の官能基と、(c)第1の官能基とは異なり、前記少なくとも1つの第2の面に結合している少なくとも1つの第2の官能基とを有し、前記少なくとも1つの第1の官能基は、表面、他のシルセスキオキサン、他の有機官能基、またはこれらの組み合わせに結合可能に構成されている。
【0010】
本発明のこの態様は、以下の特徴のうちの1つまたは組み合わせによって特徴づけられる。
すなわち、シルセスキオキサンのシリカは、米のもみ殻灰からオクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサンオクタアニオンを経て誘導されること;
前記多面体シルセスキオキサン構造は、ほぼ立方晶構造、ほぼ8面体構造、またはこれらを組み合わせた構造であること;
シリコンは前記ほぼ立方晶構造の各頂点に位置すること;
前記ほぼ立方晶構造の頂点にある各シリコンは少なくとも1つの酸素により結合していること;
前記少なくとも1つの第1の官能基がシラン化官能基であること;
前記少なくとも1つの第2の官能基は、含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれること;
前記多官能基シルセスキオキサンは、TTSE、TCTSE、TCPTSE、TOETSE、TGTSE、またはこれらの組み合わせから選ばれること;
前記多官能基シルセスキオキサンは、プラスチック、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる表面に結合すること;
前記多官能基シルセスキオキサンはSi−OH基により前記表面に結合すること;
前記少なくとも1つの第1の官能基は金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に結合すること;
前記少なくとも1つの第2の官能基は、金属、セラミック、炭素、上述の材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に結合すること;
前記多官能基シルセスキオキサンは多孔質構造を有すること;
前記多官能基シルセスキオキサンは、多孔質構造中に複数のほぼ均一に分散した孔を有し、その結果として生じた多孔質構造の孔内に少なくとも1つの第1または第2の官能基を適宜有すること;
前記多孔質構造の多孔率は、約5〜約50体積%の範囲であること;
前記多孔質構造の多孔率は、約15〜約30体積%の範囲であること;
ASTM D150により測定した多官能基シルセスキオキサンの誘電率は約1〜約4であること;
ASTM D150により測定した多官能基シルセスキオキサンの誘電率が約2〜約3であること;
ASTM D542により測定した多官能基シルセスキオキサンの屈折率が約1〜約2であること;
ASTM D542により測定した多官能基シルセスキオキサンの屈折率が約1.2〜約1.6であること;
前記多官能基シルセスキオキサンの構造がほぼコア−シェル層構造であること;
本発明の第1の態様の多官能基シルセスキオキサン類は、誘電体膜を作製するのに使用されること;または上記特徴の組み合わせであること。
【0011】
本発明の別の態様において、本発明の第1の態様の多官能基シルセスキオキサン類は、塗装中、塗装として、あるいは塗装用に使用できる。
【0012】
本発明のこの態様は、以下の特徴のうちの1つまたは組み合わせによって特徴づけられる。
すなわち、ASTM D5946により測定した前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約60°であること;
ASTM D5946により測定した塗装の水の濡れ角が少なくとも約75°であること;
ASTM D5946により測定した塗装の水の濡れ角が少なくとも約90°であること;
ASTM D5946により測定した塗装の水の濡れ角が少なくとも約105°であること;
ASTM D5946により測定した塗装の水の濡れ角が少なくとも約120°であること;
ASTM D3363により測定した塗装の鉛筆硬度が少なくとも約5Hであること;または
ASTM D3363で測定したこの塗装の硬度が少なくとも約Fであることにより特徴づけられる。
【0013】
本発明の別の態様において、本発明の第1の態様の多官能基シルセスキオキサン類は物品に使用することができる。
【0014】
本発明のこの態様は、以下の特徴のうちの1つまたは組み合わせによって特徴づけられる。
すなわち、前記多官能基シルセスキオキサンは、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に前記少なくとも1つの第1の官能基を介して結合すること;
前記多官能基シルセスキオキサンは、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に前記少なくとも1つの第1の官能基の少なくとも2つのSiOH基を介して結合すること;
前記少なくとも1つの第2の官能基によって前記多官能基シルセスキオキサンに結合する少なくとも1つの外層をさらに有すること;
前記少なくとも1つの外層は含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれる成分を有すること;
前記基材と前記多官能基シルセスキオキサンとの間、または前記多官能基シルセスキオキサンと前記少なくとも1つの外層との間のいずれかまたは両方で規定される空間内で、前記少なくとも1つの外層は、複数の層を有すること;
前記少なくとも1つの外層は求核試薬を含むこと;
前記少なくとも1つの外層は、メルカプト基、アミノ基、またはこれらの組み合わせを有すること;
前記少なくとも1つの外層は、少なくとも1つのアルキルアンモニウム塩を含む抗菌層であることにより特徴づけられる。
【0015】
本発明の別の態様は、多官能基シルセスキオキサン塗装の形成法に関し、この方法は以下の工程を有する。すなわち、(a)少なくとも1つのシリカ源を供する工程と、(b)シリコンを頂点に有する多面体かご構造を形成するため、そして少なくとも1つの第1の面と前記少なくとも1つの第1の面から離れている少なくとも1つの第2の面とを定めるために、前記シリカの少なくとも一部を反応させる工程と、(c)少なくとも1つの第1の官能基を前記少なくとも1つの第1の面に結合させる工程と、(d)少なくとも1つの第2の官能基を前記少なくとも1つの第2の面に結合させる工程と、(e)基材上に第一の多官能基シルセスキオキサン塗装を付着させるために、第1の官能基を基材にSi‐OH官能基を介して結合させる工程とを含む。
【0016】
本発明のこの態様はさらに、以下の特徴の1つまたは組み合わせにより特徴づけられる。
すなわち、前記少なくとも1つのシリカ源は米もみ殻灰由来のものであること;
前記多面体かご構造はオクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサンオクタアニオンがもとになっていること;
前記多面体かご構造はほぼ立方晶構造であること;
少なくとも1つの第1の面は、前記少なくとも1つの第2の面とほぼ反対に位置していること;
結合工程(c)は、少なくとも3つの第1の官能基を前記少なくとも1つの第1の面に結合させる工程を含むこと;
結合工程(d)は、少なくとも3つの第2の官能基を前記少なくとも1つの第2の面に結合させる工程を含むこと;
第1の官能基は、シラン化官能基から選ばれること;
前記第2の官能基は含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれること;
前記少なくとも1つの第1の官能基または第2の官能基は、グリシジル官能基を含むこと;
さらに該方法は、前記少なくとも1つの第2の官能基を第1の多官能基シルセスキオキサンと同一または異なる少なくとも1つの第2の多官能基シルセスキオキサンに結合させる工程を含むこと;
結合工程(c)および(d)のうち一方または両者が触媒の存在下での反応工程を有すること;
結合工程(c)および(d)のうち一方または両者は、フーリエ変換赤外分光法により確認され、かつ、2200cm−1におけるνSi−Hピークが観察されなくなるまで進行させられる反応工程を有すること;
結合工程(c)および(d)のうち一方または両者は、反応物質の混合物を還流下で触媒の存在下で攪拌する反応工程を含むこと;
結合工程(c)および(d)のうち一方または両者は、反応物質を溶媒に溶解する工程と、これらの反応物質を触媒と混合する工程、反応物質と混合した触媒を回収する工程と、溶媒を蒸発させる工程、またはこれらを組み合わせた工程を有すること;
前記触媒はPt/Cを含み、前記反応工程の起こる温度範囲は約60〜約110℃、あるいはこの両者であること;
第1の多官能基シルセスキオキサン塗装は、少なくとも1つの第1のまたは第2の官能基をその結果得られる構造の表面上および孔内で有するメソ多孔質ケイ酸塩構造を形成するために加水分解されること;
前記塗装は溶媒を介して基材に塗布されること;
前記塗装はアミン官能基剤の存在下で前記基材に塗布されること;
前記溶媒はアセトン、エタノールまたはTHFから選ばれること;
前記アミン官能基剤は、EA、DEA、TEA、MAE、DDM、OAPSまたはこれらを組み合わせたものから選ばれ、あるいは少なくとも1つの第1の官能基は、前記少なくとも1つの第1の面にコア−シェル構造を介して結合することで特徴づけられる。
【0017】
本発明の別の態様は、テトラアニオン半立方晶(TAHC)構造(例えば、SQ半立方晶構造)および多官能基シルセスキオキサンの生成方法に関し、該方法は、(a)オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンを準備する工程と、(b)以下の構造を有するテトラアニオン半立方晶(s−PhTAHC)を生成するために、カチオンと第一のアルコールとを含有する溶液中で前記オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンを反応させる工程とを含む。
【0018】
【化1】

式中、R5は置換フェニル基であり、フェニル、アルキルフェニル、アリルフェノール、エーテルフェニル、アミンフェニル、チオエーテルフェニル基、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、Mはカチオンであり、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラホスホニウムカチオン、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0019】
本発明のこの態様は、以下の特徴の1つまたはそれ以上で特徴づけられる。
すなわち、Rはフェニル基であること;
前記オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンはオクタフェニルオクタシルセスキオキサンであること;
前記テトラアニオン半立方晶が下記PH‐TAHCで表される構造を有し;
第1のアルコールは、1〜約20個の炭素原子を有するアルコールであること;
前記第1のアルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソアミルアルコール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコール、およびこれらを組み合わせたものからなる群より選ばれること;
前記カチオンはナトリウムカチオンであること;
本態様はさらに、s‐PHTAHCを トリクロロシランと反応させる工程を含むこと;
前記トリクロロシランは、アルキルトリクロロシラン、アリールトリクロロシラン、芳香族複素環トリクロロシラン、クロロアルキルトリクロロシラン、アルキルエポキシトリクロロシラン、アルケニルトリクロロシラン、末端または内部エーテルを有するアルキニルトリクロロシラン 、およびこれらを組み合わせたものからなる群より選ばれること;
前記トリクロロシランは約1〜約8個の炭素原子を有するアルキルトリクロロシランであること;
本態様はさらに、s‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClの構造を有する第1の二量体と反応させる工程を有すること(式中RとRは、アルキル、アリール、複素環式芳香族、クロロアルキル、アルキルエポキシ、アルケニル、末端または内部エーテルを有するアルキニル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、RとRは互いに同一、RとRは互いに異なるか、あるいはこれらの組み合わせである);
この態様はさらにs‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClの構造を有する第2の二量体と反応させる工程を含むこと(式中RとRは異なる);
s‐PHTAHCを第1の二量体に反応させるこの工程は、さらにs‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClの構造を有する第2の二量体と反応させることを含むこと(式中Rは、RとRの両者とは異なる);
s‐PHTAHCを第1の二量体と反応させる工程はさらに、s‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClの構造を有する第2の二量体と反応させることを含むこと(式中RはRまたはRと同一である);
この態様はさらに、第2のアルコールをs‐PHTAHCに結合しているトリクロロシランの残留塩素原子と反応させる工程を含むこと(第2のアルコールは化学構造R‐OHを有し、これにより塩素原子はアルコリシスによって第2のアルコールに置換され、Si‐O‐R基を形成し、前記第2のアルコールとしては、1級アルコール、2級アルコール、または3級アルコールが含まれ、前記第2のアルコールは2級アルコールまたは3級アルコールが含まれる);
本態様は、アルコリシス後にs‐PHTAHCを加水分解する工程をさらに有すること;
あるいは上記特徴の組み合わせにより特徴づけられる。本発明のこの態様の上記のいずれの反応から得られる反応生成物も本発明の範囲であると考えられる。
【0020】
【化2】

(式中Phはフェニルである)
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】シルセスキオキサンが有するシリコン原子の一部またはすべてに結合した官能基を有するシルセスキオキサン分子構造の例(例えばX線分光法で決定された[octylSiO1.5]の単結晶構造)を示す。
【図2】置換シルセスキオキサン(例えば、オクタ(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(OHS))を、中間体アニオン(例えば、オクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサン等のオクタアニオン)を生成する反応に従ってシリカ(例えば、米の灰)から生成する反応例を示す。
【図3】本発明によるビニルシランと置換シルセスキオキサンとの反応例、さらに詳しくは、オクタ(トリエトキシシリルエチルメチルシロキシ)シルセスキオキサン(OTSE)を生成するトリエトキシビニルシランとOHSとの反応を示す。
【図4】ビニルシラン濃度が化学量論的な量未満である場合のビニルシランと置換シルセスキオキサンとの反応の別の例を示す(例えば、トリエトキシビニルシランおよびOHSが 約4:1のモル比で反応し、(テトラトリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)(テトラヒドリドジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(TTSE)等の約4つのトリエトキシシラン基を有するSQを生成する反応)。
【図5】シルセスキオキサン(例えば、TTSE、OTSE等のトリアルコキシシリル官能基を有するもの)の加水分解反応の例を示す。
【図6】図5の反応による加水分解生成物のさらなる反応(例えば、1分子中の2つのSi‐OH基間の縮合反応等の縮合反応によりSi‐O‐Si結合を生成)の例を示す。
【図7】図5および図6(1分子中の2つのSi‐OH基間の縮合反応等の縮合反応により、Si‐O結合、さらに詳しくはSi‐O‐Si結合を生成)による加水分解生成物の別の反応を示す。
【図8】シルセスキオキサンと官能化された表面との反応、詳しくは、1またはそれ以上の官能基Si−OH基(例えば、オクタ(トリヒドロキシシリルエチルメチルシロキシ)シルセスキオキサンまたは(テトラトリヒドロキシシリルエチルジメチルシロキシ)(テトラヒドリドジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン)を有するシルセスキオキサンを、複数の表面OH基(例えば、SUR‐OH)を有する基材と反応させて、1またはそれ以上のSi‐O‐SUR結合を形成する反応の例を示す。
【図9】エポキシド官能基をSQ(例えば、TTSE等の多官能基SQ)に付加させる例を示す。
【図10】エポキシド官能基を有するSQ(例えば、多官能基SQ)を、基材(例えば、複数のSUR‐OH基を有する基材)に付加させる例を示し、本例では、表面の多官能基を変化させる(例えば、SUR‐OHからSUR−エポキシに変化)。
【図11】異なるSQで作製した積層材料の例を示し、本例では、1またはそれ以上の層が固有の性質または特徴(例えば、強度、接着性、耐薬品性、剥離性および再塗布性、硬度、熱膨張係数の制御、化学的変性能力等)を材料に与えており、本図ではさらに、エポキシ官能基を有するSQのアミン官能基(例えば、OAPS)を有するSQに対する反応を示す。
【図12】比較的硬い中間層(例えば、OAPS)を有する多層SQ(例えば、OTSEおよびTTSEに基づいた、異なる一官能基SQおよび/または多官能基SQを有する複数の膜層)構造の例を示す。
【図13】所望の官能基(例えば、TRTSE)を有する多官能基SQを生成するために、多官能基SQ(例えば、TTSE)を、所望の官能基を有する種々のビニル分子に反応させるヒドロシリル化の例を示す。
【図14】官能基ビニル(例えば、1‐ビニル‐4‐シクロヘキセン)をTTSE等の多官能基SQと反応させる、多官能基SQ(例えば、テトラシクロヘキセニルテトラトリエトキシシリルエタンシルセスキオキサン立方晶構造(TCTSE)等のヘキサン官能基SQ)の調製例を示す。
【図15】アルコール官能基(例えば、オキシエタノール官能基)を有するSQ(例えば、テトラオキシエタノールテトラトリエトキシシリルエタン立方晶(TOETSE)等の二官能基SQ)の例を示す。
【図16】25℃、75℃、125℃、および175℃で測定したSQ膜(例えば、OTSE膜)のX線反射率の例を示し、長距離秩序を有する滑らかな層構造は、本願明細書の教示に従って達成できることがわかる。
【図17】多官能基SQ膜(例えば、トリエトキシシリルエチル基の一部、さらに詳しくは約半分がエポキシまたはその他の有機基で置換されているTGTSEまたはOTSE)のX線反射率の例を示す。
【図18a】非被覆表面上の液滴(例えば、非被覆アルミニウム表面上の水)による濡れの例を示す。
【図18b】被覆表面(例えば、TCTSE被覆アルミニウム)について予想される液滴による濡れを示し、図18aを参照して比較すると、表面の濡れ性が、本発明の教示による材料を塗布することで変化させられることがわかる。
【図19】Si‐OH官能基を1つの面に有する多官能基SQ(例えば、4つのトリアルコキシシリル官能基および含塩素基等のその他の4つの官能基を有するシルセスキオキサン立方晶)を、官能化された表面、すなわちOH官能基を有する表面に反応させる例を示す。
【図20】単純な有機または無機求核性官能基(例えば、アミン、チオール、カルボキシレート等)を有するSQで被覆した表面の水による典型的な濡れを示す。
【図21】求核性官能基を有するSQ(例えば、AOPS等のアミン官能基を有するSQ)の、求核性基と反応する露出官能基を有する(例えば、塩素官能基が 露出官能基を有する)SQ層に対する反応の例を示す。
【図22】求核性基を有するSQで被覆した表面の濡れにおいて、濡れ角が75°未満(例えば、TCPTSEでまず被覆し、その後OAPSで被覆した表面)である例を示す。
【図23】求核性基を有するSQで被覆された表面(例えば、TCPTSEでまず被覆し、その後ジアミノジフェニルメタンで被覆した表面)の濡れにおいて、その濡れ角が75°を超える例を示す。
【図24】二官能基求核試薬(例えば、ジアミノジフェニルメタン(DDM)等のジアミン)の、求核性基と反応する露出官能基を有する(例えば、露出した塩素官能基を有する)SQ層に対する反応の例を示す。
【図25】求核性基を有するSQで被覆した表面(例えば、TCPTSEでまず被覆し、その後2‐メチルアミノエタノールで被覆した表面)の濡れを示す。
【図26】1つの求核性基とさらに1つの反応基(例えば、2‐メチルアミノエタノール(MAE))とを有する分子の、SQまたは求核性基と反応する露出官能基を有する(例えば、露出した塩素官能基を有する)SQ層に対する反応の例の例を示す。
【図27】一官能基または多官能基SQ(例えば、TCPTSE)の多層SQ表面(例えば、AOPSを最上層上に有する積層構造)との反応で、異なるSQからなる少なくとも3層を有する構造を形成することを示す。
【図28】塩素官能基を有するSQ表面層との反応例を示し、SQ表面上の新しい官能基は、殺菌剤、界面活性剤、疎水性基、親水性基、多官能基、分岐オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、抗ウイルス物質、触媒、触媒前駆体、アニオン基、カチオン基、薬剤、R’SH、NH‐アルキル基、カルボキシレートアニオン、ルミフォア、またはこれらの組み合わせのうちの1またはそれ以上を有することができる。
【図29】表面に重ねた個別のSQ層により液滴の接触角が選択的に変わる(例えば、増加または減少する)ことを示す。
【図30】被覆剤アミンを選択することで可能な接触角を示す。
【図31a】2つの半立方晶SQ(例えば、テトラ置換フェニルテトラアニオン性シルセスキオキサン半立方晶(s‐PHTAHC))を形成するSQ(例えば、オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサン立方晶(s‐PhSQ)の反応例を示す。
【図31b】2つの半立方晶SQs(例えば、テトラヘニルテトラアニオン性シルセスキオキサン半立方晶(PHTAHC))を形成するSQ(例えば、オクタフェニルオクタシルセスキオキサン立方晶(OPS))の反応例を示す。
【図31c】SQ(例えば、オクタ(ヨードフェニル)オクタシルセスキオキサン立方晶)の、2つの半立方晶SQ(例えば、テトラヨードフェニルテトラアニオン性シルセスキオキサン半立方晶)を形成する反応の例を示す。
【図31d】臭素(例えば、Br16OPSおよびBr24OPS)を含有するオクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサン立方晶(s‐PhSQ)の例を示す。
【図31e】臭素(例えば、Br16OPSおよびBr24OPS)を含有するオクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサン立方晶(s‐PhSQ)の例を示す。
【図32a】図32aは、複数のSi‐Cl基を有する半立方晶中間体I(HCI‐I)を形成する、トリクロロシランと半立方晶SQ(例えば、s‐PHTAHC)との反応の例を示す。
【図32b】複数のSi‐Cl基を有する半立方晶中間体II(HCI‐II)を形成する、トリクロロシランと半立方晶SQ(例えば、PHTAHC)との反応の例を示す。
【図33】塩素原子を置換しSi‐O‐R基を有する半立方晶中間体(例えば、HCI‐III)を生成する、Si‐Cl基を有する半立方晶中間体(例えば、HCI‐I)のアルコリシス反応の例を示す。
【図34】半立方晶中間体(例えば、HCI‐III)を、第1の官能基(R)を一つの面に有し第2の官能基(R)を各頂点で反対面に有するSQ立方晶に変換する反応の例を示す。
【図35】第1の官能基(例えば、フェニル基または置換フェニル基)を1つの面に各々の頂点で有し、2つの異なる官能基を立方晶の反対面に有する立方晶SQを生成する、半立方晶SQ(例えば、s‐PHTAHCまたはPHTAHC)と2つの異なる二官能基シラン二量体との反応の例を示す。
【図36a】二官能基立方晶SQ(例えば、MePh[Si12])の熱重量曲線の例およびSi12の重量%濃度の測定を示す。
【図36b】SQ分子上の官能基を示す、二官能基立方晶SQ(例えば、MePh[Si12])のFTIRスペクトルの例を示す。
【図37a】SQ分子上の官能基を示す、VinylPh立方晶SQのFTIRスペクトルの例を示す。
【図37b】SQ分子の分子量を決定するための、ビニルPh立方晶SQのMALDIスペクトルの例を示す。
【図38】HCI−IIからの生成物の一つであるi‐ButylPh[Si12]の分子量を決定するための、MALDIスペクトルの例を示す。
【図39】HCI−IIからの生成物の一つであるOctylPh[Si12]の分子量を決定するための、MALDI スペクトルの例を示す。
【図40】HCI−IIからの生成物の一つである(ClCHPh[Si12]の分子量を決定するための、MALDIスペクトルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願明細書の記載において、「OAPS」は、オクタアミノフェニルシルセスキオキサンを意味する。「MAE」は、N‐メチルアミノエタノールを意味する。「DDM」は、4,4’‐ジアミノジフェニルメタンを意味する。「EA」は、エタノールアミンを意味する。「DEA」は、ジエタノールアミンを意味する。「TEA」は、トリエタノールアミンを意味する。「OTSE」は、オクタ(トリエトキシシリルエチルメチルシロキシ)シルセスキオキサンを意味する。「TTSE」は、(テトラトリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)(テトラヒドリドジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを意味する。「TCTSE」は、テトラシクロヘキセニルテトラトリエトキシシリルエチルシルセスキオキサンを意味する。「TOETSE」は、(テトラオキシエタノールエチルジメチルシロキシル)テトラトリエトキシシリルエチルシルセスキオキサンを意味する。「TGTSE」は、(テトラトリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)(テトラグリシジルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを意味する。「TCPTSE」は、(テトラトリエトキシシリルエチルジメチルシロキシ)(テトラ‐3‐クロロプロピル‐ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを意味する。「OCPSE」は、オクタ‐3‐クロロプロピル‐ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを意味する。上記化合物の化学構造式は以下のとおりである。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
本発明は、新規多官能基シルセスキオキサン(SQ)構造および同構造を形成する方法に関する。一般的な態様において、本発明は、これまでに知られていない二官能基および/または三官能基シルセスキオキサン類(SQ)の合成へ適用され、これらの官能基は、SQに対する反応基同士の引力および反発力の両者、各種触媒、あるいはこれらの組み合わせにより、(例えば、統計的な確率により)付加される。一般に得られる構造は、生成したSQ上の少なくとも1つの官能基が、その生成したSQの別の官能基とは異なる性質を有するようなものとなる。それゆえ、統計的付加過程で、部分的配置(すなわち、一方の側における4つのうちの3つの位置で)または完全配置(すなわち、一方の側の4つ全ての位置で)の調整が可能である。したがって(例えば)オクタSQ(すなわち、オクタシルセスキオキサン)の1つの第1の面、デカSQ(すなわち、デカシルセスキオキサン)については1つまたは2つの面、あるいはドデカSQ(すなわち、ドデカシルセスキオキサン)については1つまたは2つの面では1つの第1の種類の官能基に富むのに対し、別の面(通常、第1の面と反対の面)では第2、第3またはその他の種類の官能基に富むようにできる。
よって、1つの面の反応性を他の1つ又は複数の面の反応性と異ならせることができるため、下記(a)及び(b)のいずれかまたは両方が可能となる。
(a)1またはそれ以上のその他の多官能基分子(例えば、2または3官能基分子)との反応。
(b)相補的反応性を有する表面との反応であって、当該反応により前記表面が、所定の官能基により選択的表面官能化されるか、あるいは、前記表面に前記所定の官能基が豊富に形成され;耐引っかき性、誘電率、硬度、透明性、イオン伝導度、イオン結合、金属および金属酸化物粒子結合性、発光挙動、殺菌性、これらを組み合わせた特性等の1つまたはそれ以上の点、あるいはその他の点で表面挙動が改質される。
そのような多官能基SQ分子はまた、SQあるいは官能化SQからも生成できる。官能化SQは、SQ半立方晶に分割し、完全なSQ構造を再形成するときに、官能化されたシリコン含有分子をこれらの半立方晶に付加させる。
【0030】
一態様において、本発明は、特性の異なる複数の官能基で官能化された多面体シルセスキオキサン類(SQ)が、その他の1つまたは複数の基(例えば、少なくとも1つの第2の種類の官能基)がその少なくとも1つの第1の種類の基から(例えば、およそ180°で)離れて凝集し、これによりヤヌス型分子または2面性分子を有効に形成するのに対し、少なくとも1つの第1の種類の官能基が、その多面体の1つの面、例えば1つのSQ立方面で凝集しやすいように、(例えば、溶液中、溶融状態、液相、または固体状態で)組織化するという特徴を利用する。従って、このような設計により、1つの側が別の側とは異なる、場合によってはかなり異なる特性を有することが可能になる。
【0031】
例えば、1組の官能基が加水分解してSi−OH含有化学種を生成し、その他の組の官能基が影響を受けずに残る(すなわち、その他の組の官能基は加水分解を容易に受けない)場合、このSi−OH含有側が木材、金属、セラミック、ガラス、およびSur−OH基を有するある種のプラスチック表面の塗装に使用できる。ここで「Sur」は、ポリマー、セラミック、炭素、またはこれらを組み合わせた材料等の表面といった材料表面を意味する。従って、これらのSur−OH基は、Si−OH基に結合することができ、表面に強固に付着する分子を生じ、この結果、結合強度は、従来のシラン処理剤で使用される単一シラン基による単純なシラン処理により形成される結合の強度に比べ、はるかに強固な(例えば、少なくとも10%を超える、およびより好ましくは少なくとも25%を超える、あるいは50%を超える)結合となる。このような結合の形成により、残りの基が塗装の表面上に配置される。これらの第2の種類の官能基はその後、第2の組の2面性または単官能基SQ、または表面のもつ本来の特性の1つまたはそれ以上を変化(例えば、完全に変化)させる、あるいは最上層とその表面との間に新規中間層を与える、その他の有機官能基種と反応させることができる。これにより、本来の表面特性とはかなり異なる新規特性の設計が可能となる。
【0032】
疎水性/親水性から強固な接着性、抗菌性、発光性、耐引っ掻き性および耐磨耗性、中間層誘電体および/または硬い剥離性表面の形成にわたる広範な用途にむけて、この新しい表面の特性を多様に操作する方法により、その他の種類の反応物質および/または塗装媒体に対して反応性を有するように、上部の組の官能基を設計することができる。
【0033】
従って、本発明は、多官能基(例えば、二官能基、場合によっては三官能基)SQを用いて有機/無機ナノ複合薄膜および塗装を処理するのに使用できる多官能基(例えば、二官能基および三官能基)立方晶およびその他の多面体シルセスキオキサン(SQ)類の開発に関する。この薄膜、塗装、またはこれら両者の形態として、紐状、厚膜、同様のまたは異なる官能基を有する多層系、またはこれらの組み合わせたものとすることができる。これらは下層の表面の全てまたは一部のみを被覆してもよい。これらの膜または塗装は、緻密性、傾斜機能性、多孔性、またはこれらのすべてを組み合わせた性質を有していてもよい。官能基は、機械的および熱的特性、(電気、イオンまたは熱)伝導度、生物学的相互作用、光伝達(IR、可視、UV、鏡)、その他の電磁現象、またはこれらを組み合わせた特性に関して、ナノメータ長さ(例えば、約10〜約10nmのオーダー)のスケールで変化しうる。これらの膜は室温で調製するか、あるいは官能基の一部が劣化するがその他は劣化しない温度に加熱できる。以下の記載からわかるように、本願明細書において「層」または「多層」について述べる場合、分子の特性または特徴がほとんど類似またはほぼ相同である位置を意味しうる。したがって多層構造とは、その構造内での特性または特徴が比較的制御されているか、あるいは一貫した多様性を有する単分子構造を意味する。このような構造は分子合成から実現できる。また、複数の別々の層を別々の工程(例えば、別個の塗装工程)で形成して得られる構造も含む。一態様において、本願明細書記載の層は、事実上コア−シェル型構造から生じるであろう層も含む。それゆえ層または多層は、その構造の平面的な配置にのみ限定されるものではない。
【0034】
例えば1つの態様において、本発明は、以下の特性または特徴の少なくとも1つまたは組み合わせを発現する、SQ樹脂(例えば、オクタ[(3‐プロピルグリシジルエーテル)ジメチルシロキシ]オクタシルセスキオキサンおよびオクタ[1,2‐エポキシ‐4‐エチルシクロヘキセニル)ジメチルシリルオキシ)]オクタシルセスキオキサン等のSQエポキシ樹脂)に関する。
(1)Over25‐250ppm/℃に調整した熱的膨張係数(CTEs)
(2)例えば、ASTM D3985に従って測定した場合、市販材料と同等の酸素バリヤ特性であるが100℃を超える安定性
(3)低温、室温粘度(例えばASTM D445によるその正味の材料に対する測定値が1,000MPa‐s未満)
(4)最低限の溶媒または無溶媒で表面に塗布できる可能性
(5)ガラス、炭素、セラミック、金属およびある種のプラスチック表面への良好な付着性
(6)水分含有率および分解に対する優れた耐性(例えば、7日間浸漬後の含有率が1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満)
(7)作動液、ジェット燃料、およびその他の有機溶液に対する耐性(例えば、約50%未満、好ましくは約30%未満の体積膨潤)
(8)高強度(例えば、高弾性率、E=2.4GPaまたはそれ以上)、高破壊靭性(例えば、ASTM E399に従って試験した場合K1C=1.8MPa/mまたはそれ以上)、鉛筆硬度(≧4H)、高ガラス転移温度(例えば、Tg≧200℃)等の機械特性の1つまたは任意の組み合わせ
(9)UV照射透過性
(10)疎水性
(11)耐侯性
(12)高温潤滑性
(13)屈折率(RI)の制御、または
(14)誘電率の制御
【0035】
次に二官能基またはヤヌス型立方晶の概念についてさらに詳細に述べる。A.R.Bassindae,et al,J.Organomet.Chem.2004,689、3287(該文献を参照により援用する)で報告されているものの1つである、図1に示す[octylSiO1.5の単結晶X線構造は、分子鎖が、かご構造またはシリカコアの両側に対して均一に配列しているという、立方晶に結合した長鎖屈曲基の共通の特徴を示すことがわかる。
【0036】
本発明の有益な長所の少なくとも1つは、バイオマス等の種々の存続的または再生可能材料源から、精密調整された特徴(特にナノスケールで)を有する固有の材料が生成できることである。シリカ源(バイオマス材料またはそれらの副生成物、例えば、米もみ殻灰等)から多官能基SQを生成する種々の反応が利用できる。図2は、オクタ(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(OHS)等の好ましいシルセスキオキサンを実現するためのオクタアニオンとの反応を示す。図2は、オクタアニオン、(例えば、オクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサン)をクロロジメチルシランと反応させて生成した官能化シルセスキオキサンを示す。一般に、その他のクロロシラン類が使用でき、クロロシラン類を組み合わせて使用することもできる。例えば、平均してある種の4つの基と別種の4つの基を有する官能化されたシルセスキオキサンを得るために、等モル濃度の2つの異なるクロロシランを使用できる。図3は、オクタ官能基SQ、OTSEを生成する反応を示す。このようなSQは、例えば、多層構造を構築する「スペーサ層」としてその後使用できる。本発明のものに類似したかご状シリカ化合物の形成に関するさらなる検討については、米国特許第6,927,301号を援用する。さらにまた、米国公開特許出願第20060083925号(Laineら)、米国公開特許出願第20050142054号(Hasegawaら)も援用する。
【0037】
図3は、シルセスキオキサンが過剰のトリアルコキシビニルシランと反応して、可能なビニルシランがシルセスキオキサンの各官能基部位に付加する反応を示す。反応物質をより低濃度にしたり、反応時間を短縮したり、あるいはこの両者により、官能基部位のある部分(例えば、半分)のみ反応し、その結果シルセスキオキサン分子が多官能基有することができる。
【0038】
図4は、本発明における適切な反応の別の例を示し、この反応により、反応図4に示す反応に類似した反応で各種類の官能基を平均ほぼ4つ有する二官能基SQsを合成することができる。このことに関するさらなる詳細は、例えば、A.Sellingerらの「Silsesquioxanes as Synthetic Platforms.Thermally and Photo Curable Inorganic/Organic Hybrids」Macromol.29,2327−30(1996);およびA.Sellinger,et al.,「Silsesquioxanes as Synthetic Platforms.III.Photocurable,Liquid Epoxides as Inorganic/Organic Hybrid Precursors」Chem.Mater.8、1592−3(1996)を参照のこと。ここで、これら両文献を参照により援用する。
【0039】
オリゴマーの合成は、通常、統計的な数の加算(後述の完全ヤヌス立方晶(例えば、第1の種類の官能基をちょうど4つ有する1つの面と、第2の種類の官能基をちょうど4つ有する第2の反対の面とを有する立方晶)の合成方法)になるので、官能基の数は一般に平均で表わす。しかしながら、これらのSQは立方対称性を有することが多いので6つの面を有し、このためたとえこれらの基により、かごの頂点から逸脱した非統計的な様態を加わったとしても、3つまたは可能性として4つの同じ基が見つかる1つの面があることが多い。実際、第2の基の触媒的付加は、同じ種類の第1の基と同じ面において、第1の基への科学的親和性により、より頻繁に起こるように進行する可能性がある。
【0040】
一方の官能基が、他方の官能基に比べてやや極性または疎水性を示す場合、この組の官能基が1つの側にあり反対の組がその反対側にあるように「強いられる」(あるいは好む)ことが起こりうる。従って、統計的に、極性または疎水性のみに基づいて、二官能基またはヤヌス構造が形成されると仮定するのが妥当である。このことは、表面から突き出した既知のナノメータ距離での所定の特徴について、予想されるように調整および制御できる構造を有する新規表面塗装(例えば、膜)の作製を促進するという本発明の特徴も与える。
【0041】
理論に拘束されることなく、いくつかの官能基アルコキシシラン基を有するシルセスキオキサン(例えば、図3の反応の生成物)が図5の反応のように加水分解した場合、どうなるかを考える。1つの面は別の面に比べてより多くの−Si(OH)基をおそらく有すると仮定すると、水素結合後の縮合により、これらには限定されないが図6および7に示すような構造を生じると考えられる。図7の反応の結果は、“High Modulus Spin−On Organosilicates for Nanoporous Glasses”Adv.Mater.,19,705−710(2007)に示す構造に似ている。該文献を本明細書に参照により援用する。この加水分解反応から、超硬質の強靭な薄膜等が低コスト材料(例えば、米もみ殻灰由来のシリコン)から作製できると考えられる。
【0042】
本発明による膜(例えば、TGTSE)は、ASTM D‐696に従って測定した場合に約30ppm/℃のオーダー(例えば、約100ppm/℃未満、より好ましくはl約50ppm/℃未満)のCTE、ASTM D050に従って測定した場合約2.33(例えば、5未満、より好ましくは0.5〜5)の誘電率、ASTM D6583‐04に従って測定した場合約10%〜約30%(例えば、約20%)の多孔率、またはナノ圧子を用いた荷重−変位曲線(例えば、ASTM D3363に従い、MTS Systems Corporation(米国テネシー州Oak Ridge)のNanoindenter IIを用いて試験)から求めた場合約5〜20GPaの範囲の弾性率のうちの1つまたはこれらを組み合わせた性質を示すことができると考えられている。さらにまた、この生成物(すなわち、水素結合後縮合した生成物)の塩基は、複数の(例えば、4つの)Si−OH基有していてもよく、これにより、分離性(例えば、塗装の非剥離性)、加水分解および/または例えば、R‐MeSiCl(OR)、R−MeSiClまたは(OR)、R−SiClまたは(OR)といった表面結合を形成するように、単一のシラン官能基に依存するシラン処理剤への化学的酸化に対する耐性の点でより優れる、多表面へのより強力な付着結合の形成を可能にするシラン処理を可能にする。“Controlled Interphases in Composite Materiala、H.Ishida Ed.,Elsevier Press,New York,1990;D.E.Leyden,Ed.Silanes,Surfaces and Interfaces;Gordon and Breach:New York,1986;E.P Plueddemann;Silane Coupling Agents;Plenum:New York,1982;J.Chojnowski,et al,Biocidal Polysilsesquioxanes:"Polysilsesquioxanes and Oligosilsesquioxanes Substituted by Alkylammonium Salts as Antibacterial Biocides“J.Inorganic and Organometallic Poly.and Mater.,16,219(2006)を参照のこと。全ての文献を本明細書に参照により援用する。
【0043】
表面をシラン処理する技術は、歯科修復材に使用するシリカ粉末のコーティングから、シャワーや浴室用タイルの目地に使用されるコーティングに補強材として使用される炭素およびガラスファイバーのサイジングにおよぶ多用途に、商業的に採用されている。例えば、既出の先行技術文献「High Modulus Spin‐On Organosilicates for Nanoporousglasses,」 Adv.Mater.,19,705‐710,(2007);Controlled Interphases in Composite Material、H.Ishida Ed.、Elsevier Press,New York,1990;D.E.Leyden,Ed.Silanes、Surfaces and Interfaces;Gordon and Breach:New York,1986;and E.P Plueddemann;Silane Coupling Agents;Plenum:New York,1982を参照し、これらすべての文献を本明細書に参照により援用する。
【0044】
一般に、本発明において、クロロ−またはアルコキシシラン類(例えば、R’MeSiClまたはR’MeSiOEt)を、R”MeSi−O−SUR結合を形成するように表面のヒドロキシル基、SUR−OHと反応させることで表面をシラン処理することができる。Rは、疎水性、親水性、または反応性(プロピルアミン、グリシジル エポキシ、メタクリル酸メチル等)のものでもよい。しかしながら、SUR−O−Si結合は、加水分解をうけやすく、最終的に洗い落とされる可能性があることを認識しておく必要がある。従って、R’MeSiCl、R’MeSi(OEt)、R’SiCl、またはR’Si(OEt)等のシラン処理剤の1種またはそれ以上を使用することも考えられる。立体上の理由により、これらの後者のシラン処理剤は、その後表面に結合する、二量体および/または三量体(シルセスキオキサン類に類似)を生成すると考えられている。Controlled Interphases in Composite Material,H.Ishida Ed.,Elsevier Press,New York,1990を参照し、該文献を本明細書に参照により援用する。1つ以上のSur−O−Si結合により、これらの後者の系は、加水分解に対しより耐性を示すことのできるものであると考えられるが、これらはなおその表面で1つのR’基のみをもつ。
【0045】
本発明の多官能基SQを有益に使用することで、これらのSQ(例えば、図7に概略的に示す生成物等)が、複数(例えば、3〜4個)のSi‐OH基及び4つのR’基をSQ面から離れた位置に有し、かつ、前記Si‐OH基をSUR−OH基に結合する位置に有することができることがわかる。従って、各構造体で、SURとの良好な接着性を付与し、SURとのアンカーセットとなる、3〜4つの官能基を得ることができる。これらの基は、同一である必要はない。これらは、好ましい官能基のいずれの混合物であってもよい。さらにまた例として、OTSEについては、本明細書に参照により援用する「High Modulus Spin‐On Organosilicates for Nanoporousglasses,」Adv.Mater.,19 705−710(2007)に記載の表面と同様の塗装ができ、例えば、図8および10が示唆するようなAl 2024 T3のものがある。このことから、塩腐食に対しかなり耐性があり、しかもさらに表面改質を可能にする材料は、同様に可能であると考えられる。
【0046】
さらに詳しくは、本発明の多官能基SQの1つまたはそれ以上に基づく新規構造を構築することができる。例えば、図8のOTSE系塗装(OTSEの代わりに他のSQでもよいことが理解されよう)を参照すると、1つのアプローチとして、図9および10の反応によるもののように、加水分解したTGTSE(Gはグリシジルを示す)で第1のSQ層を重ねる。このTGTSEは、図9に示すように、TTSEをビニルエポキシドと反応させることで調製できる。このTGTSEは、さらに加水分解反応(図9)を経て、例えば、縮合反応により、SUR−OH基と反応(図10)可能なSi−OH官能基を与える。このようにして、強力に密着する表面塗装は、ポリマー保護膜にその後結合することのできる接着性中間層で形成できる。図10および11の反応は、そのような例を示す。図10の反応のオクタアミノ化合物(OAPS)は、その結果生じる1またはそれ以上の前述の特性等の有益な樹脂特性で重要な役割を潜在的に果たしていると考えられている。
【0047】
別の可能なアプローチにおいて、本発明の教示を、反対側の層の界面結合強度に対して比較的低い界面結合強度を有する層、ひいては剥離性層(例えば、剥離性表面層)を与えることのできる、図11に従う複合塗装系の形成に適用することができる。そのような界面構造の例は、「High Modulus Spin‐On Organosilicates for Nanoporousglasses,」Adv.Mater.,19,705‐710(2007)に記載される高硬度・高弾性率層のものと矛盾がない。該文献本明細書に参照により援用する。
【0048】
SQ分子(例えば、TTSE分子)のなかには、図9に示す反応のようなヒドロシリル化を経た結合点として用いることのできる複数の(例えば、4つの)MeSiH基を有するようになるものもできる。このようにして、いくつもの新しい官能基を導入することが可能である。
【0049】
基材表面の化学により決定される二官能基SQ層により、各種表面に重ねることのできる多SQ層を作製することも可能である。図11および12を参照。
【0050】
図12は、比較的硬い中間層を有する多層SQ膜構造の別の例を示す。例えば、このような構造はOTSEから形成される1またはそれ以上の層を有することができる。
【0051】
前述のように、多官能基シルセスキオキサンを得る別の方法は、テトラアニオンシルセスキオキサン半立方晶(例えば、置換フェニルテトラアニオンシルセスキオキサン半立方晶)を用いる。この方法の長所は、分子構造の制御により、分子のほとんど(例えば、約50%以上、好ましくは約75%以上)が所望の構造を有するようにできることである。例えば、SQ半立方晶を用いて、「完全ヤヌス型立方晶」、すなわち、1つの面が第1の官能基のみを有し、反対側の第2の面が第2の官能基のみを有する二面性SQを調製、おそらくは単離することが可能である。すなわちこのアプローチにより完全ヤヌス型分子の生成が、約20%を超える、好ましくは約50%を超える、より好ましくは約75%を超える、例えば約85%を超える収率で可能になる。
【0052】
上記の記載の教示する多官能基シルセスキオキサン類またはこれを取込んだ構造は、以下の構造を有するテトラ置換フェニルテトラアニオン性シルセスキオキサン半立方晶(s−PhTAHC)を用いて得ることもできる。
【0053】
【化9】

(式中、Rは置換フェニル基であり、Mはカチオンを示す。)
【0054】
置換フェニル基は、フェニル、または1またはそれ以上の水素原子が置換されたフェニル、例えば、アルキル、アリル、エーテル、アミン、チオエーテル、ハロゲン、ヒドロキシル基、およびこれらの組み合わせに対して置換されたフェニル基である。このようなものとして、置換フェニル基 は、アルキルフェニル、アリルフェノール、エーテルフェニル、アミンフェニル、チオエーテルフェニル、ハロフェニル、フェノール、フェニル、およびこれらの組み合わせである。好ましくは、置換フェニル基Rは同一であるが、一般にこれらは異なることがある。Mは、1または2の正電荷を有する各種カチオンである。好ましくは、このカチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラホスホニウムカチオン、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれるカチオンである。
【0055】
このシルセスキオキサン半立方晶(s−PhTAHC)は、例えば第1のアルコールの存在下で、オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサン(s−PhSQ)を反応させることで得ることができる。この反応は、図31a中の反応により表すことができる。1つのより詳しい一例においては、置換フェニルは、フェニルであり、オクタフェニルオクタシルセスキオキサン(OPS)を反応させて、テトラフェニルテトラアニオン半立方晶(PhTAHC)を生成する。この反応の例は、結果として生じる半立方晶がナトリウムカチオン型半立方晶である、図31bに図示の反応によって表される。PhTAHCの収率は、約20%を超え、好ましくは約50%を超え、より好ましくは70%を超え、最も好ましくは約80%を超える。従って、生成したs−PhTAHCまたはPhTAHC塩もまた水和水を含む可能性がある。
【0056】
OPSは、結果として生じる半立方晶(すなわち、s−PhTAHC)がテトラ(ヨードフェニル)テトラアニオン半立方晶のナトリウムカチオン塩である、図31cに示すようなヨウ素酸塩型OPSである。
【0057】
s−PhTAHCを生成するのに使用できるハロゲン化オクタフェニルシルセスキオキサン類その他の非限定例として、図31dおよび31eにそれぞれ示すようなBr16OPSおよびBr24OPSがある。
【0058】
生成後このシルセスキオキサン半立方晶(s−PhTAHC)は、多官能基シルセスキオキサンを生成するために、1またはそれ以上の反応または反応工程を経る。例えば、s−PhTAHCを、R−SiClの構造を有するトリクロロシランと反応させ、この反応で1つの塩素原子が切断されて金属カチオンと結合し、シランがこのシルセスキオキサン半立方晶に結合してシロキシ結合が形成される。この反応の概略を図32aに示すが、この反応において生成物、HCI−Iで示す半立方晶中間体である。
【0059】
このトリクロロシランとして、アルキルトリクロロシラン、アリールトリクロロシラン、複素環式芳香族トリクロロシラン、クロロアルキルトリクロロシラン、アルキルエポキシトリクロロシラン、アルケニルトリクロロシラン、末端または内部エーテルを有するアルキニルトリクロロシラン、およびこれらの組み合わせを使用できる。トリクロロシラン類の例として、約1〜約22個の炭素原子、より好ましくは約1〜約8個の炭素原子を有するアルキルトリクロロシランがある。例えば非限定例として、メチルトリクロロシランを用いることができる。
【0060】
トリクロロシランのs−PhTAHCに対する比は、好ましくは4以上、より好ましくは4.3以上、および最も好ましくは5以上である。
【0061】
クロロシラン基を有する他に、このHCI−I分子は、s−PhTAHCに存在するいずれの水和水から生成されるヒドロキシクロロシラン類を有していてもよい。このことは図32aにも示されており、この場合、中間体HCI−Iは、平均してx個のヒドロキシクロロシラン基を有している。
【0062】
図33中でHCI−IIで表される例示のHCI−Iは、PhTAHCをトリクロロシランと反応させることで生成できる。
【0063】
HCI−IおよびHCI−II中にSi−Cl結合が存在することで、例えばHClの生成によって、中間体の重合が起こる。第2のアルコールをこれらの中間体(例えば、HCI−IまたはHCI−II)と反応させて、塩化シリコン含有中間体よりも安定な化合物を生成することができる。この第2のアルコールは一般式ROHで表すことができ、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコール、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。好ましくは、この第2のアルコールは、例えば、2級アルコール、3級アルコール、またはこれらを組み合わせたもの等のかさ高いアルコールを含むか、あるいはこのようなものからなる。この第2のアルコールは、半立方晶中間体(例えば、HCI−IまたはHCI−II)の形成後に添加できる。好ましくは、この第2のアルコールはトリクロロシランおよびs−PhTAHCの反応中に存在する。第2のアルコールの半立方晶中間体HCI−Iとの反応は図33に示すようなものであり、半立方晶中間体III(HCI−III)を生成する。このアルコリシス工程により、HCI−III化合物の単離および/または精製ができる。
【0064】
多官能基シルセスキオキサンの合成過程は、酸溶液中でHCI−III化合物を反応させてROHを除き、Si−O結合、より好ましくはSi−O−Si架橋構造を形成する工程をさらに含む。この反応は図34に示されており、この反応では、HCI−IIIを(4−x)個の水分子とHCl水溶液中で反応させ、(8‐x)個のROH分子および4つのSi−O−Si架橋を形成し、これにより4つのR官能基および4つのR官能基を有する多官能基シルセスキオキサンを形成する。
【0065】
シルセスキオキサン半立方晶(s−PhTAHC)をトリクロロシロキサンと反応させる工程は、PhTAHCを化学式RSiCl−O−SiClで表される(式中、RおよびRは、アルキル、アリール、複素環式芳香族、クロロアルキル、アルキルエポキシ、アルケニル、アルキニル、エーテル、およびこれらの組み合わせ)二官能基シラン二量体の1つまたはそれ以上と反応させる工程に代替できる。この反応生成物は、官能基がRおよびRであるHCI−Iで表せる。RおよびRは同一でも、あるいは異なっていてもよい。1つの二官能基シラン二量体のみを使用しRおよびRが同一の場合、反応生成物は4つのR官能基を有して生成される。1つの二官能基シラン二量体のみを使用しRおよびRが異なる場合、反応生成物は約2つの(例えば、厳密に2つの)R官能基と約2つの(例えば、厳密に2つの)R官能基を有して生成される。2つの異なる二官能基シラン二量体を使用することもできる。例えば第1の二量体がRSiCl−O−SiClの構造を有し、第2の二量体がRSiCl−O−SiClの構造を有していてもよい。RはRまたはRと同一であっても、あるいはRおよびRの両者と異なっていてもよい。2つの二量体の濃度を選択し、R、R、およびR基が同じであるかまたは異なるかを選ぶことで、HCI−I分子上の官能基の濃度を調整することができる。図35は、シルセスキオキサン半立方晶の2つの異なる二官能基シラン二量体との反応を示す。
【0066】
トリクロロシランと同様に、この二官能基シラン二量体をさらに中間体化合物の単離、精製、またはこの両者を可能にするアルコリシス工程で第2のアルコール、ROHと反応させ、続いて酸溶液中でこの中間体化合物を反応させてROHを除去してSi−O−Si架橋構造を形成することで、多官能基シルセスキオキサンを合成する。
【0067】
トリクロロシランまたは二官能基シラン二量体を使用するかわりに、1またはそれ以上のトリクロロシランおよび1またはそれ以上の二官能基シラン二量体を含む混合物を使用することもできる。
【0068】
本発明によれば、SQは加水分解して、官能化されたメソ多孔質構造を生成することができる。例えば、TGTSE、TCPTSEまたは別のTSE系を、酸または塩基触媒反応を利用して、Si(OEt)を添加または未添加で、複数または1つの構造が既知のアルキルアンモニウム塩といった有機性を有する構造の存在下加水分解することで、これらの生成物は表面および生成する構造の孔に官能基を有するメソ多孔質ケイ酸塩構造を有することができる。これらの官能基は、以下の例に用いられている手法によりさらに改質することができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例を非限定的に参照して、本発明をさらに説明する。
【0070】
(実施例1) テトラトリエトキシシリルエチルジメチルシロキシオクタ シルセスキオキサン(TTSE)の合成
OHS(50g、4.9mmol)を350mLのヘキサンに溶解する。その後、42mL(19mmol)のビニルトリエトキシシラン(VTES)と0.3gのPt/Cとを加える。この反応混合物を還流下で10日間攪拌する。再利用として触媒を回収し、溶媒をロータリエバポレータで蒸発させる。透明の粘性液体の生成物が得られる。図4は、この反応を示す。
【0071】
図13は、多官能基SQの調製に使用できる官能基のその他の例を示す。図13は、図13に示す官能基の1つまたはそれらを組み合わせて付加させるため、触媒存在下等で反応させるTTSEの改質を示す。このような官能基は、その他の開示されたSQにも同様に適用することができる。さらに、種々の例に示す官能基(例えば、触媒の存在下の反応で生成したもの)は、その他のSQとともに使用することができる。
【0072】
(実施例2) テトラシクロヘキセニルテトラトリエトキシシリルエタン立方晶(TCTSE)の合成
TTSE(50g、28mmol)を500mLのヘキサンに溶解する。その後、1‐ビニル‐4‐シクロヘキセン(16mL、113mmol)および0.3gのPt/を加える。FTIRで2,200cm−1におけるνSi−OHピークが消えるまで、この反応混合物を還流下で攪拌する。この生成物は92%の収率で得られる。
【0073】
(実施例3) 新規二官能基SQとしてのTCPTSEの合成
TTSE(25g、14mmol)を250mLの溶媒に溶解する。その後、塩化アリル(6mL、56mmol)と0.1gのPt/Cを加える。この反応混合物を、FTIRで2200cm−1におけるνSi‐Hピークが消えるまで還流下で2日間攪拌する。この生成物をろ取し、85%の収率で得る。図14はこの反応を示す。
【0074】
(実施例4) テトラオキシエタノールテトラトリエトキシシリルエタン立方晶(TOETSE)
TOETSEを図15に示すように調製した。これは、改良された疎氷性を有する二官能基立方晶の別の例である。
【0075】
平均4つの高架橋性トリエトキシシリルエタン単位および4つのプロポキシエタノール単位を有するTOETSEを生成するには、TOETSEを生成する出発物質として使用可能なTTSEをまず生成する。TTSE(25g、14mmol)を350mLのヘキサンに溶解する。その後、アリルオキシエタノール(7mL、56mmol)と0.2gのPt/Cとを加える。この反応混合物を、FTIRで2200cm−1におけるνSi−Hピークが消えるまで還流下で6日間攪拌する。TOETSEの収率は86%である。
【0076】
塗装は次のように行なう。6gの量の所望の化合物を25mLの70%メタノール−30%アセトン溶媒混合物に加え、30分間攪拌する。続いて、1mLのHCl‐水混合溶液(1mLの37%HClを99mL水に加えて調製)を加えた後、この溶液を約10分間攪拌する。続いて、この溶液を浸漬塗装、スピンキャスト法、スプレー法、またはこれらの各種組み合わせ(「方法A」本願明細書に記載のその他の塗装について利用できる技術)により塗布する。例えば、Binks M1‐G HVLPスプレーガンを所定圧で基材に対して使用して、0.1〜0.5mils(2.5〜15ミクロン)の厚さにスプレー塗布できる。通常のノズル噴射圧は6psiである。
【0077】
本実施例の塗布方法または本願明細書記載のその他の塗装のための別の方法(「方法B」)は、スピンコート法である。そのようなアプローチの例は、「High Modulus Spin−On Organosilicates for Nanoporous Glasses」Adv.Mater.,19、705‐700,(2007)に記載されている。該文献を本明細書に参照により援用する。
【0078】
(実施例5) OTSEからの誘電体薄膜の作製
スピンコート法により作製した薄膜は、OTSEを出発物質として使用することで調製される。この材料は、以下の表に列挙する値の約15%以内という平面性および低多孔率等の優れた特性を示す。
【0079】
【表1】

【0080】
さらにまた、これらの膜は、「High Modulus Spin−On Organosilicates for Nanoporous Glasses,」Adv.Mater.09,705‐700,(2007)の教示に従ったX線反射率測定により実証されるように、良好な平滑性を有する。該文献を本明細書に参照により援用する。異なる温度で加熱した場合のOTSE膜のX線反射率については図16を参照のこと。さらに、R.Q.Su,T.E.Muller,J.Prochazka,J.A.Lercher,「A New Type of Low‐k Dielectric Films Based on Polysilsesquioxanes,」Adv.Mater.14,1369‐73(2002)を参照のこと。該文献を本明細書に参照により援用する。
【0081】
(実施例6) TGTSEからの低誘電性(低k)膜の形成
さらにまた、OTSEのCHCHSi(OEt)基の約半分をエポキシまたはその他の有機基で置換することで、非常に良好な膜を形成することができると考えられている。この膜は、膜中に均一に分散し、かつ、分解時に以下の表に列挙する値の15%以内というはるかに高い多孔率およびはるかに低い誘電率で優れた機械特性を有する材料を生成する、あらかじめ付着させた1またはそれ以上の細孔形成剤(例えば、分解して1またはそれ以上の細孔を形成する有機成分)をさらに含みうる。
【0082】
【表2】

【0083】
さらにまた、優れた機械特性を損なうことなく、より多くの有機基を取込んで誘電率をさらに低下させるために、有機基の長さを変えることもできる。さらにまた、最終的に、この膜はかなり平滑なもので図17のX線反射率データに示されるような特徴を示すと考えられている。
【0084】
(実施例7) 方法AによりTCTSEで作製する塗装例
図18aおよびbは、方法AにしたがってTCTSEを用いた塗装により濡れ性がどのように改質できると考えられるかを示す。3滴の水滴を非被覆および被覆Al表面のそれぞれに落とす。綿密な試験としてASTM D5946に従って測定した場合、非被覆Al上のこれらの水滴の濡れ角は約30±5°であるのに対し、TCTSE被覆基材上の水滴の濡れ角は、約80±5°である。室温放置1週間後の塗装硬度は1〜2Hとなり、スプレー被覆材料としては非常に硬い。このことは大幅な改良であると考えられ、さらにTCTSE塗装の最適化によりさらに優れた濡れ角を達成できる。
【0085】
(実施例8) 標準的な方法で作製した塗装の経時後の硬度
標準的な方法ASTM D3363にしたがって作製した塗装の予測硬度および室温で7日間放置後の硬度を以下の表に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
エポキシ末端材料を除き、7日後にはその他の塗装のすべてが非常に硬くなり、TCTSEについては6Hである。
【0088】
(実施例9) 7日後の膜の接触角
方法Aで作製し、ASTM D5946に従って測定した、例8の塗装の予想接触角を以下の表に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
(実施例10) 多層膜
適切な基材上に形成したTCPTSE由来膜は以下のように改質できる。適当に処理した後、これらには限定されないがアミン類、チオール類、カルボキシレート類、またはこれらを組み合わせたもの等の単一の有機または無機求核性化合物に接触させてもよい。強塩基性材料も可能であるが、成功する可能性が低い場合がある。良好な反応性を与えるような設定温度において短時間接触させた場合、その表面は、図19に示す一般的な反応により示唆されるように改質される。被覆表面上の水滴に関する近似予想接触角(例えば、約15°の範囲)を図20に示す。比較的高濃度の疎水性を与えるにはN‐メチルアミノエタノールとの反応を利用することが特に有益であると考えられる。このことは、例えば図25および26に示されている。
【0091】
別の可能なアプローチとして、抗菌性塗装の作製がある。アルキルアンモニウム塩はシルセスキオキサン類上にも抗菌特性を付与することが知られている。従って、第2の層またはその他の層で抗菌性をもたせ耐磨耗性および防腐食性を主に異なる層でもたせる塗装を作製することができる。
【0092】
(実施例11) 多層化
その他の多層構造は、図21、27および28に示すように本願明細書の教示にしたがって実現できる。基本的に、図27はアミン類または同様に改質可能なその他の弱求核性化合物による表面改質に関するものである。
【0093】
(実施例12)
図22、23、および29は、塗装用にアミンまたはその他の官能基の選択で可能と考えられる接触角に対する効果を示す。図22の接触角の検討に使用した表面は、図21に示す反応に従って調製する。
【0094】
(実施例13) 多層塗装
多層塗装を図26乃至28のように作製する。
【0095】
さらに上述のように、化学反応またはイオン性化学種の1層ごとの積層のいずれかにより、第2の層以降のさらなる層を加えることができる。さらにまた、金属ナノ粒子を層内に捕捉することもできる。金属錯体を捕捉させたり、あるいは混合基として加えることもできる。
【0096】
(実施例14)
塗装用溶媒選択の濡れ(接触角)に関する効果を以下の表に示す。アルミニウム基材は、TCPTSEで被覆および表中の所定のアミン(例えば、DDMおよびMAEのそれぞれについて図24および図26に示すTCPTSEとの反応およびDDMおよびMAEそれぞれについて図23および図25に示す濡れ角により)溶媒を含む溶液中で浸漬被覆される。図30は、エタノール中でのTCPTSE+DDM(写真上)およびTHF中でのTCPTSE+DDM(写真下)を示す。太字のイタリック文字は、親水性のものを示す。アステリスク(*)は、疎水性のものを示す。
【0097】
従って、本願明細書の教示(すなわち、教示は一般的なものであり、この例に限定されない)は、この表面をより親水性または疎水性にするため、表面を(例えば、本願明細書記載の塗装に接触させたり、本願明細書記載の塗装の少なくとも1つの官能基をさらなる化合物と反応させたり、またはこの両者により)処理する工程を採用することができる。
【0098】
【表5】

【0099】
(実施例15) Ph半立方晶またはテトラアニオンナトリウム塩
下で攪拌子および還流濃縮器を備えた1000mLの乾燥丸底フラスコに、約20.00g(19.36mmol)のオクタフェニルシルセスキオキサン、約6.84g(170.4mmol)のNaOH、および約500mLのn‐ブタノールを加えた。この混合物を還流させながら約24〜約48時間加熱した。これらの不溶性固体を熱溶液からろ過し、そのろ過物を室温に冷却し、一晩冷凍保存して白色の結晶性固体得た。この固体をろ過し、約65℃で約12時間真空乾燥し、約22.84g(92%)のテトラアニオンナトリウム塩を得た。
【0100】
(実施例16) MePhアルコキシおよびMePh[Si12
下で攪拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、約100mLのメタノールに約5.00g(8.2mmol)のPh半立方晶ナトリウム塩を懸濁させた懸濁液を加える。約100mLのヘキサンに約4.25mL(36.2mmol)のメチルトリクロロシランを加えた溶液を激しく攪拌しながら、約30分かけて滴下ロートにて添加する。この結果得られる不均一混合物を約25℃で約24時間攪拌する。この不溶性固体をろ過して有機相を分離し、NaSOで乾燥する。ロータリーエバポレーションを使用して粘性黄色油を得る。この油を約5時間を真空乾燥して、約6.92g(87%)を得る。約0.500g(0.52mmol)のMePh誘導体を約10mLのヘキサンに溶解し、約10mLのHO中の37%HClの約0.5mLに加える。この混合物を約24時間周囲温度で攪拌し白色の粉末状固体を得る。この固体をろ過し、約60℃で約8時間真空乾燥することで、約0.284g(70%)のMePh[Si12]を得る。このMePh[Si12]について熱重量分析(TGA)を空気中で、例えば、空気中、約10℃/分の昇温速度で約25℃〜約980℃で炭素を燃焼させてSiOを残すようにして行なった。測定により決定したSiOの収率は61.23%である。収率の理論値は61.21%である。このMePh[Si12]サンプルのTGA曲線を図36aに示す。この図では、サンプル重量の初期サンプル重量に対する比を温度の関数としてプロットしている。このMePh[Si12]サンプルのFTIR曲線を図37bに示す。
【0101】
(実施例17) VinylPhalkoxy誘導体およびVinylPh[Si12
下で攪拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、約100mLのメタノールに約5.00g(8.2mmol)のPh半立方晶ナトリウム塩を懸濁させた懸濁液を加える。約100mLのヘキサン中にビニルトリクロロシランを加えて調製した溶液約4.60mL(36.2mmol)を激しく攪拌しながら約30分かけて滴下ロートにて滴下する。この結果得られる不均一混合物を約25℃の温度で約24時間攪拌する。この不溶性固体をろ過してメタノール層を分離し、その後NaSOで乾燥してロータリエバポレータで溶媒を蒸発させる。生成物として、白色結晶性固体のVinylPhalkoxy誘導体が得られる。この固体を約5時間真空乾燥する。このように乾燥した固体の重さは、約7.33g(収率約88%)である。続いて、約0.500g(0.49mmol)のVinylPhalkoxy誘導体を中に溶解した約10mLのメタノールに溶解し、約10mLのHOに37%HClを加えた溶液約0.5mLを加える。この混合物を周囲温度にて約24時間攪拌し、白色の粉末状固体を得る。この固体をろ過し、約60℃で約8時間真空乾燥することで、約0.331g(80%)のVinylPh[Si12]を得る。
【0102】
このVinylPh[Si12]サンプルのFTIRスペクトルを図37aに示す。MALDIにより決定したこの反応生成物の分子量を図37bに示す。この図において、このVinylPh[Si12]サンプルは、予想分子量MW=941Daに近い分子量を有する。
【0103】
(実施例18)iBuPhアルコキシ誘導体およびiBuPh[Si12
下で攪拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、約100mLのメタノールに約5.00g(8.2mmol)のテトラアニオンナトリウム塩を懸濁させた懸濁液を加える。続いて、約100mLのヘキサンにイソブチルトリクロロシランを加えて調製した溶液約5.97mL(36.2mmol)を激しく攪拌しながら約30分間かけて滴下ロートにて添加する。この結果得られる不均一混合物を約25℃で約24時間攪拌する。この不溶性固体をろ過して有機相を分離した後、NaSOで乾燥しロータリエバポレータで溶媒を蒸発させる。この過程により、アルコキシ誘導体である粘性黄色油を得る。この油を約5時間真空乾燥して、質量約7.46g(80%)を得る。その後、約0.500g(0.44mmol)のiBuPh(OR)誘導体を約10mLのヘキサンに溶解し、約10mLのHOに37%HClを溶解して調製した溶液約0.5mLに加える。この混合物を周囲温度で約24時間攪拌し、白色の粉末状固体を得る。この固体をろ過して約60℃で約8時間真空乾燥し、約0.335g(80%)のiBuPh[Si12]を得る。
【0104】
反応生成物の分子量を図38に示すようにMALDIにより決定した。ここでiBuPh[Si12]サンプルの分子量は、予想分子量MW=1061Daに近いものである。
【0105】
(実施例19)OctylPhalkoxy誘導体およびOctylPh[Si12
下で攪拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、約100mLのメタノールに約5.00g(8.2mmol)のPh半立方晶ナトリウム塩を懸濁させた懸濁液を加える。その後、100mLのヘキサンにn‐オクチルトリクロロシランを加えて調製した溶液約8.34mL(36.2mmol)を激しく攪拌させながら約30分かけて滴下ロートにて添加した。この結果生じる不均一混合物を約25℃で約24時間攪拌する。この不溶性固体をろ過して有機相を分離した後、NaSOで乾燥しロータリエバポレータで蒸発させると、アルコキシ誘導体である粘性黄色油を得る。この油を約5時間真空乾燥して、約8.05g(72%)を得る。約0.500g(0.37mmol)のOctylPh(OR)誘導体(またはOctylPh(OR)l4―x誘導体、ただしxは4またはそれ以下の数であり、xは約1未満であってもよい)を約10mLのヘキサンに溶解し、約10mLのHOに37% HClを加えて調製した溶液約1.5mLに加える。この混合物を周囲温度で約24時間攪拌し、白色の粉末状固体を得る。この固体をろ過し、約60℃で約8時間真空乾燥して、約0.281g(65%)のOctylPh[Si12]を得る。
【0106】
この反応生成物の分子は、図39に示すようにMALDIにより決定する。ここで、OctylPh[Si12]サンプルは、予想分子量MW=1285Daに近い分子量を有する。
【0107】
(実施例20)(ClCHPhalkoxy誘導体および(ClCHPh[Si12
下で攪拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、約100mLのメタノールに約5.00g(8.2mmol)のPh半立方晶ナトリウム塩を懸濁させた懸濁液を加える。約100mLのヘキサンにクロロメチルトリクロロシランを加えて調製した溶液約4.54mL(36.2mmol)を約30分間以上かけて激しく攪拌しながら滴下ロートにて添加する。この結果得られる不均一混合物を約25℃で約24時間攪拌する。この不溶性固体をろ過して有機相を分離し、NaSOで乾燥する。ロータリエバポレータで溶媒を蒸発させた後、アルコキシ誘導体の粘性黄色油を得る。この油を約5時間真空乾燥し、約6.80g(75%)を得る。その後、約0.500g(0.45mmol)の(ClCHPhアルコキシ誘導体を約10mLのヘキサンに溶解し、約10mLのHOに37%HClを加えて調製した溶液約1.5mLに添加する。この混合物を周囲温度で約24時間攪拌し白色の粉末状固体を得る。この固体をろ過し約60℃で約8時間真空乾燥し、約0.317g(76%)の(ClCHPh[Si12]を得る。
【0108】
この反応生成物の分子量は、図40に示すようにMALDIで決定され、ただし(ClCHPh[Si12]サンプルは、その予想分子量MW=1031Daに近い分子量を有する。
【0109】
当該技術分野で開示されている手法により測定を行なうことができる。例えば、特記しない限り、接触角の測定はASTM D5946、硬度は鉛筆硬度試験(ASTM D3363)、屈折率はASTM D542により、誘電率はASTM D150に従って行なう。多孔率は、ASTM D6583‐04により測定できる。CTEは、ASTM D‐696により測定できる。
【0110】
本願明細書に記載の数値は、下限値と上限値の間で少なくとも2単位の隔たりがある場合、1単位きざみで下限値から上限値の範囲に含まれる全数値を含む。例として、成分量または工程の値が、例えば、温度、圧力、時間等のように、例えば、1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70の範囲で変化すると述べている場合、15〜85、22〜68、43〜50、30〜32等の値が本願明細書に列挙されていることを意味する。1未満の値については、必要に応じて、1単位が0.0001、0.001、0.01、または0.1であると考える。これらは意図する具体的な例にすぎず、列挙している下限値と上限値との間の数値の可能な数値の組み合わせを同様に明記しているものと考える。理解できるように、本願明細書において「重量部」で示す量に関する教示はまた、重量パーセントについても同じ範囲を意味する。従って、本発明の詳細な説明における「結果として生成されるポリマーブレンド混合物の「x」重量部」という表現はまた、生成ポリマーブレンド組成物の「x」という同記量の範囲を重量パーセントでも教示していることと考える。
【0111】
特記のない限り、本願明細書に記載の範囲はすべて、上下限値およびそれらの限界値の間の全ての数を含むものとする。範囲に関して「およそ」または「約」という語の使用している場合、それらの上下限値に適用している。従って「約20〜30」とある場合、少なくともその具体的な限界値を含む「約20〜約30」の範囲を網羅することを意図して
いる。
【0112】
特許出願および出版物を含む全ての記載物および参考文献の開示内容を本明細書において参照により援用する。構成要素の組み合わせを記載する際に使用する「からなる」という表現は、それらの特定された要素、含有成分、成分、または工程、およびその組み合わせの基本的な新規特徴に本質的に影響を与えないその他の要素、含有成分、成分、または工程を含むことを意味する。本願明細書における、要素、含有成分、成分、または工程の組み合わせを記載するための「〜を有する」または「〜を含む/含有する」という表現の使用はまた、それらの要素、含有成分、成分、または工程からなる実施形態を考えている。
【0113】
複数の要素、含有成分、成分、または工程は、単一の組み込まれた要素、含有成分、成分、または工程により与えられる。あるいは、単一の組み込まれた要素、含有成分、成分、または工程は、複数の別個の要素、含有成分、成分、または工程に分割できるはずである。要素、含有成分、成分、または工程を記載するための「単数記載」または「1つの」に関する開示はさらなる要素、含有成分、成分、または工程を排除することを意図するものではない。本願明細書である基に属する元素または金属に対する参照は、1989年にCRC Press,Inc.が出版し版権を有する元素周期表を基準とする。1つまたは複数の基への参照は、置換基の付番に関するIUPAC法を用い、元素周期表を適用している。
【0114】
上記の記載は説明を意図したものであり、制限的なものではないことを理解されるべきである。上記の例以外の多くの応用はもちろん多くの実施形態は、上記の説明を読むことで当業者には明白であろう。したがって本発明の範囲は上記の記載事項を参考に決定されるべきではなく、むしろ請求項に与えられるのと等価な全容とともに添付の請求項を参照して決定されるべきである。特許出願および出版物を含む全ての記載物および参考文献をあるゆる目的に対し参照により援用する。本願明細書に開示されている主題に関するいずれの態様に関する以下の請求項における省略/脱落は、そのような主題の否認や放棄や、本発明者らがそのような主題を本願明細書で開示の発明内容の一部であるとは考えていないと解釈されるべきではない。従って、本発明の範囲は、上記の記載に準拠して決定されるべきではなく、むしろ請求項に与えられるのと等価の全容とともに添付の請求項を参照して決定されるべきである。本願明細書の例に記載の特性はおおよそのものであり、列記されている量も(例えば、記載の数値の±約20%の範囲で)変化する可能性がある。1つの具体的なSQの例に関する列挙は、その他のSQの使用を排除することを意図しない。したがって、これらの例に記載のSQのかわりまたはこれらのSQに加えて、TTSE、TCTSE、TCPTSE、TOETSE、OTSE、TGTSE、OCPTSEを用いることが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の面と、前記少なくとも1つの第1の面から離れている少なくとも1つの第2の面とを有する多面体シルセスキオキサンと、
前記少なくとも1つの第1の面に結合する少なくとも1つの第1の官能基と、
第1の官能基とは異なり、かつ前記少なくとも1つの第2の面に結合している少なくとも1つの第2の官能基とを有し、
前記少なくとも1つの第1の官能基は、表面、他のシルセスキオキサン、有機官能基、またはこれらの組み合わせへ結合可能に構成されている、多官能基シルセスキオキサン。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンのシリカは、オクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサンオクタアニオンを経て米のもみ殻灰由来のものである、請求項1に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項3】
多面体シルセスキオキサンの構造は、ほぼ立方晶構造、ほぼ8面体、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項4】
ケイ素が、前記ほぼ立方晶構造の各頂点に位置する、請求項3記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項5】
前記ほぼ立方晶構造の頂点にある各ケイ素が、少なくとも1つの酸素により結合している、請求項1記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の官能基がシラン化官能基である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2の官能基が、含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項8】
前記多官能基シルセスキオキサンは、TTSE、TCTSE、TCPTSE、TOETSE、TGTSE、またはこれらの組み合わせから選ばれる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項9】
前記多官能基シルセスキオキサンは、プラスチック、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる表面に結合する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項10】
前記多官能基シルセスキオキサンは、Si−OH基により前記表面に結合する、請求項9に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1の官能基は、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に結合している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2の官能基は、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に結合している、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項13】
前記多官能基シルセスキオキサンは多孔質構造である、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項14】
前記多官能基シルセスキオキサンは、前記多孔質構造中に複数のほぼ均一に分散した孔を有し、前記多孔質構造の複数の形成された孔内に第1のまたは第2の官能基の少なくとも1つを選択的に有するものである、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項15】
前記多孔質構造の多孔率が約5〜約50体積%の範囲にある、請求項13または14に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項16】
前記多孔質構造の多孔率が約15〜約30体積%の範囲にある、請求項13または14に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項17】
前記多官能基シルセスキオキサンの誘電率が約1〜約4である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項18】
前記多官能基シルセスキオキサンの誘電率が約2〜約3である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項19】
前記多官能基シルセスキオキサンの屈折率が約1〜約2である、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項20】
前記多官能基シルセスキオキサンの屈折率が約1.2〜約1.6である、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項21】
前記多官能基シルセスキオキサンがほぼコア−シェル層構造である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサン。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサンを有する誘電体膜。
【請求項23】
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサンを含有する塗装。
【請求項24】
前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約60°である、請求項23に記載の塗装。
【請求項25】
前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約75°である、請求項23に記載の塗装。
【請求項26】
前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約90°である、請求項23に記載の塗装。
【請求項27】
前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約105°である、請求項23に記載の塗装。
【請求項28】
前記塗装の水の濡れ角が少なくとも約120°である、請求項23に記載の塗装。
【請求項29】
前記塗装の鉛筆硬度が少なくとも約5Hである、請求項23乃至28のいずれか1項に記載の塗装。
【請求項30】
前記塗装の硬度が少なくとも約Fである、請求項23乃至28のいずれか1項に記載の塗装。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれか1項に記載の多官能基シルセスキオキサンを含む物品。
【請求項32】
前記多官能基シルセスキオキサンは、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に、前記少なくとも1つの第1の官能基を介して結合している、請求項31記載の物品。
【請求項33】
前記多官能基シルセスキオキサンは、金属、セラミック、炭素、前記材料からなる複合材料、またはこれらの組み合わせから選ばれる基材に、少なくとも1つの第1の官能基の少なくとも2つのSiOH基を介して結合している、請求項31または32に記載の物品。
【請求項34】
前記少なくとも1つの第2の官能基によって多官能基シルセスキオキサンに結合する少なくとも1つの外層をさらに有する、請求項31乃至33のいずれか1項に記載の物品。
【請求項35】
前記少なくとも1つの外層は、含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれる成分を含む、請求項31乃至34のいずれか1項に記載の物品。
【請求項36】
基材と多官能基シルセスキオキサンとの間、あるいは多官能基シルセスキオキサンと少なくとも1つの外層との間のいずれかまたは両者で規定される空間内に捕捉されたナノ粒子をさらに含む、請求項31乃至35のいずれか1項に記載の物品。
【請求項37】
前記少なくとも1つの外層は複数の層を有する、請求項31乃至36のいずれか1項に記載の物品。
【請求項38】
前記少なくとも1つの外層は、求核試薬を含む、請求項31乃至37のいずれか1項に記載の物品。
【請求項39】
前記少なくとも1つの外層は、メルカプト基、アミノ基、またはそれらの組み合わせを含む、請求項31乃至38のいずれか1項に記載の物品。
【請求項40】
前記少なくとも1つの外層は、少なくとも1つのアルキルアンモニウム塩を含む、抗菌層である請求項38または39に記載の物品。
【請求項41】
少なくとも1つのシリカ源を準備する工程(a)と、
シリコンをその頂点に含む多面体かご構造を形成するため、および少なくとも1つの第1の面と前記少なくとも1つの第1の面から離れた少なくとも1つの第2の面とを規定するために、シリカの少なくとも1部を反応させる工程(b)と、
少なくとも1つの第1の官能基を前記少なくとも1つの第1の面に結合させる工程(c)と、
少なくとも1つの第2の官能基を前記少なくとも1つの第2の面に結合させる工程(d)と、
第1の多官能基シルセスキオキサン塗装を基材上に規定するために、前記第1の官能基をSi−OH官能基を介して前記基材に結合させる工程(e)とを含む、多官能基シルセスキオキサン塗装の形成法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのシリカ源は米もみ殻灰由来であり、前記多面体かご構造はオクタ(テトラメチルアンモニウム)シルセスキオキサンオクタアニオンに基づくものである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記多面体かご構造はほぼ立方晶構造である、請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの第1の面は、前記少なくとも1つの第2の面のほぼ反対に位置している、請求項41乃至43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記結合工程(c)は、少なくとも3つの前記第1の官能基を少なくとも1つの前記第1の面に結合させることを含む、請求項41乃至44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記 結合工程(d)は、少なくとも3つの第2の官能基をその少なくとも1つの第2の面に結合させることを含む、請求項41乃至45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記第1の官能基はシラン化官能基から選ばれる、請求項41乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の官能基は、含硫黄化合物、含窒素化合物、ルミフォア、カチオン基、アニオン基、触媒、触媒前駆体、薬剤、殺菌剤、抗真菌性物質、抗ウイルス物質、界面活性剤、疎水性物質、親水性物質、分岐鎖オリゴマー、直鎖オリゴマー、混合官能基、さらなる組の官能基、またはこれらの組み合わせから選ばれる、請求項41乃至47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
第1の官能基または第2の官能基の少なくとも1つは、グリシジル官能基を含む、請求項41乃至48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの第2の官能基を第1の多官能基シルセスキオキサンと同じまたは異なる少なくとも1つの第2の多官能基シルセスキオキサンと結合させる工程をさらに有する請求項41乃至49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
結合工程(c)および(d)の一方または両者は、触媒の存在下での反応工程を含む、請求項41乃至50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
結合工程(c)および(d)の一方または両者は、フーリエ変換赤外分光法により監視され、2200cm−1におけるνSi―Hピークが消えるまで進行させた反応工程を含む、請求項41乃至51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
結合工程(c)および(d)の一方または両者は、反応物質の混合物を触媒の存在下で還流させながら攪拌することを含む反応工程を含む、請求項41乃至51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
結合工程(c)および(d)の一方または両者は、反応物質を溶媒に溶解する工程、前記反応物質を触媒と混合する工程、前記反応物質と混合した前記触媒を回収する工程、溶媒を蒸発させる工程、またはこれらの組み合わせた工程を含む反応工程を含む、請求項41乃至53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記触媒はPt/Cを含み、前記反応工程は約60〜約110°の温度範囲で行われ、あるいはこれらの両者である、請求項41乃至54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
第1の多官能基シルセスキオキサン塗装を加水分解して、前記第1の官能基または第2の官能基の少なくとも1つを表面上および孔内に有するメソ多孔質ケイ酸塩構造を形成する、請求項41乃至55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記塗装は溶媒を介して基材に塗布される、請求項41乃至56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記塗装は、アミン−官能基剤の存在下で基材に塗布される、請求項41乃至57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記溶媒はアセトン、エタノールまたはTHFから選ばれる、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記アミン−官能基剤は、EA、DEA、TEA、MAE、DDM、OAPSまたはこれらの組み合わせから選ばれる、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの第1の官能基は、コア−シェル構造により少なくとも1つの第1の面に結合する、請求項41乃至60のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項62】
オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンを与える工程(a)と、
オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンをカチオンおよび第一のアルコールを含む溶液中で、以下の(s−PhTAHC)構造を有するテトラアニオン半立方晶を形成するように反応させる工程(b)とを含む、多官能基シルセスキオキサンの生成方法。
【化1】

(式中Rは置換フェニル基であり、フェニル、アルキルフェニル、アリルフェノール、エーテルフェニル、アミンフェニル、チオエーテルフェニル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、Mはカチオンであり、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラホスホニウムカチオン、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。)
【請求項63】
式中、Rは、オクタ(置換フェニル)オクタシルセスキオキサンがオクタフェニルオクタシルセスキオキサンであり、テトラアニオン半立方晶が以下の(PH‐TAHC)構造であり、式中Phはフェニルである構造となるようなフェニル基である、請求項62記載の方法。
【化2】

【請求項64】
前記アルコールは1〜約20個の炭素原子を有するアルコールである、請求項62記載の方法。
【請求項65】
前記アルコールはメタノール、エタノール、n‐プロパノール、n‐ブタノール、イソアミルアルコール、n‐ペンタノール、n‐ヘキサノール、エチレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項62記載の方法。
【請求項66】
前記カチオンはナトリウムカチオンである、請求項62記載の方法。
【請求項67】
前記(s‐PHTAHC)をトリクロロシランに反応させる工程(c)をさらに有する、請求項62記載の方法。
【請求項68】
前記トリクロロシランは、アルキルトリクロロシラン、アリールトリクロロシラン、複素環式芳香族トリクロロシラン、クロロアルキルトリクロロシラン、アルキルエポキシトリクロロシラン、アルケニルトリクロロシラン、末端または内部エーテルを有するアルキニルトリクロロシラン、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記トリクロロシランは、約1〜約8個の炭素原子を有するアルキルトリクロロシランである、請求項67記載の方法。
【請求項70】
前記(s‐PHTAHC)をRSiCl‐O‐SiClで表される構造を有する第1の二量体と反応させる工程(c)をさらに含み、
式中RおよびRは、アルキル、アリール、複素環式芳香族、クロロアルキル、アルキルエポキシ、アルケニル、末端または内部エーテルを有するアルキニル、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項62記載の方法。
【請求項71】
式中RおよびRは互いに同一である、請求項70記載の方法。
【請求項72】
およびRは互いに異なる、請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記工程(c)はさらに、s‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClで表される構造を有する第2の二量体と反応させる工程を含み、
式中RおよびR互いに異なる、請求項71記載の方法。
【請求項74】
工程(c)はさらに、s‐PHTAHCをRSiCl‐O‐SiClで表される構造を有する第2の二量体に反応させる工程を含み、式中RはRおよびRのいずれとも異なる、請求項72記載の方法。
【請求項75】
工程(c)はさらに、(s‐PHTAHC)をRSiCl‐O‐SiClで表される構造を有する第2の二量体と反応させる工程を含み、
式中RはRまたはRと同一である、請求項72記載の方法。
【請求項76】
第2のアルコールを、s‐PHTAHCに結合したトリクロロシランに残留する塩素原子と反応させる工程(d)をさらに含み、前記第2のアルコールはR−OHで表される化学構造を有し、塩素原子がアルコリシスにより前記第2のアルコールで置換されてSi‐O‐R基を形成する、請求項70記載の方法。
【請求項77】
前記第2のアルコールは1級アルコール、2級アルコールまたは3級アルコールを含む、請求項76記載の方法。
【請求項78】
第2のアルコールは2級アルコールまたは3級アルコールである、請求項76記載の方法。
【請求項79】
加水分解工程(e)をさらに有する請求項62乃至75のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図21】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図31a】
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【図31b】
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【図31c】
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【図31d】
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【図31e】
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【図32a】
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【図32b】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36a】
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【図36b】
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【図37a】
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【図37b】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図18a】
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【図18b】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−530911(P2010−530911A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512265(P2010−512265)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/065554
【国際公開番号】WO2009/002660
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509345604)マヤテリアルズ インク (2)
【Fターム(参考)】